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ロシア南部クラスノダル地方の経済

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ロシア南部クラスノダル地方の経済
MINI REPORT
ロシア南部クラスノダル地方の経済
はじめに
べて、ロシア連邦国家統計局および同クラス
ロシアの南連邦管区はこれまで、日本人に
ノダル地方支部)
。後半では、2月の現地調査
とって最も馴染みの薄い地域だったと言える
の際にクラスノダル地方行政府の対外経済活
のではないか。日本とは地理的・交通的に隔
動局で行った聞き取り調査の結果を披露する。
絶されているうえに、我々にとって関心の対
手始めに、クラスノダル地方の地図を、図
象となるような産業も未発達であると見られ
1に示した。クラスノダル地方は、ロシアの
ていたからである。従来は、チェチェン戦争
地域として唯一、黒海に面している。南部で
のような否定的な話題の方が多かった。
グルジアと国境を接し、西ではケルチ海峡を
しかし、ここに来て、南連邦管区が存在感
挟んでウクライナと向かい合う。また、クラ
を増してきている印象が強い。なかでも、ロ
スノダル地方内部に孤島のような形でアディ
シア南部の最重要地域と目されているのが、
ゲ共和国が設けられている(もちろん独立国
クラスノダル地方である。
何と言っても、2014
家ではなくロシアの一地域であるが)。なお、
年ソチ冬季オリンピックの開催決定が、最大
クラスノダル地方のことを雅称で「クバン」
のトピックである。また、ロシアが穀物輸出
と呼ぶので、覚えておいていただきたい。
国として台頭してくるなかで、大穀倉地帯と
してのクラスノダル地方が脚光を浴びつつあ
るという側面もある。
そこで本稿では、このように注目度の高ま
るクラスノダル地方に焦点をあて、その経済
に関する基礎情報をとりまとめてお伝えする
ことにする。ロシアNIS貿易会では、本年2
月にクラスノダル地方に当会職員および外部
専門家を派遣し現地調査を行っているので、
その際に収集した情報や資料を適宜紹介する
ことに努めたい。
以下、まず前半では、統計や企業ランキン
グといった資料を手がかりに、クラスノダル
地方経済の概況を整理する(統計の出所はす
88
クラスノダル地方行政府
正面にはコサックの騎馬像
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
ロシア南部クラスノダル地方の経済
クラスノダル地方の基礎データ
図1 クラスノダル地方地図
2
面積:7万5,500km (ロシア全体の0.4%)
人口(2007年末):512万人(ロシア全体の3.6%)
主要都市とその人口(2007年末):クラスノダル(中心都
市、71.0万人)
、ソチ(33.4万人)、ノヴォロシースク
(28.4万人)、アルマヴィル(18.9万人)、エイスク(8.7
万人)、クロポトキン(8.1万人)、スラヴャンスクナ
クバニ(6.5万人)、トゥアプセ(6.4万人)、チホレツ
ク(6.3万人)、ラビンスク(6.1万人)
、クルィムスク
(5.7万人)、アナパ(5.6万人)
、ベロレチェンスク(5.4
万人)、チマシェフスク(5.4万人)、ゲレンジク(5.3
万人)など
知事:トカチョフ(TKACHEV, Aleksandr Nikolayevich)。
1960年生まれ。2000年12月から現職。
主な関連ウェブサイト:
http://www.krasnodar.ru
地方ポータルサイト
http://admkrai.kuban.ru
地方行政府
http://economy.krasnodar.ru
経済発展局
http://www.gokuban.ru
対外経済活動局
http://dips.kubangov.ru
投資・プロジェクト支援局
http://www.krsdstat.ru
統計局地方支部
クラスノダル地方の経済概況
2007年末現在、クラスノダル地方の人口は
ロシア全体に占める地歩 まず、クラスノダ
512万人を数える。これはロシア全体の3.6%
ル地方の重要性を物語るいくつかのデータを
を占め、ロシアで3番目に人口の多い地域と
挙げてみる。同地方の存在感が際立っている
なっている。
のは、人口、農業生産、運輸、観光業といっ
また、2007年のロシアの農業生産に占める
クラスノダル地方のシェアは7.0%で、これは
た分野である。
図2 穀物収穫高 (100万t)
108.1
