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潰瘍性大腸炎治療の実際

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潰瘍性大腸炎治療の実際
LCAP学術情報
第102回 日本消化器病学会総会 ランチョンセミナー7
平成28年4月21日
(木)
潰瘍性大腸炎治療の実際
司会
演者
兵庫医科大学
炎症性腸疾患学講座 内科部門
中村 志郎 先生
兵庫医科大学
炎症性腸疾患学講座 内科部門
横山 陽子 先生
演者
北里大学医学部
消化器内科学
横山 薫 先生
はじめに
近年、潰瘍性大腸炎( UC )の難治例に対しては、タクロリムスや生物学的製剤が相次いで保険適用
となり、効果的な治療環境が整ってきました。一方、白血球除去療法( LCAP )は保険適用から15 年が
経過し、有効性と安全性が両立する優れた治療法として広く普及しています。いわゆるintensive療法など、
その有用性を向上させるための工夫やノウハウも蓄積されてきました。本日は、UC治療の最前線で実際に
数 多くの 患 者 さ ん に L C A P を 施 行して い る 2 人 の ス ペ シャリストを お 招 きし、今 後 の U C 治 療 に
おいて、どのように LCAP を活用していけば良いのか、また、どのように運用すれば、さらに効果的・
効率的な治療が可能になるのか、お話を伺いたいと思います。
本講演記録は2016年4月に東京で開催された第102回日本消化器病学会総会ランチョンセミナー7での講演内容をもとに作成したものです。
新たな時代を迎えた潰瘍性大腸炎治療における白血球
除去療法
(LCAP)
の期待と展望 兵庫医科大学
炎症性腸疾患学講座 内科部門 横山 陽子 先生
についての工夫です。LCAPの血液処理量は、従来、2∼3Lとされて
保険適用から15年、工夫により向上してきた
白血球除去療法の利便性
きましたが、福永先生らは、血液処理量を3Lで固定した群と体重1kg当たり
30mL(体重60kgの方なら1.8L)で調整した群とで有効性に差がない
潰瘍性大腸炎
(UC)
に対する白血球除去療法
(LCAP)
は、澤田康史
こと、
さらに、
LCAPの弱点である差圧上昇の発生率を大幅に低下できる
先生が米国留学中にヒントを得たことをきっかけに、当科の下山孝教授
ことを報告しました
(図2)
。2014年に報告したLCAPの大規模な市販後
(当時)
らのグループが中心となって開発した治療法です
(図1)
。2001年
調査の結果でも、血液処理量と有効性の間に統計学的な相関を認め
8月に保険適用となって以降、難治性UC患者の治療法として広く普及し、
ない結果が得られています。
その有効性と安全性や作用機序に関する様々なデータが報告されて
一方、当科の長瀬先生らは、過去に血球成分除去療法
(CAP)
を受けた
います。また、保険適用以後15年間で、その有効性を保ったまま利便性を
患者さんを対象にアンケート調査を行い、患者さんの意思決定に重要な
向上させるような工夫も行われてきました。
因子を検討しています。その結果、患者さんがCAPの治療に伴う負担と
その一つが、当科の福永健先生らが報告したLCAPの血液処理量
して考えられる因子として、通院の負担、穿刺時の痛み、そして治療時間
図1
が抽出されましたが、特に治療時間が長いことが患者さんの負担となって
LCAP開発の流れ
いることが分かりました
(図3)
。通院の負担は患者さんのライフスタイルに
1989年
澤田康史先生が、米国留学中に白血球除去
1993年
下山らは、
日本で初めてステロイド抵抗性
合わせて夜間や休日でも可能な透析施設で、また自宅や会社から通院の
療法のヒントを得る。
UCに対してLCAPを施行し、その臨床的効果
について厚生労働省の研究班で報告。
1996年
中等症以上のUCに対してLCAPの治験が
2001年8月
UCに対して保険適用。
便利なクリニックで治療を受けていただくことで解消されつつあります。
穿刺時の痛みはリドカインテープで対応できます。そして、特に患者さんが
下山 孝名誉教授
負担を感じていた治療時間については、血液処理量を体重1kg当たり30mL
に調節することで患者さんの拘束時間も短縮させることができます。
多施設で始まる。
これらの結果を踏まえると、血液処理量を適切に調節することで、
LCAPの有効性を保ったまま差圧上昇を大幅に低減でき、さらに患者
澤田 康史先生
図2
さんの利便性をも向上できると考えています
(図4)
。
血液処理量30mL/kg
