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Ⅱ.業 務 - AIST: 産業技術総合研究所

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Ⅱ.業 務 - AIST: 産業技術総合研究所
Ⅱ.業
務
産業技術総合研究所
Ⅱ.業
1.研
務
究
産業技術総合研究所(産総研)は、産業界、学界等との役割分担を図りつつ、【鉱工業の科学技術】、【地質の調
査】、【計量の標準】という各研究開発目標を遂行して、産業技術の高度化、新産業の創出及び知的基盤の構築に貢
献し、我が国経済の発展、国民生活の向上に寄与する。そのため、各分野における社会的政策的要請等に機動的に対
応するために、最新の技術開発動向の把握に努め、重要性の高い研究課題や萌芽的な研究課題の発掘、発信を行うと
ともに、研究体制の構築等の必要な措置を講じ、研究開発を実施し、産業競争力の強化、新規産業の創出に貢献する。
また、外部意見を取り入れた研究ユニットの評価と運営、競争的研究環境の醸成、優れた業績をあげた個人につい
ての積極的な評価などにより、研究活動の質的向上を担保する。
さらに、研究活動の遂行により得られた成果が、産業界、学界等において、大きな波及効果を及ぼすことを目的と
して、特許、論文発表を始めとし、研究所の特徴を最大限に発揮できる、様々な方法によって積極的に発信する。同
時に、産業界、大学と一体になったプロジェクトなど、産学官の研究資源を最大限に活用できる体制の下での研究活
動の展開へ貢献するものとする。
独立行政法人産業技術総合研究所法において産総研のミッションとして掲げられた研究目標は以下の通りである。
1.鉱工業の科学技術
鉱工業の科学技術の研究開発については、研究課題を科学技術基本計画、国家産業技術戦略、産業技術戦略等に
基づき重点化することとし、学界活動を先導して科学技術水準の向上に寄与するか、経済産業省の政策立案・実施
に貢献するか、産業界の発展に貢献するか、国民生活の向上に寄与するか等の観点から決定するものとし、また、
科学技術の進歩、社会・経済情勢の変化は絶え間ないことから、これら外部要因に基づいて研究課題を柔軟に見直
すよう努めるものとする。併せて、新たな産業技術の開拓に資する研究開発課題・研究分野の開拓を目指し、経済
産業省、総合科学技術会議等における産業技術に関する戦略等の検討に反映させるものとする。
2.地質の調査(知的な基盤の整備への対応)
我が国の産業の発展、国民生活の安寧はもとより広く人類の持続的発展に貢献するため、我が国の技術開発及び
科学研究に関する基本的な計画の要請に沿って、国土の利用や資源開発・環境保全に必要不可欠な地質の調査及び
これらに共通的な技術課題について重点的に取り組むものとする。
3.計量の標準(知的な基盤の整備への対応)
我が国経済活動の国際市場での円滑な発展を担保するため、各種の試験、検査、分析結果の国際同等性を証明す
る技術的根拠や技術開発・産業化の基盤である計量の標準を整備するとともに、計量法施行業務の適確な実施を確
保するものとする。
これらの目的を達成するため、独立行政法人化と同時に、従来の研究所の枠を越えた形での再編成を行い、理事長
に直結した形で研究組織を配した。これは、多重構造を排し、研究組織(研究ユニット)長への権限委譲を行うこと
により意思決定の迅速化を図り、権限と責任を明確にした組織運営を行うためである。具体的には、研究ユニット内
での予算配分、人事、ポスドク採用、対外関係(発表、共同研究)についての権限を研究ユニット長に委譲し、研究
ユニット長による迅速な意志決定を可能とした。
また、研究組織(研究ユニット)には、一定の広がりを持った研究分野の継続的な課題について研究を進める個別
の研究組織(研究部門・研究系)、特に重点的、時限的な研究を実施する個別の研究組織(研究センター)、機動的、
融合的な課題を研究する個別の研究組織(研究ラボ)などの適切なユニットを配置している。個々の研究ユニットに
ついては、永続的なものと位置付けず、研究組織の性格の違いを勘案した上で定期的に評価を行い、必要に応じて、
再編・改廃等の措置を講ずることとしている。
(19)
研
<凡
究
例>
研究ユニット名(English Name)
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------研究ユニット長:○○ ○○
(存続期間:発足日~終了日)
副研究ユニット長:○○ ○○
総括研究員:○○ ○○、○○ ○○
所在地:つくば中央第×、△△センター(主な所在地)
人
員:常勤職員数(研究職員数)
経
費:執行総額 千円(運営交付金 千円)
概
要:研究目的、研究手段、方法論等
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------外部資金:
テーマ名(制度名/提供元)
テーマ名(制度名/提供元)
発
表:誌上発表○件(総件数)、口頭発表○件(総件数)
その他○件(刊行物等)
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------○○研究グループ(○○English Name Research Group)
研究グループ長:氏
概
名(所在地)
要:研究目的、研究手段、方法論等
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目3
××研究グループ(××English Name Research Group)
研究グループ長:氏
名(所在地)
概要:研究目的、研究手段、方法論等
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目7、テーマ題目8
□□連携研究体(□□Collaborative Research Team)
連携研究体長:○○
○○(つくば中央第△、研究職数名)
概要:研究目的、研究手段、方法論
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目7、テーマ題目8
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------[テーマ題目1](運営費交付金、資金制度(外部)もしくは○○研究ユニットと共同研究
などで行っている「重要研究テーマ」)
[研究代表者]氏
名(○○研究部門△△研究グループ)
[研究担当者]○○、△△、××、(常勤職員○名、他○名)
[研 究 内 容]研究目的、研究手段、方法論、年度進捗
[分
野
名]○○○○○○○○
[キーワード]△△△△、○○○○、☆☆☆☆
[テーマ題目2](運営費交付金、資金制度(外部)もしくは○○研究ユニットと共同研究
などで行っている「重要研究テーマ」)
[研究代表者]氏
名(○○研究部門△△研究グループ)
[研究担当者]○○、△△、××、(常勤職員○名、他○名)
[研 究 内 容]研究目的、研究手段、方法論、年度進捗
[分
野
名]○○○○○○○○
[キーワード]△△△△、○○○○、☆☆☆☆
(20)
産業技術総合研究所
(1) 研究ユニット
1)研究センター
ブページの運営、センターニュースの発行・配布を行
った。
①【活断層研究センター】
---------------------------------------------------------------------------
(Active Fault Research Center)
外部資金
経済産業省受託研究費
(存続期間:2001.4.1~2009.3.31)
支援型「小型・可搬型長周期微
動計」
研 究 セ ン タ ー 長:杉山
雄一
副研究センター長:岡村
行信
上 席 研 究 員:佐竹
健治
主 幹 研 究 員:粟田
泰夫
文部科学省受託研究費「活断層の追加・補完調査」
財団等受託研究費「原子力安全基盤調査
津波波源モデ
ルの精度向上に関する研究」(原子力安全基盤機構)
所在地:つくば中央第7
人
員:14名(13名)
財団等受託研究費「糸静線活断層帯におけるより詳しい
経
費:687,490千円(299,555千円)
地震活動履歴解明のための史料地震学的研究」(東京大
概
要:
学)
活断層研究センターは活断層に関する我が国唯一の
財団等受託研究費「宮城県沖地震における重点的調査観
中核研究機関として、地震調査研究推進本部の施策に
測」地質調査・津波シミュレーションに基づく地震発生
基づき、基盤調査観測項目としての活断層調査の推進
履歴に関する研究(東北大学)
に努め、活動性評価の精度向上を図ることを第1の目
標とする。また、活断層、津波堆積物等の地質学的情
財団等受託研究費「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研
報に基づく、特色ある地震及び津波災害予測に関する
究」(防災科学技術研究所)
研究を推進し、社会的により利用価値の高い情報の創
成に努める。さらに内外の活断層データを収集・評価
財団等受託研究費
二国間交流事業共同研究・セミナー
し、広く流通・公開する体制を整備し、活断層のナシ
「西スマトラ海岸および陸上の活断層における古地震
ョナルデータセンターとしての機能の充実を図る。ま
学」(日本学術振興会)
た、国際共同研究を活発に行い、国際的研究拠点とし
財団等受託研究費
ての地位を確立することを目指す。
二国間交流事業共同研究・セミナー
「内陸大地震の空白域における地震ハザード予測のため
平成20年度は本研究センターの最終年度に当たり、
の活断層詳細情報に関する研究」(日本学術振興会)
上記ミッションの完遂を目指すとともに新たな飛躍を
期して、地震テクトニクス研究チームを活断層調査研
究チームに統合し、運営費交付金と外部資金によって、
請負研究費「活断層帯におけるセグメンテーションと最
以下の研究を実施した。運営費交付金では、1) 活断
大地震規模に関する推定」(応用地質株式会社)
層および地震テクトニクスの研究、2) 海溝型地震の
履歴と被害予測の研究、3) 地震災害予測の研究、の3
請負研究費「変動地形に基づく伏在断層評価手法の高度
つの研究テーマを実施した。これらの研究テーマの実
化」(原子力安全基盤機構)
施に当たっては国内外から多くの外部研究者を迎え入
れ、研究の充実を図った。また、地質調査総合センタ
文部科学省科学研究費補助金「歴史・地質・地球物理学
ー(Geological Survey of Japan)の一員として、関
的アプローチが明らかにする想定東海地震震源域の地殻
連研究ユニット・組織と連携を図り、効率的に研究を
変動履歴」
進めた。
平成20年度にはこの他に、下に列挙する経済産業省、
文部科学省、原子力安全基盤機構、応用地質株式会社、
文部科学省科学研究費補助金「海溝型地震とプレート内
地震の連動履歴に関する地形地質学的研究」
東京大学、東北大学、日本学術振興会等からの15件の
文部科学省科学研究費補助金「室内実験を用いたデータ
外部資金による研究・調査を実施した。
同化手法の開発」
研究及び調査の成果は学会及び学術雑誌上で積極的
に公表したほか、産総研のウェブページ、ニュースを
はじめ、各種の媒体を通して速やかに発信した。また、
文部科学省科学研究費補助金「活断層から発生する大地
「活断層・古地震研究報告」第8号を編集・刊行する
震の連動パターン解明の古地震学的研究」
とともに、当センターの研究活動の広報のため、ウェ
(21)
研
究
日本学術振興会(外国人特別研究員・欧米短期)調査研
地震被害予測研究チーム
究費「衛星画像解析等によるモンゴルの活断層と地震テ
(Earthquake Hazard Assessment Team)
クトニクスの研究」
研究チーム長:堀川
晴央
(つくば中央第7)
発
概
表:誌上発表45件、口頭発表106件、その他33件
要:
---------------------------------------------------------------------------
地震による被害軽減を目指して、地震動予測手法の
活断層調査研究チーム
高度化に関する研究と断層変位による表層地盤の変形
(Active Fault Evaluation Team)
予測研究を主に行った。前者については、活断層情報
研究チーム長:吉岡
を活用した地震シナリオ作成方法の改良を行い、より
敏和
高度な地震動予測手法の開発を進めている。また、長
(つくば中央第7)
概
要:
周期地震動に焦点をあて、海溝沿いで発生する巨大地
活断層の過去の活動を把握し、将来の活動を予測す
震の震源モデルの作成や日本の主要平野の地盤構造モ
るための調査・研究を行う。国の地震調査研究推進本
デルの作成も進めつつ、長周期地震動評価に関する研
部が選定した「基盤的調査観測の対象活断層」等の重
究も進めた。後者については、地質情報、活断層情報
要活断層について、位置・形状、活動度、最新活動時
に基づく断層変位による表層地盤の変位・変形量を数
期、活動間隔などを明らかにするための調査・研究を
値シミュレーションによって予測する手法の開発を行
行う。調査の方法は、地形地質調査、トレンチ調査、
うとともに、フィールドでのデータ取得も行った。
ボーリング調査、反射法探査などで、調査結果は、既
研究テーマ:テーマ題目4、テーマ題目5、テーマ題目
17
存の文献資料とともに活断層データベースとして整理
し、これに基づいて、将来活断層が活動する可能性を
---------------------------------------------------------------------------
確率論的に評価した。また、活断層の評価手法の高度
[テーマ題目1]活断層および地震テクトニクスの研究
化のため、最近の地震断層に関する詳細な研究や、活
[研究代表者]吉岡
動性が低い活断層の研究も併せて行った。
[研究担当者]吉岡
敏和(活断層調査研究チーム)
泰夫、遠田
晋次、
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目6、テーマ題目
宮下
由香里、丸山
正、加瀬
祐子、
8、テーマ題目12、テーマ題目13、テーマ
金田
平太郎、松浦
旅人、近藤
題目18、テーマ題目19
(JSPS 特別研究員)、宮本
伏島
(Subduction - zone Recurrence Research Team)
祐一郎(地質情報研究部門)
[研 究 内 容]
本研究は、平成20年度における研究チーム再編を受け
行信
て、それまで実施してきた「活断層の活動性評価の研
(つくば中央第7)
概
久雄
富士香、
(常勤職員8名、他3名)
海溝型地震履歴研究チーム
研究チーム長:岡村
敏和、粟田
要:
究」と「地震テクトニクスの研究」を合体したものであ
海溝型地震の中でもまれに発生する異常に大きな津
る。本研究では、活断層の評価手法を高度化するための
波を伴う地震は、発生すると大きな被害を生じる。
基礎的な研究として、地震と断層のスケーリング則の研
2004年スマトラ沖地震はその例である。このような異
究、活動繰り返し規則性と連動破壊の研究、南部フォッ
常に規模の大きな津波堆積物や大きな地殻変動の痕跡
サマグナ地域のテクトニクスの研究、断層変位量分布と
を地層や地形に残すことが知られている。本チームは
幾何学形状の研究などを実施した。また、活断層データ
そのような地形・地質学的な記録を野外調査によって
ベースについては、データの追加入力を行うとともに、
解明し、履歴を明らかにするとともに、津波堆積物の
断層位置を Google Maps 上に重ねて表示できるように
分布域や地殻変動量などの観察事実を定量的に説明で
システムを改修した。なお、断層破砕物質を用いた断層
きる断層・津波波源モデルを構築することによって、
活動性評価の研究については、諸事情により研究を一時
過去に発生した巨大な海溝型地震像を明らかにするこ
中断した。
とを目的として研究を進めた。実際に発生した過去の
[分
津波の履歴を解明し、シミュレーションで再現するこ
[キーワード]活断層、スケーリング、連動破壊、南部
野
名]地質
フォッサマグナ、データベース
とによって、今後の津波被害を予測し、津波防災に貢
献することを最終的な目標とした。
[テーマ題目2]海溝型地震の履歴と被害予測の研究
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目3、テーマ題目
[研究代表者]岡村
7、テーマ題目9、テーマ題目10、テーマ
行信
(海溝型地震履歴研究チーム)
題目11、テーマ題目14、テーマ題目15、テ
[研究担当者]岡村
ーマ題目16
(22)
行信、澤井
祐紀、宍倉
正展、
産業技術総合研究所
藤原
治、藤野
行谷
佑一、前杢
滋弘、木村
越後
智雄(地域地盤環境研究所)、
地震動予測に関する研究では、予測手法の高度化に関
治夫、
する研究と日本全国の堆積盆地における長周期地震動評
英明(広島大学)、
価研究を進めている。今年度は、秋田・酒田地域や新潟
地域の地質構造モデルの作成を進めるとともに、長周期
(常勤職員4名、他5名)
地震動評価におけるばらつきの成因と特徴を調べた。ま
[研 究 内 容]
海溝型地震は内陸型の地震に比較して発生頻度が高く、
た、作成した地盤構造モデルの数値データを公開すると
ともに、論文としてとりまとめた。
規模も大きい。さらに同じ場所で発生する地震の規模は
断層変位に伴う表層地盤の変位・変形予測の研究では、
一定でなく、まれに異常に規模の大きな地震となり、巨
大津波を発生させる。2004年のスマトラ沖地震はその例
2008年6月の岩手・宮城内陸地震を題材に、本震時に生
であるが、日本周辺海域でも同じような巨大津波が過去
じた断層上のすべりが地表面に形成したずれや変位の特
に発生したことが明らかになっている。このような海溝
徴を考察した。また、岩手・宮城内陸地震の地表変状を
型地震の多様性を明らかにし、その津波規模と今後の発
地上レーザー計測により詳細に記録した。
生時期を予測するため、外部予算も獲得しつつ日本の沿
[分
岸域、及び世界各地の沈み込み帯の調査を進めている。
[キーワード]強震動、長周期地震動、地盤構造モデル、
野
名]地質
地表変形、数値シミュレーション
本年度の調査研究は、北海道東部、南海トラフの他、日
本海沿岸域で実施した。
[分
野
[テーマ題目5]小型・可搬型長周期微動計の性能評価
名]地質
[キーワード]海溝型地震、津波堆積物、地殻変動、古
[研究代表者]堀川
地震、シミュレーション
[研究担当者]堀川
晴央
晴央、吉見
雅行、吉田
邦一、
横井
勇(株式会社東京測振)、
[テーマ題目3]沿岸海域の地質情報整備
石田
雄治(株式会社東京測振)、
[研究代表者]岡村
行信
石井
誠寿(株式会社東京測振)
[研究担当者]岡村
行信、井上
(常勤職員2名、他4名)
卓彦(地質情報研究
部門)
、村上 文敏(地質情報研究部門)、
辻野
匠(地質情報研究部門)、
荒井
晃作(地質情報研究部門)
[研 究 内 容]
深部地盤構造探査の重要な手法の一つである微動探査
において、長周期地震動の評価に重要な周期3~10秒で
微動レベルが低下するために地震計の分解能が不足する
(常勤職員5名)
ことがある。本研究では、この問題点を克服しうる小
[研 究 内 容]
能登半島の北岸に沿った沿岸海域で高分解能音波探査
型・可搬型の長周期微動計として株式会社東京測振にお
と3次元サイドスキャンソナーを用いた地形・地質調査
いて開発された VSE-15D6が、件の長周期帯域におい
を行った。その結果、沿岸海域の海底地質層序はその沖
て十分な分解能を有していることを、野外観測において
合の海底地質図で立てられた層序がそのまま当てはまり、
実証することを目標としている。
当該地震計を用いて、日本各地で微動の測定を行った。
後期中新統の南志見沖層群と鮮新・更新統の輪島沖層群
とに区分でき、その間に顕著な不整合が認められること
産総研つくばセンターでは、既存の地震計と比較観測を
を確認した。また、海岸線に沿って沿岸海域に活断層が
行い、少なくとも周期5秒程度、条件がよければ8秒程度
断続的に発達することも、新たに明らかになった。また、
までは高いコヒーレンスを保つことを確認した。北海道
日本周辺海域の今までに取得した反射データをデータベ
石狩平野では、微動アレー観測を実施し、東京測振の従
ース化するシステムを構築した。
来型地震計 VSE-15D1よりも長周期側でより妥当な位
[分
相速度を推定できた。以上から、風などの影響に対する
野
名]地質
配慮が必要なものの、既存機種と比べ、長周期の微動を
[キーワード]海域活断層、沿岸海域地質情報、能登半
精度よく取得可能であることを実証できた。この他に、
島、データベース
北海道大学大学院工学研究科、秋田工業高等専門学校、
[テーマ題目4]地震災害予測の研究
京都大学防災研究所、鳥取大学工学部に委託して研究を
[研究代表者]堀川
晴央(地震被害予測研究チーム)
進めた。
[研究担当者]堀川
晴央、吉見
[分
(京都大学)、吉田
雅行、関口
邦一、安藤
春子
野
名]地質
[キーワード]長周期微動計、微動観測、長周期地震動
亮輔
(常勤職員3名、他2名)
[テーマ題目6]活断層の追加・補完調査
[研 究 内 容]
本研究は、地震による被害軽減を目指し、地震動予測、
断層運動に伴う地表変形に関する研究を実施している。
(23)
[研究代表者]吉岡
敏和
[研究担当者]吉岡
敏和、粟田
泰夫、杉山
雄一、
研
金田
平太郎、廣内
杉戸
信彦(名古屋大学)
究
究
大助(信州大学)、
[研究代表者]遠田
[研究担当者]遠田
(常勤職員4名、他2名)
晋次
晋次、丸山
正、近藤
(JSPS 特別研究員)、奥村
[研 究 内 容]
(広島大学)
、原口
本研究は、地震調査研究推進本部が定めた基盤的調査
三浦
観測対象断層帯について、新に対象に追加された断層帯、
久雄
晃史
強(大阪市立大学)、
大助(電力中央研究所)
(常勤職員2名、他4名)
およびこれまでの調査結果に基づく評価で将来活動確率
[研 究 内 容]
が十分絞り込めなかった断層帯について、追加・補完調
糸静中部横ずれ区間の釜無山断層群でトレンチ調査を
査を実施することを目的に、文部科学省からの委託を受
実施した。その結果、従来曖昧であった同断層群の最新
けて行われたものである。
平成20年度の調査対象断層帯は、新規追加断層帯とし
活動時期が約1200~1000年前に限定され、西暦762年も
て宮古島断層帯、補完調査対象断層帯として、増毛山地
しくは西暦841年の歴史地震に対応する可能性が高いこ
東縁断層帯、青森湾西岸断層帯、関東平野北西縁断層帯
とが明らかになった。また、最新活動に先行するイベン
(平井-櫛挽断層)、高山・大原断層帯(国府断層帯)、
トの時期から、中部横ずれ区間でも地震ごとに破壊区間
高山・大原断層帯(高山断層帯)、濃尾断層帯(揖斐川
が異なる可能性が示された。
断層)、濃尾断層帯(武儀川断層)の8断層帯である。こ
[分
のうち、増毛山地東縁断層帯は北海道立地質研究所に、
[キーワード]活断層、糸静線、活動履歴、歴史地震、
野
名]地質
破壊区間
宮古島断層帯は財団法人 地域 地盤 環境 研究所に、そ
れぞれ再委託して実施した。各断層帯において、断層の
[テーマ題目9]「宮城県沖地震における重点的調査観
位置・形状、活動度、過去の活動履歴等を明らかにする
測」地質調査・津波シミュレーション
ための調査を実施し、地震調査研究推進本部の活断層の
長期評価に貢献する資料が得られた。
[研究代表者]岡村
行信
[分
[研究担当者]岡村
行信、宍倉
野
名]地質
正展、田村
亨
(地質情報研究部門)、
[キーワード]活断層、追加・補完調査、長期評価、文
部科学省、地震調査研究推進本部
渡辺
和明(地質調査情報センター)、
藤野
滋弘、澤井
祐紀、木村
治夫
(常勤職員5名、他2名)
[テーマ題目7]津波波源モデルの精度向上に関する研
[研 究 内 容]
究
[研究代表者]佐竹
健治(東京大学)
[研究担当者]佐竹
健治、行谷
佑一、谷岡
西暦869年に仙台平野を襲った貞観の津波の発生間隔、
規模、津波波源域を推定するため、地形・地質データか
勇市郎
ら津波波源モデルの構築を目的とした調査を実施してい
(北海道大学)(他3名)
る。本年度は、仙台平野南部で地中レーダー(GPR)
[研 究 内 容]
津波波源モデルの精度向上を目指すため、津波の観測
探査とハンディジオスライサーを用いた掘削調査を行っ
波形を基に地盤の非一様な隆起・沈降量分布を推定する
た。GPR 探査は、亘理町および山元町の合計2カ所でそ
波形インバージョン手法を検討した。この解析手法を用
れぞれ海岸から内陸へ直交する方向へ1 km 余りの測線
いて、2007年新潟県中越沖地震の隆起・沈降量分布を推
を設定し、周波数100 MHz、発信間隔25 cm で行った。
定した。解析に使用した波形は、波源域を取り囲む11箇
得られたデータを解析し、地下構造のイメージングを行
所の検潮所で観測された津波波形(検潮所応答特性補正
った結果、山元町の測線において急激な隆起とその後の
済み)を用いた。その結果、波源域の北部と南部に隆起
緩やかな沈降を示唆する構造が見られた。その地点を中
のピークが存在し、それぞれ30 cm 弱および60 cm 弱
心に、ハンディジオスライサーによる深度1.5 m まで
の隆起量と推定された。このほか、強震動データや、
の柱状試料を合計8本採取した。得られた柱状試料につ
GPS、InSAR データなどから推定された、既往研究に
いては、堆積構造の観察と剥ぎ取り試料の採取、年代測
よる同地震の震源モデルを用いて津波伝播計算を行い、
定用の試料の採取を行った。
観測された津波波形との整合性を調べた。
[分
[分
[キーワード]貞観津波、地中レーダー、地殻変動、仙
野
名]地質
[キーワード]新潟県中越沖地震、津波シミュレーショ
野
名]地質
台平野
ン、津波観測、地殻変動
[テーマ題目10]ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究
[テーマ題目8]糸静線活断層帯におけるより詳しい地
[研究代表者]岡村
行信
震活動履歴解明のための史料地震学的研
[研究担当者]木村
治夫、岡村
(24)
行信
産業技術総合研究所
研究
(常勤職員1名、他1名)
[研究代表者]杉山
雄一
1964年新潟地震(Ms=7.5)は、日本海東縁のひずみ
[研究担当者]杉山
雄一、奥村
集中帯である新潟県粟島周辺海域を震源域として発生し
八木
[研 究 内 容]
晃史(広島大学)、
浩司(山形大学)、前杢
英明
(広島大学)(常勤職員1名、他3名)
た。震源域を含む粟島周辺海域では、旧地質調査所が海
洋地質図を作成するための海底下深度1 km 程度までを
[研 究 内 容]
対象とした数多くのシングルチャネル音波探査を行って
インド北部の都市デリーの北方には地震空白域が存在
いるが、粟島周辺海域の海底活断層及びその周辺の海底
し、近未来における M~8クラスの大地震の発生が危惧
地質構造のさらに詳細な情報を取得するため、海底下深
されている。本研究は、地震ハザード予測の研究が進ん
度100 m 程度までの浅層地下地質構造を詳細にイメー
でいる日本とまだ十分ではないインドとが、両国の大規
ジングできるブーマーを音源とする浅層高分解能音波探
模内陸地震の空白域に関する共同研究を通じて、必要な
査を東西9測線・南北2測線の総測線長240 km にわたっ
研究技術の移転を図ることを目的とする。
て実施した。得られた音波断面には、東翼が急傾斜で西
最終年度に当たる本年度には、インド側の予算執行が
翼が緩傾斜である非対称な数列の北北東-南南西走向の
認められ、共同研究相手であるワディアヒマラヤ地質学
断面形状を持つ活動的背斜構造が認められ、西傾斜の断
研 究 所 の George Philip 氏 と Narayanapanicker
層の上盤に形成された断層関連褶曲であると解釈した。
Suresh 氏が2008年11月に約3週間日本(主としてつく
それらは最終氷期の浸食面に変形を与えていることも確
ば市)に滞在した。その間に、岩手・宮城内陸地震に伴
認した。
う地震断層と糸魚川-静岡構造線活断層帯のトレンチ調
[分
野
査地点を訪れ、地震イベント認定の方法などについて日
名]地質
本人研究者と議論を深めた。また、つくば市内で開催さ
[キーワード]ひずみ集中帯、新潟地震、粟島、高分解
れたアジア国際地震学連合総会・日本地震学会秋季大会
能音波探査
合同大会に参加し、最新の研究動向の調査を行った。3
[テーマ題目11]二国間交流事業共同研究・セミナー
月には杉山と奥村がワディアヒマラヤ地質学研究所を訪
西スマトラ海岸及び陸上における古地震
れ、ヒマラヤ前縁地域の今後の活断層調査・評価方法並
学の研究
びに地震ハザード予測への貢献について議論し、引き続
[研究代表者]粟田
泰夫
[研究担当者]粟田
泰夫、藤野
き情報交換を続けて行くことを約束した。
[分
滋弘
野
名]地質
[キーワード]活断層、空白域、地震ハザード、ヒマラ
(常勤職員1名、他1名)
ヤ、インド
[研 究 内 容]
インドネシアにおける地震・津波災害の長期的予測の
[テーマ題目13]活断層帯におけるセグメンテーション
研究を推進するために、プレート境界型巨大地震の発生
と最大地震規模の推定
が危惧されているスマトラ島西岸の古地震と、社会的に
重要なジャワ島およびスマトラ島の活断層における古地
[研究代表者]粟田
震の履歴について地質・地形学的調査を実施し、地震お
[研究担当者]粟田 泰夫、加瀬
泰夫
祐子、近藤
よび津波災害の長期予測の可能性を探ることを目的とし
(JSPS 特別研究員)
て、インドネシア科学院(LIPI)との共同研究を実施
(常勤職員2名、他1名)
している。本年度は、Sumatra 断層系中部の西スマト
久雄
[研 究 内 容]
ラ州で2007年3月に発生した一連の中規模地震に伴う長
本研究は、原子力安全基盤機構における新しい震源断
さ約60 km の地震断層をマッピングするとともに、そ
層の調査手法を検討することを目的とした事業の中にお
の南部セグメントで人力掘削によるトレンチ調査および
いて、応用地質(株)が実施した内陸の活断層調査に基
ハンド・ボーリング調査を実施した。これらの古地震調
づく震源断層評価手法の検討の一環として、一部範囲の
査の結果からは、同セグメントは約2千年前以降に少な
業務について役務委託を受けて実施している。本研究で
くとも3回以上活動していることが推定できた。
は、様々な規模・形状の不連続部を介して連なる断層が
[分
連動破壊する可能性について、地質学的データと物理学
野
名]地質
[キーワード]活断層、古地震、地震断層、スマトラ断
的な理論・シミュレーションの融合を通じた検討を行っ
層、インドネシア
た。
地質学的データの検討においては、地形学的手法によ
[テーマ題目12]二国間交流事業協同研究・セミナー
る活断層の認知度と地震時の変位量分布の関係を調査し
内陸大地震の空白域における地震ハザー
た。異なる精度の地形データを用いた複数の判読例を比
ド予測のための活断層詳細情報に関する
較した結果、活断層の認知度の違いは地震時の変位量分
(25)
研
究
布と良く対応することが判明した。また、長さ200 km
盆地での後期更新世以降の地殻変動の検出と、3次元の
程度以上の長大地震断層および長さ10 km 以下の小規
地質構造から地下の断層形状の推定手法を検討した。
模地震断層におけるスケーリング則とセグメント区分を
[分
検討するために、既存資料を収集して変位量分布に関す
[キーワード]伏在断層、航空レーザー測量、地形解析、
野
名]地質
岩手宮城内陸地震、横手盆地、宮城県北
るデータを整理した。
部地震
断層破壊の動力学的シミュレーションにおいては、平
行な2つの主セグメントが走向の異なる短い副セグメン
トで結ばれている屈曲した断層系モデルについて、
[テーマ題目15]歴史・地質・地球物理学的アプローチ
Kase and Day(2006)の差分法を用いた数値計算を実
が明らかにする想定東海地震震源域の地
施した。その結果、主セグメントと副セグメントの走向
殻変動履歴
差が小さい場合は、破壊は屈曲の影響をほとんど受けず
[研究代表者]藤原
治
に滑らかに伝播し、応力降下量やすべりの向きが異なる
[研究担当者]藤原
治、宍倉
正展、矢田
俊文
ことにより最終すべり量は3つのピークを持った。さら
(新潟大学)、熊谷
博之(防災科学技
に、走向差が大きくなるに従って副セグメントでの深部
術研究所)、海津
正倫(名古屋大学)、
での破壊伝播が困難となり、ついには副セグメントの内
小野
部で破壊が停止する傾向が認められた。また、圧縮性屈
(常勤職員3名、他4名)
映介(新潟大学)、佐竹
健治
[研 究 内 容]
曲は伸張性屈曲に比べて破壊を伝播させやすいこと、破
壊が伝播しやすい屈曲では20°
、伝播しにくい屈曲でも
東海地域で発生した過去の巨大地震の断層モデルを構
10~15°
より緩い屈曲では破壊は停止しないことが見出
築することは、将来の地震やその災害の予測において重
された。
要である。そのため、東海地震の想定震源域に位置する
静岡県西部の海岸低地にて、歴史記録(絵図や古文書)
本研究の請負契約期間は2カ年度にまたがっており、
成果の取りまとめは平成21年度に行う。
や地層から地殻変動や津波の痕跡を検出し、過去に起こ
[分
った地震の時期や地殻変動の大きさを推定した。また、
野
名]地質
[キーワード]活断層、地震断層、セグメント、スケー
測量データから得られている地殻変動パターンも考慮に
リング則、断層破壊、動力学的シミュレ
入れて、安政東海地震および宝永地震の断層モデルを再
ーション
検討した。
[分
野
デル
高度化
[研究代表者]岡村
[研究担当者]岡村
名]地質
[キーワード]東海地震、歴史史料、地殻変動、震源モ
[テーマ題目14]変動地形に基づく伏在断層評価手法の
行信
行信、金田
由香里、丸山
吉見
雅行、松浦
平太郎、林
宮下
[テーマ題目16]海溝型地震とプレート内地震の連動履
舟、
正、遠田
晋次、
旅人、木村
治夫、
歴に関する地形地質学的研究
(常勤職員6名、他3名)
[研究代表者]宍倉
正展
[研究担当者]宍倉
正展、前杢
[研 究 内 容]
原子力発電所の安全審査をより信頼性の高いものにす
英明(広島大学)、
越後
智雄(地域地盤環境研究所)、
行谷
佑一(常勤職員1名、他3名)
[研 究 内 容]
るためには、地表で見えにくい断層も適切に評価する必
要がある。中でも、活動度が低い活断層については、専
南海トラフ沿いに発生する連動型地震の発生履歴を解
門家の間でも断層の有無について意見が分かれることが
明するため、和歌山県串本町の橋杭岩周辺に分布する漂
ある。本研究では、原子力安全基盤機構の請負研究とし
礫群について調査し、津波石の可能性について検討した。
て以下の研究を実施した。できるだけ客観的に活断層の
橋杭岩は石英班岩からなる貫入岩類が、差別浸食で周囲
有無を判定するため、航空レーザー測量による精密なデ
より高く直線上に残された岩礁列である。陸側に泥岩か
ジタル標高モデル(DEM)の活用方法を検討した。検
らなる波食棚が発達し、その上面に橋杭岩を給源とする
討したのは、活断層の判定のための効果的な DEM の密
石英班岩の巨礫が多数分布する。現地調査により漂礫の
度と表示方法、活断層の検知限界と地形の急峻さとの関
分布を把握し、橋杭岩からの距離や礫の大きさに関する
係、谷の屈曲の定量的な判定方法である。また、2008年
データを取得した。またいくつかの地点で漂礫に固着し
6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震は活断層が認め
た生物遺骸を採取し、年代測定を行った。さらに離水海
られていなかった場所で発生した。そこで、この地震に
岸地形の分布についても調査し、離水イベントと漂礫と
伴う地表変形の調査を実施し、その特性と過去の活動履
の関係について検討した。
歴や活動度の解明を試みた。さらに、出羽丘陵から横手
[分
(26)
野
名]地質
産業技術総合研究所
解像度20~1 m の衛星画像と SRTM-3地形データに
[キーワード]南海地震、潮岬、津波石、地殻変動
基づいて、モンゴルおよび周辺地域の活断層予察図を作
成した。対象地域は、モンゴルおよび中国内モンゴル自
[テーマ題目17]室内実験を用いたデータ同化手法の開
治区全域と天山山脈東部からバイカル湖周辺およびロシ
発
[研究代表者]安藤
亮輔
ア沿海州に及ぶ東西4000 km・南北1000~2000 km の
[研究担当者]安藤
亮輔(常勤職員1名)
範囲である。対象地域の全域について、活断層および活
断層の可能性があるリニアメントを抽出するとともに、
[研 究 内 容]
本研究は、実験室で固着滑り(スティック-スリップ)、
とくにモンゴル中~西部については第四紀後期の段丘・
すなわち模擬地震サイクルを発生させ、その現象に対し
扇状地面に変位を与えている断層を抽出して変位量を計
てデータ同化の手法を適用することで、模擬地震の発生
測した。
予測を行うことを目的としている。本年度は、研究開始
[分
初年度として、実験装置の立ち上げ準備、ならびにデー
[キーワード]活断層、衛星画像、モンゴル
野
名]地質
タ同化に使用する力学モデルの挙動を計算するためのシ
ミュレーションコードの開発を行った。データ取得は、
②【年齢軸生命工学研究センター】
歪み計、変位計に加えて、高速度カメラを設定し、準備
(Age Dimension Research Center)
(存続期間:2002.7.1~)
を進めている。シミュレーションコードに関しては、境
界積分方程式法を用いて、準静的過程と動的過程を統合
したフレームワークにおいて、ゆっくりとした応力の蓄
研 究 セ ン タ ー 長:倉地
幸徳
積過程と急激な地震時滑りという、閉じた地震サイクル
副研究センター長:西川
諭
を表現できるところまで開発が進んだ。
[分
野
所在地:つくば中央第6
名]地質
[キーワード]データ同化、室内実験、地震発生、シミ
ュレーション
人
員:6名(6名)
経
費:133,078千円(109,304千円)
概 要:
[テーマ題目18]活断層から発生する大地震の連動パタ
ーン解明の古地震学的研究
年齢は生命にとって本質的要素であり、加齢老化現
[研究代表者]近藤
久雄(JSPS 特別研究員)
象を始め、生活習慣病・老人病等、多くの疾患の危険
[研究担当者]近藤
久雄(他1名)
因子である。当センターの主要研究ミッションは、こ
[研 究 内 容]
れまで謎に包まれていた年齢軸恒常性(生誕から死に
本研究では、科学研究費補助金・特別研究員奨励費に
至るまでの健康な体の一生スパン変動の仕組み)と年
より、トルコ・北アナトリア断層を対象として過去の大
齢が疾患において果す重要な役割を分子レベルで解明
地震像を具体的に復元し、連動パターンの時空間変化を
する新研究分野の開拓と、応用技術開発基盤となる年
解明するための調査研究を実施している。平成20年度は
齢軸工学の開拓にある。我々は、これらの研究を通し
1942年地震を生じた断層区間を主な対象として、空中写
て少子高齢化が急速に進む我が国にあって健康寿命の
真判読、地表踏査、地形計測、ピット掘削調査を実施し
延長と産業社会活性の持続・増進に貢献を果たすこと
た。その結果、1942年地震と1668年の歴史地震の累積横
を目指す。
ずれ地形をみいだすことができ、前年度に推定された
特にこの30年、生命科学分野は、超微量試料の高速
1668年地震時の大きな地表変位が追認された。
解析技術とコンピューター/IT 技術の著しい進展と
以上の成果を商業誌月刊地球で速報的に公表した。
[分
野
あいまって、大きな跳躍を果たし、生命の統合的理解
名]地質
に向けた解析の試みさえ可能になった。これまでの
[キーワード]活断層、古地震、連動パターン、トルコ、
北アナトリア断層
個々の生体物質の機能・構造研究に加え、テーラーメ
ード医療の確立に向けた個人ゲノム多様性解析とファ
ーマコジェネティクス、遺伝子機能及び機能性 RNA
[テーマ題目19]衛星画像解析等によるモンゴルの活断
の解析、オミックス科学(プロテオミクスやグライコ
層と地震テクトニクスの研究
ミクス、メタボロミックス等など)、バイオインフォ
[研究代表者]粟田
泰夫
マティクス、システムバイオロジー、疾患診断マーカ
[研究担当者]粟田
泰夫、R. T. Walker(JSPS 外国
ー探索や再生医療等の、新規分野が隆盛を極めること
人特別研究員、Oxford 大学)
となった。
(常勤職員1名、他1名)
当センターは、生命の統合的理解にとって必須であ
[研 究 内 容]
りながら漸くその研究の幕が揚がったばかりの段階に
(27)
研
究
ある年齢軸恒常性の機序と年齢依存性疾患のより深化
る年齢軸工学の開発を進めてきた。更に、年齢軸恒常
した理解を目指すと共に、新知見の応用開発に向けた
性の統合的理解に向けて、マウスをモデルに肝臓の遺
研究を進めている。我々は先に、世界に先駆け最初の
伝子とタンパク質発現の年齢軸に沿った一生スパン変
年齢軸恒常性分子機構である ASE/AIE 型年齢軸遺伝
動の網羅的解析を進め、核と細胞質タンパク質の発現
子調節分子機構を発見した。更に最近、この機構がヒ
変動データベースの構築に加え、ミトコンドリア分画
ト疾患において作動している事を証明した。これは、
タンパク質の解析も達成した。これにより、肝タンパ
新しい研究分野、年齢軸恒常性とその機序の解明と応
ク質の統合したデータベースが確立される事となった。
用(年齢軸生命工学)、の基盤を確立するものであっ
更に、現在進めている雌マウスタンパク質発現の一生
た。この背景に立って、我々は更に年齢軸恒常性の調
スパン変動の網羅的解析の結果も近く加えられ、この
節を精査し、新たな年齢軸恒常性調節分子機構の同定
データベースリソースは老化をはじめ年齢軸依存性疾
と解明を目指すとともに、年齢軸恒常性の統合的理解
患の研究及び様々な応用技術開発研究にとって貴重な
に向けて、マウス肝臓の遺伝子とタンパク質の年齢軸
プラットフォームリソースとなる。また、疾患と年齢
に沿った発現変動プロファイルの網羅的解析を進め、
軸との関係を解明するために前立腺がんに於けるⅡ型
統合データベースの構築を達成したところである。こ
膜タンパク質分解酵素ヘプシンの機能解析を進め、ヘ
のデータベースは、加齢・老化現象や年齢依存性疾患
プシンが前立腺がんマーカー、PSA、生成機序に重
の基礎研究に加え、創薬や疾患マーカー探索などに有
要な役割を果たす事を証明した。これらの研究成果は、
用で、貢献するものであり、その管理および更新も重
年齢軸恒常性新研究分野の確立を目指す我々の研究に
要な業務である。
とって極めて重要なマイルストーンをなすものであり、
また、当センターでは、免疫及び脳機能等の生理反
加齢・老化、健康寿命の機序解明と年齢依存性の疾患
応系の年齢軸恒常性機序の解明および関連する疾患の
機序の解析、疾患のより効果的早期予防と治療法の開
発に強固な基盤を与える。
機序解明に向けた研究も展開している。
これらの研究活動を通して、我々は年齢が危険因子
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
として知られる循環器病などの生活習慣病や高齢者病
3、テーマ題目4、テーマ題目5、テーマ
の総合的理解を目指すとともに、年齢軸恒常性の新視
題目6
点から疾患の新規予防・治療法・治療薬技術等の開発
構造生物学チーム
を目指す年齢軸工学の開拓を進めていくものである。
---------------------------------------------------------------------------
(Structural Biology Team)
外部資金:
研究チーム長:山崎
文部科学省
和彦
(つくば中央第6)
科学研究費補助金 基盤研究(C)「CUT-
homeodomain 転写因子の DNA 結合におけるドメイン
概
要:
当研究センターのミッションは、生命現象の年齢軸
間相違と協同性」
恒常性とその分子機構の解明と、成人病・高齢者病の
生物系
予防・治療法の開発に貢献することである。分子機構
特定産業技術研究支援センター
平成20年度「イノベー
の解析、さらに解明された分子機構に基づき創薬等の
ション創出基礎的研究推進事業
技術シーズ開発型」
応用を進めるための重要なアプローチの1つとして、
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
「消化管免疫細胞の活性化と機能成熟機構の解明」
分子の立体構造解析による作用機構の原子レベルでの
発
解析法を用いた立体構造解析を柱とする構造生物学的
解明がある。当チームは、NMR 分光法及び X 線結晶
表:誌上発表10件、口頭発表25件、その他0件
---------------------------------------------------------------------------
研究を展開する。これにより、分子機能解明、その改
健康インフォマティクスチーム
変や分子認識のインターフェイスに結合する低分子の
(Health Bioinformatics Team)
選別などの研究を著しく効率化できる。初めて解明さ
研究チーム長:倉地
れた年齢軸恒常性分子機構に関与している遺伝子エレ
須美子
メント、ASE 及び AIE の認識と機能発現に関与する
(つくば中央第6)
概
要:
タンパク質・核酸相互作用や、免疫など加齢性疾患の
当研究チームの研究目標は、年齢軸恒常性調節分子
原因及び治療に関連する生命現象が主な研究領域とな
機構の統合的解明を行い、新知識の有効活用によって、
るが、現在急速に進展しつつあるプロテオミクス研究
急速に進む我が国高齢化社会の健康寿命延長に貢献す
から期待される新規の年齢軸調節機構関連因子、疾患
ることにある。この目標に向けて、我々は先に解明し
関連因子やセンター内の他のプロジェクトによって同
た最初の年齢軸恒常性機構である ASE/AIE 型年齢軸
定される新規因子も研究対象に組み入れ、センター・
遺伝子調節分子機構の精査を進め、応用技術基盤とな
ミッションに資するとともにセンター内の他のプロジ
(28)
産業技術総合研究所
研究テーマ:テーマ題目11、テーマ題目12、テーマ題目
ェクト発展に貢献する。
13、テーマ題目14、テーマ題目15
研究テーマ:テーマ題目7、テーマ題目8
--------------------------------------------------------------------------[テーマ題目1]年齢軸遺伝子調節分子機構のキー遺伝
エージディメンジョンチーム
(Age Dimension Team)
子エレメント ASE と AIE の結合タンパ
研究チーム長:西川
ク質の同定と機能解析(運営費交付金)
諭
[研究代表者]倉地
(つくば中央第6)
概
須美子
(健康インフォマティクスチーム)
要:
生命の本質的要素である時間、特に年齢とその軸に
[研究担当者]倉地
沿った恒常性と調節機構の理解は生命現象(生理反
小林
須美子、エミリン・ドゥボゼ、
幹子(招聘1名、他2名)
[研 究 内 容]
応)の統合した理解を深め、得られる新知識を応用技
年齢軸遺伝子発現安定化因子 ASE と年齢軸遺伝子発
術の開発に結実させていく上で極めて重要な新しい研
究視点である。当チームは、他チームと連携してこの
現上昇因子 AIE の結合核タンパク質の同定を完了した。
年齢軸恒常性視点を基盤に、多様な生命現象の研究を
ASE の同定及び機能/調節機構についてはトランスジ
通して研究推進を行うものである。具体的には、脳機
ェニックマウスや抗体バンドシフト手法等を駆使して精
能、特に学習機構に関して年齢軸の視点を踏まえ、そ
査を進め、トップ国際誌の一つに論文の掲載を果した。
の作用分子機序の詳細な解明を行うとともに特にアブ
さらに siRNA を用いた機能/調節機構を進めている。
タマーを用いて年齢依存性の高い疾患の新しい治療法
AIE については RNA バンドシフト手法や2次元電気泳
や診断マーカー探索を行う。又、年度を通し、脳機能
動法などを用いて同定した AIE 結合タンパク質の構造
以外の有意義な新しい分野への研究展開も必要とセン
と機能の関係解析を、抗体、siRNA、ノックアウト動
ターが認めた場合にはその受け皿チームとして機能し、
物の実験により精査した(論文作成中)。
積極的に研究展開を図る。
[分
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]年齢軸恒常性、遺伝子調節機構、ASE、
研究テーマ:テーマ題目9、テーマ題目10
AIE、結合タンパク質
免疫恒常性チーム
(Immune Homeostasis Team)
研究チーム長:古川
[テーマ題目2]マウス肝臓タンパク質の年齢軸に沿っ
た網羅的プロテオミクス解析(運営費交
功治
付金)
(つくば中央第6)
概
[研究代表者]倉地
要:
須美子
(健康インフォマティクスチーム)
免疫系は分子認識・応答制御・環境適応が連係した
精緻なシステムであり、生体恒常性維持の一翼を担う
[研究担当者]倉地
重要な生理反応系である。その中身は短時間・長時間
藤田
軸で常に変動しており、我々の日常の健康状態や疾患
須美子、タチアーナ・ボロトバ、
弥佳(招聘1名、他2名)
[研 究 内 容]
発症に深く係わる。一般に加齢は感染症発症のリスク
先に世界に先駆けて最初の年齢軸恒常性調節機構であ
ファクターと考えられる。しかし免疫関連疾患全般に
る ASE/AIE 年齢軸遺伝子調節分子機構を同定したが、
目を移すと、加齢が免疫システムの破綻に及ぼす影響
この基盤に立って、年齢軸恒常性調節機構の統合的解明
は必ずしも一方向的ではなく正負両方の場合がある。
を目指し、マウスをモデルに、その肝臓タンパク質の一
つまり免疫系が我々の健康状態に与える影響を一生ス
生スパン(1~24月齢)発現変動の網羅的プロテオミク
パンで理解するためには、分子認識から環境適応に至
ス解析を進めた。この解析では、二次元電気泳動により
るシステムの分子機構を解明するだけでなく、それら
タンパク質スポットを分離展開し、各スポットの定量を
のバランスと動的側面がどのような結果をもたらすか
行うと同時に質量分析によりタンパク質の同定を行った。
を説明し、予測できなければならない。常に適応し変
得られた膨大なデータから、一生スパンに亘るタンパク
化していく免疫系ではあるが、システムの方向性を決
質発現変動プロファイルを決定した。更に、得られた情
定する基本原理を構築することは重要である。本研究
報のデータベース化を達成した。同様に、肝臓の細胞質
チームは免疫系の中でも特に日常生活と密接に関係す
及びミトコンドリア画分タンパク質についても解析を行
る消化管免疫と獲得免疫応答の指標であるB細胞レパ
い、データベースを拡充した。これらの成果は、老化研
ートリー変動を対象として、免疫生物学・分子生物
究を始め、医薬品の評価、肝疾患の予防と治療法開発に
学・個体生理学・生化学等の技術を駆使した基礎研究
貢献すると期待される。
を行うとともに、応用技術開発も視野に入れた研究展
[分
開を行う。
[キーワード]網羅的肝タンパク質解析、プロテオミク
(29)
野
名]ライフサイエンス
研
究
[テーマ題目5]ヒトプラスミノーゲン遺伝子年齢軸発
ス、年齢軸発現変動、2次元電気泳動
現調節機構解明に向けた研究(運営費交
付金)
[テーマ題目3]マウス肝臓遺伝子発現の年齢軸に沿っ
[研究代表者]倉地
た網羅的解析(運営費交付金)
[研究代表者]倉地
(健康インフォマティクスチーム)
須美子
[研究担当者]倉地
(健康インフォマティクスチーム)
[研究担当者]倉地
須美子、吉沢
須美子
須美子、小林
幹子
(招聘1名、他1名)
明康
[研 究 内 容]
(招聘1名、他1名)
止血と血栓の均衡を保つ上で極めて重要な働きを担う
[研 究 内 容]
加齢・老化現象の全体像の理解に迫るために、肝遺伝
線溶系因子プラスミノーゲン遺伝子発現の年齢軸調節分
子発現の年齢軸に沿った網羅的解析が極めて有用な情報
子機構の解明に向けて、ヒトプラスミノーゲン遺伝子を
を 与 え る と 考 え ら れ る 。 我 々 は 、 マ ウ ス ( C57BL/
持つトランスジェニックマウス構築を行い、その観察を
6xSJL)1, 3, 6, 12, 18及び24ヶ月齢個体(雄)肝臓
行ってきた。年齢軸に沿った発現解析の結果、これらの
中における遺伝子発現を、Affymetrix GeneChip®マイ
マウスの血中プラスミノーゲン濃度は年齢軸で殆ど変化
クロアレイを用いて解析した。大多数のマウス肝遺伝子
が見られず、野性型プラスミノーゲン遺伝子の発現パタ
の発現は、一生に亘ってほぼ一定であるが、年齢と共に
ーンを再現するものとなった(安定型発現パターン)。
上昇、下降するもの、老年期特異的に上昇、下降するも
更に、変異体プラスミノーゲン遺伝子を持つトランスジ
のなど、基本的変動パターンを同定した。現在、年齢軸
ェニックマウス構築を完成させ、その発現解析を進めた。
の特定の段階で顕著な発現変動を示す遺伝子について、
これまで解明してきたものとは遺伝子エレメントの配置
バイオインフォマティクスを用いた解析を展開している。
が異なることなどから、年齢軸遺伝子調節の新規メカニ
これらの研究結果は肝タンパク質発現の年齢軸変動解析
ズムを持つ可能性が考えられる。また、高発現している
データとともに、年齢軸恒常性調節の統合的理解と加
マウスにおいて内出血による頭部膨隆、雌マウスの妊娠
齢・老化、年齢依存的疾患の理解に重要な貢献をするも
時における異常など特異的なトラブルが高頻度で観察さ
のである(論文作成中)。
れた。
[分
[分
野
名]ライフサイエンス
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]線溶系因子、プラスミノーゲン、年齢軸
[キーワード]網羅的年齢軸遺伝子発現、トランスクリ
遺伝子発現解析、マウスモデル
プトーム、マイクロアレイ、バイオイン
フォマティクス
[テーマ題目6]膜プロテアーゼ・ヘプシンの機能と前
立腺癌における役割の研究(運営費交付
[テーマ題目4]年齢軸生命工学開発(運営費交付金)
[研究代表者]倉地
金)
須美子
[研究代表者]倉地
(健康インフォマティクスチーム)
[研究担当者]倉地
須美子、小林
幹子
幸徳
(健康インフォマティクスチーム)
(招聘1名、他1名)
[研究担当者]倉地
[研 究 内 容]
幸徳、鹿本
泰生
(常勤職員2名)
ASE/AIE 型年齢軸遺伝子調節機構の原理解明ととも
[研 究 内 容]
にその応用技術開発を目指すが、ASE の機能汎普遍性
強い年齢依存性で知られる前立腺癌は、食物の欧米化
の証明を達成し、遺伝子治療分野で広く用いられる
や人口の高齢化に伴い、わが国でもその頻度は増加傾向
CMV ウイルスプロモーターを持つ遺伝子治療用導入ベ
にある。先に、共同研究において我々は膜プロテアー
クターの構築とトランスジェニックマウスによる検証も
ゼ・ヘプシンの発現がヒト前立腺癌初期段階で高くなり、
終了した。ASE のもう一つの機能である組織特異性に
早期診断マーカーとしての可能性を示した。この背景に
関する知見と共に理想的な遺伝子導入ベクター作成に向
立って、我々は、ヘプシンの前立腺癌における役割と年
けた研究を進めてきており、今年度は ASE と AIE に結
齢との関係を解明するためにその自然基質の同定及びそ
合して機能を発揮する核内タンパク質の同定も終了し、
の機能解析を進め、広く用いられている前立腺がんマー
応用技術開発の基盤を更に強固なものとした。
カー、PSA、の生成パスウェイの解明に成功した。こ
[分
の研究は前立腺癌におけるヘプシンの役割と機能、年齢
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]年齢軸遺伝子調節機構、年齢軸工学、遺
軸との関係理解に貢献するとともに、より優れた早期診
伝子導入ベクター、トランスジェニック
断マーカー開拓と新規治療薬開発にも大きな可能性を与
マウス
えるものである(現在論文投稿中)。肝臓や脳における
ヘプシン機能の解析も進めている。
(30)
産業技術総合研究所
[分
野
(エージディメンジョンチーム)
名]ライフサイエンス
[研究担当者]池本
[キーワード]ヘプシン、膜プロテアーゼ、前立腺癌、
光志(常勤職員1名)
[研 究 内 容]
早期診断マーカー
「記憶・学習」や「薬物依存」等の現象は、脳に於い
[テーマ題目7]遺伝子発現制御因子及び免疫系タンパ
て長期的な神経可塑性維持機構が成立することにより発
ク質の構造生物学的解析(運営費交付
現し、年齢に依存して変動する。本研究では、新規に同
金)
定した神経型グルタミン酸輸送体 EAAC1制御因子であ
[研究代表者]山崎
和彦(構造生物学チーム)
る addicsin ( ア デ ィ ク シ ン : 別 名 GTRAP3-18,
[研 究 内 容]山崎
和彦、山崎
JWA)等の神経可塑性維持因子に着目した年齢依存的
智子、舘野
賢
(常勤職員1名、他2名)
な恒常性機能の変化機構の解析を行い、てんかん等の
[研 究 内 容]
「脳神経機能障害」の発症機構の解明を目指す。本年度
遺伝子発現の年齢軸制御機構の原子レベルでの解明及
は、addicsin タンパク質動態が、細胞内酸化還元系、
び加齢性疾患の治療への応用を目的とし、関連する因子
特にグルタチオン生成系に及ぼす影響について検討を加
の立体構造解析を軸に、分子認識機構、機能調節機構の
えた。その結果、細胞内グルタチオン量は、addicsin
解明を目指す。今年度は、年齢軸恒常性分子機構に関与
タンパク質量の増加により有為に減少するとともに、
している遺伝子エレメント AIE に結合する調節因子と
PKC 活性化条件下で恒常的レベルに回復することを見
核酸の相互作用機構の解明へ向けて、複合体の大量調製
出した。一方、addicsin S18A 変異体タンパク質(PKC
を行い、結晶作成・回折測定を行った。同時に、NMR
モチーフ中に存在する18番目のセリン残基をアラニンに
による解析に向けて、安定同位体標識体を作成し、スペ
置換した変異体)では、細胞内グルタチオン量は、上述
クトル測定を行った。
のパターンとは異なり、PKC 活性化条件下では更に減
[分
少した。従って、addicsin タンパク質動態は、細胞内
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]年齢軸恒常性、遺伝子発現、タンパク
酸化還元系を直接的に制御する可能性が強く示唆された。
質・核酸相互作用、結晶解析
[分
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]addicsin、細胞内酸化還元系、グルタチ
[テーマ題目8]CUT-homeodomain 転写因子の DNA
オン、てんかん、神経可塑性
結合におけるドメイン間相違と協同性
(科学研究費補助金)
[研究代表者]山崎
和彦(構造生物学チーム)
[研究担当者]山崎
和彦、山崎
[テーマ題目10]新機能性核酸の創製とその利用系の開
発に関する研究(運営費交付金)
智子
[研究代表者]西川
(常勤職員1名、他1名)
諭
(エージディメンジョンチーム)
[研 究 内 容]
[研究担当者]西川
DNA 結合ドメインとして CUT ドメインとホメオド
諭、西川
富美子
(常勤職員1名、他1名)
メ イ ン を も つ 転 写 因 子 で あ る SATB1 タ ン パ ク 質 と
[研 究 内 容]
Cut/Cux/CDP タンパク質は、翻訳後修飾やプロテオリ
年齢軸にそって構造変化し病気を引き起こす、いわゆ
シスによる部分切断の結果、DNA 結合活性や認識配列
る「蛋白質のコンフォメーション病」の中でも特に脳に
が変化する。本研究はその仕組みについて、構造生物学
おいてよく見られる、たとえばプリオン蛋白質、ベータ
的手法によって詳細に解明することを目指す。今年度は、
アミロイドの診断・治療を目指し、それらの正常型と異
先ず、SATB1のホメオドメインの立体構造を多次元
常型蛋白質を識別するアプタマーの創出を行い、その利
NMR 法により決定し、DNA 認識の様式を明らかにし
用を図るとともに、それらの簡便な新規創出法を開発す
た。次に、CUT ドメインとホメオドメインの融合タン
ることを目指す。
パク質に対して NMR 解析を行い、全長タンパク質の認
前年度にウシプリオン蛋白質に対する RNA アプタマ
識コンセンサス配列に対して、両方のドメインが結合に
ーとして(GGA)4の繰り返し配列を特徴的にもつ新規
関わることを明らかにした。
アプタマーを獲得したが、今年度はその要素配列の各種
[分
変異体を作成し、生化学的ならびに CD や NMR による
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]遺伝子発現、DNA 配列特異的認識、
物理化学的解析から(GGA)4の繰り返し配列は「平行
NMR 分光法、結晶解析
型の G の4本鎖構造」をとることを明かした。さらにマ
イクロチップ電気泳動によるアプタマー相互作用解析シ
[テーマ題目9]年齢軸による神経可塑性変化の分子機
ステムにより、このアプタマーはダイマー構造を形成し
構に関する研究(運営費交付金)
[研究代表者]池本
てウシプリオン蛋白質に結合することを見いだした。さ
光志
らに詳細な立体構造ならびにプリオン蛋白質との相互作
(31)
研
究
バクテリオファージの表面に各種物理化学パラメータ
用様式を解析中である。
抗プリオン蛋白質アプタマーを用いてのプリオン蛋白
既知の抗体フラグメント(Fab)を発現させ、抗原親和
質の新規検出法ならびに希薄溶液からの濃縮方法の基盤
性を反映した選択が可能か精査した。ただし用いた
技術については引き続き、動薬検ならびに動衛研との共
Fab は抗原親和性が高いほど構造安定性が低い。一般
同研究により至適条件を検討している。
的なファージライブラリー作製法では抗体の構造安定性
[分
に依存した偏りのあるライブラリーとなる。このライブ
野
名]ライフサイエンス
ラリーをプレートによるバイオパニングに供しても抗原
[キーワード]アプタマー、プリオン蛋白質、インビト
親和性に依存したクローン選択はできなかった。我々は
ロ選択法、RNA 構造
ファージライブラリー作製法を最適化し、ライブラリー
[テーマ題目11]消化管免疫細胞の加齢による機能変動
内の偏りを改善した。これによりプレートによるバイオ
と食品・医薬品開発に関する研究(運営
パニングで構造安定性が高い低親和性クローンが選択さ
費交付金)
れにくくなったが、高親和性クローンの選別はできなか
[研究代表者]辻
典子(免疫恒常性チーム)
った。そこでビーズを用いたバイオパニングを行ったと
[研究担当者]辻
典子、小坂
ころ抗原親和性に準拠した抗原選択が可能になった
朱、
(Protein Expr. Purif. 2009)。
Emilyn Gaw Dubouzet
人工抗体ライブラリー作製・利用技術の高度化という
(常勤職員1名、他2名)
観点から、今回の技術は前年度の抗体フラグメントの大
[研 究 内 容]
消化管免疫研究の成果を医薬品や機能性食品の開発、
量取得法の確立と合わせ産業応用可能な基盤技術となり
予防医学や疾病の治療に活かすためには、各年齢層の
うる。そこで、より明確なアウトプットを創出するため
人々に対して適切な効果が得られるよう、年齢軸に沿っ
に本年度より企業との共同研究もスタートしている。
た消化管免疫細胞の特徴を理解することが重要である。
[分
これまで消化管パイエル板細胞において年齢とともに急
[キーワード]抗体、人工ライブラリー、親和性成熟
野
名]ライフサイエンス
減する CD19+CD11cloB220+細胞は免疫制御性 T 細胞の
[テーマ題目13]生体恒常性の維持に寄与する免疫修飾
機能成熟に重要であることを示してきたが、パイエル板
組織切片の免疫染色により、CD19
+
CD11cloB220 +細胞
物質の開発(共同研究)
は IL-10刺激のない状況下ではドーム辺縁部のみに観察
[研究代表者]辻
典子(免疫恒常性チーム)
され、T 細胞領域に存在しないことが明らかとなった。
[研究担当者]辻
典子、小坂
忠臣
(常勤職員1名、他3名)
同様の観察結果であり、制御性抗原提示細胞が T 細胞領
域に移動して免疫制御性 T 細胞を機能成熟させるため
に IL-10 シ グ ナ ル が 重 要 で あ る こ と 、 CD19
朱、
Emilyn Gaw Dubouzet、川島
また、経口免疫寛容の成立しない無菌マウスにおいても
[研 究 内 容]
+
加齢に伴う免疫機能(環境因子の認識機構)の減弱に
CD11cloB220 細胞の機能成熟には腸内細菌からの刺激
より、Th1型および炎症制御性機構が低下する。この研
による IL-10産生が必要であることが示唆された。
究では、Th1誘導に促進的に作用する消化管環境因子
[分
(微生物菌体成分等)を特定し、その免疫調節メカニズ
+
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]消化管免疫、経口免疫寛容、パイエル板、
ムを解明することを目的とした。乳酸菌由来二重鎖
RNA が抗原提示細胞の TLR3を介して認識され、IFN-
制御性 T 細胞、制御性抗原提示細胞
βの産生を増強することにより IL-12の高産生と Th1型
T 細胞応答(IFN-γ産生の増強)の連鎖を促進するこ
[テーマ題目12]免疫レパートリー変化の年齢軸依存性
とを示した。興味深いことに、このメカニズムは乳酸菌
解明(運営費交付金および共同研究)
[研究代表者]古川
[研究担当者]古川
久芳
功治(免疫恒常性チーム)
な ど 非 病 原 性 腸 内 細 菌 に 特 徴 的 で あ り 、 Listeria 、
功治、古川
Salmonella 等病原性細菌では観察されなかった。消化
安津子、
管免疫に有用なはたらきをするプロバイオティクスある
弘義(常勤職員1名、他2名)
いは腸内共生細菌が、生体防御機能と Th1免疫応答を
[研 究 内 容]
我々は B 細胞レパートリー変化の解析過程で得られ
増強させる免疫修飾メカニズムの一端が明らかとなった。
たレパートリー形成の原動力に関する知見を in vitro
加齢時の感染抵抗性増強などに活用していく。
で検証するための系を構築している。その一環としてバ
[分
クテリオファージを用いた人工抗体ライブラリーの構築
[キーワード]乳酸菌、プロバイオティクス、腸内共生
とクローン選択、そこからの抗体フラグメント取得法の
細菌、二重鎖 RNA、IFN-β、Th1免疫
開発を進めている。本年度は抗原親和性を正確に反映す
応答
るクローン選択法の開発を行った。
(32)
野
名]ライフサイエンス
産業技術総合研究所
り、アルツハイマー病発症の指標ともなる。血中に大量
[テーマ題目14]消化管免疫細胞の活性化と機能成熟機
に存在する SA を用いた老化診断は予防医療の初期ステ
構の解明(受託研究)
[研究代表者]辻
典子(免疫恒常性チーム)
ップとして広く適用可能である。また SA の糖化は糖尿
[研究担当者]辻
典子、小坂
病治療の指標としても用いることが可能であり、治療面
山崎
朱、閻
会敏、
にも貢献する。
元美(常勤職員1名、他3名)
[分
[研 究 内 容]
多糖類は C-タイプレクチンなどの自然免疫シグナル
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]老化マーカー、疾患マーカー、血清アル
ブミン、糖化
受容体を介して免疫細胞を活性化し、生体防御能および
免疫恒常性の維持に寄与していることが示唆されている。
多糖類が消化管免疫および全身性免疫のどのような細胞
③【デジタルヒューマン研究センター】
を活性化しうるかを明らかにするため、パイエル板、腸
(Digital Human Research Center)
間膜リンパ節、粘膜固有層および脾臓の樹状細胞群にお
(存続期間:2003.4.1~2010.3.31)
ける C-タイプレクチンの発現分布を解析した。また、
野生型マウスおよび C-タイプレクチン遺伝子欠損マウ
研 究 セ ン タ ー 長:金出
スの消化管免疫細胞を精査した。その結果、消化管臓器
副研究センター長(総括):松井
由来の CD11c 陽性細胞で dectin-1の発現が高いことが
副研究センター長:持丸
正明
明らかとなり、さらに dectin-1を欠損する消化管 T 細
上 席 研 究 員:河内
まき子
武雄
俊浩
胞では、野生型マウスの消化管 T 細胞に比して IL-10あ
るいは IFN-γを発現する T 細胞の比率が低くなってい
所在地:臨海副都心センター
るという結果を得た。これらの観察結果はパイエル板で
人
員:19名(18名)
最も顕著であり、dectin-1のリガンドであるβ− グルカ
経
費:540,504千円(164,106千円)
概
要:
ンが消化管免疫の賦活に有効であることが示唆された。
[分
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]C-タイプレクチン、多糖、自然免疫シ
「人間」はほとんどの産業システムおよび製品にと
グナル、消化管免疫、パイエル板
って、それを利用する対象として設計され、あるいは
またその性能を定める根本的な部品として、もっとも
[テーマ題目15]血清アルブミンによる老化・疾患診断
重要な要素である。例えば車は人を運び、人に運転さ
に関する研究(共同研究)
れる。しかし「人間」はこのようなシステムにおいて
[研究代表者]古川
功治(免疫恒常性チーム)
もっとも理解の進んでいない対象である。人工的に設
[研究担当者]古川
功治、齊藤
計・生産された部品では、その形状・構成・機能につ
桂吾、久芳
弘義
(常勤職員1名、他2名)
いて最先端の数学的・計算機的なモデルが開発されて
[研 究 内 容]
いる。しかるに遙かに複雑で洗練された人間の機能と
血清アルブミン(SA)は全血漿蛋白質の6割を占める
その行動に関するモデルはほとんど存在していない。
可溶性蛋白質で、様々な物質を吸着したり化学修飾を受
このような意味で人間はシステムの中で“もっとも弱
けることが知られている。これらの性質は生体内の恒常
いリンク”であると言える。デジタルヒューマン研究
性変化を反映することから、老化や疾病、さらには薬物
センターの目的はこのギャップを埋めることにある。
治療経過の指標として利用できる。しかしながら化学修
ここでは計算機上に人間の機能を実現し、それを利用
飾等の種類が膨大であることが災いし、診断マーカーと
して人間の機能と行動を記述・分析・シミュレート・
しての利便性を損ねている。老化・疾病等に共通する現
予測することを目的として、人間の計算機モデルを開
象を検出することが実利用上重要となる。
発していく。このような技術は人間に係わるありとあ
本研究では化学修飾に伴い起こる SA の高次構造変化
らゆるシステムを設計し運用する上で、より個人に適
に着目し、抗体による検出の可能性、老化・疾患マーカ
合させ、より簡単に使えるようになり、より調和的に
ーとしての実用性を精査していく。本課題は東京理科大
するために、重要になると考えている。
と共同研究であり、以下の進捗を得た。
デジタルヒューマンの3つのモデリング軸:人間は
数種類の抗ヒト SA 抗体(理科大既保有)のエピトー
多くの機能を持っている。デジタルヒューマン研究セ
プを決定した。これら抗体の抗原抗体反応の熱力学パラ
ンターではこれらを3つの軸として分類している。最
メータを精査し、高次構造変化を認識するクローンを同
初の軸は生理・解剖学的な機能である。生物として人
定した。このクローンが糖化型 SA を選択的に識別する
間の体は多くの構成要素・器官・循環器を制御してい
ことも示唆された。
る。生理・解剖学的な人間のモデルは形状・物質的特
SA の化学修飾、特に糖化は老人斑出現と並行してお
性・生理学的パラメータとそれらと内部的・外部的な
(33)
研
究
刺激との関係から記述されよう。次の軸は運動・機械
などの研究を進めている。平成20年度では人体形状や
的な機能である。人間は歩いたり走ったり、移動した
動作モデルの利用分野が製品設計だけでなく健康増進
り物を扱ったりする。運動・機械的な人間のモデルは
サービスにも展開した。第2は、人を見守るデジタル
人間の運動の機構的、動力学的、行動学的な分析によ
ヒューマンである。家庭やオフィス、病院などで活動
り記述される。最後は人間の感じ・考え・反応し・対
する人間の状態を、可能な限り人間にセンサを装着せ
話する機能である。認知・心理的な人間のモデルは人
ずに見守り、理解する研究である。超音波センサを天
間が外界の事象、他の人間、環境などに対する認識
井や壁面に取り付け、発信器を身体や製品に取り付け
的・心理的な行動を取り扱う。これらの3つの軸は当
て人間の行動を観測する技術を開発した。これを用い
然のことながら独立ではない。人間のデジタルヒュー
て屋内外での子どもの行動を観測し、事故予防につな
マンモデルはこれら3つの軸を統合することにより達
げる研究を展開している。第3は、人を支えるデジタ
成される。ただいかに深く関係があるとはいえ、人間
ルヒューマンである。音声や力覚提示技術を介して、
の構成と機能を研究するのに、例えば細胞や神経、遺
人間の行動、状態に即したサービスを提供し、人間の
伝子やタンパク質と言ったもっとも細かい構成要素か
行動を支える技術である。ヒューマノイドロボットや
ら積み上げなければならないわけではない。デジタル
三次元音場提示などの研究がこれにあたる。第4は、
ヒューマン研究センターの焦点は人間の機能そのもの、
人間の心理認知機能をモデル化し、人間の生理変化や
すなわち機能がどうなっていて、どのような時に発現
行動変化などから心理認知的な状態を知る研究=人を
し、どのように係わるか、という点にある。
知るデジタルヒューマン研究である。ウェアラブルセ
ンサから得られる加速度・熱流速などの情報から、人
デジタルヒューマンの3つの構成要素:計算機モデ
ルは人間の機能を記述する。これ以外に2つの技術が
間の心理状態変化を検出しうつ病予防に役立てる研究、
デジタルヒューマン研究とその応用に必要と考えてい
ヒューマンエラーを低減する研究などを進めている。
る。人間を実環境の場において、可能な限り人間を妨
第5はデジタルヒューマンモデルを可視化して、適合
げずに精密に計測する手法である。心理的な計測・モ
製品情報を効果的に提示して販売支援に役立てたり、
ーションキャプチャによる運動計測・形状計測・表情
事故情報を提示して安全教育に役立てるというシナリ
分析などがこれに相当する。デジタルヒューマンモデ
オに基づく、人に見せるデジタルヒューマン研究であ
ルを利用する応用分野においては、このような観測技
る。人間の形態、運動、感覚、行動などの諸機能を可
術は計算機モデルを駆動するための入力となる。計算
視化するためのコンピュータグラフィクス基盤技術を
機上の仮想人間が実世界の人間と対話する際には、人
研究する。特に、人体運動データベースに基づいて多
間の表情やジェスチャーを理解する観測技術が必要に
様な人体運動を簡便に合成し、販売支援コンテンツや
なる。反対に仮想人間の出力は音声や視覚的、力覚提
教育コンテンツを自在に制作するための研究を中心に
示装置などの提示技術が重要になる。われわれは三次
進める。
元音場、三次元グラフィック技術、力覚提示装置から
---------------------------------------------------------------------------
ヒューマノイドロボットを提示技術の対象として研究
外部資金:
している。これら観測、モデリング、提示技術の3つ
経済産業省
がデジタルヒューマン研究の3つの構成要素となる。
築事業」
中小企業支援調査「安全知識循環型社会構
デジタルヒューマンの5つの研究分野:人間の機能
は個人や状態、文脈に依存し、その発現メカニズムの
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
戦
多くは複雑かつ深遠で、科学的に解明されていない。
略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト「ロボット
ただし、産業応用を想定した場合、必要な人間機能が
搬送システム(サービス ロボット分野)、全方向移動自
十分な精度で再現できれば有用なデジタルヒューマン
律搬送ロボット開発」
となる。必ずしも、人間機能が完璧かつ精緻に再現で
きなくても良い。そこで、デジタルヒューマン研究セ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ンターでは、具体的な産業応用シナリオを設定し、そ
「インテリジェント手術機器研究開発」
れを解決しながら、徐々に統合的なデジタルヒューマ
ンモデルを構成していくアプローチを取る。5つの応
文部科学省
科学研究費補助金「ウェアラブルセンサに
用シナリオを描いている。第1は、人に合わせるデジ
よる睡眠の質評価システムの開発とうつ病の早期発見へ
タルヒューマンで、人間の形状、運動、感覚、感性の
の応用」
個人差、状態差、時間変化をモデル化し、それに適合
するように製品の形状や機能を設計する研究である。
文部科学省
人体形状モデルに基づく着装品の設計、手のモデルに
ラブル計測によるストレス被爆量の推定」
基づく製品設計、全身動作モデルに基づく自動車設計
(34)
科学研究費補助金「“息づかい”のウェア
産業技術総合研究所
文部科学省
人間適合設計チーム
科学研究費補助金「モールディングインソ
(Human Centered Design Team)
ールによる歩行案定化メカニズムの解明」
研究チーム長:持丸
文部科学省
正明
(臨海副都心センター)
科学研究費補助金「金融市場の執行分析の
概
ための経済情報抽出と行動が市場へ及ぼす影響評価に関
要:
人間に適合する機器・装着品を設計・製造・販売す
する研究」
る計算機援用技術の確立を目的とし、生理解剖因子-
社会技術研究開発事業
運動機械因子-心理認知因子の3つの軸を相互に絡め
「虐待などの意図的傷害予防のための情報収集技術及び
ながら、人間の機能を計算機上の数学モデルとして再
活用技術」
現する研究を行う。人間の解剖構造・形態・運動・
独立行政法人科学技術振興機構
力・感覚の計測技術とデータベース、それらをモデル
戦略的創造研究推進事
化して機器や装着品の CAD モデルとの相互作用を、
業「実時間並列ディペンタブル OS とその分散ネットワ
計算機上で仮想評価する技術、モデル化した人体形態
ークの研究」
や運動を CG や実体模型として提示する技術を一貫し
独立行政法人科学技術振興機構
て研究する。研究スタイルは、Application Driven
戦略的創造研究推進事
とし、企業との共同研究を中心とした具体的な問題解
業「事故予防のための日常行動センシングおよび計算論
決を例に、科学的・工学的立脚点からデジタルヒュー
の基盤技術」
マンの研究を進めていく。研究成果を社会的にインパ
独立行政法人科学技術振興機構
クトのある形で発信するまでの、完結した、ストーリ
独立行政法人科学技術振興機構
ー性のある研究を目指す。
戦略的創造研究推進事
業「ヒューマノイドロボットの分散制御系の研究」
研究テーマ: テーマ題目2、テーマ題目3
社団法人人間生活工学研究センター
人間行動理解チーム
機械工業の環境・
安全対策に関する調査研究等補助事業「人体損傷状況の
(Human Activity Understanding Team)
可視化シミュレーション技術の調査及び安全性向上のた
研究チーム長:西田
概
発
佳史
(臨海副都心センター)
めの設計方策に関する提言」
要:
ユビキタス技術を用いた全空間的物理現象センシン
表:誌上発表104件、口頭発表145件、その他4件
---------------------------------------------------------------------------
グ技術と、インターネット技術を用いた世界的社会現
人間モデリングチーム
象センシング技術、という全く新しいタイプの2つの
(Human Modeling Team)
研究チーム長:松井
センシング技術が利用可能になっている。こうしたセ
俊浩、中田
ンシング技術を背景として、新しい人間情報処理科学
亨
が始まりつつある。人間行動理解チームの大きな目的
(臨海副都心センター)
概
要:
は、ユビキタス型・インターネット型センシング技術
デジタルヒューマンモデルの基礎となる人間の認
を人間活動の観察技術へと応用することで、これまで
知・思考機能と生理心理機能のモデル化を研究する。
困難であった人間行動の定量化技術、得られた定量的
認知・思考のメカニズムを明らかにするため、作業に
データによって可能となる人間行動のメゾスコーピッ
おける人間行動とヒューマンエラーに注目し、建設業
クな計算論(脳還元主義的計算論に比して)の構築技
やオフィス環境等の就労場面でのミスに関する実地調
術、安心で安全な日常生活を支援する技術の3技術の
査を行い、そのデータに基づき作業員の作業信頼性や
基盤技術を創出することにある。人間行動理解チーム
エラー発生のモデル化を進め、安全対策の考案に貢献
は、究極目標を実現するための短期・中期的目標とし
する。生理心理機能の研究では、数ヶ月スパンの長時
て、日常生活環境において無拘束に人の行動を観察す
間連続計測を行い、生活者としての人間の生理心理状
る技術、観察された行動データから人の行動モデル
態をモデルとして表し、健康とはデータの上では何で
(デジタルヒューマン)を用いてその人の状態を解
あるかを明らかにする。特に生理量と心理・精神状態
析・推定する行動理解技術、推定結果に基づいて日常
との関連分析に重点を置く。一般人の健康管理のため
生活環境を制御することで、危険防止、事故の早期発
の技術的基盤として応用を計る。
見、生活向上支援などを行う行動活用技術を開発する。
また、これら開発した人間行動観察・解析・活用技術
研究テーマ:テーマ題目1
の3技術を、医療/福祉分野・育児分野・金融分野・
サービス分野・教育分野などの分野へ、要素モジュー
(35)
研
究
ルとして、統合システムとして、または、社会システ
変換技術、プログラム開発基盤技術などを手がけ、人
ムとして応用することを通じて「人を見守るデジタル
間に関わる映像表現の新たな地平を切り開いていく。
ヒューマン技術」を具体的に構築・検証し、新しい産
研究テーマ:テーマ題目6、テーマ題目7、テーマ題目
8
業の創出を行なう。
---------------------------------------------------------------------------
研究テーマ:テーマ題目4
[テーマ題目1]人間ボディリンガル-生理量と行動か
ら心理と認知を読み取る
ヒューマノイドインタラクションチーム
(Humanoid Interaction Team)
[研究代表者]松井
研究チーム長:加賀美
[研究担当者]松井
聡
三輪
(臨海副都心センター)
概
俊浩(人間モデリングチーム)
俊浩、中田
亨、酒井
健作、
洋靖、
要:
Edwardo Arata Y. Murakami、
将来ロボットが人間の身近で作業することを可能に
中島
正人(常勤職員4名、他2名)
[研 究 内 容]
する要素技術として、ロボットの自律性と対人機能の
向上を目指して研究を進めている。どちらの要素もモ
血圧や脈拍などの生理量や、人間の動作など、外的に
ーションメカニカルなデジタルヒューマンモデルが重
計ることができる量から、人間の内面を推定する技術を
要となる。このために、1)ヒューマノイドロボット
研究する。①建設業における事故リスクに関する認知的
の動力学モデルに基づく歩行制御の研究、2)ロボッ
乖離:建設作業員の行動の実態を160名以上に対する調
トの自律計画機能、車輪型ロボットでの移動のための
査や現場観察によって調べ、事故リスクへの主観的な見
自律機能、3)ヒューマノイドの実時間分散情報処理、
積もりと、実際の危険量との乖離を調べ、油断の様態を
4)人の二足歩行のデジタルヒューマンモデル、5)視
明らかにした。これに基づいて安全指導の改善策を考案
覚と聴覚による対人インタラクション機能、6)自律
した。②事務作業におけるヒューマンエラー:事務系企
ロボットのための Mixed-Reality を利用した開発環
業における、作業員の事務ミスのメカニズムを、仕事の
境。の研究を行っている。これらの各項目の研究を通
複雑さ、道具の使いやすさ、マニュアルの便利さ、各作
じて、「人を支えるデジタルヒューマン技術」を実証
業員の熟練度に還元してモデル化した。初心者にも簡単
的に研究開発してゆく。
で確実に仕事ができるように、仕事の簡素化や道具の改
研究テーマ:テーマ題目5
良をモデルに基づき行ない、現場に導入した。③操縦作
業のマルチモーダルモデル:人間の操縦技能のモデル化
人間情報可視化チーム
の研究の一環として、触覚および視覚の複数入力を手が
(Human Data Visualization Team)
かりとして、挙動が未知の機械を操縦する場合の、人間
研究チーム長:栗山
の制御則を実験で計測しモデル化した。④睡眠時の生理
繁
量とメンタル状態の相関の研究:うつ病の兆候を睡眠状
(臨海副都心センター)
概
要:
態から察知するための技術の開発を目指して、健常者6
計測し分析された人間の諸特性を示すデータは多次
名とうつ病患者2名との睡眠の質の違いを、200日以上に
元の数値データであることが多く、そこに潜む意味を
わたりウエアラブルセンサを用いて長時間計測した。結
読み取り理解するためには、人間が最も多くの情報量
果として、うつ病患者は睡眠の深さの変動が比較的小さ
を一度に取り込める、視覚機能に対する情報提示技術
いことが分かり、これがうつ病兆候を知るの手がかりと
が重要となる。人間情報可視化チームの目的は、人間
なりえることが示された。⑤手術下の患者の息づかいと
の形状、運動、及び行動特性などを、様々な変数(性
ストレス被爆の研究:痛みや不快感を感じる部分麻酔下
別、年齢、体力、操作物体の形状、生活環境等)の条
の手術での、患者のストレス被爆と生理量変化の関係を、
件下で直観的に把握するための、コンピュータグラフ
ベイジアンネット手法によって分析した。息の緩急から
ィックスおよびコンピュータビジョンを中心とする技
血圧変動を予測する確率モデルを開発した。
術を開発することにある。これは、観察者がデータに
[分
内在する特徴やパターンなどを把握・理解しやすくす
[キーワード]人間工学、メンタルヘルス、ヒューマン
野
名]情報通信・エレクトロニクス
エラー、安全工学、医用工学
るためのデータ変換技術を含む、いわゆる「ビジュア
ルデータマイニング」の技術を人間情報に特化して洗
[テーマ題目2]人体形状・変形モデリングと産業応用
練し、適用させていくことである。
研究内容の性格上、他の研究チームや研究分野との
の研究(運営費交付金+科研費+産業技
連携を重視し、ユーザの視点に立った対話モデルの構
術研究開発委託費+受託研究費、資金提
供型共同研究)
築と、事例ベースの技術開発を行う。さらには、デジ
[研究代表者]持丸
タルコンテンツへの応用を見据えた計測技術、データ
(36)
正明
産業技術総合研究所
製品をコンピュータ上で設計するだけでなく、設計時
(デジタルヒューマン研究センター)
[研究担当者]持丸
正明、河内
まき子、木村
森田
孝男、土肥
麻佐子
に強度計算やコスト予測、あるいは部品の調達予測など
誠、
を、実物の試作をできるだけ作らずに行う「デジタルモ
ックアップ」というコンピュータ支援技術が進んでいる。
(常勤職員4名、他1名)
ところが、実際にユーザの使い勝手を評価しようとする
[研 究 内 容]
店舗などで個人の人間特性を計測し、それに適合する
と、デジタル化された製品モデルを実体のモックアップ
着装品を設計する、あるいは、既存製品の中から適合す
にして、それを実際の人間に使わせ、人間特性を実測・
るものを推奨するサービスを支援するための、人間計測
評価するステップが必要になる。これではデジタルモッ
技術・人間機能モデル化技術・適合商品推奨技術の研究
クアップの意味がない。そこで、人間機能をデジタル化
を行う。また、このようなサービスを通じて人間機能デ
して、コンピュータの中に再現し、人間適合性を仮想評
ータを大量に蓄積し、再利用するための統計処理技術、
価する CAE ツールが提案されてきた。すでに市販ソフ
検索技術、製品設計応用研究を行う。人体表面形状、運
トウェアが自動車会社や航空機会社などで設計に活用さ
動中の変形特性、触覚や圧迫感の感覚特性、感性特性に
れ始めている。さまざまな全身体型を再現でき、寸法適
着目し、これらの機能の個人差を再現しうる計算論的モ
合性などを設計段階で評価できる。次世代のコンピュー
デルの研究を行った。(1) 人体形状モデル:体形の相同
タマネキンのために、自動車会社・住宅会社・ソフトウ
モデリング・統計処理技術を企業・大学へライセンシン
ェア会社12社からなるコンソーシアムを立ち上げて検討
グし、着装品設計、健康サービスにおける体形変化シミ
した結果、3つの研究開発課題に取り組むこととした。
ュレーションへの応用を実現した。(2) 動的変形計測:
(1) 機能寸法の正確な再現:姿勢を変更したときの手先
カメラ・プロジェクターシステムによる多視点計測で運
位置など機能寸法を再現できる機能的関節中心位置をモ
動中の足の全体形状の変形を200 Hz、精度0.5 mm で
ーションキャプチャデータから計算する技術を確立し、
計測する技術を開発した。また、多点マーカ+モーショ
その技術を用いて日本人男性20名の全身関節中心を計測
ンキャプチャにより全身形状の変形を200 Hz で計測す
し、日本人体形を統計的に代表し、機能寸法を再現する
る技術を開発した。前者はシューズ、後者はスポーツウ
関節中心モデルを構築した。(2) 運動の自動生成:乗降
ェアに適用された。(3) 感性モデル:メガネをかけたと
運動データを運動類似度に基づいてマッピングし、それ
きの印象を予測する技術を、体形の印象予測に拡張し
を参照・補間することで任意の設計寸法に応じた乗車運
(1)で開発した体形変化シミュレーションの結果から体
動を生成する手法を開発した。ライブラリ化して共同研
形の印象得点を計算する技術を開発した。(4) 人体特性
究先の CAD システムへの組込みに協力した。(3) 詳細
データベース:センターで独自に収集したデータだけで
な手の機能再現:ペーパシートスキャナで取得した手の
なく、着装品ビジネスや健康サービスを通じて実社会で
画像から精度良く各部寸法を取得するソフトウェア、手
持続・分散的に蓄積される人体特性データベースの信頼
の操作姿勢を計測して CG 再現する技術を開発した。さ
性検証・検索互換性確保に関する研究を行った。特に同
らに、蓄積した製品操作姿勢データを補間して、さまざ
センターの競争力が強い人体寸法・形状データについて、
まな操作姿勢を予測する技術を開発し、ステアリングス
信頼性(計測精度・再現性)評価技術を開発し、ISO
イッチ操作に適用した。指先については、さらに詳細な
や国際的なフォーラムを通じて標準的な方法として提案
有限要素モデルを構築し、指先の摩擦と変形挙動を再現
するとともに、健康診断時の腹囲計測に形状計測装置が
した。医用画像から個人の有限要素モデルを効率的に生
利用される場合の信頼性評価技術を業界標準案としてと
成する技術を開発し、その技術を用いて50名の指先医用
りまとめた。さらに、データ検索用の共通コード体系
画像から有限要素モデルを生成して統計処理することで、
(ICAM)を提案した。
日本人を統計的に代表する指先モデルを構成した。これ
[分
らの全身モデルおよび手の詳細モデルを統合したソフト
野
名]情報通信
ウェア「Dhaiba」を継続開発した。
[キーワード]人体形状、人間計測、感性工学
[分
野
名]情報通信
[キーワード]人間工学、デジタル設計、デジタルヒュ
[テーマ題目3]製品設計用ヒューマンシミュレータの
ーマン
研究(運営費交付金+科研費+資金提供
型共同研究)
[研究代表者]持丸
[テーマ題目4]人間行動センシングとモデル化の研究
正明
(運営費交付 金+科学技術 振興機構
(デジタルヒューマン研究センター)
[研究担当者]持丸
正明、河内
まき子、
宮田
なつき、多田
充徳、川地
青木
慶(常勤職員5名、他1名)
CREST+科学技術振興機構 RISTEX+
克明、
[研 究 内 容]
(37)
企業等と共同研究)
[研究代表者]西田
佳史(人間行動理解チーム)
[研究担当者]西田
佳史、堀
俊夫、本村
陽一、
研
和泉
潔、北村
掛札
逸美、山中
光司、奈良
究
した。1,320件ダウンロードされ、3,413件の検索が行わ
温、
龍宏
れた。また、公開ソフトは、日本経済新聞、朝日小学生
(常勤職員5名、他3名)
新聞、NHK ニュース、日本消費経済新聞といったメデ
ィアで紹介された。
[研 究 内 容]
本研究の目的は、日常生活環境において無拘束に人の
人間行動モデリング技術に関して以下の成果を得た。
行動を観察する技術、観察された行動データから人の行
①金融機関との協力により、長期的な市場動向を分析す
動モデル(デジタルヒューマン)を用いてその人の状態
るテキストマイニング手法を世界に先駆けて開発し、既
を解析・推定する行動理解技術、推定結果に基づいて日
存の数値分析手法に比べ市場分析の推定精度を最大70%
常生活環境を制御することで、危険防止、事故の早期発
以上改善することに成功した。②SNS サービスを提供
見、生活向上支援などを行う行動活用技術を開発するこ
している情報サービス企業と共同研究を開始し、SNS
とにある。また、これら開発した人間行動観察・解析・
サービスの多様な利用データの提供を受け、3ヶ月で2割
活用技術の3技術を、医療/福祉分野・育児分野・住宅分
以上の利用者数増加を発見するためのルールをネットワ
野・教育分野などの分野へ、要素モジュールとして、統
ーク分析により発見することができた。③子供の室内行
合システムとして、または、社会システムとして応用す
動(ICF)を予測する問題に対して、超音波センサと画
ることを通じて「人を見守るデジタルヒューマン技術」
像 を ナ イ ー ブ ベ イ ズ や Tree Augmented Network
を具体的に構築・検証し、新しい産業の創出を行う。
(TAN)による尤度推定とベイジアンネットを組み合
人間行動観察技術に関して、以下の成果を得た。
わせたベイズ推定モデルによって、学習対象とした環境
①構築した術室内位置計測装置により、実際の手術場
や子供だけでなく、未学習の子供の行動について約70%
面での計測実験を約10回分行った。蓄積されたスタッフ
台の予測精度と再利用性を実現し、さらにこの手法を活
位置情報の基本統計量による分析を行い、手術フェーズ
用した大量のデータからの自動ラベル付けシステムの開
の分類アルゴリムの開発を行った。リモートで、スタッ
発にも発展させた。③大規模データの観測・分析による
フの手術状況を把握するためのモニタリングシステムを
サービスの最適化と適用を実証した。実際の映画リコメ
試作した。②ウェアラブルカメラ・マイクロフォン、超
ンドサービスを通じて選択履歴データを収集し、これを
音波ロケーションシステムを統合した計測システムを用
用いてモデルを改良する試みを行い、マーケティング支
いた行動計測によって、いつどこで何に対してどんな行
援のために再利用することにも成功した。また、ポジ-
動が生じたかをセンサを用いて計測するだけでなく、そ
ネガ両方の教師付データを用いることで、予測精度を
の時その場で何を考えていたかという意味情報を同時に
1.75倍に向上できることを示した。また、因果推定を行
取得するシステムを構築した。また、このシステムを使
う PC アルゴリズムと AIC によるベイジアンネット構
って、環境の変化や実際に生じた行動のセンサ情報と行
築を組み合わせた行動予測モデル作成を行い、アンケー
動目的といった意味情報の関係性を分析する時空間プロ
トデータに対する評価を行った。④日常生活行動をモデ
トコル分析法を提案した。提案したプロトコル分析を、
ル化する方法として、個々に計測・収集したデータをタ
日常生活と消費電力の関係の分析や、掃除行動の分析に
ーミノロジを用いて統合する方法を提案した。具体例を
応用した。③これまでに収集した2,304件の事故データ
扱うにあたり、事故データと行動データに共通する要素
を、事故の種類、製品の種類、傷害身体部位に関して、
としてモノに着目し、473個のモノについてターミノロ
年齢ごとに集計し、公開可能な事故統計表を作成した。
ジを作成した。作成したターミノロジを用いて、事故デ
安全知識循環型社会構築事業のシンポジウムで配布を行
ータ2,500件と、71人分の子ども行動データを統合し、
い、さらに同事業の成果報告 Web サイトからもダウン
事故状況を再現するモデルを作成し、数例の事故事例に
ロード可能な PDF ファイルで公開している。
関して、再現を行うことで異なるデータの統合によるモ
事故情報の検索機能の構築に関しては、製品情報に関
デリングの実現可能性を確認した。モデルをベースにし
して、収集してきた事故情報をもとに594品目の表記ゆ
て視覚化する機能をプラットフォームとして実装した。
れ辞書を作成し、JICFS コードをベースに2768項目を
⑤事故再現 CG による意識変容の効果を、ファーカスグ
含むオントロジ辞書を作成した。作成した辞書を用いて、
ループ(被験者5名)と Web アンケート(被験者47名)
Web 上で検索可能にするための整備を行い、2009年1月
で、評価した。⑥病院サーベイランスのデータベース
より公開し、997件の検索が行われており、実際に利用
(4,590件)を用いて、自発的な子どもの行動によって
されていることも確認した。④身体地図情報システムの
引き起こされた転落事例289件を用いて、確率的事故説
検索機能の一般公開を実現するために、Web アプリケ
明モデルを作成した。このモデルに、操作可能なパラメ
ーションとクライアントソフトウェアを開発した。開発
ータを導入し、転落事故を制御化するモデルを作成にす
したソフトウェアは、2,740件の傷害データを検索可能
るため、物の高さ、広さ、重さ、表面の感触と子どもの
である。2009年2月より、研究チームの成果報告 Web サ
行動との関係をセンサルームの実験によって調査した。
イトよりダウンロード可能なソフトウェアとして、公開
0歳児から2歳児の13名の乳幼児を対象に実験を行い、モ
(38)
産業技術総合研究所
1)
ノの広さ・高さ=乳幼児の身長・発達段階などとの間の
ヒューマノイドの動力学モデルに基づく歩行制御の
研究
確率的モデル(平均的中確率78.9%)を作成し、事故説
明モデルと統合することで制御モデル化した。⑦身体地
オンラインで動力学モデルを用いた安定歩行継続す
図機能を有する傷害サーベイランスシステムの機能とし
る手法を用いた安定歩行システムを開発した。具体的
て、k-means 法を用いた空間クラスタリングによる身
には姿勢角センサの情報を用いて足部インピーダンス
体部位を自働分割機能を実現し、分割された部位・子ど
制御の制御中心周りの目標力・トルクを変更すること
もの年齢・事故が起きた場所・事故に関わった製品の特
により、段差・傾斜地での倣い接地と直立を両立する
徴量の間の確率的予測モデルを作成した。交差検定によ
手法を開発した。接地領域形状、両足位置関係、歩行
る予測精度は、事故の種類42%、傷害の種類44%、傷害
相を考慮した目標力制御により、足裏を剥がさず「ふ
部位38%であった。
んばる」ことを実現した。
[分
野
また Cat5e ケーブル4本を用いて、遠隔計算機より
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]人間行動、行動モデル、行動シミュレー
ロボットの全ての I/O を10[kHz]で行うシステムを開
ション、安全・安心技術、事故防止、教
発し、従来の制御プログラムをそのまま高速な外部計
育支援
算機からも実行できるシステムを構築し、オンライン
での制御計算機の切替も実現した。
2)
[テーマ題目5]ロボットの自律性向上と対人インタラ
ロボットの自律計画機能の研究
クション性向上の研究(運営費交付金
視線制御・時刻同期校正により注目物体の位置姿勢
+科学技術振興機構 CREST+企業等
計測の歩行中の継続を実現し、遠く(4 m 程度)で
と共同研究)
見つけた階段に向かい、止まらずに上る行動を実現し
[研究代表者]加賀美
た。その際、階段を見続けることを考慮した歩容計画
聡(ヒューマノイドインタラク
手法を開発した。
ションチーム)
[研究担当者]加賀美
聡、西脇
光一、宮腰
トンプソン・サイモン、(兼)松井
レーザレンジセンサのオンライン計測に基づく、段
清一、
差地歩行を実現した。
俊浩
歩容計画においてゴールまで全てをロボットが決め
(常勤職員5名)
るのでなく、人間の与えた概略に基づいて計画する手
[研 究 内 容]
法を考案・実装した。次項 MR 環境を用い、与えた
ヒューマノイドロボットが人のように安定して移動し、
物体を把持し、人間を認識してインタラクションを行う
概略軌道に対し、地形を考慮して詳細経路を決定・投
機能を統合した対人サービス用ヒューマノイドロボット
影することで人間が確認できるインタラクションルー
の研究を行うことが本チームの目的である。主に2つの
プを含むナビゲーション実験を行い、指示による経路
方法で研究を行う。a)ロボットの自律性向上の研究:
変化・階段上りへの適用可能性を確認した。
対人サービスアプリケーションを目的に、人間の環境を
移動ロボットのための位置認識・地図作成・経路計
自律的に移動し、人間を意識した動作が可能なロボット
画・動作制御を行う自律移動機能の開発を進め、屋内、
を目指し、移動、把持などのための認識、計画、制御の
屋外での自律走行の実証実験を行った。また地図に搭
各機能と、これらを統合するシステム化技術、実験を行
載されていない走行区域において、人間や障害物を発
見した場合には、安全に停止する機能を実現した。
うための開発環境の研究を行う。またロボットの運動を
3)
効率化、高速化、安定化、安全化する研究を行う。b)
ヒューマノイドの分散実時間情報処理
人間のモデル化と対人インタラクション機能の研究:人
ロボットの実時間情報処理のためのプロセッサアー
間の動きを予測・解析可能な運動モデルの獲得と、人間
キテクチャとして RMTP を提案し、プロセッサの設
の動きに学んだロボットの動作の改良、人間を観察する
計と開発 を行 ってきた 。本 年度は最 終年 度として
手法の研究を行う。
RMTP プロセッサ搭載したボードによる制御実験を
行った。
対人サービス可能なデジタルヒューマン技術の確立の
ために平成20年度は6つのサブテーマの研究を行った。
また最悪実行時間推定ツール Retus を開発し、実
1)ヒューマノイドロボットの動力学モデルに基づく歩
際にロボットで用いているステレオ画像処理、経路探
行制御の研究、2)ロボットの自律計画機能、車輪型ロ
索、サーボ制御のコードを用いて実行時間の検証を行
ボットでの移動のための自律機能、3)ヒューマノイド
った。
の実時間分散情報処理、4)人の二足歩行のデジタルヒ
開発してきた x86用実時間 OS ART-Linux を公開
ューマンモデル、5)視覚と聴覚による対人インタラク
するとともに、本研究をベースにして新規 CREST
ション機能、6)自律ロボットのための Mixed-Reality
「実時間並列ディペンダブル OS とその分散ネットワ
を利用した開発環境。それぞれの項目では下記の研究を
ークの研究」プロジェクトを開始した。
行った。
4)
(39)
人の二足歩行のデジタルヒューマンモデル
研
究
する。本研究では、自動車設計における車体形状の外観
レーザー距離センサから人間の歩行を追跡する手法
と操作性の両立を目的とし、自動車使用時の動作が変化
を開発し、検証実験を行った。
また地図を与えたときに、その動線や中継点を予測
しうる範囲を計算機上で予測して設計者を支援するシス
するツールを開発し、人間の移動モデルについて検討
テムを開発する。運転動作の予測は、人間の動力学的な
を行った。
モデルを構築して消費エネルギー最小化等の評価関数に
これらの成果を組み合わせ、ロボットが人を滑らか
基づく最適化を導入する方法が考えられる。しかし、十
に避けるために、数歩先の予測が可能な人間の歩容の
分な精度を得るための詳細なモデル化はユーザ毎の個別
モデル化を行った。
の対応が困難であり、レディメイド製品である車両設計
5)
には不適であると考えられる。
視覚と音声による対人インタラクション機能の研究
三次元視覚・レーザー距離計を用いたシーンからの
本研究では、ありうる運転動作を実際の動作データを
人間発見・姿勢推定について研究した。また SIFT 特
観察することによって設計者に示すという、実例ベース
徴の三次元配置モデルから既知の物体を発見し、位置
の予測・可視化手法を用いてこの問題にアプローチする。
姿勢を求めるシステムを開発した。
具体的には、実際の自動車座席と運転装置のモックアッ
ロボットが移動中にマイクアレイで音源定位・音源
プのレイアウトを変更しながら多数の動作を測定し、こ
分離・音声認識するシステムを開発し、反響や雑音に
れらの運動をその類似度に基づいて動作分布図としてレ
ロバストな各手法を研究した。開発したシステムを用
イアウトすることで、どのような動作がありうるかを設
いて、音の音源地図を作製する手法を提案した。
計者に提示する。また、動作分布図上の任意の点で動作
レーザー距離センサと音データを統合して、複数の
を合成することにより、新しい設計パラメータに対応す
人がいる中で誰がロボットに発話したかを計測する手
る動作を予測する。このような手法によって設計の初期
法を提案した。
段階における運転座席の機器配置に対する操作性の予見
自律ロボットのための Mixed-Reality を利用した
6)
が可能になり、設計リードタイムの短縮と試作コストの
削減が期待される。
開発環境
実環境中で、環境認識・行動計画・動作制御を行い
開発した動作解析・予測・合成プログラムを共同研究
自 律 的 に 行 動 す る ロ ボ ッ ト の た め の MR ( Mixed
先の自動車会社内の車体形状データベースと連動させる
Reality)環境の開発を行った。
機構を開発し、実際の設計現場における利用を可能にし
本年度はシステムのコードを完全に独自のものに置
た。サイドブレーキの操作、ペダルの踏み変え動作等の
き換え、検証・拡張を容易にした。その上で、ロボッ
運転操作動作については、7変数を持つ運転席周辺系形
トの内部状態に加え、MoCap・入力デバイスのデー
状について測定した動作の合成が可能であることを示し
タ、CG キャラクタ等も統一的に投影できるフレーム
た。
ワ ー ク の 構 築 、 実 装 を 行 っ た 。 ま た 、 preview-
[分
review システムを整備し、カメラ映像及び上記デー
[キーワード]デジタル設計、可視化、モーションキャ
タのネットワーク分散記録再生を実現し、例えば6台
野
名]情報通信・エレクトロニクス
プチャ、人間工学設計
の環境カメラの映像にこれらのデータをオンライン及
び事後に重ね表示した。さらには、MR を空間中の位
[テーマ題目7]複雑な形状物体の精細な形状獲得(運
置情報をロボットと共有するインタラクションツール
営費交付金)
ととらえ、3次元空間中の位置を指示するデバイス2種
[研究代表者]栗山
繁(豊橋技術科学大学)
を試作し、位置や経路を指示できるシステムを構築し、
[研究担当者]山崎
俊太郎(常勤職員1名)
前項3の実験を行った。
[研 究 内 容]
[分
野
名]情報通信
日常生活のさまざまな場面で、人間は外界と幾何学的
[キーワード]ヒューマノイドロボット、二足歩行、3
なインタラクションをしている。とくに手や足のような
次元視覚、地図作成、位置認識、経路計
部位は明確な意図を持って作業を行う行動主体である。
画、実時間分散ネットワークプロセッサ
このような人体機能を解析して理解することは、より良
い製品設計やサービスを提供するために重要な課題であ
[テーマ題目6]自動車運転動作の行動戦略可視化(運
る。したがって本研究では、指等の遮蔽の多い物体形状、
営費交付金+企業等と共同研究)
頭髪などの微細な3次元構造、足などの大変形をする物
[研究代表者]栗山
繁(豊橋技術科学大学)
体の高速変形を対象として、これらの形状を精度良く獲
[研究担当者]川地
克明(常勤職員1名)
得するための基盤技術を開発する。
[研 究 内 容]
実物体の形状計測は、人体に限らず幅広い産業応用の
障害物が入り組んだ狭隘な環境における人間の動作は、
その環境内の物体の大きさや位置等に影響を受けて変化
期待できる基礎的な技術である。これまでに非接触式の
方法だけを見ても、ステレオ視、構造化光投射、レーザ
(40)
産業技術総合研究所
ー計測など様々な方法が提案され、製品として実用化さ
④【近接場光応用工学研究センター】
れてきた。しかしながらこうした技術は、人体の様に複
(Center for Applied Near-Field Optics Research)
(存続期間:2003.4.1~2010.3.31)
雑な表面反射、入り組んだ微細構造、および高速な変形
移動を含む対象物を計測することを想定しておらず、正
確な形状が得ることが難しい。本研究では、カメラやプ
研究センター長:富永
ロジェクタ、スクリーン等の装置を通常とは異なる光学
上 席 研 究 員:コロボフ
淳二
アレキサンダー
系で用いる、コンピュテーショナルフォトグラフィの方
法論を適用して、入手の容易な市販製品では従来不可能
所在地:つくば中央第4
であった計測性能を実現している。
人
員:10名(9名)
[分
経
費:206,384千円(107,350千円)
概
要:
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]3次元形状計測、コンピュテーショナル
フォトグラフィ
産業技術総合研究所中期目標に掲載されている、
「鉱工業の科学技術分野」の「(1)社会ニーズへの対
[テーマ題目8]乳幼児の事故シーンの簡易な映像制作
応」において、「2.経済社会の新生の基礎となる高
環境(運営費交付金)
[研究代表者]栗山
繁(豊橋技術科学大学)
度情報化社会の実現-情報化基盤技術の第4項」であ
[研究担当者]赤澤
由章(非常勤職員1名)
る、「大容量・高速記憶装置技術の新たな応用の開拓
と新規産業の創出を目的として、光による情報記録を
[研 究 内 容]
乳幼児事故の多くは保護者の事故予防に関する知識で
波長の数分の1程度の微細領域で可能とする技術を確
未然に防ぐ事ができるので、事故の状況シーンを再現し
立する」を実現するため、「近接場光応用工学研究セ
た3次元 CG 映像を用いた教育手法は、高い学習効果が
ンター」のミッションは、産総研独自技術「スーパー
期待される。しかしながら、事故シーンの作成において
レンズ」方式を利用し、真にサブ TB から1TB の記
仮想環境内での人間の振る舞いを再現するためには、動
憶容量を有する大容量光ディスク・システムの研究開
作データや可視化に関する知識等が必要になる。ゆえに、
発と、その派生技術として研究が進められている貴金
これらの知識を持たない利用者にでも簡単に事故映像を
属ナノ粒子、ワイヤーを用いた局在プラズモン光型高
再現するための仮想環境を構築でき、3次元 CG 映像を
感度光センシング技術の開発に重点を置くとともに、
制作できる基盤技術が求められる。
局在光(近接場光、表面プラズモン光)の産業利用を
本研究では、モーションキャプチャ装置で計測した事
促進する上で重要となる基礎原理の解明にある。特に
故発生の際に人間が振舞う反応動作を、事故現場の環境
「スーパーレンズ」技術を用いた大容量光ディスク・
を再現する物体データと関連付けて管理する手法を導入
システムにおいては、企業との共同研究を通じて技術
し、技術課題の解決を目指す。具体的には、環境を構成
の高度化を検討していく。近接場光応用工学研究セン
する物体データに、その物体によって引き起こされる事
ターは、国内の光ストレージ産業のさらなる発展と、
故動作のアニメーションデータを対応付ける事により、
リスクの大きい新規光ストレージ技術開発を中心に、
事故に伴う人間の動作や行動を環境側から管理する。す
次世代の光記録システム研究開発の国内拠点となるば
なわち、物体データの配置から自動的に発生しうる事故
かりでなく、広くその高精度光技術を核とした新規光
動作と一連の事故シーンの CG 映像が半自動的に生成さ
デバイス分野の開発拠点として、7年間の研究開発を
れる。シミュレーションで生成された歩行等の移動動作
リードしていく。近接場光応用工学研究センターの研
から自然に動きを遷移させるために、物体の位置に対す
究組織は、スーパーレンズ・テクノロジー研究チーム、
る事故動作データの分布を最適化する機構と動作合成法
表面プラズモン光応用デバイス研究チーム、及びそれ
を開発する。また、連携している人間行動理解チームが
らの基盤をサポートしさらに新規光デバイスの創製を
構築した事故統計データと連動させることにより、実際
担当する近接場光基礎研究チームから構成されており、
の情報に基づく事故状況をシミュレーションできること
それぞれが相互に協力し合いながらテーマにおける課
が期待される。また、将来的には法医学の分野での CG
題の解決、推進を行う。
技術の利活用技術として、法廷で事件のシーンを再現す
---------------------------------------------------------------------------
るための映像の簡略な編集技術等への展開も計る。
外部資金:
[分
経済産業省
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]事故・事件シーン、映像コンテンツ制作、
環境駆動型アニメーション、法医学 CG
戦略的技術開発委託費「ナノエレクトロニ
クス半導体新材料・新構造技術開発」「機能原理に基づ
いたカルコゲン超格子型相変化メモリの研究開発」
文部科学省
(41)
原子力試験研究費「高レベル放射線廃棄物
研
究
(Applied Surface Plasmon Device Research Team)
の燃料電池への応用に関する研究」
研究チーム長:粟津
文部科学省
浩一
(つくば中央第4)
科学研究費補助金基盤研究(B)「ナノ熔融
概
領域の光学・熱動力学計測手法の開発とストレージ技術
要:
貴金属ナノ粒子、ワイヤーを用いたプラズモン光デ
への応用」
バイスの開発
日本学術振興会外国人特別研究員事業
金属ナノ粒子やワイヤーなどの微細構造体は、レー
「ゲルマニウムアンチモンテルル系材料の超格子構造を
ザー等の光を集光させると、局所的に光の強度が増強
用いたデータストレージデバイス」
される現象が知られているが、表面プラズモン光応用
日本学術振興会
デバイス研究チームでは、こうした特異現象を単に科
戦略的国際科学技術協
学として扱うのではなく、発現やその機能を自由に制
力推進事業「エピタキシャル相変化材料の合成と時間分
御して、産業応用を図ることを目的として研究を行っ
解構造解析」
ている。平成14年度に「スーパーレンズ」の派生技術
独立行政法人科学技術振興機構
として開発された新規貴金属ナノ構造体作製技術(貴
地域イノベーション創
金属酸化物のプラズマ還元法)は、簡便に金属ナノ構
出研究開発事業「【地域イノベーション】大面積光学素
造を広面積でしかも5分程度の短時間で均一に作製す
子・部品への低コスト反射防止技術の開発」
ることができる方法として注目されている。表面プラ
財団法人中部科学技術センター
ズモン光応用デバイス研究チームでは、この方法を発
発
展させて、新規光デバイスの創製、分子センシングへ
表:誌上発表27件、口頭発表53件、その他7件
---------------------------------------------------------------------------
の応用を図る。
研究テーマ:テーマ題目2
スーパーレンズテクノロジー研究チーム
