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8月8日 - 日本看護研究学会

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8月8日 - 日本看護研究学会
一 般 演 題
(示 説)
8月8日(月)の部
8月8日(月)
第10会場 第28群
332)高校生の性交意思と性役割意識およびこども観との
関連性
中越利佳,草薙康城,宇都宮温子
(愛媛県立医療技術大学保健科学部看護学科)
【目的】
高校生の性交意思と,性役割意識および子ども観との関連
性を明らかにし,次世代育成支援事業と性教育との協働の
可能性を検討する。
【研究方法】
学校責任者の同意が得られたA県内B地区の高校4校
(962人)を対象に,2009年10月∼2010年2月まで,無記名
自記式質問紙による集合調査を実施した。内容は,性別,
性交意思(自分自身が性交することについての意識),赤
ちゃんイメージ( 9項目の相反する形容詞対・7段階S
D法にて,肯定的にとらえている順に7∼1点を配す)
,
独自で作成した性役割意識と子ども観(15項目)である。
分析は,因子分析および性交意思と各質問項目との関連性
について,分散分析と多重比較を行った。
倫理的配慮では,本学研究倫理委員会の承認後,生徒にプ
ライバシー及びデータの保護,研究参加の任意性,利益・
不利益,中断の権利,結果の公表について説明し,質問紙
の回収をもって同意を得た。
【結果】
有効回答は674人(有効回答率70.1%),男子268人,女子
406人であった。性行意思では,性交はしないほうがよい,
結婚するまではしないほうがよいとした者(以下A群)は
135人(20.0%),愛情が深まれば性交してよい,機会があ
ればよい,お互い納得すればよいとした者(以下B群)は
205人(30.4%),避妊・感染症予防に心がけるならばよい
とした者(以下C群)は144人(21.4%),考えたことがな
いとした者(以下D群)は190人(28.2%)であった。
赤ちゃんイメージ得点と性交意思の比較では,D 群は B・
C 群に比べ得点が有意に低かった。また,C 群は A・D 群と
比較して有意に得点が高かった。男子では D 群が B・C 群に
比較して得点が有意に低かったのに対し,女子では性交意
思による赤ちゃんイメージ得点に有意差を認めなかった。
性役割意識,子ども観についての質問項目を主因子法によ
り因子分析した結果,子ども存在価値,伝統的性役割意識,
子ども存在否定の3因子構造を示した。性交意思による因
子得点の比較では,子ども存在価値に有意差を認め,D 群
は B・C 群と比較し有意に得点が低かった。
男女別では,男子は子ども価値肯定と伝統的性役割意識に
有意差を認めた。子ども存在肯定では,D 群が B・C 群に
比較して有意に得点が低かった。また古典的性役割意識で
は,D 群が B 群に比較して得点が有意に低かった。女子で
は,子ども存在価値に有意差が認められ,D 群は B 群と比
べ有意に得点が低かった。
【考察】
子ども観が否定的な生徒は,自らの性行動について考えて
いないこと,また男子では,伝統的な性役割意識が性交意
思に関係していることが明らかになった。肯定的な子ども
観を育むことは,自らの性行動について考える機会となり
得ることが推察され,性教育と次世代育成支援事業との協
働による効果が期待される。
350
333)小児看護学実習前後の対児感情の変化について
上田美歌,川上あずさ,池田友美
(兵庫大学健康科学部看護学科)
【はじめに】
我々は先行研究において,子どもとの関わり体験・学習状
況が,子どもに対する感情と関連しているとの示唆を得
た。そこで今回は,子どもと直接関わる体験となる,実習
による学生の子どもに対する感情の変化を調査した。
【研究目的】 小児看護学実習前後での看護学生の対児感情の変化とその
要因を明らかにする。
【研究方法】
1)
1)調査方法:対児感情尺度 を使用した質問紙調査。
この対児感情尺度は信頼性・妥当性が確認された評定尺度
であり,児を受容する方向の接近感情14項目と児を否定す
る方向の回避感情14項目について,各0∼3点で構成さ
れ,回避感情得点 / 接近感情得点×100で拮抗指数を算出
する。尚,この尺度は営利目的以外での使用は了解されて
いる。2)調査対象:A 大学看護学科小児看護学実習履修
生 3)調査期間:小児看護学実習前の平成22年4月,実
習後の平成22年10月∼12月 4)統計は PASW18.0を使用
した。
【倫理的配慮】 A 大学の研究倫理委員会の承認を得て実施した。質問紙は
無記名とし,回収ボックスへの提出によって同意とした。
【結果】
質問紙は,実習前57名に配布し55名(回収率96.5%),実
習後62名に配布し55名(回収率88.7%)回収した。接近感
情得点について,実習前後の平均値に有意差が認められ
た。
(t =2.30,df =108,p<0.05)接近感情項目のうち,
「あ
たたかい」「ういういしい」について実習後に有意に上昇
した。
【考察】
接近感情得点は,実習後有意に上昇しており,看護学生が
子どもを肯定し受容する感情が高まっていることを示して
いる。このうち,実習後有意に上昇した「あたたかい」
「う
いういしい」という感情は,子どもと実際にふれあう体験
から得られる感情であり,子どもとの関わり体験が少な
かった学生にとって,子どもが新鮮な存在として感じられ
たのではないかと考える。
1)花沢成一:母性心理学,医学書院,2008
表1 実習前後の対児感情の変化
接近感情得点
実習前 n =55
実習後 n =55
27.78±5.54
30.15±5.22*
回避感情得点
13.22±6.73
12.15±7.20
拮抗指数
51.51±36.25
42.17±24.60
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
*:p <0.05 334)小児看護技術演習においてグループ学習を効果的に
進めるための教育方法の検討
335)小児看護領域における看護学生の倫理の学び
高尾憲司,園田悦代(京都府立医科大学医学部看護学科)
齋藤啓子,小川佳代,中澤京子
(四国大学看護学部看護学科)
【目的】
小児看護技術演習では小児特有のアプローチ方法を学習す
るために,グループ学習方式が取り入れられているが , 演
習後の振り返り評価が多く,演習前後のグループ学習の効
果を評価したものは少ない。学生のグループメンバーとの
意見交換能力を分析することで,技術演習での学習効果を
高める教育方法の示唆を得る。
【研究方法】
「小児看護方法論」( 2単位)を履修した2年次生81名を
対象に,研究者らが作成したグループメンバーとの意見交
換能力に関する質問(20項目)を用いたアンケート調査。
質問項目は「できる」5点から「できない」1点の5段階
リッカート尺度で得点化した。主因子法バリマックス回転
による因子分析を行い,抽出された各因子の平均得点を演
習前後で比較した。有意水準は5%とした。演習項目は
「バイタルサイン測定」などで,学生9∼10名を1グルー
プとし10時間実施した。事前学習内容はグループメンバー
間で情報交換を実施し,演習資料を参考に小児との関わり
の場面をイメージしてグループメンバー間でロールプレイ
による演習を実施した。
【倫理的配慮】
演習前後に研究目的,個人情報の保護,調査協力は自由意
思で成績評価には何ら影響ないことを文書及び口頭で説明
し,書面で同意を得た。演習終了後に調査用紙を提出して
もよいという学生に,再提出してもらった。
【結果】
76名から同意が得られ,前後のデータがある75名(女子69
名男子6名)を分析した(有効回答率92.5%)。グループ
メンバーとの意見交換能力に関する因子分析の結果(固有
値1.0以上,因子負荷量0.4以上),2項目を削除し,因子1
〈発言する能力〉( 9項目),因子2〈内容を理解する能
力〉( 4項目),因子3〈意見を聞く能力〉( 3項目),因
( 2項目)の4因子が抽出され
子4〈グループ調整能力〉
た。得点が高かったのは因子3で4.0点であった。演習前
後の各因子の平均得点の比較では,因子1〈発言する能力〉
で演習前平均2.89点と演習後平均3.08点で差がみられた(p
= .006)。
【考察】
グループでの学習体験は,意見の発表や他者の意見から学
習し,参加者が成長していくと言われている。今回の調査
においても,因子1〈発言する能力〉において演習前後の
比較で有意差がみられた。しかし,他の因子での変化がみ
られなかったことより,演習内容を理解し,実践的な学習
が体験できるためのさらなる演習方法の工夫と継続,少人
数でのグループ編成や今後の実習での強化の必要性がある
と考える。
【結論】
1 . グループ学習方式で実施した技術演習において,学生
のグループメンバーとの意見交換能力を分析した結果,4
因子が抽出された。2 . 各因子の演習前後の比較では,因
子1に有意差がみられ,学生が積極的に発言し行動する能
力が高められることが示唆された。
【研究目的】
本学の小児看護学実習後には,小児看護領域でとくに留意
すべき子どもの権利と必要な看護行為の9項目に即して,
レポートの提出を学生に求めている。今回,学生が「必
要」,「大切」,「重要」と表現した語句に限定し,内容分
析することを目的とした。前述の9項目とは,( 1)説明
と同意,( 2)最小限の侵襲,( 3)プライバシーの保護,
( 4)抑制と拘束,( 5)意志の伝達,
( 6)家族からの分
離の禁止,( 7)教育・遊びの機会の保証,( 8)保護者
の責任,( 9)平等な医療を受ける,である。
【研究方法】
調査対象:A看護系大学小児看護学実習後の学生42名調査
期間:平成21年10月∼平成22年7月 調査内容:9項目の
各文書中に抽出された「必要」
,「大切」,「重要」の比率。
文書中に「必要」,「大切」,「重要」と共に多く用いられた
語句。分析方法:学生42名のレポート全文の句点から句点
までの文を1文書とし,テキスト型データを計量的に分析
する KH_Coder2.x(樋口)を用いて,抽出された「必要」,
「大切」,「重要」の比率と関連語探索を行った。関連語探
索:サンプル群間の類似度を比較する Jaccard の類似性測
度を数値で表記する。数値が大きいほど共起の度合いが強
く,今回はこの数値が0.1以上の語句を示した。倫理的配
慮:対象者に研究目的,方法,結果公表について口頭で説
明した。調査に同意しない場合も不利益を被らないこと,
成績には関係しないこと,レポートは本研究以外の目的で
使用しないこと,個人を特定しないことを説明した。分析
は実習評価後に行った。
【結果】
学生が受け持った子どもの平均年齢は7.3±3.9歳(M ±
SD) で, 乳 幼 児12名(28.6%), 学 童30名(71.4%) で
あった。疾患は腫瘍性疾患41名(97.6%),神経疾患1名
(2.4%)であった。レポートの文書数は1,316で,「必要」,
「大切」,
「重要」の各項目での比率は,
「必要」1.44∼4.94%,
「大切」0.61∼1.52%,
「重要」0.53∼1.44%であった。関連
語探索では,Jaccard の類似性測度が0.1以上の語句が,
『必
要』では「行う」「家族」「抑制」「子ども」「看護」「援助」
「感じる」
「説明」
「治療」
「保護」
「配慮」,
『大切』では「感
じる」「思う」「考える」,『重要』では「学ぶ」「看護」「遊
び」であった。
【考察】
9項目の各文書中に抽出された「大切」,「重要」の比率に
差はあまりみられなかったが,「必要」では高い比率の項
目があった。「必要」
,「大切」
,「重要」が含まれた文書に
用いられた語句は,「子ども」「家族」といった小児看護の
対象を示す語句が多かった。また,「抑制」「説明」「保護」
「配慮」といった倫理に関連する語句を多く用いており,
学生は,対象となる子どもや家族を通して,倫理観を高め
ていることが示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
351
336)小児専門領域へ就職する学生が捉えた自己の小児看
護技術に対する認識
中村郷子,坪川麻樹子,松井由美子
(新潟医療福祉大学健康科学部看護学科)
【目的】
小児看護領域への就職が決定している看護系大学学生を対
象に,小児看護技術に焦点を当てた技術研修会を実施し
た。本研究は,研修により学生に生じた自己の小児看護技
術に対する認識を明らかすることを目的とした。
【研修概要】
1.研修目標:短期目標として技術の習得及び小児看護技
術の習熟度を学生自身が理解すること,長期目標としてリ
アリティショックを軽減することとした。
2.研修項目:シリンジポンプ,輸液ポンプ,微量計算,与
薬,経管栄養,救急蘇生法,保育器の取り扱い,検査介助
3.研修方法:研修前に,研修参加者に質問紙調査と半構
成的面接を実施し,臨地実習における小児看護技術の経験
有無や自己の技術に関する不安の内容等について把握し
た。研修は,教員によるデモンストレーションと説明を行
い,参加者が少人数であることの利点を生かし,各学生が
技術を一通り行えるようになるまで指導を行った。研修は
1日( 6時間)とした。
【研究方法】
1.データ収集方法:研修参加前後で,自己の技術につい
てどのように考えているかについての半構成的面接法を実
施した。
2.研究対象者:研修参加希望のあった小児看護専門領域
へ就職予定の看護系大学4年生4名。
3.分析方法:Berelson,B の内容分析に基づき,語られた
認識に着目してカテゴリー化した。
4.倫理的配慮:研究の趣旨,倫理的配慮を文書及び口頭
で説明した。所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
逐語録から12カテゴリーが生成された。研修前の学生は,
就職するにあたり自己の技術に不安を抱えているが,それ
は【漠然とした不安】であった。これは,就職後の【自己
イメージの欠如】にも影響をしていた。また,実習では未
経験の技術も,臨床では求められることを理解しつつも,
具体的な学習方法がわからないために【学びの模索と停
滞】がみられていた。研修終了後は【自己の技術レベルの
認知】や,就職を楽観的あるいは消極的に捉えていた【自
己の認識の偏りへの気づき】により,【課題の明確化】と
【学びへの前進】がみられた。また,研修により自己の技
術に対する【不安の明確化】がみられたが,不安が軽減す
る一方で,具体化されたことによる不安の増加【不安の増
減】も認識していた。その他,就職後の【イメージの獲得】
【少しの自信と余裕の保持】
【未知のことに対する期待のさ
らなる高まり】等の認識がみられた。
【考察】
学生は,新卒看護師に求められている看護実践能力と,卒
業時の学生の能力との乖離の大きさを,学生自身も懸念し
ていることが推察される。よって,専門領域への就職を考
えている学生に対して,学習のニーズを踏まえた基礎教育
の取り組みの必要性が示唆された。
352
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第29群
337)終末期看護実習での学生のトータルペインの理解の
プロセス ∼学生へのインタビューから∼
338)緩和ケアチームにおける医療スタッフ・チャプレン
のストレス対処法
久保川真由美,原島利恵,栗原加代,山岸千恵,小澤尚子
(茨城キリスト教大学看護学部)
片山康予,井上智子
(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
【目的】
本大学では終末・臨死期にある対象のトータルペインを理
解し援助する終末期看護実習を実施している。本研究は,
学生のトータルペインの理解のプロセスを明らかにし,教
育方法の示唆を得ることを目的とする。
【研究方法】
1)研究対象:2009年度終末期看護実習を終了し同意が得
られた9名の学生。インタビューガイドを活用し半構成的
面接法でデータ収集。2)分析方法:内容を全体的に把握
し文章単位に整理,意味を解釈しコード化し,類似点と相
違点を吟味しまとめサブカテゴリーとした。トータルペイ
ンの理解という共通する体験を持つ現象を選別し核となる
カテゴリーを抽出しカテゴリー間の関連を検討した。3)
倫理的配慮:趣旨,情報の守秘,結果の公表,成績に影響
しないことについて説明し,文書での署名にて同意とし
た。茨城キリスト教大学倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
学生が受け持ち患者は8名が悪性腫瘍だった。学生が語っ
た内容は198コード「 」,24サブカテゴリー< >,6カテ
ゴリー【 】に分類された。トータルペインの理解のプロ
セスは,患者との情緒的な共有体験【学生による患者体験
の共有化】を契機とし,【生きようとする終末期患者】を
常に実感しながら,【他者からの励ましによる視点の広が
り】を得て【葛藤を潜り抜ける】体験を経て促進されてい
た。理解は【共にあるケア】を生み出し,学生は,終末期
看護実習を【困難だが意味のある】実習と捉えていた。
【学
生による患者体験の共有化】では,学生は<患者の感情表
出>で患者と共に辛い気持ちになり,怒り泣いていた。学
生に怒りをぶつけた患者を「それだけ辛かった」と捉えて
いた。患者体験の共有化は【生きようとする終末期患者】
の姿を常に感じることに支えられていた。学生は実習当
初,終末期患者をマイナスイメージで捉えていたが,終末
期患者に<生の希望>を見,<今を精一杯生きようとして
いる>姿を実感して理解が深まったと語った。全ての学生
が患者の苦痛や言動に葛藤し,「逃げ」「遠ざかっている」
自分に気づき,見つめ直す機会を得ていた。学生同士等か
らの<違う価値観><共感と励まし>など【他者からの励
ましとによる視点の広がり】によって,【葛藤を潜り抜け
る】体験を経てトータルペインの理解が促進されたと語っ
た。
【考察】
終末期看護では,患者の痛みを部分ではなくスピリチュア
ルな痛みを含む全人的痛みとして理解させることが重要で
ある。本研究の結果から,終末期看護実習では1)終末期
患者との情緒的な共有体験を促進する働きかけ2)死に向
かい生きようとする終末期患者を注視できる指導3)学生
の気持ちを表出させ受容しながら葛藤を克服できる指導が
必要であると考えられた。
【目的】
緩和ケアの担い手には,患者の苦痛やスピリチュアルな
ペインに向き合うという特性から精神的負担が大きくか
かる。スタッフがストレス状態にあると,バーンアウト
や患者に対するケアの質の低下につながることも懸念され
る。チャプレンは教会以外の施設で働く宗教者のことを指
し,魂の深い痛みに応える訓練を受けている専門職であ
る。チャプレンの実質的な役割は患者や家族の精神的ケア
を担うことであるが,緩和ケアチームスタッフの疲労と挫
折の回避にも関わることが可能である。そこで,本研究で
は,緩和ケアチームにおける病棟看護師・緩和ケア医師と
チャプレン間で行われているストレス対処法を明らかにす
ることを目的にした。
【研究方法】
対象:ホスピス病棟を有するA医療機関に勤務するホス
ピス病棟看護師(管理者を含む)3名,緩和ケア医師3
名,および,チャプレン1名の合計7名。研究方法:医療
スタッフに対しては自分自身のストレスをチャプレンに相
談した経験があるかを中心に,チャプレンに対しては自分
自身のストレスに関する相談経験などの内容で,半構成的
面接を実施した。得られたデータは,職種毎に内容を分析
し,カテゴリー化し,職種間の共通性および相互関係の特
徴を検討した。倫理的配慮:A医療機関の倫理審査委員会
の承認を得た。調査対象者には,研究目的・方法,研究参
加の任意性,個人情報への配慮,公表方法等を文書と口頭
で説明し,文書にて研究参加の同意を得た。
【結果】
得られたコードから,看護師 : 4カテゴリー,医師 : 1カテ
ゴリー,チャプレン : 5カテゴリーが形成された。看護師・
医師・チャプレンの三者でストレス対処法が一致したの
は【普段の会話での自然な感情表出】であった。看護師と
チャプレンの同一の対処法は【心の部分での触れ合い】で
あった。看護師だけにみられた対処法は【チャプレンの顔
を見ることでの安心感】【チャプレンの介入による患者の
好転的変化への喜び】であった。医師だけにみられた対処
法はなかった。チャプレンだけにみられたストレス対処法
は【成果の出なかったケースに対する気持ちの共感】
【看
護師へ悩みを開示】【看護師・医師から依頼を受けること
への感謝・喜び】であった。
【考察】
看護師・医師ともに普段の会話での感情表出でストレスに
対処しており,チャプレン自身も依頼そのものが喜びにつ
ながっていることから,チャプレンが緩和ケアチームメン
バーとして十分に認知され,協働の機会が増すことでス
トレス対処も促進されると考える。また,看護師の場合,
チャプレンの存在だけではなく,チャプレンの介入による
患者の好転的変化という間接的なストレス対処法が特徴的
であったため,チャプレンが患者の変化について看護師に
伝えることが効果的であると考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
353
339)一般病棟における患者の死に起因する看護師の感情
への影響因子と対処法の有効性
340)一般病棟における看護師の経験年数による終末期ケ
アに対する意識の違い
鈴木志穂(元北海道大学医学部保健学科看護学専攻)
青柳道子
(北海道大学大学院保健科学研究院基盤看護学分野)
高橋依子(北海道大学病院)
桝谷典子(KKR 札幌医療センター)
沼田ありさ(千葉大学医学部附属病院)
林由加里,堀 陽子(JA岐阜厚生連岐北厚生病院)
【目的】
一般病棟に勤務する看護師が患者の死後に抱く感情の実態
と影響する要因,およびネガティブな感情への対処法の有
効性を明らかにすること。
【研究方法】
対象者:A 市内の急性期病院2施設において,一般病棟
に勤務している看護師327名。方法:無記名自記式質問紙
法。調査内容:1)対象の属性,2)職場環境と人間関係,
3)中井ら(2006)の Frommelt の医療者のターミナルケ
ア態度尺度日本語版の短縮版,4)患者の死後に感じる感
情(13項目)の頻度,5)ネガティブな感情への対処法に
よる緩和の程度。4)および5)は5件法で回答を求め,
点数が高いほど頻度や程度が高いことを示す。分析方法:
単純集計と,感情患者の死後に抱く感情及び対処法と各要
因との関連を調べるため,因子分析,t 検定,分散分析と
多重比較を行った。p<0.05を有意水準とした。倫理的配
慮:本研究は研究者が所属する機関の倫理審査委員会の承
認を受けて行った。
【結果】
回収率71.9%,有効回答234部(99.6%)。性別は,男性13名,
女性221名。患者の死後に抱く感情を因子分析した結果5
因子に分類された。因子1「畏怖の念」
(不安,混乱,驚
き,恐れ)
,因子2「自己否定感」(後悔,自責感,無力感,
落ち込み)
,因子3「喪失感」(悲しさ,寂しさ)
,因子4
「虚無感」(空しさ),因子5「肯定感」
(満足感,安堵感)
と命名した。1)∼3)の項目ごとに群分けし,各群の
感情の因子得点の平均値を一元配置分散分析で比較した
ところ,「畏怖の念」は,年齢,経験年数が少ない群およ
び Frommelt の医療者のターミナルケア態度尺度の下位尺
度である死にゆく患者へのケアの前向きさが低い群,「自
己否定感」は年齢と死にゆく患者へのケアの前向きさが低
い群,「喪失感」「虚無感」は小児科で勤務している群と死
にゆく患者へのケアの前向きさが低い群,「肯定感」は医
師または先輩看護師に感情・意見表出ができる群と死にゆ
く患者へのケアの前向きさが高い群が強く感じていた。ネ
ガティブな感情への対処法で最も緩和の程度が高いのは,
「チームの誰かに感情を率直に表出する」だった。
【考察】
新人看護師や小児科に勤務している看護師に対する支援体
制を充実させる必要性が示唆された。また,ネガティブな
感情の緩和にはチームの誰かに感情を率直に表出すること
が最も有効であり,ポジティブな感情は医師や先輩看護師
に感情・意見表出できる群に高かったことから,率直に相
談や話し合いのできるチーム作りが看護師のネガティブな
感情を緩和し,ポジティブな感情を高めることに寄与する
ことが示唆された。
354
【目的】
一般病棟で経験が浅い看護師と経験のある看護師の終末期
ケアに対する意識の違いの有無を明らかにすること。
【研究方法】
対象:同意を得た A 病院看護師167名。方法:先行研究で
抽出した7カテゴリを基に作成した質問紙調査を実施。調
査内容:属性(看護師経験年数,経験部署,年齢,性別,
子供の有無,家族死経験の有無,宗教の有無),「患者の
気持ちを尊重」「痛みを緩和」「患者の療養環境を整える」
「患者との信頼関係」
「患者と医師の橋渡し」
「家族との関
わりを大切にする」「心のやすらぎへの配慮」に対し,意
識の程度を10点満点の得点化で求めた。分析は経験の浅い
群(経験年数6年未満)と経験あり群(経験年数6年以上)
で t 検定(p <0.05)実施。なお,所属施設の倫理委員会の
承認を得た。対象者に研究趣旨等を書面で説明し同意を得
た。
【結果】
回収率86.2%(144名),有効回答率80.2%(134名)。経験の
浅い群42名,経験あり群92名では,「患者と医師の橋渡し」
は経験あり群が有意に高かった。属性別では,子供あり群
62名,子供なし群72名の比較で「患者の気持ちを尊重」
「痛
みを緩和」で子供あり群の意識が有意に高かった。
【考察】
「患者と医師の橋渡し」に差があったのは,満留らが「新
人看護師は医師に対してうまく自己主張できないことが葛
藤を生じる要因に繋がる」と述べているように,経験の浅
い看護師は医師とのコミュニケーションが図りにくい事,
報告事項の判断が難しい事や,医師への報告を先輩看護師
へ任せてしまう現状があり,報告の仕方に自信がなく,心
の余裕がないと考える。臨床経験を積む事により医師との
関わりが多くなり,死生観が形成される事で自分の考えを
持って医師とコミュニケーションを図る事ができるため,
経験のある看護師の意識が高くなったと考える。一方,経
験の浅くても,学生時代に患者と触れ合う事により,患者
の問題に目を向ける事ができるようになり,そのため経験
年数に関わらず,残りの6項目は,同様に意識をしている
のではないかと考える。「患者の気持ちを尊重」「痛みを緩
和」で子供がいる看護師の意識が高かったことは白波瀬が
「子供を生むか生まないかの間で意識やライフスタイルの
違いがより大きくなるという二極分解的傾向の進展と解す
ることもできる。」と述べているように,経験年数が終末
期ケアに対する意識を左右するだけではなく,その人の背
景やライフイベントも影響すると考える。終末期ケアの充
実には,経験のある看護師が経験の浅い看護師のサポート
をし,医師など他職種と連携を密にし,お互い相談しやす
い環境を作り,チームとして患者を看て関わっていくこと
が必要であると示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
341)看取りの場における看護職の死後のケアへの思い
小林祐子(新潟青陵大学看護福祉心理学部看護学科)
【研究目的】
日本人の8割が医療施設で亡くなる現在では,看護職が看
取りの場に立ち会い,最後のケアとして死後のケアを行っ
ている。最近では臨床現場を中心に,死後のケアの技術や
家族の援助に関する検討が盛んに行われており,それに関
する調査の多くは量的調査である。そこで本研究では,看
取りの場における死後のケアの実態と看護職の死後のケア
に関する思いを明らかにすることを目的とした。
【方法】
B 県内の公的総合病院,特別養護老人ホーム,緩和ケア病
棟に勤務する看護職10名を対象に,インタビュー調査を実
施した。調査期間は2009年10月∼2010年9月,調査内容は
死後のケアの実施状況,家族の参加状況,死後のケアに対
する思いなどである。分析は修正版グラウンデッド・セオ
リー・アプローチに基づいて実施し,ターミナルケアの研
究者のスーパーバイズを受けた。倫理的配慮では,書面と
口頭による研究内容の説明,研究参加の自由意思,参加の
拒否や辞退の可能,プライバシーの保護に留意し,同意書
に署名が得られた対象に実施した。
【結果・考察】
看護職が行うケアの基盤には,看護職の《最後のケアに込
めた思い》,《生前の関わりの深さが影響》があり,《その
人の尊厳を守る》ための配慮や《きれいに整える》ことを
意識していた。その反面,《避けたいという意識》があり,
《制限時間内で見送る準備への負担》
,《メイクの困難さ》
を強く抱えながらも,最期の場に立ち会う事を選ばれてい
ると捉えることでの乗り越えの姿勢がみられた。また,家
族に関しては《家族参加がもたらすグリーフケア》の意
義を実感することで,《自然なケア参加への後押し》がさ
れ,死後のケアに参加することがグリーフケアになると捉
えていた。死後のケアは看護職にとっても《別れの場とし
てのケア》であったが,何度経験しても満足できる看取り
にならないと感じていた。その要因として,死後のケア
が病院文化の中で《継承してきたスキル》であるものの,
個々の状況によって画一化できるものでなく,エビデンス
に基づく《退院後の遺体の状況の知識不足》に直面してい
ることがあげられる。そのため,従来のケアの方法を見直
して取り組む一方で,《葬儀社との連携のなさ》にみられ
るように,死後のケアにおける課題も明らかになった。死
後のケアに関する思いは,看護師によって差がみられたも
のの,亡くなったその人を尊重することが共通して語られ
ていた。今後は量的な調査を重ね,基礎教育課程および臨
床の現場での死後のケアの教授について検討していく必要
がある。本研究は平成21年度科学研究費補助金(若手研究
(B),課題番号21792242)による研究の一部である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
355
第10会場 第30群
342)在宅での看取りを支える連携の検討 −遺族が満足
感を得ることができた事例から−
343)デスカンファレンスの内容分析に基づいたターミナ
ルケアの評価
柴北早苗
(社会医療法人敬和会大分豊寿苑訪問看護ステーション)
赤司千波(長崎県立大学看護栄養学部看護学科)
大島 操(九州看護福祉大学看護福祉学部看護学科)
蓮池真美
(独立行政法人国立病院機構舞鶴医療センター看護部)
堀井たづ子(光華女子大学健康科学部看護学科)
【目的】
在宅ケアは,多くの機関と人々に支えられて成り立つが,
そのときの状況にあわせた方法をとること,目的を明確に
した上で,誰のために,何のために,ケアをどのように反
映させ,どのような効果を得るために連携するのかを考え
ながら実施することが必要といわれている。緩和ケア病棟
に体験入院し,在宅療養を選択したH氏は,「予後1ヶ月,
在宅期間は2週間」と言われていたが,3ヶ月以上も自宅
で療養することができた。H氏を看取ったあと,来院され
た妻の表情には,満足感や達成感が感じられた。H氏の在
宅療養において,連携の方法や,活用方法について検討し,
今後のよりよい連携について考えたいと思った。そこで,
本研究の目的は,在宅での看取りを行う家族を支える有効
な連携に影響する因子を明らかにすることとした。
【研究方法】
対象は,癌末期のH氏を担当した訪問看護師と介護支援専
門員。 倫理的配慮は,研究者が勤務していた病院内の倫
理審査で承認を得た。対象には,目的とデータ収集および
保護方法について書面を用いて説明し,同意を得た。研究
期間は,H22年1月∼3月にかけて,半構成面接を行い得
られたデータを分析した。
【結果】
H氏(61歳 男性 上咽頭癌 多発肺転移 入院 H20年
8月5日∼12日,在宅 H20年8月12日∼11月21日)を,
緩和ケア病棟の退院時から担当した訪問看護師と介護支援
専門員から語られた内容を,分析した結果,216のコード
から6つのカテゴリーが得られた。在宅での看取りを行
う家族を支える有効な連携に影響する因子として,『専門
的知識に基づく判断と支援』 『在宅支援ネットワークと
の連携』 『意思の尊重と意欲の支援』
『人間関係の形成』
『療養生活の調整』 『家族を単位とする支援』 が明らかに
なった。
【考察】
本事例から,在宅での看取りを行なう家族を支える有効な
連携には,在宅での生活・介護・医療をイメージした支援
が質の良いケアの提供につながることがわかった。また,
信頼できる人間関係のある連携チームは,迅速なサービス
提供につながっていた。このような連携を行うためには,
連携チームメンバーの役割や,専門性をお互いに理解し尊
重し合うことが大切だと考えられる。H氏の事例において
は,連携の経験豊かな医師と介護支援専門員・訪問看護師
が連携の中心となり,支援できたことが遺族の満足感や達
成感につながる看取りを支える連携になったと考えられ
た。
356
【研究目的】
当病棟ではターミナルケアの充実を目指し,看護師間でデ
スカンファレンスを実施している。しかし,ターミナルケ
アの評価には至っていない。そこで今回,デスカンファレ
ンスシート内容を評価し,課題を明らかにする。
【研究方法】
対象は2010年4月∼2011年3月に行ったデスカンファレン
スシート情報で,その内容を[満足のいくターミナルケア
ができたか][患者・家族から良い反応が得られた看護は
どのようなものだったか][今後の課題]の視点にコード
化しカテゴリ化した。倫理的配慮として,倫理委員会の承
認を得た。
【結果】
カンファレンスを行った対象者は34名で年齢は59∼99歳で
あった。
[満足のいくターミナルケアができたか]では,
コードは80あり,サブカテゴリを「清潔ケア不足」
「褥瘡
ケア不足」「家族とのコミュニケーションの充足」などの
18に整理し,カテゴリは『日常生活援助不足』『苦痛緩和
ケア不足』
『コミュニケーションの充足』など10に分類さ
れた。[患者・家族から良い反応が得られた看護はどのよ
うなものだったか]では,コードは5あり,
「外出できた
こと」「家族が付き添えた看取り」など4に整理し,『家族
の希望を取り入れた看護』が分類された。[今後の課題]
では,コードは52あり,
「個別的看護」「家族との情報共有」
など13に整理し,『家族との円滑な関係』『個別性のある看
護スキル』『質の高いケアを提供するためのチーム連携』
に分類された。
【考察】
「日常生活援助不足」や「苦痛緩和ケア不足」では,清潔
ケアが十分に行えなかったとの思いや,ケアの方法がよ
かったのかという思いから不足の感情が生じたと考える。
その反面,「日常生活援助の充足」や「個別的看護の充足」
では,患者がその人らしく過ごせるように配慮したケア
が実践できたとの思いから,充足の感情が生じたと考え
る。「コミュニケーション不足」では,医師との話し合い
の場や,患者・家族の希望を把握する機会を持つことが少
なかったためと考える。『家族の希望を取り入れた看護』
では,家族の希望を受け止め配慮できたことが良い反応
へつながったと考える。
『家族との円滑な関係』では,患
者・家族の希望を把握し,家族と共に患者中心のケアを実
施していく必要があると考える。『個別性のある看護スキ
ル』では,患者が最期までその人らしく生きられるように,
個別性に応じたケアを実施していく必要があると考える。
『質の高いケアを提供するためのチーム医療』では,患者
をケアし支えていくために,他職種と連携を図りそれぞれ
の役割を果たすことが重要であると考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
344)緩和ケア看護学演習において「エンゼルメイク」を
体験した看護学生の学びと実技演習の教育的効果
345)看護職のグリーフ・ストレスにおける成長過程の検
討
目黒優子,栗原弥生,新谷惠子
(新潟医療福祉大学健康科学部看護学科)
竹下美恵子(愛知きわみ看護短期大学)
【目的】
本演習である「エンゼルメイク」を看護学生間で体験して
学んだ内容を学生のレポートから明らかにし,本演習の教
育的効果についての示唆を得る。
【方法】
A大学看護学科3年次生を対象として,レポート提出後に
研究に対し同意の得られた84名(男性10名,女性74名)の
レポート内容を分析した。本演習は180分を設定し,講義
後教員によるデモンストレーションを行い,男女混合4∼
5名を1つのグループとして,全員が患者役および看護師
役を行った。演習を体験していない時間は,教室にて演習
に関するテーマ(「死を目前にした患者に対するケア」,
「死
後の患者に対するケア」,「死後の処置の手順」,「自分が考
える死への準備と家族への看護」)に沿って自己学習を進
めた。すべてのレポート提出後に,学生に研究の目的,方
法,研究への協力は自由意志であること,成績とは一切関
係のないことを文書および口頭で説明し同意を得た。レ
ポートから,エンゼルメイクを体験した学びに関する文脈
を取り出し,意味内容の類似するものをコード化しさらに
抽象度を高めカテゴリー化した。信頼性を確保するために
研究者間で見直しディスカッションを重ねた。
【結果】
エンゼルメイクを体験した学びは【ひとりの人間として
の看護師のあり方】
,【家族が患者に行うケアの意味づ
け】,【死を安らかに迎えるためのケアの適切性】の3カテ
ゴリーが抽出された。【ひとりの人間としての看護師のあ
り方】では,<看護師である以前に一人の人間であると
いう自分自身の姿勢>,<看護師のあるべき姿勢>のサ
ブカテゴリーが,【家族が患者に行うケアの意味づけ】で
は,<ケアに参加することを促し共にケアを行うことの意
味>,<家族へのケアは患者へのケアに繋がり,患者への
ケアは家族へのケアに繋がる>,<患者が亡くなった後も
家族へのケアの必要性>のサブカテゴリーが,【死を安ら
かに迎えるためのケアの適切性】では,<ケアを提供でき
る環境および時間を意図的に設定する>,<死にゆく瞬間
へのケア>,<患者と家族が共に過ごすことができる環
境・時間を意図的に設定する>のサブカテゴリーが抽出さ
れた。
【考察】
エンゼルメイクをただ単に処置として行うのではなく,死
後の遺体の外観変化を目立ちにくく保つだけのものではな
いことを学び,死に対する学生なりの向き合い方や姿勢を
育む糸口になった。患者が患者らしさを維持して死を迎え
られるように,そして患者だけではなく家族も含めてケア
を提供できるために,看護師としてさらに1人の人間とし
ての自己のあり方について再考する機会となり,家族に対
してもエンゼルメイクを通して家族の役割および家族自身
へのグリーフケアについても考える機会となった。
【研究目的】
グリーフとは,近親者の死だけでなくさまざまな喪失・悲
嘆・変化・転換に対する心理的・身体的症状を含む情動的
反応を意味し,情動的な症候群とも呼ばれる(坂口 ,2005)。
多忙な業務の中で看護職も複数のグリーフ体験を重ね,自
分の感情に対処しないまま持ち越している可能性がある。
本研究では看護職が職業において経験したグリーフに伴う
ストレッサーをグリーフ・ストレスとする。近年,死別経
験後の遺族の人間的成長というポジティブな変化について
の報告が散見され,看護職においてもグリーフ・ストレス
はネガティブな反応を生じる過程もあるが,一方ではその
体験に意味を見出し,看護職として看護の質の向上や看護
職自身の人間的な成長へとキャリア発達を促進すると考え
られる。本研究ではその過程の因果関係を表す仮説モデル
を検証し,看護職のグリーフ・ストレスとストレス関連成
長を検討することを目的とする。
【研究方法】
対象:現在,病院で勤務している臨床経験2年以上の看護
師を対象とし5つの病院に質問紙調査を依頼した。調査時
期:2010年3月∼5月。質問紙の内容:看護職が看取りや
ターミナル期のケアに対する困難感におけるストレッサー
を測定するグリーフ・ストレス尺度28項目,ストレスに対
する有益性や意味の付与を測定する13項目,人間的な成長
や看護職としてのキャリア発達を測定するストレス関連成
長として17項目,グリーフ・ストレスのネガティブな結果
である共感疲労として14項目,個人属性など。いずれの尺
度も複数の先行文献を参考に,看護職向けに項目を設定し
たが,尺度を参考にした主たる文献については著者に承諾
を得ていくことにする。倫理的配慮:研究者の所属する施
設の倫理委員会の認可を得て調査を実施した。各施設の看
護部責任者に研究協力を依頼した。研究対象者に対して説
明書を配布し,研究の目的・方法,プライバシーの保護,
研究協力の任意性,業務評価に影響のないこと,データは
目的以外に使用しないことを説明し,調査用紙は個別の封
筒に入れて回収し個人が特定されないよう留意した。
【結果・考察】
共分散構造分析を行った結果,5%水準以下で全て有意で
ある推定値(標準化推定値)が得られた。適合度指標は十
分な適合度を示しており,グリーフ・ストレスを経験し,
ストレスに対する意味の付与が得られることでストレス関
連成長にいたるという仮説モデルは指示された。ストレス
に対する意味の付与と共感疲労は有意な負のパスがみら
れ,グリーフ・ストレスに対して個人の中で意味の付与が
なされれば,共感疲労に対して緩行効果があることが示唆
された。看護職のグリーフ・ストレスを軽減するために,
体験に個人にとっての意味づけができるようなサポートを
していくことが必要と考えられる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
357
346)訪問看護師対象の「在宅ターミナルケア教育プログ
ラム」開発
小松妙子,滝内隆子(岐阜大学医学部看護学科)
前田修子(金沢医科大学看護学部)
【目的】
在宅ターミナルケアを担う訪問看護師の実践能力修得を目
指し,訪問看護師対象に「ターミナルケアに関する知識・
技術の修得度及び学習の現状と要望」の質問紙調査を実施
し,結果を基に教育プログラムを開発する。
【開発方法・結果】
1.開発期間:2010年2月∼2011年1月。2.教育プログ
ラムの定義:訪問看護師が療養者・介護者にターミナルケ
アを実践する上で必要とされる知識・技術を系統的・効果
的に学習できる一連の教育計画。3.倫理的配慮:質問紙
調査及び教育プログラム開発は,岐阜大学大学院医学系研
究科医学研究倫理審査委員会による承認を得て実施,対象
者に書面で協力を依頼し回答をもって同意とした。4.開
発プロセス:第一段階は,調査結果を基に検討,1)対象:
ターミナルケアの知識・技術の修得度や学習希望は職位に
よる差がなかったことから両者,2)学習目標:死の捉え
方(情意領域)とターミナルケアの知識・技術を含めた学
習目標を設定,3)学習テーマ:ターミナルケアに関する
知識・技術([基礎的知識]9項目[悪化期]35項目[臨死
期]8項目,
[死別期]4項目)の修得度はばらついてい
るためすべてを学習テーマ,4)学習内容:
( 1)項目別
修得度及び希望する学習内容を踏まえ学習テーマ毎に学習
内容を検討,( 2)学習の目標・テーマ・内容の整合性検
討,( 3)[悪化期]の医療処置はターミナルケア特有の
ものを選択,5)学習順序性:系統的に学習できるよう最
初に[基礎的知識]次に[悪化期]・[臨死期]・[死別期]
とし,また段階的に学習できるよう基礎から応用的内容を
学ぶ順序とする。第二段階は,一連の教育計画作成:第一
段階3)4)5)の検討結果を踏まえ教育計画は4ステッ
プで編成する,
「調査結果」より看護職・訪問看護経験年
数の少ないものほど在宅ターミナルケアに関する知識・技
術の修得度が低いため,基礎的学習内容は看護職・訪問看
護経験年数の少ないものを,応用的学習内容は全訪問看護
師を対象とする。5.学習目標:訪問看護師がターミナル
ケアを実践するために必要な知識・技術・態度を修得でき
る。6.学習内容・対象:ステップ1:[基礎的知識],ス
テップ2:[悪化期]のケア技術・態度,ステップ3:[臨
死期]・[死別期]のケア技術・態度は看護職・訪問看護経
験年数の少ないものを対象,ステップ4:応用的な知識・
ケア技術は全訪問看護師を対象にする教育計画を開発し
た。
【考察】
質問紙調査結果に基き開発したことで,訪問看護師の在
宅ターミナルケアに関する学習ニーズを踏まえたプログ
ラム開発ができた。今後は教育プログラム実践により訪
問看護師のターミナルケア実践能力の修得状況を評価し,
結果を踏まえて効果的な教育プログラム開発をめざす必
要がある。(平成22年度科学研究費補助金(基盤研究 C)
20592654)
358
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第31群
347)全口腔法における味覚閾値検査
348)入眠時の自律神経反応と主観的評価
伊藤眞由美(愛知医科大学看護学部)
田中美智子,江上千代美,近藤美幸
(福岡県立大学看護学部)
長坂 猛(宮崎県立看護大学)
【目的】
看護の教科書には加齢に伴い味覚は低下すると紹介され,
高血圧の原因になりうるとして減塩の必要がない人に対し
ても減塩対策が進められてきた。しかし,先行研究では味
覚閾値に幅がみられ,自覚した回答に潜む偶然をどのよう
に排除したか説明されているものが少なかった。そこで,
全口腔法における味覚閾値検査方法を利用範囲の広いより
安定したものとすることと,信頼性のある精度の高い検査
にすることを目指して調査を行った。
【研究対象と方法】 方法の確立には試行錯誤が予想されたため,18歳から49歳
の健康成人143名を調査対象とした。調査時の環境として
は,臭気がこもらず,騒音のない落ち着いた雰囲気で行え
るよう注意し,食事の影響を考慮して食後の2時間を避け
た。被験溶液は,日本薬局方 193-13715塩化ナトリウム
を注射用大塚蒸留水で溶解し,味覚感受性の高い被験者に
も対応できるように,0.1ミリモルから0.1ミリモルずつ増
やし1ミリモルまで10段階作成,1ミリモル以上は1ミリ
モルずつ増やし30ミリモルまで準備した。一つの濃度の味
を感じることができたかどうかを判定するために,次のよ
うな手順に沿ってテストを行い,味覚を自覚したかどうか
を判定した。同一形状のプラスティック製1オンススフレ
カップを1クールに5個用意して,それぞれのカップに5
cc の検査液を入れ,一つのカップのみにある濃度の塩味を
入れた。この5個のカップの液を口に含んでは吐き出す過
程を経て,感じた味を尋ねる。これを1クールとして,こ
のクールを濃度の薄い被験溶液から繰り返しながら被験者
の味覚を測定し,何らかの味質の存在を検知できる最小濃
度である検知閾値と味質の種類を識別できる最小濃度であ
る認知閾値を決定した。倫理的配慮:A大学倫理委員会で
承認を得て実施した。
【結果と考察】
味覚閾値の平均値は検知閾値2.7±4.5ミリモル,認知閾値
6.9±6.0ミリモルであった。認知閾値の年代比較では,20
歳代が5.7±4.5ミリモルで最も味覚感受性が高く,次いで
10歳代,30歳代,40歳代であった。認知閾値の性別比較で
は,女性6.4±5.3ミリモル,男性8.2±7.5ミリモルであり,
年代と性別による有意差は認めなかった。一つのカップの
正解は1 / 2の確率で「偶然性」を含むが,今回の方法で
5
は1クール5個のカップで成り立っているために(1/2)
で3.1%の確率であり,被験者の回答の仕方から,「偶然の
正解」は十分排除されたと考える。また,被験溶液の濃度
を先行研究で行われていた倍数希釈ではなく,1ミリモル
ずつ増加させ作成し検査したこと,1クール5個のカップ
で比較しやすく,より細かな変化に気づいたと考える。先
行研究における認知閾値20.0ミリモルより低い6.9ミリモ
ルと精度の高い検査に近づいたことが示唆されたことか
ら,今後は高齢者を対象に検討する予定である。
【目的】
睡眠には年齢や性差に関連した特徴がみられる。これまで
睡眠状態の評価は実験室でポリグラフを用いて生理的反応
を調べたり,覚醒後に睡眠についての主観的評価を行った
りした報告が多く認められる。しかし,日常生活の中で,
簡易的に睡眠状態を評価した研究は数少ない。そこで,今
回,入眠してから2時間30分の時系列データを用い自律神
経活性の変化を解析し,覚醒時の主観的評価とともに検討
することとした。
【方法】
対象は19∼38歳の女性10名である。基礎体温により高温相