(BWA-LCAP)の有効性と安全性
BWA-LCAP の有効性は従来処理量群と同等
EIの比較
UCDAIの比較
BWALCAP
9.6±1.6
3.7±2.7
従来法
LCAP
8.4±1.9
2.1±1.9
0
BWALCAP
2
4
6
8
従来法
LCAP
10
12
9.6±0.5
4.5±0.5
0
UCDAI(points)
10.6±0.4
6.6±1.3
2
4
6
8
10
12
EI(points)
■ LCAP開始前 ■ LCAP10回終了後 / BWA-LCAP群と従来法LCAP群のLCAP10回終了後のUCDAI、
EI値に有意差なし / *:p<0.05 検定法:Wilcoxonの符号付順位検定 平均値±標準誤差
BWA-LCAP 群のフィルター内圧上昇発生率は従来法より低い結果に
フィルター内圧上昇発生率(70mmHg以上)
2.1%
BWA-LCAP (3/140)
16.4%
(23/140)
従来法LCAP
0
5
10
15
p=0.002
20(%)
検定法:Fisherの正確確率検定
Fukunaga K, et al.Journal of Clinical Apheresis(2011)26, 326-331.
2
第102回 日本消化器病学会総会 ランチョンセミナー7「潰瘍性大腸炎治療の実際」
図3
図4
CAP再治療の希望に影響をおよぼす因子
BWA-LCAPの有用性
ロジスティック回帰分析の結果
従属変数:再治療 実施したい、実施したくない
説明変数
LCAP における悩み が 解消
偏回帰係数
尤度比χ2値
p-value
Odds ratio
95%CI
1.34
0.80
20.70
3.87
<0.001
0.051
3.81
2.23
1.90-7.66
1.00-4.97
目標処理量
-1.42
-0.80
-0.96
12.30
5.84
4.47
<0.001
0.016
0.035
0.24
0.45
0.38
0.10-0.59
0.23-0.87
0.15-0.97
圧上昇発生率
満足度
効果
安全性
治療の負担
治療時間
痛み
通院の負担
Nagase K et al., Therapeutic Apheresis and Dialysis(2013)17, 490-497.
down
患者の治療(拘束)
時間
CAP再治療の希望に重要な因子は有効性と治療時間
患者にとっての
利便性の向上
down
down
サブ解析してみました。この市販後調査にエントリーされた全847例中、
増加する高齢者の潰瘍性大腸炎患者
60歳以上の占める割合は14.9%でした。最高齢の患者さんは88歳で、
これはLCAPが安全性の高い治療であることが広く認識されている
我が国のUC患者さんの特徴として、高齢者が多いことが挙げられ
証だと思います。有効性については、60歳以上と60歳未満で臨床的
ます。図5は当科のUCとクローン病
(CD)
患者さんの年齢分布です。
寛解率、粘膜治癒率に有意差を認めませんでした
(図6)
。また安全性
CDは主に20∼40歳代に患者さんが多く認められますが、UCは60歳
の比較でも、副作用の発現率に両群間で有意な差を認めず
(図 7 )
、
以上にもピークがあることが分かります。安全性がより重要となる
かつ、60歳以上で重篤な副作用や死亡に至った症例はありませんでした。
高齢者の治療として、LCAPの需要は高まっていると考えられます。
この結果から、LCAPは高齢者に対しても有効で安全な治療法であること
そこで高齢者に着目して、前述の大規模な市販後調査の結果を
を再確認することができました。
図5
当科におけるUCとCDの年齢分布
n数
35
30
CD患者20代後半~40代前半
CD UC
25
20
60歳以上のUC患者:34.4%
15
10
5
0
10~14
図6
15~19
25~29
30~34
35~39
40~44
45~49
50~54
高齢者(60歳以上)におけるLCAPの有効性
(%)
<60歳 ≧60歳 (%)
100
80
20~24
68.5% 70.9%
(73/103)
(356/520)
76.7%
73.3%(79/103)
(381/520)
60
40
40
20
20
臨床的寛解
(CAI≦4)
臨床的改善
(△CAI50%以上低下)
0
65~69
70~74
75~79
80~84
85~89
90~ 年齢(歳)
高齢者(60歳以上)におけるLCAPの安全性
(%)
20
63.5%
(115/181)58.8%
(30/51)
10.7%
10
0
60~64
n.s.