(Advanced Super-RENS Technology Research Team)
研究チーム長:中野
近接場光基礎研究チーム
隆志
(Nano-Optics Research Team)
(つくば中央第4)
概
要:
産総研が推進してきた、光学非線形薄膜を利用した
研究チーム長:Paul J Fons
(つくば中央第4)
光超解像技術「スーパーレンズ」を応用した超高密度
概
光ディスクは、既存の光学システムを利用しながらも
要:
近接場光基礎研究
50~100 GB/layer の記録容量を実現可能とする基本
新規近接場光応用システム・デバイスの提案及びセ
特性が確認されており、現在はその実用性評価、並び
ンターの重点課題研究を支援する基礎基盤研究と新規
にさらなる高密度化のための基盤技術の開発が研究課
近接場光応用システム・デバイスの探索研究を主務と
題になっている。
し、特に、近接場光領域でのシミュレーション技術の
今年度は、追記(Write-once)型のディスクにおけ
構築及びスーパーレンズの機構解明、そのための実験
る 半 径 方 向 の 高 密 度 化 を 検 討 す る た め 、 Land &
データの取得(XAFS、非線形光学定数、光散乱特性、
Groove 記録と呼ばれる方式についての実用性評価を
表面プラズモン等の精密測定及びパラメータ取得)を
進めた。また、「スーパーレンズ」ROM ディスクの
行っている。
再生特性の実用性評価を進めるための原盤(スタンパ
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
ー)作製の準備を開始した。今後、これらの評価をさ
3
らに進め、大容量光ディスク・システムの実現化を最
---------------------------------------------------------------------------
終目標に研究展開を進める。
[テーマ題目1]サブテラバイトからテラバイト記憶容
また、「スーパーレンズ」からの開発過程から派生
量を有する次世代大容量光ディスク・シ
した、熱リソグラフィ法による大面積、高速ナノ構造
ステムの研究開発(運営費交付金)
形成技術、金属ナノ微粒子によるナノ構造金型作製技
[研究代表者]中野
術は、民間企業への技術移転を進め、反射防止や構造
隆志
(近接場光応用工学研究センター)
性複屈折といった、ナノ構造を利用した機能性光学素
[研究担当者]島
隆之、栗原
一真、(兼)富永
淳二、
子の産業化を目指した技術開発を連携企業と共同で進
(兼)Paul Fons、(兼)桑原
めている。
(兼)Kolobov Alexander(常勤職員7名、
研究テーマ:テーマ題目1
正史、
契約職員2名、外部共同研究者)
[研 究 内 容]
表面プラズモン光応用デバイス研究チーム
サブテラバイトからテラバイト記憶容量を有する次世
(42)
産業技術総合研究所
(近接場光基礎研究チーム)
代大容量光ディスクを実現するため、「スーパーレン
[研究担当者]Alexander Kolobov、桑原
ズ」と名付けた産総研の独自の超解像技術を用いた光デ
正史
(常勤職員3名、他3名)
ィスク・システム開発を、運営交付金とマッチングファ
[研 究 内 容]
ンドを利用した、企業との開発型共同研究によって進め
ている。近接場光応用工学研究センターは、この共同研
新規近接場光応用システム・デバイスの提案及びセン
究の中核としてさらなる高密度化のための基盤技術開発
ターの重点課題研究を支援する基礎基盤研究と新規近接
を行っている。平成20年度は、昨年度の研究開発で明ら
場光応用システム・デバイスの探索研究を実施し、実験
かにした、スーパーレンズが持つ半径方向への超解像特
及びコンピュータによるシミュレーション技術を用いて、
性を積極的に応用し、追記(Write once)型における半
局在光の特性を正確に把握するとともに、新規光デバイ
径方向への高密度化手法として、既存技術である Land
スの創製を検討して最小の素子プロトタイプを作ってい
& Groove 記 録 に つ い て 着 目 し 、 新 規 に 作 製 し た
る。平成20年度の主な成果として、①放射光利用 X 線
Groove ピッチの異なる基板を利用して、クロストーク
吸収構造解析によって、記録最中のスーパーレンズ関連
等の評価を開始した。また、「スーパーレンズ」技術の
記録材料の原子レベルでのサブナノ秒の時間分解の構造
実用性の高さの検証を推進するため、46 GB~50 GB/
を研究し、GeSbTe に加えその溶融状態について構造解
layer の容量を持つコンテンツ入りの ROM ディスク基
析を実施するとともに、圧力変化に伴う相変化現象を解
板の作製、並びに再生評価のための準備を開始した。
析した。②実験で得た構造を用いて理想的な記録材料開
[分
発のため、第一原理シュミレーションを実施した。③シ
野
名]情報通信
ュミレーションのための重要な記録関係材料の光特性温
[キーワード]データストレージ、先進光技術、光ディ
度可変を測定した。④光・電子記録関連材のナノ領域厚
スク
さの料特性(熱伝導、電子構造、など)スケーリングを
解明した。
[テーマ題目2]貴金属ナノ粒子、ワイヤーを用いたプ
ラズモン光デバイスの開発(運営費交付
[分
金)
[キーワード]ナノテクノロジー、先進光技術、近接場
[研究代表者]粟津
野
名]情報通信・エレクトロニクス
光デバイス
浩一
(表面プラズモン光応用デバイス研究チ
⑤【ダイヤモンド研究センター】
ーム)
[研究担当者]藤巻
真、(兼)富永
(Diamond Research Center)
淳二(常勤職員2
(存続期間:2003.4.1~)
名、ポスドク1名、契約職員1名、連携大
学院制度による大学院生10名)
[研 究 内 容]
平成14年度に「スーパーレンズ」の派生技術として開
研 究 セ ン タ ー 長:藤森
直治
副研究センター長:鹿田
真一
発された新規貴金属ナノ構造体作製技術(貴金属酸化物
のプラズマ還元法)を用いて、新規光デバイスの創製、
所在地:つくば中央第2、関西センター
分子センシングへの応用を図っている。平成19年度は、
人
員:10名(9名)
平成18年度に引き続き、Ag ナノ粒子作製条件の検討と、
経
費:290,152千円(214,133千円)
概
要:
ラマン分光法と組み合わせた高感度分子認識技術を応用
したプロトタイプの作製と実証を中心に研究活動を展開
した。その結果として、①酸化銀薄膜による表面増強ラ
ダイヤモンドは様々な優れた物性を有しており、こ
マン分光法により、10 M の分子検出に成功した。②
れらを利用した新しい応用が期待されている。既に応
酸化銀薄膜をプラズマ還元する銀ナノ粒子薄膜を用いて、
用されている高硬度や高熱伝導率以外にも、半導体材
波長シフト型の分子センシングが可能であることを証明
料としての特性、光学特性、さらに生体適合性や電子
した。③流路型酸化銀分子センサーの応用を展開した。
放出特性などの新たな有用な特性が開けつつある。当
④バイオ DVD の基礎実験を開始し、機能することを確
センターは応用分野が多岐にわたるダイヤモンドを、
認した。
材料からのシーズ開発を行って、産業化へ結びつける
-8
[分
野
研究開発を目指している。
名]情報通信・エレクトロニクス
ダイヤモンドの気相合成法が確立され、形態や純度
[キーワード]ナノテクノロジー、先進光技術、近接場
などの制御が可能となったことで、上記の様々な優れ
光デバイス、バイオ応用
た特性を利用するための製品開発が行われてきた。し
[テーマ題目3]近接場光基礎研究(運営費交付金)
かし、現状では限定された製品への展開に留まってお
[研究代表者]Paul Fons
り、産業としてのインパクトのある製品の開発が期待
(43)
研
究
されている。この為には素材作製技術から製品化技術
に多角的になると考えられる。上記のバイオセンサ
までの様々な段階を総合的に研究開発することが必要
ーや電子源としての応用以外でもその利用は重要で
であり、当センターは本格研究を実践することでこの
あり、応用に合致した特性評価とともに表面構造の
目的を達成することを期している。特に、エレクトロ
原子レベルの評価を進め、実用特性の改善と安定な
ニクス材料としてダイヤモンドを捉えることで、素材
形成技術を確立する。
からデバイス化までの幅広い技術開発を推進する。
ダイヤモンド研究センターはダイヤモンド関連研究
競合する他材料やデバイスとの比較において、ダイ
の中核機関としてその責務を果たすべく、情報発信や
ヤモンドの優位性を明確にし、実用的な利用を拡大す
プロジェクト形成などを積極的に進めている。また、
るための技術的な課題を明確にする。このために、そ
日本におけるダイヤモンドコミュニティーへの貢献を
れぞれの応用分野の研究機関や企業と連携し、最新の
ミッションに含め、センター全員で積極的に取り組ん
技術情報を入手する。ダイヤモンドに特徴的な物性を
でいる。これらの活動全体を当センターのアウトカム
活かし、半導体デバイス、電子放出デバイス、センサ
の目標として位置づける。
ー及びこれらをインテグレートしたデバイスを最終的
---------------------------------------------------------------------------
な開発対象としている。平成18年度からの当センター
外部資金:
後期4年間では、以下に示すデバイスを実用化への芽
経済産業省
を出させることを主要な研究課題として設定した。
「ダイヤモンド放射線検出器の開発に向けた基礎的研
①
平成18年度原子力試験研究委託費
究」
パワーデバイス:高耐電圧や高温動作などを生か
した電力用ショットキーバリアダイオード
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
素子への発展を期した様々な技術開発を行っている。
「ナノテクノロジープログラム/ナノテク・先端部材実
②
(SBD)の開発を中心に、将来の省エネ電力変換
用化研究開発/ナノ細胞マッピング用ダイヤモンド・
電子放出デバイス:ダイヤモンドは負性電子親和
ナノ針の研究開発」
力を持ち、電子放出が容易である。この特性を生か
して実用的なデバイスとするには、長、短期の安定
性や大電流化が必要である。表面状態の最適化を含
文部科学省/科学研究費補助金(若手 A)
めた電子源への適用技術の開発を行っている。
「半導体ダイヤモンドを用いた超高出力 RF 増幅及びス
バイオセンサー:ダイヤモンドは DNA の固定強
③
ウィッチングデバイスの開発」
度が強く、電気化学的ポテンシャル窓が広いなどの
特性があり、これらを利用したバイオ応用が期待さ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/助
れている。DNA 等の生体物質の微量、高速検出を
成金(産業技術研究助成事業)
中心としたセンサー開発を行うとともに、将来のダ
「高品質半導体ダイヤモンドによる耐環境低損失パワー
デバイスの開発」
イヤモンドの生体内利用につながる様々なデバイス
開発を進めている。
経済産業省
以上の研究開発に必要な素材及び基盤技術について
近畿経済産業局
地域イノベーション研究
も、積極的に取り組んでいる。共通研究課題としてセ
開発事業
ンター全体で様々な角度から検討を行うことで、応用
「地球温暖化係数ゼロのフッ素ガス超小型発生装置の開
発」
開発に資する研究を目指している。具体的には以下の
ような研究課題を設定している。
①
戦略的基盤技術高度化支援事業
大型単結晶基板の製造技術:インチサイズ以上の
近畿経済産業局
「高精度加工用大型ダイヤモンド切削工具の開発」
大型単結晶基板はデバイス応用には必須の素材であ
り、これを実現すべく高速成長技術、大面積合成装
発
置技術や加工技術などに総合的に取り組んでいる。
②
表:誌上発表31件、口頭発表82件、その他7件
---------------------------------------------------------------------------
エピタキシャル成長やドーピング等の半導体製造
に必要な合成技術:半導体ダイヤモンドの利用には
デバイス開発チーム
高品質の結晶や不純物ドーピングの制御が必須であ
(Device R&D Team)
り、現在の技術を高度化する必要がある。ダイヤモ
研究チーム長:鹿田
真一
(つくば中央第2)
ンドの気相合成技術の改良や、同位体半導体材料の
概
研究、カソードルミネッセンス等の評価手法研究を
要:
ダイヤモンドの優れた半導体特性並びに熱伝導率等
中心に、これらの課題に取り組む。
表面修飾技術:ダイヤモンドの表面物性は、吸着
を活かした各種デバイスの研究開発を行う。高温動
原子や分子によって大きく変化し、その利用は非常
作・大電流・高耐圧といった特徴を持つ将来の省エネ
③
(44)
産業技術総合研究所
型パワーデバイス、大電流・低しきい値電圧の電子放
[テーマ題目1]電子デバイス開発
出デバイスを中心に開発する。これらを実現する上で
[研究代表者]鹿田
真一(デバイス開発チーム)
必要な各々の応用に必要な材料技術、プロセス技術、
[研究担当者]渡邊
幸志、山田
貴壽、梅澤
デバイス要素技術、シミュレーション技術などを最適
Kumaragurubaran Somu、
化し、応用分野の要求を踏まえたデバイス設計、また
R.Kumaresan、Yongsup Yun
ダイヤモンドデバイスの特徴を活かすための実装技術
(常勤職員4名、他3名)
仁、
[研 究 内 容]
など、将来の広い展開を見据えたデバイス基礎研究を
行う。またこれらを支えるエピタキシャル成長技術を、
ダイヤモンドは物質中最高値である絶縁破壊電圧や熱
伝導率などを有し、高耐圧、高温動作の省エネパワーデ
同位体半導体材料も含めて研究する。
バイス材料として期待されており、この実現へ向けて
研究テーマ:テーマ題目1
様々な要素技術研究を行っている。また電子源について
は、放出電圧の低減、安定性、寿命など残る課題をクリ
表面デバイスチーム
(Surface Functionalized Device Team)
アして、実用的な電子源モジュールを試作することを目
研究チーム長:藤森
的に研究を実施している。
直治
パワーデバイスに向けた研究では、高温動作の基本と
(つくば中央第2)
概
なる耐熱電極探索を実施し、超耐熱性を持つ Ru ショッ
要:
ダイヤモンド表面は各種の元素や分子で修飾が容易
トキー電極/ダイヤモンドを新たに見出し、TiPtAu オ
であり、特性が大きく変化するとともに、様々な機能
ーミック電極を併せて用いたショットキーバリアダイオ
性を有する。この利用が応用の広がりにとって非常に
ードを作製した。スタティックバーンインテストを実施
重要と考え、表面デバイスチームでは表面物性の評価
し、400℃1500時間及び500℃250時間のでも特性の変動
とこれを利 用 したデバイ ス の開発を進 め ている。
がない超耐熱デバイスが可能なことを確認した。なお、
DNA 等の生体物質の固定を含む表面修飾技術を研究
これは250℃で30万時間動作に相当する。
するとともに、ダイヤモンドが持っている優れた電気
電子源応用開発では、本年度は、チップ化加工表面か
化学的特性を利用して、バイオセンサーとしての応用
らの電子放出特性の最適化、再生技術などに取り組み、
を目指している。サブミクロンサイズの微小なセンサ
表面処理温度最適化、10分という短時間でのフラッシン
ーを集合させたマルチセンサーアレイを実現し、微量
グ再生技術開発に成功した。また厚膜n型ダイヤモンド
計測とともに高速の計測が可能なデバイス開発を目標
合成にも成功し、シリーズ抵抗半減を達成した。電子線
としている。生体内で動作するシステムへのダイヤモ
描画装置実機により7 nm の描画に成功した。
同位体半導体については、ほぼ100%の12C、13C に
ンドデバイスの適用を最終的なターゲットとし、様々
よるダイヤモンド作製により、エネルギーギャップ差が
なデバイスの研究開発を進めて行く。
19.4 meV であることを初めて実証し、また相互を積層
研究テーマ:テーマ題目2
した構造を作製することに成功した。
単結晶基板開発チーム
[分
(Diamond Wafer Team)
[キーワード]ダイヤモンド、半導体、デバイス、パワ
研究チーム長:茶谷原
名]ナノテク・材料・製造
ーデバイス、電子源、MEMS、量子デ
昭義
バイス
(関西センター)
概
野
要:
[テーマ題目2]バイオ機能デバイス開発
ダイヤモンドの応用に欠かせない実用的な1インチ
[研究代表者]藤森
以上の単結晶基板を製造する技術開発を行う。そのた
め、大型化への自由度が高い気相合成技術を中心に検
直治
(表面デバイスチーム)
討し、経済的にも成立しうる技術として確立する。合
[研究担当者]渡邊
成速度の向上、大面積化、電子デバイスへ適用できる
幸志、上塚
洋
(常勤職員1名、他1名)
レベルの欠陥状態の実現等の合成技術を中心的な研究
[研 究 内 容]
対象とする。さらに研磨、切断などのウェハを製造す
昨年までに検討してきた B ドープダイヤモンドを電
るために必要な加工技術も開発する。最終的な到達目
極材料とする電気化学的 DNA センサーについて、表面
標としては、1インチ単結晶基板の量産技術を研究開
形状に工夫を加えることで感度の向上を試みた。ナノダ
発の目標においている。
イヤ粒子をマスクとして、プラズマエッチングによって
研究テーマ:テーマ題目3
10 nm の凸凹を作製する技術を開発した。ここに電気
---------------------------------------------------------------------------
化学的な手法で、リンカー分子やクロスリンカー分子を
固定し、さらにプローブ DNA を固定した。このように
(45)
研
究
作製したセンサーは、DNA の間隔がハイブリダイゼイ
研 究 セ ン タ ー 長:軽部
征夫
ションにイオンの透過をブロック出来る規則的な配列と
副研究センター長:新保
外志夫、横山
憲二
なる。23塩基を持つ DNA での感度評価では、2 pM(2
所在地:つくば中央第4、つくば中央第5、つくば中央第
ピコモーラー)という低濃度でもきちんとした計測が出
6、八王子事業所
来ることが判明した。これは従来材料である金を使った
場合に比較して、3桁高感度である。
このセンサーを使って繰り返し計測を行って信頼性を
人
員:12名(11名)
経
費:203,061千円(98,109千円)
概
要:
観察した。100回のハイブリダイゼーションと変性を繰
り返しても、センサーはきちんと動作し、中期目標の繰
超微量の化学物質、生体成分などを高感度に測定す
り返し数を達成した。
JSPS の日仏交流促進事業でフランスの CEA(原子
るシステムは、医療福祉、環境、食品、セキュリティ
力研究所)と、ダイヤモンドと生体物質の固定技術をは
ーなどの分野で強く要望されている。しかし、従来か
じめとする界面関連研究を実施している。研究者や技術
ら行われている機器分析では試料の前処理が煩雑で長
の相互交流を進め、バイオセンサーや計測手法へのダイ
時間を要し、測定装置そのものが極めて高価であるな
ヤモンドの適用を検討している。
どの問題を抱えている。
[分
野
一方、生体の持つ優れた分子識別機能を応用したバ
名]ナノテク・材料・製造
イオセンサーは、これらの問題を解決する優れた計測
[キーワード]ダイヤモンド、表面修飾、電気化学、バ
デバイスである。当研究センターでは、バイオセンサ
イオセンサー
ーの研究で世界をリードしてきた実績を基にこれまで
に培ってきた知見と経験を活かして、毒性化学物質や
[テーマ題目3]単結晶基板開発
[研究代表者]茶谷原
[研究担当者]杢野
DNA を高感度に計測するバイオチップだけでなく、
昭義(単結晶基板開発チーム)
由明、坪内
信輝、山田
タンパク質の分離・同定を行うバイオシステムチップ
英明
や細胞マニピュレーション・オンチップ等の実用的デ
(常勤職員4名)
バイスの研究に取り組んでいる。
[研 究 内 容]
具体的には、産学官連携による二次元電気泳動を利
本年度は、大型単結晶合成および評価技術、ウェハ化
技術及び大面積合成装置技術について開発に取り組んだ。
用したプロテインチップの開発、糖鎖を主成分とした
大型単結晶合成技術:マイクロ波 CVD 法においてこ
分子認識素子の創製とそれを利用した有害タンパク質
れまで開発してきた基板ホルダー(高密度プラズマ)お
検出システムの構築、細胞のセンシングとその機能制
よび窒素添加安定成長技術を用いて、最高17 mm、 4
御が可能な材料表面構築技術とそれを応用したデバイ
g の種結晶合成を行った。
ス・システムの開発等を行っている。
---------------------------------------------------------------------------
ウェハ化技術:「ダイレクトウェハ化技術」によって
昨年合成した12×13 mm 種結晶を利用して、その大き
外部資金:
さまでのダイヤモンドウェハを安定に製造できるように
文部科学省
なった。また、窒素を添加しないアンドープダイヤモン
「生物化学テロにおける効果的な除染法の開発」
科学技術振興調整費
ドの自立板の作製に成功した。
大面積合成装置技術:ダイヤモンドプラズマ CVD 装
文部科学省
置の詳細について化学反応を加えたシミュレーション技
安全・安心科学技術プロジェクト
「生物剤検知用バイオセンサーシステムの開発」
術を実施した。高パワー密度でのラジカルの増減の評価
が可能となった。また、マイクロ波周波数を変えた計算
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
の結果、電子密度と成長速度がよく対応することがわか
「高集積・複合 MEMS 製造技術開発事業/バイオ材料
った。50 mmφの大面積に均質に合成できる見通しが
(タンパク質など)の選択的修飾技術」
立った。
[分
野
名]ナノテク・材料・製造
文部科学省
[キーワード]ダイヤモンド半導体、結晶成長、ダイヤ
科学研究費補助金
「毒物に結合するペプチドの単離と毒物測定への応用」
モンドウェハ
文部科学省
科学研究費補助金
⑥【バイオニクス研究センター】
「環境対応型光アクチュエータゲルの開発とシス
(Research Center of Advanced Bionics)
テム化」
(存続期間:2003.8.1~2009.3.31)
文部科学省
(46)
科学研究費補助金
産業技術総合研究所
面の特定のオリゴ糖や糖脂質、糖タンパク質に結合し
「ペプチドホルモン調節系の起原と分子進化」
て感染する事実を材料工学的に応用したものである。
文部科学省
本チームでは、認識ツールとしての糖鎖合成とそれの
科学研究費補助金
センサー基板への固定化、さらには、毒素等の高感度
「機能性近赤外蛍光分子プローブの創製と医療診断への
検知技術の開発を中心に行なっている。
展開」
研究テーマ:テーマ題目2
発
表:誌上発表24件、口頭発表62件、その他4件
---------------------------------------------------------------------------
バイオナノマテリアルチーム
プロテインシステムチップチーム
(Research Center of Advanced Bionics BioNanomaterials Team)
(Research Center of Advanced Bionics Proteomic
Device Team)
研究チーム長:横山
研究チーム長:金森
(つくば中央第5)
概
(つくば中央第4、八王子事業所)
概
敏幸
憲二
要:
当チームでは、細胞のセンシングとマニピュレーシ
要:
ョンが可能なバイオチップの開発をミッションとする。
プロテインシステムチップチームでは、重点研究課
題である個別化医療ためのプロテインチップ、バイオ
具体的には、高分子材料-細胞間の相互作用について
メディカル 標 準のための 標 準タンパク 質 、バイオ
物理化学的な理解を深め、細胞が有する複数の分子素
MEMS 作製技術を用いた次世代バイオチップ等の開
子・ドメイン間の精緻な協調に基づく“ビビッドな”
発を行っている。
機能を人工的に再現することにより、今までの人工材
1.個別化医療ためのプロテインチップの開発
料には無かった高次な機能を発現しうる人工材料・分
個別化医療ためのプロテインチップの開発では、
子デバイスを開発する。具体的に本年度は、1) 目的
タンパク質を分離する全自動二次元電気泳動シス
とする細胞を連続的に分離する技術(セルセパレーシ
テムとタンパク質を検出するウエスタンブロッテ
ョン)、2) 個々の細胞を操作する技術(セルマニピュ
ィングシステムを組み合わせた装置の開発を行っ
レーション)、3) 細胞を体内に埋め込む技術、の実用
ている。本年度は、全自動二次元電気泳動システ
化を目指す。以上の目標を達成するための研究要素と
ムについて、再現性、感度、定量性の向上など、
しては、1) 材料表面での細胞培養技術と材料-細胞
製品化に必要な改良を加えた。また二次元電気泳
間相互作用の評価、2) 機能性分子素子の設計・合成
動から引き続きウエスタンブロッティングを行え
及び機能評価、3) 高分子構造の微細制御と機能性分
るチップの作製に成功した。
子素子の組み込み技術、4)物理刺激による高分子機能
2.バイオ MEMS 作製技術を用いた次世代バイオチ
の遠隔制御技術、5) 機能集積材料によるデバイス・
システムの理論設計、の5つの技術課題を掲げ、研究
ップ等
MEMS(Micro Electro Mechanical System)基
開発活動を実施した。
板上において、ヒト疾患関連タンパク質などの生
研究テーマ:テーマ題目3
体分子を検出するための MEMS センシングデバイ
---------------------------------------------------------------------------
スの開発を目標とした検出法の開発を行っている。
[テーマ題目1]個別化医療ためのプロテインチップの
具体的には VEGF に対する新規な分子認識素子の
開発(運営費交付金、外部資金)
[研究代表者]横山
開 発 、 分 子 認 識 素 子 の 選 択 的 修 飾 技 術 の 開発、
MEMS センシングデバイスへの適応の可能性を示
憲二
(プロテインシステムチップチーム)
す。
研究テーマ:テーマ題目1
[研究担当者]横山
憲二、平塚
淳典、鈴木
祥夫、
木下
英樹、坂口
菜央、畑瀬
美穂子
(常勤職員3名、他3名)
[研 究 内 容]
糖鎖系情報分子チーム
(Research Center of Advanced Bionics Glyco-
二次元電気泳動は複数のタンパク質の分離に広く使わ
Informatics Team)
研究チーム長:鵜沢
れている方法である。一般には一次元目に等電点電気泳
浩隆
動(IEF)、二次元目にドデシル硫酸ナトリウム-ポリ
(つくば中央第5)
概
アクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行う方
要:
法が最も多用されている。しかしながら、二次元電気泳
当チームでは、人にとって有害なタンパク質や毒素
動は操作が煩雑であり、最終的なサンプルの検出までの
等を、高感度に迅速に検知するための研究を展開して
時間が非常に長く、しかも再現性よく結果が得られない。
いる。これらの研究は、毒素やウィルスなどが細胞表
そこで我々は、これらの煩雑な手作業の操作をコンピュ
(47)
研
究
ータ制御の自動搬送システムを用いることにより、すべ
した。また、緩衝液(酢酸緩衝液、リン酸緩衝液)の違
ての操作を短時間に全自動で行える二次元電気泳動シス
いについても検討した。糖アクセプターには6-硫酸化ヘ
テムを開発した。
キソピラノース(グルコ型及びガラクト型)を、ドナー
平成20年度は、全自動二次元電気泳動システムの製品
には pNP グルクロン酸を用いた。酵素反応の結果、糖
化研究の他、全自動二次元電気泳動システムを用いた電
アクセプターにグルコ型を用いた場合には、いずれの酵
気泳動後のタンパク質サンプルを二次元目ゲルからメン
素も転移反応を示し、9%~13%の転換率で硫酸化2糖を
ブレンに転写し、抗体により検出するシステム(パーソ
生成した。選択性は、β(1→3)体が多く、β(1→2)との
ナルプロテインチップ)の開発を行った。具体的には、
比は、1.3:1~2.7:1であった。緩衝液の違いによる効果
全自動電気泳動システムに残された課題である、タンパ
はなかった。結果として、仔牛由来の酵素を用いた時に
ク質の検出感度、分離能、再現性のさらなる向上を目指
転換率、及び、選択性が最も良い結果を与えた(38%、
した。また、パーソナルプロテインチップシステムに用
12:1)。同様に、ガラクト型について検討したところ、
いる、ストライプ電極チップ、タンパク質排出転写シス
カタツムリ由来の酵素(H. pomatia、H. aspersa)は
テム、自動免疫反応システムの開発を行った。すなわち、
転移を示さなかった。P. vulgata は、チオガラクト型の
タンパク質サンプルを二次元目ゲルからメンブレンに転
アクセプターのみ受け入れ、3%~7%の低い転換率で
写し、抗体により検出するシステムを開発した。また、
β(1→3)体のみを生成した。この結果は、選択性は同じ
二次元目電気泳動 SDS-PAGE とメンブレンへの転写を
であったが、仔牛由来の酵素[40%~43%、β(1→3)体
連続してワンチップで行えるストライプ電極チップを開
のみ生成]よりも転換率が低いことを示している。従っ
発した。さらに、タンパク質をメンブレンに転写するも
て、仔牛由来の酵素を用いるほうが実用的に硫酸化2糖
う一つの方法として、SDS-PAGE の泳動を止めること
を得ることができる。これらの2糖生成物は、ウィルス
なくタンパク質を泳動させ、泳動チップから排出される
との相互作用解析や、ウィルスの有する酵素機能を不活
際にメンブレンへの転写を行うシステムの開発を行った。
化する研究への利用に期待される。
[分
野
これまで我々は、リシンと特異的に結合する糖鎖をセ
名]ライフサイエンス
[キーワード]タンパク質分離、プロテオーム、二次元
ンサーチップに固定化し、表面プラズモン共鳴
電気泳動、ウエスタンブロッティング、
(SPR)法により、10 pg/mL の当該毒素を5分程度で
バイオチップ、バイオツール、個別化医
検知することに成功している。今回我々は、これまでに
療、疾患マーカー
得た検出限界の再現性について検討した。
まず、99%以上の高精製度を有し、還元末端側にリポ
[テーマ題目2]糖鎖系情報分子を活用した有害タンパ
酸を有するラクトース型セラミドをセンサーチップに
ク質検知チップの開発(運営費交付金、
SAM 法で固定化し、糖鎖で修飾した検知チップを用意
外部資金)
した。このチップを SPR に装着し、標準タンパク質と
[研究代表者]鵜沢
浩隆(糖鎖系情報分子チーム)
して RCA120を用い、10 pg/mL の濃度の当該タンパク
[研究担当者]鵜沢
浩隆、和泉
治人、
質を再現性よく検知できるか検討した。6回の検知実験
雅之、加藤
永塚
健宏、近藤
里志、佐藤
啓太、
を繰り返し、いずれも高精度に当該タンパク質を検知で
駒野
明香、漆畑
祐司、櫻井
陽
きた。本分析法が希薄な濃度のタンパク質の定量におい
(常勤職員2名、他7名)
ても十分に信頼性の高い測定法であることが証明された。
[研 究 内 容]
当研究室では、これまでに有害タンパク質を高感度に
[テーマ題目3]細胞のセンシングとマニピュレーショ
検出する研究に取り組んできた。なかでも、①毒素など
ン技術の開発(運営費交付金)
の有害物を検出するための糖鎖の設計・合成、②糖鎖の
[研究代表者]金森
基板への高密度な固定化、③有害タンパク質の高感度検
敏幸
(バイオナノマテリアルチーム)
知技術の開発に重点を置いて研究を進めている。本年度
[研究担当者]金森
敏幸、馬場
照彦、須丸
公雄、
は、ウィルス等との結合が期待される硫酸化2糖の合成、
高木
俊之、杉浦
慎治、服部
浩二、
および、これまでに我々が開発を進めてきた超高感度な
菊池
鏡子、山口
麻奈絵、佐伯
毒素検知法の再現性について検討した。これらの研究は、
(常勤職員5名、他4名)
安心・安全な社会の構築に貢献するものである。
大輔
[研 究 内 容]
これまで我々は、仔牛由来の酵素、グルクロニダーゼ
当研究チームは、分子からシステム・デバイスまで、
を用いて、グルクロニル硫酸化2糖の効率的な合成法を
チーム内で一貫して取り扱うことを基本方針としている。
開発し報告してきた。本年度は、3種類の軟体動物由来
システム・デバイスとして、具体的にはバイオチップを
(Helix pomatia、Helix aspersa、Patella vulgata)の
対象とし、1) 細胞アレイチップ、および、2) 膜タンパ
酵素を用い、基質特異性、選択性、転換率について検討
ク質チップ、について集中して研究を行っている。
(48)
産業技術総合研究所
性を賦与するものであるため、再構成に用いる脂質混合
現在、バイオテクノロジー研究は、ゲノムからプロテ
膜系の主要成分として検討して行く。
オームへと推移している。こういった背景から我々は、
次のターゲットは個々の細胞を用いたセンシングや細胞
灌流型細胞アレイチップについては、2年以内に製品
のマニピュレーションに基づくアッセイであろうと予想
化を行い、ベンチャー企業の設立を目指す。細胞アッセ
し、そのために必要な要素技術について研究開発を進め
イの次は膜タンパク質によるアッセイ(無細胞アッセ
てきた。これまでに、光による細胞マニピュレーション
イ)への要請が高まると予想し、引き続き膜タンパク質
技術を開発し、複数種の細胞を任意の2次元空間配置で
の利用技術の研究開発を進める。
共培養することに成功した。本年度は、当該技術によっ
[分
て精密に共培養された細胞が、通常の単層単細胞培養で
[キーワード]医薬品アッセイ、リード化合物スクリー
は不可能と考えられてきた、生体内に近い機能を発現す
ニング、細胞センシング、細胞マニピュ
ることを明らかにした。また、昨年度開発に成功した灌
レーション、機能性脂質、刺激応答性高
流型細胞アレイチップについては、昨年度に引き続き開
分子材料、バイオチップ、膜タンパク質
野
名]ライフサイエンス
発を行っていたグラジエントミキサー(チップ上で任意
の濃度の溶液を自動的に調整する機構)を組み込み、チ
⑦【太陽光発電研究センター】
ップ上で薬剤の LC50(細胞の生存率が50%となる濃
(Research Center for Photovoltaics)
(存続期間:2004.4.1~)
度)を自動的に決定できることを示した。今後は光細胞
マニピュレーション技術を応用して当該灌流型細胞アレ
イチップ内において精密共培養を行い、当該チップが医
研 究 セ ン タ ー 長:近藤
道雄
薬品候補化合物(リード化合物)の初期スクリーニング
副研究センター長:仁木
栄
に有益であることを実証する。
主 幹 研 究 員:松原
浩司
一方、膜タンパク質の利用については、半世紀以上前
から膨大な研究がなされてきたが、未だ実用の域に達し
所在地:つくば中央第2、つくば中央第5
ていないのが現状である。我々は、工学的な観点から膜
人
員:29名(28名)
タンパク質を機能性分子の一つとして取り扱うことによ
経
費:1,340,850千円(379,594千円)
概
要:
り、新たな展開が期待できるものと考えている。膜タン
パク質を活用するためには、目的とする細胞膜などから
効率的に可溶化・単離するとともに、膜タンパク質機能
21世紀は環境の時代と言われているが、人類の持続
を発現させ得る安定な支持膜に再構成し、最終的に膜タ
的発展のためには環境に配慮したエネルギーの確保が
ンパク質機能を外部への信号として取り出すチップデバ
最重要課題であり、そのために自然エネルギー、とり
イスにする必要がある。効率的な膜タンパク質の可溶
わけ太陽光発電への期待が世界的に高まりつつある。
化・単離においては、タンパク質変性剤添加により膜タ
このような背景の中、産総研が太陽光発電研究に対し
ンパク質構造をほぐしつつ可溶化を行うが、その結果、
て戦略的に取り組む拠点として当センターは設置され
タンパク質活性の著しく低い変性状態の膜タンパク質と
た。当センターでは材料デバイスにとどまらず、国の
なるため、活性ある構造に回復(リフォールディング)
中立機関として求められる太陽電池の標準の供給、ユ
させ、安定な支持膜へ再構築する必要がある。これらの
ーザサイドに立ったシステム研究に至るまで総合的に
操作においてキーとなるのが、両親媒性物質である機能
太陽光発電研究に取り組み、2010年に現在の発電コス
性界面活性剤・脂質群である。我々は、1) 水素の代わ
トを1/2に、2030年には現在の1/7にまで低減すると同
りにフッ素を導入、2) 分枝構造、3) 不飽和構造、の3
時に全電力需要の10%を太陽光発電で賄うことを目標
点に注目し、計算機化学を利用するなどして合目的的に
としたロードマップを実現するための研究開発を行う
分子設計を行い、さらに有望と推測される界面活性剤・
ことをミッションとしている。
脂質群を合成・機能評価を進めてきた。その結果、界面
近年、太陽光発電産業をめぐる世界情勢の変化はめ
化学的観点からは、フッ素導入による界面活性剤・脂質
まぐるしいが、日本は技術開発レベルにおいては依然
膜の界面安定性の向上は見られたものの、タンパク質の
世界のトップクラスにある。この地位を維持するため
可溶化性能やリフォールディング効果は殆ど示さなかっ
にも次世代に向けた技術開発が必要であり、産総研が
た。分枝構造は界面安定性を向上させるとともに、疎水
その先導的役割を果たすことを目標とする。
鎖長の長い場合はタンパク質のリフォールディング効果
太陽光発電普及を加速させるための研究の方向性と
が高いことが認められた。これらの結果に基づき、今後
して、下記課題を4つの柱として、研究活動を行って
は、分枝構造を有する界面活性剤・脂質を中心に膜タン
いる。
パク質の再構成を検討して行く。さらに不飽和構造につ
(1) 新規太陽電池材料及びデバイスの開発
いては、膜タンパク質の機能に必要な膜の柔軟性・流動
(2) 太陽電池の標準化技術、評価技術の開発
(49)
研
究
ネルギー技術研究開発/革新的太陽光発電技術研究開発
(3) 太陽光発電システム運用技術、評価技術の開発、
(革新型太陽電池国際研究拠点整備事業)/高度秩序構
維持及び規格化
造を有する薄膜多接合太陽電池の研究開発」
(4) 太陽光発電を通じた国際協力
---------------------------------------------------------------------------
財団法人産業創造研究所
外部資金:
新エネルギー・産業技術総合開発機構
助成
受託研究「無償譲渡に伴う同
財産の使用状況の確認並びに NEDO への報告等」
「高性能
の凝固体型有機色素太陽電池の開発」
発
新エネルギー・産業技術総合開発機構
表:誌上発表119件、口頭発表159件、その他62件
---------------------------------------------------------------------------
研究協力事業
「提案公募型開発支援研究協力事業」助成「太陽電池寿
シリコン新材料チーム
命評価技術の研究開発」
(Novel Silicon Material Team)
研究チーム長:近藤
新エネルギー・産業技術総合開発機構
道雄
(つくば中央第2)
受託研究「新エ
概
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム共通基盤技
要:
薄膜 Si 太陽電池は、市場拡大による大量導入が期
術研究開発/太陽電池評価技術の研究開発」
待されている次世代型の太陽電池であり、この太陽電
受託研究「新エ
池の大規模普及を推進するため、高効率化が可能な多
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム共通基盤技
接合型薄膜 Si 太陽電池のデバイス化技術を重点的に
術研究開発/発電量評価技術の研究開発 」
開発する。さらに、薄膜 Si 太陽電池で必要不可欠な
新エネルギー・産業技術総合開発機構
透明電極や光閉じ込め基板を高性能化し、これを太陽
新エネルギー・産業技術総合開発機構
電池に導入することにより変換効率の向上を目指す。
受託研究「新エ
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム未来技術研
年度進歩:
究開発/タンデム型高効率・高耐久性有機薄膜太陽電池
1)多接合型太陽電池のボトムセルに適用できる新規
ナローギャップ材料として微結晶 SiGe を開発し、
の研究開発」
Ge 組成10%・厚さ1.1ミクロンの単接合セルにお
受託研究「新エ
いて変換効率8.2%を達成した。同じ膜厚の微結晶
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム未来技術研
Si 太陽電池と比較すると、近赤外領域の量子効率
究開発/省資源・低環境負荷型太陽光発電システムの開
の増大により短絡電流密度は2-3 mA/cm2大きいこ
発」
とが確認された。また、厚さ2.2ミクロンの微結晶
新エネルギー・産業技術総合開発機構
SiGe 太陽電池では、負バイアスを印加した状態で
受託研究「新エ
30 mA/cm2 以上の光電流密度が得られた。薄膜で
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム未来技術研
赤外感度に優れた微結晶 SiGe を3接合型太陽電池
究開発/大面積 CIGS 太陽電池の高性能化技術の研究
のボトムセルに用いることで、スペクトル感度の広
開発 」
帯域化と変換効率の改善が期待できる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構
2)多接合型太陽電池の透明電極の開発では、光学吸
新エネルギー・産業技術総合開発機構
受託研究「太陽
収ロスを広帯域に渡って低減する必要がある。これ
光発電システム等国際共同実証開発事業/太陽光発電シ
まで太陽電池の透明電極として用いてきたガリウム
ステム等に係る設計支援ツール開発事業」
添加酸化亜鉛(GZO)膜の膜質向上の手法について
検討した結果、真空下での500 ℃以上の急速加熱処
新エネルギー・産業技術総合開発機構
受託研究「新エ
理(RTA)が有効であることを見出した。5分間の
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム未来技術研
RTA 処理により、キャリア濃度を1020 cm-3台前半
究開発/超薄型ヘテロ構造シリコン太陽電池の研究開
まで低減し、移動度が16 cm2/Vs から26 cm2/Vs
発」
まで向上することにより、シート抵抗を増加させる
ことなく赤外領域の透過率を大幅に改善することに
新エネルギー・産業技術総合開発機構
受託研究「新エ
成功した。この透明電極を太陽電池の表面電極に適
ネルギー技術研究開発/太陽光発電システム未来技術研
用した結果、短絡電流密度が1 mA/cm2以上向上す
究開発/高電流型高効率薄型シリコン太陽電池の研究開
ることが確認された。
3)微結晶 Si 太陽電池における光閉じ込めの高度化
発(ボトムセル)」
を目的とし、規則的な周期構造を有する新テクスチ
新エネルギー・産業技術総合開発機構
受託研究「新エ
ャー形成法を開発した。このテクスチャーはアルミ
(50)
産業技術総合研究所
ニウム基板の陽極酸化法により形成し、陽極酸化条
を開発し、セラミクス基板上で変換効率17.7%、
件および酸化後のウエットエッチング条件を制御す
金属ホイル基板上で変換効率17.4%、ポリイミド
基板上でも14.7%という高効率を実現した。
ることによりテクスチャーの形状制御も可能である
ことを明らかにした。表面の凹凸周期が約0.9ミク
・省資源型 CIGS 太陽電池の開発:CIGS 薄膜化技術
ロンの基板を作製し、これを厚さ0.5ミクロンの微
については、膜厚の異なる CIGS 光吸収層を有す
結晶 Si 太陽電池に適用した結果、従来の基板を用
る CIGS 太陽電池を作製し、CIGS 光吸収層の膜厚
いたものより短絡電流密度が約2 mA/cm 改善し、
と太陽電池特性の関係に関する検討を行った。
変換効率8.1%を達成した。
CIGS 光吸収層を高品質化することで、Mo 使用量
2
1/2以下(400 nm)、In 使用量1/3以下(CIGS 膜
厚0.8 μm、Ga 組成0.42)で変換効率15.3%を達
化合物薄膜チーム
(Thin Film Compound Semiconductor Team)
成した。Mo 裏面電極の薄膜化技術に関しては、
研究チーム長:仁木
Mo 膜厚が通常の1/4の200 nm で効率16.9%、1/10
栄
以下の70 nm でも効率16.0%と、Mo 裏面電極を予
(つくば中央第2)
概
要:
想以上薄くできることを確認した。
2030年セル効率25%、モジュール効率22%という目
標の実現に向けて20%超の CIGS 太陽電池実現のた
結晶シリコンチーム
めの要素技術の開発を行う。また、酸化亜鉛系ワイド
(Advanced Crystalline Silicon Team)
ギャップ半導体の製膜技術と材料制御技術を向上する
研究チーム長:坂田
ことで、透明導電膜の特性を向上するとともに、光・
功
(つくば中央第2)
電子デバイスとしての可能性を探る。
概
要:
1)蒸着法を用いて高品質かつ大面積な CIGS 光吸
次世代超薄型結晶シリコン太陽電池の高効率化に向
収層の製膜と集積化技術を開発することで、結晶シ
け、結晶シリコン太陽電池の作製プロセスの高度化、
リコン太陽電池並の高効率な CIGS サブモジュー
新規プロセスを取り入れた結晶太陽電池の作製を行う。
ルの開発を目指す。
プラズマレスガスエッチングによる表面テクスチャ形
2)変換効率20%超の CIGS 太陽電池の開発を目指
成技術の最適化、および低温 BSF 構造の改良と作成
し、高開放電圧で高 FF を実現するための太陽電池
条件の最適化を通じて、多結晶界面制御型太陽電池の
プロセスを開発する。
一層の高効率化を図る。また、試作ラインを活用して
3)フレキシブル基板上の CIGS 太陽電池の性能を
結晶シリコン太陽電池用要素技術の検討を行う。
向上するための技術開発を行う。
省資源低環境負荷型太陽光発電システムの開発に向
4)CIGS 太陽電池の大量導入を目指し、Mo や In な
け、非希少で低環境負荷の化合物ワイドギャップ太陽
どの省資源化技術を開発する。
電池材料の探索と評価を行う。シリコン基板への格子
整合系である III-V 稀薄窒化物系(GaPN 系)につい
年度進歩:
・大面積高品質製膜技術の開発:集積型モジュールを
て、点欠陥の評価とドーピングの検討を行う。
作製するためのプロセスを改良し、10 cm 角の集
年度進歩:
積型サブモジュールで変換効率15.9%を達成した。
次世代超薄型結晶シリコン太陽電池の高効率化にお
また、インライン CIGS 製膜において、製膜プロ
いては、基板厚さ100 μm レベルの結晶シリコン太陽
セスの高度化を図ることで、小面積セルで17.3%、
電池の作成プロセスを検討し、シリコン窒化膜形成工
10 cm 角の集積型モジュールで14.5%と固定製膜
程の改善による短波長感度の向上と、アルミ BSF 工
と同等の性能を実現した。
程の最適化による長波長感度の改善で、厚さ100 μm
・高効率化技術の開発:ドーピングによって CIGS
の 単 結 晶 シ リ コ ン セ ル ( 2 cm 角 ) で 、 変 換 効 率
光吸収層の電気伝導性の制御技術を開発し、開放電
17.3%を達成した。XeF2 を用いたプラズマレスガス
圧の向上を図ることを目的に水蒸気照射効果のメカ
エッチングにメタルマスクを併用することで用いて均
ニズムの解明と新しいドーパントの探索を行った。
一なテクスチャが形成できることも見出した。また、
水蒸気照射によってホール濃度が向上するのはセレ
低温形成 BSF(Back-surface-field)技術では、ボロ
ン空孔のパッシベーション効果にあることを明らか
ンドープ p 型 a-Si:H 薄膜、ボロンドープ p 型微結晶
にした。また、この手法を用いてワイドギャップ
シリコン(μc-Si:H)薄膜が多結晶シリコン基板の
CIGS 太陽電池の高性能化に取り組み、禁制帯幅
BSF 構造として有用であることを確認した。従来の
1.4 eV でη=15.3%(反射防止膜無)、1.3 eV でη
アルミを用いた BSF 構造と異なり、低温形成 BSF
=18.1%、1.2 eV でη=18.6%を達成した。
は厚さ100 μm の基板に形成しても反りが生じない。
・フレキシブル太陽電池の開発:C 新しい Na 制御法
III-V 稀薄窒化物系(GaPN 系)材料の研究におい
(51)
研
究
て、GaPN 薄膜中の点欠陥の解析にフォトルミネセ
コン太陽電池を作製したところ、ガラス基板上に作製
ンス(PL)が有効であることを確認した。GaPN に
した場合と同等の性能が発現可能なことを見出した。
特有なブロードな PL ピークが観測され、このピーク
当該技術は、高品質フレキシブル太陽電池の実現に資
は、膜中の窒素クラスターに起因している可能性が高
することにより、太陽電池設置場所の大幅拡大に繋が
いこと、膜成長後の熱アニールにより、窒素クラスタ
る技術である。
ーの解離と 欠 陥の低減が 生 じることが 判 明した。
NEDO の委託研究では、フッ素ガスを用いたプラ
CBr4を炭素源として使用することで、GaPN への炭
ズマクリーニング技術の開発に取り組んだ。前年度ま
素導入が実現でき、GaPN 中で炭素はアクセプタと
でにフッ素プラズマクリーニング前後でアモルファス
して働くことを確認した。炭素の活性化率は、GaPN
シリコン太陽電池特性に変化が生じないことを明らか
の中では炭素濃度によって変化することを明らかにし
にしてきた。今年度は、フッ素を用いたチャンバーク
た。
リーニング技術が、アモルファスシリコン太陽電池の
みならず、微結晶シリコン太陽電池にも適用できるか
産業化戦略チーム
否かを検証した。検証に用いたプラズマ化学気相成長
(Strategic Industrialization Team)
装置の周波数は27.12 MHz であり、対応可能な基板
研究チーム長:増田
サイズは、310 mm×410 mm である。フッ素プラズ
淳
マもしくは三フッ化窒素プラズマを用いてチャンバー
(つくば中央第2)
概
要:
クリーニングを行った場合の微結晶シリコン単接合太
産業技術総合研究所で開発された太陽光発電に関す
陽電池の特性を評価したところ、フッ素プラズマを用
る要素技術のみならず、民間企業、大学ならびに公設
いた場合においても、三フッ化窒素プラズマを用いた
試験研究機関で開発された技術をも含め、各種要素技
場合と概ね遜色ない特性が得られることが明らかとな
術の実用化可能性を検証し、産業界への技術移転を加
った。このことより、フッ素プラズマを用いたチャン
速することを目的としたチームである。ハード面では、
バークリーニングは、アモルファスシリコン太陽電池
太陽電池製造用試作ラインや実証プロト機を用いた試
のみならず、微結晶シリコン太陽電池にも適用可能で
験により、産業界への技術移転の可能性を検証してい
あることを実証できた。フッ素プラズマを用いた場合、
る。ソフト面では、太陽電池メーカーのみならず、装
本試験時の 微 結晶シリコ ン 膜のエッチ ン グ速度は
置メーカー、部材メーカーをも含めた産学官連携コン
43 nm/s であった。さらに条件によっては、最大速度
ソーシアムを設立し、産学官の人材の交流や知見の融
71 nm/s で微結晶シリコン膜がエッチング可能である
合を図ることで、太陽光発電分野における日本の産業
ことも明らかになり、本手法が高速クリーニング技術
競争力強化に資する技術開発を試みている。また、民
として有効であることも確認できた。
さらに、太陽電池の製造コストの将来予測を行った。
間企業や大学の若手人材を共同研究員として受け入れ、
集中研方式で共同研究を推進することにより、太陽光
その結果、既存技術の延長においても、ロールツーロ
発電分野の将来を担う人材の育成も試みている。さら
ールプロセスを用いた薄膜シリコン太陽電池において
に、国内外の太陽光発電に関する要素技術を幅広く調
は、モジュール製造コストを65円/W まで低減可能な
査し体系化することにより、研究開発の方向性を正し
ことを検証した。
く認識することにも努めている。
評価・システムチーム
年度進歩:
(Characterization, Testing and System Team)
各種太陽電池ならびに関連する周辺技術について、
研究チーム長:菱川
民間企業ならびに大学等との共同研究を実施した。一
善博
部の共同研究は NEDO の委託研究に基づいて実施し
(つくば中央第2)
概
たものである。
要:
1.太陽電池評価に関する研究
「フレキシブル太陽電池基材コンソーシアム」に参
画した有沢製作所、きもと、住友ベークライト、日本
日本における太陽電池標準のトレーサビリティの
合成化学工業、帝人デュポンフィルム、東芝機械、三
確立と維持、その高度化を図る。また国際比較を通
菱瓦斯化学とともに、太陽電池部材に用いることを目
してその測定技術に関する高い技術レベルを海外に
的に、ポリマー基材上に酸化物透明導電膜を低温形成
示すことで太陽電池システム輸出入の促進にも重要
する技術の開発に取り組んだ。テクスチャ構造を形成
な貢献を行う。新型太陽電池の測定技術の確立や規
した紫外光硬化性アクリル樹脂を汎用ポリマー基材に
格化においても中心的な役割を果たす。さらに、長
貼り付ける技術を平成19年度に開発したが、この技術
期寿命を保証するための加速劣化試験手法の開発や
をロールツーロールプロセスで実現可能なように改良
リサイクル手法に関する研究など、太陽電池のより
した。このようなポリマー基材上にアモルファスシリ
広範な普及に欠かせない研究を遂行する。
(52)
産業技術総合研究所
意条件への換算方式の検証を行うなど、発電量定格
1)太陽電池性能評価の基本となる一次基準太陽電池
方式の基本技術開発を行う。
校正を実施するとともに、その技術の高度化を目指
す。世界の主要な研究所・機関が参画する基幹国際
フィールドテストに関しては、屋外測定試験の国
比較において日本の Qualified Lab として高い技術
際比較を含めて運転データの収集方法・分析手法の
レベルを示すとともにその維持・向上を図る。
開発を行う。高温地域の環境に適し信頼性のより高
2)結晶 Si・薄膜 Si・化合物半導体・多接合・有機
い太陽電池の製作に有益な知見を得ることにより、
等、各種新型太陽電池の高精度な評価を可能にする
日本および当該国の太陽電池産業の発展に寄与する。
ために、各種太陽電池に特有なデバイス構造・分光
また、大量導入時における系統への影響評価および
エネルギーマネージメントの技術開発を行う。
感度特性・電気的時定数・光照射効果・温度照度依
年度進歩:
存性等を正確に考慮した性能評価技術を開発し、実
太陽電池屋外測定試験の国際比較研究に関して、高
施する。
温気候(タイ)と高温・高温度差気候(インド)、お
3)寿命の長い太陽電池モジュールの信頼性を短期間
よび温暖気候(日本)で複数種類の太陽電池の屋外曝
で評価するための複合加速劣化試験技術を開発する。
年度進歩:
露比較試験を行うために、新たにインドと九州に屋外
1)二次基準モジュールの校正値とソーラシミュレー
測定拠点を整備中である。発電量定格技術については、
タ設定照度の不確かさ、及びセルの特性バラツキに
国内7箇所で屋外測定ラウンドロビン測定を実施して、
関して、モンテカルロ法による解析を実施した。基
国内9箇所の気象における発電量を比較検証している。
準モジュール方式を採用することにより、基準セル
これらの結果をもとにアルゴリズム開発、基礎データ
方式に比べて、モジュール測定時における測定値偏
取 得 、 計 測 方 式 を 検 証 し 、 国 際 標 準 委 員 会 ( IEC
り等を解消できることを明らかにした。一次基準太
TC82 WG2) での審 議に 反 映させ る。 太 陽光・風
陽電池の校正を実施した。
力・ディーゼル等を含めたハイブリッド太陽光発電シ
2)太陽電池メーカー等で研究・開発された各種新型
ステムの設計支援ツール開発を行っている。将来の大
太陽電池セル・モジュールの測定技術開発および測
規模な PV システムの導入にあたり、系統連系技術に
定を行った。大型太陽電池モジュール内の任意のセ
おける技術的導入限界量に関する検討を行った。グリ
ルの分光感度を高精度に測定するモジュール分光感
ッド全体での短周期変動の影響を検討およびならし効
度評価の技術を高度化し、多接合モジュールの各セ
果を加味した、PV システムの変動特性に関するシミ
ル中の要素セル分光感度測定を可能とした。幅広い
ュレーションにより、日射強度の最大出力変動幅は、
温度条件における太陽電池特性を正確に評価するた
2分窓では、 数十 km に て安定し、20 分窓で は、
めに、10℃以下~65℃以上の高温域における太陽電
100 km 以上にて安定する等の知見が得られた。
池性能の屋内評価技術を開発した。
有機新材料チーム
3)3SUN 条件下でのサイクル試験が可能な複合加
速劣化試験を実施し、デラミネーションや裏面ふく
(Advanced Organic Material Team)
らみといった屋外の主要な劣化症状に対する加速試
研究チーム長:吉田
郵司
(つくば中央第5)
験の検討を実施した。複数種類のモジュールで、屋
内加速試験でこれらの症状の発生と増大を確認した。
2.太陽光発電システムに関する研究
概
要:
高性能の有機薄膜太陽電池を開発することを目的に、
太陽光発電システムの大量導入時代に向けて、太
高効率化を目指した高電圧および高電流のシングルセ
陽光発電システムの設計段階から施工、運用に至る
ルおよびタンデムセルの研究開発を行う。また、実用
までの総合支援技術を開発する。直流(アレイ)出
化に向けた高耐久性については、有機薄膜太陽電池の
力に異常があると判定された場合には、アレイ端か
劣化機構の解明を行い耐久化への設計指針を確立する、
ら信号波を入力しその反射波を観測するタイムドメ
更に、ロール・ツー・ロールなどの低コスト製造技術
インリフレクトメトリ(TDR)を用いる方法によ
に向けた、各種印刷塗布プロセスの検討などを行う。
り、不具合箇所・種類を特定するための技術を開発
色素増感太陽電池の開発では、非ルテニウム系材料
する。
としての新規有機色素の開発、ナノ結晶酸化物半導体
太陽電池モジュール等の年間発電量を各種太陽電
電極の開発、イオン性液体またはイオンゲルから成る
池で評価するため、標準試験状態(STC)を補完
電解液の導入など、低環境負荷な新規色素増感太陽電
する複数の試験条件の検討を行う。多様化する太陽
池の開発を行う。また、新規な有機色素の設計・合成
電池技術に対し、STC を補完する評価体系として、
ならびに光化学・電気化学等の基礎物性評価を行う。
発電量定格方式の検討を行う。日射・温度・分光放
年度進歩:
射の同時分布観測を実施し、線形内挿法式による任
ロールツーロール(R2R)法に向けた検討として、
(53)
研
究
ブラシ法および引き上げ法による高効率の有機薄膜太
子とヨウ素レドックスイオンとの再結合を抑制するこ
陽電池の作製を行い、従来のスピンコート法と比較し
とが高性能の原因であることを明らかにした。
た。セル構造は ITO/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM/Al
さらに、イオン液体電解液を用いた系(7%以上の
であり、活性層である P3HT:PCBM 層の作製をスピ
変換効率)において、疑似太陽光の連続2000時間以上
ンコート法の他、R2R 法に適用可能なブラシ法およ
の光照射(紫外線カット、約50度)においても光電変
び引き上げ法で行った。引き上げ法ではクロロホルム
換特性の良好な耐久性を得ることができた。80度の高
溶液から引き上げることで製膜し、ブラシ法ではテフ
温や紫外線を含む白色光下での耐久性も評価した結果、
ロン製のブラシを用いて、加熱した基板上にクロロベ
若干性能は低下するものの、色素の分解や電極からの
ンゼン溶液 を 直接塗布し た 。エネルギ ー 変換効率
脱離はほとんど起きておらず、他の要素が原因である
(PCE)は AM 1.5 G(100 mW/cm2 )の擬似太陽
ことを明らかにした。
光を照射したときの電流-電圧特性(J-V 特性)から
また、新規の有機色素の開発においては、ドナー部
評価した結果、引き上げ法及びブラシ法ともに、スピ
位であるカルバゾールドナー骨格に、ドナー性を向上
ンコート法で作製した素子と同等に3%を超える高い
させるためのアルキルオキシフェニル基を導入した、
変換効率を有する素子を作製することができた。
MK-14や MK-20を設計、合成した。これらの色素は
また、典型的な P3HT:PCBM を活性層とする有機
チオフェン数が3にもかかわらず、チオフェン数が4の
薄膜太陽電池の劣化挙動について詳細に調べた。光照
MK-2と同様の光吸収特性を示すことがわかった。こ
射下での安定性試験は擬似太陽光を50時間連続照射す
れは置換基導入により、カルバゾール骨格のドナー性
ることで行い、セルの部分的な発電特性を観測するた
が向上したためと考えられる。これらの色素を用いた
めにレーザービーム起電流(LBIC)法を用いた。
色素増感太陽電池において、酸化チタン電極等の最適
化をおこなった結果、MK-2に匹敵する8.1%の変換
窒素雰囲気中での連続光照射下安定性試験を行った
効率を達成した(アセトニトリル系電解液)。
結果、変換効率は初期効率の約40%まで大きく低下し
た。特に、開放電圧(VOC)と曲線因子(FF)の低
さらに、省資源化として、カーボンナノチューブ対
下が顕著であった。また熱アニール処理すると PCE
極の検討をおこなった(脱白金対極)。その結果、有
がほぼ試験開始時の値まで回復した。従って、劣化で
機色素を用いた太陽電池最高6.3%の変換効率を達成
は無く残存する酸素や水分によるキャリアトラップ、
することに成功した(有機溶媒系電解液)。これは、
または電極までキャリア輸送ネットワーク中のキャリ
非ルテニウムならびに非白金の省資源型の色素増感太
アトラップによる効率低下と考えられる。次に、大気
陽電池の一つの方向性を示す結果として意義があるも
中で行った連続光照射下安定性試験の結果、JSC が
のと考えられる。
大きく低下した。また、試験後の熱アニール処理を行
ったところ VOC は初期値まで回復したが、JSC はあ
⑧【システム検証研究センター】
まり回復が見られなかった。そこで LBIC 測定法に
(Research Center for Verification and Semantics)
よりセル中の光電流の2次元分布を観察したところ、
(存続期間:2004.4.1~2010.3.31)
スポット状の劣化が現れており、大気中の酸素・水分
が原因であると考えられる。更に、大気中で暗所に保
研 究 セ ン タ ー 長:木下
佳樹
存したセルの安定性(経時変化)について調べた結果、
副研究センター長:渡邊
宏
JSC が低下して大気中光照射下での劣化と同様のス
ポット状の劣化が観察された。XPS による評価から、
所在地:関西センター千里サイト
Al 電極の酸化によって実効的なセルの面積が減少し
人
員:9名(8名)
て、JSC が低下したことが明らかとなった。
経
費:172,297千円(93,049千円)
概
要:
高性能ならびに高耐久性を目指した、有機色素増感
太陽電池の開発において、新規に設計・合成した有機
色素 MK-2と、非溶媒で非揮発のイオン性液体電解質
情報処理システムによる制御が宇宙航空、原子力か
を用いた太陽電池で、7.6 %の高いエネルギー変換効
ら金融、通信、計量器にまで遍在化(ubiquitous)し
率を達成した(AM1.5G、アパーチャマスクあり、反
た結果、システムのバグ(誤動作)の社会に及ぼす影
射防止膜なしの条件下)。同じイオン液体電解液を用
響がますます深刻になっている。
いた太陽電池においては、通常色素増感太陽電池の光
現状では、実機を稼動させて動作を観察し、バグを
増感剤として用いられるルテニウム錯体(N719と
発見する、動作テストによる方法が今なお主流だが、
Z907)を用いた場合よりも効率が上回った。これは、
すべての場合を尽くせないための見落とし、再現困難
MK-2がルテニウム錯体よりも大きい光吸収係数を有
なバグへの対処などの信頼性に関する問題と、上流工
すること、分子構造により立体的に酸化チタン中の電
程では適用できない、実機の稼働後でないと適用でき
(54)
産業技術総合研究所
ないなどのシステム開発の生産性に関する問題があり、
外部資金:
もっと強力な検証法が求められている。
1.
独立行政法人 科学技術振興機構
制度名:戦略的創造研究推進事業(CREST)
本研究センターでは、数理的技法(形式的技法、
Formal Methods)による検証法(数理的検証法)の
「利用者指向ディペンダビリティの研究」(木下
佳
樹)
研究を行っている。
伝統的な意味での科学研究と、研究者の能力と知識
2.
による社会貢献を意図したフィールドワークの二本立
経済産業省
制度名:地域イノベーション創出研究開発事業
てで研究を推進し、コアメンバーが両方の仕事に携わ
「仕様書の統一様式の策定と仕様整合性検証システム
ることによって最新の科学研究の成果をフィールドワ
の研究開発」(矢田部
ークを通して社会に移転し、かつ社会の現状を観察し
俊介)
た上で科学研究のテーマを選ぶ、という双方向のイン
3.
タラクションを生むべく活動している。
独立行政法人 日本学術振興会
制度名:科学研究費補助金(基盤研究 B)
フィールドワークでは、企業や産総研内の先端情報
「仮想計算機によるコミュニケーションバックトラッ
計算センターなど、実際に情報処理システムを開発し
キングとモデル検査への応用」(高橋
ている場所をフィールドとして、そこで抱えている問
孝一)
題を、システム検証の科学技術によって解決するべく
4.
試みる。
独立行政法人 日本学術振興会
制度名:科学研究費補助金(萌芽研究)
この仕事では、必ずしも我々自身が生んだ科学研究
「多値モデル検査法を用いたモデリング・エラーの発
上の成果を応用することにはこだわらない。研究のお
見」(木下
かげで、この分野に関する能力と深い専門的知識を研
佳樹)
究員は持ち合わせており、これをフィールドにおける
5.
問題解決に利用する。
独立行政法人 日本学術振興会
制度名:科学研究費補助金 若手研究(スタートアッ
科学上の価値観よりもフィールドにおける価値観を
プ)
優先させるのである。
「テストに基づく補題発見法を用いた安全性自動検証
本年度は具体的には、L 社とのモデル模倣の検査に
器の開発」(中野
昌弘)
て行い、また、計量標準へのソフトウェア認証導入、
資金提供型共同研究
3件
規格化に関して、計測標準研究部門に協力した。さら
発
に、昨年度補正予算によって開始した連携検証施設さ
------------------------------------------------------------------------
つきの準備が本格化し、当研究センターも積極的に貢
自動検証研究チーム
献した。
(Automatic Verification Research Team)
関する予備研究、Q 社との交通運賃計算算法の検証
などの共同研究をそれぞれ相手先企業の資金提供を得
科学研究のテーマによって、算譜科学、自動検証法、
対話型検証法などの研究チームを設けているが、実際
表:誌上発表23件、口頭発表28件、その他0件
研究チーム長:高井 利憲
概
要:
の研究活動は、プロジェクトごとに班を構成し、必要
フィールドワーク1班、事例データベース班、検証
なメンバーがプロジェクト毎に離合集散する、という
自動化班、研修コース班の活動を通じて研究を実施し
形をとっている。
た。また、FW1班の共同研究成果を発展させ、モデ
理論研究のために用いる手法は、構成的型理論、数
ル検査における反例集合の獲得に関する研究も行った。
理論理学、圏論(特に Lawvere による函手意味論)、
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2
関係代数、計算論(特に項書換系)などで、現在の研
究対象は一階様相μ計算、余代数、不動点付様相論理
算譜意味論研究チーム
の函手意味論、Kleene 代数の一般化、等式付木構造
(Programming Semantics Research Team)
オートマトン、不動点付様相論理の充足可能性算法な
研究チーム長:高橋
どである。また、Chalmers 工科大学(瑞)で行なわ
概
孝一
要:
れてきた、Martin-Löf の構成的型理論に基づく対話
Agda 班、ディペンダブル OS 班、システム設計検
型証明支援系 Agda の開発に参加し、Agda をシステ
証技術研究会班、検証自動化班の班メンバーが班業務
ム検証に応用する実験をいくつか行なった。本年度は、
を通じて研究活動を実施した。
Agda の利用スキルが研究センター全体に広がり始め
Agda 班の山形賴之は、spin プラグインを作成した。
ディペンダブル OS 班の髙村博紀は、規格策定のため
た年であった。
------------------------------------------------------------------------
規格文書の読み合わせを行った。地域イノベーション
(55)
研
究
班の岡本圭史は、班の Agda 教育係として大きく貢献
[研 究 内 容]
した。システム設計検証技術研究会班の高橋孝一・玉
・抽象化ツール
DSW(Deutsch-Schorr-Waite)マーキングアルゴリ
木巌は7回の講演会を開催した。検証自動化班の高橋
ズムは、ポインタ操作プログラムの検証においてベンチ
孝一・関澤俊弦は分散検証技術の調査を行った。
マークとして知られる。Agda にプラグインとしてμ計
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2
算の充足可能性判定器を用いてこのアルゴリズムの正当
対話型検証研究チーム
性を証明した。従来の研究に比べ、証明に要する時間が
(Interactive Verification Research Team)
短縮されている点が特徴である。
研究チーム長:大崎
概
また、1次元イジングモデルの検証も行った。これは、
人士
要:
物理領域における磁性体のモデルとして知られる1次元
平成20年度の対話型検証研究チームの構成は、安部
イジングモデルを確率モデル検査を用いて検証した事例
達也、大崎人士、加藤紀夫、武山誠、松崎健男、矢田
である。この研究で得られた結果は、物理学的には既知
部俊介、冨松美知子の7名から成る。Agda 班、ディ
であるが、従来コンピュータシミュレーションなどで扱
ペンダブル OS 班、地域イノベーション班、フィール
われていた対象を形式手法の枠組みでも扱えることを示
ドワーク8班、フィールドワーク9班の活動を通じて研
した。
究を実施した。
・算譜意味論
Agda では Agda Intensive Meeting 9(AIM9)の
数理的技法により、ソフトウェアの不具合を防ぐこと
開催、Agda に関する技術相談(サポート)を実施し
を目的とする。ソフトウェアにおける数理的技法とは、
た。
ソフトウェアに対し数理モデルを与え、その数理モデル
CREST ディペンダブル OS は、10月から研究事業
の上で数学的な議論に基づき、そのプログラムが正当で
あることを証明するというものである。
を開始し、ソフトウェアディペンダビリティの規格策
既知の数理モデルを洗練させること、また、新たな適
定作業、適合性評価ガイドラインの作成、ライフサイ
切な数理モデルを探すことを研究している。
クルガイドラインの作成を手がけた。
また、数理モデルの上でプログラムの正当性を証明す
地域イノベーションでは、受発注時のコミュニケ
ーションに起因するシステムの不具合をなくすため、
るには、数理モデルに関する理論と、正当性を数学的に
特に、組込みシステム開発のための仕様書統一様式
記述する技法が必要である。このような理論と技法の研
と仕様処理システムの研究開発を行い、各システム
究を行っている。
Bishop 流の構成的数学の枠組みで$C^{*}$-algebra
の仕様およびプロトタイプを作成した。
他の2件の企業との共同研究では、それぞれ、超上
の正要素の冪に関し、ゲルファンドの表現定理を利用し
流~上流工程で作成された仕様書(要求分析資料)の
て、小笠原の定理に証明を与え、その成果を発表した。
形式的記述と検証ツールの適用実験を通じて形式手
Stefeno Berardi 教授と2-backtracking game に対応
法の利用に向けた評価、タイミングに起因するバグ
する論理体系を定義する研究を行い、その成果を Types
の検証を可能にする検証向きのソフトウェア開発手
Workshop 2009で発表した。
法の提示を行った。
一階様相μ計算の拡張方法を流用し、$CTL^{*}$を一
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2
階へ拡張した論理を新たに構築し、前者の表現力が後者
の表現力より真に強いことを証明し、その成果を発表し
[テーマ題目1]システム検証の数理的技法に関する研
た。
究(運営費交付金、(独)科学技術振興
機構
・オートマトンと検証
戦略的創造研究推進事業
大崎が在外研究のためイリノイ大学に滞在中
(CREST))
[研究代表者]木下
(2007/6-2008/5)、次の研究を行った。
(1) 評価器付ツリーオートマトン TAN の研究
佳樹
(システム検証研究センター)
従来の等式付オートマトンには適さないとされてい
[研究担当者]木下
佳樹、尾崎
弘幸、高井
利憲、
る「非線形な等式公理」の一部を自然に扱うことがで
高橋
孝一、髙村
博紀、西原
秀明、
きる枠組みであることを示した。可換冪等モノイドの
昌弘、
構造をもつ木構造言語は、従来の枠組みでは補集合演
矢田部
吉田
渡邊
部
俊介、武山
聡、岡本
宏、大崎
達也、松野
賴之、松崎
誠、中野
圭史、池上
大介、
算について閉じない例として、長らく避けて議論され
紀夫、安
ていた。関弘之教授(NAIST)との共同研究で、冪
俊弦、山形
等(x+x=x)を書換規則 x+x→x に置き換えて TAN
人士、加藤
裕、関澤
健男、北村
崇師
の受理言語として扱うとブール演算について閉じるこ
(常勤職員9名、他12名)
とが判明した。さらに、半構造化文書の整合性検証で、
(56)
産業技術総合研究所
従来の拡張型ツリーオートマトンでは扱えないが、
之、松崎
TAN の枠組みを用いると自動検証可能になる具体例
(常勤職員9名、他12名)
健男、北村
崇師
[研 究 内 容]
が見つかった。
・フィールドワーク
(2) プロポジショナル・ツリーオートマトンの研究
Joe Hendrix 氏(イリノイ大学)との共同研究で、
フィールドワーク1班:
プロポジショナル・ツリーオートマトンと交代
次世代組込みプラットフォームの検証を、矢崎総業株
(alternating)ツリーオートマトンとの相互変換に
式会社などとの共同で実施した。今年度は、まずは組込
ついて考察し、その帰結として上述の可換冪等モノイ
みネットワークプロトコル規格である FlexRay の検証
ドの例は、TAN では空判定(および包含判定)が決
を試みた。具体的には、ツール Agda を用いた定理証明
定可能であることが判明した。
と、Spin によるモデル検査の二つを行った。
フィールドワーク8班:
(3) モノトーン・AC ツリーオートマトンの研究
小林直樹教授(東北大学)との共同研究で、モノト
車載組込みシステムの開発に、数理的技法による検証
ーン・AC ツリーオートマトンの表現力について考察
を取り入れるための共同研究を行った。対象とするシス
をさらに進めて、ディオファンティン不等式制約の部
テムの開発では差分開発されるモジュールの結合時に不
分クラスとの対応を明らかにした。この結果、ペトリ
具合が発生しやすいが、本研究ではこのような不具合の
ネットの部分クラスで、所属問題の計算量がペトリネ
検出を容易にする開発の枠組みを提示し、仮想的な適用
ットよりも真に小さい場合でも、指数ディオファンテ
実験によってその有効性の評価を行った。
ィン不等式が翻訳可能であることが判明した。本研究
この枠組みでは、モジュールごとに要件を管理し、さ
成 果 は 、 国 際 会 議 ( International Conference on
らにモデル検査と模倣検査を組み合わせることによって、
Rewriting Techniques and Applications)で最優秀
ソースコードの検証が可能になる。
今後、枠組みの現場導入における課題を明らかにする
論文賞を受賞した。
ための適用実験の実施が期待される。
・統合検証環境
Agda は、仕様に対して正しいプログラムと証明の構
フィールドワーク9班:
成を支援するための記述言語およびソフトウェアシステ
2008年10月から始まった本共同研究では、社会インフ
ムである。対話型証明支援系と呼ばれる Agda は、10年
ラとなる情報システムに対する高水準の安全性を検証す
ほど前にスウェーデンのシャルマース工科大学で開発が
る技術を研究開発している。今年度(研究上半期)は、
始まったが、システム検証研究センターでは、2004年か
(1) 検査の対象となる情報システムの異なる2つの要求
ら Agda の開発に加わり、独自の拡張として外部の自動
仕様書が相互に記述漏れや矛盾がないことの検証実験、
検証ツールを統合した。
(2) 追加した仕様が意図を過不足無く記述されているこ
統合検証環境(Agda-IVE と呼ぶ)は、プログラムや
とに検証実験を行った。いずれの実験でも仕様書中の不
証明を直接編集する形の構造エディターのようなユーザ
具合や記述の漏れを発見指摘して、形式手法の適用評価
ーインタフェィスがある。「人に読んでもらって理解を
を満足のいくレベルで実施できた。現在、適用実験の規
伝えるためにプログラムと証明を書く」という考えにも
模を拡大する準備を進めている。
とづいている。Agda と Agda-IVE は、システム検証研
・研修コース
究センターの中核技術の一つであり、企業との共同研究
モデル検査研修コースを延べ四回開催した。そのうち
にも使われ、検証事例の実績を着実に上げている。
の一回は所外(宮城県公設試)からの依頼であり、一回
[分
は組込みソフト産業推進会議と関西センターとの共催に
野
名]情報通信
[キーワード]抽象化、数理的手法、自動証明、対話的
よる高度人材育成プログラム「組込み適塾」の一科目で
証明、代数構造
ある。
モデル検査研修コース中級編テキストを改良し、技術
[テーマ題目2]システム検証の数理的技法に関するフ
報告として出版した。また、新たな研修コースとして
Agda 研修コースの教材開発を開始した。今年度はコー
ィールドワーク(運営費交付金)
[研究代表者]木下
佳樹
スで扱う内容を検討し、Agda を用いた中規模の演習問
(システム検証研究センター)
題を作成した。
[研究担当者]木下
佳樹、尾崎
弘幸、高井
利憲、
共同研究にて、各自のモデル検査の教育活動を比較し
高橋
孝一、髙村
博紀、西原
秀明、
文書化した。また、モデル検査の知識を体系だてた
矢田部
吉田
邊
俊介、武山
聡、岡本
宏、大崎
達也、松野
誠、中野
圭史、池上
人士、加藤
裕、関澤
MCBOK(Model Checking Body of Knowledge)を策
昌弘、
大介、渡
定した。
紀夫、安部
俊弦、山形
[分
賴
野
名]情報通信
[キーワード]定理証明、モデル検査、組込みシステム、
(57)
研
究
の異変を予知あるいは早期に発見し迅速適切な処置
数理的技法、研修コース
を行うことによって、健康を維持増進する研究の推
⑨【健康工学研究センター】
進と健康を損なう恐れの無い生活環境の創出を目指
(Health Technology Research Center)
す研究の推進が不可欠である。具体的には、以下の
3研究課題を重点課題としている。
(存続期間:2005.4.1~)
1)生体機能解析に基づく健康維持のための予知診断
研 究 セ ン タ ー 長:国分
友邦
副研究センター長:馬場
嘉信、岩橋
主 幹 研 究 員:廣津
孝弘
技術・デバイス開発の研究
[極微量の生体試料で迅速に病変を予知診断する技術
均
の開発]
・単一細胞診断技術
所在地:四国センター
疾患に関係する生体分子等の細胞内における存在を
人
員:31名(30名)
検知して診断に役立てるため、単一細胞内のタンパ
経
費:426,431千円(250,981千円)
ク質を1分子レベルでリアルタイムイメージングす
る技術を開発する。
概
・ナノバイオデバイス診断技術
要:
疾患の早期診断に役立てるため、同定された生活習
1.ミッション
少子高齢化が進む日本の社会において、持続的に
慣病のタンパク質マーカーを簡便に解析して極微量
安心して豊かな人間生活の営みを可能にする健康に
の血液からマーカーを数分以内で解析できるデバイ
関する問題は国民の大きな関心事である。そのため
スを開発する。また、遺伝情報の個人差を解析して
健康維持にかかわる技術開発及び健康関連産業の振
罹患の可能性や薬効を診断するため、注目する遺伝
興は、総合科学技術会議や経済産業省における「新
子について個々人の配列の違いを数分以内に解析で
産業創造戦略」の中でその推進がうたわれている。
きるデバイスを開発する。
・1分子 DNA 解析技術
産総研においても第2期中期目標達成に向けて中期
計画において、社会的要請を踏まえた研究戦略の下、
個々人のゲノム情報に基づいた高精度診断を実現す
研究の重点化を図り、健康長寿を達成し質の高い生
るため、1分子 DNA 操作技術や1分子 DNA 配列識
活を実現する研究開発の推進を謳っている。
別技術等の個々人のゲノム解析に必要な要素技術を
開発する。
産総研第2期に発足した健康工学研究センターで
は、今後5年の間にこれまで四国センターにおいて
2)生体機能評価技術の研究
蓄積されてきた研究資源を礎に、人間生活における
[糖鎖糖質など疾患に関連する生体物質の機能解析]
人体の健康維持管理に関する工学的研究を中心に技
・疾患等により細胞膜の構造が変化することから、こ
術開発を進める。さらに将来的には健康工学研究領
れを知るための糖脂質及びその代謝に関連する生体
域という新領域の確立に努力し、21世紀における新
分子を探索しそれらの機能を解析し、有効なバイオ
マーカーとして疾患の診断や治療等に利用する。
たな産業創出に貢献することを目指している。
3)健康リスク削減技術の研究
具体的には、病気とは言えないがその直前の状態
(未病)にある患者候補の生理的状況を理解し、発
[健康阻害要因物質の分離除去・無害化技術]
症を予防する先端的な疾患予知診断技術の確立を目
・水や大気等の媒質中に存在する微量でも健康リスク
指す一方、身近な生活圏に存在する様々なリスク要
要因となる物質や有害な微生物などを除去・無害化
因を排し安心して暮らせる技術開発の研究を推進し、
する技術の開発及び生物学的手法と吸着法を併用し
た浄化システムを開発する。
その成果を社会に還元していくことを主たる目標と
する。また、健康工学に関する研究は様々な研究分
---------------------------------------------------------------------------
野の融合化が重要であることから、効果的な研究推
内部資金:
進を図るために産総研の健康工学関連分野の研究を
標準基盤研究
生酒高圧炭酸ガス処理システムの標準化
様々な観点から遂行している研究ユニットとの連携
並びに企業や大学との研究協力を図りながら健康関
外部資金:
連産業の振興に資する。特に本センターはこれらの
文部科学省受託費(科学技術振興調整費)1遺伝子可視
研究開発を通し、四国を中心とした地域における健
化法による遺伝子ベクター創製
康関連産業振興の拠点となっていくことを目指して
「1遺伝子可視化法による遺伝子ベクター創製、イメー
いる。
ジング用テーラーメイド量子ドットの開発」
2.研究内容
文部科学省
人間が安心して安全に暮らすためには、健康状態
(58)
安全・安心科学技術プロジェクト
産業技術総合研究所
文部科学省
「生物剤検知用バイオセンサーシステムの開発」
科学研究費補助金
特定領域研究
「SERS の機構解明による光-分子強結合場の定量評価
環境省
法開発」
地球環境保全等試験研究費「海藻バイオフィル
ターとナノ空間制御吸着剤による魚類養殖場の水質浄化
文部科学省
に関する研究」
科学研究費補助金(特定)「試験管内タン
パク質合成の分子基盤と細胞機能模倣に向けたその応
経済産業省委託費
用」
平成20年度産業技術研究開発事業
(中小企業支援型)「簡易型微細デバイス実装装置の
NEDO 平成20年度産業技術研究助成事業
細胞アッセイへの応用研究」
「近接場光による光制御型マイクロバルブの集積化を利
経済産業省委託費
用したストレス計測用 Point-of-Care デバイスの開発」
平成20年度産業技術研究開発事業
(中小企業支援型)「バイオマーカー測定による生活習
NEDO 平成20年度産業技術研究助成事業
慣病早期診断装置の商品化研究」
「DNA 伸長合成反応のリアルタイム1分子検出による
高速 DNA1分子シーケンス技術の研究開発」
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
「ナノ粒子特性評価手法の研究開発/キャラクタリゼー
ション・暴露評価・有害性評価・リスク評価手法の開
独立行政法人科学技術振興機構(JST)地域イノベーシ
発」
ョン創出総合支援事業・重点地域研究開発推進プログラ
ム平成20年度「シーズ発掘試験」「新規バイオマーカー
日本学術振興会
を用いた非アルコール性肝障害の早期診断法の開発」
科学研究費補助金(特別研究員奨励
費)
「チオレドキシン還元酵素(TrxR)阻害剤としての合
独立行政法人科学技術振興機構(JST)地域イノベーシ
金による新規抗生治療薬の創製」
ョン創出総合支援事業・重点地域研究開発推進プログラ
ム平成20年度「シーズ発掘試験」「超高密度微粒子配列
文部科学省
科学研究費補助金(若手 B)
の光ピンセットによる自動生成」
「プラズモン増強を用いた単一分子電子共鳴レーリー散
経済産業省
乱分光」
平成20年度地域イノベーション創出研究開
発事業「知的植物工場のための植物生育モデル自己補正
文部科学省
科学研究費補助金(若手 B)「熱帯熱マラ
システムの開発」
リア原虫における膜輸送関連蛋白質の同定と機能解析」
経済産業省
日本学術振興会
科学研究費補助金(基盤研究 B)
平成20年度地域イノベーション創出研究開
発事業「配向性板状チタン酸バリウム粒子を用いた鉛フ
リー圧電材料の開発」
「新規酸化ストレスマーカーを用いた食品機能解析とリ
スク評価」
経済産業省
日本学術振興会
科学研究費補助金(基盤研究 C)
平成20年度地域イノベーション創出研究開
発事業「感染症の病態別、迅速多項目診断システムの開
発」
「表面増強ラマン活性ナノ粒子による単一細胞表面タン
パク質のイメージング」
経済産業省
日本学術振興会
科学研究費補助金(基盤研究 C)
平成20年度地域イノベーション創出研究開
発事業「高付加価値医工学用ミニブタの創成と効率的生
産システムの開発」
「光トラップポテンシャル場の動的形成による非接触マ
イクロ操作の研究」
財団法人かがわ産業支援財団
日本学術振興会
科学研究費補助金(基盤研究 C)
平成20年度地域科学技術
振興事業委託事業(都市エリア産学官連携促進事業「発
「中性アミノ酸トランスポーターの制御分子開発と機能
展型」)「特徴のある糖質の機能を生かした健康バイオ産業
解析」
の創出」
日本学術振興会
科学研究費補助金(基盤研究 C)
独立行政法人日本学術振興会
二国間交流事業平成20年
「くも膜下出血後の脳血管れん縮における脂質過酸化と
度「複合糖膜の抗菌ペプチドによる機能変化とその評価
PAF アセチルヒドロラーゼの関与」
技術の開発」
(59)
研
発
究
力とする極微量サンプル操作技術により、独自のイン
表:誌上発表129件、口頭発表203件、その他27件
---------------------------------------------------------------------------
クジェットユニット、マイクロ流路型抗体固定化チッ
プ、マルチマーカー解析チップ等を開発している。
生体ナノ計測チーム
(Nano-bioanalysis Team)
研究チーム長:石川
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目4
満
ストレス計測評価研究チーム
(四国センター)
概
要:
(Stress Measurement Team)
当研究チームでは、生体分子分析化学をナノテクノ
研究チーム長:脇田
慎一
ロジー化するという趣旨で、以下の3つの課題に取り
(関西センター)
組んでいる。(i)疾患に関係する生体分子等の細胞内
概
における存在を検知して診断に役立てることを目的と
要:
ストレスや酸化ストレスマーカーを計測するため、
した、単一細胞及び単一細胞内外の生体分子を一分子
微小化学分析システム(Lab-on-a-Chip:以下ラボチ
レベルで実時間イメージングするための技術の研究開
ップ)を用いて、健康工学を指向した健幸産業の創
発(単一細胞診断)、(ii)極微量の血液から生活習慣
出を目的として、新たに、試料前処理・検出機能な
病のマーカー分子を数分以内に解析できるバイオデバ
どを集積化したラボチップ開発に挑戦し、分析処理
イスを開発して、在宅診断に寄与することを目的とし
時間の迅速化と検出装置のダウンサイジング化を行
た、バイオデバイス技術の研究開発(POCT デバイ
った。またヒト試料のみならず、細胞などの生体機
ス)、(iii)個人ゲノム解析に基づくテーラーメード医
能を利用した実試料アッセイ用バイオチップを構築
療の実現を目的とした、1分子 DNA 解析技術及びそ
した。今までにプロト開発した唾液や血液成分計測
の要素技術の研究開発(1分子 DNA 解析と要素技術)。
用ラボチップシステムに関しては、ヒト実試料によ
具体的には、“単一細胞診断”の研究開発では、単
る検証研究を行い、産業技術化を進めた。
一生体分子を可視化するための蛍光標識に必要な量
研究テーマ:テーマ題目5
子ドット技術の開発、及びその細胞機能解析への応
用、光圧を用いた細胞ソーティング技術を開発して
バイオマーカー解析チーム
いる。“POCT デバイス”の研究開発では、それぞれ
(Biomarker Analysis Team)
の方法の特長を生かして、試料の蛍光標識法と非標
研究チーム長:片岡
正俊
識法を並行して開発している。蛍光標識法では、蛍
(四国センター)
光検出デバイス、及びマイクロレンズと光源の開発、
概
要:
及び POCT デバイスの応用としてバイオマーカーの
マイクロ化学チップを中心としたバイオチップを用
検出技術を開発している。非標識法では、二次元エ
いて、臨床診断を始め生物学的解析への応用を目指す。
リプソメトリ技術を開発している。“1分子 DNA 解析
まず各種生活習慣病や感染症を対象に Point of Care
と要素技術”の研究開発では、DNA ポリメラーゼを
Testing への応用が可能なデバイス構築を行っている。
用いた1分子 DNA シークエンシング技術、及び非蛍
重篤な心血管イベントの基盤となる内臓脂肪の蓄積に
光性分子で1分子検出・同定が可能な表面増強ラマン
よるインスリン抵抗性に深く関与する TNF-αやアディ
散乱(SERS: Surface-enhanced Raman Scattering)
ポネクチンなど複数のアディポサイトカインを定量的
技術を開発している。
にマイクロチップ上での検出系を構築した。ヒト・マ
ラリア原虫(Plasmodium falciparum)の迅速診断の
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
3
確立に向け細胞チップを用いることで0.0001%の感染
率で検出時間15分の高感度・迅速診断系の構築に成功
バイオデバイスチーム
した。さらにマイクロチップ電気泳動装置の生物学的
(Bio-device Team)
解析への応用として試験管内タンパク質合成への応用
研究チーム長:大家
利彦
を行うとともに制限酵素切断長遺伝子多型のマルチ解
(四国センター)
概
析系の構築を行った。
要:
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目6、テーマ題目
バイオデバイスに向けた「精密微細加工技術」の研
7、テーマ題目8
究・開発を行い、これを用いて「極微量の血液から各
種バイオマーカーを数分以内で解析できるデバイス」、
生体機能評価チーム
など、バイオナノデバイスを基盤とした「新規バイオ
(Glicolipid Function Analysis Team)
デバイス」を実現することを目的とする。具体的には、
研究チーム長:仲山
レーザ等を用いた加工技術、圧電素子やレーザを駆動
賢一
(四国センター)
(60)
産業技術総合研究所
概
要:
放射線ストレスが脳に及ぼす影響を解析した。⑦企業
糖脂質などにより形成されるマイクロドメインによ
との共同研究で、超微細振動が実験動物の行動や脳機
能に及ぼす影響の解析を開始した。
る細胞の制御機構の解明を行い、病気の診断・治療に
研究テーマ:テーマ題目12
応用していくことを目標として研究を行った。(1) 糖
脂質によるシグナル受容体の制御機構の解明および糖
脂質の生合成機構の解明、(2) 免疫系に作用する複合
健康リスク削減技術チーム
糖質の解析、(3) 環境耐性酵母を用いた糖鎖工学技術
(Health Hazards Reduction Team)
の開発、の3課題について研究を進めた。その結果、
研究チーム長:廣津
孝弘
(四国センター)
糖脂質によるシグナル受容体の制御機構においては糖
概
脂質の糖鎖とレセプターの糖鎖の相互作用が重要な役
要:
割を果たすことが明らかとなった。また、糖鎖工学技
人の健康を維持管理する1つの方法は、身近な生活
術の開発においては、実用的な糖タンパク質生産の基
環境中に存在し健康を阻害する有害物質を体外で除
礎となる酵母株の取得に成功した。
去・無害化し、人体内でのそれらの作用を阻止するこ
とである。従って、水、大気等媒質中に存在する微量
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目9、テーマ題目
でも有害な健康リスク要因となる物質(イオン、分子、
10
バクテリア等)を安全にかつ効果的に吸着除去・無害
ストレス応答研究チーム
化する基盤的技術を開発する。さらに、これらの技術
(Stress Response Team)
と自然浄化機能を活用する生物学的手法を統合した浄
研究チーム長:吉田
化システムを提案する。特に、(1)有害オキソ酸イオ
康一
ン(硝酸イオン、リン酸イオン等)等を水質基準以下
(関西センター)
概
要:
に抑えるための無機イオン交換体の開発、及び有害有
ストレスに対する生体の応答、反応を分子、細胞、
機分子の吸着・酸化無害化系の提案、(2)多成分から
個体レベルで解明する。そのエビデンスをもとに候補
なる水系(Cl イオン濃度<0.1 mol/l)においても持
としているストレスバイオマーカーの有用性を検証し、
続性を示す安全な水系抗菌剤を開発する。バクテリア
早期診断診断や予防法、防御薬物の開発へとつなげる。
等を特異的に認識・無毒化する新規ナノカーボン複合
研究成果として、①ストレスに対する生体応答に関し
体の設計を基礎的に進める。これらの基盤技術を統合
細胞および実験動物によってメカニズムの解明を行っ
し、機動的な浄水システムを提案する。さらに、(3)
た。②ヒト疾病患者やそのモデル動物を用いてストレ
海藻等の自然浄化機能を活用する生物学的手法と吸着
スマーカーの有用性検証試験を行った。③バイオマー
技術を組み合わせた海水系の浄化システム(全 N:1
カーの産業実用化を促進するため開発した特異的抗体
ppm 以下、全 P:0.09 ppm 以下)の提案を行う。また、
を用いて簡易測定システムの開発を行った。
研究の新たな展開を念頭に、関連する基礎的技術を積
極的に推進する。
研究テーマ:テーマ題目11
研究テーマ:テーマ題目13、テーマ題目14、テーマ題目
15、テーマ題目16
精神ストレス研究チーム
(Mental Stress Team)
---------------------------------------------------------------------------
研究チーム長:増尾
[テーマ題目1]単一細胞診断技術
好則
[研究代表者]石川
(つくばセンター)
概
仲山
要:
満(生体ナノ計測チーム)
賢一(生体機能評価チーム)
ストレスが行動や脳に及ぼす影響を解明する。スト
[研究担当者]石川
レスによる中枢神経系の応答、反応、障害の状況を詳
平野
研、Vasudevan
仲山
賢一(常勤職員6名、他5名)
細に把握し、ストレスから精神障害に至る経路を明ら
かにすることにより、精神障害の予防・治療技術の確
満、福岡
聰、田中
芳夫、
Pillai BIJU、
[研 究 内 容]
立へつなげることを目的とする。平成20年度は、各種
細胞膜上の増殖因子受容体(EGFR)の存在状態の違
ストレス負荷動物を作製し、脳緒部位および血液にお
いに着目して、がん細胞と正常細胞を区別することが本
ける遺伝子・蛋白質の網羅的解析を行った。①ストレ
題目の第1の目的である。今年度の目標は以下の通り。
スによる脳の発達障害の解析を行った。②ストレスに
量子ドットで標識した成長因子 EGF が成長因子レセプ
よる鬱病モデル動物の解析を行った。③日内リズム攪
ターEGFR を活性化するかを確認する。確認後、EGF
乱が脳に及ぼす影響の解析を行った。④運動が脳に及
の活性に問題がなければ糖脂質存在下、非存在下での
ぼす影響を解析した。⑤慢性的な日本酒の摂取が脳と
EGFR の挙動を量子ドットで標識した EGF を用い、
肝臓に及ぼす影響を解析した。⑥ガンマナイフによる
AFM と蛍光顕微鏡を用いて観察を行い、作用機序を解
(61)
研
究
目標は以下の通りである。非特異吸着防止の研究では、
明する。
量子ドットによる生体分子の蛍光標識技術による細胞
現状では非特異吸着なしで良好な分離特性が得られるタ
およびその構成成分の可視化の研究では、今年度の目標
ンパク質の種類が限られているので、この種類を拡張す
は、量子ドットの表面を細胞膜および核透過機能を有す
るために、新しく合成した疎水性のヒドロキシエチルセ
るペプチド類で標識して、遺伝子の細胞内導入過程に着
ルロース(HEC)誘導体を基本としてそれと既存のセ
目した研究を実施する。
ルロース誘導体を組み合わせた新しいハイブリッド・コ
昨年度、昆虫由来のペプチドで表面修飾した量子ドッ
ーティング法を開発する。心筋梗塞診断デバイスの開発
トが、細胞質内部のみならず核まで到達するという特異
では、心筋梗塞マーカーの H-FABP タンパク質をマイ
的な現象を見出した。今年度、量子ドットが細胞質内部
クロ流路中で検出するため流路設計および検出系を設計
へ移行する機構の解明に焦点を当て、細胞の集団を対象
し、血球成分分離ユニットの流路組込む。イメージング
として、クラスリン形成阻害剤と一般的なエンドサイト
エリプソメトリーの開発では、数10個以上の遺伝子また
ーシス阻害剤を組み合わせて、移行に対する効果を調べ
は生体マーカーを非標識で計測するため、プロトタイプ
た。その結果、ぺプチド修飾量子ドットは、クラスリン
のマイクロアレイを作製するとともに、表面プラズモン
と呼ばれるタンパク質形成を経て細胞質内に取り込まれ
共鳴(SPR)およびエリプソメトリに基づくマイクロ
る機構(クラスリン依存型エンドサイトーシス機構)が
アレイ計測システムを構築する。
今年度、非特異吸着防止の研究では、新しいセルロー
示唆された。
従来の細胞ソーティング技術では達成されていない5
ス誘導体を用いて、PMMA 製のバイオチップ表面をコ
種類以上の細胞(粒子)の回収操作を、光圧を用いた新
ーティングする方法を開発した。セルロース誘導体の置
規なマルチソーティング法を用いて実現することが本題
換基の種類に依存して、コーティングの機械的安定性、
目の第2の目的である。今年度の目標は、マルチ細胞ソ
親水・疎水性の程度、電気泳動の分離特性に顕著な違い
ータの自動化されたプロトタイプ機を製作し、実用化の
があることを見出した。表面赤外分光法を用いた結果、
観点から、動物細胞を用いて性能を評価する。実用化に
コーティング表面のセルロース誘導体の官能基と
必要な装置・マイクロチップ・ソフトウエア制御の機能
PMMA 表面の官能基が形成する水素結合の程度が、分
を統合することである。
離特性を特異的に支配していることを、初めて、水素結
今年度、装置、マイクロチップ、ソフトウエア制御の
合構造と関連付けて説明することに成功した。心筋梗塞
各機能を強化して、6種類を同時に分取可能となった。
診断デバイスの開発では、全血を用いたマイクロチップ
複数の動物細胞のソーティングを自動化するために、ソ
上での H-FABP 検出系の構築のため、レクチン標識磁
フトウエアを新たに開発した結果、蛍光情報を利用して
気ビーズを用いることで遠心などの前処理を必要とせず
微粒子の種類を区別する制御が可能となった。
短時間で効率的な赤血球の除去方法を構築した。さらに
[分
環状ポリオレフィン基板上で抗原抗体反応を用いた結果、
野
名]ライフサイエンス
臨床診断に用いられる6.2 ng/mL 以上の H-FABP を定
[キーワード]単一細胞、量子ドット、蛍光イメージン
量検出する系を構築した。
グ、AFM、増殖因子レセプター、糖脂
イメージングエリプソメトリーの開発では、マイクロ
質、光圧、細胞ソーティング
アレイ表面に結合した DNA およびタンパク質を高精度
で定量するのに有効な、回転補正子型イメージング法を
[テーマ題目2]バイオナノ技術を用いた診断デバイス
開発した。この方法を用いて溶液中の DNA とタンパク
の開発
[研究代表者]石川
大家
[研究担当者]石川
満(生体ナノ計測チーム)
質をその場で測定するため、プリズムに基板を配置する
利彦(バイオデバイスチーム)
測定を試み、当配置における装置校正および測定を実施
満、片岡
した。金属酸化物の高屈折率層とシリカ層を順番にガラ
正俊、大槻
利彦、田中
荘一、
伊藤
民武、大家
内海
明博(常勤職員8名、他12名)
ス表面に設けたマイクロアレイ用基板を新たに設計・作
正人、
製して、プローブ分子の高効率固定化と DNA やタンパ
ク質のより高感度の計測を実現した。
[研 究 内 容]
POCT 用途に開発されたポリメチルメタクリレート
[分
(PMMA)等、ポリマー製のバイオデバイスに対する
野
名]ライフサイエンス/ナノテクノロジー・
材料・製造
タンパク質等の非特異吸着を防止するための新しいダイ
[キーワード]電気泳動、タンパク質マーカー、血液、
ナミックコーティング法を開発して、疾病等のマーカー
疾病リスク、健康
生体分子を蛍光標識型の電気泳動法を用いて解析するこ
と、および数10個以上の遺伝子またはマーカー生体分子
[テーマ題目3]個人のゲノム情報に基づく診断技術の
を非標識で計測できるマイクロアレイ創製することが本
要素技術開発
題目の目的である。本題目に含まれる各項目の今年度の
[研究代表者]石川
(62)
満(生体ナノ計測チーム)
産業技術総合研究所
[研究担当者]石川
平野
満、田中
芳夫、伊藤
[研 究 内 容]
民武、
微細流路、流体制御素子と電子回路が共存し、多項目
研(常勤職員4名、他3名)
の同時診断が可能な集積型診断デバイスの実現に向け、
[研 究 内 容]
従来法の限界を克服するために、1分子で DNA の塩
レーザを用いた精密微細接合・除去・整形等の加工技術
開発を行う。
基配列を解析することが本題目の目的である。この目的
を達成するために、それぞれ特長のある蛍光標識法と非
今年度は、PMMA(アクリル)及び COC(環状ポリ
蛍光標識法を並列して研究する。非蛍光標識法では、要
オレフィン)表面に形成した流路底面の抗体固定化能力
素技術として、核酸塩基等を直接1分子検出感度が期待
を向上させることを目的とし、波長193 nm のエキシマ
される表面増強ラマン散乱(SERS)分光の高感度化お
レーザを用いた局部的な表面処理とその評価を行った。
よび高感度発現効率を向上させることが目的である。
生活習慣病診断用バイオチップに適用した結果、市販の
ポリマーコーティングと同等以上の効果が得られること
蛍光標識法では、ポリメラーゼ反応によって、1分子
DNA のシーケンスをリアルタイムで検出・同定する。
がわかった。
今年度の目標は、4種類の塩基を高い S/N で識別するた
[分
野
名]ライフサイエンス/ナノテクノロジー・
材料・製造
めに検出光学系の透過率を向上させることである。また、
DNA ポリメラーゼ自体を改変し、蛍光標識ヌクレオチ
[キーワード]バイオナノ、診断デバイス、バイオチッ
ドを効率的に取り込み、ヌクレオチド取り込みのエラー
プ、疾病リスク、微細加工、レーザ、健
の少ないポリメラーゼを探索する。
康
今年度、新たな波長のレーザと新型の高感度カメラを
導入して蛍光測定を高 S/N 化した。現在得られている
[テーマ題目5]ストレス物質計測評価デバイスの開発
DNA ポリメラーゼの他に、蛍光色素を連続的に取り込
[研究代表者]脇田
慎一
(ストレス計測評価研究チーム)
むポリメラーゼをスクリーニングして、当該目的に適し
[研究担当者]脇田
たポリメラーゼを新たに見出した。
慎一、田中
喜秀、永井
秀典
(常勤職員3名、他6名)
非蛍光標識法では、今年度の目標は、表面増強ラマン
[研 究 内 容]
散乱(SERS)の増強度機構に基づいて、実験で取得可
能なプラズモン弾性散乱共鳴増強光電場の強度、共鳴ラ
試料前処理・検出機能などを集積化したラボチップ開
マン散乱断面積、そして蛍光断面積を用いて SERS ス
発に挑戦し、分析処理時間の迅速化と検出装置のダウン
ペクトルを定量的に評価する手法を実験的、理論的に検
サイジング化を目指し、ヒト試料のみならず細胞を利用
証して、その結果から、対象分子に最適な SERS 測定
した実試料アッセイを構築した。前年度までにプロト開
条件を提示することである。
発した唾液や血液成分ラボチップシステムではヒト実試
料による検証研究を行い、産業技術化を進めた。
今年度、局在表面プラズモン(LSP)共鳴によるラマ
ン増強因子 M と蛍光減衰因子 q を、代表的な3種類の
全分析プロセスを集積化した遠心力駆動型ラボディス
SERS 活性分子を用いて実験と理論の両面から定量的に
クの設計研究を行い、唾液中のタンパク定量を実現した。
評価した。その結果、それぞれ、M~108 と2*q~10-9と
また細胞の任意配置を可能とするラボディスクを作製し
いう物理的に妥当な値を得た。さらに、励起波長を
た。さらに携帯型唾液代謝物計測チェッカをプロトタイ
LSP 共鳴波長に接近させると、SERS 強度が増強して
プ開発した。プロト開発した唾液や血液成分ラボチップ
スペクトルが S/N よく測定できることを実験的に検証
システムの実用化へ向けた研究開発を行った。特に、電
した。以上、SERS 電磁場モデルに含まれるパラメータ
気泳動型ラボチップ開発ではプロトタイプのダウンサイ
(LSP 共鳴、共鳴ラマン散乱、励起波長)を用い、
ジング化に成功した。
SERS スペクトルを定量的に再現する計算手順を確立し
[分
[分
野
名]ライフサイエンス/ナノテクノロジー・
材料・製造
た。
野
[キーワード]ラボチップ、マイクロ電気泳動チップ、
名]ライフサイエンス
[キーワード]1分子 DNA、1分子操作、ゲノム解析、
遠心力駆動型ラボディスク、ISFET、
表面増強ラマン散乱、局在表面プラズモ
唾液、ストレスマーカー、バイオマーカ
ン
ー、オンチップ前処理
[テーマ題目6]生活習慣病診断用バイオチップの開発
[テーマ題目4]集積型診断デバイスに向けたレーザ微
[研究代表者]片岡
細加工技術の開発
[研究代表者]大家
利彦(バイオデバイスチーム)
[研究担当者]大家
利彦、内海
明博、田中
正俊
(バイオマーカー解析チーム)
[研究担当者]片岡
正人
正俊、八代
聖基、山村
(常勤職員3名、他4名)
(常勤職員3名、他3名)
(63)
昌平、
研
究
[分
[研 究 内 容]
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]マイクロチップ電気泳動、生物学的解析、
心筋梗塞や脳梗塞など重篤な心血管イベントの発症に
バイオチップ、マルチ解析、遺伝子多型
は内臓脂肪の蓄積による筋肉組織などでのインスリン抵
抗性が中心的な役割を果たす。インスリン抵抗性は内臓
脂肪などで産生される TNF-αなどのアディポサイトカ
[テーマ題目9]免疫系に作用する複合糖質の解析
インにより規定されるが、この複数のアディポサイトカ
[研究代表者]仲山
賢一(生体機能評価チーム)
インをマイクロ流路上で数μl 単位の血漿量で定量的に
[研究担当者]仲山
賢一、安部
検出できる抗原抗体反応系を構築した。さらに検出時間
を30分程度に短縮するように反応系を構築している。
[分
野
博子、奥田
徹哉
(常勤職員3名)
[研 究 内 容]
名]ライフサイエンス
免疫系に作用する糖脂質を各種食材から抽出し、その
[キーワード]生活習慣病、バイオチップ、マイクロ流
活性をマクロファージ様細胞を用いて解析を行ったもの
路、臨床検査、抗原抗体反応
について、活性が確認されたものを中心に、実験動物を
用いた生体内での活性確認を行った。
[テーマ題目7]熱熱帯マラリアの赤血球寄生様式の機
[分
構解明
[研究代表者]片岡
名]ライフサイエンス
[キーワード]免疫、糖脂質
正俊
(バイオマーカー解析チーム)
[研究分担者]片岡
野
正俊、八代
聖基、山村
[テーマ題目10]環境耐性酵母を用いた糖鎖工学技術の
昌平
開発
(常勤職員3名、他4名)
[研 究 内 容]
[研究代表者]仲山
賢一(生体機能評価チーム)
[研究担当者]仲山
賢一、安部
熱熱帯マラリア原虫の膜輸送タンパク質の同定と機能
博子
(常勤職員2名、他1名)
解析を目標に、ヒト・マラリア原虫の赤血球内寄生時に
[研 究 内 容]
おける原虫外膜系の形成機構と赤血球膜へのタンパク質
昨年度までに単離された高温で生育可能なヒト適応型
輸送機構をタンパク質レベルで解明するものである。そ
糖鎖付加酵母について、糖タンパク質の分泌量について
して N-ethylmaleimide-sensitive factor(Pf NSF)の
解析を行った。その結果、糖タンパク質の分泌生産量は、
マラリア原虫ホモログを足がかりにして複数の原虫由来
野生型株の10倍に達するものもあり、生産性が向上して
の膜融合装置関連タンパク質を同定するために、昨年度
いることが明らかとなった。常温での生育の向上と、こ
より作成に着手していたマラリア NSF 特異的抗体を用
のタンパク質の分泌生産量の向上は、今回取得された新
いて免疫枕降法によりマラリア感染赤血球膜から原虫膜、
規酵母がヒト適応型糖鎖付加糖タンパク質の生産に適し
寄生胞膜形成に関与する膜融合関連タンパク質の候補を
たものであることを示している。
数種類クローニングした。
[分
[分
[キーワード]環境耐性、糖タンパク質
野
名]ライフサイエンス
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]熱熱帯マラリア原虫、小胞輸送、膜融合
タンパク質、赤血球、抗体
[テーマ題目11]ストレスマーカーの検証試験と製品化
研究(運営費交付金)
[テーマ題目8]マイクロチップの生物学的解析への応
用
[研究代表者]片岡
正俊
正俊、八代
康一(ストレス応答研究チーム)
[研究担当者]岩橋
均、吉田
康一、七里
元督、西
敬子、小川
陽子、福井
浩子、地
尾
(バイオマーカー解析チーム)
[研究分担者]片岡
[研究代表者]吉田
聖基、山村
頭所
昌平
眞美子、石田
規子
(常勤職員8名)
(常勤職員3名、他4名)
[研 究 内 容]
[研 究 内 容]
酸化生成物などのストレスバイオマーカー候補分子に
市販されているマイクロチップ電気泳動装置の汎用性
よる細胞応答を、市販されているセルライン、初代培養
を高めるために生物学系の実験や臨床検査を見据えた応
細胞、実験動物を用いて適応効果の観点から詳細に分子
用性を検討している。日立 SV1100系による RNA 発現
生物学的研究を行った。一方、提案しているストレスバ
解析や SV1210系を用いた12レーンチップを使用して血
イオマーカーの検証試験として、細胞実験、実験動物に
液型を対象とする迅速マルチ解析が可能な制限酵素切断
よる検討及び大学病院等との共同研究による疾病患者お
長遺伝子多型解析法を構築した。さらに mRNA 発現解
よび健常者(疲労状態を含む)の血液等を用いた検証試
析を目的とする RNase protection assay マイクロチッ
験を精力的に進めた。特に、疾患のモデル動物によって
プ基板上で構築中である。
もバイオマーカーの変動が実際の患者と一致し、今後疾
(64)
産業技術総合研究所
患のメカニズム解明に大きく寄与できると期待される。
非侵襲的な外科的治療法としてガンマナイフによる
産業応用を目指して、迅速測定法として抗体を用いた
定位的放射線治療が行われている。ガンマナイフによ
ELISA システムの構築を行った。
り動物の一側線条体にガンマ線を照射した後 OMICS
[分
解析を行った結果、照射側および反対側における遺伝
野
名]ライフサイエンス
子・蛋白質の発現変化および代謝調節機構の変化を見
[キーワード]バイオマーカー、酸化ストレス、抗酸化
出した。
物質、細胞
(7) 超微細振動が脳に及ぼす影響
健康グッズとして、超微細振動を発する装身具が開
[テーマ題目12]ストレスが脳機能に及ぼす影響の解析
発されており、使用者に対するアンケート調査では顕
(運営費交付金)
[研究代表者]増尾
好則(精神ストレス研究チーム)
[研究担当者]増尾
好則、平野
著な効果が示唆されている。今年度より、企業と共同
で、超微細振動の効果に関する解析を開始した
美里、
Randeep Rakwal、柴藤
[分
淳子
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]脳の発達障害、鬱病、日内リズム、運動、
(常勤職員1名)
アルコール、ガンマナイフ
[研 究 内 容]
最近、社会的問題になっている脳の発達障害や鬱病の
[テーマ題目13]微量で健康に有害な化学物質の除去・
発症メカニズム、及び日内リズム攪乱、運動、慢性アル
無害化技術
コール摂取、ガンマナイフによる脳定位手術が脳に及ぼ
す影響等について解析を進めるとともに、脳と血液にお
[研究代表者]廣津
けるストレスマーカーの探索を行った。
[研究担当者]廣津
槇田
(1) 注意欠陥多動性障害(ADHD)モデル動物
脳の発達障害の中でも発症率が高い ADHD の発症
孝弘(健康工学研究センター)
孝弘、坂根
洋二、王
幸治、苑田
晃成、
正明(エネルギー技術
研究部門)(常勤職員5名、他3名)
[研 究 内 容]
機序を調べた。幼若期に6-ヒドロキシドーパミンを大
槽内投与し、脳内ドーパミン神経の発達を阻害して行
水系で健康に有害な硝酸イオン等のオキソ酸陰イオン
動異常を示す動物を作製した。比較対照として、先天
を水質基準以下に低減できる実用的な新規イオン交換体