を呈した者が5名(高温群)と月経開始日後の低温相を呈
した者を5名(低温群)で比較した。黄体期である月経前
10日間,そして月経後10日間の中から,2∼3日間ずつ測
定した。就寝前に簡易心拍計(Polar RS800)の電極を胸
の周りに,心拍計は腕に装着して就寝した。翌朝,記録
した RR 間隔の時系列データをパソコンに取り込んだ。今
回,分析時間は調査票の記録に示された入眠時から2時間
30分であった。これら2時間30分のデータを3分間に区分
して,1.5分毎に移動させて時系列のデータとして解析し
た。心拍数は RR 間隔から算出した。また,RR 間隔につ
いてはローレンツプロットを作成し,対称軸方向の広がり
(L)と,対称軸を横切る方向の広がり(T)を計算した。
交感神経系の指標として L/T,副交感神経系の指標として
log(L × T)を採用した。心拍のデータに加え,対象者の
前日の睡眠状態を把握するために,入床時間,入眠時間,
夜間覚醒回数,起床時間及び主観的評価について調査票に
記入してもらった。睡眠時間と主観的評価に関しては回帰
分析を行った。
【倫理的配慮】
対象には研究の目的や方法などを説明し,自由意思で随時
拒絶または撤回できること,プライバシー保護には十分注
意することなどを説明し,参加の同意を得た。
【結果】
低温群と高温群の RR 間隔は,入眠とともに一度延長し,
約70分まで減少を示したが,その後,さらに増加した。高
温群の入眠時における RR 間隔の増加程度は低温群よりも
大きかった。低温群と高温群ともに交感神経系の指標で
ある L/T は入眠後減少したが,その経過は約70分間で増加
し,その後,再び減少した。高温群における L/T の変化は
低温群よりも高い状態で推移した。副交感神経系の指標の
log(LxT)は高温群の方が,低温群よりも低く推移した。
睡眠時間と主観的評価の関係は高温群の決定係数 R 2=
0.455であり,低温群の決定係数 R 2=0.158であった。
【結論】
低温群と高温群における入眠時の RR 間隔の違いととも
に,自律神経反応の違いも認められた。黄体期に関係する
高温群では主観的評価が高いことは睡眠時間が長いことに
関係していたが,低温群では別の因子が主観的評価に関係
すると考えられた。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
359
349)排便処理における古新聞と茶葉を用いたオムツ内の
消臭効果
平本梨恵,江美真弓,武田慶子,坂尻明美
(JA 広島総合病院)
【目的】
床上排泄を余儀なくされている患者及び同室者は,排泄後
の臭気により一時的な苦痛が生じる。便臭の効果的な消臭
方法には,ベッド周囲をカーテンで囲う,臭気源を新聞紙
で包む,茶葉を使用するなどの報告はあるが,これらを比
較検討したものはない。そこで,本研究では古新聞と湿潤
茶葉を用いて,排便後のオムツ消臭効果について検討し
た。
【方法】
対象は,書面による同意を得た患者17名に片手1 / 3以上
の排便があったオムツとした。排便直後のオムツの消臭方
法は古新聞で包む(古新聞),オムツ内に茶葉を入れて包
む(茶葉),何もしない(無)場合の3群で,ビニール袋
に封入し,直後・5分後・10分後に臭気を測定した。対象
となるオムツは,1回の排便を1つの消臭方法で測定し,
3群各々30例であった。臭気はニオイセンサーで袋内を30
秒間測定し,ピーク時の値を実測した。また,同一看護師
による嗅覚で判定し,6段階臭気強度測定(Doty,1991)
を用いて判定した。消臭方法の違いによる消臭効果には
Kruskal Wallis 検定を,3群それぞれの時間経過による臭気
の強度の比較には Friedman 検定を用いた。なお,本研究
は A 病院倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
【結果・考察】
消臭方法の違いによる消臭効果の比較で,直後のニオイセ
ンサー値は,古新聞98.2,茶葉134.4,無152.3で有意差は
認められなかった。しかし,5分後・10分後では無より古
新聞・茶葉が有意に低下した(p <0.05)。嗅覚による臭気
の比較では,直後・5分後・10分後といずれの時間帯で
も,無より古新聞・茶葉が有意に低下した(p <0.05)。ま
た,古新聞は茶葉に比べてニオイセンサー・嗅覚ともに臭
気強度は低い傾向にあった。これらのことから,排便後
の悪臭の拡散防止は,オムツそのものを防臭すれば可能で
あることが明らかになった。したがってオムツはそのまま
破棄するのではなく,消臭となる処置を施してから破棄す
べきであり,その消臭方法として古新聞は特に消臭効果が
高いと考えられる。時間経過による臭気の強度を比較する
と,ニオイセンサーでは,古新聞と無が直後に比し,5分
後・10分後で有意に上昇したが(p <0.05),茶葉は10分後
でも顕著な差はなかった。嗅覚ではすべての方法で時間の
経過とともに臭気は有意に上昇した(p <0.05)。排便後の
オムツを長時間放置すれば,悪臭は増強することが明らか
になり,どの消臭方法であっても即座に処理を行うことが
排便臭の軽減に繋がることが示唆された。
360
350)腹部・腰部温罨法実施における生理的変化 −唾液
アミラーゼ活性,自律神経活性,表面皮膚温の検
討−
近藤美幸,江上千代美,田中美智子
(福岡県立大学看護学部看護学科)
長坂 猛(宮崎県立看護大学)
【目的】
今回の研究では,温罨法がもたらす全身の自律神経活性の
変化を捉えるために,表面皮膚温と自律神経活性,唾液ア
ミラーゼ活性の測定を行い,生理的反応を明らかにする事
を目的としている。
【研究方法】
対象は19歳から28歳までの12名(男性4名,女性8名)と
した。対象には罨法無条件と腹部温罨法条件,腰部温罨法
条件で,150分間の実験を行なった。温罨法を用いた2条
件では,仰臥位安静10分後,そのままの姿勢で蒸気温熱
シート(花王株 めぐリズム)を下腹部もしくは腰部に120
分間貼用し,その後除去し,30分間経過を観察した。罨
法無条件では,仰臥位で150分間安静状態を保ち測定を行
なった。測定は室温24℃,湿度45% で行い,対象者の服装
を統一した。測定項目は表面皮膚温と心拍数とした。表面
皮膚温の測定部位は8箇所(前額部,前胸部,腹部,上腕
部,手甲部,大腿部,下腿部,足背部)に設定し,3分毎
に記録した。心拍数はハートレートモニターにて連続的に
測定し,ローレンツプロット解析を用いて経時的な自律神
経活性の変化をもとめた。さらに,実験対象者12名のうち
8名の唾液を各条件の実験開始時,45分目,150分目の計3
回について唾液アミラーゼ活性を酵素法で測定した。倫理
的配慮:対象には研究の主旨と内容を直接説明し,匿名性
の保証,研究以外の目的でのデータの不使用,測定は途中
中止可能であり,中止による不利益は被らないことを伝
え,了承を得た。
【結果】
表面皮膚温の変化については,罨法無条件で末梢である手
甲部が時間の経過に従い低下傾向を示したのに対し,腹部
温罨法条件では開始時よりも1.8∼1.5℃程度高い値で維持
された。また,腰部罨法条件では0.6℃程度上昇した後,90
分経過後には開始時と同程度の温度で維持された。唾液ア
ミラーゼ活性の値は,罨法無条件では時間経過と共に唾液
アミラーゼ活性が高まっているのに対し,腹部温罨法条件
では45分時で開始時とほぼ同じ値を維持し,150分時で開
始時より高い値を示した。腰部温罨法条件では45分時に開
始時より低い値を示し,150分時では開始時より高い値を
示した。R-R 間隔から求めた自律神経活性については,交
感神経活性は腰部温罨法条件で,他条件に比べ低い値で推
移した。副交感神経活性は3条件ともほぼ開始時と同じ値
で推移し,条件ごとの特徴は見られなかった。
【結論】
腹部・腰部温罨法を実施することで手甲部の表面皮膚温が
上昇・維持されることが分かった。また,腰部温罨法で
は,唾液アミラーゼ活性の45分時の値が開始時よりも低値
であったことや交感神経活性の値が他条件よりも低値だっ
たことから,特に腰部温罨法を行うことは快適な刺激で
あったことが推察された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
351)冷えの有無に対する温罨法の効果 −下腹部温罨法
と腰部温罨法の違い−
江上千代美,近藤美幸,田中美智子(福岡県立大学)
長坂 猛(宮崎県立看護大学)
【目的】
冷え性に対する温罨法援助の基礎研究として,冷えの有無
別に下腹部と腰部の温罨法がもたらす自律神経活性の変化
を明らかにする。
【研究方法】
対象は健康な19歳から28歳までの12名(女性8名,男性4
名)とした。前額部と足背部の温度差(平均3.4℃)が大
きい6名を冷え有群(平均温度差4℃)
,小さい6名を冷
え無群(平均温度差2℃)とした。対象には温罨法無,下
腹部,腰部の温罨法の3条件を施行した。温罨法無条件
は,何もせずに仰臥位で150分間安静状態を保ってもらい
測定を行なった。温罨法2条件では,仰臥位安静10分後,
そのままの姿勢で蒸気温熱シート(花王株 めぐリズム)
を下腹部もしくは腰部に120分間貼用後,除去して30分間
経過を観察した。測定項目は表面皮膚温度,心拍数,唾液
アミラーゼ活性とした。表面皮膚温度は前額部と足背部を
測定し,3分毎に記録した。心拍数はハートレートモニ
ターで測定し,ローレンツプロット解析を用いて自律神経
活性の変化をもとめた。さらに,対象者12名のうち8名の
唾液を実験開始時と45分後に採取し,唾液アミラーゼ活性
を酵素法で分析した。対象には研究の主旨と内容を直接口
頭と書面にて説明し,匿名性の保証,研究以外の目的での
データの不使用,測定は途中中止可能であり,中止による
不利益は被らないことを伝え,了承を得た。
【結果】
罨法無条件では,冷え無群より冷え有群の前額部と足背部
の温度差が開始時と比較すると縮小した。腹部温罨法と腰
部温罨法条件において,温度差は冷え無群と冷え有群とも
に縮小しており,縮小の程度は冷え有群が大きかった。さ
らに,冷え有群は冷え無群より,開始時からの変動(温度
差の縮小と拡大)が大きかった。交感神経活性は冷え無群
が冷え有群より罨法無条件と腰部温罨法条件で低く,腹部
温罨法条件では差がなかった。副交感神経活性は冷え無群
が冷え有群より腹部温罨法条件,腰部温罨法条件で高く,
罨法無条件では差がなかった。罨法除去後,冷え無群では
腹部温罨法条件,冷え有群では両罨法条件で交感神経活性
が上昇した。唾液アミラーゼ活性は冷え無群の腹部温罨法
条件と腰部温罨法条件,冷え有群の腰部温罨法条件では開
始時より45分後に低下した。
【考察】
冷え無群に腹部および腰部温罨法を実施することは末梢の
温度を上昇させ,副交感神経活性の上昇,唾液アミラーゼ
活性の低下をきたすが,変化の程度から腰部温罨法がより
効果が大きいことが示唆された。冷え有群においては温罨
法施行による温度差と変動が大きく,開始時より,交感神
経活性と副交感神経活性の低下,唾液アミラーゼ活性にお
いて腰部温罨法では低下,腹部温罨法では変化なく,不安
定な自律神経活性が示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
361
第10会場 第32群
352)新 ICU 病衣の作成
353)双方向学習教材 PF-NOTE を活用した看護学生のコ
ミュニケーション技術教育の取り組み
富永弥生,土開美和,本波さやか,重松理恵
(富山市民病院集中治療科)
上野栄一(福井大学基礎看護学科)
【目的】
患者の病態と特殊性,安全で快適性を考慮した病衣の作
成。
【研究方法】
現状の ICU 病衣の特徴を把握,被服学の文献検索や他施
設の ICU 病衣に関する先行研究の調査,ICU スタッフに
聞き取り調査を行い病衣を試作。なお,研究は A 病院看護
部倫理委員会の承諾後,研究を開始。スタッフへの聞き取
り調査に関しては研究の趣旨を説明,個人が特定されない
ことを口頭で説明し同意を得た。
【結果】
現状の ICU 病衣は,素材は綿35%,ポリエステル65%で
色は淡黄色で男女兼用。サイズは1サイズで,着丈は108
㎝,身幅66㎝,袖丈はラグランタイプのため衿からの長さ
で32.5㎝。両肩がマジックテープとなっているデザインの
ため,平面となり着脱が容易で各種ラインもすぐに通せ
る。スタッフの聞き取り調査では,患者が「寒い」
「下着
を着たい」などの発言を聞いた,「はだけた胸元や足元を
直そうとする行動がみられた」家族が「おしゃれな人だっ
たから家から何か持って来てもいいですか」
「胸元や足元
を直そうとするしぐさが気になる」という発言があったと
の情報を得た。看護ケアする上で,
「局所的な観察の際に
も肌が露出する為,体温が低下してしまう」「体動が激し
いと胸部やオムツが露出する」「素材が薄く,汗を吸いに
くく肌が透ける」という意見があった。複合的,多角的に
現病衣を分析し ICU 病衣を試作した。試作病衣の素材は
綿70%,テトロン30%で色は白地に淡赤色と淡茶色のスト
ライプ柄(検討中)でサイズは今までと同様に男女兼用で
1サイズだが,着丈を122㎝,袖丈(肩山から)を30㎝と
長くし,身幅は55㎝と少し絞った。デザインは,前面のみ
セパレートタイプにし,胸部がはだけるのを防ぐためV
ネックで前胸部右側にボタンを配置し開閉を可能にした。
下半身はラップスカートタイプとした。
【考察】
急性期医療の現場では救命が最も重要とされる。救命が優
先とされる場においても患者の病態や回復過程の状況に応
じて,衣服を選択し改善していくことが必要であり,看護
師の使命であることはいうまでもない。試作の病衣は上半
身と下半身を前面で分断することで,ガーゼ交換や頻回な
観察・検査時,必要な部位だけの最小限な露出にとどめる
ことが可能と考えた。袖丈や裾を従来の ICU 病衣よりも
長くし,ラップスカートタイプにすることで超急性期から
のリハビリに対応ができ,自分で動ける患者に対して運動
性を妨げないよう配慮した。ワンフロアである ICU にお
いても,他患者や面会者の目を気にすることなく動け,プ
ライバシーの保護にもつながる。意識レベルの低下してい
る患者の胸元を直す,回復の望めない患者でもその個人を
尊重し着飾ってあげたいと言う家族の意見,これまでの患
者のライフスタイルやイメージを尊重したいという気持ち
の現れといえる。
362
岩脇陽子,山本容子,滝下幸栄,松岡知子,室田昌子
(京都府立医科大学医学部看護学科)
【研究目的】
看護学生のコミュニケーション技術は重要な課題である。
今回,学士課程の看護学生のコミュニケーション技術を向
上させる教育方略として,双方向学習教材 PF-NOTE を活
用して授業を展開しその学習効果を検討した。
【研究方法】
調査時期は2010年6月。調査対象は学士課程1年生83名で
ある。終了後に自己記入式の調査票を配布した。授業は1
年次配当の看護技術関連科目( 2単位60時間)の4時間
である。演習は入院時のコミュニケーションを2人一組で
患者・看護師を体験し,相互にフィードバック,学生2組
のロールプレイの見学,検査時のコミュニケーションの映
像をよい点・悪い点をマーキング,振り返りシートに記載
等で構成した。調査項目は,学習目標の到達度10項目,入
院時のコミュニケーションの体験での気づき10項目,講義
内容5項目,演習の効果とし4段階でたずねた。倫理的配
慮は文書と口頭で成績には関係しないこと,調査に協力し
なくても不利益は被らないこと,匿名性の確保等を説明し
文書にて同意を得た。
【結果】
78名(回収率93.9%)から同意が得られ,分析した。
1.学習目標の到達度:
「よくできた」と回答した割合の
多い項目から,看護師のよいコミュニケーションのあり方
を考えることができた66.7%,好ましいコミュニケーショ
ンのビデオでよい点を指摘することができた65.4%,好ま
しくないコミュニケーションのビデオで悪い点を指摘する
ことができた56.4%,どのような場面でどのようなコミュ
ニケーションをとることが必要なのかを考えることができ
た52.6% 等であった。
2.入院時のコミュニケーションの体験での気づき:
「よ
くできた」と回答した割合の多い項目から,患者が安心
できるようなコミュニケーションをとる必要性がわかった
82.1%,看護師の姿勢・表情・視線が患者に与える影響が
わかった79.5%,看護師の話のスピードや間合いが患者に与
える影響がわかった71.8%,看護師が伝えた情報がうまく患
者に伝わることの重要性がわかった69.2% 等であった。
3.講義内容:「とても」と回答した割合の多い項目から,
講義内容は将来に役立つ84.6%,講義から新しい知識を得
た69.2%,PF-NOTE を用いた演習は興味が持てた64.1%,
PF-NOTE を用いた演習の評価52.6%,授業の内容は理解
できた50% であった。
4.演習の効果:とても56.4%,まあまあ43.6% であった。
【考察】
今回の演習において学生は患者や看護師の気持ち及び自分
に必要なコミュニケーションの改善点を考える機会となっ
ていた。PF-NOTE を用いた演習は視覚的に現実的で臨場
感があり,初学者にとっても有効であることが推察でき
た。今後も1年生から2年生へと段階的な教育方法を工夫
していく必要性が示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
354)大学入学後1年間の学習を終えた看護学生の「医療
安全」に関する意識
355)入院時オリエンテーションにおける患者−看護師間
の会話分析と評価
南 妙子(香川大学医学部看護学科)
中井亜由美(京都府立医科大学附属病院)
西田直子(京都府立医科大学医学部看護学科)
和佐ゆかり(洛和会丸太町病院)
【目的】
大学入学後1年間の学習を終えた看護学生の「医療安全」に関す
る意識を調査し,看護技術における安全教育の内容検討のための
基礎資料とする。
【方法】
A大学1年次学生61名を対象に,科目としての医療安全は展開し
ていない1年次修了段階での『医療安全について考えているこ
とや感じていること(医療安全の意識)
』と『患者の安全保証の
ために看護師に必要とされるものとその理由(看護師に必要なも
の)』に関する学生の考えを無記名,自由記載にて求めた。分析
は,質問ごとの学生の記述を意味内容の類似性に基づき小項目に
分類し,更に小項目を類似内容ごとに抽象度を上げてカテゴリ分
類した。対象学生には,調査の趣旨,匿名性の確保,調査協力の
自由と成績等の不利益を被らないこと,研究会等への結果の公表
を口頭と文書で説明し,調査用紙の提出によって同意を得た。
【結果】
53名の学生から調査用紙の提出があった(回収率86.8%)
。結果の
概要を表1に示す。
『医療安全の意識』の総記述件数は129件で,
「安全保証のために必要なこと」
「医療における安全の意義や位置
づけ」「医療安全意識への学習体験の影響」などの7つのカテゴ
リに分類できた。『看護師に必要なもの』の総記述件数は98件で,
「看護師に必要な能力」
「事故予防のための具体的な方略」「看護
師の姿勢」
「人間関係力・コミュニケーション力」の4つのカテ
ゴリに分類できた。
【考察】
学生は,医療事故のニュースや看護学概論等の講義から医療は生
命に直結し,医療安全は医療行為の前提となる最も大切なこと
と捉え,病院実習での看護師の業務見学を通して事故予防の具体
的な方略としての複数確認や基本を守ることを看護師に必要なこ
とと考えている。これらは与薬行為に関する学習レディネスとし
て考えられる。一方,生活援助ケアに潜む危険を予測・判断する
力を必要とした学生は少なく講義・演習時の強化項目と考えられ
る。
表1 医療安全に関する意識
『医療安全について考え
ていること』のカテゴリ
安全保証のために必要
なこと
医療における安全の意
義や位置づけ
医療安全意識への学習
体験の影響
医療事故の原因
医療事故への思い
ヒューマンエラーの特
性
医療安全と看護師
件数
カテゴリに含まれる
(%)
小項目の内容の抜粋
37(28.7) 何度も確認してミスを防ぐ,医療者
が気を引きしめ注意する,責任感を
高め意識して行動する,他
27(20.9) 医療行為の前提となる最も大切なこ
と,ミスは許されない世界,他
26(20.2) 医療職に就くことの怖さ,確認や手
洗いを徹底する看護師の姿に医療安
全を感じた実習,実感する医療安全
の難しさ,他
16(12.4) マンパワーの不足,安全確認の不徹
底,他
12( 9.3) 看護師が事故に関わっていることへ
の思い,防げなかった事故への残念
な気持ち,他
6( 4.7) 人間は完璧ではなくミスをする,他
5( 3.9) 看護師も危険にさらされる世界,看
護師は医療安全に深く関わっている
『看護師に必要とされ
件数
カテゴリに含まれる
るもの』のカテゴリ
(%)
小項目の内容の抜粋
看護師に必要な能力
43(43.9) 患者の状態を判断する力,変化や危
険に気づく観察力,異常に気づく注
意力,確実なケア実践力,危険を予
測する力,安全を保つための知識,
他
事故予防のための具体 22(22.4) 細かく丁寧に確認する,チーム内
で方針を共有する,複数・ダブル
的な方略
チェック,他
看護師の姿勢
21(21.4) 慣れに任せず基本を守る,相手の立
場に立ち関心を寄せる,緊張感や集
中力を保つ,他
人間関係力・コミュニ 11(11.2) 患 者 か ら 異 常 を 伝 え や す く す る,
チームでの協働,他
ケーション力
【研究目的】
入院時オリエンテーションの場面における患者−看護師間
のよりよい関係を築くための効果的なコミュニケーション
を明らかにすることを目的とし,看護師と患者の会話の実
際を調べ,評価した。
【研究方法】
対象者は A 病院に2010年8月∼9月に入院した患者(言語
的コミュニケーションが可能な20歳以上の成人)で,文書
で研究主旨を説明し同意を得られた人である。同意を文書
で確認後,研究者本人がインタビューガイドにもとづいた
入院時オリエンテーションを実施し会話を録音した。その
後,説明中の態度について質問紙を用いて患者評価と自
己評価を行った。Debra L.Roter の相互作用分析システム
(Roter Interaction Analysis System;RIAS)に基づき,会話
の逐語録から発話を41カテゴリー,7グループ(社会的会
話/情緒的会話/情報提供/助言・指示/開かれた質問/
閉じた質問/プロセス)に分け分析し,さらに説明中の態
度について評価を分析した。また本研究は B 大学の倫理審
査委員会の承認を得て実施し,匿名性に配慮した。
【結果】
対象者は,手術目的で入院された5名(年齢45歳∼63歳,
平均年齢56.6歳,男性3名,女性2名,整形外科疾患4名,
泌尿器科疾患1名)であった。男性患者1名は A 病院への
入院経験があり,4名は初めてであった。オリエンテー
ションは起床・消灯,配下膳,入浴などの時間,テレビ等
の使用方法など,入院パンフレットに基づいて行い,5名
に同じ内容を説明した(平均所要時間15分51秒)。会話の
分析では,患者の心理的・身体的・社会的背景,看護師の
『遠慮・焦り』の感情,患者からの【情緒的会話】や【開
かれた質問】がないことが,看護師の発話量に影響してい
た。看護師は『遠慮・焦り』の感情を持つと【閉じた質問】
の使用が増え,『話しやすさ』を感じると【開かれた質問】
の使用が増えた。終了後の評価では,患者が必要とする具
体的な回答ができなかった項目で評価が低かった。しか
し,看護師の『遠慮・焦り』は業務的な会話に影響してい
なかった。
【考察】
看護師が『遠慮・焦り』を感じると【閉じた質問】を使用
し,一方的な説明となり,非効果的コミュニケーションが
構築され,コミュニケーションの質・量が低下する可能性
がある。一方『話しやすさ』を感じると【開かれた質問】
を使用し,自己開示が進み,効果的コミュニケーションが
構築され,患者満足度の向上やコミュニケーションの質・
量の増加が期待できる。入院時オリエンテーションにおけ
る効果的なコミュニケーションの実施には,会話の主導権
をもつ看護師の,感情コントロール,患者の状況把握,具
体的な回答の準備,【開かれた質問】を使用した会話技術
の必要性が示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
363
356)四国遍路『お接待』に潜むケアの要素 −遍路体験
記の分析から−
高橋順子(四国大学看護学部)
四国遍路「お接待」に潜むケアの要素―遍路体験記の分析
から―著者名 高橋順子 所属機関名 四国大学
【調査目的】
四国遍路は,これまで歴史学的・宗教学的・民俗学的等
様々な視点から研究がなされてきた。民族看護学の研究者
であるレイニンガーは,人の行動は「その人が持つ文化的
なものによって成り立ち人の心の健康にも影響を及ぼす」
と述べっている。四国遍路は1400㎞の行程を歩く旅であ
り,予期できない自然や遍路の孤独と肉体的困難に出くわ
す旅である。この遍路の過程を支えるのが「お接待」文化
である。そこで,「お接待」をレイニンガーが述べる「民
間的ケア」と位置づけケアの視点から分析する。
【方法及び内容】
1)分析対象 2000年以降に出版された徒歩による全行程
の遍路記のうち,11冊について「接待状況」が記述されて
いる場面を抽出し,その内容分析を行った。2)分析方法 テキストマイニングを用いて接待場面の言語を分類し基礎
的集計を行い,接待者と接待を受けた遍路者についてケア
の関係性をみた。
【調査結果及び考察】
1)ケアの成立過程の特徴「お接待」場面486件のうち,
接待者からの接近が346件(71%),遍路者からの接近は
140件(29%)であった。四国遍路は地域文化として生活
の中に根付いているため,四国の人々には,白装束に身を
包む遍路者は,弘法大師の分身として,幼少期から身近な
存在である。誰もが,自然に,世代を超えて,支援の対象
として認識している。また,相手が何を求めているのかを
注意深く観察し,ケアの対象者として位置づけて行動す
る。そこには,情報収集,アセスメント,問題抽出,実践
のケアのプロセスが成立していた。2)
「接待者」側から
見る「お接待」というケア「お接待」場面に表記された
接待者578名の構成は,成人346名(60%),高齢者137名
(24%),子ども34名( 6%)等であり,遍路記作成時に
心に残っている「お接待」の提供者は「おばさん,おじさ
ん,おばあちゃん,おじいちゃん」がその大半を占めてい
た。遍路記にある接待者の言葉の59場面を分析した結果,
「お接待」の理由は,大師信仰30名(51%)
,応援・支援が
11名(19%),話し相手8名(14%)であり,接待者自身
もお接待することに意味を見出していた。「お接待」にお
ける接待者と遍路者の関係は,Mayeroff が述べている「他
の人々の役立つことによってその人は自身の生の真の意味
を生きているのである。」に即した状況といえる。
【結論】
「お接待」は,大師信仰の宗教的社会的要因をベースとし
て成り立っているが,接待者は遍路者を「注意深く観察し,
必要な配慮と支援」を行っていた。また,「接待者自身」
も「お接待」を通して思いを果たしていた。
364
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第33群
357)看護学士課程4年生を対象としたキャリア教育の取
り組み
358)基礎看護学実習前の看護学生の動機づけと影響する
要因
眞鍋えみ子,岡山寧子(京都府立医科大学医学部看護学科)
倉ヶ市絵美佳
(京都府立医科大学看護実践キャリア開発センター)
橋元春美(京都府立医科大学附属病院)
伊藤美幸(元愛知県立大学大学院看護学研究科)
小松万喜子(愛知県立大学看護学部)
【目的】
基礎看護学実習は,学生が看護を実践する初期の実習であ
り,動機づけが重要となる。学生は実習に期待と不安を持
【目的】
ち,実習前から気持ちが揺れ動いているが,実習前から動
本学では2008年から看護実践能力の育成と卒後のキャリア
機づけられ意欲的に取り組むことは,学習を促進し主体的
アップ支援を目的として1)卒後経年的な看護実践能力の
な実習の展開につながると考える。そこで,学生の効果的
調査,2)看護実践能力評価手法の確立,3)キャリアディ
ベロップメントに取り組み基礎教育のあり方を検討してい
な実習支援と,具体的な教育方法を検討するために,基礎
る。その一環として,将来設計,キャリア,職業観と専門
看護学実習前の学生の動機づけの内容と影響する要因を明
能力の形成を目的に4年生を対象に行ったキャリア教育の
らかにする。
内容と今後の課題について報告する。
【方法】
【方法】
対象:3年課程看護専門学校2年生で,基礎看護学実習を
4年生88名のうち希望者を対象とした。
終了し,同意を得た学生20名。方法:半構成的面接。面接
教育の概要:キャリア志向学習と附属病院におけるイン
内容:実習前の動機づけ(思いや感情,行動)と,動機づ
ターンシップから構成し,キャリア志向学習では「新社
けに影響したもの等。分析方法:逐語録から動機づけの影
会人に向けたスタートアップ講座( 7月)」と「キャリア
響要因と動機づけ,動機づけに至らなかった感情や経験を
デザイン基礎講座(12月)」を開催した。スタートアップ
抽出し,KJ 法を用いて分析した。また,要約文から動機
講座では 企業の就職情報部から講師を招き,就職活動時
づけに影響した要因を抽出し,意味内容の類似性ごとカテ
のマナー,印象に残る自己PR,内定後の過ごし方等に
ゴリー化した。倫理的配慮:愛知県立大学研究倫理審査委
ついてワークと講義( 2時間)を行った。キャリアデザ
イン講座は,1)起業家の看護師を招き,看護職の可能性 員会の承認を得た。
【結果】
キャリアを活かしかたサービス,価値の提供に関するワー
実習前の動機づけ / 思い・感情・行動は,「患者等との対
クと講義( 2時間)
,2)製薬会社の人事部マネージャー
から治験コーディネーターの役割について講義を受けた
人関係が不安」「記録をして体調を整えて実習できるか不
( 1時間)
。
安」「不安で何をしていいかわからない」「実習が漠然とし
評価方法:講座の終了後に自記式質問紙によるアンケート
ており受持患者がわからないために今の学習が役立つかわ
を実施した。内容は,有効性,今後への有益性,満足度,
からず練習をやる気にならない」「学校生活の忙しさなど
自由記述であった。
から看護師になりたいかわからず実習は楽しみではない」
倫理的配慮:質問紙は無記名とし,口頭で主旨及び同意し
「看護過程を頑張って個別性に合わせた援助をしよう」「未
ない場合も不利益を被らないことを説明した。
経験の援助や前回実習で課題が残った援助や興味のある
【結果】
ことを実践したい」「受持患者や具体的な課題を知り事前
参加者はスタートアップ講座58名,キャリアデザイン講座
学習や体調を整えた」の8つに統合された。影響要因は,
7名であった。質問紙の回収は各56部,7部であった。ス
「実習目的や課題」
「受持患者の情報提示と指導等により実
タートアップ講座では約4割は講義内容に興味をもち,ほ
習に向かう準備」
「前回実習で残された課題」
「メンバーや
ぼ全員が「内容は大変良い∼良い」と回答し,その有効性
指導者との関係の課題」
「看護過程や記録ができないと落
及び今後への有益性を感じていた。自由記述では,実践的
ちると聞いたこと」「受持患者が未定で事前学習が役立つ
で今後役立つ,社会人としての基本的マナーを学べた等の
か不明であること」「実習前後の課題や学校生活の多忙さ」
感想がみられた。希望としては,就職面接時のマナーと一
「経験や授業から考えたり知ったこと」「周囲の支えや励ま
部の学生から早い時期の開催があった。キャリアデザイン
講座でも全員が内容は良いと回答しその有効性及び今後へ
し」の8つが抽出された。以上の関係をみると,不安や余
の有益性を感じていた。時間は5名が長いと感じていた。
裕のなさ,実習内容と事前課題の結びつきがわからないこ
自由記述では,興味ある分野で他の講義では習わない,内
とが動機づけを低め,実習課題や受持患者の情報提示など
容は実践的で今後役立つ,今後の看護師としての選択肢が
が動機づけを促進していた。
広がった等の感想と自由参加ではなく全員参加にした方が
【考察】
良いという意見があった。
不安は看護過程や対人関係等様々であった。動機づけを高
【考察】
めるためは,不安の内容に応じた説明や情報提示を行う必
参加者の反応から各講座の有効性は示されたと思われる。
要である。事前説明により実習目的や受持患者の情報が具
しかし,参加率が66∼8%であることから開催時期の検討
体的に示され,事前学習と実習のつながりを理解したこと
に加え,学生のキャリア形成に関する意識の低さの現れと
が動機づけを高めたことは,応用の即時性を求める等の成
も考えられ,1年生からの継続的な教育の必要性が示唆さ
人学習者の特徴の表れとも考えられる。実習課題の受け止
れた。本報告は文部科学省平成21年度助成事業「看護職
め方や取り組み方も確認して支援することが重要である。
キャリアシステム構築プラン」の一部である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
365
359)看護学生の職業的アイデンティティ尺度作成の試み
古市清美,高橋ゆかり(上武大学看護学部看護学科)
本江朝美(人間総合科学大学保健医療学部看護学科)
【はじめに】
青年期にある看護学生は,職業選択やアイデンティティ確
立が発達課題である。職業的アイデンティティは,ストレ
ス対処行動にも影響をおよぼすとも考えられており,職業
的アイデンティティの確立が新卒看護師の早期離職防止に
おいても重要である。しかし,既存の尺度は,職業志向性
や職業準備性などの視点が構成概念に入っていないものが
多く,ストレス対処能力との関連を分析するのには必ずし
も有用とはいえない。これらを踏まえ,新たな職業的アイ
デンティティ尺度の開発を試みた。
【目的】
看護学生の学習態度やストレス対処行動への関与を指摘さ
れている,職業的アイデンティティを測定するための尺度
開発を行う。
【研究方法】
1.質問紙作成:看護学生の職業的アイデンティティを
測定するために,
「職業レディネス」
「看護師になる決意」
「学習意欲」「職業志向性」「職業モデルへの同一化」「自律
性」「職業未決定」の構成概念からなる90項目を作成した。
2.表面妥当性,内容妥当性の検討:90項目について,不
明瞭で回答困難な表現,内容の重複等を検討し,最終的に
60項目を採用した。回答は5件法を用い1∼5点を配し
た。3.調査対象:看護系大学3年生61名を調査対象とし
た。4.調査内容:属性,看護学部への入学動機,進路選
択に影響を与えた人物等。5.倫理的配慮:研究者所属機
関における研究倫理委員会の審査を経て実施した。対象者
には文書にて研究の趣旨,成果の公表等について説明し,
調査票の提出を以て同意とした。調査への参加は任意であ
り,調査票回収は専用 BOX による留置法とした。調査は
縦断調査を視野に入れ連結不能匿名化を用いた。6.分析
方法:尖度と歪度による正規性分析,G-P 分析,因子分析
による構成概念妥当性の検討,I-T 分析,α係数による信
頼性の分析を行った。解析には統計ソフト SPSS 13.0J for
Windows を用いた。
【結果】
60項目を正規制分析および G-P 分析した結果,8項目が
削除された。次に52項目を主成分分析(プロマックス回
転)し,固有値1,因子負荷量0.38以上を項目決定基準と
した結果,6因子31項目の因子解を抽出した。累積寄与率
は58.59% であった。Cronbach のα係数は,0.88,0.87,0.72,
0.73,0.82,0.62であった。
【考察】
看護学生のストレス対処行動との関連を視野に入れた,職
業的アイデンティティ尺度の作成を試みた。その結果,6
因子構造であることが明らかになった。第1因子は「看護
観の確立」,第2因子は「看護師になる決意」,第3因子は
「自律性」,第4因子は「モラトリアム」
,第5因子は「看
護師への志向」,第6因子は「就業への準備」と命名した。
α係数による信頼性は高く,構成概念妥当性のある尺度で
あった。
366
360)看護学生の職業的アイデンティティの確立過程と関
連要因に関する研究
高橋美和(名寄市立大学保健福祉学部看護学科)
【目的】
看護師は,本来,専門職業人として自己の職業にアイデン
ティティ(職業に対する同一性,一体感,内在化)をもち,
職業を続けていく中で深め発達させていくと考えられてい
る。その職業的アイデンティティは,看護学生の時から育
ち始め,看護実践を通じて発達させていくと考えられてい
る。本研究は,看護学生の職業的アイデンティティの確立
過程及びその関連要因を明らかにすることを目的とした。
【研究方法】
対象は,国立大学2大学に通う看護学生で調査の同意が
得られた443名に無記名自記式質問票を用いて横断調査
を行った。調査内容は,社会的属性の他,入学目的,家
庭内の医療従事者および介護・看護経験の有無,波多野
ら(1993)の看護学生としての職業的アイデンティティス
ケールを基に作成した20項目を5段階尺度にて測定した。
なお,尺度使用にあたっては開発者の許可を得た。分析は
職業的アイデンティティの得点を総計し中央値と四分位範
囲を求め,性別,入学目的,家庭内の医療従事者と介護・
看護経験の有無別に Mann-Whitney 検定,学年別に Kruskal
Wallis 検定を用いた。有意水準は,p < .05とした。本研究
は,研究者の所属機関の倫理審査の承認を得た。また,自
由意思の参加,同意撤回の自由,不利益を生じない事,個
人情報の保護等を口頭と文書で説明した。
【結果】
看護師になるために入学した学生は318名(72.6%)であっ
た。職業的アイデンティティの総計は,1年次の中央値
が76.00(四 分 位 範 囲68.25−82.00) と 最 も 高 く, 4 年 次
が70.00(64.00−78.00)と最も低かった。また,職業的ア
イデンティティの総計は,入学目的(p < .001),学年(p
= .002)と有意差があり,性別,医療従事者と介護・看護
経験の有無と有意差はなかった。しかし,職業的アイデン
ティティの項目別では,入学目的と19項目,医療従事者の
有無は「看護の仕事は,私に適していると思う」
(p = .025)
と「看護の仕事を通じて人間としての成長ができると思
う」(p = .004),介護・看護経験の有無は「看護の仕事は,
私に適していると思う」(p = .012)と有意差があった。
【考察】
家庭内の医療従事者からの話や介護・看護経験により,看
護師への適性や看護を通じての自己成長を実感することが
職業的アイデンティティを高めると言える。調査大学の1
年次の総計が高かった理由として,1年次の対象者が他学
年と比較し少なかったことが影響していると考えられる。
また,4年次が低かった理由として,学生自身が演習や実
習を通し就職を前に改めて看護師という職業と向き合い,
自己の適性を考え,看護師に対する不安が影響しているの
ではないかと考えられる。学年によって職業的アイデン
ティティの確立に差異があることから,今後,低い傾向の
項目に焦点を当てた教育的アプローチが重要と考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
361)助産学生のライフコース構想とキャリアデサイン
−学習前後の仕事と子育てに関する意識の変化−
竹内美由紀,野口純子,宮本政子,植村裕子,榮 玲子,
松村惠子(香川県立保健医療大学保健医療学部看護学科)
【目的】
助産学生が考えている自己のライフコース構想とキャリア
デザインの学習前後の変化より,キャリアデサインと子育
てに対する意識を明らかにし,助産学教育におけるキャリ
ア発達支援の果たす役割を検討する。
【研究方法】
対象および調査期間:助産学生55名。2005年4月∼2009年
12月,助産学の学習開始時と実習終了後。調査方法:自記
式質問紙調査法。調査内容:ライフコースの構想図および
仕事の内容,職場変更の有無,自己のキャリアの将来構想
や展望,結婚年齢・出産年齢・子どもの数などの希望,子
育て中の仕事に対する考え,ライフコース構想に影響を
与えたと考えられる事項について。分析方法:統計ソフ
ト PASW による記述統計,ノンパラメトリック検定を行っ
た。倫理的配慮:研究の趣旨,データの取り扱い,成績に
は関係しないことを口頭で説明し同意を得た。
【結果】
52名93.3%がライフコース構想を記載していた。仕事は
「結婚・出産に関係なく続ける」42名76.4%で,その内「定
年まで同じ職場」25名45.5%,「出産後またはキャリアデ
ザインにより職場を変えて継続」18名32.7%,「出産後退
職し子育てが落ち着いたら再就職」6名10.9%,「結婚・
出産で退職」5名9.1%であった。職種は,
「助産師」48名
87.3%,「状況により助産師又は看護師」5名9.1%であっ
た。キャリアデザインでは自立と継続学習への意欲を示し
「施設助産師」「認定・専門看護師」
「院内助産・助産院開
業」
「海外で活動」
「看護教員」を考えていたが,学習後「助
産院開業」は9名16.4%減っていた。影響を与えたと考え
られる要因では,
「助産学教育での経験」
「両親・家族」
「友
人」の順で多く,特に学習前では「両親」が,学習後では
「実習での経験」が有意に高かった(p<0.05)。就職後結
婚は平均3.7±1.5年後,出産は平均4.8±1.5年後と考えてお
り,学習後有意に遅くなっていた(p<0.01)。
【考察】
学習を通し専門性の追求と自立への意欲が伺えた。育休を
利用し,夫・家族の支援を受けながらの仕事と育児の両立
や,子どもが学童期になれば仕事復帰し母子保健の分野で
活躍したいと多くの者が考えていた。また,就職後3年間
以上の専門的な知識技術の経験を重ねた後の結婚や出産を
考えていた。家族の姿や産婦との関わりから子育てのイ
メージが育ち,実習での助産師の姿が職業人としてのロー
ルモデルとなり自己のキャリアの明確化がライフコースの
変化に繋がったといえる。今後,助産師教育において多様
な助産師の活動やロールモデルを示すとともに,就業の定
着推進には,ワークライフバランスへの取り組みの促進と
個々のキャリア発達支援制度の充実が重要といえる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
367
第10会場 第34群
362)ヘルスアセスメント学習に高齢者が看護の対象者役
として参加した演習方法の効果
363)ヘルスアセスメント学習に地域在住者および模擬患
者を活用した演習効果の特徴
森田祐代,渡邊裕子,井川由貴,平田良江,茂手木明美
(山梨県立大学看護学部)
井川由貴,渡邊裕子,森田祐代,平田良江,茂手木明美
(山梨県立大学看護学部)
【はじめに】
本学では,対象特性を考慮したアセスメント理論の実際
(技術)について学習することを目的に,実際の高齢者を
招いた学内演習を取り入れている。臨場感のある実践を通
し,多面的な情報収集と統合の重要性,またその難しさに
気づき,今後の課題を見出すことをねらいとする。今回,
高齢者が看護の対象者役として参加した演習方法の効果を
明らかにすることを目的とした。
【研究方法】
看護系大学の2年前期開講のヘルスアセスメントの演習
に,地域で生活する65歳以上の高齢者に看護の対象者役と
して参加してもらった。演習終了後に記載したフィード
バックペーパーの「演習に対する意見」のうち研究協力の
同意が得られた73名分を分析対象とし,自由記載をカテゴ
リ化した。
【倫理的配慮】 研究目的,調査内容および方法,倫理的配慮事項(協力の
任意性・中断の権利・匿名性・データの破棄等)について
記載した文書と口頭で対象者に説明を行い,同意を得た。
本研究は山梨県立大学看護学部研究倫理審査委員会の審査
にて『承認』を得ている。
【結果】
73名の119記録単位を分析した結果,6カテゴリが形成さ
れた。以下に,その主なものを示す。なお,
【 】はカテ
ゴリ名,〔 〕はサブカテゴリ名,数字は記録単位数を表
す。【実際の高齢者を対象にした演習への満足感(31)】は
〔実際の対象者で演習できたことの満足感(22)〕〔実際に
関わることの重要性を感じた( 7)
〕他3サブカテゴリ,
【演習形式への満足感(27)】は〔全体を通して充実した演
習だった(23)〕〔実際の臨床をイメージできた( 2)〕他
3サブカテゴリ,【学びや課題の実感(21)】は〔実際の対
象者からの具体的な学び(11)〕〔この演習を通して気づい
【演習に対する意見・
た自己の課題〕他2サブカテゴリ,
要望(20)
】は〔演習の環境に対する要望( 6)〕〔演習前
の事前学習時間に対する要望〕他4サブカテゴリからな
る。以下【学生の緊張感・戸惑い(13)】
【対象者への配慮・
感謝( 7)
】であった。
【考察】
演習でのコミュニケーションを通して〔実際に関わること
の重要性を感じた〕など対象を多面的に理解し統合するこ
との大切さを実感できていることから,本演習は有意義で
あったと考える。また,学生同士や模擬患者では味わえな
い臨場感があり,今までの学びを応用しながら演習に臨め
たことや,普段関わることの少ない高齢者と話せたことが
多くの満足感につながったものと推察される。一方,演習
環境や事前学習時間に対する要望もあったことから,既修
知識の少ない2年前期に本演習を行うには事前学習時間の
確保が必要であり,グループ編成や開講時期などを考慮し
ながら,より効果的な演習ができるよう調整していく必要
性が示唆された。
【はじめに】
本学では,学生の実践力強化を目的とした新カリキュラム
科目の1つとして「ヘルスアセスメント実践論」を展開し,
ヘルスアセスメントの実践力獲得を目標に,地域在住者お
よび成人期にある模擬患者(専門職者)を対象にヘルスア
セスメントを実践する方法を取り入れている。今回その学
習効果を報告する。
【目的】
ヘルスアセスメント学習に地域在住者と模擬患者を活用し
た演習効果の特徴を明らかにする。
【研究方法】
看護系大学生99名に対する演習科目において,地域在住者
20名と模擬患者4名を対象にヘルスアセスメントの実践を
行った。演習終了後に学生が記載した「演習の学び」を,
地域在住者および模擬患者へのアセスメントを行った群に
分け,それぞれ類似性に沿ってカテゴリ化した。本研究で
は学生が演習を通して獲得したスキルや気づきを「学び」
と定義した。
【倫理的配慮】
研究目的,調査内容と方法,倫理的配慮事項(協力の任意
性・中断の権利・匿名性・データの破棄等)について文書
と口頭で対象者に説明し同意を得た。本研究は山梨県立大
学看護学部研究倫理審査委員会の『承認』を得ている。
【結果と考察】
地域在住者のアセスメントを行った学生81名,模擬患者の
アセスメントを行った学生18名,計99名の記述から,それ
ぞれ特徴的な4カテゴリを抽出した。両群共通の学びであ
る【全人的な患者理解】【コミュニケーションスキルの獲
得】【演習形式による学びと課題】の他,地域在住者のア
セスメントでは,学生は「患者への配慮」
「実践的で臨機
応変な対応」
「自分の存在が患者に与える影響」を考え【患
者への対応における実践力】を学んでいた。一方,模擬患
者のアセスメントでは「専門職者である模擬患者からの
フィードバックによる学び」を学習効果と捉え,知識ある
患者に対応する「自己の知識不足」を自覚し【患者に対応
できる知識の必要性】を実感していた。
また共通の学びである【全人的な患者理解】のうち,地域
在住者のアセスメントでは,特に「実際の関わりや生活背
景から形成される患者の理解」や「個別性のとらえ方」
「人
間としての生き方」まで学び,【コミュニケーションスキ
ルの獲得】では「アセスメントに活かす情報収集スキル」
や「深めるコミュニケーションスキル」など,生活背景や
生き方から患者を理解し主体的で積極的な関わりを学んで
いた。模擬患者の場合は事例に沿った対応であるのに対
し,地域在住者の場合は患者の持つリアルな生活体験や考
えから,学生が自ら考えて話題を広げ患者を理解し,様々
な配慮をしながら臨機応変な対応が必要となる。以上の演
習効果が明らかになったため,今後は科目目的に合わせた
演習展開に活かすことができると考える。