100
堂々の全国1位であった。図2に見るように、
クラスノダル地方の穀物収穫高はロシア全体
の1割程度のシェアを安定して占めている
(もちろん全国1位)。穀物輸出となると、ク
78.1
ラスノダル地方のシェアはさらに大きくなり、
81.8
78.6
78.2
2007年にはロシア全体の27%を占めたと見ら
67.2
れる(連邦と地方の通関統計から試算、金額
ベース)。ただ、これには他地域で収穫された
50
穀物がクラスノダル地方を本拠とするトレー
ダーによって輸出されるようなケースも含ま
れている可能性がある。
5.2
8.1
8.3
8.2
11.6
8.1
2007年のロシア全体の製造業に占めるクラ
スノダル地方のシェアは1.7%で、決して大き
0
2003
2004
2005
ロシア全体
2006
2007
2008
クラスノダル地方
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
くない。ただし、「食品、飲料、タバコ」のセ
クターに限れば、5%程度のシェアを誇る。
89
MINI REPORT
もうひとつ、クラスノダル地方の存在感が
ロスネフチの製油所と、石油製品積出港があ
非常に大きいのが、港湾セクターである。ロ
る。そのほかにも、地方内にはクラスノダル
シアの港で処理されるロシア貿易貨物および
製油所(ルスネフチ傘下)
、アフィプスキー製
トランジット貨物のうち、約40%がクラスノ
油所という2つの石油精製企業がある。した
ダル地方の港で処理されていると言われてい
がって、石油精製とその輸出も、クラスノダ
る。港湾セクターについては、本誌2009年4
ル地方の重要産業となっている。
月号に掲載したレポート「黒海港湾の覇を競
うロシアとウクライナ(上)」で詳しく論じて
主要企業 次に、クラスノダル地方の大企
いるので、そちらを参照していただきたい。
業ランキングを見ることにしよう。これは、
さらに、クラスノダル地方は海辺の保養地
本誌でも頻繁に利用している『エクスペルト』
を有するロシアで唯一の地域であり、ソチ、
誌によるロシア大企業ランキングの、地方版
アナパ、ゲレンジクといった保養地で年間
である。具体的には、『エクスペルト南』誌
1,200万人が保養するという。『エクスペル
2008年11月10~17日号に、
「ロシア南連邦管区
ト』誌が毎年制定しているロシアの地域投資
250大企業」という資料が掲載されているので、
環境ランキングでは、観光部門でクラスノダ
そのなかからクラスノダル地方の企業を上位
ル地方が不動の1位を占めている。
35位まで抜き出して、表1を作成した。
ランキングでは、1位のタンデル社こそス
産業構造 前項とも内容的に重複するが、
ーパーマーケット・チェーンだが、あとはロ
ここでクラスノダル地方の産業構造の特徴を
スネフチ関連企業や、(外資系も含む)農業・
改めて整理してみよう。
食品関連企業、運輸会社などが目立つ。
本誌前号(8月号)の61~68頁に、「ロシア
なお、2007年のロシア南連邦管区250大企業
の地域別の総生産と産業構造」と題する記事
ランキングには、クラスノダル地方の企業82
が掲載されているので、参照していただきた
社がランク入りしている。250社の売上高合計
い。その前号の表2を見ても分かるとおり、
は 15 億 4,625 万 ル ー ブ ル で あ っ た が 、 う ち
クラスノダル地方の産業構造は、農業、運輸・
35.3%に相当する5億4,629万ルーブルがクラ
通信、建設、ホテル・レストランなどに特徴
スノダル地方の82社によるものだった。
がある。運輸の大きさはノヴォロシースク港
および幹線石油パイプラインの賜物であり、
ホテル・レストランは保養地であるがゆえで
あろう。製造業は強力とは言えないが、前号
の表3に示されているように、「食品、飲料、
タバコ」セクターには見るべきものがある。
なお、クラスノダル地方はロシアでも最古
の石油産出地域である。しかし、現在の生産
量は微々たるものであり、地域内の需要も満
たせない。それでも、ロシア内陸部から黒海
沿岸のトゥアプセまで伸びるパイプラインに
より原油が供給されており、トゥアプセには
90
石油生産はロシア全体の0.2%にすぎない
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
表1 クラスノダル地方大企業ランキング (2007年の売上高、100万ルーブル)
順位
企業名
インターネット
売上高
ロシア南部クラスノダル地方の経済
