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都市退化性能に関する評価指標の検討と適用 - Info Shako

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都市退化性能に関する評価指標の検討と適用 - Info Shako
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
P8
都市退化性能に関する評価指標の検討と適用
森
英高1・杉本
峻佑2・谷口
守3
1学生会員
筑波大学大学院
システム情報工学研究科(〒305-8573 茨城県つくば市天王台1-1-1)
E-mail:[email protected]
2学生会員
筑波大学大学院
システム情報工学研究科(〒305-8573 茨城県つくば市天王台1-1-1)
E-mail:[email protected]
3正会員
筑波大学
システム情報系(〒305-8573 茨城県つくば市天王台1-1-1)
E-mail:[email protected]
これまでの我が国の都市計画の分野において,主に都市の成長・拡大などの「成長論」を中心としてその
議論が進められてきた.しかし,2007年には人口減少が始まったといわれており,今後は急速な人口減
少・高齢化等の問題に対応し,たとえば今まで備えていた都市機能の一部を消失させることにより,都市
全体の持続可能性を維持する,などの概念が必要となってくると考えられる.そこで本研究では,生物学
的思考に基づく「退化」という現象を都市にも当てはめ,「都市退化」という新たな概念を提唱する.ま
た「都市退化」の性能を評価する指標を検討し,ケーススタディとして指標の一部適用を行った.その結
果,都市の「成長期」で主に議論された,人・物の集積が見られアクセシビリティが高いような地域にお
いて,「都市退化」に関する性能評価が低く,人口減少期においては非持続的である可能性が得られた.
Key Words :urban retrogression, performance, depopulation, withdrawal
1. 序論
であるかのように誤解される可能性も高い.これは人口
人口増加期・高度経済成長期などの右肩上がりの時代, 増加期において,都市計画に関しては「成長論」という
都市計画の分野においても「成長論」の中で都市に人・
基盤が広く認知されていたことに対して,人口減少期に
物を集積させることに議論が集中していた.しかし,
おいては,基盤となる概念が確立されていないことが一
2007年に我が国は人口減少期に突入したといわれており, つの理由であると考えられる.
今後世界でも経験したことのないような高齢化が待ち受
そこで本研究では,人口減少期の都市計画を進める上
けていることが懸念されている.そのような状況の中,
で,生物学的思考に基づく「退化」という現象を都市に
都市計画分野においては2007年には集約型都市構造を国
も当てはめ,「都市退化」という新たな概念を提唱する.
が方針として提示し,2014年には立地適正化計画が制度
ここで,「退化」とは生物学的に周辺環境に合わせて持
として新規に導入されることになった.これらの制度を
続可能な形態に自らの機能を改善する「進化」の一種で
活用していくことで,今後重点的に整備される可能性の
あるとされており 1),「衰退」などとは全く異なる概念
高い地区において人・物を維持・集積させていくことが
である.例えば「都市退化」として,多くの店舗のシャ
求められている.それと同時に,これからの人口減少期
ッターが下りたままの状態にあった商店街の一部を減築
では,一部地域では計画的に人・物を縮退させる,とい
し,憩いの場を創出すると同時に,シャッターが下りて
う観点がより重要性を増してくると考えられる.
いる店舗の前の道路空間や減築することによって得られ
しかし実際に都市の縮退を議論していく中で,人口増
た空間を活用し,コンテナなどの形態にこだわらない店
加期における「成長論」という今までと同じ枠組みをも
舗を継続的に経営することによって,むしろ集客に成功
って一部地域では計画的に人・物を縮退させる,という
している事例があげられる 2).
これまでとの流れとは異なる枠組みに対して適切な判断
なお,都市計画分野の中で進化の概念に着目したもの
を下すことは難しいことが予想される.これは実際に計
は本稿が最初ではない.Patrick Geddes は「進化する都市
画を立てる立場だけの問題ではなく,合意形成の対象と
(Cities in Evolution 1915)3)」の中で工業都市に生じる問題の
なる居住者にとっても,人口減少期に合わせた新たな計
解明を生物学観点である“進化”という概念から述べて
画が施設撤退のような一見地域の衰退を求めている計画
いる.秋本 4)によって Patrick Geddes だけではなく,Lewis
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第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
Mumford や Ebenezer Howard についても,生物学的論考に
.更に縮退そのものを類型化等により,それぞれ縮退
21)
基づく提言を行っていたことが体系的に整理されている. に至った原因や縮退過程を定量的にまとめている研究も
ただし,上記はいずれも人口増加期における都市計画の
みられる22)-24).縮退や縮退と関連性の高いコンパクトシ
進化論において「成長」を基盤として議論されている.