368
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
364)医療事故防止における臨地実習前・中・後の指導の
あり方 −過去10年間の文献からの検討−
365)学士課程における総合看護学実習後の看護技術の経
験状況
岩瀬裕子,田中英子(熊本保健科学大学)
中橋苗代,梶谷佳子,那須潤子(京都橘大学看護学部)
【目的】
医療事故防止における臨地実習前・中・後の指導の現状を
文献より把握し,指導のあり方を検討する。
【研究方法】
< 対 象 文 献 > 医 学 中 央 雑 誌 Web を 用 い て, 過 去10年 間
(2000年∼2010年4月)の文献検索を行った。「看護学生」
をキーワードに「医療事故防止」と「インシデント」を加
え,116の文献が検索された。そのうち特定の実習科目や
技術項目に関するものは除き,臨地実習(以下実習)前・
中・後のいずれかで指導された内容が記載されていた15の
文献を対象とした。<分析方法>研究者2名で,実習前・
中・後にわけて指導の形態・内容・効果を抽出した。<倫
理的配慮>文献の要旨を侵害しないよう研究内容を正確に
読み取った。
【結果】
実習前に関する文献11,実習中11,実習後8<実習前>指
導形態は講義10,グループワーク(以下 GW)8,実技演
習2であった。GW の方法は KYT などを用いての事例分
析などであり,その効果は他者の意見を共有することで多
くの危険因子に気づくことができたなどであった。実技演
習ではリスクを伴った移乗技術の体験などであり,その効
果は自分が行動に移せる危険回避策を考えることができた
などであった。教材は移乗介助,点滴実施中の援助などで
あった。<実習中>指導内容は報告書記載7,安全カン
ファレンス(以下カンファ)3などであった。報告書記載
の効果は自己の行動を分析し事故防止につなげているなど
であった。カンファでは学生が起こしたヒヤリ・ハット体
験(以下体験)の振り返りや指導者からの実際の安全管理
などについての具体的な指導であり,その効果は危険因子
の視点が広がったなどであった。<実習後>指導形態は
GW 6,講義2であった。教材はすべて自分たちが実習中
に体験したヒヤリ・ハットであり,その効果は他者の体験
を共有することで,危険意識や危険予知力を高められたな
どであった。
【考察】
実習前の指導では,講義で医療事故に対する意識を高め,
そして GW でヒヤリ・ハットを起こしやすい場面を取り
上げることによって,発生状況を具体的にイメージさせ,
事故を自分のこととして受け止めさせることが必要であ
る。また思考の訓練だけでなく,実技演習を行うことに
よって,危険因子を実感でき,具体的な対策を立てること
で実践の場で活用できると考える。実習中では,ヒヤリ・
ハット発生前に,実習の早い段階でカンファを行い,危険
予知力を高めることが必要であり,さらに体験後,本人や
他の学生が同じ間違いを繰り返さないよう指導することが
重要である。実習後では,さらに危険予知力を高め,継続
して学習していくよう指導することが必要である。そのた
めには,自分たちが体験したヒヤリ・ハットを教材に振り
返ることは効果的であるが,事例を提供した学生への心理
的な支援は重要である。
【目的】
A 大学看護学部4年生を対象として総合看護学実習(以
下,総合実習とする)終了時の看護技術の経験状況を明ら
かにし,看護技術教育の内容および方法を検討する基礎資
料を得る。
【研究方法】
対象者:2010年 A 大学看護学部4年生で総合実習を実施し
た29名。調査期間:平成22年8月。調査方法:自記式質問
紙調査。総合実習前と実習後の2回実施。看護技術の経験
状況は,「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度」を基
に調査票(12領域76項目)を作成し,実施−見学−未経験
(実施も見学もしていない)により回答を求めた。分析方
法:総合実習前後の看護技術の経験状況を単純集計し,総
合実習前後の技術の経験状況を比較した。倫理的配慮:研
究への参加は自由意志であること,研究協力の有無と総合
実習の成績は一切関係しないことを説明し,調査票の回収
をもって同意とみなした。
【結果】
調査票の回収は29名(回収率100%)であり,有効回答数
は28名(有効回答率96%)であった。
1)総合実習後の技術経験状況:全員が実施した項目は,
環境整備,車椅子移送,体温測定,呼吸測定,脈拍測定,
血圧測定,歩行介助・移動介助,清拭,陰部洗浄の9項目
であった。また,全員が未経験の項目はなかった。5割以
上が未経験の項目は,洗髪(ベッド上),洗髪(洗髪車)
,
指圧・マッサージ,採尿,検査時の援助(内視鏡:胃,大
腸等),包帯法,胸腔ドレーンの管理,導尿,ストーマ造
設者のケア,体位ドレナージ,検査時(内視鏡)の援助,
その他(アロマセラピーなど)の12項目であった。
2)総合実習後に有意に増えた経験項目:総合実習後に見
学・経験が増えた項目は64項目であった。前後で有意に差
のあったのは28項目であった。最も差の大きかった項目
は,臥床患者のシーツ交換,続いて床上排泄,意識レベル
の観察,寝衣交換,ストレッチャー移送などであった。ま
た,総合実習後に5割以上が未経験であった項目は,洗髪
(ベッド上),体位ドレナージ,検査(穿刺・造影)時の援
助,胸腔ドレーン管理の4項目であった。検査(内視鏡)
時の援助は未経験の学生が21名(75%)と最も多く,前後
の差があったものの有意な差はなかった。
【考察】
全員が実施した項目は日常生活援助およびバイタルサイン
技術であった。5割以上が未経験の項目に,唯一日常生活
技術である洗髪(ベッド上)があったが,臨床で用いる頻
度の高い洗髪台での洗髪が反映されていなかったと推察
できる。また,総合実習を経て看護技術の経験は増えお
り,経験が有意に増えた項目は,活動制限がある患者を受
け持ったことにより増えたと考えられる。学生が主体的に
テーマを設定する総合実習では,テーマに応じた実習内容
と並行させて,学生の経験を踏まえて,看護技術を経験で
きるような実習内容を盛り込む必要があるといえる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
369
366)学士課程における総合看護学実習後の看護技術到達
状況
梶谷佳子,中橋苗代,那須潤子(京都橘大学看護学部)
【目的】
A大学看護学部4年生を対象として総合看護学実習(以
下,総合実習とする)前後の看護技術の到達度を明らかに
し,看護技術教育内容および教育方法を検討する基礎資料
を得る。
【研究方法】
対象者:本学の2010年度看護学部4年生で,総合実習を
行った29名。調査期間:平成22年8月。調査方法:自記式
質問紙調査。調査は総合実習前と実習後の2回実施した。
看護技術の到達度は,2007年,厚生労働省の『看護基礎教
育の充実に関する検討会』が示した〔看護師教育の技術項
目と卒業時の到達度(13領域 141項目)
〕を使用し,“単独
で実施できる”“指導のもとで実施できる”“学内演習で実
施できる”“知識としてわかる”の4件法にて回答を求め
た。分析方法:総合実習前後の看護技術の到達度を単純集
計した後,総合実習前後の項目毎の差の検定を行った。倫
理的配慮:研究への参加は自由意志で,協力の有無と総合
実習の成績は一切関係しないことを説明し,実習室に設置
した箱への調査票の回収をもって同意とみなした。
【結果】
調査票の回収は29名(回収率100%)であり,有効回答数
は27名(有効回答率93%)であった。1)総合実習後の看
護技術の到達度全員が単独で実施できると回答した項目
は,「環境整備」「手洗い」「車椅子移送」「バイタルサイン
測定」であった。全員が単独で実施できると回答しなかっ
た項目は「酸素吸入療法」
「酸素ボンベの操作」の2項目
であった。また,過半数が“知識としてわかる”と回答し
た項目は32項目あり,そのうち28項目が検査・治療に関す
る技術であった。3項目はストマ管理,摘便,失禁ケアで
あり,1項目はフィジカルアセスメント技術の循環器のア
セスメントであった。2)実習後に到達度が上昇した項
目 実習前後の比較で有意に到達度が上昇した項目は141
項目中26項目であった(<0.05)。27項目の内訳で最も多
かった項目は「活動・休息の援助」6項目であった。続い
て「排泄の援助」および「清潔援助」5項目,
「救命の処置」
および「栄養の援助」2項目,「安楽確保」,「症状・生体
機能管理」,「呼吸・循環器を整える技術」はそれぞれ1項
目であった。
【考察】
実習後の到達度においては単独で実施できる項目に日常生
活援助技術が多く,知識のみわかるとした項目は患者の身
体侵襲が大きく,学生が実施することの限界がある診療援
助技術の項目が多かった。実習後に到達度が上昇した項目
で日常生活援助技術が多い中,
「救命の処置」が2項目あっ
た。救急看護に関心をもつ学生の救急外来実習の結果が反
映していると考える。以上から4年間を概観した実習毎に
経験できる技術項目を抽出し教員と学生で共通すること,
総合実習終了後の学生の到達度を早期に把握し,実践力を
育成するための,個別の卒業前技術演習の必要性が示唆さ
れた。
370
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第35群
367)看護学生の病床環境観察に関する思考過程 −眼球
運動と発話内容による分析−
368)基礎看護教育における学生の捉える呼吸音の表現と
特徴
林 静子(埼玉医科大学保健医療学部看護学科)
西山ゆかり(明治国際医療大学看護学部看護学科)
安藤晴美(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
上星浩子,内山かおる(桐生大学医療保健学部看護学科)
藤本桂子(群馬大学大学院保健学系研究科)
【目的】
我々は,看護大学生の学年進行に伴う観察時間,観察時の
思考内容の一部の違いについて第1報・第2報として報告
を行った(林ら;2009,安藤ら;2009)本研究では,さら
に病床環境を整えるといった看護行為に至る前の病床環境
から何を視覚情報として取り込み,取り込んだ情報がどの
ような意味をもっているのかを明らかにすることを目的と
する。
【研究方法】
看護大学生1年生10名を対象とした。方法:病床環境を設
定し1)対象者にアイマークレコーダー EMBR-8B 型標準
セットを装着し,設定した病床環境を整えるための観察を
するように説明し,眼球運動を記録した。実験後2)第1
段階として映像を被験者に見せ何を見て,なぜこの行動を
とったのかを解説してもらった。
(思考発話法)さらに3)
第2段階として,第1段階で話した行動の意味について
半構成的面接を行った。発話内容,面接内容は IC レコー
ダーに録音し逐語録に起こした。分析:アイカメラを用い
得られたデータは解析ソフトウェア EMR- d Factory を使
用し,視線配置部位を空間的に分類し,観察部位を設定し
0.5秒以上注視しているものを注視時間とし解析した。発
話・面接内容は1つ1つ意味単位ごとにまとめて記述し,
「観察部位」「思考内容」として判断できたものを内容の類
似性に基づき比較しカテゴリー化を行った。倫理的配慮:
本研究は A 大学の倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
眼球運動による観察部位,<枕元><全身><足元><ご
み箱・スリッパ><オーバーテーブルの上>など14部位に
分けられ,臥床している患者を中心とした部位を多く観察
している傾向がみられた。総観察時間は3分12秒461∼34
秒668(平均1分23秒787),部位カテゴリーの平均観察時
間は10秒158∼2秒607(平均5秒526)であり,項目別の
一回あたりの観察時間は<ベッド周囲>が18秒252と最も
長かった。発話データから分析した観察部位では<枕元:
ティッシュ><枕元:落ちている髪の毛><足元:出てい
る足><足元:乱れたシーツ>など細かい部位に分けられ
た。行動の意味としては,<注目><気がかり>から<推
測><確認>を<経験知識><価値観>のもとに行い,
<清潔><快適><安全>の視点から<予測><判断>を
行い<援助への意欲>といった一連の過程と,<戸惑い>
<気にならない>といった反応に分けられた。
【考察】
初学者である看護大学1年生ではあるが,病床環境を整え
るという看護行為の思考過程を行っていると考える。今
後,講義や演習,実習等の経験により思考過程やその思考
内容が変化していくことが考えられる。(本研究は文部科
学省の科研費:課題番号20791678の助成を受けて実施し
た。)
【目的】
学生は呼吸音を正式名称ではなく,擬音語で表現すること
が多い。呼吸に関する研究では練習回数による教育効果や
ミニマムエッセンシャルズはされているが,呼吸音の表現
に関する研究はない。学生が呼吸音を自分の言葉で表現し
その状態がイメージできたなら,少ない経験でも呼吸状態
の理解に繋がるのではないかと考えた。そこで学生が捉え
る呼吸音の表現と特徴について明らかにすることを目的と
した。
【研究方法】
対象:A 大学看護学科2年生74名。調査方法:ヘルスアセ
スメントの講義開始前に正常呼吸音,低調性連続性副雑
音,高調性連続性副雑音,粗い断続性副雑音,細かい断続
性副雑音,胸膜摩擦音のシュミレーター音を1種類につき
20∼30秒間,各2回 , 計12種類の音を聴取,音の聞こえ方
や状態を表現した。講義終了後,開始前と同様の呼吸音を
聴取,名称確認テストを行った。分析方法:単純集計およ
び意味内容の類似性に従いカテゴリ化した。倫理的配慮:
匿名性,自由意思,成績には無関係と説明。回答用紙の提
出で同意とみなした。
【結果】
講義開始前74名,終了後69名の回答用紙を分析対象とし
た。正常呼吸音は,
《グゥーグゥー》
《フゥーフゥー》
《ゴー
ゴー》が多く,その状態は「規則正しいリズム」「寝息の
よう」
「正常」と表現していた。低調性連続性副雑音は,
《グーグー》《ゴォーゴォー》が多く,《いびき》《牛ガエル
の鳴き声》という表現もあり,状態は「何か詰まってい
る」「喉が圧迫されている」であった。高調性連続性副雑
音は,《ヒューヒュー》《クォークォー》が多く,《高速車
が通り過ぎた音》《フクロウの鳴き声》という表現もあり,
「気管が狭い」「狭い場所で何かがぶつかる感じ」であっ
た。粗い断続性副雑音は,
《ゴロゴロ》
《ボコボコ》が多く,
「すごく痰が多い」「痰が気泡になって弾ける感じ」であっ
た。細かい断続性副雑音は,《カラカラ》《コロコロ》であ
り,「痰がからんでいる」「十分に吸気できない」であっ
た。胸膜摩擦音は,《ギュゴゴゴ》《ズッズズズ》《グワッ》
《ブォー》など多様な表現であり,
「きしむ床を引きずる」
「古いドアを開く」であった。終了後の名称確認テストで
は正常呼吸音は81.88%,低調整連続性副雑音は鼾音など
の俗称を含めると75.36%,高調性連続性副雑音は73.19%,
胸膜摩擦音は41.30%の正解率であった。
【考察】
学生は呼吸音を多様な擬音語や状態として捉え,同種類の
音を聞き分けていた。学生が捉えた音やイメージした状態
と講義で示した名称や呼吸状態・特徴が一致することによ
り,知識と体験が統合し理解と納得に繋がる。本研究は一
大学の限られたデータで一般化には至らないが,今後,対
象を広げ学習効果との関連性を検討していく必要がある。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
371
369)自己学習支援による授業の試み学生による模擬授業
を行っての理解とアンケート結果
370)清潔に関する看護技術教育に実験を取り入れる効果
岡本千尋,滝内隆子(岐阜大学医学部看護学科)
井村弥生(関西医療大学看護学部)
赤阪 綾(青葉丘病院)
【目的】
学生による模擬授業の機会を設け,学習の取り組みや理解
を深めることを目的とする。
【方法】
1)対象:A 看護系短期大学1年生45人。2)成人看護学
概論終講後,1グループ6人編成,45分の持ち時間で学生
が模擬授業を実施した。授業の方法についてオリエンテー
ションを実施後,急性期に起こる症状別看護についてグ
ループ毎に模擬授業を行った。授業内容は呼吸困難,意識
障害,嘔吐,発熱,胸痛,出血の6項目とした。授業終了
後,講義内容のテストを実施し,またアンケート調査を
行った。テスト内容は過去の国家試験を参考に症状別看護
について各項目10題の正誤を問うものとした。またアン
ケートは教授側と受講側からの気づきや感想(13の質問で
4段階のリッカート尺度を利用)を調査した。また教授体
験を行って良かった点,悪かった点,今後の課題について
自由記載とした。3)倫理的配慮:研究対象者に研究の主
旨,個人特定されないこと,成績評価に反映されない事を
説明し任意提出とした。
【結果】
1)回収率97.7%で,うちテストは白紙回答が9人含まれ
有効回答率は80% であった。2)テスト結果:全体の正解
率は54.7% であった。各項目の正解率では出血が最も高く
68.7%,次いで嘔吐が65.8% となり,最も点数が低かった
ものは胸痛の27.6% であった。授業実施後のアンケート結
果は,〈授業にまじめに取り組み・積極的に参加した〉〈資
料や講義は有用であった〉と感じている者が90% 以上みら
れた。自由記載では,1つのことにじっくりと行う必要性
や物事を伝える授業するという難しさ,人に伝えるには十
分な知識が必要である事,理解を深めるためにどれだけ勉
強したらよいのかが理解できたという意見がみられた。今
後の課題では〈いろいろなことに興味をもって積極的に発
言したり調べたりする必要性〉
(自分自身のために学習を
行う必要がある)などの意見があった。
【考察】
今回自主学習の動機つけとして,学生による模擬授業を試
みた。テストの正解率は54.7と低い結果となった。しかし
教授体験することで,より深く調べ学習することの困難さ
や,具体的にどれほどの時間や努力をする必要があるのか
理解できていた。また今後の学習課題を見出すことになっ
たと述べている。これらは学習者としての地位と責任が与
えられたことにより学習の動機が外的要因から内的要因と
変化し,自発学習へと繋がると考える。しかし学生中心に
実施する教授方法だけでは不十分な理解であり,従来の講
義形式である受動的学習と自発学習の能動的学習の組み合
わせが必要であると考える。成人期にある者には自己の問
題を認識する支援と配慮が必要になり,さらに看護者には
自己学習能力が求められるため,初学者へ自発的学習の機
会を考慮した教育方法が必要であると考えた。
372
【目的】
清潔に関する看護技術は,患者の皮膚の状態や汚れの程度
を考慮して実施する必要があり,個別性が高い。今回,清
潔に関する看護技術を実施する上で必要な洗浄剤の種類に
ついて,実験を通じて pH・水分量・洗浄力の相違を理解
させ,個別性に配慮した洗浄剤の選択が出来るような看護
技術教育を実施した。その効果を明らかにする。
【方法】
1.対象
本学1年生78名
2.実施時期
1年後学期(11月)
3.研究方法
1)第1段階(洗浄剤の相違の理解)
清潔に関する看護技術で用いられる洗浄剤には,アルカリ
性石鹸・弱酸性石鹸・清拭剤があり,これらの洗浄剤の相
違を理解するために,学生間で以下の4つの実験をする。
( 1)アルカリ性石鹸で洗浄した時の洗浄力と皮膚の pH・
水分量。
( 2)弱酸性石鹸で洗浄した時の洗浄力と皮膚の pH・水
分量。
( 3)洗浄剤で清拭した時の洗浄力と皮膚の pH・水分量。
( 4)アルカリ石鹸洗浄後,保湿ローション塗布による水
分量保持力。
洗浄剤の種類によって洗浄力や皮膚の pH・水分量に違い
があること,また実施者の皮膚の状態により,同じ洗浄剤
を使用しても,数値が違うこと(個別性)を理解させる。
2)第2段階(第1段階の学習内容を事例に応用)
事例:80歳の女性。皮膚は薄く弾力性が無い。乾燥してカ
サカサしており,毎日清拭は行われているが,入院して3
日洗髪・入浴は行っていない。この事例患者に対し,A:
pH を弱酸性に保つためには? B:水分量が不足している
時には? C:汚れが強い時には?という3つの状況に応じ
て,洗浄剤を選択させる。
4.分析方法
A・B・C の記載内容と,我々が設定した模範解答の正答
率を分析する。
5.倫理的配慮
本研究は,岐阜大学医学系研究科医学研究等倫理審査委員
会で研究の承認を受け,研究対象者には研究目的や方法,
匿名性,研究への参加は自由意思であること,成績には影
響しないこと等を,口頭と文書で説明した。
【結果】
1.有効回答率
回収数は72枚(回収率92.3%),有効回答数71枚(有効解答
率98.6%)であった。
2.正答率
A と B の正答率は100%であり,C は52%であった。
【考察】
A と B の正答率が100%であったことより,洗浄剤の種類
によって,皮膚の pH や水分量・洗浄力が相違することを,
実験を通じて理解することは,患者の皮膚に適した洗浄
剤を選択することに効果があった。しかし,C の正答率は
52%と低い。これは,実際に見て触れたことの無い事例患
者のような皮膚状態をイメージ出来ず,
「 3日洗髪・入浴
は行っていない。」という状況に自己の体験を重ね,洗浄
効果の高い,皮脂をよく落とすアルカリ石鹸を選択した学
生が多かったと考える。この結果を踏まえ,実験の科学的
根拠をより現実的に理解するためには,事例設定に近い皮
膚状態である模擬患者の協力を経て実施する等の工夫が必
要であることが分かった。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
371)先輩看護学生参加型の看護技術演習における協同学
習の取り組み
米田照美,伊丹君和(滋賀県立大学人間看護学部)
【目的】
協同学習法は,認知心理学の状況認知アプローチの一つで
あり,学生間での相互作用が学習への理解・意欲・動機づ
けを高めることが先行研究より示唆されている。看護教育
における協同学習法の学習効果は国内で報告があるが,先
輩看護学生が後輩看護学生の技術演習に参加する協同学習
法の報告は少ない。今回,従来の教員主導型演習との比較
によって,先輩看護学生参加型演習(以後,先輩参加型と
いう)の有効性を検討する。
【方法】
1.対象者:A看護系大学の看護学生1回生60名。4回生
6名。2.調査方法:自己記入式質問紙調査。平成22年12
月,1回生の看護技術演習「清拭」を2回に分けて実施し
た。( 1回目:
( 1)教員主導型演習,2回目:( 2)先輩
参加型演習)
( 1)( 2)各演習終了後に1回生を対象と
して質問紙調査を実施。なお,先輩参加型の進め方を次
に示す。1)演習事前準備:教員から4回生への看護技
術・知識の確認,役割等の打ち合わせ。2)演習当日:教
員が講義・実演後に学生間の技術練習(協同学習)の実
施。1回生10名に対し4回生1名が技術指導を担当。教員
は巡回し,4回生への指導支援。3.倫理的配慮:本調査
の目的・内容,参加の自由,個人評価に不利益がないこ
と,得られたデータは研究目的以外に使用しないこと,守
秘義務について説明し,同意と協力を得た。4.調査内
容:「看護技術の理解」
「疑問の解決」「指導・助言の活用」
「学習意欲」
「演習の楽しさ」など10項目( 5件法)と自
由記述欄より構成。5.分析方法:
( 1)( 2)の比較を
SPSS16.0 for Windows を用いて,ノンパラメトリック検定
(Wilcoxon 検定)を実施。
【結果】
1.有効率100%。質問項目の得点平均値± SD は,「看護
技術の理解」
( 1)教員主導型3.07±1.12点( 2)先輩参加
型3.97±0.58点,「疑問への質問」( 1)3.48±0.98点( 2)
4.22±0.74点,「疑問の解決」( 1)3.47±0.93点( 2)4.20
±0.66点,
「看護技術への学習意欲」
( 1)2.98±0.95点( 2)
4.55±0.57点であり,教員主導型より先輩参加型が有意に
高かった(p <0.001)。また,「指導・助言は役立ったか」
( 1)4.55±0.80点( 2)4.83±0.38点,「演 習 の 楽 し さ 」
( 1)4.27±0.71点( 2)4.60±0.56点であり,教員主導型
より先輩参加型が有意に高かった(p <0.05)。自由記述に
は「技術を頑張り,先輩のようになりたい。」等の記載が
あった。
【考察】
先輩参加型は従来の教員主導型と比較して,看護技術への
理解・動機づけ・意欲に効果があったと考えられる。本研
究の限界は先輩参加型の効果に教員主導型の影響が考えら
れることである。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
373
第10会場 第36群
372)「 5分間 head to toe アセスメント」を通した老年
看護実習での3年次生の学び
373)学士課程4年生における看護技術演習・シミュレー
ション学習の評価
西村直子,前田惠利,芦立典子,谷村千華,野口佳美,
大庭桂子(鳥取大学医学部保健学科)
毛利貴子,光木幸子,笹川寿美,滝下幸栄,山本容子,
山縣恵美,高尾憲司,眞鍋えみ子,岡山寧子
(京都府立医科大学医学部看護学科)
倉ヶ市絵美佳(京都府立医科大学附属病院)
【目的】
老年看護学実習で「 5分間 head to toe アセスメント」を実
施した3年次生の学びを明らかにする。
【研究方法】
「 5分間 head to toe アセスメント」の指導方法:臨地実習
で学生が毎日記載する実習記録用紙に,受け持ち患者に必
要な観察の視点と観察実施結果を記載させ,助言した。ま
た,学生が作成した問題関連図をもとに個人面談を実施し,
観察すべきポイントとなぜその観察項目が重要なのかを指導
した。参考資料を配布し,学生の自己学習を促進した。
分析対象:老年看護学実習終了後に提出された A 大学看護
学専攻3年生17名の実習記録の「 5分間 head to toe アセス
メント」自己評価表
分析方法:学生の記述内容を元に,獲得した知識や学び,
体験した感情として記録された文脈を抽出し記録単位に整
理,類似性から帰納的にカテゴリー化を行った。信頼性確
保のため,複数の研究者で内容を確認し,一致させた。
倫理的配慮:所属大学倫理委員会の承認を受け,学生にプ
ライバシーの確保,諾否が評価・指導に影響しない旨を説
明,文書での同意を得た。
【結果】
7つのカテゴリと26のサブカテゴリが抽出された。以下カ
テゴリを《 》でサブカテゴリを< >で示す《患者の理
解が深まる》の内容として<全体を捉える><患者を変化
している存在として捉える><自分の目で見てふれて感じ
る大切さを知る><広い視野でみる><患者にとって必要
な観察項目がわかる><患者の変化にいち早く気付くこと
ができる><客観的に患者を捉える><見逃している情報
に気づく><疾患に即した観察項目を把握する>などを学
んでいた。
《フィジカルアセスメントを捉えなおす》の内
容は<実施前のフィジカルアセスメントのとらえを振り返
る><うまくできないことで戸惑う><フィジカルアセス
メントの必要性を実感する>であった。《患者への関心が
たかまる》の内容として<患者との距離が縮まる><患者
にあったコミュニケーションを模索する>などを経験して
いた。
《看護学生としての姿勢を持つ》の内容として<常
に観察しながら関わる><思考する><緊張感を持つ>な
どを学んでいた。《自信を持つ》ことは<アセスメント能
力の向上を実感する>機会を通して獲得していた。《学習
課題を明確にする》では<自分の未熟さに気づく>ことが
助けとなっていた。《個別的なケアへの活用を意識する》
ことを「 5分間 head to toe アセスメント」を用いた看護過
程の実践を通して経験していた。
【考察】
実習経験が少ない3年次生ではあるが,「 5分間 head to
toe アセスメント」を用いて試行錯誤しながら症状が典型
的でなく個体差の大きい高齢者の看護について多くのこと
を経験し,学んでいた。
374
【目的】
A 大学では看護実践能力向上を目的とした授業の一環とし
て,4年生を対象に臨床看護師と教員による看護技術演
習・シミュレーション学習を行った。これらの演習におけ
る受講生の評価を明らかにし,卒業前の学生が求める演習
のあり方を考察する。
【方法】
授業を選択した4年生22名を対象に,自己記入式質問紙を
看護技術演習,シミュレーション学習終了後に配布した。
調査内容は,内容の有効性,今後の有益性などを「大変よ
い」∼「悪い」の5段階で問い,演習全体の意見を自由記
述で求めた。分析は演習の有効性,有益性等は基本統計量
を算出し,自由記述は内容の類似性に従いカテゴリー化し
た。倫理的配慮は,研究概要と研究参加は自由意志であり
成績には影響を与えない等説明し同意を得た。授業内容は
1オリエンテーション :「看護に必要な力とは」を KJ 法に
て整理,発表した後,看護技術演習計画書をグループで作
成,2看護技術演習 : 呼吸,循環,消化器のシミュレータ
を用いたフィジカルアセスメント,3事例の技術演習をグ
ループ毎に実施,3 シミュレーション学習 : 狭心症発作時
の対処の演習であった。技術演習,シミュレーション学習
では臨床看護師がロールモデルを示し,学生の演習に対す
る指導も行った。
【結果】
22名中20名から回答が得られ,性別は男性1名,女性18名,
無回答1名であった。技術演習,シミュレーション学習の
内容は「大変良い」60%「良い」40%,プログラムの有効
性「大変良い」90%「良い」10%,今後の有益性「大変参
考になる」85%「参考になる」10%無回答5%であった。
自由記述の内容49文を分類したところ,<学びの内容>
<教育方法−良い点><教育方法−要望>のカテゴリーが
明らかになった。<学びの内容>では[急変時の対応が
できる等8サブカテゴリー,<教育方法−良い点>では
[臨地に即した内容でイメージしやすい]等11サブカテゴ
リー,<教育方法−要望>では[シミュレータに触れる時
間を増やしてほしい]等4サブカテゴリーが抽出された。
【考察】
今回の演習は,演習計画書を作成し認知レベルでの「看護
に必要な力」を確認後,臨床看護師の実践見学,学生の実
践を指導者らが指導するという段階を経て,行動レベルで
の「看護に必要な力」習得をめざした。学生の多くは授業
から多くの学びがあったと記述していたことから,効果的
な演習であったと考える。全員が全ての課題を演習できる
ようにするなど学生の要望を取り入れた授業の検討が課題
である。本報告は,文部科学省平成21年度助成事業「看護
職キャリアシステム構築プラン」の一部である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
374)看護技術修得のための自己学習ツールとしての VTR
活用の有効性
375)Moodle を利用したブレンディッドラーニングの授
業実践における学生の学習活動
曽田陽子,大津廣子,尾沼奈緒美,西尾亜理砂,山口桂子,
箕浦哲嗣(愛知県立大学看護学部看護学科)
吉川千鶴子,須崎しのぶ,山下千波,川口賀津子,
中嶋恵美子(福岡大学医学部看護学科)
【目的】
看護技術を修得するための自己学習ツールとして VTR を
用いた振り返りを導入し,その有効性を検証する。
【研究方法】
寝位交換,点滴静脈内注射を学修済みの2年生14名を対象
とした比較実験研究。14名を無作為に実験群と対照群7名
ずつに分け,
「点滴中の患者の寝衣交換技術」の事前評価
で両群の修得度に有意差がないことを確認後,週1回の自
己練習を1か月間実施した。両群の練習は2∼3人1組と
なり1人の練習を1回20分間とした。練習後の振り返り
は,実験群は VTR 3台で撮影した映像の視聴とチェック
リストを併用し,比較群はチェックリストのみを使用し
た。また練習終了毎に振り返りシート「自分の技術を振り
返り考え感じたこと」
「技術力向上に必要なこと」の記述
を求めた。1か月後,事後評価を事前評価と同様に行っ
た。分析は事前・事後評価で使用したチェックリスト項目
を「できている」1点「できていない」0点で得点化し,
実験群,対照群の得点の平均値および学習効果度の平均値
を算出し,両群間の差を t 検定で比較した。振り返りシー
トの記述はコード化し比較した。なお本研究は所属大学の
研究倫理審査委員会の承認を受けた。
【結果】
事後評価得点の平均値は実験群20.00±4.86,対照群18.36
±3.33と実験群が高いが有意差はなかった。また学習効果
度の平均値は実験群0.45±0.20(最大0.73,最小0.29),対
照群0.40±0.10(最大0.51,最小0.20)と実験群が高いが有
意差はなかった。実験群の「自分の技術を振り返り考え感
じたこと」は,“無駄な動作”“動作が雑”など『動作の効
率性』や,『コミュニケーション』『袖の通し方・寝衣の扱
い方』『患者への配慮不足』『観察不足』『ボディメカニク
ス』であった。対照群では『袖の通し方』や『点滴の扱い
方』の記載が多く,実験群にある『動作の効率性』『患者
への配慮不足』『観察不足』『ボディメカニクス』の視点は
なかった。「技術力向上に必要なこと」として実験群だけ
に記載された内容は“動線を短くする工夫”など『効率の
よい動き』の視点であった。
【考察】
学習効果度の平均値は実験群が高かったが有意差はなかっ
た。これは練習期間が1か月,練習回数が4回と短かった
ことが影響したと考える。しかし実験群において学習効果
度の最大値が0.73の学生がみられたことは,VTR を用い
た練習が自分の行動を客観視する機会となり技術向上のた
めの練習の動機づけになったと推察される。また学生は自
分を客観視することで無駄な動作に気づき『効率のよい動
き』の必要性を認識していた。自己学習において無駄な動
作やボディメカニクスに気づき改善するには,VTR を用
いて学生が自身を客観的に振り返るという練習方法を継続
していくことの重要性が示唆された。
【目的】
e-learnig シ ス テ ム を 利 用 し た 授 業 は, 学 習 意 欲 が 高 く
ない学生に対しての対応が問題となっている。そこで,
Moodle を利用してブレンディッドラーニングの授業実践
を行ない,授業時間外での学生の学習活動の実態を明らか
にすることを目的とした。ブレンディッドラーニングと
は,e ラーニングの授業時間外の利用と対面授業を組み合
わせた学習環境を指す。
【研究方法】
対象:4年制大学看護学科2年生で基礎看護技術を履修し
た学生97名を対象とした。期間:平成22年12月。方法:対
面授業と組み合わせてオープンソースの Moodle を利用し
学習支援を行なった(*は Moodle 利用)。授業内容別に,
予習の小テスト*→講義→自作の DVD コンテンツ*→演
習課題*→演習→相互評価→フォーラム投稿*→復習テス
ト*→技術テスト→技術テスト結果配信*を行ない,授業
終了時にアンケート調査を行なった。内容は,1.利用
環境 2.利用時間 3.活用目的 4.小テスト・課
題の適切性 5.DVD コンテンツの満足度7項目と6.
Moodle に対する感想の自由記載で構成し,1∼3は複数
回答,4∼5は「そう思う」から「思わない」までの4段
階で回答を求めた。分析は記述統計で回答数に対する人数
割合で比較した。
【倫理的配慮】
研究目的,研究内容について文書と口頭で説明し質問紙の
返却をもって研究協力の同意とみなした。
【結果および考察】
回答数82名(回収率84.5%)。利用環境は,自宅が87.8%,
大学内のパソコン57.3% であった。アクセス時間は30分が
35%で最も多く,次いで11∼20分が26%であった。時間帯
は20時∼0時が66%,0時以降が24%と夜間のアクセス
が多かった。いつでも手軽に短時間で学習している状況
が伺えた。活用目的は予習78%,技術テスト前の技術確
認68%,自己学習51.2%,復習41.5% であった。一般的に e
ラーニングの活用目的は復習や自己学習であるが,今回は
予習目的が最も高かった。看護技術教育は到達を目標とす
るので,学生自ら必要性を感じてアクセスしていることが
推察された。フォーラムでのディスカションも学生の関心
を引きつける要素であったと考える。Web 教材に関して
は90%以上がテスト教材や演習課題を肯定的に受け止めて
いた。自作の DVD コンテンツは,95%以上が「理解しや
すかった」「技術習得に役立った」と評価し,「必要と思っ
たときに学習できる」「繰り返し見れる」ことを良い点と
して挙げていた。Moodle を利用することは,「自宅」で好
きな時間に自学・自習できるという利便性をもたらし,授
業時間外の学習活動を促したと考える。看護技術教育で
行なった Moodle を利用したブレンディッドラーニングは,
学習意欲を刺激し授業時間外の学習活動を促す教育方法で
あることが示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
375
376)e ラーニングシステムによる基礎看護技術習得への
学習支援の評価
緒方 巧,西上あゆみ,湯浅美香
(梅花女子大学看護学部看護学科)
【目的】
e ラーニングシステムによる基礎看護技術習得への学習支
援における,学生の e ラーニング視聴と活用の実態,知識・
技術習得との関連を分析し効果と課題を明らかにする。
【方法】
対象:B 大学看護学科1年生90名。期間:2010年9月24
日∼2011年2月28日。調査内容:質問紙による e ラーニン
グ視聴の実態調査,e ラーニング視聴覚教材11項目(実技
試験の該当項目3項目を含む)全ての視聴回数と試験成
績。分析:単純・クロス集計,自由記述のカテゴリー化,
SPSSver.13による相関係数。倫理的配慮:B 大学研究倫理
審査委員会の承認を受け文書と口頭で説明。調査協力は任
意,個人評価と無関係で回答は無記名,個人の視聴データ
と成績は同意書を用い協力意思を確認。
【結果】
質問紙と同意書の回収率100%。e ラーニング視聴実態で最
も高かった項目は,学生のパソコン所有率91.1%,e ラー
ニング視聴時期は「視聴覚教材配信後から演習日までの都
合のよい時」86.7%,視聴場所は「自宅」76.7%,視聴時
間は「平日の帰宅から就寝の間」65.6%。「視聴への関心」
98.9%,
「視聴意欲」95.6%,e ラーニングシステムは「不可
欠・必要」98.9%,技術習得に「役立つ」98.9% で,その
主な理由は「事前学習に役立つ」,「教科書でわからない部
分がイメージできわかりやすい」,「いつでもどこでも何度
でも視聴でき復習できる」。視聴時の主な学習方法は「事
前学習する」56.7%,
「イメージトレーニングする」31.1%,
e ラーニング活用の工夫は,「資料作成」,「予習復習に利
用」が多く,93.9% が「クラスメートとの情報交換とポー
トフォリオ」をしていた。「基礎看護技術演習への意欲」
は100% が「とてもある・まあある」
,教材作成への改善希
望は,「動画を増やしてほしい」,「印刷しやすくしてほし
い」が多かった。
e ラーニング視聴覚教材の視聴回数と試験成績との関連で
は,ペーパー試験のクラス平均73.6点に対し平均点以上の
学生57.8% の11項目の平均視聴回数24回,平均点以下の学
生19回で成績と視聴回数に相関があった。60点満点の実技
試験(視聴項目3項目)のクラス平均は50点,平均点以上
66.7% の学生の平均視聴回数6回,平均点以下の学生5回
で成績と視聴回数に相関はなかった。
【考察】
e ラーニング視聴は平日に自宅での事前学習に役立ってお
り,教科書で得られにくい基礎看護技術のイメージ形成や
理解を促し,e ラーニングの「いつでもどこでも何度でも」
視聴できる利点が復習にも役立っていた。基礎看護技術の
知識・技術の習得確認の試験と視聴回数との関連では高得
点の学生ほど視聴回数が多かった。今後は,e ラーニング
視聴覚教材の作成に工夫を重ねて教育効果を高めていきた
い。技術習得を高める要因として e ラーニング視聴と技術
の自主練習との関連なども分析していきたい。 376
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第37群
377) ブ レ ン デ ィ ッ ド ラ ー ニ ン グ シ ス テ ム を 活 用 し た
e-learning のアクセス履歴の分析
378)基礎看護技術教育への e ラーニング導入期における
視聴実態の分析
高橋由起子,松田好美,梅村俊彰
(岐阜大学医学部看護学科)
湯浅美香,西上あゆみ,緒方 巧
(梅花女子大学看護学部看護学科)
【目的】
ブレンディッドラーニングシステムは,対面式の授業と
e-learning を融合した授業形態である。今回構築したブレ
ンディッドラーニングシステムは,急性期看護方法1・
2の授業と本校で使用している AIMS-Gifu システムを活
用した e-learning による学習を組み合わせたシステムであ
る。e-learning 部分は授業にあわせて予習・復習ができる
確認テストと演習に必要な知識の習得を目的とした独自の
ビデオ教材の課題に関するものを取り入れた。今回ブレ
ンディッドラーニングシステムの効果を確認するために,
AIMS-Gifu システムの中の確認テストと e-learning 教材の
アクセス履歴を分析する目的で研究を行った。
【研究方法】
4年大学看護学科2年生72名を対象とし,2009年度の急性
期看護方法1・2の授業の中で使用した e-learning 部分の
アクセス状況を分析データとして使用した。分析内容は,
1)総アクセス数,2)課題別(17課題)のアクセス数,3)
課題に取り組んだ期間(予習,授業の小テスト,期末テス
ト)別アクセス状況について単純集計を行った。
【倫理的配慮】
A 大学大学院医学系研究科医学研究等倫理委員会で承諾を
得た。
【結果】
総アクセス数は6793回で,学生1人あたり平均アクセス数
は94.3(±38.2)回であった。最も多かったアクセス数は
218回であり,最も少なかったアクセス数は31回であった。
課題別のアクセス数で最も多いアクセス数だったのは,
「術前に関する問題」で997回,最も少なかったのは「胃癌
に関する問題」で49回であった。1人1課題あたりの平均ア
クセス数は5.5(±3.7)回であった。課題に取り組んだ期間
としては予習として活用したアクセス数は854回であり,授
業の小テストのために活用したアクセス数は1062回,期末テ
ストのために活用したアクセス数は4877回であった。
【考察】
e-learning による学習は主体性のある学生は積極的に学習
しているが,アクセス数が1課題1アクセス程度の学生に
対しては e-learning に取り組めるような個別的なフォロー
が必要である。課題別のアクセス数では,
「術前に関する
問題」のアクセス数が多い。これは授業開始初回の課題で
あり,アクセス数が少ない課題は授業後半の課題であっ
た。授業開始時は学習に取り組むモチベーションも高いた
め,積極的に課題にアクセスしていると考えられる。学習
へのモチベーションを持たせ続けるような授業のあり方が
必要であろう。課題に取り組んだ期間としては期末テスト
のために学習したアクセス数が他の期間の4倍以上ある。
学習は日々の積み重ねが大切であり,このシステムが日々
の学習の中で活用していけるようなシステム作りと,学生
への働きかけが必要であろう。
本研究は文部科学省科学研究補助金(基盤研究(C))の
助成を受けて実施した。
【目的】
基礎看護技術の習得を目的として,e ラーニングシステム
で配信した視聴覚教材の使用状況を調査し,本システムの
有用性を明らかにする。
【研究方法】
基礎看護学では「看護援助論1」の習得を目的として e
ラーニングシステムを導入し,援助技術11項目の視聴覚教
材を各演習日の約1週間前に配信した。1.対象者:B 大
学看護学部の1年生90名。2.研究期間:平成22年9月24
日から平成23年2月28日。3.調査項目:1)配信した援
助技術11項目の視聴覚教材にアクセスした学生数およびそ
の回数。2)各演習日の演習直前と実技試験課題提示日に
集計。4.分析:単純集計。5.倫理的配慮:B 大学研究
倫理審査委員会の承認を得た上で,学生からは視聴状況に
関するデータの使用について文書によって同意を得た。
【結果】
同 意 書 の 回 収 率 は90名(100%) で あ っ た。 各 演 習 日 の
直前の視聴率(視聴者数 /90×100)が高かった項目は,
「全身清拭」97.8%,「洗髪」96.7%,「基本ベッドの作成」
93.3% で,低かった項目は,「車椅子」63.3%,「体位変換」
68.9%,「リネン交換」67.8% であった。一人当たり平均視
聴回数が多かった項目は,
「足浴」2.2回,
「衣生活」2.1回,
「洗髪」2.0回で,低かった項目は,
「体位変換」1.0回,
「リ
ネン交換」1.1回,「車椅子」1.3回,「リネン交換」1.3回で
あった。実技試験課題提示日の視聴率が高かった項目は,
「全身清拭」98.9%,「洗髪」97.8%,「身体計測」97.8% で,
平均視聴回数は,
「全身清拭」2.5回,「洗髪」2.4回,「足
浴」・「衣生活」・「バイタルサインの測定」2.3回であった。
演習直前と実技試験課題提示日の視聴率の増加率を比較す
ると,課題提示日では,
「車椅子移乗」143.9%,
「体位変換」
135.5%,「バイタルサインの測定」114.5% の順で高く,平
均視聴回数は「体位変換」266.1%,
「車椅子移乗」205.5%,
「バイタルサインの測定」187.0% の順であった。なお,11
項目中視聴率が100% の項目はなかった。
【考察】
視聴学生数と平均視聴回数の多い項目は,患者への身体的
負担がかかる難易度の高い技術であるため授業前後に繰り
返し視聴したと考えられる。初期の演習項目である「基本
ベッドの作成」の視聴率が高かったのは,技術習得と視聴
への意欲や関心が反映されたと考えられる。実技試験課題
提示日に視聴率が高まった要因は,
「車椅子移乗」
,「体位
変換」は演習前に視聴が少なかったので再確認のために
視聴したこと,「バイタルサイン測定」は援助時に必ず測
定する必要があり実技試験前に確認のため視聴したことが
考えられる。e ラーニングは授業前後や実技試験に向けて
の練習時に活用され,さらに複数回視聴されており,その
有用性を明らかにできたと考えられる。今後は視聴率を
100% にできる働きかけを検討したい。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
377
379)グループで学びを共有する模擬患者参加型看護技術
教育の学生による評価
380)グループワークを用いた看護過程の学習における学
生の学びと困難に関する研究
吉川洋子,松本亥智江,平井由佳,田原和美,柴麻由子
(島根県立大学短期大学部看護学科)
河相てる美,一ノ山隆司,若瀬淳子,村田美代子
(富山福祉短期大学看護学科)
【目的】
看護実践力育成に向けて,Simulated patient(SP)が参
加する看護技術演習を必修科目におき実施した。実施後の
学生による授業評価をもとに,教育方法や教育効果を評価
し課題を明らかにする。
【方法】
1.対象:3年課程看護学生89名,2年次後期1単位「S
P参加型看護技術演習」の履修者。2.演習内容:心筋梗
塞の患者にシーツ交換や洗髪,車椅子介助,不安への対処
が求められる4場面。学生は4人一組で事例・場面につい
てアセスメント・ケアプランの立案,発表・意見交換,実
施に向けての練習を行う。1人のSPに4人の学生がケア
を実施し,SP,教員,学生からフィードバックを受ける
演習を2回実施。学生全員が異なる2場面を体験。SPは
学外の看護師及びSP養成講座を修了した一般住民。3.
データ収集:演習終了後,授業評価を実施。項目は,教育
方法と効果に関する11項目,実習準備に関する6項目,演
習への参加に関する5項目,事例や場面の理解2項目,教
員の関わり2項目の26項目について5件法( 5;とても
そう思う∼1;全くそう思わない)による評価及び改善に
対する自由記述。4.分析方法:SPSS ver.14.0を用い
記述統計を行い,自由記述は類似の記述を整理した。5.