的に行動異常を示す ADHD モデル動物を用いた。そ
の開発を目標とする。さらに、微量の有害有機分子を酸
れぞれの脳緒部位を摘出し、OMICS(ジェノミクス、
化無害化するための新規材料を設計・開発する。本年度
プロテオミクス)解析を行った結果、行動異常発症に
は、イオン半径の大きいオキソ酸イオンを選択的に分離
関わる可能性が高い遺伝子群および蛋白質群が明らか
できる新規イオン交換体の設計を進めた。硝酸イオン分
になった。
離用繊維状成形体による原水からの硝酸イオン吸着性を
実証した。有害有機物捕捉・無害化剤の開発のため、炭
(2) 鬱病モデル動物
素薄層とチタニアからなる新規光触媒複合体の構造最適
動物に拘束、水浸等のストレスを負荷し、鬱病モデ
化を行い、その実証も試みた。
ルを作製した。脳緒部位を摘出し、OMICS 解析を行
有害なオキソ酸イオンとして、既に硝酸イオンあるい
うことにより、遺伝子発現および蛋白質発現の変化を
はリン酸イオンの高選択的な捕捉剤の開発に成功してい
明らかにした。
る。この設計手法に基づいて、よりサイズが大きく毒性
(3) 日内リズム攪乱が脳に及ぼす影響
昼夜逆転などの明暗周期攪乱による脳機能の変化を
の 高 い 臭 素 酸 イ オ ン ( BrO3- ; 水 道 水 質 基 準 値 =10
解析した。恒常的明期で飼育した動物の脳緒部位を摘
ppb)に高選択性を示す捕捉剤の開発を開始した。各種
出し、OMICS 解析を行うことによって、遺伝子発現
水酸化物、オキシ水酸化物、層状複水酸化物(LDH)、
および蛋白質発現の変化を明らかにした。
その焼成体の選択捕捉性を予備的に調べた結果、LDH
(4) 運動によるストレス
焼成体やアカガナイト(β-FeOOH)などが臭化物イオ
動物に運動をさせた後、脳諸部位について OMICS
ンおよび臭素酸イオンに高い捕捉性を示すことが分かっ
解析を行うことにより、遺伝子発現および蛋白質発現
た。
の変化を明らかにした。運動の程度によって快・不快
安全な元素で構成される Mg-Al 系 LDH の微粒子
ストレスとなり得ることを脳内物質レベルで証明する
(平均粒径:約0.6 μm)をその粒子界面が非接触にな
と共に、重要なストレスマーカー候補を見出した。
るように高分子マトリックス内に担持した、硝酸イオン
(5) 慢性アルコール摂取が脳に及ぼす影響
分離用繊維状成形体を用いて、井戸水中の硝酸イオンの
動物にアルコールを慢性的に摂取させた後、脳およ
分離性能を評価した。15 ppm の硝酸イオンで汚染され
び肝臓について OMICS 解析を行い、遺伝子・蛋白質
た井戸水を空塔速度(SV)20/h および120/h という超
発現、および代謝調節機構の変化を明らかにした。
高速のカラム処理で、水道水質基準(10 ppm)を満た
(6) 放射線ストレスが健常脳組織に及ぼす影響
す処理水が、それぞれ充填吸着材体積の120および180倍
(65)
研
究
量、短時間得られることを実証した。この成果は、国際
流水系で粉末状抗菌剤の抗菌性を経時的に調べることが
見本市に展示し、多くの国から関心を得た。
可能となった。
カーボンナノチューブの特性を好適に活用するために、
昨年度に続きチタニアナノチューブ二次元沈着炭素ナ
ノシート複合体の合成条件についてさらに検討した。低
これを複合化し、溶媒親和性を改善し、あるマトリック
温窒素吸着等温線、赤外/ラマン分光法、走査型/透過
ス中に分散させる必要がある。本研究では、リン脂質と
型電子顕微鏡などの手法から合成の各過程の試料の細孔
牛血清アルブミンで界面機能化したカーボンナノチュー
特性、炭素及びチタニアの構造/モルフォロジの変化を
ブ複合体を新規に開発し、これを均一分散したポリジメ
詳細に調べ、複合体の形成メカニズムを解明した。この
チルシロキサンハイブリッドを製造できることを見出し
複合体の発現する著しい有機物光分解特性は、複合体の
た。この技術をもとに、本カーボンナノチューブ複合体
細孔構造によるのではなく、むしろベースとなる炭素ナ
を内包したマイクロデバイスを試作し、近赤外レーザー
ノシートの吸着親和作用と炭素ナノシートの上にあるア
光(1064 nm)によりマイクロチャネル内の局所加熱制
ナターゼナノロッド結晶の優れた光触媒活性の協同的作
御や様々な酵素反応(DNA 増幅反応、シクロデキスト
用によることを明らかにした。本複合体を用いる実験室
リン合成反応など)の高度な制御が可能なことを実証し
レベルでの循環流通式カラムシステムを構築・検討でき
た。
た。
[分
[分
野
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]抗菌剤、銀錯体、塩水、層状ニオブ酸化
名]ライフサイエンス
物、層間担持、疎水化、ナノ複合体、分
[キーワード]イオン交換、選択捕捉、硝酸イオン、臭
子認識、ナノカーボン、光発熱
素酸イオン、層状複水酸化物、浄水、難
分解性有機化合物、層状化合物、チタニ
[テーマ題目15]生物学的手法を統合した浄化システム
ア、ナノロッド、光分解
の構築
[研究代表者]垣田
[テーマ題目14]水系微生物の無害化に関する研究
[研究代表者]廣津
(健康リスク削減技術チーム)
孝弘
[研究担当者]坂根
(健康リスク削減技術チーム)
[研究担当者]廣津
槇田
孝弘、小比賀
洋二、都
浩孝
幸治、垣田
浩孝、小比賀
秀樹
(常勤職員3名、他3名)
秀樹、
[研 究 内 容]
英次郎
魚類により富栄養化された海水中の窒素、リンを環境
(常勤職員4名、他2名)
基準値(全窒素:1 ppm 以下、全リン: 0.09 ppm 以
[研 究 内 容]
下)にまで低減し、それを海域に戻すための「洋上半閉
水系で抗菌性を発現する抗菌材料の設計・開発を目指
鎖型魚類養殖システム」のモデルを設計する。このため、
す。特に、その広いスペクトルと安全性に着目し多成分
系においても抗菌性を持続的に発現できる新規銀系抗菌
研究課題を次の3つのサブ課題:(a)生態系に係わる物
剤の開発、ある特定の微生物を特異的に認識しかつ無害
質収支(海藻等の増殖に関する物質収支)の解明、(b)
化できる新規ナノ複合体の設計を集中的に行う。
ナノ空間制御吸着剤による海水中濃度の環境基準値まで
多成分系においても抗菌性を持続的に発現できる新規
の低減、(c)生態系リサイクルを達成するための海藻の
銀系抗菌剤の開発においては、剥離・再配列反応を利用
利用法の確立、で計画構成し、それらを目標にして研究
して、層状ニオブ酸化物(Ca 含有物)の層間にメチオ
を進める。
本年度は、(a)魚類養殖実験排水と同等の高栄養塩含
ニン銀およびヒスチジン銀錯体を担持し、その表面をい
くつかの異なるシリル化剤(Me-Si-OEt3、Et-Si-OEt3、
有海水を海藻で処理し、海藻による海水中の窒素、リン
Ph-Si-OEt3 、 18-Si-OEt3 ) で 修 飾 し 疎 水 化 し た 。
濃度低減能力を評価した。(b)硝酸イオン吸着剤、リン
4 mM NaNO3中において銀イオンの溶出性を調べた結
酸イオン吸着剤を大量合成した。吸着処理効率を上げる
果、アルキル基の鎖長が長いほど銀イオンの溶出量が抑
ために、粒径の小さい粒状吸着剤が得られる造粒条件を
制されることが分かった。同様の方法でアミノ酸銀錯体
検討した。(c)海藻粗抽出液から海藻由来有用成分(免疫
を担持した類似の層状ニオブ酸化物(Ti 含有物)の表
増強成分)を回収する実験を3回実施し、有用成分回収率
面をシリル化剤で疎水化した試料について、塩化物イオ
の再現性を評価した。
ンを含む水系で大腸菌に対する抗菌性を調べた結果、疎
本年度の研究により以下のことが明らかになった。
水化しても抗菌効果が発現することを確認した。また、
(a)マダイ養殖実験排水と同程度の高栄養塩含有海水
多成分系の水環境中における抗菌効果の持続性を評価す
(NH4+ -N; 1.90 ppm, PO43- -P; 0.090 ppm)1 L
るために、培養液の添加量、pH、Cl 濃度を変えて大腸
に海藻5.0 g を用いて1日で環境基準法(生活環境項目
菌の生育性を調べ、大腸菌を長期間成育できる成育条件
海域4類型)の全窒素基準値 NH4+-N; 1.00 ppm 以下、
範囲を明らかにした。抗菌効果持続性評価装置を作製し、
全リン基準値 PO43--P; 0.09 ppm 以下まで低減可能
(66)
産業技術総合研究所
であることを明らかにした。(b)硝酸イオン吸着剤の大
従って2価および3価の金属イオンからなる LDH と Zr
量合成およびリン酸イオン吸着剤の大量合成を達成し
(IV)酸化物相のナノ複合体であることが分かった。
た。粉状吸着剤から粒径の小さい粒状吸着剤を大量調
希少糖 D-アロースによるバチルス属菌の菌体外プロ
製できた(1回につき0.2 L、合計1 L を合成)。得られ
テアーゼ生産の賦活作用について検討した。今年度は培
た小粒系の吸着剤の吸着速度が速いことを明らかにし
養経過中の酵素分泌生産や菌体の生育変動などについて
た。(c)海藻粗抽出液から硫安塩析により夾雑物を除去
特に調べた。その結果、バチルス属菌の菌体外プロテア
する操作を3回行い、再現性を評価した。硫安画分の①
ーゼ生産は培養1日目まで増加するがそれ以降3日目まで
タンパク質回収率は22~28%、②活性回収率は50~
は変動は認められないこと、D-アロースは3日間の培養
59%、③比活性の上昇率は2.1~2.3倍であり、再現性
中で資化あるいは転換されないことなどを見出した。ま
が高いことを明らかにした。
た菌体の生育は培養1日目以降ほとんど変動しないこと
が分かった。
マダイ養殖実験排水と同程度の高栄養塩含有海水を海
藻で1日間処理することにより環境基準法(生活環境項
[分
野
名]ライフサイエンス、環境・エネルギー
目海域4類型)の全窒素基準値および全リン基準値以下
[キーワード]捕捉剤、イオン選択性、層状複水酸化物、
に栄養塩濃度を低減できることを示した。このことは、
希少糖、アロース、プロテアーゼ、バチ
当該単藻培養株が魚類養殖場の栄養塩類の濃度低減剤と
ルス属菌
して有用であることを示す点から大きな意義を持つ。粉
体の硝酸イオン吸着剤およびリン酸イオン吸着剤を、粒
⑩【情報セキュリティ研究センター】
子サイズの小さい粒状吸着剤に成形することにより、海
(Research Center for Information Security)
(存続期間:2005.4.1~2012.3.31)
水中栄養塩を効率よく低減できたことは、大量の海水を
処理する吸着処理の効率の点から、その意義は大きい。
海藻粗抽出液から硫安添加により有用成分分離をおこな
研究センター長:今井
秀樹
う操作は再現性が高いことを明確にできたことは、海藻
副 研 究 部 門 長 :渡邊
創、米澤
利用のための基盤技術として重要である。
主 幹 研 究 員:古原
和邦
[分
野
明憲
名]ライフサイエンス
[キーワード]健康リスク削減、環境保全、水環境、海
所在地:東京本部・秋葉原事業所
水、海藻、健康増進(魚類)
人
員:26名(25名)
経
費:607,722千円(181,332千円)
概
要:
[テーマ題目16]健康関連基盤技術
[研究代表者]廣津
孝弘
(健康リスク削減技術チーム)
[研究担当者]廣津
孝弘、坂根
幸治、吉原
苑田
晃成、槇田
洋二
情報セキュリティ研究センターのミッションは、
一年、
「不正行為にも安全に対処できる、誰もが安心して利
便性を享受できる IT 社会の実現」のため、情報セキ
(常勤職員5名、他2名)
ュリティ分野に関する研究開発を実施することである。
[研 究 内 容]
現状における緊急度や産総研のミッションである「国
健康、環境分野の基盤的技術として、極低濃度のイオ
際的な産業競争力強化、新産業の創出」といった視点
ンあるいは分子を特異的に認識・捕捉する分離剤の開発
を勘案し、特にソフトウェア製品、ハードウェア製品
と評価、さらには希少糖の新規な有用機能の評価を行っ
に求められる情報セキュリティ技術、及びそこで用い
ている。本年度は、有害物質の特異的捕捉剤(リン酸イ
られる基盤技術の確立を目標とする。さらにこれらの
オン、ヒ素イオン等)の創製のため機能性発現要因をナ
研究活動を通じて、世界的な研究成果を継続的に出す
ノ構造特性から基礎的に検討した。また、バチルス属菌
ことのできる、「日本のセキュリティ研究のコア」を
のプロテアーゼ生産性に及ぼす希少糖の賦活効果を調べ
形成すること、また政府が実行する情報セキュリティ
た。
関連施策の技術的、人的支援を行い、国民にも国際的
既に開発したリン酸イオンに対する選択捕捉性に優れ
にも信頼される機関として認知されることを目指す。
た捕捉剤のイオン捕捉メカニズムを解明するため、その
情報セキュリティに関係する諸問題の現状を鑑み、
構造解明を行った。本捕捉剤は、層状複水酸化物
(ア)~(エ)の4つのサブテーマを中核的課題とし
(LDH)の生成に由来する X 線回折パターンのみを示
て設定し研究を行った。(エ)のハードウェアセキュ
すことから、2価および3価からなるこれまでの LDH と
リティ研究チームは本年度4月より、(イ)物理解析研
異なり、4価の Zr も層内の構成元素となる新しい3元系
究チームを発展的に分離した形で発足したチームであ
LDH と推定していた。しかし、X 線吸収分光法による
る。また今後も、社会の要求に即座に対応できるよう
解析の結果、Zr(IV)は酸化物相として存在すること、
柔軟な体制を保持するため、ネットワークや社会科学
(67)
研
究
度暗号モジュールの実装攻撃の評価に関する調査研究」
との融合領域を研究するチームを創設することも検討
する。
(ア)セキュリティ基盤技術研究チーム
経済産業省
(イ)物理解析研究チーム
度新世代情報セキュリティ研究開発事業
情報セキュリティ政策室委託費
(ウ)ソフトウェアセキュリティ研究チーム
ムに対するセキュリティ評価技術の研究開発」
平成20年
「組込システ
(エ)ハードウェアセキュリティ研究チーム
経済産業省
情報セキュリティ政策室委託費
度新世代情報セキュリティ研究開発事業
さらに、それぞれが自身の課題に取り組むだけにと
平成20年
「証明可能な
どまらず、ある課題に各チームが異なる視点から取り
安全性をもつキャンセラブル・バイオメトリクス認証技
組み、また協力し合うことにより、これまでに無かっ
術の構築とそれを利用した個人認証インフラストラクチ
た総合的で効果的なセキュリティ技術を創出すること
ャ実現に向けた研究開発」
も目指す。そして研究開発活動を通じ、以下のような
役割を果たしていくことにより、センターの研究目標
経済産業省
を達成する。
度新世代情報セキュリティ研究開発事業
情報セキュリティ政策室委託費
平成20年
・産業界に役立つ研究開発人材の育成:
挿入可能な仮想マシンモニタによる異常挙動解析とデバ
「既存 OS に
イス制御の研究開発」
学術的シーズと産業界・利用者ニーズに精通した人
材を、産学官連携による研究活動を通して育成する。
文部科学省
・インシデントに対応できる専門家及びチームの育
科学技術振興調整費
「組込みシステム向
け情報セキュリティ技術」
成:
関係機関に出向するなど、実務を通じた専門家を育
文部科学省
成する。
科学研究費補助金
若手 B 「量子論にお
ける不確定性原理の情報理論的表現とその応用」
・裏づけのあるセキュリティ情報の発信源:
高いレベルの研究成果を出し続けることで、専門家
科学研究費補助金
若手 B 「量子情報セ
及び専門研究により裏付けられた、信頼できる情報
文部科学省
の発信地としての役割を果たす。
キュリティ技術を取り入れた情報基盤設計のための基礎
研究」
・重要インフラ等の安全性評価:
新たな手法の研究、及び最先端の手法を用いた重要
科学研究費補助金
若手 B 「量子情報技
インフラの評価を、公的研究機関の立場を活かして
文部科学省
行う。脆弱性を発見した場合には、IPA 等適切な伝
術を頑強にする符号化技術の研究」
達ルートを通して関係者へ脆弱性情報及び対処法を
科学研究費補助金
若手 B 「隠れ部分群
周知する。
文部科学省
内外の機関との連携を通じ、研究成果を社会へ還元
問題に対する効率的量子アルゴリズムの構築可能性の分
析」
していく。民間企業、大学、公的研究所等とは、共同
で研究プロジェクトを立ち上げ、日本の情報セキュリ
ティ分野のレベルアップ、世界をリードする産業分野
日本学術振興会
の育成、新産業の創出を目指す。経済産業省、内閣官
科学研究費補助金・特別研究員奨励費
日本学術振興会外国人特別研究員事業
房情報セキュリティセンター、IPA をはじめとする政
スへ実装可能な実用的ポスト量子公開鍵暗号方式に関す
府およびその関連機関に対しては、情報セキュリティ
る研究」
「低機能デバイ
研究センターで開発した最先端の研究に基づく情報の
提供、問題の解析、対処法の提案など、技術的なバッ
独立行政法人科学技術振興機構 CREST 自律連合シス
クアップを行い、緊密な連携を取っていくことで、よ
テムの研究・開発
り安全性の 高 い製品を流 通 させること を 目指す。
OS に関する研究」
「自律的に起動可能なネットワーク
NICT のような他研究機関とは、担当する研究分野を
効率的に分担し、また融合的な分野については共同で
独立行政法人科学技術振興機構
研究するなど、より効果的な成果を生み出す協力関係
力推進事業
づくりを目指す。
安全性証明」
戦略的国際科学技術協
「暗号と理論:計算機によって検証された
--------------------------------------------------------------------------外部資金:
経済産業省
独立行政法人科学技術振興機構
情報セキュリティ政策室委託費
ュールの実装攻撃の評価に関する調査研究
暗号モジ
力推進事業
「平成20年
戦略的国際科学技術協
「安全で効率的なデータアクセス制御シス
テムの設計及びそれに適した新たな暗号技術の創出に関
(68)
産業技術総合研究所
その技術的発展が情報セキュリティ技術に与える影響
する研究」
は大きい。物理層における技術の発展は、単に、既存
戦略的国際科学技術協
の情報セキュリティ技術を効率よく達成するだけでな
「RFID とセンサネットワーク向け暗号基
く、新しいタイプの情報セキュリティやそれに対する
礎技術とそれを用いた構成要素の設計および安全性評
脅威のソースとなっている場合がある。このような状
価」
況を背景とし、物理解析研究チームでは、①ハードウ
独立行政法人科学技術振興機構
力推進事業
ェアのセキュアな設計・実装を可能とする各種技術や
財団法人日本情報処理開発協会
それらの評価法の研究、及び、②量子暗号など、自然
平成20年度情報大航海
プロジェクト(基盤共通技術の開発)事業
法則の原理や性質に基づいた情報セキュリティ技術の
「匿名化デ
ータの2次利用における匿名化保証機能に関する調査と
研究開発、を通じ、より安全な情報社会の実現に向け、
要件定義」
根源的な貢献を行うことを目的としている。主な研究
内容としては、1)量子情報セキュリティ、2)現代暗号
平成20年度基準認証研究開発委託費(プ
論に基づくハードウェアデバイスのセキュリティ、3)
ローブ情報システムの匿名性・セキュリティ評価基準等
実用的仮定に基づく暗号の研究、などが挙げられる。
慶應義塾大学
に関する標準化)
研究テーマ:テーマ題目6、テーマ題目7、テーマ題目
「プローブ情報システムにおける匿
8
名認証方式に関する検討」
発
ソフトウェアセキュリティ研究チーム
表:誌上発表138件、口頭発表147件、その他11件
---------------------------------------------------------------------------
(Research Team for Software Security)
セキュリティ基盤技術研究チーム
研究チーム長:柴山
悦哉
(Research Team for Security Fundamentals)
研究チーム長:大塚
(東京本部・秋葉原事業所)
概
玲
要:
情報のデジタル化が進み、情報の蓄積・管理・利用
(東京本部・秋葉原事業所)
概
要:
のためにコンピュータシステムが必須となった今日、
インターネットを介したサービスが広く普及した現
システムのセキュリティを抜きに情報のセキュリティ
在、その便利さの一方で、不正アクセスによる情報漏
を考えることはできない。しかし、コンピュータシス
えいや、なりすましによるネット詐欺など、これまで
テムの挙動を制御するソフトウェアは、依然として多
存在しなかった問題が、数多く起きるようになってき
くの脆弱性を抱えたまま稼動を続けている。ソフトウ
た。セキュリティ基盤技術研究チームでは、このよう
ェアセキュリティ研究チームでは、このような現状を
な不正を防止し安心して利用できる IT 社会を実現す
改善するために、ソフトウェアをセキュアに設計・実
ることを目的とし、それを実現するための情報セキュ
装・運用するための各種技術の研究・開発に取り組ん
リティ基盤技術に関する研究を行っている。基盤を構
でいる。また、その技術を応用し、広い意味でプログ
成する要素技術の例としては、ネット上を流れる情報
ラムとみなせるプロトコル等の安全性を保証する方式
の盗聴を防止したり改ざんを検出したりする「暗号技
の研究・開発も行っている。今年度の主な研究内容と
術」や、ネット上の利用者や端末などを特定・認証す
しては、(1) 暗号プロトコルとその実装の安全性を検
る「認証技術」などがある。我々は、それらをより使
証するための基礎理論の構築とツールの開発、(2) メ
いやすく、また、より高い機能を実現するための研究
モリ安全性と言語仕様への完全準拠を同時に満たす C
や、新たな機能の実現、並びに安全性の評価を行って
コンパイラの開発、(3) HTTP プロトコルを用いた
パスワード漏洩に強い相互認証方式の提案などがある。
いる。
研究テーマ:テーマ題目9、テーマ題目10、テーマ題目
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
11、テーマ題目12
3、テーマ題目4、テーマ題目5
物理解析研究チーム
ハードウェアセキュリティ研究チーム
(Research Team for Physical Analysis)
(Research Team for Hardware Security)
研究チーム長:今福
研究チーム長:佐藤
健太郎
(東京本部・秋葉原事業所)
概
証
(東京本部・秋葉原事業所)
要:
概
要:
情報セキュリティ技術は、さまざまな形で周辺科学
VLSI の高速化・高集積化技術の進歩により、かつ
技術の影響を受けその発展を続けている。特に、情報
ては大きな演算リソースを必要とした暗号ハードウ
システムを実装するベースである物理層については、
ェアが家電やポータブル機器に容易に実装できるよ
(69)
研
究
[研 究 内 容]
うになっている。また、急速に拡大するブロードバ
ンド・ネットワーク社会における情報の保護に、高
従来の暗号技術の多くは、安全性を素因数分解の困難
性能な暗号ハードウェアを欠かすことはできない。
性等の計算量的な仮定に依拠している。しかし、これら
また、暗号の安全性評価はアルゴリズムの理論的な
の仮定が将来にわたって成り立つかどうかについては不
解析が主流であったが、暗号が実装されたモジュー
明であるため、長期的な安全性が要求されるアプリケー
ルの物理的な特性を解析する実装攻撃が近年クロー
ションに対しては、必ずしも適用することができない。
ズアップされている。特にその中でも暗号モジュー
本研究においては、このような問題を回避するために1)
ルの消費電力や電磁波中に漏洩する動作情報を利用
新技術及び新解析技術の研究、及び2) 新技術を円滑に
するサイドチャネル攻撃が、現実的な脅威となりつ
適用するための研究を行なっている。本年度は、これま
つある。このような背景のもと、ハードウェアセキ
でに提案してきた認証符号をベースとする情報量的安全
ュリティ研究チームでは、(1)暗号ハードウェアの小
性に基づく暗号技術の効率化を行い、実用性の高い方式
型・高速・低消費電力実装、(2)暗号ハードウェアの
を国内研究会、国際会議などにおいて発表を行った。
アプリケーション開発、(3)実装攻撃への対策手法お
また、公開鍵暗号の問題点を克服し、さらに高機能な
よび安全性評価手法の確立と国際標準規格化への参
暗号技術の実現を可能にする技術として ID に基づく認
画、を主テーマとして研究を行っている。
証・暗号化方式に注目し、研究を行っている。今年度は、
主に、公開鍵暗号に焦点をあて、それらを構築するため
研究テーマ:テーマ題目13、テーマ題目14、テーマ題目
に本質的に必要となる数学的基盤を明らかにし、その上
15
---------------------------------------------------------------------------
で、数学的仮定や効率性の面で従来技術に優れる新たな
[テーマ題目1]情報漏えいに堅牢な暗号・認証方式
暗号技術を創出することに注力した。結果については、
[研究代表者]古原
国内研究会、国際会議、論文誌などにおいて発表を行っ
和邦
た。
(セキュリティ基盤技術研究チーム)
[研究担当者]古原
渡邊
和邦、辛
星漢、花岡
[分
悟一郎、
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]情報量的安全性、ID ベース暗号、情報
創(常勤職員4名)
漏洩
[研 究 内 容]
従来、多くのセキュリティシステムは、そこで利用さ
れている鍵や認証用データは漏えいしないとの仮定の基
[テーマ題目3]プライバシ保護技術に関する研究
で構築されてきた。本研究では、この仮定を見直し、鍵
[研究代表者]大塚
玲
(セキュリティ基盤技術研究チーム)
や認証用データは漏えいするとした上で、それらが漏え
いしたとしても大きな被害を引き起こさない、あるいは
被害を局所化できる方法の研究を行っている。具体的に、
[研究担当者]大塚
玲、渡邊
創、古原
和邦、
北川
隆、繁富
利恵、辛
星漢
(常勤職員6名)
鍵漏えいに堅牢な暗号化方式、電子署名方式、認証鍵共
[研 究 内 容]
有方式、鍵の効率的な更新方法などの研究に取り組んで
おり、これらの成果を応用することで、サーバやクライ
情報技術の発達に伴い、情報システム内に大量に蓄え
アントに保存している機密情報をより高度かつ効率的に
られたプライバシ情報の漏洩が深刻な社会問題になって
保護したり、データベースに保存している個人情報を情
おり、またネットワーク上の個人の尊厳を守ることはき
報漏えいや不正アクセスから保護したりすることが期待
わめて重要な課題になりつつある。本テーマではプライ
できる。本年度は、以下の三つの項目について研究を進
バシ情報漏洩問題を抜本的に解決するため、プライバシ
める。(1)より高度な攻撃に対しても安全性を有する認
情報を一切取得しなくても適切に情報処理が行える基盤
証方式の提案、(2)もっとも効率のよい離散対数問題に
技術の確立を目指して研究を行っている。こういった技
基づいた認証方式の提案、(3)LR-AKE の応用について
術を利用することにより、プライバシ情報をサービス提
の検討を行った。その結果、特許2件の申請と論文発表
供者が無駄に取得することなく、サービスを円滑に各ユ
を行った。
ーザに対して提供をすることができる。これまで提案し
[分
てきたリフレッシュ可能な匿名トークン、匿名性の高い
野
名]情報通信・エレクトロニクス
RFID、匿名通信路などについて、今年度は特にロケー
[キーワード]認証、情報漏えい、暗号化
ションプライバシについての検討を行った。従来のサー
[テーマ題目2]代替暗号・認証技術に関する研究
バ単独での ID 更新ではなく、利用者端末の限られた計
[研究代表者]大塚
算能力の下でも実現可能とすることを考慮し、ユーザの
玲
(セキュリティ基盤技術研究チーム)
[研究担当者]大塚
繁富
玲、北川
隆、花岡
位置に関するプライバシを保護しつつ、安心してサービ
悟一郎、
スを受けられるための技術開発を行った。
利恵(常勤職員4名)
また、コンテンツの不正流通や顧客情報の漏洩への対
(70)
産業技術総合研究所
策として、たとえ情報が漏洩したとしても漏洩した情報
た。また法と経済学の手法を利用して情報セキュリティ
に符号化された識別子を埋め込むことにより、不正流通
における不法行為法的な責任についての経済分析を行い、
に関与した利用者を追跡できる技術として結託耐性符号
過失責任および説明責任を導入する必要性を示した。こ
に関する研究を行っている。今年度は、誤って無実のユ
れらの結果を発展させることにより最新の情報セキュリ
ーザを特定する確率を下げる手法、グループテスト法を
ティ環境に適合した制度設計等への応用が期待できる。
応用し不正者を効率的に特定する手法を発展させ、実用
[分
性を向上させることに注力した。
[キーワード]情報セキュリティ管理、インシデントレ
[分
野
野
名]情報通信・エレクトロニクス
スポンス、情報セキュリティ ROI
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]匿名認証、情報漏洩、結託耐性符号
[テーマ題目6]量子情報セキュリティ技術
[研究代表者]今福
[テーマ題目4]バイオメトリクスセキュリティに関す
[研究代表者]大塚
[研究担当者]今福
玲
宮寺
(セキュリティ基盤技術研究チーム)
[研究担当者]大塚
健太郎
(物理解析研究チーム)
る研究
玲、井沼
学、繁富
健太郎、木村元、縫田
隆之、萩原
光司、
学
(常勤職員4名、他1名)
利恵
[研 究 内 容]
(常勤職員2名、他1名)
情報理論は、「情報の記述」あるいは「情報の伝達や
[研 究 内 容]
簡便で高精度な本人認証は現在及び今後の情報化社会
取得の際の原理的限界」について考察するための体系で
にとって重要な課題である。本研究では、バイオメトリ
ある。一方量子論は、「物理系の記述」あるいは「物理
クス技術のセキュリティ評価基準の開発を目指して研究
系の振舞いや測定の原理的限界」を考察するための体系
を行っている。本年度は、我々が提案した安全性指標で
である。全ての情報が物理系によって伝播すること、お
あるウルフ攻撃確率(WAP: Wolf Attack Probability)
よび、全ての情報の取得が測定を通じて行われることの
を理論面から整備すると共に、理想的なウルフ攻撃耐性
二点を考えれば、情報理論と量子論の結びつきは必然で
を持つバイオメトリクスシステムの理論解析と限界式の
ある。しかしながら、量子論で記述されるミクロ系の不
導出等を行った。
思議な振る舞いにより、両理論の融合には、単なる結び
[分
名]情報通信・エレクトロニクス
つきだけで終わらない面白さも存在する。量子性の高い
[キーワード]バイオメトリクス、本人認証
物理系をリソースとして利用し、従来の情報システムで
野
は達成することができなかった情報論的タスクを実現す
[テーマ題目5]情報セキュリティ管理に関する研究
る応用として、量子暗号や量子計算が知られており、こ
[研究代表者]大塚
れらは21世紀の科学として大きな発展が期待されている
玲
分野である。
(セキュリティ基盤技術研究チーム)
[研究担当者]大塚
玲、田沼
今年度も、昨年度までに引き続き、量子情報セキュリ
均(常勤職員2名)
ティ技術の一般的かつ精密な安全性評価を可能とする、
[研 究 内 容]
本研究の目的は、情報セキュリティインシデントを調
理論的研究を行った。特に、量子鍵配送の安全性証明に
べることにより現在発生している情報セキュリティイン
ついて、量子計算理論的な扱いを導入し、これによる安
シデントの特徴とその原因、現在多くの情報システムが
全性証明を世界で初めて示した。これは、従来の情報理
直面している情報セキュリティに関する脅威の実情や動
論的な扱いとは異なるアプローチであるだけでなく、情
向、情報セキュリティインシデントに発展する譲歩情報
報理論的な安全性概念を新しい方向に拡張する結果であ
システムの脆弱性の現状と動向及びインシデントレスポ
り、量子鍵配送プロトコルの安全性証明に留まらず、重
ンスという立場からの脆弱性に対する対策、現状で必要
要な結果として認知されている。また、量子暗号分野が
とされるインシデントレスポンスの手法等を調査研究し、
学術上の対象という萌芽的な段階から、産業界への応用
今後の情報セキュリティ研究の基礎資料とすることにあ
へと急速に変化しつつある状況を踏まえ、昨年度に引き
る。具体的には、内閣官房情報セキュリティセンターに
続き、関連国際会議を、他の二機関(情報通信研究機構、
兼務し、実際のインシデントレスポンスを行うことによ
情報処理推進機構)と協力して主催し、企業、研究所、
り必要とする情報を得ることを通じて実践的な立場から
大学、行政機関の間での情報共有、課題事項の整理を行
研究を行っている。
い、これらの結果を UQC レポートとして刊行した。
また、効果的で効率的な情報セキュリティ対策を行う
その他、量子論の基礎理論としての「破れ」があった
ための評価手法の開発及び評価の基盤となる理論の構築
場合、現在議論されている安全性にどの程度のインパク
を目指し、本年度は、セキュリティ対策としての情報共
トがあるか、等の問題に対応するべく、量子論を超えて、
有問題の経済分析を発展させ、国際会議等で発表を行っ
理論がもつ普遍的な性質に基づいて安全性を議論する一
(71)
研
究
般的な枠組み(一般確率論など)に関する研究を行い、
現在実用化されている多くの暗号は、計算量的仮定に
情報セキュリティと密接に関連する状態識別問題など基
基づいたものであるが、現実的と思える状況を仮定(例
本的な問題の幾つかに適用し、成果の公表を行った。
えばある程度コントロールすることができない雑音を含
[分
名]情報通信・エレクトロニクス
む通信路など)することにより、情報理論的に安全な暗
[キーワード]量子鍵配送プロトコル、光通信、秘匿性
号を構成できることが知られている。このような立場か
野
ら現実的な仮定のもとで情報論的な安全性を満たす(攻
増強
撃者の計算資源に依らない)暗号を構成する幾つかの研
究が行われている。本研究では、通信における電波伝搬
[テーマ題目7]現代暗号論に基づくハードウェアデバ
や反射等の「実質的には制御不能なノイズ」のもとで、
イスのセキュリティ
[研究代表者]今福
情報論的に安全な紛失通信路(oblivious transfer)を
健太郎
実現する手法を提案、さらに、秘密鍵共有について、無
(物理解析研究チーム)
[研究担当者]今福
張
健太郎、木村
元、宮寺
線伝送路の雑音パターンはそれらデバイスの位置に特有
隆之、
のものであることを用いると、非常に強力な計算能力を
鋭(常勤職員3名)
持つ攻撃者に対しても永続的な安全性を持つような方式
[研 究 内 容]
が可能となることを示した。
この分野の研究における挑戦は、情報通信システムの
安全性がその利用状況に依存するという(一見分かりや
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
すいが極めて抽象的な)事実に、定量的で客観的な尺度
[キーワード]情報理論、雑音通信路、暗号理論
を導入しなければならない点にある。特に最近は、ユビ
キタスの発展により情報へのアクセス構造が複雑化した
[テーマ題目9]セキュリティプロトコルの形式的検証
こと、さらには、多様な物理的攻撃法(暗号モジュール
[研究代表者]Affeldt Reynald(ソフトウェアセキュ
がシステムとして必然的に物理的実装を持たなければな
リティ研究チーム)
らないという当たり前の事実に起因した、しかしながら
[研究担当者]Affeldt Reynald、David Nowak、
逆にそれだけ強力な攻撃法)が指摘されその威力が確認
山田
聖、Hubert Comon-Lundh、
されていることを背景とし、その「挑戦」はますます困
田中
三貴(常勤職員3名、他2名)
[研 究 内 容]
難なものとなっている。
今年度は、測定量が与えられた際にそこに含まれる
現代のネットワーク社会で高度なセキュリティを保証
「サイドチャネル情報量」を最適に取り出す処理の仕方
するためには、セキュリティプロトコルの機械検証可能
と、その情報理論的意味づけを行うことを目的として解
な安全性証明が望まれる。しかし、標準的安全性証明の
析を行った。サイドチャネル情報の利用の仕方により、
手法である計算論的証明法は、その複雑さのために機械
既知のサイドチャネル攻撃を含むより広いクラスの攻撃
検証が依然として困難である。そこで、自動検証に適し
を暗号学的に整理し、幾つかの(あまりこれまで注目さ
た記号論理的証明法に基づき、機械的検証可能な計算論
れていない)タイプのサイドチャネル攻撃の可能性とそ
的安全性証明の構築に関する研究を行った。
の位置づけを行った。また、本研究で評価法を確立する
誤検知のない記号論理的自動証明の研究:安全性の判
ための議論の対象にすべき(既知の)サイドチャネル攻
定問題は一般に決定不能である。そのため、自動検証は
撃の位置づけを行い、ここで議論される評価法の有効性
近似モデルに対して行なうが、近似に伴う誤検知(安全
を主張できる理論的限界について議論した。さらに、測
な場合でも安全でないと判定)が問題となる。そこで、
定量の確率分布が既知の場合に、既知のサイドチャネル
プロトコルのセッション数が限られていると仮定できる
攻撃とは別の最適な統計処理を発見した。これにより、
場合に、実用性が高く誤検知がないプロトコル自動検証
与えられた条件のもとでの、最適な攻撃が定義されたこ
アルゴリズムを一階述語論理に基づき構成した。既存の
ととなり、この攻撃への耐性によってセキュリティ指標
アルゴリズムでは実現できなかった完全性と停止性を両
が定義できることを示した。
方満たしている点に特長がある。このアルゴリズムによ
[分
り、これまで自動検証ができなかった暗号プロトコルの
野
名]情報通信・エレクトロニクス
検証が可能になった。
[キーワード]耐タンパー、暗号モジュール、情報漏え
い
観測等価性の計算論的健全性の研究:プロトコルのセ
キュリティ特性は計算論的識別不能性によって定義され
[テーマ題目8]実用的仮定に基づく暗号の研究
る。例えば、機密性が成り立つプロトコルとは、攻撃者
[研究代表者]今福
健太郎(物理解析研究チーム)
が実際のプロトコルと秘密データを乱数で置き換えたプ
[研究担当者]今福
健太郎、Kirill Morozov、
ロトコルを識別できないようなものである。一方、記号
張
鋭(常勤職員3名)
論理的証明法でよく使われるプロセス代数の観測等価性
[研 究 内 容]
が成り立てば、二つのプロセスが任意のコンテキストで
(72)
産業技術総合研究所
が可能になる。
同じチャネルに同じ値を出力する。本研究は、計算論的
識別不能性と記号論理的観測等価性の関係の一端を明ら
2008年4月より本システムを情報セキュリティ研究セ
かにした。具体的には、標準的仮定で観測等価性から識
ンターのホームページ上で公開している。本実装は安全
別不能性を導けることを示した。この成果により、例え
性を保証するコンパイラ本体の他、モジュール結合時の
ば、記号論理的手法で得られた自動検証から、計算論的
整合性を検査する特製のリンカ・主に経済産業省委託事
識別不能性を得ることができる。
業で開発した500以上の標準ライブラリ関数の実装など
計算論的に安全な暗号スキームの実装の機械的な検
一式を既に揃えており、OpenSSL, BIND9等いくつか
証:プロトコルの検証は、最終的には、プロトコルを実
のインターネットサーバの既存実装を、本質的な変更を
装するプログラムの検証という問題に行き着く。この機
せずに安全に動作させることができる。今年度は実装公
械的検証は技術的に極めて難しい。最適化のために通常
開後引き続き実装の改良を続け、安定性を向上させ対応
はアセンブリ言語で実装されているプログラムと計算論
できるプログラムを拡充した。今後は、第2種基礎研究
的安全性証明を結びつけた検証を機械的に行なわなけれ
から更に実用化研究のフェーズを目指し、一般社会への
ばならない。そこで我々は、総合的かつ再利用可能な環
配布や普及、そのための実装の拡充やより一層の性能・
境の構築を目指して、定理証明器 Coq 上で定理ライブ
利便性の向上に取り組んでゆく。
ラリを構築しながら、最初のケーススタディとして
[分
Blum-Blum-Shub 疑似乱数生成器の検証に着手した。
[キーワード]ソフトウェア安全性、C 言語、言語処理
[分
野
野
名]情報通信・エレクトロニクス
系(コンパイラ)
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]ソフトウェア検証、プロトコル検証、暗
[テーマ題目11]安全なソフトウェアのためのプログラ
号プロトコル、計算論的安全性証明
ム解析技術に関する研究
[研究代表者]Cyrille Artho(ソフトウェアセキュリ
[テーマ題目10]安全性を保証する C 言語処理系の実
ティ研究チーム)
用的実装の開発
[研究代表者]大岩
[研究担当者]Cyrille Artho(常勤職員1名)
寛(ソフトウェアセキュリティ研
[研 究 内 容]
究チーム)
[研究担当者]大岩
寛(常勤職員1名)
ソフトウェアを用いた情報システムのセキュリティ及
[研 究 内 容]
び信頼性を向上させるためには、日々開発・改良される
プログラミング言語の1つである C 言語は、現在にお
ソフトウェアが正しく動作していることを常に担保する
いても最も主要なシステム記述言語として用いられてお
開発手法が必要とされている。近年ソフトウェア開発の
り、インターネット上で現在利用されているサーバソフ
現場では、プログラムの信頼性・安全性の向上のために、
トウェア(メールサーバ、DNS サーバ等)の殆どが C
自動化されたツールによる頻繁な動作テストを行うこと
言語で記述されている。しかし、C 言語の設計はプログ
が推奨されており、研究レベルでは更に、テストに失敗
ラムの誤り、特にメモリ上のデータの操作の誤りに対し
した場合にその原因を解析し修正すべき箇所を推定する
て非常に脆弱で、小さなプログラムの誤りがしばしばサ
自動化手法なども提案されている。本研究テーマでは、
ーバ乗っ取り等の重大なセキュリティ脅威に繋がる。こ
このようなシステムに用いることのできる実用的なプロ
のような問題に対する対策として、C 言語以外のメモリ
グラム解析技術について、次のような研究を行った。
操作に関して安全な言語(Java, C#, ML 等)を用いる
(1) ネットワークを用いるプログラムのモデル検査手法
ことが考えられるが、現実には既存のソフトウェア資産
モデル検査は、プログラムの引き起こしうる動作の
の存在や、プログラマの教育・習熟にかかるコスト等か
全ての可能性を自動的かつ網羅的に追跡し、実行時に
ら直ちには適応しがたい。
不正な動作を起こさないことを検査する手法の1つで
本研究ではこのような背景を踏まえ、C 言語の仕様を
ある。近年まで、モデル検査手法は単独で動作するプ
完全に満たし、既存のプログラムに対する互換性を最大
ログラムには適用できても、外部からの作用に依存す
限に確保しつつも、メモリ操作の誤りに対して常に安全
る複数のプログラムで構成されるネットワーク上のソ
に動作するような C 言語の実装方式を提案している。
フトウェアに対しては、プロトコルレベルの検証など
開発中の Fail-Safe C コンパイラシステムは、ANSI,
を除いては実用的にうまく適用ができなかった。本研
ISO および JIS 規格に定義されている C 言語の仕様を
究では、ネットワークの通信を自動的に仮想化し、任
完全に尊重しつつ、全てのメモリ操作に関して安全性を
意の時点での入出力を自在に時間を巻き戻して再現で
保証し、そのような誤りが確実に検出され安全に停止す
きるようなモデル検査器ソフトウェアの拡張を行い、
るようなプログラムにプログラムを変換する。このシス
このようなプログラムに対しても実用的なモデル検査
テムを用いることにより、既存のプログラム資産を生か
を適用可能とした。開発したツールは SNPD 2008、
しつつ、脆弱性に対する攻撃の影響を大きく減らすこと
TOOLS 2008などで発表したほかソフトウェアとして
(73)
研
究
も公開しており、Java 言語の標準的なモデル検査器
[研究担当者]佐藤
である Java PathFinder にも既に導入されている。
[研 究 内 容]
証、片下
敏宏(常勤職員2名)
インターネットをはじめとするコンピュータネットワ
(2) ソフトウェア欠陥の発生箇所の特定手法
ソフトウェア・テストは現時点でのソフトウェアに
ークは生活基盤のひとつとして重要となっており、その
欠陥があることを知らせることはできるが、複雑なソ
一方、不正アクセスや迷惑メール、フィッシング詐欺、
フトウェアにおいてプログラムのどこにその原因があ
不適切なコンテンツの配信などの問題が顕在している。
り、過去のどの時点での変更が原因となっているかを
本研究では、コンピュータネットワークをより安心・安
特定するには、今のところ入力による欠陥の調査と修
全に利用するための研究開発の一環として、侵入や攻撃、
正が必要となっている。この問題の解決のため、以前
または有害情報を検知するフィルタリング処理技術に関
より研究している Iterative Delta Debugging (IDD)
する研究を進めている。
の手法を更に拡張し、使ったログインを体験できるサ
本年度は、ネットワークパケットのヘッダだけでなく
イトを設置し実証公開実験を行った。今後は引き続き
データ部を、正規表現により記述されたルールに従って
仕様の標準化と実装の普及に取り組んでゆく。
検出するハードウェアの構成とその生成方法の検討を行
[分
野
った。従来は処理速度が低くや消費電力の高いソフトウ
名]情報通信・エレクトロニクス
ェア処理や、固定された記述のみ対応するハードウェア
[キーワード]Web システム・プロトコル・相互認
が利用されてきたが、本研究によるハードウェアにより
証・標準化
低消費電力かつ柔軟な検出を行うことが期待される。こ
のほか、フィルタリング処理を行う装置が意図するルー
[テーマ題目13]動的再構成システムの安全性に関する
ルを検知しているかどうか検査するための装置を
研究
[研究代表者]佐藤
10Gigabit Ethernet 環境にて開発し、論文誌発表を行
証(ハードウェアセキュリティ研
究チーム)
[研究担当者]佐藤
証、坂根
った。また、近年のスピア型フィッシング詐欺に対応す
広史、堀
洋平
るための、早期に検知ルールを更新するシステムの検討
(常勤職員2名、他1名)
と予備的な検証システムの開発を行った。
[研 究 内 容]
[分
近年、回路構成の変更が可能な LSI デバイスが登場
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]ネットワークフィルタリング、セキュリ
し、用途や環境の変化に合わせて回路機能を更新する動
ティハードウェア、正規表現
的再構成(Dynamic Partial Reconfiguration: DPR)
システムが盛んに開発されている。DPR を用いること
[テーマ題目15]サイドチャネル攻撃に対する安全性評
で、多機能で高速かつ小型・省電力な機器を作成するこ
価手法に関する研究
とが可能となる。しかし、DPR システムの回路情報は
[研究代表者]佐藤
電子データであるため、違法複製やリバースエンジニア
証(ハードウェアセキュリティ研
究チーム)
リング等の問題が存在する。そこで本研究で、回路情報
[研究担当者]佐藤
の機密性と完全性を保証する認証暗号 AES-GCM を
堀
DPR システムに実装し、その性能と有効性について検
証、坂根
宏史、片下
敏宏、
洋平(常勤職員3名、他1名)
[研 究 内 容]
IC カード等の暗号回路が動作中に発生する電磁波や、
討を行った。
AES-GCM を Virtex-5 FPGA に実装したところ、従
消費電力波形に漏洩している情報を解析し、内部データ
来のソフトウェア用いる方式の2,800倍以上の高速化を
を盗み出すサイドチャネル攻撃の脅威が現実的なものと
実現し、他の認証暗号ハードウェアと比較した場合も約
なりつつある。このサイドチャネル攻撃に対する安全性
40%の小型化と約60%の高速化を両立した。本研究成果
評価ガイドライン策定が急がれているが、各研究機関が
は関連分野最大の国際会議 FPL2008等で発表されたほ
独自の環境で実験を進めていたため、その結果の追試や
か、特許出願中であり、民間企業とも安全な DPR シス
検証が難しく標準化の妨げとなっていた。また、攻撃実
テムの実現に向けて連携を図っている。
験の対象に市販の暗号製品を標準として用いることにも
[分
名]情報通信・エレクトロニクス
大きな問題があった。そこで、本研究では、サイドチャ
[キーワード]動的再構成可能ハードウェア、高速回路
ネル攻撃実験標準評価プラットフォームと、ISO/IEC
野
標準暗号を全て実装した LSI の開発を行い、ガイドラ
実装、完全性検証
イン策定のための環境整備を行うと共に、様々な提案手
[テーマ題目14]ネットワークセキュリティ技術に関す
法の評価と攻撃・対策手法の開発を行っている。
る研究
[研究代表者]佐藤
本年度は、各種対策を施した暗号回路マクロおよび暗
号 LSI を開発し、様々な攻撃を行い安全性評価ガイド
証(ハードウェアセキュリティ研
究チーム)
ラインの基礎データの取得を行った。また、その結果を
(74)
産業技術総合研究所
基に、ISO/IEC 標準規格化も予定されている米国連邦
電池先端基盤研究センターは2005年に設立された。定
標準 FIPS140-3の策定において、サイドチャネル攻撃
置用燃料電池や燃料電池自動車の本格的普及のために
評価の章の執筆を担当した。さらに、暗号モジュールの
解決しなければならない課題に向けて、サイエンスに
評価試験機関での利用を目的に、自動ツールの開発を行
基づく革新的技術の研究開発と、次世代の燃料電池を
うと共に、IC カード評価ツールを製品化している企業
担う人材育成が、固体高分子形燃料電池先端基盤研究
との連携も進めた。そして、安全性評価プラットフォー
センターの設立時からのミッションである。
ムの改良を行い、国内外の企業による事業化にこぎ着け
(研究センターの活動方針)
た。
-中期課題-
[分
野
産業界との議論を通じて、産業界が必要とする基礎
名]情報通信・エレクトロニクス
科学的な研究テーマとして、下記3テーマを選び、ナ
[キーワード]サイドチャネル攻撃、標準評価プラット
レッジの蓄積と融合を図っている。
フォーム、国際標準規格
①
コストポテンシャル向上との両立を目指した電極
触媒の革新的性能向上のための反応メカニズム解明
⑪【固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター】
(Polymer Electrolyte Fuel Cell Cutting-Edge Research
②
Center【FC-Cubic】)
コストポテンシャル向上との両立を目指した電解
質材料の革新的向上のための物質移動・反応メカニ
ズム解明
(存続期間:2005.4.1~2010.3.31)
③
研 究 セ ン タ ー 長:長谷川
セル構成要素及び界面における物質移動速度向上
のための物質移動メカニズム解明
弘
副研究センター長:関口
伸太郎
副研究センター長:山本
義明
-計画を達成するための方策-
独創的な研究の成否は全て人的資質が握っていると
言っても過言では無く、本研究センターは、産総研あ
所在地:臨海副都心センター、つくば西
るいは国内に限らず広く世界に門戸を拡げ、燃料電池
人
員:13名(12名)
に熱意を持った科学者の結集に全力を挙げている。
経
費:850,691千円(123,189千円)
概
要:
また、限られたリソーセスを有効に活用するために
は、国内外の研究機関並びに企業との連携を積極的に
進めている。
サイエンス重視の動きは、各国で顕在化しており、
(社会的背景)
燃 料 電 池 は 、 地 球 環 境 の 保 全 ( Environmental
米国ロスアラモス国立研究所では、米国エネルギー省
Protection )、 エ ネ ル ギ ー の 安 定 供 給 ( Energy
(Department of Energy, DOE)の方針の下、燃料
Security)、持続的な経済成長(Economic Growth)
電池に関する研究開発・産学連携を強化し総合的に実
を同時に達成する上で最も期待が懸かる重要技術であ
施するため、「水素燃料電池研究センター(Institute
り、世界各国が熱心に開発を進めている。とりわけ固
for Hydrogen and Fuel Cell Research)」が活発に活
体高分子形燃料電池(以下、燃料電池と記す)は、小
動している。またカナダにおいては、国家研究会議
型で起動時間が短いという特徴を持ち、家庭用コージ
(National Research Council Canada, CNRC)傘下
ェネ発電設備(定置用燃料電池)や、自動車など移動
の「燃料電池技術革新研究所(Institute for Fuel
体での使用に適していることから開発の中心をなして
Cell Innovation)」などが、その一例である。
いる。
固体高分子形燃料電池先端基盤研究センターは、
この様な中、日本産業界は燃料電池の実用化では世
2006年5月に上記米国ロスアラモス国立研究所と「情
界に一歩先駆けているが、本格的普及のための商品性
報交換に関する覚書」を取り交わし、密な連携を図る
確保への道程は極めて険しく、コストダウン、耐久
など、「固体高分子形燃料電池の先端基盤研究に関す
性・信頼性確保、性能向上という多様な要素を満たす
るナショナルセンター」として、我が国のみならず世
革新的なブレイクスルーが待望されている。
界の産業界・学界との協調的発展に貢献している。
---------------------------------------------------------------------------
燃料電池技術のブレイクスルーを効率的に進めるた
めには、単にエンジニアリング手法に頼るのでは無く、
外部資金:
サイエンスに立ち帰った根本的な理解が必要不可欠と
独立行政法人
なっている。
燃料電池先端科学研究事業「燃料電池先端科学研究事
(研究センターのミッション)
業」
新エネルギー・産業技術総合開発機構
燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)をはじめとす
る産業界からの強い要請と、資源エネルギー庁・燃料
文部科学省
電池推進室の力強い後押しを受け、固体高分子形燃料
用可能なプラズモニック結晶型基板の開発」
(75)
科学研究費補助金「電気化学界面計測に利
研
究
発表:誌上発表14件、口頭発表63件、その他0件
かを明らかにする。このような解析を通じて現状技術
---------------------------------------------------------------------------
における理想状態でのパフォーマンス限界を明らかに
触媒研究チーム
する。
(Catalyst Team)
●現状技術打破に向けての膜電極成形体設計指針提案
研究グループ長:八木
現状技術における諸現象解析に関するナレッジとシ
一三
ミュレーション技術等を活用して、膜電極接合体+ガ
(臨海副都心センター)
概
ス拡散層(MEGA)のあるべき姿の指針を提案する。
要:
研究テーマ:テーマ題目2
●電極触媒界面における電気化学反応の速度論的解析
手法の開発
電解質研究チーム
空気極における電極触媒反応場で生じる電気化学な
らびにその他の反応に関する速度論的解析手法を開発
(Electrolyte Membrane Team)
する。具体的には、ラマン分光や赤外分光などの振動
研究グループ長:大平
昭博
(臨海副都心センター)
分光法をプローブとして、反応物質の供給をトリガー
とする時間分解測定を可能にする手法を開発している。
概
要:
一方で、電極触媒反応場のスケールを最小限まで絞り、
●電解質材料中における各種化学種(プロトン、水、
反応過程をノイズスペクトル的かつ顕微分光的に計測
各種ガス、反応生成物等々)の移動速度解析手法の開
する手法についても併せて研究を進めている。
発
電解質(電解質膜、触媒層電解質)材料中における
●諸電気化学反応の触媒構造依存性等の解明
触媒近傍で起こる反応の速度論に及ぼす反応場の影
プロトン、水、各種ガス(水素、酸素、窒素等)、更
響を明らかにする。触媒の構造および電子状態の効果
には反応生成物等の移動速度を正確に計測する手法を
に加えて、反応種の拡散に由来する濃度分極の影響や、
開発する。これらの化学種の移動は相互拡散や競合拡
触媒周辺に存在する水の構造・電子状態の影響につい
散であり、実状態に即した精緻な測定は困難とされて
ても精緻に解析する。
きた事項に挑戦する。
●現状技術打破に向けての触媒設計指針提案
●移動速度の電解質構造依存性等の解明
現状技術における諸現象解析に関するナレッジとシ
各化学種の移動速度と電解質の構造(化学構造、ポ
ミュレーション技術を活用して、電極触媒のあるべき
リマー高次構造)との関係を解明する。この様な解析
姿を、また電解質研究チームとのナレッジの融合から、
を通じて、現状技術の限界を究明する。
膜電極接合体(MEA)のあるべき姿を提案する。
●現状技術打破に向けての電解質材料設計指針提案
ナレッジの総集と各種シミュレーション、モデルサ
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目4
ンプルによる検証試験等を利用して、電解質材料のあ
界面物質移動研究チーム
るべき姿を見出す。コストポテンシャルのある材料で
(Material Transfer at Interface Team)
の高いパフォーマンス発現の指針を提案する。
研究グループ長:山本
研究テーマ:テーマ題目3
義明
---------------------------------------------------------------------------
(臨海副都心センター)
概
[テーマ題目1]燃料電池の基幹要素材料である電極触
要:
媒の革新的性能向上とコストポテンシャ
●ミクロな多相界面、あるいはマクロな多層界面を経
ル向上(運営費交付金、外部資金)
由する物質移動現象の精緻な速度論的計測手法の開発
燃料電池反応に関与するミクロな界面、すなわち気
[研究代表者]八木
相(水素、酸素等)と固相(触媒、電解質等)、及び
[研究担当者]八木
液相(水を随伴したプロトン)との間で生じる物質移
野津
動現象を明らかにする。また、反応に伴う物質輸送現
喜多村
象を律速するマクロな界面、主には触媒層/ガス拡散
荻野
一三(触媒研究チーム)
一三、林
灯、太田
英男、君島
卓也、野村
和也、林
鳴海、
堅一、猪熊
芳、梅村
喜芳、
瞬、
直子
(常勤職員5名、他6名)
層におけるガス相(酸素、窒素、水蒸気等)と液相
(水)との相互あるいは競合拡散を正確に追跡する方
[研 究 内 容]
法を開発する。種々の計測技術を相補的に利用して速
概
要:
燃料電池電極触媒の性能評価は従来、定常的な電気化
度論としての解析を行う。
●物質移動現象の触媒層及びガス拡散層の構造依存性
学計測に基づき行われている。例えば、カソード電極触
などの解明
媒の評価で得られるのは、酸素還元反応の最終生成物と
反応過電圧、反応電流(反応の総体的速度定数)である。
正確な測定技術を駆使し、触媒層並びにガス拡散層
つまり電極触媒表面における素過程の反応速度や中間体
の構造や構成材料の物性がどのような影響を及ぼすの
(76)
産業技術総合研究所
の吸脱着の影響はブラックボックスとなっている。本研
細孔を有する触媒特有の気相酸素の導入・貯蔵の機構を
究では、第一に、そのブラックボックスの中身を明らか
ある程度明らかにした他、メソ細孔にのみ白金を担持す
にする電極触媒の動的評価手段を確立し、構造・電子状
ることにより耐久性が向上することが予想されるため、
態などを予め制御した電極触媒試料について、この動的
調製法の最適化を模索している。また、メソポーラスカ
評価を行い、データを蓄積することを目指す。これは、
ーボン担体の垂直配向自立膜、および粒子間細孔径をメ
現在様々な材料を網羅的に評価するコンビナトリアル化
ソスケールで制御可能なカーボンエアロゲル担体の自立
学とは対照的なアプローチであるが、同時に性能向上機
膜の調製にそれぞれ成功した。触媒-担体間の相互作用
構の解明に資するという点では相補的である。第二に、
を 利 用 す る
触媒ならびに担体のナノ構造やメソ構造、あるいは電子
intaraction)電極触媒の開発においては、伝導性の高
構造を制御したモデル電極触媒を開発するアプローチを
い Nb-ドープ酸化チタン担体の開発を進めているが、
開始した。調製したモデル触媒の理想反応条件下での性
酸化物担体は表面積が小さくなってしまうため、酸化物
能を極限まで高めた後に、実用レベル触媒へのコストダ
粒子内部にメソポーラス構造を導入することを目指し、
ウン・効率化を図るスキームである。上記の「その場計
その実現に成功している。
測法」と「モデル触媒開発」がお互いにフィードバック
[分
を行うことで、現状技術打破につながる触媒設計指針を
[キーワード]電極触媒、in situ 振動分光、モデル電
野
将来的に確立できると想定している。
SMSI ( Strong
metal-support
名]環境・エネルギー
極、速度論、メソポーラス担体
当該研究チームでは、以上の研究を実施するため、以下
の4つのテーマに取り組んでいる。
①
[テーマ題目2]セル構成要素と物質移動との相互作用
時間分解 in situ 振動構造追跡技術開発のための装
(運営費交付金、外部資金)
[研究代表者]山本
置設計・手法開発
②
[研究担当者]山本
白金単粒子触媒担持カーボン探針電極における酸素
安達
還元反応解析
③
淳一、横山
淳平、渡部
浩司、
那美
[研 究 内 容]
概
メソ構造を導入した電極担体の開発とカソード触媒
要:
多相界面を経てのプロトン及び水関連物質の移動現象
性能向上への展開
⑤
義明、宮本
誠、大山
(常勤職員2名、他4名)
電極触媒周辺の水の動的挙動と電子状態を計測する
ための手法開発
④
義明(界面物質移動研究チーム)
を解明する。特にガス拡散層(GDL)の表面性状や集
触媒と担体の電子的相互作用を制御することによる
合組織が水関連物質の移動現象及び電池性能に与える影
新規電極触媒の開発
響を調べることが本研究の目的である。固体高分子形燃
年度進捗:
料電池における電圧低下の原因の1つとして燃料電池内、
平成20年度は、前年度に引き続き、各種時間分解振動
分光装置を実現するための表面増強能の最適化と時間分
特に膜電極接合体とガス拡散層(MEGA)内の水分管
解トリガリングの手法開発を実施した。表面増強赤外反
理が挙げられる。具体的には空気極触媒層で化学反応の
射吸収分光(SEIRAS)については、繰返型時間分解測
結果生じる生成水により反応ガスの物質移動が阻害され
定に耐えられる SEIRAS 活性基板の調製に成功したほ
ると発電性能は極端に低下する。この生成水-反応ガス
か、電気化学アニーリングによりスパッタ金薄膜でも
の物質移動、いわゆる競合拡散が滞る現象は近年 GDL
(111)配向膜の形成と SEIRA 活性の賦与が可能であ
にマイクロポーラス層(MPL)を付与することで飛躍
ることも見出している。また、時間分解測定のためのマ
的に改善され、発電性能が安定するという技術の進展が
イクロ流路との組合せについても専任の研究スタッフを
見られた。しかし、MPL による燃料電池内の物質移動
確保し、電位印加による反応種生成・輸送によるトリガ
特性が改善される科学的根拠は未だ解明されていない。
リング実験とシミュレーションによる反応種濃度の時空
これら空気極における物質移動現象を解析するためには
間分布の予測を進めている。表面増強ラマン散乱
MEGA を構成する各基幹材料の表面性状・表面構造の
(SERS)活性基板については、白金からの信号取得に
解析、バルク集合組織が有する性状や構造の詳細な解析
難航しており、レーザー波長やプラズモニック結晶構造
だけでなく、燃料電池作動環境下での動的現象を評価し
等の変更を検討している。Pt 単粒子担持カーボン探針
ていく必要がある。
上記を鑑み、平成20年度は以下の研究テーマに取り組
電極の調製については、電析条件により白金粒子の密度、
サイズ、形状を制御する方法を検討している。電極触媒
んだ。
周辺に存在する水の動的挙動を追跡するための可視-赤
①
ガス拡散層内の水蒸気の移動透過挙動の把握
外和周波発生(SFG)分光システムについては、顕微
②
MEGA 内の液体水の透過挙動の把握
分光化を目指した改造を行っている。メソ構造を導入し
③
ガス拡散層内の熱伝導率の測定
たメソポーラスカーボン(MC)担体については、メソ
④
発電時における触媒層の温度測定
(77)
研
⑤
究
Barique M. A.、大平
セル内熱・物質輸送シミュレーション
佳代、
黒田カルロス清一、
年度進捗:
Seesukphronrarak Surasak
平成19年 度研 究成果と して 触媒層で 生成 した水が
GDL を透過する際に液体あるいは水蒸気として透過す
Tavernier Bruno
(常勤職員3名、他7名)
ることを考慮し、それぞれの場合について計測可能な装
置を完成した。この時、透過する水が液体であるか水蒸
[研 究 内 容]
気であるかに関しては熱輸送が重要となるため、熱伝導
概
要:
率の測定技術も確立している。各計測装置は、温度・湿
固体高分子形燃料電池の基幹材料である電解質(電解
度条件のみではなく、スタックの締結によって受ける応
質膜、触媒層電解質)においては、廉価で高いパフォー
力についても設定可能なものとした。また、GDL 内部
マンスを示す材料の開発が求められている。耐久性に加
での異方性を考慮し、面内及び厚み方向への計測に関し
え、幅広い温度域(-40℃~100℃以上)かつ低湿度で高
ても可能なシステムを開発した。
プロトン伝導性を実現し、さらに電解質膜ではガス遮断
平成20年度は、これらの装置を用いて GDL 内の現象
性、触媒層電解質ではガス拡散性という性質も要求され
の把握と物性の測定を行った。水蒸気透過および液体水
る。これらの難題をクリアするためには、プロトン、水、
の透過については、GDL 単体のみではなく、触媒層や
各種ガス(水素、酸素、窒素等)、更には触媒層で生成
MPL を含めたものに関して、温度条件を変化させて物
する反応物等の移動現象を実作動環境に即した雰囲気で
性を確保した。熱伝導に関しては、触媒層や MPL 等の
正確にとらえ、電解質の構造(化学構造・高次構造・界
構成による影響や、温度・湿度・締付応力の影響を把握
面構造)との関係を明らかにすることが鍵となる。よっ
すると共に、異方性に関しても違いを定量化した。熱伝
て電解質研究チームでは、電解質膜の革新的性能向上と
導率は、温度や湿度によっても変化するが、締付による
コストポテンシャル向上をテーマに掲げ、実作動環境に
GDL の変形の影響がより大きいことが分かった。また、
即した精緻な解析による結果とシミュレーション、モデ
厚み方向の熱伝導率に比較して、水平方向は数倍大きい
ルサンプルによる検証試験により、現状技術の限界を把
ことを把握した。
握し、限界打破に向けた材料設計指針の提案を目標とす
る。
以上の測定結果を反映した熱・物質シミュレーション
を行い、物質輸送に関する取り組みを開始した。最初に
具体的には以下のテーマを遂行している。
熱・物質シミュレーションモデルの検証を目的として、
①
原子間力顕微鏡(e-AFM)による電解質膜のプロ
トン伝導領域の直接観察
電流密度による空気極触媒層の温度変化を測定した。今
回の測定では、物質輸送が課題となる高電流密度までの
これまでに、AFM と電気化学的な手法の組み合わ
発電運転が可能なセルを設計した。実際に2.0 A/cm ま
せにより電解質膜表面のプロトン伝導チャンネルを直
での運転を確保し、発電状態における触媒層の温度を測
接 観 察 す る 手 法 ( electrochemical atomic force
定した結果、最大で5 deg 程度の温度上昇であった。同
microscopy:e-AFM)を開発し、電解質膜表面のアク
じセル形状に関して熱・物質シミュレーションを行い、
ティブなプロトン伝導チャネルの観察法を確立した。
定性的には同じ傾向を示したが、シミュレーション結果
さらに条件の見直しにより、露点75℃までの加湿ガス
の方が大きな温度上昇であった。この差異については、
を供給できるようになり、これまで常温に限定されて
2
用いた熱伝導率の影響と共に液体水の輸送のモデリング
いた観察が、90℃、55%RH の環境まで観察できるよ
についても検討する。
うになった。このような高温雰囲気にすることで、フ
今後は、100℃以上における高温状態における現象把
ッ素系と炭化水素系電解質膜の含水に伴う構造変化の
握と物性測定を進める。また、触媒層を中心としたモデ
相違が明らかとなった。Nafion®の場合ではより広範
ルによる熱・物質シミュレーションを行い、物質輸送の
囲かつ急激に表面の構造変化が起きるが、炭化水素系
最適化に関する設計指針を提示していきたい。
材料である SPES では高温条件下でも構造変化が見
[分
られなかった。一方、内部構造に関しては、ミクロト
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]ガス拡散層、触媒層、膜電極ガス拡散層、
接合体、物質移動、構造解析、速度論
ームによる断面作製を行い、e-AFM 観察を行ったと
ころ、透過型電子顕微鏡(TEM)のような重金属染
色などの特殊な前処理をしなくても、電解質膜内部の
[テーマ題目3]燃料電池の基幹要素材料である電解質
親疎水領域を容易に識別することが可能であることを
膜の革新的性能向上とコストポテンシャ
確認した。これにより、表面だけでなく内部構造のプ
ル向上(運営費交付金、外部資金)
ロトン伝導領域を観察することができるようになり、
[研究代表者]大平
[研究担当者]大平
大窪
昭博(電解質研究チーム)
電解質膜のプロトンパスに関する三次元的な広がりに
昭博、貴傳名
ついて評価できると考えている。
甲、滝本
直彦、
貴洋、Hamdy F.M. Mohamed、
電解質膜に要求されている、高温・低加湿での高プ
(78)
産業技術総合研究所
[テーマ題目4]電気化学界面計測に利用可能なプラズ
ロトン伝導性の確保という課題に対して、本手法を適
モニック結晶型基板の開発
応することで、プロトン伝導性向上のための大きなフ
[研究代表者]八木
一三(触媒研究チーム)
電解質膜の水挙動と高次構造解析
[研究担当者]八木
一三(常勤職員1名)
これまでは磁場勾配パルス(PFG)を用いた核磁
[研 究 内 容]
ィードバックツールとなることが期待される。
②
概
気共鳴(NMR)による電解質膜中の水の拡散係数評
要:
価法を確立し、膜物性として重要な種々の温湿度制御
本研究では、電極表面で起こる多電子移動反応機構を
下における水・プロトンの拡散挙動の異方性について
明らかにするため、表面に生じる反応中間体の濃度を追
明らかにしてきた。昨年度より、拡散係数から時間依
跡することが可能な分光計測ツールを開発することを目
存性を検討し、Nafion®において超小角散乱で確認さ
的としている。そのため、高感度・高速で、かつ表面構
れているサブμm スケールの長周期の構造を確認した。
造が規定された反応場で利用できる必要がある。今年度
現在開発されているブロックコポリマーは周期構造が
は、分子検出に用いる分光信号を増強するために、試料
サブμm スケールと大きく、本手法は開発膜のスケー
電極表面にマイクロメートルスケールの凹みを形成する
ルの大きい高次構造解析法として有用である。また、
ことで高感度化が可能であることを実証した。
電解質膜中の水分布を評価するために、緩和時間分布
年度進捗:
測定を改良・適用し、Nafion®と SPES において含水
現在検討を進めている逆ピラミッド型プラズモニック
に伴う水の分布挙動変化の相違を確認した。また、緩
結晶構造では、光の波長程度の深さを有する逆ピラミッ
和時間測定を補完する狙いで分子動力学計算を行った
ドピットに励起光を照射すると、ピット内の壁面に沿っ
結果、SPES ではスルホン酸基周辺以外の場所にも水
て表面プラズモンポラリトン(SPP)が誘起される一方、
分子が存在していることを示唆する結果が得られた。
閉じこめ効果により特定の波長で定在波が形成されるた
本手法がプロトン伝導に関与する水と寄与度の低い水
め、対応する波長の光に対して電場が飛躍的に増大し、
(孤立あるいは連続性の低い空隙)の存在を識別でき
表面増強ラマン散乱(SERS)活性となる。現時点では、
ることを示しており、今後、種々の電解質膜に NMR に
この構造に金を蒸着して調製した基板について、金表面
よる拡散係数測定、緩和測定を適用し、また分子動力
が(111)配向で平坦であっても、十分な SERS 活性を
学計算により補完することで、水分子の運動性とプロ
有すること、SERS 活性が発現する波長領域には、SPP
トン伝導性の関係解明が期待される。
定在波に基づく周期的な光吸収が認められること、そし
ガス透過挙動と構造との相関性解明
て電気化学環境下においても SPP 定在波バンドのシフ
プロトン・水易動に関しては、多くの解析アプロー
トが観測されるものの、十分 in situ SERS 計測が可能
チもあるために、膜構造との相関性について多くの知
であること、を確認している。一方、ターゲットである
見が蓄積されてきている。しかしながら、ガス透過挙
Pt 基板でも周期的な SPP 定在波バンドが観測されてお
動に関しては、プロトン伝導同様、構造との相関性解
り、SERS 観測の可能性は十分あると考えられる。現在、
明が期待されている。SPES や SPEEK といったエン
種々のピットサイズを1枚の基板上に周期的に配列した
ジニアリングプラスチックをベースとした炭化水素系
逆ピラミッドピットアレイ基板で白金からの SERS 観
電解質膜を中心に検討し、Nafion®とは異なり、低加
測におけるピットサイズ、励起波長、あるいは構造その
湿状態で透過率が最小となる現象が確認された。陽電
ものの最適化を図っている。
子消滅法による膜内の空隙サイズ(自由体積)との相
[分
関性について調査したところ、自由体積にまず水が入
[キーワード]表面プラズモン、表面増強ラマン散乱、
り込み、その後、水がポリマー鎖間を押し広げること
プラズモニック結晶、in situ 測定、電
で、自由体積とガス透過率が共に増加していくと考え
気化学、MEMS/NEMS
③
野
名]電気化学、レーザー分光学
られる。NMR 緩和測定結果からは、SPES において、
低湿度域では連続性が極めて低く、孤立ポアに水が吸
⑫【コンパクト化学プロセス研究センター】
着するプロセスが生じ、その後、含水と共に連続した
(Research Center for Compact Chemical Process)
水ドメインが形成・成長するものと考えられる。また、
(存続期間:2005.4.1~2010.3.31)
自由体積のみならず、膜中の高分子鎖の分子運動性の
寄与も考えられ、今後は分子鎖の緩和現象にも注目す
研 究 セ ン タ ー 長:水上
富士夫
ることで、構造との相関性を確認していく計画である。
副研究センター長:鈴木
敏重、花岡
[分
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]高分子電解質膜、高次構造解析、物質移
所在地:東北センター、つくば中央第5
動
(79)
人
員:34名(32名)
経
費:595,683千円(303,534千円)
隆昌
研
概
究
要:
材に高効率で変換するプロセス技術を開発する。
本研究センターは、超臨界流体技術と無機系膜技術
2)分散型プロセスの工程管理技術:粘土を主成
をコア技術として、多段反応の簡略化、装置の集積
分とした耐熱シール材の開発と、化学プラントで用い
化・小型化と、これらを利用した脱有機溶媒プロセス、
る耐熱ガスケット(アスベスト代替)への展開をはか
高効率分離プロセスの開発により、省エネルギーと環
る。また、超臨界流体場やナノサイズ空間場が提供す
境負荷の低減をねらっている。すなわち、特異状態及
る特異な反応場における計測技術を開発し、基礎物性
び多機能材料の個々ならびに組み合わせで生まれる特
の蓄積と特異反応場プロセスの工程の制御や管理に資
徴を最大限に活用すると同時に、これら化学工学技術
する。製造工程から排出される有害化学物質の簡易迅
と、東北地域の高い異分野技術ポテンシャルすなわち
速な計測法について研究する。
分散型プロセスの工程管理技術の成果目標は以下の
大学・企業の電気・電子技術や微細機械金属加工技術
等との融合を図ることにより、エネルギー使用を最小
通りである。
にし、不要物・毒物の発生を最少にする(グリーン・
1)
機能性粘土膜の開発と実用展開に関する研究
サスティナブル化学:GSC)技術で、しかも分散適
粘土を主成分とする柔軟な耐熱性ガスバリア膜を
量生産方式に適合する技術の開発とその具体化に必要
作製し、企業との共同で様々な応用展開を図る。平
なエンジニアリング等の技術開発、すなわち、化学プ
成20年までのアスベスト製品の全廃目標に対応する
ロセスならびにプラントのシンプル化・コンパクト化
代替品の開発において、従来からガスケットに用い
を果たす実用的なグリーン・コンパクト化学プロセス
られてきた膨張黒鉛製品に、耐熱粘土膜を複合化さ
技術を開発・構築する。
せ、耐熱性、耐久性、耐薬品性、取扱い性に優れた
ガスケット製品を開発し、企業と共に生産体制に入
上記目標を達成するため、本研究センターでは、次
り、販売を開始する。粘土膜と炭素繊維強化プラス
の2つの重点研究課題を実施する。
1)分散型プロセス技術の開発:水、二酸化炭素
チック(CFRP)を積層することにより、水素ガス
の超臨界流体を利用することにより、有機溶媒を使用
バリア性および耐久性に優れた水素タンク用複合材
しない新規の物質製造プロセスについて研究・開発を
料を開発した。また、膜の透明度を実用透明フィル
行っている。例えば、国内屈指の高温高圧反応システ
ムレベル(全光線透過率90パーセント以上)に高め
ムを活用して民間企業との共同研究を行うことにより、
ることに成功し、ディスプレー用フィルムなど、新
実用化へ向けたエンジニアリング技術の確立を計って
しい用途に道を拓く。
いる。また、新規の物質分離膜、化学反応膜を開発し、
2)
特異場の基礎物性解明に関する研究
これに基づく膜反応プロセスによる省エネルギーでシ
超臨界流体やナノサイズ空間が提供する特異反応
ンプルな分離・製造プロセスの実現を目指している。
場における諸物性の計測技術を開発する。この計測
分散型プロセス技術の成果目標は以下の通りである。
技術を利用して、特異反応場における基礎物性に関
1)
するデータベースの構築を行い、プロセス制御や管
反応効率を高めるプロセス技術の開発
理に利用できるよう公開している(超臨界流体デー
・有機溶媒に代えて超臨界流体場を利用して廃棄物を
50%以上低減する選択的水素化反応プロセスを開発
タベース:
する。
http://riodb.ibase.aist.go.jp/SCF/sdb/scfdb/scf_mai
n.html)。
・マイクロリアクター、マイクロ波及び複合機能膜等
3)
の反応場技術と触媒を組み合わせ、廃棄物生成量を
半導体製造工程等で生じる汚染物・不要物・有害
50%以上低減するファインケミカルズの合成技術を
物の洗浄除去・分解の技術開発を、検出計測技術と
開発する。
2)
有害イオンの簡易計測法の研究
して、製造工程等で発生する排出物中の有毒物質簡
気体分離膜を利用した省エネルギー型気体製造プ
易計測・処理の技術開発を行う。
ロセス技術の開発
---------------------------------------------------------------------------
・99%以上の高純度水素の高効率な製造プロセスの開
発を目的として、常温から600℃までの広い温度領
外部資金:
域で安定性を持つパラジウム系薄膜を開発し、これ
文部科学省
を用いて水素分離システムの実用型モジュールを開
技術の開発に関する研究」
原子力試験研究費「超臨界発電用炉水浄化
発する。
3)
文部科学省
バイオマスを原料とする化学製品の製造技術の開
科学研究費補助金「高集積ナノワイヤーの
創製とその特異的・異方的電子状態の顕微偏光分光法に
発
よる観測」
・バイオマスからアルコール、酢酸等の基礎化学品を
製造するプロセスの効率化のため、生成産物等を高
文部科学省
効率で分離するプロセス技術及び生成産物を機能部
(80)
科学研究費補助金「分離プロセスにおける
産業技術総合研究所
独立行政法人科学技術振興機構
ゼオライト膜劣化機構のマルチスケール解明」
産学共同シーズイノベ
ーション「高圧二酸化炭素によるポリマー微粉化プロセ
文部科学省
スの開発」
科学研究費補助金「ガス吸収液としてのイ
オン液体の描像とその応用」
独立行政法人日本学術振興会「超臨界二酸化炭素を利用
日本学術振興会
するバイオマスから有用化学物質への触媒変換プロセ
日本学術振興会外国人特別研究員事業
ス」
科学研究費補助金・特別研究員奨励費「選択溶解と陽極
酸化による自己組織化チタニアナノチューブの形状制
文部科学省
御」
平成20年度原子力基礎基盤研究委託事業
「R-BTP 吸着剤の性能評価研究」
日本学術振興会
日本学術振興会外国人特別研究員事業
科学研究費補助金・特別研究員奨励費「超臨界二酸化炭
発
表:誌上発表108件、口頭発表218件、その他20件
素中でのメソ構造有機-無機ハイブリッド触媒を用いた
---------------------------------------------------------------------------
高選択的酸化反応」
コンパクトシステムエンジニアリングチーム
(Compact System Engineering Team)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究チーム長:鈴木
革
明
(東北センター)
新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤
概
技術開発・省エネルギー技術開発プログラム「革新的マ
要:
コンパクトシステムエンジニアリングチームは、超
イクロ反応場利用部材技術開発」
臨界流体を利用した低環境負荷、シンプル、コンパク
有
トで高効率、高選択的な物質合成技術を開発するとと
害化学物質リスク削減基盤技術研究開発「有害化学物質
もに、高圧マイクロデバイス技術の開発や、高度な数
リスク削減基盤技術研究開発/革新的塗装装置の開発/
値解析技術をベースとして、分散適量生産が可能なコ
二酸化炭素塗装装置の研究開発」
ンパクト化学プロセスを工業化技術として確立するこ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
とを目的としている。また、本チームは産総研におけ
産
る関連分野のエンジニアリング拠点として機能するこ
業技術研究助成事業(インターナショナル分野)「イオ
とを目指し、最終的にはエンジニアリングベンチャー
ン液体を用いた新しいガス分離・精製方法の開発」
の立ち上げまでを視野に入れた活動を推進している。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
マイクロ反応場と高温高圧水との協奏により、希硝
産
酸を窒素源とした硫酸触媒を用いない安全で新規な無
業技術研究助成事業費助成金「新規マイクロ化学合成・
触媒ニトロ化プロセスや、粒径が均質になるよう高度
ガス拡散型リアクター(MC-GDR)により爆発雰囲気
に制御された金属酸化物ナノ粒子の合成プロセス、有
を完全に制御し、ナンバリングバックアップにより生産
機溶媒を用いない C-C カップリング反応等の研究・
性を強化した、水素および空気(酸素)の直接反応によ
開発を行っている。さらに、超臨界二酸化炭素を反応
るオンサイト過酸化水素合成プロセスのプロトタイプの
媒体とした酸素酸化や、金属ナノ粒子を担持させたメ
開発」
ソポーラスシリカ触媒による還元プロセス、ポリマー
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
ナノ粒子の製造技術についての開発も進めている。そ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
の他、希釈溶剤を使用しない革新的な二酸化炭素塗装
産
プロセスの開発などを実施している。
業技術研究助成事業費助成金「分散型水素貯蔵および製
研究テーマ:高温高圧エンジニアリング技術の開発、水、
造触媒反応プロセスの技術開発」
CO2を媒体とした脱有機溶媒製造プロセス
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
産
の開発
業技術研究助成事業費助成金「分散型水素貯蔵および製
造触媒反応プロセスの技術開発」
触媒反応チーム
(Catalysis Team)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
産
研究チーム長:白井
業技術研究助成事業費助成金「同一組成型セラミックス
誠之
(東北センター、つくば中央第5)
メンブレンリアクターを用いた天然ガスの新規変換シス
概
テムの提案に関する研究」
要:
触媒反応チームは、超高真空から高温高圧場まで固
体触媒表面上での反応挙動を、その場観察する基礎的
(81)
研
究
研究から、新規な触媒や反応器の開発、そして化学プ
や材料物性の解明技術の開発、高度複合化
ロセス開発といった製品化研究まで行っている。
機能性材料の開発、機能化多孔質材料の部
材化と応用分野開拓
具体的には、1)二酸化炭素溶媒と固体触媒を用い
る多相系システムにより、化成品原料や有機系水素貯
蔵材料の合成反応について検討する。このシステムで
材料プロセッシングチーム
は、これまでの液相系や有機溶媒利用プロセスに対し
(Material Processing Team)
て、反応の高速化とそれに伴う反応温度の低下、装置
研究チーム長:蛯名
武雄
(東北センター)
のコンパクト化、生成物分離工程簡略化、触媒寿命向
概
上などの特長を有す。また、2)水と固体触媒を用い
要:
る多相系システムでは、種々のバイオマスからの化成
材料プロセッシングチームでは、様々な素材から機
品原料回収やガス化技術、さらにプラスチックなど高
能性材料を効率的に作製する材料プロセス技術ならび
分子のケミカルリサイクル研究を行う。反応中におけ
に、材料機能の応用開発に取り組んでいる。
る固体触媒表面上での動的挙動をその場観察する基礎
具体的には、超臨界水を利用した酸化物ナノ結晶の
的研究から、高機能触媒開発や新たな反応系の開拓を
合成(高速晶析反応)、水熱プロセスによる無機イオ
行い、触媒反応プロセスの実用化を目指す。また、水
ン交換体の合成、無電解メッキの特徴を生かした水溶
素を選択的に透過するパラジウム膜を利用した還元的
液系での貴金属薄膜の作製、ナノ粒子ゾルを用いるセ
水酸基導入反応や水素分離供給装置、マイクロ波を利
ラミック薄膜の製膜、層状粘土鉱物の水への分散と積
用した新規の触媒反応系の開拓とその装置化を行って
層化による粘土膜の作製を、プロセス技術開発ならび
いる。
に新材料開発のターゲットとしている。
環境負荷の小さい材料製造プロセスを実現するため、
研究テーマ:多相系システムによる有機合成反応の開発、
バイオマス等利用技術の開発、触媒反応プ
媒体として“水”の利用を積極的に行っている。また、
ロセスの実用化、
原料の選択においても天然鉱物資源、バイオマスなど
の低環境負荷資源の利用を重視している。
材料機能の応用例として、1)パラジウム系薄膜を
ナノ空間設計チーム
(Nano-porous Material Design Team)
用いたクリーンエネルギーである水素の高純度分離、
研究チーム長:花岡
2)ナノ粒子化による高活性な触媒や蛍光体素材の合
隆昌
成、3)高選択性イオン分離材の合成、4)粘土素材
(東北センター)
概
要:
を利用した耐熱シール材製作、5)粘土素材を利用し
「低環境負荷型化学品製造のためのミニ・マイクロ
た電子デバイス材の開発などを試みている。
プラントの提示」に必要な、高度の分子認識能、触媒
以上の研究を基盤として、企業との共同研究による
機能、分離機能等を持つ新規材料の開発と解析、膜化
実用化を進め、連携大学院による大学との連携にも努
などの部材化、モジュール化の技術開発を行っている。
めて行く。材料の作成プロセスの要素技術を押さえ、
特に無機材料を中心に、ナノメートルサイズの空間や
技術移転の基礎を固める。他チームや外部との連携に
規則構造を持つ材料の創製、元素の特性を生かした機
より、膜、触媒、などへの応用展開のシナリオを明確
にする。
能化、様々な分子の特性を生かした複合化により目標
研究テーマ:貴金属系薄膜の応用技術の開発、ナノ粒子
達成を推進している。
材料創成の面ではゼオライト、メソポーラス物質、
化触媒による高度化機能の開発、高選択イ
層状化合物、粘土などを利用した、幅広い多孔質材料
オン分離、機能性粘土膜の開発と実用展開
を主な対象とし、ミクロ・ナノ構造や材料物性の解明、
に関する研究
新材料設計と合成法の開発とともに、機能性有機分子、
酵素等の生体関連物質との複合材料開発、結晶成長の
特異場制御計測チーム
制御等を利用した高性能なナノ空間材料の開発を目指
(Specific-Field Analysis Team)
している。また材料の利用では、膜部材化による気
研究チーム長:南條
弘
(東北センター)
相・液相での選択的分離精製、環境浄化・殺菌、高性
概
能触媒等への応用とプロセス開発を他の研究チームと
要:
共同で進めている。さらに、生体分子と無機材料の複
化学プロセスのコンパクト化に貢献する様々な特異
合化の研究を通じて、センサー材料やマイクロバイオ
場の制御・計測技術の開発を行っている。特異場の中
リアクターへの応用についても、様々なアプローチで
でも、高圧の流体、ナノスケールの薄膜表界面および
研究開発に取り組んでいる。
微小空間を始めとする未開拓環境に注目し、特異場制
御・計測並びに解析を行いながら、特異場がもつ長所
研究テーマ:多孔質無機材料の開発、ミクロ・ナノ構造
(82)
産業技術総合研究所
を効果的に利用する技術の開発を行う。
利用技術の開発、酵素利用反応プロセスの
1)環境汚染の原因となる VOC(揮発性有機化合
開発、ナノ構造における特異機能の開発、
ナノ粒子合成と部材化の開発
物)の排出量を、従来技術に対して大幅に削減する
二酸化炭素塗装技術や有機微粒子製造技術の開発と、
---------------------------------------------------------------------------
それに必須の膨張液体の物性データの提供と解析を
[テーマ題目1]分散型プロセス技術の開発
行う。
[研究代表者]水上
富士夫(コンパクト化学プロセス
研究センター長)
2)マイクロ~ナノスケールの微小空間内における流
体やイオン液体などの流動物性および液体構造の解
[研究担当者]水上
富士夫、鈴木
敏重、花岡
隆昌、
析技術を高度化する。また、それらの物性を活かし
鈴木
明、横山
敏郎、米谷
道夫、
て、ガス吸収、分離など高圧二酸化炭素を利用した
川波
肇、増田
善雄、川﨑
慎一朗、
新たな化学プロセスのデザインを行う。
石坂
孝之、白井
誠之、濱川
聡、
3)コンパクト化学プロセスに清浄環境を提供するた
阪東
恭子、佐藤
剛一、西岡
将輝、
め、巨大電場を利用してナノスケールの薄膜構造を
井上
朋也、佐藤
修、日吉
原子レベルで制御し、高環境バリア性(高耐食性)
山口
有朋、清住
嘉道、長瀬
を有する薄膜や多孔質機能膜を開発する。
石井
亮、池田
長谷川
研究テーマ:特異場制御・計測・利用技術の開発、高圧
拓史、伊藤
範人、
泰久、松浦
多加子、
徹二、
俊一、角田
川合
章子、小平
畑田
清隆、閻
ヘテロ界面チーム
佐藤
正大、CHATTERJEE Maya、
(Hetero Interface Team)
根元
秀実、SHERVANI Zameer、
二酸化炭素の吸収・噴霧・分離術の開発
研究チーム長:角田
大川原
達朗
哲也、伯田
達朗、
秀懿、川﨑
竜人、稲
幸也、
千春、
克彦、中鉢
ふたみ、
DAPURKAR Sudhir、JAVAID Rahat、
(つくば中央第5)
要:
盧
コンパクトでシンプルな化学プロセスを実現するた
守屋
智美、岩間
里美、葛西
真琴、
め、無機多孔質材料の特性・機能を積極的に利用する
夏井
真由美、東
英生、堀田
裕美、
技術の開発を行っている。
大瀧
憲一郎、
1)生体高分子と無機材料との複合化による新規機能
RODE Chandrashekhar、平間
概
創出とその利用
金鳳、佐藤
恭子、村上
由香、
朗裕、
阿部
智久、萩原
拓哉、水口
純子、
タンパク質や DNA などの生体高分子と多孔質構
阿部
千枝、志村
瑞己、鈴木
智子、
造を有する無機材料との組み合わせにより、酵素の
平野
直人、目黒
臣洋、冨樫
秀彰、
高度利用、タンパク質の精製・分離・結晶化など、
奈良
貴幸、小野
世吾、関川
千里、
新規機能の創出とその利用を展開している。不活性
樫村
睦美、大賀
寛子、坂口
謙吾、
タンパク質の可溶化、機能回復法として有効なゼオ
岩端
一樹、塩見
徹、山田
ライトを用いたタンパク質のリフォールディング技
久松
可南子、稲生
増田
功(常勤職員30名、他46名)
術の確立を目指している。
祐輔、
渓太、本間
皓二、
[研 究 内 容]
2)無機多孔質材料の特異空間利用
①
無機多孔質材料が有するミクロ、メソ、マクロな
高温高圧エンジニアリング技術の開発
細孔空間の特異性を積極的に利用し、生体高分子と
水、二酸化炭素の超臨界流体を利用し、環境負荷低
組み合わせた際に生じる相互作用や、電磁気的な機
減を目指した新規な脱有機溶媒による物質製造プロセ
能など、新規機能の創出とその利用を開発している。
スを提案し、その具体化に必要なエンジニアリング技
一例として、酵素と無機多孔質体との異種材料の融
術を開発した。超臨界水中での連続合成システムを最
合による新規機能の高度利用と実用化を目指し、酵
終的な完成形として、プロセス上重要な高速温度操作
素リアクターの開発を行っている。
デバイスをマイクロ化し、数万 K/s 以上の急速加熱
性能や急速冷却性能を実現した。これにより、超臨界
3)亜臨界水プロセスによる無機材料合成
高温高圧プロセスを利用して、複合金属酸化物ナ
水合成におけるキーポイントである目標超臨界条件へ
ノ粒子合成と部材化を検討している。合成材料とし
の迅速投入及び迅速な離脱を可能とした。さらに、超
て、電子デバイス材料や触媒を主たる対象とし、新
臨界水反応における課題である腐食対策も合わせて実
規無機多孔質材料の合成も検討し、上記2課題との
施し、コンパクトな高温高圧反応システムを完成させ
た。また、中心衝突型、旋回流型、拡散混合型など
融合も図っている。
研究テーマ:無機多孔質材料の生体高分子材料への高度
種々の高温高圧マイクロ混合器を提案・試作し、迅速
(83)
研
究
混合性の評価を行うとともに、実際の合成反応や微粒
を作製することに成功し、高い水/エタノール分離係
子化反応などに適用し、高温高圧マイクロ混合器の有
数と透過流束を実現した。特に基材と膜の間に中間層
用性を実証した。
を形成することが膜の安定性向上に効果的であり、新
抽出、洗浄、微粒子化及び有機合成を行うパイロッ
たな封止剤の利用によるモジュール化技術の開発を進
ト規模の超臨界二酸化炭素試験装置を用いて、フィル
めている。また、膜性能と材料特性の関連を定量的に
ター洗浄プロセス、ポリマー微粒化プロセスなど実用
表記することを試みて一定の成果を挙げた。これらの
化レベルの応用開発を複数実証した。
研究を総括し、高性能な分離膜の開発と調製技術の確
立を目指す。
また、従来のスプレー塗装において大量に使用され
最適な細孔径を選択し、表面修飾を行うことで無機
る希釈溶剤を少量の二酸化炭素で代替しうる革新的塗
装技術を高圧マイクロ混合器の採用などにより構築し、
多孔体に酵素を効率的に固定化する技術を開発し、高
工業化技術としての優位性を実証した。
い反応効率と安定性を発現させ、高い繰り返し性を確
②
認することができた。さらに、多孔質材料への酵素固
水、CO2を媒体とした脱有機溶媒製造プロセスの開
定化に関する技術の体系化を進め、最適な固定化条件
発
マイクロ反応場と高温高圧水との協奏により、希硝
の確立を図った。また複数の酵素を干渉せずに配置す
酸を窒素源とする水媒体中での安全で新規なニトロ化
ることに成功し、マイクロリアクターとしての応用を
法を開発し、芳香族有機化合物のニトロ化を複数実証
すすめた。ナノ空間への酵素固定化技術の応用として、
した。また、超臨界水利用マイクロプロセスへの適用
ホルムアルデヒドセンサーの開発を民間と共同開発し、
反応を探索した結果、高効率の Beckman 転移、C-C
極めて高い感度と安定性を達成した。
カップリング、糖からのアルカン合成などの、水媒体
高純度水素の高効率な製造を目的として、常温から
での新規プロセスを見出した。また、粒子径のそろっ
600℃(改質ガス)までの広い温度領域で長時間(>
た無機ナノ粒子の他、貴金属ナノ粒子やペロブスカイ
2000時間)の安定性を持つパラジウム系薄膜を開発し
ト型複合 酸化 物ナノ粒 子の 連続合成 に成 功した。
た。水素脆化や機械的強度の向上を意図して Pd-Ag,
VOC の大幅削減に寄与する新技術として、有機溶剤
Pd-Ag-Au の合金薄膜やパラジウムナノ粒子を多孔質
に代わる顔料分散媒体として超臨界 CO2 を用いた、
支持体の粒子間に充填した新規構造パラジウム膜の開
塗装技術を提案した。実用化に向け、地域企業との共
発に成功した。これを用いた、改質ガスからの実用型
同研究を開始した。資源循環プロセスとして、PET
水素製造システムを共同開発した。また、Pd 膜によ
(ポリエチレンテレフタレート)を熱水で処理するこ
る水素分子の活性化を利用し、芳香族化合物への一段
とにより原料モノマーであるテレフタル酸とエチレン
階水酸基導入反応を10%以上の転化率、芳香族基準
グリコールに定量的に変換することに成功した。リグ
90%以上の選択率で達成した。酸素選択透過性能に優
ニン、セルロースなどのバイオマスの超臨界水ガス化
れた混合導電性セラミックスのナノサイズ化による薄
により、水素、メタンなどの燃料ガスへの変換に成功
膜形成に成功し、メンブレンリアクターとして酸素の
した。
高効率分離を達成(図9)。超臨界水場において合成
膜利用によるコンパクトプロセスの開発
されたペロブスカイト型複合酸化物ナノ粒子により、
新規なゼオライト合成機構の開発に関し、独自開発
膜機能、すなわち、酸素透過能とメタン改良能の両方
した透過型高温 XRD システムを利用してゼオライト
の飛躍的な向上を実現した。シングルモードとよばれ
の相転移による構造変化について検討を行い、Cs 含
るマイクロ波照射技術を利用することで、攪拌なしに
有アルミノシリケートゼオライトが920℃で BIK 型か
対象物を均一に加熱する技術を開発した。この技術を
ら CAS 型へ変化することを明らかにした。さらに、
発展させ、VOC 分解など気相反応に利用できる汎用
加熱処理によって層状ケイ酸塩 magadiite から幾何
的な流通型マイクロ波化学反応評価装置を民間と共同
学的相似なミクロ多孔体を調製可能であることを示し、
開発した。
③
これまでの知見である層状ケイ酸塩からの多孔質材料
[分
創成の体系化を進めることができた。また高温 XRD
[キーワード]高温高圧、マイクロリアクター、マイク
野
名]環境・エネルギー
システムは他の材料評価においてもきわめて有効であ
ロ熱交換器、マイクロ混合器、超臨界水、
り、本手法によって水素選択的透過膜である Pd-
超臨界二酸化炭素、脱有機溶媒、流体特
Al2O3膜について、その高温構造観察と水素透過能変
性、反応場観測、反応場制御、有機合成、
化の因子を明らかにすることができた。
低 VOC 塗装、固体触媒、無機膜、水熱
多孔質材料の膜化については、アルミナ、ムライト
合成、パラジウム膜、無電解メッキ、ゼ
等の多孔質無機素材を基材とした場合に、既存の脱水
オライト膜、メンブレンリアクター、膜
ゼオライト膜を凌駕する新規 CHA 膜の開発に成功し
反応、分離機能、透過機能、層状珪酸塩、
た。さらに親水性有機材料を基材としてゼオライト膜
構造解析
(84)
産業技術総合研究所
[テーマ題目2]分散型プロセスの工程管理技術の開発
また高圧容器内の流体混合部を目視観測でき、粘度や
[研究代表者]水上
密度に関係した物性を高速測定できるシステムを民間
富士夫(コンパクト化学プロセス
企業と共同開発した。
研究センター長)
[研究担当者]水上
富士夫、鈴木
敏重、花岡
イオン液体への二酸化炭素の物理吸収によりナノメ
隆昌、
蛯名
武雄、林
拓道、和久井
喜人、
ートルオーダーの規則性構造が変化し、極性空間への
南條
弘、石川
育夫、金久保
光央、
二酸化炭素の吸収現象が解明された。これを利用して
相澤
崇史、手塚
星
靖、鈴木
二酸化炭素を含む工場排ガスの物理吸収溶液の開発と
裕之、
NAM Hyun jeong、川﨑
麻実、上田
増田
和美、冨樫
庄司
絵梨子、丹野
最適なプロセスデザインのための情報提供を行った。
加瑞範、
巨大電場と高酸化性ガスの組み合わせにより原子レ
昭子、
晢、関川
ベルで平坦なテラス幅を拡張した表面改質のみで構造
秀雄、
材料の耐食性を約10倍に向上させることができた。
秀一、
ISLAM Nazrul、
③
有害イオンの簡易計測法の研究
LLOSA TANCO Margot、
PACHECO Alfredo、手島
有害物として排出規制されているフッ化物イオン
(規制値:8 ppm)を、0.1~50 ppm の範囲で迅速
暢彦、
ONBHUDDHA Patiwat、
BAKER Derar、岡崎
加勢田
健志、武居
新妻
依利子、山﨑
神位
りえ子、
かつ簡易に測定しうる蛍光測定法ならびに測定装置を
純也、趙
正史、相田
天澤、
開発し、市販品としての製造販売を開始した。種々の
努、
疎水性分析試薬をナノ粒子化し、メンブレンフィルタ
ーに保持させる新規製膜法に成功し、汎用性の高い簡
ふじみ、
易計測法に道を拓いた。本試験膜に検水を通液濃縮す
BAYOUMI HASSAN Fathy、
GUO Yan-Li、鈴木
菅野
彰、星
康紀、谷津
直樹、渡邊
ることで鉛イオン、水銀イオン、鉄イオン等、金属イ
オンの ppb 濃度の高感度検出を達成した。
英明、
[分
庸
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]高温シール材、ガスバリア、水素タンク、
(常勤職員10名、他32名)
[研 究 内 容]
粘土膜、耐熱性、難燃性、イオン性流体、
①
機能性粘土膜の開発と実用展開に関する研究
二酸化炭素分離、高圧容器、有害金属イ
粘土を主成分とする柔軟な耐熱性ガスバリア膜の作
オン、フッ化物、鉛、水銀、簡易計測、
高感度濃度計測、検出膜
製に成功し、企業との共同で様々な応用展開を図って
きた。長尺フィルムの製造法および製造条件を明らか
にし、「クレースト」として製品化に到達した。平成
⑬【バイオマス研究センター】
20年までのアスベスト製品の全廃目標に対応する代替
(Biomass Technology Research Center)
(存続期間:2005.10~)
品の開発において、従来からガスケットに用いられて
きた膨張黒鉛製品に、耐熱粘土膜を複合化させ、耐熱
性、耐久性、耐薬品性、取扱い性に優れたガスケット
研 究 セ ン タ ー 長:坂西
欣也
製品を開発し、企業と共に生産体制に入り、販売を開
副研究センター長:平田
悟史
始した。粘土膜と炭素繊維強化プラスチック
(CFRP)を積層することにより、水素ガスバリア性
所在地:中国センター、つくば、九州
および耐久性に優れた水素タンク用複合材料を開発し
人
員:27名(26名)
た。従来の樹脂材料と比較して飛躍的な水素バリアー
経
費:1,180,000千円(93,300千円)
概
要:
性と耐久性を示し、水素輸送用タンク、車搭載の水素
タンクへの応用に展開。また、膜の透明度を実用透明
京都議定書における炭酸ガス排出量の低減目標に貢
高めることに成功し、ディスプレー用フィルムなど、
献するため、また、それに引き続く地球温暖化の防止
新しい用途に道を拓いた。
を推進するため、再生可能エネルギー源であるバイオ
②
フィルムレベル(全光線透過率90パーセント以上)に
特異場における基礎物性の解明と利用に関する研究
マス資源を積極的に活用することは極めて重要である。
高圧流体場、ナノ空間場における二酸化炭素やイオ
特に、バイオマス資源の中でも炭素固定量の最も多い
ン液体の基礎物性を明らかにしてきた。ケトン系の有
森林等の木質系バイオマスに対して経済性を有する利
機溶媒への高圧二酸化炭素の溶解機構は圧力の上昇と
用技術を確立することができれば、未利用樹、製剤残
共にエントロピー支配型から規則性の配位構造への変
材、建築廃材等の多量の木質バイオマスが利用可能に
化によることが明らかになった。これを利用して二酸
なり、再生可能エネルギー源として重要な貢献をする
化炭素塗装用の塗料開発や有機微粒子の製造を行った。
ことができる。
(85)
研
究
(中国センター、九州センター)
バイオマス研究センターでは、再生可能エネルギー
概
であるバイオマスエネルギーの経済性のある高付加価
要:
値利用技術を研究開発し、人間活動による化石資源使
木質系バイオマスから非硫酸法による低環境負荷で
用量の低減を推進し、循環型エネルギー社会の構築に
かつ経済的なバイオエタノール製造技術を確立するた
貢献することを目的とする。
めには、木質等の酵素糖化性を向上させるための前処
また、国内外におけるバイオマス利活用研究開発の実
理技術が重要となる。当チームでは水熱処理およびメ
証を通して、アジア・世界におけるバイオマス利活用
カノケミカル処理を基盤技術として、効率的な前処理
研究をリードすることを目指す。
技術の開発を目標としている。
バイオマス研究センターでは、上記の目的を達成する
水熱処理 で は、加圧す る とこによっ て 得られる
ため、以下の4課題を中核的研究課題として、研究開
100℃以上の加圧熱水を用いることにより、温度条件
発を精力的に実施する。
を変えることによって木質の主要構成成分であるセル
(1) 木質系バイオマスから非硫酸法・酵素糖化法を連
ロース、ヘミセルロースおよびリグニンを選択的に糖
結して最適化することによりバイオエタノール及び
化することが出来る。メカノケミカル処理では粉砕技
ETBE(エチルターシャルブチルエーテル)を高効
術を基盤としてセルロース成分等をナノサイズで解す
率で製造する技術を開発することを目標とする。特
ことにより、木質を活性化させる。これら基盤技術を
に、環境性・経済性を有する可能性の高い前処理技
最適に組み合わせることにより、効率的に酵素糖化性
術である水熱メカノケミカル糖化法の実証を目指す。
を向上させる前処理技術の構築を進めている。
(2) 木質系バイオマスから、ディーゼル機関用軽油で
また、セルロースやリグニン成分を原料として、バ
ある BTL(バイオマスツーリキッド)を、ガス化
イオエタノール製造のトータルコスト削減に貢献でき
経由で経済性を有して製造する技術を研究開発する。
る高付加価値化技術として機能性材料や複合材料等へ
の変換技術の開発も進める。
特に、タールやチャー、バイオマスに含まれる微量
物質を除去するクリーンガス化技術と BTL 燃料合
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
3、テーマ題目4、テーマ題目5
成技術をミニベンチプラント運転を通じて研究開発
し、実証することを目指す。
エタノール・バイオ変換チーム
(3) 製材残渣等の木質系バイオマス利用システム評価
により、経済性があり、環境への負荷が小さいバイ
(Ethanol Bioconversion Team)
オマス利活用トータルシステムの研究開発、及びそ
研究チーム長:澤山
茂樹
(中国センター)
の実証に貢献する。特に、上記技術開発を支援する
概
バイオマスエネルギーシステムの経済性・環境性を
要:
シミュレーションするシステム評価技術を開発し、
エタノール・バイオ変換チームでは、木質系バイオ
最適なシステム構築を行う。さらに、バイオマスエ
マスからバイオエタノールを環境性・経済性良く製造
ネルギー変換の経済性を向上させるための革新的バ
する技術の実現を目指して研究開発を行う。上記目標
イオマス変換技術を研究開発する。
を達成するため、木質バイオマス前処理物の酵素糖化
とエタノール発酵を中核的研究課題として研究開発を
(4) 上記の研究開発技術を活用し、地球規模の温暖化
精力的に実施した。
対策に貢献するため、バイオマス資源腑存量の多い
アジア地域を中心に、バイオマス資源の有効活用を
「糖化・エタノール発酵研究開発」の糖化に関して
図る技術研究開発を、バイオマス資源の豊富なアジ
は、水熱-メカノケミカル前処理法に最適な酵素糖化
ア諸国との連携を強化し、アジアのみならず世界の
技術の確立を目指して研究を行った。高セルラーゼ生
バイオマスエネルギー利用技術の促進に貢献する。
産糸状菌アクレモニウムについて、稲わら前処理物を
さらに、上記研究課題に関して、積極的に産総研内
炭素源として効率よくセルラーゼが生産できることを
の関連研究ユニットや農水省等の関連研究機関、及
明らかにした。高セルラーゼ生産変異株などの酵素生
び広島大との包括連携協定を通じて平成22年度の東
産技術により、経済性の高いオンサイト型糖化酵素技
広島移転に伴うアジアバイオマスセンター構想の実
術に目処をつけた。「糖化・エタノール発酵研究開
現に向けて、アジアバイオマスエネルギー研究コア
発」の発酵に関しては、2倍体実用酵母について遺伝
としての役割を果たすことを目指す。
子操作を行い、キシロースとグルコースを同時にエタ
表:誌上発表64件、口頭発表160件、その他6件
ノールに変換できる実用酵母株の創出に成功した。さ
---------------------------------------------------------------------------
らに、発酵液についてバイオガス化の検討を行った。
発
バイオマス資源が豊富なマレーシア・タイ・ラオス
水熱・成分分離チームチーム
(Biomass Refining Technology Team)
における農産廃棄物等を原料としたエタノール生産の
研究チーム長:遠藤
実用化に向けて、資源量の把握や上記糖化・エタノー
貴士
(86)
産業技術総合研究所
研究テーマ:テーマ題目8、テーマ題目9
ル発酵技術の適用可能性について国際共同研究を実施
した。
バイオマスシステム技術チーム
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
(Biomass System Technology Team)
3、テーマ題目6
研究チーム長:美濃輪
智朗
(中国センター)
BTL トータルシステムチーム
(BTL Total System Team)
研究チーム長:坂西
概
でなく経済的に成り立つトータルとしてのシステムを
(中国センター、九州センター)
概
要:
種々のバイオマスの導入・普及には、技術開発だけ
欣也
要:
構築することが必要である。本チームでは、基盤とな
BTL 技術は、ガス化、ガスクリーニング、ガス組
るデータベースを構築し、バイオマスシステムのプロ
成調整、触媒合成、分離精製等の工程からなるため、
セスシミュレーション技術を開発する。また、作成し
多岐にわたる技術分野を融合して一気通貫のプロセス
たシミュレータを用いて最適化、経済性・環境適合性
を開発する。さらに、18年度に建設した BTL ベンチ
などの評価を実施すると共に、経済的なバイオマスト
プラントにより中間目標である0.01 BPD を達成し、
ータルシステムを提案する。
さ ら に BTL ト ー タ ル プ ロ セ ス の 最 適 化 に よ る
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目3、テーマ題目
0.1 BPD(最終目標)の実現を目指す。前段のガス
10
化~ガスクリーニングにおいて触媒合成に適した組成
---------------------------------------------------------------------------
の合成ガスをバイオマスから製造する技術を開発する
[テーマ題目1]産総研産業変革研究イニシアティブ
とともに、後段の触媒合成においてバイオマス由来合
「中小規模雑植性バイオマスエタノール
燃料製造プラントの開発実証」
成ガスの特徴に適した触媒の検討を行う。特に現在課
題となっているガスクリーニングに関してはタールの
[研究代表者]坂西
欣也
高温乾式除去法の確立を目指す。また、木質バイオマ
[研究担当者]美濃輪
智朗、柳下
立夫、藤本
スからのエタノール製造におけるリグニンあるいは樹
三島
康史、遠藤
貴士、李
皮(バーク)等のガス化反応性の比較検討を行う。ラ
井上
誠一、澤山
茂樹、矢野
ボスケールでの FT 合成触媒反応及び生成ワックス成
村上
克治、滝村
修、塚原
分の水素化 分 解、異性化 触 媒反応の設 計 を行い、
井上
宏之、松鹿
昭則
BTL トータルプロセスの最適化を検討する。
(常勤職員15名、他4名)
真司、
承桓、
伸一、
建一郎、
[研 究 内 容]
研究テーマ:テーマ題目7
本プロジェクトでは、産総研が有するバイオマス原材
BTL 触媒チーム
料の前処理技術を中心とした中小規模のエタノール燃料
(BTL Catalyst Team)
一貫製造プラントを開発し、非硫酸法による多種多様な
研究チーム長:村田
セルロース系バイオマス(雑植性バイオマス)からのエ
和久
タノール燃料生産技術を実証する。すなわち、木質系お
(つくば中央第5、つくば西)
概
要:
よび草本系を主としたバイオマス原材料の種類やその集
循環型資源利用とエネルギーセキュリティーに貢献
積状況に対応可能な製造プラントプロセスについて、現
するため、バイオマス原料からの輸送用燃料製造のた
有技術の発展的統合と製造プロセスから生産消費までの
めの統合化技術構築を目的として、ガス化技術ならび
環境負荷を最小化するためのライフサイクル評価や燃料
に得られる合成ガス液化のための触媒技術の高度化を
性能評価を実施することで実現する。さらに、年間を通
中心とした開発を行う。ガス化(ガス化率向上及びガ
じて安定した原料確保のための原料供給・利活用モデル
ス組成調整)-ガス精製-FT-水素化分解・異性化か
を構築することによって環境負荷の最小化を目指す。こ
らなるプロセスの内、BTL 触媒チームでは、ガス化
れによってセルロース系バイオマスによる再生可能エネ
と FT 触媒開発を中心とする研究を行う。
ルギー技術およびそのプラント技術を開発し、持続的社
会の礎となるエネルギー産業の創出を図る。
この内ガス化では、製材残渣や間伐材等の木質系バ
イオマスで95%以上、農業廃棄物や建築廃材等の廃棄
平成20年度は、昨年度決定した設計諸元を元に、原料
物系バイオマスで90%以上のガス化率で、合成ガス
200 kg/バッチ規模のベンチプラントを建設した。ベン
(一酸化炭素+水素等)を製造するプロセスを開発す
チプラントは粗粉砕、水熱、メカノケミカル、脱水、糖
る。また、生成ガスの精製やガス比調整により得られ
化・発酵、蒸留・精製の各工程からなる。試運転を行い、
るバイオガスから軽油等の運輸用燃料を製造するため
各工程が動作することを確認した。また、前処理の最適
の触媒技術を開発する。