業種
所在地
1
タンデル
«Тандер»
小売
クラスノダル市
http://www.magnit-info.ru
89,967.4
2
ロスネフチ・クバンネフチェプロドゥクト
Нефтяная компания «“Роснефть”-Кубаньнефтепродукт»
卸売
-
http://www.rosneft.ru
27,120.2
3
アフィプスキー製油所
Афипский нефтеперерабатывающий завод
石油・ガス
アフィプスキー町
http://www.afipnpz.ru
24,650.1
4
ユージナヤ・ムノガアトラスレヴァヤ
«Южная многоотраслевая корпорация»
卸売
-
http://www.umk-kuban.ru
20,816.8
5
モビコム・カフカス
«Мобиком-Кавказ»
テレコム
-
http://www.mobicomk.ru
20,316.2
6
南テレコム
«Южная телекоммуникационная компания»(ЮТК)
テレコム
-
http://www.stcompany.ru
19,772.4
7
カスピ海パイプライン・コンソーシアム-R
«Каспийский трубопроводный консорциум-Р»
運輸
ノヴォロシースク市
http://www.cpc.ru
18,245.8
8
ノヴォシップ
«Новошип»
運輸
ノヴォロシースク市
http://www.novoship.ru
15,738.2
9
クバン・エネルギー・電化公開株式会社 Открытое акционерное
общество энергетики и электрификации Кубани
電力
-
-
14,712.1
10
ノヴォロシースク貿易港
Новороссийский морской торговый порт
運輸
ノヴォロシースク市
http://ncsp.nross.ru
12,364.9
11
クバンガスプロム
«Кубаньгазпром»
運輸
-
http://www.gazprom.ru/articles/kuban_00.shtml
12,225.6
12
ルクオイル・ユーグネフチェプロドゥクト
«ЛУКОЙЛ-Югнефтепродукт»
卸売
-
http://lukoil-unp.ru
12,001.9
13
クラスノダル地域ガス販売会社
«Краснодарская региональная компания по реализации газа»
卸売
-
-
11,433.8
14
クバンオプトプロドトルグ Оптово-розничная торговая и
производственная фирма «Кубаньоптпродторг»
卸売
クラスノダル市
http://koptorg.narod.ru
10,892.7
15
ノヴォロスセメント
«Новоросцемент»
建材
ノヴォロシースク市
http://www.novoroscement.ru
10,847.5
16
黒海幹線石油パイプライン
«Черноморские магистральные нефтепроводы»
運輸
-
-
10,511.1
17
クバンフレボプロドゥクト
«Кубаньхлебопродукт»
卸売
クラスノダル市
http://www.rosinteragro.ru
9,853.2
18
クラスノダルガスストロイ
«Краснодаргазстрой»
建設
クラスノダル市
http://www.gazstroy.com
9,578.3
19
カーギル・ユーグ
«Каргилл Юг»
卸売
-
http://www.cargill.ru
8,432.4
20
ネスレ・クバン
«Нестле Кубань»
食品
チマシェフスク市
http://www.nestle.ru
6,973.9
21
エヴロセーチ・クラスノダル
«Евросеть Краснодар»
小売
-
http://krd.euroset.ru
6,442.5
22
フィリップモリス・クバン
«Филип Моррис Кубань»
タバコ
クラスノダル市
http://www.philipmorrisinternational.com
5,437.0
23
クラスノダルストロイトランスガス
«Краснодарстройтрансгаз»
建設
-
-
5,076.1
24