ティに関する政策の効果を把握するために,費用便益分
今後の人口減少期において,「成長」を前提とした既存
析を実施し,集約・縮退の評価を試みている研究25)-27)も
の生物学的論考だけでは,その概念をこれからの都市計
みられる.また,どのような場所から縮退しやすいのか,
画に当てはめることは難しい.むしろ進化論の中でも
縮退することが望ましいのか,ハード・ソフトの両面か
「退化」という観点から,たとえば今まで備わっていた
ら定性的・定量的に言及している研究12)15)28)もみられる.
都市機能の一部をあえて消失させることで都市全体とし
以上のように,多様なスケール・多様な対象物におい
て持続可能性が高める可能性,などを検討していく必要
て,「集約」の過程で「縮退」した地域の実態やその要
があると考えられる.
因等について検討されている.また,今後の「縮退」す
以上を踏まえ本研究では,人口減少期において都市計
る場所に関する議論をするうえでは,人・物を「集約」
画を検討する上で,人・物の縮退等を含めた周辺環境に
する場所に関する議論を前提とし,分析等を進めている.
あわせて持続可能な形態に自らの機能を改善する「都市
また「縮退」させる地域をモデル等を活用し,費用的・
退化」という概念そのものを提案する.また,「都市退
時間的観点から最も効率であると考えられる地域を「縮
化」の性能を定量的に把握する指標を検討し,「よりよ
退」させるという議論が多い.上記を換言すると,「縮
い都市退化」について検討していく.
退」の多くの議論が人・物を維持・集約するという,都
市の進化論の中における「成長」を基盤としている,と
いうことである.
2. 本研究の位置づけ
(2) 本研究の目的
(1) 既存研究のレビュー
以上を踏まえ本研究では,人口減少期において都市計
施設やサービスが撤退する,という観点から,都市の
画を議論する上で,人・物の縮退も含め,周辺環境にあ
縮退について既存研究のレビューを行う.そもそも「縮
わせて持続可能な形態に自らの機能を改善させていく
退」という用語そのものは,「対象エリアに居住者や都
「都市退化」という概念そのものを提案する.また,
市サービス施設が『集積』することの対義語として用い
「都市退化」の性能を定量的に評価する指標を検討し,
られる場合5)」,「対象エリア内の居住者や都市サービ
ケーススタディを通して,「よりよい都市退化」を議論
ス施設や住宅などの建築物,交通などのサービス等が撤
する上で最も基礎となる情報を整理すると同時に,今後
退すること 」,「対象エリア内における空き地・空き
「都市退化」の性能を評価する指標の精査を行っていく
家が増加すること 」,などと定義されることが多い.
ための知見を得ることを本研究の目的とする.
6)
7)
縮退を検討する際の分析対象の範囲としては,都道府
県や市区町村全域というマクロな単位間の居住者等の移
(3) 都市退化の定義
動を対象としたものから,都市計画区域(市街化区域・
ここで「都市退化」の定義を明確にする.
市街化調整区域等も含む)や人口集中地区(以下,DID
先述の通り,これからの人口減少期における都市計画
とする),特定郊外住宅地,町丁目や500mメッシュな
において進化論における「成長」だけで議論することが
どを対象としたものまで,幅広い規模で研究が行われて
困難であると予想される.そこで,一般的に否定的な事
いる.また,分析対象物としては,分析対象エリアの面
例としてとらえられることの多い,都市機能の一部消失
8)
積変動に着目している研究 や線引きや土地利用を対象
や回帰ついて,都市の持続可能性という観点からは,む
にした研究9)10),対象エリア内の居住者や都市サービス
しろ肯定的であると考えられることのできる新たな概念
施設,建築物,道路ネットワーク等のハード面を対象に
そのものを提案することが本研究の目的である.そこで,
し,それらのサービス等の増減に言及した研究 から, A) 都市が保有している機能の一部を消失
B) 都市機能の状態そのものをこれまでの一時点の状
実際に縮退したと考えられる地域の実態をまとめた研究
11)-14)
など,数多くの既存研究が存在する.また,行政サービ
スや公共交通運行頻度,さらには生活の質等のソフト面
を対象 にし,分析対象物も非常に多種多様である.ま
15)
態に回帰
のA)B)いずれかの状況が発生している中でも,
1) 周辺環境の変化に合わせ,各主体もあえて自身の
た縮退の実態やその要因に着目した研究だけではなく,
縮退の手法等に着目し,実際に行われた事例等について
機能の一部を消失させること.
2)
上記国内だけではなく,国外でも多く報告されている
各主体が今後持続可能な活動が行えるよう,自ら
その機能を改善させること.
16)-
2189
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
という1)2)いずれかの条件を満たすことを,本研究での
管理しているインフラ設備の一部を計画的に消失・回帰
「都市退化」と定義する.なお,「都市退化」は計画
させることがあげられ,これによって管理コストを削除
から事業手法までそれぞれに幅広い要素を含んだもの
することができるメリットがあると考えられる.ただし,
であることには注意を払う必要がある.