80
60
図7
<60歳 ≧60歳
100
55~59
(77/721)
7.9%
(10/126)
20.4% 17.6%
(37/181)(9/51)
粘膜治癒
(EI=0)
0
粘膜治癒
(EI≦1)
<60歳
≧60歳
60歳以上の主な副作用は、
血圧低下3例3件(軽微1件、
中等度2件)
、
嘔吐2例3件(軽微2件、
中等度1件)、
血小板数減少2例4件(軽微4件)、アナフィラキシー様ショック1例2件(中等度2件)で、
60歳以上と60歳未満で、臨床的寛解率、
粘膜治癒率に有意な差は認められなかった 。
副作用の種類に特徴的なものはみられず、また、重篤な事象および死亡症例はなかった。
検定法:Fisherの正確確率検定
検定法:Fisherの正確確率検定
3
ことから、生物学的製剤の効果減弱例に対する治療としても期待できる
生物学的製剤の効果減弱例に対する
LCAPの効果
と考えています。当科ではIFXの効果減弱例4例に対してLCAPを追加
した経験がありますが、4例とも臨床症状の改善を認めています
(図9)
。
次に、LCAP の今後の課題と期待、展望について考えてみました。
そのうちの1例の臨床経過をお示しします
(図10)。症例は40歳代の男性、
近年、生物学的製剤が UC 治療にも使用可能となり、難治例の治療の
ステロイド依存、かつアザチオプリン不耐例です。発症時、30 mg/日の
選択肢が広がりました。生物学的製剤の有効性は高く有用な治療ですが、
ステロイド内服で治療を開始し、臨床的寛解に至りましたが、ステロイド
長期的に使用することで、残念ながら効果減弱を来す患者さんを認めます。
離脱後、約 1ヶ月で再燃しました。30 mg/ 日のステロイド内服を再開
当科の成績では、インフリキシマブ( IFX )の投与開始 12 週後の寛解例
しましたが、15 mg/ 日の時点で再燃したため、IFX を導入しました。
63 例のうち、平均経過観察期間 19 . 0±14 . 0ヶ月中、寛解を維持できて
その後、1年間、寛解を維持できましたが、残念ながら効果減弱を認めた
いたのは31 例( 49 . 2 % )、効果減弱を認めたのは25 例( 39 . 7 % )
となって
ため、ステロイド注腸の局所療法を併用しながらLCAPを追加しました。
います(図 8 )。このような生物学的製剤の効果減弱例に対して、今後、
すると臨床的寛解に向かい、粘膜治癒も得られました。この患者さんは
どのように治療を行うかが、UC治療の新たな課題となっています。
ステロイド離脱にも成功し、現在、
この後お話しするCAPTAIN studyに
LCAPは体外循環により白血球を除去するというユニークな作用機序
参加し寛解を維持しています。
を有していること、抗凝固剤以外に薬剤を用いない安全な治療である
図8
図9
当科でのUCに対するIFX投与 長期成績
IFX投与中の再燃に対するLCAP施行症例
CAI(点)
14
12 週時寛解 63 例
平均経過観察期間 19.0±14.0ヶ月
12
1
10
2
8
6
二次無効
寛解維持
25例
副作用中止
31例
39.7%
2
7例
49.2%
3
4
4
0
11.1%
1, 2クール終了後
LCAP導入前
1 2
● 2症例はIFX併用でLCAPを施行( )
3 4
● 2症例はIFX中止しLCAPを施行( )
上小鶴孝二ら 日本アフェレシス学会 2015年
宮嵜孝子ら 日本内視鏡学会総会 2015年
図10
いずれも臨床症状の
改善を認めた。
臨床経過:40歳代 男性 左側大腸炎型UC ステロイド依存 罹病期間3年 IFX効果減弱、
AZA不耐、6MP無効
H26年IFX導入
再燃
PSL 30mg
再燃
…
(H26年11月)
寛解
臨床的寛解
発症
H27年4月
IFX中止
H27年6月
LCAP開始
PSL 30mg 15mg
寛解維持
ステロイド
離脱
ステロイド注腸
AZA ▶ 6MP
GMA
5ASA 2400mg
LCAP
CAPTAIN study
H27年4月
IFX濃度<0.10μg/ml
ATI(-)
月
年8
H23
2月
年1
H23
月
年4
H24
月
年8
H24
2月
年1
H24
月
年4
H25
月
年8
H25
2月
年1
H25
月
年4
H26
月
年8
H26
2月
年1
H26
月
年4
H27
月
年6
H27
月
年8
H27
0月
年1
H27
2月
年1
H27
月
年2
H28
5ASA: 5aminosalicylates PSL:prednisolone
4
第102回 日本消化器病学会総会 ランチョンセミナー7「潰瘍性大腸炎治療の実際」
多施設共同臨床研究CAPTAIN studyが実施されています
