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知的財産推進計画2008の見直しに対する意見

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知的財産推進計画2008の見直しに対する意見
2009.3.25
日本書籍出版協会
知的財産推進計画2008の見直しに対する意見
当協会は、知的財産推進計画 2008 の見直しにあたり、意見を申し上げます。2009 年の
計画策定に際しては、以下の1∼3の各項目が計画に盛り込まれ、4については慎重な審
議が行われますよう、お願い申し上げます。
1.デジタル時代における出版者の法的保護
放送と通信の融合等、デジタル化・ネットワーク化時代ではメディア間の相乗効果を
高めていくことがさらに重要になります。このようなメディアの多様化については、出
版業界も避けては通れない情勢の渦中にあります。
しかし、出版者は著作権法上、何ら固有の権利を持たず、また著作権法に規定された
出版権は、紙媒体による出版物にその範囲が限定されているため、出版物のデジタル化
に際しては、専ら著作者の持つ著作権のみが働くことになります。
出版者としては、自らの発意と責任によって発行し販売のリスクを負っている出版物
の二次的利用の高まりの中で、自らの権利主張ができない状況にあり、これが出版物の
デジタル化事業を展開する上での懸念材料となり、ビジネス展開が遅れている一因にも
なっています。
活字コンテンツの保護とそのデジタル化を促進するという観点から、著作隣接権とし
ての「出版者の権利」の創設に関する項目が再び知的財産推進計画の中に盛り込まれ、
議論が改めて行われることを要望いたします。
2.学術専門書出版への支援
学術専門書の出版振興については、市場では多くの売り上げは見込めないものの、日
本学術振興会の科学研究費補助金(科研費)によって非常に重要性の高い学術専門書の
出版が可能になっています。しかし、研究成果公開促進費は 2 年にわたって大幅に削減
されました。そのうち、学術図書出版社が主に関わる「学術図書」助成の予算は一昨年
40%削減され、昨年さらに 10%カットされて、2 年前と比べてほぼ半減しています。金
額にして平成 18 年度の 7 億円弱から平成 20 年度の 3.7 億円に、採択率は 4 割台から 2
割台になりました。我が国の学術研究の水準を維持していくためには、学術研究成果が
確実に公表されていくことが必要で、それが日本の基礎的な国力の増進につながるとい
えます。国内での充実なくして海外への展開は困難です。
知的財産推進計画 2009 では、学術専門書出版の支援・増強についての項目を加えてい
ただくようお願いいたします。
3.海外展開を目指すコンテンツ事業者の支援
世界各地では毎年60以上のブックフェアが開催されており、わが国の出版社も、主要な
ものとしてはフランクフルト・ブックフェア、ボローニャ児童図書展、北京国際図書展等
に出展して、海外出版社による翻訳出版の実現に努力しております。しかし、昨今の経済
情勢、国内出版物の売上げの減少等により、各出版社においてはブックフェアへの出展回
数を絞ることを余儀なくされる場合も出てきております。
推進計画2008では、海外におけるコンテンツの販路拡大への支援や日本文化についての
国際的な理解を増進するため、映画・放送番組等コンテンツの海外見本市への出展や海外
映画祭への出品への支援や、アニメ・教育番組など我が国コンテンツの海外発信への支援
が掲げられておりますが、これらに加え、文芸作品をはじめとする出版物の海外展開を行
う上での支援についても言及していただくことをお願いします。
4.日本版フェアユース導入の提言に対して
権利制限の一般条項(いわゆる日本版フェアユース)については、昨年秋のデジタル・
ネット時代における知財制度専門調査会報告書において、「個別の制限規定に加えて、権
利者の利益を不当に侵害しない範囲で公正な利用を包括的に許容しうる権利制限の一般規
定(日本版フェアユース規定)を導入することが適当である」との提言がなされておりま
す。この問題に対しては、昨年11月に当協会として同専門調査会に対し、この制度の導入
は、日本の著作権法制における権利制限規定の在り方そのものにも影響を及ぼす可能性の
ある大きな問題であり、「公正な利用」という指標がともすれば利用の促進という方向に
のみ偏して解釈されてしまうことを危惧する旨を述べ、特に慎重な議論が尽くされること
を期待すると申し上げています。
2004年秋にアメリカで、Google による著作権侵害に対しアメリカ作家組合、アメリカ出
版協会会員社により提起された訴訟に係り、昨年10月当事者が和解に同意したが、その効
力がアメリカ国内の図書館に所蔵されている書籍のアメリカ以外の権利者にも及ぼされる
ことになり、現在関係者はその対応に苦慮しているところです。この訴訟も図書館の蔵書
を権利者の許諾無しにスキャンして自己のデータベースに搭載することがフェアユースに
あたるかどうかが争われたものです。
和解ではその判断は明らかにされておりませんし、出版物の本文そのものの利用につい
ては権利者の許諾を得て行うことが原則であるということは確認されましたが、一方で、
今後も一定の条件下では、出版物の版面が著作権者および出版権者の許諾無しにスキャン
され、巨大なデータベースに蓄積され、それが限定された範囲と方法によるとはいえ、無
償での閲覧等の利用が可能になるという事態が生じようとしています。
日本版フェアユースを導入することで、わが国においても、現在の制限規定の範囲を大
きく超えた利用が権利者の許諾無しに許されるようになるとすれば、これまで築き上げて
きた出版文化の担い手である著者および出版社にとって、極めて深刻な影響を与えること
になると危惧するものであります。重ねて、慎重な審議が尽くされることを期待申し上げ
ます。
以 上
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