インフラ設備を削減させる場合,そこで生活している居
住者の生活の豊かさ等を確保したうえで「都市退化」を
(4) 本稿の構成
検討する必要がある.民間においても同様で,自身の利
まず3.において,本研究で提案する「都市退化」に関
益を向上させるためには,提供するサービス等を利用す
連した「都市退化性能」等の用語やその概念について定
る居住者の存在が重要となる.換言すると,多くの「都
義する.そのうえで,4.では対象とする都市退化性能を
市退化」において,まず居住者という観点を無視するこ
示したうえで,その性能を評価する指標について検討す
とは実態として困難である,ということである.
る.5.では,実際の都市を対象にケーススタディとして
そこで本研究においては,まず居住者に関連する都市
都市退化性能評価指標を適用する.以上を踏まえ6.で本
退化性能を対象とし,その性能を評価する指標を検討す
稿で得られた成果と今後の課題についてまとめる.
る.居住者目線の都市退化性能を評価することにより,
都市内の都市退化の実態を把握することができると同時
(5) 本研究の特長
本研究の特長を以下にあげる.
1)
2)
3)
これまでの「成長論」だけでは対応することので
に,今後の政策を検討する際,どのような場所で,どの
ような対策が必要であるか検討する際の参考情報になる
と考えられる.
きない人口減少期における都市計画において,一
実際に,都市退化性能評価に関する指標を検討するに
般的に否定的な事例としてとらえられる都市機能
あたり,まずは対象地で都市退化が発生したのか把握す
の一部消失や回帰について,都市の持続可能性と
る必要がある.ただし,既に都市退化が発生した場合に
いう観点からはむしろ自身の機能を高めている可
おいてその原因を検討すると,実に多種多様な理由が存
能性を「都市退化」という新たな概念として提案
在し,原因と結果を断定することが困難であると考えら
している.
れる.そこで,原因等に関わらず現在までにその地で
「都市退化」について,その性能を既存のデータ
「都市退化」が既に発生したのか,また発生していた場
を活用し簡便に算出することができる指標を検討
合はその性能はどの程度であったのか,ということをま
している有用性・汎用性の高い研究である.
とめて評価する.(本稿では上記性能評価を「都市退化
「都市退化」の性能に関する指標を実際の都市で
性能評価【実態】」と表記する).
適用し,実際に「都市退化」が発生しており,そ
また居住者の視点で考えた場合,「都市退化」による
の規模がどの程度であるのか,ということをケー
変化によって生じた都市構造や都市機能の現状が,その
ススタディを通して把握し,評価指標の精査を行
地にいる居住者の日常生活を持続的なものとしているの
っている.
か,という観点から都市退化の性能の実態と今後の可能
性を評価する必要があると考えられる.また,居住者が
今後の生活を営む上で,今後予想される都市退化の性能
3. 都市退化に関する概念整理
等についても評価することも求められる(本稿では本性
能評価を「都市退化性能評価【潜在】」と定義する).
(1) 都市退化性能
更に,今後「都市退化」と考えられる事業手法(たと
「都市退化」については2.(3)で定義した.本研究では
えば,現在はそれぞれ独立して行われている郵便配達と
更に,「都市退化」によって,実際の都市構造そのもの
路線バス等の人員輸送は,もともとは混合して実施され
や,各主体自身とその活動に現れる変化そのもののこと
ていた.現在一部地域においては,拡大する需要に合わ
を,「都市退化性能」と定義する.この都市退化性能に
せて郵便配達と人員輸送を同時に行うサービスが実施さ
関する評価が高い方が,「よりよい都市退化」であると
れており,これも「都市退化」の1つである)等による
考えられる.
効果を算出する必要もある(本稿では本性能評価を「都
市退化性能評価【適応】」と定義する).
(2) 都市退化性能評価とその評価指標
なお,上記の都市退化性能評価の中でも,都市退化性
「よりよい都市退化」を検討するにあたり,都市で実
能評価【潜在】・都市退化性能評価【適応】を検討する
際に活動を行う主体によって評価手法が異なることが予
際,そもそもその地で実際に「都市退化」が発生してい
想される.具体的な例をあげると,「行政」の立場から
るのか把握することが必要となる.そこで本稿では,上
検討した場合,「都市退化」の1つの例として,行政が
記3評価の中でも最も基礎的な情報となる都市退化性能
2190
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
評価【実態】の評価手法について以下の章で詳細に検
ービス施設数」が減少しており,居住者目線で検
討・把握をしていく.