(図11)
。
寛解維持療法への期待:CAPTAIN study
CAPTAIN studyの基本的なプロトコールですが、CAPで寛解導入
に成功した症例を対象に、1 年間にわたり月2 回の CAPを維持療法
現在、LCAPを含むCAPはUCの寛解維持療法としては保険適用
として行い
(CAP群)
、通常治療群と比較して1年間の寛解維持率の差
されていません。
しかし、寛解導入療法として効果が得られた患者
を検討します。選択基準はステロイド依存例や抵抗例が対象ですが、
さんは維持療法でも効果が得られる可能性が高いことから、現在、
他にも免疫調節薬が無効もしくは不耐の症例も対象とされています。
CAP の寛解維持療法としての有効性と安全性を検証するための
現在、全国で100例を超える症例がエントリーされていますが、本研究
図11
の結果から、CAPが寛解維持療法としても臨床で使用可能となることを
CAPTAIN study 試験デザイン
期待しています
(図12)
。
多施設共同によるオープン形式の無作為割付比較試験
4
週以内
CAPによる
寛解導入
図12
CAP 上乗せ群
Take on messages
有効性を維持したまま、
利便性が向上
無 作 為に振り分 け
月 2 回の
維持治療
体重で調節した血液処理量
変わらぬ有効性・治療時間の短縮・安全性の向上
高齢者
(≧60歳)
に対する有効性と安全性
対照群
今後の課題と展望
通常の薬物治療
生物学的製剤 効果減弱例に対する有効性
ステロイド依存+IM無効や不耐症例に対するCAPTAIN studyの有効性
今、潰瘍性大腸炎治療に求められること、白血球除去療法
(LCAP)が応えられること
北里大学医学部 消化器内科学 横山 薫 先生
させ寛解導入すること、
かつ長期にわたり寛解維持できることが重要
潰瘍性大腸炎の治療に求められること
:有効性、安全性、利便性
です。また、できるだけ早くステロイドを離脱することも大切な観点
です。次に安全性です。UCは小児から高齢者まで幅広い年齢層の
本邦における潰瘍性大腸炎
( UC )
の患者数は年々増加しており、
患者さんがおり、そのような患者さんにも安全に使用できることが
最新のデータでは、特定疾患の受給者証を持つ患者さんが18万人
大切です。特に高齢者の場合、併存疾患に対する治療薬との薬物相互
を超えました。特に最近は、高齢化社会を反映し、60歳以上の高齢の
作用にも注意を要します。もう一つは利便性です。UC患者さんには
患者さんが急増しています。
就労や就学をしながら療養生活を送っている方も多いため、来院する
今、UCの治療に求められることを考えてみました
(図1)
。最も大切
回数が少なく治療が短時間で済むこと、治療の目安としてクリニカル
なのは、
やはり治療効果が高いことです。症状をできるだけ早く改善
図1
パスが明確であることも重要なポイントです。
UC治療に求められていること
有効性
安全性
利便性
・ 早期寛解導入
・ 副作用が少ない
・ クリニカルパスが明確
・ 寛解維持期間が長い
・ 高齢者・小児にも安心
・ 通院回数が少ない
・ 維持療法まで同一治療
・ 併存疾患を悪化させない
・ 短時間で治療が終わる
・ PSLフリー
・ 服薬のアドヒアランス
がよい
・ PSL減量・離脱
5
白血球除去療法
(LCAP)
は有効性と安全性に優れた治療法です。
図3
最近報告された大規模な市販後調査の結果で、改めてその有効性
副作用
副作用発現頻度(0.5%以上)
と安全性が確認されています。特に、週 2 回以上の LCAP を行う
副作用名
頭痛
intensive LCAPでは平均約 2 週間で寛解が得られること(図 2 )、
悪心
また、副作用の発現率は10.3%で、その種類も体外循環療法に一般的
発熱
にみられる副作用が多かったと報告されています
(図 3 )
。LCAPは
血小板数減少
薬物療法と比べると利便性の部分に課題は残りますが、UC 治療に
鼻閉
返血時の返血部位症状
2.2%(19)
1.4%(12)
1.3%(11)
0.8%( 7)
0.7%( 6)
0.7%( 6)
副作用名
発現率(症例数)
0.7%(
0.6%(
発疹
0.6%(
血圧低下
0.6%(
腹痛
0.5%(
アナフィラキシー様ショック 0.5%
(
呼吸困難
悪寒
6)
5)
5)
5)
4)
4)
副作用発現率は10.3%(87/847例)で、その種類の多くは、体外循環療法に一般的に
認められる副作用でした。 Y. Yokoyama, K. Matsuoka, T. Kobayashi et al., Journal of Crohn’s and Colitis(2014)8 , 981-991.
