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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方 (354kbyte)

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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方 (354kbyte)
第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
第 5 章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
1 事業の位置づけ
三次市は当時,急速にIT社会が進む中,情報通信過疎地域の解消,企業活動の促進,
難視聴の解消,老朽化する有線放送や防災無線に代わる伝達手段の確保等さまざまな問
題を解決するため,官民で協議を重ね,公設民営形態で事業を実施した。
県内でも先行した三次市のケーブルテレビ事業の果たしている役割は大きく,インターネッ
トサービスや,地上デジタル放送の再放送は市民や企業にとって欠かせないものとなってい
る。今後,音声告知放送の全域拡大によりインフラとしての重要性はさらに高まると考えられ
る。一方で,情報通信技術の進展やサービスの高度化といったケーブルテレビ事業の環境
変化は著しく,市場が成熟する中で民間事業者間の競争も激化している。このような状況に
ある中,改めて,サービスとしての必要性,サービス提供の持続性,公共と民間の役割分担,
合理的な事業運営等を総合的に考慮し,必要な設備を適切に維持管理(保全)するとの前
提のもとにケーブルテレビ事業を再構築する必要がある。
2 運営に関しての現状
「将来にわたっても市の持出し,今起債償還も含めてのものがでない仕組み」である三次
市ケーブルテレビ事業は,これから多額な設備更新費用が必要となることを考えると,事実
上,当初整備費のみ立替えれば永続的に利益を出して運営ができる事業ではなかったとい
うことになる。
設備更新費を試算した結果,現状での三次ケーブルビジョンの利益を全額投入しても事
業全体を賄うことは困難な状況にある。
3 個別サービスに関する今後の動向
(1) 放送
ケーブルテレビの普及や地上デジタル放送への移行を機に,中継局の停波や共聴アンテ
ナの撤去が進んでおり,戸別の受信状況はケーブルテレビ計画時より悪化している。通信環
境の進歩に対し,放送については,現時点で難視聴問題に対する有効な解決策が見えてお
らず,ケーブルテレビによる地上デジタル放送の同時再放送は継続する必要がある。
難視聴対策としての地上デジタル放送の再放送は必要であるが,完全民間サービスであ
る多チャンネル放送の運営については事業の継続の可否を含めサービスや運営の在り方を
検討する必要がある。
(2) インターネット
計画当時から比べると通信技術は大きく進歩し,三次市においてもモバイルブロードバンド
であるWiMAXやLTE等の次世代高速通信が次第に普及しつつある。現在は,市内全域を
カバーするまでには至っていないものの,既に旧町村部の支所周辺ではWiMAX・LTEのど
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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
ちらも利用可能となっている。実効速度や,利用可能地域の制約等を単純に比較した場合,
現状では固定通信の三次ケーブルビジョンに優位性があるが,第2章でも述べたモバイルブ
ロードバンドを含めたインターネット環境の多様な選択肢の中で,ケーブルテレビ加入者が次
第に奪われる可能性がある。
コスト競争力の観点から見ると,今後インフラ料金については,固定電話(一般電話,IP電
話),携帯電話,固定通信回線(光ファイバ,ADSL),移動通信サービス(WiMAX,Wi-f
i等)の組合せによるセット割引が進んでいくと考えられる。
現在のところ,三次ケーブルビジョンのインターネットサービスの料金は他社サービスと比
べ安価であるが,光回線と携帯電話,光回線とWiMAX,光回線とIP電話等のセット割引が
浸透すれば,三次ケーブルビジョンのインターネットサービス料金の優位性も危いものとなる。
三次ケーブルビジョンは,加入者の減少に備えた運営コストの削減が必要と考えられる。
以上の可能性やリスクを踏まえ,事業の継続の可否を含めサービスや運営の在り方を検
討する必用がある。
(3) 電話
IP電話サービスには2種類あり,電話番号が変わらず,NTTの固定電話と同等の機能
を持つプライマリサービスと,電話番号が050で始まり,110番や119番の緊急通報がで
きないセカンダリと呼ばれるサービスがある。三次ケーブルビジョンのIP電話は,セカンダリ
サービスで,ピオネットIP電話同士の通話は無料となっている。
インターネット,ケーブルテレビの加入者が減少する中,広島のふれあいチャンネルなど
は低価格でNTTと同等サービスが提供できるプライマリIP電話サービスの加入に力を入
