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2004年 9月25日 朝日新聞秋田版 あきた時評 「女人禁制」

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2004年 9月25日 朝日新聞秋田版 あきた時評 「女人禁制」
毒∈REヨ 新
第3種郵便物認可
闇 2004年(平成
「結界」巡らす人間社会
一白神岳におもしろい伝説がある。この
山に美しい姉妹が住んでいた。年ごろに
なって姉が竜飛の黒神に、妹が男鹿の赤
神に嫁ぐことになった。本当は姉の方も
姿の美しい赤神の山へ行きたかったのだ
が、妹の策略でかなわなかったため、2
人は仲たがいしてしまった。以来、白神
島へ女性2人で登るとよくないことがあ
る、という話である。
津軽半島から男鹿半島の日本海に沿っ
て黒神、白神、赤神という3色の神がつ
ながることは、男女の色嫁で結ばれてい
そうだ。しかし、山の世界では、神さま
なら男女の縁も琴用するが、人間の場合
は性別(性差)の問題が絡んで面倒なこ
とが多くなる。
先ごろ、雄和町の高尾山と大森町の保
呂羽山(はろわさん)に登る機会があっ
た。この二つの山は、かつてどちらも女
人結界(禁制区域)を設け、女人禁制、
つまり女性が登ることを厳しく禁じてい
たという。高尾山の山頂本殿に登る長い
石段の下で古い石碑を見つけた。「自是
不可登女人」(これより女人登るべから
ず)と読めるコケむした石は江戸時代の
ものであった。また保呂羽山では山頂直
下に下居堂(おりいどう)があって、女
人はここで参拝しなもナればならなかった
という。驚くことに、保呂羽山では1965
(昭和40)年になって初めて女性も山頂
まで登ることが許されたという。
霊場としての山や寺社では、苦から修
行上の妨げになるからと婦女子が結界に
入ることを厳しく禁じる戒律があった。
今では女人禁制どころか「女人全盛」で
隔世の感があるが、この制度が廃止され
たのは18ウ2(明治5)年の太政官布告に
よってでこあった。大阪府の太田房江知事
もご存じだろうが、婦女子の大相撲観戦
が許されたのも実はこの年であった。
性差別撤廃論が渦巻く現在、日本で今
も女人禁制を堅く守り続けている山が二
つある。奈良県の大峰山(山上ケ岳)と
岡山県の後山である。大峰山はこのほど
ユネスコの世界遺産に登録された「紀伊
山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」の
区域に含まれている。しかし女人禁制の
まま世界遺産に登録されたことに賛否両
論がある。今どき女人禁制などナンセン
スの骨1頁と声を大にする女性中心の市民
団体。一方、地元や信徒にすれば約1300
年も守ってきた霊場の伝統はどうなるの
かと一歩も譲らない。
はて、_と考えて、似たような論議は身
近にもあるような気がした。世界遺産登
録区域に立ち入りを禁止し、「結界」を
設けた白神山地とどこか似ていまいか。
白か黒か、はっきりさせたがるのが日本
人の良くない癖、柔軟な中間色の知恵が
ない。能代・山本の合併新市名「白神 ̄
市」問題も、男鹿の赤神と竜飛の黒神に
相談してみたらどうだろう。
竜飛の黒神が十和田の姫との恋路を男
鹿の赤神に邪魔され、ふ一つと大きなた
め息をついたら陸地が裂けて津軽海峡が
できたという。今度は白神をめぐって秋
田と青森の間に大きな溝ができなければ
いいのだが……。
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