ロスネフチ・クラスノダルネフチェガス
«РН-Краснодарнефтегаз»
石油・ガス
-
http://www.rosneft.ru
4,932.2
25
ノヴォロスメタル
«Новоросметалл»
鉄鋼
-
-
4,916.1
26
インジゲオ
НИПИИ «Инжгео»
その他サービス
-
-
4,633.0
27
第44トンネル建設隊
«Тоннельный отряд № 44»
その他サービス
ソチ市
http://tonotr44.ru
4,585.8
28
アルマヴィル重機械工場
Армавирский завод тяжёлого машиностроения
機械
アルマヴィル市
http://aztm.ru
4,450.9
29
メタルグラヴスナブ
«Металлглавснаб»
卸売
クラスノダル市
http://www.kubanmgs.ru
4,314.5
30
クナウフ・マーケティング・クラスノダル
«Кнауф Маркетинг Краснодар»
卸売
-
-
4,293.9
31
ロスネフチ・トゥアプセネフチェプロドゥクト
«РН-Туапсенефтепродукт»
運輸
トゥアプセ市
http://www.rosneft.ru
4,268.2
32
クバントルグアジェージダ
«Кубаньторгодежда»
卸売
-
http://www.ktokuban.ru
4,246.8
33
エヴロヒム・ベロレチェンスク化学肥料
«Еврохим-Белореченские минудобрения»
化学
ベロレチェンスク市 http://www.eurochem.ru
4,146.7
34
アグロコンプレクス
Фирма «Агрокомплекс»
農工コンプレクス
-
-
4,057.8
35
ガスプロム・トランスガス・クバン
«Газпром Трансгаз-Кубань»
運輸
-
http://www.gazprom.ru
4,045.7
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
91
MINI REPORT
表2 クラスノダル地方の主要経済指標
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
地域総生産(前年=100)
110.6
98.1
108.5
102.0
109.3
106.1
110.7
110.3
109.0
鉱工業生産(前年=100)
109.7
101.5
105.0
105.1
105.6
109.2
122.9
111.9
102.8
農業生産(前年=100)
115.5
110.7
106.0
92.8
117.1
102.6
104.2
98.3
122.8
固定資本投資(前年=100)
156.5
94.6
104.5
91.0
106.7
104.3
117.5
125.8
117.0
輸出総額(100万ドル)
995.7
991.6
1,083.2
1,494.2
904.3
1,424.0
2,088.1
3,376.3
4,259.1
3,510.8
571.7
627.2
954.8
834.1
943.1
1,409.2
1,863.9
2,654.7
外国投資受入額(1,000ドル)
979,545
793,405
202,556
325,663
275,161
463,926
751,590
714,464 1,179,471
直接投資
958,892
686,311
90,003
143,911
62,692
298,032
283,833
171,567
証券投資
38
0
0
1,941
0
3,263
4,076
562
4,096
20,615
107,094
112,553
179,811
212,469
162,631
463,681
542,335
862,654
輸入総額(100万ドル)
その他投資
外資参加企業の件数(年末)
外資参加企業生産高(100万ルーブル)
312,721
185
184
230
234
287
347
395
489
…
10,806
13,251
37,819
42,895
50,947
96,400
95,600
153,800
…
(注)2008年の地域総生産は、クラスノダル地方行政府経済発展局(http://economy.krasnodar.ru)による推計値。
経済成長 公式統計を信頼する限り、クラ
そうしたなかで連邦の資金を巻き込んで港湾
スノダル地方の直近の経済状況は、ロシア全