れ,成果を上げている。ただし,IP電話プライマリサービスの開始には光ファイバ―網が冗
長化されていることが必要なため,冗長化されていない区間がある三次市の光ファイバー
網においては,設備の見直しが必要であり,容易に導入できない問題がある。
また,他社ではケーブルテレビの放送・通信・電話サービスに加え,携帯電話事業者と
提携した割引プランを展開している。サービスの複合化,連動化は価値や価格の競争力
を高める上で有効な戦略である。しかし,三次市の公設民営形態を踏まえれば,特定の
携帯電話事業者のみと提携関係を築くことは公平性の確保が難しいという問題もある。
インターネットサービスとともに,事業の継続の可否を含めサービスや運営の在り方を検
討する必用がある。
4 事業領域の見直し(公共と民間の役割分担)
これまでは,全てのサービスの費用負担を三次ケーブルビジョンが行ってきたが,公設民
営形態での民間が担うべきサービスと公共が担うべきサービスを整理する必要がある。
「表31 三次ケーブルビジョンのサービスと事業領域」のとおり,行政の施策的側面として,
難視聴対策,行政情報発信,防災行政情報伝達といった部分はあるが,将来のあり方とし
ては基本的には放送・通信事業は民間サービスとし,音声告知放送については行政サービ
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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
スと分類すべきと考える。
つまり,公設民営の形として,設備所有者と運営者(オペレーター)としての役割を明確に
するため,公共が音声告知放送以外のサービスを提供若しくは支援すべきでなく,音声告知
放送以外のサービスに係る運営は全て民間に任せ,公共は,民間事業者の参入障壁となっ
ていた伝送路やサブセンター等のインフラの整備や維持更新を基本的に担うのが適切と考
える。
しかしながら,当面の現実的な対応として地上デジタル放送・自主放送はそれぞれ難視
聴対策・行政情報発信の施策的側面があり,公共がサービス提供を支援すべき面も持ち合
わせていることに留意が必要である。
表31 三次ケーブルビジョンのサービスと事業領域
事業領域
サービス
⑴ 地上デジタル放送
施策的側面
難視聴対策
⑵ 多チャンネル放送
事業領域
本来
当面
民間
行政
民間
民間
放送事業
通信事業
⑶ 自主放送
行政情報発信
民間
行政
⑷ 音声告知放送
防災行政情報伝達
行政
行政
⑸ インターネット
情報通信過疎対策
民間
民間
民間
民間
⑹ IP 電話
5 IRU契約
これまでのIRU契約は,三次ケーブルビジョンだけで事業が継続できることを想定している。
設備更新費の概要が判明した現在,これから多額な設備更新費用が必要となることを考え
ると,これまでのIRU契約の考え方を踏襲し,設備更新費用の一般財源持出し分をIRU契約
に追加していくと,賃料残高が膨らむ一方で,三次ケーブルビジョンの支払いが困難となる。
公設民営の考え方である,整備は公共が行い,運営は民が行うという原則に基づき,施
設設置の費用は三次市が負担し,運営の費用は三次ケーブルビジョンが負担するという基
本的な整理を行う必要がある。
IRU賃料は必要であるが,ケーブルテレビ事業の安定的継続を第一義として,今後の運
営形態とともに三次市・三次ケーブルビジョンで協議すべきである。
6 運営者の役割
本来,可能であれば民間主導による事業参入・サービス提供を期待するところであるが,
三次市においては参入が見込めなかったため,公設民営での事業実施となった。民設民営
であれば,利潤の追求を第一義とするところであるが,三次市のケーブルテレビ事業におい
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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
ては,公共的サービスの安定提供が第一義と考えられる。三次市の財政投資余力は厳しく
なると考えられ,運営者としても,三次市の財政状況への理解を深め,主体性を発揮して経
営の効率化に可能な限りの努力を尽くし,行政に依存しない運営体制を構築する必要があ
る。
(1) 設備更新の見直し
設備更新は,老朽化した機器を新たに調達するだけでなく,今後の事業運営を左右する
重要なものである。三次市ケーブルテレビ事業の場合,民間主導による事業参入・サービス
の提供が期待できず公設民営で実施されていることから,事業の採算性を持って単純に事
業継続の可否を判断するべきものではないと考えられるが,設備更新を行う場合は,長期に
渡り維持管理費が必要となるのであるから,都度,事業の再チェックを行う必要がある。
更新機器の選定にあたっては,加入者(又は未加入者)のニーズ(通信速度要望,利用
料金,新たなサービスの展開),運営上の課題(設備費,機器性能,設備管理に係る人件
費),技術動向(ケーブルテレビ市場での新製品,4K等の今後の放送規格等)を総合的に
分析し,判断を行う必要がある。また,技術的には既存機器と更新機器の互換性,円滑な
