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数値感覚の欠如 大事故の原因に 楽しく語り合い ミス防ぐ

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数値感覚の欠如 大事故の原因に 楽しく語り合い ミス防ぐ
人
材 財「 人 財 の 条件とは 」
―個の思い、組織の願い、
その新しい関係―
青木 仁志
会社と個人の「価値観」
【アチーブメント㈱代表取締役社長】
中でも明らかに目立つ存在になって
た「形而上」での概念や思考を、実
いくわけです。
際の「形而下」の行動に落とし込ん
数値感覚の欠如
大事故の原因に
でいき、利益を生み出すことができ
「じんざい」という呼び方に、どの
「人財」の5つの特徴
漢字を当てるかによって、部下を5
るということでしょうか。「形而上」
「今は電卓があるから、数値を把握
というのは、いわゆる抽象的な概念
するのは簡単だ」という誤解が蔓延
ると納得できよう。
的な考え方である。
問題)2㌔離れた地点に2㌔より2
だけ長いロ−プを固定して、
ロ−プの中央を垂直に持ち上げると
大きな数に関しても同じである。
マルチ商法に惑わされやすいのもそ
のことに由来する。
きに、体長4㍍のキリンはロ−プの
問題)新聞紙1枚の厚さが0.5
下をくぐり抜けることができるか?
新聞紙を二つ折りするのを12回続け
の時、
つのランクに分けることができます。
そして「人財」といわれる人たち
で物事を捉えていくことであり、観
している。人の数値感覚は狂い、そ
最上級は人の宝である「人財」。
をさらに掘り下げていくと、そこに
念的、精神的な思考をいい、形の無
のせいで大規模な事故まで起こるよ
次は一般的な組織人である「人材」。
は5つの特徴が見えてきます。
いものを表わします。それに対して
うになってしまった。例えば、東海
キリンはロ−プの下をくぐり抜け
そしてただいるだけで毒にも薬にも
特徴の1番目は、一般に“一を聞
「形而下」というのは、唯物論的で
村の臨界事故は、3%未満のウラン
ることはできないと誰もが思う。本
ならない「人在」。次はトラブルメ
いて十を知る”とか“地頭が良い”
あり、実存主義的な、実際にそこに
溶液の生成と19%の高濃度のウラン
当にそうだろうか?こんな時に、数
1回新聞紙を二つ折りにすると0.5
学が力を発揮する。ロ−プの中央を
×2=1㍉、12回続けてもそんなに厚
ると新聞紙の厚さは人の背丈を超え
るか?
ーカーとして組織に損害を与える「人
ということです。物事の本質を瞬時
ある形としての行動そのものという
溶液の生成を「勘違い」したことが
罪」。最後に厳しいようですが、悲
に見極める思考があり、物事の理解
ことです。
原因であった。
垂直に持ち上げたときの地面からの
くなるとは思えない。新聞紙を11回
しいリストラ対象である「人済」。
力が徹底的に深く、早いことを指し
もちろん高い生産性で仕事に付加
ウラン溶液を作る作業を大きな容
高さをd㍍とすると、一番長い辺(斜
二つ折りすると1㍉に2を10回掛けた
価値を生み出し、利益を上げるには、
器で一気に行おうとして、上司に作
辺)が1000+1/100㍍、ほかの2辺が
厚さになる。2を5回掛けると32とな
「形而下」での具体的なスキルも非
業許可を求めた際、上司が勘違いし
1000㍍とd㍍の直角三角形ができる。
るので、
では、企業において、「人財」と
ます。残念ながらこれには元来の資
呼ばれる人たちの定義とはなんでし
質が相当にモノを言うようです。
ょうか。それは、“理念・ビジョン・
2番目は“コミュニケーション能
常にしっかりしていなければなりま
てしまった。臨界事故を起こしては
したがって、ピタゴラスの定理によ
目標の3つについて、企業と個人で
力が非常に高い”ということです。
せん。
いけないというのは原子力産業に関
って
明確にすり合わせがなされている人”
企業も所詮人間社会ですから、コミ
210=32×32=1024
と計算できて1024㍉=1.024㍍となる。
2
2
2
d +1000 =(1000+1/100)
最後は、“常にモチベーションが
わるもののイロハである。どれだけ
が成り立つ。この式を直接計算して
1.024×2=2.048㍍となってしまう!