求められる有効性と安全性を兼ね備えた治療法であると考えています。
図2
発現率(症例数)
LCAPの早期寛解導入
Intensive治療スケジュールの一例
3週
4週
LCAP
LCAP
LCAP
LCAP
5週
6週
7週
8週
100
累積寛解導入率
LCAP
2週
LCAP
LCAP
LCAP
LCAP
LCAP
1週
(%)
p<0.001(Log-rank test)
施行頻度
臨床的寛解
までの日数
(平均±標準偏差)
Weekly群
(n=63)
27.6±14.6日
80
Intensive群
(n=239)
60
40
Weekly群
(n=101)
20
0
0
10
20
30
40
寛解までの日数
Weekly群
Intensive群
50
60
検定結果
(Wilcoxonの
順位和検定)
p<0.001
(日)
70
Intensive群
(n=158)
15.4± 8.6日
847例による使用成績調査の結果によると、intensive LCAP群の寛解までの平均日数は約2週間でした。
Y. Yokoyama, K. Matsuoka, T. Kobayashi et al., Journal of Crohn’s and Colitis(2014)8 , 981-991.
外来での寛解導入療法を開始しました。Partial Mayo スコア8点、
UC治療におけるLCAPの位置づけ
Seo indexは191 点の中等症です。ステロイド30 mg 内服に加え
週 2 回の LCAP 治療を開始したところ、治療開始 11 日後( LCAP
現在の LCAP の UC 治療における位置づけですが
(図 4 )
、一つは
2 回終了時)に臨床的寛解に至りました。さらに、本症例は 5 -ASA
5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤だけでは効果不十分な患者さん
製剤の内服だけでは粘膜治癒を得られなかった経緯をふまえて、
の難治化を避けるために、
ステロイドを併用せずにLCAPを行う方法
LCAP 施行中からチオプリン製剤の併用を始めました。チオプリン
があります。また、難治例に対しては様々な薬物療法がありますが、
製剤服用時は、副作用のモニタリングが必要ですが、LCAPとの併用
まずは安全性に優れたLCAPを検討しています。LCAPは5-ASAの
なのでこまめに血液検査値を確認することも容易でした。
次に行なう治療と考えています。
図4
当院での症例を紹介します。罹病期間約 1 年の 20 歳の男性、
全大腸炎型で入院時の partial Mayo スコア8 点、Seo index は
186 点、中等症でしたが腹痛の症状が強かったため入院治療と
しました
(図5)
。入院後、5-ASA製剤4,000mg内服に加え、
ステロイド
LCAPの位置づけ
非難治例
難治例
LCAP
LCAP
難治例に
させないために
フリーで週 2 回の LCAP 治療を開始したところ、7 日後( LCAP 2 回
終了時)
には臨床的寛解に至り退院となりました。排便回数の減少と
ともに、5-ASA注腸の併用も可能となり、ステロイドを使用せず外来
PSL 抵抗例
PSL 依存例への
総投与量を
増やさない!
易感染性を防ぐ!