討した場合,その変化そのものは非持続的である
と考えられる.また,居住者の変化が周辺環境の
変化と合致していないと考えられる.そのため本
4. 都市退化性能評価【実態】に関する指標の検
討
研究において,都市サービス施設が撤退している
にもかかわらず人口が増加している地域において,
都市退化性能評価が低いものとする.
都市退化性能評価【実態】に関する指標を検討するう
2)
短期的な居住者目線で考えた場合,実際に都市サ
えで,対象地で経年的にそれぞれの主体がどの程度その
ービス施設が撤退し,人口も減少している地域に
“量”が変化したのか把握する必要がある.また,撤退
おいて,「一人当たり都市サービス施設数」の減
する都市機能においては,そもそもどの様なサービスが
少率は低くなると考えられる.また,都市構造の
提供されているのか,などの“質”についても言及する
変化と居住者の変化がともに減少しており,居住
必要がある.更に,地域属性や撤退都市サービス施設の
者が周辺環境に合わせて変化したと考えることが
分布によっても,都市退化性能評価【実態】は異なる可
できる.そこで,本研究において,撤退都市サー
能性が考えられる.例えば,商業施設だけではなく鉄道
ビス施設が多い地域において人口減少している方
距離からの距離によって,都市退化性能評価は異なる可
が,都市退化性能評価が高いものとする.
能性があり,駅前やその周辺地と,郊外にある住宅地で
一方で,居住者の日常生活の中でも,老若男女問わな
は異なる傾向があることが予想される.また,一般的に
い「買物活動」に着目すると,特に中山間地域と呼ばれ
スプロール市街地と呼ばれる市街地だけを評価対象とし
ている地域において,周辺に施設が立地せず,自動車等
た場合においても,居住者と都市サービス施設が同時に
で遠方まで移動している可能性が考えられる.そこで,
撤退している市街地もあれば,どちらか一方のみが主に
本稿においては,「行動圏」というものをPT調査やア
撤退している市街地もあり,それぞれのスプロール市街
ンケート調査等を活用することで設定する.これにより,
地ごとに都市退化性能評価は異なることが考えられる.
居住者が実際に活用している商業施設,および,その移
更に,特定の地域における都市退化性能評価が高い判
動時に通過する可能性がある道路沿線上の施設数を把握
断された場合においても,周辺地域等と比較した場合,
する.この「行動圏」内において,どの程度商業施設が
相対的にはその評価が低くなる地域が存在する可能性も
消失しているのか,ということも都市退化性能評価【実
考えられる.都市退化性能を議論する上では,特定地域
態】として把握する.これは,都市退化性能評価【実
での評価をしたうえで,地域間で共有することのできる
態】の中でも,3.(1)で述べた「都市退化」の定義のうち,
2)に該当する項目を確認している.
都市退化につながる制度等を議論する必要があると考え
られる.ただし,上記で例示したような都市退化性能を
同時に把握することは困難であり,まずそもそも「都市
退化」そのものが対象地で発生しているのか確認する必
要があると考えられる.
5. 都市退化性能評価【実態】に関する指標の適
用
そこで本稿では最も基礎的な「都市退化」の実態をま
ず把握するため,特定地域内における経年的に変化した
“量”のみに着目する.また,対象とする主体としては
3.(2)でも述べたように居住者に着目し,その居住者の経
(1) 対象年次
経年変化を把握する上で,本研究では2005-2010年を対
年的な変化として,対象地における人口分布の経年変化
象とする.その理由としては,
1) 2006年:まちづくり三法一部改正
に着目する.また,3.(1)の「都市退化」の定義中にあげ
2)
2007年:国が集約型都市構造を方針として提示
た「都市機能」としては,本研究では対象地域内全都市
3)
2007年:日本の人口が減少期突入
サービス施設として,人口分布と撤退都市サービス施設
など,都市計画を検討する上で大きな転換期となる要素
分布との関係をみる.この2つの関係を把握・分析する
を多く含む期間であることがあげられる.
ことは,都市退化性能評価【実態】の中でも,3.(1)で述
べた「都市退化」の定義のうち,1)に該当する項目を確
(2) 対象地
認していることになる.その評価については,以下の通
ケーススタディとして,本稿では福島県いわき市を対
りである.
象地とする.選定理由を以下に記載する.
1) 都市サービス施設が撤退しているにもかかわらず, 1) 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災(以下,
人口が増加している地域は,「一人当たり都市サ
「本震災」)は,居住者の日常生活における意識
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第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
に対して非常に大きな影響を与えたと考えられる.
また,本稿における「買物施設」とは以下にあげる5
特にいわき市は本震災において,地震の揺れによ
種類の施設であると定義する.
る道路状況の悪化などの直接的な被害のみならず, 1) スーパーマーケット
2) コンビニエンスストア
物流の遮断等の間接的な被害も多く経験した.そ
の結果,他地域と比較して食料や日用品の入手と
3)
ドラッグストア
いった基本的な暮らしを行う上でのリスクを地域
4)
大型ショッピングセンター
住民が十分に認識している可能性が高い.