したがって、12回二つ折りにすると
ということです。つまり会社と個人
ュニケーション能力が高くなければ、
高い”ということです。モチベーシ
の量のウラン溶液があれば臨界状態
の価値観が一致している状態の人と
いくら能力があっても組織としての
ョンというのは、自己の内面からの
になるのかを、日頃計算しておけば、
もよいが、なるべく計算を簡単にす
江戸時代の人たちは、これに似た
言えばいいでしょうか。
調和がとれず、チームの和を乱すこ
動機付けがあって初めて生まれるも
このような勘違いは起こらなかった
るために
問題を秀吉と曽呂利新左衛門の話に
であろう。
未来のあるべき姿に対して戦略的
とになりかねません。これも重要な
のですから、願望が明確で「ああな
思考管理ができる人というのは、「判
テーマです。
りたい。こうなりたい」という気持
断・選択・責任」の基準の高さが違
3番目は“客観的・複眼的な考え
ちが強くなければ持続することがで
います。決して目先の損得だけで物
方ができる”ということです。現在
きません。私はよく、いい意味で「大
事を決めることがありませんし、上
司の期待もよく知っています。その
の行動に対して常に自己評価を促し、
そこからさらなる改善点を見つけ、
2
d2=(1000+1/100)
−10002
楽しく語り合い
ミス防ぐ知恵を
託し、注意を促したりもしていた。
最後に判断を下すのは、人間であ
と書き直す。そこで、
2
2
a −b =(a+b)
(a−b)
る。このような小話を使って面白お
という因数分解の式を思い出すと
かしく語り合うというのは、日常の
2
欲を持ちなさい」と言いますが、そ
電卓があるからと数値感覚を磨く
d =(2000+1/100)×1/100
判断ミスを極力避けるための生活の
れは「どうしたら成功できるだろうか、
ことに熱心でない現在の日本の社会と、
=20+1/10000 知恵であるといえよう。
2
期待に応えようと最大・最善の努力
ワンランク上の計画を立て直すだけ
どうしたら目標達成できるだろうか」
ソロバンという強力な計算道具が普
となる。これからd >20
をしていくので、当然ながら期待通
の遂行力=現場力があるということ
と常に考えるところに戦略が生まれ、
及して簡単に計算ができるにもかか
であることが分かる。20>16=42なので
りの結果になる確率が相当高くなる
です。
あとはそれを実行する遂行能力さえ
わらず、数値感覚を磨くのに熱心で
わけです。
4番目は当然ながら、“結果的に
あれば、必ずどんな人でも優秀な「人
あった江戸時代、どちらが社会の活
となって、驚くなかれロ−プは4㍍
高い付加価値を生み出せる人”です。
財」になれる可能性を秘めていると
力が高かったか、比較してみると興
以上の高さになる!私たちは、自分
ころから来ているのです。
味深いものがある。
の背丈を基準にして長さの勘を養っ
数値感覚を磨く必要があるのは、
ているので、2㌔+2
私たちの勘は時として私たち自身を
する勘はない。それを補うのが数学
端的に言えば、その人たちは常に
ゴールからスタート地点を逆にたど
「形而上」「形而下」という哲学用
り、どうするのが最良で効率的であ
語で説明するなら、目標から逆算し
るかだけを考えて毎日行動していま
す。つまり、毎日何をすればいいか
あ いまい
が明確ですから、曖昧なまま楽な方
向へと流れてしまう人が多い中で、
「理性的能力、職務遂行能力が非常
に高い」との高評価を得て、企業の
あおき・さとし
1955年北海道生まれ。アチーブメント株式会社代表取締役。
人材開発コンサルティング会社取締役を経て、営業教育専門
の同社を設立。各界から「営業研修ならアチーブメント」とい
う高い評価を得て、その受講生は11万人を突破している。
日本プロスピーカー協会会長。
d> 20>4
のロ−プに関
欺くからである。数値に関する判断
ミスが起こらないようにするために
うえの・けんじ
1000+1/100
も、数値に関する勘を鋭くする必要
d
がある。私たちの勘がどれほど当て
にならないか、次の問題を考えてみ
1000
1000
(単位・m)
1968年、東京大学理学部卒業後、70年同大学理
学研究科修士課程修了。 87年に京都大学理学
部教授に就任。著書に「誰が数学嫌いにしたのか」
(日本評論社・2001年)ほか多数。日本数学協
会会長。
このコーナーは日本数学協会(http://sugaku-bunka.org/)の役員らが輪番で執筆しています。
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