での治療が可能となっています。
もう一例は29歳の男性、他院にてUC 診断時にステロイド
40mg
インフリキシマブ
アダリムマブ
と血球成分除去療法で入院加療し、
その後5-ASA製剤の内服を継続
していましたが、粘膜治癒には至らなかった症例です
(図 6)
。転居に
タクロリムス
シクロスポリン
LCAPはUC難治例に躊躇せず導入してよい治療法
伴い当院へ転院し、
しばらく症状は落ち着いていましたが、再燃し
6
第102回 日本消化器病学会総会 ランチョンセミナー7「潰瘍性大腸炎治療の実際」
図5
図6
症例1: 20歳 男性 全大腸炎型 中等症
症例2: 29歳 男性 全大腸炎型 中等症
PSL30mg + LCAP + AZA
PSLフリー + LCAP
20XX年
10/5
入院
20XX年
1/16
22
26
29
2/2
6
9
13
16
20 23
27
3/1
19
11/2
16
30 12/8 14
PSL内服(mg) 30
25
20
25
17.5 15
AZA 25mg
5-ASA注腸
2 /8
24
12.5
10
50mg
LCAP
LCAP
0
0
0
1
0
0
0
0
0
113
1
0
191
Seo値
9 Partial Mayo
9 Partial Mayo
6
6
寛解までの日数:LCAP開始7日
(LCAP2回後)
3
3
0
0
2
便性状:有形
0
97
1
0
0
103
101
0
血便・腹痛
1
2
3
■ 血便 ■ 腹痛
ー 便回数
2
便回数
便性状:有形
12
10
8
6
4
2
0 0
3
血便・腹痛
便回数
■ 血便 ■ 腹痛
ー 便回数
Seo値 186
1/12
5-ASA 3600mg
5-ASA 4000mg
12
10
2 2
8
6
4
2
0
28
0
89
寛解までの日数:LCAP開始11日
(LCAP2回後)
また、患者さんにLCAPのことを説明する際の工夫ですが
(図8)
、
LCAPを施行する上での当院の工夫
安全性が高いことを強調します。分かりやすいように
「自分の血液を
洗うだけの治療です」
「 抗凝固剤以外の薬剤は使いません」
と説明
当院でLCAPを施行する際の工夫について紹介いたします
(図7)
。
しています。また、LCAPを開始した後でも、他の治療に移行したり
まず、穿刺の痛みに対してはリドカインテープでその緩和を図って
追加することも可能であることを伝えます。外来で施行可能であり、
います。治療中の脱血不良や血管確保が困難な症例では、血流量を
治療回数が 10 回までと決まっていることを伝え、治療のゴールを
30mL/分に下げたり、施行前に輸液を行うことで対処します。以前は
イメージしていただくようにしています。
カテーテル留置で施行することもありましたが、UC は血栓症を
図8
起こすリスクが高いこともあり、現在は末梢血管からルートを確保
LCAP患者説明のコツ
しています。
図7
有効性・安全性
LCAP施行のポイント
痛さへの対処
・ 貼付用局所麻酔剤
(ペンレスⓇ等)
を患者に
事前に渡し、
30分前位
に貼ってもらう
・ LCAPは効果も高く、薬剤に比べ副作用が少ない、
自分の血液を
洗うだけの治療です。
抗凝固剤
・ LCAPは薬剤のように血中にとどまるものがありません。
・ LCAPの副作用は頭痛や悪心などが主です。副作用はほぼ治療
・ 全例ヘパリンを使用
NMアレルギー回避1)2)
終了後に消失します。
・ 穿刺箇所に貼付用麻酔剤を使うので痛みは緩和できます。
治療スケジュール
脱血不良/ルート確保困難例
血栓症・感染症のリスク低減
・ 30mL/分で脱血を行う
・ 来院後、生食等補液
(約500mL)
し、
トイレ後
LCAP開始
・ IBDが血栓症合併のリスク
であることを認識する
・ 血液浄化に用いる
ダブルルーメン
カテーテル不使用
・ 通院治療が可能です。
・
・
1回の治療は1時間程度です。
10回で治療が終わります=治療のゴール期間が明確
・ 症状に合わせて治療間隔が調整できます。
例)
症状がつらいときは
週2回の治療
症状が改善すれば週1回の治療
1)Sawada K, et al. Therapeutic Apheresis and Dialysis(2016)20, 197-204.