倫理的配慮:研究の目的,自由意思による協力,成績への
無関与,匿名性について説明し,授業評価の提出により同
意とみなした。所属機関の研究倫理委員会の承認を得た。
【結果】
回 収 数82, 回 収 率92%。「 5; と て も そ う 思 う 」,「 4;
ややそう思う」を合わせた「そう思う」の肯定的な評価
が,教育方法と効果に関して,教員・SP・学生からの
フィードバックが役立つ(99%),真剣に取り組む動機づ
け(98%),看護技術の習得に役立つ(98%),学生間で十
分な話し合い(96%),学生間の協力(99%),2回実施に
よる学びの深まり(96%)などであった。実習準備に関連
しても,
「そう思う」の評価が実習への意欲(89%),実習
への課題の明確化(90%),学習の仕方の理解(89%)で
あったが,実習に対する不安や緊張の軽減(61%)は低かっ
た。演習への参加では演習に意欲(94%),主体的に学習
(94%)であった。また,事例の理解のしやすさ(82%),
場面の理解(84%)であった。教員の助言・指導(83%),
教員へのアクセスのしやすさ(71%)とやや低かった。改
善への意見では教員の評価基準にばらつきの指摘があっ
た。
【考察】
SP参加型教育の利点であるフィードバックや真剣な実施
に評価が高く,方法の工夫として行ったグループ学習や2
回の実施についてもよい評価があり,学生の看護技術の習
得や実習への準備に効果があったと考える。今後,演習全
体を通しての教員の関わり方や評価方法について検討の必
要が明らかになった。
【目的】
グループワーク(GW)の学習効果は高く,学生の主体的
な取り組みや問題解決能力の育成のために,看護基礎教育
に多く実施されている。GW では学生間相互の協調性が重
要となるが,学生はその過程で戸惑いを抱く。A 短期大学
1年次の看護過程の学習方法はステップ1に GW,ステッ
プ2に個人ワークを実施している。
本研究はステップ1の GW から学生がどのような学びを
得たか,どのようなことに困難を感じたかを明らかにし
て,教授法改善のための基礎資料とする。
授業の概要:講義時間は6回(×90分),演習時間を10回
(×90分)
,その5回目に中間発表会を実施して,10回目は
最終発表の構成である。演習時間がペーパーシミュレー
ションを用いた GW である。
【研究方法】
1.対象:A 短期大学看護学科1年次学生75人
2.方法:授業終了後の課題に「看護過程の GW を終え
て」のレポートを課し,そのレポートから学びと GW で
の困難を記した文脈を抽出した。
3.分析方法:文脈から共通性と相違性の検討,類似する
内容の集約後,帰納的にサブカテゴリ,カテゴリを生成し
た。データの信頼性確保は研究者で合意形成のため意見が
一致するまで討議した。
4.期間:2010年10月から12月
5.倫理的配慮:レポート提出後,学生に研究の趣旨,目
的や対象者の権利,匿名性の保持,研究の参加の有無にか
かわらず成績には影響しないことを説明し同意を得た。ま
た本研究は,所属機関の倫理委員会の承諾を得た。
【結果】
分析した結果,19のサブカテゴリと7のカテゴリ《集団の
凝集性》,《看護の専門知識の必要性》,《発表による学び》,
《共通理解の困難性》
,《メンバーの非協力的態度》
,《学習
の停滞》,《時間的制約による負担》を生成した。
【考察】
GW では集団の凝集性の効果があり,他者の考えを知る機
会,さらに自分の考えの広がりから理解の促進になってい
るが,意見の収束が容易ではないので共通理解の困難性が
ある。また,専門知識の習得,文献活用の意義と発表し他
者に伝えることを学ぶ反面,GW に参加しない学生,分担
項目の学習をしない学生によって役割に偏りが生じてお
り,GW の困難として表れた。学習経過には,看護過程の
展開時,基本的知識の理解に時間を要したことと併せて,
初めて会話をする学生とのコミュニケーションに不安が生
じて,リーダーシップあるいはメンバーシップが発揮でき
ずに学習の停滞になっていた。
GW において困難を強く感じる学生ほど終了後の満足が低
い1)ことから,教員は課題の明確化とグループワークの
目的・目標を伝え,その進行状況を把握しながら能動的に
関わっていく必要性が示唆された。
文献
1)藤野ユリ子:看護学生がグループワークで感じる困
難と満足との関係,日本看護学教育学会誌,15(1),1-14,
2005
378
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
381)がん当事者参加型講義を取り入れた授業の効果
平野裕子,渋谷えり子
(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科)
【目的】
がん患者や家族への理解を促進するための教育方法とし
て,当事者参加型講義を受講した看護学生の学びを明らか
にし,教育効果を検討する。
【方法】
期間は平成22年11月。がん看護を含む演習科目において実
施した,当事者参加型講義「私のがん体験―看護学生に伝
えたいこと―」( 1コマ90分)を受講したA大学2年次生
を対象に,学びと感想についてA5判用紙1枚に自由記載
を求め,留置法にて回収した。分析は,記述内容から表現
された文脈に留意し,1文章単位で講義により得られた学
びを示した部分を抽出し,意味内容を解釈,カテゴリー化
した。本研究は,研究者所属機関の倫理委員会の承認を
得,実施した。対象者には不利益が生じないよう,本該当
科目成績評価終了後,書面にて同意を得た。当事者には,
子宮頸がん4 a 期にて化学療法,手術療法を受け,4年間
再発がない者を縁故法にて選定,本講義の趣旨に同意を
得,数回の事前打ち合わせを実施した。尚,当事者には中
学生の子どもがおり,30年以上の看護師経験があった。
【結果】
123名中,同意の得られた119名(回収率96.7%)より得ら
れた526文章を分析対象とした。得られたカテゴリーは,
5つであった。≪がんは,さまざまな苦悩や葛藤をもたら
す≫では,<知識があるからこそがん発見後から生じる苦
悩がある>の他,1つのサブカテゴリーが得られた。≪が
ん治療は,家族や部下など周囲の人へ影響を及ぼすが,そ
の存在が闘病の支えとなる≫では,<がんは自分だけの問
題ではく,家族や職場に影響する>の他,2つのサブカテ
ゴリーが得られた。≪前向きにがん治療を受けても,想像
以上の苦痛を伴なう≫では,<手術をしても継続する身体
的苦痛がある>の他,3つのサブカテゴリーが得られた。
≪自分らしくがんと付き合う≫では,<がんの共存し,自
分らしく社会復帰する>の他,4つのサブカテゴリーが得
られた。≪自己の目指す看護師像を明らかにし,学習姿勢
を見直す≫では,<自己の目指す看護師像を明らかにし,
今できることを行う>の他,4つのサブカテゴリーが得ら
れた。
【考察】
多くの学生は,自己の看護観,生命観に働きかけ,身に起
きた出来事に立ち向かいながらがんと闘い,自分らしく看
護師として今を生きる当事者の生き方に強い関心を寄せ,
自己の目指す看護師像を見つめ直していた。また,がんは
多くの葛藤や苦悩をもたらすが,上手に付き合うことで自
分らしい有意義な生を取り戻せるという新たな気付きを得
た。しかし,排尿障害など言語化されない事象については
十分な理解が得られていなかった。当事者の語りを一時的
な印象深い話に終わらせないよう,疾患理解を十分に促
し,看護学生として健康上の問題をとらえ,対象理解を促
せるよう,工夫が必要である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
379
第10会場 第38群
382)ロールプレイ法による患者指導演習の学習効果
383)ターミナル期の患者を受持った学生のストレスと
コーピング
小濱優子(川崎市立看護短期大学看護学科)
【目的】
本研究は,role-play 法を用いた糖尿病の患者指導演習後の
学生の学びを分析し,学習効果を明らかにすることを目的
とした。
【方法】
対象:Y 看護短期大学3年課程2年生43名(男子3名,女
子40名)。データ収集期間:平成21年10月。方法:事例を
もとに4つの指導テーマ(食事療法,運動療法,薬物療法,
合併症)のうち1つをグループ学習し作成したパンフレッ
トをもとに,異なるグループ間で看護師役と患者役がペア
を組み全員がロールプレイを実施した。演習終了後,看護
師役の学生レポートをデータとして Berelson の内容分析を
行った。記録単位は「看護師役を通して学んだこと」が表
現された1文章とした。それを同一記録単位群にまとめサ
ブカテゴリとし,それをカテゴリ分類しカテゴリネームを
つけた。カテゴリ分類の一致率をスコットの式により算出
し,分析結果の信頼性を検討した。倫理的配慮:口頭で研
究趣旨を説明し,匿名性および中途辞退の保証,研究以外
に使用しない,評価に影響しない等を伝え,同意書にて同
意の有無を確認した。
【結果】
レポートの記述内容は,179の記録単位に分類され,その
うち175記録単位をデータとした。意味内容の類似性に従
いサブカテゴリにまとめ,12カテゴリに分類された。さら
に『患者尊重』
,
『表出行動』,
『自己統制』,
『環境調整』,
『教
材活用』の5つのコアカテゴリが形成された(表1)
。カ
テゴリの一致率は70.6%であり信頼性の確保を示した。
【考察】
分析の結果,12カテゴリには患者指導技術の主要な側面が
表れていることがわかった。今回のロールプレイによる演
習を通して,学生は患者指導に必要な学びを得ていたこと
が明らかとなった。また「指導者側の緊張感への対応」の
カテゴリは,指導テーマが異なるグループ間で相手を組み
合わせたことが影響したと思われた。模擬的な体験学習の
機会であっても指導者としての緊張感を意識することがで
きたものと思われる。
表1 演習後の学生の学び
全記録単位数 n =175(100%)
コアカテゴリ
患者尊重
表出行動
自己統制
環境調整
教材活用
380
カテゴリ
患者の理解度を確認して指導する
患者の考えや特徴に合わせて指導する
患者の生活状況に合わせて指導する
患者の意欲向上につながる指導
具体的にわかりやすく説明する
口調や話し方への配慮
表情,姿勢,視線に配慮する
自分が学習し理解した上で指導する
個別指導実施に伴う指導者側の緊張感
への対応
共感的態度で接する
患者指導のための雰囲気作り・環境整備
パンフレット作成の工夫
記録単位数(%)
26(14.9)
17(9.7)
63(36.0)
12(6.9)
8(4.6)
32(18.3)
18(10.3) 63(36.0)
13(7.4)
19(10.9)
5(2.9)
31(17.8)
7(4.0)
9(5.1)
9(5.1)
中山朋子(国立がん研究センター東病院)
及川紳代,森一恵(岩手県立大学看護学部)
【目的】
ターミナル期の患者を受持った学生のストレスとコーピン
グ内容,コーピングの効果を明らかにする。
【研究方法】
対象者:A 大学看護学部に在籍する4年生。2009年10月∼
2010年7月に行われた実習でターミナル期の患者を受持
ち,本研究に同意の得られた者7名。研究期間:2010年8
月∼9月。調査方法:対象者の背景を研究者が作成した
自記式質問紙を用い,対象者にストレスとコーピング内
容,コーピングの効果について半構成的質問紙を用いて面
接を行った。分析方法:面接で得られたデータは遂語録に
おこし,コード化・カテゴリー化を行った。分析にあたっ
ては,スーパーバイズを受けた。倫理的配慮:依頼した看
護学生に研究の主旨,目的,方法を文書と口頭で説明し同
意を得た。参加は自由意志で,実習成績が確定後面接を行
い,成績には反映しないことを説明した。得た情報は全て
本研究内で使用され,個人が特定されることがないよう情
報を記号化し,研究終了後は破棄した。
【結果】
対象者は全員女性,受持ち期間は4∼10日であった。ター
ミナル期の患者を受持った学生のストレスは<辛い思いを
自分の中に抱え込んでしまう><思い描くターミナル・ケ
アを当てはめてしまう>など7カテゴリーが抽出された。
ターミナル期の患者を受持った学生のコーピングについて
は<ストレスになることからできるだけ離れた><自分の
辛い思いや悩みを他者に伝えた><看護を通して患者に思
いを伝えた>など5カテゴリーが抽出された。ターミナル
期の患者を受持った学生のコーピングの効果は<無力感が
軽減し,自分の頑張りを認められるようになった><患
者中心に考えられるようになり,かかわりが変化した>
<ターミナル・ケアについて新たな気付きを得ることがで
きた>など7カテゴリーが抽出された。
【考察】
ターミナル期の患者を受持つ学生は死やターミナル・ケア
の理想像を抱いて実習に望んでいることが明らかとなっ
た。学生の理想と現実に直面して感じる思いは学生のスト
レスとして複雑に関連しあっていた。理想と現実のズレは
看護学生の臨床の場でのストレスが増強一つの要因である
と考える。
ターミナル期の患者を受け持った学生は情動焦点型コーピ
ングと問題焦点型コーピングを関連させて用いながらスト
レスに対処していることが考えられる。
ターミナル期の患者を受持った学生のコーピングの効果
は,学生自身の自己の捉え方や考え方が変化したことによ
る効果,対象の捉え方が変化したことによる効果,周囲の
サポートによる効果に分類され,効果同士が関連しあって
いることが分かった。ストレスに対して自ら働きかけを行
い,コーピングの効果を得たことでターミナ期の患者を受
持った学生のストレスコーピングは有用に働いていたと考
える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
384)学生が統合看護実習で学んだ「看護管理」
山田千春,大町弥生,加藤泰子
(兵庫医療大学看護学部看護学科)
上谷幸子,西山静香,窪 浩子
(兵庫医科大学ささやま医療センター看護部)
【目的】
領域別実習を終了した学生がこれまで学んだ知識・技術・
態度を統合し,看護専門職者としての理解を深めること,
自己の看護実践能力を強化することを目的に統合看護実習
を行った。実習期間中に看護部長や看護師長の業務から
「看護管理」について観察し,考える機会を得た。そこで
実習終了後のレポートから,学生がどのように「看護管理」
について理解したのかを明らかにする。
【研究方法及び倫理的配慮】
研究期間は20XX 年1月∼2月である。4年次の統合看護
実習において老年看護学領域を選択した学生を対象とし
た。対象者が統合看護実習を通して学んだことについて記
述したレポートをデータとした。分析は「看護管理」につ
いて記述されているデータをコード化し,カテゴリ化し
た。当該実習の成績評価終了後,対象者に研究の主旨,研
究参加は自由意思であること,プライバシーの確保等を説
明し,同意を得た。
【結果及び考察】
8人のレポートから,130のコード,15のサブカテゴリ,4
のカテゴリが抽出された(表)。学生は「看護管理」とは,
<患者によりよいケアを提供できる体制をつくる>だけで
はなく,<看護師自身が安心して働ける職場をつくる>こ
と,また看護師に<組織の一員としての自覚を促す>こと
や,質の高い看護が提供できる人材となる<看護専門職者
としての成長を助ける>ための組織マネージメントである
と学んでいた。また,
「看護管理」には職場の体制つくり
のような「組織の仕組み」に働きかけるものと,組織の一
員である「看護師個々の意識」に働きかけるものがあると
学んでいた。さらに看護専門職者として,職業人としての
マネージメントを具体的に学べていた。近い将来,看護師
として病院組織の一員として働く者として「看護管理」の
視点を学べたことは意味ある実習であったと考える。
表 学生が統合看護実習を通して学んだ「看護管理」の内容
カテゴリ
サブカテゴリ
24時間いつでも患者・家族の安全を守る
患者によりよいケ
地域に根ざした看護を提供する
アを提供できる体
患者の立場に立った看護を提供する
制をつくる
根拠ある看護を提供する
看護師が安心して働
看護師の健康維持のための配慮をする
ける職場をつくる
看護師が働き易い環境に整える
看護マニュアルの活用を促進する
組織内で適切に情報を管理する
組織の一員として
部署を超えて,支援・連携する
の自覚を促す
病院の理念や方針に基づく具体的なケアを実践する
組織の中で個々の役割りを認識し責任を果たす
職業人としての接遇の向上をはかる
看護専門職者とし
看護師の教育体制を整える
ての成長を助ける
経験の振り返りを助ける
385)患者との関わりに困惑した看護学生の反省的実践を
助ける教育的関わり
鰺坂由紀(神戸市看護大学看護学部)
小松万喜子(愛知県立大学看護学部)
【目的】
これまでの研究で,患者との関わりに困惑した看護学生の
反省的実践の構成要素とプロセス,そのプロセスに看護師
や教員(以下,指導者)の関わりが影響していることを明
らかにした。今回,困惑した学生に対する指導者の関わり
を分析し,反省的実践を助ける教育的関わりを明らかにし
たので報告する。
【方法】
対象:成人看護学実習終了後の学生20名。データ収集:患
者との関わりに困惑した時からその状況が帰結するまでの
[実践の最中]と,帰結から面接日までの[実践後]の学
生の思考や感情,指導者の関わり等について面接を実施し
た。倫理的配慮:研究倫理審査委員会の承認を受け,研究
の趣旨,自由な意思決定等について説明し同意を得た。分
析方法:逐語録を基に,学生の思考や感情,実践内容,指
導者の関わりについて時系列に整理し,KJ 法を用いて反
省的実践の要素を抽出し,各学生の反省的実践のプロセス
を明確化した。さらに,指導者の関わりを表す部分を抽出
し,関わりの『内容』と<方法>の視点から類似するもの
をまとめた。そして,指導者の関わりが学生の反省的実践
のプロセスにどのように働いたかを検討した。本抄録では
指導者の関わりのカテゴリーと,学生の思考・感情と実践
の要素に含まれる「表札・ラベル」を対応させて関連を説
明する。
【結果】
1.[実践の最中]の指導者の関わりは,
『援助を行なう判
断の視点』『患者に接するプロセス』等の<助言や発問>,
『患者の状態や治療の理解』の<確認>,『患者への働きか
け方』
『援助方法』等の<実演>,
『患者のもとへの同行』
『カンファレンスでの提示』等の<調整>等であった。こ
れらは,学生を「患者への感情移入・援助意欲の向上」
「自
己の判断や援助の妥当性の吟味」「患者や援助に対する視
点の転換」等に導き,反省のプロセスを進めていた。しか
し,同様の関わりであっても,
「判断や援助ができない焦
り」の助長や「指導者の助言への反感」に向かわせ,学生
自身の感情を優位にさせ,実践の最中の反省を停滞させた
ものもあった。この関わりでは,学生が「具体的にどう
すればよいかわからない」「気持ちをわかってほしい」と
語ることが多かった。2.[実践後]の指導者の関わりは,
カンファレンスや実習評価を活用した『患者への接し方』
『自己の傾向』等の<助言や発問>であった。これらは,
「自己の援助姿勢や能力の認識」「患者の変化の要因や思い
の推察」等の反省を助ける関わりとなっていた。
【考察】
反省的実践を進めるためには,自己や患者に対する視点の
転換が必要である。学生が,自己の感情や援助,患者に対
する捉え方について自己対峙できるように,患者の状態や
意識化を進める発問や調整,学生の行動のフィードバック
が必要である。
現実的な目標の設定を支援する
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
381
386)基礎看護学実習1における看護学生の思いと他者意
識,Sense of Coherence との関連
杉山洋介(国際医療福祉大学小田原保健医療学部)
本江朝美,高橋ゆかり,古市清美(上武大学看護学部)
【目的】
看護学生にとって実習における人間関係はストレスとなる
ことが多いと言われている。そこで本研究では,患者を理
解するなど他者理解を主たる目標とした基礎看護学実習1
において,ストレス対処能力と言われる Sense of Coherence
(以下 SOC)と看護学生の実習に対する思いや他者意識と
の関連を明らかにすることを目的とした。
【研究方法】
A看護系大学1年生73名に,基礎看護学実習1終了後,自
作した実習に対する思いに関する項目(「実習は満足だっ
た」「看護への興味が強まった」等9項目,5件法),日
本語版 SOC 短縮版尺度(山崎ら1999),他者意識尺度(辻
1993)からなる自記式調査用紙を配布・回収した(留置
法)。基礎集計後,SOC の中央値で SOC 高低群に二分し
実習への思いの各項目と他者意識下位因子(内的他者意
識・外的他者意識・空想的他者意識)を t 検定した。また,
実習に対する思いの各項目と他者意識下位因子,さらに
SOC 下位因子(把握可能感・対処可能感・有意味感)と
他者意識下位因子及び実習に対する思いの各項目でピアソ
ン相関係数を求めた。協力者へは,研究目的,方法,参加
の自由,個人情報保護について書面と口頭で説明し同意を
得た。また上武大学研究倫理委員会の承認を得た。
【結果】
1.有効回答者数は61名(回収率83.6%)で,SOC の平
均得点は52.2±8.4点であった。2.内的他者意識と空想
的他者意識はそれぞれ「看護への興味が強まった」と「看
護を学ぼうとする気持ちが強まった」と有意な正相関を示
した。3.実習に対する思いの各項目は SOC 高群・低群
で有意差はなかった。しかし他者意識尺度下位因子では,
SOC 高群は低群より外的他者意識と空想的他者意識が有
意に低かった。4.SOC 下位因子では,処理可能感が空
想的他者意識と有意な負相関を,把握可能感が内的他者意
識,外的他者意識,空想的他者意識および「この時期の実
習は良かった」という思いと有意な負相関を,有意味感が
「実習への主体的に参加した」「実習は満足だった」と有意
な正相関を示した。
【考察】
看護学生において,内的他者意識や空想的他者意識が高い
ほど看護への興味や学ぶ気持ちを高めている可能性が考え
られた。しかし SOC が高い看護学生は,内的他者意識や
空想的他者意識が低く,このことは SOC 下位因子の中で
も特に把握可能感と関係していた。これらより,把握可能
感が十分でないほど,むしろ素直に相手の内面に意識を向
け空想することができている可能性が考えられた。また有
意味感が高いほど実習に主体的に参加し,実習の満足感が
強かったことから,他者理解を目標とする基礎看護学実習
1において,有意味感を高める指導が有効である可能性が
示唆された。
382
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第39群
387)基礎看護学実習1前後における看護職アイデンティ
ティと看護師イメージの変化
388)成人慢性期の看護過程の学習プロセスにおける思考
の振り返りによる学び
遠藤恭子,米澤弘恵,石綿啓子,佐藤佳子,鈴木明美,
錦織正子(獨協医科大学看護学部)
名倉真砂美,脇坂 浩,竹本三重子,竹山育恵,
長谷川智之,玉田 章(三重県立看護大学)
【目的】
基礎看護学実習1は,学生が初めて病棟で行う見学実習で
ある。看護師と共に行動をして看護の実際にふれる初めて
の経験は強く印象に残り,学生の看護観に変化を及ぼすの
ではないかと考える。そこで,基礎看護学実習1前後の学
生の看護職アイデンティティと看護師イメージの変化につ
いて検討した。
【方法】
1. 対 象:A 大 学 看 護 学 部 2 年 生99人 2. 調 査 期 間:
2010年9月 3.調査項目:1)対象者の背景(年齢,性
別,入学動機,看護職への迷い,将来の希望職種,志望資
格,大学院進学希望)。2)アイデンティティについては
藤井らの看護職アイデンティティ尺度(「看護職の選択と
成長への自信」5項目,「看護職観の確立」5項目,「看護
職として必要とされることへの自負」5項目,「社会への
貢献の志向」5項目)を用い7段階評定で調査した。3)
看護師イメージについては真鍋らの看護師イメージ尺度
(「働き甲斐の因子」7項目,「性格特性の因子」7項目,
「専門性の因子」6項目,
「外見的特性の因子」5項目,
「勤
労状況の因子」2項目から成る形容詞対)を用い7段階評
定で調査した。4.調査方法:基礎看護学実習1前後に
自記式質問票を用いた。5.分析方法 :SPSS ver.19を用い
Wilcoxon の符号付順位和検定を行った。6.倫理的配慮 :
書面と口頭で調査の目的,個人情報の取り扱いと保護,回
答は自由意志であり単位取得や成績に影響しないことを説
明した。回答をもって研究の承諾とした。
【結果】
実習前,後ともに回収数は93人(回収率94.6%)で,その
うち88人(有効回答率94.6%)を分析対象とした。対象者
の性別は男性7人(8.0%),女性81人(92.0%),平均年齢
は19.8±1.1(SD)歳であった。看護職アイデンティティ
では,全ての質問項目で実習前より実習後の得点が高かっ
た。4因子の中で最も得点が高かったのは「社会への貢献
の志向」で実習前平均5.5±0.8点,実習後平均5.7±1.0点で
あった。看護職アイデンティティの総得点と4因子におい
て,実習前より実習後が有意(p < .05)に高かった。看護
師イメージでは,全ての質問項目で実習前より実習後の得
点が高かった。5因子の中で最も得点が高かったのは「性
格特性の因子」で実習前平均4.9±0.7点,実習後平均5.3±
0.7点であった。看護師イメージの総得点と5因子におい
て,実習前より実習後が有意(p < .05)に高かった。
【考察】
看護職アイデンティティと看護師イメージ共に実習前より
実習後の得点が有意に高かったことから,学生は実習を通
して看護師を目指す自分を肯定的に捉えられるようにな
り,看護職アイデンティティを深められたと考える。また
学生は,看護師を学習モデルとして捉えているといわれて
いることから,実習中の看護師モデルが効果的な学習につ
ながることが示唆された。
【研究目的】
本研究では,成人慢性期にある事例患者の看護過程の学習
プロセスにおける学生の学びについて明らかにすることを
目的とする。
【研究方法】
調査対象:成人慢性期にある事例患者の看護過程の演習を
受講した学生で,研究協力に同意した15名分の看護過程の
記録。調査方法:看護過程の記録で,学生が記述している
学びの部分を文脈に沿って抽出し,類似した意味内容ごと
に分類した。倫理的配慮:研究協力者には研究の趣旨と倫
理的配慮について説明し,同意を得た。本研究は,研究者
が所属する研究機関の倫理審査会の承認を受けて実施し
た。
【結果および考察】
1.成人慢性期患者の看護過程の演習方法
学生は事例患者の看護計画を各自が立案し,それをグルー
プ・クラス単位で検討する。そこでの検討内容を看護計画
に追加・修正しながら内容を深める。看護計画を考える全
過程のなかで,グループワーク等での振り返りを記録用紙
『看護過程の自己の思考の振り返り』の部分に記入する。
立案した看護計画のうち,自己血糖測定の学習支援を実際
に演習し,その結果を評価することで一連の看護過程の展
開の学習としている。
2.看護過程の学習プロセスにおける学びの内容
学生は,事例患者の情報のアセスメントで,自らの知識不
足を実感していた。【事前学習による基本的な知識の必要
性】では,アセスメントにおいては既習の知識を統合して
考えることの必要性について学んでいた。また,成人慢性
期患者のセルフケアの視点に沿った【患者情報のアセスメ
ントの視点の理解】が重要であると学んでいた。学生の知
識は分断されており,どのように活用するかまでは考えら
れていない。事例患者という具体化されたものを通して考
えることで,知識の統合と活用につながると考える。
看護問題では,アセスメントの内容によって患者に沿った
ものかどうかが左右される。学生は,アセスメントを十分
に行うことが個別的な患者の問題につながるという,【看
護問題抽出の考え方】について学んでいた。また,患者の
生活についてアセスメントができていないと具体的計画と
目標につながらないという【アセスメントと計画立案の関
連性】【目標の設定と具体的な計画立案の関連性】につい
ても学んでいた。
看護過程の演習において学生は,アセスメントの不十分さ
が看護計画全体に関係し,看護問題の抽出,計画立案等の
際には,アセスメントに戻り,考え直すことが重要である
と学んでいた。看護過程の展開には,対象を理解していく
過程と問題の解決を追求する過程がある。対象を理解して
いく過程である情報のアセスメントの学習が,問題解決の
スタートであり基盤となるため,その考え方を理解するこ
とが,看護過程の学習を促進すると考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
383
389)卒業生の語りから得られた教育の成果と課題 −就
職後6ヶ月目の卒業生へのインタビュー結果−
390)臨地実習での生命倫理に関する学生の経験及び実習
指導者が指導に必要だとする事柄
大納庸子,竹元惠子,新垣洋美,近田敬子
(園田学園女子大学人間健康学部人間看護学科)
柴田恵子,川本起久子
(九州看護福祉大学看護福祉学部看護学科)
【目的】
学士課程における看護基礎教育では,保健師看護師助産師
指定規則によるカリキュラム内容と共に,高等教育機関と
しての固有の目的・目標・方法を整備しており,そこでど
のような人材・能力が育成されているのか,その教育成果
や課題の検討の公表が求められるようになってきた(吉本
他;2008)。そこで,今回,第1期卒業生を輩出したA大
学の卒業生が,母校の教育をどのように受け止め,現在の
職務状況にどのような影響を及ぼしていると考えているの
か実態を把握し,教育の成果と課題を見出すこととした。
【研究方法】
対象:平成22年3月にA大学を卒業し,看護師として就職
した卒業生3名。
データ収集方法:研究者らが準備したインタビューガイド
による半構成的面接法
分析方法:教育の成果に関するインタビュー内容を逐語録
にし,一つの意味をなす文節とし,類似性に従ってカテゴ
リー化した。次に,その内容がどのように関連があるのか
を検討した。
倫理的配慮:研究目的を文書と口頭で説明し,協力への任
意性やインタビュー内容の録音などに同意を得た。なお,
A大学の生命倫理委員会の審査を受けて実施した。
【結果】
3名の協力者のデータから,156コード,121サブカテゴ
リー,33カテゴリーが導き出された。
抽出された主要なカテゴリーから,4年間の講義・演習・
実習体験を通し,《自主的に学ぶ力》《幅広い人間形成・生
き方の広がり》《他者と関わりながら学ぶ》《グループワー
クの学習効果》《リフレクション経験がある》という,強
みの実感が明らかとなった。また,学生時代から現在にお
いて,
《逃げてはいけない意識》
《患者と向き合う》
《状況
に向き合う》
《使命感の芽生え》《「向き合う力」を習得》
《「向き合う力」の自覚》《自主的に向き合える》という認
識の継続がみられた。学生時代にもっと学んでおけばよ
かったことは,
《知識を統合する力》
《技術トレーニング》
であった。
【考察】
卒業生にとって現在まで,患者や状況などに向き合うとい
う認識が継続していることは,本学科の教育理念の1つで
ある「向き合う力」を学生時代から段階的に獲得し,身に
着いたことの表れと考えられる。さらに,学生時代に習得
した知識と技術だけでは,臨床で活用できない現実に直面
し,その事実と向き合い,自らの課題として語られている
ことから,「向き合う力」が確かな力として獲得できてい
ると考えられる。
今後も卒業生からのデータ収集を継続し,客観的評価を重
ね,教育実践の改善に役立てたい。
参考文献)吉本圭一・立石和子:大卒看護職の初期キャリ
アとコンピテンシー形成―看護師・関係者インタビューの
分析―,広島大学高等教育研究開発センター大学論集,第
39集,223-240, 2008
【目的】
臨地実習で学習できる生命倫理を明らかにする。
【研究方法】
1.対象:指導者90名,A大学看護学科3年次学生132名。
2.調査日:指導者;2011年1月14日∼同年2月9日,学
生;同年1月22日。3.方法:指導者;研究の承諾を得た
2病院看護部に調査票を持参し,協力可能な指導者への配
布を依頼した。対象者の範囲はA大学実習指導担当者もし
くは経験者で,学生は全領域実習終了生である。内容は指
導者が生命倫理の指導で必要だとする事柄,学生が実習中
に経験と見聞きした生命倫理の内容である。いずれも回答
は自由記述とした。4.用語の定義:生命倫理に関する事
柄;「生命倫理観に影響を及ぼす事柄と看護の立場」とし
て示されている項目を示した。5.分析:内容を一文ずつ
精読し意味を変えないように要約しコード化した。一文に
複数の意味が含まれている場合は複数個のコードを作成
し,1コードずつ比較しカテゴリー化した。この作業は研
究者全員が一致するまで繰り返し,数日後にコードとカテ
ゴリーの名称を検討した。6.倫理的配慮:目的,調査内
容,倫理的配慮,協力依頼の文書を用意し,指導者は調査
票と共に封入し配布,学生は文書と口頭で説明した。回収
は指導者が郵送法で,学生は回収場所に回答者自身が配布
から3時間後に投函することにし,研究者は回収には立
ち合わなかった。倫理審査委員会に申請し承認を得た(22014)。
【結果】
1. 回 収(率 ) は 指 導 者 が44名(48.9%), 学 生 が76名
(57.6%),記述は指導者21件,学生26件だった。カテゴ
リー数は指導者8件,学生5件だった(表1)。
【考察】
「経験,生命観,患者のQOL,意思の尊重」は指導者が
必要だと思う事柄で学生も経験していた。学生は教科書と
同一の項目を経験内容だとし,指導者は知識や経験に基づ
く指導が必要だと考えていた。
384
表1.学生および指導者のカテゴリー一覧
カテゴリー
学生 n =76
コード カテゴリー
インフォー インフォー
ムド・コン ムド・コン
セント
セント
意思決定
コード
終末期患者
カテゴリー
実習指導者 n =44
コード カテゴリー
知識
知識や経
ターミナ
験に基づ 経験
ルケア
く指導
患者の死
理解
コード
ターミナ
ルケア
生命倫理
回復期患
に関する
者のケア
経験
認知症患
者のケア
生命観
難病患者
意志の尊重
リビング
生命倫理 寝たきり
死生観
患者の意
看護者と
ウイル
に関する 患者
思の尊重
しての生
治療の継続 経験
小児患者
健康観
尊厳死
命観
生命の尊さ
価値観
患 者 の 患 者 の
臓器移植を
QOL
QOL
待つ患者
看護観
患者の権利
患者の権利
生命観
倫理原則
権利
看護師の
看護者と
コ ミ ュ ニ 倫理原則
倫理綱領
しての生
ケーション
看護師の 責務
死生観
命観
困難患者
患 者 の 患 者 の 責務
学生への
QOL
QOL
情報提供
意思決定
手術
がん治療
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
391)臨地実習で個別健康教育を経験した看護学生の苦悩
と学び
太田夕貴,玉谷奈都美,荻あや子
(岡山県立大学保健福祉学部看護学科)
【目的】
学生が個別健康教育を行う中で抱える苦悩は,個人的に解
決することが多く,苦悩や乗り越え,学びを通しての研究
は少ない。臨地実習で効果的な健康教育を実施するため,
学生がどのような苦悩を抱え,乗り越え,学びを得たのか
明らかにする。
【研究方法】
A 大学看護学科で個別健康教育を経験し苦悩を自覚した4
年次生7名に半構造化面接を実施した。面接内容は個別健
康教育で悩んだこと,どう乗り越えたか,学んだことは何
か等5項目を中心に行った。面接後は逐語録に起こし苦
悩,乗り越え,学びと思われる言動を抽出し,意味のある
一文でコード化,類似しているものでサブカテゴリー化,
カテゴリー化(《 》)した。倫理的配慮では,研究の趣旨,
参加の自由意思,匿名の厳守等を口頭と文書で説明し,書
面で同意を得た。
【結果】
個別健康教育での学生の苦悩は6カテゴリーと18サブカテ
ゴリーであった。《健康教育の内容と方法で悩む》
《個別性
のある媒体作りで悩む》
《患者が求めている健康教育では
ないと悩む》《健康教育を行うタイミングで困る》《健康教
育後の患者の理解度や行動変容を促せず悩む》
《看護師・
教員との関わりがうまくいかず戸惑う》に分類された。乗
り越えは4カテゴリーと7サブカテゴリーで,
《指導者(看
護師・教員)に助言をもらうことで乗り越えた》《様々な
人に支えられて乗り越えた》
《患者理解を深めることで乗
り越えた》《自分で気持ちを切り替え乗り越えた》に分類
された。学びは8カテゴリーと20サブカテゴリーであっ
た。《患者の気持ちを理解した上で健康教育を行うことが
大切》《患者の状況を捉えて健康教育を行うことが大切》
《個別性のある健康教育を行うことが大切》《健康教育を行
う際は伝え方や伝える時期が大切》
《健康教育を行う時に
は患者の反応や理解度をみることが大切》
《患者が継続し
てできる健康教育を行うことが大切》
《個別健康教育の重
要性を感じる》
《他者の意見を聞くことで気づくことがで
きる》に分類された。
【考察】
個別健康教育は,患者と1対1で向き合い指導を行うた
め,学生は《患者が求めている健康教育ではないと悩む》
を中心に,患者の心理や要求が何かを考えることが大切で
あると捉えた。患者に向き合うことで生じた他の苦悩は,
時間の流れとともに変化していた。そして,学生は悩んで
乗り越えるという循環を何度も繰り返しながら学びを得て
いた。今回,学生は指導者の助言により前向きになること
もあれば,混乱に繋がることもあった。指導者との関わり
について語る学生が多く,学生・指導者間のコミュニケー
ションの重要性が明らかになった。指導者は学生の思いを
察知し,患者個々の健康教育に向き合えるように関わるこ
とが大切であり,また学生も受身の姿勢ではなく,自らの
思考を表現していく必要がある。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
385
第10会場 第40群
392)終末期看護の教育方法に関する検討 −終末期患者
を受持った看護学生の学習過程の振返りから−
393)重症患者の「病室に行くことを躊躇する」学生の体
験を通した教育的介入の検討
原田江梨子,藤永新子,安森由美
(甲南女子大学看護リハビリテーション学部)
藤永新子,原田江梨子,安森由美
(甲南女子大学看護リハビリテーション学部看護学科)
【目的】
看護学領域実習中に終末期患者を受持った学生に対して,
実習前と実習後に面接調査を行い,終末期患者に対する学
生の認識の変化について明らかにする。
【研究対象・方法】
1.研究対象 : 平成22年10月から成人看護学領域実習中に
終末期患者を受持ったA大学看護学生3名。2.研究方
法 : 実習終了1∼2カ月後,終末期患者を受持った実習の
振返りと終末期看護に関する現在の認識あるいは変化につ
いて面接を行い,IC レコーダーで録音した。なお,講義
受講時の終末期看護の認識を思いおこすため,その時点で
課したレポートを読んでもらった。倫理的配慮として,本
学倫理委員会の承認を得,研究の趣旨を記した書面と口頭
での説明を行い,同意を確認後,データ収集した。
【結果】
1.実習での取組みの経緯:学生 A は受持患者から家族に
表出していない思いや苦痛・不安を打明けられたことに戸
惑い,不安を抱き,援助が見出せずにパニックを経験した。
その後,患者の思いを受容して尊重しながら関わるよう試
み,精神的慰安を与えられたと実感でき,実習に取組む意
欲が湧いた。学生 B は,受持患者の発言を自分の母親と同
一視させて,母親の思いを理解するにいたり,その後,患
者の真意を客観視して関わることで,状態に応じたケアが
提供できるようになり,実習終了後には実習内容を客観的
に評価できていた。学生 C は,受持ち直後に患者の死を意
識して不安で戸惑う状況であったが,未告知で死を意識し
ていない患者の言動に救われ,奮起して実習に臨むことが
できた。2.実習初日の受持患者の情報提供時には,3名
とも,身体的特徴や心理的特徴をイメージできず,患者の
状態が認識できなかった。受持患者が表出した苦痛や悲
嘆・不安な思いを受容しきれず,学生自らが困惑して不安
を感じながら実習していた。しかし,受持患者の真意を推
測し,受容的・共感的態度で関わり,ニーズを把握しよう
と努め,病期や状態に応じたケアを計画して実践できるよ
うになり,信頼関係を構築していった。
【考察】
終末期看護に関する講義だけでは,終末期患者の特徴をイ
メージすることは困難であり,終末期患者を受持つ実習経
験により,特徴を明らかにして,必要なケアが見出せ,精
神面にも関心をもって関わることができる。身体的特徴の
把握は疾患の病態生理を理解する機会になり,適切なケア
の実践は,コミュニケーション技術および態度を養う機会
になる。実習終了後の面接調査は,学生自らが臨床実習で
の学習過程を振返り,終末期看護に関する認識の変化を自
覚し,終末期にある対象の身体的特徴の理解を深め,精神
面の把握に必要な技術や態度の習得についての自らの課題
を明らかにする機会になったと考えられる。
【目的】
成人看護学実習(慢性期)で重症患者を受け持った学生が
患者の病室に行くことを躊躇する体験を明らかにし,学生
への教育的介入を検討する。
【研究方法】
実習で重症患者を受け持った20代の女子看護学生7人に対
し,「患者の病室に行きにくい体験やその時の思い」を中
心に90分程度のグループインタビューを行った。インタ
ビューは同意を得て録音し逐語録にした。分析は患者との
出来事とその時の思いを中心にデーターの文脈と意味を損
なわないように抽出し,不明な点は学生の実習記録で確認
した。倫理的配慮として,対象者には口頭および書面で研
究の主旨と方法および調査への参加協力の拒否権,研究結
果の公表方法について説明し文書にて同意を得た。なお本
研究は本学倫理委員会の承認を得ている。
【結果】
7人の学生は「学生が行くことが負担になるのでは」
「患
者の生活を乱すのでは」と思いながらも「少しでも安楽に
したい」と【葛藤を持ちながら患者に向き合おう】として
いた。病状が変化する中で「しんどくてもしなければいけ
ないことがある」と訪室する意味を見出しケアが行えた
学生と,検温以外は病室に行くことを躊躇し,
「何もでき
ない自分がなさけない」
「不安で自分から関わりを避ける」
学生がいた。ケア行えた学生は,最初は行きづらさを感じ
ていたが,検温の時間を利用し患者を知りたいと,タイミ
ングや方法を変えながら患者に近づくと,観察や会話の中
から【患者の思いや病状を解釈】し,
「次はこうしてみよ
う」と回数を追うごとに【現象だけでなくその意味や思い
に気づき】【自己役割を認識】しケアを行なっていた。一
方,訪室を躊躇する学生は,
【患者の反応を拒否的に捉え
る】傾向があり,「患者のことを考えるとつらくなる」「何
も出来ない自分」を認識し【自己の不安と限界】から消極
的となり,
【関わりを回避】していた。しかし,その中で
も検温には【役割認識】を持ち躊躇なく行ける学生であっ
たが最後まで実習の達成感を見出せないでいた。
【考察】
学生は葛藤を持ちながら患者と真摯に向き合おうとしてい
た。そうした状況に直面することは臨床の知の出発点であ
るが,教員の関わりによって成果は左右される。今回病室
に行くことを躊躇する学生の体験を通して教員の教育的介
入を考えてみると,鍵となるのは2つの介入のタイミング
であった。一つ目は,患者と初めて出会い回数を重ねてい
くことで強調される患者への思いを教員が受け止めること
である。二つ目は,訪室を躊躇する学生に行動の意味を自
ら気づかせ,関わりの修正を行なうことである。このタイ
ミングを逃すことなく介入することで,看護とは何かに気
づき達成感のある実習につながるのではないかと考える。
386
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
394)老年看護学実習において「高齢者理解」する方法に
ついての学生の学びに基づいた教員の支援方法の検
討
横山久美(順天堂大学医療看護学部)
住谷ゆかり(日本赤十字看護大学)
阿部桃子,坂田直美
(東京医療保健大学医療保健学部看護学科)
【目的】
本研究は複数の実習施設(特別養護老人ホーム,介護予防
通所介護および通所介護,在宅介護支援センター)におけ
る老年看護学実習において高齢者看護の前提となる高齢者
理解のために学生がとった行動や用いた手段,得られた学
びを明らかにし,学生の高齢者理解を促進するための教員
による支援方法を検討することを目的とした。
【用語の定義】
「高齢者理解」を,「高齢者の立場や気持ちをくみとる」と
定義する。
【研究方法】
看護系大学看護学科3年生106名の中で,主研究者が実習
指導を行った学生56名のうち同意が得られた54名の老年看
護学実習の最終レポートを対象とした。レポートは「 2
週間の実習の中で,実習目標に関連して自分が一番強く印
象に残ったこと,及びそれに対する自己の課題」について,
A 4用紙1枚に自由記載されたものである。レポートの記
述内容を繰り返し精読し,「高齢者理解」をするための方
法についての学びが記述されていた32名のレポートを分析
対象とした。研究者一名が意味内容のまとまりごとに記録
単位を抽出し,要約,コード化した。次に,意味内容が共
通するコードからサブカテゴリー,サブカテゴリーからカ
テゴリーを抽出した。一連の分析過程では,共同研究者間
で協議し,分析の妥当性,信頼性の確保に努めた。
【倫理的配慮】
A看護系大学倫理審査委員会による承認を得た後,研究対
象者に対して研究主旨等を文書ならびに口頭で説明し,同
意を得た。
【結果】
学生の記述から「高齢者理解」をするための方法について
の学びとして,73コードが抽出され,17サブカテゴリー,
8カテゴリーに分類された。以下,カテゴリーを≪ ≫で
示す。
学生は≪高齢者の様子を客観的に五感を使って観察する≫
≪高齢者との日々のかかわりを通して本人を知る≫≪高齢
者についての情報をカルテやスタッフ,家族から得る≫こ
とを高齢者理解のための行動や手段として用いていた。高
齢者理解のために必要な心構えとして≪高齢者の立場で行
動や思いの意味を考える≫ことや≪高齢者の心の奥にある
思いに気持ちを寄せて向き合う≫≪高齢者を一人の人とし
て尊重する≫という姿勢の大切さを学ぶことができてい
た。また,高齢者の生活歴を踏まえて現在の≪高齢者の今
の状態を多角的にとらえる≫ことと≪高齢者について主観
的・客観的に得られた情報を包括的にアセスメントする≫
ことで高齢者理解を行っていた。
【考察】
学生は短い実習期間の中で高齢者とのかかわりなどを通し
て高齢者理解を行っていた。一方で,かかわりを持つ時間
が必ずしも高齢者理解の深度に反映しないことが伺えた。
395)老年看護学実習における学生の学び −介護老人福
祉施設における看護職の役割と課題について−
住谷ゆかり(日本赤十字看護大学)
横山久美(順天堂大学医療看護学部)
阿部桃子,坂田直美(東京医療保健大学)
【目的】
介護老人保健施設や特別養護老人ホーム(以下,特養)な
ど他職種協働で高齢者の生活を支えている保健福祉施設で
は,医療施設に比べて看護職の役割を把握しにくいことが
課題となっている。本研究は,特養における看護職の役割
と課題に関する学生の認識とその根拠を明らかにすること
を通して,特養における実習指導上の課題を明確にするこ
とを目的とした。
【方法】
研究参加者は,A 大学看護学科において2010年10月∼12月
に2箇所の特養で老年看護学実習を行った学生12名であ
る。2週間の実習を通して,特養の看護職の役割と課題と
して感じたこと,考えたことについて半構成的面接を実施
し,質的記述的研究法に基づいて分析した。分析は,研究
参加者ごとに得られたデータを,特養の看護職の役割と課
題に関する意味のまとまりごとに要約して統合し,意味内
容の類似性と特異性に注目しながら分類してコード化し
た。倫理的配慮として,研究の趣旨や方法を口頭と文書で
説明し,参加は自由意志であり個人評価や成績,実習指導
への影響はないことを保証した。本研究は,A 大学研究倫
理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
研究参加者が認識した特養の看護職の役割として〈生活の
場における健康管理〉,〈利用者の健康ニーズと生活ニーズ
の両側面から捉えた看護ケアの提供〉,〈利用者の生活環境
を整える〉,〈介護職への医学的知識・技術の提供〉,〈利用
者家族に対する支援〉,〈利用者の精神面を支える〉という
6つのカテゴリーと14のサブカテゴリーが抽出された。特
養での看護職の課題としては,〈利用者と関わる時間の確
保〉,〈介護職への支援〉,〈利用者に関わる人々との連携の
強化〉,〈利用者の生きてきた背景を考慮した看護ケアの提
供〉,〈看護職員の増員〉,〈看とりケアの充実〉の6つのカ
テゴリーと14のサブカテゴリーが抽出された。
【考察】
ほとんどの研究参加者が,特養の特徴を踏まえながら医学
的な知識や技術を用い介護職と協働して高齢者の健康管理
を行うという看護職の役割を捉えることができていた。一
方,利用者の生きてきた背景を考慮したケアの提供という
役割は,実際に特養の看護職の働きを見て認識するという
よりも,受け持ち利用者への看護実践を通して捉えていた
研究参加者が多く,看護職の課題として挙げていた研究参
加者もいた。今後は,看護実践として見え難い看護職の役
割を,意図的に学生に示していく必要があることが示唆さ
れた。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
387
396)老年看護学実習前後における老年者に対する学生の
イメージの変化
野口佳美,前田惠利,大庭桂子,谷村千華,芦立典子,
西村直子(鳥取大学)
【目的】
老年看護学実習前後における学生の老年者に対するイメー
ジの変化を明らかにすることにより実習指導への示唆を得
る。
【研究方法】
老年看護学実習(以下,実習と記す)を実施する A 大学看
護学専攻3,4年次生81名を対象に,老年看護学実習前後
に「老年者に対するイメージ」について自由記述による質
問紙調査を実施した。分析は,内容分析の手法を用いて
「老年者に対するイメージ」として記載された記述を記録
単位とし,意味内容の類似性に基づいて質的・帰納的にカ
テゴリーに分類した。
【倫理的配慮】
A 大学倫理審査委員会の承認を得,学生には,研究の目的,
意義,方法,研究への参加は自由意志であり,不参加によ
り不利益は生じないこと,プライバシーの保護について書
面と口頭にて説明し,同意書を得た。
【結果】
看護学生81名中,62名(76.5%)の学生から回答を得た。
実習前48,実習後44の「老年者に対するイメージ」が抽出
された。以下,分類したカテゴリーを〈 〉で示す。実習
前は,〈加齢に伴う身体機能の変化〉〈病気を持ち,内服治
療をしている〉
〈コミュニケーションの難しさ〉〈活動性
の低下〉〈行動・動作がゆっくり〉など,身体機能的側面
の衰えを示すイメージや〈気持ち・人柄の温かさ〉〈頑固〉
〈自分の価値観・世界観を持っている〉〈経験が豊富〉
〈の
んびり・ゆったりとした生活〉など老年者の人格的な特徴
や豊かな経験をもっていることを示すイメージが抽出され
た。実習後は,〈目標を持って生きている〉〈回復力を持っ
ている〉
〈人それぞれ違っている〉
〈前向き・意欲的〉〈気
持ち・人柄の温かさ〉〈人生の先輩〉など老年者のもつ個
別性やポジティブなパワーをもった人であることを示すイ
メージが抽出された。
【考察】
学生の老年者に対するイメージは,実習前の加齢による虚
弱さを示すイメージや身近な老年者,マスコミなどからの
影響が推測されるイメージから,実習後には老年者の回復
力やリハビリに対する意欲などポジティブなイメージへと
変化したことが推察された。実習場所が回復期リハビリ
テーション病院であり,実習体験を通して学生は,老年者
のリハビリに対する前向きで意欲的な姿勢を目の当たりに
し,老年者のもつ力に気づいたことでポジティブなイメー
ジへと変化したと考える。実習指導において教員は,学生
が患者との関わりを円滑にできるように配慮しながら,老
年者自身がもっている力を洞察し援助することの大切さに
気づけるような学習支援の重要性が示唆された。
388
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第10会場 第41群
397)看護師が認識する心理教育実施上の障壁と打開案