5)
個人経営商店
いわき市は面積がおよそ1,231km²と広く,中心地市
c) 居住者の日常生活における意識・活動実態
街地から中山間地域まで,性格の異なる多様な地
域を内包しており,幅広いニーズを網羅的に把
住民の買物行動実態と意識を把握するために,2012年
10~11月にいわき市において網羅的なアンケート調査を
握・分析することができる.なお,いわき市の人
実施した.調査内容としては,個人属性の他,日常的な
口は32.7万人(平成26年2月現在)となっている.
買物行動,交通行動,目的地別の主な利用施設と交通手
いわき市は1966年に大規模な市町村合併を行った歴史
段,買物満足度など,多岐に渡る質問を行っている.本
があり,現在においても旧行政区域ごとに地域計画を策
研究においては,主に行動圏を作成する上で,買物活動
定するなど,旧行政区域内での結びつきが非常に強い.
における主な使用施設に関する項目を使用する.また,
そのため,いわき市全体の都市退化性能の傾向だけでは
居住者の日常生活での実際の活動を踏まえた考察等を行
なく,歴史的背景や現状の都市計画の実態を踏まえ,特
う際にも,アンケート調査の結果を活用している.表-1
色が大きく異なると考えられる旧行政区域単位で都市退
にアンケート調査の概要を示す.
2)
化性能の評価を行う.いわき市の旧行政区域について,
図-1に示す.それぞれの旧行政区域の実態を見ると,1.
平区域が現状として最も居住者や施設が集積し,公共交
通が発達し,アクセシビリティも高いことが予想される.
12.川前
換言すると,これまでの「成長論」の観点からすると,
1.平区域が最も居住者の利便性が高く,高く評価されや
8.小川
すい地域であると考えられる.
13.久ノ 浜・ 大浜
10.三和
6.四 倉
(3) 使用データの概要
a) 人口分布
1.平
経年的な人口分布の変化を把握するために,国土交通
9.好間
省国土政策局国土情報課や総務省統計局がインターネッ
7.遠 野
ト上で公開している国勢調査の結果を用いる.なお分析
5.内郷
4.常磐
では,一般に公開されているデータの中で最もミクロな
レベルである500mメッシュごとの人口データを活用し
11.田 人
2.小名浜
ている.
3.勿来
b) 都市サービス施設立地
都市退化性能を評価するにあたり,経年的な施設立地
の変化を把握する必要がある.そこで本研究では,電子
電話帳を使用し,ポイントレベルで2005年・2010年の施
図-1 いわき市旧行政区域
設立地を把握している.本稿における都市サービス施設
とは,電子電話帳に掲載されていた全施設のことを指す
表-1 いわき市アンケート調査概要
ものとする.なお,人口分布と撤退施設分布との比較を
行うために,ArcGISを用いてメッシュレベルでの施設数
調査対象
に関連するデータも作成したうえで,分析を行っている.
配布・回収
なお,本研究において,以下2点のいずれかの条件を満
いわき市各町17世帯
への無作為抽出
<全229町>
郵送配布・郵送回収
2012年10月26日
~11月10日
たした場合「撤退施設」とした.
1) 2005-2010年で施設が完全に消失
実施期間
配布部数
3,840部
2)
回収部数
(回収率)
1,539部(40.0%)
2005・2010年時に施設が存在しているが、2010年時
に住所が変更(主に移転)
2192
・公共交通利用実態
・自動車利用実態
・目的別交通行動
・目的別主要利用施設
質問項目 ・公共交通利用意向
・居住地への意識
(各種満足度)
・個人属性
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
なお,本ケーススタディにおける行動圏とは,
1)
2)
とができる.
アンケート調査において,買物活動として実際に
5)
なお買物活動にのみ着目すると,アンケート調査
活用している目的地として回答があった買物施設
の中で,「自身の買物環境に関する満足度」を5段
周辺500m
階評価で質問している.その結果をサンプルベー
アンケート調査において,買物活動として実際に
スで旧行政区域ごとの平均値を集計すると,1.平区
活用している目的地として回答があった買物施設
域:約3.8ポイント,3.勿来区域:約3.9ポイント,9.
と各旧行政区域(サンプルが十分に確保できてい
好間区域:約4.0ポイント,という結果が得られる.
ない地域を含むため,本研究における起点は旧行
本調査においては,都市退化性能評価【実態】が
政区レベルとした)を結ぶ,路線バスが通ってい
高い傾向にある地域の方が,買物に対する満足度
る幹線道路(県道以上)とその沿線
が高くなる可能性があることが示された.
と簡易的に設定した.