や空港の近代化が実施されていることに起因
般のそれよりも良好のようだ。クラスノダル
していよう。
地方の主要経済指標を、表2にまとめてみた。
2008年のクラスノダル地方の固定資本投資
2006~2008年のクラスノダル地方の地域総生
総額は、3,217億ルーブルに上った(約100億
産伸び率は、ロシア全体の経済成長率を上回
ドルに相当)。これはロシア全体の3.7%を占
っている。さらに、クラスノダル地方行政府
め、ロシアで5番目に投資額の大きい地域と
経済発展局では、2009年1~5月の同地方の
なった(自治管区を除く)
。同年に実施された
地域総生産を、前年同期比2.4%減と推計して
主な投資プロジェクトとしては、連邦道路の
いる。ロシア全体のGDPが2009年に入ってか
建設、ソチ空港の改修、ゲレンジク空港滑走
ら10%前後のマイナスを余儀なくされている
路の建設、ソチ港貨物ゾーンの整備、ノヴォ
ことを考えれば、クラスノダル地方の数字は
ロシースク港の設備更新などがあった。
大健闘と言えよう。
表2を見ると、2008年の主要経済指標で目
立つのは農業生産の伸びである。ただ、天候
対外経済関係 次に、対外経済関係に目を
転じてみよう。
に左右されやすい農業生産は、年によるばら
表2に見るように、貿易は過去数年、輸出
つきが大きい。2008年はロシアおよび周辺国
入とも大幅に増大してきた。クラスノダル地
の農業はおしなべて豊作だったわけで、これ
方の輸出入商品構成を、ロシア全体と対比し
だけでクラスノダル地方の経済パフォーマン
つつ示したのが表3である。なお、表2はロ
スが好調なのだとは思えない。
シア連邦国家統計局発表の数字、表3は同ク
それよりも、過去3年ほど安定した伸びを
ラスノダル地方支部の数字であり、原因は不
示しているのが固定資本投資であり、高成長
明であるが総額が一致しない。表3によれば、
の要因としてはこちらの方が大きいと推察さ
クラスノダル地方の最大の輸出項目となって
れる。これは、クラスノダル地方がソチ・オ
いるのは意外にも鉱物製品であり、これは前
リンピックの開催という大イベントを控え、
述のトゥアプセ製油所の石油製品が主力であ
92
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
ロシア南部クラスノダル地方の経済
表3 ロシア全体とクラスノダル地方の輸出入商品構成
輸 出
輸 入
クラスノ
クラスノ
ロシア全体
クラスノダル
ダル地
ダル地
の輸入
地方の輸入
方がロシ
方がロシ
ア全体
ア全体
輸出額 構成比 輸出額 構成比 に占め 輸入額 構成比 輸入額 構成比 に占め
るシェ 100万ドル
るシェ
100万ドル
%
100万ドル
%
%
100万ドル
%
ア、%
ア、%
ロシア全体
の輸出
総 額
食料品、農産物
クラスノダル
地方の輸出
352,568
100.0
4,011
100.0
1.14
199,720
100.0
2,647
100.0
1.33
9,073
2.6
1,398
34.9
15.41
27,610
13.8
1,226
46.3
4.44
228,445
64.8
1,901
47.4
0.83
4,673
2.3
71
2.7
1.52
化学品、ゴム
20,806
5.9
118
2.9
0.57
27,503
13.8
236
8.9
0.86
木材、紙パルプ製品
12,258
3.5
88
2.2
0.72
5,309
2.7
69
2.6
1.30
932
0.3
1
0.0
0.11
8,624
4.3
90
3.4
1.04
金属、貴石、同製品
56,641
16.1
302
7.5
0.53
16,381
8.2
242
9.1
1.48
機械、設備、輸送手段
19,658
5.6
171
4.3
0.87
101,785
51.0
522
19.7
0.51
4,755
1.3
32
0.8
0.67
7,835
3.9
192
7.3
2.45
鉱物製品
繊維、繊維製品、履物
その他
表4 2007年のクラスノダル地方の主要貿易相手国
(100万ドル)
相手国
ろう。それに次ぐのが、食料品・農産物とい
うことになる。特筆されるのは、クラスノダ
総額
輸出
輸入
収支
全世界
6,658
4,011
2,647
1,364
1 トルコ
1,498
826
672
154
体の15%強を占めているという事実である。
2 イタリア
509
418
91
327
前述のように、穀物輸出に限ればそのシェア
3 ウクライナ
397