398)看護実践能力に対する自己評価・他者評価に関する
研究(第1報)
河野あゆみ,松田光信(神戸常盤大学保健科学部看護学科)
【研究目的】
精神医療機関に勤務する看護師が,当事者対象の心理教育
を実施する上での障壁と打開案を明確にし,心理教育を普
及する方法に関する示唆を得ることである。
【研究方法】
対象:本学精神看護学分野が事務局を務める兵庫精神科看
護実践研究会(テーマ:心理教育)に参加した県内精神医
療機関に勤務する看護師の内,本研究に同意した者とし
た。
データ収集方法:対象者に心理教育の概要を解説した後,
半構成的インタビューを個別に実施した。
分析方法:インタビューの内容から逐語録を作成し,質的
帰納的分析によって看護師が心理教育を実施する上での障
壁と打開案を抽出した。
倫理的配慮:事前に本学研究倫理審査委員会の承認を得
た。
【結果】
対象 者 は, 男 性 1 名, 女 性 4 名 の 計 5 名, 平 均 年齢は
42.50 歳(SD ±8.66)であった。
分析の結果,
[導入上の障壁]
[実践・定着上の障壁][打
開案]という3つのカテゴリーと,42のサブカテゴリーが
抽出された。
[導入上の障壁]には,<経営者の理解を得ることの困難>
<診療報酬の請求困難><医師の理解・協力を得ることの
困難><看護スタッフの理解・協力を得ることの困難>
<看護の役割範囲の拡大困難><うまくいかないことへの
恐れ><責任追及への恐れ><学習費用の捻出><看護ス
タッフ数の確保><業務量の増加><スタッフのモチベー
ションの低さ><実践スタッフの負担><他職種との連携
困難>があった。
[実践・定着上の障壁]には,<応用力を要する運営技術
の修得困難><基礎的な知識の不足><スタッフの力量の
差><対象者の選定困難>があった。
[打開案]には,<心理教育の有効性を伝える><管理職
からの承認を得る><学習を継続する><実践場面を見学
する><実践後の振り返りをする><介入効果を実感す
る>などがあった。
【考察】
[導入上の障壁]の<医師の理解・協力を得ることの困
難>は,心理教育の有用性が他職種に認知されていない中
で,看護師が新たに導入しようとする際に立ちはだかる現
実的課題だと考える。この障壁を克服するには,<心理教
育の有効性を伝える>ことが不可欠であるが,看護師は新
たな介入を導入することによる<責任追及への恐れ>を抱
いていた。よって,これらの障壁を克服するには,医師の
理解と協力に加えて<管理職からの承認を得る>ことによ
り,看護師が抱く<責任追及への恐れ>を軽減させる必要
があろう。
また,
[実践・定着上の障壁]の<応用力を要する運営技
術の修得困難>からは,心理教育の実際を見学する機会を
設ける他,継続的に助言が受けられる環境を整えることに
より,看護師が心理教育運営技術を修得できるように支援
する必要性が示唆された。
今後,本研究結果と関連文献を統合し,看護の立場から心
理教育を精神医療機関に普及する方法をモデル化していき
たい。
久司一葉(金沢医科大学看護学部)
笠井恭子(福井県立大学看護福祉学部看護学科)
【目的】
看護職の看護実践能力の自己評価・他者評価の実態と対象
者の背景の違いによる評価の特長を明らかにする。
【研究方法】
対象:隣接するA県B県の100床以上の病院に勤務する看
護職1,085名。期間:2010年11∼12月。方法:留め置き法
による無記名自記式質問紙調査。調査内容:舟島ら作成の
臨床看護師特性,中山ら作成の看護実践能力自己評価尺度
( 1.ケア展開能力,2.看護の基本の実践能力,3.調
整能力,4.研鑽能力)を参考に研究者らが作成した質問
紙を用いて,自己評価と対象者が自由に選択したチーム内
の他者1名について評価(リカート方式5段階で評定)。
分析方法:統計ソフト SPSSver.17を用い,記述統計ならび
に平均値の差は Mann-Whitney 検定を行った。有意水準は
5 % とした。倫理的配慮:所属機関の倫理審査委員会の承
認を得た後,各病院長・看護部長には調査趣旨,匿名性と
自由意思,調査結果の扱いの安全性等を記載した書面を用
いて説明し承諾を得た。対象者にはこれらの用紙を調査用
紙と共に配布し,調査用紙の回収をもって同意を得たもの
とした。
【結果】
回収数892(回収率82.2%),有効回答数677(75.9%)。性別
は男性30名,女性647名で経験年数は平均12.4年であった。
看護実践能力項目別では,最も得点の高い項目は自己・他
者評価ともに「個人情報の守秘(自己2.60点,他者2.56点)」
であった。一方,最も得点の低い項目は,自己・他者評価
ともに「看護研究の取り組み(自己0.83点,他者1.44点)」
であった。対象者の背景別に看護実践能力4カテゴリーを
みると,経験年数10年以下の者に比べて11年以上の者は,
3.調整能力 4.研鑽能力の自己評価が有意に高く,10
年以下の者は4カテゴリーすべての他者評価が有意に高
かった。実習指導経験がない者に比べてある者は,4カテ
ゴリーすべての自己評価が有意に高かった。
【考察】
看護実践能力の自己・他者評価ともに高得点だったのが
「個人情報の守秘」であったことは,近年重視されている
個人情報の取り扱いが徹底されてきていると考える。反対
に,低得点だったのが自己・他者評価ともに「看護研究の
取り組み」であったことは,多忙な業務の中での看護研究
実施の困難性がうかがえる。対象者の背景別では,臨床経
験を積んできた者は「調整能力」や「研鑽能力」項目の自
己評価が高く,また,他者の指導に携わってきた者はすべ
ての「看護実践能力」の自己評価が高かったことから,他
者への指導を含めた豊富な経験が自己評価を高める要因の
一つと考えられた。一方,経験年数10年以下の者は自己評
価よりも他者評価が高かった。これは自分より経験年数の
多い者を他者として選択し評価したためではないかと推察
された。本研究は,平成22年度金沢医科大学共同研究助成
を受けて行った研究の一部である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
389
399)卒後3年目における看護実践能力経験到達状況と職
務ストレッサーとの関連
400)患者・家族の視点で学生が捉えた看護師の化粧の評
価
大久保友香子,和泉美枝,小松光代,三橋美和,
眞鍋えみ子,岡山寧子(京都府立医科大学)
玉谷奈都美,太田夕貴,荻あや子
(岡山県立大学保健福祉学部看護学科)
【目的】
看護師経験3年は臨床における業務遂行能力から一人前と
認識されることが多い。その一方で新人期と異なるストレ
スがあると考えられる。そこで本研究では卒後3年の看護
実践能力経験到達状況と職務ストレッサーとの関連を明ら
かにする。
【研究方法】
A 大学を平成18及び19年に卒業した152名を対象に卒後3
年の時期に郵送で質問紙調査を行った。調査内容は( 1)
属性,( 2)職務ストレッサー:新人看護師職務ストレッ
サー尺度(藤原ら,2001. 26項目5段階評価)を用い,自
分の看護能力不足,患者家族へのサポート(以下患者家族
援助)
,看護援助のジレンマ,他の看護師との関係(以下
同僚),上司との関係(以下上司),医師との関係(以下医
師)の下位尺度毎に項目得点を算出した。高得点程ストレ
スの自覚が高いことを示す。
( 3)看護実践能力経験到達
状況(以下実践能力到達度):看護実践能力育成の充実に
向けた大学卒業時の到達目標(2004)に独自の3項目を加
えた81項で,1)ヒューマンケアの基本に関する実践能力,
2)看護の計画的な展開能力,3)特定の健康問題を持つ
人への実践能力,4)ケア環境とチーム体制整備能力,5)
実践の中で研鑽する基本的能力で構成される。それらの未
経験項目を除き,
「単独でできる∼指導・助言を受け実施
できる」を「できる」,「指導を受け部分的に実施できる∼
できない」を「できない」の2群にわけた。倫理的配慮は
A 大学倫理審査委員会の承認を得た。
【結果・考察】
回収65名のうち有効回答の看護師・助産師54名を対象とし
た(平均年齢25.5±0.8)。各ストレッサーの項目平均得点
は,看護能力不足3.1±0.8,患者家族援助3.1±0.8,ジレン
マ3.2±0.9, 同 僚2.8±1.0, 上 司2.7±1.0, 医 師3.0±0.9で
あった。実践能力到達度を2群に分け,職務ストレッサー
得点を比較するため Mann-Whitney U 検定を行った結果,
11項目に得点差があった。2)看護の計画的な展開能力の
「看護のインフォームドコンセント」で同僚,上司,医師,
「問題解決目的の看護実施」で医師,5)実践の中で研鑽
する基本的能力の「看護課題解決目的の文献・情報収集」
で上司と医師,
「看護実施の客観的把握」で同僚と上司,
「看護学発展の追求」でジレンマにおいて看護実践能力の
できない群が有意に高得点であり(p < .05),3)特定の
健康問題への実践能力の「終末期の身体的苦痛除去」,4)
ケア環境とチーム体制整備能力の「チーム員の自覚と責任
ある行動」では患者家族援助において,できる群の得点が
有意に高かった(p < .05)。両者の因果関係は明らかでは
ないが,卒後3年の看護師が計画的に看護を実践し専門職
として研鑽するためには,職場での円滑な人間関係作りの
重要性が示唆された。
390
【目的】
第一印象が良く円滑な信頼関係形成の一助とし,安心感の
ある看護を提供する為,どのような化粧が,患者や家族に
対し好印象を与えるか明らかにする。
【研究方法】
A 大学の3学科の学生120名に質問紙調査を実施した。調
査内容は,属性(学科,性別,入院経験等)と,化粧に関
する項目 {( 1)看護師は化粧をした方がよいと思うかと
その理由,( 2)化粧の印象,( 3)患者,家族の視点で,
化粧 A(薄)∼ E(濃)について,清潔感,優しさ,明るさ,
信頼感,真面目さの5項目を4段階で評価 } である。分析
は Excel2007を用い,化粧の評価を属性毎に t 検定で比較(p
<0.05)し,自由記述はコード化(
「」),サブカテゴリー
化(〈 〉),カテゴリー化(
《 》)した。倫理的配慮では,研
究の趣旨,プライバシーの保護等を文書と口頭で説明し,
調査票の回収によって同意が得られたとした。
【結果】
学生は,看護学科(以下看護)44名,デザイン工学41名,
スポーツシステム34名で,男性57名,女性62名であった。
化粧をした方がよい58.8%,どちらでもよい41.2%,ノー
メイクがよい0%であり,した方がよい理由には《礼儀・
マナー》等があった。濃い・派手な化粧の印象は,話しか
けにくい・近づきにくい,次いで,怖いが多く,薄い・地
味な化粧の印象は,話しかけやすい・近づきやすい,次い
で,清潔が多かった。化粧 A(薄)∼ E(濃)で5項目を
平均すると,化粧 B の評価が最も高かった。A は信頼感や
真面目さの評価が,C 以降は明るさの評価が高かった。家
族では,E の評価がやや低くなる傾向にあった。看護は他
学科より A ∼ D の評価が有意に高く,標準偏差は小さかっ
た。女性は男性より,B,C の評価が,入院経験あり群は
なし群より A,E の評価が有意に高かった。入院期間一週
間以上群は一週間未満群より A,B の評価が,不安・苦痛
が大きい群は小さい群より D,E の評価が有意に高かった。
【考察】
化粧 A と B では,明るさの評価のみ B の方が高かった。B
は A にチークと口紅を加えたもので,顔色が健康的で明る
くなった為であると考える。看護には〈健康的に見える〉
為に化粧はよいという者が多く,明るさの評価が高くな
り,5項目の平均評価が他学科より高く出たと考える。標
準偏差が小さいことから看護は類似した価値観を持ってお
り,患者から不評な化粧でも看護師同士でさほど悪く見え
ず,気付かない可能性がある。評価が高い理由は,看護の
多くが《礼儀・マナー》として化粧をするが,他学科から
は〈患者が癒される〉等看護が思う以上の効果が期待され
ていたと考える。入院経験あり群は化粧を,
「しんどいと
きには気にならない」等経験的に捉えており,評価に差が
出たと思われる。しかし,E のように濃い化粧は家族から
の評価が低い傾向にあり,患者自身が気にしていなくて
も,家族に不信感を与えないよう心がける必要があると考
える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
401)介護老人保健施設実習で管理栄養士の講義と試食を
体験した学生の学び
白木智子,山田智子,近藤裕子(広島国際大学看護学部)
山村嘉寿美(介護老人保健施設はまな荘)
【目的】
A大学では看護学生(以下学生)が「高齢者の食と援助」
についてより理解を深めるために,老年看護学実習のうち
の介護老人保健施設(以下老健)実習で管理栄養士による
講義と試食を導入している。本研究では,老健実習で実際
に高齢者に提供されている食事を試食し,管理栄養士の講
義を受けた学生の学びを明らかにする。
【研究方法】
B県のC老健で実習を行ったA大学看護学部3年生38名に
対し,管理栄養士による高齢者の食事に関する講義を受け
た後,咀嚼嚥下機能や栄養補給等を考慮した食事の試食を
実施した。実習終了後に学びを記述したレポートのうち,
37名から研究の承諾を得た。レポートの記述内容から,研
究者間で高齢者の食事やその援助に関する記述を抽出し,
類似内容ごとにカテゴリー化とネーミングを行った。信頼
性については研究者間で意味内容やネーミングについて合
意するまで検討した。
【倫理的配慮】
A大学看護学部倫理委員会の審査を受け,対象者には匿名
性の保持,評価には関係のないこと,データの保存と破棄
および公表について書面で承諾を得た。
【結果】
レポートから抽出された125記録単位を分析し,18サブカ
テゴリー(〔 〕)と7カテゴリー(『 』)を抽出した。『介
護老人保健施設における栄養管理と食事援助の実際を知
る』は〔試食により高齢者の加齢による変化や嗜好などを
考慮した食事の実際を知る〕などの2サブカテゴリー,
『高
齢者にとって“食べる”ことの意味と重要性を学ぶ』は〔高
齢者の特徴をふまえた食事援助の重要性を学ぶ〕など2サ
ブカテゴリー,
『食品の選択と活用による栄養改善』は〔高
齢者の嗜好や経済面を考慮した栄養機能食品の選択の必要
性〕など2サブカテゴリー,『高齢者一人ひとりの機能に
合った五感を刺激する食事の工夫』は〔食事による体力の
消耗を最小にする食事形態を考慮する〕など3サブカテゴ
リー,
『高齢者の誤嚥を予防し食べる意欲を引き出す援助
技術』は〔食事を楽しみの一つとして考えた援助〕など4
サブカテゴリー,
『多職種協働・連携による高齢者への食
事援助』は〔多職種協働により高齢者に質の高い食の援助
が提供できる〕など3サブカテゴリー,『専門職者として
の役割』は〔高齢者施設における看護師の専門性と役割を
学ぶ〕などの2サブカテゴリーが抽出された。
【考察】
学生は,老健で提供されている食事を目で見て,匂いを嗅
いで,口に運び含んで,噛んで,味わうことで,高齢者の
五感を刺激し食べる意欲を引き出す援助を学習している。
また具体的な栄養管理や食事援助について,講義や体験を
通して多職種協働・連携により高齢者個々の目標・プラ
ン・情報を共有し,その実施・評価を行っていることを学
習する機会になっていると考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
391
第11会場 第42群
402)性同一性障害学生受け入れに関する実態調査
藤井徹也,篠崎惠美子
(聖隷クリストファー大学看護学部看護学科)
中山和弘(聖路加看護大学看護学部)
玉腰浩司(名古屋大学医学部保健学科)
井本実菜(豊橋創造大学保健医療学部看護学科)
服部美穂(名古屋大学大学院医学系研究科)
【目的】
近年,性同一性障害(以下 GID とする)の若年層の増加
が報告されている。今回,実際に看護教育における GID
学生の受け入れの実態を調査したので報告する。
【研究方法】
対象:看護系専門学校,短大,大学の基礎看護技術担当者
701名( 1校1名)。回答が得られた261名(回収率38.1%)
の内,GID 学生を受け入れた経験がある23名を分析対象
とした。調査方法:無記名自記式質問紙にて郵送法で実施
した。質問項目は「GID の文献等からの情報を得た経験
の有無」「GID の教育(研修)の有無」「受け入れた GID
学生のタイプ」「受け入れに生じた問題点」「問題点に関す
る解決策」等である。調査期間:平成23年2∼3月。デー
タ分析:各項目の記述統計,タイプ別と各項目間の関連は
χ2検定を用いた。自由記載は類似内容を研究者間でまと
めた。倫理的配慮:筆頭発表者の所属機関の倫理審査委員
会の承認を受けた。対象者には,研究の趣旨,参加の自由,
匿名性の保障について書面を用いて説明し,回答をもって
同意とした。
【結果】
GID の情報収集を行った者が16名,研修等の教育を受け
た者が5名であった。GID 学生受け入れ人数は,1名が
20校,2名が3校であった。GID 学生のタイプは,生物
学的性別が男性で自己認識の性別が女性の場合が9名,そ
の逆の場合が17名であった。教育上生じた問題点は「ゼミ
合宿などの宿泊を伴う実習や学内行事」が21名(91.3%)
と最も多く,次いで「服装」
「使用する更衣室」が10名
(43.5%)であった。
「ゼミ合宿などの宿泊を伴う実習や学
内行事」の問題点の解決策は,全て「希望する性での参加」
であった。基礎看護技術演習で問題が生じた項目は「全身
清拭」が12名(52.2%)で最も多かった。また「演習時の
展開で GID 学生の配慮を行うことで他の学生との平等性
に影響を与えた」との意見がみられた。臨地実習では,19
名(82.6%)が「影響がなかった」と回答した。受け持ち
患者に「GID 学生あること伝えた」が2名(8.7%)であり,
その内1名は学校の対応についても伝えていたが,「患者
間で噂になっている」との報告を臨床指導者から受けてい
た。17名(73.9%)が「他の学生へ影響がなかった」と回
答した。GID タイプ別と各項目間に関連は認められなかっ
た。
【考察】
今回の結果から,GID 学生の受け入れに伴う教育上の問
題点は,各解決策を用いて対処されていた。7割が他の学
生への影響が無かったとの回答であったが,演習時の展開
において平等性に影響があったとの回答もみられており,
GID 学生の受け入れに際し,他の学生への影響を最小限
にする対応も必要である。
392
403)臨地実習において教員が感じている学生の患者情報
取り扱い上の問題
夏目美貴子(中部大学保健看護学科)
太田勝正(名古屋大学医学系研究科)
【目的】
臨地実習における看護学生の患者情報の取り扱いについて
の問題を明らかにし,指導法について検討する。
【方法】
対象は A 県内の看護系大学に所属する臨地実習指導の経験
のある教員である。調査期間は平成22年9∼12月。インタ
ビューガイドに基づく面接調査法。質問内容は1,学生の
患者情報の取り扱いに関して,問題と感じた場面の有無と
内容 2,問題点を防ぐために,どのような教育内容や方
法が必要だと考えるか 3,その他,個人情報の取り扱い
に関して重要だと考えることなどである。逐語録の内容分
析により問題点などを抽出し,類似した内容についてまと
めた。調査の依頼と実施には B 大学倫理委員会の承認を得
て十分な倫理的配慮のもとで行った。
【結果】
対象者は10名で年齢は30∼50歳代,教育経験年数は平均8.4
±4.0年であった。問題と感じた場面は,以下の『 』に
示す4つに大別された。実習記録やメモに患者氏名が書か
れる等の『記録物』,患者の氏名や患者の生活状況等は共
有される等の『カンファレンス』,公共交通機関内で患者
氏名は伏せて実施した看護ケアに関して学生どうしで話を
する等の『知りえた情報の守秘』,看護に必要のない情報
まで収集する等の『情報収集のあり方』である。これらの
問題を起こさないために必要な指導は以下の「 」に例示
するカテゴリーに分類された。実習オリエンテーションで
具体例を示す,ルールを文書化する等の「禁止事項を説明
する」
,学内での看護技術の演習でも臨地実習と同じ患者
情報の取り扱い方をする,講義で情報プライバシーの概念
について教授する等の「学生の情報プライバシーに関する
意識を向上させる」
,実習記録やメモを実習終了後に大学
が回収し保管する,記録用紙の所在を毎日の実習開始時と
終了時にチェックリストでチェックさせる,メモ帳をコイ
ル状のコードで白衣に着けさせる等の「問題が起こらない
システムを作る」などである。
【考察】
問題点の中には,学生間で学びを共有する際の患者情報の
匿名化の方法など,明確な指針が見当たらないものもあっ
た。患者の情報プライバシーに配慮した上で,実習での学
びを学生間で共有できる匿名化のあり方の検討が必要だと
考える。問題を起こさないために,禁止事項を説明したり
情報プライバシーに関する学生の意識を向上させるだけで
なく,問題を起こさない細かなシステムを作る必要性が示
された。なお,
『記録物』に関する問題を起こさないシス
テム作りは多く触れられたが,
『情報収集のあり方』や『知
り得た情報の守秘』など問題を起こさないシステムについ
ての意見は少なく,講義や実習オリエンテーション等での
工夫が必要であることが示唆された。今後,実際に行われ
ている指導とその指導効果を調査してゆきたい。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
404)看護学生の災害医療に関するレディネス
405)学生の看護研究における倫理審査と学習到達度の関
連
西谷千恵(中京学院大学看護学部看護学科)
【目的】
災害医療・看護を効果的に教授するために,看護学生の災
害医療に関するレディネスを明らかにする。
【方法】
質的記述的研究 <対象>東海地震等の起こる恐れのある
地域にある看護短期大学(三年課程)2年次生66名 学生
の背景:全員が短大と同一県及び隣接県に居住,出身は同
一地方内,災害医療・看護関連科目は未履修,准看護師資
格取得者4名(就労経験あり2名),全員被災経験及び災
害医療・災害ボランティア等の活動経験なし。<データ収
集方法>研究協力に同意した学生に,1)とらえている災
害2)災害医療について知っていることを自由記述しても
らう。<分析方法>記述内容から調査内容を表現している
箇所を抽出・コード化,類似性・共通性・差異性を検討し
カテゴリー化。<倫理的配慮>口頭及び文書で研究概要を
説明,匿名性保持,研究参加は自由意思,研究の同意不同
意は評価に関係しないこと,結果の公表等を確認,文書で
同意を得る。
【結果・考察】
1)学生がとらえている災害:全員が地震・台風等の自然
災害をあげ,29名(44.0%)が各種事故等の人為災害,2
名(3.0%)がテロ等の特殊災害も災害ととらえていた。
自然災害の中でも65名(98.5%)が地震をあげ,この背景
には,地震に関する積極的な広報活動・準備教育を行って
いる地域の特殊性もあると考えた。2)
「災害医療を必要
とする人」「災害医療に従事する人」「災害医療の機能と役
割」「災害医療現場の実情」の4カテゴリー,19のサブカ
テゴリーが抽出された。学生は,「災害医療を必要とする
人」を,救急医療が必要,災害時特有の傷害を持つ,精神
的ダメージがある,長期的支援が必要などととらえてい
た。また,「災害医療に従事する人」を,救急医療を実践
する能力があるとする一方,身体的・精神的負担が大きい
ととらえていた。ついで,「災害医療の機能と役割」は,
トリアージをして救急医療を行う,搬送もしくは現場で医
療を提供する,チームで連携して医療を提供するなどとと
らえていた。また,精神的支援や避難所の支援,海外の支
援をすることもその機能と役割としていた。「災害医療現
場の実情」は,危険や混乱のなかで,また,限られた資源
で行われる医療ととらえていた。このように学生は災害医
療に関してさまざまな認識を持っている。この背景には,
TV で見た・ドラマで見たという記述が多くみられたこと
から,報道,情報社会での成長,救急医療関連ドラマの影
響などがあると考える。また,先に述べた地域の特殊性
も,学生が災害医療に関心を持ち認識を得る一因となって
いると推測する。以上から,学生のレディネスをふまえ,
正しい知識や技術の修得に向けての授業展開を検討する必
要があると考える。なお,本研究データは東日本大震災前
のもので,現在の学生のレディネスとは異なるところもあ
ると思われる。
野尻和美,原田広枝,黒髪 恵,馬場みちえ,岩永和代,
大倉美鶴,佐久間良子,福田和美,須崎しのぶ,
塚原ひとみ(福岡大学医学部看護学科)
【目的】
看護研究演習において研究倫理に関する学生の学習到達度
を明らかにし,今後の研究倫理に関する教育方法の基礎資
料とする。
【研究方法】
対象:A 看護系大学4年次生101名。
方法:倫理審査方法の構築:A 大学医の倫理審査委員会,
A 大学 B・C 病院の臨床研究審査委員会の予備審査を学科
内で実施するシステムを構築し,予備審査は看護学科教員
10名が担当した。倫理審査申請書は学生が研究のプロセス
に沿って作成し,研究責任者は研究指導教員とし申請書を
提出した。
学習到達度の調査方法:研究発表会後に看護研究に関する
学習到達14項目(研究目的の明確化,研究プロセス,結果
の解釈,研究の倫理的配慮など)と倫理審査を申請した学
生には倫理審査に関する学習到達4項目について4段階尺
度を用いて質問紙調査を行った。倫理審査申請の有無別と
学習到達度との関連を Spearman の順位相関検定を用いて
比較する。統計処理は SPSS Ver.19.0を使用した。
倫理的配慮:学生に口頭と書面で,研究の趣旨,研究協力
の自由,個人が特定されないこと,成績には一切関係のな
いこと,学会発表について説明し調査票の回収をもって同
意とした。本研究はA大学研究倫理審査委員会の承認を得
た。
【結果】
学生101名中77名が倫理申請を行い,平成22年5月∼8月
の期間に27回予備審査を実施した。予備審査の結果,75件
が承認された。予備審査で付議が必要と判断された研究は
なかった。申請された研究の種別は観察研究69件,介入研
究3件,その他3件であった。
学 習 到 達 度 に 関 す る 調 査 票 の 回 収 数 は72件(回 収 率
71.2%)であった。その内,研究デザイン上倫理審査が必
要で申請した学生は53名(73.6%),倫理審査が不要で申
請しなかった学生は19名(26.4%)であった。倫理審査申
請の有無別で,学習到達14項目を比較した結果,全てにお
いて有意な差はなかった。中でも,
[研究の倫理的配慮]
で,[できる・まあできる]と回答した学生は,申請群52
名(98.1%),未申請群17名(89.5%)であった。
倫理審査申請群で倫理審査に関する4項目で[できる・ま
あできる]と回答した学生は,[倫理審査の目的の理解]
98.1%,[倫理審査のプロセスの理解]81.1%,[申請書作
成方法の理解]79.2%,[倫理的に留意する内容の理解]
98.1%であった。
【考察】
学生の看護研究に関する学習到達度は高く倫理申請の有無
による差はなかった。研究の学習プロセスにおいて倫理審
査申請を行うという経験は,倫理審査の目的や倫理的に留
意する内容についての理解を深め,看護研究における倫理
的な感受性を高める。このことは,看護研究の対象者であ
る人間の尊厳・尊重を遵守し,倫理的諸問題に気づき,考
えを深める学びと言える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
393
406)看護基礎教育における看護研究指導の方法と学習到
達度の関連
黒髪 恵,原田広枝,野尻和美,岩永和代,草野ひとみ,
有田久美,嶋松陽子(福岡大学医学部看護学科)
【目的】
少グループ学習および中間発表会と学習到達度との関連を
分析し,看護研究指導方法の検討の基礎資料とする。
【研究方法】
A 大学の看護研究は「看護研究概説」( 1単位,3年次後
期),「看護研究演習Ι」( 1単位,4年次前期),「看護研
究演習Ⅱ」
( 1単位,4年次後期)で構成している。看護
研究概説では研究目的や研究方法の講義と文献クリティー
ク,看護研究演習Ⅰでは研究計画書作成,看護研究演習Ⅱ
では研究実践と論文作成,研究発表を行っている。学生へ
の指導は教授から助教までの教員が担当し,看護研究ワー
キンググループで作成した指導要綱に基づいて指導を行っ
た。
調査は A 大学4年次生101名を対象とし,2010年12月看護
研究演習終了時に自記式質問紙を用いて行った。質問紙
は,先行研究(松下ら2008,土井2009)と研究演習の目的
を考慮して作成し複数の教員で検討した。学習到達度は14
項目で「一人でできる」から「全くできない」の4選択肢
で構成した。指導方法については,小グループ学習の開催
頻度,中間発表会の有無について質問した。
学習到達度14項目について,因子分析を行い抽出された5
つの因子に基づいてカテゴリー化した。学習到達度と指導
方法との関連は spearman の順位相関検定を用いた。統計
処理は SPSS Ver.19.0 を使用した。
倫理的配慮として A 大学医に関する倫理審査の承認を得
た。対象者には研究の主旨,研究への参加は自由であるこ
と,結果を学会等で発表することを文書と口頭で説明し同
意を得た。
【結果】
対 象 者101名 中72名 か ら 回 答 を 得 た。 回 収 率 は71.2% で
あった。
学習到達度14項目について因子分析を行った結果「研究実
践」「結果の解釈とまとめ」「主体的な取り組み」「研究目
的の明確化」「倫理的配慮」に分類された。
「研究実践」の学習到達度は,一人でできる・助言をもと
にできると回答した学生が93.0%,「結果の解釈とまとめ」
「主体的な取り組み」
「研究目的の明確化」「倫理的配慮」
は96.0%以上であった。
小グループ学習については,「定期的に行った」63%,「個
人学習・その他」が37%であった。中間発表会について
は,「実施した」が69%,「実施しなかった」が31%であっ
た。
学習到達度と指導方法との関連は,「中間発表会の実施」
と「研究目的の明確化」(p<0.01),「定期的な小グルー
プ活動」と「主体的な取り組み」
(p<0.05)で関連があっ
た。その他の項目に関連はなかった。
【考察】
小グループ学習では,ディスカッションによって疑問が解
消するだけでなく必要な情報や知識を共有できる。またお
互いの発表が刺激となって相互啓発され視野が広がる。小
グループ学習でピアとしての効果が個々の主体的な取り組
みにつながっていたと考えられる。
394
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第11会場 第43群
407)《看護の統合と実践》を受講した学生の看護実践能力
経験到達度の変化
光木幸子,毛利貴子,滝下幸栄,笹川寿美,山本容子,
山縣恵美,高尾憲司,岡山寧子,眞鍋えみ子
(京都府立医科大学医学部看護学科)
倉ヶ市絵美佳(京都府立医科大学附属病院)
【目的】
《看護の統合と実践》を受講した学生の看護実践能力経験
到達度の変化を明らかにする。
【方法】
対象は学士課程4年生22名中2回の調査に回答した20名
(女性95.0%,年齢21.6±0.6歳)で,授業前と後に自己記入
式質問紙にて調査した。項目は看護実践能力経験到達度81
項目(2004)に対し[単独でできる : 単独]
[指導者の指導
を受け実施できる : 助言実施]
[指導を受け部分的に実施で
きる : 部分実施]
[実施できない : できない]の4段階と[経
験する機会なし : 経験なし]である。分析は Wilcoxon 符号
付順位検定を行い有意水準5 %。倫理的配慮は,調査時に
対象者に口頭で研究概要,研究への参加は自由意思である
ことを説明し,同意を得て配布回収した。
《看護の統合と
実践》は,4年生後期に設定し,目標は『既習の知識・技
術を統合し,対象の状態に応じた看護を実践する能力,つ
まり看護師としての責務,倫理的判断,ケアリングを基本
とした援助関係形成能力,臨床判断能力,リスクマネージ
メント能力について理解を深めることができる』とした。
内容は,臨地事例を教材に看護技術演習やシミュレーショ
ン教育を設定し,グループ討議とリフレクションを通して
看護実践能力を意識化させ,看護師と教員により実践力を
高め,最後に客観的臨床能力試験を実施するである。
【結果】
看 護 実 践 能 力 経 験 到 達 度 は,81項 目 中 3 項 目 に 変 化 が
あった。
【生命の危機状況の判断と救命処置をする】[単
独 ]0.0% →10.0%[助 言 実 施 ]20.0% →35.0%[部 分 実
施 ]30.0% →40.0%[で き な い ]4.0% →5.0%[経 験 な し ]
45.0% →10.0%(p =0.006)。【心の危機状態の判断と緊急対
応をする】
[単独]5.0% →0.0%[助言実施]10.0% →55.0%[部
分実施]35.0% →40.0%[できない]15.0% →0.0%[経験なし]
35.0% →5.0%(p =0.012)。【事故の特性に応じた緊急処置・
援助】
[単独]0.0%→0.0%[助言実施]15.0%→25.0%[部
分実施]25.0%→50.0%[できない]10.0%→0.0%[経験な
し]50.0% →25.0%(p =0.013)。【技術実施過程を通して,
利用者の状態・反応を判断し,実施方法を調整する】
[単
独]25.0% →15.0%[助言実施]70.0% →50.0%[部分実施]
5.0% →30.0%[できない]0.0% →0.0%[経験なし]0.0% →5.0%
(p =0.033)。他の項目は差がなかった。
【考察】
授業で経験した技術項目では,[経験なし]から[単独]
[助言実施][部分実施]へと変化し,効果が得られた。ま
た一方で,看護の計画的な展開能力は,今までできていな
かった部分に気づけたことが[単独]
[助言実施]から[助
言実施][部分実施]へ変化したものと考える。今後も到
達度の低い項目を取り入れ授業を展開する必要がある。本
報告は文部科学省平成21年度助成事業「看護職キャリアシ
ステム構築プラン」の一部である。
408)看護実践能力と看護師経験年数との関係
高瀬美由紀,寺岡幸子,宮腰由紀子
(広島大学大学院保健学研究科)
川田綾子(広島都市学園大学健康科学部)
【目的】
高度で集中的な看護ケアの提供が求められる医療現場にお
いて,看護師の実践能力の向上は必要不可欠である。看護
実践能力は経験年数と共に上昇するというのが,これまで
の通説であった。しかし実際に,経験年数と看護実践能力
がどのような関係性を示すのかを詳細に検証した研究は稀
少である。この2つの関係性が明確になれば,経験年数に
応じた看護実践能力向上への介入が可能となる。従って本
研究の目的は,看護実践能力と看護経験年数の関係を検証
することである。
【方法】
中国地方の大学病院に勤務する看護師599名を対象に質問
紙調査を実施した。質問紙は,Holistic Nursing Competence
Scale(HNCS)と対象者の基本属性に関する質問で構成
された。HNCS は看護実践能力評価尺度で,5因子(「ス
タッフ教育・管理能力」「倫理的実践能力」「看護への一般
適性」「看護ケア提供能力」「専門的成長能力」)36項目か
ら構成される。本研究では,看護師に看護実践能力の自
己評価を求めた。看護実践能力と看護経験年数との関係は
locally weighted scatterplot smoothing(LOWESS)と fractional
polynomial regression analysis を用いて分析した。なお本研究
は,広島大学大学院保健学研究科倫理審査委員会の承認を
得て実施された。
【結果】
331名の看護師から有効な回答を得た。本研究参加者の
平均看護経験年数は6.81(SD = 7.45)で,自己評価によ
る 看 護 実 践 能 力 総 得 点 は4.228(SD =0.792) で あ っ た。
LOWESS を用いて,看護経験年数と看護実践能力総得点
の関係を検証したところ,実践能力は卒後1∼5年目に急
上昇し,その後は比較的緩やかな上昇を示すことが確認で
きた。Fractional polynomial regression analysis を用いて,経
験年数と因子別実践能力得点の関係を表す最適モデルを検
証したところ,平方根,負の逆関数,もしくは対数関数を
用いて,これら2つの変数の関係性が表されることが明ら
かになった。
【考察】
本研究は,看護経験年数と実践能力得点の関係を分析する
事を目的としており,看護師を縦断的に調査し,その成長
曲線を検証したわけではない。しかし本研究における看護
経験年数と実践能力レベルの関係は,
「初めは急激で,そ
の後は緩やかな成長を遂げる」とされる看護師の成長曲線
と類似していた。このことから,経験年数に沿って看護実
践能力が急激な上昇曲線を描く卒後約5年目までが,看護
師としての急成長期と推察され,この時期に重点的な教育
支援を提供する事が肝要であると考える。(本研究は科研
費(22592374)の助成を受けたものである。)
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
395
409)看護実践能力評価尺度の開発
410)勤続11年以上の看護職員の臨床能力と達成動機
高瀬美由紀,寺岡幸子,宮腰由紀子,中吉陽子
(広島大学大学院保健学研究科)
山本雅子(広島大学病院 看護部管理室)
和泉美枝,小松光代,西村布佐子,大澤智美,
倉ヶ市絵美佳,橋元春美,眞鍋えみ子(京都府立医科大学)
【目的】
現在わが国では,新卒看護師の実践能力低下が問題となっ
ている。この問題を解決するためには,医療機関が看護師
の実践能力を把握し,適切な教育支援を提供することが重
要である。更に看護師自身が自己の能力を理解し,自身の
教育ニーズや目標を見出すことも必要である。それを可能
にするために,様々な看護実践能力評価尺度が開発されて
きた。しかし,信頼性や妥当性が不明な尺度が多いのも事
実である。そこで本研究は,看護実践能力評価尺度を開発
し,その信頼性と妥当性を検証することを目的とした。
【方法】
尺度開発は,次の4段階に沿って実施された:1.概念分
析に基づいた尺度項目の生成,2.CVI を用いた尺度項目
の内容的妥当性の検証,3.23名の看護師を対象とした
プレテスト,4.その他の妥当性及び信頼性の検証。第
4段階では,中国地方の大学病院に勤務する看護師599名
を対象に質問紙調査を実施した。質問紙は Holistic Nursing
Competence Scale(HNCS)と対象者の基本属性に関する
質問で構成された。尺度の構成概念妥当性は探索的・確証
的因子分析を用いて検証し,基準関連妥当性については
実践能力得点と看護師経験年数との相関関係を Spearman’
s
rho 係数を算出して評価した。また尺度の内的整合性は,
Cronbach’s alpha 係数を算出して検証した。なお本研究は,
広島大学大学院保健学研究科倫理審査委員会の承認を得て
実施された。
【結果】
331名の看護師から有効な回答を得た(有効回答率55%)。
因子分析の結果,尺度は5因子(「スタッフ教育・管理能
力」「倫理的実践能力」「看護への一般適性」「看護ケア提
供能力」
「専門的成長能力」)36項目から構成された。この
モデルの適合度を示す指標は CFI =0.928, RMSEA =0.057,
SRMR =0.049で あ っ た。 因 子 間 の 相 関 は 中 ∼ 強 度 の 相
関を示した。また看護師経験年数と HNCS の総合得点の
間には,正の相関(rho =0.363, p <0.001)を認めた。尺
度全体における内的整合性はα=0.967であり,因子別の
alpha 係数も0.868∼0.934であった。
【考察】
HNCS は健全な尺度であることが確認された。尺度は36
項目から構成されており,看護実践能力の臨床での定期的
評価を容易にすると言える。また概念分析によって明確に
された看護実践能力を構成する属性は損なわれることな
く,本尺度項目に反映された。従って,HNCS は包括的
な尺度であるともいえる。また,この尺度が高い信頼性と
妥当性を保持している事からも臨床での活用が期待でき
る。(本研究は科研費(22592374)の助成を受けたもので
ある。)
396
【緒言】
近年看護師の臨床能力育成と向上への取り組みが行われ,
A 大学病院(以下 A 病院)でもその一環として全看護職員
の臨床能力に関する実態調査を行った。本研究の目的は臨
床能力の伸びが停滞し個人差が指摘される中堅看護師(A
病院勤続11年以上)の臨床能力と達成動機,及び属性との
関連を明らかにする事である。
【方法】
全看護職員657名を対象とし H22年3∼4月に看護師長か
ら配布,回収箱にて投函する方法で行った。分析対象は A
病院勤続11年以上の295名(以下看護職員),倫理的配慮と
して依頼文書に研究趣旨と個人情報保護に関する内容を記
載,調査と結果公表の同意を得た。
調査内容は( 1)属性,( 2)臨床能力( 1.三浦らの教
育ニードアセスメントツール臨床看護師用(以下教育ニー
ド)35項目4段階評価,得点が低い程教育ニードが低い,
2.上田らの看護実践の卓越性自己評価尺度(以下卓越
性)35項目5段階評価,高得点程卓越性が高い)
,( 3)
達成動機(堀野らの自己充実的達成動機(以下 sf)13項目,
競争的達成動機(以下 cp)10項目,両者高得点ほど達成
動機が高い)である。
分析は属性の出現頻度,記述統計量を算出した後 sf・cp の
分布から中央値で高低2群に分け群間差を t 検定, χ2 検
定にて比較した。
【結果】
看護職員の平均年齢43.2歳,経験年数21.8年,勤続12.5年,
教 育 歴: 大 学 卒5.1%, 短 大 卒13.2%, 専 門 学 校 卒81.7%,
役職:師長・副師長28.0%,配偶者あり54.6%,子供あり
49.3%, 教 育 ニ ー ド74.2±14.6点, 卓 越 性131.1±22.0点,
sf66.6±10.3点,cp39.1±9.9点。sf 高群は教育ニード70.0±
14.3点, 卓 越 性137.2±18.5点, 低 群79.3±13.0点,124.1±
22.4点であり高群は有意に教育ニードが低く卓越性は高
い。 一 方 cp 高 群72.4±14.3点,133.0±21.4点, 低 群76.5±
14.6点,128.6±22.2点と,高群は教育ニードが有意に低い
ものの卓越性に有意差はない。属性では sf 高群は役職や子
供を,cp 高群は配偶者を有する割合が有意に高いが,教
育歴に差は見られない。
【考察】
看護職員の教育ニードは三浦らの83.4±13.8点(経験15年)
より低く,卓越性は上田らの122.0±18.1点(同13.9年)よ
りも高く臨床能力は高い。中でも sf が高い者はより臨床能
力に優れ,sf を高める事は臨床能力向上に必須と考える。
また達成動機の高い者は役職・配偶者・子供を有する者が
多く権限や役割をもつ事の有用性,結婚・出産後もライフ
サイクルの変化に合わせて勤続可能な体制整備と臨床能力
を高める機会確保の重要性も示唆された。
【結論】
自己充実的達成動機と臨床能力の関連,達成動機と役職・
配偶者・子供の有無の関連が認められ,臨床能力向上には
個人の能力発達を目指した教育・研修,結婚・出産後も
勤続可能な労働環境整備が重要である。 本報告は文部科
学省 H21年度助成事業「看護職キャリアシステム構築プラ
ン」の一部である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
411)中堅看護師の自己教育力と看護管理者からの支援と
の関連
原谷珠美(北海道文教大学看護学科)
【研究目的】
看護管理者からの支援は看護師のキャリア発達に有効であ
るといわれているが,自己教育力との関連性に関する調査
研究は少なく評価も一定ではない。本研究は看護管理者か
らの支援と中堅看護師の自己教育力の関連性を明らかにす
る。
【研究方法】
対象:キャリア開発を実施している病院に勤務する経験1
年から20年未満の役職をもたない看護師。用語の定義:中
堅看護師とは,経験年数5年から10年未満の役職を持たな
い看護師。自己教育力とは,看護の専門性を高めようと自
ら学び成長する姿勢。調査内容:自己教育力,看護管理者
の支援など。データ収集:同意の得られた看護部長に質
問紙を郵送し,対象者が個別に郵送する方法により行っ
た。調査期間:平成22年1月から2月。分析方法:経験年
数を3群に分け,Spearman の順位相関係数,差の検定は
kruskal-Wallis 検定の後,多重比較を行った。倫理的配慮:
A 大学倫理委員会の承認を得,自由意思の尊重,匿名性の
確保,返信をもって同意と判断することを明記した。
【結果】
1 . 回収数は661名(51.0%),有効回答632名を分析対象と
した。対象者の平均年齢は31.2歳,平均経験年数は7.9年,
平均経験部署数は2.5箇所であった。経験年数別では,1
−5年未満192名(30.6%),5−10年未満194名(30.8%),
10−20年未満242名(38.6%)であった。2 . 看護管理者の
支援は,1−5年未満,5−10年未満,10−20年未満の順
に,140.92(SD31.62),134.21(SD36.93),134.57(SD34.52)
で,1−5年未満では10−20年未満に比べて高かった(P
<0.05)が,5−10年未満は他の経験年数に比較し差がな
かった。自己教育力は,1−5年未満61.84(SD4.88),5
−10年 未 満63.05(SD5.22),10−20年 未 満63.47(SD5.13)
で,5−10年未満および10−20年未満は,1−5年未満に
比較し有意に高かった。3 . 自己教育力と看護管理者の支
援の関係は,1−5年未満および10−20年未満では,有意
な関係は認められなかったが,5−10年未満においてのみ
r =0.302(P <0.001)で弱い相関があった。看護管理者の
支援の構成因子では,管理者的行動機能 r =0.321,受容・
承認機能 r =0.303で弱い相関が示された。
【考察】
中堅看護師と10−20年未満は,自己教育力が1−5年未満
に比較し高くなっていた。しかし,中堅看護師と10−20年
未満との相違点は,中堅看護師では,看護管理者の支援が
高いと自己教育力が高まる点にあった。中堅看護師におい
て自己教育力と看護管理者の支援が関連した背景には,直
接的なケアへの支援,適正なフィードバックの促進などの
看護管理者の支援が,学習の動機づけとなり,学習の方向
性や目標の設定が明確化され,自己教育力が高められたの
ではないかと推測された。中堅看護師の時期に行う看護管
理者の支援は,自己教育力の促進に関連することが示唆さ
れた。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
397
第11会場 第44群
412)病院で働く看護職の自己教育力・参画力・看護力と
取得免許の関係
413)病院に勤務する専門看護師の職場環境の実態と職務
満足との関連
三島三代子,吾郷美奈恵,石橋照子,梶谷みゆき
(島根県立大学短期大学部)
馬場 薫,齋藤深雪,田中幸子(山形大学医学部看護学科)
丸山幸恵(神奈川県立保健福祉大学)
【目的】
病院に勤務する看護職の自己教育力・参画力・看護力に,
保健師教育を受けた経験が及ぼす効果を検討する。
【研究方法】
対象:A県内200床以上の病院で看護部責任者から調査に
協力が得られた病院(協力率91.3%)に勤務する全看護職
3,670名。調査方法:無記名自記式質問紙調査,留置法。
調 査 期 間:2008年12月 ∼2009年 3 月。 調 査 内 容:「看 護
力」(“2004年看護学教育のあり方に関する検討会報告”を
参考に作成した18項目),「参画力」
( 4下位尺度からなる
42項目)を「そう思う( 5点)」から「そう思わない( 1
点)」の5段階評定とした。「自己教育力」は梶田・西村の
4下位尺度からなる「自己教育力測定尺度(40項目・40
点)」を用いた。分析方法:保健師と看護師の免許取得別
に,「自己教育力」と下位尺度は合計点を算出した。「看護
力」「参画力」は信頼性を Cronbach’
s α係数により確認し,
各尺度得点(項目平均値)を算出した。次に保健師・看護
師の免許取得別に各平均値を比較し,さらに,経験年数10
年以下に焦点を当て同様に比較した。比較にはt検定を用
いた。分析には SPSS11.0J を用い,空欄は分析毎に除外し
た。倫理的配慮:研究の主旨,任意協力等の説明文書を添
付し,無記名,封書に厳封の上で提出を求め,回答をもっ
て同意とみなした。所属機関の研究倫理審査委員会で承認
を得た。
【結果】
質問紙の回収数3,031(回収率82.6%),有効回答数2,859(有
効回答率94.3%)。白紙および設問単位で無回答のあったも
のは除外した。このうち,保健師免許取得者(助産師免許
取得を除く)は132名,看護師免許取得者は2,246名であっ
た。1.対象の属性:保健師;女性96.2%,男性2.3%,平
均経験年数5.5±5.46年。看護師;女性95.1%,男性4.5%,
平均経験年数15.0±9.94年。2.保健師と看護師の取得免
許による比較:「参画力」においては,下位尺度のうち「伝
承力」のみに有意差(p =0.003)がみられ,平均値は保健
師3.0±0.76点,看護師3.2±0.74点で看護師の方が高かっ
た。「看護力」は保健師3.2±0.52点,看護師3.3±0.56点で
看護師の方が有意に高かった(p =0.010)。「自己教育力」
においては,下位尺度とも有意差は無かった。3.経験年
数10年以下における比較:自己教育力・参画力・看護力の
うち,有意差があったのは「自己教育力」の下位尺度「学
習の技能と基盤」で保健師5.1±1.91点,看護師4.5±2.01点
で保健師教育を受けた者の方が高かった(p =0.003)。そ
の他に有意な差はなかった。
【考察】
保健師教育は,長期的にみると病院勤務においてはこれら
の能力に関して明らかな効果はなかったが,経験年数10年
以下の若い世代においては学習の技能と基盤の獲得に効果
がみられ,その能力を活かした職場教育が望まれる。
【目的】
本研究は,病院に勤務する専門看護師(以下 CNS)の職
場環境の実態と職務満足との関連を明らかにし,今後大幅
な増員が見込まれる CNS が職場に定着し,その能力を発
揮し働き続けられる職場環境作りのための示唆を得ること
を目的とした。
【研究方法】
対象者は,看護部長に研究協力への同意が得られた90病
院の CNS 148名とした。方法は,個人要因,組織要因,職
務満足を調査項目とした郵送法による質問紙調査を実施し
た。職務満足の測定には,Stamps らが開発し Yamashita が
翻訳,修正した看護師の職務満足尺度(25点−125点)を
使用した。調査期間は2010年7月∼8月であった。分析は
t 検定,一元配置分散分析を行った。倫理的配慮は,研究
の趣旨と方法,プライバシーの保護,研究の協力は自由意
思であることなどを文書で説明し,質問紙への回答をもっ
て同意を得たこととした。なお,山形大学医学部倫理委員
会の承認を得て実施した。
【結果および考察】
1.分析対象は102名(有効回答率84.3%)で,平均年齢
は39.7±5.5歳,看護経験平均年数は15.4±5.0年,CNS 認
定後平均経験年数は2.0±2.7年であった。2.職位は管理
職が43.1%,普段1カ月の時間外労働時間は50時間以上が
19.6%であった。3.職務満足の平均得点は89.8±10.5点
で,管理職を兼務する者がスタッフナースより有意に高く
(p <0.05),ポジションパワーにより組織横断的な活動が
しやすくなり職務満足を高めたと考えられた。また,休日
労働した場合に代休を取得できている者の方が,取得でき
ていない者より有意に高く(p <0.01),CNS がプライベー
トな時間を犠牲にせずに活動できる環境を整えることが重
要と考えられた。4.組織から CNS としての役割が期待
されている者,職務上の権限が与えられている者は,そう
でない者より職務満足が有意に高かった(p <0.01)。CNS
としての役割を期待されることは,役割が明確になるこ
と,職務上の権限が付与されることにつながり,役割を発
揮できることから職務満足が高まったと考えられた。5.