化を行い、ユーカリに対しては、湿式カッターミル処理、
(87)
研
究
水熱処理、湿式ディスクミル処理の順番が良いことを明
下させる必要が無く、未処理の木質と同程度の高結晶性
らかにした。さらに、酵素生産の効率化を目指し、糸状
のままでも糖化率70%以上の高い酵素糖化性を発揮でき
菌 Acremonium cellulolyticus の遺伝子解析に着手した。
ることを見出した。また、木質をオートクレーブ処理あ
ライフサイクル評価は安全科学研究部門で行い、シナ
るいは短時間の乾式メカノケミカル処理した後に湿式メ
リオを想定してバウンダリー(境界条件)の設定を行い、
カノケミカル処理を行えば、超微細繊維化を促進でき酵
インベントリデータ、コストデータの収集、整備を行っ
素糖化性を大きく向上できることを明らかにした。さら
た。原料供給に関しては、森林総合研究所に委託し、東
に、湿式メカノケミカル処理の時間短縮と連続処理によ
北3県を事例に、木質バイオマス供給可能量の空間的推
る効率化方法について研究を進めた結果、ディスクミル
定方法の手法開発を行った。
を用いることにより、従来のボールミル粉砕処理のおよ
[分
そ10分の1の時間とコストで連続的に処理できることを
野
名]環境・エネルギー
明らかにした。
[キーワード]バイオマス、バイオエタノール、メカノ
ケミカル、微粉砕、酵素糖化、糸状菌、
並行複発酵微生物の開発のうち糖化機能の付与につい
エタノール発酵、酵母、システムシミュ
ては、T. reesei のエンドグルカナーゼ、セロビオヒド
レーション、経済性評価
ラーゼ、β-グルコシダーゼの各糖化酵素の遺伝子を、
[テーマ題目2]NEDO 委託研究「バイオマスエネル
した結果、それぞれの遺伝子が発現して酵素が生成し、
ギー高効率転換技術開発/バイオマスエ
培地中に分泌されることを確認した。また酵素の導入方
ネルギー先導技術研究開発/ワンバッチ
法として、プラスミドでの導入と染色体組み込みの2つ
式バイオエタノール製造技術の研究開
の方法を検討したが、酵素の発現量は同程度で、安定性
発」
の点で染色体組み込み法の方が優れていることを明らか
エタノール発酵酵母 Saccharomyces cerevisiae に導入
[研究代表者]坂西
欣也
[研究担当者]澤山
茂樹、遠藤
貴士、矢野
村上
克治、滝村
修、井上
李
承桓、寺本
にした。さらに、酵素タンパク質を細胞外に分泌させる
好邦、松鹿
シグナル配列として、S. cerevisiae 本来のシグナルで
伸一、
宏之、
ある α ファクターを用いると、T. reesei の酵素タンパ
昭則
ク質が持つシグナルを利用した場合と比べ、培養液への
(常勤職員10名、他6名)
分泌量が2倍程度増加することがわかった。
[研 究 内 容]
並行複発酵微生物の開発のうち、五炭糖発酵機能の付
木質系バイオマスからの次世代型エタノール製造プロ
与については、木質系バイオマスの糖化液に多量に含ま
セスとして、前処理した木質を成分分離することなくそ
れる5炭糖であるキシロースをエタノールへ変換する技
のままワンバッチ式で糖化・発酵できるシンプルで高効
術として、酵母 S. cerevisiae の遺伝子を組換える事に
率なエタノール生産技術の開発を目標に、木質バイオマ
よりキシロース代謝能を獲得させる研究開発を行った。
スの糖化発酵のためのナノ空間形成法前処理技術の開発
従来のキシロース発酵性を付与した遺伝子組換え酵母で
及び木質バイオマス原料に適した並行複発酵微生物の開
も、キシロースからの嫌気的エタノール発酵効率は依然
発を行った。前処理による原料の糖化性向上と遺伝子組
として低く、また発酵の過程で中間代謝物キシリトール
み換え技術を用いた並行複発酵微生物の開発により、最
が蓄積して炭素変換効率を減少させるという問題が存在
適条件での発酵と同時に酵素糖化を実現することで、エ
する。さらにはグルコースの存在下では実質的にキシロ
タノール発酵速度・収率の向上を目指す。
ースを発酵できない(グルコースによって発酵が抑制さ
平成19年度は、酵素糖化の前処理技術として湿式メカ
れる)。上記課題を解決すべく、あらゆる宿主酵母株の
ノケミカル処理をベースとしたナノ空間形成による木質
染色体に組込むことができるキシロース代謝系発現カセ
の活性化処理について研究開発を行った。従来、木質の
ットを構築した。すなわち、Pichia stipitis 由来のキシ
乾式メカノケミカル処理では、樹種への依存性が少なく
ロース還元酵素(XR)および NAD+要求性から NADP+
セルロース成分の糖化率は70%以上にできることが分か
要求性への補酵素特異性を変換した改変型キシリトール
っていたが、長時間の粉砕が必要で原料として1 mm
脱水素酵素(XDH)、さらに S. cerevisiae 由来のキシ
以下に粗粉砕した木粉を用いる必要があるなど、コスト
ルロキナーゼ(XK)遺伝子の発現カセットである。こ
高が課題となっていた。ナノ空間形成法は湿式メカノケ
れを複数の宿主酵母(S. cerevisiae)の染色体に効率よ
ミカル処理により、水分子を木質成分間に挿入させるこ
く導入することに成功した。その結果、本遺伝子組換え
とによって木質中の安定なセルロース成分をナノレベル
酵母はグルコース存在下でもキシロースを発酵できる六
で超微細繊維化(ミクロフィブリル化)し、その周囲に
炭糖・五炭糖同時発酵酵母であることを見出した。また、
酵素が容易に接近して糖化できるナノ空間を形成させる
これら酵母株の中から、キシロース発酵速度が速く、キ
技術である。本技術では、従来から言われているような
シロースからエタノールを高収率に生産できることに加
酵素反応性を向上させるためにセルロースの結晶性を低
え、グルコースの存在下でキシロース発酵能が促進され
(88)
産業技術総合研究所
る遺伝子組換え酵母を選抜した。選抜した組み換え株は
収率が低く、それらに市販ヘミセルラーゼを加えたカク
実用性の高い凝集性酵母で、連続発酵、繰り返し発酵が
テルを調製することでキシロース収率が明らかに改善さ
可能であり、酵母のリサイクルによって高い酵母濃度を
れた。酵素カクテルを用いた水熱処理試料の糖化評価の
維持でき、より高いエタノール生産性が得られる。さら
結果、グルコース収量については180℃の処理が高かっ
に本遺伝子組換え酵母を用いたキシロースからの嫌気的
たが、キシロース収量が低く、全体の糖収量については
エタノール発酵について研究を進めた結果、グルコース
160℃の処理が高かった。また、予備検討として、ボー
共存化での完全合成培地では、4.5%のキシロースをお
ルミル粉砕処理およびディスクミル処理をそれぞれ行っ
よそ48時間で発酵できることを明らかにした。このよう
たところ、両処理ともに糖化率が高い事がわかった。
に、補酵素依存性改変型キシリトール脱水素酵素を、関
本プロセスの経済性を評価するためのプロセスシミュ
連酵素遺伝子と共に2倍体実用酵母の染色体に導入する
レーションの確立を目的として、まず基本となるプロセ
ことにより、キシロースからの効率のよいエタノール発
スフローを考え、プロセス設計を行った。本フローは粗
酵に成功した。
粉砕、水熱処理による前処理、酵素糖化、エタノール発
[分
酵からなる。プロセスシミュレーションのために必要な
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]バイオマス、エタノール、微粉砕、ナノ
前提条件としては、糖化率と発酵率があるが、現状の値
空間形成、酵素糖化、エタノール発酵、
としては、セルロースの糖化率を80%、ヘミセルロース
遺伝子操作、システムシミュレーション、
の糖化率を80%とした。また、六炭糖の発酵率は80%と
経済性評価
し、五炭糖は現状では発酵できないものとした。本結果
から、製造コストの64%が酵素調達費用であることがわ
[テーマ題目3]農林水産省委託「稲わら等の作物の未
かった。また原料費は24%、固定費は6%であった。現
利用部分や資源作物、木質バイオマスを
状では酵素調達費用がエタノール製造コストの約2/3程
効率的にエタノール等に変換する技術の
度を占めており、経済性への感度が高いものと考えられ
開発/稲わら変換総合技術の開発稲わら
る。開発の第一ステップとしてはこの酵素調達費用の低
水熱・酵素糖化・エタノール発酵基盤技
減を行う必要がある。すなわち、必要酵素使用量を低下
術の研究開発」
させる前処理技術の開発、あるいはオンサイト酵素生産
[研究代表者]澤山
等の安価な酵素供給手法の開発等が必要である。
茂樹
[分
(エタノール・バイオ変換チーム)
[研究担当者]滝村
塚原
美濃輪
修、井上
宏之、松鹿
建一郎、遠藤
智明、藤本
名]環境・エネルギー
[キーワード]バイオマス、エタノール、稲わら、メカ
昭則
貴士、井上
野
ノケミカル、微粉砕、酵素糖化、エタノ
誠一、
ール発酵、システムシミュレーション、
真司
経済性評価
(常勤職員9名、他3名)
[研 究 内 容]
[テーマ題目4]効率的酵素糖化前処理技術の開発
環境負荷が低く経済的で効率の高い、稲わらからのバ
イオエタノール製造技術の確立を研究目的として、稲わ
[研究代表者]遠藤
貴士
らからのバイオエタノール製造原価100円/L 以下を達
[研究担当者]坂木
剛、井上
寺本
成する技術の開発を目標とする。セルロース系バイオエ
誠一、李
承桓、
好邦(常勤職員5名、他4名)
[研 究 内 容]
タノール製造技術においては、前処理技術、糖化技術、
木質等のバイオマスの酵素糖化性を向上させるために、
発酵技術が重要な要素技術であり、稲わらを原料とする
場合は水熱処理と酵素糖化を組み合わせる方法が最も有
水熱処理とメカノケミカル処理の組み合わせによる効率
望な技術の1つと考えられる。従って、稲わらのエタノ
化方法、環境負荷の低い溶媒を用いた蒸煮処理による前
ール変換技術において、これらの要素技術と経済性を含
処理技術、メカノケミカル処理方法の効率化技術の開発
めた統合化技術に関する基盤的研究開発の進展が必要で
を進めた。
木質をメカノケミカル処理すると酵素糖化性が比較的
ある。
カッターミルにより<2 mm サイズに粉砕を行った
容易に向上するが、粉砕などでエネルギーを多く消費す
稲わらを原料とし、酵素糖化の前処理として水熱処理の
る課題があった。そこで、メカノケミカル処理の前に、
検討を行った。セルロースは、160~180℃の温度域での
木質を短時間の水熱処理し、ヘミセルロース成分を糖化
水熱処理により酵素糖化が進行することが明らかになっ
し、さらに脱リグニン処理を行ったところ、メカノケミ
た。200℃以上の水熱処理では、キシロースと同様にグ
カル処理のみでは粉砕に120分必要であったものが、10
ルコースの収率が減少した。糖化処理に用いる酵素を検
分間の粉砕時間で十分に酵素糖化性を向上できることを
討した結果、市販セルラーゼもしくは、セルラーゼ生産
明らかにした。また、酢酸-水-エタノール系のグリー
糸状菌の培養液のみを用いた糖化処理ではキシロースの
ン溶媒を用いた蒸煮処理では、木質中のヘミセルロース
(89)
研
究
とリグニンが部分的に分解溶出することにより、木質に
[テーマ題目6]環境省委託研究「地球温暖化対策技術
酵素が進入できる細孔が形成されて微粉砕等を行うこと
開発事業/酵素法によるバイオマスエタ
なく粗粉砕物のままでもセルロース糖化率を100%にす
ノール製造プロセス実用化のための技術
ることができた。メカノケミカル処理の連続化による効
開発/セルラーゼ生産菌の改良に関する
率化を目的として、エクストルーダーを用いた木質の処
研究
理方法について検討した結果、少量の水あるいはポリオ
[研究代表者]澤山
(エタノール・バイオ変換チーム)
ールを添加してエクストルーダー処理を行うことにより、
[研究担当者]矢野
セルロース成分がその最小の集合単位であるミクロフィ
宏之
[研 究 内 容]
にした。
野
伸一、井上
(常勤職員3名、他1名)
ブリルに解繊され、高い酵素糖化性を示すことを明らか
[分
茂樹
木質系バイオマスからエタノールを、環境性・経済性
名]環境・エネルギー
[キーワード]木質、バイオマス、酵素糖化、水熱処理、
良く製造する技術の確立を目指し、セルラーゼを生産す
る Acremonium 属糸状菌について、酵素生産性の改良
メカノケミカル処理、蒸煮処理
研究開発を行った。糸状菌アクレモニウムについて突然
[テーマ題目5]木質成分の高付加価値化技術
変異法を用いた育種を行い、従来の菌株に比べセルラー
[研究代表者]遠藤
ゼ生産性の高い突然変異株の取得に成功した。また、セ
[研究担当者]坂木
寺本
貴士
剛、亀川
克美、李
承桓、
ルラーゼ誘導物質の検索の結果、ラクトースに誘導性が
好邦(常勤職員5名、他4名)
あることを見出した。
[研 究 内 容]
[分
木質系バイオマスからバイオエタノール製造では、最
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]バイオマス、エタノール、酵素糖化、糸
状菌、Acremonium
終的に残渣となるリグニン等を高付加価値化して有効利
用することにより製造プロセス全体の経済性を向上させ
ることが重要である。そこで、リグニンを吸着剤・活性
[テーマ題目7]木質系バイオマスからの液体燃料製造
炭としての利用技術、他の高分子との複合化による接着
技術の開発
剤への応用技術について研究を進めた。また、酵素糖化
[研究代表者]坂西
のために前処理した木質の材料系への応用についても研
欣也
(BTL トータルシステムチーム)
究を進めた。
[研究担当者]花岡
その結果、水熱処理したユーカリや米松を原料として
寿明、宮澤
朋久
(常勤職員2名、他3名)
製造した吸着剤では、有機化合物に対して市販の石油系
[研 究 内 容]
吸着樹脂と同等以上の性能が発揮できることが分かった。
BTL ベンチプラントを定常運転させ、FT 合成装置を
また、比表面積について調べた結果、市販の活性炭を超
含めた一気通貫でのバイオマスからの BTL 液体燃料製
える比表面積を持ったリグニン系活性炭が得られること
造を行った。酸素富化空気を導入したガス化により、固
が分かった。接着剤の応用では、蒸煮処理により得られ
定床ダウンドラフト型ガス化炉から合成ガス(CO、
るリグニンと特異的に分子レベルで相互作用する高分子
H2 )を50%程度含むガスを安定して得ることに成功し、
について検討した結果、ポリビニルピロリドンとは種々
得られた実ガスからの FT 合成反応により7.8 L/日の液
の比率で瞬時に複合化できることを明らかにした。それ
体燃料製造に成功した。また、高温乾式タール除去につ
ぞれを塗布した木片は張り合わすことにより接着でき、
いて活性炭や金属担持活性炭により、タール及び硫黄化
分子相互作用を利用したリグニン系接着剤への応用が可
合物の吸着・分解除去が可能であることを確かめた。さ
能であることが分かった。また、木質を湿式メカノケミ
らに、ラボスケールよりスケールアップしたジメチルエ
カル処理して得られるセルロース微細繊維は高い酵素糖
ーテル(DME)合成反応装置を導入・運転した。バイ
化性を発揮するが、この微細繊維を樹脂の強化フィラー
オマスのガス化ガスからのメタノール合成及び脱水反応
としての利用性について検討した結果、水系合成ポリマ
を経由したバイオ DME の連続合成に成功し、約120g
ー溶液に1%添加するだけで、得られシートの強度物性
の液化バイオ DME サンプルを回収した。
が未添加の場合と比較して1.5倍になることを見いだし
[分
た。これにより微細繊維は軽量な強化樹脂開発へ応用可
[キーワード]バイオマスガス化、ガスクリーニング、
野
名]環境・エネルギー
FT 触媒反応、ジメチルエーテル
能であることが示された。
[分
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]リグニン、セルロース、吸着剤、活性炭、
接着剤、微細繊維、フィラー
[テーマ題目8]木質系バイオマスからの液体燃料製造
技術の開発(運営費交付金、NEDO バ
イオマスエネルギ-転換要素技術開発、
(90)
産業技術総合研究所
NEDO バイオマス先導技術開発)
[研究代表者]村田
平成19年度進捗状況:
和久(バイオマス研究センター
(a) 自 己 触 媒 - 炉 内 滞 留 利 用 : モ デ ル 化 合 物 と し て
BTL 触媒チーム)
[研究担当者]岡部
中西
清美、小木
Ca(OH)2 を約5%添加してガス化を行った。ガス化
知子(併)、
正和(併)、高原
功、稲葉
率:約99%、H2/CO:約2で高ガス化率と適正組成ガ
仁
スの両立を実現できた。Ca(OH)2 添加の副次的効果
(常勤職員6名、他3名)
として、タール生成量低減(0.01%程度)、微量成分
減少(H2S:74 ppm→55 ppm)生じた。
[研 究 内 容]
(1) 安価なアルカリ金属系触媒を用いて木材をガス化し、
(b)メタン改質触媒:小型噴流床バイオマスガス化装置
ガス化率98%かつ FT 合成に適した組成のガス生成
を改造して反応管出口部分に改質ゾーンを増設(温
(H2/CO=2)を達成する事ができた。(2)スチーム中で
度:常温~670℃)、実プラントに近い条件でメタン改
のバイオガス改質により水素及び CO 濃度の増加とメ
質触媒特性を測定した。シフト反応は250℃以上で生
タン濃度の減少を観察した(560℃以上)。改質効果は
じ、500℃付近でピークとなった。300~580℃ではメ
硫黄により被毒され、数時間で効果が消失した。
タン生成反応、580℃以上ではメタン水蒸気改質反応
が起きた(670℃で8%→2%)。ドライ改質(CH4+CO2
(2) 脱硫触媒の存在により、硫黄不純物濃度の低下が認
められた。
→2H2+2CO)は殆ど起きなかった。触媒は数時間で
失活した(SV:約1000)。硫黄(特に H2S)の影響と
(3) 各種バイオマスの反応挙動解析と、特に低温域にお
ける熱特性や生成物を分析し、ガス化装置設計に資す
考えられる。
る結果を得た。
(c) 亜鉛フェライト触媒の脱硫・硫黄改質効果:580℃
(4) フィッシャートロプシュ(FT)反応用ルテニウム
以上の高温で亜鉛フェライト触媒を用いると、COS
系触媒について、1)ルテニウムの周りにマンガンが覆
を SOx または H2S へ変換する効果はあるが、H2S 除
う構造のため、ルテニウムの粒子成長が起こりにくい
去効果は十分ではなかった(74 ppm→47 ppm)。な
ことを推定した。2)γ-Al2O3 担体とメソポーラスシリ
おこの他にガス化副生物の性状解析も行った。
(d) FT 触媒の成果:
カとの複合担体は、Al2O3量の希釈により酸性度が低
1)
下するため、性能の向上には至らなかった。3)バイオ
Ru-Mn/γ-Al2O3触媒の Mn/Al 比及び反応圧の最
ガスを用いる FT 反応では、共存する CO2やメタンの
適化を行い、模擬合成ガスを使用して、CO 転化率
影響は少なく、FT 反応は進行するが、5 ppm 程度存
96 % 、 C5+ 選 択 率 90 % を 確 認 ( W/F=13g-
在する硫黄分の影響は無視できないことを確認した。
cat.h(mol)-1 )。 130 h 程度までの反応により、
[分
野
0.144 BPD/原料 100 kg を確認。Ru 系が Co 系
名]環境・エネルギー
[キーワード]バイオマスガス化、FT 触媒
を超える性能を有することを示した。
2)
バイオガス(合成ガス71%含有、H2/CO 比=1.82、
[テーマ題目9]新エネルギー技術研究開発/バイオマ
硫黄分約8 ppm)を利用して FT 反応を行い、共存
スエネルギー高効率転換技術開発(先導
するメタンや CO2 は反応に悪影響はないが、硫黄
技術開発)/バイオマスガス化-触媒液
の影響により、模擬ガスより活性低下が早いことを
化による輸送用燃料(BTL)製造技術の
確認した。
研究開発
3)
一段での中間留分選択率向上を期待して、炭素チ
[研究代表者]村田
和久(バイオマス研究センター)
ューブなど炭素系の担体効果を検討し、チューブ内
[研究担当者]小木
知子、岡部
に Ru が主として存在する効果により、炭素の連鎖
清美、中西
正和
成長確率がγ-Al2O3 系担体より低くなることを確認
(常勤職員4名、他2名)
[研 究 内 容]
目
した。
標:
[分
2020~2030年頃の実用化が期待できるバイオマス利用
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]バイオマスガス化、ガス精製、FT 触媒
のための基礎技術のうち、ガス化及び触媒液化(FT 反
応)による輸送用燃料製造技術の研究開発を実施する。
[テーマ題目10]バイオマスシステム研究
研究計画:
[研究代表者]美濃輪
バイオマスを日本の適正規模に応じたレベルで効率よ
智朗(バイオマス研究センター
バイオマスシステム技術チーム)
く液体燃料化するために、自己触媒作用等を利用したガ
[研究担当者]佐々木
義之、平田
静子、三島
ス化率向上とガス組成改善、脱硫触媒の検討、触媒液化
柳下
(FT)工程などの改善などに加えて、ガス化で副生する
(常勤職員6名、他11名)
CH4、CO2等の CO への触媒変換工程を新たに取り入れ
立夫、藤本
康史、
真司
[研 究 内 容]
種々のバイオマスの導入・普及には、技術開発だけで
ることを特徴とする。
(91)
研
究
なく経済的に成り立つトータルとしてのシステムを構築
者を支援し、高度な製造技術の維持・発展が可能とな
することが必要である。本チームでは、基盤となるデー
る技術を提供することが目標である。
タベースを構築し、バイオマスシステムのプロセスシミ
このため、企業現場において、製造技術の計測・分
ュレーション技術を開発する。また、作成したシミュレ
析を実施し、製造現象の解明とともに、作業者の持つ
ータを用いて最適化、経済性・環境適合性などの評価を
暗黙的な知識と形式的な知識の構造の解明に取り組む。
実施すると共に、経済的なバイオマストータルシステム
解明された知識の体系化を試み、その有効性を企業に
を提案する。
おける利用(実験)により検証する。この手順を繰り
木質系バイオマスから液体燃料を製造するトータルシ
返すことで製造技術の本質に迫ることが、本研究セン
ステムシミュレータをベースに、我が国におけるバイオ
ターの「ものづくりの科学」の方法である。また、そ
エタノールの生産コストと CO2 削減コスト分析を行い、
れらを製造現場で生かすためは簡便性、効率性と安全
年産7万 kl 規模となれば60¥/L で生産できる可能性が
性を兼ね備えた、高度な利用技術が不可欠である。こ
あること、原油価格が高くなれば CO2 削減コストは相
のための情報技術の研究開発も並行して実施する。
対的に低下し、省エネなどの CO2 削減コスト並みにな
製造技術に関する知識の体系化に関する研究課題とし
ることを示した。
て「技能継承技術」を、新たな支援技術の確立を目指
して「対話的支援技術」の研究開発を実施する。また、
アジアにおけるバイオマストータルシステムの一つと
して「パーム産業コンプレックス構想の展開」を取りま
旧・ものづくり先端技術研究センターの成果の普及に
とめるとともに、経済性向上のため、水棲バイオマス利
努める。
活用の調査や BDF 製造、副生グリセリン利活用の研究
技能継承技術の研究開発項目として平成18年度より
も行った。
継続して、鍛造、鋳造、めっき、熱処理などの基盤的
[分
な加工技術について、熟練技術者の持つ競争力のある
野
名]環境エネルギー
暗黙的な知識を、事例に基づいて整理体系化すること
[キーワード]バイオマス、システム、経済性
と、それらの蓄積・活用に関する利用技術の研究開発
⑭【デジタルものづくり研究センター】
に取り組んでいる(中小企業基盤技術継承支援事業)。
(Digital Manufacturing Research Center)
対話的支援技術の研究開発項目としては、熱変形現象
等を例題に、作業中にタイムリーに加工情報を提供す
(存続期間:2006.4.1~2011.3.31)
る技術の研究開発を平成18年度より継続して実施して
研究センター長:松木
則夫
副 セ ン タ ー 長 :花田
康行
いる。
--------------------------------------------------------------------------外部資金:
所在地:つくば東
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
人
員:18名(17名)
「中小企業基盤技術継承支援事業」
経
費:243,730千円(113,557千円)
概
要:
文部科学省
科学研究費補助金
「視覚障害者の立体認識機構の研究および立体幾何学教
材の開発」
製造技術に関する知識の体系化と、情報技術を活用
した製造現場におけるこれら知識の蓄積・利用技術の
高度化の研究開発を行うことで、わが国の産業競争力
財団法人飯塚研究開発機構
の強化に資することが本研究センターの目指すところ
「金型の知能化による金属プレス加工の不良レス化」
財団等受託研究費
である。
財団法人飯塚研究開発機構
製造技術に関する知識の担い手は製造現場の作業者
財団等受託研究費
「超臨界流体付加射出成形による金型内メッキ技術の開
である。その作業者の持つ技能と技術の高度化が、産
発」
業競争力の強化において最重要な要素の一つである。
わが国の製造現場では、優秀な作業者の持つ暗黙的な
知識と形式的な知識が相互補完的に働き、日々新たな
社団法人日本非鉄金属鋳物協会
財団等受託研究費
製造技術の創出や高度化の原動力となっている。しか
「環境対応型非鉄金属鋳造技術に関する研究開発」
し、少子高齢化によって、この原動力が弱体化する懸
念がある。そこで、高度だが未解明の(暗黙的な)知
財団法人栃木県産業振興センター
識を明らかにする技術、形式的ではあるが偏在してい
「任意形状付シームレス極細パイプの高精度加工技術の
確立及び高効率製造装置の開発」
たり原理が理解されていない知識を活用する技術、こ
の双方を、製造現場で使える形で提供することで作業
(92)
財団等受託研究費
産業技術総合研究所
発
開発機構「中小企業基盤技術継承支援事
表:誌上発表40件、口頭発表79件、その他10件
---------------------------------------------------------------------------
業」
加工情報構造研究チーム
(Process Engineering Team)
研究チーム長:岡根
システム技術研究チーム
(Systems Engineering Team)
利光
研究チーム長:澤田
(つくば東)
概
浩之
(つくば東)
要:
概
鋳造、鍛造、熱処理、溶接、表面処理加工の各加工
要:
技術を対象に、加工評価実験・加工現象のモニタリン
中小企業の IT 化支援を目的として、コンピュータ
グ手法やシミュレータ開発を通して、加工メカニズム
やプログラムの専門家ではない中小製造業の技術者が、
の解明と高度化を進めている。また、IT を活用した
自社の業務で利用するソフトウェアを自分で作れるよ
技能継承技術の開発を目標に、ものづくり製造分野に
うにするための研究開発を行っている。その一環とし
おける熟練作業者の高いレベルの技能を分析・モデル
て、プログラムのソースコードを書くことなく、あら
化して表現する技術の開発を行っている。平成20年度
かじめ用意されたソフトウェア部品(コンポーネン
には、鋳造・鍛造・めっき・熱処理の各加工法の技能
ト)を組み合わせることによって IT システムを構築
について、抽出および活用の手法の検討を行い、技能
するソフトウェア作成ツール MZ Platform を開発し、
継承を支援するツールの開発を行った。さらに現在
産総研コンソーシアム「MZ プラットフォーム研究
IT を利用した中小企業への技術の普及・技術支援を
会」を通じて公開している。さらに、IT 知識を必要
目的に web で公開している加工技術データベースに
とせずに業務知識のみに基づいて社内システムを構築
ついても当チームの対象加工分野についてメンテナン
するためのシステム設計&構築技術の研究開発を行う。
スと拡充を進めた。
MZ Platform の成果普及活動として、平成20年度に
研究テーマ:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合
は、各地の公設試験研究機関、商工会議所、産総研産
開発機構「中小企業基盤技術継承支援事
学官連携部門等との協力により、各地における普及セ
業」、社団法人日本非鉄金属鋳物協会
財
ミナーや講習会の開催、技術研修による IT 人材の育
団等受託研究費「環境対応型非鉄金属鋳造
成、また、中小製造業への導入と業務アプリケーショ
技術に関する研究開発」
ン開発を実施した。一方、民間ソフトウェアベンダー
への技術移転も進め、新たに3社と技術移転契約を締
結した。
計測分析技術研究チーム
(Measurement and Analysis Team)
研究チーム長:石川
研究テーマ:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合
開発機構「中小企業基盤技術継承支援事
純
業」、文部科学省
(つくば中央第3)
概
科学研究費補助金「視
要:
覚障害者の立体認識機構の研究および立体
当チームは、熟練技能の継承支援を目的とした熟練
幾何学教材の開発」
技能者の計測分析技術の開発を目標とする。熟練技能
者の計測分析は、技能者の判断や運動の計測分析とい
対話的支援技術研究チーム
った人間工学的手法と、作業中のワークの振動や温度
(Interactive Support Technology Team)
や完成品の精度といった物理的計測手法の両面から行
研究チーム長:山内 真
い、両方を併せて技能の本質を追究する。また、技能
(つくば東)
計測は現場で行うことを基本とし、現場で用いること
概
要:
のできる計測装置開発を研究の一環として実施する。
製造業における国際競争力強化のためには、製造現
本年度は、ガラス手研磨加工計測のために、重心位
場に情報技術を用いた支援を導入することが効果的と
置に加え力のモーメントが計測できるフォースプレー
考えられる。そこで本研究チームでは、作業者が必要
トを新たに開発し、詳細な計測を進めた。その結果、
とする情報を、作業中にタイムリーに提供する対話的
熟練者と初心者の間だけでなく、熟練者の間でも作業
な作業支援技術を研究開発する。具体的には、船体外
力に差のあることが明らかになった。
板の鉄板曲げ作業に用いられる線状加熱作業を例題と
また、熟練者による外部色識別作業自動化の可能
して、作業支援に必要な要素技術開発及び作業支援装
性を探るための研究開発を開始した。外部色識別に
置のプロトタイプシステム技術開発を行っている。本
は照明方向・観察方向が大きく影響することが明ら
年度は、ヘッドマウントディスプレイを用いた拡張現
かとなった。
実感技術により、加熱用バーナーを動かす位置と速度
研究テーマ:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合
を3次元的に教示する技術、及び鉄板の断面形状を計
(93)
研
究
測し、その測定結果を対話的に作業者にフィードバッ
ース」、「MZ プラットフォーム」の成果普及策の立
クするシステムを研究開発した。
案、普及を図る。また、「中小企業基盤技術継承支援
対話的加工支援技術の研究
事業(FY18~FY20)」についても、中小企業庁、
開発、独立行政法人新エネルギー・産業技
NEDO との調整とともに、開発される「加工テンプ
術総合開発機構「中小企業基盤技術継承支
レート及び支援システム」の成果普及策の立案を図る。
研究テーマ:運営費交付金
公設試験研究機関、産業支援機関、商工会議所、工
援事業」
業会等との連携を深め、積極的な普及活動を行なう。
また、センター共通の課題であるリスク管理、コンプ
加工基盤技術研究チーム
(Machining Science Team)
研究チーム長:尾崎
ライアンス管理について中核的役割を担う。
研究テーマ:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合
浩一
開発機構「中小企業基盤技術継承支援事
(つくば東)
概
業」
要:
切削加工、研磨加工等における加工現象の解明に基
づく加工技術の高度化を目指す研究を推進するととも
⑮【水素材料先端科学研究センター】
に、旧ものづくり先端技術センターで開発しインター
(Research Center for Hydrogen Industrial Use and
Storage)
ネット上に公開している加工技術データベースを、他
チームとの協力によりさらに発展させ普及する活動を
(存続期間:2006.7.1~2013.3.31)
実施している。加工研究においては、細径ドリル穴加
工の特性把握研究、ヘール加工における加工面残留応
研 究 セ ン タ ー 長:村上
力の研究、また微細パイプの細径化加工実験を実施し
副研究センター長:佐々木
た。加工技術データベースの普及活動としては、各地
牧原
敬宜
一成、緒方
富幸、
正記
の公設試験研究機関、商工会議所、産総研産学官連携
推進部門等との協力により、日本各地で普及セミナー
所在地:福岡西事業所、つくば西事業所
の開催や展示会出典を行い、ユーザーの拡大に努めた。
人
員:10名(7名)
経
費:1,777,524千円(215,341千円)
概
要:
研究テーマ:運営費交付金「加工基盤技術の研究」、独
立行政法人新エネルギー・産業技術総合開
発機構「中小企業基盤技術継承支援事業」、
財団法人飯塚研究開発機構
財団等受託研
水素エネルギーは、わが国のエネルギー安定供給に
究費「金型の知能化による金属プレス加工
大きく寄与し、地球温暖化や都市域の環境問題を解決
の不良レス化」、財団法人飯塚研究開発機
する切り札として期待されています。しかしながら、
構
財団等受託研究費「超臨界流体付加射
水素エネルギーを利用するためには、高圧状態や液化
出成形による金型内メッキ技術の開発」、
状態における水素の物性解明や、水素により材料の強
財団法人栃木県産業振興センター
財団等
度が低下する水素脆化現象のメカニズム解明など、解
受託研究費「任意形状付シームレス極細パ
決しなければならない課題が少なくありません。本研
イプの高精度加工技術の確立及び高効率製
究センターは、水素エネルギー利用社会の実現を技術
造装置の開発」
的に支援するため、水素と材料に関わる種々の現象を
科学的に解明して各種データを産業界に提供するとと
連携推進統括チーム
もに、経済性を考慮しつつ安全に水素を利用するため
(Industrial Collaboration Team)
の技術指針を確立することをミッションとしています。
研究チーム長:花田
これにより、わが国の新エネルギー技術開発プログラ
康行
ムのキーテクノロジーである燃料電池とそれに関連す
概
要:
る安全な水素インフラの開発・普及を図り、産総研第
当チームは、中小企業庁、独立行政法人新エネルギ
2期中期計画「燃料電池自動車の70 MPa 級高圧水素
ー・産業技術総合開発機構(NEDO)、研究開発成
貯蔵を可能にするために、ステンレス鋼等の金属材料
果を利用する中小製造業者、外部有識者等と理化学研
の水素脆化評価方法の開発を行うとともにその技術基
究所、産総研内、センター内の連携・調整を図り、プ
準の策定を行う」の達成に向けて研究を実施していま
ロジェクトの円滑な推進及び研究開発成果の普及の推
す。
---------------------------------------------------------------------------
進を図る。
「 も の づ く り ・ IT 融 合 化 推 進 技 術 の 研 究 開 発
外部資金:
(FY13~FY17)」で開発された「加工技術データベ
・独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(94)
産業技術総合研究所
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目3
「水素先端科学基礎研究事業」
水素社会構築
水素トライボロジー研究チーム
共通基盤整備事業「水素特性試験装置の開発及びそれ
(Hydrogen Tribology Team)
を用いた水素用材料基礎物性評価」
研究チーム長:杉村
・財団法人金属系材料研究開発センター
丈一
(福岡西)
・経済産業省
原子力安全・保安院
概
「平成20年度石油
要:
軸受・バルブなど機械の可動部では、必ずトライボ
精製業保安対策事業(水素エネルギー利用に伴う材料
ロジー(摩擦・摩耗・潤滑)の問題が発生します。水
使用基準に関する調査研究)」
素を利用する機器においてもそれは例外ではありませ
科学技術試験研究委託事業「圧電フロン
ん。しかし、水素がこうしたトライボロジーにどのよ
ティア開拓のためのバリウム系新規巨大圧電材料の創
うな影響を及ぼすのかについては、世界的にもほとん
生」
ど明らかになっていません。こうしたことから、トラ
・文部科学省
イボロジーにおける水素の影響を解明し、実際に使用
表:誌上発表47件、口頭発表74件、その他1件
される機器類の信頼性評価の方法を確立するとともに、
---------------------------------------------------------------------------
機械システム設計の指針を提案することを目指します。
発
研究テーマ:テーマ題目4
水素物性研究チーム
(Hydrogen Thermophysical Properties Team)
研究チーム長:高田
水素シミュレーション研究チーム
保之
(Hydrogen Simulation Team)
(福岡西)
概
研究チーム長:村上
要:
敬宜
(福岡西)
水素エネルギー利用を実用化するためには、実際に
概
使用する機器の信頼性や安全性が保障された設計をす
要:
ることが重要です。このような設計を行う上で、高
本研究センターにおける高圧水素の研究では、圧力
圧・高温状態の水素がどのような物理的性質をもって
や温度など様々な条件が絡むことになり、単純に実験
いるかを正確に計測し、そのデータを蓄積する必要が
を繰り返すだけでは、多くの時間とコストがかかりま
あります。しかし、高圧・高温状態の水素の PVT デ
す。そこで、九州大学が開発したシミュレータを高圧
ータ(圧力・比体積・温度)、熱伝導率、粘性係数、
水素関連の機械システム設計に利用できるものへと改
比熱、溶解度といった物性値のデータ蓄積は十分では
良を加え、研究・開発のコスト削減と期間短縮に貢献
ありません。そこで広範な水素の物性値を正確に計測
します。また、他の研究チームと連携しつつ、様々な
する装置を開発し、測定データをデータベース化して
シミュレーションを実施し、水素関連技術における信
提供していくことを目指します。
頼性のある計算科学技術と、シミュレータを開発しま
す。
研究テーマ:テーマ題目1
研究テーマ:テーマ題目5
水素材料強度特性研究チーム
(Hydrogen Fatigue and Fracture Team)
研究チーム長:松岡
水素脆化評価研究チーム
(Hydrogen Dynamics in Metals Research Team)
三郎
研究チーム長:福山
(福岡西)
概
誠司
(つくば西)
要:
概
水素が、実際の使用環境におかれた機械の材料強度
要:
にどのような原理でどのような影響を与えるのかを科
水素エネルギーの実用化にあたっては、実際に水素
学的に解明し、水素利用機械システムの設計・保守技
環境下で使用する機器類に対する水素脆化の度合いや
術の確立を目指します。具体的には、金属材料の水素
進展状況を正確に計測し、評価することが必要になり
脆化の基本原理の解明を基礎研究、金属、非金属材料
ます。そこで、水素脆化の機構解明のための原子・分
の長時間使用と加工の影響を応用研究と位置づけ、高
子レベルでの観察等を通じて、水素と金属の相互作用
圧水素環境下で金属や非金属(ゴムや樹脂等)に対し
を微視的に明らかにするとともに、水素脆化評価技術
て、長時間の連続疲労強度試験を行うなど、材料強度
を体系化し、評価手法の標準化を図ります。また、金
に関するデータを整備するとともに、こうした環境下
属系材料の水素脆化評価のための試験装置を開発しま
で使用される機械の設計・製造における信頼性を確保
す。さらに、開放型の水素脆化評価ステーションを用
するための解決策を確立します。
いて民間企業の水素利用機器開発の技術支援を行いま
(95)
研
究
今年度は、高圧水素ガス環境下における疲労き裂発
す。
研究テーマ:テーマ題目6
生・進展試験や分析等による疲労き裂先端での転位状態
---------------------------------------------------------------------------
の映像化、ミクロ破面観察を行い、高圧水素ガス環境下
[テーマ題目1]高圧水素物性の基礎研究(運営費交付
における水素脆化は、水素によるき裂先端でのすべり局
在化による延性破壊であることを実証しました。
金、外部資金)
[研究代表者]高田
保之(水素物性研究チーム)
[分
[研究担当者]藤井
丕夫、藤井
[キーワード]水素脆化、疲労き裂、水素可視化
賢一、新里
Peter Woodfield、城田
Elin Yusibani、赤坂
深井
潤、伊藤
久保田
滝田
裕巳、迫田
亮、小川
政則、光武
邦康、
[テーマ題目3]高圧/液化状態における長期使用及び
(成形・溶接・表面修飾)、温度などの
正道、
直也、日高
悟、山口
Jambal Odgerel、小清水
門出
名]環境・エネルギー
農、
衡平、河野
千夏、桃木
寛英、
野
影響による材料強度特性研究(運営費交
彩子、
付金、外部資金)
朝彦、
[研究代表者]松岡
孝夫、
雄一、石田
三郎
(水素材料強度特性研究チーム)
賢治
[研究担当者]村上
(常勤職員2名、他17名)
[研 究 内 容]
高い圧力状態や、液体状態にある水素の基本的な挙動
敬宜、堤
良之、高木
福島
良博、峯
紀子、藤原
近藤
広匡、
節雄、土山
聡宏、
洋二、久保田
祐信、
を解明します。水素圧力100 MPa、温度400℃までの
Jean-Marc Olive、
PVT データ、粘性係数、熱伝導率などの基礎物性値を
Sergiy M. Stepanyuk、
測定し、水素の熱物性データベースを構築します。これ
金崎
俊彦、西村
らの物性値情報は、水素熱流動系の機器設計や各種のシ
安達
隆文、Gary B. Marquis、
ミュレーションに活用することができます。
Niclas Saintier、水口
今年度はバーネット式 PVT 測定装置、水素粘性係数
安永
幸司、野尻
伸、山辺
純一郎、
健吾、
泉
義徳、高井
Mpa)に改造し、物性値データの取得を継続しました。
松永
久生、徳光
PVT ではほぼ目標の97 MPa までの測定に成功しまし
古賀
敦、大塚
千佳、谷口
測 定 装 置 、 溶 解 度 測 定 装 置 を 各 々 高 圧 仕 様 ( ~ 100
隆夫、
健一、早川
正夫、
英之、中山
純一、
雅也、
た。非定常短細線式熱伝導率測定装置の開発、露点測定
Brian Somerday、Petros Sofronis、
装置の設計及び 取得データとの相関を確認しました。2
Robert O.Ritchie、Richard P.Gangloff、
種類の水素物性データベース(All in 1 CD と EXCEL
Ian M.Robertson、Roderick A. Smith、
用ライブラリ)を開発しました。
Ali Erdemir、John S. Vetrano、
[分
堀田
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]水素物性、PVT、粘性係数、溶解度
敏弘、畠山
綾香りつこ、高津
和久、有永
伸行、
須嘉生(他43名)
[研 究 内 容]
[テーマ題目2]高圧/液化による金属材料等の水素脆
目的・研究内容
化の基本原理の解明及び対策検討(運営
燃料電池自動車や水素インフラで実使用する材料は、
費交付金、外部資金)
[研究代表者]野口
長期に使用され、水素環境下にあります。また、実際に
博司
材料が利用されるときは、加工(成形、溶接、表面修
(水素材料強度特性研究チーム)
飾)が成されてから利用されます。そこで、材料に施さ
[研究担当者]村上
敬宜、松岡
三郎、東田
賢二、
れる加工の水素脆化に与える影響を解明する基礎研究を
濱田
繁、井藤賀
久岳、高橋
可昌、
実施します。さらに、材料の劣化を短期間で評価できる
大西
勝、尾田
田中
將己、齋藤
安司、青野
雄太、
加速試験方法を提案します。水素機器に使用される樹
翼(他11名)
脂・ゴム材料、特に高圧水素ガスシールに用いられる
O リング用ゴム材料について、高圧水素曝露により劣
[研 究 内 容]
高圧状態や、液体状態にある水素が、その環境下にあ
化・破壊する現象の基本原理を明らかにします。これら
る材料の水素が与える影響を解明しています。たとえば、
の成果に基づき、燃料電池自動車や水素ステーション等、
材料の相転移などの構造変化(マルテンサイト転移)や
水素利用機器・インフラに用いられる材料の技術指針を
材料中の異種介在物の関与、材料中の水素拡散の影響な
確立します。
どを明らかにして、水素脆化による材料の劣化メカニズ
今年度は以下の成果が得られました。
ムを解析します。これにより、水素インフラなどに利用
・特殊熱処理で水素を除去すると、疲労き裂進展が減速
できる新規材料の設計方針に寄与する提案を行います。
することを明らかにしていくとともに、フレッティン
(96)
産業技術総合研究所
グ疲労、切欠き材・溶接継手の疲労等部品・接合部材
4) 転がり疲れ寿命に及ぼす水素浸入量が潤滑油種によ
に関する研究を実施しました。得られた基礎研究成果
って異なること、5) 繰返し接触における表面層への水
をトラブル解析や実証済み部品の調査に活用しました。
素浸入量が雰囲気によって異なること、などの新規知見
を得ました。
・高圧水素曝露時のブリスタ現象をモデル化し、発生し
た気泡からき裂が発生する際の気泡内圧を、ブリスタ
[分
発生限界内圧として定量的に把握しました。
[キーワード]トライボロジー、摩擦試験、表面改質
野
名]環境・エネルギー
・高圧水素ガスシール用ゴム材料の設計指針としてブリ
[テーマ題目5]材料等内の水素拡散、漏洩などの水素
スタ発生限界内圧が高く、水素溶解量が低いゴム組成
挙動シミュレーション研究(運営費交付
が望ましいことを見いだしました。
・樹脂・ゴム材料の候補材として EPDM-WC95部材を
金、外部資金)
[研究代表者]村上
選定し、O リング試作の上、高圧水素加減圧試験を
[研究担当者]金山
環境におけるシール性能の相関が検討可能となりまし
た。
[分
野
敬宜
(水素シミュレーション研究チーム)
実施した。本評価法を活用し、材料特性と実際の使用
名]環境・エネルギー
寛、柿本
浩一、塩谷
荻野
正雄、西村
憲治、宮崎
松本
龍介、武富
紳也
隆二、
則幸、
(常勤職員1名、他8名)
[キーワード]水素脆化、金属疲労、疲労き裂、健全性
[研 究 内 容]
評価
水素環境下に長期に使用される材料中の水素拡散をシ
ミュレーションすることにより、他の研究チームによる
[テーマ題目4]高圧水素トライボロジーの研究(運営
材料や機器の設計方針作成の支援を行います。
費交付金、外部資金)
[研究代表者]杉村
今年度はき裂先端応力場と水素拡散の連成現象に関す
丈一
るシミュレーションモデルを開発しました。また、水素
(水素トライボロジー研究チーム)
デバイス等の安全設計シミュレーション、原子シミュレ
[研究担当者]間野
大樹、村上
敬、三室
山神
成正、金田
克夫、斉藤
慶子、
ーションによる欠陥と水素の相互作用に関する解析等を
宮越
栄一、村上
輝夫、和泉
直志、
行いました。
澤江
義則、森田
健敬、田中
宏昌、
き裂先端応力場と水素拡散の連成現象に関するシミュ
中嶋
和弘、坂井
伸朗、福田
応夫、
レーションモデルの開発において、従来までは“トラッ
八木
和行、権藤
誠吾、黒野
好恵、
プ濃度は格子濃度の関数である”とする Oriani の仮定
佐々木
信也、奥村
日朗、
が用いられてきました。今回、この仮定が提案される前
哲也
の、McNabb-Foster に基づく定式化に立ち戻ることに
(常勤職員2名、他19名)
より、鈍化き裂モデルにおいてトラップ濃度が負荷時間
[研 究 内 容]
に依存する性質を示すことに成功しました。
燃料電池自動車や水素インフラでは、水素環境下で作
動する機器が不可欠であるが、水素環境下で作動する機
すなわち、まず非連成のシミュレーションで、き裂先
器の摩擦摺動部では、材料表面で起こる諸現象が大気中
端まわりのトラップ濃度分布に対し、Oriani の仮定を
とは異なり、摩擦係数、摩耗量、転がり疲れ寿命などに
用いた Krom et al.のシミュレーション結果では負荷時
大きく影響する場合があります。水素環境下で作動する
間依存性が見られないのに対して、当チームが行ったシ
機器の確実な動作を確保するためには、水素環境下での
ミュレーションでは、負荷時間依存性が顕著に現れるこ
トライボロジーのメカニズムの解明が必要不可欠です。
とを示しました。
今年度は超高圧水素中摩擦試験機を導入し、ガス圧力
さらに連成解析でも非連成解析ほど顕著ではありませ
5 MPa までの水素中の摩擦実験を可能にしました。ま
んが、今回の定式化によって、これまで見られなかった
た、軸受・バルブ・シール等の摺動材料の、滑り摩擦試
トラップ濃度の負荷時間依存性を示すことができました。
験、往復動摩擦試験において、1) 試験ガスの純度を測
以上の結果より、今回定式化された方程式は鈍化き裂モ
定・制御する方法を確立して、鉄、アルミニウム、ステ
デルにおいて Oriani の仮定を用いた既存のものよりも
ンレス鋼などの摩擦摩耗特性が水素ガス中の微量の水分
高精度に現象を表現していると言えます。
や酸素に影響されることを定量的に示し、2) 40 MPa
また、水素濃度一定の材料の中心付近に微小なくびれ
高圧水素中に曝露することにより摺動材料の表面特性が
を与えた場合と中心部だけ水素濃度をわずかに高くした
変化し摩擦摩耗に影響すること、3) 表面分析により、
材料を同時に考察しました。そのとき材料を上下に引っ
高圧水素曝露を含む各種ガス雰囲気によるコバルト系合
張ると、両者とも同様に時間とともにネッキングと呼ば
金などのバルブ摺動材料の摩擦摩耗特性の違いが表面酸
れる塑性変形現象が生じました。これは、1 ppm 程度
化物の違いによるものであることを示しました。また、
の極めて低い水素濃度においても材料の局所塑性変形が
(97)
研
究
進行することを示したものであり、興味深い結果と言え
にしました。また、SUS310S と SUS301のナノインデ
ます。
ンテーションにおける高圧水素チャージの影響を調べて、
水素デバイス等の安全設計シミュレーションについて
水素が微小領域での転位発生及び転位移動を促進し、交
は、水素用高圧タンクの高耐圧化、軽量化を目的として、
差すべりを抑制すると共に、歪誘起マルテンサイトの相
FRP 層の複雑な巻付手法と材料異方性を考慮した、3次
変態にも影響することを見出しました。
元複雑形状のアセンブリモデリングによる応力解析を可
低温において Ni 含有量を変化させたオーステナイト
能にしました。今後、有明ステーション等の実際に使用
系ステンレス鋼の水素チャージ材(水素含量40 wt.
された材料の検証等に活用していく予定であります。
ppm)を用いて、内部可逆水素脆化(IRHE)に及ぼす
原子シミュレーションによる欠陥と水素の相互作用に
温度の影響を低歪み速度(SSRT)試験で調べました。
関する解析等では、α鉄中の代表的な欠陥の水素トラッ
その結果、IRHE は温度の低下と共に増加し、200 K 近
プエネルギーを調べ、これまで知られている実測値と比
傍で最大になり、更なる温度の低下と共に再び減少しま
較することにより良好な一致を見ました。これにより、
した。また、IRHE は Ni 当量の低下と共に増大しまし
常温付近(300 K)、70 MPa 程度までの水素ガス環境
た。これは、オーステナイト系ステンレス鋼の IRHE
では、自由表面、原子空孔、転位芯、高エネルギー粒界
は歪み誘起マルテンサイトの生成に関連するものと推察
まわりに水素が多く存在することが明らかになりました。
されます。IRHE と水素ガス脆化(HGE:1 MPa 水素
[分
中)との差異は150 K にあり、IRHE では介在物誘起水
野
名]環境・エネルギー
素脆化が見られましたが、HGE では水素脆化は見られ
[キーワード]シミュレーション、分子動力学法、有限
ませんでした。
要素法
さらに、水素ガス圧力と単結晶材料の比誘電率との関
係が明らかになり、高圧水素ガス圧センサとしての応用
[テーマ題目6]水素脆化現象の計測と評価に関する研
への道筋が明らかになりました。また、新たなセンサ用
究(運営費交付金、外部資金)
[研究代表者]福山
誠司(水素脆化評価研究チーム)
材として、非鉛系圧電・誘電材料を探索するための基本
[研究担当者]飯島
高志、今出
的な評価手法の確立を行なうと共に、圧電フロンティア
文
矛、張
林、島
政明、安
白、
開拓のためのバリウム系新規巨大圧電材料の創生
宏美、
柏木
悠太、中曽根
横川
清志(計測フロンティア研究部
祐太、甲斐
絢也、
(MPB エンジニアリングによる巨大圧電材料の電気特
性評価)も行いました。
[分
門)(常勤職員5名、他6名)
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]高圧水素脆化、技術開発支援、STM、
[研 究 内 容]
ナノインデンテーション、強誘電特性
安全な水素エネルギー社会構築のため、高圧水素脆化
試験装置開発と金属材料の高圧水素脆化評価、水素利用
機器開発の技術支援、水素脆化防止技術開発及び水素エ
⑯【糖鎖医工学研究センター】
ネルギー利用に伴う材料使用基準に関する調査研究を実
(Research Center for Medical Glycosience)
施しています。
(存続期間:2006.12.1~2012.3.31)
今年度は、高圧水素脆化試験装置開発として80 MPa
極低温水素特性試験装置を開発しました。当該設備の圧
研 究 セ ン タ ー 長:成松
久
縮機には二段往復式を用い、設計圧力は80 MPa です。
副研究センター長:平林
淳
使用温度範囲は室温から-196℃です。極低温高圧化を目
指していた水素特性試験として所定の目的は達成された
所在地:つくば中央第2、つくば中央第6
ものと考えます。今後は、さらに改良を加え最高水素圧
人
員:15名(14名)
70 MPa 程度までの圧力範囲で、室温から-196℃の温度
経
費:469,227千円(188,660千円)
概
要:
範囲で各種材料の水素脆化評価を行っていきたいと考え
ています。また、当研究チームで保有している水素脆化
評価ステーションを用いて民間企業の水素利用機器の技
「研究目的」
術支援のために「バネ材の水素脆化に関する研究」と
糖鎖遺伝子の網羅的発見、糖鎖合成技術、糖鎖構造
「超高圧機器の研究開発」等の資金提供型共同研究を実
解析技術3大基盤技術を開発してきたが、糖鎖科学の
施しました。
基礎から応用に至るまでの幅広い分野において、さら
分子・原子レベルでの水素の挙動については、
なる基礎的発見・発明を積み重ねるとともに、それを
Ni(111)上の Fe 薄膜に続いて、Pd 薄膜の成長及び表面
産業化へ応用する努力を行い、世界的な糖鎖科学研究
合金化を STM により原子・分子レベルで解明し、これ
中枢としての基盤をさらに強固なものとする。
らの薄膜表面構造における室温水素吸着の影響を明らか
ポストゲノム研究としてプロテオーム研究が隆盛を
(98)
産業技術総合研究所
極める中、タンパク質機能の発揮には翻訳後修飾が重
3)再生医療では、幹細胞に特異的な糖鎖構造を探索
要であることに多くの研究者が気づき始めた。タンパ
し同定する。血液幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細
胞などを対象とする。
ク質は、リン酸化、メチル化、硫酸化、糖鎖付加など
4)感染症では、病原微生物の結合する糖鎖構造及び
の翻訳後修飾を受けて初めて成熟した機能を持つよう
になる。その中でも最も複雑な過程が糖鎖修飾である。
その担体となる糖タンパク質・糖脂質を探索し同定
ゲノム配列が解明され、生命の神秘に迫ったとされた
する。この結合を阻害する活性などを指標に、将来
が、かえって新たな謎の存在をクローズアップさせる
的には、阻害剤の候補化合物や抗体の開発が期待さ
ことになった。それが糖鎖である。生体内の多くのタ
れる。
ンパク質は糖鎖修飾を受けているが、糖鎖はタンパク
5)生殖医療では、精子、卵子の成熟に糖鎖が関与し
質の機能を制御する重要な要素である。生体内で働い
ていると考えられ、糖鎖機能不全により不妊が起き
ているタンパク質の機能を解明し、利用するため、糖
ると推測している。その原因究明、バイオマーカー
鎖とタンパク質を一体として解析する「グライコプロ
の発見、最終的には不妊診断、治療への道をつける。
上記の疾患別研究開発を推進するために必要な技術
テオーム」の概念を基本として研究全体を推進する。
開発項目を以下に掲げる。
糖鎖科学は、ポストゲノム研究において我が国が優
1)産業上有用な機能を有する糖鎖を生体試料から高
位に立っている数少ない分野の一つであることから、
当研究センターはこれまでの糖鎖研究資産を生かして、
効率に分画、同定する技術を確立し、糖鎖マーカー
を開発している。
産業化に繋がる糖鎖医工学研究を実施することで、国
2)これに付随して糖鎖マーカーの精製や診断用糖鎖
際的な糖鎖研究のネットワークにおける中核的拠点と
構造解析等に供される新たな装置を開発している。
して研究開発の推進に貢献することを目指している。
3)疾患の進行に伴い構造変化する糖鎖マーカーは生
「研究手段」
既に終了した NEDO 糖鎖関連遺伝子ライブラリー
体内の重要な機能と結びついている可能性が高いた
構築プロジェクト(以下 GG プロジェクト)及び糖
め、発見された糖鎖マーカーの生物学的機能を解析
鎖エンジニアリングプロジェクト(以下 SG プロジェ
することは、疾患の治療手段の開発に繋がる。
クト)において中核的研究機関としての役割を果たし、
4)質量分析計、レクチンアレイによる構造解析技術
外部からも高く評価される実績を上げてきた。これら
の改良に加え、より鋭敏で簡便な基盤技術を開発し
の基盤技術を応用面で活用するため、平成18年度より
ている。
5年間の糖鎖機能活用プロジェクト(以下 MG プロジ
5)糖鎖合成技術について、微生物の糖鎖合成機能を
ェクト)を遂行している。特に、医学研究機関との連
再開発している。N 結合型だけでなく、O 結合型
携を深め、糖鎖疾患バイオマーカーの探索に必須であ
糖鎖についても、酵母をヒト型糖鎖合成のためのツ
る臨床試料の入手の努力を行った。産総研の第2期中
ールとする。
期目標の中では、ヒトゲノム情報と生体情報に基づく
6)糖鎖研究のためのデータベース開発は、最重要課
早期診断により予防医療を実現するための基盤技術の
題である。糖鎖構造、MS データ、レクチン結合デ
開発における貢献を目指しているが、具体的な研究課
ータ、糖鎖合成データ、糖タンパク質データなどの
題は以下に掲げる。
糖鎖データベース化を進め、ユーザーに利用されや
「生体反応の分子メカニズムの解明によるバイオマ
すいように、他研究機関の糖鎖関連データベースを
ーカーの探索と同定」と題して、MG プロジェクトの
含め、糖鎖統合データベースの構築を始めている。
「方法論等」
中心課題として、糖鎖関連の主要な疾患である癌、免
疫、再生医療、感染症、生殖医療の5つを中心に、産
研究センター内での全チームの共同体制を最重要視
業上有用なバイオマーカーの発見を目指して以下の研
している。チーム間の壁がほとんどない「研究センタ
究を推進している。
ー全体が一つのチーム」体制により、一丸となって研
1)癌の悪性度の指標となる糖鎖構造及びその糖鎖の
究を推進している。
担体となる糖タンパク質を探索し同定する。糖鎖構
本研究センターの特徴として連携戦略班を設置して
造、糖タンパク質を鋭敏に検出する技術を開発し、
いるが、本格研究を推進するためには、今まで蓄えた
癌の早期診断、癌の治療方針を可能にする技術を開
知財・リソース(遺伝子、細胞、モデル動物、解析装
発している。
置、データベース等)は既に膨大な存在となっており、
2)免疫異常の原因となる糖鎖構造、糖タンパク質を
それを無駄なく有効に活用する新たな仕組みが必要で
探索し同定する。特に IgA 腎症は全腎臓病の約半
あり、プロジェクトを推進すると同時に、成果普及を
数を占める患者数の多い重篤な疾患であるが、糖鎖
別のマネジメントで行っている。特に、糖鎖産業技術
不全との関係が示唆されている。病気の原因究明、
フォーラム(GLIT)を、産総研-バイオインダスト
診断法の確立、有効な治療法の開発を目指している。
リー協会の包括協定の一環として共催で設立し、100
(99)
研
究
床応用」
社以上の糖鎖関連企業・団体を集めた。また、良好な
研究環境を構築するためにリスク管理は重要であり、
安全講習として、RI 実験実施要領、ヒト由来試料実
文部科学省
験倫理、医工学応用実験倫理、動物実験実施要領、組
報とその構造解析データの統合(糖鎖科学統合データベ
科学技術試験研究委託事業
「糖鎖修飾情
み換え DNA 実験取り扱い要領、微生物実験取り扱い
ースの構築)」
要領を、その他、守秘義務と秘密保持、知的財産と特
許、論文/学会発表における承認基準、産学官連携と
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「健
各種事業、労働規程について、セクハラ、パワハラ問
康安心プログラム/糖鎖機能活用技術開発」
題など、連携戦略班により研究センター内での教育を
行っている。リスクは、芽が小さいうちにつみ取るこ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基
とが肝要である。そのためには、センター内メンバー
礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促
全員の日頃からの人間としてのコミュニケーションが
進技術開発/糖鎖プロファイリングによる幹細胞群の品
最重要である。管理ではなく、互いのコミュニケーシ
質管理、安全評価システムの研究開発」
ョン高揚によりリスクがなくなる組織を目指す。研究
能力の切磋琢磨と同時に、和を保つことのできる人格
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
形成が望まれる。コンプライアンス管理活動として、
業技術研究助成事業「マクロファージの免疫応答能を活
産
研究センターは、社会の中で活動している存在であり、
用するドラッグデリバリーシステムの構築とその技術応
研究者以外にさまざまな人々が周囲にいて、それぞれ
用の開拓」
異なった価値観をもって見られていることを理解する
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「研
ことに努めている。
究開発技術シーズ育成調査/未来の創薬に資する生物的
研究資金は、MG プロジェクトを中心としており、
MG プロジェクトを一致団結して成功させることが本
メカニズムの解明に関わる合成技術動向調査」
研究センターの最重要ミッションである。しがたって、
MG プロジェクトとは別テーマについては、その成果
独立行政法人科学技術振興機構
が MG プロジェクトに貢献するような外部資金を推
業「糖鎖関連遺伝子 siRNA 導入哺乳類細胞の性状解析
奨している。真に生命科学や糖鎖科学の進展に貢献す
とノックアウトマウスの調製と解析」
戦略的創造研究推進事
るかを厳しく吟味し、研究者が情熱を持って取り組ん
でいる課題や萌芽的研究は、その実施を積極的に支援
国立大学法人九州大学
している。
能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付
---------------------------------------------------------------------------
戦略的技術開発委託費「植物機
加価値物質製造基盤技術開発」
外部資金:
文部科学省
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特
科学技術振興調整費(若手任期付研究員支
定産業技術研究支援センター
援)「発生・分化における糖鎖受容体の機能解析」
新技術・新分野創出のた
めの基礎研究推進事業「病原性原虫による Th1免疫回
文部科学省
科学研究費補助金
基盤 C 「糖タンパク
避機構の解明と糖鎖被覆リポソームワクチン評価技術の
確立」
質の高効率大規模定量解析法の開発」
文部科学省
基盤 C
科学研究費補助金
発
「シアリル
Tn 抗原による腫瘍免疫抑制機序の解明」
表:誌上発表55件、口頭発表115件、その他18件
--------------------------------------------------------------------------糖鎖遺伝子機能解析チーム
文部科学省
科学研究費補助金
(Glycogene Function Team)
基盤 C 「糖鎖がんマ
研究チーム長:成松 久
ーカー開発のためのコア1合成酵素検出システムの構
築」
(つくば中央第2、第6)
概
文部科学省
科学研究費補助金
基盤 C
「2つの機能
要:
1)糖鎖関連バイオマーカーの開発
これまでの2つの NEDO プロジェクト1)糖鎖遺
の異なる糖結合ドメインの糖鎖結合メカニズムの構造生
物学的解析」
伝子プロジェクトでは、生体内で糖鎖合成の担い手
である糖転移酵素など糖鎖遺伝子の全体像が明らか
文部科学省
特別研究員奨励費
になり、2)糖鎖構造解析プロジェクトでは、質量分
「血小板凝集因子 Aggrus の分子生物学的解析とその臨
科学研究費補助金
析装置とレクチンを用いて糖鎖の構造解析が可能に
(100)
産業技術総合研究所
なりつつある。それらの基盤技術を背景に、糖鎖機
ン転移酵素2(β3GnT2:B3GNT2)の遺伝子ノッ
能活用プロジェクトでは糖鎖関連バイオマーカーの
クアウト(KO)マウスを解析した。平成19年度ま
開発と生体内での糖鎖機能の解明を目指している。
での KO マウスの解析により in vivo では N-グリ
糖鎖関連バイオマーカーの基本となる考え方は、
カン上の長鎖ポリラクトサミン構造の合成に関与し
「細胞の分化や癌化により糖鎖構造が変化する(=
ている事を明らかにした。また、KO マウスの T 細
MG コンセプト)」である。糖鎖関連バイオマーカ
胞や B 細胞等の血球細胞において、刺激に対する
ーの開発では、まず手始めに、グライコプロテオー
シグナル及び応答性の亢進が認められ、免疫細胞が
ムの概念に基づき、疾患に関連して変化した糖鎖構
活性化しやすくなっているということを明らかにし、
造をキャリーしているタンパク質を同定し、その糖
ポリラクトサミン糖鎖が免疫系において(抑制的
鎖構造とタンパク質の両方を特定した検出システム
な)調節能を担う可能性を示唆した。平成20年度は
を構築することで、特異性の高い疾患マーカーの開
ポリラクトサミンの免疫における機能についての解
発を目指している。標的とした糖鎖構造はこれまで
析を引き続き行った。KO マウス個体での炎症モデ
sLex,
Tn,
ル実験では、刺激後の炎症の初期反応である好中球
STn, コアフコースなどで、それぞれの糖鎖のキャ
の皮膚組織への浸潤が、KO マウスでは著しく減少
リアータンパク質を肝臓癌・肺癌・大腸癌・膵臓癌
している事を明らかにした。そこで好中球上のセレ
など数十種類の各種癌由来培養細胞や患者由来生体
クチンリガンドの発現を解析してみると、その発現
材料より生化学的手法・レクチンマイクロアレイ・
量が減少していた。これらの糖鎖抗原のキャリア分
質量分析・IGOT 法、糖鎖遺伝子発現プロファイル
子と考えられるものを解析した結果、複数の細胞表
解析を用いて数多く同定した。その中から論文・特
面分子でその上のポリラクトサミン鎖が消失してい
許などの知見を基に絞り込みを行い、バイオマーカ
ることが示唆された。これらの分子上の糖鎖抗原形
ーになる可能性の高いキャリアータンパク質に対す
成の不全により、免疫反応の変化が起こっているも
る抗体と、疾患関連糖鎖を認識する抗体あるいはレ
のと考えられた。ポリラクトサミン鎖の欠損が様々
クチンを用いたサンドイッチ ELISA 測定系を構築
な糖鎖抗原の発現に影響を与え、それらが有する糖
し、患者血清を用いた検証試験を始めている。
鎖機能に異常を引き起こす事を明らかにした。
各種癌との関連が報告されている
sLea,
4)新規糖鎖認識タンパク質の探索と機能解析
2)糖鎖遺伝子ノックアウトマウスの作製と解析
これまでの糖鎖の機能解析の多くは、糖鎖改変細
昨年度までに発見した新規糖鎖認識タンパク質で
胞を用いた細胞生物学的な解析である。糖鎖の担う
あるシグレック14に関してさらに解析を進めた。モ
重要な生体機能の1つは細胞間コミュニケーション
デル系を用いてシグレック14が TNFα産生に影響
であり、生体内でそれを解析するためには糖鎖合成
を及ぼすメカニズムを解析した。またシグレック14
に関連する糖鎖遺伝子を改変した糖鎖改変モデル動
遺伝子の多型を発見し、その地理的分布を解析した。
物を作製することが必要である。現在までに184個
さらに、バイオインフォマティクスの利用により
の糖鎖遺伝子が報告されているが、糖鎖機能活用プ
リストアップした「糖鎖認識活性を示す可能性が示
ロジェクトではその中から、糖鎖遺伝子プロジェク
唆されるが、証明されていないタンパク質」の中か
トで新規に見出された遺伝子の中で癌化により遺伝
ら糖鎖認識活性を有するものを発見し、その糖鎖認
子発現が変化するもの、組織特異的に発現するもの、
識特異性の解析と機能解析を進めた。また発現クロ
in vitro で機能性糖鎖を合成する糖転移酵素のノッ
ーニングにより新規の糖鎖認識タンパク質のクロー
クアウトマウスを作製した。具体的には
Lex
ニングを試みた。
(SSEA-1)を合成する FUT9、正常大腸に発現し、
5)β3GT モチーフを有する複数の糖転移酵素の結
晶化と予備的な X 線解析実験
癌化により消失するコア3合成酵素、糖タンパク質
β3GT モチーフを有する糖転移酵素のうち、ガ
ホルモン特異的な糖鎖の合成酵素、コンドロイチン
硫酸合成酵素、ポリラクトサミン合成酵素などであ
ンで発現の更新が認められる G34、β3GnT8およ
る。これらのノックアウトマウスは個体数が確保で
びβ3GnT2/8ヘテロダイマーの立体構造を決定す
きたのもから順次、機能解析に移っており、いくつ
るため、大量精製と結晶化、X 線結晶構造解析(高
かのマウスでは癌の発生する頻度が高いなどの表現
エネルギー加速器研究機構、放射光施設、共同利用
型が見出されている。
実験課題2008G547)を行っている。これらの酵素
の基質認識機構の解明さらにはドラッグデザインに
3)ポリラクトサミン合成酵素遺伝子ノックアウトマ
よる特異的阻害開発を目指す。
ウスの解析
糖鎖医工学研究センターにて作製された糖鎖遺伝
G34は哺乳類培養細胞で大量発現し、六方晶を得
子ノックアウトマウスの1つである、ポリラクトサ
ているが、分解能が原子レベルに達していない。結
ミン糖鎖合成酵素・β1,3-N-アセチルグルコサミ
晶化条件の検討、結晶化添加剤、クライオ条件の検
(101)
研
究
討を行ったが、分解能の向上は3.3Åにとどまった。
病態を形成する。病態は、疾病の進展に伴って修飾さ
さらなる分解能の向上を目指し、精製タグなどのコ
れて複雑化し、治癒が期待しにくいものとなる。それ
ンストラクトの見直し、糖鎖の除去の検討に着手し
ゆえ現在の医療では、治療できる対象が明確な期間に、
た。
病因を見いだして対処することを、最重要視するので
β3GnT8は酵母を宿主として発現し、板状の斜
ある。このような社会的背景と態病理に基づいて我々
方晶を得た。さらに2.2Å 分解能の X 線回折データ
は、臨床的に対応可能な時期で有用性が発揮される検
の収集を完了した。現在結晶化の再現性を向上させ
査技術開発のイメージを明確にする事からスタートし、
ると共に、重原子誘導体の調製、分子置換法による
糖鎖解析技術の有用性が活用されるよう工夫を重ねて
位相決定を試みている。
いる。実際に糖鎖構造は、疾病の発症と進展に伴って
β3GnT2/8ヘテロダイマーについては T2がハイ
変化する事が多いので、糖鎖構造変化の検出技術の進
パーグライコシレーションを受けているため、精製
歩は、臨床的に顕在化していない疾病の存在の検出と
が困難であったが、T8との共発現を行うことで、
その対処へと繋がる事が期待される。
糖鎖医工学研究センターでは現在、糖鎖解析技術を
効率よく回収精製する系を確立することが出来た。
統合的かつ戦略的に活用して、バイオマーカーの探索
6)酵母を利用した糖鎖及び糖タンパク質合成
出芽酵母によるムチン型糖鎖を有する糖タンパク
を進めている。分子医用技術開発チームは、各種疾病
質の発現系を構築し、MUC1や MUC2ペプチドの
における問題点を、様々な角度から分析し、臨床的ニ
生産を行なった。またシアル酸付加のため、その基
ーズにあった糖鎖機能活用技術開発を進めている。と
質供与体となる CMP-Neu5Ac の酵母細胞内での発
くに、ⅰ)糖鎖バイオマーカーの創出が可能である疾
現系を構築し、実際に CMP-Neu5Ac が効率よく生
患かどうか、ⅱ)糖鎖バイオマーカーの創出によって
産されている事を明らかにした。
解決される現在の問題点はどのようなものであるのか
糖鎖の大量合成に必要な糖転移酵素を供給するた
を明確にする事は重要である。と言うのも、これら一
め、酵母による可溶型ヒト糖転移酵素の発現系のブ
連の分析結果に基づいて、ⅲ)マーカー探索を行う臨
ラッシュアップを行なった。特に N-型糖鎖の生産
床検体ライブラリーのデザインと収集管理を行なうか
に関与する糖転移酵素の大量発現を検討し、実際に
らである。
天然物からの生産が難しい N-型糖鎖の合成を行な
また、バイオマーカー探索に合わせて糖鎖機能を活
用した技術開発を進めており、具体的な実施内容は、
った。
A)糖鎖 NEDO プロジェクトと、B)それ以外にわ
7)ヒト糖鎖合成関連遺伝子転写産物の比較相対定量
けられる。A)NEDO プロジェクト糖鎖機能活用技
系の開発
19年度までに開発した糖鎖合成関連189遺伝子の
術開発では、糖鎖/糖タンパク質バイオマーカー開発
転写産物量を同時測定するシステムを用いて、ヒト
と遺伝子改変動物等を用いた糖鎖機能開発を、B)そ
由来培養細胞など cDNA 試料230件について糖鎖遺
れ以外では、これまでに確立した糖鎖活用技術をトラ
伝子発現プロファイル測定を実施した。測定作業と
ンスレーションすることを目的として、文科省科学研
並行して、多検体測定データにおける解析手法の開
究研費、生研センター受託研究費等の競合的研究資金
発に着手した。
を獲得して、ドラッグデリバリーや細胞性免疫誘導型
多検体間比較を実現するためには、検体間での標
ワクチン技術基盤の確立をめざした研究開発をおこな
準化が必要であり、その指標として糖鎖遺伝子発現
っている。
レベルの平均値を用いることが有用であることを見
A)糖鎖 NEDO プロジェクト
出した。標準化した発現プロファイルの検体間比較
1)臨床検体の収集と病態病理解析システムの構築
には階層的クラスタリング解析法を導入した。19年
糖鎖医工学研究センターでは、19年度に病態病理
度までに開発した糖鎖生合成経路上で遺伝子発現レ
解析を専門とするセクションを立ち上げている。20
ベルを可視化する表示法と組み合わせることで、糖
年度には、運営のルーチン化と最適化を同時に進め、
鎖遺伝子発現プロファイルの生物学的解釈への支援
NEDO プロジェクトで収集される臨床検体の保管
を可能にした。
管理と利用を、適切かつ効果的におこなえるよう改
善した。我々の収集管理システムは、21年度より大
分子医用技術開発チーム
幅に変更される臨床研究における指針に対応できる
(Molecular Medicine Team)
よう構成したため、指針の変更に影響される事なく、
研究チーム長:池原
譲
倫理的コンプライアンスを保って研究開発が進めら
(つくば中央第2)
概
れると確信する。また、病態病理解析室はヒト由来
要:
臨床検体のみならず、KO マウス等を用いて作成し
疾病は、その原因(病因)を出発点として進展し、
た疾患モデル実験の検体の解析を実施した。なお、
(102)
産業技術総合研究所
ヒト試料の保管管理とマウス検体の病理解析そして
ん腹腔内転移を標的として抗がん剤を送達できる。
担当スタッフのトレーニング(糖鎖遺伝子機能解析
さらにがんワクチン療法に用いると、封入抗原特異
チームとの共同実施)は、病理専門医(池原)によ
的な細胞性と液性の抗腫瘍免を誘導できる。そこで
りセンター横断的になされている。
ウシの原虫感染症に対するワクチン技術として有用
キーワード:病理検査、臨床検体ライブラリー
であるかどうかを明らかにするため、まずウシにお
2)疾患マーカーの探索とその展開
ける細胞性免疫応答を評価できるシステムを構築し
糖鎖医工学研究センター横断的に進む、マーカー
た。このシステムは、細胞性免疫が排除エフェクタ
探索の中から肝炎関連疾患についての成果を紹介す
ーとなっているウシの各種感染症の病態評価も可能
る。開発に成功したマーカーは、肝臓の繊維化を非
とするもので、標準検査法になりうるものであった。
観血的に測定する事を可能とするものである。肝炎
そしてさらに、このシステムを用いる事で、OML
に伴う肝組織の繊維化測定は、平成20年に発表され
を接種した場合も、マウスと同様に封入抗原特異的
た厚生省の「肝炎研究7カ年戦略」の中でも取り上
な細胞性免疫誘導を確認する事に成功している。ウ
げられている課題「繊維化の進展を非観血的に評価
シを用いて得られた一連の結果は、OML 技術を人
できる検査法」を解決するものであり、肝炎克服に
の治療へトランスレーションできる可能性をさらに
強く示唆するものであると考察された。
繋がる大きな変革をもたらす可能性がある。なお、
日本の C 型肝炎患者は、150万人から250万人いる
キーワード:ドラッグデリバリー、ワクチン、評価技
術
と推定されており、慢性肝炎、肝硬変、肝癌患者の
約75%を占める。また、現在の肝癌死亡者数は年間
約3万人、肝硬変は17000人であることからも明らか
糖鎖分子情報解析チーム
な様に、医学的、経済的波及効果は大きい。医学的
(Glyco-Biomarker Discovery Team)
にも、日本の肝炎疾患克服戦略の大きな転換点をも
研究チーム長:亀山
昭彦
(つくば中央第2)
たらすものと期待している。
概
キーワード:肝炎、繊維化、
要:
当チームでは、社会及び臨床ニーズに基づいた糖鎖
3)各種疾患における糖鎖病理の解明
胃がん糖鎖マーカーである CA72.4は、がんの産
科学の医療応用を目的として、糖鎖分子に刻まれた癌
生するシアリル Tn(STn)を測定するものであり、
をはじめとする疾患関連情報の質量分析計による解析
その合成酵素遺伝子はかつて、池原と成松センター
を進めている。また、糖鎖の機能や構造を解析するた
長らによって初めて単離同定され、報告されたもの
めのユニバーサルなリファレンスとしてヒト型糖鎖ラ
である(Ikehara Y. et al Glycobiology 1999)。胃が
イブラリーの開発を推進し、癌や感染症における機能
ん患者における STn 抗原検出系の高感度化を目的
糖鎖の発見に挑んでいる。そして、他チームとの積極
として、そのキャリア分子の同定をすすめて複数の
的な連携のもと、センターにおける糖鎖の合成、構造
候補蛋白を決定し、腹腔洗浄液を材料とする腹腔胃
解析、相互作用解析の機能を担うとともに、糖鎖産業
がん転移検出システムの構築をおこなった。さらに
の創出を睨んだこれらのイノベーション開発に努めて
は、他臓器に発生する腫瘍についてもキャリア分子
いる。
の同定を進め、肺がんの検出に有用である事を見い
1)疾患関連糖鎖バイオマーカーの探索
腫瘍マーカー候補として期待されながら解析が難
だしている。
キーワード:胃がん、肺がん、シアル酸
しいムチンについて、新規解析手法である分子マト
B)機能解析チームとの共同実施
リクス電気泳動法を開発した(Anal.Chem 誌発表)。
4)糖鎖機能を活用するドラッグデリバリーシステム
また福島医科大学の協力を得て、この手法を応用し
た膵胆肝疾患のマーカー探索を目的とした膵液・胆
の構築とその技術応用の開拓
本研究は、NEDO の行う産業技術研究助成事業
汁の分析を開始した。さらに、創価大学にもこの技
から池原が助成を得てスタートしたものである。さ
術を指導し、共同研究で前立腺がんマーカー候補の
らに得られた成果を発展させるため、生物系特定産
探索も進めている。また、この分析手法の普及・実
業技術研究支援センターの行う新技術・新分野創出
用化へ向けて、技術移転活動を開始した。また、セ
のための基礎研究推進事業より助成を得て、病原性
ンター全体での糖鎖バイオマーカー探索活動の中で
原虫感染症の克服を目指した、「糖鎖被覆リポソー
マーカー候補にあがった糖タンパク質の糖鎖構造解
析も行った。
ムワクチン評価技術の確立」を実施している。
2)糖鎖・糖ペプチドの構造解析およびその手法開発
糖鎖機能を活用するドラッグデリバリーシステム
は、リポソームをオリゴマンノースで被覆する事に
硫酸化糖タンパク質は、疾患関連マーカー候補と
よって作製したリポソーム(OML)を用いて、が
して期待されながら、その効率的な濃縮法がないた
(103)
研
究
(つくば中央第2)
めに研究が進んでいない。当チームでは糖ペプチド
概
上の硫酸基の負電荷を強調するための化学処理法
要:
(SE 法)を考案した。これを利用してイオン交換
本チームでは、先の NEDO 糖鎖エンジニアリング
クロマトグラフィーにより硫酸化糖ペプチドを濃縮
プロジェクト(SG)で開発したフロンタル・アフィ
する方法を開発し特許出願した。また、糖鎖の質量
ニティクロマトグラフィー(FAC)やエバネッセン
分析における大きな課題の一つとして、イオン化効
ト波励起蛍光検出法に基づくレクチンマイクロアレイ
率の低さがあげられる。これを改善するために、完
などの糖鎖プロファイリング技術を、産業的に有用な
全メチル化と高感度ラベル化を組み合わせた新たな
バイオマーカー開発に向け様々な応用展開(NEDO
糖鎖誘導体化法を開発したが、20年度は、さらに微
「糖鎖機能活用技術開発プロジェクト」)を担ってい
量な試料に応用するため MALDI プレート上でこ
く役割をもつ。これらの基本戦略に付随して、レクチ
の反応を行えるようにした。また当チームでは、糖
ン製造販売を行なっている企業との共同研究による、
鎖の簡便な構造解析に利用できる糖鎖 MSn スペク
新規レクチン探索を含むレクチンライブラリー開発、
トル DB を構築している。平成20年度は、特に O-
バイオインフォマティクスに基づくヒト内在性レクチ
グリカンの構造解析をさらに進めるためにこれらの
ンの新規探索にも挑む。チーム長を除く常勤職員2名
テンプレートとなる糖鎖構造について200種類程度
はそれぞれ、上記レクチン応用開発研究における活用
酵素合成し、それぞれ完全メチル化糖鎖へと変換後
側面(マーカー開発が主体)、新規レクチン開発を担
MSn
当するほか、19年度下期より新たに NEDO「基礎研
すべての構造について
データの取得を行った。
究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進
3)ヒト型糖鎖ライブラリーの構築と活用
国立感染症研究所との共同研究により、糖鎖ライ
技術開発/糖鎖プロファイリングによる幹細胞品質管
ブラリーを活用した種々のノロウイルスの糖鎖認識
理、安全評価システムの研究開発(先導研究)」を一
特異性解析を進めており、一部の結果について論文
致協力の下推進した。さらに、前年に引き続きイノベ
化した。糖鎖アレイについてはエバネッセント励起
ーション推進の立場から、上記糖鎖プロファイリング
蛍光検出系でのアレイ開発を行うための固相化糖鎖
技術の成果普及、関連企業へのライセンシングを通し
の大量合成(50種類程度)・誘導体化についての基
た社会還元に取り組んだ。平成20年度成果として、以
下を挙げる。
礎検討を行った。
1.バイオマーカー開発関連研究:レクチンマイクロ
4)IgA 腎症と糖鎖に関する研究
IgA 腎症患者の IgA には健常者とは異なる糖鎖
アレイを基軸とした生体試料の比較糖鎖プロファイ
リング
が結合しているという報告が以前からあるが、再現
性に乏しく、糖鎖の異常およびその病態との関連は
NEDO「糖鎖機能活用技術開発」プロジェクト
ほとんど判っていない。IgA 腎症と糖鎖との関連性
を基軸とした糖鎖関連バイオマーカー開発に関する
について明確な結論を出すため、最適化した統一プ
集中研業務を推進した。各臨床機関から組織切片、
ロトコールで処理した血清試料の分析を進めた。
血清などの臨床検体を取り寄せ、レクチンアレイや
100検体ほどの血清から IgA を精製し糖鎖構造解析
MS 技術を組み合わせることで病態関連バイオマー
を行ったが健常・患者間での糖鎖構造の違いは見い
カーや分化関連マーカーの候補分子を数多く抽出す
だせなかった。一方で、これと並行して行った特殊
る戦略の設定と研究開発を行った。また、これらの
な IgA 腎症患者の糖鎖構造解析の違いを指標に異
高い基盤技術を核にした様々な応用技術を開発し、
常分子の同定につながる糖鎖構造について解析を進
さらなる用途の拡大を図った。実際には、レクチン
めている。
マイクロアレイを機動的に活用した各種疾患マーカ
5)糖鎖
MSn データベースの公開
ー候補分子を数多く同定した。エバネッセント波励
昨年度までに構築した糖鎖 MSn データベースの
起蛍光法を検出系とする糖鎖・レクチン(抗体)相
一 般 公 開 に 向 け て 、 糖 鎖 質 量 分 析 デ ー タ ベース
互作用のアプリケーションを、昨年度開発した生細
(GMDB)の名称、ロゴを考案し、ユーザーの使
胞プロファイリング法にとどまらずさらに多く開発
いやすさを考えて一般公開用のインターフェースを
し、その用途を数多く見出すことで、レクチンを活
作成した。データベースの紹介文や使用法について
用した糖鎖プロファイリングの高い有効性を世に示
日本語と英語でそれぞれ解説を付け、世界に向けて
すことができた。特に、抗体オーバーレイ法を確立
公開した。
した意義はたいへん大きく、マーカー候補の選定、
絞り込みに今後ますます有効に機能することが期待
レクチン応用開発チーム
される。その他、アレイ解析結果を統計解析にまで
(Lectin Application and Analysis Team)
持っていくための要素技術、「ゲイン統合」と「マ
研究チーム長:平林
ックス値規格化法」などを開発し方手法の有効性を
淳
(104)
産業技術総合研究所
構造はタンパク質の種類や部位ごとにも異なっている
確認した。
ことが知られている。したがってタンパク質の機能発
2.臨床研究への橋渡し促進技術開発
本研究課題では、糖鎖センターが開発した先進基
現の機序を説明するためには、個々のタンパク質のど
盤技術であるレクチンマイクロアレイを用いた糖鎖
の位置に、どのような糖鎖が結合しているかを知るこ
プロファイリングを再生医療に供する幹細胞(間葉
とが重要である。反対に、タンパク質の糖鎖構造の相
系幹細胞、ES 細胞)の品質管理、並びに安全性評
違や変化は細胞の状態を反映するので、分化やがん化、
価に活用すべく、橋渡し先機関である国立成育医療
環境変化などを鋭敏に示すマーカーとなり得る。本研
センター、レクチンマイクロアレイの安定供給と改
究チームでは、個々のタンパク質(部位)上の糖鎖構
良に事業として取り組むモリテックス株式会社の3
造やその変化の解析及び糖鎖構造が変化した糖タンパ
者で共同研究開発を行なうものである。研究期間が
ク質コアの分析・同定を通してそれぞれ、タンパク質
1.5年と言う最短の「先導研究」の位置づけである
機能発現における糖鎖の働きの解明、および、疾患、
ため、迅速な技術移転と成果達成が求められる研究
特にがんを検出するバイオマーカーの開発を目的とし
課題であるが、平成20年度は国立成育医療センター
て研究に取り組んでいる。
が調製した各種幹細胞、間葉系幹細胞、ならびに
当チームではセンター内の各チーム及び外部臨床機
ES 細胞について前年度に開発した最適化プロトコ
関などと密接な共同研究体制を築きつつ、疾患に伴っ
ールに基づいて解析した。その結果、細胞糖鎖プロ
て糖鎖構造の変化した糖タンパク質コアを液体クロマ
ファイルを分化前後、ならびに細胞相互で明確に識
トグラフィー(LC)と質量分析装置(MS)を組み合
別することができた。また、専門の研究者の判断を
わせたプロテオミクスの手法を用いて、高感度・高効
仰ぐ必要性を省いたデータ解析用のソフト開発をモ
率に同定し、マーカー候補分子に関する情報を提供し
リテックス社と共同で開発した。さらに、生細胞を
ている。同じ実験アプローチを利用して、糖鎖遺伝子
そのまま壊さずに解析することが可能な生細胞プロ
ノックアウトマウスの糖タンパク質を解析し、糖鎖付
ファイル法を改良し全工程を1時間で完成可能とし、
加の実態解 明 を進めてい る 。また、糖 ペ プチドを
その技術を成育医療センターへと技術移転した。
LC/MS 分析し、糖ペプチドコアおよび糖鎖組成とそ
の変化を包括的に分析する手法開発を行っている。
3.内在性レクチン開発関連研究:糖鎖複合体アレイ
研究テーマ:テーマ題目1:疾患糖鎖バイオマーカーの
による簡便・迅速・高感度な糖結合活性検出法の開
開発、テーマ題目2:糖鎖遺伝子ノックア
発と応用
従来用いられてきた手法とは異なる新規レクチン
ウトマウスの糖タンパク質解析、テーマ題
の探索、特異性解析のため糖鎖複合体アレイを開発
目3:糖ペプチド糖鎖不均一性解析法の開
発
した。従来、スループットと感度の向上が課題であ
ったが、エバネッセント波励起蛍光検出法を応用す
---------------------------------------------------------------------------
ることで新しい概念・フォーマットによる糖鎖アレ
[テーマ題目1]疾患糖鎖バイオマーカーの開発
イを構築することができた。実際には、ゲノム情報
[研究代表者]梶
裕之
(グライコプロテオーム解析チーム)
から新規ヒトレクチンを探索する事業を続け、上記
[研究担当者]梶
アレイ技術の開発によってレクチン特異性の評価や
裕之、大倉
隆司
(常勤職員1名、他1名)
結合力査定が大変容易となった。予想外の結果も得
られており、今後内在性レクチンの機能解析はます
[研 究 内 容]
ます重要になると思われる。
研究目的:
NEDO「糖鎖機能活用技術開発プロジェクト」研究
グライコプロテオーム解析チーム
の一環として、血清を検体とし、がんを検出する糖鎖バ
(Glycoproteomics Team)
イオマーカーの開発を目的とした、以下の各研究を推進
研究チーム長:梶
している。
裕之
研究目的(1):
(つくば中央第2)
概
原発性肝がん、及び関連する肝疾患糖鎖バイオマーカ
要:
タンパク質の機能が糖鎖付加の状況や糖鎖構造によ
ーの探索:原発性肝がんは大別して肝細胞がんと肝内胆
って変化し、これを通して機能調節されていることは
管がんに分類される。肝細胞がんの大部分は肝炎ウィル
既に周知のこととなっている。このことは、糖鎖がタ
ス(主として B 型及び C 型肝炎ウィルス)の感染によ
ンパク質のフォールディング、局在、寿命、相互作用
る急性肝炎を基礎疾患として、慢性肝炎、肝硬変を経て、
パートナーの認識や親和性に深く関与していることに
長期間経過の後に発症する。そこで、この疾患の治療方
起因する。糖鎖の構造は合成される組織、より正確に
針の決定と治療効果の判定に重要なバイオマーカーとし
は細胞の種類や状況によって顕著に変化し、またその
て、肝硬変(肝線維化)の進行状態を反映するバイオマ
(105)
研
究
ーカー及び早期肝細胞がんを検出するマーカーの開発を
は、血清中での存在量が比較的高い候補と見なせるので、
目的とした。
第一選択とし、残りは第2選択群とした。これらの情報
研究手段(1):
を検証研究グループへ提供した。
前述の通り、細胞のがん化に伴う糖鎖構造の変化を基
ついで、胆管がん関連細胞の培養液より同プローブレ
盤とした糖鎖バイオマーカーの探索には、がん性糖鎖の
クチンで同定されたタンパク質群を肝細胞がんからのタ
構造及びこれを鋭敏に反映するプローブレクチンの情報
ンパク質と比較し、胆管がん系でのみ同定されたタンパ
を元に、がん性糖鎖を結合した糖タンパク質コアを同
ク質を選別し、バイオインフォマティクスチームより提
定・選別することが重要と考えられる。がん性糖鎖構造
供された発現プロファイルの情報を加味しながら、候補
に関する情報は肝細胞がんに由来する培養細胞株2種お
約40種に絞り込んだ。
よび胆管がん関連細胞株2種を材料として、以下の3つの
研究目的(2):
アプローチで取得した。すなわち、1)定量的 PCR 法に
肺がんマーカーの探索:肺腺がんと肺小細胞がんの鑑
よる糖鎖遺伝子発現プロファイル、2)レクチンマイクロ
別を可能とするバイオマーカーの探索を目的とした。
アレイ法による糖鎖プロファイル、および3)代謝標識糖
研究手段・方法論(2):
鎖のマルチレクチンクロマトグラフィー分析法による糖
基本的に上述の戦略に準じることとした。肺腺がん細
鎖プロファイルで、当チームでは3)を実施した。これら
胞株2種、および肺小細胞がん細胞株2種について、プロ
の結果から選択されたプローブレクチンを用いて、上述
ーブレクチン AAL を選択、利用し、キャリア糖タンパ
の4種の培養細胞培養液より、糖ペプチドを捕集し、後
ク質コアを IGOT-LC/MS 法で同定した。20年度はプロ
述の IGOT-LC/MS 法でコアペプチド部分を同定した。
ファイルの作成まで実施した。
また健常人および肝細胞がん患者の血清についても同様
[分
に分析し、候補糖タンパク質リストを作成し、各プロフ
[キーワード]がん、バイオマーカー、プロテオミクス、
野
名]ライフサイエンス
レクチン、質量分析、安定同位体標識
ァイルの比較によって、候補タンパク質の絞り込みを進
めた。
[テーマ題目2]糖鎖遺伝子ノックアウトマウスの糖タ
方法論(1):
ンパク質解析
レクチンアフィニティークロマトグラフィーで捕集さ
[研究代表者]梶
れた糖ペプチドは、親水性相互作用クロマトグラフィー
(HIC)でさらに精製した後、安定同位体18O で標識さ
裕之
(グライコプロテオーム解析チーム)
[研究担当者]梶
れた水中でペプチド-N-グリカナーゼ(PNGase)処理
裕之、菅原
大介
(常勤職員1名、他1名)
し、糖鎖を切除した。このとき糖鎖結合残基であるアス
パラギン(Asn)側鎖は酵素加水分解反応により切断さ
[研 究 内 容]
れ、溶媒の18O を取り込んだアスパラギン酸(Asp)へ
研究目的:
と変換される。この標識処理したペプチド混合物はミニ
タンパク質への糖鎖付加は最も広範に生じる翻訳後修
チュア化されたダイレクトナノフローLC/MS 法で分析
飾の一つであるが、糖鎖修飾は鋳型に依存しない複雑な
し、得られた質量スペクトルの解析によって、多数のペ
機構によって担われており、その結果生じた糖鎖の構造
プチドが一度の分析で同定される。同定されたペプチド
は多様性と不均一性に富み、実存する糖鎖構造の解析か
に N 結合型糖鎖付加のコンセンサス配列(Asn-Xaa-
らその機能を解明することは非常に困難な状況にある。
Ser/Thr:Xaa は Pro でない)が存在し、かつ、Asn の
糖鎖構造を規定する主な要因の一つは、糖タンパク質が
位置が O を取り込んだ Asp に変換されていれば、この
合成される細胞における糖転移酵素の発現・活性である
部位に糖鎖付加されていたことが強く示唆される。がん
ため、注目する糖鎖構造の合成に中心的な働きを示す糖
18
関連糖鎖認識レクチンとして、AAL、網羅的捕集レク
転移酵素遺伝子をノックアウト(KO)し、その表現型
チンとして RCA120等を選択し、培養液及び血清より糖
の解析から糖鎖機能を明らかにする、いわゆる逆遺伝学
タンパク質を同定した。
的な手法が一つの有効な手段と考えられる。そこで最初
培養細胞培養液より同定された候補糖タンパク質は各
に、糖鎖遺伝子ノックアウトマウスを用いた表現型解析
細胞100種を超えるため、これらの同定糖タンパク質リ
による糖鎖機能解析法の確立を目的に、糖タンパク質上
スト(プロファイル)を血清試料のプロファイルと相互
の糖鎖構造の実態および KO による変化と、構造変化
に比較することにより候補タンパク質を絞り込んだ。す
した糖鎖を担持するコアタンパク質の同定を試みること
なわち、肝細胞がん関連細胞2種の培養上清及び患者血
にした。
清から AAL を用いて同定されたタンパク質群より、健
研究手段・方法論:
常人血清から同レクチンで同定されたタンパク質を除き、
遺伝子 KO が致死的でなく、産生される糖鎖構造が
残った候補を、血清試料より RCA120を用いて同定され
明確で、発現している組織等の情報が既に得られている
たタンパク質群と比較した。ここで重複したタンパク質
β1-4ガラクトース転移酵素 GalT1を標的とした。はじ
(106)
産業技術総合研究所
めに野生型(WT)マウスの組織(肝臓)より Gal の転
研究手段・方法論:
ペプチド部分は共通であるが、糖鎖構造に不均一性の
移されている糖鎖を持つ糖ペプチドを、対応する糖鎖に
親和性を示すレクチン RCA120を用いて網羅的に捕集し、
ある糖ペプチド群を逆相 LC と MS を連結した LC/MS
そのコアタンパク質及び結合部位を IGOT-LC/MS 法に
法で分析すると、糖鎖を構成する単糖の組成を反映した
より同定する。ついで KO マウスの組織より同様に同
階段状のスペクトルが得られ、ペプチド部分の構造が既
定された糖タンパク質(部位)と比較することで、
知あるいは推測可能であれば、ペプチドとその糖鎖組成
GalT1が基質としているタンパク質(部位)を決定する。
の情報がリンクされたまま得られる。このスペクトルパ
プロファイルの比較によって選別された糖タンパク質上
ターンを比較することで、タンパク質上のどの部位の糖
の糖鎖が KO によって変化していることを数例、個別
鎖がどう変わったかを検出することができる。ペプチド
解析し、この手法によって、KO によって構造変化した
部分をディファレンシャルに安定同位体標識し、分析す
糖鎖を担持するタンパク質が高効率に同定可能か検証す
ることで定量的な解析も可能である。この分析で重要な
る。
点は、イオン化効率が高く、糖ペプチドの検出を妨害す
年度の進捗:
る非糖鎖付加ペプチドを除去し、糖ペプチドをエンリッ
WT、KO マウスの肝臓よりペプチドプール試料を調
チすることと、糖ペプチドの MS シグナルを選択的に
製し、一部をそれぞれレクチン RCA120カラムに供し、
検出し、そのコアペプチドと糖鎖組成を高効率に抽出す
Gal 転移糖鎖を持つ糖ペプチドを捕集した。これを親水
るインフォマティクスの開発である。そこで、HIC を
性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により精製後、
用いた糖ペプチドエンリッチ法の微量化手法の確立と糖
IGOT 法にて安定同位体標識し、LC/MS 法でコアタン
ペプチドイオンシグナル解析プログラムの開発を行った。
パク質を同定した。WT で選択的に同定されたタンパク
年度進捗:
1分子中に5カ所の糖鎖付加部位を持ち、2つの配列ア
質(ペプチド)はこの酵素の基質(部位)と考えられる。
これらの構造特性を解析し、酵素の基質特異性を推測し
イソマーが共存するモデル糖タンパク質混合物より、
た。
HIC で糖ペプチドを精製し、LC/MS 分析した。この複
[分
野
雑なスペクトルパターンより糖ペプチドのシグナルを選
名]ライフサイエンス
[キーワード]糖鎖遺伝子、糖転移酵素、ノックアウト
択的に抽出し、それらのコアペプチドと糖鎖組成を自動
マウス、プロテオミクス、レクチン、質
的に検出するプログラムセットの条件を至適化し、両ア
量分析、安定同位体標識
イソマーについて糖鎖付加部位ごとの糖鎖組成情報を得
ることができた。このモデル糖タンパク質について、さ
[テーマ題目3]糖ペプチド糖鎖不均一性解析法の開発
らにタンパク質精製法と糖ペプチド精製の微量化条件の
[研究代表者]梶
至適化を進めている。
裕之
[分
(グライコプロテオーム解析チーム)
[研究担当者]梶
裕之、武内
桂吾
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]液体クロマトグラフィー、質量分析、糖
(常勤職員1名、他1名)
鎖不均一性、LC/MS データ解析プログ
[研 究 内 容]
ラム
研究目的:
当研究センターでは、疾患、とくにがん化、に伴う細
⑰【新燃料自動車技術研究センター】
(Research Center for New Fuels and Vehicle
胞状態の変化に起因する糖鎖構造変化に注目したバイオ
Technology)
マーカー探索が進められている。ここではがんに特異的
なタンパク質ではなく、がんに特異的な糖鎖を持つタン
(存続期間:2007.4.1~2014.3.31)
パク質を数多く同定し、感度と特異性の高い標的糖タン
パク質あるいはその組み合わせを探索している。この過
研 究 セ ン タ ー 長:後藤
新一
程で選択された糖タンパク質上の糖鎖構造が、がん化に
副研究センター長:浜田
秀昭
伴って変化していることを確認しなければならない。最
も高感度に糖鎖変化が検出できる手法は抗体を利用した
所在地:つくば東、つくば中央第5、つくば西
選択的レクチンアレイ分析であるが、具体的な構造情報
人
員:17名(16名)
は得られない。反対に詳細な糖鎖構造解析はタンデム質
経
費:321,491千円(163,315千円)
量分析法によって可能であるが、比較的多量の試料を要
概
要:
し、また糖鎖部分を切り出して分析するため、高度な精
1.ミッション
製が重要となる。そこで特定のタンパク質上の糖鎖構造
本研究センターは、新燃料及び新燃料を使用する
の変化をより簡便に検出する手法の開発を目的に以下の
自動車技術を普及させ運輸部門の石油依存度の低減
実験を行っている。
に貢献すること、及びクリーンな排出ガスと CO2
(107)
研
究
低燃費化(省石油化)が期待できる石油系燃料
削減を目指した自動車燃費の大幅な向上を目的とす
る。そのため、2009年のポスト新長期排出ガス規制、
の高品質化、および、輸送用燃料の石油代替が期
次いで2015年を目標とする新燃費規制、さらには
待できるバイオ燃料などの新燃料製造の核心技術
2030年の運輸部門の石油依存度を80%に下げる国家
となる触媒技術の研究開発を行う。
戦略目標達成に向け、自動車業界との連携のもとに、
2)新燃料燃焼技術
従来の燃焼技術の新燃料への適応化技術、燃料
社会ニーズ対応の本格研究を実施している。本研究
センターの具体的ミッションは以下の3項目である。
設計と新燃焼技術を合わせた革新的次世代低公害
1)新燃料及び自動車に関する先端的技術として、
エンジン技術、新着火技術について研究開発を行
う。
新燃料製造技術、新燃料燃焼技術、新燃料燃費・
3)新燃料燃費・排出ガス対策技術
排出ガス対策技術、新燃料計測評価技術の革新的
多機能型触媒コンバータの研究開発、NOx な
技術を開発する。
どの有害物質に対する高性能後処理触媒の研究開
2)新燃料及び排出ガス評価・計測方法の規格化・
発、さらに、後処理触媒の白金族金属の代替や使
標準化を支援する。
用量低減を目指す研究開発に取り組む。
3)我が国とアジアなどの諸外国の研究人材・技術
4)新燃料計測評価技術
者の育成を目指し、国際共同研究等を実施し、人
導入が予定されている各規制に対応して、軽油
材の受け入れや派遣による人材育成ネットワーク
等従来燃料を対象に確立されてきた計測評価技術
の構築を行う。
に及ぼす新燃料の影響評価と対応策の検討を行う。
2.運営・体制
5)新燃料規格化支援
上記ミッションを遂行するため、ユニット内の各
基盤技術(燃料製造技術、エンジン・燃焼技術、新
製造技術、燃焼技術及び燃費・排出ガス対策技
燃料燃費・排出ガス対策技術、計測評価技術)を進
術それぞれの基盤研究成果を基に、新燃料の規格
化させるとともに、その技術を実用化に繋げる本格
化に必要な情報の整理、国際規格やアジア地域の
研究を実施しており、特に、企業との共同により、
規格、国内規格を含めた、規格化に関する支援を
新燃料製造技術と新燃料利用自動車技術の双方の実
行う。
4.人材育成
用化・製品化に重点を置いている。この際、燃料製
造から、エンジン燃焼、排出ガス処理及び計測まで
ミッションのひとつとして、我が国と諸外国の研
の流れを研究の柱として、有機的に各チームの協力
究人材・技術者の育成を掲げており、そのため、国
を推進している。
際共同研究、人材育成プログラム、燃料規格の国際
さらに、本研究センターは、業界及び行政的ニー
調和などを通じて人材育成を実施している。具体的
ズを的確に把握するため、産業界・政策当局等から
には、タイの研究機関とのバイオ燃料の国際共同研
構成されるアドバイザリーボードをセンター内に設
究、フランスの研究機関との燃料製造や排出ガス処
置し、センター活動の方針を策定・修正しつつ研究
理触媒に関する国際共同研究、JICA プログラムに
経営を行っている。また、共通の社会ニーズを有し
よる人材受入、東アジアサミットの決議によるアジ
ている海外国立研究機関とも連携を図り、先導的課
ア各国の専門家とのバイオ燃料の標準化ワーキング
を実施している。
題に係る国際共同研究や新燃料規格化等の基盤整備
---------------------------------------------------------------------------
支援を実施している。
外部資金:
新燃料自動車技術は多くの技術分野の統合技術で
・経済産業省
あることから、他ユニットの活動とも密接な連携が
産業技術研究開発委託費
自動車用ジメ
チルエーテル(DME)燃料の国際標準化
必須であり、関連他ユニットとの協力(バイオマス
研究センター、エネルギー技術研究部門等)を推進
・環境省
している。また、ディーゼルシステム連携研究体の
シャシダイナモを中心とした大型設備はメーカへも
地球環境保全等試験研究費
CO2排出低減に
資するバイオディーゼル燃料の高品質化技術
開放しており、自動車工業会とも連携を進めている。
3.主要研究項目
・独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
本研究センターでは、新燃料製造技術と新燃料を
受託費
新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネ
利用する自動車技術の双方の実用化を目指すととも
ルギー等高効率転換技術開発(先導技術開発)/バイ
に、研究成果を総合し、新燃料の普及の前提となる
オ燃料の品質規格及び計量標準に関する研究開発
国内外の規格作りに貢献している。主要研究項目は
下記の通りである。
・独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
1)新燃料製造技術
受託費
(108)
革新的次世代低公害車総合技術開発/新燃焼
産業技術総合研究所
方式の研究開発及び燃料の最適化/革新的後処理シス
イオディーゼル燃料を製造・高品質化する触媒技術を
テムの研究開発
開発すると共に、非食糧系バイオマス等を原料とし境
適合性の高い高品質新燃料を製造する触媒技術を構築
している。更に、得られた燃料のエンジン評価や排出
・ERIA「東アジア・アセアン経済研究センター」受託
費
ガス特性評価等を通して、新燃料の普及に不可欠な規
東アジアにおけるバイオディーゼル燃料の基準調
格化を支援している。これらの研究に加え、国際共同
和
研究を通して、我が国とアジア諸国などの諸外国の研
発
究人材・技術者の育成にも貢献している。
表:誌上発表36件、口頭発表48件、その他7件
---------------------------------------------------------------------------
研究テーマ:テーマ題目1
新燃料燃焼チーム
(Combustion and Engine Research Team)
省エネルギーシステムチーム
研究チーム長:後藤
(Energy-saving System Team)
新一
研究チーム長:小渕
(つくば東)
概
存
(つくば西)
要:
概
エネルギーの多様化と環境保全の観点から、(1)新
要:
燃料エンジンシステム技術、(2)次世代大型ディーゼ
本チームは、触媒反応と内部熱交換(熱回収)機能
ルエンジンの高効率化と排気ガス低減技術に関する研
を備えた熱回収型触媒リアクタ技術、さらにはフィル
究開発を実施し、民生・運輸分野における動力利用シ
タ機能をはじめとする他の機能を併せ持つ多機能型触
ステムの石油依存度軽減、高効率化並びにクリーン化
媒リアクタ技術を創出することを目標としている。自
技術の実現を目指している。また、得られた成果や各
動車関連では、石油系を含む多様な新燃料を燃焼させ
種検証試験データの蓄積により(3)新燃料の標準化
た際の排出ガスの高度浄化を可能とするため、コンバ
を推進する。具体的研究項目を以下に示す。①超高度
ータ温度を浄化プロセスに最適な値に制御するための
燃焼制御エンジンシステム技術の研究開発、②新燃料
熱回収型コンバータ技術を開発する。特に、エンジン
利用システムの実用化研究開発(ジメチルエーテル
燃焼の効率向上とともに年々下がってきている200℃
(DME)自動車の技術実証等)、③エンジン等燃焼技
以下の温度条件でも触媒反応等による排出ガス浄化を
術に関する基盤研究(エンジン燃焼試験、噴霧及び燃
可能にするため、小さいエネルギー付与で触媒層を必
焼の可視化解析、CFD シミュレーション等)、④新燃
要なレベルまで昇温させることを可能にする技術を開
料標準化研究開発(バイオ燃料、DME 等)
発する。また、揮発性有機化合物(VOC)関連では、
熱回収型触媒燃焼技術とともに、NOx を副生しない
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目5、テーマ題目
触媒、および貴金属系活性成分の使用量を低減できる
6
多元細孔構造を有する担体を開発することにより、小
規模の VOC 発生源に対応できる VOC 触媒分解シス
新燃料製造チーム
(Hydrotreating Catalysis Team)
研究チーム長:葭村
テムの開発を目指している。
研究テーマ:テーマ題目3
雄二
(つくば中央第5)
概
要:
排出ガス浄化チーム
新燃料製造チームでは、輸送用燃料の石油依存度低
(Emission Control and Catalysis Team)
研究チーム長:羽田
減に貢献するため、燃焼改善や排出ガス処理装置への
政明
(つくば中央第5)
負荷低減等により低燃費化(省石油化)が期待できる
概
既存石油系燃料の高品質化技術、並びにバイオディー
要:
ゼル等の導入・普及により直接的に輸送用燃料の石油
本チームは、自動車における新燃料の普及、省エネ
代替が期待できる新燃料製造技術の研究開発を行って
ルギー化及び排出ガスの超クリーン化を目指した排出
いる。前者の石油系燃料の超クリーン化用触媒技術で
ガス対策技術を開発することを目標に、革新的な排出
は、サルファーフリー(硫黄<10 ppm)燃料製造触
ガス浄化触媒の開発に取り組んでいる。具体的には、
媒の実用化・普及を目指すとともに、環境適合性が高
ディーゼル自動車排出ガスポスト新長期規制に対応す
く将来燃料として期待されている低芳香族燃料やゼロ
るための触媒システムとして、一酸化炭素等の燃料由
サルファー(硫黄量<2 ppm)燃料を製造可能な革
来の還元剤を利用する NO 選択還元触媒と、それを
新的石油精製触媒の開発を行っている。後者の新燃料
ベースにした複合化触媒技術の検討を行っている。ま
の製造技術並びに環境適合化技術では、各種油糧作物
た、種々のエンジンや燃焼器からの排出ガス NOx を
等を原料とし酸化安定性や熱安定性向上等に優れたバ
高効率で浄化するための多機能型触媒コンバータの開
(109)
研
究
発を目指し、想定される還元剤として、アンモニアな
また、将来の更なる燃料高品質化技術、例えばゼロサル
どによる NO 選択還元触媒の開発を行うとともに使
ファー化(S<2 ppm)や低芳香族化を温和な反応条件
用する燃料種の影響についても検討している。三元触
下で可能にする触媒技術の事前構築に対する期待も高い。
媒では NOx 除去のための必須白金族金属であり、し
一方、運輸部門からの CO2低減対策として、バイオマ
かも最も資源量の少ないロジウムについて、その触媒
ス由来輸送用燃料の導入へのニーズが急速に高まってお
活性に対する担体や添加物の効果などの詳細な検討を
り、食糧と競合しない未利用非食糧系バイオマス資源か
行っている。三元触媒におけるロジウムの機能発現や
らの高品質輸送用燃料の製造を可能にする技術構築が求
活性支配因子などの基本的特性を解明し、ロジウム使
められている。このため、新燃料製造技術の研究では、
用量を低減した触媒開発を目指している。
高品質石油系燃料の製造技術、並びにバイオ系新燃料の
研究テーマ:テーマ題目4
製造・高品質化技術のキーテクノロジーである触媒技術
に着目し、その基盤技術構築と本格研究を通して、最終
計測評価チーム
的には都市環境と地球環境に優しい輸送用燃料の社会へ
(Measurement and Evaluation Team)
研究チーム長:古谷
の提供・普及に貢献することを目的とする。
博秀
本年度は、高品質石油系燃料の製造技術中で軽油のサ
(つくば東)
概
ルファーフリー化用脱硫触媒の研究を行い、通常の精油
要:
所内の脱硫操作条件下で、直留軽油(硫黄分~
導入が予定されているポスト新長期規制対応車の粒
1.5 wt%)から硫黄分7 ppm 以下のサルファーフリー
子状物質の排出について、その評価技術の確立が急務
軽油を安定して製造できる CoMo 系脱硫触媒を、企業
である。計測評価チームにおいては、計測標準研究部
との共同研究を通して開発した。本開発触媒では、担体
門と連携し、エアロゾル粒子質量分析器(Aerosol
上に担持された MoS2微粒子相が高分散状態であり、し
Particle Mass Analyzer; APM)を用いて PM 粒子質
かも MoS2 シートが低積層型(平均的な積層数は1~2
量を直接かつ実用的に測定する手法を応用して、従来
層)であり、更に高結晶性を有しており、産総研が提案
フィルタ法の測定限界をほぼ見極めたことに加え、本
する触媒構造に近く、他社脱硫触媒の構造と異なること
評価法を利用し、ポスト新長期規制対応車の評価を実
がわかった。触媒寿命試験を通し、安定した性能が確認
施した。また、国連傘下の技術標準国際フォーラムに
された(2000時間以上の寿命試験を実施中)。従来型石
おける粒子状物質計測プログラム:PMP が推奨する
油系燃料の高品質化改質の研究の中で、燃料油中の芳香
粒子状物質個数計測装置を導入し、バイオ燃料を用い
族分の更なる低減化研究を行い、芳香族低減用として既
てこれまで計測を行ってきた粒子状物質計測手法との
に開発している PdPt/Yb-USY ゼオライト系触媒の更
比較を開始した。更に、新しい着火燃焼技術としてレ
なる耐硫黄性向上の検討を行い、触媒調製法の改良並び
