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アジア発
シリーズ「アジアほっつき歩る記」第16回
マニラ 出稼ぎ労働者が支える経済成長
須賀 努
コラムニスト・アジアンウオッチャー
フィリピンというと何となく「怖い国」というイ
メージが付き纏い、何度も訪れている人がいる一
方、初めて行く場合は少しハードルが高い。今回は
経済好調と伝えられるマニラを初めて歩いて見た。
マニラは危険なのか
筆者はここ2年、アジア各国をほっつき歩いてい
写真1 マニラを走る庶民の足 ジプニー
るが、旅慣れたせいか危ない目に遭うことは殆どな
滞がひどい。その連なる車を眺めていると目に付く
かった。だが今回はマニラ在住日本人から「危険だ
のは日本車。10台中7台がトヨタということもある
から無暗に歩き回るな」
「公共交通機関には乗る
ほど、圧倒的なシェアを持つ。三菱、本田、日産も
な」
「チャイナタウンには行くな」などという、こ
続いており、そのプレゼンスは高い。勿論中古車も
ちらが「飯の食い上げ」になりそうなアドバイスを
あるが、新車が目立つところにフィリピン経済の好
多数頂戴してしまった。マニラでは日本人観光客が
調さが伺われる。他のアジアでは強い韓国勢も携帯
スリ、強盗に日常的に遭っているというのだ。
など日本勢が出ていない分野以外あまり姿を見ない。
実際にはマニラ市内に入り、5日間庶民の足であ
フィリピンは親日国の上に、日本企業との密接度が
るジプニーを乗り回し、電車・バス・タクシーにも
アジアの中でも断トツ。貿易相手国でも日本が№1。
乗り、チャイナタウンやイスラム街なども歩いて見
昨年の尖閣問題以降、日本企業の中国投資見直し
たが、特に危険は感じられなかった。寧ろ英語が通
に合わせて、マニラにも多くの企業が視察に訪れ、
じ、表示にも英語があることから、比較的街歩きは
投資も進んでいると聞く。ただ投資の主体は既に進
容易であった。表現としては「言葉の通じるバン
出した企業の工場拡張などという話もあり、初めて
コック」という印象。ただ筆者の場合、10人以上の
進出する企業にはそれなりにハードルはある。尚今
フィリピン人から道を聞かれるなど、どうやらフィ
後はこれまでの製造業に加え、内需の伸びに合わせ
リピン人にかなり似ているようなので、問題はな
て外食産業やコンビニなどサービス業などが進出す
かったとも言える。まだまだ貧しい人も多いマニ
ると予想される。
ラ、如何にもお金を持っていそうに見える格好の一
その昔の商社支店長誘拐事件の影響か、大手企業
般旅行者・出張者は注意するに越したことはない。
の駐在員は社有車でしか行動しないなど、フィリピ
ン人との間には壁が存在している。日本企業が本当
日本企業のプレゼンスは高い
の意味でどんどん進出していくためには、
「この危
そんなマニラではあるが、空港から街に入ると渋
険」
なイメージを払しょくしなければならないだろう。
日経研月報 2013.7
【須賀努氏のプロフィール】
東京外語大中国語科卒。
金融機関で上海留学、台湾2年、香港通算9年、北京同5年の
駐在を経験。
現在は中国を中心に東南アジアを広くカバーし、コラムの執筆
活動に取り組む。
マニラ
フィリピン
撮影:佐渡多真子
経済は好調だが
敬虔なカトリック国であるフィリピンは人工中絶
を許さないこともあり、人口増加が顕著である。既
業が無い中、数年後はどうなるのか。ある専門家は
「フィリピンの優位性は安価で英語の出来る労働
力」と酷評し、先行きに懸念を示している。
に9400万人以上の人口を抱え、今後も増加が予想さ
れている。中産階級と目される月収1000米ドル以上
フィリピンはアメリカ陣営
の収入を得ているのは、全人口のわずか15%。この
マニラで華人の活動状況を眺めてみた。ゴゴンウ
富の偏在が著しいことがフィリピンの特徴と言える。
エイ、SM という巨大ショッピングモールを経営す
2012年、フィリピンの GDP 成長率は6.6%と好調
るヘンリー・シー、フィリピン航空のルシオ・タン
だ っ た。 そ の 要 因 を 尋 ね る と「OFW(Overseas
など、華人が経済の半数以上を牛耳っている様子が
Filipino Workers)からの送金が過去最高214億米
見える。
ドルになったから」と言われて、戸惑う。OFW と
フィリピン華人の活躍は目に付くのだが、中国大
はいわゆる海外出稼ぎ者であり、人口の10%を占め
陸からの投資は殆ど見えてこない。地理的に近いこ
る人々の海外就労による稼ぎが国を支えていると聞
と、元々華人の殆どが福建系であることから、台湾
くとちょっとイメージが崩れる。貧しい家庭への仕
の進出は所々に見られるが、他の東南アジアのよう
送りは消費に直結するので経済効果は大きい。大型
に中国のプレゼンスが増している様子が無い。フィ
のショッピングモールが次々に出来、不動産開発も
リピン華人も「我々は中国人ではなく、フィリピン
活発になっているが、
「外資の投資はあまりなく、
人だ」とバンコックの華人同様、既に地元に溶け込
地元資本でカネを回しているだけ。地元財閥は不動
んでいることを強調する。
産価格が下がらないように努力している」との声も
「中国側から見れば、フィリピンも沖縄もアメリ
聞こえてくる。
カ陣営なんだよ」とあるフィリピン人は言い切る。
それでも格付け機関による投資格付けが投資適格
アメリカの統治下にあり、米軍基地もあったフィリ
(トリプルB)に格上げされるなど、国際的にフィ
ピンは当然アメリカの影響が強い。更に南沙諸島の
リピン経済の向上は認知されている。問題は支柱産
問題などもあり、中国企業も対フィリピン投資には
慎重にならざるを得ないようだ。政治問題が拡大す
れば資産の差し押さえなど、何が起こるか分からな
い。この辺りの政治的リスクに中国企業は非常に敏
感だ。
ともあれ現状好調なフィリピンだが、今後の動向
には政治的にも経済的にも微妙な問題が多い。ただ
写真2 マニラの巨大ショッピングモールに出店する
ユニクロ
個人的にはこれだけの親日国、何とか生かせないも
のだろうか、と思ってしまうのだが。
日経研月報 2013.7
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