241
156
85
4 エジプト
363
325
38
287
表3に見るように、クラスノダル地方の輸
5 フランス
339
255
84
171
入の半分近くが、食料品・農産物によって占
6 中国
265
-
7 スペイン
245
145
8 ブラジル
218
-
218 ▲ 218
9 ドイツ
167
7
160 ▲ 153
10 オランダ
148
119
29
90
食品・嗜好品加工産業の拠点と化しており、
11 カザフスタン
142
131
11
120
その原料を輸入していることに起因している
12 イスラエル
134
97
37
60
13 インド
265 ▲ 165
100
45
ル地方の食料品・農産物の輸出が、ロシア全
は27%に及ぶ。
められている。農業王国のクラスノダル地方
が食糧品・農産物を大量に輸入しているのは
奇異にも思える。これは一部には、同地方が
と考えられる(コーヒー、タバコなど)
。
126
89
37
52
機械・設備・輸送手段の輸入は、規模がそ
14 ギリシャ
76
56
20
36
れほど大きくないが、統計によれば農業機械
15 サウジアラビア
75
75
-
75
16 シリア
75
75
-
75
17 アラブ首長国連邦
59
59
-
59
18 イエメン
52
52
-
52
19 米国
50
40
10
30
ハンドル車(日本製中古車)が走っている。
20 バングラディシュ
43
43
-
43
表4は、2007年のクラスノダル地方の主要
21 スイス
42
-
42
▲ 42
貿易相手国を、総額の多い順に整理したもの
22 日本
39
-
39
▲ 39
である。トルコ、イタリア、ウクライナ、フ
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
が主力のようである。乗用車の輸入は、2007
年の実績で4,314台、3,242万ドルと、決して多
くない。ただ、当地では思いのほか大量の右
93
MINI REPORT
ランスといった主要輸出相手国には、主に石
ぜかルーブル建ての投資を除外しており、表
油製品が輸出されているが、エジプト向けだ
2の外国投資受入額とは整合しないので、ご
けは穀物が主力となっている。一方、輸入の
注意願いたい。表5では、6年間の合計投資
最大の相手国はトルコだが、同国からは柑橘
額が多い順に国を並べてある。カザフスタン
類、トマトなどの果実・野菜類が大量に輸入
がトップなのは、おそらくカスピ海パイプラ
されている。日本との貿易は輸入だけが記録
イン・コンソーシアムに関係しているのでは
されており、第22位の貿易相手国ということ
ないだろうか。
になっている。
行政府での聞き取り調査
運輸部門の発展しているクラスノダル地方
では、商品輸出に加え、サービス輸出の重要
ロシアNIS貿易会では、
性にも着目する必要がある。たとえば、2007
本年2月にクラスノダル地
年のサービス輸出総額は16億2,210万ドルに
方に当会職員(服部)およ
上っており、これは商品輸出の約4割に相当
び外部専門家を派遣し、現
する規模で、ロシアとしては画期的である。
地調査を行った。その際に、
2007年のサービス輸出のうち、実に96.7%が
クラスノダル地方行政府の
輸送サービスによって占められている(うち
対外経済活動局を訪問し、
パイプラインが51.5%、海上輸送が43.3%)。
P.ボブリー副局長にインタビューを行った
表2に見るように、クラスノダル地方の外
(2009年2月20日)
。やや紹介が遅れてしまっ
国投資の受入は、一進一退といったところで
たが、以下にボブリー副局長の主な発言の要
ある。周知のように、ロシアの外国投資受入
旨をまとめてみる。
ボブリー副局長
の慣行・統計は捉えどころがなく、公式統計
から実態を把握するのは困難である。統計局
多様な経済ゆえ危機の影響は軽微
クラス
クラスノダル地方支部のウェブサイトに、国
ノダル地方の経済は豊かで多様であり、この
別の投資額のデータが出ているので、参考ま
ことは経済危機の条件下では重要である。
クラスノダル地方の経済が世界金融危機か
でに表5で紹介する。ただ、このデータはな
ら被っている打撃は、比較的軽微と言える。
表5 クラスノダル地方への主要投資国
ロシアの他の地域では、企業城下町が多く、
(フローベース、ルーブル建ての投資を除く、100万ドル)
2003
受入総額
2004
2005
2006
91.8 140.4
キプロス
17.3
25.1
7.8
英国
22.0
5.3
28.0