ーザ着火の研究開発を実施し、ターゲットを利用した
に水素化反応条件の最適化により、許容硫化水素濃度<
場合の高温場の移動状況の把握及び、高効率に燃焼反
2000 ppm を達成できることを見出した。
応を誘起する手法としてレーザ焦点への電子供給の影
一方、バイオ系新燃料の製造・高品質化技術の中で、
響を明らかにした。
油糧作物のトランスメチルエステル化から得られる脂肪
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目4、テーマ題目
酸メチルエステル(FAME)型バイオディーゼル燃料
5
(BDF)の高品質化技術の開発を行った。FAME 型バ
---------------------------------------------------------------------------
イオディーゼルでは含有される多価不飽和脂肪酸メチル
[テーマ題目1]新燃料製造技術の研究
が酸化され易く、腐食性の有る低級有機酸や重合物であ
[研究代表者]葭村
るスラッジ等を生成しやすい欠点がある。このため、東
[研究担当者]鳥羽
八坂
雄二(新燃料製造チーム)
誠、望月
剛久、阿部
加津江、森田
アジアサミット推奨の BDF 品質((EEBS):2008)や日
容子、
芳弘、松元
雄介
米欧の自動車工業会が提案する世界燃料憲章
(WWFC)の BDF 品質では、BDF の酸化安定性が強
(常勤職員2名、他5名)
[研 究 内 容]
化されている(ランシマット法による酸化安定性誘導時
既存の石油系輸送用燃料のクリーン化、特に低硫黄化
間が従来の6時間から10時間に強化)。この酸化安定性強
は、自動車排出ガス処理装置に用いられている貴金属触
化に対応すべく検討を行った結果、高水素化能を有する
媒や NOx 吸蔵還元触媒の長寿命化に有効であり、触媒
貴金属系触媒を用いることにより、高圧ガス保安法適用
酸化再生時の燃料使用による燃費悪化の改善が期待でき
外の低水素圧条件下、温和な反応温度条件下で BDF の
る。このため、我が国ではサルファーフリー(S<
部分水素化が可能となり、東アジアサミット推奨の
10 ppm)ガソリンや軽油が供給されているが、製油所
BDF 酸化安定性を確保できることが分かった。これら
でのサルファーフリー化処理をより温和な条件下で達成
の BDF と石油系軽油とを混合した混合軽油の酸化安定
できる長寿命脱硫触媒に対するニーズは依然として高い。
性も極めて重要であり、品確法では BDF 混合率が5質
(110)
産業技術総合研究所
量%以下とされ、混合軽油の酸化安定性が規制されてい
(JE05モード)による最終性能評価を実施した。そ
る(酸価<0.13 mgKOH/g、低級有機酸であるギ酸、
の結果、NOx-PM トレードオフを改善するとともに、
研究目標を達成した。
酢酸及びプロピオン酸の合計<0.003質量%、純酸素流
通下115℃の強制酸化後の酸価増加量<0.12 mgKOH/
2)
新燃料利用システム技術
いすゞ中央研究所の開発した小型 DME トラック
g)。
部分水素化した大豆油をサルファーフリー軽油に5質
(2 t 積載)の走行試験を実施中である。平成20年度
量%混合した混合軽油、並びに、部分水素化した菜種油
はテストコースでの高速定常走行をメインに、耐久性
をサルファーフリー軽油に10質量%混合した混合軽油共
に関わる大きなトラブル無く総走行距離が9万 km に
に、前述の強制酸化後の酸価増加量は0.12 mgKOH/g
達した。これらの結果は共同研究先のいすゞ中央研究
以下であり、しかもスラッジ生成も殆ど見られないこと
所により、DME 自動車の技術指針作成に対する参考
がわかった。このことから、本開発部分水素化法を用い
資料として国土交通省に報告される。
れば、抗酸化剤の添加なしに(あるいは抗酸化剤の添加
自動車用 DME 燃料標準化を目標に、DME の製造
量を最小限にし)、BDF100%の品質のみならず、BDF
・流通過程で混入する可能性のある不純物及び燃料と
と軽油との混合軽油の品質を確保できることがわかった。
して利用する際に必要な添加剤等がエンジン性能や排
[分
出ガス特性に及ぼす影響について、コモンレール式
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]輸送用燃料、バイオ系新燃料、高品質化
DME ディーゼルエンジンにより実験的に評価し、
触媒、脱硫触媒、サルファーフリー、低
個々の不純物および添加剤が及ぼす影響を明確にし
芳香族、バイオディーゼル、燃料品質確
た。
3)
保
新燃料着火技術
新しい着火燃焼制御技術として、レーザによる着火
[テーマ題目2]新燃料燃焼技術の研究
技術について研究開発を行っている。レーザによる着
[研究代表者]後藤
火は非接触であるだけではなく、高圧中や希薄な予混
新一(センター長)
[研究担当者]広津
敏博、小熊
光晴、辻村
拓、
合気中で安定して着火を制御できる可能性を持つこと
古谷
博秀、日暮
一昭、佐藤
謙一、
が分かっており、将来の高効率エンジンの着火デバイ
佐々木
利幸、喜多
スとして注目されている。平成20年度においては、レ
郭二、
河野
義善、蔦田
公仁、菅野
健、
ーザでプラズマを生成するためにターゲットを使用し
千葉
和貴、岩品
智也、島田
亮、
たときの高温場の挙動を把握し、条件によっては火炎
榎本
英臣(常勤職員5名、他11名)
の成長を阻害するターゲットから火炎を遠ざける流れ
を作り出すことが出来ること、レーザの集光点に電子
[研 究 内 容]
バイオ燃料やジメチルエーテル(DME)など新燃料
を予備的に発生させることにより、ブレイクダウン閾
の物理的・化学的特性は、軽油やガソリンなど従来の化
値で1/5、プラズマへのエネルギー供給効率で約2倍の
石燃料のそれと相違することが多く、新燃料の持つポテ
効果があることを明らかにした。
ンシャルや特性を最大限引き出し低公害性と高効率性を
[分
同時に達成するためには、それぞれの新燃料に対して適
[キーワード]予混合圧縮着火燃焼、PCI 燃焼、バイ
切な燃焼技術及び利用システム技術が必要である。本テ
オ燃料、バイオディーゼル燃料、ジメチ
ーマでは、各種新燃料に対する燃焼技術開発及び利用シ
ルエーテル、DME、レーザ着火
野
名]環境・エネルギー
ステム技術の最適化と共に、燃料設計と新燃焼技術を融
合した革新的次世代低公害エンジン技術やレーザ着火を
[テーマ題目3]燃費対策技術の研究
中心とした新着火技術などに関する研究開発を行い、実
[研究代表者]小渕
用化を目指す。
1)
存
(省エネルギーシステムチーム)
超高度燃焼制御エンジンシステム技術
[研究担当者]内澤
革新的 次世 代低公害 車総 合技術開 発( 事業主:
潤子、難波
哲哉
(常勤職員3名、他4名)
NEDO)において、新燃焼方式の研究開発及び燃料
[研 究 内 容]
の最適化研究を実施した。平成20年度は、平成19年度
本研究は、自動車排ガスコンバータあるいは低濃度の
までに産総研にて最適化設計を行った新燃料(セタン
揮発性有機化合物(VOC)分解のための触媒燃焼処理
価42、芳香族分フリー、高揮発性)を、共同研究先企
装置などにおいて、触媒反応と内部熱交換(熱回収)機
業が開発したシーケンシャル型3段過給システム搭載
能を備えた熱回収型触媒リアクタ技術を創出することを
多気筒エンジンへ適用し、エンジン性能及び燃料効果
目標としている。今年度は、積層プレート形および熱交
を見出した。また新燃焼方式(予混合圧縮着火燃焼)
換部-触媒部分離形の熱回収型コンバータを試作し、デ
を含むエンジン燃焼制御マップを提案し、過渡運転
ィーゼル車排出ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元す
(111)
研
究
るためのコンバータ、及び VOC 分解のための触媒反応
[研究担当者]羽田
政明、鈴木
邦夫、佐々木
Asima Sultana、佐藤
器としての性能を調べた。
千葉
積層プレート形の熱回収型コンバータは、厚さ
0.1 mm 程度のステンレス板を約1.2 mm 間隔で多数
晃嗣、青木
基、
直子、
直也、金田一
嘉昭
(常勤職員5名、他4名)
[研 究 内 容]
平行に積層させ、積層面と直交する側面のひとつには隣
り合うすきま同士が互いに逆方向に流れる流路を形成す
既存燃料、新燃料を問わず、燃費向上と厳しい排出ガ
るように交互に開口したスリット形の出入り口を設け、
ス規制を同時に満たすことが要求される。現行の排出ガ
それと相対する反対側の側面は、積層のすきま端部をす
ス対策技術では、高度浄化を達成する上でかなりの燃費
べて開口させることにより、流れの折り返し部としたも
悪化を伴うことや、資源制約の大きい白金やロジウムの
のである。さらに、このようにして形成された往復する
使用量が増加していることが問題となっており、これら
すきま流路内部に触媒を配置した。正味体積1.2 L の小
を大幅に改善することが必要である。本研究開発では、
型、同3.6 L の中型コンバータを試作し、共に、主に往
自動車排出ガスポスト新長期規制を達成するため、新燃
路側すきまに NH3による選択還元反応(NH3-SCR)の
焼方式エンジンに適合し、未燃成分や燃料由来の還元剤
触媒となる Cu 担持ゼオライトを、復路側すきまに補助
を利用する高効率 NOx 除去触媒システムを開発する。
加熱用の酸化触媒となる Pt/Al2O3を配置した。小型試
また、将来需給の逼迫が予想される白金族金属の低減を
作 器 で は 、 中 型 デ ィ ー ゼ ル 車 か ら の 排 出 ガ ス を 300
目指し、排出ガス処理触媒に使用される白金族金属の使
L/min(空間速度=15000h )導入した場合、熱通過率約
用量を低減した触媒の開発を行う。特にガソリン車用三
20 W/K の熱回収性能が得られた。この作用と補助加熱
元触媒におけるロジウム低減技術の開発を行う。
-1
源として CO を0.3~0.6%触媒燃焼させることにより、
1)
高効率 NOx 除去触媒システムの開発
自動車排出ガスポスト新長期規制対応技術として、
約100℃の排出ガス温度がコンバータ内部で300~400℃
まで上昇した。さらにこの効果により、NH3を還元剤と
CO を還元剤とする NO 選択還元(CO-SCR)触媒
する選択還元プロセス(NH3-SCR)による NOx 除去
のさらなる性能向上を目指すとともに、CO-SCR
率は82%に達した。同様に、中型試作器でも排出ガス流
触媒技術をベースにして、尿素選択還元(尿素
量900 L/min(空間速度=15000h-1)で熱回収率75 W/K、
SCR)法と複合化した高性能 NOx 除去触媒技術の
最高 NOx 除去率86%の性能が得られた。
実排ガス評価を実施した。実験室レベルでの触媒探
熱交換部-触媒部分離形の熱回収型コンバータは、積
索の結果、CO-SCR 触媒として Ba/Ir/WO3/SiO2
層プレート形と同様の熱交換部構造を有するが、この部
触媒が、尿素 SCR 触媒の基本触媒である NH3-
分には触媒を担持せず、熱交換部と直結するダクト部に
SCR 触媒としてはベータゼオライトに銅をイオン
ハニカム触媒を搭載できる形にしたものである(特許出
交換した触媒を使用した。排ガス上流側に NH3-
願中)。このタイプに関しては小型(正味体積1.2 L)
SCR 触媒を、下流側に CO-SCR 触媒を配置して、
と大型(同21 L)のコンバータを試作した。小型コン
NH3 のみ、および CO+NH3 の混合還元剤を導入し
バータについては積層プレート形と同様の NH3-SCR
て NOx 除去性能を評価した結果、CO+NH3混合還
性能試験を行った結果、排出ガス流量300 L/min にお
元剤を使用することで高い NOx 除去率が達成され、
いて熱通過率26 W/K、最高 NOx 除去率80%の性能が
本複合化システムの有効性が確認できた。
得られた。また、同体積の積層プレート形と比べて圧力
さらに熱回収型コンバータに搭載する NH3-SCR
損失が低かった。また、このコンバータに酸化触媒
触媒の改良研究を実施した。実使用条件で問題とな
(Pt/Al2O3)を担持したハニカムのみを搭載した場合に
る触媒の炭化水素による性能劣化を抑制した触媒の
ついて、低濃度トルエン(VOC の一つ)の完全酸化を
開発を目指した検討を実施し、炭化水素が共存する
試みたところ、約550 ppm のトルエンを補助加熱なく
条件でも高い NOx 浄化率を示す Cu-Na-ZSM-5触
触媒燃焼により自燃させることができた。大型コンバー
媒、炭化水素による活性低下がほとんどない Cu-
タ試作器については、NH3-SCR 用の触媒を搭載して性
H-FER 触媒を見出し、候補触媒として提案した。
能を調べた。その結果、排気量10 L エンジンの排出ガ
新燃料であるバイオディーゼル燃料を利用したデ
スの一部(1800 L/min)を処理した場合、熱通過率
ィーゼル車から排出される NOx を除去するための
104 W/K、最高 NOx 除去率99%以上の性能が得られた。
触媒技術として、軽油燃料ディーゼル排ガス後処理
[分
に用いる尿素 SCR 用触媒をバイオディーゼル燃料
野
名]環境・エネルギー
(パーム油、ジャトロファ由来のメチルエステル
[キーワード]自動車、排出ガス浄化、コンバータ、触
(PME、JME))に展開した時の影響について検
媒、熱回収、省エネルギー、燃費
討した。今年度は Cu/ゼオライト系触媒を用いて、
[テーマ題目4]排出ガス対策技術の研究
排出ガスシミュレーションガス中に、アンモニアと
[研究代表者]浜田
カプリン酸メチルエステル、アセトアルデヒド等の
秀昭(副センター長)
(112)
産業技術総合研究所
また、新燃料の市場導入に際しては、軽油等従来燃料
評価した。その結果、100℃でのモデル炭化水素の
を対象に確立されてきた従来の計測評価技術の新燃料評
前吸着は、150℃以上での NOx 還元性能に影響を
価への適合性を検証し確立することが極めて重要である。
与えなかった。一方、炭化水素を連続的に供給する
計測評価チームでは、計測評価部門と連携し、NEDO
と活性の低下がみられ、劣化の程度は炭化水素に依
より委託された「革新的次世代低公害車総合技術開発/
存した。触媒活性は炭化水素の供給をとめると徐々
次世代自動車の総合評価技術開発」を軸として、産総研
に回復し、400℃での空気酸化処理により完全に回
内で開発されたエアロゾル粒子質量分析器(Aerosol
復することから、活性低下の原因は炭素質の吸着で
Particle Mass Analyzer;APM)を用いて PM 粒子質量
あると考えられる。
を直接かつ実用的に測定することを可能とし、微分型微
2)
モデル炭化水素を添加した場合の NOx 還元性能を
白金族金属低減・代替触媒技術の開発
粒子分級装置(DMA)と組み合わせてディーゼル排気
三元触媒において NO を還元するための必須金
PM の粒径毎の有効密度を計測し、粒径毎の粒子質量と、
属成分であるロジウムの使用量を低減した触媒を開
SMPS で測定した粒径分布とからトータルの質量濃度
発するため、実用的に重要な耐久処理後の触媒に着
を算出し、従来の基本的なフィルタ捕集測定法との比較
目し、性能評価と活性制御因子を明らかにするため
試験を行う独自のアプローチによって、フィルタ捕集・
の検討を行った。1000℃でのエージング処理後の
秤量法の秤量限界の推定やその PM 捕集濃度の妥当性
Rh/CeO2-ZrO2触媒の NO 還元活性は Ce/Zr 組成
評価を行っている。
比に強く依存し、ZrO2 含有量を多くすることによ
平成20年度においては、測定限界に近づきつつある従
り NO 還元活性は大きく低下した。検討した触媒
来フィルタ法の妥当性を評価する研究においては、ディ
の中では Rh/CeO2が最も高い NO 還元活性を示し
ーゼル排気微粒子(DEP)についてもオンライン法に
た。Rh/CeO2-ZrO2触媒の OSC と NO 還元活性を
よりフィルタ法を評価できることを確認し、従来フィル
比較したところ、全く反対の相関性が認められ、
タ法の測定限界をほぼ見極めることができたのに加え、
OSC の高い触媒ほど NO 還元活性は低くなった。
本評価法を利用した NEDO 開発エンジンの最終評価実
担持 Rh 触媒の NO 還元活性は Rh の表面電子状態
験においては、その排気微粒子濃度の極低濃度化が実現
に強く依存することが考えられることから、OSC
できていることを確認できた。
が高い CeO2-ZrO2に担持された Rh はより高い酸
また、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィ
化状態で安定化されるために、NO 還元活性が低く
ルタ)の性能を数値的に予測する手法について、その評
なったものと推察した。
価手法についても研究開発を行った。
[分
野
[分
名]環境・エネルギー
野
名]環境・エネルギー
[キーワード]自動車、排出ガス、燃費
[キーワード]窒素酸化物、触媒システム、バイオディ
ーゼル、三元触媒、貴金属
[テーマ題目6]新燃料規格化支援
[テーマ題目5]新燃料計測評価技術の研究
[研究代表者]後藤
[研究代表者]古谷
博秀(計測評価チーム)
[研究担当者]古谷
[研究担当者]篠崎
修、笠木
新一(新燃料燃焼チーム)
博秀、広津
日暮
一昭、佐々木
(常勤職員2名、他1名)
喜多
郭二、河野
敏博、小熊
久美子
光晴、
利幸、
義善
(常勤職員4名、他4名)
[研 究 内 容]
[研 究 内 容]
近年自動車に対する排出ガス規制は非常に厳しく、さ
らに、ポスト新長期規制(平成21年)においては、ディ
テーマ項目1~5で実施する製造技術、燃焼技術及び
ーゼル自動車においてもガソリン自動車並みのクリーン
燃費・排出ガス対策技術それぞれの基盤研究成果や各種
さが求められている。特に、これまでディーゼル自動車
検証試験データの蓄積により、新燃料の規格化に必要な
の粒子状物質の排出を評価する手法としては、フィルタ
情報を整理し、ISO や東アジア地域における基準調和
捕集による粒子状物質の重量計測で評価を行ってきたが、
などの国際規格や、JIS 等国内規格の策定を推進する。
最新のヨーロッパの規制では、粒子の個数による規制が
規格策定にあたっては業界団体と密に連携し、必要に応
導入されつつあり、日本においても粒子状物質の個数で
じて国内外の標準化に関わるワーキンググループ
規制することが検討されている。しかしながら、PM 粒
(WG)や委員会の設置あるいは委員派遣を行う。
子の個数濃度計測については、これまでの重量法に対す
1)
東アジア地域におけるバイオディーゼル燃料品質の
ベンチマーク策定
るキログラム原器のような絶対的な基準がなく、環境基
準などは、やはり重量を基準としていることから、その
平成19年度に引き続き、東アジア地域における良質
校正技術、および、重量との関連性を明確にすることが
なバイオディーゼル燃料普及のため、東アジア各国の
急務となっている。
専門家をメンバーとする WG を開催し、基準調和を
(113)
研
究
目標とした軽油混合用バイオディーゼル燃料の品質コ
断・創薬支援、バイオプロセス利用など産業技術の創
ントロールについて議論を進めた。昨年度定めたベン
出に向けた研究開発に取り組んでいる。
チ マ ー ク ス タ ン ダ ー ド が 、「 EAS-ERIA BDF
ライフサイエンス分野における計測・実験技術の発
Standard(EEBS):2008」として第二回東アジアサ
展は著しく、特に近年、超高速シークエンサーの登場
ミットエネルギー大臣会合(2008年8月@バンコク)
により、ゲノム配列、発現転写物に関する圧倒的な量
の共同声明文に明記され了承された。
の情報が得られる状況において、大規模かつ高速な情
DME 燃料の国内外標準化
報処理が強く必要とされている。当センターでは世界
DME 燃料の標準化推進として、ISO/TC28/SC4及
トップレベルの計算機環境を駆使してゲノム情報、生
び SC5による議論に Expert を派遣中。国際流通時に
体高分子の構造と機能、細胞ネットワークなど膨大な
おけるサンプリングや計量方法を議論する SC5は後
データに対応し、工学的視点に基づく実用的なシステ
藤センター長が国際議長を務めている。品質を議論す
ムの開発を行っている。また、センター内外のソフト
る SC4では、製造プラント出荷時の値として、燃料
ウエア・データベースを統合し、創薬支援など実用的
用 DME の品質規格議論中。国内でも SC4と同調す
な応用環境と知的基盤の構築を目指している。
2)
るため、自動車用 DME 燃料規格委員会(委員長:後
さらに、産学官連携を重視し、民間企業や大学との
共同研究、研究員受け入れなど、21世紀の生命情報工
藤センター長)にて議論を進めている。
3)
バイオ燃料の ISO および JIS 化対応支援
学を支える研究人材の育成も重要なミッションである。
第1回 ISO/TC28/SC7の液体バイオ燃料国内委員会
(ブラジルリオデジャネイロ、2009年1月29日)に対
重要研究課題としては、下記項目を掲げている。
応することを目的として、石油連盟において開催され
(1)ゲノム情報解析
た準備会議(第1回)に出席し、ポジションペーパー
(2)分子情報解析
の取りまとめに貢献するとともに、SC7会議へ後藤セ
(3)細胞情報解析
ンター長が日本国団長として出席した。会議では各国
(4)情報基盤統合
のバイオ燃料の混合率や燃料規格は、国内事情や地域
---------------------------------------------------------------------------
条件のよって異なることから、ISO においては測定
内部資金:(平成20年度)
方法から順次検討をすすめることとなった。結果を液
研究情報の公開データベース化事業(RIO-DB)「細胞
体バイオ燃料国内委員会(仮)準備会議(第2回)で
分化・転換情報を含む網羅的ヒト細胞データベースの開
報告するとともに、燃料用エタノール JIS 原案作成
発」
委員会を発足、JIS 作成の体制が整った。
[分
野
外部資金:(平成20年度)
名]環境・エネルギー
文部科学省
[キーワード]標準化、国際標準、基準調和、ベンチマ
ーク、東アジア、バイオディーゼル燃料、
科学技術振興調整費(新興分野人材養成)
「生命情報科学技術者養成コース」
ジメチルエーテル、DME、ISO、バイ
文部科学省
オエタノール
科学技術試験研究委託事業「ライフサイエ
ンス分野の統合データベース整備事業「ライフサイエン
⑱【生命情報工学研究センター】
ス統合データベース開発運用」(統合データベース開
(Computational Biology Research Center)
発:ワークフロー技術を用いた統合 DB 環境構築)
(存続期間:2007.4.1~)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「モ
研 究 セ ン タ ー 長:浅井
潔
デル細胞を用いた遺伝子機能解析技術開発/細胞アレイ
副研究センター長:野口
保
等による遺伝子機能の解析技術開発」
主 幹 研 究 員:諏訪
牧子
文部科学省
受容体の網羅的データベース(SEVENS)」
所在地:臨海副都心センター
人
員:19名(18名)
経
費:623,636千円(356,988千円)
科学研究費補助金「G タンパク質共役型
文部科学省
科学研究費補助金「遺伝子の発現情報に基
づく生命現象の因果性に関する統計解析」
概
要:
文部科学省
バイオインフォマティクスの中核拠点として、複雑
科学研究費補助金「自由エネルギー地形解
な生命現象を情報学の立場から総合的に解析し、ゲノ
析による異常プリオンタンパク質のフォールディング原
ム配列、タンパク質、細胞などの生体情報に基づく診
理の解明」
(114)
産業技術総合研究所
文部科学省
術、長鎖 RNA の二次構造予測技術でも世界唯一の基
科学研究費補助金「空間統計学を用いた生
盤技術、二次構造を考慮した高速な配列アラインメン
体情報システムを解析する手法の開発」
トでは世界最高速の基盤技術の開発に成功した世界的
文部科学省
に見ても高い水準の研究チームと自負している。さら
科学研究費補助金「細胞内ネットワークモ
に、RNA に特化したデータベースしては世界最大規
デルと分子計測データとの整合性評価法の開発」
模の機能性 RNA データベースを開発し、ウェット研
文部科学省
究者との連携に活用し多数の成果を出している。
科学研究費補助金「遺伝子発現の周辺確率
分布モデル構築」
研究テーマ:テーマ題目1
文部科学省
配列解析チーム
科学研究費補助金「嗅覚システムの統合的
(Sequence Analysis Team)
理解を目指した研究」
研究チーム長:ポール ホートン(Paul Horton)
文部科学省
科学研究費補助金「網羅的 mRNA 絶対定
(臨海副都心センター)
概
量のためのパイロプライマーの開発」
要:
次世代シーケンサーの普及を見越した研究を行う。
文部科学省
その基盤技術であるゲノムアラインメント法を改良し、
科学研究費補助金「グラフィカル・モデル
シーケンサーデータの誤読を修正するプログラムを開
に基づく生命情報からの因果・関連性解析」
発する。また、ゲノム転写制御領域の情報解析、タン
独立行政法人科学技術振興機構「グリッドコンピューテ
パク質アミノ酸配列からの立体構造・細胞内局在予測
ィング環境による生体高分子複合体の認識メカニズム研
での優れた技術的蓄積を生かし、配列に基づいた遺伝
子機能解析を行う。
究」
研究テーマ:テーマ題目1
独立行政法人科学技術振興機構「記号・代数計算に基づ
創薬分子設計チーム
く計算技法のシステムズ・バイオロジーへの適用方法論
(Molecular Modeling & Drug Design Team)
の確率と実証評価」
研究チーム長:広川
貴次
(臨海副都心センター)
独立行政法人科学技術振興機構「RLCP 分類の拡張、
相同反応解析システム及び酵素反応予測システムの開発、
概
要:
計算機を用いたタンパク質立体構造の理論的研究と
類似反応解析システムの構築」
創薬研究への応用に取り組んでいる。
具体的には、創薬標的タンパク質分子モデリング法
独立行政法人科学技術振興機構「タンパク質立体構造予
の開発、分子動力学
測法の開発、適用と酵素活性部位データベースの作成」
計算法によるフォールディング
解析、タンパク質立体構造に基づくリガンド結合予測
厚生労働省
科学研究費補助金
やケモインフォマティクス技術を融合したバーチャル
肝炎等克服緊急対策研
スクリーニングを展開している。
究事業「ジェノミックス技術を用いたウイルス性肝炎に
また、生命情報科学技術者養成コースを通じて、創
対する新規診断・治療法の開発」
薬インフォマティクスの人材養成にも取り組んでいる。
発
研究テーマ:テーマ題目2
表:誌上発表78件、口頭発表124件、その他11件
--------------------------------------------------------------------------分子機能計算チーム
RNA 情報工学チーム
(RNA Informatics Team)
(Molecular Function Team)
研究チーム長:光山
研究チーム長:福井 一彦
統泰
(臨海副都心センター)
概
(臨海副都心センター)
要:
概
機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス
要:
大規模計算応用技術を核に、タンパク質同士やタン
技術の研究開発に取り組んでいる。
パク質と他生体分子(化合物・糖鎖等)の複合体計算
新規機能性 RNA の発見と、機能推定のための情報
や立体構造予測に基づく生体高分子の機能予測技術を
処理技術の確立を目標として、基盤技術の開発から応
開発している。
用研究まで、幅広い研究テーマを掲げて活動している。
RNA 二次構造予測技術では世界最高精度の基盤技
また PC クラスタで世界最高速性能を示した Magi
クラスタ、AIST スーパークラスタ、BlueProtein シ
(115)
研
究
配列情報に基づいた、遺伝子発現と産物の機能解析
ステムなど、これまで世界最高水準のコンピュータを
研究内容:
用いてバイオインフォマティクス研究を推進してきた
二次構造を考慮した高速・高精度な RNA 配列情報解
技術的蓄積を生かし、大規模並列計算機を有効活用し
析とゲノムアラインメント、タンパク質の局在化シグナ
応用技術へと繋がる開発を進めている。
ル解析、次世代シーケンサーのデータ処理技術等を開発
研究テーマ:テーマ題目2
すると共に、転写制御機構の解析、新規機能性 RNA 発
細胞機能設計チーム
見等、ゲノムとプロテオーム情報を工学的制御の観点か
(Cell Function Design Team)
らの解析を行う。
研究チーム長:藤渕
航
RNA 情報工学チーム
(臨海副都心センター)
概
機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス技
要:
術の開発、ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測、
細胞のシステムをターゲットとする新しいバイオイ
機能性 RNA データベースの構築バイオインフォマティ
ンフォマティクス技術の開発を行っている。
細胞情報統合データベース構築のため、細胞や細胞
クス技術によって機能性 RNA を解析し、ゲノム情報制
の部品をカタログ化し、そこから細胞の機能情報を抽
御機構の工学的視点からの解明によって産業技術開発に
出するデータマイニング手法や生体モデルの機械学
貢献する。
習・予測をする手法を開発している。また、年々増大
革新的な RNA 情報解析技術の開発、新規 RNA 遺伝
するデータ量に対応するため、加速ボードによるバイ
子の発見と機能予測、および機能性 RNA 情報基盤の構
オ計算の高速化を行い、これらの技術を駆使した細胞
築に取り組を実施項目として、NEDO「機能性 RNA プ
分化・転換制御技術による創薬開発を目指している。
ロジェクト」(実施期間:H17年度~H21年度)を中心
研究テーマ:テーマ題目3
に研究開発を展開している。プロジェクト担当テーマは
以下の通り:
・機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス
生体ネットワークチーム
(Biological Network Team)
研究チーム長:堀本
技術の開発
・ゲノム配列からの機能性 RNA の網羅的予測
勝久
・機能性 RNA データベースの構築
(臨海副都心センター)
概
要:
創薬支援、副作用予測等に実応用可能な生体ネット
配列解析チーム
ワーク解析技術を開発している。
次世代シーケンサーの普及を見越した研究を行う。そ
ネットワーク構造推定・動態解析技術を融合させ、
の基盤技術であるゲノムアラインメント法を改良し、シ
計測データからのハイスループットなネットワーク構
ーケンサーデータの誤読を修正するプログラムを開発す
造推定・動態解析を行う総合的な技術を開発している。
る。また、ゲノム転写制御領域の情報解析、タンパク質
特に、時間や環境に応じて変化するネットワーク構造
アミノ酸配列からの立体構造・細胞内局在予測での優れ
の追跡が可能な解析技術を開発し、近年急速に進歩し
た技術的蓄積を生かし、配列に基づいた遺伝子機能解析
ている実験計測技術が生産するデータの解像度に応じ
を行う。
た解析を実行できるように努めている。
研究テーマ:テーマ題目3
平成20年度進捗状況は以下の通り。
---------------------------------------------------------------------------
RNA 情報工学チーム
機能性 RNA に特化したバイオインフォマティクス技
[テーマ題目1]ゲノム情報解析(機能性 RNA 情報解
析
転写制御の情報解析)
[研究代表者]光山
統泰(RNA 情報工学チーム)
ポール
[研究担当者]光山
度を達成した。予測理論の構築に加えて、実証プログラ
ム CentroidFold の開発に成功した(Hamada et al.)。
ホートン(配列解析チーム)
統泰、津田
宏治、木立
ポール ホートン、富井
尚孝、
プログラムはフリーソフトウェアとして一般に配布して
健太郎、
マーティン フリス、大里
今井
術として、RNA 二次構造予測技術としては世界最高精
おり、さらにより広い利用者が容易に利用できるよう、
ウェブサーバーとしても公開している(Sato et al.)。
直樹、
機能性 RNA データベースは検索システムやデータベ
賢一郎、エドワード ウィジャヤ
(常勤職員5名、他21名)
ースの構造に改良を加え、より大規模な配列情報を扱う
[研 究 内 容]
ように改良した(Mituyama et al.)。このデータベース
研究目的:
を中心としたウェット研究者との共同研究も成果を挙げ
新規機能性 RNA の発見と機能予測
て お り ( Sasaki et al., Azuma-Mukai et al.,
(116)
産業技術総合研究所
Kawamura et al.)、現在も複数進行中である。
Imai, K., Gromiha, M.M., Horton, P.: “Mitochondrial
β-Barrel Proteins, an Exclusive Club?”, Cell, 135(7),
pp.158-159 (2008).
Hamada, M., Kiryu, H., Sato, K., Mituyama, T., Asai,
K.: “rediction of RNA secondary structure using
generalized centroid estimators” ,Bioinformatics,
(4) pp. 465-473
Frith, M. C., Park, Y., Sheetlin, S. L, Spouge, J. L.:
25
“The whole alignment and nothing but the alignment:
(2009).
the problem of spurious alignment flanks”, Nucleic
Acids Research, 36(10), pp.5863-5871 (2008).
Sato, K., Hamada, M., Asai, K., Mituyama, T.,
CENTROIDFOLD: a web server for RNA secondary
structure prediction, Nucleic Acids Res, (2009) (in
Frith, M. C., Saunders, N. F., Kobe, B., Bailey, T. L.:
press).
“Discovering
Sequence
Motifs
with
Arbitrary
Insertions and Deletions”, PLoS. Computational
Biology, 4(5), e1000071 (2008).
Mituyama, T., Yamada, K., Hattori, E., Okida, H.,
Ono,. Y., Terai, G., Yoshizawa, A., Komori, T., Asai, K.:
“Functional RNA Database 3.0: databases to support
Horton, P, Szymon, K., Frith, M.: “DisLex: a
mining and annotation of functional RNAs.” Nucleic
Transformation
Acid Research, 37(Database issue), D89-92 (2009).
Construction”, The workshop on Knowledge,
Language, and Learning in Bioinformatics, KLLBI,
Sasaki, YT., Ideue, T., Sano, M., Mituyama, T., Hirose,
pp.1-11 (2008)
T.: “MENepsilon/beta noncoding RNAs are essential
[分
for structural integrity of nuclear paraspeckles.”,
[キーワード]機能性 RNA、次世代シーケンサー、配
野
for
Discontiguous
列解析
[テーマ題目2]分子情報解析
(2009).
(複合体立体構造予測
Azuma-Mukai, A., Oguri, H., Mituyama, T., Qian, Z.
Asai,
Array
名]ライフサイエンス
Proceedings of The National Academy of Sciences of
The United States of America, 106 (8) pp.2525-30
R.,
Suffix
K.,
Siomi,
H.,
Siomi,
M.
化合物バーチャ
ルスクリーニング(VS))
C.:
[研究代表者]広川
貴次(創薬分子設計チーム)
“Characterization of endogenous human Argonautes
福井
一彦(分子機能計算チーム)
and their miRNA partners in RNA silencing”,
[研究担当者]広川
Proceedings of The National Academy of Sciences of
The United States of America, 105(23), pp.7964-
福井
一彦、マイケル
関嶋
政和、清水
佳奈、根来
航、
7969 (2008).
横田
恭宣、山田
真介、廣瀬
修一、
佐藤
大介、北山
健
Kawamura, Y., Saito, K., Kin, T., Ono, Y., Asai, K.,
[研 究 内 容]
“Drosophila
研究目的:
small
RNAs
bind
千恵、亀田
倫史、
グロミハ、
(常勤職員6名、他30名)
Sunohara, T., Okada, T. N., Siomi, M. C., Siomi, H.:
endogenous
貴次、本野
to
Argonaute 2 in somatic cells”, Nature, 453, pp.793-
構造変化を含む複合体構造予測技術の開発
796 (2008).
化合物 VS フォーカスドライブラリ構築
研究内容:
これまでに開発してきたタンパク質構造・機能予測技
配列解析チーム
従来のプログラムより優れた性能を持つゲノムアライ
術、分子シミュレーション技術等に分子設計技術を融合
ンメントツールの改良を行った(LAST,Frith et al.投
させ、創薬標的タンパク質・変性疾患関連ペプチド・糖
稿中)。それに関連し、局所アラインメントの正確の範
鎖に特化した高精度な創薬支援技術を開発する。そのた
囲を示す統計処理(Frith et al. NAR 2008)、ギャップ
め、大規模計算技術によるタンパク質同士やタンパク質
を含むモチーフの発見アルゴリズム(Frith et al.)と
と他生体分子(核酸・化合物・糖鎖等)との複合体立体
Spaced Suffix Array の新規アルゴリズムを開発した
構造予測法を開発する。
(Horton et al. KLLBI 2008)。タンパク質の解析では、
創薬分子設計チーム
タンパク質構造・機能予測システム、分子シミュレー
ミトコンドリア外膜βバレル・タンパク質の新説を提唱
した(Imai et al. Cell 2008)。
ション技術等の基盤技術に分子設計技術を融合させ、創
薬標的タンパク質・変性疾患関連ペプチドに特化した高
(117)
研
究
精度な創薬支援技術の開発と実用を目標とする。創薬標
S., Aburada, M., Miyamoto, K.: “Structure activity
的は、X 線結晶解析が困難なものを中心に、タンパク質
relationships of quinoxalin-2-one derivatives as
単体標的からタンパク質-タンパク質複合体標的へと年
Platelet-Derived
次発展させる。また、立体構造情報に基づいてタンパク
(PDGF-beta R) inhibitors, derived from molecular
質単体・複合体の機能を制御する化合物を計算機上でス
modeling”, Chemical & Pharmaceutical Bulletin,
クリーニングしフォーカスドライブラリとしてデータベ
56(5), pp.682-687 (2008).
Growth
Factor-beta
Receptor
ース化する。
NEDO「化合物等を活用した生物システム制御基盤
・Katada, S., Hirokawa, T., Touhara, K.: “Exploring
技術開発」(実施期間:H18年度~H22年度)を中心に
the Odorant Binding Site of a G-Protein-Coupled
研究開発を展開する。NEDO プロジェクトでの担当テ
Olfactory Receptor”, Current Computer-Aided Drug
ーマは以下の通り。
Design, 4(2), pp.123-131 (2008).
・タンパク質複合体構造予測
・ Hirokawa, T.; “Protein structure-based virtual
・化合物バーチャルスクリーニング技術開発および実
screening using concavity shape fingerprints”, Asia
用化
Hub for e-Drug Discovery 2008, Tokyo, 16th Oct.
・フォーカスドライブラリおよび構造データベース構
築
2008.
・ヒスタミン H4受容体拮抗作用を有する4-アミノベン
分子機能計算チーム
大規模計算応用技術を核に、立体構造の計算・予測に
ゾフロピリミジン化合物、広川貴次、竹村俊司、柴崎
基づく生体高分子の機能予測技術を開発する。PC クラ
学、石渡博之、特願2008-111493、2008/04/22
スタで世 界最 高速性能 (2001年導入 当時 )を示した
magi cluster、AIST Super Cluster(2004年導入)、
・ヒスタミン H4受容体拮抗作用を有する5-アミノフタ
Blue Protein(2005年導入)など、常に世界最高水準の
ラジノキナゾリノン化合物、広川貴次、竹村俊司、柴
コンピュータを用いてバイオインフォマティクス研究を
崎学、石渡博之、特願2008-138554、2008/05/27
推進してきた技術的蓄積を生かし、現有する大規模並列
・ヒスタミン H2受容体拮抗作用を有する2-フェニルイ
計算機を有効活用するための応用技術開発を行う。
ンドール化合物、広川貴次、竹村俊司、柴崎学、石渡
平成20年度進捗状況は以下の通り。
博之、特願2008-250925、2008/09/29
創薬分子設計チーム
・ヒスタミン H2受容体拮抗作用を有するピロロキノリ
(1) ケミカルバイオロジーPJ におけるインシリコスク
リーニング
ン化合物、広川貴次、竹村俊司、柴崎学、石渡博之、
本年度の成果として、インシリコ解析によるリウマ
特願2008-251383、2008/09/29
チ性疾患を標的とした新規4活性化合物の導出、抗体
ペプチド・天然物の低分子化合物化を実現、また東京
分子機能計算チーム
都の支援を受け、感染研、臨床研と共同で、新型イン
大規模計算機やアクセラレータを用いたハイブリッド
フルエンザに対する治療薬開発にもインシリコ解析を
型クラスタ計算機による、タンパク質-タンパク質間の
実施するなど NEDO ケミカルバイオロジーPJ のア
ドッキング計算のための新規ソフトウェアの開発に成功
クティビティに貢献した。
し、この開発したハードウェアとソフトウェア利用によ
(2) インシリコスクリーニング基盤技術の開発
る高速タンパク質相互作用計算を実施した
分子動力学計算に基づく新しいドッキング法につい
(Tsukamoto, K., et al. and Yoshikawa, T., et al.)。ま
て論文を発表するした(Mori et al., 2008)。また本
た機械学習法を用い膜タンパク質のトランスポータを予
手法をインシリコスクリーニングに拡張する新しい手
測するアルゴリズム開発やデータベースの構築を行って
法も提案し、日中韓創薬ワークショップにて発表した。
いる(Gromiha, M.M., et al.)。
(3) 実験グループとの連携による創薬標的タンパク質を
この他に機能予測技術開発とし、柔軟性の高いタンパ
対象としたインシリコ解析の実施と検証
ク質のディスオーダー領域を長・短両方のディスオーダ
これまで成熟させてきた GPCR モデリング構造技
ーにバランス良く対応する機械学習法の開発を行い、大
術を用いて4件の新規化合物の特許出願として成果を
規模な機能解析やタンパク質複合体解析に向けて糖鎖解
挙げることができた(企業との共同出願)。
析(Suzuki, H., et al.)などを実施している。
・Mori, Y., Hirokawa, T., Aoki, K., Satomi, H., Takeda,
Tsukamoto, K., Yoshikawa, T., Hourai, Y., Fukui, K.,
(118)
産業技術総合研究所
Akiyama,
affinity
堀本
evaluation and prediction system by using protein-
Y.:
“The
development
of
an
[研究担当者]藤渕
勝久(生体ネットワークチーム)
航、長野
希美、Jean-Francois、
protein docking simulations and parameter tuning”,
Kenichi Pessiot、平木
Computational Biology and Chemistry: Advances and
Applications, 2, pp.1-15 (2009).
千葉
啓和、吉本
永家
聖、杉原
堀本
勝久、富永
Yoshikawa, T., Tsukamoto, K., Hourai, Y., Fukui, K.:
油谷
幸代、中津井
“Improving the Accuracy of an Affinity Prediction
孫
Method by Using Statistics on Shape Complementarily
[研 究 内 容]
between Proteins.”, Journal of Chemical Information
研究目的:
and Modeling, 49, pp.693-703 (2009).
愛子、
瑛梨、幡野
稔、中条
晶子、
裕子、
大介、福田
賢一郎、
雅彦、森岡
涼子、
富艶(常勤職員6名、他23名)
細胞情報統合データベースに基づいた細胞の構造と機
能予測法の開発
Yoshikawa, T., Tsukamoto, K., Hourai, Y., Fukui, K.:
生体ネットワーク構造変化の多面的予測と表現型変化
“Parameter tuning and evaluation of an affinity
の分子メカニズム解明
prediction using protein-protein docking” , Proceedings
of the 10th WSEAS International Conference on
Mathematical Methods and Computational Techniques
in Electrical Engineering, pp.312-317 (2008).
研究内容:
遺伝子発現・代謝・シグナル伝達等の細胞内ネットワ
ークを工学的な技術に基づいて解析する。網羅的なヒト
細胞データベースを構築し、細胞の形態、機能、分化転
換に関する情報を遺伝子発現情報と融合させた統合的、
Gromiha, M. M., Yabuki, Y., Suresh, M. X., Thangakani,
包括的な細胞情報解析環境を開発する。機能未知の生体
A. M., Suwa, M., Fukui, K.: “TMFunction: database for
分子を含む細胞内ネットワークを推定し、新規な創薬標
functional residues in membrane proteins”, Nucleic
的の発見、副作用予測を支援する技術を開発する。
Acids Research, 37 (Database issue), pp. D201-204
細胞機能設計チーム
(2009).
細胞の違いを統合的、系統的に整理・分類したデータ
Gromiha,
“Bioinformatics
ベースを開発する。そのために必要となる細胞・遺伝子
approaches for understanding and predicting protein
発現データ・代謝データ統合化技術、細胞画像解析技術
folding
M.
M.,
rates”,
Selvaraj,
Current
S.:
Bioinformatics
開発から、遺伝子発現モジュール探索技術、細胞種依存
,3,pp1-8
型遺伝子発現ネットワーク推定技術、細胞挙動・分化解
(2008).
析技術などの基礎的解析技術を開発する。
Suzuki, H., Kameyama, A., Tachibana, K., Narimatsu,
要素技術から実用技術の開発を中心に以下の研究開発
H., Fukui, K.: “Computationally and Experimentally
を展開する。
Derived General Rules for Fragmentation of Various
・ヒト細胞情報統合データベースの開発
Glycosyl Bonds in Sodium Adduct Oligosaccharides”,
・酵素反応データベースの開発
Analytical Chemistry, 81(3), pp.1108-1120 (2009).
・細胞挙動・分化に関わる遺伝子発現モジュールの動
態解析技術の開発
Suzuki, H., Yamagaki, T., Tachibana, T., Fukui, K.:
・細胞依存型疾患遺伝子ネットワーク探索技術
“Fragmentation of Lewis-Type Trisaccharides in the
Gas Phase: Experimental and Theoretical Studies”,
生体ネットワークチーム
International Journal of Mass Spectrometry, 278,
創薬支援、副作用予測等に応用できる生体ネットワー
pp.1-9 (2008).
ク解析技術を開発する。ネットワーク構造推定・動態解
[分
析技術を融合させ、計測データからのハイスループット
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]分子モデリング、分子動力学計算、バー
なネットワーク構造推定・動態解析を行う総合的な技術
チャルスクリーニング、分子設計タンパ
を開発すると共に、ネットワーク構造変化を追跡する解
ク質相互作用、タンパク質ディスオーダ
析技術を開発する。具体的には、
・既知ネットワーク構造と特異的条件下で計測された
ー、糖鎖
データとの照応による活性化ネットワーク構造推定
[テーマ題目3]細胞情報解析(遺伝子現情報解析
技術の開発
生
・特異的条件下での計測データから状態変化要因とな
体ネットワーク情報解析)
[研究代表者]藤渕
るネットワーク構造推定法の開発
航(細胞機能設計チーム)
(119)
研
究
Nishino, R., Honda, M., Yamashita, T., Takatori, H.,
・計測不能な分子間関連性推定のための隠れ変数を含
Minato, H., Zen, Y., Sasaki, M., Takamura, H.,
むネットワーク動態解析法の開発
Horimoto, K., Ohta, T., Nakanuma, Y., Kaneko, S.:
方法論:
グラフィカルモデル、グラフィカル連鎖モデル、経路
“Identification of novel candidate tumour marker
整合性アルゴリズム、記号計算、微分方程式系、代数方
genes for intrahepatic cholangiocarcinoma.”, Journal
程式系、数値最適化
of Hepatology, 49, pp.207-216 (2008).
平成20年度進捗状況は以下の通り。
Hayashida, M., Sun, F., Aburatani, S., Horimoto, K.,
細胞機能設計チーム
Akutsu, T.: “Integer Programming-based Approach to
ヒト正常細胞情報データベース CELLPEDIA を開発
Allocation of Reporter Genes for Cell Array Analysis.”,
し、細胞分類、遺伝子発現、細胞画像、論文データなど
Int. J. Bioinformatics Research and Applications”,
を統合したシステムを開発した。既存の細胞内酵素反応
4(4), pp.385-399 (2008).
データベースの登録データ数の拡張を行った。既開発済
みの大規模遺伝子発現データ遺伝子モジュール網羅的探
Saito, S., Aburatani, S., Horimoto, K.: “Network
索システム SAMURAI ソフトウェアの販売を開始した。
evaluation
また、時系列データから遺伝子モジュール探索可能とす
structure with the measured data.”, BMC Systems
る基礎技術を開発した。科研費プロジェクト「ライフサ
Biology, 2(84), pp.1-14 (2008).
ーベイヤ」によるシーケンサー用高性能プライマーデザ
[分
インを行うため、FPGA 加速ボードと組み合わせ最適
[キーワード]データベース、データマイニング、遺伝
野
from
the
consistency
of
the
graph
化アルゴリズムに基づく技術のプロトタイプを完成した。
名]ライフサイエンス
子モジュール、酵素、ネットワーク、文
献情報、遺伝子発現、パスウェイ解析、
Fujibuchi, W., kim, H., Okada, Y., Taniguchi, T., Sone,
H.:
“High-performance
gene
expression
時系列解析、記号計算
module
analysis tool and its application to chemical toxicity
[テーマ題目4]情報基盤統合
data”, Methods in Molecular Biology (in press).
[研究代表者]浅井
潔(研究センター長)
[研究担当者]浅井
潔、野口
保、諏訪
牧子、
光山
統泰、ポール
細胞分化・発生など形態学的観察や細胞周期・ストレ
広川
貴次、福井
一彦、藤渕
ス応答など生化学・分子生物学的実験結果など、細胞の
堀本
勝久、田代
俊行
経時的変化がよく知られる。これらの経時変化に対応し
(常勤職員8名、他2名)
生体ネットワークチーム
た、細胞内分子ネットワーク構造の変化を追跡するため
[研 究 内 容]
に、3つの解析法を開発した。
研究目的:
ホートン、
航、
センター内部のソフトウェア、データベース(DB)
(1) 異なる条件下の細胞で計測された情報を利用して、
を最新の情報技術で統合化
細胞内及び細胞間の分子ネットワークを推定する方法
を、グラフィカル連鎖モデルと経路整合性アルゴリズ
バイオインフォマティクスの要素技術を結合したパイ
ムとの組み合わせにより開発し、肝癌進展過程におけ
プライン(PL)を構築、外部 DB を含む知的基盤を統
る肝硬変から肝癌への進展の原因となる遺伝子ネット
合化して安全にシームレスに利用できる環境を実現する。
ワーク候補を推定した。
研究手段:
(2) 特定条件下の細胞で計測された情報を利用して、そ
研究センター内、産総研内、国内、海外に存在するバ
の条件下で特異的に活性化している分子ネットワーク
イオインフォマティクス関連の有用データベース・解析
を同定する方法を、ガウシアン・ネットワークと極値
ソフトウェアを、グリッド技術を用いてシームレスに結
分布との 組み 合わせに より 開発し、 刺激 に応じた
合させた「生命情報統合システム」の開発に、センター
MAPK パスウェイの活性化部分ネットワークの同定
をあげて取り組む。最新の情報技術と大規模計算手法を
を行った。
駆使し、関連する情報同士を単にリンクでつなげた情報
(3) 生きている細胞において計測される情報を利用して、
網ではなく、利用者が求める情報をダイレクトに提供す
活性化している分子ネットワークを同定する方法を、
る、診断、創薬支援、バイオプロセス開発に直接応用で
代数算法と遺伝的アルゴリズムとの組み合わせにより
きるシステムを目指す。本システムに必要な新規なデー
開発し、生細胞における応答主要ネットワークを推定
タベース・ソフトフェアの開発は各研究チームが並行し
した。
て行い、順次統合する。
交付金と文科省「ライフサイエンス分野の統合データ
(120)
産業技術総合研究所
ベース整備事業」(実施期間:H17年度~H22年度)の
その結果より保存性が高い残基を表示する。また、二
予算による技術開発を中心に研究開発を展開する。
次構造予測結果も同様にマルチプルアラインメントし、
方法論:
保存性が高い二次構造を表示する。本ワークフローも
(1)、(2)と同様に Grid にて効率的に分散処理を行う。
平成19年度にグリッドを採用して構築した産総研内の
結果は立体構造が存在する場合はその上に表示する。
システム環境において「生命情報統合システム」のプロ
トタイプを開発した。平成20年度は、ライフサイエンス
[分
野
名]ライフサイエンス
統合データベースセンター(DBCLS)と連携を取りな
[キーワード]ワークフロー、統合 DB、Web サービス
がら、プロトタイプを拡張し、国内外の DB と連携して
⑲【生産計測技術研究センター】
「生命情報統合システム」を発展させる。
(Measurement Solution Research Center)
(存続期間:2007.8.1~2010.7.31)
平成20年度進捗は以下の通り。
(1) タンパク質構造情報ワークフロー
(Protein Structure Information Workflow)
研 究 セ ン タ ー 長:五十嵐
副研究センター長:小柳
本ワークフローは、構造に関する予測プログラム等
一男
正男
を Grid により効率的に分散処理し、非分散時の1/5
以下の処理時間で行うものである。ユーザーとしては、
所在地:九州センター
立体構造未知のタンパク質に関し、何らかの構造上の
人
員:25名(24名)
ヒントとなる情報を必要とする実験研究者等を想定し
経
費:401,055千円(246,682千円)
概
要:
ている。本ワークフローは平成20年8月29日に構築が
終了し、プロジェクト関係者に限定し公開した。また、
本ワークフローは、次バージョンワークフローへの一
計測技術は、製品開発、生産、市場化、使用(及び
部として位置付け構築した。ユーザーからアミノ酸配
廃棄)の各局面で利用され、それぞれの評価の基盤と
列を受取り、二次構造予測、埋れ残基予測、フォール
なっている。中でもわが国のものづくりでは生産局面
ド認識、ディスオーダー予測を Grid にて分散処理を
の計測が重要な役割を果たしており、その高機能化・
行い、結果を出力する。
効率化・迅速化などが常に求められている。本研究セ
ンターは、高度な計測技術の開発に基づく安全・安心
(2) タンパク質アノテーションワークフロー
(Protein Annotation Workflow)
の確立の視点に立って、現場計測課題を体現・発信す
本ワークフローは、立体構造未知のタンパク質に関
る企業の計測技術の専門家(マイスターと呼び、マイ
し、構造及び機能のヒントとなる情報を幅広く実験研
スターを活用するシステムをマイスター制度と呼ぶ)
究者等に提供することを目的としており、(1)のタン
との連携(タスクフォース)を通して生産現場の多様
パク質構造情報ワークフローを発展・拡張したもので
な計測課題を的確に分析し、産総研の技術ポテンシャ
ある。(1)と同様に各種プログラム等を Grid により
ルをオンタイムで適用していくことを目指す新しいタ
効率的に分散処理し、従来と比し短時間で結果を表示
イプの研究開発を実施している。
する。本ワークフローは、平成20年12月27日に構築が
そのため本研究センターでは、先端材料技術に支え
終了し一般公開した。ユーザーからアミノ酸配列を受
られたセンサ開発およびセンシング技術を核とした上
取り、二次構造予測、埋れ残基予測、フォールド認識、
で、産総研全体の計測技術ポテンシャルをもベースと
ディスオーダー予測、膜タンパク質オールベータ・ベ
し、それらを発展・統合化させることにより生み出さ
ータシート予測、細胞内局在予測を Grid にて分散処
れる新たな計測技術を生産現場(=製造プロセス、製
理を行う一方、データベース検索及び疎水性予測の実
品検査、及び設備メンテナンス等)へ適用することで
行を他のサーバへ依頼し結果を取得後、全ての結果を
産業界における課題解決に取り組み生産現場の生産性
ユーザーが解析し易いよう配置し出力する。
向上と安全・安心に貢献することをミッションとして
いる。
(3) タンパク質比較情報ワークフロー
(Protein Comparative Information Workflow)
本研究センターで実施する研究開発は、第2種の基
本ワークフローは、相同なタンパク質を比較するこ
礎研究を中核として第1種の基礎研究を含みつつ製品
とで保存部位等構造上重要な部位を表示し、実験研究
化研究へ展開される本格研究であり、課題解決に向け
者等に提供することを目的としている。本ワークフロ
て以下の3項目を主題として取り組む。
ーは、平成21年3月31日に構築が終了し一般公開した。
①
新たな計測技術開発をベースとした問題解決。
ユーザーからアミノ酸配列を受取り、相同タンパク質
②
マイスターと連携し、これまで醸成してきた研究
を検索、その結果からユーザーがいくつかのタンパク
ポテンシャルの具体的な取り組みと技術基盤情報を
質を選択し、マルチプルアラインメントを実行する。
生産現場に提供することによる問題解決。
(121)
研
③
究
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
問題解決事例を蓄積して、必要となる種々の計測
分析技術や計測機器のデータベースの形成。
業技術研究助成事業
本研究センターでは、生産現場の個々の問題から抽
知用自立応答型センサ素子の創製」
産
「電磁環境適合性を有する圧力検
出された共通的な課題に対する計測技術開発をベース
として問題解決を図るシステム開発グループ(応力発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
光技術、アダプトロニクスの2チーム)と計測技術の
業技術研究助成事業
統合化及びデータベースなどの基盤情報の提供をベー
な自立型光触媒システムの創製」
産
「運動を検知して駆動する革新的
スとしてマイスターと連携し個別問題に対する最適な
問題解決を図るシステム基盤グループ(表面構造計測、
独立行政法人科学技術振興機構
光計測ソリューション、プロセス計測、環境計測、計
安全管理ネットワークシステムの創出」
「応力発光体を用いた
測基盤情報の5チーム)とに大別し、計測技術の立場
からそれぞれの特徴を活かして生産現場での解決が困
独立行政法人科学技術振興機構
「ソリューションプラ
難となっている種々の問題に取り組んでいる。
ズマ中ナノ微粒子析出のその場計測」
(1) システム開発(センシング技術およびシステム化
独立行政法人科学技術振興機構
技術の高度化)
システム開発 G は応力発光体などの力・光・電
「プラズマ処理装置に
おけるウェハ上異常放電の検出技術の開発」
気のセンシング技術の開発と、それらの多様な現場
への適用技術開発を担い、産業構造物全体の危険箇
独立行政法人科学技術振興機構
所を応力発光体を用いたセンサによって包括的にセ
オ光受容素子」
「高感度・高密度バイ
ンシングし、それらの異常・危険を的確に早期予知
する革新的な安全管理システムの開発、及びそれを
文部科学省
支える基盤技術を含めてセンシング技術の高度化及
における動的応力診断ツールを目指した応力発光微粒子
科学研究費補助金
「ナノ・マイクロ領域
びシステム技術の高度化などの研究を実施する。
の研究」
(2) システム基盤技術(マイスター制度対応ソリュー
文部科学省
ション技術開発)
システム基盤 G は、生産計測に必要となる「対
科学研究費補助金
「フィルム状筋動セン
サによる意志抽出に関する研究」
象物の類型化」、「対象物の前処理」などの各技術を
養成しながらマイスターと連携し、半導体製造ライ
文部科学省科学研究費補助金
「スラブ光導波路分光法
ンで問題となっている、プラズマ異常放電の検知技
を用いたタンパク質の電子移動反応のその場測定」
術をはじめ、各種製造現場における欠陥・異物類の
検出・低減・防止など、生産計測技術の開発・適用
財団法人福岡県産業・科学技術振興財団
に関わる研究を実施する。さらに、生産活動におけ
業
IST 産学官事
「フルメタル水素配管接合システムの研究開発」
る製品・サービスの質及びそのリスク評価の信頼性
を限られたコスト・時間の中で最大限に高めるため
独立行政法人科学技術振興機構
の計測技術基盤の構築と信頼性をコスト・時間の観
プラザ福岡
点から評価したデータベースや関連する基盤的知識
開発」
JST イノベーション
「NMR による食品中の骨分の検出技術の
の蓄積を図る。
発
センターとしての成果目標は、以下の通りである。
①
表:誌上発表43件、口頭発表87件、その他18件
---------------------------------------------------------------------------
各種構造物の安全管理システムの創出に向けたリ
応力発光技術チーム
バイス化およびそれらのセンサノード化の実現と実
(Advanced Integrated Sensing Team)
証。
研究チーム長:徐
②
アルタイム応力異常検出デバイスや応力履歴記録デ
超男
マイスター企業契約を2社以上と締結し、製造ラ
(九州センター)
インにおける技術的課題の解決事例の1件以上の実
概
証。
要:
圧光計測・診断の基盤技術として、応力発光体の高
---------------------------------------------------------------------------
効率化、プロセッシング、塗料化、薄膜化、ハイブリ
外部資金:
ッド化、デバイス化などの基盤的研究の推進と共に、
経済産業省
地域イノベーション創出研究開発事業「高
応力発光体の規格化や、標準化、発光特性のデータベ
品質自動車めっき鋼板用、世界初大型セラミックスロー
ース化を行い、応力発光技術の普及、利用拡大を図る。
ルの開発」
具体的に以下の技術を行う。
(122)
産業技術総合研究所
高効率化を目指した短波長応力発光体の開発につい
具体的には、応力発光センサや超音波センサなどの
ては、発光波長は青色、さらに紫外領域まで発光する
各種センシングデバイスと、ネットワーク、適応的信
応力発光体を開発し、発光効率の向上を実現する。ま
号処理技術などの各要素技術の研究開発とインテグレ
た、短波長応力発光体の光エネルギーを化学的に利用
ーションによってシステムを構築し、第一次から第三
するシステムの構築を検討し、応力履歴の記録システ
次産業に至るまでの幅広い産業におけるセンシング課
ムを創出するとともに、光触媒とのハイブリッド化な
題等への適用・対応を行う。
さらに当研究チームは、各種の産学官連携活動に加
どによる利用拡大を図る。
圧光計測のデバイス化を目指して、オールセラミッ
え、地域における複数の企業や大学及び公的研究機関
クス応力発光薄膜の合成技術、数十 nm の応力発光微
との共同研究を積極的に展開し、地域社会の活性化を
粒子の製造技術、応力発光体超微粒子の表面処理技術、
念頭に研究を加速する。
研究テーマ:応力発光体を用いた安全管理ネットワーク
有機・無機ハイブリッド化技術、コーティング技術を
システムの創出、超音波エコーによる柔軟
検討し、新規な圧光デバイスを開発する。
応力発光の計測技術については、2次元画像解析、
構造物内部の粘弾性分布センシング、高度
リモート光検出技術、応力発光の定量法を開発し、応
適応型ニューラルネットワークの研究開発
力発光計測システム技術の構築を行う。さらに実環境
とその応用展開、生体意思抽出、ステンレ
フィールドへの展開の中で、応力モニタリング安全管
スパッキン技術の解析・評価・水素適用
理ネットワークシステム、および製品設計を支援する
表面構造計測チーム
ための設計支援モデリングシステムの実現を目指す。
(In-situ Sensing and On-site Monitoring Team)
応力発光体の規格化や、標準化、発光特性のデータ
研究チーム長:松田
ベース化については、応力発光体の発光挙動並びに発
直樹
(九州センター)
光機構の解明と平行して、種々の応力印加形式に対す
概
る発光強度の関係をデータベース化すると共に、単一
要:
マイスター制度における共同研究の可能性を検討し、
応力発光粒子に極めて微小な負荷応力と発光強度との
関係を定量的に把握することができる微小応力計測法
マイスター制度に関わる計測技術や測定方法に関わる
の開発を行う。これらの結果を元にして、応力発光材
データベース構築に着手する。従来から行っているス
料の規格化と応力発光計測の標準化を進め、新規な自
ラブ光導波路分光法、蛍光性ナノ粒子等の光利用その
立応答型応力計測技術を確立する。
場計測技術に関して原理から理解し世界に先駆けた研
究を行うことでより一層の高機能化と高感度化を行い、
研究テーマ:応力発光体を用いた安全管理ネットワーク
システムの創出、運動を検知して駆動する
特に表面、界面、ナノ物性を積極的に利用した計測技
革新的な自立型光触媒システムの創製、ナ
術の確立に努める。これらの測定法を利用し、①製品
ノ・マイクロ領域における動的応力診断ツ
の品質不良や性能低下の原因となる製造ライン中に存
ールを目指した応力発光微粒子の研究、電
在する異物や有害物質を製品内の有効成分と区別して
磁環境適合性を有する圧力検知用自立応答
迅速に検出できる新しいセンサ
型センサ素子の創製、高感度・高密度バイ
セスにおける有害菌類検査方法や水素ガス漏れ検知方
②食品製造加工プロ
法、等を開発する。
オ素子、応力発光超微粒子に関する研究、
研究テーマ:マイスター制度に関わる研究・開発、スラ
応力発光体の高効率化、センサの高度化、
ブ光導波路分光法を用いた固液界面におけ
応力可視化システム
る高感度その場測定法の開発、蛍光性ナノ
アダプトロニクスチーム
粒子を用いた有害菌類高感度測定法の開発、
(Adaptronics Technology Team)
ソリューションプラズマを用いたナノ微粒
研究チーム長:上野
子製造、水素ガス検知システムの開発
直広
(九州センター)
概
要:
プロセス計測チーム
当研究チームが提唱する「アダプトロニクス」とは、
(Process Measurement Team)
研究チーム長:秋山
材料、センサ、アクチュエータ、ネットワーク、信号
処理、制御技術などの IT 技術を含めた要素技術を集
守人
(九州センター)
概
積・結合し、環境・対象への高度な適応能力を有する
要:
システムを構築する技術である。「機械の知能化」を
高結晶配向性窒化アルミニウム薄膜を検知材料に使
目指す「メカトロニクス」と対比して、「アダプトロ
用した、高温用アコースティックエミッション
ニクス」は「システムの適応化」を目指すものである。
(AE)センサおよび燃焼圧センサの試作を行い、そ
(123)
研
究
れぞれのセンサの基本性能を明らかにし、実証(模
スや材料の設計、研究開発の効率化に貢献することを
擬)試験などを通して、実用化に向けた材料選択、構
目的として、熱力学平衡計算ソフト開発やデータベー
造設計および課題抽出を行う。また、透過型電子顕微
ス構築を行い、熱力学に関する国内知的基盤の整備を
鏡などを用いた断面観察などを行い、複合窒化物薄膜
行う。
の高圧電化メカニズムの解明を行う。更に、二元同時
具体的には、1)計測技術データベースの基本設計、
スパッタリング法によって、高い圧電性を示す複合窒
機器情報や技術情報の収集を行い、デザインを決定し、
化物・酸化物などの材料探索、ゾルゲル法などの湿式
計測技術データベースのプロトタイプを作成する。ま
法などの手法も検討し、ナノレベルの構造制御技術の
た、2)熱力学平衡計算ソフトウェアの開発、汎用デ
研究なども同時に行っていく。
ータベースの開発を行うとともに、WEB オンライン
平衡計算システムのプロトタイプを開発する。
研究テーマ:圧電体薄膜を用いた燃焼圧センサの研究、
圧電体薄膜を用いた AE センサの研究、ス
研究テーマ:マイスター制度対応ソリューション技術
パッタリング法およびゾルゲル法を用いた
光計測ソリューションチーム
圧電体薄膜の研究
(Optical Measurement Solution Team)
研究チーム長:野中
環境計測チーム
一洋
(Environmental Measurement Team)
研究チーム長:谷
(九州センター)
概
英治
概
要:
本研究チームでは、マイスター制度に基づく企業と
(九州センター)
要:
の共同研究として、半導体、および電子素材の各製造
九州センターで開発した多孔質3次元微細セル構造
現場から抽出した課題を中心に業務に取り組む。光を
Si/SiC 材料を環境改善に適用するために、粉塵除去
用いた種々の計測技術(光散乱、偏光解析、吸収・蛍
装置の開発や、多孔質材に光触媒を担持した光触媒フ
光分光等)を駆使し、従来困難であった製品の各種欠
ィルターを用いた浄化処理装置の開発について検討す
陥・異常等の検出のため、新規計測法の確立とその検
る。
査装置のプロトタイピングを行う。さらに、製品製造
高温用粉 塵 除去フィル タ ーの開発に つ いては、
プロセスにおける異常発生防止・予知に関する計測課
Si/SiC フィルターの PM 燃焼時の耐熱性について検
題に取り組む。他の基盤グループチームと協力しなが
討を行う。この Si/SiC フィルターを用いた内燃機関
ら、マイスター課題の拡大を図りつつ、次の段階とし
の排気浄化装置を企業と開発する。光触媒を用いた超
て、検査法の標準化に向けた準備にも着手する。
純水の再利用への研究開発は、当チームが開発した水
なお、九州地域の企業群や公設研、大学等との地域
処理装置の改良型を用いて、水処理企業での評価実験
連携については、半導体外観検査技術を中心に、計測
技術開発および装置試作を行う。
を行う。有機物としてイソプロピルアルコールの分解
実験を行い、有機物の分解性能を評価する。また、光
研究テーマ:マイスター制度対応ソリューション、半導
触媒反応を利用して、水中の有機物濃度をリアルタイ
体外観検査技術の高度化、植物の状態計測
ムで連続的にモニターする方法について検討を行う。
法の開発
光触媒を用いた臭気ガス除去システムの開発は、マイ
---------------------------------------------------------------------------
スター課題としてクリンルームの VOC 除去装置の開
[テーマ題目1]センシング技術及びシステム化技術の
高度化
発を行う。このために、Si/SiC フィルターを用いた
高効率光触媒気体処理を考案し、試作する。
研究テーマ:光触媒による環境浄化装置の開発、排気ガ
[研究代表者]徐
超男(研究チーム長)
[研究担当者]徐
超男、上野
山田
ス浄化フィルターの開発
計測基盤情報チーム
直広、今井
浩志、寺崎
正、福田
ト
楠、安達
李
承周、Zhang Hongwu、
芳雄、西久保
祐介、
修、
桂子、
(Information Base Team for Sensor System)
Fu Xiaoyan、川崎
研究チーム長:菖蒲
山口
ふじ子、津山
美紀、
古澤
フクミ、久保
正義、百田
一久
(九州センター)
概
玲子、河原
悦子、
要:
林
弘美、野上
本研究チームでは、マイスター制度に関わるソリュ
佐野
しのぶ、末成
幸二、椿井
ーション技術開発を促進するために、産総研の計測技
古賀
義人、三戸田
由佳里
(常勤職員9名、他24名)
術など、先端的な計測技術情報に関する総合的な技術
[研 究 内 容]
情報データベースシステムを開発する。また、プロセ
(124)
理恵、
由美、
正義、
産業技術総合研究所
本重点課題は、ニーズの詳細な調査とシーズのマッチ
[研究代表者]五十嵐
一男(センター長)
ング精査を基に課題設定を行い、個別課題から抽出され
[研究担当者]小柳
正男、上杉
文彦、松田
直樹、
た共通的な課題として、外部の評価によって多数の提案
大庭
英樹、綾戸
勇輔、中島
達朗、
から厳正に選抜された課題を中核課題とし、センシング
綾戸
照美、岡部
浩隆、野中
一洋、
技術の高度化(応力発光技術)からシステム化技術の高
古賀
淑哲、坂井
一文、蒲原
敏浩、
度化(アダプトロニクス)に至る新しい計測技術開発を、
瀬戸
沙織、福田
知子、平川
智恵子、
材料技術を基盤とするチームと情報技術を基盤とするチ
秋山
守人、岸
ームの緊密な連携の下に遂行するものである。1) 応力
田原
竜夫、筒井
美寿江、大石
康宣、
発光技術では、応力発光現象の機構解明など、基礎・基
三好
規子、上野
多津子、深町
悟、
盤的な技術開発を行い、応力発光センサ素子の特性向上
井上
太、田中
とデバイス化を経て、リアルタイム応力異常検出システ
山田
則行、中田
正夫、濱崎
恭子、
ムや応力履歴記録システムなどの各種応力センシングデ
橋爪
里実、菖蒲
一久、安達
芳雄、
バイスを構築する。各種応力センシングデバイスの機能
西久保
の最適化を行い、デバイスベースでの評価によって応力
岡本
発光センシングのデータベースへ向けたデータ蓄積を行
和司、長瀬
亜紀、谷
桂子、野間
智美、
英治、
弘昭、前田
英司、
悦子(常勤職員19名、他19名)
[研 究 内 容]
う。2) アダプトロニクスでは、構造体のセンシングシ
半導体製造ラインなどの各種生産製造現場においては、
ステム構築に向けたセンシングデバイス・ノードの開発、
製品の様々な欠陥、異物類の検出、更にはそれらの低
適用構造体の挙動解析、適応型信号処理の高機能化等に
減・防止のための技術開発が常に必要とされる。本重点
よって基盤技術を構築し、センシングノードの高機能化
研究課題では、生産現場に常駐するマイスターと緊密に
と多目的化、センサネットワークの駆動ソフトウェア開
連携し、必要な計測技術などの研究開発、及び、その適
発を行い、構成したシステムのパフォーマンス評価とデ
用技術の開発に取り組む。具体的には、特に半導体製造
ータ蓄積を行う。
現場に共通な、非接触、非破壊、および高スループット
平成20年度の進捗状況
の検査ニーズに対応するために、光計測技術を中心に研
今年度は、構造体の包括的な異常検出システムの実現
究開発に取り組んでいる。さらに、高温過酷環境下で動
に向けて、応力発光塗膜センサの応答性データベース-
作する圧電薄膜センサを用いたアコースティック・エミ
構築、光記録についての具体的な開発を行い、「リアル
ッション(AE)計測技術、および独自開発の高性能セ
タイム応力異常検出システム」および「応力履歴記録シ
ラミックスフィルターを用いた有害物の除去・分解に関
ステム」の創出の着実な実施を行った。また、システム
する環境計測技術に取り組んでいる。これらの生産現場
統合へ向けたネットワークシステムのノードの試作やセ
への早期の適用を目指して、技術の確立とインラインプ
ンサノードの要素技術開発、ニューラルネットワークを
ロトタイプ検査装置の開発を進めている。また、検査技
用いた応力発光信号解析を行った。これまでの研究成果
術としては、まだ人間の感性による部分が多く残されて
を基に、簡便なシステムを構築し、産総研内の建築物工
おり、製品品質の向上と省力化等のためにその自動化が
事に伴う構造壁の亀裂検出に成功した。これらを支える
望まれているが、これらの官能検査の自動化を進めると
基盤技術として、応力発光現象の機構解明に向けたモデ
伴に、検査技術の社内基準化、将来的には業界全体へ向
ル提案、新たな応力発光材料技術の開発、超音波による
けた標準化・規格化を目標とする。さらに、共通課題と
発光現象の定量化と衝撃波による構造物欠陥の可視化や、
して、各種計測基盤技術の構築とデータベース整備など
現場の問題解決に役立つユビキタス軸力計測ツールの開
のソリューション関連技術開発を進めている。
発を行った。さらに、超音波デバイスを用いた畜産評価
平成20年度の進捗状況:
システムのフィージビリティ・スタディや、ニューラル
①
マイスター制度対応課題
ネットワークによる生体信号からの意思の抽出に取り組
マイスター企業から提案された課題のうちの4件の
んだ。さらに、地域の企業と共同で、新たな水素配管接
技術課題について詳細な検討を行った。まず、半導体
合技術開発を行った。
生産計測課題の内、半導体ウェハの微小欠陥検出に関
[分
しては、光学的に検出する装置を新たに考案試作する
野
名]標準・計測分野
[キーワード]応力発光、アダプトロニクス、可視化、
とともに実証試験をおこない、その有効性を確認した。
センシング、材料技術、デバイス化、シ
プラズマ異常放電検出については、真空装置に実装す
ステム化、超音波、ニューラルネットワ
る AE センサを試作し、放電検知に成功した。また、
ーク、配管、水素
半導体生産現場内の臭気ガス除去のために、独自フィ
ルターを用いた装置を考案し、装置試作を行った。半
導体製品の外観検査に関しては、光学的な手法でその
[テーマ題目2]マイスター制度対応ソリューション技
自動化に成功し、人の官能検査との整合性を確認した。
術
(125)
研
究
ソリューション関連技術
研究に資するとともに、独自のヒト完全長 cDNA、
各種光学的計測手法のマイスター課題への適用を検
発現情報・相互作用データなども取り入れ、世界に対
②
討し、特に、色情報を用いて高さ情報を得る2D-3D
し公開し、広くライフサイエンスの振興に寄与する。
外観検査法を考案し、多焦点撮像ユニットとして製品
---------------------------------------------------------------------------
化を実現した。計測技術に関するデータベース構築で
外部資金:
は、産総研内の計測技術に関わる研究者や技術情報、
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究機器などについてデータベース検索が容易なシス
全長 cDNA 構造解析プロジェクト成果普及事業「完全
テムを構築した。センサや計測機器に関しては、民間
長 cDNA 構造解析プロジェクト成果普及事業(機能等
や研究機関等の既存のデータベースを直に検索利用で
不明な配列情報を対象としたアノテーション情報の付
きるようにした。また、当ユニット独自の技術情報と
加)」
完
して、色むらに関するデータベースを構築した。さら
に、熱力学平衡計算技術として、開発ソフトの実用
独立行政法人科学技術振興機構受託研究費「タンパク質
化・有償公開を行った。
超高感度質量分析のための次世代微量サンプル導入シス
[分
野
テム」
名]標準・計測分野
[キーワード]マイスター、計測技術、ソリューション、
独立行政法人科学技術振興機構受託研究費「エイコサノ
データベース、その場計測、生産現場
イドとグルタチオン代謝を行う膜タンパク質の構造学的
研究」
⑳【バイオメディシナル情報研究センター】
(Biomedicinal Information Research Center)
財団法人木原記念横浜生命科学振興財団
(存続期間:2008.4.1~2013.3.31)
地域イノベー
ション創出研究開発事業「ランダム免疫法による効果的
研 究 セ ン タ ー 長:嶋田
一夫
副研究センター長:上田
太郎、須貝
研
究
顧
問:五條堀
な血清腫瘍マーカーの開発」
潤一
科学研究費補助金「高度好熱菌 tRNA を耐熱化する硫
孝
黄化修飾機構の解明(若手 B)」
所在地:臨海副都心センター、つくば中央第6
人
員:16名(15名)
科学研究費補助金「プロテアソームの単粒子解析による
経
費:528,204千円(281,924千円)
構造研究(基盤 B)」
概
要:
科学研究費補助金「遺伝子修復、組み換え、スプライシ
バイオメディシナル情報研究センターは、前身の生
ングをターゲットとする新規抗癌剤の探索研究(基盤
B)」
物情報解析研究センターの成果の上にたち、ポストゲ
ノム研究の中核として、タンパク質や RNA など遺伝
子産物の構造と機能を解析し、その機能を制御する一
科学研究費補助金「FACT-ヒストン複合体の立体構造
連の創薬基盤技術を開発するために、2008年(平成20
解析に基づいたヌクレオソーム構造変換機構の解明(基
年)4月に設立された。
盤 B)」
具体的には、ポストゲノムシークエンス研究に重点
をおき、わが国が世界に対して優位性を持つヒト完全
科学研究費補助金「核内低分子 RNA による遺伝子発現
長 cDNA を用いたタンパク質相互作用ネットワーク
の多様性獲得機構の解明(基盤 B)」
解析および創薬の標的タンパク質として重要な膜タン
パク質などの構造解析を行う。さらにそれらの機能を
科学研究費補助金「パスウェイ・ネットワークの絶対定
正や負に制御する化合物を、ラショナルな計算科学や
量による動態解析(特定)」
わが国が得意とする微生物産物に求め、医薬、医療、
診断薬に繋げる一連の創薬基盤技術を開発する。また
科学研究費補助金「HIRA-ヒストン複合体の立体構造
新たな研究分野として登場した多数の非翻訳 RNA
解析に基づいたヌクレオソーム構造変換機構の解明(特
(タンパク質を作らない RNA)についてもその機能
定)」
解析を行い、医薬創生の新たなパラダイムを拓く。こ
れらの研究を産業界のニーズを反映させた課題解決型
科学研究費補助金「新規核内 RNA ノックダウン法の確
共同研究として産学官の連携で進めてゆく。ヒト全遺
立(萌芽)」
伝子のアノテーションつき統合データベースは前述の
(126)
産業技術総合研究所
の探索。
科学研究費補助金「mRNA3’末端プロセシングを標的
研究テーマ:テーマ題目1
とした遺伝子発現調節・RNA 品質管理機構の解明(新
学術領域)」
タンパク質構造情報解析チーム
日本学術振興会
事業
(Protein Structural Information Analysis Team)
(独)日本学術振興会外国人特別研究員
研究チーム長:光岡
科学研究費補助金・特別研究員奨励費「たんぱく
(臨海副都心センター、つくば中央第6)
質相互作用を制御する天然生理活性物質に関する研究」
概
発
薫
要:
我々のチームでは、「タンパク質立体構造に指南さ
表:誌上発表74件、口頭発表166件、その他13件
---------------------------------------------------------------------------
れ た 創 薬 戦 略 ( SGDD : Structure Guided Drug
細胞システム制御解析チーム
Development)」の実現を目指し、タンパク質の立体
(Biological Systems Control Team)
構造に基づく創薬標的タンパク質の機能解析および新
研究チーム長:夏目
規薬物の探索を行う基盤技術の開発を行う。膜タンパ
徹
ク質や複合体の構造解明は、生物機能の解明や産業へ
(臨海副都心センター)
概
要:
の応用にも重要であるにも関わらず、その困難さ故に
抗腫瘍剤や抗糖尿病薬等のリード化合物を見出すこ
非常に遅れている。電子顕微鏡や X 線結晶解析など
とを目的に、18個のスクリーニング系を構築し、各系
の手法を用いて、それらの原子レベルの立体構造を解
約5万~18万サンプルをアッセイした。その結果、10
析し、NMR 等によってリガンド-タンパク質、タン
個の化合物を見出し、インシリコ解析により構造活性
パク質間相互作用を高精度かつ効率良く解析する。そ
相関を確認した。さらに、レポーターアッセイや酵素
のための、大量発現系の構築、構造解析技術の改良を
アッセイなどのスクリーニング系により30数個の新規
行うとともに、その分子機能を解析する。それらの情
化合物を見出し、活性発現メカニズムなどを解析した。
報を用いて、高精度のモデリング技術やシミュレーシ
選択性が高く高活性なテロメラーゼ阻害剤などの誘導
ョン技術の開発・改良を行うことで、SGDD の実現
体を合成した。これまで計27万程度のスクリーニング
を目指す。世界的に見ても特色がある、電子顕微鏡、
NMR、計算機シミュレーションの研究グループが共
ライブラリーを構築した。
微量タンパク質質量分析システムについて、精密
同することで、学術的にも高い成果を得ることを目指
電鋳流を活用した次世代のサンプル導入システムを
す。
開発し、実質感度を200倍以上に向上させた。またサ
研究テーマ:テーマ題目2
ンプル前処理を多軸ロボットに置き換え、極めて高
い再現性を実現した。その結果、これまで不可能で
機能性 RNA 工学チーム
あった酵素-基質の反応を捉え、200~300の因子で
(Functional RNomics Team)
構成される複合体の微妙な差異の判別、レドックス
研究チーム長:廣瀬
タンパク質のネットワーク解析も可能となった。
哲郎
(臨海副都心センター)
ヒトタンパク質発現リソースの構築、ハイスルー
概
要:
プットタンパク質発現技術の開発、プロテインアレ
ヒトゲノムから産生される蛋白質をコードしないノ
イ(アクティブアレイ)の開発と利用を行い以下の
ンコーディング RNA(ncRNA)の中から、独自の機
成果を得た。1)ヒトエントリークローンの作製とそ
能として遺伝子発現制御の基点となる細胞核内構造体
の一般配布、2)大規模な新規 iPS 化因子探索(京
の構築能をも つ ncRNA を発見し論文発 表した。
大・山中研、JBiC と共同で新規4因子発見の米国仮
ncRNA の機能獲得様式として、非効率な RNA プロ
出願)、3)インビトロメモリーダイ法による高次構造
セシングによる2種類のアイソフォームの合成という
を保持したタンパク質相互作用の検証、スクリーニ
RNA 独自の機能獲得機構を発見し、このプロセシン
ング系構築、4)ガン特異的モノクロ抗体の探索、5)
グ様式が核内構造体構築能の獲得に必須であることを
タンパク質発現予測、不溶性タンパク質可溶化技術
見出した。さらに蛍光蛋白質融合の完全長 cDNA ラ
の開発(特許出願)、6)データベース HGPD 構築と
イブラリーから、この ncRNA のプロセシング制御に
その一般公開(RIO-DB からの公開)、7)H-InvDB と
関わる重要な疾患関連蛋白質を同定した。
HGPD の連携、8)疾患と自己抗体の網羅的解析、9)
核内 ncRNA の機能解析系として、化学修飾アンチ
タンパク質プロセシング、リン酸化、各種タンパク
センス核酸を用いた効率良いノックダウン法の条件検
質修飾の基質探索、10)機能性 RNA とタンパク質相
討、様々な RNA 種への適用、ノックダウン効果の検
互作用の解析、11)DNA 修復におけるタンパク質複
証などをまとめ論文発表した。この方法を用いて U7
合体形成の因子探索、12)新規ショート ORF 遺伝子
snRNA の機能解析を行い、新しい細胞周期依存的な
(127)
研
究
[研究代表者]夏目
遺伝子発現制御機構に関わることを明らかにした。ま
たその他の核内 ncRNA のノックダウン条件の至適化
徹
(細胞システム制御解析チーム)
[研究担当者]夏目
を進めた。
組織特異的な ncRNA として、胸腺特異的な20種類
家村
の ncRNA を取得した。その中から未熟な T 細胞に特
徹、五島
直樹、新家
一男、
俊一郎(常勤職員4名)
[研 究 内 容]
異的な Thy-ncR1を見出し、生化学的な細胞内挙動の
我が国が優位性を保持する3万個のヒト完全長 cDNA
解析やノックダウン解析の結果、巨大な細胞質複合体
とその情報等を利用して、ヒト遺伝子機能解析の基盤を
を形成し、細胞表面接着増殖因子の発現制御に関わる
完成させた。それらを基に効率的且つ統一的なタンパク
ことを発見した。この他に肝臓特異的な ncRNA の中
質生産系を確立した。またチップを用いたヒト遺伝子の
から、肝臓癌組織で特異的発現抑制される ncRNA を
発現頻度情報、蛍光イメージング技術を活用した細胞内
発見した。
局在情報、超高感度質量分析システムによるタンパク質
この他に、tRNA 機能獲得に必須な RNA 修飾の中
相互作用ネットワーク情報等の取得を行う。それらの活
で、その生合成経路が未解明な、硫黄化修飾経路につ
用により、タンパク質の様々な機能を明らかにすると共
いて研究を行った。今年度は、生合成遺伝子の同定と、
に創薬のための新規なターゲットを発見し、高効率で統
硫黄化反応の試験管内再構成系の構築を通して、多段
一的な化合物スクリーニング系を開発し、創薬加速のた
階からなる生合成系を解明し、論文発表した。
めの基盤開発と化合物プローブ主導のケミカルバイオロ
ジーを展開している。5,000サンプル/週のハイスルー
研究テーマ:テーマ題目3
プットで、タンパク質の相互作用を指標とする統一的な
分子システム情報統合チーム
スクリーニングプラットフォームを構築することに成功
(Integrated Database and Systems Biology Team)
した。これにより、タンパク質相互作用を制御するユニ
研究チーム長:今西
ークで新規な化合物を天然物ライブラリーより数個取得
規
している。今後、個体レベルでの生理活性の評価を行っ
(臨海副都心センター)
概
要:
ていく。
ヒト全遺伝子と転写産物を対象として高精度なアノ
[分
テ ー シ ョ ン 情 報 を 格 納 し た 統 合 デ ー タ ベ ー ス H-
野
名]ライフサイエンス
[キーワード]タンパク質、プロテオーム、ケミカルバ
InvDB のメジャー更新を行い、約22万件の転写産物
イオ、完全長 cDNA
の情報を含む新しいリリース6.0を公開した。この中
で、標準ヒトゲノム配列上には存在しないヒト遺伝子
[テーマ題目2]構造ゲノム解析:生体高分子立体構造
の情報や、機能性 RNA に関する情報を整備したペー
情報解析に関する研究
ジを新規に公開した。また、遺伝子構造・機能・発
[研究代表者]光岡
現・多様性・進化などのさまざまな情報を使った横断
薫
(タンパク質構造情報解析チーム)
的遺伝子検索ツールも開発し公開した。さらに、経済
[研究担当者]嶋田
一夫、中村
春木、光岡
薫、
産業省統合データベースポータルサイト MEDALS を
藤吉
好則、金澤
健治、根本
直、
作成し公開した。
高橋
栄夫、千田
俊哉、福西
快文
ヒトと他のモデル脊椎動物の遺伝子情報を比較検討
(常勤職員9名)
するための情報システムとして Evola というデータ
[研 究 内 容]
ベースを構築しているが、この全データの更新を行っ
本プロジェクトでは、タンパク質立体構造に指南され
た。また、ヒトとマウスの遺伝子における選択的スプ
た創薬戦略の実現を目指し、創薬の標的として今後より
ライシングの比較により、189の遺伝子に進化上高度
重要と考えられる膜タンパク質や複合体について、その
に保存されてきた選択的スプライシングを発見した。
構造解析技術を改良するとともに、相互作用情報が得ら
テキストマイニング技術に関し、研究者が興味対象分
れる技術を開発し、それらを有効に利用できる計算機シ
野の論文情報を収集するために役立つ新規関連文献お
ミュレーション技術を確立する。そのため、構造解析技
知らせツール PubMedScan を開発して公開した。ま
術としては、極低温電子顕微鏡と X 線結晶構造解析を
た、分子情報と文献情報の統合化をめざし、公共デー
利用するとともに、相互作用解析などに NMR を活用す
タベースにある両者のデータ ID を取得して自動で統
る。そして、計算機シミュレーションでは、開発された
合化するためのリンク自動管理システムを作った。
技術が応用されるように、ソフトウエアなどを公開する。
研究テーマ:テーマ題目4
極低温電子顕微鏡を用いた研究では、電子線結晶構造
---------------------------------------------------------------------------
解析により、ミクロソーム型プロスタグランジン E2合
[テーマ題目1]機能ゲノム解析:タンパク質機能解析
成酵素1(MPGES1)の電子線結晶構造解析を行い、そ
に関する研究
の基質結合特異性の構造基盤を明らかにした。プロスタ
(128)
産業技術総合研究所
[キーワード]低温電子顕微鏡、核磁気共鳴装置
グランジンは、炎症などを引き起こす生理活性物質で、
それを合成する MPGES1は、それらの症状を緩和する
(NMR)、X 線結晶解析、計算科学、
創薬ターゲットと考えられるので、その結晶構造は創薬
構造解析、構造生物学
に利用できる可能性がある。また、結晶を作らずにタン
[テーマ題目3]機能性 RNA 解析:機能性 RNA 解析
パク質の高分解能構造を解析できる単粒子解析法を用い
に関する研究
て、水溶性のタンパク質が立体構造をとるのを助けるシ
[研究代表者]廣瀬
ャペロニンとその基質複合体の立体構造解析を行い、基
哲郎
(機能性 RNA 工学チーム)
質を可視化した結果を論文発表した。
X 線結晶構造解析を用いた研究では、ヒストンシャペ
[研究担当者]廣瀬
鴫
ロンとクロマチン因子との複合体の結晶構造に基づき細
哲郎、渡辺
公綱、佐々木
保典、
直樹(常勤職員4名)
[研 究 内 容]
胞内での機能解析を行った結果、遺伝情報読み出しの過
程において、結晶構造を決定した複合体がヌクレオソー
近年、ポストゲノム研究の成果として発見されたノン
ム構造変換に関連して機能している事を明らかにした。
コーディング RNA(ncRNA)は、ゲノム(DNA)か
これは、遺伝情報の読み出しとヌクレオソーム構造変換
らタンパク質合成を仲介する役割以外の全く新しい
の関係を立体構造に基づき明らかにした初めての例であ
RNA 機能を担っていることが期待されている。そこで
る。高分子量型のヒストンシャペロンの大量発現に、一
ncRNA 群の中から、基本的な生命現象に関わる重要な
部成功した。また、酸化型の D-アスパラギン酸酸化酵
機能性 ncRNA や疾患に関わる機能性 ncRNA を発見し、
素の結晶構造を決定した。これに加え、反応中間体の結
その作用機序を明らかにし、さらには医療技術開発の基
晶構造も決定した。
盤形成に寄与する事を目的としている。今年度は、
NMR を用いた研究では、抗血栓作用があると報告さ
ncRNA 独自の機能解明のために、細胞核内に局在する
れている降圧剤と血小板凝集受容体の複合体構造を、in
ncRNA と 、 ヒ ト の 特 定 組 織 で 特 異 的 に 発 現 す る
silico ドッキングと NMR 情報を組み合わせることで高
ncRNA の機能解析を重点的に進めた。さらに ncRNA
精度かつ迅速に決定できた。複合体構造から阻害活性に
機能解析を進めるために重要な機能解析技術の条件検討
重要な構造要素が明らかとなるとともに、受容体の天然
を進めた。
ヒト完全長 cDNA データベース(H-InvDB)から選
リガンドであるコラーゲンをアロステリックに結合阻害
するメカニズムが推定された。新規酵母発現株を利用し、
別した単独転写単位として合成される ncRNA 群の中か
培養法を工夫することで低コストに発現タンパク質の安
ら、未熟な T 細胞分化段階に限定して発現する ncRNA
定同位体標識を可能とするシステムを構築した。従来の
を同定した。この ncRNA は細胞質に局在しており、タ
大腸菌発現系では困難なヒト由来タンパク質の発現およ
ンパク質(ペプチド)をコードしている可能性があった。
びその NMR 解析に活用できると考えられる。
そのため実験かつ情報学的にノンコーディング RNA の
免疫系膜タンパク質シグレックスについて、リガンド
判別手順を考案し、上記の T-細胞特異的 RNA が確実に
との相互作用解析を進めており、現在 BIAcore を用い
ncRNA として大きな RNP 複合体を形成し、細胞増殖
た相互作用解析を実施している。また、関連技術として、
因子の発現制御に関わっている可能性を示した。この他
混合物溶液の直接計測解析(メタボリック・プロファイ
に、肝臓特異的に発現する ncRNA の中から、癌化によ
リング)法をマウス新生仔尿、高塩濃度発酵生産物等、
って発現が著しく抑制される ncRNA を発見した。
NMR の計測しにくい試料について適用を可能とし、本
これまでの細胞内局在の解析によって、ncRNA の多
技術の企業・公設試験場に指導・普及を行った。
くは核内に局在するという特徴的な細胞内挙動を発見し
計算機シミュレーションを利用した研究では、MD に
た。核内 ncRNA の機能解析には、近年細胞質メッセン
より発生させた創薬標的膜タンパク質の構造モデルを用
ジ ャ ー RNA の 機 能 解 析 の 常 套 法 と し て 用 い ら れ る
い、市販100万化合物のスクリーニング計算により薬物
RNA 干渉を適用することは困難である。そこで核内
を探索中である。数種類の薬物探索手法の開発を継続し
RNA をターゲットにした新規な RNA ノックダウン法
て行っており、活性のある薬物と蛋白質の複合体構造の
を世界に先駆けて開発し、今年度は、その汎用性を実験
予測を行う。低分子の溶解度の推算を元に、非特異的結
的に証明し、論文発表した。さらにこの技術を用いて、
合を示す化合物を検出する方法を見出し、2007年に公開
細胞核内構造の構築を行う ncRNA や、新しい細胞周期
されたフラグメント用の化合物のデータベース化を行い、
依存的な遺伝子発現制御を行う ncRNA 機能を発見した。
計算機薬物スクリーニングに使えるようにした。μオピ
また ncRNA が、複数の疾患関連タンパク質と複合体を
オイド受容体など2標的において12%以上のヒット率で
形成していることも見出した。核の中では、クロマチン
活性化合物数十を発見した。これは製薬メーカの海外製
のエピジェネティック制御や、それらに関わるタンパク
品を用いたチームと競争し、数倍の優位性を示した。
質因子の会合など生命活動の根幹を担う様々な現象が行
[分
われており、ncRNA 群はタンパク質因子と共同して、
野
名]ライフサイエンス
(129)
研
究
核内現象を精密にコントロールしている可能性が浮上し
経済産業省ライフサイエンスデータベース・ポータルサ
た。革新的な機能解析技術による新規な ncRNA 機能の
イト MEDALS を構築して公開した。MEDALS ではデ
解明によって、新しい創薬基盤となる産業技術の確立に
ータベース便覧やソフトウエア便覧、そしてデータがダ
結びつくことが期待できる。
ウンロードできるデータベースアーカイブの機能を提供
している。MEDALS は http://medals.jp にて利用でき
この他に、高度好熱菌tRNAを耐熱化する働きをもつ
硫黄化修飾の生合成機構の解析を行った。生合成因子を
る。次に、データベースの利用促進のための独自のツー
同定し、組換えタンパク質を用いて反応機構を解析した
ルの開発と公開を行った。テキストマイニング技術に関
結果、新規中間体(チオカルボキシレート)を経由する
し、研究者が興味対象分野の論文情報を収集するために
新しいタイプのtRNA硫黄化反応系であることが判明し
役立つ新規関連文献お知らせツール PubMedScan を開
た。この系はモリブデン補酵素やチアミンなどの硫黄を
発して公開した。また、分子情報と文献情報の統合化を
含む補酵素の生合成系と共通の祖先から進化したと考え
めざし、公共データベースにある両者のデータ ID を取
られる。以上の結果を論文発表した。
得して自動で統合化するためのリンク自動管理システム
[分
(Hyperlink Management System)を作った。このほ
野
名]ライフサイエンス
か、ID 一括変換システム(ID Converter System)も
[キーワード]核酸、RNA、遺伝子発現制御、エピジ
開発した。
ェネティクス、RNA 修飾
さらに、経済産業省関連プロジェクトに基づくヒトの
分子データについては、ヒト全遺伝子のアノテーション
[テーマ題目4]ヒト遺伝子の統合データベース構築と
経済産業省統合データベースプロジェク
統合データベース H-InvDB へのデータ統合化を進めた。
ト
NEDO「機能性 RNA プロジェクト」の成果である機能
[研究代表者]今西
性 RNA データベース fRNAdb および機能性 RNA 用
規
UCSC ゲノムブラウザには、共通仕様のウェブサービ
(分子システム情報統合チーム)
[研究担当者]今西
規、五條堀
スを開発して導入し、さらに H-InvDB の画面の中で機
孝
能性 RNA の情報を閲覧できるしくみを実現した。同様
(常勤職員2名)
[研 究 内 容]
に、産総研・糖鎖医工学研究センターで測定された糖転
ヒト全遺伝子と転写産物を対象として高精度なアノテ
移反応の情報を集めた糖鎖関連遺伝子データベース
ーション情報を格納した統合データベース H-InvDB に
GlycoGene Database(GGDB)と H-InvDB の連携に
ついて、最新のヒトの転写産物の配列データを集めて大
ついても、ウェブサービスの導入によって情報の統合に
規模な計算機解析を行うことによりメジャー更新を行い、
成功した。また、産総研・バイオメディシナル情報研究
約22万件の転写産物の情報を含む新しいリリース6.0を
センターで開発されているデータベース HGPD と H-
公開した。この中で、標準ヒトゲノム配列上には存在し
InvDB の連携のため、データ ID の対応関係を調査しリ
ないヒト遺伝子の情報や、機能性 RNA に関する情報を
ンク自動管理システムに情報を登録した。
整備したページを新規に公開した。また、遺伝子構造・
以上の成果は研究開発者や一般利用者の利便性を高め、
機能・発現・多様性・進化などのさまざまな情報を使っ
データベースからの知識の取得を促進・効率化すると期
た横断的遺伝子検索ツールである「ナビ検索」を開発し、
待される。
公開した。また、ヒトと他のモデル脊椎動物の遺伝子情
[分
報を比較検討するための情報システムとして Evola と
[キーワード]バイオインフォマティクス、統合データ
いうデータベースを構築しているが、この全データの更
野
名]ライフサイエンス
ベース、H-InvDB
新を行った。これにより、約2万個のヒト遺伝子とそれ
に対応する13種の脊椎動物の遺伝子について、遺伝子構
21 【ナノ電子デバイス研究センター】
○
造比較図や配列アラインメント等の情報を整備した。ま
(Nanodevice Innovation Research Center)
た、ヒトとマウスの遺伝子における選択的スプライシン
(存続期間:2008.4.1~2015.3.31)
グの比較により、189の遺伝子に進化上高度に保存され
てきた選択的スプライシングを発見した。
また、経済産業省統合データベースプロジェクトを実
施した。これは、経済産業省の関わるライフサイエンス
研 究 セ ン タ ー 長:金山
敏彦
副研究センター長:秋永
広幸、湯田
主 幹 研 究 員:秦
正俊
信宏
分野の研究開発プロジェクトで産み出されたデータベー
ス等に関する情報提供サイトを作成し、さらにヒト遺伝
所在地:つくば西7、つくば西5E、つくば中央第4、
子の統合データベース H-InvDB と連携して経済産業省
つくば中央第2
関連の研究成果を利用できるシステムを構築することを
人
員:16名(13名)
目的としている。平成20年度の主な成果としては、まず、
経
費:1,198,112千円(219,477千円)
(130)
産業技術総合研究所
概
重点を置いた。
要:
(1) CMOS の極限追究を目的とする研究開発プロ
1.ミッション
半導体集積システムは、高度情報社会を支える基
ジェクトとして、NEDO 半導体 MIRAI プロジ
幹技術である。産業競争力の向上と環境負荷の低減
ェクトの研究開発を発進させた。また、経済産業
を図り、社会の持続的な発展を実現するために、半
省ナノエレクトロニクスプロジェクトの研究開発
導体技術の継続的な進展は、欠かすことができない。
を本格的に稼働させた。
これまで半導体技術の高度化を担ってきたシリコ
(2) 上記以外の、より探索的な研究テーマや実用化
ン CMOS トランジスタの微細化は物理的・技術的
目的の明確な課題については、それぞれ個別の研
究プログラムを推進した。
な限界に近づいており、今後の技術発展のためには、
ナノレベルの微細化と同時に、新規な材料・構造・
(3) 当センターの保有するプロセス装置群を再組織
作製プロセスの導入が求められている。さらに、今
し、微細 CMOS トランジスタを始めとするデバ
後10年以上に亘って発展を継続するには、CMOS
イス試作を軌道に乗せた。これを基に、産総研内
外の研究グループと共同研究を開始した。
微細化に代わる新しい指導原理を構築しなければな
---------------------------------------------------------------------------
らない。
外部資金:
本研究センターは、CMOS の微細化・高性能化
の極限追究を推進すると共に、これに代わる発展軸
独立行政法人新エネルギー
産業技術総合開発機構次世
となりうる革新技術の探索と実証を、CMOS 技術
代半導体材料・プロセス基盤
をベースとして行う。そのために、ナノスケールの
(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセ
トランジスタの構造、材料、作製、計測、解析技術
ス基盤(MIRAI)プロジェクト(一般会計)/新構造
を研究し、特性バラツキを最小化しながら、低消費
極限 CMOS トランジスタ関連技術開発
電力で信頼性の高い CMOS トランジスタを構成し
集積化するための基盤技術を研究開発する。この過
経済産業省
戦略的技術開発委託費(ナノエレクトロニ
程で蓄積したナノ電子デバイスの作製、計測、解析
クス半導体新材料・新構造技術開発)
技術を体系化して広く外部に提供し、様々な材料や
「シングルナノワイヤトランジスタの知識統合的研究開
動作原理のデバイスに向けた研究開発を展開するこ
発」
とにより、イノベーションハブとして機能する。こ
れによって将来の電子デバイス技術の発展方向を明
経済産業省
確な科学的根拠を以て産業界に提示する。
クス半導体新材料・新構造技術開発)
戦略的技術開発委託費(ナノエレクトロニ
「III-V MOSFET/III-V-On-Insulator(III-V-O-I)
2.運営体制
MOSFET の研究開発」
当センターは、CMOS の微細化・高性能化を自
ら追究すると共に、新たな発展軸となりうる革新技
術の探索と実証を行うためのイノベーションハブで
独立行政法人科学技術振興機構
ある NeIP(ナノエレクトロニクスイノベーション
ーション「テーラーメイドクラスターイオン源の研究開
プラットフォーム)を整備し、産総研の他ユニット
発」
産学共同シーズイノベ
や、大学・産業界や他の研究機関と連携して基礎技
術をデバイス実証に結びつける場として運用する。
文部科学省
特に、ナノテクノロジー研究部門が運用しているナ
用した次世代半導体デバイス」
科学研究費補助金「配列ナノ空間物質を利
ノプロセシング施設(AIST-NPF)と一体的な運用
を行うことにより、広範な目的に応える。そこでは、
発
当センターに蓄積されたナノ電子デバイスの作製技
---------------------------------------------------------------------------
術・計測解析技術を基に新材料・新構造デバイスを
極限構造トランジスタ研究チーム
効率的に試作し、データが体系的に蓄積されるよう
(Nanostructured CMOS Research Team)
な知識マネージメントを目指す。
研究チーム長:太田
表:誌上発表40件、口頭発表58件、その他5件
また、NeIP に大学や産業界などから若手研究者
裕之
(つくば西7、つくば西5E、つくば中央第4)
を積極的に受け入れ、最先端の半導体技術に関わる
概
要:
研究開発に従事させることにより、技術的なニーズ
現在の情報化社会を支えているのは大規模集積化回
を把握し、かつ科学的な知識を身につけた人材の育
路(LSI)である。今後の情報化社会の高度化及びそ
成を行う。
の持続的発展のためには、LSI の基本要素であるトラ
3.研究開発の方針
ンジスタの集積規模の拡大と低消費電力化を両立する
本年度は、当センターの発足に当たり、次の点に
必要がある。我々の目標は、2015年以降の技術世代で
(131)
研
究
の低消費電力 LSI に要求されるトランジスタの各技
デバイスサイズが微細になると、様々なデバイス特
術課題を克服する、基盤技術を提供することにある。
性が、原子スケールの構造揺らぎに敏感に影響される
この目標達成のため、当研究チームでは以下の2点を
ようになり、設計や作製が困難になる。この問題を解
主要研究開発テーマとしている。それらは、1)トラン
決するには、デバイス構造の局所的な物性を原子スケ
ジスタの極限的な微細化に対応し得る構造を持つと期
ールで計測・制御することが必要不可欠である。特に、
待されるシリコンナノワイヤトランジスタの開発、2)
ドーパント不純物原子の分布や機械的歪みがデバイス
極限的に微細化されたトランジスタで期待されるバリ
特性に大きな影響を与えるため、当研究チームは、走
スティック効果を最大化し、高駆動力トランジスタを
査トンネル顕微鏡(STM)を用いた不純物分布、ポ
実現するためのデバイス技術の開発である。第1のテ
テンシャル分布の計測・評価技術、紫外線ラマン散乱
ーマに向けては、自己組織化を含む、原子レベルのナ
分光法による局所ひずみの評価解析技術の研究開発を
ノプロセシング技術を開発し、高精度なトランジスタ
行う。さらに、原子スケールで物質構造を制御するこ
プロセス技術を開発する。第2のテーマについては、
とにより、ナノデバイスを実現する新たな材料の研究
開発に取り組む。
バリスティック輸送効率の向上及び低消費電力化のた
研究テーマ:テーマ題目3、テーマ題目4、テーマ題目
めの、ゲートスタック技術開発やメタルソースドレイ
5
ン技術開発などを行っている。
研究テーマ:テーマ題目1
先進デバイスプロセス研究チーム
新材料インテグレーション研究チーム
(Nanodevice Processing Research Team)
(New Materials Integration Research Team)
研究チーム長:堀川
研究チーム長:安田
(つくば西7)
概
(つくば中央第4)
概
剛
哲二
要:
当研究チームでは、当センターが展開している高性
要:
集積回路技術は微細化を推し進めることにより発展
能の極限的 CMOS デバイス開発において、我々が保
してきたが、回路の代表的な線幅が50 nm より小さ
有する CMOS プロセス技術、デバイス試作技術を提
くなり、微細化は物理的な限界を迎えつつある。その
供することで試作検証を支えるとともに、デバイス性