(4) 検討指標の適用
本節では,いわき市を対象に都市退化性能評価指標を
実際に適用した.まず,いわき市の2005-.2010年におけ
る人口増減,撤退都市サービス施設の分布をそれぞれ図
-2・図-3に示す.図-2・図-3を基に,人口増減と撤退都
市サービス施設の関係について,旧行政区域の中でも特
徴的であった1.平区域・3.勿来区域・9.好間区域の3地区
について,図-4~図-6に示す.図-4~図-6においては,
500mメッシュにおける人口増減について7階級,メッシ
ュ内撤退都市サービス施設数について6階級作成し,そ
の両者の組み合わせによって作成されたメッシュのタイ
プにおいて,そのタイプに分類されるメッシュ数が旧行
政区域内に何メッシュあるのか示したものである.以下
に図-2~図-6の考察を記載する.
1) 図-2・図-3を重ね合わせると,いわき市においては
実際に都市サービス施設が撤退しているメッシュ
で人口減少が見られる.市域全体の傾向として,
図-2 2005-2010 年:いわき市人口増減分布
いわき市は都市退化性能評価が高い都市であると
考えられる.
2)
図-4~図-6を見ると,1.平区域において,都市サー
ビス施設が撤退している一方で,人口が増加して
いるメッシュの割合が,3.勿来区域・9.好間区域よ
りも多い(各旧行政区域全メッシュ中,都市サー
ビス施設が撤退している一方で,人口が増加して
いるメッシュが占める割合は,1.平区域:約20%,
3.勿来区域:約9%,9.好間区域:約14%).
3)
また図-4~図-6より,都市サービス施設が撤退し,
かつ人口が減少しているメッシュは,3.勿来区域・
9.好間区域において多いことが分かる(各旧行政区
域全メッシュ中,都市サービス施設が撤退し,か
つ人口が減少しているメッシュが占める割合は,1.
平区域:約30%,3.勿来区域:約36%,8.好間区
域:約36%).
4)
上記1)2)を踏まえると,図-4~図-6から判断すると,
1.平区域が最も都市退化性能評価が低く,3.勿来区
域が最も都市退化性能評価が高い,と判断するこ
図-3 2005-2010 年:撤退都市サービス施設分布
2193
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
活動を完結している.一方,7.遠野地区のような中
山間地域では,そもそも自区域内で買物活動を行
っておらず,他区域に依存していることが分かる.
メッシュ数
100
本研究における「都市退化」の定義の1つである
80
「各主体が今後持続可能な活動が行えるよう,自
60
らその機能を改善させること」という観点からす
40
ると,7.遠野地区の都市退化性能評価は低いと判断
20
0
されるものであると考えられる.
21~
16~20
~-200
-199~-100
-99~-1
以上を踏まえ,ケーススタディの結果をまとめる.
11~15
0
人口増減数
6~10
1~99
1)
1~5
100~199
200~
撤退都市サービス
施設数
0
1.平区域・3.勿来区域・9.好間区域の 3 地区におい
ては,3.勿来区域・9.好間区域の都市退化性能評価
【実態】の評価が高く,1.平区域の評価が低いとい
図-4 1.平区域:人口増減・撤退都市サービス施設数
う結果が得られた.
メッシュ数
100
80
60
40
20
21~
0
16~20
~-200
-199~-100
-99~-1
11~15
0
人口増減数
6~10
1~99
1~5
100~199
200~
撤退都市サービス
施設数
0
図-5 3.勿来区域:人口増減・撤退都市サービス施設数
メッシュ数
100
80
凡例
60
想定される行動圏
撤退買物施設
行動圏内撤退買物施設
40
20
21~
0
16~20
~-200
-199~-100
-99~-1
人口増減数
図-7 2005-2010 年:行動圏・撤退買物施設分布
11~15
0
6~10
1~99
1~5
100~199
200~
0
撤退都市サービス
施設数
表-2 旧行政区域別:撤退買物施設数とその割合
図-6 9.好間区域:人口増減・撤退都市サービス施設数
区域
次に,先述した行動圏の分布を図-7,それぞれの旧行
自区域内
買物活動率
1. 平
218
164 (
75.2% )
88.0%
2. 小名浜
112
57 (
50.9% )
82.3%
3. 勿来
203
40 (
19.7% )
94.3%
4. 常磐
64
39 (
60.9% )
67.5%
5. 内郷
40
25 (
62.5% )
84.7%
および旧行政区域内撤退施設割合を見ると,1.平区
6. 四倉
24
12 (
50.0% )
52.0%
域が最も行動圏内で施設が撤退している.一方,
7. 遠野
5
0(
0.0% )
0.0%
8. 小川
8
1(
12.5% )
0.0%
9. 好間
39
23 (
59.0% )
75.8%
に撤退施設は存在しなかった.