看護部長および副看護部長に CNS としての役割を理解し
てもらえる者,活動に肯定的評価を得られる者,教育や指
導を受けられる者,悩みを相談できる者は,そうでない
者より職務満足が有意に高かった(p <0.01∼0.05)。この
ことから,管理者の CNS の活動に関する合意形成やスー
パーバイズの提供,成果に対する評価を促進することが重
要と考えられた。
【結論】
CNS の職務満足を向上するための支援として,CNS の位
置づけや役割の明確化,権限の付与,代休の確保,良好な
人的環境の整備の必要性が示唆された。
398
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
414)臨床看護師が考える受け持ち看護師の役割と行動
−看護師の意識調査を通して−
415)臨床経験年数8年目以上の看護師の自律的な判断の
プロセス
齋藤美佳,板谷恵美,木佐貫尚美,山本雅子
(広島大学病院看護部)
籠 玲子(愛知県立大学看護学部)
朝倉京子(東北大学医学部医学系研究科)
【目的】
継続看護の充実に向けた取り組みを検討する上での資料を
得るため,受け持ち看護師の役割と行動を明らかにする。
【用語の定義】
受け持ち看護師:患者の入院期間中に,その患者の看護計
画の立案・実施・評価を一貫して責任を持ち担当する看護
師。
【方法】
対象者:A 病院(病床数740床)の循環器病棟に勤務する
看護師35名。臨床経験年数4年以下が60%を占める。期
間:平成22年6月1∼14日。調査方法:「受け持ち看護師
の役割意識」「役割遂行状況」「阻害要因」について自由記
述回答方式の質問紙調査を行い,回収は2週間の留置き法
とした。分析方法:回答が得られた27名の記述内容を共同
研究者間でコード化し,それらを統合してカテゴリーを抽
出した。倫理的配慮:匿名性,不利益性,自由参加を文書
および口頭で説明し同意を得た。A 病院看護部倫理審査の
承認を得た。
【結果】
1.受け持ち看護師の役割:59の役割コードが抽出され
た。サブカテゴリーは34で,そこから《共感的関わり》
《個
別性に沿った看護支援》
《情報収集》
《調整》
《退院支援》
《中
心的役割》《責任》の7カテゴリーを抽出した。役割のう
ち《共感的関わり》が18コードで最も多く,次に《個別性
に沿った看護支援》の12コードが確認できた。2.受け持
ち看護師の行動:73の行動コードが抽出され,21サブカテ
ゴリーを導き出し,役割と同様の7カテゴリーが抽出され
た。行動においても,《共感的関わり》が28コードで最も
多く,次に,《情報収集》の19コードが確認できた。しか
し,役割では2番目にコードが多かった《個別性に沿った
看護支援》は,7コードで具体的な回答は確認できなかっ
た。3.役割行動を困難にする要因:《部屋担当にならな
い》《他職種との連携不足》
《知識のなさ》等があった。
【考察】
受け持ち看護師の役割として《個別性に沿った看護支援》
を重視する傾向にあった。しかし,受け持ち看護師の行動
では《個別性に沿った看護支援》のコード数は少なく,患
者の個別性を考えた行動まで至っていない可能性が考えら
れた。また,経験年数4年以下の看護師が60%を占めてい
ることや,阻害要因に《知識のなさ》と《他職種との連携
不足》を挙げていたことから,情報を具体的な看護展開へ
つなげるための継続教育が課題と考えられた。さらに,阻
害要因に《部屋担当にならない》と回答があったことから,
受け持ち看護師がより役割を果たすことができる看護方式
や業務の整備を行うことで個別性に沿った支援につながる
と考えられた。
【まとめ】
臨床看護師が考える受け持ち看護師の役割意識として7の
カテゴリーが抽出された。受け持ち看護師の役割強化に向
けた継続教育と看護方式整備の必要性が示唆された。
【目的】
臨床経験8年目以上の看護師の自律的な判断の様相を明ら
かにすることを目的とした。
【研究方法】
調査対象者は,静岡県内の1病院に勤務する,臨床経験8
年目以上の看護師7名とした。調査方法は,対象者に半構
造的面接を行った。面接では,看護師独自の判断で行って
いる業務の具体的な内容と,それを行うことができるため
に必要な条件などについて尋ねた。調査期間は,2010年3
月から2011年1月であった。面接内容を逐語録とし,修正
版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を
用いて分析した。本研究を行うにあたり,東北大学大学院
医学系研究科倫理委員会で審査を受け,承認された。
【結果】
臨床経験8年目以上の看護師は,[医師が判断するケース
を明確化]した上で,[看護師が明確に範囲を限定した上
での独自の判断],[医師に任された範囲内での看護師の判
断],[診療の補助における看護師の判断]を行っていた。
看護師と医師の判断については,
[判断により生じる責
任],[判断を表出できない]
,ことなどの要因により,看
護師が判断する内容と医師が判断する内容には境界があっ
た。看護師が判断する境界については,看護師が基準を満
たすことにより,独自の判断が可能な部分もあるという
[看護師の判断の境界を広げる可能性]と,看護師の役割
の曖昧さがあり,役割の拡大に慎重さが必要であるという
[看護師の判断を限定する必要性]が示された。また,[看
護師の立場の明確化],[看護師の役割の明確化]や,医療
者間の関係が,看護師の自律的な判断に関っていた。看護
師の判断する力を養う要因として,病棟の教育という[判
断する力を養う環境],自律的な判断を迫られる[判断す
る力を養う状況],看護師の学ぶ姿勢,疑問を掘り下げる
などの[判断する力を養う姿勢]が示された。看護師の判
断の適切さについては,[看護師の判断のセンス]
,リー
ダー業務を担える3∼5年以上の臨床経験という[看護師
の判断が適切である条件],[判断の正確さは経験に左右さ
れる]ことが示された。
【考察】
臨床経験8年目以上の看護師は,個々の看護師が医師の行
う判断との境界を明確にした上で,その境界の範囲内で自
律的に判断を行うというプロセスが明らかになった。看護
師が自律的な判断を行うには,医師とは異なる立場であ
り,異なる役割であることを看護師自身が認識しているこ
とが基盤となっていると考える。看護師の判断する力は,
それを養う環境や状況,個々の姿勢があること,また,判
断の適切さは,センスや経験という明確に示すことが困難
なものもあるが,経験年数や役割というある一定の条件を
満たしていることが要因となっているため,ジェネラリス
トの看護師が適切な判断ができる要因を明らかにする糸口
が見出された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
399
416)「待ち時間」をめぐる患者・看護師の認識差に関する
研究
有川晶子,長友聡美,渡邉さおり,井本美由紀
(医療法人祐生会みどりヶ丘病院)
山田一朗(臨床研究支援センター(Office AKI))
【目的】
臨床現場,とくに急性期病棟では「待ち時間」をめぐる患
者からの苦情を頻繁に受ける。そこで今回,「待ち時間」
をめぐる患者と看護師の認識の差を明らかにすることを目
的として,本研究を行った。
【対象と方法】
某病院に勤務する看護師(N 群)と,入院中もしくは外来
に訪れた患者(P 群)を対象とし,
「急性期(N:97人,P:
82人)」
「回復期(N:28人,P:21人)」
「外来(N:8人,
P:
28人)」に区分した。以下の4場面について,それぞれ何
分間を想定するかを質問した。
「ちょっと待ってください」と言われた(言った)と
1)
きに思い浮かぶ待ち時間(直感)
2)排尿・排便など,生理的ニードを耐えられる時間(生
理的)
3)痛みなどの苦痛を耐えられる時間(苦痛)
4)これ以上は待てないという限界の時間(限界)
それぞれについて,各部署ごとに患者・看護師間の差を
Mann-Whitney の U 検定によって評価した。
なお,事前に病院倫理委員会の承認を得るとともに,対象
者には研究の趣旨,任意参加,中途離脱の自由を保証する
旨を説明し,口頭で承諾を得た。
【結果と考察】
「直感」の中央値(最小値−最大値,単位:分)は,急性
期 N 群5.0(0−30),同 P 群5(1−30),回復期 N 群5(2
,外来 N 群5(3−5)
,同 P 群10(1
−30),同 P 群5(1−15)
−30)(p =0.024)であり,外来の N,P 群間に有意差が認
められた。
「生理的」については,急性期 N 群5(0−30),同 P 群3
(0−15)(p =0.020),回復期 N 群5(2−30),同 P 群3(0
−15)(p =0.024), 外 来 N 群2.5(0−10), 同 P 群 5(1−
30)(p =0.036)であり,いずれも N,P 群間に有意差が認
められた。
「苦痛」については,急性期 N 群5(0−40),同 P 群3(0
−15)(p =0.003), 回 復 期 N 群 5(1−15), 同 P 群 3(0
−30),外来 N 群5(1−20),同 P 群5(1−30)であり,
急性期の N,P 群間に有意差が認められた。
「限界」については,急性期 N 群30(0−150),同 P 群20(3
−180)(p =0.003),回復期 N 群30(5−60),同 P 群8(1
−120)(p =0.005), 外 来 N 群10(10−45), 同 P 群30(5
−120)(p =0.019)であり,いずれも N,P 群間に有意差
が認められた。
外来群において,「直感」
「生理的」
「限界」の場合に患者
が想定する待ち時間は,看護師のそれよりも有意に長かっ
た。これは,「外来は待ち時間が長い」という患者の認識
と,業務をできるだけ迅速に処理しようとする看護師の認
識の差を反映したものと考えられる。一方,急性期群では
「生理的」「苦痛」「限界」の場合に,患者が待ちうると想
定した時間は,看護師が待たせると想定した時間よりも有
意に短かかった。
冒頭に述べた「患者からの苦情」の背景に,時間感覚に対
する患者・看護師間較差が存在していることが明らかと
なった。
400
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第11会場 第45群
417)看護配置による看護周辺業務実施状況の違い
418)イラショナルビリーフとユーモア感覚が看護師およ
び介護職者の職業性ストレスにおよぼす影響
灘波浩子,若林たけ子,小池 敦(三重県立看護大学)
【目的】
7対1看護配置届出病院の看護師群(以下,7対1群)と
10対1看護配置届出病院の看護師群(以下,10対1群)の
看護周辺業務の実施状況の違いを明らかにする。
【研究方法】
A 県内で一般病床200床以上を有する15病院の一般病棟常
勤看護師(経験年数1年未満を除く)2213名に対し自記式
質問紙郵送回収調査を実施した。調査項目は基本属性,日
本看護協会が他職種に任せたい『周辺業務』として設定し
ている業務10項目(配膳,残食チェック,薬剤分包,注射
薬ミキシング,薬剤在庫管理,薬剤搬送,衛生材料搬送,
検体搬送,ベッドメイキング,ME 機器保守管理)の実施
状況であった。7対1群と10対1群の看護周辺業務の実施
状況を比較するためにχ2検定を行った。本研究は三重県
立看護大学倫理審査会の承認を得て実施した。
【結果】
調査回答者1342名(回収率68.5%)のうち,7対1群625
名,10対1群243名の計868名を分析対象者とした。その結
果,2群間で実施状況に有意差のあった看護周辺業務5項
目のうち7対1群が有意に常時実施している業務は2項目
で,10対1群の3項目より少なかった。その業務内容をみ
ると,薬剤分包(χ2 =11.602,p < .01)とベッドメイキ
ング(χ2=12.62,p < .01)の常時実施が7対1群に多く,
配膳(χ 2 =9.858,p < .01)・薬剤搬送(χ 2 =14.423,p
< .001)・衛生材料搬送(χ 2 =21.392,p < .001)の常時
実施は10対1群に多かった。これらの業務内容から,7対
1群は10対1群に比べ,搬送業務など患者に直接接しない
業務の常時実施が有意に少ないといえた。
【考察】
10対1群は看護周辺業務で常時実施している項目数が多
く,特に搬送業務など患者に直接接しない業務を有意に常
時実施していた。7対1導入に当たって看護師採用を増加
させた施設の多くが他職種への業務移譲を含めた看護業務
の見直しを行っており,搬送業務など直接患者に関わらな
い業務の多くを他職種や委託職員に任せたためと考えられ
た。7対1新設による看護師不足は,看護師の過剰な賃金
上昇を招き,その他の労働者を雇う経営資金を削減させる
可能性を持つため,7対1導入は却って看護職員の周辺業
1)
務分担を増加させかねないとの指摘 がある。しかし今
回の結果からは,看護師以外の労働者の削減や周辺業務代
替の促進は見られなかった。
ベッドメイキングは,看護配置に関わらずほとんどの病院
で委託職員や看護助手の業務となっていたが,7対1群の
多くが常時実施していた。7対1病院では,定期シーツ交
換だけでなく汚染した際に迅速に交換できるという適切な
看護ケアの介入が推測された。
以上より,7対1群は10対1群に比べ,搬送業務などに煩
わされることなく,看護ケアに従事できる環境にあること
が示唆された。
参考文献
1)角田由佳(2007).看護師の働き方を経済学から読み
解く:看護のポリティカル・エコノミー .東京:医学書院
糸永喜代美(和水町居宅介護支援事業所)
徳永淳也(九州看護福祉大学大学院精神保健学専攻)
【目的】
看護師および介護職者の持つイラショナルビリーフ(不合
理な信念)が,職業性ストレスにどのような影響をおよぼ
すのかについて,ユーモア感覚のストレス緩衝効果と共に
実証的に検討する。
【対象と方法】
介護療養型医療施設である10病院に勤務する看護師および
介護職員,928名を対象として自記式質問紙調査を実施し
861名(回収率:92.8%)から回答を得た。調査項目は,基
本属性に加えて,イラショナルビリーフ測定には日本版不
合理な信念測定尺度短縮版,ユーモア感覚はユーモアスタ
イル質問紙(HSQ),職業性ストレスは職業性ストレス簡
易調査票をそれぞれ使用し,各変数について職種間比較を
実施した。さらに,これらを説明変数としストレス反応に
おける主要な領域である抑うつ感,不安感,活気を目的変
数とする重回帰分析を実施した。なお,本研究は九州看護
福祉大学倫理委員会の承認を受けた。
【結果および考察】
イラショナルビリーフの両職種間比較では「依存」で看護
師が,「問題回避」では介護職者が有意に高いことが明ら
かとなった。職種間の性別をコントロールした分析では,
女性で「依存」において有意差がみられ,両職種とも依
存度とストレス反応との間に関連がみられる傾向があり,
「依存」傾向が高いほどストレス反応も高い傾向にあった。
また,イラショナルビリーフの下位領域は,親和的および
自己高揚的ユーモアなどのポジティブユーモアとの間に負
の相関があり,攻撃的および自己卑下的ユーモアなどのネ
ガティブユーモアとの間には正の相関を示していた。重回
帰分析の結果から,両職種ともにイラショナルビリーフの
下位領域である「依存」は,
「抑うつ感」を有意に高める
変数として選択されていたが,親和的ユーモアや自己高揚
的ユーモアは,抑うつ感を有意に減弱する影響を示してい
た。
結果.抑うつ感を目的変数とする重回帰分析
**
抑うつ感
7
.20
=− *
* 介β
6
*
,
7
*
2
=.1
**
.18
介β
95
*,
=−
=.1
4
看β =.20 ** ,介β
β
3
9*
4
看
−.11
=.1
β=
* ,介
看β
.261
=
看β
看β=.261**
対人関係ストレス
適性度
仕事の満足度
JIBT(依存)
同僚のサポート
看β=.123** 看β
=−
.084 *
介β
=−
.16
介β
:看護師のみに有意な変数
自己高揚的ユーモア
=.2
12 **
介β
:両職種に共通して有意に影響した変数
6*
JIBT(無力感)
=−
.19
0 **
量的負担
働きがい
:介護職者のみに有意な変数
β:標準偏回帰係数 看:看護師 介:介護職者
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
親和的ユーモア
401
419)看護師が感じる QOL・インフォームドコンセントと
倫理的課題
420)看護師の年齢・経験年数別にみた接遇・尊重・説明・
指導における看護行為の評価
今川詢子(東都医療大学ヒューマンケア学部看護学科)
長谷川真美,渋谷えり子,兼宗美幸
(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科)
徳世良重(埼玉県総合リハビリテーションセンター)
吉川侑希,山田智樹,高澤みさき,小長井麻衣,高柳佳忠
(富山市立富山市民病院看護部)
上野栄一(福井大学医学部看護学科)
【目的】
QOL,倫理,インフォームド・コンセントをキーワード
に事例検討会を中心とする講座に参加した看護師の参加動
機および検討したい事例の分析から,看護師の倫理に関す
る意識を明らかにする。
【方法】
対象:平成21−22年度に A 大学公開講座「QOL と IC,倫
理を考える」の受講看護師15名。データ収集方法:講座受
講動機,検討したい事例と検討点についての質問紙調査。
【倫理的配慮】
書面,および口頭で研究内容,方法,協力の任意性,匿名
性,データの管理方法,公表性を説明し,講座終了時の提
出をもって同意とした。
【結果】
受講動機は‘倫理をどのくらい行えていたか振り返りた
い’等「自己の看護の倫理的視点からの振り返り」,
‘患者・
家族間の溝を埋めるための役割を考えたい’等「患者と
家族の調整者としての看護の役割の再考」
‘障害受容過程
の中で QOL 向上のために看護師として何が行えるか’等
「患者にとっての QOL 向上に添える関わりの模索 」‘手術
前の短時間での IC の方法を知りたい’‘患者・家族が受け
入れられない説明の場に立ち会うときの支援技術を学びた
い’等「限られた時間や受け入れの難しい状況下での IC
のあり方を考える」,「その他」の6カテゴリーに分類され
た。検討したい事例は,「患者と家族・医師間の思いのず
れを看護師としてどう調整したら良いか迷った」
「実施し
た IC が患者のためになっていたかどうか悩んだ」「家族の
希望で真実を患者に伝えなかったことの是非について悩ん
だ」「家族の意思を尊重し,患者の意思を尊重しなかった
のではと悩んだ」等の事例であった。検討したい事は,
「医
療者と患者・家族との関わり方」「IC の仕方,対応結果の
是非」
「家族との関わり方」
「患者の意思の尊重の是非」
「患
者の QOL 尊重のためのケアとは」
「身体拘束の是非」
「そ
の他」の7カテゴリーに分類された。経験年数で検討事項
の違いはなかった。
【考察】
看護師が患者・家族の QOL 向上,IC・倫理面に対して感
じている問題は,各自実践した看護が患者・家族を尊重し
た看護であったか否か,患者の人としての尊厳を守ったか
について問題を感じていることが分かった。このことは看
護師が患者・家族にとってより良い看護を提供したいと模
索するから起こる悩みであり,今後の倫理面を大切にした
患者支援へ継続されると予測される。
【結論】
看護師が患者・家族の QOL 向上,IC・倫理面に対して感
じている問題は,実践した看護が患者・家族を尊重した看
護であった否か,患者の人としての尊厳を守ったかについ
てであった。
402
【目的】
看護行為の一部である接遇は,行っている本人には,目に
見える評価がないため,客観的に振り返り評価する機会を
持つ事が必要であると考えられる。今回,年齢や経験年数
別による接遇に対する意識の違いを明らかにしたいと研究
した。
【研究方法】
1.調査対象と方法:A 病院看護部倫理委員会の承認を得
て,同意を得られた病棟勤務の看護師88名(20歳代∼50歳
代の各年代22名)に質問紙調査を行った。質問紙は先行研
究を参考に,看護行為を全30項目の選択肢式とし,評価方
法は1−4の自己評価の4段階とした。看護行為は「接
遇」「尊重」
「説明・指導」の3つのカテゴリーに分類し,
「接遇」は,基本的な礼儀作法のカテゴリー,「尊重」は個
別性や尊厳などを考慮して接遇のカテゴリー,
「説明・指
導」は,入院中の処置や検査などの説明指導の接遇につい
てのカテゴリー
2. 分 析 方 法: 看 護 師 の 年 齢・ 経 験 年 数 別 に 各 項 目
の合計差と3つのカテゴリー別の合計差をF検定及び
KruskalWallis-H-test にて分析し,多重比較検定を行った。
【結果・考察】
1)接遇カテゴリー:年齢別では,10項目中4項目で有意
差があり,特に20歳代と40歳・50歳代との有意差が著明に
出た。経験年数別では,10項目中4項目に有意差が見られ
た。特に10年未満と31年以上で著明に有意差が見られた。
これは,接遇が重要であると認識しているが出来ていない
と自分でも感じているためと考える。
2)尊重カテゴリー:年代別では,10項目中6項目で有意
差が見られた。特に20歳代と40・50歳代との有意差が著明
に見られた。経験年数別では,10項目中3項目で有意差が
見られた。特に3年未満と31年以上で著明な有意差が見ら
れた。これは,若年層では不安や経験の浅さと自信のなさ
から評価が低くなったと考える。40・50歳代などでは,積
み上げられた経験から効果的な情報収集を行い,ケアを提
供していることを実感し,評価が高くなったと考える。
3)説明・指導カテゴリー:年齢別では10項目中4項目で
有意差が見られた。特に20歳代と40歳代で著明な有意差が
見られた。経験年数別での有意差はみられなかった。これ
は,今までの価値観や知識,柔軟な対応能力が患者への説
明・指導能力を左右していると考える。
【結論】
≪接遇カテゴリー≫
・経験年数よりも年齢別で有意差がみられ,若い世代では
全体的に評価が低かった。
≪尊重カテゴリー≫
・経験年数3年未満,20歳代での評価が低く,40−50歳代
での評価が高かった。
≪説明・指導カテゴリー≫
・40歳代の評価が高く,人としての価値観や知識が説明・
指導能力を左右している。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
421)リハビリテーション病棟で働く看護師のやりがい
梶山直子,金子昌子,鈴木純恵
(獨協医科大学看護学部看護学科)
【目的】
看護師の仕事に対するやりがいは患者や家族との人間関係
を基盤とした問題解決のプロセスに影響される。リハビリ
テーション看護を受ける患者は回復過程において混乱や葛
藤に直面し,向かい合う看護師のやりがいにも影響を与え
る。本研究では,リハビリテーション看護に関わる看護師
のキャリア発達の支援を検討する基礎資料を得るため,や
りがいについて明らかにする。
【研究方法】
西日本の回復期リハビリテーション施設9病院に1年以上
従事する看護師を対象として自記式質問紙法のアンケート
を配布した。対象者への質問は「どの場面でどういったや
りがいを感じていますか」であった。
【倫理的配慮】
本研究は T 大学医学部倫理審査委員会の承認を得て行っ
た。研究の協力を対象となる病院に依頼し,研究の承諾を
得た後,病棟責任者に対して研究目的,意義,プライバ
シーの保護,個人情報の保護などを記載した説明書を配布
し承諾を得た。アンケート内容にも研究説明書を付け,回
収により対象者個人の研究参加への同意を確認した。
【結果および考察】
西日本の回復期リハビリテーション病棟従事1年以上の看
護師146名中111名から回収を得た。その中から,今回分析
対象とした調査項目に関する記述があったのは59名であ
り,有効回答率53.1%であった。分析は,記述内容をコー
ド化し,類似性に従い分類し,カテゴリが形成されなく
なった段階で分析を終了する,質的帰納的分析を行った。
その結果,78のコードから13のサブカテゴリと5つのコア
カテゴリが抽出された。コアカテゴリは,
『個別性に応じ
た看護の実感』
『家族を含めたスムーズなチーム医療の実
感』
『患者の回復の実感』『家族の患者理解と受入れによる
喜びの共有の実感』
『患者家族から向けられた信頼の実感』
であった。『個別性に応じた看護の実感』『家族を含めたス
ムーズなチーム医療の実感』
『患者の回復の実感』は,チー
ムの連携による患者の回復を見ることで,看護実践の成果
を確信でき,やりがいにつながるものと考えられる。この
中で『家族を含めたスムーズなチーム医療の実感』は,リ
ハビリテーションに関わる看護師に特徴的なやりがいと考
えられる。さらに,
『家族の患者理解と受入れによる喜び
の共有の実感』『患者家族から向けられた信頼の実感』は,
患者・家族と看護介入を共有したことや看護介入の成果の
喜びを分かつ経験をして信頼関係が構築され,やりがいと
して抽出されたと考えられ,患者・家族−看護師関係がや
りがいに影響を与えることが示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
403
第11会場 第46群
422)看護職への暴力とその心理的影響について
423)男性看護師に関する研究の動向
和田由紀子,河内浩美(新潟青陵大学)
竹井留美(小牧市民病院)
横内光子(名古屋大学大学院医学系研究科)
【目的】
病院内看護職が遭遇する暴力(暴言・ハラスメントを含
む)の実態を知り,その心理的影響を検討する。
【研究方法】
A県内の看護職200名を回答者とし,託送調査法にて2010
年2∼3月に無記名・自記式の質問紙調査を実施した。看
護職への暴力は,直接的行動・間接的行動・ことば・セク
シャルな言動の4項目を設け,被害を及ぼした相手を「患
者やその家族の場合」と「看護師・医師等のスタッフの場
合」に分け,項目ごとに体験の有無や頻度,被害があった
ことを院内の相談窓口または上司に話したかについて質問
した。同時に,改訂出来事インパクト尺度(以下IES R),日本版精神健康調査票28項目版(以下GHQ28),日
本語版バーンアウト尺度を実施した。分析は,被害を及ぼ
した相手と各項目で集計し,更に暴力の有無と各尺度の得
点についてt検定(有意水準5%)を行った。
倫理的配慮としては,許諾を要する尺度については作成
者・販売元に使用許可を得たと共に,所属機関の倫理審査
委員会の承認を得た。
【結果】
質問紙の回収率70.0%,有効回答率50.0%だった。相手が
患者やその家族の場合は,直接的行動に半数以上,間接的
行動とことばに約30∼40%,セクシャルな言動に20∼28%
の有効回答者が遭遇していた。相手が看護師・医師等のス
タッフの場合では,直接的行動・間接的行動に5%前後,
ことばに13∼17%,セクシャルな言動に7∼9%の有効回
答者が遭遇していた。
各尺度の得点は,3尺度共に高い傾向を示した。暴力の有
無と各尺度得点について行ったt検定では,相手が患者や
その家族の場合は全尺度で有意差はなかったが,相手が看
護師・医師等のスタッフの場合では,IES - RとGHQ
28で有意差がみられた。
【考察】
本調査では,看護職は患者やその家族から暴力を受けるこ
とがスタッフからと比較して3∼10倍以上多く,その内
容では,相手が患者やその家族からの場合では直接的行動,
次いで間接的行動・ことばを受ける傾向が高く,看護師・医
師等のスタッフからはことばが高いという傾向が示された。
暴力を与えた相手が患者やその家族の場合に,暴力遭遇の
有無と各尺度得点で有意差がなかったことについては,暴
力を与えた相手が患者やその家族の場合では,尺度に反映
されるような影響は既に及んでおり,被害の有無の抽出だ
けではとらえられていない可能性や,看護職としての職務
意識の影響,各自のもつ効果的な対応方法の存在,暴力を
受けた後の周囲の対処との関連等,多くの要因の影響が考
えられる。相手が看護師・医師等のスタッフの場合で2尺
度で有意差があったことについては,暴力を与えた相手が
異なるため看護職にとっては質の違う暴力となっている可
能性,看護職の対応能力以上の精神的ダメージである可能
性等が考えられる。今後更にデータを蓄積し,詳細な検討
をする必要がある。
404
【目的】
近年,男性看護師の存在が拡大し,その活躍が期待されて
いる。そこで,男性看護師の看護行為に関する国内の文献
を検討し,その動向を明らかにする。動向を明らかにする
ことにより,性差を生かした看護行為に向け今後の課題を
見出す。
【方法】
情報源として医学中央雑誌 Web を用いた。検索対象年は
2001年∼2010年までの10年間で,
「男性看護師」のキーワー
ドを用いて検索を行った。さらに,文献の種類を原著のみ
に絞り込み検索を行い,男性看護師に焦点を当てた内容の
文献を抽出した。
【結果】
対象文献は56件であった。対象文献56件の各調査対象は,
患者が17件(男性と女性患者8件,男性患者5件,女性患
者4件),看護師が30件(男性と女性看護師4件,男性看
護師24件,女性看護師1件,管理者1件),コ・メディカ
ルが1件,文献(文献検討)が4件,その他(一般人など)
4件であった。男性患者を対象とした調査は,主科が泌尿
器科,年代が思春期に焦点を当てたものであった。また,
看護師を対象とした調査では,一般病棟看護師のほか,精
神科病棟看護師を対象とするものが多かった。主な調査内
容は,患者を対象にした調査では,男性看護師の認知度や
役割期待,看護行為についてのイメージやそれぞれの看護
行為に対する受容状況であった。また,男性看護師の看護
行為に関する患者の受容状況については,調査者が羞恥心
と捉える限られた看護行為の項目のみ,受容状況を明らか
にした報告であった。女性患者にとっては,男性看護師の
看護行為を否定的に捉えている結果が報告されていたが,
泌尿器科の男性患者および思春期の男性患者にとっては,
男性看護師の存在に対し好意的に受け止めている現状が報
告されていた。男性看護師を対象とした調査内容は,職務
満足度,人間関係,困難な体験やストレス,性的役割の認
識などが多く,男性看護師の専門職としての意識や今後の
展望などの思いを明らかにした報告は見当たらなかった。
文献検討では,男性看護師の職場の配属状況や職場評価・
役割期待の内容であった。一般人を対象とした調査では,
男性看護師のイメージについて報告したものがあった。
【考察】
研究対象の患者は,限られた年齢と疾患の患者については
男性看護師の看護行為を好意的に感じている現状が明らか
とされている。しかし,これらの研究は男性看護師の看護
介入についての調査内容が限られた項目であり,それぞれ
のケア内容において患者が男性看護師の看護介入を受け入
れないあるいは受け入れる理由,また,患者の性別や限ら
れた年齢と疾患以外の背景要因との関連性については明ら
かになっていない。今後,男性看護師の活躍の場が拡大す
る現状を踏まえ,患者の看護行為受け入れの状況やその影
響要因を明らかしていくことは,看護師の性差を生かした
看護につながると考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
424)男性看護師のストレスの実態 −精神健康度と職業
性ストレスの視点から−
425)外来で透析を受ける後期高齢者のセルフケアの実際
と看護の検討
須見なつき,菊谷麻璃菜,佐々木静香,須藤寛子,
宮島直子(北海道大学医学部保健学科)
金子史代(新潟青陵大学看護学科)
【目的】
看護師はストレスが強い職業であるが,看護師のストレス
調査では,男性を対象としたものが僅少である。そのた
め,本研究では男性看護師の精神健康度と職場でのストレ
スの実態を把握し,ストレスの特徴と傾向を見出し,メン
タルヘルス対策への示唆を得ることを目的とする。
【研究方法】
1.調査対象
病床数900床以上の A 大学病院に常勤している全男性看護
師46名
2.調査期間 平成22年8月
3.調査方法
無記名による自記式質問紙調査法。質問紙は女性看護師を
対象とした池田ら(2007)の調査を基に,下記の設問から
構成される。
・基本的属性(年齢,勤務年数,婚姻状況,所属部署)
・日本語版一般健康調査票30項目版(以下,GHQ30)
・職業性ストレス簡易調査票12項目版
下位尺度は「仕事の量的負担」,「仕事のコントロール」,
「上司の支援」,「同僚の支援」である。倫理的配慮として,
参加は自由意思であり参加の有無で不利益を被らないこと
を文書で説明し,同意が得られた者に対して行った。ま
た,事前に北海道大学大学院保健科学研究院倫理委員会の
承認を得た。
【結果】
回答数35,回収率は76.1%であり,有効回答率は100%で
あった。基本的属性では,勤務年数5年未満が71.4%,未
婚 者 が77.1% と 多 数 を 占 め て い た。GHQ30総 得 点 の 平
均値は8.2点であり,神経症圏にある者( 7点以上)が
42.9%であった。また20代は35歳以上に比べ,未婚者は既
婚者に比べ精神健康度が有意に不良であった。GHQ30の
要素スケールでは一般的疾患傾向と睡眠障害で,軽度以上
の症状がある者は共に45.7%と高かった。職業性ストレス
簡易調査票の総合健康リスク値は104.4であった。GHQ30
の低得点群は高得点群に比べて仕事のコントロールが高
く,上司・同僚の支援も高かった。
【考察】
対象者の約4割が神経症圏で,精神健康度は不良といえ
る。但し,池田らの報告の70.1%と比較するとその割合は
小さい。調査の対象施設や時期の相違による影響は十分考
えられるが,女性は抑うつになりやすいという報告とも一
致しており,性差があることが予測される。また,精神健
康度が不良である要因として,20代前半では新しい環境へ
の適応の問題,20代後半では指導やリーダーなど新たな役
割の負荷などが考えられる。逆に既婚者は,配偶者から生
活の管理や精神的サポートを受け,ストレスが緩和される
と考えられる。総合健康リスク値と精神健康度の関係で
は,仕事のコントロールが高く,上司・同僚の支援も高値
であると精神健康度は良好であった。以上より,20代なら
びに未婚者への精神面のサポート強化に加え,仕事のコン
トロール感を高められるような指導・教育体制を整え,上
司・同僚の支援を強化・維持することがメンタルヘルス対
策につながると示唆された。
【目的】
後期高齢者に社会復帰を主眼として積極的な透析導入が行
われている。後期高齢者のセルフケアは家族および身近な
人々の支援と社会資源の活用により維持される。本研究の
目的は外来で透析を受けている後期高齢者のセルフケアの
実際を明らかにし看護の方向性を検討することである。
【方法】
自分の日常生活内容を語れる外来で透析を受けている後期
高齢者に半構造化面接法により調査した。質問は対象者が
日常生活で気をつけていること,工夫していること,家族
や身近な人との関係等である。1名に1回,約30分を目標
に面接し対象者の同意を得て面接内容を記録し逐語録とし
KJ 法を用いて分析した。倫理的配慮は,研究フィールド
の看護部の承認を得て対象者を紹介してもらい,研究者か
ら研究目的,参加の自由,匿名性の確保等を説明し同意を
得た。
【結果】
対象者は75歳から94歳までの7名,平均年齢は83.4(±
6.8)歳,透析歴は1年から5年であり心胸比は47.2%か
ら72.0%の範囲であった。逐語録から取り出されデータ化
されたラベルは190 枚であった。これらのラベルは共通す
る意味内容ごとに4回のグループ編成を繰り返し4つの大
グループに分類された。その内容は,治らない病気なので
悲しい,透析は生きるために必要な治療等の「病気と治療
への気持ち」,透析の送り迎えを家族にしてもらう,デイ
サービスで透析食をつくってもらう等「家族・身近な人々
等との関係」,量を少なくして旬のものを楽しむ,家族か
ら買い物に連れて行ってもらう等「生活を維持する工夫」,
卓球やカラオケを仲間と楽しむ,前を向いて生きている
等「生への姿勢と支え」であった。年齢別に最もラベル数
の多いグループをみると76歳男性と75歳女性では「生活を
維持する工夫」が11枚(32.3%)と12枚(42.9%)で最も
多く,75歳女性は野菜は刻んで洗う,トマトは湯むきにし
て冷やして食べるなど食生活を楽しむ工夫の表現が多かっ
た。80歳男性は除水量による心身の苦痛等の「病気と治療
への気持ち」が9枚(34.6%),85歳男性と86歳女性では
家族やデイサービスの人々により支えられている生活「家
族・身近な人々等との関係」の表現が10枚(32.3%)と14
枚(42.9%)で最も多かった。94歳男性は「生への姿勢と
支え」に関する表現が19枚(70.4%)と最も多く,私の生
き方は後ろを向かないことと自分の生を支え,自分が生き
ていることを確かめるために人と話すことを強く望んでい
た。
【考察】
外来で透析を受けている後期高齢者では透析そのものが喪
失体験となることがある。セルフケアの支援では家族や身
近な人々,同病者との関係を通して生への意欲を支えてい
くこと,また,年齢による生活能力を評価し高齢者が自分
でやり方を工夫する,あるいは人に頼んで自分のやり方を
維持しようとする努力を支えていく必要がある。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
405
426)外来血液透析療法を受けている患者のQOLとその
関連要因
佐々木瞳
(独立行政法人国立病院機構福岡東医療センター)
宇野容子(国立がん研究センター東病院)
黒田裕美,橋爪可織,山口智美,浦田秀子,楠葉洋子
(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
【目的】
血液透析患者は身体侵襲や日常生活の制限を伴う治療を生
涯にわたって続けていく中で同年代と比べて身体活動量が
著しく低下し,一層の心理社会的側面の低下や運動機能の
低下が推察される。しかし,このような状況下にありなが
らも患者はその人らしい生活を送っている。本研究の目的
は血液透析治療を受けながら生活している患者のQOLに
運動習慣や自己効力感がどのように関わっているのかを明
らかにすることである。
【研究方法】
A病院で血液透析を受けている通院患者に研究の主旨,方
法,研究参加の任意性 , 結果の公表等について説明し同意
が得られた138例を対象として自記式質問紙調査を行った。
113例から調査票を回収し,調査票未完了者13例を除く100
例(男性59名,女性41名)を分析対象とした。調査項目は
就労の有無,透析歴,自覚症状,運動実施度( 5段階評
価),自己効力感(坂野らが作成した一般性セルフエフィ
カシー尺度),ソーシャルサポート(岩佐らの短縮版7項
目)
,QOL(SF−8)であった。分析は身体的健康を
あらわすサマリースコア(PCS)及び精神的健康をあ
らわすサマリースコア(MCS)と調査項目との関係を
Spearman の相関係数を用いて分析した。有意水準は5%
未満とした。長崎大学医歯薬学総合研究科の倫理審査委員
会の承認を得て行った。
【結果および考察】
対 象 者 の 年 齢 は64.8±9.8歳, 透 析 年 数 は12.7±11.2年 で
あった。自覚症状数の平均数は2.9±1.7( 0∼6)個で,
かゆみや疲れやすい等の症状を訴える人が多かった。運動
をよく実施している人は47%であった。PCSの平均スコ
アは45.1±7.8点,MCSの平均スコアは47.5±8.2点で,国
民平均値(50点)より低かった。自己効力感得点が高い,
自覚症状数が少ないほどPCSとMCSの得点が有意に高
かった(p <0.01)
。自己効力感を高める関わりや身体症状
緩和に向けてのケアは患者のQOL向上に重要であること
が再確認された。PCSにのみ有意な相関があったのは運
動実施度であった(p<0.01)。これは,生活に運動を多
く取り入れることで,身体機能を維持,向上ができている
ということがPCSを高めることにつながったと考えられ
る。しかし,PCSが高いからこそ生活の中で運動が実施
できるという推察もできるため,今後も研究していく必要
がある。MCSにのみ有意な相関があったのは透析歴で
あった(p<0.05)。透析歴が長くなるほどMCSの得点
が低かった。透析歴が長くなるにつれ,患者の病状は進行
し悪化していく。このことが患者の生活や今後に対する不
安へと繋がるためではないかと考える。
406
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第11会場 第47群
427)人工膝関節全置換術を受けた高齢者の手術決断に関
する意思決定プロセス
428)人工膝関節全置換術を受けた高齢者の術前の期待と
術後満足度
山中知子(島根県立大学短期大学部出雲キャンパス)
原 祥子(島根大学医学部看護学科)
赤木京子,藤田君支(佐賀大学医学部看護学科)
【目的】
高齢者が人工膝関節全置換術を受けるという意思決定をす
るまでのプロセスを明らかにする。
【方法】
A 県の2施設で半年以内に初めて人工関節全置換術を受け
た65歳以上の高齢者17名を対象者とした。半構成的面接に
より,変形性膝関節症と診断されたときの思いから手術を
受ける最終決断をするまでの思いについて質問し,分析は
修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて
行った。本研究は S 大学医学部看護研究倫理委員会の承認
を得て実施した。対象者へ研究目的,研究方法,研究協力
の自由,途中辞退の自由,プライバシーの保護について説
明し,同意書への署名をもって研究協力の承諾を得た。
【結果】
20の概念を生成し,8つのカテゴリーへと統合した。[ ]
はカテゴリーとし,以下にストーリーラインを示す。高齢
者は膝の痛みを抱えながら[痛みのある生活に立ち向か
う]なかで,少しづつ[手術と現実的に向き合う]ように
なる。その後,手術への関心を抱いたり,手術に対する不
安が大きくなることを繰り返しながら[手術と適度な距離
を保つ]状態がある。そのうちに痛みが大きくなり,生活
に支障が出るようになることで[手術を決断せざるを得な
い]状況に至る。そこから[手術への決断]へ至るには2
つの方向性があり,一方は直に[手術への決断]が行われ
ていた。他方は[手術を決断せざるを得ない]という思い
の一方で手術に対する不安も大きく,そこに信頼できる医
師の存在や,医師からの言葉がけがあることで[手術を受
けようとする自分を具体的に想像する]ことができるよう
になる。必要時には,手術を受けるために身の回りの段取
りをつける[手術決断をするための準備]が行われる。そ
して,家族の後押しがあったり,同じ手術を受けた人から
の成功体験を聞くことによって手術に対する不安が軽減し
ていき,手術を受けたあとの自分の役割があるということ
から痛みのない生活に戻りたいという気持ちが生まれるこ
とによって[手術への気持ちが前に進む]という過程を経
て[手術への決断]が行われていた。
【考察】
手術決断までのプロセスには2つの方向性があり,どちら
のプロセスを歩むのかは高齢者の家族背景や社会的役割な
どが関係していると推察された。高齢者は手術と適度な距
離を保ちながら,次のプロセスへ進むまでに十分な検討を
行った上で自己決断を行っていた。手術決断をするために
は,高齢者自身の状況だけでなく自分を取り巻く人々から
の支援や配慮も大きく影響していた。看護師はプロセスの
中にいる高齢者の思いを理解し,努力や強さを支えること
ができるような役割として一緒にプロセスを歩むことが必
要であると考えられる。
【目的】
高齢社会になり,変形性膝関節症の患者は年々増加してい
る。保存療法の効果が得られない末期の状態になると,人
工膝関節全置換術(以下,TKA)が行われる。本研究の
目的は,TKA を受けた高齢者の術前の期待と術後満足度
について明らかにすることである。
【研究方法】
TKA 目的で入院した患者に,術前の面接調査および術後
3ヶ月,術後1年の在宅面接調査を依頼し,同意を得た1
名を分析対象者とした。術前の期待と術後満足度について
半構造化面接を行い質的記述的に分析した。日中の活動量
は,面接時に10日間を目安にライフコーダ EX の装着を依
頼し,郵送法で回収し算出した。調査期間は2009年9月∼
2010年9月であった。本研究は,対象者の任意の協力に基
づき,文書での同意を確認した。本研究は B 大学医学部倫
理審査会の承認を得て実施した。
【結果・考察】
対象者は,変形性膝関節症で初回右 TKA を受けた79歳,
女性(以下,A 氏)。職業は専業主婦で,一戸建てに住み,
介護を要する夫83歳,病弱な長女52歳との三人暮らしであ
る。家事を担うことや下半身が不自由な夫の通院介助と
いった家庭内役割が大きく,社会活動にも積極的に参加す
る生活を送っていた。
A 氏の術前の期待には,「痛みがひどく,歩行も不自由に
なった。夫の介護や病弱な娘のことを考えると,よくなっ
て何でもできるようになりたい」,「痛くて趣味の日本舞踊
ができない。生きがいにしている趣味を続けたい」とい
う,家族のために手術を決意した意思や趣味の継続を希望
する思いがあった。術後3ヶ月は,
「立ち座りは楽になっ
た」一方で,「手術した実感がない。術前のような痛みは
ないが,曲げ伸ばしの痛みは良くならない。いつになった
らよくなるのか」というように,痛みは軽減したが,右膝
屈伸時の痛みや腫脹,熱感は持続し,患者の思う回復には
至っていなかった。術後1年は,
「膝の屈曲はこれ以上望
まないが。曲げ伸ばし時の痛みがある。もっと痛みが良く
なると思っていた。今でも手術してよかったという実感
がわかない」といった現状に満足していない体験が語ら
れた。A 氏の1日の平均歩数は,術前6445歩,術後3か月
6154歩,術後1年6124歩であり,術前後に大きな差はみら
れない。しかし,4 METs 以上の活動強度の1日平均割合
は,術前3 % から1年では8 % に増加しており,活発な活
動ができるようになっていることがわかる。A 氏の手術へ
の期待は,痛みのない生活の維持ではなく,今以上の症状
改善や活動拡大であり,現状では満足感につながらないこ
との要因であると考える。
【まとめ】
患者は後期高齢者であるが,活動したいという要望が強
く,術後痛みがなく動けることへの期待は大きいと思われ
た。回復への期待には個別性があり,手術に対する期待に
よって満足度が異なることをふまえた支援の必要性があ
る。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
407
429)透析患者のリンに対する意識・認識と食生活の実
際 ∼正常群と高リン血症群の比較から∼
430)脳卒中後遺症で機能的自立度評価が低い患者への生
活行動再獲得を目指した看護
中村織恵(東都医療大学ヒューマンケア学部看護学科)
福島明美,小松芳子(医療法人桂水会岡病院)
林 裕子(北海道大学大学院)
丸川陽子,山田雅代(医療法人社団秋桜丸川病院)
日高紀久江(筑波大学)
福良 薫(北海道医療大学)
紙屋克子(静岡県立大学)
【目的】
透析患者におけるリン(以下 P)コントロールは透析と薬
物療法に併せて食事療法が重要である。高 P 血症は自覚症
状には現れにくく,食品中の P 含有量を確認しづらいこと
から食事療法を継続できない現状がある。大量に高 P 血症
治療薬を内服してもコントロールできない患者がいる一方
で,P 値を正常に保てている患者も存在する。そこで外来
通院透析患者の中で P 値が正常である患者と,内服治療を
行っていても P 値が高い患者に対し P に関する意識と,食
事の実態を独自に作成した2次元マップを用いて対面式調
査を行ったので報告する。
【研究方法】
1)対象:外来透析患者304名中 H21年9月∼10月の定期
採血結果が連続して血清 P6.5mg/dl 以上であり高 P 血症治
療薬を内服している患者(以下高 P 血症群)22名と H22年
7月∼8月定期採血結果より血清 P 値が正常値の患者25
名(以下正常群)2)調査期間:高 P 血症群 H21年11月∼
H22年 1 月。 正 常 群: H22年11月 ∼ H23年 1 月。 3) 方
法:独自に作成した P に関する知識・食生活についての調
査項目と食品に対する意識と摂取回数を視覚的に示す2次
元マップを用いて,ベットサイドにて患者1名あたり30分
から1時間かけて対面形式で調査をした。4)倫理的配
慮:研究対象者に対し文書にて研究の趣旨,患者の権利の
保護,プライバシーの保護を説明し同意を得た。
【結果と考察】
平均年齢は正常群69.6歳,高 P 血症群57.1歳,平均透析歴
は正常群44ヶ月,高 P 血症群67.9ヶ月。
血清 P 検査結果について『関心がある』は正常群8名に対
し,高 P 血症群14名と高 P 血症群が高かった。高 P 血症群
の理由は疾患に対する知識を根拠としていた者は少なく,
「医師より高いと言われる」が多かった。一方正常群は関
心がない理由として「悪ければ指摘される」と挙げていた。
P に対する意識が維持できないのは,検査結果が正常であ
ると医療者は改めてアプローチをしない現状があり,患者
の意識が P 値に向かないのではないかと考えられる。
P 値が高いと認識している食品として両群ともに P 含有量
が多い[食肉加工品]
[魚加工品]が含まれていた一方で,
[納豆・わかめ][乳製品]といった P 含有量の少ない食品
も多いと認識されていた。1週間の摂取回数について,患
者は自らが P 含有量の多いと認識している食品は摂取回数
を多くしないようにしていた。高 P 血症群でジュース・果
物といった嗜好品が多く食されており食習慣の偏りが示さ
れた。患者にとって望ましい食品選択が難しい背景には,
外来透析が長期化する中で食事指導を改めて行う機会が持
てないことが多いことや,P 含有食品を含まない献立作り
が難しいことが考えられる。外来看護においても受け持ち
看護体制を取り継続した指導を行っていくことが必要であ
ると考える。
408
【はじめに】
脳卒中後遺症患者では機能的自立度評価(以下,FIM)が
低く,回復の可能性が得られないと評価される事例も多く
存在する。FIM が低い患者では,現状を維持するリハビ
リテーション(以下,リハ)となる傾向も多い。そこで今
回,FIM が低い対象者に対し専門士による訓練に看護に
よる自発的な生活行動を引き出す介入を加え,その効果を
検討した。
【研究方法】
対象者は歩行可能な患者を除外した脳卒中後遺症患者23名
であった。通常の看護の患者16名を通看群とし,本看護を
導入した17名を新看群とした。本看護方法は自発的な行動
を引きだすことを目的にし,行動可能な体力のための栄
養,筋肉の拘縮を解除し活動しやすい体作りのための入浴
や筋膜リリースに準じた用手微振動,自発的な行動を引き
出すために,行動を想起できる環境や声掛けによる誘導等
を日課に取り入れた。データ収集は退院後に入院記録より
年齢や疾患名などの基本的情報と,FIM と看護経過の情
報を収集した。FIM は評価方法の精通者とともに行った。
分析は通看群と新看群について U 検定を行った。また,看
護導入後に顕著な変化を示した事例を分析した。倫理的配
慮は共同研究機関倫理委員会の承認と,対象施設責任者の
共同研究と倫理的配慮の了解を得た。
【結果】
通 看 群16名(男14名, 女 2 名 ) の 平 均 年 齢 は67.7±10.5
歳であり。新看群17名(男11名,女5名)の平均年齢は
71.1±10.9歳であった。両者間の年齢には有意差はなかっ
た。発症より介入開始期間は,通看群29.5±13.0日,新看
群46.9±25.1日で有意差(p <0.05)を認めた。入院と退院
時のFIM評価の平均は,通看群は66.9±27.0点と92.9±
28.0点,新看群は41.0±21.9点と70.3±29.7点であった。両
群において入院退院時 FIM には有意差(p <0.05)が認め
られた。入院時の FIM を基準とした変化率は,通看群46.5
±30.8(MIN12.0, MAX107.0), 新 看 群88.4±80.0(MIN0,
MAX288.8)で,有意差は認められなかったが,変化率が
100を超えた患者は通看群2名,新看群4名であった。新
看群で FIM の変化率が最も大きい事例(49歳)は,右中
大脳動脈瘤の破裂し術後に右側頭葉から後頭葉の広範囲の
脳梗塞となり寝たきり状態の入院であったが,杖歩行で自
宅へ退院した。
【考察】
本看護の導入後の FIM 変化は個人差のため有意差はない
が,FIM の低い患者が退院時には高い評価となる傾向が
あった。本看護は目標指向的に介入を生活に組み込むこと
で寝たきり状態から自ら生活が可能になる有効な看護とな
り得ることが示唆された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
431)慢性期脳卒中患者のリハビリテーション継続のため
の要因
井原 緑,大木友美(昭和大学保健医療学部)
【目的】
慢性期脳卒中患者が,自主的にリハを実施していくことに
関連する要因は何かを明らかにすることである。
【方法】
対象は,A 県郊外にある2ヶ所の総合病院のリハ病棟に入
院中の脳卒中患者で,発症後1か月以上経過し,高度の認
知症・失語症を合併していない者とした。対象の一般的背
景や疾病による特性,リハ実施状況,リハに対する結果予
期・効力予期,リハに関する効力を高める4つの情報源
(以下情報源),生活の満足度について,質問紙を用いて,
聞き取りながら回答を得た。分析は,Mann-Whitney の U
検定,Fisher の直接確率検定,Spearman の相関係数を求め
た。本学倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
28名を分析対象とした。男性22名・女性6名,平均年齢
66.5歳,脳卒中初回発作の人が22名,平均発病後月数5.5か
月,麻痺は右11名・左9名・左右2名・なし6名だった。
1週間に自主的にリハをしている日数は,対象の背景や特
性のうち,発病後月数のみ有意な正の相関(ρ= .432,P
= .027)を認めた。リハをやめたくなることがあると回
答した人(平均90.0)は,ないと回答した人(平均68.2)
より,リハへの結果予期 VAS 得点が有意に高かった(P
= .026)。リハへの結果予期(α= .833)と効力予期(ρ
= .501,P = .007),リハへの効力予期(α= .960)と情報
源(α= .819,ρ= .556,P = .002)は,有意な正の相関
を認めた。リハへの効力予期は,情報源の下位尺度のう
ち,遂行行動の達成(成功体験,α= .704,ρ= .495,P
= .007),代理体験(他者の行動観察,α= .701,ρ= .560,
P = .002),情動的喚起(生理的な反応の変化の体験,α
= .781ρ= .503,P = .006)と有意な正の相関を認めた。
言語的説得(自己強化や他者からの言語的暗示,α= .642)
とは有意な相関を認めなかった(ρ= .253,P = .193)。リ
ハへの結果予期,リハへの効力予期,生活の満足度は,リ
ハ実施日数と有意な相関はなかった。生活の満足度は,リ
ハへの結果予期(ρ= .468,P = .014),情報源と有意な正
の相関(ρ= .479,P = .011)を認めた。4つの情報源の
下位尺度では,遂行行動の達成だけが,生活の満足度と有
意な正の相関を認めた(ρ= .446,P = .020)。 【結論】慢性期脳卒中患者の自主的リハの実施は,発病後
月数と関連していた。リハへの結果予期,リハへの効力予
期,生活の満足度は,リハ実施と関連を認めなかった。リ
ハをやめたくなることがあると回答した人の方が,ないと
回答した人より,リハへの結果予期が高かった。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
409
第11会場 第48群
432)がん看護実践に活用可能な補完代替療法の効果と安
全性のエビデンスに関する文献検討
相原優子
(元沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科博士後期課程)
神里みどり(沖縄県立看護大学)
清水かおり(名桜大学人間健康学部看護学科)
謝花小百合,玉井なおみ
(沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科博士後期課程)
濱田香純
(沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科博士前期課程)
【緒言】
がん患者は,がんとがんの治療により,心身に大きな苦痛
を抱えている。その苦痛を緩和し,QOL の改善に貢献す
る手段として補完代替療法(Complementary and Alternative
Medicine,以下 CAM とする)の利用に関心が高まってい
るが,臨床看護師が CAM について学習する機会は少な
い。また,CAM の効果と安全性はまだ十分検証されてお
らず,多忙な一般病棟での実施も困難である。そこで我々
は,がん看護実践で広く活用できる安全で簡便かつ効果的
な CAM の継続教育プログラムの開発に取り組んだ。今回
は,プログラムに取り入れる CAM の効果と安全性のエビ
デンスに関する文献検討の結果を報告する。
【方法】
CAM の選定基準を( 1)がんやがんの治療に関連する心
身の苦痛や QOL の改善が期待できるもの,
( 2)がん患者
に実施する際の安全が保証できるもの,
( 3)特別な修練
を必要とせず,臨床現場で看護師が簡便に使用できるもの
とし,医学中央雑誌 Web 第4版と CINAHL,MEDLINE
による文献検索を行い,候補の CAM を選出した。その
後,各 CAM に関するガイドライン,システマティックレ
ビュー,研究論文を収集して記述レビューを行い,効果と
安全性のエビデンスを検討した。
【結果】
「アロマセラピー/マッサージ」,
「音楽/音楽療法」,
「アー
トセラピー」,「呼吸法/リラクセーション法」,「タッピン
グタッチ」の5つを候補とした。「アロマセラピー/マッ
サージ」は,痛み・倦怠感・不安の一時的な軽減やセラピ
ストによるケアリング効果が期待でき,実施時の注意も示
されていた。「音楽/音楽療法」と「アートセラピー」は,
主に心理的な効果が期待でき,患者の好みへの配慮が必要
とされていた。
「呼吸法/リラクセーション法」は,セル
フコントロールのための介入として期待でき,「タッピン
グタッチ」は,実施者との触れ合いを通した身体・精神・
社会的効果が期待されていた。しかし,ガイドラインやシ
ステマティックレビューでは,どの CAM も研究の不足か
ら,実践に推奨されるには至っていなかった。
【考察】
CAM はホリスティックなアプローチであるため RCT で効
果を検証するのは難しいが,小規模な研究や質的研究で
は,苦痛症状の軽減や心理社会的な効果が認められてい
る。実施時の注意点や患者の好みに配慮し,反応を見なが
ら用いることで安全は保証できると考えられ,これらの
CAM は有用な看護介入になりうると考えられた。尚,本
研究は科研費(21592778)の助成を受けたものである。
410
433)クリーンルーム(準クリーンルーム含む)入室患者
の不適応感の抽出2 山田 忍(山口大学大学院医学系研究科)
大久保仁司(四日市看護医療大学)
三坂里美(公立大学法人和歌山県立医科大学附属病院)
【目的】
クリーンルーム(本研究では,準クリーンルーム含む)に
入室する患者は,告知後治療を受け入れ,閉鎖的な環境に
適応しなければならない。患者の中には,入室後にせん妄
症状やうつ症状が出現することもある。そういった患者の
状態をクリーンルーム入室時の不適応な状態として捉え,
医療者が捉える不適応感を明らかにすることで,医療者が
共通認識し患者への早期介入が可能になると考えた。本研
究では , 不適応感を一般化するための第一歩として,筆者
の先行研究から得られた「クリーンルーム入室時の不適応
感」を基に作成した調査票を用いての医療者への調査をお
こない,探索的因子分析から抽出された内容を報告する。
【研究方法】
筆者の先行研究で得られた医療者が感じている「クリーン
ルーム入室時の不適応感」のイメージを基に,「患者自身
の要因」「社会的要因」「療養環境の要因」の3領域からの
調査票を作成し200Y 年6月から12月 A 大学病院に勤務す
る医師4人・看護師55人,B 大学病院看護師51人,C 市民
病院血液内科勤務経験医師1人,看護師9人に調査を行っ
た。内容は探索的因子分析,主因子法(プロマック)によ
り分析した。倫理的配慮として , 研究の趣旨と研究への途
中不参加においても不利益を生じないことを説明し , 同意
書への記名により研究への参加を確認した。
【結果】
「クリーンルーム入室時の不適応感」は,患者自身の要因
として「化学療法による精神的・身体的苦痛」12項目,
「趣
味・嗜好の制限」4項目,「治療経験」3項目,「重症感」
3項目4因子,社会的要因として,
「孤独な療養環境」4
項目,「社会的な役割の重圧」4項目,「金銭的困窮」2項
目3因子,療養環境の要因として,
「医療者との関係」5
項目,「閉鎖的な療養環境への不満」4項目,「身近な療養
環境への不満」3項目3因子が抽出された。因子負荷0.4
以上,α係数0.88から0.68を確保できた。
【考察】
今回の内容抽出は,一般的にがん患者の適応過程に影響す
る要因である身体的・精神的・社会的要因に加え,クリー
ンルームの特徴的な療養環境の要因も抽出されていた。ま
た,α係数も高い値を確保でき,信頼性の高いものと考え
る。抽出された「クリーンルーム入室時の不適応感」は,
医療者間で共通した認識で患者を捉えるツールとして活用
可能と考えている。医療者間で不適応感をスクリーニング
することで,不適応な患者への支援を早期に行えるものと
示唆する。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
434)前立腺がん患者の排尿負担感とコーピングが心の健
康に与える影響 435)乳がん患者の首尾一貫感覚 修正版グラウンデッド・
セオリー・アプローチによる構造化
掛屋純子(新見公立大学看護学部看護学科)
掛橋千賀子(岡山県立大学保健福祉学部看護学科)
常 義政(川崎医科大学付属病院)
福島直子,尾島喜代美
(高崎健康福祉大学保健医療学部看護学科)
【研究目的】
本研究の目的は,前立腺がん患者の排尿負担感と各コーピ
ングスタイルが心の健康に与える影響と,コーピングの緩
衝効果について検討することである。
【研究方法】
対象者:前立腺がんで放射線療法(組織内照射)後1,3,
6,12,24か月後の患者。調査期間:2009年3月∼2010年
3月末。調査内容:質問紙による調査で郵送法にて行っ
た。質問内容は,基本的属性(年齢,就労の有無,配偶者
の有無など)
,EPIC の排尿・排便・性機能,排尿・排便・
性負担感,MAC の「前向きな態度」
「絶望的態度」
「予期
的不安」「運命論的態度」「回避的態度」,SF36の心の健
康(Mental Health)について調査した。分析方法:記述
的統計,排尿負担感および MAC の各コーピングスタイル
の中央値を算出し,それぞれの高低群で分け,心の健康
(Mental Health)を従属変数,排尿・排便・性負担感およ
び MAC の各コーピングスタイルを独立変数とする多元配
置の分散分析を行い主効果および交互作用について検討し
た。
【倫理的配慮】
研究者の所属機関および当該施設の倫理委員会の承認を受
けた。研究の目的と意義,研究協力を拒否する権利がある
こと,研究協力への諾否が医療・看護サービスに影響はな
いこと,個人情報の保護を遵守することを書面にて説明し
た。調査票の返送をもって同意を得たこととした。
【結果】
排尿負担感と各コーピングスタイルの検討多元配置の分
散分析の結果,予期的不安(F(df)=5.38(1),p =0.022),
回避的態度(F
(df)=6.20(1),p =0.014)において主効果
があった。絶望的な態度(F
(df)=3.20(1),p=0.076)の
主効果は有意傾向にあった。さらに排尿負担感と予期的不
安では交互作用(F(df)=4.62(1),p =0.033)が見られた。
しかし,排尿負担感と前向きな態度・絶望的態度・運命論
的態度・回避的態度において交互作用は見られなかった。
【考察】
多元配置の分散分析の結果,予期的不安と回避的態度の主
効果が有意であったこと,また絶望的態度の主効果が有意
傾向であったことから,先行きのない不安を持たず,病気
について深刻に思いふけないようなコーピングスタイルを
とることが心の健康を維持していくことができることが明
らかになった。また排尿負担感と予期的不安では交互作用
がみられたことから,前立腺がんにおいて排尿機能の低下
や尿漏れなどの排尿負担感は予期的不安に陥らないほど排
尿に対する負担感も軽くなり,心の健康も保たれることが
示唆された。従って,看護者は治療前から患者に治療後起
こりうる副作用や体の変化について十分な情報提供をする
ことで負担感の軽減や心の健康を維持することができると
考える。
【目的】
病に直面しながらも,それと共に生きようとする患者は
多様な健康生成力を持っている。健康保持能力である,
SOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)が高いとされ
る人の経験には,病と共に生きるための有益な健康要因が
埋もれている。今回 SOC の高い乳がん患者の経験の一端
を構造化し,彼らが持つ健康要因を明らかにすることを目
的とする。
【研究方法】
乳がん患者会 A 及び B の会員で,選定条件に合致し研究の
同意が得られた6名を対象とした。データは半構造化面接
法にて収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプ
ローチを用いて分析した。本研究は,N 大学及び患者会の
所属施設の倫理委員会の承認を受けた。
【結果・考察】
分析の最小単位である概念は〈 〉,概念から構成される
カテゴリーは《 》で示す。自分が乳がんであるという
〈現実に落ち着いて向き合う〉,《為すべきことを考え始め
る》経験は,直面している問題や,これから起ころうとし
ている事を理解できるという把握可能感の機能であると考
えられる。思索し歩き出した方向は,
〈自分に対する肯定
感〉を持つ,
〈よりどころとなる存在〉を実感した《前向
きな生》であった。これらは,乳がんを共にする生を支え
る力であり,問題には何とか対処できるという処理可能感
の機能であると同時に,生き甲斐などの有意味感に繋がっ
ていると考えられる。そして《不調に直面する》経験に対
しては,〈経験者同士による相互サポート〉
〈他者支援への
意欲〉などの相互支援を通して乗り越え,その経験は《生
きる力の蓄積》となり,さらに前向きに生きる力として活
用されるという循環があった。繰り返される《不調に直面
する》経験には,把握可能感と処理可能感の両機能が働く
と考えられる。これは単にどうしていいかわからないとい
う不安ではなく,また元気になれるという見通しのある不
安であり,見通しのある不安ならば,何とかやっていける
という感覚に繋がると考えられる。このような循環により
生み出された《現実への満足感》は,有意味感の機能であ
り,乳がんと共に生きることを意味づけると考えられる。
乳がん後の自分の〈内面の変化に気づき〉,健康時にはわ
からなかった〈楽しみに気づく〉ことも,その感覚を生み
出すことを後押ししていた。そして,再び状況の把握や処
理のための力となると考えられる。対象の経験はこのよう
な循環するプロセスを示していた。高い SOC を持つこと
は,病の経験における対処に良循環を生み出す可能性がこ
れまでに示されていたが,本研究においてそのプロセスを
確認できた。そして,未来への価値づけと他者と積極的に
関与しながら現実を生きる様相が,対象の健康要因として
推察された。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
411
436)外来がん化学療法患者のセルフケア支援に関する視
聴覚教材の有用性の検討(第2報)病棟看護師の意
見より
山根麻子(広島大学病院)
上野和美,片岡 健(広島大学大学院保健学研究科)
若崎淳子(川崎医療福祉大学)
名越恵美(福山平成大学)
掛橋千賀子(岡山県立大学)
【緒言】
我々は外来がん化学療法を受ける患者・家族のセルフケア
支援プログラム完成を目指し研究に取り組んでいる。プログ
ラム試案をもとにその展開に向けた視聴覚教材(DVD:全
1)
6章)の作成過程と内容 を踏まえ,DVDの有用性を検討
する為にがん看護に携わる一般病棟の看護師に視聴を依頼
し,自記式質問紙調査を実施したので結果を報告する。
【方法】
対象:A・B 病院に勤務する病棟看護師25名。データ収
1)
集:先行研究 を踏まえ,DVD視聴により患者は外来
がん治療生活に関するイメージ形成が可能か,セルフケア
の動機付けになるか,及び内容に係る改善点に関する意見
を問う自記式質問紙調査票を作成。視聴後に配布,回収し
た(平成22年8月,同年12月∼平成23年2月)。データ分
析:質問紙への記述内容は1センテンスもしくは同一内容
を示す1パラグラフを分析単位とし,表現,意味内容の類
似性・相違性により質的に分析,カテゴリー化した。
【倫理的配慮】
本研究は岡山県立大学倫理委員会の審査を受け承認を得て
実施した。対象者には文書にて研究趣旨と共に無記名での
調査の実施,自由意志に基づく調査協力,プライバシー厳
守等を説明し同意を得られた者のみ提出を求めた。
【結果】
対象者の平均年齢は32.1歳,平均経験年数は臨床看護10.6
年,がん看護5.7年であり,外来がん化学療法室での実務
経験は全員なかった。総データ数は97であった。カテゴ
リーの内容は,[分かり易く役に立つ副作用毎の対策]
[患
者のセルフケアに役立つ情報提供]
[イメージし易い日常
生活に密着した内容]
[精神的に安心する治療経過を踏ま
えた内容][動画による視覚的効果]
[章立て構成により可
能な選択視聴]
[化学療法を受ける不安の強い患者への事
前活用][視聴時期の適時性]
[DVD 内容の日常看護への
活用][自己管理向けた気になる命令口調][年齢や理解力
を考慮しない説明][長時間・重複した内容][追加したい
項目に関する意見]に分類された。
【考察】
がん看護に携わる一般病棟看護師の意見からは,作成した
DVD内容はセルフケアに向けた知識獲得と副作用に対す
る具体的準備を促進できるものであり,患者の精神的安心
にも寄与すると考えられた。視聴覚効果により治療中の日
常生活に関するイメージ形成が可能な一方で,内容の重複
や理解力・年齢の考慮不足,全章を視聴するには長時間を
要すとした臨床看護に即した意見がみられ,DVDを汎用
するには内容の改善や修正の必要性が指摘された。
【引用文献】
1)若崎淳子他 . 外来がん化学療法を受ける患者のセルフ
ケア支援−プログラム展開に向けた視聴覚教材作成を中心
に− . 日本看護研究学会雑誌33(3).261. 2010.