米国
40.0
6.1
8.0
フランス
スロベニア
企業が不振となると社会的緊張に直結する。
2008
249.6 236.6 304.8 568.6 559.8 743.2
カザフスタン
ルクセンブルク
2007
8.0
88.5
- 131.7
14.1
9.1
-
-
48.6
80.4
74.7
企業城下町の類は存在しない。しかも、当地
28.3
50.6 286.3
は自然・気象条件に恵まれているので、住民
73.6 141.0 108.6
66.0 129.2
46.6
-
30.9
66.9
58.4
世界的に食糧は高騰しているので、その点で
- 175.0
-
-
当地は恵まれている。ルーブルの購買力が低
下したので、ロシア人は今年の夏はあまり外
6.6
33.6
6.9
-
57.6
50.3
9.8
9.7
14.2
54.3
20.0
29.5
トルコ
-
-
-
0.7
0.8
67.5
17.5
4.8
8.4
9.1
1.0
10.7
94
また、クラスノダル地方の主要産業は農業で、
-
21.8
英領バージン諸島
は経済危機の状況でも自給自足が可能である。
72.3
ドイツ
オランダ
クラスノダル地方の場合には、経済が多様で、
国に行かず、国内で休暇を過ごすことが増え
ると予想され、これも我が地域に有利に働く。
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
ロシア南部クラスノダル地方の経済
クラスノダル地方は、2008年12月初頭に経
済危機対策プログラムをとりまとめており、
これはロシアの地域のなかで最も早い部類に
入る。雇用の維持、そのための生産の維持な
どを主な内容とする。
経済特区 連邦政府は、経済特区制度の一
環として、「観光・リクリエーション特区」と
タマニ半島で
産出される良質
のワイン
いうものを設けており、クラスノダル地方で
はアナパ市に同特区が設立された。すでにそ
の区画が区分けされ、どのような施設を建設
するかが決定されている。特区では、大幅な
ワインが生産され、約80%の全国シェアを占
税制優遇措置があり、とりわけ輸入関税が免
める。原料となる葡萄も地元で生産されてい
除されるので、外国から設備を導入するうえ
るので、葡萄栽培から始まって、ビンやラベ
で有利である。ただ、現在のところ、外国か
ルなどの関連生産を一箇所に集中させるワイ
ら当地の観光業への投資は、クラスノダル市
ン産業クラスターの形成は理に適っている。
とソチ市に集中しており、ホテル・チェーン
ただ、これらの生産は複雑なものではないの
などが進出している。
で、最も単純な産業クラスターではあるが。
なお、連邦レベルの特区とは別に、クラス
クラスノダル地方には、ソ連時代に設立され
ノダル地方独自で、4箇所の保養特区を整備
た葡萄・ワインの研究所があり、ロシアで最
しようとしている。
大の農業大学もある。当地には、葡萄に限ら
また、クラスノダル地方では、カジノ特区
の創設が進行中である。現在、カジノに関す
ず、すべての主要作物に関する教育・研究機
関がある。
るロシア連邦法が審議されており、2009年9
月1日から特別な地域を除いてカジノの運営
行政府による投資サポート
クラスノダル地
が禁止される。そして、カジノが特別に許可
方では、投資家が許認可等で様々な機関に出
される4つの特区が創設される予定であり、
向かなくても済むように、ワンストップウィ
具体的にはカリーニングラード、アルタイ、
ンドを設けている。投資家は、土地探しから
ウラジオストク、そしてクラスノダル地方の
許認可に至るまで、サービスを受けられる。
4箇所になる。我が地方のカジノ特区はロス
産業分野を問わず、あらゆる投資家が利用で
トフ州との境界地域に設けられ、
「アゾフ・シ
きる。窓口となるのは、地方行政府の投資・
ティ」という名称になる。やはり連邦政府の
プロジェクト支援局である(住所・連絡先は
拠出でインフラ整備を行い、投資家が有望案
下記のとおり)。
件に投資をすることになる。
産業クラスター
クラスノダル地方では、
「ワイン産業クラスター」の形成を計画して
いる。クラスノダル地方ではロシアで最良の
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
Department of Investments and Project Support of
Krasnodar Region
350014, Krasnodaru, ul. Krasnaya, 35.