ような中で、微細化以外の手法によって微細化と同等
能向上の実証に向けた微細トランジスタ作製プロセス
な性能向上を実現する技術、すなわち「等価スケーリ
技術の確立を目標にバリスティック効果発現に必須と
ング技術」が求められており、その有力なアプローチ
なるゲート微細化などの要素プロセス開発を展開して
の一つが「新材料」の導入である。従来、集積回路を
いる。
構成する相補型の金属-酸化物-半導体(CMOS)
CMOS の微細化が物理的な限界に達しようとして
構造の電界効果トランジスタは、シリコンとその酸化
いる中では、開発された微細 CMOS 技術を他のナノ
物を主たる材料としてきたが、これらをキャリア移動
テクノロジーと融合させて新たなナノ電子デバイスを
度や誘電率などにおいて優れた物性をもつ新材料によ
創生していく取り組みも大変重要である。当研究チー
って置き換えることにより、電流駆動力を向上させ、
ムでは、産総研が提案するナノ電子デバイス開発のイ
消費電力を低減することが可能になる。これらの新材
ノベーションハブであるナノエレクトロニクスイノベ
料は、CMOS に用いることが難しかった材料であり、
ーションプラットフォーム(NeIP)の一環として、
その特性を生かすためには、CMOS の技術体系の中
CMOS 先端技術の研究を通じて確立したデバイス・
にうまく統合(インテグレート)することが鍵となる。
プロセス・材料技術や内部光電子分光、低周波雑音、
当研究チームは、得意とする表面・界面のナノスケー
ランダムテレグラフ雑音等の評価解析技術を提供する
ル評価・制御技術を展開しながら、高移動度チャネル
ことで、企業、大学などにおける独創的なナノ電子デ
技術や高誘電率ゲート絶縁膜技術等を開発することを
バイスの試作・評価を通じた機能実証のための研究を
目的としている。
支援する活動を展開している。
研究テーマ:テーマ題目6、テーマ題目7、テーマ題目
研究テーマ:テーマ題目2
8
原子スケール計測・制御技術研究チーム
---------------------------------------------------------------------------
(Atomic-scale Characterization and Processing
[テーマ題目1]次世代半導体材料・プロセス基盤
Research Team)
研究チーム長:多田
(MIRAI)プロジェクト
哲也
新構造極限 CMOS トランジスタ関連技
(つくば中央第2、つくば中央第4)
概
術開発
要:
[研究代表者]金山
(132)
敏彦
産業技術総合研究所
いて、低 pH フッ酸処理とその後の水素アニール処理
(ナノ電子デバイス研究センター長)
[研究担当者]太田
水林
裕之、森田
亘、田岡
行則、右田
により、原子層レベルの平坦化を実現する技術を開発
真司、
した。チャネルを走行する電子はチャネル面の凹凸に
紀之
よるラフネス散乱を受けることが知られており、本技
(常勤職員4名、他1名)
術によりラフネス散乱の大幅な抑制が期待できる。ま
[研 究 内 容]
本研究では、2007年版の国際半導体技術ロードマップ
た、このような平坦表面上の High-k 膜形成にも進捗
(ITRS 2007)で示されている hp32 nm を超える極微
があった。水素化した Si 表面は疎水性(水を弾く)
細な半導体デバイスを実現するために必要な、新構造極
性質があるため、その上に High-k 膜を有機原料を用
限 CMOS トランジスタに関連する革新的な基盤技術を
いた原子層成長法により成長すると、原料の濡れ性が
開発することを目的とする。具体的には、MIRAI 第3
悪く良好な High-k 膜ができなかった。本年度は、Si
期前半までに開発済みの高移動度チャネル材料技術やひ
最表面に対して H2O を用いて親水化する技術を開発
ずみ導入による高移動度化技術の利用に加えて、「バリ
し、これを用いて High-k 膜を成長したところ、等価
酸化膜厚0.6 nm を実現した。
スティック効率」を向上することを主な開発目標とする。
本目標の達成のため、シリコン MOS トランジスタのソ
③
計測・解析技術開発
ース・ドレインの材料・構造、チャネル材料・構造を制
本技術開発では、準バリスティック輸送特性の電気
御してバリスティック効率を向上させオン電流を増大さ
評価解析技術および、物理計測解析技術開発を行う。
せることを目指す。
電気評価解析技術に関連して、平成20年度は、準バリ
そこで、本研究では、hp32 nm を越える技術領域で
スティック輸送特性評価に不可欠の電気特性評価シス
ゲートの静電支配力を確保し、短チャネル効果を低減す
テム(極低温プローバー)を導入し、立ち上げを行っ
るために必要となる薄膜 SOI トランジスタやマルチゲ
た。
ートトランジスタを対象に、①原子層レベル界面制御に
[分
よるメタルソース・ドレイン形成技術およびショットキ
[キーワード]半導体、シリコン、ゲルマニウム、高電
ーバリアハイト制御技術の研究開発、②高駆動力ゲート
流駆動力 CMOS、移動度、バリスティ
スタック形成技術開発、③計測・解析技術開発、の3つ
ック輸送、メタルソース・ドレイン、高
の研究課題に取り組んでいる。
誘電率ゲート絶縁膜、ゲート電極
①
野
名]情報通信・エレクトロニクス
原子層レベル界面制御によるメタルソース・ドレイ
ン形成技術およびショットキーバリアハイト制御技術
[テーマ題目2]III-V MISFET/III-V-On-Insulator(III-
の研究開発
V-O-I)MISFET 形成プロセス技術の研
メタルソース・ドレイン構造はバリスティック輸送
究開発
特性が顕在化するような極微細 CMOS プロセス技術
[研究代表者]安田
に適した技術である。本研究開発では、メタルソー
哲二(新材料インテグレーション
研究チーム)
ス・ドレインとチャネル間の界面揺らぎに伴うトラン
[研究担当者]安田
ジスタの性能劣化を抑え、かつ適切なソース・ドレイ
哲二、宮田
典幸、石井
裕之
(常勤職員2名、他1名)
ン端におけるバリアハイト調整による、高駆動力、低
[研 究 内 容]
集積回路を構成する CMOS は、電子が流れる n チャ
成20年度は、ニッケルシリサイド材料を用いたメタル
ネル MISFET と正孔が流れる p チャネル MISFET を
ソース・ドレイン構造を作製し、シリサイドの界面に
組み合わせたものであり、高性能化のためにはそれぞれ
不純物を偏析させて活性化を行った。その結果、不純
のチャネルの電流駆動力を高めることが必要である。電
物の種類を変えることで、電子およびホールの伝導に
流駆動力を向上する技術は、一定の性能を得るために必
対してそれぞれ0.1 eV 以下という非常に小さなショ
要な消費電力の削減にもつながる。n チャネルについて
ットキーバリアを実現することに成功した。
は、電子移動度が大きい III-V 族チャネルが期待されて
②
オフリーク電流を達成するための技術開発を行う。平
高駆動力ゲートスタック形成技術開発
いるが、III-V 族半導体上の絶縁膜界面(MIS 界面)に
hp 32 nm を超える極微細 CMOS において、低電
は高密度のトラップ準位が発生しやすく、従来は
源電圧、低消費電力、高電流駆動力を実現するための
MISFET 動作を得ることが難しかった。本研究は、ま
チャネル表面の原子レベル平坦化技術、および、メタ
ず、高駆動力を実現するための要素技術として、高誘電
ルゲート電極、高誘電率ゲート絶縁膜材料技術の開発
率(High-k)絶縁膜と III-V チャネルの界面構造を制御
を行う。平成20年度は、平面型トランジスタあるいは、
する技術を開発する。さらに、この技術を適用して、
マルチゲートに代表される各種立体型トランジスタの
III-V MISFET、あるいは、III-V MISFET を Si ウエハ
チャネル面(トランジスタの電流走行面)として活用
の 上 に 絶 縁 膜 を 介 し て 搭 載 し た III-V-On-Insulator
が期待される、Si(100)、(110)、(111)各表面にお
(III-V-O-I)MISFET の高性能動作を実現し、CMOS
(133)
研
究
集積化の可能性を実証することを目指す。今年度は、界
移動度は、Si ユニバーサル移動度の約50%であった。
面構造制御・製造技術のための絶縁膜製造手法と III-V
CMOS の Si を置き換えるチャネル材料の候補として
表 面 前 処 理 条 件 に つ い て 検 討 し 、 ま た 、 III-V
III-V 族材料を考える場合、少なくとも Si に対して2倍
MISFET/III-V-O-I MISFET の CMOS 集積化実証に向
以上の移動度を達成することが必要と考えられ、III-V
けた第1歩として III-V MISFET の動作実証を行った。
表面処理条件、絶縁膜成長条件、および、デバイス作製
プロセスの最適化の検討を続けている。
まず絶縁膜製造技術については、界面トラップ準位の
発生は界面酸化状態の影響を受けると考えて、還元性の
[分
アルキル金属であるトリメチルアルミニウム(TMA)
[キーワード]電界効果トランジスタ、化合物半導体、
を原料とした Al2O3絶縁膜の原子層成長を行い、界面構
野
名]情報通信・エレクトロニクス
絶縁体、界面、薄膜
造形成過程と界面電気特性の関係について検討した。
III-V 族半導体として GaAs、InGaAs、AlGaAs、およ
[テーマ題目3]ナノデバイスの原子分解能計測・評価
び、InAlAs を選び、Al2O3との界面構造を X 線光電子
技術の研究開発
分光法により分析した。その結果、III-V 表面の InOx、
[研究代表者]多田
GaOx 、AsOx は原子層成長の初期にその一部が還元さ
哲也(原子スケール計測・制御技
術研究チーム)
れ、成長後の Al2O3/III-V 界面には、III-V 族半導体の
[研究担当者]多田
哲也、Pobortchi Vladimir、
種類に依って0.1~0.5 nm 程度の酸化層が存在するこ
Bolotov Leonid、西澤
とが明らかとなった。また、結晶の面方位と界面酸化層
内田
との関係を調べたところ、(111)A 面では(001)面に
(常勤職員1名、他5名)
紀行、木下
正泰、
和人
[研 究 内 容]
比べて界面酸化層が薄くなることを見出した。以上の試
料につき、MIS キャパシタの容量-電圧(C-V)曲線
本テーマでは、走査トンネル顕微鏡(STM)を用い
を測定して電気特性を評価した結果、カチオンの界面酸
ることにより、ナノデバイスの電子状態、ポテンシャル
化層が薄いほど電気特性が良い傾向が認められた。ま
分布、ドーパント原子の位置を原子分解能で計測する技
た、In を含む半導体上ではキャリアの蓄積を示す良好
術を開発することを目標としている。
な C-V 特性が得られた。以上の結果より、III-V 上の絶
我々は、走査探針と試料のギャップ長を変調した時の
縁膜製造技術として、界面酸化層を還元する効果がある
トンネル電流の変化分を測定する真空ギャップ変調法
Al2O3 原子層成長が適していること、および、良好な
(VGM 法)により、Si デバイス構造におけるポテンシ
MIS 特性を得るためには InGaAs などの In を含む半導
ャル分布を測定する技術の開発を行ってきた。本年度は、
体基板が有利であり、面方位については(111)A 面上
pn 接合のソース・ドレイン接合深さ、チャネル長測定
で良好なデバイス特性が得られる可能性があることが示
に成功した。すなわち、二次イオン質量分析(SIMS)
された。
法により接合深さが100 nm であることが確かめられて
次に、III-V 表面前処理条件の検討については、試料
いる試料の断面計測を VGM 法で行なったところ、測定
表面の化学組成を分析するため、オージェ電子分光用の
されたポテンシャル分布から求めた接合の深さは
超高真空チャンバーを設計・製作して High-k 絶縁膜成
100 nm となり、SIMS による結果と一致した。また、
長装置に接続した。この装置を用いて、III-V 表面に対
30~100 nm のゲート長を持つトランジスタの断面計測
して水素プラズマ処理を施すことにより、表面酸化物の
を行い、チャネル長を測定した。ゲート長との相関を解
除去が可能であること、および、V 族元素の As を揮発
析したところ、チャネル長がゲート長よりも8~16 nm
させ III/V 比を高めた表面を作製できることが明らか
短いという結果が得られた。このように、VGM 法によ
になった。水素プラズマ処理の MIS 界面特性への影響
る測定が、デバイス構造のポテンシャル計測に有効であ
を検討した結果、C-V 特性による評価では水素プラズ
ることが示された。
マ処理による特性の改善はみられなかった。今後、III
デバイス領域が絶縁体で囲まれていると、STM は、
/V 比の高い表面へ窒素を吸着させる効果などについ
絶縁体の上ではトンネル電流が流れないため、探針の制
て、引き続き検討する計画である。
御ができず、探針が試料に衝突してクラッシュしてしま
III-V MISFET の動作実証については、基板を In 組
い、測定不能になってしまう。したがって、デバイス領
成53%の p 型 InGaAs(001)とし、上述の Al2O3をゲ
域の測定を行うためには、安全に探針をデバイス領域ま
ート絶縁膜、TaNx をメタルゲートとする MISFET を
で移送する必要がある。我々は、そのための技術として、
試作した。熱負荷を小さくするため、ソースとドレイン
STM 探針と試料の間に数10から数100V 程度の電圧をか
を先に作り、その後にゲート絶縁膜を形成するゲートラ
けて、探針から試料に向けて電子を放出させ、試料から
ストプロセスを採用した。このように作製した
放出される2次電子を検出する方法を開発した。2次電子
MISFET において、正のゲート電圧によりオン状態と
の放出確率は、導体と絶縁体で異なるため、デバイス領
なる表面反転型の動作が実現された。性能の指標である
域の同定が可能となる。本年度は、このシステムを構築
(134)
産業技術総合研究所
し、デバイス構造の観察が可能である事を確認した。
造内部の応力分布とは大きき異なることが分かった。こ
STM 計測を行う時は、バイアス電圧を印加するため、
れらの結果は、断面における応力分布測定結果を解釈す
測定すること自身が試料のポテンシャル分布に影響を与
る時には、断面の効果を慎重に取り扱わなければならな
えてしまう。従って、その影響を取り除き、バイアス電
いことを意味しており、シミュレーションの積極的な活
圧がかかっていない時のポテンシャル分布を求めるため
用が必要であることを示している。
には、シミュレーションによる解析が不可欠である。そ
[分
のため、我々は、これまで、STM シミュレータの開発
[キーワード]共焦点顕微ラマン分光法、局所応力分布、
野
名]情報通信・エレクトロニクス
Si デバイス、断面効果
を行ってきた。今年度は、STM 計測用シミュレータへ
のトンネル電流計算機能の付加を行い、ドーピング濃度
に依存した I-V カーブを再現することが可能となった。
[テーマ題目5]遷移金属内包 Si クラスターを用いた
これにより、pn 接合によるポテンシャル分布に起因す
デバイス材料の研究開発
る STM の高さプロファイルを再現することも可能とな
[研究代表者]金山
り、シミュレーション結果が測定データを定性的に説明
(ナノ電子デバイス研究センター)
できることを確認した。現在は、結果の定量性を高める
[研究担当者]金山
ために、さらなるシミュレータの改良を行っている。
[分
野
敏彦
敏彦、多田
哲也、内田
紀行
(常勤職員2名、他1名)
名]情報通信・エレクトロニクス
[研 究 内 容]
[キーワード]走査トンネル顕微鏡、ポテンシャル分布、
真空ギャップ変調法、STM シミュレー
本研究は、遷移金属内包 Si クラスターを用いて、新
たなデバイス材料を開発することを目的としている。
ション
前年度の研究により、シラン(SiH4 )ガス中で遷移金
属をレーザアブレーションする方法で遷移金属内包シリ
[テーマ題目4]ナノデバイス構造のフォノン特性評価
コンクラスターを合成し、基板上に堆積することで、半
解析技術の研究開発
[研究代表者]多田
導体薄膜が形成できることが明らかになっている。今年
哲也(原子スケール計測・制御技
度は、この遷移金属内包シリコンクラスターを単位構造
術研究チーム)
[研究担当者]多田
とする半導体薄膜の膜質の向上を目標とする。そのため
哲也、Pobortchi Vladimir、
Bolotov Leonid、西澤
内田
紀行、木下
に、X 線光電子分光(XPS)、ラマン散乱分光などを用
正泰、
いた組成と構造の解析、電気伝導度およびキャリア濃度
和人
と光吸収スペクトルの測定を行った。これによって、膜
(常勤職員1名、他5名)
中の欠陥準位密度を低減させ、キャリア濃度の低減と移
[研 究 内 容]
動度を向上させるための、形成条件を明らかにした。ま
ラマン散乱法を用いて、ナノデバイス構造における局
た、第一原理計算による当該物質の構造・物性の解析を
所応力分布、フォノン特性評価を行うことを目的として
系統的に行い、以後の研究の指針を得た。この結果、主
いる。
に、遷移金属元素を内包したシリコンクラスター
本年度は、浅いトレンチによる素子分離(STI)構造
(MSin:M=Mo, Nb, W)を凝集することで、局所電
の断面測定を、紫外線励起共焦点顕微ラマン分光法によ
子状態の揺らぎを抑え、水素化アモルファスシリコンよ
る応力分布測定を行い、断面における応力方向の解析、
りも、p 型で3000倍、n 型で10倍程度という高い移動度
さらに、断面を出すことが応力分布にどの様な影響を与
を持つアモルファス半導体を作製することができた。ま
えるのかを解析することに成功した。
た、WSin を凝集した膜の X 線吸収スペクトルを測定
Si の520 cm-1 のラマンスペクトルは、圧縮応力を印加
し、第一原理計算シミュレーションと比較することで、
することにより高波数側にシフトし、引っ張り応力を印
膜の局所構造が、WSin で形成されていることを示すこ
加することにより低波数側にシフトする。このことを利
とができた。
用して、Si デバイス構造における局所応力分布測定が
[分
行われている。しかし、ラマンスペクトルのシフト量は、
[キーワード]遷移金属原子内包シリコンクラスター、
応力の大きさだけでなく、その種類や方向に依存するた
野
名]ナノテクノロジー・材料
シリサイド半導体
め、ラマンシフト量の測定だけでは、応力の正確な大き
さや方向の決定は困難である。我々は、STI 構造を持つ
[テーマ題目6]微細トランジスタ作製プロセス技術開
Si 基板の(110)断面において、偏光方向依存性を利用
発
して、ラマン信号の成分を分離して測定することにより、
応力の方向を解析することに成功した。その結果、断面
[研究代表者]金山
敏彦
(先進デバイスプロセス研究チーム)
近傍では STI 中の SiO2による応力のため、断面近傍で
[研究担当者]堀川
は前方への屈曲に起因する圧縮応力が発生しており、構
高野
(135)
剛、糸賀
賢郎、野尻
美和子、木曽
修、
真士、
研
究
にも取り組みつつ、共同研究をベースにした新規材料・
(常勤職員1名、他4名)
プロセスの基礎的研究に継続的に取り組んでいく。
[研 究 内 容]
[分
本テーマは、次世代半導体材料・プロセス基盤
野
名]情報通信・エレクトロニクス
(MIRAI)プロジェクトの新構造極限 CMOS トランジ
[キーワード]微細 MOSFET、金属ソースドレイン、
スタ関連技術開発の一環として、極微細なゲート長のト
高誘電率膜、MIM キャパシタ、シリコ
ランジスタ作製に関わる基盤プロセス技術を整合的に開
ン導波路
発すること、さらにそれらの開発された基盤技術をバリ
[テーマ題目8]シリコンフォトニクスに向けた導波路
スティック伝導発現による高駆動力化に関わるメタルソ
形成プロセスの開発
ース・ドレイン形成技術及びメタルゲート電極/高誘電
[研究代表者]堀川
率ゲート絶縁膜からなるゲートスタック形成技術と組み
剛
(先進デバイスプロセス研究チーム)
合わせることで準バリスティックトランジスタ製造プロ
[研究担当者]堀川
セスを総合的に実証することを目標としている。
剛、糸賀
賢郎、野尻
極微細なゲート長のトランジスタ作製に関わる基盤プ
高野
美和子、木曽
ロセス技術としては、ラインエッジラフネスの少ない線
成井
敏男、田村
幅20 nm 程度以下のゲート細線の形成プロセス、低抵
真士、
修、
裕一
(常勤職員1名、他6名)
[研 究 内 容]
抗のソースドレイン配線形成プロセスなどの開発を実施
している。平成20年度においては、レジストプロセスの
本研究は、極微細 CMOS プロセス開発で確立したリ
改善により線幅22 nm までのポリシリコンゲート細線
ソグラフィー技術や加工技術をベースにシリコンフォト
を EB 直描技術を駆使することで安定に形成できるよう
ニクスの要素プロセス技術を構築し、フォトニクスデバ
になった。現在線幅20 nm 以下のポリシリコンゲート
イスの高品位化を図ることを目標としている。さらに、
細線及び金属ゲート細線の再現性の高い形成プロセス開
これらのフォトニクスデバイスと CMOS 回路の融合に
発及びソースドレイン抵抗の一層の低抵抗化に取り組ん
より高速ネットワークに適用可能な新規フォトニクスデ
でいる。
バイスの開発につなげることを企図する。
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
我々が保有するラインエッジラフネスの少ない細線パ
[キーワード]微細 MOSFET、金属ソースドレイン、
ターン形成技術を基にして、シリコンフォトニクスにお
高誘電率膜、MIM キャパシタ、シリコ
いて基本デバイスとなる低側面ラフネスのシリコン導波
ン導波路
路デバイス形成プロセスの構築に取り組んでいる。平成
20年度は、CMOS 用の EB 直描技術、シリコン加工技
[テーマ題目7]新規ナノ電子デバイス創出に向けた新
術を適用することで側面ラフネスの少ないリブ型導波路
規材料・プロセスの基礎的研究
[研究代表者]堀川
を形成可能であることを示した。現在、ラフネスの一層
剛
の低減を図るとともにこれらのプロセス技術を用いて形
(先進デバイスプロセス研究チーム)
[研究担当者]堀川
剛、糸賀
賢郎、野尻
高野
美和子、木曽
成井
敏男、田村
成した導波路デバイスの性能を検証しようとしている。
真士、
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]微細 MOSFET、金属ソースドレイン、
修、
裕一
高誘電率膜、MIM キャパシタ、シリコ
(常勤職員1名、他6名)
ン導波路
[研 究 内 容]
本研究は、ナノエレクトロニクスイノベーションプラ
[テーマ題目9]最表面原子の分析を可能にする EUV
ットフォーム(NeIP)の一環として、デバイスメーカ
励起光電子分光技術の開発
ー、装置メーカーなどの他機関との共同研究などによ
[研究代表者]富江
り、新規ナノ電子デバイスに向けた新規材料・プロセス
[研究担当者]富江
の基礎的研究開発を実施すること、さらにこれらの研究
葛西
の展開により新規ナノ電子デバイスや新規デバイスプロ
敏尚
敏尚、松嶋功(光技術研究部門)、
彪、石塚
知明
(常勤職員2名、他2名)
セスの提案・実証に結びつけることを目標としている。
[研 究 内 容]
平成20年度より、複数の企業とバイパスコンデンサー
1992年に考案した、レーザー生成プラズマ(LPP)を
や DRAM などに向けた MIM キャパシタに用いる新規
EUV 光源とし飛行時間法(TOF)で電子分光を行うこ
誘電体薄膜材料や新規金属電極薄膜材料の基礎的評価な
とを特徴とする、EUV 励起光電子分光法(EUPS)を
どを実施している。今後、CMOS デバイスのインテグ
実用化すべく装置化技術の開発を進めてきた。EUPS
レーション実証やナノ電子デバイス創出に向け、新規プ
には、最表面原子の情報が得られる、半導体のバンド曲
ロセス・評価装置の導入によるデバイス試作機能の拡充
がりが評価できる、最表面原子の電子雲の傾斜角が評価
(136)
産業技術総合研究所
できるなどの特長があり、物性に直結する知見が得られ
子雲の傾斜角を反映すると解釈できる。EUV 光の進行
ることが期待できる。これにより、原子の価数評価に止
方向と TOF の軸方向を含む照射平面に直交する EUV
まっていた光電子分光法が、物性評価法に大きく転換す
の s 偏光で励起される電子は、TOF 検出器には入らな
る期待がある。種々のナノ材料・デバイスを測定し、物
いので光電子信号に寄与せず、照射平面内にある p 偏
性との比較を行いながら、物性に直結する知見を得るた
光で励起される光電子のみが検出される。従って、試料
めの新分析法を開拓することを目的として研究を推進し
表面に垂直な p 電子を持つ試料の場合、試料が水平に
ている。
近い場合は信号が大きく、試料傾斜角を大きくするに従
昨年度までに、大量の TOF データからエネルギース
い信号強度が減少する。ウエハーの面方位により電子雲
ペクトルへの自動変換ソフトの開発、LPP 光源のメン
の傾斜角が異なるのは、表面原子の再構成を反映すると
テフリー期間の大幅増大など、システム操作性を大きく
解釈できる。
3d 電子や4f 電子のスペクトルを詳細に見たところ、
向上させ、フル稼働で多くの試料の表面分析ができる程
スピン軌道分裂ダブレットの強度比が、原子のそれとは
度に完成度が高まった。
EUPS によって初めて可能になる新分析法の開拓を
異なっており、又、試料により異なることが分かった。
行ってきており、昨年度までに、深さ0.5 nm の極最表
これは電子遷移の終状態が結晶構造により異なるためで
面の情報を得ていること、酸化金属上の一分子層吸着が
あると解釈できる。ダブレットの強度比からも表面状態
検出できること、半導体のバンド曲がりが評価できるこ
の変化が捉えられる可能性がある。
O2s 等の価電子帯の励起断面積は、EUV 光では X 線
と、絶縁材料の大きな抵抗率が評価できること、を明ら
の2桁程度大きいことから、EUPS は、価電子帯構造の
かにしてきた。
本年度は、装置の性能向上として、低エネルギーの二
観測に適している。価電子帯のスペクトル構造から、化
次電子が観測できるようにした。新分析法としては、電
学反応に直結した情報が得られると考えられる。このた
子軌道の角度依存が評価できることと、スピン軌道分裂
めのデータベースの構築として、カーボン、
ダブレットの強度比が表面状態により異なること、を見
Polystyrene、PMMA、グラファイト、C60 、ダイアモ
出した。
ンド、SiC を測定した。
絶縁超薄膜が成膜された Si ウエハーのバンド曲がり
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]光電子分光、パルス EUV 光源、極最表
評価を行い、表面電位が大きくシフトした状態でもバン
ド曲がりが顕著でない試料と、大きくバンド曲がりシフ
面原子、バンド曲がり、電子雲の傾斜角、
トする試料があった。前者は、界面準位が多く、界面準
二次電子、価電子帯
位により表面の電界がシールドされるためバンド曲がり
が小さい。後者は、界面準位の少ない良好な絶縁膜、と
22 【ナノチューブ応用研究センター】
○
解釈できる。帯電などによる表面電位変化させてバンド
(Nanotube Research Center)
曲がりを測定することで、界面準位が評価できることが
(存続期間:2008.4.1~)
分かった。
表面・界面の電子のやりとりで材料・デバイスの機能
研究センター長:飯島
澄男
が発現されるので、仕事関数の評価は極めて重要である。
副 セ ン タ ー 長:湯村
守雄
二次電子の低エネルギー端を見ることで材料の仕事関数
副 セ ン タ ー 長:清水
敏美
が評価できる。エネルギー分析装置(EUPS の場合、
飛行管)の仕事関数以下の材料の評価も出来るように、
所在地:つくば市東1-1-1
試料ホルダーにバイアスが印加出来るよう、装置を改良
人
員:24名(23名)
した。パルス励起での測定であることなど種々の要因で、
経
費:858,435千円(396,338千円)
概
要:
つくば中央第5
二次電子の低エネルギー端がシフトすることが考えられ、
次年度以降に、正しい仕事関数を求めるための測定法を
確立する。
本研究センターでは、新産業創生で期待されるナノ
EUPS では、EUV 光は水平に照射され、鉛直に立て
構造体の代表であるナノチューブ構造体に着目し、こ
た飛行管で試料からの電子を検出している。試料の水平
れまで産総研において開発してきたカーボンナノチュ
からの傾斜角を小さくすることで、試料上の照射面積が
ーブと有機ナノチューブを主軸とし、高機能性を付加
大きくなり光電子信号が大きくなる。幾つかの傾斜角で
しそれらの用途開発を進め、我が国の新たな産業育成
Si ウエハーを測定したところ、試料上の照射面積の変
に貢献する。また、ナノチューブ材料の国際標準化に
化から外れた変化が観測された。スペクトル構造も傾斜
も貢献する。さらに、ナノチューブ材料を含むナノ構
角に依存し、その依存性はウエハーの面方位により異な
造体の最高性能計測・分析技術の開発を独自に発展さ
った。光電子信号の試料傾斜角依存は、最表面原子の電
せ、世界をリードするナノチューブ材料の総合研究セ
(137)
研
究
独立行政法人科学技術振興機構「低加速高感度電子顕微
ンターへの発展を目指すものである。
鏡の開発とソフトマターの分子・原子レベル観察実験へ
これまでの成果をもとに、企業と連携し実用化・産
の応用」
業化を進める。また、カーボンナノチューブと有機ナ
ノチューブの融合を図り、新物質の開発を目指す。す
なわち、カーボンナノチューブの実用化・産業化・標
独立行政法人科学技術振興機構「SWNT 量産用自動直
準化、有機ナノチューブの実用化・産業化・標準化、
径制御合成システムの構築と SWNT 加工プロセス基礎
ナノチューブ複合材料の創製・実用化、世界最高性能
技術の開発」
計測・分析技術、ナノチューブ物質の実用化・産業化
の研究開発を推進する。
独立行政法人科学技術振興機構「分子内包によるカーボ
具体的には、以下の研究開発を実施する。
ンナノチューブ機能材料の創製」
1)
ナノチューブ材料の実用化・産業化
独立行政法人科学技術振興機構「超分子ナノチューブア
ナノチューブ大量合成技術のさらなる高度化をベ
ーキテクトニクスとナノバイオ応用」
ースとして、カーボンナノチューブでは電子材料、
高強度構造材料等に向けた用途開発を有機ナノチュ
ーブでは薬剤包接材料等に向けた用途開発を進める。
2)
発
表:誌上発表61件、口頭発表153件、その他18件
ナノチューブ複合材料の創製・実用化
---------------------------------------------------------------------------
カーボンナノチューブ、有機ナノチューブ、両材
スーパーグロース CNT チーム
料の接点として、ナノチューブの化学加工や複合化
(Super Growth CNT Team)
をもとに、バイオ応用等を目指した高機能性ナノチ
研究チーム長:畠
賢治
(つくば中央第5)
ューブの開発を進める。
3)
概
世界最高性能計測・分析技術の確立およびナノ物
要:
画期的なカーボンナノチューブの合成法、スーパー
質コーティング応用技術
超高性能電子顕微鏡や光学的評価技術をベースと
グロース法(水添加化学気相成長法)を開発し、基板
したナノチューブ材料の計測・分析技術を確立する
から垂直配向した単層カーボンナノチューブを高効率
とともにナノ物質コーティング応用技術の開発を進
に高純度で成長させることに成功した。このスーパー
める。
グロース法の基本技術をもとに、大面積化による基板
ナノチューブ材料の標準化・リスク評価
から垂直配向した単層カーボンナノチューブの量産技
本研究センターの高純度・高品質ナノチューブお
術の開発、それらの高エネルギー密度キャパシターへ
よび高性能計測・分析技術を用いて、ナノ物質の国
の応用、シート状に垂直配向した単層カーボンナノチ
際標準化におけるイニシアティブを発揮する。また、
ューブから配向単層カーボンナノチューブ集合体基板
リスク評価においては産総研内外と連携して取り組
の創製と微小電気機械素子(MEMS デバイス)への
む。
応用、電界放出形ディスプレイの電極基板への直接成
4)
---------------------------------------------------------------------------
長による電界放出形ディスプレイへの応用と多岐にわ
外部資金:
たる研究開発を行う。
研究テーマ:テーマ題目1
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
「カーボンナノチューブキャパシター開発プロジェク
流動気相成長 CNT チーム
ト」
(Direct Injection Pyrolytic Synthesis Team)
研究チーム長:斎藤
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
「高集積・複合 MEMS 製造技術開発事業」
毅
(つくば中央第5)
概
要:
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
直噴熱分解合成法(DIPS 法)を用いた単層カーボ
「カーボンナノチューブに関する標準化調査事業」
ンナノチューブ(SWCNT)の量産的合成技術および
直径制御合成技術を高度化し、SWCNT をそれぞれ
文部科学省科学研究費補助金「機能性カーボンナノチュ
の産業応用に適した構造(直径、長さ、カイラリテ
ーブの原子レベル構造解析」
ィ)に合成・分離する技術を確立する。加えて、薄膜
化・紡糸といったそれぞれの応用に適した形態に加工
独立行政法人科学技術振興機構「自己組織プロセスによ
する基盤技術を開発し、企業との共同研究を積極的に
り創製された機能性・複合 CNT 素子による柔らかいナ
推進することを通して高強度構造材料やエレクトロニ
ノ MEMS デバイス」
クス、医療等の多方面に及ぶ実用化・産業化を実現す
(138)
産業技術総合研究所
る。さらに、ナノチューブの国際標準化が進められて
機能性ナノチューブチーム
いる中、産総研の成果である超高純度・高品質ナノチ
(Functional Nanotube Team)
ューブを用いて行政ニーズであるナノチューブ関連の
研究チーム長:湯田坂
雅子
(つくば中央第5)
国際標準化に寄与し、イニシアティブを確保する。
概
研究テーマ:テーマ題目2
要:
カーボンナノチューブの化学加工は、いまだに基礎
有機ナノチューブチーム
的段階が確立されていない。そこで、ナノチューブが
(Organic Nanotube Team)
持つ官能基の種類と数を制御する方法を見出すととも
研究チーム長:浅川
に、官能基の適切な評価法を探索し、化学修飾カーボ
真澄
ンナノチューブを用いて高品質な高分子分散系を作製
(つくば中央第5)
概
要:
し、透明電極やフレキシブルトランジスターの製作に
集合様式のプログラムが書き込まれたある分子は水
役立つようにする。
や有機溶媒中で自己集合してナノメートルサイズのチ
また、カーボンナノチューブやナノホーンの化学加
ューブをはじめとする種々ナノ構造体を形成する。こ
工では、多目的加工が容易であり、カーボンナノチュ
のボトムアップ型有機ナノ構造形成手法を使うと、こ
ーブの応用範囲が広がる利点を生かして、カーボンナ
れまで半導体産業を支えてきたトップダウン型微細加
ノチューブを用いたドラッグデリバリーシステムを作
工技術と比較して、少ないエネルギーで容易に複雑な
成する。例えば、カーボンナノチューブ内外に薬剤分
3次元ナノ構造体を作ることができる。当研究チーム
子を担持させ、さらに、カーボンナノチューブに標的
では、有機ナノチューブを代表とするこれらナノ構造
分子、水溶化分子、可視化分子などを付加することで、
体の大量合成・高度化研究開発を行うとともに、幅広
より良いドラッグデバリーシステムの作製を目指す。
研究テーマ:テーマ題目5
い業界、業種の民間企業と共同し、安心・安全なボト
ムアップ型有機ナノ材料としての DDS 素材(医療)、
機能性食品(食品・健康)、機能性肥料(環境・農
カーボン計測評価チーム
業)などを目指した用途開発研究を行う。
(Nano-Scale Characterization Team)
研究チーム長:末永
研究テーマ:テーマ題目3
和知
(つくば中央第5)
概
バイオナノチューブチーム
(Bio-nanotube team)
研究チーム長:増田
カーボンナノチューブやフラーレン、グラフェンな
どのナノカーボン物質の多様な構造を正確に把握し、
光俊
そこで生じる特異な物理・化学現象の実験的検証を進
(つくば中央第5)
概
要:
要:
めることは、ナノカーボンの科学の探求と画期的な応
親水部と疎水部を有する両親媒性分子は、自己集合
用法の確立の両面において、極めて重要な課題である。
によって中空のナノチューブ、繊維状のナノファイバ
超高感度電子顕微鏡装置開発を通じ、これまで困難
ーなどのナノ材料を形成する。この自己集合などのボ
であったナノカーボン材料における原子レベルでの元
トムアップ手法による材料創成は、シンプルかつ省エ
素同定や構造解析法を実現する。それとともに、これ
ネルギーな製造プロセスであるため、今後の新規ナノ
ら評価技術を駆使した新たなナノカーボン材料のナノ
材料の形成手法として期待されている。本手法で生み
スペース科学の構築とその応用を目指した研究開発を
出される有機ナノチューブ材料は中空ナノ空間を有し、
行う。
研究テーマ:テーマ題目6
比較的生体適合性の高い脂質分子から構成されている
ため、分析・医療・ナノバイオ分野での応用が期待さ
れている。当チームでは、これらの有機ナノチューブ
ナノ物質コーティングチーム
材料の応用・実用化に必要不可欠な要素技術であるサ
(Nano-coating Team)
イズ制御技術や合目的に種々の機能性材料で修飾・複
研究チーム長:長谷川
雅考
(つくば中央第5)
合化する技術(ナノチューブのテーラーメード化技
概
術)の確立を目指している。また、これらの技術を駆
要:
使したテイラーメード型の有機ナノチューブ群の創成
ナノ結晶ダイヤモンド薄膜(ナノダイヤ薄膜)およ
とこれらをコア材料とした分野横断的な応用研究を連
びナノチューブ/ナノダイヤのハイブリッド材料を中
携しながら取り組んでいる。
心としたナノ材料コーティング技術の開発および構造、
物性、機能等の評価解析を行うことにより、機械的機
研究テーマ:テーマ題目4
能あるいは化学的・電気的機能に優れ、環境に適合す
(139)
研
究
るコーティング製品を開発することを目的としている。
継続したことで再現性向上の可能性を見い出すこと
ナノカーボン技術の応用として、基板に依存しない
に成功した。流体シミュレーションによって、連続
大面積低温ナノ結晶ダイヤモンドの成膜技術を開発す
合成検討システム(連続炉)に搭載する各種要素技
るとともに、さらにナノカーボン材料/ナノ結晶ダイ
術について、カーボンナノチューブ合成に最適なガ
ヤモンド機能性材料の開発を行う。
ス給排気系を設計し、連続合成検討システム(連続
研究テーマ:テーマ題目7
炉)を立ち上げることに成功した。その後、実験条
---------------------------------------------------------------------------
件を最適化することにより、従来法とほぼ同等の単
[テーマ題目1]ナノテクノロジープログラム/カーボ
層カーボンナノチューブ構造体を合成することに成
功した。
ンナノチューブキャパシタ開発プロジェ
③
クト
[研究代表者]飯島
長尺化・高効率カーボンナノチューブ合成技術の
研究
澄男
基板面積当たりの収量を増加させるために、反応
(ナノチューブ応用研究センター)
ガスの流量および熱履歴を最適化する合成法の開発
[研究担当者]飯島
澄男、湯村
守雄、畠
二葉
ドン、山田
健郎、羽鳥
棚池
修、岡崎
毅、
7.5 mg/cm2 ( 従 来 の 5 倍 )、 比 表 面 積 1100 m2/g
保田
諭、Ming Xu、佐藤 潤一、
(で従来と同等)を達成した。これにより基本計画
山田
真帆、何
の成長効率100,000%以上、炭素効率10%以上、生
後藤
潤大(常勤職員9名、他7名)
俊也、斎藤
賢治、
金萍、鄭
を開始した。炭素効率20%(従来比2倍)、平均収量
浩章、
淳吉、
産速度0.03 g/h・cm2を達成した。
[研 究 内 容]
④
構造制御カーボンナノチューブ合成技術の研究
本プロジェクトは、従来の活性炭を電極に用いたキャ
成長前の触媒形成プロセスの温度、触媒還元水素
パシタの代わりに、カーボンナノチューブを用いた高性
量、トータルガス流量といった合成条件を変化させ
能キャパシタを開発するために、スーパーグロース合成
ることにより、カーボンナノチューブ構造体中のカ
手法を用いてカーボンナノチューブ量産化技術およびキ
ーボンナノチューブのサイズ、密度、高さ、収量の
ャパシタ製造技術を確立することが目的である。この目
制御を行った。触媒形成プロセス調整で直径制御
(1.9~3.2 nm)に成功した。
標を達成するため、カーボンナノチューブ量産化技術に
関する基礎的研究を行い、以下の5つの開発項目を行っ
⑤
た。
①
最適カーボンナノチューブ探索及び合成技術の研
究
高効率 CNT 合成および触媒形成プロセス調製
触媒・助触媒・基板の研究
CVD 装置で合成したカーボンナノチューブを用い
湿潤触媒製膜方法において、塗布溶液の長期保存
安定性および塗布の安定性を向上させることができ
たキャパシタを試作し、基本性能を評価した。
た(塗布不良が発生する頻度が減少した)。また、
⑥
基板の単位面積当たりのカーボンナノチューブの収
単層カーボンナノチューブ標準化のための計測評
価技術の開発
量が従来よりも1.5倍向上して、ウェット触媒のカ
単層カーボンナノチューブ標準化のために UV
ーボンナノチューブ成長の改善傾向を見出すことに
吸収、蛍光発光法およびラマン分光法を用いた単層
成功した。カーボンナノチューブ生産における低コ
ナノチューブの直径評価技術を開発し、得られた結
スト化のために、触媒基板の再利用プロセスについ
果を ISO 標準化に向けたワーキングドラフトに反
て検討した。一度カーボンナノチューブを成長させ
映させた。
た使用済みの触媒の上に、新しい触媒を積層するこ
[分
とで基板を再利用する新しいプロセスを開発した。
[キーワード]カーボンナノチューブ、スーパーグロー
このプロセスによって、10回以上の基板再利用に成
ス、カーボンナノチューブ状構造体、キ
功した。金属基板を何度も繰り返し CVD にかけて
ャパシタ
野
名]ナノテク・材料・製造
カーボンナノチューブが生産可能である、という知
見を得ることができた。
②
[テーマ題目2]DISP 法による超高品質単層カーボン
大面積化カーボンナノチューブ合成技術の研究
ナノチューブの量産技術と材料加工技術
A4サイズ基板に成長させた単層カーボンナノチ
開発およびその応用探索
ューブ構造体の品質評価を詳細に行った結果、面内
[研究代表者]斎藤
毅(流動気相成長 CNT チーム)
の不均一性が新しい課題として判明した。また、ス
[研究担当者]斎藤
毅、大森
滋和、
ーパーグロース大面積 CVD 合成装置検討システム
ビカウ
でのカーボンナノチューブ成長の再現性が低いとい
大和田貴子、橋本
う課題もあったが、原因解明のための対策・実験を
(常勤職員1名、他5名)
(140)
シュクラ、小林
裕
明美、
産業技術総合研究所
(常勤職員3名)
[研 究 内 容]
[研 究 内 容]
本研究では単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を
高効率低コストで大量に製造可能なプロセスである直噴
有機ナノチューブ大量合成技術をさらに高度化し、幅
熱分解合成法(DIPS 法)の開発と、この合成プロセス
広い業界、業種の民間企業と共同し、安心・安全なボト
で得られる超高品質 SWCNT を材料として加工するた
ムアップ型有機ナノ材料としての DDS 素材(医療)、
めの技術およびその応用探索を行っている。平成20年度
機能性食品(食品・健康)、機能性肥料(環境・農業)
における進捗を以下に述べる。
などの実用化とカーボンナノチューブ、有機ナノチュー
DIPS 法では炭素源の導入量によって SWCNT の平
ブ両材料の接点として、ナノチューブの化学加工や複合
均直径を比較的選択的に制御することが可能である。し
化をもとにバイオ応用等を目指した高機能性ナノチュー
かしながら、各直径で収率や純度のばらつきが大きく、
ブの開発を目的とする。平成20年度は、有機ナノチュー
特に細い SWCNT(直径~1 nm 以下)の合成において
ブの実用化を実現するために、大量製造方法の高度化と
収 量 の 低 下 や 多 核 芳 香 族 炭 化 水 素 ( polynuclear
新たな大量製造可能な化合物の探索、高機能性ナノチュ
aromatic hydrocarbons: PAH)などの副生成物が著し
ーブの開発を行った。
い こ と が わ か っ て き た 。 CNT ト ラ ン ジ ス タ な ど
また、有機ナノチューブを用いて、タンパク質をはじ
SWCNT の半導体特性を利用した応用分野においては
めとする種々のゲスト物質の包接および徐放特性を評価
比較的広いバンドギャップを有する直径の細い
した。当該チームでは、これまでに表面に水酸基あるい
SWCNT が適しているため、量産技術開発が望まれて
はカルボキシル基をもつ2種類の有機ナノチューブの大
いる。そこで本研究ではこれまで検討してこなかった様
量製造方法を開発してきたが、平成20年度は、表面に金
々なパラメータ、特に反応温度に関して検討を行い、反
属イオンを持つ有機ナノチューブの大量製造方法を開発
応温度が合成に及ぼす影響を評価するとともに、高純度
した。金属錯体タイプ有機ナノチューブは、3種類目の
で直径分布の狭い、直径1 nm 以下の細い SWCNT の
大量製造可能な有機ナノチューブとなる。有機ナノチュ
合成条件を最適化し、カイラリティ制御の可能性を検討
ーブの内外表面および膜中に存在する金属イオンを利用
した。反応温度が1075 ℃の時に光吸収スペクトルで観
することで、比表面積の大きな触媒や、DNA やタンパ
測される PAH 由来の鋭い一連のピークが、1000 ℃前
ク質などの機能性物質を分離する材料として期待される。
後においては観測されなくなり、さらに900 ℃以下に下
また、鋳型合成により金属ナノ構造体へ変換すること
げると半導体 SWCNT の E11バンドの吸収ピークの形状
で、電子・磁気・光学材料としての応用も考えられ、医
が変化しはじめ、やや太い SWCNT が合成されはじめ
療・食品・バイオ・エレクトロニクスなど様々な分野で
るとともに収量が減少することが観測された。このこと
の応用が期待される。高機能性ナノチューブの開発とし
か ら DIPS シ ス テ ム で は 900 ℃ 以 上 で 効 果 的 に
ては、銀イオンが配位した有機ナノチューブを光還元す
SWCNT の合成が可能であり、細い SWCNT 合成時の
ることで、4~5 nm 程度の銀ナノ粒子がナノチューブ
副反応を抑制するために適した反応温度は1000 ℃程度
の膜中に埋め込まれた世界にも類のないハイブリッドナ
であるという結論を得た。こうして PAH 由来の光吸収
ノチューブの形成に成功した。また、有機ナノチューブ
を減少させることができるようになったため、これまで
とカーボンナノチューブのハイブリッド化に関しても検
検討されてこなかった SWCNT の高エネルギー(紫
討を進め、足がかりとなる成果を得ている。有機ナノチ
外)領域の光吸収特性に関して様々な直径で細かい解析
ューブによるゲスト包接及び徐放特性の評価としては、
が可能となり、これらのピークのシフト位置も
有機ナノチューブに室温で、CD(シクロデキストリ
SWCNT のファンホーブ特異点間の電子遷移由来の光
ン)の水溶液を加えると、板状結晶へと変化することを
吸収ピークと同様に SWCNT の直径によって系統的か
見い出した。有機ナノチューブを構成する両親媒性分子
つ特異的に変化していることが明らかとなった。これら
は、水中で CD と包接錯体を形成されるためであると考
のことは SWCNT の光学的物性物理において新規な現
えられる。有機ナノチューブを温和な条件で容易に分解
象であり、さらにこれら紫外領域の光吸収分光を
できることにより、その適用範囲が広がると期待できる。
SWCNT の直径評価指標として適応できる可能性を示
さらに、水溶液中に分散したナノチューブを高周波電界
しており、極めて興味深い。
により配向させ、個々のナノチューブの長さを測定する
[分
ことで、長さ分布の測定に成功した。この技術を用いる
野
名]ナノテクノロジー・材料・製造
[キーワード]ナノチューブ、CVD
とゲスト物質としてタンパク質や核酸などを内部に取り
込んだ有機ナノチューブの運動制御が可能となり、医
[テーマ題目3]有機ナノチューブの大量合成・高度化
療・健康・ナノバイオ分野など幅広い応用展開が期待さ
研究開発
れる。
[研究代表者]浅川
真澄(有機ナノチューブチーム)
[分
[研究担当者]浅川
真澄、青柳
[キーワード]自己集合、有機ナノチューブ、金属錯体、
将、小木曽
真樹
(141)
野
名]ナノテクノロジー・材料・製造
研
究
度などの外部刺激による薬剤放出制御に成功した。すな
包接・徐放
わち、内表面に正電荷を有する有機ナノチューブは、負
電荷をもつ DNA や蛍光分子を効率的に包接することが
[テーマ題目4]有機ナノチューブ、ナノファイバーの
できる。この内表面の正電荷は分散液の pH を変えるこ
テイラーメード化技術の確立
[研究代表者]増田
とで、消失させることが可能である。このため、pH を
光俊
制御することによって、効率的に内包された DNA や蛍
(バイオナノチューブチーム)
[研究担当者]増田
光俊、南川
博之、亀田
光分子を放出できることが明らかとなった。また、これ
直弘、
Lee Soo Jin, Ding Wuxiao,
らの有機ナノチューブはある温度以上に加熱するとより
田中
流動性の高い状態に相転移する。使用した有機ナノチュ
明日香、和田
百代
ーブは65 ℃付近にこの相転移温度を持つが、その温度
(常勤職員3名、他3名)
以上に加温すると、同様に内包していたこれらのゲスト
[研 究 内 容]
分子を放出することが明らかとなった。
分子の自己集合などのボトムアップ手法で得られる有
機ナノチューブ・ナノファイバー系材料をキーマテリア
[分
ルとして用い、診断、創薬等での課題解決、革新的な手
[キーワード]ボトムアッププロセス、ナノ材料、ナノ
野
名]ナノテクノロジー・材料・製造
法の提供に貢献し、医療・ナノバイオ分野での独創的な
チューブ、ナノファイバー、医療用材料、
応用・実用化を実現することを目的とする。このための
バイオチップ
基盤となる以下の技術やナノ材料群を創製する。具体的
には、合目的に有機ナノチューブの表面をデザイン・修
[テーマ題目5]ナノホーンのドラッグデリバリー応用
飾する技術(テイラーメード化技術)、DNA、タンパク
[研究代表者]湯田坂
また、これらの技術を駆使して生み出される均一な形態、
雅子
(機能性ナノチューブチーム)
質等との複合化技術(ハイブリッド化技術)を確立する。
[研究担当者]湯田坂
藤波
サイズ、機能性をもつテーラーメイド型の有機ナノチュ
雅子、張
民芳、入江
路子、
貴子、Xu Jianxun
(常勤職員1名、他4名)
ーブ群の創成とそのナノ空間特性などの基本物性の解明
[研 究 内 容]
によって、ナノチューブ系材料の実用化に資することを
ナノチューブやナノホーンが実用に適するように、化
目指す。
平成20年度は、極微量のタンパク質を超高感度で検出
学修飾および形状制御を行った。そのために、必要なナ
可能なセンシング用ナノチューブの開発を行った。すな
ノカーボン特有の処理法を検討した。また、得られたも
わちチューブ内表面への蛍光性官能基を配置するための
のの構造や性質の独特な観察法あるいは計測法も検討し
新たな分子設計を行った。合成した分子と有機ナノチュ
た。化学修飾や構造制御をした効果をドラッグデリバリ
ーブを形成する分子との自己集合によって、世界最小の
ー応用研究により確認し、大きな効果があることを明ら
10 nm 前後の内径を持ち、内表面にタンパク質検出用
かにした。
の蛍光性官能基を有するナノチューブの構築に成功した。
また、ナノホーンに抗がん剤を担持させ、ドラッグデ
このセンシング用ナノチューブと蛍光タンパク質を混合
リバリー応用のための基礎研究を行った。その結果、ナ
すると、両者の静電的な引力によってナノチューブ内に
ノホーンを用いると抗がん剤の効果が上がることがわか
タンパク質が包接される。同時にタンパク質とナノチュ
った。
ーブ内表面の蛍光性官能基の間で蛍光エネルギーの移動
[分
が引き起こされ、ナノチューブ自身が蛍光発光する。こ
[キーワード]ナノチューブ、ドラッグデリバリー
野
名]ナノテクノロジー・材料・製造
れらの現象により、包接されたタンパク質の高感度検出
が可能となった。これらはタンパク質の超高感度分析に
[テーマ題目6]カーボン計測制御技術の開発
おいて必要不可欠な要素技術である。さらに、本ナノチ
[研究代表者]末永
和知(カーボン計測評価チーム)
ューブ中にタンパク質を包接させることで、その熱安定
[研究担当者]末永
和知、佐藤
雄太、劉
性の大幅な向上が見られることをナノチューブ構造とし
越野
雅至、小林
慶太、廣瀬
ては世界で最初に見い出した。バルク水溶液との比較に
小林
めぐみ、Jin Chuanhong、
おいては25℃以上の安定化が可能である。詳細な解析か
新見
佳子、鈴木
らこれらの現象はナノ空間中での水の物性変化に由来し
崢、
香里、
浩紀
(常勤職員4名、他6名)
ていることが示唆され、ナノチューブ構造に特有の現象
[研 究 内 容]
であることを解明した。
カーボンナノチューブ応用のための要素技術開発とし
また、有機ナノチューブに保持した DNA や蛍光分子
て、超高感度電子顕微鏡装置開発を通じ、これまで困難
などの放出実験においては、従来のリン脂質からなる球
であった新炭素系物質における原子レベルでの元素同定
状小胞体(リポソーム)では困難とされてきた pH や温
や構造解析法を実現する。それとともに、これら評価技
(142)
産業技術総合研究所
術を駆使した新炭素系物質のナノスペース科学の構築と
情報を扱うことの出来るネットワークインフラを構築
それを制御した新機能発現とその応用を目指した研究開
して行く必要がある。このために、我々は IP をベー
発を行う。
スとした従来のネットワークに加えて、大幅な低消費
また、化学反応の素過程の観察や単分子の構造解析な
電力化が期待できる光の回線交換を用いた光パスネッ
ど化学・生物分野への電子顕微鏡解析手法の展開を図る。
トワークを提案しており、これに向けた研究開発を科
新しい収差補正技術の確立や試料作製技術などの発展に
学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション拠
も貢献する。
点」の課題「光ネットワーク超低エネルギー化技術拠
[分
点」で推進している。また、今後増大していく、高精
野
名]ナノテク・材料・製造
細画像情報を中心とした、巨大情報に対応するために、
[キーワード]電子顕微鏡、ピーポッド、内包フラーレ
160 Gb/s の超高速の光伝送装置の研究開発を NEDO
ン、光学測定
プロジェクト「次世代高効率ネットワークデバイス技
術」で進めている。
[テーマ題目7]ナノ物質コーティング応用研究開発
[研究代表者]長谷川
先端融合領域イノベーション拠点では、光パスネッ
雅考
トワークでの経路切り替え用のスイッチとして、小
(ナノ物質コーティングチーム)
[研究担当者]長谷川
雅考、石原
正統、金
型・大規模化が可能なシリコンフォトニクを用いたス
載浩、
俊輔
イッチの開を進めた。これまでに、リッジ導波路、メ
(常勤職員3名、他2名)
サ型導波路の両者で、熱光学効果を用いたい干渉計型
津川
和夫、川木
スイッチの動作を確認した。今後具体的な集積スイッ
[研 究 内 容]
ナノダイヤコーティングのシリコン・オン・ダイヤモ
チに向けて研究を進める。また、ファイバの分散補償
ンド(SOD)応用を目標に、成膜装置の準備、基礎特
技術では、ファイバの非線形性を用いた4光波混合に
性の評価を実施する。ナノカーボン材料/ナノダイヤ機
よる波長変換と、逆分散のファイバを組み合わせた、
能性材料開発および SOD 応用開発で重要なナノダイヤ
パラメトリック分散補償技術を開発している。これま
膜の熱伝導特性の測定法を確立し、熱伝導特性の向上技
でに励起光をチューニングすることで、1 THz 以上
術を開発する。鉄系基材へのナノダイヤコーティングに
の帯域で高分散補償の原理を実証した。また、この技
よる摺動応用について実用レベル試験(LFW 試験)に
術をベースに、可変遅延制御の技術を開発した。
今後増大していく画像情報については、NEDO プ
耐える密着強度および低摩擦係数を実現する。
[分
野
ロジェクトで、実時間で高精細の映像情報を伝送する
名]ナノテク・材料・製造
[キーワード]ナノ結晶ダイヤモンド薄膜、マイクロ波
ための160 Gb/s の超高速の送受技術の研究開発を進
プラズマ CVD、シリコン・オン・ダイヤ
めている。光時分割多重方式を採用して、必須になる
モンド、熱伝導特性、摺動特性、カーボ
160 Gb/s 以上の超高速で動作する全光スイッチやそ
ンナノチューブ/ナノ結晶ダイヤモンド
の他の必要なデバイスをハイブリッド集積した、160
複合材料
Gb/s 光トランシーバの研究開発を進めている。応用
として、放送局舎内でスーパーハイビジョンなどの高
精細映像を配信する光 LAN に適用することを目指し
23 【ネットワークフォトニクス研究センター】
○
(Network Photonics Research Center)
ている。具体的には、InGaAs/AlAsSb 半導体量子井
戸の伝導体での離散的な準位間の電子の遷移(サブバ
(存続期間:2008.10.1~)
ンド間遷移)による超高速全光位相変調効果を用いた
研究センター長:石川
干渉計型の全光スイッチを開発、これをシリコン微細
副研究センター長:挾間
浩
導波路とハイブリッド集積した、小型の160 Gb/s の
壽文
光時間多重 ネ ットワーク イ ンターフェ ー スカード
所在地:つくば中央第2
(NIC)の開発を進めている。これまでに、個別デバ
人
員:13名(12名)
イスを用いた160 Gb/s の信号処理に成功している。
経
費:491,253千円(173,336千円)
以上の研究開発に加えて、InGaAs 系のサブバンド
間遷移スイッチより高速性に優れたⅡ-Ⅵ族のサブバ
概
要:
ンド間遷移素子の開発も進めた。特に、量子井戸を
インターネットの普及で映像情報を中心として通信
SiO2 の中に埋め込んで光閉じ込めを大きくして低エ
トラフィックが大きく増加している。これに対応して
ネルギー動作を目指す研究では、その効果が確認され
ネットワークの消費電力が急激に増大している。今後、
た。今後 InGaAs 系のサブバンド間遷移スイッチに
ネットワークを活用して、より効率的で安全、安心な
も適用していく予定である。また、シリコンフォトニ
社会を形成していくためには、低消費電力で、大量の
クスを用いた光アイソレータについても研究を進めた。
(143)
研
究
---------------------------------------------------------------------------
(つくば中央第2)
概
外部資金:
要:
科学技術振興調整費「先端融合領域イノベ
光通信機器が、今後も、トラフィック拡大の要求に
ーション創出拠点」「光ネットワーク超低エネルギー化
答えていくためには、光スイッチや光源、受光器など
技術拠点」
の個別デバイス、更には論理回路を組み合わせて、よ
文部科学省
り高度な処理機能を備えたモジュールにすることと、
総務省
そのための次世代集積技術が求められている。これま
戦略的情報通信研究開発制度「サブバンド間遷
で石英平面光回路(Planar Light Circuit, PLC)が、
移超高速光スイッチの研究開発」
集積化のプラットホームとなる導波路系として利用さ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次
れてきたが、SOI を基に作製されるシリコン光導波
世代高効率ネットワークデバイス技術開発」
路は、石英系を凌駕する集積密度を実現するプラット
ホームとして注目を集めている。当チームでは、シリ
文部科学省
科学技術補助金
特別研究員奨励費
コン光導波路や分・合波器など基本素子の低損失化、
「非
光入出力効率の改善といった基盤技術の開発に取り組
相反移相型光アイソレータの高機能化に関する研究」
むとともに、シリコン光導波路系に化合物半導体のア
特定領域「超高速全
クティブデバイスを組み込むハイブリッド集積技術、
光スイッチの低エネルギー動作化と光信号処理デバイス
光パス網の実現に必要となる大規模光クロスコネクト
への展開」
(マトリックススイッチ)の研究開発を進めている。
文部科学省
科学技術研究補助金
高い消光比、広帯域、低損失を設計時から優先的に重
日本学術振興会
外国人特別研究員事業
視している。
「サブバンド
研究テーマ:テーマ題目2
間遷移長高速光スイッチの低エネルギー動作化に関する
研究」
光信号処理システム研究チーム
発
(Optical Signal Processing System Research Team)
表:誌上発表35件、口頭発表57件、その他2件
---------------------------------------------------------------------------
研究チーム長:並木
周
(つくば中央第2)
超高速光デバイス研究チーム
(Ultrafast Optical Device Research Team)
研究チーム長:鍬塚
概
光の役割を検討・提案しながら、光ネットワークの実
(つくば中央第2)
概
要:
将来のネットワーク像を模索し、システムにおける
治彦
要:
現を目指す研究を進めている。光機能性材料・デバイ
160 Gbit/s 以上の超高速光通信に資する光デバイ
スを活用した光信号処理システム、特に、非線形光学
スの研究を進めている。励起電子の超高速緩和が可能
現象を用いる新しい光信号処理の提案を行い、システ
なⅢ-Ⅴ族およびⅡ-Ⅵ族化合物半導体の量子井戸の
ムレベルでの検証を行う。光ネットワークの要素技術
サブバンド間遷移を利用した、超高速光ゲートスイッ
として、波長変換、可変分散補償、遅延制御、光信号
チの実現を目指した研究に注力している。このため、
再生などを優先的な課題としている。非線形光学材料
量子井戸層内の電子有効質量、バンドオフセットの同
として、高非線形ファイバ、ニオブ酸リチウム、シリ
定や、TM 光による TE 光への位相変調機構の解明の
コン導波路、化合物半導体などを用いている。このチ
ような基礎的な研究から、量子井戸構造の理論的実験
ームでは材料開発は行わないため、ネットワークフォ
的な最適化による光位相変調効果の増大を目指した材
トニクス研究センターや光技術研究部門など産総研内
料研究や、 周 期構造によ る 位相変調効 率 の増大や
の関連部門だけでなく、国内外の先端研究グループと
SiO2 埋め込み構造によるスイッチングエネルギーの
の材料に関連した連携・シナジーを積極的に追及して
低減を目指したデバイス構造の研究、さらに、サブバ
いる。ネットワークレベルなど上位レイヤーでの検討
ンド間遷移光スイッチを干渉計に組み入れた光ゲート
評価についても、内外の関連研究グループとの連携を
スイッチモジュールの開発まで、材料の基礎研究から
目指している。
研究テーマ:テーマ題目3
デバイス動作の実証まで幅広く研究を進めている。
---------------------------------------------------------------------------
研究テーマ:テーマ題目1
[テーマ題目1]超高速全光スイッチ(運営交付金、総
ナノフォトニクス集積研究チーム
務省戦略的情報通信研究開発制度、文部
(Nanophotonics Integration Research Team)
科学省科学技術研究補助金、日本学術振
研究チーム長:河島
興会科研費補助金、独立行政法人新エネ
整
(144)
産業技術総合研究所
(ナノフォトニクス研究チーム)
ルギー・産業技術総合開発機構プロジェ
[研究担当者]金高
クト)
[研究代表者]鍬塚
健二
、須田
悟史、挾間
壽文、
(常勤職員4名、他4名)
治彦
[研 究 内 容]
(超高速光デバイス研究チーム)
剛、
ハイブリッド集積によるサブバンド間遷移素子を用い
一路、
た超小型干渉計型のスイッチ、半導体デバイスとシリコ
[研究担当者]物集
照夫、秋本
良一、小笠原
永瀬
成範、挾間
壽文、秋田
牛頭信一郎、Cong Guangwei、
ン導波路とのハイブリッド集積による小型の超高速光ト
Lim Cheng Guan
ランシーバを目指した研究開発を行った。シリコン細線
(常勤職員6名、他4名)
導波路の形成技術の開発を行い、SOI 基板を用いたリ
ッジ導波路、細線導波路の基本的作製技術を開発した。
[研 究 内 容]
160 Gb/s 以上の超高速領域で動作する量子井戸のサ
これを用いて、リッジ導波路では、熱光学効果を用いた
ブバンド間遷移を用いた全光スイッチを目指して研究を
干渉計型スイッチを製作してその動作を確認した。また、
進めている。Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体を用いたスイッチと
半導体チップとシリコン細線導波路との高効率の光結合
Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体を用いたスイッチの開発を並行し
を実現するための光結合構造の設計を行った。さらに、
て進めている。二つの材料系について研究を進めること
シリコン導波路を持ちいた光アイソレータについても研
により、サブバンド間遷移スイッチの物理が明快になり、
導波路作成技術を中心に研究を行った。
より高性能のスイッチの実現に繋げることを狙っている。
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体を用いたスイッチでは、TM 偏
[キーワード]キーワード:超高速光スイッチ、ハイブ
光の制御パルスで、TE 偏光の光に深い位相変調が掛か
リッド集積、シリコン細線導波路、PLC
る新しい現象である全光位相変調効果を用いて、空間光
学系の干渉計と組み合わせたゲートスイッチモジュール
[テーマ題目3]光信号処理システム(運営交付金、独
を開発し、2 pJ のゲートパルスエネルギーで160 Gb/s
立行政法人新エネルギー・産業技術総合
から40 Gb/s への多重分離動作や、160 Gb/s 信号の波
開発機構プロジェクト、科学技術振興調
長変換動作を実証した。また、量子井戸の構造の理論的、
整費・先端融合イノベーション創出拠
実験的な最適化を行い、光位相変調効果として
点)
0.7 rad/pJ を達成した。位相変調効果をさらに増大さ
[研究代表者]並木
周
(光信号処理システム研究チーム)
せることを狙ってより精密な量子井戸設計と製作を可能
[研究担当者]黒須
とするため、フォトリフレクタンス法による、エネルギ
隆行、Petit Stephane
(常勤職員2名、非常勤職員1名)
ー準位の同定と、これに基づく、量子井戸層における電
[研 究 内 容]
子の有効質量、バンドオフセットの同定などの基礎的な
研究も引き続いて行った。また、周期構造による光の反
共通基盤技術としては、160 Gbps 伝送システムの評
射を用いた位相変調効率の増大を目指した研究も推進し
価技術、超短光パルス整形・伝送技術、高性能光波形観
た。
測技術などの構築を進めた。研究テーマでは、平成21年
度に予定している NEDO プロジェクトにおける NHK、
Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体を用いたスイッチの研究では、
サブバンド間遷移光スイッチの低消費スイッチングエネ
富士通とのスーパーハイビジョン映像接続伝送共同実験
ルギー化に向けて、SiO2 の中に、量子井戸を埋め込む
の準備を進めた。その一環として、テーマ題目1および
という構造のデバイスの開発を進めた。これにより、量
2で開発される集積型量子井戸のサブバンド間遷移を用
子井戸への光閉じ込めが強くなり、吸収飽和型のスイッ
いた全光スイッチを活用した超高速光 LAN システムに
チ動作で、スイッチングエネルギーが低減する効果を確
関する研究として、全光 NRZ-RZ 信号変換技術に成功
認できた。
し、172 Gbps 光 LAN システムにおける伝送技術の基
[分
本部分を構築した。
野
名]情報通信・エレクトロニクス
光パスネットワークの主要技術の一つである、光ファ
[キーワード]超高速光スイッチ、サブバンド間遷移、
イバの非線形を活用したパラメトリック可変分散補償技
量子井戸、位相変調
術の研究では、1 THz の動作帯域を実証に成功した。
[テーマ題目2]ハイブリッド集積技術(運営交付金、
さらに、かねて特許出願していた、同技術を拡張したパ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総
ラメトリック遅延分散チューナの実証に成功し、従来技
合開発機構プロジェクト、科学技術振興
術では不可能だったピコ秒パルスに対する20ナノ秒以上
調整費・先端融合イノベーション創出拠
の連続可変遅延制御に世界で初めて成功した。
科振費拠点活動の一環で、光パスネットワークのあり
点)
[研究代表者]河島
方を議論するネットワーク・アーキテクチャ・スタデ
整
(145)
研
究
させることがその目的である。
ィ・グループの運営を行い、同テーマに関する調査・検
サービスは社会の構造やサービス利用者のニーズを
討を内外関連部門との連携をしながら進めた。
変えるので、サービスの最適化が完成することはない。
平成21年度には、スーパーハイビジョン接続伝送共同
実験を実施し、パラメトリック可変分散補償技術では超
したがって、サービスが持続的に発展するためには、
高速伝送の実証と高速切り替えの動作実証を行う予定で
仮説-検証サイクルを現場に導入し、現場が自律的に
ある。これに伴い共通基盤技術では、光スイッチを用い
運用し続ける必要がある。それにはまず、サービスに
た光パスネットワークの基礎的なシステム評価技術を構
関する仮説の構築とその反証・改良とを支援する技術
築してゆく。また、光パスネットワークのアーキテクチ
が、現場で安定的かつ容易に運用可能でなければなら
ャについては、具体像を明確化していく。
ない。さらに、仮説-検証サイクルをサービスの現場
[分
名]情報通信・エレクトロニクス
がスムーズに導入し、自律的に運用し続けるための方
[キーワード]超高速光 LAN、高非線形ファイバ、可
法論を明らかにして現場に提供する必要がある。それ
変分散補償、可変光遅延、超短光パルス
には、要素技術に関する研究では不十分であるため、
伝送
サービス工学では、仮説-検証サイクル全体を現場の
野
諸要因に適合させつつ導入し、現場で運用可能とする
24 【サービス工学研究センター】
○
ための導入方法論をも研究の対象とせねばならない。
(Center for Service Research)
このような観点から、本研究センターでは、研究に
おける仮説-検証サイクルと現実のサービスのライフ
(存続期間:2008.4.1~)
サイクルとを融合させる研究の手法を採る。それに基
研究センター長:吉川
弘之
次
浩一、内藤
長:橋田
主 幹 研 究 員:北島
づいてさまざまなサービス事業者と連携しながら、オ
フィス業務支援、医療・健康サービス、コンテンツ提
耕
供、モビリティ支援等の具体的なサービスの生産性向
宗雄
上に関する研究プロジェクトに取り組む。企業や自治
体におけるサービスの現場との連携によってこれらを
所在地:臨海副都心センター、つくば中央第2、秋葉原
推進すること、またその成果に基づいてサービス事業
事業所
人
員:15名(14名)
に対するアドバイザリサービスを行なうことにより、
経
費:616,533千円(233,096千円)
直接的なアウトカムを創出する。
概
要:
●大規模データモデリングの研究
サービスは GDP においても雇用においても日本経
●最適化の研究
以上を推進する体制として、
済の7割を占めるようになってきた。特に、今後の少
●サービスプロセスの研究
子高齢化などの社会構造変化や、企業の業務効率化の
というテーマの各々に対応する研究チームを設け、こ
ためのアウトソーシングなどによりサービスへの需要
れらが連携して生産性の高いサービスを実現するため
は拡大しており、製造業と並んで日本の経済成長の牽
の研究を進める。具体的には、まずさまざまな知識を
引役となることが期待されている。しかし、経済や産
総動員することによってサービスに関する仮説として
業におけるこのような重要性にもかかわらず、近年、
の「設計」を構成し、それを「適用」することによっ
サービス産業の生産性の伸び率が低いと言われている。
て実現されるサービスの現場においてサービスを提供
例えば米国では製造業、サービス業の労働生産性上昇
し受容する人間の行動(知覚、感情、思考、運動など)
率(1995~2003年)はそれぞれ3.3%、2.3%であった
を「観測」し、そこから得られた大規模データを「分
が、日本ではそれぞれ4.1%、0.8%となり、製造業に
析」した結果に基づいて仮説を反証・改良する、とい
比 べ て サ ー ビ ス 業 の 伸 び が 小 さ い ( OECD
うのが研究における仮説-検証サイクルであるととも
compendium of Productivity Indicator 2005)。この
にサービスのライフサイクルでもある。
ような意味でサービスの生産性の向上は急務となって
科学的アプローチの本質は経験的事実に基づくモデ
いる。こうした状況を背景として、政府レベルの政策
ルの反証・改良にあり、そのアプローチの有効性は事
においても、サービス産業の生産性向上は重要課題と
実の客観的・定量的観測およびモデルの記述力と実在
位置づけられるようになってきた。
性に依拠する。しかしながら、豊かな構造を十分定量
本研究センターは、これを受け、研究開発とそれに
的に記述できるようなサービスのモデル化の手法はま
付随する業務を通じて「サービス生産性向上のための
だ存在しない。そうしたモデルの枠組を構築し、その
科学的・工学的手法を確立すること」をミッションと
ようなモデルを扱う技術を確立することが本センター
する。その成果を通じて良いサービスを実現すること
の主要な技術目標のひとつである。
人間の行動等を客観的に観測するさまざまな技術が
により、社会全体にわたって富の水準を持続的に向上
(146)
産業技術総合研究所
現われているが、そのデータに対応するモデルは比較
な意味カテゴリを抽出する数理的手法や計算技術、計
的単純なものに限定されている。一方、業務プロセス
算モデルを構築する確率的情報処理技術、計算モデル
のモデル等の定性的なモデルは複雑な構造を持ち記述
を用いた統計的制御やシミュレーション技術、これら
力が強いが、定量的なデータによる反証・改良が困難
の技術をサービス現場に実装し、社会化を促進する応
用開発技術の研究を行う。
である。本センターでは、こうしたさまざまな技術の
組み合わせによってサービスの生産性向上を図りつつ、
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目4
より一般性の高いモデル化の手法を確立する。
最適化研究チーム
実際の研究活動を機動的に遂行していくために、
様々なフィールド研究プロジェクトが互いにフィール
(Optimized Design Research Team)
ドを共有しつつ、他の研究ユニット、大学等の研究機
研究チーム長:森
彰
(秋葉原事業所)
関、産業界等から研究者や技術者が幅広く参画するこ
概
とによって横断的な研究プロジェクトチームを編成す
要:
る。そして、各研究プロジェクトで得られる成果を速
よいサービスを設計するための科学的・工学的手法
やかに共有し、サービス工学の理論の構築、一般化さ
について研究を行っている。具体的には、公共性の高
れた方法論の確立を効果的に進めるために、公開ワー
いサービスを対象として、その質と効率の向上が、社
クショップ等を開催する。特に、サービス科学・工学
会レベルでの課題解決や富の増大につながるようにサ
の理論的な枠組の整備は、サービスに対する科学的・
ービスを設計する手法について研究している。まず、
工学的アプローチを普及させる上で必須である。
社会的に最適なサービスというものは、一度に実現で
---------------------------------------------------------------------------
きるものではなく、さまざまな改善の繰り返しにより
外部資金
達成されるということに留意し、サービス改善のため
経済産業省「平成20年度サービス研究センター基盤整備
の仮説を検証する仕組みそのものを組み込んだサービ
事業」
スの設計に取り組んでいる。また、再利用可能な部品
の組み合わせでサービスを実現することは、コスト低
基盤研究(C)「形式
減と信頼性向上に大いに寄与することから、サービス
的検証とウェブオントロジーの融合による大規模情報シ
の部品化とその再利用についての研究にも取り組んで
ステム設計支援」
いる。得られた知見を設計原理として一般化するには、
文部科学省
科学研究費補助金
サービスを記号システムとして捉えて異なるサービス
新潟県「都道府県版 EA のあり方に関する研究」
の分析および比較を可能にした上で、社会サービスに
共通な設計原理を明らかにしなければならない。こう
した分析を可能にするツールの開発にも取り組んでい
日本ユニシス株式会社「セマンティックワークプレース
る。
に関する研究」
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目4
独立行政法人日本学術振興会「Web3D とデジタル TV
サービスプロセス研究チーム
のための人間の動きと実世界環境3次元モデリング」
(Service Process Research Team)
発
研究チーム長:和泉
表:誌上発表90件、口頭発表104件、その他6件
---------------------------------------------------------------------------
(臨海副都心センター)
概
大規模データモデリング研究チーム
(Large-scale Data-based Research Team)
研究チーム長:本村
要:
サービスプロセスの連携と相互運用により、ライフ
サイクル全般に関するサービスの創発や改善に関する
陽一
研究技術プラットフォームを確立させることを目指す。
(臨海副都心センター)
概
憲明
要:
特に、工学的な手法によりサービスの改善や革新を可
サービスの現場で行われているサービス提供者とサ
能とすることを目的として、サービスプロセスに関す
ービス受容者の活動を、客観的に観測可能な大規模デ
る分析やサービス設計のためのモデリング、運用のた
ータに基づいて、観測・分析し、計算モデル化を行う。
めのサービスサービスプラットフォームの開発などを
この計算モデルを用いることで、サービスの価値やコ
具体的な研究手段とする。サービスプロセスの分析で
ストの予測と制御を可能にし、生産性の向上を達成す
は、現場で運用されているサービス実施のためのマニ
る技術の研究開発を進める。具体的には、人間活動の
ュアルや関連システムの仕様書、実働システムのログ
行動を観測する情報工学的技術、心理学的特性を推定
など、実運用されている情報資源を対象とし、データ
する認知・行動科学的技術、大規模データから潜在的
レベルの機械学習方法論から、意味レベルのオントロ
(147)
研
究
ジー工学まで、包括的な分析を適用する。形式モデル
委託費事業のパートナー企業、ならびにサービス工学研
に基づくプロセスモデルに基づいて、設計の方法論を
究センターに今年度設置した医療サービスコンソーシア
確立させるとともに、編集などを可能とするソフトウ
ムの参加企業などとの連携を積極的に行っている。期待
ェアプラットフォームの開発を行う。そして、サービ
される成果としては、ⅰ)要素技術や手法そのもの、
スのモデルやプロセスなどを実証適用することにより、
ⅱ)副産物としてのデータやソフトウェア、ⅲ)要素技
ライフサイクル全般の方法論を確立させる。
術を社会に導入するための知見(成果の社会化)に分類
研究テーマ:テーマ題目3、テーマ題目4
できる。ⅰ)は研究発表論文や特許、ⅱ)は企業へのラ
---------------------------------------------------------------------------
イセンスや、大学や他の研究者への公開情報としても顕
[テーマ題目1]社会化技術の研究
在化できるが、サービス工学の研究は既存学問領域や分
[研究代表者]本村
野の枠組みに収まらない新たな試みにこそその特色があ
陽一
り、そのアウトプットは顕在化すること自体が困難であ
(大規模データモデリング研究チーム)
[研究担当者]本村
陽一、蔵田
武志、大隈
隆史、
ることも多いと考えられる。そこで、「社会化」の方法
興梠
正克、石川
智也、羽渕
由子、
を常に意識し、既存学問領域や分野へのアウトプットで
宮本
亜希、新佐
絵吏、石垣
司、
なくとも、実フィールドに対して「社会化」できること
希、Thangamani Kalaivani、
陳
西田
佳史、小高
を重要視して考える。つまり、成果の出口や形式につい
ては幅広くとらえ、実証的研究を機動的に実行すること
泰
で、本格研究として早期の社会実装を可能にするメタな
(常勤職員6名、他7名)
研究を課題として意識しながら研究を進めている。
[研 究 内 容]
[分
サービス工学とは、社会における実際のサービスに踏
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]サービス工学、本格研究
み込んで、これを科学的・工学的研究の対象とする企て
である。これを社会と独立に研究することは不可能であ
り、観測・分析・設計・適用を可能にする技術や研究活
[テーマ題目2]サービス設計手法の研究
動そのものが現実社会に受け入れられることが必然的に
[研究代表者]森
彰(最適化研究チーム)
求められる。社会の中に受け入れられていくプロセスは
[研究担当者]森
彰、宮下
和雄、山本
吉伸、
社会学の中では社会化(socialize)と呼ばれている。本
神谷
年洋、江渡
チームでは、我々が目指す研究や技術がどのように社会
泉田
大宗(常勤職員5名、他2名)
浩一郎、橋本
政朋、
[研 究 内 容]
化され得るのか、ということを常に念頭におき、開発し
た技術が社会化される条件や、サービス工学が研究コミ
さまざまな要求や状況に応じたサービスを実現するた
ュニティにおいて社会化される条件、さらにサービス活
めには、基本的な機能を備えたサービス部品を構築し、
動や生活者自体が社会化していくことを支援するような
それらの組み合わせにより、多機能なサービスを構成す
技術の要件などを明らかにすることで、サービス工学の
ることが望ましい。本テーマでは、公共性の高い社会サ
理論体系の構築に貢献することも目標とする。具体的に
ービスを対象として、サービスの部品化と部品統合のた
は、ⅰ)安価で実用性の高い(商用化の実績もある)独
めの情報基盤についての研究を行っている。具体的には、
自の加速度センサ、超音波センサ技術、位置同定技術、
すでに研究開発が進められている、集合知活用基盤、動
仮想現実化技術、ベイズ推定技術などを適宜組み合わせ
的資源割当基盤、ユーザー行動解析基盤、ユーザー生理
ることで実現する高度な行動分析を実サービスの中で活
解析基盤といったサービス部品を医療や観光における具
用する研究、ⅱ)社会心理学、行動科学、行動分析学的
体サービスに組み込むことを念頭に、サービス設計、部
技法を駆使しながら、実サービスの中に現れる人間の心
品汎用化、プロトタイプ開発、実証評価、知識循環評価、
理学的特性を分析する手法の研究、ⅲ)人間の行動と心
といった作業を行うことで、社会サービスに共通して適
理学的特性の間の関係を共通の意味として対応づけるた
用可能な設計手法の解明に取り組んできた。本年度は、
めに、観測された大規模データに基づいてカテゴリ化す
糖尿病患者を対象とした地域医療見守りサービスの設計
る技術として「確率的潜在的意味解析」と呼ぶ数理的手
を、医師、地域医療ネットワーク、医療機器メーカー、
法と効率の良い計算方法の研究を行う。ⅰ)~ⅲ)の技
医療サービスベンダと共同して行い、サービス部品の同
術を組み合わせることで、サービス現場に新たな価値を
定と、これを統合する情報基盤のプロトタイプ開発を行
もたらす観測・分析・最適化システムを導入し、実社会
った。特に、地域医療において必要となる多様なサービ
で運用することを通じて、はじめて継続的な大規模デー
スへの対応や、他地域への展開、既存サービスとの連携、
タの入手が可能となる。このように新規技術を社会に実
知識循環の促進、といったサービスの拡張と改善への対
装することが「社会化(socialize)」であり、それを可
応に留意して設計を行った。次年度以降、サービスの本
能にする条件や技術要件などを研究の実践を通じて探索
格実装と運用をすすめていく予定である。
一方で、こうした部品化と統合の手法は、ソフトウェ
する。実フィールドへのアプローチとしては経済産業省
(148)
産業技術総合研究所
ア工学の分野で古くから検討されてきており、さまざま
により、数理指向の手法と内容指向の手法を融合させる
な手法の提唱とともに、部品化にまつわる困難さも明ら
ことを研究手段として採用するとともに、データやモデ
かになっている。本年度は、ソフトウェアの部品化とサ
ル、記述に基づいて異種のサービス知識を統合的に取り
ービスの部品化の比較を行い、サービス設計の持つ特徴
扱うことが可能となる包括的なフレームワークの確立を
や不足技術についての検討を行った。現在のソフトウェ
目指す。
アは機能や利用シナリオが多岐に渡っており、ソフトウ
研究手段を実現するための方法論としては、まず、サ
ェアの設計はサービスの設計に他ならない、という場合
ービスの実働に関する運用や実施のマニュアル、援用す
も多い。こうした背景のもと、これまでに開発を行って
る IT システムの仕様書や設計書など、経営レベルから
きたソフトウェア解析手法のサービス設計への応用につ
現場レベルまで利活用している文書資源に着目し、これ
いて研究を行った。ソフトウェアのソースコードにおけ
からプロセス記述としてのモデルと、その抽出法と形式
る重複・類似を検出するクローン検出技術、およびソー
化を行う。同時に、稼働システムの実働ログなど、デー
スコードのバージョン間の変化を同定する差分計算技術
タから、サービス実施に関する情報を抽出するためのデ
を取り上げ、これらが、サービスのライフサイクルの中
ータの構造化や抽象化などのデータマイニング手法の開
で定常的に生成されるさまざまな文書や情報の分析に役
発を行う。さらに、テキストマイニングや機械可読辞書
立つかどうか評価実験を行った。サービスの多くの部分
などの手法を援用してオントロジーの自動構築の手法を
がソフトウェアにより実現されているのはもちろんとし
確立させるとともに、オントロジーにより形式モデルと
て、センサ出力や注文・販売履歴、さらには Web 文書
機械学習の手法を融合させ、異種知識の共有と運用に関
や不具合報告など大量の情報が記号化され、保存されて
する手法を確立させる。
いる状況を考えると、これらを俯瞰して相互に関係付け、
今年度の成果として、まず、データレベルでは、産総
サービス改善に役立てることが望まれる。本年度は、
研のイントラシステムを対象とし、サーバのログデータ
XML 文書を対象に、文書間の類似や差分を手がかりと
からイントラサービスの実働状況を自動構築し、サービ
して、内容の相関を明らかにする技術について研究を行
ス利用者の振る舞いを明らかにしたり、新たなサービス
った。結果として、様々な情報の関係を定義したオント
を連携させるための設計知識を自動抽出したりするため
ロジーの重要性が明らかになり、オントロジーの集積と
の数理的な基盤を確立させた。また、形式モデルに関し
活用を促進する技術について検討を始めたところである。
ては、サービス提供者の可読性を重視したイベント中心
[分
のプロセスモデルを、代数モデルに基づく解析法を適用
野
名]情報通信・エレクトロニクス
することにより形式性を付与し、サービス改善に関する
[キーワード]サービス設計、サービス構成論
示唆や記述の不備などを明らかにする手法を開発した。
[テーマ題目3]サービスフレームワークの研究
さらに、自治体の福祉サービスや医療における IT シス
[研究代表者]和泉
テムの導入に関するフィールドワークに基づいて、内容
憲明
記述のプリミティブを整備するとともに、ソフトウェア
(サービスプロセス研究チーム)
[研究担当者]和泉
澤井
憲明、Geczy, Peter、高木
理、
ツール群を開発し、サービスをオープンシステムにより
雅彦、高岡
貴博
実現するための設計や仕様化などを包括的に扱えるフレ
大介、清野
ームワークとして確立させている。
(常勤職員2名、他4名)
[分
[研 究 内 容]
野
名]情報通信・エレクトロニクス
サービスを実社会にて持続可能とするためには、サー
[テーマ題目4]平成20年度サービス研究センター基盤
ビスの設計から実装、運用、改善というサービスのライ
整備事業
フサイクルを統合的に扱うことが求められる。言い換え
[研究代表者]持丸
ると、サービスの持続可能性を確立させるためには、経
正明(デジタルヒューマン研究セ
ンター副研究センター長)
営上の観点だけでなく、医学などの専門分野の観点、法
律や倫理などの社会的な観点、IT を導入し利活用する
[研究担当者]持丸
正明、橋田
浩一、内藤
耕、
ためのシステム管理の観点、実際に現場で運用するため
北島
宗雄、赤松
幹之、和泉
憲明、
の具体的作業の観点など、さまざまな観点からの知識を
森
反映させなければならない。このためには、まず、サー
宮下
和雄、山本
吉伸、吉野
公三、
ビスの設計者や提供者、受容者、観測者といった社会に
蔵田
武志、大隈
隆史、興梠
正克、
おけるステークホルダー間でどのような知識が流通し、
高木
理、泉田
その異種の知識をどのように統合的に取り扱えるかが重
澤井
雅彦、高岡
要となる。そこで、論理や代数などの形式手法と実デー
陳
タの前処理を重視したデータマイニング手法に、オント
橋本
政朋、藤石
ロジーに基づく意味内容の概念記述単位を援用する手法
宮本
亜希、石
(149)
彰、本村
陽一、GECZYPeter、
希、土肥
大宋、王
毅、
大介、高橋
麻佐子、新佐
正仁、
絵吏、
紗也華、松本
垣司
清、
研
究
2)研究部門
(常勤職員15名、他14名)
[研 究 内 容]
①【計測標準研究部門】
(Metrology Institute of Japan)
サービスは社会の構造やサービス利用者のニーズを変
えるので、サービスの最適化が完成することはない。し
(存続期間:2001.4.1~)
たがって、仮説-検証サイクルを現場に導入し、現場が
自律的に運用し続ける必要がある。それにはまず、サー
研 究 部 門 長:岡路
ビスに関する仮説の構築とその反証・改良とを支援する
副 研 究 部 門 長:千葉
技術が、現場で安定的かつ容易に運用可能でなければな
新井
らない。さらに、仮説-検証サイクルをサービスの現場
上 席 研 究 員:馬場
哲也
がスムーズに導入し、自律的に運用し続けるための方法
主 幹 研 究 員:小島
勇夫
正博
光一、大嶋
優、高辻
新一、檜野
良穂、
利之
論を明らかにし、現場に提供する必要がある。それには、
要素技術に関する研究では不十分であるため、仮説-検
所在地:つくば中央第3、第2、第5、つくば北、関西セ
証サイクル全体を現場の諸要因に適合させつつ導入し、
ンター大阪扇町サイト
現場で運用可能とするための導入方法論をも研究の対象
人
員:249名(247名)
としなければならない。
経
費:3,320,898千円(2,362,232千円)
概
要:
本研究では、このような考察に基づいて下記を推進す
る。
●科学的・工学的手法の開発、導入の方法論の確立
計量標準及び法定計量
●汎用性のある技術やデータベースの構築・提供
第二期の目標:
●科学的・工学的手法の「有効性への気づき」の誘起
計量の標準
と導入支援
産業、通商、社会で必要とされる試験、検査や分
その機能を有するサービス研究の拠点を構築するため
析の結果に国際同等性を証明する技術的根拠を与え、
に下記の活動を行うこととした。
先端技術開発や産業化の基盤となる計量の標準を整
●サービス生産性を向上するための科学的・工学的手
備するとともに、計量法で規定されている法定計量
法、汎用性のある技術、データベースを研究開発す
業務を適確に実施することにより、我が国の経済活
る研究開発事業
動の国際市場での円滑な発展、国内産業の競争力の
●サービス産業における生産性の向上を実現するアイ
維持・強化と新規産業の創出の支援及び国民の安全
ディアを現場に適用して効果を実証するプロジェク
かつ安心の確保に貢献する。
トの公募を行う適用実証事業
(1) 国家計量標準システムの開発・整備
●これらの成果をサービス現場に導入するための促進
(2) 特定計量器の基準適合性の評価
策として、産業界と学会が連携したシンポジウムを
(3) 次世代計量標準の開発
開催する普及啓発事業
(4) 国際計量システムの構築
研究開発事業においては、医療、コンテンツ提供、大
(5) 計量の教習と人材の育成
規模集客、観光、小売という5種のサービスに関するフ
ィールド研究を通じて、観測技術、分析技術、設計技術、
○研究業務の方向付け
適用技術という4種の基盤的な支援技術やデータベース
(A) 標準整備計画にもとづき、信頼される計量標準
の構築を進めた。医療と観光のフィールド研究において
を早期に供給開始する。
は、主として設計技術、適用技術、導入方法論。他のフ
(B) 計量標準及び法定計量の確実かつ継続的な供給
ィールド研究においては主として観測技術と分析技術の
体制を構築し的確に運用する。
構築を進展させることができた。適用実証事業としては
(C) 計量標準・法定計量の国際相互承認を進める。
5つのプロジェクトを再委託により実施し、そのうちの
(D) 計量標準と計測分析技術において世界トップク
複数が産総研との継続的な連携につながっている。これ
ラスの研究成果を挙げる。
ら5件の再委託プロジェクトのうち3件がヘルスケア(医
--------------------------------------------------
療、介護、健康関連サービス)に関するものであったこ
外部資金:
とから、この分野の重要性が伺える。また、普及啓発事
経済産業省
業としてサービス工学に関するシンポジウムを開催し、
防護ならびに医療応用における国際規格に対応した高エ
公的研究機関、大学、および産業界から約150名の参加
ネルギー中性子・放射能標準の確立と高度化に関する研
者を得た。
究
[分
野
平成20年度原子力試験研究委託費
放射線
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]科学的・工学的手法、サービス工学
経済産業省
(150)
平成20年度原子力試験研究委託費
放射能
産業技術総合研究所
経済産業省
表面密度測定法の確立に関する研究
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)エンジン排ガス中の粒子数計測装置の実証評
経済産業省
平成20年度原子力試験研究委託費
価
原子燃
料融点の高精度測定に関する研究
経済産業省
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)高精度・高速・同時多点温度計測システムの
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)自己校正可能な微小電流計測器の開発
開発
経済産業省
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)波長可変温度波伝搬法に基づく多用途材料計
業支援型)極低温温度校正装置の実証研究
測分析
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)クレイモデル加工・計測システムの評価技術
経済産業省
及び非接触形状計測センサの開発
周波帯電磁界強度標準及びミリ波帯ホーンアンテナ標準
平成20年度中小企業知的基盤整備事業
低
の研究開発
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)UV(紫外)光源顕微鏡画像計測装置の実証研
経済産業省
究
クス半導体新材料・新構造技術開発)シングルナノワイ
戦略的技術開発委託費(ナノエレクトロニ
ヤトランジスタの知識統合的研究開発
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
業支援型)PM0.1分級計測装置
量器校正情報システムの研究開発
経済産業省
計
時間標準遠隔供給技
術の開発
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)超高感度角度センサーの開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
量器校正情報システムの研究開発
業支援型)示差方式レーザフラッシュ法による熱拡散
給技術の開発:光ファイバー応用
経済産業省
計
長さ標準供給遠隔供
率・比熱容量・熱伝導率測定装置の開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
経済産業省
量器校正情報システムの研究開発
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)精密高湿度発生装置の開発
準遠隔供給技術の開発
経済産業省
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
量器校正情報システムの研究開発
業支援型)ガス中微量水分分析装置
計
三次元測定機測定標
計
長さ標準遠隔校正技
術の開発:フェムト秒長さ標準
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)大ストローク高真空対応精密ピエゾステージ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
の実証研究
量器校正情報システムの研究開発
計
力学標準遠隔供給技
術の開発
経済産業省
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
業支援型)高性能冷陰極エックス線非破壊検査装置
量器校正情報システムの研究開発
経済産業省
計
振動・加速度標準遠
隔校正技術の開発
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)原子ステップを用いた超精密高さ基準ゲージ
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
の実証研究
量器校正情報システムの研究開発
経済産業省
計
電気標準遠隔校正技
術の開発:交流(インダクタンス)
平成20年度産業技術研究開発事業(中小企
業支援型)次世代φ450 mm ウェーハ光学式非接触微
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
細形状測定装置
量器校正情報システムの研究開発
(151)
計
放射能標準遠隔供給
研
究
文部科学省
技術の開発
科学研究費補助金
量子標準に基づいた次
世代長期地殻変動観測手法の開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
革
新的次世代低公害車総合技術開発/次世代自動車の総合
文部科学省
評価技術開発
用いた高速ナノ連続転写加工(基盤研究 B)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
文部科学省
科学研究費補助金
多
科学研究費補助金
超小型精密自走機構を
エバネセント励起法に
よるナノ空間の粘性率・拡散係数センシング
層薄膜の界面熱抵抗計測技術標準化に関する調査
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機
文部科学省
ナノ
科学研究費補助金
直並列集積量子ホール
素子の開発と評価
粒子特性評価手法の研究開発/キャラクタリゼーショ
ン・暴露評価・有害性評価・リスク評価手法の開発
文部科学省
財団法人マイクロマシンセンター
科学研究費補助金
線量絶対測定による医
療用密封小線源からの放射線量の方向依存性
平成20年度基準認証
研究開発委託費(小型ジャイロ MEMS デバイスの性能
評価方法に関する標準化)小型 MEMS ジャイロの性能
文部科学省
評価方法の標準化に関する調査研究
した中性子線量計の2次元微分校正法
独立行政法人科学技術振興機構
文部科学省
重点地域研究開発プロ
科学研究費補助金
科学研究費補助金
熱中性子ビームを利用
任意の応答関数を持た
せることが可能な中性子測定器の開発
グラム(シーズ発掘試験)中性子線量計校正に用いる中
性子検出器の小型軽量化技術
文部科学省
独立行政法人科学技術振興機構
ーション
科学研究費補助金
アルキル鎖のダイナミ
クスとイオン液体の安定性
産学共同シーズイノベ
プリズムペア干渉法による光学ガラス屈折率
文部科学省
と光源波長の精密同時校正技術の開発
科学研究費補助金
米試料中農薬類のモニ
タリング調査
Yb 光格子時計の構築
独立行政法人科学技術振興機構
文部科学省
と精度評価・高精度周波数計測ネットワークの研究
科学研究費補助金
超伝導ナノ細線構造に
よる超高速単一光子検出技術の研究
文部科学省
FEL 励起反応追跡のための電子・イオン
文部科学省
運動量多重計測
科学研究費補助金
環境影響を考慮した
VOC 吸着剤の迅速評価法(基盤研究 C)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
業技術研究助成事業
産
モード同期ファイバレーザによる
その他
安全ソフト構築技術に関する調査研究
その他
超音波流量計特性評価試験
広帯域光コムを用いた光周波数計
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
業技術研究助成事業
産
発
単純形体に基づくピッチマスタ-
表:誌上発表408件、口頭発表609件、その他306件
-------------------------------------------------
ゲ-ジとそのナノレベル測定技術の開発
時間周波数科
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
業技術研究助成事業
(Metrology Institute of Japan, Time and Frequency
産
Division)
ASEAN 諸国における角度標準技
研究科長:今江
術の高度化を国際比較の確率
理人
(つくば中央第3)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
業技術研究助成事業
概
産
要:
時間周波数標準及び光周波数波長標準は、基本単位
レーザフラッシュ法による固体材
の中でも最も高精度な計量標準であり、他の組立量の
料のインヒレントな熱拡散率測定
決定にも必要とされる計量標準体系の基盤を形成する
文部科学省
科学研究費補助金
物理標準である。当該標準の研究・開発及びその産業
冷却原子ビーム打ち上
界への供給・普及を持続・発展させることは、我が国
げ方式による原子泉型一次周波数標準器
(152)
産業技術総合研究所
の産業技術や科学技術を高度化する上で極めて重要で
定な質量 artifact の開発、高安定な力計の研究開発、
ある。時間周波数科ではこのような目標を達成するた
気体高圧力標準の検討などを進めている。外部協力と
めに、標準器や関連技術の研究開発、それらに立脚し
しては、JCSS 認定制度に対して、標準供給及び認定
た信頼性並びに利便性の高い標準供給を行っている。
(登録)審査への技術アドバイザー派遣、質量、力、
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
圧力(圧力・真空各 WG)、トルクの各技術分科会の
運営などの協力を行った。また、JIS を始め ISO、
3
OIML 等の技術規格文書の作成への協力を行った。
長さ計測科
国際協力では JICA-NIMT プロジェクトや国際法定
(Metrology Institute of Japan, Lengths and
計量機構の相互承認 OIML-MAA に協力し、専門家
Dimensions Division)
研究科長:高辻
の派遣、研修生の受け入れを行った。
研究テーマ:テーマ題目6、テーマ題目7、テーマ題目
利之
8
(つくば中央第3)
概
要:
音響振動科
長さ・幾何学量の標準供給は、産業・科学技術の要
(Metrology Institute of Japan, Acoustics and
であり、その安定的供給には大きな期待が寄せられて
Vibration Metrology Division)
いる。この分野では、高精度な上位の標準から、現場
研究科長:菊池
で用いられる下位の標準まで、幅広い標準が求められ
恒男
(つくば中央第3)
る。これらに応えるためには、信頼性の高い長さ測定
概
技術の開発が不可欠である。当科では、平成18年度ま
要:
でに産業界から求められ、また国際比較などが求めら
音響、超音波、振動、強度の標準は、環境、医療、
れている長さや幾何学量に関して27量の標準の確立と
機械診断、材料評価など広い分野にわたって必要とさ
それらの供給体制の整備を行った。民間との連携によ
れており、その重要性も増している。音響標準、振動
って、階層構造に基づく我が国のトレーサビリティ体
加速度標準及び硬さ標準については、国際比較結果な
系を構築している。
どを通じて既に世界的なレベルに到達していることが
示されているが、さらに標準供給体制の充実を図るた
研究テーマ:テーマ題目4、テーマ題目5
め、供給範囲の拡大、不確かさの低減、新しい標準開
力学計測科
発等をめざす。超音波標準については供給範囲拡大に
(Metrology Institute of Japan, Mechanical
必要な研究開発を継続するとともに国際比較への参加
Metrology Division)
研究科長:大岩
準備を進める。材料強度の標準、固体材料の特性評価
を、従来のバルク材料から薄膜などの微小なレベルで
彰
行うための研究開発を継続する。また、産業技術の高
(つくば中央第3)
概
度化に応じて、先進的な計測標準開発を推進する。
要:
研究テーマ:テーマ題目9、テーマ題目10、テーマ題目
当力学計測科の活動は、質量、力、トルク、重力加
11、テーマ題目12、テーマ題目13
速度、圧力、真空の各量にわたる。各量において、標
準から現場計測までのトレーサビリティの道筋を確保
し、また質量計量器の信頼性の確保に関する業務を果
温度湿度科
たすことが主たるミッションである。質量においては、
(Metrology Institute of Japan, Temperature and
Humidity Division)
標準分銅から質量計へ、力・トルクにおいては、力・
研究科長:新井 優
トルク標準機/力・トルク計から各種試験機へ、圧力
/真空においては圧力/真空標準器から圧力計/真空
(つくば中央第3)
計へと現場計測器に繋がるトレーサビリティを実現す
概
要:
る。当科においては既に、質量(分銅の校正)、質量
温度・湿度の計測とその標準は、科学技術や産業に
計、力(力計の校正)、試験機、圧力(圧力標準器の
おいて、あらゆる場面で必要とされており、当科では、
校正)、圧力計、トルクメータ・トルクレンチ、真空
これらに必要な標準供給体制の整備を進めている。国
計、標準リーク、分圧計については Jcss 校正事業者
際的同等性を確保しつつ標準供給の種類、範囲を拡大
への流れが整備され、供給が実施されている。また、
するために、設備や体制を整え、標準の維持・供給に
非自動はかり及び質量計用ロードセルの性能試験に関
必要な研究開発及び関連の計測技術の研究を行った。
する品質管理体制を整備運用し、OIML-MAA のため
先進的な取り組みである、金属炭素共晶を用いた温度
の認定審査を受けた。これらの供給・試験業務に加え、
定点の開発の成果に基づき、熱電対に対してコバルト
技術開発については、キログラムの新定義のための安
-炭素共晶点(1324℃)における標準供給を開始した。
(153)
研
究
また、放射温度に対して160℃~420℃の温度域の標準
27、テーマ題目28、テーマ題目29、テーマ
を整備し、標準供給を開始した。
題目30、テーマ題目31、テーマ題目32、テ
ーマ題目33
研究テーマ:テーマ題目14、テーマ題目15、テーマ題目
16、テーマ題目17、テーマ題目18、テーマ
電磁気計測科
題目19、テーマ題目20
(Metrology Institute of Japan, Electricity
and Magnetism Division)
流量計測科
(Metrology Institute of Japan, Fluid Flow Division)
研究科長:高本
研究科長:中村
(つくば中央第3)
正樹
概
(つくば中央第3)
概
安宏
要:
我が国の電気電子情報産業を含む広い産業界に電気
要:
標準(直流・低周波)を供給するために、標準の維持、
流量計を用いた石油や天然ガス等の取引は、経済産
業活動の中でも最も大きな取引であり、また、水道メ
供給、研究開発を行っている。特に、直流電圧標準、
ーター、ガソリン計量器等の流量計は国民生活に最も
直流抵抗標準、キャパシタンス標準、インダクタンス
密接している計量器の一つである。さらに、最新の半
標準、交流抵抗標準、誘導分圧器標準、変流器標準、
導体製造技術、公害計測技術、医療技術等の先端技術
高調波電圧電流標準、交直(AC/DC)変換標準等の
研究開発と供給を行っている。
分野や環境・医療技術分野においてもより困難な状況
研究テーマ:テーマ題目34、テーマ題目35
下での高精度の流量計測技術が求められている。当科
では、これらの広範な分野で必要な流量の標準を開発
し、その供給体制の整備を進める。既に JCSS が整
電磁波計測科
備されている気体小流量、気体中流量、液体大流量、
(Metrology Institute of Japan, Electromagnetic
Waves Division)
液体中流量、石油大流量、気体中流速、微風速、およ
研究科長:小見山
び依頼試験による標準供給を行っている体積に加え、
耕司
(つくば中央第3)
新たに液体小流量、石油中流量について特定標準器の
概
整備を完了した。また、気体流量に関しては、微小流
要:
高周波・電磁界標準の電波領域の電磁波を対象とし、
量域の標準の範囲拡大を完了した。
さらに、計量法に基づき法定計量業務を適切に遂行
高周波電力、減衰量、インピーダンス、雑音、各種ア
すると共に、実施する試験業務に関する品質システム
ンテナ、電界・磁界等の標準に関し、精密計測と校正
を整備した。
技術の研究・開発を実施した。標準供給とトレーサビ
リティの整備の推進ならびに供給体制の維持と校正業
研究テーマ:テーマ題目21、テーマ題目22、テーマ題目
務により標準供給を行った。研究・開発の進展は、新
23、テーマ題目24
規に標準供給を開始した V バンドの導波管減衰量、
物性統計科
N 型コネクタ、および PC7コネクタ規格での S パラ
(Metrology Institute of Japan, Material Properties
メータの JCSS 供給、拡張では、長さに直接トレー
and Metrological Statistics Division)
研究科長:馬場
サブルに導出する同軸線路の位相を含む特性インピー
ダンスとその対応できるコネクタ規格を PC7に加え
哲也
て N と PC3.5に拡大した。
(つくば中央第3)
概
外部資金による研究プロジェクトでは電磁界分野で、
要:
エネルギー、石油化学産業等で求められる密度、粘
超低周波磁界標準のための測定技術開発とミリ波ホー
度の標準、エネルギー分野、エレクトロニクス産業、
ンアンテナ標準技術開発、広域関東圏の12の公設試験
素材産業等で求められる熱物性の計測技術と標準物質、
研究機関の参加を受けて EMC 試験サイトの同等性を
半導体や材料産業等で求められる微粒子や粉体の計測
評価する方法に関する研究を開始し、出張測定などに
より研究を進めた。
技術と標準物質の開発、供給を行う。開発された熱物
研究テーマ:テーマ題目36、テーマ題目37
性計測技術と標準物質を礎として得られる信頼性の高
い熱物性データを分散型熱物性データベースに収録し、
インターネットを介して広く供給する。計測標準研究
光放射計測科
部門の標準供給に不可欠である不確かさ評価について、
(Metrology Institute of Japan, Photometry and
Radiometry Division)
統計的問題の解決や事例の体系化を行うとともに、内
外における不確かさ評価を支援する。
研究科長:齊藤
研究テーマ:テーマ題目25、テーマ題目26、テーマ題目
一朗
(つくば中央第3)
(154)
産業技術総合研究所
概
要:
標準物質は研究開発・生活の安全安心および産業発
光関連産業における基盤技術となる、レーザ及び測
展を支える知的基盤として、その加速的整備が国策の
光・放射に関する諸量の精密計測と校正技術の研究・
もとに推進されている。当科では平成13年~平成20年
開発を実施し、標準とトレーサビリティの整備の推進、
までにスカンジウム標準液など JCSS の基準物質と
並びに標準の維持・供給を行う。今年度は、青色 LD
なる新規無機標準物質15種類、RoHS 指令規制対応標
波長(404 nm)でのレーザパワー、波長1480 nm で
準物質など工業材料標準物質、微量元素・アルセノベ
の光減衰量の依頼試験による供給を開始した。レーザ
タイン・メチル水銀分析用の環境・食品関連組成標準
パワー(近赤外域)、照度応答度、分光拡散反射率
物質を開発して、化学分析あるいは化学計量を支える
(紫外)、分光応答度(近赤外、InGaAs)、LED(高
標準を供給するとともに、併せて、関連する CCQM、
強度)の標準開発を進めた。品質システムを4品目構
APMP 国際比較に参加している。また、電量滴定法
築した。光ファイバ減衰量国際比較(二国間比較)を
等の基本分析手法の高度化、同位体希釈質量分析法な
完了させ、波長1550 nm 高パワー域の光ファイバ減
どの高感度元素分析法の高精度化を行い標準物質の値
衰量(APMP.PR-S4)、可視域レーザパワー(APMP.