(本研究は平成20∼22年度科学研究費 C20592557の助成を
受け実施した)
412
437)オストメイトがセルフケア能力を獲得する上での看
護師の役割と課題
【目的】
ストーマ造設術を受けた患者は,術後もボディイメージや
日常生活の変化に伴う多くの障害を乗り越えなければな
い。従って,オストメイトが自らの身体状況を受容し,セ
ルフケア能力を獲得するための介入,退院後の継続したケ
アは看護師の重要な役割である。
本研究では,オストメイトに対し調査を実施し,オストメ
イトがセルフケア能力を獲得する上での要因や問題点,課
題を明確にし,看護師がどのようにオストメイトと関わり
を持ち,支援していくべきかについて考察する。
【研究方法】
対象者は,Η大学病院ストーマ外来を受診した者のうち,
ストーマセルフケアを本人が主体的に行っているオストメ
イト。調査は自記式質問用紙を配布し,無記名で回収。研
究の主旨・倫理的配慮について書面で説明し,回収をもっ
て同意が得られたものとした。調査内容は,基礎属性に関
する9項目と入院中の生活,退院後の生活,看護師に期
待・希望することに関する15項目。
【結果および考察】
1.有効回答数は,オストメイト30名(回収率79.0%)。
対象者の性別は,男性20名(66.7%),女性10名(33.3%),
年齢においては,対象者15名(50%)が65歳以上の高齢者
であり,ストーマ造設臓器は,大腸15名,小腸7名,尿路
8名であった。
2.術前にストーマ造設後の身体的イメージができていた
者は13名,できていなかった者は16名であった。これら2
群間において,術前指導の有無について有意差が見られ
た。すなわち,術前指導を受けた者の方が有意に術前から
身体的イメージがつきやすいという結果であった。指導者
は患者の理解度に応じた説明を行い,患者が質問しやすい
環境をつくるよう心がけるべきであると考える。
3. 入 院 中 の 支 え や 意 欲 に つ な が っ た こ と は,25名
(83.3%)が『看護師など周囲のスタッフからの言葉・態
度』と回答していた。入院中に毎日患者と関わるスタッフ
からの言葉や態度は,オストメイトにとって大きな精神的
支えになり,その後の意欲につながるため,看護師を含む
周囲のスタッフは,オストメイトが安心できるような声掛
けや態度を心がけるべきである。
4.7割以上のオストメイトが装具交換に対して自信が持
てないまま退院しており,退院後1年が経過しても自信を
持てていないオストメイトがいることが明らかとなった。
このことから,短い入院期間中にオストメイトの心理状況
をアセスメントした上で,如何に効果的な介入を行うかが
今後の課題であり,ストーマ外来での継続したケアの必要
性があると考える。また,入院中に装具交換の練習に対し
て『とても積極的だった』者は,早期に自信を持つことが
できていた。この点においても,入院期間中の関わりが重
要であると思われる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第11会場 第49群
438)精神科外来での見学実習を通しての学生の学び
片岡三佳,千葉進一,奥田紀久子,松下恭子,藤井智恵子,
岡久玲子,廣原紀恵,郷木義子,多田敏子
(徳島大学大学院)
【目的】
看護学生の精神疾患をもつ患者に対する理解を深めるため
に,精神看護学実習において精神科外来受診場面の体験を
行っている。より効果的な教授活動に向けた基礎資料を得
るために,本体験から学生が学んだことを明らかにする。
【方法】
1.調査対象:精神看護学実習において精神科外来を体験
した看護大学3年生70名のうち,実習終了時に提出された
レポート「精神科外来見学について」の使用に同意が得ら
れた69名。2.調査期間:2009年10月∼2010年2月。3.
データ分析方法:精神科外来体験で学んだことに関する文
脈を抽出し,意味を変えないように要約し1データとし
た。1データに要約された意味内容の類似性に従い分類
し,その分類を反映したカテゴリーネームをつけて抽出
した。データの信頼性と妥当性は,研究者間で検討した。
4.倫理的配慮:実習が終了し,成績判定が済んだ後,口
頭・書面で研究の主旨,匿名と守秘の保証,研究協力は自
由であり成績とは無関係であること,公表方法の説明を行
い,協力を依頼し,書面にて同意を得た。
【結果】
データは368記録単位に分割でき,【精神科外来を受診する
患者・家族の姿】【精神科外来に携わる医療者の姿勢】【精
神科外来における患者−医療者の信頼関係の大切さ】
【精
神科外来で行われている治療・技術】
【精神科外来の役割・
機能】【学生自身が見いだした自己の課題】の6つのカテ
ゴリーが抽出された。
【精神科外来を受診する患者・家族
の姿】には,〈精神疾患患者の実際〉
〈家族の役割〉
〈受診
時の患者・家族の気持ち〉,【精神科外来に携わる医療者の
姿勢】には〈医師の姿勢〉〈医療者の姿勢〉〈精神科外来に
おける看護師の役割〉,【精神科外来における患者−医療者
の信頼関係の大切さ】には,〈患者−医療者との関係性〉
〈患者−医師との関係性〉〈患者との信頼関係を築く方法〉,
【精神科外来で行われている治療・技術】には,〈コミュニ
ケーション技術〉
〈医師のアセスメント〉
〈医師が行う支援〉
〈精神疾患患者への対応〉
,【精神科外来の役割・機能】に
は〈治療における外来の位置〉〈外来環境〉〈外来における
ケア〉
〈精神科外来の特徴〉
,【学生自身が見いだした自己
の課題】には〈学生自身の課題〉などがあった。
【考察】
精神科外来受診場面を体験した看護学生は,医師と患者と
の診察場面から外来受診をしている精神疾患患者の特徴を
理解し,コミュニケーションや対応方法を学んでいた。ま
た,患者と医師の関係を通して,医療者の役割を自分自身
の課題として捉えていた。今後,地域精神医療が重要とな
ることからも,外来における看護師の役割,支援に関する
学びの強化を図っていく必要性がある。
439)精神看護実習における学生との関わりおよびストレ
スが看護実践能力におよぼす影響
大井美樹,徳永淳也
(九州看護福祉大学大学院精神保健学専攻)
【目的】
臨地実習は,学生に対する教育効果だけでなく実習指導者
である看護師の看護実践能力の向上にも寄与すると考えら
れる。実習指導を通じて学生に関わることが,看護師の看
護実践能力や対象認識におよぼす影響を看護師の職業性ス
トレス,実習指導時のストレス,実習指導に対する肯定的
認識と共に実証的に検討する。
【研究方法】
A 県内2大学看護学科における精神看護実習病院の看護
師341名(回 収 率94.7%), お よ び 非 実 習 病 院 看 護 師518
名(93.8%)を対象として自記式質問紙による質問紙調査
を実施した。調査項目は,基本属性,看護実践能力尺度
(6-DS),対象認識,臨床看護職者の仕事ストレッサー尺
度(NJSS),実習指導時のストレス,実習指導に対する「肯
定的認識」である。分析では,各変数における単純集計と
実習・非実習病院間の比較を行った後,看護実践能力およ
び対象認識を目的変数とし,職業性ストレスを説明変数と
する重回帰分析を行った。本研究は九州看護福祉大学倫理
委員会の承認を得て実施した。
【結果および考察】6-DS の全下位領域,対象認識および
NJSS の「看護職者としての役割」領域で実習病院看護師
が有意に高得点を示していた。実習病院では,学生との関
わりが看護師自身の臨床能力の形成に寄与し看護実践能
力が高められる可能性が考えられる。実習・非実習病院
間の指導者経験の有無別比較( 4群)では,実習病院の
指導者未経験群は非実習病院の指導者未経験群より6-DS
の「対人関係・コミュニケーション」,「対象理解」領域お
よび「対象認識」が有意に高かった。実習病院における実
習指導者が学生教育に深く関わることが実習指導者ではな
い看護師にとっても学びの機会になり得るためと考えられ
る。重回帰分析では,6-DS の全下位領域に対して「患者
との人間関係」ストレスは有意な負の影響を示す変数とし
て選択されており,患者との間に生じる感情疲弊がケアに
反映し,看護実践能力の低下に繋がるものと推察される。
一方,NJSS の「看護職者としての役割」および「医師と
の人間関係と看護職者としての自律性」は,6-DS の全領
域に有意な正の影響を示しており,質の高い看護実践に努
め看護実践能力が涵養される過程では,職業性ストレスも
高くなりやすいものと考えられる。さらに,学生との関わ
りは6-DS および対象認識に対して,有意な影響をおよぼ
していなかったが,実習指導に対する「肯定的認識」は,
6-DS のほぼ全ての領域と「対象認識」を有意に高める変
数となっていた。指導者として学生と関わる機会だけでは
なく,実習指導の意義と看護師の役割を肯定的に認識する
ことが看護実践能力の向上にとって重要と考えられた。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
413
440)精神科看護師における看護アセスメントに関する実
態調査
441)精神看護学実習における学生の「患者との人間関係
形成」の評価に繋がる体験内容
藤野成美,鳩野洋子(九州大学大学院)
牟田真美(九州国際大学)
岡村 仁(広島大学大学院)
石飛マリコ,黒髪 恵,焼山和憲
(福岡大学医学部看護学科)
【目的】
身体合併症ケア能力強化を重視した看護実践プログラム開
発の基礎資料を得るために,精神科看護師における看護ア
セスメントに関する知識,使用頻度,ニーズについての実
態を明らかにすることであった。
【研究方法】
全国の精神科病院の中から無作為に抽出した施設で承諾が
得られた施設に所属する病棟看護師1000名を対象として郵
送法による自記式質問紙調査を行った。質問紙は属性に関
連した質問項目及び山内らが開発した看護アセスメントに
関する調査項目で構成した。看護アセスメントとは看護実
践に用いられる情報収集に関する知識,技術のことであり
フィジカルアセスメント項目を含む33項目に関して,知
識・使用頻度・ニーズの3側面から構成された5段階評定
である。記述統計量を算出し,看護アセスメント項目毎の
3側面の関連は Spearman 順位相関係数,属性との関連性
は Mann-Whitney U 検定を用いて分析した。
【倫理的配慮】
所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て研究を実施し
た。研究協力者に対し,研究の趣旨,個人情報の保護,回
答の任意性を文書で説明し,調査票の返信をもって研究協
力の同意を得た。
【結果・考察】
回収数は506名(回収率50.6%),有効回答数は488名(有
効 回 答 率96.6%), 男 性30.3%, 女 性67.7%, 対 象 者 の 平
均 年 齢 は43.7歳(SD10.5), 平 均 臨 床 経 験 年 数 は18.9年
(SD10.4),精神科臨床経験年数は13.2年(SD9.4)であっ
た。知識について「全く知らない」「聞いたことはあるが
忘れた」と回答した者が多かった項目は「胸部音声振盪
触診」37.7%,「心尖拍動触診」32.6% であった。使用頻度
について「全く行っていないか,行ったとしても年に1
回未満」「年に1回以上行っているが,毎月行っているほ
どではない」と回答した者が多かった項目は「乳房触診」
90.1%,
「胸部打診」87.1%,
「頚部リンパ節触診」81.3%,
「瞳
孔対光反射」79.0% であった。さらに「乳房触診」
「頚部
リンパ節触診」
「瞳孔対光反射」は臨床経験年数により有
意差がみられた。ニーズについて「絶対に必要である」と
回答した者が多かった項目は「バイタルサイン」
83.0%,
「意
識レベル」79.1% であった。精神科看護師にとって必要度
が高いと認識している項目の1つが「意識レベル」である
にもかかわらず「瞳孔対光反射」の使用頻度は最も少ない
アセスメント項目の1つであることが示された。知識量と
使用頻度,ニーズの3側面における相関分析では相関係数
は0.113∼0.400を示し,1項目を除いて他の全項目間にお
いて相関がみられた。以上の結果より,看護アセスメント
項目間の関連性をふまえた上でフィジカルアセスメントに
関する知識,基本的看護技術習得を統合させた教育プログ
ラムの構築が重要であることが示唆された。
414
【目的】
精神看護学実習において学生の「患者との人間関係形成」
の評価に繋がる体験内容を明らかにし,教員の学生への関
わり方を検討する。
【研究方法】
2008年9月∼2009年3月に精神看護学実習を履修した3年
次生104名を対象に質問紙調査を行った。実習グループご
とに実習終了後,調査用紙を配布,回収した。調査内容
は,先行文献(折山,2007)の実習での学びの内容を参考
に複数の教員で検討し9項目とし,
「そうである」∼「まっ
たくそうではない」の 5段階評価と自由記載(どのよう
な体験でそう思ったか)で作成した。結果を因子分析し4
因子が抽出され,その中の「患者との人間関係形成」に焦
点をあてた。記載された体験内容について意味のまとまり
を検討し質的分析を行った。統計処理は Excel 多変量解析
Ver. 5を用いた。質的分析は,精神看護に精通し質的研究
の経験のある教員3名で行い真実性の確保に努めた。倫理
的配慮としては,A 大学研究倫理審査会の承認を得,学生
に書面および口頭にて研究の趣旨や個人が特定されないこ
と,研究を拒否しても評価に影響するなどの不利益は生じ
ないことを説明し,調査用紙の提出をもって同意を得た。
【結果】
104名中92名の回答が得られた。「患者との人間関係形成」
に繋がる体験を質的に分析した結果,《自然な会話》《患者
の内面表出》《患者のそばにいる自分の存在価値》《患者と
の距離感》《疾患を含めた患者理解》の5つのカテゴリー
が抽出された。学生は自分の名前を覚えてくれたり,患者
との会話の中で,患者の笑顔をみること,逆に沈黙に困る
などの《自然な会話》ができた,またはできなかった体験
をしていた。《患者の内面表出》があり気持ちに寄り添え
たと実感する体験や,患者から『あなたがいてくれたか
ら』という言葉を聞いて側にいても良い雰囲気を感じる半
面,自分に慣れてもらえず《患者のそばにいる自分の存在
価値》について考える体験があった。心を開いてくれたか
と思えばそうでもない,または距離感が理解できたとい
う《患者との距離感》について考える体験,また,患者の
健康障害の意味がわからないと患者の表す言動が理解でき
ず,患者と関わる際に《疾患を含めた患者理解》が存在し
ていた。
【考察】
学生の「患者との人間関係形成」の評価に繋がる体験内容
として5つのカテゴリーが抽出され,これらの体験が学生
の「患者との人間関係形成」の評価に関する視点であると
示唆された。学生は患者との関わりが困難と感じた場合,
否定的な捉え方をする傾向にあるため,患者との会話場面
やプロセスレコードを用いて,達成感が高まった体験で
あっても困難に感じた体験であっても,教員は学生に問い
かけて学生が意味のある体験であると,気づくことができ
るような関わりが必要である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
442)精神看護学実習における学生の不安に対する心理教
育的アプローチの効果
佐藤史教
(医療法人社団稔聖会こおりやまほっとクリニック)
村上幸恵(岩手県立大学看護学部)
村松 仁(平山クリニック)
【目的】
精神看護学実習における学生の不安を明らかにし,その不
安を軽減するために,心理教育的アプローチを実施し,そ
の効果を検討する。
【研究方法】
A大学看護学部3年次生100名を対象とした。精神看護
学実習の初日に,1)実習に対する不安の程度を0から
100%の中から該当する数字で記入させ,不安の内容を記
述させる質問紙調査を介入前後に実施した。介入前後にお
ける精神看護学実習に対する不安の程度を対応のある t 検
定,有意水準5%で検定し比較した。また,不安の内容は
内容分析を行った。分析は,共同研究者間での検討を十分
に行い,妥当性を確保した。2)精神疾患と精神疾患をも
つ人の理解に関する講義と,精神疾患をもつ人との関わり
方に関する演習(SST),各90分間で構成する心理教育的
アプローチを実施した。なお,心理教育的アプローチは実
習の一部であるため全員に実施したが,アンケートの回答
は学生の自由意志とした。
【倫理的配慮】
調査票は無記名式であり自由意志によること,調査票の提
出の有無により成績に影響することはないことなどを口頭
と文書にて説明し,調査票の提出で研究同意とした。な
お,事前に研究者の所属する大学の研究倫理審査委員会の
承認を得た。
【結果】
研究同意が得られた48名(48%)の調査票を解析対象とし
た。
不安の程度は,介入前64.6±23.2%,介入後52.9±26.2%で
あり,介入後は介入前より不安の程度が有意に低下してい
た(p <0.001)。
精神看護学実習に対する不安の記述内容は,介入前では
【コミュニケーションへの不安】
【暴力行為への恐れ】
【拒
否への恐れ】【自身の発言による症状悪化の懸念】【記録へ
の不安】【症状への対応の戸惑い】【学生同士の関係性の不
安】が抽出され,介入後では【自分と向き合うこと】【コ
ミュニケーションへの不安】
【適切なケアの実施に対する
不安】【学習習熟度への不安】【記録や課題への不安】が抽
出された。
【考察】
心理教育的アプローチにより精神看護学実習に対する学生
の不安の程度が有意に減少していた。心理教育的アプロー
チが精神看護学実習に対する学生の不安を軽減させる効果
があり,より効果的な学習が期待できると考える。
介入前は,精神疾患をもつ人のイメージがあいまいで恐れ
を抱いているため,コミュニケーションや暴力,拒否への
不安が見られたと考えられる。しかし,心理教育的アプ
ローチにより,精神疾患をもつ人に対する具体的なイメー
ジ像ができたこと,ロールプレイを通して関わり方のイ
メージがついたと考えられる。演習では SST の基本訓練
モデルを実施したことで,【学生同士の関係性の不安】が
軽減した可能性が考えられる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
415
第11会場 第50群
443)精神障がいの子を持つ母親が困難を乗り越えるプロ
セス
444)手術を受けた精神科身体合併症患者の実態 ∼精神
科身体合併症管理加算に焦点を当てて∼
野田実由姫(医療法人社団保健会谷津保健病院)
田辺有理子(岩手県立大学看護学部)
山下真鈴,古賀郁衣,宇都宮智
(国立国際医療研究センター病院)
【目的】
精神疾患の子を持つ母親が遭遇する困難体験と対処行動を
時間的経過に沿って調査し,困難を乗り越えるプロセスへ
の支援の在り方を検討する。
【方法】
精神疾患患者の家族で構成される東北地方の自助グループ
に研究協力を依頼し,任意で研究協力が得られた家族会に
グループインタビューを実施した。調査内容は対象者の基
本情報,体験した困難,対処行動とした。分析方法は,録
音データから逐語録を作成し,発言者の口調の強さ,発言
者以外の同意発言等に注目しながら言葉の意味をコード化
し,〈サブカテゴリー〉,《カテゴリー》を抽出した。倫理
的配慮として対象者に研究目的,プライバシー保護,研究
参加の自由意志,録音について口頭と書面で説明し同意書
への署名による同意を得た。
【結果】
対象者は5名で,全員が母親,年齢は50∼60歳代,子が発
病してからの経過年数は約10∼15年であった。
困難体験と対処行動を時間的経過に沿って示す。子の発病
初期は〈子からの暴言や異常行動に伴う耐え難い苦痛〉,
〈子のために何もしてあげられない無力感〉,〈心の拠り所
がない孤立感〉を抱き,《どうすればいいのか分からない》
状況にあった。そして〈救いを求めて自発的な行動〉をと
り〈周囲の助言から情報を得た〉ことが《受診のきっかけ
を掴む》ことに繋がっていた。子が精神疾患との診断を受
け,母親は育て方に対する〈自責の念〉
,〈病気と付き合っ
ていく身体的・精神的疲労困憊〉
,動揺によって支援を受
け入れられないという〈受けた支援と受けたい支援が噛み
合わない〉,〈子から解放された安堵感〉と〈入院させてし
まった罪悪感〉というアンビバレンスな心理を抱きながら
《苦悩の日々》を送った。その後,次第に〈親として何か
したいという自発的な行動〉をとり,〈家族会の仲間との
関わりからの学び〉,〈辛い思いを吐き出せる安心感〉を感
じて《前向きになる力》を獲得した。〈自責の念の払拭〉,
〈親自身が変わろうという決心〉から,子への関わり方を
変えたことで子の状態が落ち着き,〈親の関わりによる子
の変化〉を実感すると共に〈子と向き合うことの大切さ〉
に気付き《親自身が成長を実感》するようになった。
【考察】
母親は子の発病に伴い数々の困難を体験しながらも,母親
自身が自ら行動を起こして,情報,助言を求め,その困難
を乗り越えるという一連のプロセスが繰り返されていた。
また,本研究の対象者は,子の発病から医療機関への受診,
入退院を経て,母親が家族会と出会い母親自身が成長を実
感するまでに,10年以上の年月を要していた。母親のニー
ズに沿った支援を考える際,発病初期の情報提供のほか,
母親自身が困難を乗り越えられるように,母親の心理状況
やニーズの見極めていくことが必要と考えられる。
416
【はじめに】
精神疾患患者の高齢化に伴い,身体疾患を合併する患者は
増加傾向にある。一方,身体合併症医療を担う総合病院精
神科病床は減少傾向にある。その理由の一つに,精神科病
棟の診療報酬が低いことが挙げられる。それに対して平成
20年から,身体科と連携できている精神科病棟において,
定められた身体合併症を有する精神障害者に対し治療を
行った際に7日間を限度として一律350点が精神科身体合
併症管理加算(以下合併症加算)として算定可能となった。
900床規模の A 総合病院にある精神科病棟である B 病棟で
は,手術が必要な他院精神科入院中の患者を受け入れ,看
護を行っている。そこで,本研究では,B 病棟で手術を受
けた患者を対象に実態調査を行い,合併症加算の妥当性に
ついて考察することとした。
【方法】
平成19年4月から平成21年7月までの間に,B 病棟で周術
期管理を行った精神科身体合併症患者の診療録より,入院
形態・行動制限の有無・精神科診断・術式・在院日数を調
査し,単純集計とt検定を行った。
【倫理的配慮】
A 病院の倫理委員会審査を受け,承認を得た。
【結果】
調査期間内に,B 病棟で周術期管理を行った精神科身体合
併症患者は39名であった。任意入院14名,医療保護入院25
名であり,そのうち行動制限は15名で行った。精神科診断
は統合失調症圏が28名であった。術式は9診療科で計26あ
り,最も多かったのは,全身麻酔では人工骨頭置換術( 5
名),局所麻酔では白内障手術( 4名)であった。平均在
院日数±標準偏差は,全体で23.8±19.2日,全身麻酔28.5
±17.0日,局所麻酔8.8±7.0日であった。入院形態別では,
医療保護入院28.8±19.2日,任意入院15.1±8.9日であった。
医療保護入院患者と任意入院患者の平均在院日数の間で,
有意差(t =3.0,p =0.004)が認められた。
【考察】
平均在院日数は合併症加算が算定できる7日を大きく上
回っていた。とくに医療保護入院では患者本人から入院の
同意が得られておらず治療や検査に対しての協力が得にく
いことから在院日数の短縮は困難と考えられる。
また,多様な周術期看護を行っており,幅広い知識が必要
である。さらに,自己抜去等問題行動への介入や頻回な観
察等,精神疾患を有しない患者の周術期に比して,より細
やかな看護が必要とされるなど看護の負担が大きい。
単純な比較は行えないが,精神科病棟では一般病棟に比べ
入院基本料が低いことも加味すると,加算日数の限度及び
点数の妥当性について検討の余地があると考えられる。
これらの実態を踏まえた制度の見直しを行い,総合病院精
神科病床の減少に歯止めをかけ,今後の精神科身体合併症
医療の向上が図られることが望まれる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
445)青森県民の「こころのバリアフリー宣言」の認識に
関する研究
446)他者の心理状況を推論する早さに関連するパーソナ
リティー構成要素
板山 稔,高田絵理子
(弘前医療福祉大学保健学部看護学科)
田中留伊(東京医療保健大学東が丘看護学部)
松本賢哉(京都橘大学看護学部)
下里誠二(信州大学医学部保健学科)
森 千鶴(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
【目的】
精神保健医療福祉の改革ビジョンでは,精神疾患に対する
国民各層の意識改革が重点施策の一つとされ,「こころの
バリアフリー宣言」の認知を高めていくことが目標とされ
てきた。本研究は,青森県民のバリアフリー宣言の認識に
おける特徴を明らかにし,地域住民の精神障害(者)に対
する理解を促進するための方向性を検討することを目的と
した。
【研究方法】
青森県内から任意に選択した3市から,住民基本台帳をも
とに年齢階層別に無作為抽出した合計600名を調査対象と
した。平成22年11月から12月にかけて,郵送法による無記
名の質問紙調査を行い,年齢,職業,学歴,精神障害者と
の接触経験,バリアフリー宣言( 8項目)に対する認識
等を調査した。分析には Mann-Whitney の U 検定,Kruskal
Wallis 検定を用い,バリアフリー宣言の認識と個人背景等
による相違を検討した。倫理的配慮として,研究の目的,
回答の任意性等に関する説明文書を添付し,調査票の返信
をもって同意を得たものと判断した。本研究は,弘前医療
福祉大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
184名の返信が得られ(回収率30.6%),179名を分析対象と
した。バリアフリー宣言の中で「そう思う」と回答した割
合が最も高い項目は,「精神疾患の有無にかかわらず誰も
が自分の住んでいる地域で幸せに生きることが自然な姿だ
と思うか」(受容)であった(69.1%)。逆に「そう思う」
の割合が最も低い項目は,「不眠や不安を感じておかしい
と思ったら専門家に相談しようと思うか」
(気づき)であっ
た(25.8%)。この項目では,近所づきあいを「よくして
いる・たまにしている」と回答した群は肯定的な回答が有
意に高く,居住市の違いにおいても得点に有意差が認めら
れた(p < .05)。また,改革ビジョンで具体的な数値目標
が示されている「精神疾患は誰もがかかりうる病気だと
思うか」(関心)は,「そう思う」59.6%,「まあそう思う」
28.7%であった。この項目は,精神障害者との接触がある
群はない群に比較して肯定的な回答が有意に高く,性別,
学歴,居住市の違いに関しても得点に有意差が認められた
(p < .05)。
【考察】
「受容」項目の肯定的回答が高かったが,精神障害者に対
する社会的距離に関しては否定的態度が高いという指摘も
ある。精神疾患に対する一般論的な受容と,精神障害者を
住民の一人として受容することには隔たりがあることが推
察される。また,「気づき」や「関心」の項目では,居住
市や近所づきあいの程度,接触体験等による相違が認めら
れた。バリアフリー宣言の理解は全般的に高かったが,早
期の医療・相談や共生社会の実現には,地域特性や精神障
害者との交流体験にも着目することが重要であると考えら
れる。
【目的】
人の表情や身振りなどの非言語的な情報を観察してその人
の心理状態を素早く推察することは,患者の精神内界を推
察し援助する精神医療では非常に重要な技術である。そこ
で今回,観察行動を既定の基礎となる観察者のパーソナリ
ティー構成要素と推論に至るまでの反応時間との関連につ
いて明らすることを目的とした。
【研究方法】
研究の趣旨を説明し同意が得られた大学生113名を対象に
以下の実験を行った。倫理的配慮として明治国際医療大学
の倫理委員会の承認を得た。対象者には研究の趣旨,実験
方法,プライバシーの保護,非協力による不利益は一切生
じない旨を口頭で説明し同意を得た。
被験者に Temperament and Character Inventory(TCI)を測
定した後,実験室にてモノクロスナップ写真でできた心理
状況を探る14問のテストを提示刺激として,写真の人物の
関係について最も適切な状況を選択肢から選ばせた。その
間の回答時間の分析をした。
【結果】
TCI と14問の回答にかかった合計時間(心理状況を推察す
る速さ)が得られた対象者は,107名であった。内訳は男
性57,女性50名,平均年齢は21.4±4.8歳であった。
TCI の構成概念である気質4次元である「行動の触発(新
奇性追求)」「維持(報酬依存)」「抑制(損害回避)
」「固着
(固執)」と性格3次元である「自律的個人(自己志向)
」
「人類社会の統合的部分(協調)」「全体としての宇宙の統
合的部分(自己超越)」の各得点と心理状況を推察する速
さを Spearman の順位相関係数で分析した結果,自己超越
と心理状況を推察する速さに低い正の相関が見られた(r
= .224 p = .021)。
【考察】
人の心理状態を素早く推察する行動は,観察者のパーソナ
リティー構成要素である自己超越の構成因子である合理性
や自己意識・自己弁別が高いことが影響している可能性が
示唆された。しかし人の心理状態を素早く推察する行動に
は,観察者のパーソナリティーに加え,様々な状況因子が
複雑に絡み合っているため,それらの因子を明らかにして
いくことが今後の課題である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
417
447)心理教育的アプローチを用いた睡眠健康教育 ∼あ
る地域活動支援センターでの実践報告∼
藤代知美,森内 幹(四国大学看護学部看護学科)
藤森由子(香川県立保健医療大学保健医療学研究科)
【目的】
近年,自殺予防の観点から睡眠健康教育が発展しつつあ
る。精神障がい者においても睡眠障害を伴うことが多く,
睡眠障害は再発指標ともされている。筆者らは,ある地域
活動支援センター(以後センター)の通所メンバーの希望
により,睡眠健康教育を実施することとなったが,精神障
がい者への睡眠健康教育に関する先行研究はなかった。そ
こで,あるセンターの通所メンバーを対象に,心理教育的
アプローチを用いた睡眠健康教育を実施し,主観的睡眠感
によって評価を行う。
【研究方法】
1.実践方法:睡眠時間に関する考え方,日光浴,リラッ
クス法,昼寝の時間,睡眠時間外の離床,嗜好品を含む食
生活,運動習慣,睡眠薬と頓服薬の種類と飲み方について
記載したパンフレットを,精神科医の助言をもとにあらか
じめ作製し,健康教育を行う。健康教育の場面では,心理
面への配慮をしながら,参加者同士が情報共有できるよう
に情報提供を行う。次に,話し合って解決したい問題を決
め,看護師3名がサポートしながら話し合う。
2.評価方法:主観的睡眠感を8項目4段階で問い,不
眠の程度を測定するアテネ不眠尺度を,健康教育開始時
と1ヶ月後に実施し,実施前と実施後の合計得点の差の
Wilcoxon 符号付き順位検定を行う。
3.倫理的配慮:実践に先立ち,研究目的,参加・中断の
自由,匿名性の保持などについて書面を用いて説明し,同
意を得た。なお本研究は研究者の所属する大学の倫理委員
会で承認を得た。
【結果】
1.実践結果:対象者は10名であった。初めの1時間は,
対話形式で情報提供を実施した結果,中途覚醒の理由,睡
眠薬の内服時間と飲み忘れ予防,食事内容との関係,眠気
の5点について質問が上がり,意見が交わされた。次に,
話し合って解決したい問題を決め,中途覚醒しないための
夕方以降の飲み物と中途覚醒時の工夫について1時間話し
合った。それにより,寝る前の飲み物は白湯,ホットミル
ク,カフェインレスのコーヒー,番茶などにすること,中
途覚醒時にはタバコはあまり吸わない,動いたり考えたり
しない,などの工夫が挙げられた。
2.評価結果:本研究に同意が得られ,質問紙に2度記入
することができた7名の評価を行った。分析を行った結
果,実施後の合計得点は有意に低くなり(p < .05),睡眠
障害の疑いが低くなったことが示された。
【考察】
本研究の結果,センターに通所する精神障がい者への睡眠
健康教育の意義が示されたと考えられる。今後は,地域で
生活する精神障がい者の睡眠状態とニーズを明らかにした
うえで,情報提供の内容及び実施方法についても更なる検
討を加え,対象者数を増やして評価していくことが必要で
ある。
418
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第11会場 第51群
448)デイケア通所者の通所目的の有無による生活機能の比
較 −精神障害者生活機能評価尺度を基準にして−
449)地域クリニックにおける児童精神医療の実態と課題
久保恭子(埼玉医科大学保健医療学部看護学科)
田崎知恵子(日本保健医療大学)
川野雅資,片山典子,石川純子,塩月玲奈,朝倉真奈美
(東京慈恵会大学)
齋藤深雪,馬場 薫(山形大学)
吾妻知美(甲南女子大学)
真木 智(山形大学医学部附属病院)
【目的】
精神障害者が社会で生活していくためには,ある一定の生
活機能を必要とする。生活機能とは,肯定的な視点からみ
た社会で生活する能力のことである。その生活機能を維持
または向上するために,精神科デイケアは生活支援を行っ
ている。しかし,通所目的をもちにくい,対人関係に慣れ
ないなどの理由から,通所の中断にいたることがある。そ
こで,通所目的の有無による生活機能を比較することを目
的とした。
【研究方法】
対象者は,精神科デイケア(30施設)に登録する通所者(統
合失調症)1272名であった。方法は,郵送法による質問紙
調査であった。生活機能を測定するために,自己評価式精
神障害者生活機能評価尺度( 0点−126点)を用いた。調
査期間は2007年9月から11月であった。t検定を用い,統
計的に分析した。倫理的配慮は,厚生労働省の臨床研究に
関する倫理指針に従い,調査を実施した。通所者に研究の
趣旨と方法,プライバシーの保護,研究の協力は自由意思
であることなどを文書で説明し,質問紙への回答をもって
同意を得たことにした。なお,研究者が所属する施設の倫
理審査委員会の承認を得た。
【結果と考察】
1.通所者について分析対象は,質問項目の回答に欠損の
な い547名(43.0%) で あ っ た。 男 性365名(67.7%), 女
性182名(32.3%)であった。年齢は46.5±12.4歳,通所期
間は54.1±47.9ヶ月であった。生活機能点は89.9±19.2で
あった。通所目的数は3.3±2.1個であった。
2.通所目的の有無による生活機能の比較について通所目
的が人とうまく付き合うためである通所者の生活機能点は
92.2±17.8点であり,それが通所目的でない通所者(87.9
±20.2点)より,生活機能点が高かった(t=2.54,p <
0.05)。通所目的が生きがいや目標をもつためである通所
者の生活機能点は93.9±18.2点であり,それが通所目的で
ない通所者(86.8±19.5点)より,生活機能が高かった(t
=4.25,p <0.00)。通所目的が信頼できる人をみつけるで
ある通所者の生活機能点は93.1±18.2点であり,それが通
所目的でない通所者(88.2±19.6点)より,生活機能が高
かった(t=2.86,p <0.05)。その他の通所目的について
は,それが通所目的である通所者はそうでない通所者よ
り,生活機能点が高い傾向にあった(t=1.80∼1.84,p
=0.06∼0.07)。通所者は通所目的に向かって訓練をした
ため,生活機能が高くなったと考える。
【結論】
通所目的をもっている通所者は生活機能が高い。デイケア
では,通所目的と生活機能を考慮しながら生活支援を行う
ことが望ましい。特に,通所者が通所目的をもてるよう支
援することが重要である。
【目的】
地域クリニックにおける児童精神医療の実態と課題を把握
することである。
【方法】
都内A地区にあるクリニックに勤務する看護師を対象にし
た質問紙調査。研究期間は2010年12月から2010年1月。
【倫理的配慮】
研究協力の有無にかかわらず不利益はないこと,同意を得
られた調査対象者のみ回答を依頼すること,データはコー
ド化し個人が特定できないこと,研究終了後データは速や
かに処分をすることを説明し同意を得た。
【結果】
配布数590,回収65,回収率11%であった。診療科は小児
科のみ6施設,小児科と内科39施設,内科のみ4施設,内
科と他科6施設,神経科・心療内科3施設であった。専門
医資格では小児科専門医がいる施設11,子どもの心相談医
の資格がある医師がいる2施設,両方とも持っている医師
がいる施設3であった。児童精神医療の実態として,専門
医を紹介し,自分の施設では継続して診察はしないと回答
した割合は,学習障害や自閉症,ADHDなどの軽度発達
障害児で60%,先天性疾患や周産期障害などの発達のアン
バランスのある児で67%,摂食障害児58%,統合失調症の
児63%,不登校児43%,心身症児43%,自傷行為のある児
65%,薬物依存のある児68%であった。チックなどの神経
症的な症状の見られるケースでは11%が自分の施設で見る
と回答しているが,53%は専門医を紹介していた。その理
由として,専門外だから45人(74%),物的環境が整って
ない31人(51.7%),スタッフが整ってない31人(51.7%)
であった。他施設への紹介に困難を感じると回答した施設
が10施設あり,内容として,家族が他施設の受診をこば
む8人(13.3%),調整に時間がかかる8人(13.3%)で
あった。それぞれのクリニックで,1ヶ月に発達障害や児
童精神科を紹介するようなケース数は,いないが28施設
(47%),患者が1∼3人いるが18施設(31.7%),4∼6
人いるが4施設(6.8%),20人いるが1施設であった。 【考察】
地域のクリニックでは発達障害をはじめとする子どもの心
の問題に対応することはきわめて難しく,多くの施設で専
門機関へ橋渡しをしていることがわかった。その理由とし
て,専門外であると回答しているが,そもそも児童精神を
専門とする医師の数は少なく,また,発達障害が問題視さ
れてきたもの近年のことであり,地域におけるクリニック
で,どのような対応が可能か不明であるのが現状ではない
だろうか。地域における半数のクリニックで児童精神医療
が必要な患者がいることから,今後,地域のクリニックで
の対処方法の確立や専門機関との連携の確立が求められ
る。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
419
450)精神科デイケア利用者に対する食事・運動・服薬に
関する健康教育プログラムの効果
451)長期入院生活を送る統合失調症患者の老いを生きる
ことへの支えとなる体験や想い
高田絵理子,板山 稔
(弘前医療福祉大学保健学部看護学科)
大竹まり子,森鍵祐子,鈴木育子,細谷たき子,小林淳子,
叶谷由佳(山形大学医学部看護学科)
脇崎裕子(国際医療福祉大学福岡看護学部)
藤野成美(九州大学医学部研究院保健学部門)
【目的】
統合失調症患者の退院を促進する上で,自主的な行動の支
えとなる体験や想いを知ることは,個別的な支援を行う上
【目的】
で重要である。本研究の目的は,老いを生きる長期入院生
精神科デイケア(以下,デイケア)利用者の多くを占める
活を送る統合失調症患者の自主的な行動の支えとなる体験
統合失調症患者の服薬治療の第一選択は抗精神病薬であ
や想いを明らかにし,看護実践について示唆を得ることと
り,副作用として食欲亢進の問題がある。抗精神病薬を服
する。本研究における自主的な行動とは,その人自身の意
用している患者に対して体重管理を目的とした何らかの援
志で行う,思考や判断など精神活動を含む目的を持った自
助が必要であることが指摘されている。抗精神病薬の服薬
発的な行為のことである。
遵守は重要である一方,副作用の食欲亢進作用があること
【研究方法】
から,服薬管理についての教育と同時に体重管理に関する
1.調査対象:精神科病院に入院中の統合失調症患者のう
教育も行う必要がある。そこで本研究の目的は,デイケア
ち,5年以上の入院歴があり,65歳以上の者で研究の趣旨
利用者に対して,健康教育プログラム(以下,プログラム)
を口頭と文書で説明をし,同意が得られた日常会話が成立
を実施し,そのプログラムを利用者の身体的指標,自己意
する6名とした。2.研究デザイン:
「老いを生きること
識の側面から評価することである。 への支えとなる体験や想いは何か」を語ってもらう半構成
【研究方法】
的面接法による質的帰納的研究。調査期間は2009年7月か
A 県内の精神科デイケア4施設を対象とし,1施設は介入
ら2009年12月であった。3.データ分析:逐語録を作成
施設,3施設は非介入施設に設定し,介入群11名,非介入
し,研究者間で意味内容の類似性と差異性に従い,カテゴ
群10名にて分析を行った。介入群にはプログラムを3ヶ月
リー化した。さらにカテゴリー間の関係性を検討し,コア
にわたり計12回実施した。両群において,身体的指標(体
概念を決定した。4.倫理的配慮:本研究は,前所属大学
重,BMI,歩行数)と自己意識(利用者満足度,主観的
倫理審査委員会と研究協力施設倫理審査委員会の承認が得
ウェルビーイング,服薬に関する意識)をベースライン,
られた後に実施した。
3ヶ月後,6ヶ月後の 計3回にわたり調査した。対象者
【結果】
の属性には t 検定および Fisher の直接確率検定を用い,介
5つの『カテゴリー』と17の「サブカテゴリー」が抽出さ
入群と非介入群の差の検定には Wilcoxon の符号順位検定,
れた。〔コア概念〕である〔行動の動機づけとなる想い〕
Mann-Whitney の U 検定を用い,有意水準は5%未満とし
の『家族と関わりたい』では「家族とつながっていたい」
た。倫理的配慮として,対象者には文書を用いて研究の概
及び「家族の老いの生き方に近づきたい」などが抽出され,
要,自由意思による参加,研究の参加の有無が治療等の不
『病院の外に出たい』では「退院したい」及び「働きたい」
利益を受けないことを説明し,同意が得られた者に調査を
などが抽出された。『前向きに生きたい』では,「長生きし
行った。本研究は山形大学医学部倫理委員会にて承認を得
たい」及び「人とつながっていたい」などが抽出された。
た。
また〔自主的な行動を支える体験〕の『折り合いをつけな
【結果および考察】 がら老いを生きる』では,「精神症状を抱えながら老いを
本研究では,精神科デイケア利用者21名を対象とし,プロ
生きる苦悩」や「精神症状からの解放」や「楽しかったと
グラムを身体的指標および自己意識の側面から評価を行っ
た。その結果, 思える入院生活体験の継続」及び「身体老化の自覚」など
1.健康教育プログラムの参加割合は平均93.2%であっ
が抽出された。
『就労体験の記憶』では,過去の就労体験
を活かし「技を活かす」や「人の役に立ちたい」が抽出さ
た。
れた。
2.身体的指標では,歩行数は介入群で3ヶ月後がベース
【考察】
ラインに比して有意に増加し,6ヵ月後ではベースライン
最も中核となる『自主的な行動を支える体験』が「折り合
に比して有意に減少した。体重・BMI では介入による有
いをつけながら老いを生きる」であった。つまり,統合失
意な変化はみられなかったが,介入群の BMI30未満の対
象者8名中7名が3ヶ月後に BMI・体重が低下していた。 調症の症状をもちながら入院生活を送る人にとって,折り
合いをつけて老いを生きる姿勢は,その人なりの現在の生
3 . 自己意識では,利用者満足度は介入群で3ヶ月後に有
活の再構成をしようとする行動をもたらしているものと考
意な変化はみられず,6ヶ月後でベースラインに比して有
えられる。精神症状の苦悩を乗り越えたことにより,身体
意に低下した。主観的ウェルビーイングおよび服薬意識で
の老化を自覚し「今できること」に目を向ける姿勢が,現
は介入による有意な変化はみられなかった。 在の彼らを支えていることが示唆された。看護師は個人の
これらより,本プログラムはデイケア利用者の主観的ウェ
想いが表出できるように関わり自主性の芽を見逃すことな
ルビーイングや服薬意識を維持しながら運動量の増加はみ
く,彼ら自身が「今できること」を共に考え,行動化につ
られたが,さらに効果の検証をする上で今後対象者を増や
ながるような支援が重要である。
し研究を継続していく必要がある。
420
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
452)統合失調症患者の身体合併症治療に対する受けとめ
江藤 剛,長田京子,大森眞澄(島根大学医学部看護学科)
【目的】
本研究は,統合失調症患者の身体合併症治療(以下,合併
症治療)への主体的な参加を促す看護の示唆を得るため
に,統合失調症患者が合併症治療をどのように受けとめて
いるのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
1.対象:Α病院精神科病棟で合併症治療を受けており,
主治医が病状に影響しないと判断し,本人の同意が得られ
た統合失調症患者4名である。2.データ収集方法:記録
(診療録,看護記録)および30分程度の半構造的面接より
行った。面接は合併症治療に対する受けとめを経過にそっ
て自由に語ってもらい,許可を得て録音した。3.分析方
法:1)診療録と看護記録より,対象者ごとに精神・身体
状態,治療内容など統合失調症および合併症治療の経過を
時系列に整理し,合併症治療の受けとめに関する言動を抽
出した。2)面接内容は逐語録におこし,質的帰納的に分
析した。信頼性を高めるため,精神看護学および質的研究
の経験者間でデータに戻り検討を重ねた。4.倫理的配
慮:診療科長および看護師長に研究の趣旨を説明し許可を
得た。対象者の抽出は看護師長に依頼し,主治医の許可と
対象者の内諾が得られた場合に,研究者へ紹介を受けた。
対象者に口頭と文書で再度,研究の目的・方法,研究協力
は自由意思に基づき拒否・撤回しても不利益がないこと,
個人情報の保護,公表等を説明し同意を得た。本研究は島
根大学看護研究倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
1.対象は,男性3名,女性1名で,年齢は40∼70歳台
であった。統合失調症罹患期間は10∼51年(平均27.3年),
統合失調症での入院経験は4∼7回であった。合併症治療
の内容は,イレウス疑いによる保存治療,偽痛風発作によ
る両膝穿刺,癒着性イレウスによる保存治療と手術,糖尿
病の薬物・食事療法であった。入院期間は26∼62日(平均
39.3日)で,全対象者に慢性期統合失調症特有の幻覚・妄
想,こだわりなどがみられた。1名に手術の経験があっ
た。2.面接は同意の得られた3名に行った。合併症治療
に対する受けとめとして,<前向きな受療意思><治療が
わからない><治療に伴う苦痛><なんとなく治療を受け
る><治療への抵抗感><治療に耐える><抗精神病薬に
頼る><スタッフへの感謝><回復の安堵>の9カテゴリ
が抽出された。
【考察】
統合失調症患者は,何らかの身体異常の知覚による治療動
機が前向きな受療意思となっていた。合併症治療の受けと
めには,治療に伴う苦痛や理解の程度などが影響するが,
薬物に頼りながら精神症状の安定を図り,回復の安堵から
治療の肯定的な受けとめに至ったと考える。看護師は,患
者の受療意思を尊重し,治療に伴う苦痛の緩和や,精神症
状や患者特有のこだわりに配慮するなど,医療者との関係
性を軸に回復の実感が得られるような援助が求められる。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
421
第11会場 第52群
453)病棟看護師の退院調整に関する看護スキルの現状と
看護を行う上での困難点
454)退院調整看護師による病棟看護師への研修の教育効
果
光本かおり,岡 薫
(京都府立医科大学附属病院地域医療連携部)
岩脇陽子,滝下幸栄,松岡知子,山本容子
(京都府立医科大学医学部看護学科)
福永たか子,橋元春美,小城智圭子
(京都府立医科大学附属病院看護部)
岡 薫,光本かおり
(京都府立医科大学附属病院地域医療連携室)
岩脇陽子,滝下幸栄,松岡知子,山本容子
(京都府立医科大学医学部看護学科)
福永たか子,橋元春美,今村浪子
(京都府立医科大学附属病院看護部)
【目的】
病棟看護師が退院調整の看護スキルを習得することは重要
である。そこで,退院調整に関する看護スキルの現状と看
護する上での困難点を明らかにする。
【方法】
調査時期は2010年7月。退院調整に関する研修を希望した
看護師12名を対象として研修前に自己記入式調査票の記入
を依頼した。調査項目は,退院調整に関する看護の知識6
項目・看護実践8項目・姿勢3項目( 4段階),退院調整
が必要な患者に看護を行う上での困難点は8項目( 5件
法),患者とのコミュニケーション3項目( 4段階)であ
る。倫理的配慮は,調査票は無記名とし,研究の趣旨を口
答で説明し同意を得た。
【結果】
12名から回答(回収率100%)が得られた。
1.対象者の属性:性別は全員女性で,年齢は28から50歳
で平均年齢39.3±6.7歳,看護の平均経験年数は17.9±6.4年
であった。