2)松本ら 日本アフェレシス学会雑誌(2013)32, 204-207.
NM: Nafamostat Mesilate
7
治療に対する反応は良好で、治療開始から14日後
(LCAP4回終了時)
本邦で開発されたLCAPを使いこなす
に臨床的寛解に至り、IFX
2 回目投与後に退院できました。その後、
3回目投与までの間に残りのLCAPを行って、以後、IFXで寛解を維持
LCAPを、より一歩進んで使いこなす方法を考えてみました(図9)。
しています。
まず中等症であれば、安全性の高い LCAP はできるだけ早めに
現在、UC 治療には様々な薬物療法が使用可能となっています。
導入した方が良いですし、寛解維持まで見据えた場合、症例2のように
さらに、複数の薬剤の治験も進行中で、今後も治療の選択肢は増えて
LCAP 施行時からチオプリン製剤の併用を始めることも有効と
いくでしょう。新しい薬剤が使用可能となると、新薬の方に目が向きがち
考えます。また重症の場合には、生物学的製剤との併用も可能です。
になりますが、
本邦には、
有効性と安全性に優れたLCAPがあります。
生物学的製剤を投与する際には、感染症の有無の確認が必要ですが、
既存治療の効果が不十分で、治療のステップアップを考える場合、
LCAPはその結果を待たず、生物学的製剤に先行して治療を開始する
「まず LCAP を行ってみる」
という選択肢があることを思い出して
ことも可能です。また、最近増えてきている生物学的製剤の効果減弱例
に併用することも一つの使い方でしょう。
当院での生物学的製剤との併用例を1 例紹介します
(図 10 )。46 歳
いただければと思います。
図10
症例3: 46歳 男性 全大腸炎型 重症
の男性、全大腸炎型、partial Mayo スコア9点、Seo indexは257点の
IFX + LCAP 同時スタート
重症で、内視鏡所見でも深掘れ潰瘍が散見されました。本来、ステロイド
大量静注療法の適用ですが、ご本人が以前、ステロイドの副作用に
苦しんだ経験があり、ステロイドの使用を拒否されました。そこで、
インフリキシマブ( IFX )
とLCAP の併用で治療を開始しました。
入院
20XX年
3/20
外来施行
低残渣食
26 30 4/2
9
17
24
5/1
5/8 11
5-ASA 1000mg 4000
IFX
LCAP
図9
LCAPを使いこなす
・ 早めにCAPを導入する ・ ステロイド投与前の導入を検討
・ AZA/6MP導入期に併用
重症の場合
・ 生物学的製剤投与前の感染症有無等チェックする期間、
5-ASAプラスαの治療として
⇒ 効果があればLCAPのみ
⇒ 無効であれば生物学的製剤ON
・ IFX/ADA導入期に併用 ・ IFX/ADA効果減弱時に併用
重症度に
かかわらず
Seo値
1
Partial Mayo
3
2
1
0
0
0
0
0
257 209167 166
9
6
■ 血便 ■ 腹痛
ー 便回数
0
137
血便・腹痛
中等症の場合
便回数
活動期UCに対しては、
安全性も高く躊躇せずにLCAPを導入
3 3
12
10
2
8
6
4 1 1 1
2
0
0
119
寛解までの日数:LCAP開始14日
(LCAP4回後)
3
・ 高齢者や併存疾患例に併用
0
お わ りに
本日は、東西の UC治療の最前線で活躍されているスペシャリストの先生お二人から、LCAPのより良い使い方に
ついてお話を伺うことができました。現在、UCに対してはベドリズマブやAJM 300 などの新しい薬剤が開発され、
新たな治療手段として期待されています。一方、LCAPは白血球を直接除去し、悪影響を及ぼすような免疫担当細胞を
病変局所に浸潤させないことで効果を発揮する治療法です。新薬の作用機序と対比することで、LCAPの作用機序の
プロセスについても、改めて見直されています。
兵庫医科大学
炎症性腸疾患学講座 内科部門
中村 志郎 先生
LCAPは、増え続ける高齢者にも適していること、その作用機序から生物学的製剤の効果減弱例に対する効果も
期待できること、さらに、ウイークポイントである寛解維持療法に対しても、CAPTAIN studyによる検討が進行中で
あることを確認して、本日のランチョンセミナーを終わらせていただきます。
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A201683
No.2016.8-1372
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