付け、環境・生体計測の高度化等に使用するとともに、
PR-S5, Pilot)、 高パワーレーザ(Euromet PR-S2)、
我が国の産業の高度化及び科学技術のテクノインフラ
LED(光度・全光束、APMP)の国際比較を実施し
に寄与している。
た。
研究テーマ:テーマ題目42、テーマ題目43、テーマ題目
研究テーマ:テーマ題目38、テーマ題目39
44
量子放射科
有機分析科
(Metrology Institute of Japan, Quantum Radiation
(Metrology Institute of Japan, Organic Analytical
Division)
研究科長:檜野
Chemistry Division)
良穂
研究科長:加藤
健次
(つくば中央第2)
概
(つくば中央第3)
要:
概
要:
放射線、放射能および中性子標準に関連し、MRA
標準ガス、有機標準、環境標準、バイオメディカル
対応の国際基幹比較、CMC 追加登録を実施するとと
標準の分野において社会ニーズに即した標準物質を供
もに、標準の立ち上げおよび高度化等の研究開発を行
給して行くことを目標として、基盤となる技術面での
った。放射線標準研究室では、γ線水吸収線量標準用
整備を行いつつ、高度な分析技術の開発にも取り組ん
のグラファイトカロリメータを用いたγ線の熱量測定
だ。また、当該標準分野における国際相互承認を実効
に成功した。軟 X 線標準ではマンモグラフィ X 線診
あるものとするべく、グローバル MRA に基づく国際
断用の線量標準を開発し、校正サービスを開始した。
比較に積極的に参加するとともに、ISO ガイド34に
β線標準では JCSS を立ち上げサービスを開始する
基づく品質システムの整備と国際ピアレビューへの対
とともに、校正方法の JIS 作成の準備を開始した。
応を行った。これらの活動を通して、標準物質値付け
放射能中性子標準研究室では、計量法に基づく放射能
能力(CMC)の国際度量衡局において登録される相
標準の供給について、遠隔校正法による供給を開始し
互認証(MRA)の付属文書(Appendix C)への登録
た。放射性ガス標準及び I-125密封小線源の線量標準
を行い、我が国の CMC が国際的に高いレベルで承認
の立ち上げに向け開発を進めた。また、Kr-85放射能
されることを目指した。20年度も、先に挙げた分野に
に関する国際基幹比較を実施した。中性子標準に関し
おける標準物質開発および供給と、関連する技術文書
ては、24 keV 中速中性子フルエンス標準の立ち上げ
類作成などの品質システム整備を行った。
を行い、校正サービスを開始した。Am-Be、Cf 線源
研究テーマ:テーマ題目45、テーマ題目46、テーマ題目
放出の連続スペクトル中性子フルエンスの JCSS に
47、テーマ題目48、テーマ題目49
よる標準供給を開始した。
研究テーマ:テーマ題目40、テーマ題目41
先端材料科
(Metrology Institute of Japan, Materials
Characterization Division)
無機分析科
(Metrology Institute of Japan, Inorganic Analytical
研究科長:小島
Chemistry Division)
研究科長:千葉
(つくば中央第5)
光一
概
(つくば中央第3)
概
勇夫
要:
標準の開発・維持・供給においては、陽電子寿命に
よる超微細空孔測定用ポリカ-ボネートおよび臭素系
要:
(155)
研
究
研究テーマ:テーマ題目57、テーマ題目58、テーマ題目
難燃剤含有ポリ塩化ビニルの2種を開発した。また、
EPMA 用標準物質、イオン注入標準物質、粒径分布
59、テーマ題目60
標準物質、界面活性剤標準物質、および高分子分子量
標準物質(低分子量)について候補標準物質の選定や
法定計量技術科
値付け技術の開発を進め、多層膜認証標準物質につい
(Metrology Institute of Japan, Legal Metrology
Division)
ては認証有効期限の延長を行った。国際比較において
は、鉄-ニッケル合金薄膜の組成計測(CCQM-K67)、
研究科長:根田
和朗
(つくば中央第3)
および臭素系難燃剤の分析(CCQM-P114)に参加し
概
た。有機化合物のスペクトルデータベースに関して、
要:
新規化合物223について、新たに1119件のスペクトル
1)経済産業大臣から委任される計量法に基づく型式
測定・解析を行い Web に追加公開した。さらに、X
承認及び試験並びに基準器検査(力学計測科、流量
線反射率法による精密評価技術、透過電子顕微鏡によ
計測科及び計量標準技術科で実施されるものを除
る3次元計測の自動化、光電子分光および X 線吸収分
く。)を適切に実施する。
光の基礎技術、MALDI-TOFMS の定量法、遠心分離
2)特定計量器の型式承認では、要素型式承認の導入
基本装置を用いた微粒子分球技術、高分子特性解析技
や試験所認定制度の活用による外部試験制度の導入
術において基礎データを蓄積した。
についての調査研究を行い、制度の合理化を図る。
研究テーマ:テーマ題目50、テーマ題目51、テーマ題目
3)国際法定計量機関(OIML)が推奨する、試験・
52、テーマ題目53、テーマ題目54、テーマ
検定に使用する標準設備に対するトレーサビリティ
を確立するための制度について調査研究を行う。
題目55、テーマ題目56
4)我が国の法定計量システム整備計画案を策定し、
経済産業省に対して企画・立案の支援を行う。
計量標準システム科
(Metrology Institute of Japan, Measurement
5)型式承認実施機関として、ISO/IEC17025及びガ
standards system division)
研究科長:前田
イド65に適合した品質システムにより認証・試験業
務を実施し、透明性を保する。
恒昭
6)OIML 適合証明書発行及び二国間相互承認を推
(つくば中央第3)
概
進し、国内計量器産業の国際活動に貢献する。
要:
7)計量法に規定する特定計量器の検定・検査に係る
システム検証研究センターから情報系のグループが
技術基準の JIS 引用を行うため、特定計量器 JIS
加わり、新しい組織として発足した。
原案の作成を行う。
計量情報システム研究グループは、情報系の研究者
8)計量法の家庭用計量器及び特殊容器に対する JIS
が中心となりシステム検証研究センターと協力し、法
を整備するための調査研究事業を行う。
定計量技術科の非自動はかりを含む特定計量器のソフ
9)OIML の TC 活動に積極的に参加し、国際勧告の
トウェア認証に関わる審査・試験技法の開発、圧力・
策定に貢献する。
流量を含む遠隔校正システムのソフトウエア検証およ
びソフトウエアの妥当性を評価する技術の研究・開発、
10)アジア太平洋法定計量フォーラム(APLMF)事
機能安全の研究などを行っている。
務局活動の支援を実施する。
標準物質開発・供給システム研究グループは、化学
分野での計量トレーサビリティを普及し分析値の信頼
計量標準技術科
性を確保する仕組み作りを行っている。種類が多い有
(Metrology Institute of Japan, Dissemination
機標準物質の開発、生産、供給、使用の実態を明らか
Technology Division Dissemination Technology
にし、要求不確かさに見合った標準物質を迅速に開
Division)
発・供給するシステムを研究している。トレーサビリ
研究科長:堀田
正美
ティが保証された標準物質が普及し、分析に使用され
(関西センター)
ることで分析値の信頼性の向上が期待できる。
概
要:
また、分析値の信頼性を向上させるために標準物質
当科の主要業務は、経済産業大臣から委任された計
供給管理室と協力して、他機関の供給する標準物質に
量法に基づく法定計量業務の適切な遂行である。法定
ついてトレーサビリティ・ソースとしての妥当性を評
計量業務は、国内の様々な分野における商取引及び客
価し公表するシステムを構築・試験運用し、メタボ健
観的かつ適正な計量証明行為に不可欠な業務であり、
診の標準物質8項目に適用してこれ等を公表した。ま
具体的には、型式承認、型式承認試験、基準器検査、
た、トレーサビリティの普及のために計量研修センタ
検定、比較検査である。
ーと協力し不確かさ研修プログラムを策定している。
これらの業務の他、リングゲージ、プラグゲージ、
(156)
産業技術総合研究所
ガラス製体積計、ガラス製温度計、密度浮ひょうの校
高安定化レーザを開発し、光ファイバコムを用いて安定
正技術の開発と改善、校正における不確かさの低減を
度を評価した。現在、安定度は10秒で、2×10-14である。
目標とし、それらの標準供給体制の維持を行い、信頼
また、Yb 原子の分光実験よりレーザ線幅は少なくとも
性のある校正結果を提供することにより、産業界のト
数百 Hz 以下であることが確認された。また関連して、
レーサビリティ体系の構築に寄与する。並びに、国際
産総研つくばと東大本郷間に光ファイバリンクを用いて、
比較、OIML 等の国際活動に貢献する。
光周波数キャリアによる周波数基準信号の伝送及びそれ
研究テーマ:テーマ題目61、テーマ題目62、テーマ題目
を用いた周波数測定を行った。その結果、わずか数時間
の測定で5.6×10-15の不確かさで東大の Sr 光格子時計の
63
---------------------------------------------------------------------------
絶対周波数を決定することができた。光周波数コムに関
[テーマ題目1]時間・周波数標準の高度化に関する研
しては、1) 長さの国家標準(特定標準器)用システム
の構築、2) Yb 光格子時計の時計遷移観察用レーザの
究(運営費交付金)
[研究代表者]池上
健
(時間周波数科
[研究担当者]萩本
周波数安定度評価および絶対周波数測定、3) 共振器長
時間標準研究室長)
の高速制御と CEO スペクトルの線幅狭窄化による相対
謙一、柳町
線幅の狭窄化、などの成果が得られた。デジタル制御に
憲、渡部
高見澤
昭文、白川
真也、
裕介
関しては、高速信号処理のための位相周波数比較器の開
(常勤職員5名、他1名)
発を行い、実際にマイクロ波のエキサイターへの周波数
制御を行った。5 GHz エキサイターの周波数安定度は
[研 究 内 容]
原子泉方式周波数標準器においては、操作性の向上を
カウンターの同帯域の測定限界まで到達した。長さの特
図りつつ標準器の維持を行い、前年度に引き続き、今年
定標準器である「ヨウ素安定化 He-Ne レーザ」につい
度も8度にわたり、国際原子時(TAI)の校正を行った。
ては、JCSS 校正4件および所内校正3件を行った。また、
また、不確かさをより小さくするための2号機の設計・
広帯域光周波数で1件の依頼試験を行った。
製作を行った。光ポンピング方式周波数標準器について
[分
は、TAI との予備的な比較を継続した。原子発振器の高
[キーワード]光格子時計、光周波数コム、光周波数測
性能化のために必要な低雑音マイクロ波発振器について
定、ヨウ素安定化 He-Ne レーザ、ヨウ
は、5 MHz、10 MHz、100 MHz、1 GHz の低雑音な
素安定化 Nd:YAG レーザ、光通信帯
野
名]標準・計測
基準信号を常時供給可能なシステムを整備し、その維持
を行った。これらの基準信号のうち、1 GHz の信号は
[テーマ題目3]時系・時刻比較の高度化に関する研究
光格子時計用超高安定レーザーの周波数安定度評価用に
(運営費交付金)
利用された。
[分
野
[研究代表者]今江
名]標準・計測
理人(時間周波数科
周波数シス
テム研究室長(兼務))
[キーワード]時間周波数、原子時計、セシウム一次周
[研究担当者]雨宮
波数標準器、原子泉、低温サファイアマ
米島
イクロ波発振器
正樹、鈴山
和香子、北田
智也、藤井
健、黒岩
靖久、
光
(常勤職員3名、他4名)
[研 究 内 容]
[テーマ題目2]光周波数(波長)標準の開発と光周波
当所の時間周波数国家標準であり、標準供給の基準で
ある UTC(NMIJ)の安定運用に努め、また原子時計
数計測技術の研究(運営費交付金)
[研究代表者]洪
鋒雷
間の時刻差を高精度に測定し、UTC(NMIJ)の安定度
(時間周波数科
[研究担当者]稲場
をより改善するため、高精度時刻差測定装置の開発に着
肇、保坂
波長標準研究室長)
一元、平野
育、
手した。原子時の国際比較では、国際原子時(TAI)や
安田
正美、石川
純、大苗
敦、
協定世界時(UTC)への貢献のため GPS 衛星 P3コー
今江
理人、大嶋
新一、河野
託也、
ド(P1と P2の線形結合)や衛星双方向方式による国際
中嶋
善晶、井原
淳之、川崎
和彦
時間周波数比較並びに BIPM が試行する GPS 搬送波位
(常勤職員9名、他4名)
相方式高精度時間周波数比較実験(TAI-PPP)を継続
[研 究 内 容]
的に実施した。また、超高精度時間周波数比較法として
次世代の周波数標準を目指した光周波数標準について
光ファイバー一心双方向方式や衛星双方向搬送波位相法
は、171Yb フェルミ同位体の、スピン禁制遷移を用いた
の基礎研究を継続して実施した。
標準供給については JCSS や依頼試験による持込校
磁気光学トラップに成功し、光格子に捕獲することに成
JCSS 校正 3件、依頼試験
功した。さらに、光格子中の原子の時計遷移分光に成功
正サービス(校正件数
し、マジック波長の決定に成功した。この条件下で時計
件)を行い、また、GPS 衛星を仲介とした周波数遠隔
遷移の絶対周波数測定に成功した。Yb 光格子時計用超
校正は、依頼試験で海外進出日系企業2社を含む11社12
(157)
9
研
究
件(JCSS8件、依頼試験4件:2009年3月末現在)に達
備した。
している。
[分
[分
[キーワード]幾何寸法、微小寸法・微細形状、角度標
野
名]標準・計測
野
名]標準・計測
準
[キーワード]時間周波数標準、時系、標準供給、
GPS、衛星双方向時間周波数比較、遠隔
[テーマ題目6]質量力関連標準の開発と供給(運営費
校正
交付金)
[研究代表者]上田
[テーマ題目4]光波干渉による長さ標準の開発に関す
(力学計測科
る研究(運営費交付金)
[研究代表者]美濃島
薫
(長さ計測科
[研究担当者]平井
鍜島
麻理子、堀
洋一、寺田
泰明、吉森
質量力標準研究室長)
[研究担当者]山口
幸夫、孫
建新、植木
正明、
前島
弘、大串
浩司、水島
茂喜、
長さ標準研究室長)
亜紀子、尾藤
和永
林
聡一、
敏行、西野
敦洋(常勤職員9名)
[研 究 内 容]
秀明
質量標準に関しては、国際相互承認協約の附属書 C
(常勤職員6名、他1名)
に校正測定能力が登録された1 mg~5200 kg の範囲で
[研 究 内 容]
短尺ブロックゲージ(長さ-4番)、長尺ブロックゲー
標準を安定的に供給すると共に、分銅校正の更なる高精
ジ(長さ-5番)、標準尺(長さ-8番)、光波距離計(長
度化と効率化のために自動音響式体積計を開発し、また
さ-10番)などに関して、標準供給と高度化を実施した。
大量ひょう量質量比較器の改良を進めた。
力 標 準 に 関 し て は 、 国 際 相 互 承 認 さ れ た 10 N ~
また、マクロデジタルスケール(長さ-12番)、固体屈折
率(長さ-15番)については標準の高度化を行うと共に、
20 MN の範囲における標準供給を着実に実施すると共
品質システムの整備を行った。段差高さゲージ(長さ-6
に、54 kN 力標準機の効率化改修に着手した。高安定
番)、ミクロデジタルスケール(長さ-12番)の標準供給
な音叉式力計を実機に装着するための研究に一定の成果
開始のための技術開発を実施した。タイ国の標準尺標準
を得て成果発表することとなった。アジア太平洋地域で
確立に関して技術支援を行った。
の基幹比較の幹事所として報告書をとりまとめ草案 B
[分
段階に進めたほか、当所で開発した力計校正の不確かさ
野
名]標準・計測
評価方法を ISO 規格に反映させるべく ISO 技術委員会
[キーワード]ブロックゲージ、標準尺、距離計、干渉
測長器、長さ標準
分科会に継続して参加し討議を進めた。
トルク標準に関しては、校正依頼の増加に対応し国際
相互承認された5 N・m~20 kN・m の範囲における標準
[テーマ題目5]幾何学量の高精度化に関する研究(運
営費交付金)
[研究代表者]高辻
供給を着実に実施したほか、小容量トルク標準機の開発
利之
では、試運転ができる段階に達した。また、大容量
(長さ計測科
5 kN・m 参照用トルクレンチの校正技術を開発し、ド
幾何標準研究室長)
[研究担当者]渡部
司、土井
琢磨、藤本
弘之、
イツの国家計量標準研究機関 PTB との間で国際比較を
権太
聡、直井
一也、大澤
尊光、
行い、校正方法と装置の妥当性を確認した。
三隅
伊知子、佐藤
前澤
孝一、折本
呂
理、菅原
尚充、周
健太郎、
泓、
重力加速度標準に関しては、国土地理院などとの定期
的な共同観測を行い、重力加速度計測の国際整合性確保
明子(常勤職員10名、他4名)
に協力した。
JCSS トレーサビリティ制度に関しては、質量・力・
[研 究 内 容 ]
「CMM による幾何形状測定」ではステップゲージ校
トルクの各技術分科会に参加し技術基準の作成や改定並
正システムの高度化を実施した。ナノ計測に関しては、
びに技術的諸問題の解決に協力すると共に、分銅および
ドイツ PTB との25 nm 一次元グレーティングの二国間
力計の JCSS 技能試験への技術的支援や、校正事業者
国際比較を行った。「表面性状」については、装置の高
の登録審査や定期検査で技術アドバイザーを務めるなど
度化を行った。角度については、ロータリエンコーダ、
多方面から JCSS 認定機関に協力した。
オートコリメータ、ポリゴンのピアレビューを受けた。
[分
jcss 校正及び依頼試験校正については、「CMM による
[キーワード]質量、力、トルク、重力加速度
野
名]標準・計測
幾何形状測定」4件、「オートコリメータ」:3件、「ステ
ップゲージ」6件、「ボールプレート」2件、「ロータリエ
[テーマ題目7]圧力真空標準の開発と供給(運営費交
ンコーダ」:1件、「多面鏡」:2件、「平面度」:7件の計26
付金)
件を実施した。これまで標準供給を宣言した19項目に対
[研究代表者]秋道
して円滑に標準供給できるように設備及び測定環境を整
斉
(力学計測科
(158)
圧力真空標準研究室長)
産業技術総合研究所
彰、小畠
時彦、杉沼
茂実、
WTO/TBT 協定に従い国際基準・規格に対応した技術
真範、新井
健太、小島
桃子、
基準の確保に努めた。JCSS 認定については、認定機
[研究担当者]大岩
城
吉田
肇、梶川
関・産業界との連携のもと技術的な協力を行った。また、
宏明(常勤職員9名)
法定計量クラブはかり研究会を開催し、産業界との連携
[研 究 内 容]
を図った。
圧力標準、真空標準(全圧/分圧)およびリーク標準
によって、JCSS 認定事業者の特定二次標準器の校正と
[分
野
名]標準・計測
依頼試験による校正を進めると共に、校正装置の高効率
[キーワード]法定計量、型式承認、非自動はかり、
化と高精度化を目指した。リーク標準の国際比較に参加
OIML、基準器検査、天びん、分銅、
し、持ち回り校正機器の校正を実施した。幹事所として
NMIJ クラブ、法定計量クラブ
実 施 し た 液 体 圧 力 国 際 比 較 の APMP.M.P-K7.1 と
APMP.M.P-K8の Drfat B レポート作成を進めた。圧力
[テーマ題目9]音響標準の開発と供給(運営費交付
標準に関しては、ピストン・シリンダの長期安定性など
金)
の特性試験を繰り返し、不確かさの低減と圧力範囲の拡
[研究代表者]菊池
恒男
(音響振動科
大へ向けて開発を進めた。中真空標準の品質システムの
[研究担当者]堀内
改訂をし、高真空、分圧及びリークの各標準の品質シス
音響超音波標準研究室長)
竜三、高橋
弘宜、藤森
威
(常勤職員3名、他1名)
テムを新たに整備した。JCSS 認定制度に関する協力と
[研 究 内 容]
して、圧力分科会での委員会の取り纏め、認定審査への
技術アドバイザーの派遣、技能試験への参照値の提供や
音響測定器の JCSS 等校正サービスについて、品質
報告書作成への協力、などを行った。また国際協力の一
システムの継続的運用の下で jcss8件、基準器検査24件
環として、タイの国立標準機関である NIMT に対して
を実施した。JCSS 登録申請事業者に対しては、4件の
隙間制御型圧力天びんの特性評価方法などの技術移転を
登録審査(新規2件、範囲拡大2件、うち2件は審査継続
行い、NIMT の AS-NITE 認定取得に際して技術面での
中)を行い、測定監査に必要な技能試験参照値を提供し
支援を行った。「真空計校正方法」の JIS 原案作成に協
た。国際的には音響校正器の音圧レベル基幹比較
力した。
APMP.AUV.A-S1に参加し、不確かさ評価に必要な予備
[分
野
名]標準・計測
実験等を行い、バジェット表を幹事研究所に提出した。
[キーワード]圧力標準、真空標準、重錘形圧力天びん、
一 方 、 イ ン ド ネ シ ア の 国 家 計 量 標 準 研 究 所 ( KIMLIPI)の職員に対して研修を行い、実習や講義を通じ
真空計、リーク標準、分圧標準
て技術支援を行った。また国内の機関に対しても同種の
[テーマ題目8]質量計の試験検査(運営費交付金)
技術研修を行った。音響標準の校正周波数範囲拡大につ
[研究代表者]根本
いては、開発を着実に進めた。空中超音波領域
一
(力学計測科
[研究担当者]福田
(20 kHz 以上)に関しては、不確かさ評価を完了し、
質量計試験技術室長)
健一、藤本
安亮、高橋
豊
校正技術として確立させ、品質システムのプロトタイプ
を構築した。超低周波領域(20 Hz 以下)に関しては、
(常勤職員4名)
[研 究 内 容]
基礎データの収集を継続し、校正システムを完成させた。
質量計に関する法定計量業務(基準適合性の評価:型
[分
式承認試験及び基準器検査)並びに非自動はかり及び質
野
名]標準・計測
[キーワード]音圧レベル、標準マイクロホン、空中超
量計用ロードセルの国際勧告(OIML 勧告)に従った
音波、超低周波音
性能評価試験を円滑に実施すると共に試験・検査の信頼
性の確保を図った。
[テーマ題目10]超音波標準の開発と供給(運営費交付
非自動はかりの品質管理を整備すると共に、非自動は
金)
かりの性能評価試験を円滑かつ効率的に行うためのモジ
[研究代表者]菊池
ュール試験(指示計及びロードセル)に関する技術開発
恒男
(音響振動科
を行い、品質管理も整備した。また、試験に使用する設
[研究担当者]松田
備の整備及び OIML 勧告に従った試験において、品質
音響超音波標準研究室長)
洋一、吉岡
正裕、内田
武吉
(常勤職員4名)
システム ISO/IEC ガイド65、ISO/IEC17025に基づいた
[研 究 内 容]
認定取得を行った。さらに大型の非自動はかりに対応す
17年度に依頼試験を開始した、超音波パワー標準の一
る検出器評価のためのロードセル試験装置の整備を行っ
次校正装置である“天秤法”による超音波パワー校正依
た。
頼試験範囲を、500 mW から15 W まで拡張した。更に
OIML 等が主催する国内外の会議、技術委員会への
天秤法で対応できない15 W 以上の強力水中超音波パワ
積極的参加及び関連する研修に取り組み、常に
ー標準確立のため、水を発熱体とする新規なカロリメト
(159)
研
究
リ法の研究開発を継続し、再現性を大幅に改善するとと
撃加速度校正装置について、ゼロシフトフィルタリング
もに、熱のロスが少ない中空壁水槽を試作して測定精度
を含めた信号処理法の開発を完了した。これらの成果を
を向上した。現行装置により80 W 以上までの測定を実
国際会議・展示会で報告し、振動加速度標準の普及に努
証した。超音波音圧標準については、ハイドロホン感度
めた。
の一次及び二次校正装置の維持に努め、引き続き年間20
[分
件以上の依頼試験を行なった。更に、昨今の超音波診断
[キーワード]振動加速度、地震計、振動試験、レーザ
野
分野の要求に応えるため、校正周波数範囲を0.5 MHz
名]標準・計測
干渉計
~40 MHz に拡大する研究開発を継続し、30 MHz ま
でのハイドロホン感度校正を実証した。低周波数領域の
[テーマ題目12]硬さ標準の開発と供給(運営費交付
音圧計測に資するため、相互校正法を用いた50 kHz~
金)
1 MHz 帯のハイドロホン感度校正装置の構築を開始し
[研究代表者]菊池
た。0.5 MHz~20 MHz の周波数範囲におけるピーク
恒男
(音響振動科
負音圧、インテンシティ等の超音波音場パラメタ校正の
[研究担当者]高木
依頼試験を継続した。次世代の強力水中超音波標準に必
石田
要不可欠な、安定且つ堅牢な超音波計測用デバイスを開
強度振動標準研究室長)
智史、服部
浩一郎、清野
豊、
一(常勤職員5名)
[研 究 内 容]
発するため、水熱合成法による超音波デバイス試作を継
硬さ試験は機械部品等の強度特性を簡便に評価できる
続し、水熱 PZT 圧電多結晶膜の最適成膜条件として、
工業試験法であり、鉄鋼・自動車・航空を始め、幅広い
容器内温度160℃、圧力0.6 MPa、試料回転数250 rpm
産業分野で利用されている。現在、硬さの国家標準とし
であることを明らかにした。ソノポレーション技術、ソ
てロックウェル硬さとビッカース硬さを維持・供給して
ノケミストリ等の研究開発で必要となるキャビテーショ
いるが、平成20年度は校正サービスとして製品評価技術
ン発生量定量計測装の試作を継続し、キャビテーション
基盤機構が行うロックウェル硬さ JCSS 校正事業者の
発生に伴う高周波信号検出に成功した。この他、タイ国
技能試験に関して参照用仲介器(硬さ標準片)の校正を
家計量標準機関に対して、超音波パワー校正に関する技
実施するとともに、登録事業者の審査3件を行った(継続
術指導を行った。また、超音波音場計測クラブを通して、
審査2件、新規登録1件)。これにより平成20年度末にお
超音波計測技術の啓蒙、普及に努めた。
ける硬さ区分の JCSS 校正事業者は9事業所になった。
[分
標準供給の要望の多いロックウェル硬さ B スケールに
野
名]標準・計測
[キーワード]超音波パワー、天秤法、カロリメトリ法、
ついて、新たに持ち回り試験を行うための予備的研究を
超音波振動子、超音波音圧、ハイドロホ
行った。ビッカース硬さについては、国際比較の報告書
ン、超音波音場パラメタ、水熱合成法、
のドラフトを準備した。また、ナノインデンテーション
キャビテーション
試験機の押込み変位校正装置に関する研究においては試
験機に設置可能な小型レーザ干渉計を開発し、その干渉
[テーマ題目11]振動加速度標準の開発と供給(運営費
信号の補正処理を行うプログラムを作成・動作確認を行
交付金)
[研究代表者]菊池
(音響振動科
[研究担当者]大田
い、不確かさの評価を開始した。さらに、ナノインデン
恒男
テーションによる次世代半導体デバイス層間絶縁膜の評
強度振動標準研究室長)
明博、石神
民雄、野里
価について民間企業と共同研究を行い、その成果は国内
英明
学会・国際会議で報告された。
(常勤職員4名)
[分
[研 究 内 容]
野
名]標準・計測
[キーワード]金属材料、材料試験、ロックウェル硬さ、
振動測定は航空宇宙、自動車、建設、プラント、地震
ビッカース硬さ、極微小硬さ、ナノイン
等、広範囲で行われ、その測定に用いられる振動加速度
デンテーション
計はレーザ干渉計と加振器による校正装置により校正サ
ービスが行われている。校正サービス供給済みの振動数
[テーマ題目13]シャルピー衝撃値標準維持供給(運営
領域(0.1 Hz~10 kHz)に関しては、品質システムに
費交付金)
即した維持・管理を実施した。また、インドネシア及び
[研究代表者]菊池
タイの国家計量標準機関に対して、現地での技術指導
(音響振動科
(各機関1週間)を行った。研究開発に関しては、振動
[研究担当者]山口
校正の加振器に関連する不確かさ評価法の開発、及び、
[研 究 内 容]
校正の自動化に向けた開発を継続的に行うと共に、振動
式の校正では限界がある衝撃的な加速度領域(200 m/s
恒男
強度振動標準研究室長)
幸夫(常勤職員2名)
シャルピー衝撃試験は材料の特性である延性-脆性遷
2
移という材料評価で他に類をみない簡便さと有用性を持
~5000 m/s2)での校正を実現するために、開発中の衝
つ試験法であり、破壊強度を測定する材料試験法として、
(160)
産業技術総合研究所
産業界で広く用いられているものである。金属材料のシ
熱電対の国際比較のための熱電対を製作し、予備的測定
ャルピー衝撃試験の標準は当研究室で維持されており、
を行った。JCSS 認定制度に協力し、技術アドバイザー
依頼試験を通じて産業界に供給されている。平成20年度
の派遣等による支援を行った。
も標準値維持のための比較測定を行い標準機3台の整合
[分
性確認を行った。また、JIS B7740基準試験機の依頼試
[キーワード]標準、温度、熱電対、共晶点、校正技術
野
名]標準・計測
験を1件実施した。さらにシャルピー衝撃値に関する品
[テーマ題目16]低温度標準の開発・維持・供給(運営
質システムの確立のため試験業務を校正業務に変更する
費交付金)
作業を行うとともに、マニュアル類を完成させた。
[分
野
[研究代表者]田村
名]標準・計測
[研究担当者]中野
ルギー、脆性、材料試験
櫻井
享、島﨑
毅、中川
弘久、鷹巣
久司、
幸子、豊田
恵嗣
[研 究 内 容]
効率化(運営費交付金)
14 K~30℃のカプセル型白金抵抗温度計標準を供給
純
(温度湿度科
低温標準研究室長)
(常勤職員4名、他3名)
[テーマ題目14]抵抗温度計標準の維持供給及び高度化
[研究代表者]丹波
收
(温度湿度科
[キーワード]衝撃値、シャルピー衝撃試験、吸収エネ
し品質システムを構築した。アルゴン三重点(84 K)
高温標準研究室長)
一彰、Januarius V. Widiatmo、
で特定二次標準器(ロングステム型白金抵抗温度計)の
佐藤
公一、原田
校正を行い、JCSS の下限温度の77 K への拡大に伴う
安曽
清(常勤職員5名、他2名)
[研究担当者]山澤
克彦、坂井
宗雄、
校正事業者の審査に技術アドバイザー等による支援を行
った。1990年 国際温度目盛 (ITS-90)を 下限温度の
[研 究 内 容]
供給中の抵抗温度計の温度範囲-40~420℃については
0.65 K までヘリウム3蒸気圧温度計により実現し、
特定副標準器等、660℃アルミニウム点および962℃銀点
0.65 K~24 K のロジウム鉄抵抗温度計の標準供給を開
においては特定二次標準器の校正を行った。水の三重点
始した。3 K~24 K でヘリウム3気体温度計により
およびインジウム点について、同位体組成及び不純物の
ITS-90と熱力学温度を同時測定した結果が、両者の差
与える影響を高精度に評価する装置を製作し、不確かさ
の CCT-WG4による国際合意値の算出に採り入れられた。
低減のための評価を行った。水の三重点の国際比較
ネオンの三重点(24 K)の同位体依存性測定の国際比
(APMP. T-K7)を副幹事国として継続した。次世代温
較と基幹比較 CCT-K1.1(0.65 K~24 K)を継続し
度目盛の開発のため、962℃から1000℃付近までの高温
APMP.T-K3.3(84 K)を開始した。0.9 mK~1 K の
域で、放射温度計と白金抵抗温度計の比較測定を行い、
暫定低温度目盛(PLTS-2000)を実現するため、第一段
両者の一致性の評価を行った。校正業務効率化のための
冷凍部の希釈冷凍機を製作・試験し、第二段冷凍部の核
定点装置の整備を行った。JCSS 認定制度に協力し、技
断熱消磁冷凍機を設計し製作を開始した。
術アドバイザーの派遣等による支援を行った。
[分
[分
[キーワード]1990年国際温度目盛、PLTS-2000、熱
野
名]標準・計測
[キーワード]標準、温度、抵抗温度計、温度定点、校
温度定点、蒸気圧温度計
[テーマ題目15]熱電対標準の技術開発(運営費交付
[テーマ題目17]放射温度標準の開発と供給(運営費交
金)
付金)
純
(温度湿度科
[研究担当者]井土
黄
名]標準・計測
力学温度、白金抵抗温度計、気体温度計、
正技術
[研究代表者]丹波
野
[研究代表者]石井
高温標準研究室長)
正也、小倉
秀樹、増山
順太郎
(温度湿度科
茂治、
[研究担当者]佐久間
毅(常勤職員3名、他2名)
清水
[研 究 内 容]
王
熱 電 対 校 正 用 温 度 定 点 の 銀 点 ( 962 ℃ )、 銅 点
放射温度標準研究室長)
史洋、山田
善郎、笹嶋
尚彦、
祐公子、福崎
知子、金子
由香、
云芬、皆広
潔美
(常勤職員6名、他3名)
(1085℃)、パラジウム点(1554℃)において特定二次
[研 究 内 容]
標準器等の校正を行った。コバルト-炭素共晶点
高温域においては、標準放射温度計の温度効果、面積
(1324℃)の不確かさ評価を行い、標準供給を開始した。
効果等に関する性能評価を行い、標準供給として、特定
次年度に予定されている国際比較に向けて、英国 NPL
副標準器の定点黒体の校正及び、依頼試験、放射温度計
と共同で、パラジウム-炭素共晶点および白金/パラジ
の 所 内 校 正 、 科 内 校 正 を 行 っ た 。 中 温 域 ( 100 ℃ ~
ウム熱電対の不確かさ評価を行った。APMP 金/白金
420℃)においては、新たに、160℃~420℃の温度域の
(161)
研
究
国家標準を整備し、依頼試験による標準供給を開始した。
[キーワード]湿度、高湿度、低湿度、露点
常温域においては、赤外放射温度計校正用の大口径黒体
炉の開発を行い、JCSS トレーサビリティ整備に向けた
[テーマ題目20]微量水分領域の標準(運営費交付金)
技術基盤の整備を進めた。これらと併せ、JCSS 制度の
[研究代表者]北野
(温度湿度科
運営に関し、技術アドバイザー等による支援を行った。
[分
野
寛
[研究担当者]阿部
名]標準・計測
湿度標準研究室長)
恒(常勤職員2名)
[研 究 内 容]
[キーワード]放射温度標準、標準供給、JCSS、依頼
半導体製造をはじめとする先端技術分野で必要とされ
試験、標準放射温度計
る、気体中微量水分の標準発生技術の開発を進めている。
[テーマ題目18]金属-炭素共晶点による高温度目盛の
校正作業の効率化を図り安定した標準供給体制を確立す
高度化(運営費交付金)
るために、拡散管方式の微量水分発生装置について、高
[研究代表者]石井
(温度湿度科
[研究担当者]山田
精度流量測定・制御システムを開発して流量測定の校正
順太郎
を容易にした。標準供給の範囲を1.4 ppm まで拡大し
放射温度標準研究室長)
善郎、笹嶋
尚彦、阿羅
た。CRDS 以外の汎用微量水分計測器の予備的な性能
千里
調査を行い、問題点を明らかにした。
(常勤職員3名、他1名)
[分
[研 究 内 容]
野
名]標準・計測
[キーワード]微量水分、拡散管、低湿度
当部門は1999年に世界に先駆けて金属(炭化物)-炭
素共晶を用いた1100℃以上の高温度標準を提案し、実用
[テーマ題目21]気体流量・気体流速標準の研究開発・
化に取り組んできた。Co-C 共晶点を中心として、セル
維持・供給(運営費交付金)
構造の改良により長期安定性の向上を図り、実用的な標
[研究代表者]高本
準器に要求される100回程度の定点実現が可能であるこ
正樹
(流量計測科
とを検証した。WC-C 包晶点に関し、鋳込み技術を向
気体流量標準研究室長)
上し、4単一セルの繰り返し性が約20 mK であり、異な
[研究担当者]石橋
雅裕、栗原
昇、森岡
るセル間の温度値が50 mK 以内での一致を実現した。
舩木
達也、櫻井
真佐江
前年度の開始した3定点(Fe-C、Co-C、Pd-C 共晶点)
敏博、
(常勤職員5名、他1名)
の依頼試験による標準供給について、品質システムを整
[研 究 内 容]
備し、高温熱電対の参照標準器への標準供給を実施した。
平成19年度に引き続き特定標準器による校正、依頼試
国際的には国際度量衡委員会のもとのワーキンググル
験、技能試験用参照値の供給を行った。また、技術アド
ープ活動として高温定点プロジェクトにおいて、6つの
バイザとして製品評価技術基盤機構が行う校正事業者の
ワークパッケージのうち2つのパイロットを担当し、計
認定審査に参加した。
気体流量に関しては、APMP K6のパイロットラボと
画の推進に継続して貢献している。
[分
野
名]標準・計測
して、基幹比較を実施中である。
[キーワード]高温度標準、金属-炭素共晶、高温定点、
不純物、放射温度計、熱電対
気体流速に関しては、APMP K3のパイロットラボと
して、基幹比較を実施中である。
[分
[テーマ題目19]湿度標準の開発と供給(運営費交付
野
名]標準・計測
[キーワード]気体流量・気体流速標準
金)
[研究代表者]北野
寛
(温度湿度科
[研究担当者]越智
[テーマ題目22]液体流量体積標準の研究開発・維持・
湿度標準研究室長)
信昭、丹羽
民夫、堂山
供給(運営費交付金)
友己子
[研究代表者]寺尾
(常勤職員2名、他2名)
吉哉(流量計測科
液体流量標準
研究室長)
[研 究 内 容]
[研究担当者]古市
湿度標準供給の範囲拡大と効率化の研究を進めている。
低湿度標準については校正手順の見直しと効率化を進め
長島
紀之、Cheong KarHooi、
豊(常勤職員3名、他1名)
[研 究 内 容]
た。高湿度標準については、100℃を超える高露点発生
平成19年度に引き続き特定標準器(液体流量校正設
について環流式バブリング装置による前置飽和槽の運転
備)により0.005~3000 m3/h の範囲で校正、依頼試験、
条件を検討し、既存装置の問題点と安定な露点発生条件
技能試験用参照値の供給を行った。さらに、体積標準を
を明らかにした。大気圧下での発生露点を鏡面冷却露点
維持した。
計により評価した。校正業務は、18件。
[分
[分
[キーワード]液体流量標準、体積標準
野
名]標準・計測
(162)
野
名]標準・計測
産業技術総合研究所
監査を受けるなど技術管理者として品質システムの維持
[テーマ題目23]石油流量標準の研究開発・維持・供給
管理に務めた。
(運営費交付金)
[研究代表者]寺尾
また2008年5月に国際度量衡局(BIPM)で開催され
吉哉
(流量計測科
[研究担当者]嶋田
隆司、土井原
浦井
た測温諮問委員会熱物性作業部会(CCT-WG9)におい
液体流量標準研究室長)
章、渡部
良次、武田
一英、
てレーザフラッシュ法による熱拡散率の国際比較の進捗
状況を報告した。
理夫
[分
(常勤職員3名、他3名)
野
名]標準・計測
[キーワード]固体熱物性標準
[研 究 内 容]
平成19年度に引き続き0.1~300 m3/h の範囲に対して、
[テーマ題目26]分散型熱物性データベースに関する研
標準供給を継続した。また、石油中流量の品質システム
究(運営費交付金 RIO-DB)
の整備を完了した。また、技術アドバイザとして製品評
価技術基盤機構が行う校正事業者の認定審査に参加した。
[分
野
[研究代表者]馬場
(物性統計科長、熱物性標準研究室長)
名]標準・計測
[研究担当者]山下
[キーワード]石油流量標準
宮崎
綾子、鈴木
眞紀子、
英理子
[研 究 内 容]
開発・試験検査(運営費交付金)
科学技術を支える基盤情報である物質・材料の熱伝導
和朗
(流量計測科
[研究担当者]小谷野
雄一郎、高澤
(常勤職員2名、他3名)
[テーマ題目24]特定計量器の適合性評価に関する研究
[研究代表者]根田
哲也
率、熱拡散率、比熱容量、熱膨張率、放射率などの熱物
流量計試験技術室長)
康宏、島田
西川
一夫、大谷
高橋
豊、武内
正樹、安藤
怜志、薊
弘二、
ム」の開発を進め、インターネット公開している。
裕彦、
昭雄、飯島
性データを収録した「分散型熱物性データベースシステ
2008年度は、新規に2元素化合物の比熱容量、エンタ
紀子
ルピー、エントロピーの評価済みデータを収録し公開し
(常勤職員8名、他2名)
た。また Ajax を用いた Web 版クライアントに物質情
[研 究 内 容]
平成19年度に引き続いて型式承認試験及び基準器検
報閲覧機能を追加して公開するとともに、積層型・分散
査を実施し、これらの試験のための設備維持を行った。
型複合材料に関する物質情報収録機能および、テンソル
自動車等給油メーターの OIML 証明書を発行した。
データの収録・表示機能を開発した。
さらに、自動車等給油メーターの品質システムの整備
[分
に努めた。
[キーワード]熱物性、データベース、分散型、インタ
[分
野
野
名]標準・計測
ーネット、知的基盤
名]標準・計測
[キーワード]特定計量器の適合性評価
[テーマ題目27]新規材料実用化のためのデータ整備に
関する研究(運営費交付金 部門重点
[テーマ題目25]固体熱物性標準の整備(運営費交付
化)
金)
[研究代表者]馬場
[研究代表者]馬場
哲也
[研究担当者]山田
修史、竹歳
阿子島
阿部
尚之、渡辺
めぐみ、八木
陽香、山下
[研究担当者]山田
博道、
阿子島
貴志、
雄一郎、水野
哲也
(物性統計科長、熱物性標準研究室長)
(物性統計科長、熱物性標準研究室長)
阿部
耕平
(常勤職員9名)
修史、竹歳
尚之、渡辺
めぐみ、八木
陽香、山下
博道、
貴志、
雄一郎、水野
耕平
(常勤職員9名)
[研 究 内 容]
[研 究 内 容]
熱膨張率標準、熱拡散率標準、比熱容量標準、薄膜熱
カーボンナノチューブ(電気的・熱的特性)、ダイヤ
物性標準の供給業務を行いつつ、計画どおり比熱容量
モンド薄膜(熱伝導率、熱膨張率)、酸化物熱電材料
245番の標準を確立するとともに、薄膜熱拡散率標準
(熱物性・熱電特性)など新規に開発された材料に関し
242-1番の標準薄膜の整備を完了した。レーザフラッシ
て体系的情報を整備し、材料ユーザに提供して実用化を
ュ法による熱拡散率標準と示差走査熱量法による比熱容
図るために、2008年度中はダイヤモンドなどの炭素系材
量標準の連携により熱伝導率標準244番(300-900K)の
料の熱物性データを収集・評価するとともに、分散型熱
新規認証標準物質(CRM)の開発を進めた。熱膨張
物性データベースに体系的に収録してインターネット公
率・熱拡散率・比熱容量の標準に関して技術マニュアル
開を実現した。
を整備するとともに、熱膨張率、熱拡散率について内部
[分
(163)
野
名]標準・計測
研
究
催する粘度基幹比較 CCM.V-K2(粘度標準液の国際比
[キーワード]物性データ、物性計測、材料開発
較)の報告内容(Draft B)について協議し、その最終
報告書をまとめた。非ニュートン流体のための粘度計測
[テーマ題目28]密度標準の開発と供給に関する研究
技術の開発を継続し、円筒落下法や MEMS を応用した
(運営費交付金)
[研究代表者]藤井
確かさの評価を継続するとともに、標準物質となる非ニ
流体標準研究室長)
篤、竹中
正美、倉本
直樹、
ュートン流体の特性評価などを行った。
洋平、狩野
祐也、清水
忠雄
[分
[研究担当者]早稲田
粥川
粘度センサの開発に着手した。回転粘度計については不
賢一
(物性統計科
(常勤職員6名、他1名)
野
名]標準・計測
[キーワード]粘度、粘度標準、粘度標準液、細管粘度
[研 究 内 容]
計、回転粘度計、国際比較、非ニュート
平成20年度は、シリコン固体密度の JCSS 標準供給、
ン流体
密度標準液の技能試験参照値、圧力浮遊方による固体密
度差の校正、流体の PVT 性質の校正などを行った。密
[テーマ題目30]原子質量標準の開発に関する研究(運
度標準液については定期的なピアレビューを受け、継続
営費交付金)
して ASNITE-NMI の認定を取得した。液体の屈折率標
[研究代表者]藤井
準については光波干渉式の屈折率計を開発し産総研依頼
賢一
(物性統計科
試験制度による標準供給を開始し、ISO 17025に基づく
[研究担当者]早稲田
品質システム技術マニュアルを作成するとともに、製品
流体標準研究室長)
篤、倉本
直樹、藤本
弘之
(常勤職員4名)
評価技術基盤機構(NITE)が主催する JCSS 屈折率分
[研 究 内 容]
科会の活動に協力し技術的適用指針を策定した。国際度
平成20年度は、アボガドロ国際プロジェクトの成果と
量衡委員会に関連する活動としては、質量関連量諮問委
して得られた5 kg のシリコン28同位体濃縮から1 kg の
員会(CCM)密度作業部会(WGD)を国際度量衡局
球体を2個研磨し、その密度測定を開始した。X 線結晶
(BIPM)で開催し密度標準の MRA を加速させるため
密度法によるアボガドロ定数の測定精度を更に向上させ
の校正能力(CMC)評価方法などについて検討した。
るために、シリコン球の直径を測定する干渉計真空容器
また、6月にコロラドで開催された科学技術データ委員
の改良を進め、アクティブな温度制御が可能な放射シー
会(CODATA)基礎定数作業部会(TGFC)では基礎
ルドを新たに開発し、真空中での温度制御精度を1 mK
物理定数の2010年推奨値を決定するためのデータとその
まで向上させ、シリコン球体の体積の密度の測定精度を
ためのスケジュールなどについて検討した。SI 基本単
0.02 ppm まで向上させた。これによりほぼ目標精度を
位の再定義方法について検討し、アボガドロ定数を決定
達成し、その成果をコロラドで開催された精密電磁気計
するための国際プロジェクトについての現状報告を行っ
測国際会議で発表した。国際度量衡局(BIPM)NMI
た。
で開催されたアボガドロ国際プロジェクト運営委員会に
[分
野
名]標準・計測
出席し、EU の標準物質計測研究所(IRMM)によるモ
[キーワード]密度標準、固体密度、シリコン結晶、密
ル質量測定の結果が約1 ppm シフトした原因などにつ
度標準液、PVT 性質、屈折率、国際比
いて検討し、今後のアボガドロ定数の測定スケジュール
較
についての詳細な打ち合わせを行った。
[分
[テーマ題目29]粘度標準の開発と供給に関する研究
[研究担当者]倉野
山本
ラム再定義、固体密度、モル質量、格子
賢一
(物性統計科
名]標準・計測
[キーワード]アボガドロ定数、原子質量標準、キログ
(運営費交付金)
[研究代表者]藤井
野
定数、基礎物理定数、SI 基本単位の再
流体標準研究室長)
恭充、菜嶋
健司、藤田
定義
佳孝、
泰之(職員5名)
[テーマ題目31]次世代粘度一次標準の開発に関する研
[研 究 内 容]
究(運営費交付金)
平成20年度は、細管式粘度計による粘度標準液の依頼
[研究代表者]藤井
試験業務を継続するとともに、校正の自動化を進めた。
賢一
(物性統計科
国際度量衡委員会に関連する活動としては、国際度量衡
[研究担当者]倉野
局 ( BIPM ) で 開 催 さ れ た 質 量 関 連 量 諮 問 委 員 会
山本
(CCM)粘度作業部会(WGV)に出席し、MRA を加
流体標準研究室長)
恭充、藤田
佳孝、倉本
直樹、
泰之(常勤職員5名)
[研 究 内 容]
速させるための校正能力(CMC)評価方法などについ
落球法による液体粘度の絶対測定を行い、現在の粘度
て検討するとともに、国際度量衡委員会(CIPM)が主
の国際的基準となっている水の粘度の絶対値を見直し、
(164)
産業技術総合研究所
次世代の粘度標準を確立することを目標とする。平成20
た。
年度は、CCD カメラと追尾システムによる落下速度の
[分
絶対測定システムの開発を継続し、画像処理システムを
[キーワード]粒径標準、電気移動度分析、粒径分布パ
改良し、落下速度についての予備的な測定結果を得た。
ラメータ、液中粒子数濃度標準、気中粒
また、落球の質量(約10 mg)を精密計測するための質
子数濃度標準
野
名]標準・計測
量校正システムを継続して開発した。
[分
野
[テーマ題目34]実用電気標準の開発、供給と研究(運
名]標準・計測
営費交付金)
[キーワード]粘度、粘性率、落球法、粘度の絶対測定、
[研究代表者]中村 安宏(電磁気計測科 電気標準第1
次世代粘度一次標準
研究室長)
[テーマ題目32]不確かさ評価及び同等性確認における
[研究担当者]西中
英文、岩佐
章夫、藤木
統計的問題の研究と技術支援(運営費交
山田
達司、坂本
憲彦、昆
付金)
村山
泰、木藤
[研究代表者]榎原
誠二郎
(常勤職員7名、他3名)
研正
(物性統計科
[研究担当者]田中
量隆、林
弘之、
盛太郎、
[研 究 内 容]
応用統計研究室長)
秀幸、城野
(1) 直流電圧標準
克広
プログラマブルジョセフソン電圧標準について不
(常勤職員3名)
確かさの評価を行い、同システムによる標準供給開
[研 究 内 容]
始の準備を完了した。
計測結果の同等性評価における不確かさの評価・利用
(2) 誘導分圧器標準、変流器標準、高調波電圧電流標
方法の調査と体系化、既知のかたよりを補正しない場合
準、交流シャント標準
の不確かさ評価の管理限界を設けた校正方式への適用、
分布の伝播則において入力量の自由度が拡張不確かさに
誘導分圧器標準について、3件の特定二次標準器
及ぼす影響の解析を実施した。不確かさクラブにおける
等の校正、変流器標準について3件の依頼試験を行
事例研究会を主宰し、16事例を含む不確かさ評価事例集
った。また、誘導分圧器標準について供給範囲の拡
を公開した他、中上級者対象の2日間にわたる不確かさ
大を行った。さらに、次年度以降の供給開始に向け、
講習会の開催、産総研内外での不確かさ評価の技術相談
高調波電圧電流標準、交流シャント標準について研
究開発を進めた。
への対応、Web 上での不確かさ解説の公開など不確か
(3) AC/DC 標準
さ及び関連する統計的手法の普及啓蒙活動を行った。
[分
野
AC/DC 標準について、1件の特定副標準器の校正
名]標準・計測
を行った。また、次年度以降の供給範囲の拡大に向
[キーワード]不確かさ評価、同等性評価、測定のかた
け、AC/DC 標準および交流電圧標準について研究
より、管理限界、分布の伝播
開発を進めた。
(4) 中容量キャパシタンス標準、インダクタンス標準
[テーマ題目33]粒径標準の開発と供給(運営費交付
中容量キャパシタンス標準について、1件の依頼
金)
[研究代表者]榎原
[研究担当者]高畑
飯田
試験、インダクタンス標準について、1件の依頼試
研正
(物性統計科
験を行った。また、次年度以降の供給範囲の拡大に
応用統計研究室長)
圭二、坂口
孝幸、櫻井
向け、中容量キャパシタンス標準の研究開発を進め
博、
た。
健次郎(常勤職員4名、他1名)
[分
[研 究 内 容]
野
名]標準・計測
気中発生した30、100及び300 nm ポリスチレンラテ
[キーワード]実用電気標準、直流電圧、誘導分圧器、
ックス粒子の粒径分布パラメータを、電気移動度分析に
変流器、交流電圧、中容量、インダクタ
おけるモーメント法を用いて調べ、粒径及び粒径分布標
ンス
準偏差の発生条件及び懸濁液濃度依存性を明らかにした。
10-20 μm 粒径域液中粒子数濃度標準について、106 個
[テーマ題目35]量子電気標準の開発、供給と研究(運
3
営費交付金)
/cm の高濃度試料の濃度校正、及びこれを希釈した市
販用103個/cm3粒子の濃度を決定する際の不確かさの主
[研究代表者]金子
要成分の評価を行った。また600 nm-10 μm の粒径範囲
晋久
(電磁気計測科
で光散乱を用いた濃度校正と顕微鏡法によるその検証が
[研究担当者]坂本
可能であることを確認した。気中粒子数濃度測定器の依
頼試験に対応するとともに、その品質システムを構築し
(165)
電気標準第2研究室長)
泰彦、福山
康弘、浦野
千春、
堂前
篤志、丸山
道隆、大江
武彦、
藤野
英利(常勤職員7名、他1名)
研
究
次年度以降の標準供給計画には、これまで未着手であ
[研 究 内 容]
った10 MHz 以下の周波数範囲の標準供給があり、主
(1) 直流抵抗標準
直流抵抗標準について17件の特定二次標準器等の
に電力標準と減衰量標準について100 kHz、高周波イン
校正を行った。また、次年度以降の供給範囲の拡大
ピーダンス標準について9 kHz の下限周波数までの段
に向け、研究開発を進めた。さらに、次世代量子ホ
階的準備を実施した。導波管高周波雑音の国際基幹比較
ール効果抵抗標準として、量子ホール抵抗アレイデ
CCEM.RF-K22.W に参加し測定の実施と、不具合のあ
バイスの作製を作製し、基礎特性の評価を行った。
る装置の代わりとなる仲介器を提供した。幹事国を務め
グラフェンの標準への応用に向けた基礎研究を行っ
る電力標準の APMP 国際比較について APMP 会合によ
た。
り参加国の調整を行って、停滞状態であった比較の実施
を進展させた。タイの国立標準機関 NIMT へ電力と減
(2) 交流抵抗標準、キャパシタンス標準
キャパシタンス標準について5件の特定二次標準
衰量の専門家を派遣し、標準技術の指導を行った。オー
器の校正、交流抵抗標準について3件の特定二次標
プンラボの実験室公開に参加し、主に電力標準と減衰量
準器等の校正を行った。さらに、次世代交流抵抗標
標準の校正設備を公開した。高周波クラブを2回開催し、
準として交流量子ホール効果抵抗標準の研究開発を
計測技術の普及のために昨年に引き続いてネットワーク
行っており、冷凍機の設計・製作、ダブルシールド
アナライザ(VNA)をテーマに外部講師による講演と
型サンプルホルダの開発、素子設計をおこなった。
計測器メーカの見学を含む会合を主催した。
[分 野
(3) 交流ジョセフソン電圧標準
次世代交流ジョセフソン電圧標準として、パルス
名]標準・計測
[キーワード]高周波、マイクロ波、ミリ波、標準
駆動ジョセフソン電圧標準について研究開発を進め、
商用周波数からキロヘルツレベルにわたる周波数の
[テーマ題目37]電磁界・アンテナ計測標準に関する研
信号発生に成功した。プログラマブルジョセフソン
究(運営費交付金)
電圧標準を用いた交流発生について研究開発も行っ
[研究代表者]島田
た。
(電磁波計測科
(4) 直流電圧標準
雅信、森岡
健浩、黒川
悟、
石居
正典、飴谷
充隆、関川
晴子
直流電圧標準について、6件の特定二次標準器等
(常勤職員6名、他1名)
った。
野
電磁界標準研究室長)
[研究担当者]廣瀬
の校正を行った。システムの近代化に向け検討を行
[分
洋蔵
[研 究 内 容]
ダイポールアンテナについて30 MHz~ 2 GHz の周
名]標準・計測
[キーワード]量子電気標準、直流抵抗、キャパシタン
波数範囲におけるアンテナ係数の校正サービスおよび品
ス、量子ホール効果、ジョセフソン効果
質システムの整備を行った。ループアンテナについて
20 Hz~ 30 MHz の周波数範囲における磁界アンテナ
[テーマ題目36]高周波計測標準に関する研究(運営費
係数の校正サービスを行った。ホーンアンテナ利得につ
交付金)
[研究代表者]小見山
いて標準供給範囲拡張のため導波管プローブを用いた測
耕司
(電磁波計測科
定システムの開発を進めた。微小アンテナ(モノポール
[研究担当者]島岡
高周波標準研究室長)
アンテナ)および広帯域アンテナ(バイコニカルアンテ
一博、Widarta P Anton、
ナ)のアンテナ係数標準の新規供給開始に向けて校正シ
飯田
仁志、堀部
雅弘、木下
基、
ステムの開発を進めた。ミリ波帯ホーンアンテナにおい
島田
洋蔵、井上
武海、信太
正明、
てアンテナ利得標準の新規供給開始に向けて校正システ
猪野
欽也、遠藤
道幸、長津
樹理、
ムの開発を進めた。TEM セルを用いた電界標準および
吉本
礼子、関川
晴子、見口
由紀、
低周波帯磁界標準の研究開発を行った。ホーンアンテナ
山村
恭平、川上
友暉
の利得標準に関しては26.5 GHz, 33 GHz, 40 GHz
の周波数で KRISS(韓国標準研)との二国間比較を実
(常勤職員7名、他10名)
[研 究 内 容]
施し、国際比較レポートを作成した。また、電磁界クラ
新規の標準供給として50 GHz~75 GHz で60 dB ま
ブ活動としてアンテナ計測技術普及のための講演会を実
での V バンド導波管可変減衰量、40 MHz~18 GHz の
施した。新しいアンテナ計測技術として光電界センサを
N 型コネクタおよび PC7コネクタ規格での S パラメー
用いた測定システムの研究開発を推進した。
タの JCSS 校正がある。拡張では、長さに直接トレー
[分
サブルに導出する同軸線路の位相を含む特性インピーダ
[キーワード]電磁界、アンテナ、アンテナ係数、アン
ンスとその対応できるコネクタ規格を PC7に加えて N
野
名]標準・計測
テナ利得、電界、磁界
と PC3.5に拡大した。
(166)
産業技術総合研究所
[テーマ題目40]線量標準の開発、設定、供給(運営費
[テーマ題目38]レーザ標準に関する研究(運営費交付
交付金)
金)
[研究代表者]座間
[研究担当者]向井
沼田
[研究代表者]齋藤
達也
(光放射計測科
レーザ標準研究室長)
誠二、福田
大治、雨宮
則生
(量子放射科
邦招、
[研究担当者]森下
孝之(常勤職員5名)
[研 究 内 容]
50 μW~200 mW レベルのレーザパワーについては
放射線標準研究室室長)
雄一郎、加藤
昌弘、田中隆宏、
高田
信久、松本
健、能田
理恵子、
今須
淳子(常勤職員4名、他4名)
[研 究 内 容]
JCSS 特定二次標準器の校正を4件、依頼試験の校正を1
γ線標準に関して、Co-60γ線の水吸収線量標準の開
件、1 W~10 W レベルのレーザパワーについては依頼
発のために、グラファイトカロリメータを用いたγ線の
試 験 の 校 正1件 を そ れ ぞれ実 施 し た 。青色 LD 波長
熱量測定を行った。準断熱測定法および等温温度測定法
(404 nm)でのレーザパワー、波長1480 nm での光減
の二つの異なる測定方法による熱量測定を可能とし、両
衰量の標準を新規に確立し依頼試験による供給を開始し
測定による測定値が満足できるレベルで一致した。一方、
た。また、2量目の品質システムの新規構築及び2量目の
水吸収線量を導出するために、シミュレーションコード
既存品質システムの見直しを行い、依頼試験、JCSS 校
(EGS5)を用いて壁補正係数・深度補正係数・ギャッ
正サービスが行われている主要量目の品質システムを構
プ補正係数の評価を行った。X 線標準に関して、マンモ
築した。光ファイバ減衰量国際比較(二国間比較)を完
グラフィ X 線診断用の線量標準を開発し、校正サービ
了させ、高パワーレーザ(Euromet PR-S2)国際比較
スを開始した。軟 X 線空気カーマ標準標準については
のドラフト・レポート作成に対応すると共に、波長
照射装置を更新したため、標準の再設定を行い、以前と
1550 nm 高パワー域の光ファイバ減衰量(APMP.PR-
同等の標準場となったことを確認した。また、APMP
S4)、可視域レーザパワー(APMP.PR-S5, Pilot)につ
内での持ち回り国際比較の幹事国としての業務を滞りな
いては幹事研究所としてプロトコル作成等を通じ国際比
く行った。β線組織吸収線量標準に関して、JCSS 供給
較を主導した。
を開始するとともに、β線校正方法の JIS 制定ための
[分
準備を行った。10月に y 線、X 線およびβ線のピアレビ
野
名]標準・計測
[キーワード]レーザパワー、光ファイバ
ューを受け、新たにβ線の品質システムを立ち上げた。
放射線線量計の校正に関して、JCSS14件(γ線5件、
中硬 X 線6件、軟硬 X 線3件)、依頼試験22件(γ線11件、
[テーマ題目39]光放射標準の開発と供給(運営費交付
X 線8件、軟 X 線1件、β線2件)行った。
金)
[研究代表者]齊藤
一朗
(光放射計測科
[研究担当者]齋藤
蔀
[分
輝文、座間
洋司、神門
達也、市野
賢二、木下
野
名]標準・計測
[キーワード]線量標準、軟 X 線、中硬 X 線、γ線、
光放射標準研究室長)
善朗、
β線、放射光
健一
(常勤職員7名)
[テーマ題目41]放射能特定標準器群の維持・向上、お
[研 究 内 容]
よび中性子標準の開発・供給(運営費交
分光放射照度の依頼試験での校正を4件実施した。分
付金)
光応答度の JCSS 特定二次標準器の校正を2件、依頼試
[研究代表者]柚木
験での校正を10件実施した。分光拡散反射率の依頼試験
彰(量子放射科
放射能中性子標
準研究室長)
を5件実施した。光度の特定副標準器の校正を6件、依頼
[研究担当者]原野
英樹、佐藤
泰、松本
試験を4件実施した。照度の特定副標準器の校正を6件実
海野
泰裕、西山
潤
施した。全光束の特定副標準器の校正を3件実施した。
(常勤職員5名、他1名)
分布温度の特定副標準器の校正を3件実施した。照度応
哲郎、
[研 究 内 容]
答度、分光拡散反射率(紫外)、分光応答度(近赤外、
放射能標準に関して、計量法に基づく放射能標準の供
InGaAs)、LED(高強度)に対応した標準開発を進め
給について、遠隔校正法による供給を開始した。放射性
た。分光放射照度(紫外)の JCSS 化を進めた。LED
ガス標準(190-1)の立ち上げ、及び I-125密封小線源
(光度・全光束、APMP)の国際比較を実施した。光度
の線量標準(188)立ち上げに係わる作業を行った。国
(APMP、CCPR-k3.a リンク)、分光応答度(APMP、
際 比 較 と し て 、 Kr-85 放 射 能 に 関 す る 国 際 基 幹 比 較
CCPR-k2.b リンク)の国際比較幹事国としてプロトコ
(CCRI (II)-K2.Kr-85)を実施し、H-3放射能に関す
ルを作成した。
る国際基幹比較(CCRI (II)-K2.H-3)を実施中である。
[分
校正サービスについて、計量法に基づく特定二次標準器
野
名]標準・計測
[キーワード]測光、光放射
の校正3件、依頼試験2件を実施した。
(167)
研
究
中性子標準に関して、中性子エネルギー24 keV の中
(しゅう酸塩緩衝液)に関して最終的に報告がまとまり、
速中性子フルエンス(198)について、新しい中性子発
良好な結果であった。
生方法を開発し、標準を立ち上げた。さらに Am-Be、
[分
Cf 中性子線源による連続スペクトル中性子フルエンス
[キーワード]pH 標準
野
名]標準・計測
標準(201-1, 201-2)の JCSS 化を実施した。校正サ
[テーマ題目44]環境分析用組成標準物質および微量分
ービスについては、JCSS 校正1件、依頼試験13件を実
析技術に関する研究(運営費交付金)
施した。
[分
野
[研究代表者]千葉
名]標準・計測
[キーワード]放射能、特定二次標準器、速中性子フル
光一
(無機分析科
エンス、中性子線量標準、国際比較
[研究担当者]黒岩
朱
[テーマ題目42]無機標準物質に関する研究(運営費交
環境標準研究室長)
貴芳、稲垣
彦北、成島
和三、成川
いずみ、神保
知弘、
康二郎、
(常勤職員5名、他2名)
付金)
[研 究 内 容]
[研究代表者]日置
昭治
(無機分析科
[研究担当者]野々瀬
平成20年度は、ひ酸水溶液標準物質、白米標準物質
無機標準研究室長)
菜穂子、三浦
(ひ素化合物・微量元素分析用)、メカジキ魚肉粉末標
勉、
準物質(微量元素・アルセノベタイン・メチル水銀分析
鈴木
俊宏、大畑
昌輝、加藤
朝海
敏昭、山内
喜通、西
千香子、
桜井
文子、児玉
弘美、城所
倉橋
正保(常勤職員7名、他6名)
用)の開発を終了した。これらの標準物質は、一次標準
測定法である同位体希釈 ICP 質量分析法を中心として
緑、
高分解能 ICP 質量分析、ICP 発光分析法、電気加熱原
敏浩、
子吸光分析法などの複数の分析法により値付けを実施し
[研 究 内 容]
て、トレーサビリティと国際整合性が確保された標準物
平成20年度には、10種類の金属標準液を認証標準物質
質として供給している。また、分析手法の高度化として、
とするとともに、Au、Si、Ge、Zr の各標準液の開発の
高精度、高感度な新規分析手法の開発を行っており、化
ために原料物質の純度決定および各標準液の調製法およ
学形態別分析手法の開発、極微少量での高感度分析手法
び濃度測定法の開発を継続し、さらに、W 標準液の開
や高精度分析のためのマトリックス除去法の開発を行っ
発に着手した。また、欧州 RoHS 指令の規制に対応し
ており、今後の標準物質開発に応用していく。一方、国
た重金属分析用プラスチック標準物質の開発を継続し、
際的な標準化の活動の一環として CCQM 国際比較に参
PVC 樹脂1種類のペレットおよび PP 樹脂1種類のディ
加し、小麦中の総セレンおよびセレノメチオニン分析
スクについて同位体希釈質量分析法等による値付けを行
(CCQM-K60)では良好な結果を示すとともに、メカ
い、認証標準物質として供給を開始したほか、3種類の
ジキ魚肉粉末中のヒ素、水銀、セレン、メチル水銀分析
高純度無機標準物質を新規に開発した。他部門の研究グ
(CCQM-K43.1)基幹比較とメカジキ中のヒ素、アル
ループとも協力してアルミナ微粉末標準物質の開発を継
セノベタイン分析(CCQM-P96)パイロット研究の幹
続した。複数の CCQM 国際比較に参加し、特に PP 樹
事ラボを務めている。CCQM-K43.1は最終報告書作成
脂ペレットと鉛フリーはんだのパイロット研究の幹事ラ
まで進み、現在 BIPM の KCDB への登録手続き中であ
ボを務めた。
る。CCQM-P96は APMP 国際比較の APMP.QM-P11パ
[分
イロット研究としても同時進行している。さらには、次
野
名]標準・計測
[キーワード]無機標準物質
期開発候補試料として調製した、ひじき標準物質を用い
た全国技能試験を食品総合研究所等と共同で実施した。
[テーマ題目43]pH および電気伝導度の標準確立(運
[分
営費交付金)
[研究代表者]日置
大沼
名]標準・計測
昭治
(無機分析科
[研究担当者]大畑
野
[キーワード]環境分析用組成標準物質
無機標準研究室長)
[テーマ題目45]有機化学標準の開発・供給(運営費交
昌輝、Maksimov Igor、
付金)
佐智子(常勤職員2名、他2名)
[研究代表者]加藤
[研 究 内 容]
健次
(有機分析科
有機標準第1研究室長)
Harned セル法による pH 測定システムの改良を引き
[研究担当者]下坂
琢哉、松本
信洋、渡邉
卓朗、
続き進めた。このシステムを用いて6種類の pH 緩衝液
清水
由隆、青木
伸行、山崎
太一、
に対しての保存安定性の測定を継続した。2種類を新た
北牧
祐子、鮑
に認証標準物質として完成させた。電気伝導度セルの設
堀本
能之、菅井
計試作を開始した。参加した関連の CCQM 国際比較
加藤
薫(常勤職員8名、他6名)
(168)
新努、大手
洋子、
祐子、中村
哲枝、
産業技術総合研究所
[研 究 内 容]
[研 究 内 容]
高純度有機標準液4種(テトラクロロエチレン、
残留農薬分析用玄米粉末標準物質を開発した。そのた
1,1,1-トリクロロエタン、cis-1,3-ジクロロプロペン、
めに、ホモジナイズ抽出法、振とう抽出法及び加圧液体
スチレン)の開発を行った。また、温暖化ガス標準ガス、
抽出法と、ガスクロマトグラフィー/質量分析法または
高純度メタン、二酸化硫黄等の標準ガスについて、新規
液体クロマトグラフィー/質量分析法による同位体希釈
開発の準備あるいは第2ロットの準備を行なった。新規
質量分析法とを組み合わせた正確な農薬定量法を開発し、
標準物質に対しては、ISO ガイド34に基づく品質シス
値付け分析に適用した。また、リンゴジュース中の農薬
テム整備等を進め、生産手順、分析手順等に関する文書
に関する CCQM 国際比較に参加し、参加した他国の計
の作成・登録を行った。国際比較に関しては、3件の比
量標準機関と同等のデータを報告した。一方、来年度以
較(CCQM-K51、CCQM-K55a、CCQM-K68)に参加
降に開発完了予定の多環芳香族炭化水素類分析用粉塵標
するとともに、幹事所として2件の国際比較(CCQM-
準物質等について、値付けに適用可能な精確な分析法を
K66、APMP.QM-S2)を行った。この他、すでに技術
検討した。
開発を終えている認証標準物質、JCSS 標準ガスおよび
[分
標準液の基準物質の安定性試験を行った。また、今後開
[キーワード]組成型標準物質、環境標準物質、国際比
野
名]標準・計測
較
発予定の、ステロイド類、およびアセトアルデヒド等に
ついて、純度分析法の検討、設備の整備を行った。研究
[テーマ題目48]バイオメディカル計測標準の先導開発
開発では、ガス中微量水分分析法、多成分一斉定量法、
(運営費交付金)
高感度ガス分析法、凝固点降下法による純度測定につい
[研究代表者]高津
ての高度化を行った。
[分
野
[研究担当者]加藤
[キーワード]標準ガス、高純度物質、有機標準液
[テーマ題目46]有機標準液の開発・供給に関する研究
[研究担当者]石川
大塚
尚志、加藤
藤井
紳一郎、川口
惠山
栄、高瀬
愛、絹見
朋也、
研、柴山
和江、坂本
祥枝、
珠実
[研 究 内 容]
孝
(有機分析科
バイオメディ
(常勤職員7名、他3名)
(運営費交付金)
[研究代表者]鎗田
章子(有機分析科
カル標準研究室長)
名]標準・計測
臨床検査医学分野において、測定結果の互換性や国際
有機標準第2研究室長)
啓一郎、羽成
聡子、岩澤
修康、樋口
良子、藤木
勝彦、
整合性の向上が求められている。そのために必要となる
標準物質のうち、計量学的トレーサビリティ上位の標準
直美
物質開発を行うことを目標に、生体成分を高精度かつ高
(常勤職員3名、他4名)
感度に測定する分析手法の開発を中心に研究を進めた。
[研 究 内 容]
高純度有機標準物質4種(4-t-オクチルフェノール、
4種類のアミノ酸(イソロイシン、バリン、フェニルア
4-t-ブチルフェノール、フタル酸ジ-n-ペンチル、フタ
ラニン、プロリン)について、純度決定法となる滴定法、
ル酸ジ-n-へキシル)を開発した。その値付け分析には、
窒素定量法を確立した。ステロイドホルモンの一つであ
ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィー、
るコルチゾール(ヒドロコルチゾン)については、濃度
カールフィシャー水分滴定等によって含有不純物を定量
測定の基準となる純物質認証標準物質の開発を行った。
することにより主成分純度を算出する差数法を適用した。
また、同位体希釈-液体クロマトグラフ質量分析法を用
さらに、関連する品質システムを整備した。また、来年
いた血清中コルチゾール測定法を確立し、臨床検査にお
度以降に開発完了予定の農薬標準物質等について含有不
ける血清コルチゾール測定の標準化への協力を行った。
純物濃度の定量法を検討するとともに、既存の標準物質
[分
や JCSS 基準物質の安定性試験を継続して行った。
[キーワード]標準物質、臨床検査医学、トレーサビリ
[分
野
野
名]標準・計測
ティ
名]標準・計測
[キーワード]有機標準液、高純度有機標準物質
[テーマ題目49]次世代 DNA 定量法の開発と標準化
(運営費交付金)
[テーマ題目47]環境分析用組成型有機標準物質に関す
[研究代表者]高津
る研究(運営費交付金)
[研究代表者]鎗田
(有機分析科
章子(有機分析科
バイオメディ
カル標準研究室長)
孝
[研究担当者]藤井
有機標準第2研究室長)
[研究担当者]沼田
雅彦、伊藤
信靖、大竹
青柳
嘉枝、松尾
真由美、藤木
川原
貴光、
紳一郎、柴山
祥枝、絹見
朋也、
崎守(併任)(常勤職員5名)
[研 究 内 容]
直美
バイオアナリシス分野の計測のトレーサビリティを確
(常勤職員4名、他3名)
(169)
研
究
[テーマ題目52]光電子分光および X 線吸収分光によ
保することによる同分野の発展のため、計量学的トレー
る材料評価技術の開発(運営費交付金)
サビリティ上位の標準物質開発を行うことを目標に、核
酸を精確に測定する分析手法開発を中心に研究を進めた。
[研究代表者]松林
DNA 定量について、SI トレーサブルな方法になりうる
室
手法として同位体希釈質量分析法およびリン定量法につ
[研究担当者]城
いてオリゴ DNA を用いた測定結果の比較を行い、良好
昌利、福本
夏生、今村
元泰
[研 究 内 容]
平成19年度までにナノ計測基盤技術で開発した技術を
較に参加した。
野
材料評価研究
(常勤職員4名)
な一致を得た。また、DNA の相対定量に関する国際比
[分
信行(先端材料科
主任研究員)
将来の標準開発に向けてさらに発展させ、光電子分光お
名]標準・計測
よび X 線吸収分光の基本技術の研究を継続して行った。
[キーワード]標準物質、バイオアナリシス
電子分光スペクトルにおける新しいバックグラウンド解
析法の研究や標準スペクトルデータベースの構築を行い、
[テーマ題目50]薄膜・超格子標準物質の開発(運営費
その成果としての解析プログラムおよびデータベースを
交付金)
[研究代表者]藤本
俊幸、小島
(先端材料科
[研究担当者]寺内
東
インターネット上で公開し、更新を行った。放射光を用
勇夫
いた励起エネルギー可変 X 線光電子分光による薄膜評
材料評価研究室長)
信哉、張
康史、内田
ルウルウ、林田
美咲、
価技術の開発および X 線吸収分光スペクトルによる吸
収端ジャンプ係数を用いた定量および状態別解析手法の
みどり
開発研究を行った。
(常勤職員6名、他1名)
[分
[研 究 内 容]
野
名]標準・計測
[キーワード]表面分析、放射光、定量分析
薄膜・超格子標準物質の開発および膜厚計測の校正サ
ービスの立ち上げを目指して、X 線反射率法による精密
[テーマ題目53]材料分析標準の研究、開発、維持(運
評価技術についての基礎的実験を継続して行うと供に、
営費交付金)
微粒子分散薄膜標準の実現に向けて、透過電子顕微鏡
[研究代表者]小林
(TEM)装置の高機能化を行い、3D-TEM 像自動取得
慶規
(先端材料科
システムを完成させた。また、これまでに供給している
[研究担当者]富樫
標準物質の維持のために安定性評価を継続的に行うと供
に、期限切れを迎える標準物質については、これまでの
高塚
安定性評価を基に期限延長の手続きを行った。さらに、
材料分析研究室長)
寿、平田
浩一、伊藤
賢志、
登志子(常勤職員5名)
[研 究 内 容]
鉄-ニッケル合金薄膜の組成計測の国際比較(CCQM-
超微細空孔測定用の認証標準物質「陽電子寿命による
K67)に参加した。
超微細空孔測定用ポリカ-ボネート」(CRM5602-a)を
[分
開発した。本標準物質は平成21年度に供給が開始される。
野
名]標準・計測
[キーワード]表面分析、薄膜計測
前年度に引き続き、イオン注入認証標準物質の開発のた
め、中性子放射化分析によりシリコン中イオン注入ヒ素
[テーマ題目51]マイクロビームによる材料局所分析と
の定量分析を行った。本標準物質は平成21年度に認証す
標準物質開発に関する研究(運営費交付
る予定である。その他、マトリックス支援レーザー脱離
金)
イオン化質量分析で観測されるイオンのピーク形状を求
[研究代表者]藤本
俊幸、小島
(先端材料科
[研究担当者]寺内
勇夫
めるためのモデルを考案するとともに、中エネルギー
C60イオンクラスター衝撃2次イオン質量分析法の有機
材料評価研究室長)
信哉、張
ルウルウ、伊藤
美香
薄膜分析における有用性を明らかにした。
(常勤職員4名、他1名)
[分
[研 究 内 容]
野
名]標準・計測
[キーワード]材料分析、イオン注入標準物質、微細空
ミクロ偏析の少ない鉄合金作製技術を基に EPMA 分
孔標準物質、質量分析
析用認証標準物質の開発を継続した。平成21年度認証に
向け、昨年度までに作製したパーマロイ系、および高ニ
[テーマ題目54]新しい微粒子分級技術の開発(運営費
ッケル合金の候補物質について、EPMA を用いてマク
交付金)
ロおよびミクロの均質性評価、および不確かさの評価を
[研究代表者]小林
行った。
[分
野
慶規
(先端材料科
名]標準・計測
[研究担当者]川原
[キーワード]マイクロビーム、材料局所分析
材料分析研究室長)
順一(常勤職員2名)
[研 究 内 容]
微粒子連続精密分級システムの連続密度勾配形成器に
(170)
産業技術総合研究所
ついて、これまで検討してきた静的拡散促進方式とは別
式検索の検討を行った。
に、動的拡散促進方式の基本設計を行った。また、完全
[分
連続方式とは別に、多数の試料画分の同時回収を可能と
[キーワード]有機化合物のスペクトルデータベース、
野
名]標準・計測
する半連続方式のデザインを行った。
質量分析スペクトル、赤外分光スペクト
[分
ル、NMR スペクトル、インターネット
野
名]標準・計測
[キーワード]微粒子粒径標準物質、遠心分離、沈降
[テーマ題目57]「計量情報システムの研究・計量器ソ
速度法、連続処理、光子相関法
フトウエアの評価基盤の整備」(運営費
交付金)
[テーマ題目55]高分子標準物質の開発供給(運営費交
付金)
[研究代表者]衣笠
晋一
(先端材料科
[研究代表者]渡邊
宏(計量標準システム科)
[研究担当者]松岡
聡、水口
大地(常勤職員3名)
[研 究 内 容]
高分子標準研究室長)
[研究担当者]松山
重倫、高橋
かより、加藤
晴久、
山路
俊樹、折原
由佳利、川﨑
文子
平成21年度から開始する JIS B 7611-2 2009年度版に
基づく非自動はかりの依頼試験のための準備を行った。
具体的には、申請事業者が試験を行うために必要な情報
(常勤職員5名、他2名)
を的確に整理して、試験を確実かつ容易に行うための
[研 究 内 容]
高分子関連標準物質の研究開発については、臭素系難
「非自動はかり及びそのモジュールに関連する装置のソ
燃剤含有ポリ塩化ビニル1種を開発し、粒径分布候補標
フトウェアについての提出書類の様式」および試験者が
準物質(ポリスチレンラテックス100 nm±30 nm)の
的確かつ迅速に行うことを容易にする「OIML R76-
FFF による評価、さらに、界面活性剤標準物質、およ
1:2006及び JIS B 7611-2と「質量計用指示計依頼試験
び高分子分子量標準物質原料の妥当性を検討した。また、
のソフトウェアについての提出様式」との対応(チェッ
データベースや ESR 標準などの調査研究を実施した。
クリスト)」および計測標準研究部門初のソフトウェア
高分子特性解析技術の基盤研究と標準サービスにおいて
試験マニュアル QMT SS02A「ソフトウェア試験マニュ
は、PFG-NMR を用いて液中に分散したナノ粒子のサ
アル(非自動はかり及びそのモジュール)」を作成した。
イズを正確に決定し、粒子に拘束された水を定量する方
また、非自動はかり試験の ISO/IEC 17025認定審査を
法を開発し、超臨界流体クロマトグラフィーのコロナ検
目的として上記の文書の英語版の作成も行った(審査員
出 器 の 特 性 評 価 や 低 分 子 ポ リ ス チ レ ン の MALDI-
を外国から招聘したので英語版が必要となった)。認定
TOFMS の最適化を行った。また、サイズ排除クロマト
審査合格に上記の形で貢献した。それに加え、国内事業
グラフィー/多角度光散乱検出器法の ISO・DIS 化な
者向けに計工連主催の12月のはかり研究会にて製造事業
どの標準化活動を実施した。
者にソフトウェアの試験方法についての説明を行った。
[分
[分
野
名]標準・計測
[キーワード]高分子標準、微粒子標準、高分子添加剤、
MALDI-TOFMS、FFF
野
名]標準・計測
[キーワード]計量器ソフトウエア評価基盤、ソフトウ
エア認証、機能安全
[テーマ題目56]有機化合物のスペクトルデータベース
[テーマ題目58]「計量情報システムの研究・遠隔校正
システム(SDBS)の整備と高度利用化
システムの品質保証基盤の整備」(運営
(運営費交付金)
[研究代表者]齋藤
室
費交付金)
剛(先端材料科
高分子標準研究
主任研究員)
[研究担当者]衣笠
晋一、前田
恒昭、山路
滝澤
祐子、和佐田
宣英、
浅井
こずえ、鍋島
真美、小野
俊樹、
[研究代表者]渡邊
宏(計量標準システム科)
[研究担当者]松岡
聡、水口
大地(常勤職員3名)
[研 究 内 容]
計測標準研究部門が推進する遠隔校正システムの品質
千里
を情報処理システムの観点から保証する基盤を整備する
(常勤職員4名、他5名)
ことを目的に、遠隔校正ソフトウェアの検証方法、妥当
[研 究 内 容]
性評価方法の検討、開発を目指している。そのための準
新規化合物223件について、質量分析スペクトル248件、
備として、平成20年度は力学計測科圧力真空標準研究室
H-1 NMR スペクトル171件、C-13 NMR スペクトル
と協働で、同室で開発された圧力遠隔校正システムを事
181件、赤外分光スペクトル519件をインターネットで新
例に品質を記述する方法を検討した。具体的には、遠隔
規に公開した。ユーザーニーズへの対応を行った他、外
校正システムを校正機関、依頼者、支援要員、仲介器ハ
部機関と化合物辞書の共有化を図りアクセスの利便性を
ードウェア、ソフトウェアなどから構成されるサービス
向上した。IR ピーク検索機能を公開した。また、構造
としてとらえなおし、圧力遠隔校正サービスの要求仕様
(171)
研
究
を 書 き 下 し た 。 ま た 、 UML ( Unified Modeling
金)
Language)のアクティビティ図の枠組みで、遠隔校正
[研究代表者]前田
恒昭(計量標準システム科)
サービスの手順を書き下し、記録作成のタイミング、エ
[研究担当者]井原
俊英、津越
敬寿、齋藤
剛
(常勤職員3名)
ラー処理の内容などを明確化させた。さらに、書き下し
[研 究 内 容]
た要求仕様および手順図にある各要件と、現行の持ち込
み校正および「遠隔校正を行う場合の特定要求事項
外部機関から供給される階層構造をもった標準物質に
(ASNITE 試験事業者又は校正事業者認定の一般要求
ついてトレーサビリティ・ソースとしての妥当性を評価
事項 附属書4)」にある各要件との対応関係も確認した。
し認める仕組みを構築する研究を行った。具体的には、
今後の活動として、要求仕様と手順図をもとに検証方法
メタボリックシンドローム検診用検査薬の評価を行い、
および妥当性確認方法の検討、開発を行うとともに、事
トレーサビリティ・ソース(トレーサビリティの基点)
例としてとりあげた圧力以外の他の量目へ展開していく
としての認証を行い公表することに適用して試行運用し、
ことも検討する。
臨床検査薬の生産者が用いる常用標準物質の標準化に寄
[分
与した。検査室が日常用いる検査薬の標準化が進み、日
野
名]標準・計測
本全国で測定する健康診断結果の標準化が期待される。
[キーワード]計量器ソフトウエア評価基盤、ソフトウ
[分
エア認証、機能安全
野
名]標準・計測
[キーワード]標準物質、トレーサビリティ
[テーマ題目59]「化学標準のトレーサビリティ普及・
[テーマ題目61]特定計量器の基準適合性評価に関する
標準物質を迅速に供給するシステムの研
業務(運営費交付金)
究」(運営費交付金)
[研究代表者]前田
[研究担当者]井原
三浦
[研究代表者]上田
恒昭(計量標準システム科)
俊英、齋藤
亨、松本
剛、飯島
升三
(計量標準技術科
由美子、
[研究担当者]木村
文子
三倉
(常勤職員3名、他3名)
守男、池上
型式承認技術室長)
裕雄、分領
信一、
伸介(常勤職員5名)
[研 究 内 容]
[研 究 内 容]
環境・食品等の分野における法改正に伴う規制対象物
型式承認業務は、当科が担当するアネロイド型血圧計
質の増加に迅速に応えるべく、産総研が特性値の付与を
(電気式、機械式)、体温計(抵抗、ガラス製)、環境計
国際単位系にトレーサブルな方法で行い、標準物質の調
量器に当たる振動レベル計、濃度計(大気)及び濃度計
製、均質性評価、安定性評価などを標準物質生産者が行
(pH)等の特定計量器について、約50型式について国
う分業による標準物質の生産・供給システムを構築中で
内法に規定する技術基準への適合性を評価し、型式の承
ある。特性値の付与に関しては、最高精度ではなく実用
認をするとともに、型式承認軽微変更届出約150件の審
的に十分な不確かさ(これまでの10倍程度)を目標とす
査業務を実施した。これらは、計量標準総合センターの
ることで、1/5~1/10のコストと時間で分析が可能な定
認証システム(ISO/IEC ガイド65)に則って、当科が
量 NMR(核磁気共鳴)による校正技術を導入し、その
実施する特定計量器の型式の承認に関わる認証マニュア
実証実験を行っている。平成18年度からは残留農薬試験
ルに従って業務を実施しているものである。また、つく
用標準物質に適用し、これまでに20物質の値付けに成功、
ばで承認行為を実施する特定計量器の事前相談・審査約
産総研トレーサブルな標準物質を市場に供給した。
80件を処理した。
本研究では、農薬標準品の特性値の信頼性向上の観点
その他、OIML(国際法定計量機関)の活動による、
から、産総研が校正機関としてサンプリングされた農薬
国際文書、勧告文書の発行に関する国内の各テーマごと
原体の SI トレーサブルな純度測定を実施し、和光純薬
の作業委員会に、室に関係するテーマ等について委員会
が標準物質生産者として均質性及び安定性評価を実施し
メンバーとなり、その役割も担っている。
た上で標準物質の特性値を決定するというシステムを構
[分
築した。その結果、信頼性の証である不確かさが明記さ
[キーワード]特定計量器の基準適合性評価
野
名]標準・計測
れ計量トレーサビリティが表明できる新たな農薬標準物
質を開発することができた。
[分
野
[テーマ題目62]法定計量業務及び計量標準供給業務
名]標準・計測
(運営費交付金)
[キーワード]標準物質、トレーサビリティ
[研究代表者]堀田
[テーマ題目60]「外部機関が供給する標準物質のトレ
[研究担当者]田中
正美(計量標準技術科
校正試験
技術室長(併任))
彰二、田中
洋、上田
邦彦、浜川
ーサビリティ・ソースとしての妥当性評
西川
賢二、戸田
価及び公表に関する研究」(運営費交付
井上
太、矢野
(172)
省三
雅司、
剛、
産業技術総合研究所
を行うための研究及び技術開発を行うことをミッショ
(常勤職員8名、他1名)
ンとする。
[研 究 内 容]
ミッション達成のための具体的な研究及び技術開発
当科が担当する基準器検査(特級基準分銅、長さ計、
として、以下の課題に取り組む。
ガラス製温度計、圧力計、浮ひょう、ガラス製体積計)
1282件及び計量器の型式承認試験(抵抗体温計、ガラス
地圏・水圏循環システムの理解に基づく国土有効利
製体温計、機械式血圧計、電子血圧計)41件、比較検査
用の実現のため、1) 地圏流体挙動の解明による水資
(酒精度浮ひょう)45件、検定(ベックマン温度計)18
源等の環境保全及び地熱や鉱物資源探査技術の開発、
件及び依頼試験(ガラス製温度計、ガラス製体積計、浮
2) 土壌汚染リスク評価手法の開発、3) 地層処分環境
ひ ょ う ) 13 件 を 実 施 し た 。 ま た 、 密 度 浮 ひ ょ う の
評価技術の開発を進める。4) CO2 の削減とエネルギ
APMP 内での国際基幹比較測定に参加した。
ー自給率の向上を可能とするメタンハイドレート等天
[分
野
然ガス資源の調査と資源量評価、5) CO2 地中貯留に
名]標準・計測
[キーワード]法定計量、計量標準供給
関する地下モニタリング技術及び安全評価技術の開発
を行う。6) 1)~5)に係わる地球科学情報に関する知
[テーマ題目63]長さゲージへの標準供給に関する研究
的基盤情報の整備・提供を進める。さらに深部地質環
(運営費交付金)
[研究代表者]堀田
境研究コアの分担テーマとして、7)地層処分安全規制
正美(計量標準技術科
校正試験
に資する研究を行う。
技術室長(併任))
[研究担当者]浜川
これらの研究の推進にあたっては、独立行政法人の
剛(常勤職員2名)
位置づけを十分に意識し、基礎研究、戦略基礎研究、
[研 究 内 容]
応用研究、企業化研究とつながる研究発展の流れの中
リングゲージ及びプラグゲージ校正について産業界が
で、戦略基礎研究(第2種基礎研究)を中心に据え、
要求する0.1 μm 以下の不確かさ実現のために不確かさ
我が国の経済産業が順調に推移するための資源及び環
向上作業を進めた。依頼試験実績は3件であった。
境分野における研究貢献を果たしていく。また、社会
APMP 内での国際基幹比較測定に参加し、オーストラ
ニーズを把握しながら、重点研究課題とともに、資源
リア、台湾、日本の三か国間国際比較を開始した。
の安定供給や地圏環境の保全に必要な萌芽的・基盤的
[分
野
名]標準・計測
研究にバランスよく取り組む。
[キーワード]長さゲージ
【重点研究課題】
Ⅰ.地圏流体挙動の解明による環境保全及び地熱や鉱
②【地圏資源環境研究部門】
物資源探査技術の開発
(Institute for Geo-Resources and Environment)
Ⅱ.土壌汚染リスク評価手法の開発
(存続期間:2001.4.1~)
Ⅲ.地層処分環境評価手法の開発
Ⅳ.低環境負荷天然ガス資源の調査・評価技術
研 究 部 門 長:矢野
雄策
副 研 究 部 門 長:棚橋
学、駒井
主 幹 研 究 員:楠瀬
勤一郎、石戸
Ⅴ.二酸化炭素地中貯留システムの解明・評価と技術
武
開発
恒雄
Ⅵ.物質循環の視点に基づいた環境・資源に関する地
質の調査・研究
所在地:つくば中央第7、つくば西
Ⅶ.地層処分安全規制支援の研究
人
員:75名(73名)
---------------------------------------------------------------------------
経
費:1,190,443千円(311,440千円)
外部資金
概
要:
「二酸化炭素回収・貯留システムの安全性評価手法調査
現代社会の営みは、多くの天然資源の消費の上に成
(二酸化炭素等の圧入が地下構造等に及ぼす影響につい
経済産業省
り立っている。しかし、20世紀後半からの我々人類の
平成20年度温暖化対策基盤整備関連調査
て)」
生産及び消費活動の活発化は著しく、21世紀の近い将
来においては天然資源の枯渇が現実的な問題になりつ
経済産業省
つある。また、化石燃料資源の大量消費による地球温
地下水賦存量調査」
平成20年度地下水賦存量調査「平成20年度
暖化を始めとして、資源と環境の分野は密接に関連し
ており、それらの関係を見据えた対応が差し迫った課
文部科学省
題となっている。このような状況を背景に、地圏資源
立に関する実験的研究」
原子力試験研究費「断層内水理モデルの確
環境研究部門は、持続発展可能な社会の構築に向けて、
環境への負荷を最小化しつつ資源の開発や地圏の利用
文部科学省
(173)
原子力試験研究費「放射性廃棄物地層処分
研
究
独立行政法人原子力安全基盤機構「平成20年度地下水流
における長期空洞安定性評価技術の研究」
動解析モデルの総合的検証手法の検討」
環境省
地球環境保全等試験研究費「難透水性汚染地盤
を対象とする音波-動電ハイブリッド原位置方式による
発
表:誌上発表207件、口頭発表417件、その他110件
汚染浄化技術の研究開発」
--------------------------------------------------------------------------地下水研究グループ
環境省
(Groundwater Research Group)
地球環境保全等試験研究費「外部振動源による
家屋内環境振動の人体感覚評価・予測に関する研究」
研究グループ長:丸井
環境省
概
敦尚
(つくば中央第7)
地球環境保全等試験研究費「都市環境騒音対策
要:
地球の水循環系を構成する地下水について、その流
の最適選択手法と数値地図を活用した騒音場の簡易推計
域規模での量・質・流れ・変動・温度分布等を明らか
技術に関する研究」
にする調査研究を実施するとともに、地下水の開発・
環境省
利用・管理・環境改善に関わる評価手法の開発やモデ
地球環境保全等試験研究費「電子機器用ガラス
リングの高度化を行う。また、地下水を主題とする知
廃棄時における有害元素の長期浸出評価」
的基盤情報を水文環境図等により公開するほか、水
環境省
文・地下温度場データベースを更新する。
環境技術開発等推進費「鉱物油等に起因する複
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目3、テーマ題目
合的な土壌汚染の環境リスク評価手法に関する研究」
6
文部科学省
若手 B「陸上・海底堆
科学研究費補助金
積物における細胞外 DNA の分布とその重要性の解明」
地圏環境評価研究グループ
(Geo-Analysis Research Group)
文部科学省
科学研究費補助金
研究グループ長:駒井
基 盤 研 究 (A) 海 外
武
(つくば西)
「重希土類元素およびインジウムの濃集機構と資源ポテ
概
ンシャル評価の研究」
要:
土壌・堆積物・帯水層・貯留層などの多孔質媒体内
科学研究費補助金(基盤 C)水溶性天然ガ
の物理、化学、生物現象の把握とその制御に関する基
ス鉱床における微生物メタン生成のために利用される堆
礎研究をベースにして、土壌・地下水汚染等の環境問
積有機物の解明」
題を解決するための基盤技術やリスク評価手法の開発、
文部科学省
及び研究成果の製品化を行う。
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目4、テーマ題目
財団法人エンジニアリング振興協会「東京湾における二
6
酸化炭素地中貯留可能性再評価検討」
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
メタン
CO2地中貯留研究グループ
ハイドレート開発促進事業「東部南海トラフメタンハイ
(CO2 Geological Storage Research Group)
ドレート賦存海域の地質地化学総合解釈」
研究グループ長:當舎
独立行政法人原子力安全基盤機構
概
利行
(つくば中央第7)
平成20年度原子力安
全基盤調査研究(その4)「震源断層評価に係る地質構造
要:
環境に調和した地下の有効利用を促進するために必
調査の高度化に関する研究」
要な技術開発を行う。特に、地球温暖化対策としての
二酸化炭素地中貯留に関わる技術の開発を行うととも
日本鉱業協会
受託研究費「坑内精密電気探査技術の研
に、高レベル放射性廃棄物地層処分や環境に負荷を与
究」
えない地下利用・資源開発のための技術、環境を保全
し安全を評価する技術などについて研究を実施する。
(以下2件は深部地質環境研究コアが受託および請負し、
当部門と地質情報研究部門で分担実施した。)
経済産業省
原子力安全・保安院
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目5、テーマ題目
6
平成20年度核燃料サ
地圏環境システム研究グループ
イクル施設安全対策技術調査「射性廃棄物処分安全技術
(Geo-Environmental System Research Group)
調査等のうち地層処分に係る地質情報データの整備」
研究グループ長:高倉
(174)
伸一
産業技術総合研究所
燃料資源地質研究グループ
(つくば西)
概
要:
(Fuel Resource Geology Research Group)
岩石・岩盤力学、物理探査、地圏流体シミュレーシ
研究グループ長:棚橋
学
(つくば中央第7)
ョンなど主として物理学的実験およびフィールドワー
概
クの手法を用いて、地層処分安全研究、CO2地中貯留
要:
メタンハイドレート等天然ガス資源を初めとする燃
研究、地熱等資源研究、地下利用技術研究に取り組み、
地圏環境との調和を考えた地下の有効利用および資源
料地下資源の探査技術高度化を目指し、燃料資源探査
開発に必要な技術の開発を行う。
法、燃料鉱床形成機構及び燃料資源ポテンシャル評価
法の研究を行うとともに、我が国土及び周辺海域の3
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目3、テーマ題目
次元的地質調査情報に基づく燃料資源ポテンシャル把
5、テーマ題目6
握の精度向上のための基盤的研究を進める。
研究テーマ:テーマ題目4、テーマ題目6
物理探査研究グループ
(Exploration Geophysics Research Group)
研究グループ長:内田
地熱資源研究グループ
利弘
(Geothermal Resources Research Group)
(つくば中央第7)
概
研究グループ長:村岡
要:
洋文
(つくば中央第7)
地圏の利用や環境保全、資源開発等のための基盤技
概
術として、各種物理探査手法の高度化と統合的解析手
要:
法の研究を行うとともに、地層処分等における岩盤評
中小地熱資源開発等、国内外の地熱資源の開発を目
価、地下水環境・地質汚染等における浅部地質環境評
指して、地熱資源の分布、成因、探査、評価、モデル
価・監視、地熱・炭化水素資源探査などの分野へ物理
化、データベース化、利用技術、開発技術等に関わる
探査法を適用し、対象に即した効果的な探査法の研究
総合的な研究業務を行う。また、これらの研究をベー
を行う。
スに、地下空間利用や地圏環境問題等に関わる応用的
な研究業務を行う。
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目2、テーマ題目
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目6
3、テーマ題目5、テーマ題目6
地圏微生物研究グループ
鉱物資源研究グループ
(Geomicrobiology Research Group)
(Mineral Resources Research Group)
研究グループ長:坂田
研究グループ長:渡辺
将
寧
(つくば中央第7)
(つくば中央第7)
概
概
要:
要:
地圏における微生物の分布と多様性、機能、活性を
国民生活、日本の産業にとって不可欠な各種の鉱物
評価することにより、元素の生物地球化学的循環に関
資源、特に産業界からの要請の強い銅及びレアアース
する基盤的情報を提供するとともに、天然ガス等の資
等の希少金属資源の探査手法の開発を行う。また鉱物
源開発、地圏の環境保全や利用に資する研究を行う。
資源に関する基礎的情報を提供するとともに、鉱物資
源のポテンシャル評価を行う。
研究テーマ:テーマ題目2、テーマ題目4、テーマ題目
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目6
6
地圏化学研究グループ
地質特性研究グループ
(Resource Geochemistry Research Group)
(Integrated Geology Research Group)
研究グループ長:佐脇
研究グループ長:伊藤
貴幸
一誠
(つくば中央第7)
(つくば中央第7)
概
概
要:
要:
地圏における化学物質の分布と挙動、特にメタン等
高レベル放射性廃棄物地層処分の安全規制に資する
有用物質の生成・集積プロセスに関する地球化学的解
ため、地質環境のベースラインと呼ばれる自然状態に
析を通じて、地球システムにおける物質循環に関する
おける地質環境、特に地下施設を建設する前の地質環
基盤的情報を提供するとともに、資源の成因解明、開
境を把握するために必要な地質学的、水文地質学的知
発、環境保全に資する研究を行う。
見を整備し、技術情報として取りまとめる。
研究テーマ:テーマ題目7
研究テーマ:テーマ題目1、テーマ題目4、テーマ題目
6
(175)
研
究
地下環境機能研究グループ
用いて簡易データベース化し、昨年度までに開発した手
(Experimental Geoscience Research Group)
法を用いて各種の表示・解析を行った。鉱物資源につい
研究グループ長:竹野
ては、重希土類元素の濃集機構と資源ポテンシャル評価
直人
を行うために、南アフリカ共和国地質調査所および独立
(つくば中央第7)
概
要:
行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と南アフリカ
高レベル放射性廃棄物地層処分の安全規制を支援す
共和国でのペグマタイト、カーボナタイトおよびアルカ
る研究として、性能評価やセーフティケースに求めら
リ岩に関連した蛍石鉱床他の希土類資源調査を実施し、
れる地質学的知見を整備し、技術情報として提供し、
重希土に富む蛍石鉱床を発見した。日本のマンガン鉱石
社会の安全に役立てる。また、地質環境に備わる機能
から新希土類鉱物ネオジムウエークフィールダイトを発
をさまざまな素材として利用する技術についても研究
見し、新鉱物として国際鉱物学連合に申請し認可された。
し、社会や産業の発展に役立てる。
中国南部の希土類鉱化作用を伴う花崗岩の研究、中国南
研究テーマ:テーマ題目7
部の銅、モリブデン等鉱化作用、ラオスの花崗岩のスズ