2.退院調整に関する看護の知識:「とても・まあまあ」
と回答した割合が多い項目から,ケアマネジャーの探し
方,介護保険を申請する窓口及び介護保険の対象となる年
齢50%,介護保険の自己負担割合33.3%,障害者自立支援
法の申請窓口25% であった。
3.看護実践:
「とても・まあまあ」と回答した割合は,
患者の今後の病気に関する理解91.6%,家族メンバーと関
係性の理解83.3%,病院の機能や施設の理解及び在宅生活
を想定した援助75%,患者の経済状態の理解41.7%,主介
護者の介護能力33.3%,退院計画25% 等であった。
4.看護の姿勢:「とても」と回答した割合は,患者との
コミュニケーション66.7%,患者・家族をともに支える援
助及び家族とのコミュニケーション50% であった。
5.看護を行う上での困難点:
「とても」と回答した割合
は,患者や家族の思いをうまく引き出せない58.3%,医師
が退院調整について理解を示さない25%,家族が退院を希
望しない及び看護師間の意見の相違16.7% 等であった。
6.退院調整が必要な患者とのコミュニケーション:
「と
ても・ある程度思う」割合では,コミュニケーションが
うまくできる66.7%,コミュニケーションに自信がある
33.3%,効果的なコミュニケーションの方法を知りたい
100%であった。
【考察】
病棟看護師は,社会制度に関する知識に対する理解の不足
を感じており,患者の経済状態を考慮した退院計画や介護
者の介護能力の判断に不安を持っていた。また,患者や家
族を共に支える援助は大切にしているが,患者や家族の思
いをうまく引き出すようなコミュニケーションには自信が
持てない様子が見られた。これらを踏まえた教育プログラ
ムを展開していく必要性が示唆された。
【目的】
高齢化や在院日数の短縮化により,病棟看護師が退院支援
の看護スキルを向上させることが急務となっている。そこ
で,退院調整看護師による病棟看護師への退院支援に関す
る研修の教育効果を検討する。
【方法】
調査時期は2010年7月。研修を希望した看護師12名を対象
に終了後に自己記入式調査票の記入を依頼した。調査項目
は,講義内容の評価7項目( 5段階),研修内容の評価4
項目( 4段階),学習目標の達成度5項目( 4段階),研
修の効果6項目( 4段階)である。また,研修は4時間
のプログラムであり,講義(退院調整のプロセス,病棟看
護師と退院調整看護師の役割,社会資源の種類と退院調整
における活用方法,訪問看護師との継続看護のポイント)
と演習(経験した事例の検討等)で構成した。倫理的配慮
は,調査票は無記名とし,研究の趣旨を口答で説明し同意
を得た。
【結果】
12名から回答(回収率100%)が得られた。
1.対象者の属性:性別は全員女性で,年齢は28から50歳
で平均年齢39.3±6.7歳,平均経験年数は17.9±6.4年であっ
た。
2.講義内容の評価:
「とても」と回答した割合が多い項
目から,研修のスライドは適切及び講師は明瞭で聞きやす
い話し方66.7%,今回の講義の総合評価58.3% 等であった。
3.研修内容の評価:「とても」と回答した割合が多い項
目から,研修から新しい知識を得ることができた及び研修
内容に興味を持った83.3%,研修内容は理解できた及び研
修は効果的だった66.7% であった。
4.学習目標の達成度:
「とても」と回答した割合が多い
項目から,退院調整における病棟看護師の役割が理解でき
る66.7%,退院調整看護師の役割が理解できる58.3%,訪問
看護師との連携のポイントについて理解できる41.7%,介
護保険等制度について理解できる25%,退院調整における
ケアマネジメントについて理解できる16.7% であった。
5.研修の効果:
「とても」と回答した割合が多い項目
から,退院調整において院外他職種との連携が必要だと
思った及び退院調整において患者の思いを聞くことが大
切だと思った100%,退院調整において病棟看護師の役割
が重要であると感じた91.7%,今回の研修を受けてよかっ
た66.7%,訪問看護師との連携のポイントが明確になった
41.7% 等であった。自由記述では,利用できる制度がわ
かった,患者の思いと介護保険を踏まえて退院支援が大切
であるなどの記述がみられた。
【考察】
今回の研修から受講者は新しい知識を得ており,患者の思
いを優先する病棟看護師の退院調整の役割について理解で
きていた。今後は教育内容を精選しプログラムの改善の必
要性が示唆された。
422
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
455)地域包括支援センター保健師の活動に係る自己評価
項目の試案
456)訪問看護師の医療処置の実施状況と研修に関する研
究
善生まり子(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科)
福田由紀子(日本赤十字豊田看護大学)
【目的】
地域包括支援センターの支援機能強化に資することを目的
に,保健師活動の自己評価項目を試案した。
【研究方法】
H20年7月から H21年8月まで6回,地域包括支援セン
ター(以下,センター)職員,センター管轄行政担当者(保
健師,社会福祉士)
,教育関係者の計15名によるグループ
ディスカッションを開催し,研究対象者の承諾を得て録音
し逐語録をデータとした。分析方法は,センター支援機能
における保健師の活動に焦点を当て,データからキーセン
テンスを抽出,内容の共通性・相異性に注目しながらカ
テゴリを生成し,保健師活動の自己評価項目を設定した。
データの信頼性・妥当性を担保するため,グループディス
カッションによる検討を経て,保健師活動・地域包括ケア
に係るスーパーバイズを受けた。倫理的配慮は,所属大学
倫理委員会の審査を経て,対象者の所属長に研究依頼書送
付,研究協力の許可後,対象者へ趣旨,参加・協力の任意
性,途中辞退の自由,個人情報保護を口頭・文書にて説明
し署名にて承諾を得た。
【結果】
表のとおり,センター保健師活動の自己評価項目は7つの
大項目,31の小項目が得られた。
【考察】
現在,センターでは「地域ネットワーク構築」,「総合相談
支援業務」等の役割機能を十分に発揮できないことが課題
とされている。A 県では,センターの多くは委託型である
が,保健師定着率の低下に係る対策も求められている。本
研究のセンター保健師活動自己評価項目(試案)を概観す
ると,センターは,行政機関との連携だけでなく,セン
ター設置責任主体の市町村等の地域保健福祉制度・政策に
関心をもち,最新の情報を得ることの必要性が示唆され
た。また,保健師活動指針として運用し,キャリアアップ
プロセス評価を念頭に活動レベルを設定することによっ
て,モチベーション向上やセンター支援機能強化につなが
ると考える。実用化にむけての検証は今後の課題である。
表 地域包括支援センター保健師の活動に係る自己評価項目試案
Ⅰ 自治体の地域
包括ケアシステム
の構築構想
地域包括ケアシステムを構成する事業所等の相互関
係,一本化した機能・システムが構築できる等<7
項目>
Ⅱ 日常圏域を基
盤とした3職種の
活動体制づくり
様々な課題を把握した際には,PDCA のような課題
解決過程の展開ができる等<3項目>
Ⅲ 地域保健福祉
の視点での地域づ
くり
日常生活圏域内の事業者や関係機関等および自治体
等の連携ネットワークづくりができる等<4項目>
Ⅳ 多様な活動方
法,対応技術の修
得
地域住民が安心して相談できるよう,相談∼サービ
ス調整までのワンストップサービス拠点づくりが修
得できる等<6項目>
Ⅴ 住民主体の地
域活動づくりと支
援方法
住民主体の介護予防および健康づくり等の活動を支
援し,共助の仕組みをつくることができる等<3項
目>
Ⅵ 課題別活動
認知症高齢者の支援に必要な活動論を身につけるこ
とができる等<4項目>
Ⅶ 関係法及び制
度・政策に関する
課題と最新情報
医療保健福祉(介護)改革に関する課題と最新情報
に関心を持ち積極的に情報を得ることができる等
<4項目>
【目的】
在宅療養者で医療処置を必要とする患者へ看護を提供して
いる訪問看護師の医療処置に焦点をあて,訪問看護師の処
置の実施状況の把握と研修ニードを明らかにすることで,
今後の訪問看護師に必要な研修の参考とすることを目的と
した。
【方法】
2010年の A 県訪問看護ステーション協議会名簿の全151施
設の訪問看護師( 1施設3名)を対象に自記式調査票(無
記名)郵送調査を行った。調査内容は対象の概要,訪問看
護の医療処置実施状況と研修ニードである。倫理的配慮と
して,本学倫理審査委員会の承認を得た上で,文章にて研
究の主旨と共に自由意思に基づく調査協力,無記名での調
査実施,データの厳重管理等を説明し,同意を得られた者
のみ各自で返信用封筒にて提出を求めた。
【結果】
164名から回答を得られた(有効回答率36.2%)。対象は全
て女性であり,平均年齢44.3±7.7歳,訪問看護経験は6.0
±4.7年であった。訪問看護での医療処置の実施状況は,
褥瘡管理法は対象者全てが実施していた。初めて実施した
処置で割合の高かったのは,在宅酸素療法42.7%,在宅経
管栄養(胃瘻含む)
,腎瘻・尿管皮膚瘻管理法40.2%,低
かったのは,在宅自己腹膜潅流法14.0%,在宅がん化学
療法17.1%であった。これまでの訪問看護で実施したこと
のない処置で割合の高かったのは,在宅自己腹膜潅流法
51.8%,在宅がん化学療法40.9%であった。1か月間(平
成22年2月)で実施した処置の多かったのは,褥瘡管理
法,膀胱留置カテーテル管理法であり,少なかったのは,
自己腹膜潅流法,在宅がん化学療法であった。医療処置の
実施に際し難しい技術は,自己腹膜潅流法,在宅人工呼吸
療法であった。研修を受けたことのある処置は,褥瘡管理
法42.1%,在宅人工呼吸療法38.4%,がん末期疼痛管理法
34.8%が高く,膀胱留置カテーテル法6.7%,在宅自己注射
7.3%が低かった。研修ニードが高い医療処置は,自己腹
膜潅流法,在宅人工呼吸療法,在宅がん化学療法,がん末
期疼痛管理法であった。
【考察】
訪問看護での医療処置の実施状況では,褥瘡管理法は全員
が実施しており,研修も受講率も高く,在宅にて褥瘡管
理法を実施する機会が多いためと考える。自己腹膜潅流
法,在宅がん化学療法は,訪問看護での医療処置の実施状
況は低く,訪問看護で実施したことのない割合も高い結果
であった。現状では,実施の少ない処置に関しても研修を
受講したい割合が高かった。これは,自己腹膜潅流法,在
宅がん化学療法が病院等の臨床の場でも経験することが少
なく,在宅では看護師が直接ケアを展開するのは週数回の
限られた時間であり,その限られた時間に1人で処置を提
供するという責任があるため研修ニードが高いと考えられ
る。本研究は平成21年度文部科学省科研費若手研究(B)
の助成による。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
423
457)ヘルパーによる気管内痰吸引に対する ALS 患者と主
介護者の願い
内山久美(純真学園大学保健医療学部看護学科)
柊中智恵子(熊本大学大学院生命科学研究部)
【目的】
在宅に療養する ALS 患者の気管内痰吸引は,2003年7月に
厚生労働省医政局通知により条件付きで容認されている。
しかし,実際にヘルパーによる気管内痰吸引は教育や体制
の面で十分とはいえず主介護者の肉体的・精神的負担は24
時間途切れることはない。本研究の目的は,ヘルパーによ
る気管内痰吸引を受ける ALS 患者と主介護者の願いをあ
きらかにすることである。
【研究方法】
ヘルパーによる気管内痰吸引を受ける在宅療養中の ALS
患者(60歳代,男性,病歴25年)と主介護者1組に半構成
的インタビューを行った。内容は,患者の属性,現在活用
している社会資源,吸引を行っている全ての人,吸引技術
での不安内容,ヘルパーによる吸引に関する意見などの6
項目とした。分析は,インタビュー内容を逐語録におこ
し,KJ 法にて内容分析を行った。得られたデータは対象
者へ開示し信頼性の確保を得た。倫理的配慮は,研究協力
者に対して研究の主旨,方法,協力への同意や撤回の自
由,不利益を被らないことを調査依頼文書に記述し同意を
得た。また,得られたデータのプライバシーの保護につい
て文書と口頭で説明した。
【結果および考察】
ヘルパーによる気管内痰吸引を受ける ALS 患者と主介護
者の願いは同じであった。その内容は,ヘルパーの不安は
患者・家族と「同じ不安」であるから構え過ぎずにチャレ
ンジして欲しい,経験のある人ほど危険で自己流の手技に
陥り易いため「正確な知識の習得」をお願いしたい,患者
によってやり方が違うのは当たり前であるが基本的なこと
に違いはないため「個別性の重視」が安心に繋がる,など
のカテゴリーの他,同意書は個人契約であり責任の範疇が
個人であることから事業所や施設からの制限は理解し難い
思いであることが語られた。当事者からの目線では「早期
の個人契約」によって「吸引経験の積み重ね」が出来,安
心と信頼を得ることに繋がることがあきらかになった。
424
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
第11会場 第53群
458)ALS 在宅療養者ヘルパーの痰の吸引に対する意識
459)岡山県Α市における入浴事故の実態とその要因に関
する研究
西留美子,矢野章永(共立女子短期大学看護学科)
【目的】
ALS 在宅療養者への痰吸引は,現在,教育体制など行政
的にも整備されつつある。痰吸引を行うヘルパーを確保す
るためには,その教育やヘルパーの学習意欲も必要である
と考える。そこで,本研究は,ヘルパーになるきっかけや
動機の違いによっての痰吸引への意識を明確にし,痰吸引
を行うヘルパー育成に対する社会的な対応を検討するため
の一資料としたい。
【研究方法】
研究参加者は,重度訪問介護従事者養成研修の参加者48名
のうち同意が得られた者である。調査期間は,2007年6月
から7月である。分析方法は,収集したデータを文章や段
落ごとに抜き出し,整理を行いその意味することを解釈
し,概念化した。それを収束,カテゴリを抽出し,相互の
関係性に注意し分析結果をまとめた。倫理的配慮は,同意
が得られた参加者には,研究者から研究の趣旨,拒否権が
あること,拒否しても不利益を受けないこと,研究結果は
本研究以外に使用しないことについて文書で説明し,承諾
を得た。
【結果】
重度訪問介護従事者研修にて重度訪問介護の資格取得予定
者45名中33名が無資格者で,12名が既に介護保険介護員の
資格を取得していた。
1.ALS 在宅療養者担当ヘルパーになるきっかけ,動機
無資格者のきっかけは,大学サークルやボランテイア活動
で,興味関心から訪問介護を始めた者が多い。介護保険介
護員は,ALS の介護希望や勉強への意欲に加え,周囲か
らの依頼などであった。
2.痰吸引を行うきっかけ・動機 資格取得予定者全員の
吸引を行うきっかけは,1人で介護ができるようになるた
めには,やらざるををえない状況であった。
3.痰の吸引を行うことによるやりがい 無資格者のやり
がいは,痰吸引によって患者の呼吸が楽になることであ
る。介護保険介護員のやりがいは,生命の維持と責任感で
ある。
4.痰の吸引を行うことによる不安 無資格者の不安は,
ALS 在宅療養者への介護技術と技術不足による対象者の
苦痛をあげている。介護保険介護員は,前者に加え,法制
度の不整備をあげている。
【考察】
痰の吸引を行うことによるやりがいは,無資格者では,
ALS 在宅療養者個人に関心を寄せ,その人の呼吸が楽に
なる事であり,不安要素は,その人の苦痛であった。一方,
周囲からの依頼が動機付けとなってかかわった介護保険介
護員のやりがいは,ALS 在宅療養者の生命の維持であり,
不安に関しては,事故の責任などであった。ALS 在宅療
養者個人に関心を寄せる事と痰吸引に関心を寄せる事で
は,やりがいに差異が表出された。痰吸引は,一つの行為
として存在するものではなく,療養者の生活の一部である
ため,介護保険介護員のほかにもボランテイアなど能動的
動機によって ALS 在宅療養者とかかわる人を増やし,や
りがいを持つマンパワーの育成支援が求められる。
肥後すみ子(岡山県立大学保健福祉学部)
川上 蘭,大元麻未(倉敷成人病センター)
向井夏葉(財団法人倉敷中央病院)
深井喜代子(岡山大学大学院保健学研究科)
【目的】
入浴事故報告の多くは死亡例を対象に入浴リスク要因を探
求しているが,未だその要因は確定されていない。本研究
では死亡例とともに回復例(救命救急によって回復した事
例)の事故発生時の実態も含めた調査から入浴事故の要因
を検討した。
【方法】
平成17∼21年までに○○市消防署が取り扱った入浴事故数
217件(男111例,女104例,不明2例)を対象とし,死亡
例と回復例に分けて調査用紙を作成した。調査項目に年
齢・性別などの13項目を設け,回復例では入浴事故発生時
の自覚症状の有無を追加し14項目とした。分析方法は,年
度別の回復者数と死亡者数,季節別の事故発生件数,性別,
回復例における事故発見場所に対してt検定( 5%水準)
を行った。倫理的配慮としてデータは対象者の氏名,住所
等は記号化し,第三者の目に触れる場所に保管せず,研究
終了後は速やかにデータを破棄することとした。
【結果・考察】
入浴事故217例中,回復例は165例(男85例,女78例,不明
2例)であった。死亡例は52例で男女とも26例であった。
全対象者の平均年齢は64.9±27.6歳で,年齢別では0∼65
歳 未 満72例(33.6%),65∼75歳 未 満44例(20.6%),75歳
以上98例(45.8%)で,不明3例であった。高齢者を中
心にみると65∼75歳未満の回復例33例(20%),死亡例11
例(21.1%),75歳以上の回復例55例(33.3%),死亡例33
例(63.5%)で,A 市における入浴事故の発生及び死亡例
ともは高齢者に多いことが分かった。季節では冬期が回復
例・死亡例とも最も多く37∼40%を占めた。
基礎疾患では脳血管疾患,糖尿病,心疾患,高血圧の生活
習慣病が回復例で34%,死亡例では41.5%を占めていた。
発見場所は浴槽内が死亡例88%,回復例38%で最も多かっ
た。回復例の自覚症状では意識消失(31%),意識障害,
眩暈,ふらつき(16%)の順に多く,これらの基礎疾患は
脳血管疾患が最も多かった。
事故発生後の診断名は,回復例は脳血管疾患(28%),意
識障害(15%),外傷(12%),循環器疾患( 8%),脱水
( 5%),その他26%を占めていた。死亡例では,CPA(心
肺停止)52%,次いで循環器疾患(19%),溺死(17%),
脳血管疾患(10%)であった。CPA と診断された事例の
基礎疾患は生活習慣病関連が41%,その他が59%であっ
た。
以上の結果から入浴事故の発生は高齢者に多く,基礎疾患
に生活習慣病が深くかかわっていることが明らかになっ
た。また,回復例の事故発生時の自覚症状が浴槽内で意識
消失,意識障害を生じ,脳血管疾患が多いこと,死亡例で
は CPA が半数を占め,次いで循環器疾患が多いことから
今後はどのような状況で意識消失や意識障害が生じるのか
検討する必要がある(羽竹,2005)。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
425
460)看護職者による在宅酸素療法利用者への支援の検討
461)在宅ケアにおける創傷のアセスメントとケアの現状
三井昌美(市立吹田市民病院)
井上智子(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
林 由佳(山陽学園大学看護学部)
斎藤信也,高取朋美(岡山大学大学院保健学研究科)
木村麻紀(吉備国際大学保健医療福祉学部)
【はじめに】
在宅酸素療法(home oxygen therapy:以下 HOT)が導入
される患者は,現在15万人に及ぶと言われており年々増加
傾向をたどっている。
また,課題や困難を抱えながら療養生活を送っている患者
に支援はなされているものの具体的な支援のあり方を示し
たものはない。そこで,本研究では HOT 利用者と継続的
な関わりをもつ看護職者による支援のあり方を明らかにす
ることを目的とした。
【研究方法】
HOT 企業に属する看護職者6名を対象とし,半構造化面
接法を用いて平成22年3月と7月に実施した。分析方法
は,録音したデータを逐語録にし,HOT 利用者の療養生
活での支援の内容を中心に質的帰納的に分析した。倫理的
配慮として,研究者と対象者が属する組織の倫理規定に
則って手続きをおこない,対象者には研究の趣旨,匿名性
の確保,参加の自由,不利益がないことを説明し文書にて
同意を得た。
【結果】
看護職者の平均経験年数は,17年(うち当該企業約8年,
うち呼吸器疾患患者の看護経験年数約7年)であった。
本研究の対象者による在宅酸素療法利用者への療養生活上
の支援は,HOT が導入された【療養環境の確認】や利用
者の【HOT に対する認識の把握】によって,HOT を受け
入れていくことができるよう【HOT に対する説明の補足】
がおこなわれていた。そして,HOT を利用したうえで生
じた利用者の否定的な認識や行動に対して【自己解釈によ
る認識や行動の原因の探求】がなされ,他医療者との連携
とりながら【多角的なサポートによる HOT の有用性の提
供】の関わりがもたれていた。また,否定的な感情を十分
に受けとめつつ【感情表出の機会の提供】や【肯定的な認
識や行動へ向かうサポート】によって,療養生活上の課題
や困難の解決を図られていた。そして,利用者に対して
【新たな目標の提供】や,利用者自身が療養生活への変化
を実感できるよう【主体的な療養生活の評価】が実施され
ることで質の高い療養生活の構築がなされていた。
【考察】
対象者は,HOT が導入された利用者に対して必要に応じ
HOT の知識を補うことで主観的な先入観をもたないよう
スムーズな受け入れにつなげていた。主観的な先入観は,
療養生活の姿勢に影響を及ぼすため HOT 導入後の関わり
は重要である。そして,療養生活上の課題や困難を乗り越
えていく支援によって,利用者の病状の悪化を防ぐととも
に生活の質の低下を回避させ療養生活の継続につなげてい
たと考えられる。さらに,主体的な療養生活を実感する支
援によって,HOT の有用性を認識することができ質の高
い療養生活の構築につながったと考える。
426
【目的】
在宅看護・在宅ケアにおいて,訪問看護師とケアギバーす
なわち家族や介護士らとの協力と連携が不可欠である。た
だし,創傷のケアについては医療的要素が強く,これまで
ケアギバーの関与については不明確であった。そこで今
回,創傷を皮膚に損傷が加わっている状態とし,在宅診療
で比較的多い胃瘻挿入部,気管切開部,皮膚潰瘍,擦過傷,
皮膚剥離,褥瘡とし,実際の創傷のアセスメントとケアの
現状を訪問看護師と家族や介護職との役割分担に注目し調
査した。また一部では,細菌学的調査も行った。これら調
査結果から,在宅ケアにおける創傷のアセスメント及び創
傷ケアに対する示唆を得たので報告する。
【研究方法】
対象:A 県内訪問看護ステーション103施設および県内ヘ
ルパーステーション244施設 内容:胃瘻挿入部,皮膚潰
瘍部,気管切開部,擦過傷,褥瘡の創傷管理,家族・介護
職者への依頼(指導)について,質問紙郵送留め置き調査
を行った。細菌学的調査については,対象:在宅療養者3
名 方法:上記創傷の観察・調査および創傷部のふき取り
による細菌学的調査 倫理的配慮:山陽学園大学倫理審査
委員会の承認を得た。質問紙調査は無記名にて返送を依
頼。細菌学的調査は対象者とその家族および主治医に研究
の趣旨・目的を説明し同意を得た。
【結果・考察】
回答数は訪問看護ステーション31
(回答率30.0%)ヘルパー
ステーション72(回答率29.5%)であった。看護師の創傷
ケアは,褥瘡のケアが最も多く,次いで,ドレッシング
剤の交換(96.8%),薬剤の塗布(96.8%),洗浄(96.8%)
であった。家族に対しては,褥瘡のアセスメントの依頼が
最も多く(64.5%),次いで胃瘻挿入部(43.3%)であり,
家族と協力しながら創傷ケアを行っている実態が明らかと
なった。訪問看護ステーションから,介護職への依頼と介
護職が実施している創傷ケアとを比較すると,褥瘡の消毒
(p<0.01),褥瘡の薬剤の塗布(p<0.01),擦過傷の消
毒(p<0.01),擦過傷の薬剤の塗布(p<0.01)などの各
項目で,有意差を認めた。つまり介護職は,実際には,看
護師の依頼と比べてより多く創傷ケアを行っていた。細菌
学的調査では,同一人物内の異なる個所(胃瘻挿入部と褥
瘡)で緑膿菌が採取されていたことから,創傷ケアでの一
処置一手洗いが不十分である可能性が示唆された。家族お
よび介護職に対しては,創傷ケアそのものというより,在
宅ケアでの創傷感染早期発見のためのアセスメントツール
を充実する必要があり,今後介護の専門職と医療や看護と
の協働の方法の検討が必要と思われた。なおこの研究の一
部は,平成21年度公益財団法人医療助成勇美記念財団の助
成により行われたものである。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
462)在宅療養移行への看護アセスメントシートに関する
研究 −一般開放型とがん拠点病院の比較−
463)在日外国人患者に対する看護についての考察 −在
日外国人入院患者に関わった看護師の体験から−
樋口キエ子,小竹久実子(順天堂大学医療看護学部)
高橋フミエ(東都医療大学ヒューマンケア学部看護学科)
西村佳穂(名古屋第二赤十字病院)
橋本秀実(三重県立看護大学)
【目的】
在宅療養移行時に活用される継続看護に関するアセスメン
トシート(以後,シート)の実態を把握し,シート改善の
資料とする。
【用語の定義】
シート:退院前の課題抽出と継続看護を目的に,病院看護
職側で準備,連絡,調整をする継続看護の記録用紙 【方法】
1)データ : 関東及び関西地域の100床以上の総合病院8施
設(がん拠点病院1施設(以後,CA),一般開放型病院7
)の継続看護のシート(平成22年時点)
施設(以後,GE)
2)視察:分析対象3施設の視察,うち1施設は病棟訪問,
カンファレンスに参加,シート活用の把握 3)先行研究
のシートを基に各施設のシートの内容分析を研究者間で実
施 4)倫理的配慮:研究趣旨に同意,施設名の特定をし
ない。
【結果】
CA は48時間以内,GE は48時間∼1週間以内にシートの
記載を行っていた(表1)。 CA は,医師,看護師,家族・
患者用の退院シートがありチームケア体制および緊急連絡
体制が詳細に示されていた。GE は,介護保険の有無や,
在宅療養時の利用事業所の詳細があった。共通点はスク
リーニングシートと併用,看護の継続先の情報,対象の意
向の欄があった。
【考察】
CA は,48時間以内にアセスメントを行い,緊急対応をし
ていることが示唆された。GE は,介護保険をはじめとす
る保健医療福祉制度に関する項目があり,在宅での療養を
継続できる支援体制に視野を入れた内容であることが示唆
された。今後の課題は,CA の調査場所を増やし,傾向の
把握をしていくとともに,在宅療養継続のためにペインコ
ントロールや他職種との連携に関しての情報把握の現状を
明らかにしていく必要がある。GE は,療養者や家族を含
めての全体像や医療処置管理など,療養者の家庭に合わせ
てケアできる情報を継続先に繋げられる内容を入れていく
ことが必要であると考える。
表1 一般開放型病院とがん拠点病院の比較
名称・種類
記入者
使用目的
記録記載期限
スクリーニング
シートとの関連
院内連携先
看護の継続先
本人・家族の望
む生活
退院先の希望
保健医療福祉に
関する社会資源
一般開放型病院
退院支援業務手順
退院チェック表・退院調整フ
ローチャート・
退院調整スクリーニングシート
アセスメントシート・情報シー
ト・方向性シート
退院調整表・退院支援計画書
看護職
記載なし
がん拠点病院
退院支援退院調整プログラム
シート
(退院アセスメントシート・退院
シート)
退院シート(医師用,看護師用,
患者・家族用)
[E 病院]
看護職・医師
本シートの目的・病院職員で取
り組むものであることを表記
48時間∼1週間
48時間(退院時の状態を予測し
て記入)
記載時間・内容の特徴あり,併用している
福祉職・退院支援看護師連携の有無とその内容欄有り
訪問看護導入を主治医と連携
継続先,訪問看護ステーション情報
本人と家族各々の意向・希望欄あり
家族が希望する看取りの場所
退院情勢に応じた社会資源サービスをツールに挿入
【目的】
看護師の外国人患者に関わる際の思いや実際の関わりを明
らかにし,在日外国人に対する看護に必要な視点や意識に
ついて考察する。
【方法】
対象は臨床経験が3年以上で1年以内に在日外国人の看護
を行った看護師15名。面接ガイドを用いて外国人患者に関
わった体験を具体的に聞いた。データを逐語録に起こし,
意味内容を損なわないよう文章を区切りコード化した。内
容に類似性のあるコードを集めサブカテゴリ《 》,カテ
ゴリ【 】とし,カテゴリ同士の関係から構造図を作成し
た。
倫理的配慮として,研究への参加は自由意思であり,辞退
や中断による不利益は被らないこと,個人情報の守秘の保
証などについて説明し同意書に署名を得た。
【結果】
分析の結果648のコードと62のサブカテゴリ,14のカテゴ
リが作成された。看護師は外国人患者と関わる際,
【言語
的コミュニケーションをとりたい気持ちととれないことに
よる消極的な思い】
【患者の生活習慣・価値観・社会背景
に対する戸惑い】を持っていた。しかし【看護師としての
思いや姿勢】や【患者の生活習慣・価値観・社会背景を尊
重したケアをしたいという思い】を持ち,患者の援助に繋
げていた。看護師は外国人患者が規則を守らず困ると考え
【他の患者や規則に配慮した対応】をしていた。
【考察】
【言語的コミュニケーションをとりたい気持ちととれない
ことによる消極的な思い】
【患者の生活習慣・価値観・社
会背景に対する戸惑い】は,【看護師としての仕事がうま
く果たせないという思い】【患者に対する不信感や苛立ち】
により強まり消極的な思いの負の連鎖となっていた。看護
師が外国人患者の関わりに困難感を感じているのは言語的
コミュニケーションが取れず,看護師としての仕事がうま
く果たせないと感じるためと考えられる。しかし,看護師
は【看護師としての思いや姿勢】
【患者の生活習慣・価値
観・社会背景を尊重したケアをしたいという思い】といっ
た患者に対する積極的な思いにより負の連鎖から脱し,
【患者・看護師関係の深まりと外国人患者に対応する自信】
を感じることで,更に【看護師としての思いや姿勢】,【患
者の生活習慣・価値観・社会背景を尊重したケアをした
いという思い】を強めていると考えられ,患者に関わろ
うとする積極的な思いが重要であるといえる。 CompinhaBacote が医療提供者にとって文化的な出会いは多様な背景
を持つ患者との直接的な関わりを促進すると述べているこ
とから,異文化に触れ,知る機会を持つ教育や意識が必要
である。他方,看護師は外国人患者が《他の患者の迷惑に
なる》ので困ると考えていた。外国人は病棟の規則や基準
を理解していない可能性があるので,丁寧に説明し理解を
得ることが必要である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
427
第11会場 第54群
464)始まった小規模多機能型居宅介護施設A県の状況と
課題
465)重症心身障害児・者の親の会が親に及ぼす影響
高橋登志枝(広島文化学園大学看護学部)
菅原千恵子(東北福祉大学健康科学部保健看護学科)
【目的】
小規模多機能型居宅介護は2006年の介護保険制度改正で新
たにできたサービスである。
「通い」を中心に「泊まり」
「訪
問」の3つのサービスを組み合わせ,住み慣れた地域での
介護を目指すとされた。4年経過したA県の状況と課題を
明らかにする。
【研究方法】
1.調査対象:A県の全小規模多機能居宅介護施設(以
下,小多居介施設とする)全13施設 2.調査期間:2010
年12月 3.データ収集方法と分析:A県介護情報公表シ
ステムの介護サービス情報(基本情報)より収集。<居宅
サービス><地域密着型サービス><介護予防サービス>
の項目と「介護サービスに従事する従業者に関する事項」
より「介護職員(常勤換算人数)」「看護職員(常勤換算人
数)」,
「登録者の状況」より「平均年齢」
「要介護区分人数」,
「設備等の状況」より「個室数」
「一室当たりの居室面積」
の15項目の基本統計量を算出した。4.倫理的配慮:情報
公開制度により公開されている情報に限定した。施設名は
記号化した。
【結果】
A 県13施 設 中, B 市 7 施 設(53.8%), 5 市 に 各 1 施 設
(7.7%),1町に1施設(7.7%)で,小多居介施設のない市
が7市(53.8%)と21町(95.5%)であった。13施設中,通
所介護10施設(76.9%)あり,認知症対応型通所介護は4
施設(30.8%)であった。訪問介護は6施設(46.2%)で,
訪問看護は4施設(30.8%)であり,どちらのサービスも
使えない施設が4施設(30.8%)あった。夜間対応型訪問
介護は0施設(100%)であった。介護予防訪問介護は6
施設(46.2%)であり,介護予防短期療養介護は1施設
(7.7%)であった。また,介護職員平均10.2人,看護職員
平均0.9人であった。登録者の年齢は平均82.8歳で要介護
4・5の登録者は48人(全登録者258人中18.6%)で1施設
の最小値2人,最大値6人であった。1施設の個室は4∼
9室で,一室当たりの居室面積は7.45∼14.96㎡であった。
【考察】
A県は13市22町あるが小多居介施設は13施設であり,1町
1施設に満たず,謳われている「生活圏域」ごとの設置
に至らない。総人口と老年人口割合が A 県とほぼ同じ B 県
(14市13町で小多居介施設は55施設)の20% にとどまって
いる。小多居介施設は「通い」が中心とされるが,通所介
護のない施設が3施設あり,「夜間対応型訪問介護」は0
施設であるため,要介護高齢者の在宅生活を包括的にケア
する形態といえない。背景には,要介護1・2の介護報酬
が低いことや,「通い」
「泊まり」「訪問」を包括的に提供
する形に対しての職員配置の基準が少ない等,採算性の問
題などで事業者の参入が進まないことがあげられている。
新たにできたサービスの量と内容の充実が課題といえる。
428
【目的】
在宅における重症心身障害児・者(以下を重症児とする)
の親の会は,養育にどのような影響を及ぼしているのかを
親の気持ちや体験から明らかにすることである。
【研究方法】
データ収集期間は,2006年11月∼2007年6月に親の会の会
員から研究参加者に同意が得られた母親5名から親の会に
入ったきっかけ,活動への思い,考えという項目で半構成
的面接を実施し得られたデータから逐語録を作成し質的帰
納的分析を行った。分析は,会の活動を通して親はどのよ
うな気持ち,行動の変化,子どもとの関わりの中での語り
の内容を大事にし,意味内容を変えないようにデータ内容
を分析しコード化した。更に,類似性や差異性を検討,抽
出しカテゴリー化した。
【倫理的配慮】
日本赤十字広島看護大学研究倫理委員会の審査を経て,承
認を得た。調査依頼は,親の会の代表者,各役員および会
員に研究の依頼と主旨を口頭と文書で説明し,協力と承諾
を得た。プライバシーを保護,研究の途中の対応や辞退可
能,療育に不利益とならないことも確約した。
【結果】
重症児の親の会が親に及ぼす影響は,17サブカテゴリーか
ら4つのカテゴリーが見出された。親は,重症児の会の情
報を得ることの困難さや重症児の体の特性を踏まえ他の親
の会との違いを体験し重症児だけの親の会という思いが
あった。この体験から「重症児だけの親の会」の設立に
至った。会の運営にあたっての配慮の必要性や社会資源の
利用,設立後の親の交流から【障害児の親であることへの
認識】をもつに至っていた。定例会の内容が子どもの可能
性を引き出していることや世代を超えた親同士の交流から
重症児の親同士だから分かりあえることであった。会の特
徴でもある子どもの年齢制限の無いことや世代を超えた交
流から【親子の体験】が広がっていた。【子どもの変化が
実感】できるという体験は,療育内容の充実や多様な支援
からわずかな子どもの表情の変化や表現が豊かになること
に気づいていた。
【親としての役割】は,重症児の親の会
という場が必要であること,ボランティアへの働きかけや
社会の人(地域への働きかけ)に,障害児への理解を深め
てもらいたいという思いからの社会活動であった。
【考察】
親は,重症児の会の入会までの思い,重症児だけの親の会
の設立後の親の交流を通じ,より深くわが子の事や障害児
の問題を理解していた。会の活動から重症児の親であるこ
とへの認識を深め,親としての役割を体験し,親同士での
対処方法を見出し,子どものわずかな表情,成長の変化が
実感できる事や親子の時間の大切さを体験し子どもの将来
を考えた行動変容となっていたと考える。更に,子どもの
成長発達の事,将来の不安,世代を超えた交流を通じ,先
を見越した情報交換や社会に向けた働きかけを行い,将来
への対処等,親としての役割を深めていったと考える。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
466)訪問看護師が訪問看護援助提供に困難を感じたこと
のある精神科訪問看護利用者の概要とその背景
467)A 県訪問看護ステーション管理者による精神科訪問
看護に関する認識
梶原理絵(愛媛県立医療技術大学保健科学部看護学科)
新井香奈子,中野康子(兵庫県立大学看護学部)
林 裕栄(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科)
【目的】
本研究の目的は,訪問看護師が訪問看護援助提供に困難を
感じたことのある精神科訪問看護利用者の概要とその背景
を明らかにし,訪問看護師への支援方法について検討する
ことである。
【方法】
A 県訪問看護ステーション(以下 St)連絡協議会に所属し
ている228か所の St 管理者に,依頼文と調査用紙,返信用
封筒を郵送し,所属する看護師に無記名・個別での返信を
依頼した。調査内容は,困難だと感じた1事例について利
用者の性別,年代,疾患,病気の理解度等である。本研究
は A 大学の研究倫理委員会の承認を受け実施しており,協
力は自由意思であること,無返送でも不利益を被らないこ
とを説明し,調査用紙は厳重に保管すること,本研究以外
では使用しないこと,結果は公表することを明記した。
【結果】
227名の訪問看護師が回答し,そのうち精神科訪問看護援
助提供に困難を感じたことがあると回答した訪問看護師
128名(82.6%)を分析対象とした。困難事例の利用者は,
男性33名(25.8%),女性91名(71.1%),60,70歳代が最も
多く27名(21.1%),次いで50歳代が26名(20.3%)であっ
た。疾患は統合失調症が最も多く65名(50.8%),次いで
感情障害が35名(27.3%)で,116名(90.6%)の利用者に
精神症状が認められていた。訪問看護の受け入れが否定的
な利用者17名(13.3%)と肯定的な利用者92名(71.9%)
を比較すると,受け入れが否定的な利用者は肯定的な利用
者より器質性精神疾患の割合が有意に高く(p <0.05),自
身の疾患について理解できていない者の割合が有意に高
かった(p <0.05)。また,訪問看護の受け入れが否定的
な利用者の方が同居者の存在する割合が有意に高く(p <
0.05),家族が協力的な割合(p <0.05)が有意に高かった。
なお,訪問看護の受け入れ態度と年齢,サービス利用期間,
他のサービス利用の有無,精神症状と入院歴の有無,日常
生活状態,経済状況,主治医の所属と専門領域,訪問人数
との間に関連はみられなかった。
【考察】
訪問看護師が困難だと感じる精神科訪問看護の利用者の背
景には,疾患やその理解度,同居者,家族の協力状況が関
わっていた。このような利用者に対して訪問看護師は困難
を感じる可能性があるため,本人のみならず家族を含めて
疾患を理解できるような勉強会の開催,患者会および家族
会などで事例検討会を開催することが訪問看護師の困難な
状況を打開する一歩となるのではないかと考えられた。な
お,本研究は日本訪問看護振興財団による訪問看護・在宅
ケア研究助成により実施した。
【目的】
訪問看護ステーションの精神科訪問看護に関する実態や今
後の取り組みについて,管理者側から調査し,精神科訪問
看護の拡大に向けた資料とする。
【研究方法】
調査対象は,A県内の訪問看護ステーション200か所(全
数)の管理者200名。調査期間は,2008年9月∼11月。調
査方法は,郵送による自記式質問紙法。主な調査内容は,
基本的属性,精神科訪問看護の取り組みの意欲など。分析
方法は,SPSSver16.0を使用し量的分析(記述統計を測定)
および,自由記載は類似する意味内容ごとに類型化を行っ
た。倫理的配慮は,対象者には文書で研究の趣旨および調
査協力の任意性について説明し,アンケートの回収をもっ
て許諾を得た。B 大学倫理委員会の承認を得た。
【結果】
質問紙の回収数および有効回答は60人(32.5%)。管理者
の背景は,性別は女性58人,男性2人。年代は,40−49
歳が25人(41.7%),50−59歳が22人(36.7%),60歳代が7
人(11.7%)など。資格は,看護師58人・保健師2人に加
えて介護支援専門員38人(63.3%)。看護師としての通算
経験年数は,約23年,そのうち医療機関での勤務年数は約
13年,訪問看護は約8年。医療機関での精神科看護経験あ
りは11人(18.3%)。精神障害者への訪問看護の経験あり30
人,事例数は約4人。職場内相談機関や人の存在は,
「あ
る」が54人。職場外に「ある」は49人(81.7%)。具体的
には,ケアマネジャーや支援センター,他のステーション
管理者,医療機関の医師や看護部長,市役所,保健師など
多岐に渡っていた。精神科訪問看護への意欲は,
「やや消
極的」・「消極的」が36人(60.0%)であった。消極的理由
は,「訪問に時間がかかり過ぎ長い経過を要すこと」
「キー
パーソンの不在,多問題家族など,面倒」
「主治医との連
携が課題」「スタッフに負担がないか不安」「症状が多様で
難しい。精神科看護の経験がないので不安」など。学びた
い研修は,精神疾患の基礎,事例検討,薬,同行訪問等に
よる精神科訪問看護の基礎,コミュニケーションの取り
方,多職種との連携方法,拒否されたときの対応の仕方,
社会復帰への支援方法,家族への関わり方,引きこもりの
知識などであった。
【考察】
A 県内でも精神科訪問看護を行う訪問看護ステーションは
14年前の全国調査に比べて倍増していた。しかし管理者
は,精神科訪問看護にはあまり積極的でなく,それを行う
ことによる訪問看護ステーションの経営やスタッフの管
理,多職種との連携等に課題があると考えていることがわ
かった。精神科訪問看護の拡大のためには,訪問看護体制
も含めた診療報酬上の評価や多職種が看護師との連携に関
する意識を高めるための方策が必要である。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
429
468)精神障害者の支援に関する研究 精神保健福祉ボラ
ンティアの視点から支援を考察する
469)マンダラートによる在宅看護の概念構成因子の分析
矢野章永,西留美子(共立女子短期大学看護学科)
中添和代(香川県立保健医療大学保健医療学部看護学科)
【目的】
支援にはフォーマルな支援とインフォーマルな支援があ
り,それぞれの立場で精神障害者の自立支援を行ってい
る。ここでは,インフォーマルな支援者である精神保健福
祉ボランティア(以下,ボランティア)を対象に,支援内
容と支援についての考えを知る目的でインタビューを実施
した。これは,協働による新たな精神障害者の在宅生活支
援システム構築への一資料とする。
【研究方法】
対象は,精神保健福祉に関する民間団体に所属し,精神障
害者の在宅生活を5年以上支援しているボランティア8名
である。データ収集は,半構成面接法を用いて,支援の実
際とその支援について日頃感じていることの2項目をイン
タビューした。分析は,質的帰納的に行い,支援の関連図
を作成した。倫理的配慮として,対象者には研究の主旨,
匿名性の保持,公表について,文書および口頭にて説明し
同意を得た。研究期間は2008年11月∼2009年1月である。
【結果】
1)対象は,男女各4名,年代が50∼70歳代で,このうち,
精神保健福祉に関する専門的資格を有している者が2名,
精神障害者の退院促進支援事業において自立支援員の経験
がある者が2名であった。2)( 1)ボランティアの支援
内容から当事者に対して【一緒にする】
【人生の先輩とし
ての助言】【社会参加を促す】【力を引き出す】【安心を伝
える】【情報提供】の6カテゴリー,支援関係者との【連
携した支援】,地域社会への【アドボカシー活動】が抽出
された。( 2)支援の関連では【人材育成と確保】および
【啓発活動の推進】を基盤に,個人で取り組む項目と組織
で取り組む項目の2つに分類できた。個人で取り組む項目
には【支援のスタンスを持つ】
【支援者の見識と理念】の
2カテゴリーが,組織で取り組む項目には【支援のネット
ワークづくり】【フォーマルな支援の見直し】
【精神科医療
の改革】の3カテゴリーが含まれた。そして,個人および
組織での取り組みにより【当事者本位の支援】と【家族を
支える】支援が導き出された。
【考察】
精神障害者の自立支援において,ボランティアが当事者だ
けでなく支援関係者や地域社会を対象にしていることが明
らかになった。当事者の具体的な困りごとを一緒に対処
し,人生の先輩としての助言や情報を提供することは,そ
の当事者が安心して生活ができるだけでなく,新たな自己
実現に向けた挑戦や自己発見につながると思われた。さら
に,当事者の気持ちを代弁し,当事者の名誉のために社会
に働きかける姿は,精神障害者の社会参加の促進につなが
ると考えられた。また,支援の考えから当事者と家族を支
えるために,個人および組織として取り組む項目が抽出さ
れた。これらの結果からボランティアが在宅生活支援シス
テム構築への重要な人材であることが示唆された。
430
【目的】
在宅看護の授業を行う場合,看護学生のもつ在宅看護のイ
メージを知ることは,授業の展開に役立ち,学習成果を高
めるものと考える。そこで,研究者は「在宅看護論」の授
業の開始前に学生が「在宅看護」についてどのようなイ
メージをもつているかを知るため,キーワード抽出をマン
ダラートによって試みた。
【方法】
マンダラートとは正方形を3×3に区切った9つのマス目
のことで,通称は,魔法の箱と呼ばれている。その方法は,
中央に目的のテーマを書き,そこから思いついたことを8
個,頭から導き出す。その中から1つ,まだまだ展開でき
そうなものを見つける。次にそれを中心に入れて,さらに
8個展開する。研究対象は看護短期大学2学年87名,14グ
ループを対象にワークシートを配布して実施した。指示内
容は「在宅看護とはなんですか。頭に浮かんだ言葉を8つ
あげてみましょう」である。倫理的配慮として,学生の参
加は自由であり,成績には影響しない旨を伝えた。また,
学生の氏名が特定できないよう個人名,グループ名は削除
して分析を行った。本結果の公表については学生の了解を
得た。
【結果】
マンダラートによって在宅看護の概念が次のように抽出さ
れた。
1.
「基本」に書き出されたキーワードのうち,展開1の
ために選ばれたキーワードに注目してみると,
「家で療養・
家族の支援が必要」
「管理」
「生活密着」
「家・在宅看護」
「在
宅看護の環境」
「在宅看護の老人」
「在宅看護と高齢者」
「高
齢者」「地域密着」
「自宅で看護する」
「訪問」
「老人」「在
宅看護師」「自己管理のためには」であった。
2.基本から「展開」までに書き出されたキーワードは全
部で,224語であつた。このうち,出現頻度の多かったも
のは,「家で療養」21語,「家族の支援」18語,「看護師が
訪問」18語,
「病状」15語,
「自己管理」12語,
「環境」11語,
「高齢者」10語,
「他職種連携」10語,
「生活密着」7語,
「保
険制度」7語,「近所づきあい」5語,「自宅の設備費がか
かる」5語,「家族に負担」4語,「医師・かかりつけ医」
4語,
「病院との連携」4語,
「介護保険」3語,
「ヘルパー」
3語,「家族と過ごせる」2語,であった。
【考察】
学生は在宅看護の対象を「家で療養している人」,「高齢
者」,「老人」,「家族に負担」「家族の支援」と書いたこと
は,在宅看護論の概念である対象をイメージしていた。ま
た「訪問看護師」,「かかりつけ医」,「他職種連携」,「病院
との連携」と書かれていたのは概念として在宅支援活動を
行う職種や連携方法についてイメージしていた。「保険制
度」7語,
「近所づきあい」5語,
「自宅の設備費がかかる」
5語,「家族に負担」などは,本人や家族を支える社会保
障制度・介護保険の概念をイメージしていた。
日本看護研究学会雑誌 Vol. 34 No. 3 2011
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