+7 (861) 268-48-78
[email protected] http://www.dips.kubangov.ru
担当者:Natalia BESPALAYA
95
MINI REPORT
投資家に対しては、クラスノダル地方のレ
産を手がけている。当地で産出される質の高
ベルの優遇策がある。具体的には、資産税の
いグリーンピースやトウモロコシを原料とし
半減、土地利用料の優遇などである。国内・
て使用することをねらったプロジェクトであ
国外を問わず、すべての投資家が優遇を受け
り、製品はロシアや中東欧など広域の市場で
られる。
売られている。
地方行政府では、工業団地(複)を創設する
商業部門では、メトロが2店舗を開設する
決定を下している。その趣旨は、投資家が出
など、多くの進出がある。ただ、商業セクタ
来上がったインフラを利用できるという点に
ーの企業の場合には、当地に進出してくるに
ある。連邦レベルの工業生産特区はないが、
当たって、必ずしも我々行政の支援を仰ぐと
その代わりに地方のレベルで工業団地を設置
は限らない。メトロやオーケイ(サンクトペ
するということである。
テルブルグを本拠とするロシア資本のスーパ
ー)などの場合は、農地を商業地に転換する
外国企業の進出状況
クラスノダル地方に
うえで、我々が手助けをした。一方、バルト
進出して現地生産を行っている外国企業とし
センター、アシャン、Leroy Merlinなどの場合
ては、最も早かったのがドイツのクナウフで
は、商業施設の開発を担える地元企業を独自
ある。建設用パネル生産の合弁「クバンスキ
に起用して進出してきた形である。なお、イ
ー・ギプス・クナウフ」を設立し、その後も
ケアはクラスノダル市で候補地を探したが、
経営は順調で、現在では製品を輸出もしてい
市内には手頃な場所がなく、結局土地の安い
る。当地では高品質の石膏が露天掘りで採掘
アディゲ共和国に店を構えた。アディゲ共和
され、彼らはその資源を求めて進出してきた。
国はクラスノダル地方とは別の地域だが、ク
その次に進出を果たしたのがネスレで、
ラスノダル市から川を越えるとすぐにアディ
1998年にチマシェフスク市でアイスクリーム
ゲ共和国の領土となるので、客は基本的にク
の生産を開始、2001年には「ネスレ・クバン」
ラスノダル市の住民である。もっとも、普通
を設立してインスタントコーヒーの生産にも
アシャンやLeroy Merlinはイケアと一緒に店
着手し、現在ではインスタントコーヒー生産
舗を構えるのだが、彼らはやはりクラスノダ
のすべてのサイクルを備えている。ネスレは
ル市の方が重要だと考えて、クラスノダル市
ロシア数箇所に生産拠点を有しており、チマ
内に独自に出店した。
シェフスク市の工場はその一つということに
なる。
その他には、ドイツの農業機械メーカー「ク
ラース」がクラスノダル市に工場を開設して
おり、SKDからCKDに移行しようとしている
ところである。当然、彼らの関心は当地でコ
ンバインをはじめとする農機を販売すること
にある。
さらに、フランスのボンデュエル社は、ク
ラスノダル市の北の郊外にあるノヴォチタロ
フスカヤ村で工場を建設し、野菜の缶詰の生
拡張が進むノヴォロシースク港
96
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
ロシア南部クラスノダル地方の経済
クラスノダル地方の港湾・海運部門に外国
人投資家が投資をする動きは鈍い。港湾・海
のあたりの事情に通じた現地スタッフを確保
して、成功裏に活動しているようである。
運業界関係者が、競争相手の出現を望んでい
ないということもある。運輸部門はがっちり
おわりに
とコントロールされているので、外資ができ
以上、クラスノダル地方経済の概況を整理
ることと言えば、船舶を供給することや、ロ
するとともに、クラスノダル地方行政府の対
ジスティック・センターを創設する程度であ
外経済活動局で行ったインタビューの概要を
ろう。実際、ノヴォロシースクでは、西側の
お届けした。
大手企業がコンテナ積み替えのためのロジス
ィック・センターを設置した実例がある。
見てきたように、クラスノダル地方は興味
深い産業セクターをいくつも抱え、ロシアの
なかでは異彩を放つ存在である。そして、経
日本企業で、クラスノダル
済危機という逆風のなかでも、比較的良好な
地方で活発に活動しているところは、大手建
経済パフォーマンスを示している。本年9月
設機械メーカーくらいである。ソチでのオリ
17~20日には、第8回ソチ国際投資フォーラ
ンピック開催決定の前から、当地に拠点を設
ムが開催される(http://www.forumkuban.ru)。
けて営業活動を行っている。ロシア市場には、
日本も、ロシア南部のこの要衝に、もっと目
販売店がかなり在庫をもっていなければなら
を向けてもいいだろう。
影の薄い日本
ないといった特殊性があるのだが、同社はそ
ロシアNIS調査月報2009年9-10月号
(服部 倫卓)
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