10. 三和
8
1(
12.5% )
0.0%
なお,旧行政区域内で買物活動を完結している居
11. 田人
3
0(
0.0% )
0.0%
住者の割合を見ると,1.平区域や3.勿来区域に居住
12. 川前
2
0(
0.0% )
0.0%
13. 久ノ浜・大久
1
0(
0.0% )
0.0%
政区域における,行動圏内撤退買物施設に関する情報を
表-2に示す. 表-2の考察について,以下に記載する.
1) 旧行政区域別に行動圏内における撤退買物施設数,
中山間地域である7.遠野地区においては,行動圏内
2)
区域別:
撤退買物
施設数 圏内撤退買物施設数
している者は,9割程度の者が旧行政区域内で買物
2194
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
2)
なお,3.勿来区域と 9.好間区域を比較すると,とも
(15J02048)の助成を得た.記して謝意を表する.
に都市退化性能評価【実態】の評価は高いもので
あると考えられる.一方.図-5・図-6・表-2 から判
断すると,3.勿来区域は「撤退都市サービス施設が
参考文献
多いメッシュで人口減少し,実際の生活の中で活
1)
犬塚則久:「退化」の進化学,p.18,講談社,2006.
用されにくい地域に立地している都市サービス施
2)
たとえば,日経アーキテクチュア:「減築」で商店街再
設が撤退している」傾向にある.一方,9.好間区域
生,Np.1071,pp.78-82,2016.5-12.
は「撤退都市サービス施設が多いメッシュで人口
3)
Patrick Geddes: Cities in Evolution, An Introduction to the Town Plan-
減少している一方,実際の生活の中で活用されや
ning Movement and to the Study of Civics, Williams & Norgate, 1915.
すい地域に立地している都市サービス施設が撤退
(パトリック・ゲデス著・西村一朗訳:進化する都市,
している」傾向にある.そのため,3.勿来区域がい
鹿島出版会,2015.)
わき市内で最も都市退化性能評価【実態】が高い
4)
地域であると考えられる.
秋本福雄:ルイス・マンフォード都市・地域計画論再考,
都市計画論文集,No.43-3,pp.157-162, 2008.
5)
石倉智樹:人口減少に伴う都市の縮退と集積に関する基
礎的定量分析,都市計画学会論文集 47-1,pp.68-73,2012.
6. 結論
6)
森本章倫:人口減少化における地方都市の縮退に関する
研究,日交研シリーズ A-607,2014.
本研究ではまず,人口減少期において都市計画を検討
7)
饗庭伸・川原普・福田雅浩・牧紀男・桑田仁:都市縮退
する上で,周辺環境にあわせて持続可能な形態に自らの
時代の都市デザイン手法に関する研究,平成 19 年国土政
機能を改善する「都市退化」という概念そのものを提案
策 関 係 研 究 支 援 事 業 研 究 成 果 報 告 書 ,
し,その性能を評価する必要性を述べた.
http://www.mlit.go.jp/common/000999484.pdf , 最 終 閲 覧 日 :
その上で実際に都市退化性能の一部を評価する指標の
2016 年 7 月.
検討を行い,福島県いわき市を対象としてその指標の適
8)
原なつみ・浅野純一郎:非線引き地方都市における DID
用を行った.その中で,現状としては施設や居住者が集
縮小区域の発生要因と居住環境に関する研究,都市計画
積しており,公共交通が整備されアクセシビリティも高
学会論文集,50-3,pp.886-891,2015.
いと考えられる地区において,今後の持続可能性等を考
9)
福王寺峻平・松川寿也・佐藤雄哉・中出文平・樋口秀:
慮した都市退化性能評価【実態】という観点から見ると,
市街地の縮小を想定した都市計画区域の再編に関する研
その評価がいわき市内でも低い地域であることが示され
究 -松本市・宇都宮市・相模原市を対象として- ,都市計
た.換言するならば,既存の成長論を主体とした観点だ
画学会論文集,50-3,pp.974-979,2015.
けで各地域の実態を把握・評価しただけでは,今後の人
10)
猪八重拓郎・永家忠司・外尾一則:土地利用から見た都
口減少期で必要となる都市計画への配慮が不足している
市化及び都市撤退の実態と交通網の特性に関する研究 -佐
可能性が示唆された,と考えられる.
賀低平地のケーススタディ-,都市計画学会論文集,48-3,
ただし本稿では,都市退化性能の評価を行うにあたり,
ケーススタディを基に都市退化性能評価【実態】のみに
pp.531-536,2013.
11)
氏原岳人・ 阿部宏史・村田直輝・ 鷲尾直紘:地方都市に
関する指標の検討を行った.そのため,本稿の中で提案
おける都市スポンジ化の実証的研究-建物開発・滅失・
した都市退化性能【潜在】や都市退化性能【適応】に関
空き家状況の視点から-,土木学会論文集 D3(土木計画
して,その性能を評価する指標を検討することが今後求
学),72(1), pp.62-72,2016 .