---------------------------------------------------------------------------
鉱化作用の研究、ラオス、ベトナムにおけるラテライト
[テーマ題目1]地圏流体挙動の解明による環境保全及
型希土類鉱化作用の研究を実施した。
[分
び地熱や鉱物資源探査技術の開発
[研究代表者]棚橋
学(副研究部門長)
[研究担当者]丸井
敦尚、村岡
洋文、渡辺
野
名]地質
[キーワード]地下水資源環境、地熱資源、鉱物資源
寧ほか
[テーマ題目2]土壌汚染リスク評価手法の開発
(常勤職員16名、他5名)
[研 究 内 容]
環境への負荷を最小にした国土の利用や資源開発を実
[研究代表者]駒井
武(副研究部門長)
[研究担当者]駒井
武、内田
利弘ほか
(常勤職員10名、他8名)
現するために、地圏内部における地下水及び物質の流動
[研 究 内 容]
や岩盤の性状をモニタリングすることが必要である。そ
のために、地圏内部の流体循環シミュレーション技術を
わが国の地圏環境における環境リスクを評価するため
開発し、これらの技術に基づき、地下水環境の解明、地
の解析手法として、地圏環境リスク評価システム
熱貯留層における物質挙動の予測及び鉱物資源探査に関
GERAS の開発を行うとともに、日本国内の特定地域に
する技術を開発する。地下水研究においては、従来から
おける土壌・地質環境の詳細調査により土壌特性等の解
揚水に伴う地下水環境変化が指摘されている埼玉県平野
析を実施した。本年度は、土壌・地質調査により各種デ
部を対象とした研究に取り組み、埼玉県平野部における
ータを取得するとともに、暴露・リスク評価に必要な土
地下水環境の変遷を解明するため、埼玉県平野部に設置
壌パラメータの解析を行った。新たに GERAS の詳細
されている地下水位・地盤沈下観測井ならびに各種水源
モデルに使用する数値解析モデルを整備したほか、土壌
井を対象として地下水位・地下水温の観測・長期モニタ
への吸着係数や揮発係数などのパラメータを取得した。
リングを実施し、地下水データの取得と評価を行った。
また、特に鉱物油を対象として GERAS(油バージョ
その結果、特に地下水温データの広域分布によって東京
ン)を作成し、土壌特性および地下水特性を解析するこ
首都圏における地下温度分布が明らかとなり、都市地下
とにより、これに必要なデータベースを作成した。
環境における地下ヒートアイランドの存在を見出した。
GERAS(油バージョン)については、主要な企業や自
タイでの地中熱冷房利用の実証試験装置をカンペンペッ
治体、大学などに配布し、試験使用されている。今後、
トから北部のチェンマイへ移動し、約1年間の温度観測
改善や機能の追加を行い、詳細モデル(GERAS-3)と
を行った。カンペンペットでの測定結果については、最
して公開する予定である。さらに、スクリーニングモデ
終的な報告書を地質調査研究報告の特集号としてまとめ
ル(GERAS-1)およびサイトモデル(GERAS-2)に
た。都内のオフィスビルに初めて導入された地中熱利用
関して、バージョンアップを行った。GERAS-1、2に
システムの熱交換井内において、温度モニタリングを開
ついては、これまでに800件を超える事業所および自治
始した。CCOP 活動を中心に国際貢献として各国の地
体に配布し、実際の土壌汚染のリスク管理の実務に適用
下水環境、管理方法、資源利用状況、地下水関連法規に
されている。地下微生物を活用した資源・環境対応技術
ついて調査し、成果を発表した。地熱資源については、
の開発として、油田微生物が原油を分解して天然ガスを
19年度出版の「日本の熱水系アトラス」の熱水系データ
生成する活動の実態とその支配要因を明らかにすること
ベースと重力基盤深度図をもとに、容積法による全国の
により、枯渇油田の天然ガス再生技術開発の可能性を評
地熱資源量評価を行った。北海道の石狩低地帯南部の周
価するとともに、バイオレメディエーションに有用な炭
辺で NEDO によって過去に実施された地熱開発促進調査
化水素分解微生物を探索する。本年度は微生物による油
「胆振地域」・「登別地域」について、坑井調査(合計13
分解、メタン生成の地化学的特徴が認められた余目油田
本)の温度・地質・変質データに関し、表計算ソフトを
から採取した油層水に含まれる微生物の活性、多様性を
(176)
産業技術総合研究所
調べた。微生物と有害物質の相互作用に関する研究とし
た沿岸域における塩淡境界や断層等の把握及びその長期
て、廃棄物の焼却灰中に含まれる微量金属の環境影響に
的な変遷の評価に係る総合的な調査評価手法として構築
関して微生物への毒性を指標として評価するための基礎
することを目的としている。本年度は、北海道西岸の沿
的検討を行い、土壌汚染の浄化・評価に関する基礎的検
岸域を想定し、地質・深部地下水環境を想定したモデリ
討として、土壌・地下水汚染評価に必要なトレーサー試
ングと予備解析を実施した。この結果、沿岸域の地形や
験で使用されるトレーサー物質であるフルオレセインの
地質は海岸線にほぼ平行な単調な構造であるが、塩淡境
土壌吸着挙動について、恒温振盪器を用いた吸着平衡試
界は旧河道に影響されて複雑な形態を呈することが判明
験の結果を基にデータ解析を行った。自然機能を利用し
した。地層処分場岩盤特性評価のための高分解能物理探
た浄化方法の研究において、揮発性有機塩素化合物で汚
査イメージング技術の研究においては、前年度に筑波山
染された難透水層について、これまで培養試験において
西方の平野部で実施した人工信号源電磁探査法3次元的
完全な無害化が進行していることが示唆されたが、さら
データ取得実験のデータ解析を継続した。ハイブリッド
に揮発性有機塩素化合物分解遺伝子の検出を行った結果、
ドメイン電磁探査システムのデータ取得について、人工
vcrA、bvcA といった、無害なエチレンまで汚染物質を
的な電磁ノイズの除去のために、より長時間の時系列デ
分解する遺伝子が存在することが確認されたことから、
ータを対象としてスペクトル解析を実施した方が、周波
難透水層において完全な無害化までの自然浄化が生じて
数領域での周波数分解能が高く、信号源から発生した信
いることを示すことができ、国際微生物生態学会におい
号と電磁ノイズとの混合が起きにくく、信号成分の抽出
て発表を行った。遷移金属を含有する天然黄鉄鉱を用い、
が可能となることを、数値計算と実データにより検討し
難分解性の有機塩素系化合物を化学反応によって脱塩素
た。沿岸域塩淡境界・断層評価技術高度化開発において
化し、汚染物質の無害化を図ることを目指しディルドリ
は、放射性廃棄物地層処分の地質環境調査技術に関する
ンを含む残留農薬の化学的にかつ土壌の生産性を保持し
研究の一環として、北海道幌延町の沿岸域をモデルフィ
たままでの現位置浄化手法をめざし、室内分解促進試験
ールドとして、陸域および浅海域を含む沿岸域における
により分解特性に及ぼす溶存酸素依存性および微量金属
地質構造、断層構造、塩淡境界等を把握するための物理
種の影響について検討を行った。地圏環境インフォマテ
探査技術の高度化開発研究を進めており、今年度は、前
ィックス研究として、市街地周辺地域における土壌・地
年度に取得した電磁探査(MT 法、TEM 法)データの
質環境に関わる様々な情報を収集し、周辺地域から供給
再解析、物理検層データ(弾性波速度・比抵抗等)から
される自然起源の重金属等の存在状況および地質環境を
地層の水理特性を求める解釈手法の検討等を実施した。
評価するため、モデル地域(北海道夕張地域)を対象と
得られた MT 法の2次元・3次元解析結果と既存の地震
した土壌・地質環境評価に関する研究を実施した。
探査結果等を比較し、調査域の中央に伏在断層の存在す
[分
名]環境・エネルギー、地質
る可能性が高いこと、及び、ガス層に対応して高比抵抗
[キーワード]土壌汚染、地下水汚染、リスク評価
異常域が存在することを確認した。また、浅海域におけ
野
る電磁探査法の適用に関して、陸上送信、海底受信の測
定配置にデータ解析手法が適用できるよう、2.5次元モ
[テーマ題目3]地層処分環境評価手法の開発
[研究代表者]楠瀬
勤一郎(主幹研究員)
[研究担当者]丸井
敦尚、當舎
石戸
利行、内田
デリングの計算コードを改良した。そして、様々な送信
周波数における海水層の存在による電磁場の散乱の様子
利弘、
を数値シミュレーションにより考察した。
恒雄ほか
[分
(常勤職員13名、他10名)
野
名]地質、環境・エネルギー
[キーワード]地圏流体、資源、環境
[研 究 内 容]
本研究では、特に沿岸域における調査評価技術を対象
として、ボーリング調査や物理探査並びに地下水等のデ
[テーマ題目4]低環境負荷天然ガス資源の評価・開発
ータベースや解析評価技術といった要素技術の高度化開
[研究代表者]棚橋
学(副研究部門長)
発及びこれら技術の適切な組合せによる体系的適用試験
[研究担当者]駒井
武、坂田
将、松林
修ほか
(常勤職員16名、他5名)
を行い、塩淡境界及び断層評価を中心とした沿岸域の地
質環境の総合評価手法を構築することを目的としている。
[研 究 内 容]
沿岸域において、「原子力政策大綱でいう地上からの調
メタンハイドレート資源の有効利用を目指し、日本近
査」を想定したボーリングによって地質・地下水環境を
海のメタンハイドレート分布の詳細調査と資源量の評価
調査・観測しながら、段階的かつ繰り返しによる地下水
を行うため、基礎物理探査「南海トラフ」、基礎試錐
流動解析を行い、沿岸域における塩淡境界の形状把握を
「東海沖~熊野灘」、カナダ沖 IODP 掘削試料のデータ
行い、地下水の長期的な流動・滞留状況を評価する手法
解析、分析を進めている。IODP 航海311でカスカディ
を開発していく。これによって、ボーリングと物理探査
ア・マージンで採取されたコア試料について、メタン生
との組合せた調査と、関連データベースの活用等を含め
成・メタン消費微生物の分布と活性を評価した結果を論
(177)
研
究
(常勤職員30名、他5名)
文にまとめた。堆積物中のガスハイドレートの分布は、
[研 究 内 容]
砂層の有無等、メタン生成活性以外の要因に支配されて
いると推定された。水素+二酸化炭素からのメタン生成
大気中の CO2 削減のため、大規模発生源に近い沿岸
が主要であった。茂原ガス田から採取されたボーリング
域において CO2を地下1,000 m 程度の深部に圧入する
コア試料について、炭素-14でラベル化した基質を添加
地中貯留技術が期待されている。そのため、地下に圧入
するラジオトレーサー実験によるメタン生成活性の測定、
された CO2の挙動を解明して、深部の帯水層の CO2貯
解析を進めた。すべてのコア試料から高いメタン生成活
留、貯留技術の開発、及び CO2 の移動に対する帯水層
性が検出され、生成経路に関しては水素+二酸化炭素か
の隔離性能評価に必要なモデリング技術を開発する。ま
らのメタン生成速度が酢酸からのメタン生成速度よりも
た、CO2を帯水層に圧入した際の環境影響評価のための
圧倒的に高い傾向が得られた。このことは同ガス田の鹹
CO2挙動に関するモニタリング技術を開発する。CO2地
水中の古細菌の群集構造やメタンの安定炭素、水素同位
中貯留の実用化に際しては、貯留層のみならず、キャッ
体比から推定される生成経路と調和的であった。ハイド
プロックまでを含めた、貯留システム全体についての安
レートの室内合成実験により、アルコール類等水溶液の
全性の評価が重要であり、昨年度に引き続き、キャップ
種類・濃度がガスハイドレート相平衡条件に与える影響
ロックの長期安全性評価に関連して、塩酸溶液中および
を調べた。プロパンまたは二酸化炭素とアルコール水溶
地下1000 m の帯水層条件を模擬した CO2飽和水中で、
液を用いた実験では、濃度が高いほど、相平衡条件を低
緑泥石の溶解実験を行った。自然電位での長期的な観測
温側へシフトした。また各種アルコール水溶液によるハ
可能性の検討のため、自然電位電極の長期安定性試験を
イドレート生成阻害効果の強さは、メタノール>エタノ
実施している。鹿児島県大霧地域において、昨年度まで
ール>エチレングリコール>グリセリン>ジエチレング
4年以上の観測を実施している。このような長期の連続
リコール>トリエチレングリコールの順であった。一方、
観測を行っているが電極の交換が必要となる状況には至
メタンとプロパノールを用いた実験では、ある濃度では
っておらず、設置した電極は長期間の観測に耐えること
ガスハイドレートを安定化させる効果もあることを示し
が示唆されている。実際の CO2 地中貯留が想定される
た。熊野トラフおよび上越沖における地質調査に基づき、
大規模排出源近傍では、地表においては得られるシグナ
精密地形調査、音波探査、長期温度測定を行い、メタン
ルが小さくかつノイズが大きいことも想定され、自然電
ハイドレート分布域の地質構造および地史、特に熱史と
位法・電気探査法等のモニタリングにおいて、坑井を利
メタンハイドレート濃集域の発達過程について考察した。
用して地下深部での電極設置に適した電極開発を目的と
南関東ガス田分布域における温泉関係のガス爆発事故が
して、岩手県の釜石鉱山坑内の実験孔 KF-1及び KF-3
続いたことを踏まえ、今後の燃料資源の安定供給という
を利用した測定を昨年度より開始した。長期間の坑井を
視点のみならず、南関東平野部での安全な温泉掘削の指
利用したモニタリングに適する電極の選定を行う。坑井
針策定等のため、南関東ガス田における正確な天然ガス
内の自然電位の連続測定を併用することにより従来の坑
の賦存状況の把握、地下の地質情報の再整備等が必要と
井テストに比して高精度で岩体の水理特性を求めうる。
考えられ、南関東ガス田における水溶性天然ガス資源の
圧力遷移に伴う再現性の良い自然電位変化測定に成功し、
賦存状況の解明、地質学的情報の更新等を実施する。20
フラクチャー岩体の水理特性推定における坑井内自然電
年度は、文献調査を行い南関東ガス田の主要産ガス層で
位測定の有効性が確認できた。温室効果ガスであり、か
ある上総層群だけではなく、その上位・下位の地層であ
つオゾン層破壊物質でもある N2O の循環メカニズムの
る沖積層、三浦層群相当層、先新第三系等の天然ガスポ
解明に関連して、グローバルでの窒素収支および窒素同
テンシャルについての情報収集・整理を行った結果、上
位体収支についてモデルを用いた解析を行った。感度解
総層群のみならず、その分布域外でも温泉掘削や土木工
析の結果、特に対流圏 N2O の窒素同位体比に影響を及
事により天然ガスが湧出してくる可能性があることを確
ぼすパラメータは、海洋表層アンモニアの窒素同位体比、
認した。また、上総層群よりも古い新第三系が厚く堆積
対流圏 N2O の窒素同位体比の定常値、硝化および脱窒
した地域にも天然ガス濃度が高い部分があることが明ら
の際の同位体分別係数であることが明らかとなった。オ
かとなった。
ーストラリアクーパーベーズンのハバネロサイトでは、
[分
ジオダイナミクス社による高温岩体地熱発電プロジェク
野
名]地質、環境・エネルギー
トが進行中である。深度約4200 m、坑井間距離560 m
[キーワード]天然ガス、資源
の循環システムが造成され、循環試験で2種類の蛍光ト
[テーマ題目5]二酸化炭素地中貯留システムの解明・
レーサーを投入し、光ファイバーによる連続測定システ
評価と技術開発
[研究代表者]楠瀬
[研究担当者]當舎
石戸
ムと、実験室での分析により、トレーサーの出現確認、
勤一郎(主幹研究員)
利行、楠瀬
勤一郎、内田
応答曲線の解析などを行った。その結果、トレーサー投
利弘、
恒雄ほか
入から約4日後、流体生産量では4000 ton あたりでトレ
ーサーが出現し始め、その後投入から9日後(約
(178)
産業技術総合研究所
9000 ton)でピークに達した。その後、約2ヶ月にわた
的利用や希元素回収の可能性を目指して、微量成分の含
るトレーサー応答曲線から、循環は良好に行われている
有量を分析するため、秋田県玉川温泉について予察調査
と判断された。
を行い、秋田県泥湯温泉について噴気地の特徴を示した。
[分
野
20万分の1地質図幅「名古屋」「八代」「中津」「静岡・御前
名]地質、環境・エネルギー
崎」の鉱物資源情報を取りまとめ、原稿を提出した。中央
[キーワード]二酸化炭素、地中貯留、環境
アジアの鉱物資源データのコンパイルとともに300万分の
1鉱物資源図の作成を進めた。また、50万分の1鉱物資源
[テーマ題目6]物質循環の視点に基づいた環境・資源
図を元に、日本の鉱物資源データのコンパイルを進めた。
に関する地質の調査・研究
天然ガスの起源の解明のため、石油や堆積岩に普遍的
[研究代表者]石戸
恒雄(主幹研究員)
[研究担当者]丸井
敦尚、石井
武政、駒井
當舎
利行、楠瀬
勤一郎、内田
坂田
将、佐脇
村岡
洋文、渡辺
貴幸、棚橋
に存在するホパン類の起源生物の一つと推定されている
武、
利弘、
アンモニア酸化細菌の脂質の濃度と炭素同位体比の測定
結果を論文公表した。アンモニア酸化細菌である
学、
Nitrosomonasを培養して、特徴的な脂質バイオマーカー
寧ほか
(常勤職員20名、他5名)
であるホパノイドの炭素同位体比を測定した結果、過去
[研 究 内 容]
に多数報告されている化石ホパノイド(堆積岩や石油中
地圏・水圏における物質循環は自然環境や水資源に影
のホパン)の炭素同位体比を合理的に説明できる。南海
響を与えるとともに、資源生成や汚染物質の循環・集積
トラフ前弧海盆域の熱流量データの整理による熱構造解
にも大きな役割を果たすことから、環境問題や資源問題
析、音波探査データの解析による地質構造の検討を行い、
を解決するため、地球規模の物質循環の解明が重要であ
燃料資源地質図の編集を進めた。
る。そのため、地下空間における水文環境や物質の集積
[分
メカニズムの解明を行う。さらに物質集積メカニズムの
[キーワード]地質調査、知的基盤、地球科学図
野
名]地質
解明に基づき、土壌汚染、地熱資源、鉱物資源、燃料資
源等に関する情報を整備し、データベースを作成する。
[テーマ題目7]地層処分安全規制支援の研究
平成20年度は、以下の研究を行った。
[研究代表者]竹野
西日本の代表地域として鳥取県地域を対象とした調査
直人
(地下環境機能研究グループ長)
結果をまとめ、得られた地球化学情報の整備および人体
[研究担当者]竹野
直人、金井
豊、上岡
リスク解析を行った。鳥取県内にはいくつかの旧廃止金
冨島
康夫、鈴木
正哉、伊藤
一誠、
属鉱山が分布する。一部の元素はこれらの鉱床分布を反
鈴木
庸平、石戸
恒雄、杉原
光彦、
映する重金属分布を示した。特にこの地域で人体への影
西
響が懸念されるクロム、鉛であるが、人体リスク評価を
(常勤職員15名、他5名)
行った結果、いずれも人体に影響のある濃度ではないこ
[研 究 内 容]
とが明らかになった。これらの統合した解析データは、
1)
祐司、高倉
晃、
伸一ほか
地質環境の隔離性能に関する研究
表層土壌評価基本図(鳥取県地域)として完成させ、数
我が国の高レベル放射性廃棄物地層処分場を対象と
した産総研独自の性能評価コードの開発を米国 SwRI
値地質図E-4として出版した。
高温熱水系シミュレータUSGS Hydrothermの新バー
との共同で行った。本コードは廃棄物容器からの放射
ジョン(v.3.1)について各種のテストを行い、Excel
性核種の漏出に始まり、天然バリア内の核種移行、評
VBAを用いた前・後処理プログラムを試作した。昨年度
価対象となる生物圏における最終的な核種別の漏出量
までに開発した各種公開電子地球科学データの重合平面
にいたるまでの処分システム全体を評価するコードで
-断面図の表示法とプレート-スラブ斜め沈み込みの簡
ある。要素計算モジュールの組合わせにより構成され
易モデル化-シミュレーション手法を利用して、九州地
ており、それらが作る中間データファイルにより処分
方の火山・地熱活動の時空間変化の機構を検討した。
場システムを要素別に評価する機能を持つ。現時点で
IEA地熱実施協定のタスクとして国際的な熱水系データ
は処分場候補地が決まっていないため、本コードは汎
ベースを作成し、花崗岩地殻の熱水系と玄武岩地殻の熱
用性の高い設計となっており、さまざまな地質条件に
水系との間でpHやB/Cl比に大きな違いがあることを明ら
対応し、候補地の予備的な処分場としての適正評価に
かにした。ExcelVBAを用いて水化学データの表示・解
も対応できる。
析に不可欠なキー図・ヘキサ図(地図上)の作成プログ
2)
地質環境のベースライン特性に関する研究
ラムを作り誌上発表を行うとともに、WWWホームペー
栃木県那須烏山市内の KR-1井掘削サイトとその周
ジからのダウンロードを可能とした。同様に標高-地質
辺をモデルフィールドとして、水理環境の変動把握に
メッシュデータの各種組み合わせ処理などについてもプ
有効な物理探査手法の評価を行っている。当サイトで
ログラムを作成した。本邦の代表的な酸性泉の物理化学
は、現在でも GPS 測位と自然電位の連続観測や重力
(179)
研
究
と比抵抗の繰り返し測定が実施されている。また、気
価値を生み出す技術に関わるものも重要な課題とし
象観測や土壌水分・温度の連続観測が継続されている。
て取り組む。これは、そもそもロボットというもの
自然電位変動調査では、集中した降雨の後に約1ヶ月
がきわめて融合的なシステムであってその実現に関
程度継続 する 電位変化 や、 降雨に伴 って 発生する
わる体系は、機械技術、エレクトロニクス、情報通
KR-2を中心とした電位変化を検出した。これらの変
信技術、人工知能技術をはじめ、場合によっては材
化は不飽和帯中の下降浸透流に伴って生じる流動電位
料技術なども含み、その研究成果がさまざまなレベ
やケーシング周囲における酸化還元電位の変化による
ルで応用可能性を持っているからである。その際、
ものと考えられる。重力の繰り返し調査では、7月と2
研究課題が発散することのないように、きちんとし
月に絶対重力と相対重力の測定を実施した。同地点で
た出口・応用をイメージし、使える技術を意識した
は時々、数μGal 大きい重力値が観測されることがあ
設定で展開することが重要であることは言うまでも
り、降雨が影響を及ぼしていると考えられる。今後、
ない。また、市場創生の観点からは、将来の応用・
GPS で認められる経年変化や季節変化との関係を検
市場を想定した先行用途の知恵出し、プロトタイプ
討する必要がある。比抵抗の繰り返し測定は約1ヶ月
システムの提示も重要な役割で、そのような成果も
ごとに実施し、その変化を土壌水分・温度のデータと
また目標に含めるものとする。
比較した。土壌水分変化の影響と考えられる比抵抗の
---------------------------------------------------------------------------
局所的変化や経年変化は認められるが、大局的な変化
外部資金:
は土壌温度の季節変化と調和的であり、当サイトにお
文部科学省
ける比抵抗変化には地温の影響が卓越していると判断
ニバーサルデザイン」
科学技術振興調整費「環境と作業構造のユ
できる。
[分
野
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次
名]地質
世代ロボット知能化技術開発プロジェクト/ロボット知
[キーワード]地球化学サイクル、イオニウム法、標準
試料、イモゴライト、吸着、多深度採水、
能ソフトウェアプラットフォームの開発/ロボット知能
微生物分析、物理探査、モニタリング、
ソフトウェアプラットフォームの研究開発」
繰り返し測定、水理環境
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次
世代ロボット知能化技術開発プロジェクト/作業知能
③【知能システム研究部門】
(Intelligent Systems Research Institute)
(社会・生活分野)の開発/施設内生活支援ロボット知
能の研究開発」
(存続期間:2001.4.1~)
研 究 部 門 長:平井
副 研 究 部 門 長:小森谷
主 幹 研 究 員:末廣
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦
成興
清、比留川
略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、人間・ロ
博久
ボット協調型セル生産組立システム(次世代産業用ロボ
尚士
ット分野)、コンパクトハンドリングシステムを備えた
安全な上体ヒューマノイド」
所在地:つくば中央第2、東、北
人
員:53名(51名)
経
費:967,701千円(676,295千円)
概
要:
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦
略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、ロボット
搬送システム(サービスロボット分野)、店舗応用を目
指したロボット搬送システムの研究開発」
1.ユニットの理念・目的
人間の行う様々な知的な運動や物理的操作を支援
あるいは代行する、知能情報処理やロボティクス・
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦
メカトロニクスシステムに関わる技術を知能システ
略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト、建設系産
ム技術と位置づけ、その基礎原理、要素技術、シス
業廃棄物処理 RT システム(特殊環境用ロボット分野)、
テム化技術の研究開発を行い、かつその成果をさま
廃材分別を考慮した環境対応型解体作業支援ロボットの
ざまな形で社会に普及させる努力を通じ、わが国産
研究開発」
業社会の発展に貢献する。
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基
2.ユニットの研究の方向性
盤ロボット技術活用型オープンイノベーション促進プロ
研究の主力はいわゆるロボットであるが、形態的
ジェクト」
な意味でのロボットに拘ることなく、システムが知
能化されることで新しい効果を生み出し、産業的な
(180)
産業技術総合研究所
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次
日本学術振興会
世代ロボット知能化技術開発プロジェクト/ロボット知
事業「動的環境における視覚情報に適応的なパーティク
能ソフトウェア再利用性向上技術の開発」
ル・フィルタを用いた SLAM 手法」
文部科学省
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
科学研究費補助金特別研究員奨励費「全身
(独)日本学術振興会外国人特別研究員
助
の触覚情報を触原色に基づき提示することを特徴とする
成金「人と共存して動作する次世代生産ロボットための
人型ロボットの遠隔臨場制御」
高速ビジョン安全領域センサの開発」
科学研究費補助金若手 B「人との対話に基
文部科学省
独立行政法人科学技術振興機構
科学研究費補助金若手 B「組立作業教示の
文部科学省
重点地域研究開発プロ
グラム(シーズ発掘試験)「球面加減速機構の開発」
づくロボットの逐次的行動ネットワーク構成法」
独立行政法人科学技術振興機構
戦略的国際科学技術協
ための作業特徴量の抽出と制御方策切り替え条件のモデ
力推進事業「実環境のオンライン情報構造化を用いたロ
ル化」
ボットの運動計画および実行に関する研究」
科学研究費補助金若手 B「ヒューマンエラ
独立行政法人科学技術振興機構「パラサイトヒューマン
ーと向き合う次世代ロボットのためのリアルタイムの人
装着者の行動モデル獲得ならびにパラサイトヒューマン
間信頼性評価機能」
装着者による人の誘導に関する研究」
文部科学省
財団法人日本自動車研究所
文部科学省
科学研究費補助金基盤研究(B)「ヒュー
エネルギーITS 推進事業
「自動運転・隊列走行システムのコンパティビリティと
マノイドによる物体搬送作業のための作業計画」
安全性・信頼性に関する研究開発」
文部科学省
科学研究費補助金基盤研究(C)「UML モ
デリングによる人と共存するロボットの安全設計と評価
財団法人日本産業技術振興協会
方法の研究」
ズ「間欠故障の自己診断機能をもつ6軸力覚センサ」
文部科学省
産総研イノベーション
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
科学研究費補助金基盤研究(C)「足関節他
生物系
動運動訓練機器が末梢組織の循環状態に与える影響に関
特定産業技術研究支援センター
生物系産業創出のため
する研究」
の異分野融合研究支援事業「切断識別モジュールの開
発」
文部科学省
科学研究費補助金特定「多自由度アクチュ
発
エータ」
表:誌上発表143件、口頭発表240件、その他40件
--------------------------------------------------------------------------日本学術振興会
ヒューマノイド研究グループ
(独)日本学術振興会外国人特別研究員
事業「回転する金型に金属板を押し付けて形成するスピ
(Humanoid Research Group)
ニング加工をロボットにより行う際に、発生する振動を
研究グループ長:梶田
秀司
(つくば中央第2)
抑制する制御を研究し、軽量なロボットによる大きいサ
概
イズの加工を実現する。」
要:
ヒューマノイド研究グループは、ヒューマノイドロ
(独)日本学術振興会外国人特別研究員
ボティクスに関する基盤研究・工学的研究を行ってい
事業「環境知能と空間機能を用いた人間志向の共生ロボ
る。従来は人間にしかできなかった作業を代替し人間
ットシステムのデザインと制御」
と共存して働くヒューマノイドロボットを実現するた
日本学術振興会
め、人間の通常の生活空間内を自由に移動する機能と
(独)日本学術振興会外国人特別研究員
基本的な作業機能の実現を中期目標としている。具体
事業「人間型ロボットのための人のような滑らかな動作
的には、不整地歩行、段差歩行、狭隘部移動、腕を併
計画法」
用した移動・作業等の研究を行っている。また、早期
日本学術振興会
の産業化を目指した研究としては、伝統芸能のディジ
日本学術振興会
タルアーカイブ、恐竜型ロボットの開発等も行ってき
(独)日本学術振興会外国人特別研究員
ている。
事業「人間型ロボット動作の最適化に関する研究」
研究テーマ:テーマ題目1
(181)
研
究
自律行動制御研究グループ
任意の形状の物体を対象として、これらの処理を一貫
(Autonomous Behavior Control Research Group)
的に実時間で高精度に実行する。また、その応用シス
研究グループ長:横井
テムとして、ハンドアイシステム、パーソナルロボッ
一仁
ト、環境マップ生成システム等を開発し、その高度化
(つくば中央第2)
概
をはかっている。
要:
研究テーマ:テーマ題目4
ロボットの自律性・適応性・双方向性・汎用性を高
めるための様々な研究をしている。特に、実環境で自
律的に探査・搬送作業のできるロボットシステムの実
フィールドシステム研究グループ
現を目標としている。確立した理論を研究用プラット
(Field Systems Research Group)
フォームであるヒューマノイドロボット HRP-2に実
研究グループ長:小森谷
清
(つくば東)
装し、実環境で使用できる技術の構築を目指している。
概
また、知能システム研究部門とフランス国立科学研
要:
究 セ ン タ ー ( CNRS ) と の 間 で 設 立 し た Joint
屋外環境の保全や整備、人や物の移動など、屋外に
Japanese-French Robotics Laboratory(JRL)の日
おける人間活動の支援が求められている。地表面を含
本国研究拠点として、フランスを始め世界各国の研究
む3次元の移動技術の確立と、屋外作業の自動化や人
者と共同で研究を行っている。
間と機械のインタフェースの研究開発を通して、この
ような支援の実現を目指している。屋外環境でのナビ
研究テーマ:テーマ題目1
ゲーション技術、空間移動制御技術、土砂などのマニ
タスク・インテリジェンス研究グループ
ピュレーション技術、協調のための情報通信制御技術、
(Task Intelligence Research Group)
先進車両制御技術など、要素技術から、屋外環境で使
研究グループ長:神徳
える知能システムを実現すべくシステム化の研究を推
徹雄
進している。
(つくば中央第2)
概
研究テーマ:テーマ題目3
要:
知能システムに要求される知的機能を「人間を含む
実世界との物理的なインタラクションを行うための技
安全知能研究グループ
術」という視点で捉え、実世界や人間とのインタラク
(Safety Intelligence Research Group)
ションを行い我々が必要とする目的を達成するための
研究グループ長:山田
陽滋
(つくば中央第2)
知能、とりわけ作業実行のための知能の研究を進めて
概
いる。また、その人間代替作業ロボットへの応用を目
要:
指し、知的センシングや知的制御、柔軟物ハンドリン
実用化がすでに始まり、ますます人間との距離を縮
グ問題等に取り組み、従来自動化が困難であった産業
めつつあるロボットには、当然高い安全性が要求され
アプリケーション分野やオフィス・家庭などの分野へ
るだろう。自動回転ドアやジェットコースターのよう
のロボットの応用を追求している。
な痛ましい事故を起こすことのないように、身近な人
間-機械系の安全をどのように確保すべきか?メーカ
また、新しいロボットシステム構築のためのソフト
ーのみならずユーザや取り巻く人々を含む社会全体が、
ウェア(RT ミドルウェア)の開発も行っている。
この課題に真剣に取り組むことにより、心配されてい
研究テーマ:テーマ題目2
る人間-ロボット間の事故を未然に防ぐことができる
3次元視覚システム研究グループ
ことだろう。当研究グループでは、RT(ロボットテ
(3-D Vision Systems Research Group)
クノロジー)を駆使して、このような社会全体の要請
研究グループ長:河井
に先んずべく、生産現場での作業員による機械操作ミ
良浩
スの防止から、福祉現場における高齢者・障害者の生
(つくば中央第2)
概
要:
活支援機器の安全確保、さらには、介護従事者らによ
人間が利用する情報の80%以上が視覚情報と言われ
る安全で確実な介護や看護の遂行を目指す“安全知
ている。そこで、人間の活動を支援または代行するシ
能”技術を開発し、関連産業を育成している。
ステムに必要な眼として複数台のカメラ(ステレオカ
研究テーマ:テーマ題目2
メラ)を用い、立体を立体的に知覚することによって、
多分野・多目的に利用できる3次元視覚システム VVV
分散システム研究グループ
(Versatile Volumetric Vision)を開発している。
(Distributed System Design Research Group)
3次元視覚には、距離計測、形状計測、物体認識、
研究グループ長:黒河
運動追跡等の機能があるが、VVV は、多様な状況で
治久
(つくば東)
(182)
産業技術総合研究所
概
要:
究体(CRT)という正式な組織として位置づけられ
人工システムは大規模、複雑化するにつれ、設計・
ている。
構築・保守の人的・物的コストが増大する。この問題
研究テーマ:テーマ題目1
を解決する一手段として、自律分散システムがある。
---------------------------------------------------------------------------
多数の自律的要素が共同して動作し、自己組織的に全
[テーマ題目1]ヒューマノイドロボットの実用化技術
体の構成を改変しながら、環境に応じた機能を発現す
[研究代表者]比留川
る自律分散システムとして、形や動作を変えるモジュ
[研究担当者]梶田
博久(副研究部門長)
秀司、横井
一仁
(常勤職員14名、他20名)
ール型ロボットや、プログラム同士が相互作用して最
[研 究 内 容]
適なネットワークを構成するソフトウェアなどを研究
ヒューマノイドロボットの実用化にむけ、基礎技術か
している。
ら応用システムの開発まで幅広く研究を行う。まず、ヒ
研究テーマ:テーマ題目3
ューマノイドロボットにより開発された動力学シミュレ
空間機能研究グループ
ータソフトウェアの公開を行い、成果の社会への還元と
(Ubiquitous Functions Research Group)
ロボット技術全般の向上を図る。ヒューマノイドロボッ
研究グループ長:大場
ト実用化のハードルとなっているのは、2足歩行に代表
光太郎
される運動制御技術の性能、信頼性、適応性に不足があ
(つくば中央第2)
概
要:
るためであり、これを解消する取り組みとして、不整地
空間にユビキタス的に分散配置された、物理的な機
歩行性能や跳躍等の動的動作性能の向上を行う。また、
能と情報的な機能(空間機能)を、センサーネットワ
実用的な作業を行う上で不可欠な物体操作機能を向上さ
ークなどの技術を用いて合理的に融合配置及びデザイ
せるため、多指ハンドと視覚を用いた物体把持の研究、
ンする技術、また空間機能情報の獲得・提示技術など
ピボット動作による搬送作業の研究、建物ドアの開閉技
の研究開発を推進している。このことにより、空間機
術の研究、接触を伴う動作の接触点の計画法の研究を行
能の有効活用による人間生活支援、環境に分散した知
う。さらに、ヒューマノイドロボットの新しい応用分野
的アクチュエーション・システム(ロボットなど)な
を切り開くため、エンターテインメント分野に目標を絞
どの新規コンセプトを目指しながら、企業との連携に
った新しいタイプのロボット開発を行う。これに伴い、
より具体的な製品化を行っている。
ファッションショー等で要求される従来よりも人間に近
いしなやかな動作を実現するための各種基礎技術も開発
研究テーマ:テーマ題目2
する。
AIST-CNRS
上記の目的を達成するために、これまでに開発された
ロボット工学連携研究体
ヒ ュ ー マ ノ イ ド プ ラ ッ ト フ ォ ー ム で あ る HRP-2 、
(CNRS-AIST JRL (Joint Robotics Laboratory),
UMI3218/CRT)
連携研究体長:横井
HRP-3P、HRP-3を適宜使い分け、目標のパフォーマン
一仁
スを実現するソフトウェア開発を行うほか、新しい応用
(つくば中央第2)
概
分野を想定した新しいヒューマノイドロボットの開発も
要:
行う。方法論としては、要素技術開発主導ではなく、ロ
AIST-CNRS ロボット工学連携研究体 CNRS-AIST
ボットシステム全体としてバランスのとれた性能を実現
JRL(Joint Robotics Laboratory),UMI3218/CRT
するため、常にシステムとしての開発を進め、必要に応
は、フランス国立科学研究センター(CNRS)と産業
じて要素技術を追加的に開発するアプローチをとる。
技術総合研究所により設立された国際共同研究組織で、
ヒューマノイドロボットの実用化にむけた研究開発を
つくば事業所の知能システム研究部門内に設置されて
行った。ヒューマノイド研究の中で開発され、あらゆる
いる。ロボットの自律性の高めるための研究を、主に
タイプのロボットに利用可能な動力学シミュレータであ
ヒューマノイドロボットをプラットフォームに使用し
る OpenHRP3を2008年6月よりオープンソースライセン
て両国からの研究者の密な協力によって進めている。
スで全世界に向けて公開を開始した。2足歩行性能向上
主な研究テーマは、作業や動作の計画と制御、知覚を
の一環として、不整地歩行制御技術に関しては、新たに
通した人間や周囲の環境とのインタラクション、認知
開発した安定化制御アルゴリズムを用い HRP-2により、
ロボティクスなどである。フランス CNRS の他の研
厚さ2 cm のパネル上を事前知識なしに時速1.125 km
究機関、またヨーロッパを中心とした他の研究機関と
で踏破することに成功した。HRP-3を用いたその場ジ
も EU プロジェクトなどへの参加により国際共同研
ャンプについて解析し、高さ3.4 cm のジャンプを実機
究を行っている。
により実現した。多指ハンドを用いた物体把握技術を実
JRL は、CNRS では Unite Mixte Internationale
現するため、エッジ法線・曲率のヒストグラムマッチン
(UMI、国際混成研究所)として、産総研では連携研
グ・RANSAC 法を用いた把握作業用の視覚処理アルゴ
(183)
研
究
リズムを開発し、携帯電話の位置姿勢認識に成功した。
トウエア標準化団体 OMG で発行されたコンポーネント
また、その場に置かれた物体を視覚情報に基づき HRP-
モ デ ル 標 準 仕 様 ( RTC1.0 ) に 準 拠 す る 実 装 で あ る
3に取り付けた多指ハンド HDH-1により把持すること
OpenRTM-aist-1.0の開発を進める。
を実現した。障害物環境下で持ち替え動作を含むピボッ
国際安全規格の安全カテゴリー3の1 ms 光通信位置
ト動作を用いた物体搬送作業計画手法を確立し、HRP-
認 識 シ ス テ ム の 改 良 を 進 め る 。 UML ( Unified
2を用いた実験により有効性を確認した。予備動作によ
Modeling Language)を使用して、より一般の安全概
り生成される運動量を利用した建物ドアを開ける動作を
念を表現する。知能化福祉機器の周辺環境や人との衝突
実現した。環境とヒューマノイドロボットとの接触を積
回避機能を車いすをターゲットとして実装を行う。高齢
極的に用いた動作計画手法を確立し、HRP-2を用いて、
者の転落検知に必要な情報を検討し、データ収集実験を
テーブルに向って椅子に腰かけた状態から、離脱する動
行う。
ユーザ指向ロボットオープンアーキテクチャに基づい
作ならびに、手に飲み物をもったまま、テーブルに向き
て3種のプロトタイプロボットの研究開発を実施する。
合った椅子に座る動作を実現した。
ヒューマノイドロボットのエンターテインメント分野
1) 物流支援ロボットについては、AGV(Automatic
等への実用化をめざし、人間に近い外観・形態を持ち、
Guided Vehicle)を用い、前年度まで構築したセンサシ
人間に近い歩行や動作が可能、音声認識などを用いた人
ステム、シミュレータシステムの実証実験を行う。2)
間とのインタラクションが可能なサイバネティックヒュ
対人サービスロボットについては、昨年度開発した機能
ーマン HRP-4C を開発した。HRP-4C は19歳から29歳
検証アームの問題点を改良して評価実験用の最終プロト
までの日本人女性の標準体型を±10%で再現した、女性
タイプを開発、病院施設内でのユーザによる操作の評価
型のヒューマノイドロボットである。このロボットは
実験を行う。3) ヒューマノイドロボットに関しては、
2009年3月に開催された「東京発日本ファッションウィ
脚モジュール(HRP-4L)を用いて、モーションキャプ
ーク JFW in TOKYO」に出演し冒頭アナウンスを行っ
チャデータに基づく人間に近い歩行を実現する。脚モジ
た。
ュールの成果、および人間の運動データ解析をもとに上
人間に近い動作の一環として両脚接地期におけるすべ
半身をもつ全身モデル(HRP-4)を設計・開発する。
りを利用した方向転換の理論を構築し、HRP-2が摩擦
進捗状況:
係数0.13の床面上で意図的な滑りを利用して90度の方向
ロボット用ソフトウエア開発環境として、RTC ビル
転換を行う実験に成功した。また、モーションキャプチ
ダ、RTC システムエディタ等を開発し公開した。開発
ャにより得られた人間の歩行やターン動作を基に HRP-
環境の検証としてリファレンスハードウェアを試作、基
4C の動作パターンを生成する技術を開発した。また、
本機能の検証を行った。汎用的な把持機能の基盤として
人間に近い動作パターンを効率よく生成するための動作
RT モジュール化した視覚センシング要素と把持マニピ
生成ソフトウェアツールを開発し、これにより多様な顔
ュレーション要素とを統合したハンドアイシステムを構
表情を HRP-4C で実現した。
築した。物体操作のための環境構造ユニバーサルデザイ
[分
名]情報通信・エレクトロニクス
ンのデモシステムを構築し、神奈川県の住宅展示場にお
[キーワード]ヒューマノイド、二足歩行、全身運動制
いて実証デモ実験を行った。RT ミドルウエアに関して
野
御
は、OpenRTM-aist-1.0をホームページ上で公開リリー
スした。
国際安全規格の安全カテゴリー3の1 ms 光通信位置
[テーマ題目2]人間共存ロボット技術の研究開発
[研究代表者]平井
成興(研究部門長)
[研究担当者]神徳
徹雄、大場
光太郎、山田
認識システムの最適化設計を行い、試作システムを開発
した。UML(Unified Modeling Language)による安
陽滋
(常勤職員22名、他38名)
全概念のモデリングを完成させ、リスクアセスメントの
[研 究 内 容]
ためのデータベースシステムを開発した。知能化車いす
モジュール化されたロボット機能要素を統合するロボ
の運動情報や外界センサ情報により、人間を含む環境と
ット用ソフトウエア開発環境の研究開発を進め、ロボッ
の衝突危険度を見積もる手法を提案、実装した。高齢者
ト知能ソフトウエアプラットフォーム及び検証用知能モ
の転落検知について、手すりを用いた姿勢保持における
ジュールのプロトタイプを開発する。物体操作の技術基
健常成人による分布力覚の基礎データを取得した。
盤となる汎用的な把持機能の実現に向けて、視覚のセン
ユーザ指向ロボットオープンアーキテクチャに基づい
シングと把持のマニピュレーションを統合したシステム
て3種のプロトタイプロボットの内、1)物流支援ロボッ
トについては、企業が試作した AGV のグローバルな制
を検討する。
物体操作のための環境構造ユニバーサルデザインの研
御法と自律ロボットのローカルな制御法を統合した複数
究開発の成果について模擬生活空間を用いた実証を行う。
台ロボットの実証システムを構築、実証実験により所期
RT ミドルウエアの研究開発に関しては、国際的なソフ
の性能を確認した。2)対人サービスロボットは、問題点
(184)
産業技術総合研究所
を改良した最終プロトタイプアームを開発し、シミュレ
業性の向上でサイクルタイム55秒を記録し、作業員の場
ータによる操作評価実験を行うとともに、病院内で実機
合(約30秒)と比較して2倍以内への短縮を達成した。
の印象評価を行った。3)ヒューマノイドロボットではモ
[分
ーションキャプチャデータに基づくロボットの歩行動作
[キーワード]自律移動制御、センサネットワークロボ
生成システムを開発し、脚モジュールによる基礎的な歩
ット、アドホックネットワーク、ホイー
行と人間の運動データ解析に基づいた全身モデル
ルローダ、自律的な掬い取り
野
名]情報通信・エレクトロニクス
(HRP-4C)の設計・開発行い基本性能を確認した。
[分
野
[テーマ題目4]高機能自律観測技術の研究
名]情報通信・エレクトロニクス
[研究代表者]河井
[キーワード]ロボット用ソフトウェア、知能モジュー
良浩
(3次元視覚システム研究グループ長)
ル、環境構造ユニバーサルデザイン、
RT ミドルウェア、OpenRTM、ユーザ
[研究担当者]河井
指向ロボットオープンアーキテクチャ、
[研 究 内 容]
HRP-4C
良浩(常勤職員9名、他6名)
当該研究グループが長年独自に開発している構造解析
に基づく高機能3次元視覚システム VVV の基礎研究と
[テーマ題目3]自律移動ロボット技術の研究
ともに、応用研究、実用研究と連続的で相互に技術的な
[研究代表者]小森谷
フィードバックのある本格研究を実施している。VVV
[研究担当者]黒河
清(副研究部門長)
は、分野を問わず人間の眼が必要とされる多くの作業や
治久(常勤職員13名、他18名)
機械に共通的に利用でき、その支援・代行を促進するこ
[研 究 内 容]
とを目指している。
屋外における高信頼で、かつ実用的な自律移動制御技
術と情報ネットワーク技術を開発・統合して、それをベ
基礎研究として、基盤的視覚機能モジュールの体系的
ースに環境情報の収集や異常発見を行ったり、複数のロ
整備と増強をはかっている。境界表現された複数視点の
ボットシステムの協調動作による環境の改変など屋外作
観測データを統合し、3次元形状モデルとして生成する
業の自動化技術を開発したりして社会の安全と QOL の
機能、及び、任意形状の対象物である自由曲面体を遮蔽
変革を実現することを目的とする。
輪郭線に基づいて認識する機能を開発した。正確な3次
複数台のネットワークロボットの協調による情報収集
元形状情報を得るため、カメラの姿勢パラメータを自己
システム構築のため、無線ネットワークの形成、アドホ
修復する機能を開発した。また、遠距離物体の正確な形
ックネットワークによる情報の伝送、ロボット間の同期、
状計測を行うため、移動パラメータを基にカメラ間距離
環境認識、自律移動手法の検討・評価を行う。また、セ
の長いステレオ画像を生成し、高精度な3次元計測がで
ンサネットワークロボットの信頼性向上のため、駆動系、
きる機能を開発した。
制御系、通信系の技術的な検討、機能の試作、実地評価
応用研究として、VVV を典型的な応用システムに適
試験を行い、障害物・段差の自動認識と自動乗り越え機
用して、その有効性を実証するとともに、応用システム
能を実現する。環境改変ではホイールローダ実機の制御、
自体の高度化をはかっている。施設内生活支援ロボット
環境センシング、作業計画の各機能を統合し、複数の掬
知能の開発においては、RT コンポーネント化した認識
い取り、積み込み動作を実現して砂利堆積の移動の効率
モジュールを他のモジュールと組み合わせ、音声指令に
化を図る。
基づいて、ロボットが日用品を認識・把持し、カウンタ
進捗状況:
に運ぶシステムを構築し、実証した。また、ネットショ
ッピングにおける商品提示システムにおいて、商品モデ
センサネットワークロボットに関しては、基地局、ロ
ルの3次元データを簡便に生成するシステムを開発した。
ボット2台を無線でつなぎ、基地局より中間のロボット
を介して遠隔のロボットを操作、情報伝送実験を行い、
実用研究として、製造、土木、食品加工等に関連する
無線アドホックネットワークを利用することで、無線伝
企業と共同研究を実施し、工業部品の認識システム、形
送距離を拡張できることを確認した。新規にサーボモー
状計測システム等を開発している。
タと RS485通信による CPU ボードを開発し、高トルク、
[分
高制御特性、高信頼の駆動系、ロボット内通信の信頼性
[キーワード]3次元視覚、ステレオ、形状計測、物体
向上を実現した。無線遠隔通信に関しては、屋外オープ
認識、生活支援ロボット
野
名]情報通信・エレクトロニクス
ンスペースでも50 m 程度の通信に止まり、アンテナの
設置方法や電波強度、通信速度の課題を確認した。環境
④【エレクトロニクス研究部門】
改変については、前年度までに構築したホイールローダ
(Nanoelectronics Research Institute)
実機とダンプトラックを組み合わせたシステムで、自律
(存続期間:2001.4.1~)
的な作業実験を継続して、砂利堆積の自律的な掬い取り、
ダンプトラックへの積み込み作業の数値目標であった作
研 究 部 門 長:金丸
(185)
正剛
研
副研究部門長:安藤
功兒
主 幹 研 究 員:坂本
邦博、青柳
究
営している。
当部門は15研究グループで構成され、個々の研究
昌宏
課題は下記の5つの研究開発領域に技術的に分類し
所在地:つくば中央第2
て研究を実施している。
人
員:73名(71名)
(1) シリコンナノエレクトロニクス
経
費:1,306,774千円(616,047千円)
概
要:
従来の微細化技術のみでは実現困難な低消費電
力性と高速性・高機能性を併せ持つシリコン集積
回路の実現を目指し、ダブルゲート構造等を利用
したシリコンデバイスのプロセス・デバイス技術、
1.ミッション
回路・設計技術、デバイス評価技術を開発する。
我が国の産業競争力強化や新産業の創出に向けて
(2) 不揮発エレクトロニクス
革新的な電子技術を創出し、知的で安全・安心な生
電子スピンや誘電分極を不揮発メモリ機能とし
活を実現するための高度情報サービス創出に資する
ことを目指して以下の研究開発を行う。
て利用した新しい情報処理デバイスを開発し、不
・低消費電力性と高速性・高機能性を併せ持つデバ
揮発エレクトロニクスという新分野を開拓する。
(3) システムインテグレーション技術の開発
イス・集積回路技術の研究開発
・情報機器とユーザ間或いは情報機器とネットワー
情報機器とユーザとのインターフェースデバイ
ク間のインターフェースデバイスの小型化・低消
スあるいは情報機器とネットワークとのインター
費電力化・多機能化技術の研究開発
フェースデバイスの小型化、低消費電力化及び多
機能化を両立させるために低消費電力ディスプレ
・新機能材料及び新物理現象を用いた革新的デバイ
イ技術や3次元実装・評価技術を開発する。
ス技術および超伝導現象を利用した電子計測技術
(4) 新機能材料や新物理現象に基づく革新的電子デ
の研究開発
バイス技術の開発
2.研究概要
当研究部門においては、新規電子現象の解明、電
量子効果や超伝導効果を示す新しい電子材料の
子材料開発、プロセス・デバイス開発、集積化技術
開発、コンピュータの演算速度及び消費電力を飛
の開発、評価・計測技術の高度化など広範なエレク
躍的に改善できる革新的な情報処理ハードウェア
トロニクス分野で様々な研究フェーズの活動を行っ
応用のための要素技術を開発する。
(5) 超伝導現象に基づく次世代電子計測・標準技術
ており、個々の研究課題に対して産総研での位置づ
の開発
けを常に意識しながら研究を進めている。具体的に
は、それぞれの研究を当研究所が定義している「第
絶対的な高精度性を必要とする先端計測及び標
1種基礎研究」、「第2種基礎研究」、「製品化研究」の
準化に関する技術の実現に資するために、超伝導
3種類の研究フェーズに位置付けている。
現象の特性を活用した電子計測デバイス及びそれ
を用いた標準システムの確立と普及を行う。
第1種基礎研究は、電子現象に関する革新的シー
ズの創出につながる新発見、新発明、新物質創成な
----------------------------------------------------------------------------
どに関する研究を行うものであり、研究成果として
内部資金
学術的に非常に質の高い研究論文発表が中心となる
ハイテクものづくりプロジェクト/プラスチック基材上
知の創造を目指している。第2種基礎研究は、産業
への可視光透過・熱線反射コーティングの実証
ニーズに答えるための研究である。当部門に関係の
深いエレクトロニクス産業は成熟した産業ではある
ハイテクものづくりプロジェクト/ジーンズをはいて
ものの、現在でも(あるいは以前よりも)極めて技
IC 製造を可能にする密閉化搬送システムの開発
術進展の早い分野であるということを常に意識し、
同一分野の内外の研究機関、競合技術、代替技術と
外部資金
比較したベンチマークによる自己評価とともに、積
経済産業省/戦略的技術開発委託費(ナノエレクトロニ
極的に外部に向けて質の高い成果を発信し、産業界
クス半導体新材料・新構造技術開発)/超低消費電力及
からのフィードバックを得ながら研究開発の方向性
び高ノイズ耐性を実現する新構造 MOS デバイス集積回
を見極めている。製品化研究は、技術移転のための
路技術の研究開発
共同研究や産総研ベンチャーにおける研究に加え、
イノベーションハブとしての役割を担う連携研究体
文部科学省/自己整合型四極子収差補正光学システムの
やコンソーシアムでの研究活動も製品化研究として
開発(産総研テーマ:多段自己整合型球面収差補正光学
捉えており、光・電子 SI 連携研究体、デバイス計
系の開発)
測コンソーシアムおよびファブシステム研究会を運
(186)
産業技術総合研究所
ンネルトランジスタの開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/ス
ピントロニクス不揮発性機能技術プロジェクト
文部科学省/科学研究費補助金/特定/ZnSe 障壁層を
用いたスピン発光素子の開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/希
少金属代替材料開発プロジェクト/透明電極向けインジ
ウム代替材料開発/酸化亜鉛系混晶材料による高性能透
日本学術振興会/(独)日本学術振興会外国人特別研究員
明電極用材料の開発
事業/科学研究費補助金・特別研究員奨励費/多層型銅
酸化物超伝導体におけるキャリア不均衡調節による物性
制御
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/エ
ネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利
用基盤技術先導研究開発/低消費電力プロセッサのため
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/助
の不揮発論理回路基盤技術の開発
成金/国際共同研究助成事業(NEDO グラント)/回路
設計用モデル開発基盤の構築とこれを用いたマルチゲー
ト MOSFET モデルの開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/立
体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発/三
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/助
次元回路再構成可能デバイス技術
成金/国際共同研究助成事業(NEDO グラント)/次世
文部科学省/科学研究費補助金/若手 A/低電圧動作強
代交流電圧標準の開発
誘電体ゲート不揮発 FET 作製プロセスの研究
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/助
成金/酸化物交流電界発光原理の探求と素子開発
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(A)/磁束量
子を利用した量子交流電圧標準の研究
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/助
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(B)/真空紫
成金/移金属酸化物接合の電界誘起抵抗変化効果の機構
外 RDS 測定装置の開発と新チャネル材料上に形成した
解明と不揮発メモリ素子の開発
絶縁膜界面の秩序状態評価/エレクトロニクス研究部門
受託/独立行政法人科学技術振興機構/CREST/Flex
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(B)/磁気円
Power FPGA チップのアーキテクチャ設計、回路設計、
二色性分光法による強磁性半導体の電子構造の解明
試作チップ設計、周辺ソフトウェアの開発
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(B)/最高の
受託/独立行政法人科学技術振興機構/CREST/2次元
臨界温度を示す水銀系高温超伝導体の高品質単結晶育
強相関系への超並列シミュレーションによるアプローチ
成:超伝導機構解明への展開
受託/独立行政法人科学技術振興機構/さきがけ/強磁
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(B)/金属酸
性金属/半導体界面制御によるスピントランジスタの創
化膜/半導体界面におけるダイポール発生機構の解明と
製(さきがけ)
制御
受託/独立行政法人科学技術振興機構/産学共同シーズ
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(B)/高温超
イノベーション/電極を用いない光学的手法による
伝導体の電子状態における酸素同位体効果に関する角度
InGaAs 電子デバイス用結晶評価技術の開発
分解光電子分光研究
受託/独立行政法人科学技術振興機構/戦略的国際科学
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(C)/p 波超
技術協力推進事業/多重秩序材料の情報通信技術への応
伝導体における半整数磁束量子状態の観察
用探索
文部科学省/科学研究費補助金/基盤研究(C)/量子モ
受託/独立行政法人科学技術振興機構/戦略的創造研究
ンテカルロ法および第一原理計算による2次元強相関系
推進事業/鉄系超伝導体の低エネルギー放射光光電子分
の研究
光
文部科学省/科学研究費補助金/特定/MgO-強磁性ト
受託/独立行政法人科学技術振興機構/戦略的創造研究
(187)
研
究
る SRAM への適用を考案した。新提案の Pass-Gate
推進事業/超高圧 NMR/NQR 実験技術の開発
に4端子 XMOSFET を用いた Flex-Pass-Gate-SRAM
受託/独立行政法人科学技術振興機構/戦略的創造研究
の試作に成功し、本回路構成により、読み出し余裕が
推進事業/鉄ヒ素系超伝導体の転移温度決定因子の解明
電源電圧に依らず通常 XMOSFET-SRAM よりも2倍
と物質設計への適用
以上向上することを実証した。さらに、独自に開発し
たコンパクトモデルを用いてアレイレベルでの動作速
度予測も検討し、その優位性を確認した。
受託/独立行政法人科学技術振興機構/戦略的創造研究
推進事業/強磁性絶縁体超薄膜を用いた新規スピントロ
デバイス評価計測グループ
ニクスデバイスの創製
(Analysis and Instrumentation Research Group)
研究グループ長:川手
受託/財団法人埼玉県中小企業振興公社/地域イノベー
悦男
(つくば中央第2)
ション創出研究開発事業/光フロンティア領域を開拓す
概
る次世代光応用システムの開発
要:
研究開発の基本姿勢は、既開発技術を“深化”・発
受託/財団法人岐阜県研究開発財団/地域資源活用型研
展させる中で新技術を開発し、これら既存・新規開発
究開発事業/【地域イノベーション】ゾーン加熱方式に
技術を社会的ニーズへマッチィングさせ、共同研究・
よる美濃和紙の炭化と導電性材料への応用
受託研究・ベンチャー企業への研究協力等を通じて各
種実評価に供すると同時に、達成された成果の普及・
受託/独立行政法人日本学術振興会/角度分解型光電子
産業応用への具体的展開を実施することである。走査
分光による低次元量子系の研究
型プローブ顕微鏡をベースとする測定では、一般に結
果の定性的な解釈は容易であるものの、その定量化は
受託/独立行政法人情報通信研究機構/ICT による安
極めて困難である。局所的な物性値-例えば膜厚や誘
全・安心を実現するためのテラヘルツ波技術の研究開発
電率、あるいは易動度など―を得られれば、微細デバ
イスの特性を最適化する際に大きなメリットとなる。
受託/国立大学法人大阪大学/平成20年度研究拠点形成
そこで外部共同研究からのシミュレーション技術と
費等補助金委託事業/大阪大学博士課程学生および若手
我々の実験系の組み合わせにより、定量解析のための
教員の教育研究支援
基礎検討を行なった。導体プローブと極薄誘電体膜の
間の電界分布を計算し、誘電体膜の誘電率・膜厚、及
発
表:誌上発表242件、口頭発表386件、その他35件
び導体プローブの形状がプローブ-誘電体膜間容量に
----------------------------------------------------------------------------
どのような依存性を示すか調べた。光学スペクトル測
先端シリコンデバイスグループ
定では、従来から標準試料を用いて光学測定系の検査
(Silicon Nanoscale Devices Group)
を行った後、試料のスペクトル測定を行ってきた。標
研究グループ長:昌原
準試料は全ての波長領域で整備されていないことや、
明植
(つくば中央第2)
概
取り扱いの煩雑さのために、産業界からは代替技術の
要:
開発への要望が大きい。産総研で開発してきた STAR
微細化限界を打破できる MOS デバイスとして世界
GEM 光学系は、絶対反射率と透過率を同時に独立に
で認知されている、産総研提案のダブルゲート MOS
同じ精度で測定できる。この特長を利用して『スペク
(XMOS)FET(代表的には FinFET)、および、し
トルの自己診断機能』を開発した。また、ユビキタス
きい値電圧制御可能な新機能を持った4端子駆動型
情報ネットワーク世代電子デバイス用評価計測技術の
XOSFET(4T-XMOSFET)を主体とした XMOS LSI
開発の一環として、「真空内特定領域局所エッチング
基盤技術を確立して産業界での実用化を可能とするた
用プラズマガンに関する共同調査研究」を実施した。
めに、独自性の高い微細 XMOS デバイス技術の開発
と回路設計環境の整備を同時並行的に進めている。
機能集積システムグループ
XMOS プロセス技術では、微細 XMOSFET 作製技
(Microsystems Group)
術および金属ゲート CMOS プロセス技術を構築した。
研究グループ長:金丸
更に、XMOSFET 特性ばらつき要因を包括的に調査
正剛
(つくば中央第2)
し、金属ゲートの仕事関数ばらつきが最大の問題とな
概
ることを世界に先駆け提唱した。
要:
情報通信・エレクトロニクス技術の一層の多様化を
一方、XMOS デバイスの最適なアプリ回路につい
実現するため、情報処理ハードウェアの飛躍的な多機
ても考察を進め、最も早く微細化限界が危惧されてい
能化・システム化を可能にするデバイス技術を確立す
(188)
産業技術総合研究所
るため、シリコンを中心とする半導体技術を基盤とし
不可欠な基盤技術の整備や「微量有害ガスの検出」な
て、新たな材料技術やデバイスプロセス技術を付加す
ど国民の安全・安心に寄与する技術開発をグループの
ることにより、これまでにない機能を有するデバイス
最大目標にしている。液体ヘリウム不要・安価・コン
を開発する。具体的には、高機能フィールドエミッシ
パクトなプ ロ グラマブル ・ ジョセフソ ン 電圧標準
ョンディスプレイの開発を目指す。今年度は1画素に3
(PJVS)開発においては、電圧不確かさ8桁で直流
ヶの TFT を有する FED パネル(0.8インチ24×24画
10 V の発生に成功し、開発したシステムは計量標準
素)パネルの試作に成功した。各画素のメモリー保持
総合センター(NMIJ)、オーストラリア国立標準研
機能が動作することを確認し、1700 cd/m2の輝度での
究所(NMIA)ならびにインドネシア国立標準研究所
パネル点灯を確認した。また、非晶質シリコンフォト
(KIM-LIPI)に導入された。また、NMIJ および
ダイオードと光学干渉フィルターを集積した高感度蛍
NMIA との3者による3年間の国際共同研究「次世代
光検出モジュールを開発し、チップ上でバイオ化学分
交流電圧標準の開発」を完遂し、PJVS と熱電変換を
析を可能にするラボ・オン・チップの実現を目指す。
組み合わせた新しい交流電圧標準実現の鍵となる、二
今年度は、集積型蛍光検出素子の高感度化に向けてバ
相の量子波形を用いた交直変換器の精密評価に成功し
ックグラウンド光電流を1桁低減させるとともに、光
た。総務省プロジェクト「ICT による安全・安心を
源として半導体レーザを実装した検出モジュールを試
実現するためのテラヘルツ波技術の研究開発」に参加
作した。
し、煙・煤・炎等により人が近づき難くかつ赤外光・
可視光での検出が困難な状況における有害ガス濃度の
遠隔計測を目的としたテラヘルツ波分光計の開発を進
高密度 SI 研究グループ
(High Density Interconnection Research Group)
めている。これまでに、広帯域(中心周波数の74%)
研究グループ長:青柳
かつ低雑音(量子雑音限界の20倍以下)の超伝導ミキ
昌宏
サと、これをフォトニック局部発振器で励起し、従来
(つくば中央第2)
概
要:
技術では3バンドを要した200~500 GHz 帯を1バンド
多種類の機能を有する複数の集積回路チップを積層
でカバーするヘテロダイン受信器を液体ヘリウム冷却
実装し、チップ間において50 Gbps 以上の超高速で相
の基で開発し、亜酸化窒素ガスの放射する微弱テラヘ
互に信号伝送可能なシステム機能を実現するため、シ
ルツ波の分光に成功した。
ステムインパッケージ対応の3次元実装技術を開発す
る。3次元実装技術のコア技術として、ポリイミド多
磁束量子デバイスグループ
層配線、微細線路設計、実装構造特性評価、微細ピッ
(Flux-Quantum Devices Group)
チバンプ接合などの研究開発に取り組む。平成20年度
研究グループ長:東海林
彰
(つくば中央第2)
には、電源供給系広帯域インピーダンス測定技術、微
概
細ピッチ高周波プローブ技術、微細円錐金バンプおよ
要:
10ビット D/A 変換器チップを高安定10 MHz クロ
び無電解めっきブリッジ接続によるフリップチップ実
ックで駆動し任意波形を合成するための評価システム
装技術の開発などを進めた。
高速伝送特性評価技術として、40 Gbps 級の波形
を整備した。D/A 変換器チップの出力電圧を誘導分
測定評価技術、25 Gbps 級の評価信号発生技術を構築
圧器で精密増幅するための要素回路を設計、試作し、
した。また、100 MHz級クロック周波数の低電力動
正常動作を確認した。また、回路作製プロセスの高度
作でも50 Gbps 以上の信号伝送容量が確保できる
化のため、外部機関との連携による試作ラインの抜本
1000個以上のシリコン基板貫通ビア電極による超多ビ
的整備に着手した。
ット並列チップ間信号伝送方式を考案するとともに、
マルチコアプロセッサシステムへの応用を検討した。
スピントロニクス研究グループ
(Spintronics Research Group)
超伝導計測デバイスグループ
研究グループ長:湯浅
(Superconducting Devices Group)
研究グループ長:東海林
(つくば中央第2)
彰
概
要:
高性能 MgO トンネル障壁の磁気トンネル接合
(つくば中央第2)
概
新治
要:
(MTJ)素子とスピン注入型書き込み技術を用いた
半導体や磁性体では実現が困難な高精度・高分解
次世代の大容量 MRAM(スピン RAM)や次世代
能・高感度計測を可能とする超伝導計測デバイスを開
HDD 磁気ヘッド(MgO-TMR ヘッド)、マイクロ波
発し、さらにこれらのデバイスを中核とする計測シス
デバイスなどを実現するため、MTJ 素子の更なる高
テムの構築により、「電圧標準」などの産業の発展に
性能化とスピン注入磁化反転の低電流化・高信頼性化
(189)
研
究
1.新鉄系超伝導材料関連の研究
のための研究開発を行う。また、スピントランジスタ
の重要な構成要素である、強磁性金属と磁性半導体を
細野グループは、LaFeAsO の母相の酸素サイト
組み合わせた強磁性トンネルダイオード素子の高性能
をフッ素で10%程度置換して Tc=32K の超伝導を
化のための研究を行う。さらに、不揮発性スピン光機
発見した。それを契機に、世界中で関連物質の探索
能素子の実現を目指した強磁性体/半導体ハイブリッ
が行われた。我々は、フッ素置換の代わりに、酸素
ド光素子の開発を行う。
欠損を高圧合成法により導入して新超伝導物質
量子凝縮物性研究グループ
さらに、LnFeAsO1-y(Ln:ランタノイド)におい
(Condensed Matter Physics Group)
て、仕込みの酸素量、圧力、温度などの合成条件を
研究グループ長:柳澤
最適化し、Ln=La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、
NdFeAsO1-y を発見し、最高 Tc=54K を実現した。
孝
Dy の 高 品 質 試 料 の 合 成 に 成 功 す る と と も に 、
(つくば中央第2)
概
要:
Ln=Nd、Sm、Gd、Tb、Dy で、Tc=52~54K とな
世界的に最高レベルにある極限環境下における単結
ることを示した。また、高圧下で P の蒸発を抑制
晶育成技術および高精度測定技術により、新量子現象
して、BaNi2P2の高品質単結晶を育成した。これら
の発見および解明を行うと共にそれら基礎科学の成果
の高品質多結晶・単結晶を、中性子/X 線による結
を最先端の革新的デバイス技術まで持ち上げることを
晶構造解析、高圧下での輸送特性、核磁気 共鳴
目標とした研究を行った。これらの高い技術を基にし
(NMR)、ドハース・ファンアルフェン効果などの
て、極低温高精度測定機器や高純度結晶育成装置を製
実験に提供し、数多くの鉄系の物性解明に貢献した。
品化した。特に、10のマイナス30乗の酸素分圧まで動
特に、中性子散乱による結晶構造解析により、結晶
作可能な極低酸素分圧下単結晶育成装置を開発し、こ
構造中の鉄ヒ素四面体が、正四面体に近づく程 Tc
れを製品化して共同研究先企業より販売が開始された。
が高くなる傾向を世界に先駆けて示したことは、大
また、第一原理計算、モンテカルロシミュレーション
きなインパクトがあった。
を含む高度シミュレーション技術により新機能材料、
2.渦糸分子・位相差ソリトンの物理
新超伝導材料の開発、高伝導メカニズムの解明および
多バンド超伝導で起きる新しい量子位相幾何学の
エレクトロニクス技術への応用をめざした研究を行っ
研究を進め、次の2つの成果をあげた。(1)渦糸分子
た。鉄ヒ素系の新超伝導体のバンド構造を計算し、バ
格子の相図。渦糸分子格子のダイナミクスという新
ンドパラメーターに対する状態密度の依存性を明らか
概念を提出。渦糸分子の密度を外部磁場の増加によ
にした。理論的および第一原理計算により高温超伝導、
って制御すると、回転状態から、回転の臨界減速、
磁気秩序近くの非 BCS 的超伝導の研究を行った。モ
配向ガラス状態、配向状態、ポリマー状態へ変化す
ンテカルロ法による計算等により世界最大サイズの格
ることを理論的に示すとともに、臨界減速によると
子において数値計算を行い、高温超伝導体の相図を明
考えられる信号を交流帯磁率に見出した。(2)分数
らかにした。当グループで開発したオリジナル装置で
量子渦が、位相差ソリトンとの幾何学的相互作用に
ある単結晶育成炉の技術を応用することにより、アス
よって、多バンド超伝導体の渦糸が非アーベル的統
ベスト等の有害物質を溶融し無害化に応用できること
計性に従うことを理論的に示した。この統計は超伝
を明らかにした。
導直下で実現していると考えられる。
超伝導材料グループ
低温物理グループ
(Superconducting Materials Group)
(Low-temperature Physics Research Group)
研究グループ長:伊豫
研究グループ長:柏谷
彰
(つくば中央第2)
概
聡
(つくば中央第2)
要:
概
要:
超伝導材料に関する研究を推進している。近年は、
銅酸化物超伝導を含む新超伝導体に関する結晶成長
多層型銅酸化物高温超伝導体における新現象の発見と
技術を高度発展させ、高度物性測定技術と連携を取る
その理解および新超伝導材料の発見および超伝導転移
ことにより新超伝導体の物性を明らかにし、銅酸化物
温度(Tc)の向上を目的として研究を行っている。
超伝導の超伝導発現機構や応用可能性を明らかにする。
平成20年度は、2008年2月に東工大の細野グループが
(1) 鉄ヒ素系超伝導体において、高圧合成により新材
発見した新鉄系超伝導物質関連の研究および多層型高
料の開発した。またその結晶の評価を行い、基礎的
温超伝導体をはじめとする多バンド超伝導体において
な輸送特性の解析と Tc を高めるための要因を追求
生じる渦糸分子・位相差ソリトンの物理に関する研究
した。
を行った。主な研究成果を下記に示す。
(2) 多層系超伝導体の基礎物性を解明するために、単
(190)
産業技術総合研究所
結晶の X 線回折による構造解析の高精度化を行い、
研究グループ長:酒井
滋樹
(つくば中央第2)
マーデルングポテンシャルの解析により、ホール分
概
布に関する知見を得た。
要:
(3) 1層系超伝導 Bi2Sr2CuO6+ δ 系の単結晶を用いて
当該年度は、フロンティアデバイス化技術の研究を
高品質な固有ジョセフソン接合を作成し、量子ダイ
行った。超伝導素子から放射される電磁波のミクロな
ナミクスの観察を試みた。その結果、極低温領域で
検出を目的に研究を開始したミリ波走査型顕微鏡顕微
の熱活性からマクロな量子トンネル(MQT)への
鏡を IC カード観察に適用した。SUICA カード内部
転移と、MQT 温度領域での接合間の相互作用に起
の2次元像を分解能1 mm で得ることに成功しただけ
因すると考えられる協力的スイッチング現象の観察
でなくカード内部の3次元情報も観察できた。この顕
に成功した。
微鏡のミリ波電磁波検出をダイオードからジョセフソ
(4) またカイラル p 波超伝導体 Sr2RuO4の微小デバ
ン素子に変えることにより電磁波の波長情報の取得も
イスの開発を行い、バルク結晶からマイクロサイズ
期待できるので、バイクリスタル基板に YBCO 薄膜
のデバイス作成を行う技術を確立した。実際に弱結
を形成しジョセフソン接合素子の試作を開始した。固
合型のジョセフソン素子を作成し、輸送特性を評価
有ジョセフソン接合はテラヘルツの電磁波の放射が期
した結果、カイラルドメイン運動に基づく新しいス
待され、これを用いた超伝導聴講しの研究を継続して
イッチング現象の観察に成功した。
行っている。結晶化前の BSCCO 薄膜上に Ag を薄く
カバーして熱処理すると薄膜 BSCCO 単結晶のグレ
ンサイズを大きくできることを見出し、その上に作製
機能性酸化物グループ
(Oxide Electronics Group)
した数ミクロン角のメサ構造が超伝導超格子(固有ジ
研究グループ長:阪東
ョセフソン接合)特性を示すことも確認した。固有ジ
寛
ョセフソン接合用の BSCCO 薄膜の作製技術を従来
(つくば中央第2)
概
要:
の MBE 法から PLD(パルスレーザ堆積)法に根本
シースルーエレクトロニクス技術の基盤確立をめざ
的に変える研究も開始した。BSCCO 薄膜の元素組成
して、透明酸化物半導体の薄膜、接合を形成する技術
の制御が重要であり MBE 法はこの制御に優れていた
の開発を進めると同時に、高導電性酸化物、透明酸化
が製膜の速度が遅いため必ずしも素子作製に適さない
物半導体、非鉛系圧電体など、機能性酸化物の物質開
という課題があった。PLD 法でも元素組成の制御が
発をすすめた。薄膜接合形成にはレーザーアブレーシ
可能との見通しを得るに至っている。さらに、積層数
ョン法等を、物質開発における単結晶育成にはフロー
6から10の円環固有接合のシミュレーションを行い、
ティングゾーン法、物性発現機構の解析には角度分解
強い電磁波放射に対応した位相がそろったモードが確
光電子分光法をはじめとする研究手段を用いた。透明
かに起こることを確認した。
酸化物半導体薄膜を用いた省エネ高機能ガラス実現の
ため、新規材料および膜形成プロセスの改良により日
エレクトロインフォマティクスグループ
射熱遮断性能の向上を図った。10層未満の機能多層膜
(Electroinformatics Group)
により日射に対して熱線エネルギー反射率80%と可視
研究グループ長:小池
帆平
(つくば中央第2)
光エネルギー透過率70%以上を両立する機能ガラスを
概
開発した。成膜プロセスの低温化によりプラスチック
要:
を基材とする日射熱反射シートを試作した。銅酸化物
エレクトロインフォマティックスグループは、エレ
高温超伝導体 Bi2Sr2CaCu2O8+の電子構造の酸素同位
クトロニクス技術の提供するシーズと情報処理技術か
体置換効果を角度分解光電子分光測定により調べ、最
らのニーズとを垂直統合的に分野融合させ、新たな付
適キャリア濃度域において電子格子相互作用の直接的
加価値を有し、新規市場開拓が可能な未知の電子情報
証拠を実験、理論の両面から示した。また、単層 Bi
技術の創出を目指して設立された研究グループである。
系超伝導体において酸素同位体効果が存在することを
現在の研 究 テーマとし て 、産総研で 開 発された
示した。環境に優しく高性能な酸化物圧電体の開発を
XMOS トランジスタを軸として、関連した様々な技
進め、(Na, K)NbO3に添加物を導入した非鉛圧電セ
術階層の研究開発を統合的に進めている。
ラミックスにおいて圧電特性への添加元素の効果を調
具体的な研究テーマとして:
べた結果、設計指針として結晶系が同じ鉛系圧電体と
(1) XMOS トランジスタの回路シミュレーション用
デバイスモデルの研究、
の類似性を見出した。
(2) XMOS トランジスタの特長を効果的に活用した
回路技術 XDXMOS(Cross Drive XMOS)の研究、
フロンティアデバイスグループ
(3) XMOS トランジスタのキラーアプリケーション
(Novel Electron Devices Group)
(191)
研
究
となる Flex Power FPGA の研究、
徴的な物性が現われる。その多彩な相競合を活用して、
電子相の間に機能的に重要な臨界状態を生成するとと
が現在進行している。
もに、それを制御する手法を開発する。試料作製技術
強相関界面機能グループ
に基づく強相関物質の開拓、相制御技術・極限環境生
(Correlated Electron Heterointerfaces Group)
成技術に基づく新しい電子相や量子臨界異常の探索・
研究グループ長:澤
原理探究の研究を行う。強相関エレクトロニクスの基
彰仁
盤となる相制御材料を開発するとともに、それらの物
(つくば中央第4)
概
要:
性制御による電子機能を開拓し、巨大応答などの革新
シリコンテクノロジーの微細化限界が近づく中、新
的シーズを創出することを目指す。鉄を含む新規超伝
材料の導入により性能を高めることで微細化と等価な
導体の原理探究、RRAM の原理探究、強相関材料の
効果を得ることが検討されている。当グループは、新
開拓、実験技術の開発などを主な研究対象とする。
材料の候補の一つである強相関酸化物の人工格子やヘ
----------------------------------------------------------------------------
テロ接合界面の新機能を創製し、それを利用した先端
[テーマ題目1]XMOS デバイス研究
機能デバイスの開発を目指している。具体的には、
[研究代表者]昌原
明植
(先端シリコンデバイスグループ)
(1)異なるスピン自由度や電子軌道自由度を持つ物質
[研究担当者]柳
を原子平坦面でつなぎ合わせた超格子やヘテロ界面の
永勛、原
史朗、遠藤
作製、(2)電荷移動やスピン・電荷交差相関現象など
松川
貴、大内
の強相関界面特性の解明、(3)強相関界面の電界スピ
塚田
順一、石川
和彦、
真一、石井
賢一、
由紀、山内
洋美
(常勤職員6名、他4名)
ン反転、磁気分極反転、電界誘起抵抗変化現象などを
[研 究 内 容]
利用した先端機能デバイスの開発、(4)高性能スピン
偏極走査型電子顕微鏡を活用した表面・界面磁気相の
産総研発ダブルゲート MOS(XMOS)デバイスの実
直接解析技術の開発などを行っている。これらの研究
用化を目指し、当研究部門の最重点課題の一つとして鋭
テーマにおいて、当該年度は下記の成果が得られた。
意研究開発を進めている。その結果、これまでに8件の
(1) 電子ドープした CaMnO3 薄膜・超格子作製に取
IEDM を始めとする著名な国際会議に継続的に論文発表
り組み、特殊な格子整合基板を用いることより金属
を行うと共に、数多くの国際会議招待講演を受けるよう
伝導薄膜の作製に成功し、また相競合による新奇な
になり、代表的な次世代シリコンデバイス研究拠点とし
巨大磁気抵抗効果を見出した。
て当グループは認知されている。これまでに、イオン照
(2) n 型半導体 SrTiO3および p 型半導体(Pr, Ca)
射減速エッチング、結晶方位依存ウエットエッチング、
MnO3を用いた抵抗スイッチング素子を酸素雰囲気
中性粒子ビームエッチングなどの独自のプロセス技術、
中でアニールした際の特性変化を詳細に調べ、界面
ならびに微細ゲート加工技術、ソースドレイン低抵抗化
近傍における酸素欠陥密度の変化が抵抗状態を決定
技術、メタルゲート技術、等の CMOS 基盤技術の開発
する要因であることを明らかにし、抵抗変化は電圧
を終え、実用化の前提となる、XMOS CMOS 回路によ
印加による酸化物中の酸素欠陥の移動が起源である
る独自の回路機能を実証する研究段階に駒を進めている。
今年度は、従来より進めているメタルゲート技術の更
と同定した。
(3) スピン偏極 SEM の真空槽内において、酸素欠損
なる高度化を図った。具体的には、LSTP 用に最適なミ
などを引き起こさずに酸化物表面の吸着汚染を分解
ッドギャップメタルゲートとして取り上げている TiN ゲ
するための新技術を開発し、薄膜酸化物の最表面ス
ートプロセスの更なる安定化を目指した。結果として、
ピン信号の検出に成功した。開発した技術を用いる
窒素流量比で閾値電圧がある程度制御できること、対称
ことにより、La-Sr-Mn-O を含む薄膜酸化物に形成
性のよい CMOS 特性が得られることを確認した。一方、
された新しいナノスケールスピン構造の発見し、そ
LOP 用などの高い電流駆動力を要する回路用途として開
の起源を解明した。
発を進めている Ta/Mo 積層メタルゲートでは、デュア
ルメタルゲート CMOS プロセスを確立し、結果として、
強相関物性制御研究グループ
n/pMOS 共に|0.2|V 程度のしきい値を実現した。また、
(Correlated Electron Engineering Research Group)
本研究を推進するに当たり、メタルゲート微細化に必須
研究グループ長:伊藤
の半導体作製装置として、等方性メタルエッチャーを導
利充
入した。当該装置により微細メタルゲート試作を進めて
(つくば中央第4)
概
いるところである。
要:
強相関電子系は電子間に強い相互作用が働くために、
さ ら に 上 記 TiN 、 Mo 、 Ta/Mo ゲ ー ト 材 を 用 い た
集団で状態を変えて多彩な状態(電子相)が出現する。
XMOSFET の特性ばらつき要因を包括的に調査し、その
そこでは、スピン‐電荷‐軌道の自由度に起因する特
結果、ゲート金属材料の実効仕事関数ばらつきが主要因
(192)
産業技術総合研究所
であることを世界に先駆け提唱した。XMOSFET のソー
実証実験をともに行った金属・半導体ハイブリッド光デ
ス・ドレイン寄生抵抗のばらつきの解析にも着手し、
バイス(基本特許出願)に関しても、世界的な開発競争
Fin チャネル厚ばらつきが、極めて大きな寄生抵抗ばら
が始まっている。これらのスピントロニクス素子の実用
つきをもたらすこと、更にソース・ドレイン形成条件の
化で日本が世界に先んじるために、産総研を研究拠点と
最適化によりばらつき低減が可能であることを明らかに
して産官学が連携して研究開発を行う。平成20年度は以
した。
下のような研究成果を得た。
また、当該 XMOSFET 作製プロセスへの High-k ゲー
(1) 高集積スピン RAM を開発するためには MgO トン
ト絶縁膜成膜プロセス導入を行い、High-k ゲート材料
ネル障壁層を有する磁気トンネル接合素子(MTJ 素
(具体的には HfO2膜)が導入された XMOSFET-SRAM
子)において低電流でスピン注入磁化反転を実現し、
試作に成功した。さらに、ゲート長20 nm 実現に向け、
かつ、高い熱安定性を確保することが必須となる。そ
EB リソグラフィを用いたレジスト加工プロセスの高度
のために面内系 MTJ 素子において強磁性体/Ru/強
化を進め、これまでに、40 nm ゲート長 XMOSFET 作
磁性体からなる積層構造フリー層をもつ素子が提案さ
製に成功した。
れている。平成20年度はこの素子において積層構造お
一方、XMOS デバイス実用において最大の課題ともい
よび磁気特性とスイッチング特性の関係を詳しく調べ
える大規模回路設計環境整備も積極的に進めた。具体的
べた。その結果、積層フリー層を用いた MTJ のスイ
には、当研究部門エレクトロインフォマティクスグルー
ッチング電流、熱擾乱耐性については、未解明の部分
プとの連携により XMOSFET デバイスモデルを構築し、
が多く残されていた。これに対して、我々は系統的な
さらに、XMOSFET 測定データからのパラメータ抽出手
実験を行い、明確な結論を得た。すなわち、平行結合
法および特性ばらつきを抽出する手法を確立した。また、
した場合、最も高い熱擾乱耐性を示す。さらに、より
該デバイスモデルの商用 SPICE への実装にも成功した。
高い熱擾乱耐性を実現するための指針を得ることがで
結果、大規模 XMOSFET 回路シミュレーションが可能
きた。
(2) 高集積スピン RAM 実用化の一つの方策として、垂
となった。
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
直磁化配向膜 を用いたメモリ素子の実現がある。今
[キーワード]XMOS デバイス、4T-XMOSFET、
年度は材料探索の一環として、これまでの L10型系と
CMOS 化、メタルゲート、FinFET
は全く異なる hcp 系垂直薄膜の開発を行った。その
結果、極めて満足なレベルの研究成果をあげた。他の
[テーマ題目2]スピントロニクス技術の研究
競合グループでは注目されなかった hcp(001)fcc
[研究代表者]湯浅
(111)配向系の垂直薄膜に着目し材料および成膜方
新治
(スピントロニクス研究グループ)
[研究担当者]安藤
久保田
功兒、湯浅
斎藤
新治、福島
均、V.Zayets、長浜
秀和、薬師寺
り(111)配向人工格子を形成することで、ほとんど
太郎、
啓、家形
J. C. Le Breton、森山
法の探索を行った。スパッタ法単原子層交互積層とよ
章雄、
の特性において既存垂直薄膜を凌駕する性能が得られ
諭、
た(特許出願準備中)。本年度は実験に集中したため
浩司、
悦子、関
英文国際誌への発表が出来なかったが、(株)東芝へ
山本
美恵、臼田
杉原
敦(常勤職員8名、他7名)
プロセス技術の移転を行うなど NEDO Pj の研究には
貴之、
大きな進展をもたらすことができた。
[研 究 内 容]
(3) スピン注入磁化反転現象において、電流に対する反
当研究部門が独自に開発した金属と半導体中の電子ス
転確率の振る舞いを明らかにする。電流により反転事
ピ ン 制 御 技 術 ( ス ピ ン ト ロ ニ ク ス )、 特 に 、 MgO 系
象の発生確率がコントロール出来ることを利用し、自
MTJ 素子、および半導体系磁気光学デバイス、室温磁
然乱数発生器の開発を行った。その結果、産総研のベ
性半導体などの研究開発を更に加速し、高度な情報発
ンチャータスクフォースを活用し、磁気抵抗素子のス
生・伝達・処理・蓄積機能を有する次世代の電子・光デ
ピン注入磁化反転を用いた乱数発生器の開発を行った。
バイス技術を開発する。不揮発性機能と非相反性機能に
乱数生成用 MgO-MTJ 素子(ゼロ磁場で二値をとる
絞った研究開発を進め、スピン注入技術、電気的・光学
こと、反転電流がそろっていること)の作成、および
的機能の開発・実証を行う。
それを用いた乱数生成プロトタイプの作成を行い、タ
これまで、トンネル障壁に MgO を用いた高性能 TMR
スクフォース成果発表会で報告(通常2年目で行うも
素子の開発に世界で初めて成功し、その量産プロセスの
の)およびデモンストレーションを行うことができた。
開発にも成功した。既に次世代の MRAM やハードディ
(4) 今年度は、我々が提案しているバイポーラ型スピン
スク磁気ヘッドの開発の主流は MgO 系 MTJ 素子に完
トランジスタの情報記憶部を担う、狭ギャップ強磁性
全に移行しており、日米欧アジア各国を中心に熾烈な開
半導体 InMnAs を用いた Fe/ZnSe/(In、Mn)As 強
発競争が始まっている。また、当研究部門が理論提案と
磁性トンネルダイオード素子を開発した。その結果、
(193)
研
究
Fe/ZnSe/(In、Mn)As において TMR 効果の観測に
[分
成功した。これは犠ギャップ系磁性半導体を用いたト
[キーワード]極低酸素分圧制御技術、新機能物質、結
ンネル素子としては世界で初めての報告である。さら
晶育成、低温計測技術、高温材料、高導
に、同素子を用いたトンネル分光より、s 電子-d スピ
電性材料、アスベスト、溶融無害化
野
名]情報通信・エレクトロニクス
ン間の相互作用が反強磁性結合であることを明らかに
した。
[テーマ題目4]パワー・リコンフィギャラブル機能を
(5) MBE 成長を用いて、単結晶 MgO(001)トンネル
有する Flex Power FPGA の開発
障壁を持つ全エピタキシャル MTJ 素子を作製し、巨
[研究代表者]小池
大 TMR 効果の基礎物理の解明と室温 MR 比の増大を
帆平(エレクトロインフォマティ
クスグループ)
目指した。その結果、単結晶 MgO(001)トンネル
[研究担当者]小池
障壁を持つ全エピタキシャル MTJ 素子において、障
中川
格、関川
壁/電極界面に種々の電子状態を持つ異種金属超薄膜
松本
洋平(常勤職員4名、他3名)
を挿入し、トンネル特性と界面電子状態の関係を明ら
帆平、日置
雅和、河並
敏弘、堤
崇、
利幸、
[研 究 内 容]
4端子 XMOS の持つ電気的なしきい値調整機能の実
かにすることによってスピン偏極トンネル電子の散乱
過程を解明した。
現という特長を巧妙かつ有効に活用し、XMOS トラン
(6) エピタキシャル MgO トンネル素子ではこれまで試
ジスタの画期的なキラーアプリケーションとなることを
みられた例がないスピントルクマイクロ波発振の実験
目 標 と し た チ ッ プ と し て Flex Power FPGA
を行った。その結果、パリ南大学との共同で、単結晶
((FP)2GA)チップの研究を行っている。
MgO トンネル障壁と単結晶 Fe 電極を組み合わせた
Flex Power FPGA((FP)2GA)は、近年利用者の拡
エピタキシャル MTJ 素子を用いたスピントルク誘起
大に伴い市場が急速に拡大しつつあるリコンフィギュア
マイクロ波発振に世界で初めて成功し、同現象の物理
ラブル LSI である FPGA(再構成可能ゲートアレイ)
機構解明のための有用な知見を得た。
の基本的な構成要素である論理ブロック回路を XMOS
[分
野
名]情報通信・エレクトロニクス
トランジスタで構成し、回路の各部分のしきい値電圧の
[キーワード]スピントロニクス、TMR 効果、MRAM、
調節を可能として、高速性と低消費電力性を両立させる
ことを可能とした FPGA であり、動作速度と消費電力
HDD
という FPGA の最大の問題点を解決することのできる
[テーマ題目3]結晶育成技術および極低温計測技術の
ものである。
平成20年度は、改良した Flex Power FPGA 試作チッ
開発および新機能物質の創成
[研究代表者]柳澤
孝(量子凝縮物性グループ)
プ の 開 発 を 行 う と と も に 、 Flex Power FPGA 用 の
[研究担当者]柳澤
孝、白川
CAD フローを完成させ、ハードウェア記述言語で記述
池田
伸一、吉田
直樹、長谷
泉、
良行
されたベンチマーク回路を論理合成/配置配線して作成
(常勤職員5名)
した回路データを試作チップに書き込み、目標どおりの
[研 究 内 容]
動作を確認することに成功した。
極低酸素分圧10のマイナス32乗を達成した酸素分圧技
[分
術をよりパワーアップした。この技術を基にした酸素ポ
野
名]情報通信・エレクトロニクス
[キーワード]FPGA、リコンフィギュアラブル、低消
ンプを試作し、共同研究先の企業キャノンマシナリーよ
費電力、しきい値調節
り製品の販売を開始した。
SQUID 磁束計と3He 冷却を組み合わせたシステムを
[テーマ題目5]XMOS トランジスタのデバイスモデ
構成し、温度が450 mK までの高感度磁化測定を実現す
ルの研究
る計測技術を開発してきた。この技術により磁化測定用
[研究代表者]小池
全自動ヘリウム3冷凍システム iHelium3を開発し、ベン
帆平(エレクトロインフォマティ
クスグループ)
チャー企業アイカンタム社より製品化し、販売してきた。
今年度より、アイカンタムは Quantum Design 社の子
[研究担当者]小池
堤
会社となり、iHeliume3は Quantum Design 社より販売
帆平、中川
格、関川
敏弘、
利幸(常勤職員2名、他2名)
[研 究 内 容]
されることになった。マックスプランクをはじめとして
回路技術の研究においては、回路の複雑な振る舞いを
国内外の多数の研究機関に納入実績をあげた。
計算機に計算させる回路シミュレータが極めて重要なツ
当グループオリジナルの単結晶育成装置により、アス
ールとなり、XMOS トランジスタのような新しいデバ
ベスト等の有害物質を溶融し無害化できることを明らか
イスを用いた回路のシミュレーションを行うためには、
にした。広範囲のアスベストを溶融できるよう、実用化
そのようなデバイスの振る舞いを記述したデバイスモデ
に向けて単結晶育成装置を改良中である。
ルを新たに開発する必要がある。そのような XMOS ト
(194)
産業技術総合研究所
ランジスタのデバイスモデルの提供は、XMOS トラン
子臨界点近傍で増強される異常物性の探索の目的で、
ジスタ技術を産業界に技術移転するにあたっても必須と
鉄系超伝導体の母物質に対して超高圧力を印加するこ
考えられる。本テーマでは、このような XMOS トラン
とにより、超伝導を発現させることに成功した。また、
ジスタのデバイスモデルの開発を行っている。
鉄系超伝導体に超高圧を印加することによって超伝導
平成20年度は、XMOS トランジスタデバイスモデル
転移温度を大きく変化させることにも成功し、超高圧
の実用化を目指して、次世代 MOS モデル候補の一つと
下の結晶構造の変化と密接に関係することを明らかに
して有名な HiSIM を開発した広島大学研究グループと
した。このことは、結晶構造の最適化により超伝導転
の共同研究の一環として、様々な回路シミュレータへの
移温度を上昇できる可能性を示す。鉄系超伝導体やそ
移植の容易な、Verilog-A 言語を用いて記述して開発し
の関連物質である BaNi2P2に対して精密な磁気輸送特
たデバイスモデルを改良し、デバイス研究への実応用を
性を評価することにより、多バンド的な振る舞いが観
実現した。
測され、多バンド性が超伝導に寄与している可能性を
[分
名]情報通信・エレクトロニクス
明らかにした。理化学研究所や東京大学など所内外を
[キーワード]MOS トランジスタデバイスモデル、回
対象に、量子臨界現象などに関する超高圧力実験の共
野
路シミュレーション
同研究を受け入れた。小型キュービックアンビル装置
に適したガスケットの検討を行った。
[テーマ題目6]強相関電子系の物性制御に関する研究
[分
[研究代表者]伊藤
[キーワード]強相関電子系、ペロブスカイト型マンガ
利充
(強相関物性制御研究グループ)
[研究担当者]伊藤
利充、富岡
竹下
直、冨田
中島
正道、山崎
泰秀、井上
仁、石田
名]情報通信・エレクトロニクス
ン酸化物、良質単結晶、電荷/軌道整列、
公、
電子相図、熱磁気材料、構造相転移型変
茂之、
岳洋、平山
野
形材料、界面抵抗スイッチングデバイス
憲史
(RRAM)、電界効果、量子臨界点、鉄
(常勤職員4名、他5名)
系超伝導、超高圧、磁気輸送特性
[研 究 内 容]
(1) 物性制御のための強相関電子系材料を探索する目的
[テーマ題目7]新量子現象の発見および解明
で、以下の研究を行った。フローティング・ゾーン法
[研究代表者]柳澤
孝(量子凝縮物性グループ)
に よ っ て ペ ロ ブ ス カ イ ト 型 マ ン ガ ン 酸 化 物 RE1-
[研究担当者]柳澤
孝、白川
xSrxMnO3 の良質単結晶を作製し、x=2/3近傍で電荷
池田
/軌道整列相の現れることを X 線回折によって初め
(常勤職員5名)
伸一、吉田
直樹、長谷
泉、
良行
[研 究 内 容]
て明らかにした。層状反強磁性相との競合およびその
競合に対する系の乱れの効果について明らかにした。
Bi2212型銅酸化物高温超伝導体の世界最大級の大型単
x を精密に制御することによる詳細な研究を基に電子
結晶育成に