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ホブによるマイクロギヤの精密歯切り加工

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ホブによるマイクロギヤの精密歯切り加工
Technical Report / OGASAWARA R&D
日刊工業新聞社発行『機械技術』2011 年 11 月号「特集 進展する精密微細加工技術」に掲載
ホブによるマイクロギヤの精密歯切り加工
株式会社 小笠原プレシジョンラボラトリー 前田憲次
開発部研究開発課 課長 〒258-0113 神奈川県足柄上郡山北町山北 3819 TEL 0465-75-1510
はじめに
近年、情報・医療・ロボットなどの産業機器が小型化へ
進む傾向があり、それらの構成部品として組み込まれるア
クチュエータも様々な分野でマイクロ化が進められてい
る。マイクロギヤを用いた小型減速機は、各機関で研究が
進められており、既にφ1.5mm 以下のギヤードモータま
で開発しているところもある。
様々な微小機構の動力になり得る電磁モータは、微小な
図1 一般的なホブカッタ
領域では質量効果が減少し容易に高速回転が得られる反
面、発生トルクは低下する。小型で高トルクの動力を得る
である。ホブカッタは、円筒体に切刃がネジ状に配置され
には、減速機は不可欠であり、マイクロギヤによる減速機
た回転切削工具である(図1)
。ホブカッタによる歯切り
は、実績と信頼性からもっとも有力な機械要素と言える。
は、歯車にねじをかみ合わせる要領で、ホブを歯車のブラ
小型歯車減速機に求められる性能は、小サイズ化、高減
ンク材と回転同期させ、歯車の歯形を成形させる創成切削
速比、高効率、高強度伝達、高信頼性、省バックラッシ、
加工である(図2)
。主要な産業界で用いられるほとんど
低騒音化が挙げられ、これらの性能を実現する為には、高
の歯車はインボリュート歯車で、インボリュートカーブを
い形状精度を持つマイクロギヤが不可欠である。マイクロ
創成するホブの歯形は直線で近似されるラック形状であ
ギヤの製作には、切削加工、放電加工、射出成型等様々あ
る。歯切り加工は、一般的にホブ盤とよばれる専用の工作
るが、当社では、歯車用工具による切削加工によってその
機械を用いる。
精度を得る研究を進めており、近年では、その為の工具の
ホブの材質にはハイスと超硬合金が代表的である。ハイ
供給も行っている。元来、当社では、ファインピッチと呼
スホブは靱性に優れ、一般材から硬度 38HRC 程度の難削
ばれる範囲の歯車(およそモジュール 2.5 以下)を切削す
材まで幅広く用いられている。超硬ホブは特に 50HRC 以
るホブカッタの製造販売を軸に、高精度歯車加工技術を生
上の被削材を切削する高硬度歯切り(ハードホビング)用
業としている。ホブカッタによるマイクロギヤの精密歯切
としての需要が近年は伸びてきている。ハードホビングで
りは、その技術の応用例の一つである。
は被削材の種類、熱処理の方法、ホブの超硬材種、ホブの
ホブカッタとは
コーティング膜種、切込み量、歯切り時の周速と環境など、
一般に歯車用切削工具には、ホブカッタ、シェーパーカ
様々な条件において適正な組み合わせをすることが重要
ッタ、ブローチなど、被削歯車の形状・精度・コストなど
となる。
の要因で幾つか選択肢がある。いわゆる外歯の円筒歯車の
歯形部の切削加工に最も多く用いられるのがホブカッタ
図2 ホブによるインボリュート歯車の歯形創成
株式会社
小笠原プレシジョンラボラトリー
http://www.ogswr-pl.co.jp/
Technical Report / OGASAWARA R&D
日刊工業新聞社発行『機械技術』2011 年 11 月号「特集 進展する精密微細加工技術」に掲載
マイクロギヤの加工事例
マイクロギヤの歯切り加工を簡単に言うと、非常に歯形
が小さいホブカッタを作り、それを用いて非常に小さい歯
車を歯切りする、ことになる。マイクロギヤには特に定義
はないが、当社ではモジュール 0.1 以下(ピッチ
0.314mm 以下)の歯車をマイクロモジュールギヤ、その
中でも特に外径がφ1mm 以下になる歯車をマイクロギヤ
もしくは微小ギヤと呼んでいる。
マイクロギヤ用ホブの製作例を図3に示す。歯形は研削
仕上げで、材質には再刃研時にバリが出にくい超硬合金を
用いている。ホブの取り付け孔に対するホブ端面の振れ精
度は最低でも2μm 以下にする必要がある。
図4にマイクロギヤの加工事例を紹介する。諸元は、上
側が m 0.02,z 19,孔付タイプ、下側が m 0.02,z 5,シャ
フトタイプ、である。
マイクロギヤの高精度ホブ切り加工
精度の高いマイクロギヤ用ホブと、そのホブが取り付く
ホブ盤があればマイクロギヤが歯切りできる、ということ
図4 マイクロギヤの加工例
にはならない。
例えば、被削ギヤのブランクが 10μm振れた状態で歯
具体的には、ホブ盤のワークスピンドルとカッタスピン
切りをする場合を考える。モジュール 1 で歯丈 2.25mm
ドルの回転精度、割出精度、ワークブランクの精度、ワー
の歯車の場合は、10μm は歯丈の 1/225 の誤差として
クとカッタの取り付け精度である。ホブカッタの取り付け
現れる。モジュール 0.02 で歯丈 0.045mm のマイクロ
精度は、1μm以下には抑えたい。ギヤブランクは様々な
ギヤの場合は、10μm は歯丈の 1/4.5 の誤差になり、歯
形状になるため、歯切り時、ホブカッタによる切削抵抗に
の大きさが 20%以上ばらつく歯車となる。
より被削材の弾性変形を避ける工夫が必要であり、そのた
したがって、マイクロギヤの歯切り加工が成り立つため
めの保持具を付ける場合もある。周速等の切削条件は、材
に必要なことは、ホブ切りにおける総合精度を上げること
質やブランクの保持方法で大きく変わる為、複数回の試行
以外にはない。
で最適値を得る以外にない。
歯切り加工ができたとしても、
ホブ切り時に発生する
“バ
リ“の除去や、微小な歯車と取扱い・ハンドリング技術も
悩ましい問題になる。外径が 1mm に満たない歯車から歯
面を傷つけずにバリのみを除去するのは、非常に難易度が
高い。その為、歯車同士のかみ合いにバリが影響しない構
造設計もしくは形状にしておくのがコストを掛けない最善
の対策である。
マイクロギヤの歯切りで、もっとも重要なのは、歯面の
中心と、歯車の回転中心を一致させることである。
例えば、中心に貫通孔があるマイクロギヤは、その孔が
軸受となる。減速機に組み込まれたとき、孔の真円度より
得られる回転中心と、歯切り時に得られた歯形輪郭の中心
がずれていれば、減速機に組み込むことができない場合も
あり、組み込めたとしても性能に大きな損失を与える。
以上に述べたとおりマイクロギヤの製作は手間がかかる
ため、結果としてコスト高となり、量産工程を構築するに
は難易度が高い。
それらの課題を解消する目的で、当社ではφ1mm 以下
図3 マイクロギヤ用ホブ製作例
の超微小マイクロギヤを歯切りする専用のホブ盤を現在開
発中であり、近い将来、外販を計画している。
株式会社
小笠原プレシジョンラボラトリー
http://www.ogswr-pl.co.jp/
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