められると考えられる.また都市退化性能評価【実態】
12)
杉浦 聡志・倉内 文孝・高木 朗義:スマートシュリンク
についても,都市サービス施設の “質”や地域属性等
に向けた道路統廃合を念頭にした生活道路ネットワーク
による評価にまで言及できていない.更に本稿では居住
デザインモデル,第 35 回交通工学研究発表論文集,
者にのみ着目した指標となっているが,主体が変化すれ
No.60,pp.373-378,2015.
ば評価も異なることが考えられ,本稿で提示した3種の
13)
加知 範康・岑貴 志・加藤 博和・大島 茂・林 良嗣:ポテ
都市退化性能評価以外が必要となってくることが予想さ
ンシャル型アクセシビリティに基づく交通利便性評価指
れる.以上のように,各主体ごとにより詳細な都市退化
標群とその地方都市への適用,土木計画学研究・論文集,
性能評価とその評価指標を今後も精査する必要があると
Vol. 23 ,pp.675-686,2006.
考えられる.
14)
なお本研究を実施するにあたり,JSPS科学研究費
氏原岳人・谷口守・松中亮治:市街地特性に着目した都
市撤退(リバース・スプロール)の実態分析,都市計画
(26289170,代表者:谷口守),およびJSPS科学研究費
学会論文集,41-3,pp.977-982,2006.
2195
第 54 回土木計画学研究発表会・講演集
15)
加知範康,加藤博和,林良嗣,森杉雅史:余命指標を用
Portuguese cities: A typology of urban shrinkage, Cities,Volume 52, pp.
いた生活環境質(QOL)評価と市街地拡大抑制策検討への
20–29, March 2016.
適用,土木学会論文集 D,Vol.62 No.4,pp.558-573,2006.11.
16)
Neill, William J. V. (EDT) Schlappa, Hans (EDT):Future Directions
for the European Shrinking City,Rtpi Library Series, Routledge 2016.
17)
19)
ty values. Housing Policy Debate, 24(2), 311–334. 2014.
24)
study urban patterns in growing and shrinking cities, Urban Geography,
Volume 37, Issue 2, 2016.
25)
和田夏子・大野秀敏:都市のコンパクト化の費用評価-長
Adam Radzimski: Changing policy responses to shrinkage: The case of
岡市を事例とした都市のコンパクト化の評価に関する研
dealing with housing vacancies in Eastern Germany,Cities, 50,
究その 2-,日本建築学会環境系論文集,Vol.78,No.687,
pp.197-205,2016.
pp.419-425,2013.
Hackworth, Jason: The limits to market-based strategies for addressing
26)
M. Bernt, A. Haase, K. Großmann, M. Cocks, C. Couch, C. Cortese, R.
佐藤晃・森本章倫:都市コンパクト化の度合いに着目し
た維持管理費の削減効果に関する研究,都市計画論文集,
90, 1–37, 2014.
No.44-3,pp.535-540,2009.
27)
小瀬木祐二・戸川卓哉・鈴木祐大・加藤博和・林良嗣:
Krzysztofik: How does(n't) urban shrinkage get onto the agenda? Expe-
大都市圏スケールでのインフラ維持管理・更新費用の 将
riences from Leipzig, Liverpool, Genoa and Bytom International Jour-
来推計手法の開発,土木計画学研究・論文集,Vol.27,
nal of Urban and Regional Research, 38 (5) , pp. 1749–1766, 2014.
21)
José P. Reisa, Elisabete A. Silvaa & Paulo Pinhob: Spatial metrics to
Sustainability: The Case of the Shrinking City of Heerlen, The Nether-
land abandonment in shrinking American cities, Progress in Planning,
20)
Han, Hye-Sung: The impact of abandoned properties on nearby proper-
Maja Ročak, Gert-Jan Hospers and Nol Reverda:Searching for Social
lands, Sustainability 2016, 8(4).
18)
23)
Annegret Haase, Alexandra Athanasopoulou and Dieter Rink: Urban
No.2,pp.305-312,2010.
28)
清水健太・佐藤徹治:都市郊外部における人口減少地区
shrinkage as an emerging concern for European policymaking, Europe-
からの撤退の最適タイミング,都市計画学会論文集,46-
an Urban and Regional Studies January 2016 vol. 23 no. 1 103-107,
3,pp.667-672,2011.
2016.
22)
Daniel Alvesa, Ana Paula Barreirab, Maria Helena Guimarãesb and
(2016. 7. 31 受付)
Thomas Panagopoulosb:Historical trajectories of currently shrinking
2196
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