設備切替手順,設備更新期間の停止による加入者への影響の検証,今後の加入者動向
やニーズを見据えた機器性能や容量の検証も行う必要がある。そして,要求される機器性
能とそれに見合う費用対効果について検証等がされているかも判断材料の一つとすべきで,
これには運営者である三次ケーブルビジョンの意見や判断が非常に重要となる。
運営者が,機器の定期的更新,より高機能な設備の導入を所有者である三次市に求め
ることは不合理なことではないが,設備更新費の低減は(負担割合に関わらず)所有者・運
営者双方にとっての重要な課題である。このため,三次ケーブルビジョンは運営者として運
営・経営の効率化は自らの課題であるとの認識のもと,時には耐用年数以上の設備利用を
行い,時には新技術を導入するため想定より早い設備更新の提案をも行う必要がある。例え
ば,(費用面・普及面では時期尚早な事例であるが。)現在三次市のケーブルテレビ事業で
利用しているG―PONは1G対応であるが,更新の際,より高速化を目指して10G-EPON
とするといった提案である。
このような合理的な提案は決して容易な事ではなく,利用者ニーズ,設備状況,市場価
格,技術動向把握等,総合的な判断が求められるが,その事業効果は非常に大きなものと
なり,民間運営者としての力を発揮する部分である。
(2) 放送機器の共用
ケーブルテレビ業界では経営統合の動きとともに,放送機器共用の流れがある。各ケーブ
ルテレビ局それぞれが自前で高価な機器を所有することは長期的な経営負担となり,常に
進化する技術動向への対応も各ケーブルテレビ局にとっては重荷となっている。このため機
器の共用による調達コストの引下げは大きなメリットがあり,共用者間で合意すればより高機
能な設備の調達等も可能となる。現実的には,共用先との接続,費用調整及び技術的調整
等が必要だが,自主放送や利用料金など,三次ケーブルビジョンの独立性も保てるため,経
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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
費の削減手法として検討すべき課題である。
(3) 料金及びサービスの見直し
難視聴対策の地上デジタル放送は市民にとって他に選択肢がないため料金の値上げが
困難と考えるが,民間サービスである多チャンネル放送やインターネットについてはサービス
内容及び料金の検証が必要である。
7 経営統合・事業譲渡
経営統合や事業譲渡により,三次市は設備更新費の負担を少なくできる可能性はあるが,
安定した運営・経営を目指すときにまずは,第3セクターである三次ケーブルビジョンの自己努
力により,経営の効率化を図ることが前提として重要である。
公設民営でスタートした経緯があるものの,会社は(設備更新費を除いて)年間1億3千万円
程度の利益を出しており,整備後の運営は順調に推移している。
今後の新規顧客獲得による売上高の向上は,外的要因もあり容易ではないが,前項の設備
更新の見直し,機器の共用による支出削減については実効性が高いと考えられる。現在,利
益のほとんどはIRU賃料に充てられているが,設備更新費の低減は会社の売上向上と同等の
効果をもたらす。
一方,インターネット利用料については,各社の価格競争が激化する中,今後必ずしも価格
的に優位とは言えなくなる可能性があるが,例えば,インターネット利用料を1,000円値上げ
し,仮に加入者減少がないものとすれば単純に6,000万円程度の利益が生じることとなる。た
だし,料金の引き上げは価格競争力の低下による加入者減少に直結する恐れがあることに留
意した慎重な検討と判断が必要である。
これらを複合的に実施すると,一部の設備更新費の負担を含めた三次ケーブルビジョンの自
立運営の可能性はあると考えられる。
ケーブルテレビ業界の今後の方向性の潮流としては,ケーブルテレビ業界内での経営統合
やアライアンス,ケーブルテレビ業界以外の電気通信事業者とのアライアンスであると考えられ,
経営統合や事業譲渡の検討も必要ではあるが,その場合は,三次ケーブルビジョンの社員の
雇用問題が必ず生じ,料金体系も(協議の余地はあるものの)新たな運営事業者により設定さ
れ,加入者への影響が生ずる。また,スケールメリットはあるものの経営統合や事業譲渡を行っ
た場合,サービスの継続性に関してそちらの経営リスクを負うということは認識しておく必要があ
る。
ついては,まず三次市と三次ケーブルビジョンが運営協議を実施すべきである。
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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
図17 ケーブルテレビ業界の課題解決に向けた取り組み(一般論)
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第5章 三次市におけるケーブルテレビ事業のあり方
図17 運営の検討フロー案
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