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イギリス Guy`s Hospital(`04)

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イギリス Guy`s Hospital(`04)
Guy's 病院でのエレクティブコースについて
伏屋芳紀
平成 16 年 3 月、ポリクリのエレクティブコース期間を利用して、ロンドンの Guy's 病院の腎
臓内科の見学をさせてもらいました。こうして記録に残しておく機会を得たので、今後のために
役立ててもらえれば幸いです。
・受け入れ先
Guy's hospital
住所: St. Thomas’ Street, London, SE1 9RT
・連絡先
Medical Electives
Tel: +44 (0)20 7848 3246
fax: +44 (0)20 7848 3460
email: [email protected]
ホームページ: http://www.hospital.org.uk/index.htm
http://www.kcl.ac.uk/ip/rachelharnett/electives.html
・指導教官
放射線遺伝学の武田教授と大阪大学の今井先生に紹介していただきました。また、武田教授と
呼吸器外科の和田教授から推薦状を頂きました。Guy's hospital では、Dr. Wilson Wong のもと、腎
臓内科の先生方の指導を受けました。
・日程
2004 年 3 月 1 日∼3 月 26 日の 4 週間
・内容
申込み
予定では 2 月 23 日から 3 月 26 日まで見学のはずでしたが、先に郵送済みの申込書一式が見つ
からず、2 月 23 日に手続きをはじめることができませんでした。申し込み期限をかなり過ぎて
から郵送したことが混乱の原因かもしれません。とにかく、可能な限り早めに手続きを終えるこ
とをお奨めします。本来は九月締め切りなのですが、結局私が全部の書類を郵送したのは 1 月で
した。ちなみに書類は、Application form、推薦状 2 通、Immunization form、誓約書でした。特に
予防接種が面倒です。Admission fee も必要で、これは_275 の小切手で用意しました。期限を過
ぎてから申し込んでいることは知っていたので、一応メールで連絡をとっていたつもりでしたが、
その相手が休暇をとっており、話が通じていなかったようです。何度かメールを出しても全く返
事がないのでおかしいと思っていましたが、返事はなかなかこないと言われていたので、ほうっ
ておいたのが悪かったみたいです。向こうとしては、返事を出していない以上、エレクティブの
1
許可もあたえていないということになっているようでした。Dr. Wong とは話が通じているはずと
いうことで、事務の人に確認をとってもらい、次の日になんとか実習の許可をもらえました。
Student recruitment & Elective Office の Damon さんは非常に親切で、いろいろ手続きもしてくれつ
つ励ましてくれたので、助かりました。
今にして思うと、結局許可をもらえたことだし、一週間心置きなく観光することもできたし、
それほど大騒ぎするほどの大事件でもなかったような気もしますが、さすがに最初はものすごく
不安になりました。やはり外国という環境では、何が起こるかわからないし、慣れない状況の下
でどう対処するかに非常に悩みます。一応言葉が通じるとはいえ、ハードルが高く感じるという
のが正直な感想です。というわけで、留学という機会は、学びに行くのはもちろんですが、こう
いうトラブル時に動じない根性と粘り強さを身につけるつもりでいくというのも、同じくらい重
要だと思います。
実習について
実習はかなり自由です。基本的にはイベントが曜日によって決まっているので、それにしたが
って研修医について回ります。私の場合は、
月曜午前
午後
火曜午前
午後
水曜午前
午後
木曜午前
午後
金曜午前
午後
transplant and acute ward round
medical student teaching with acute registrar
nephrology clinic
SHO teaching. Attend theatre list / shadow transplant SHO.
observe kidney biopsy
grand round
transplant clinic / observe line insertion list
transplant and acute ward round
shadow acute or dialysis SHO. X-ray meeting
SHO teaching. Attend theatre for live related transplant
という Timetable を作ってもらいました。ただ、慣れてからは、外来を見学したり、移植などの
おもしろそうな手術が入った時には見に行ったりしました。SHO(イギリスの研修医)にくっつ
いて雑用を見ていた時間がもっとも多かった気がします。こういうのを「shadow」というそうです。
病院内を一人で移動するのはけっこう大変です。至る所に「fire door keep shut」というドアがあ
り、進むのに勇気がいります。しかも Guy's hospital は複数の建物の集合体で複雑な内部構造を
しており方向感覚が狂います。階段もなかなか見つからず、エレベーターはあまり動きません。
腎臓内科は Dialysis、Acute Nephrology、Transplant のチームに分かれています。医者の QOL は
けっこうよさそうです。八時半のカンファレンスから始まり、六時半のカンファレンスで終わり
ます。休憩時間もけっこうあって、みんな頻繁にコーヒーを飲んでお話していました。親切な先
生を見つけてかまってもらえれば、充実した研修ができるでしょう。
希望をはっきり伝えれば、外来が見たい、病歴をとりたい、別の科を見てみたい、等いろいろ
やらせてもらえそうな雰囲気はありました。
2
服装
白衣は必要ありません。シャツとネクタイ着用です。聴診器はたまに使います。学生は白衣を
着ていました。私は電子辞書兼メモ帳兼文庫としてザウルスという電子手帳を持って行きました
が、これが非常に役に立ちました。
回診
大きな回診は月曜午前と木曜午後にありましたが、それ以外にもしばしばチームごとに回診し
ていました。
腎臓内科の病棟は主に Astley-Cooper Ward と Richard-Bright Ward という二棟で、それぞれ 20 人
ぐらいの大部屋が二つ、感染症の患者のための個室が二つでした。男女別でないところがおおら
かな感じを受けます。一人当たりの敷地面積は日本と比べてかなり広いのですが、それほどサー
ビスがいいというわけでもないみたいです。ベッドとベッドの間や通路が広いので、回診で全部
合わせて 20 人近い人間が参加してもかなり余裕があります。けっこう議論も活発で、回診が単
なる流れ作業ではありませんでした。いつも誰かが「何か質問があれば遠慮なく聞いてくれ」と
言ってくれて、気を遣ってくれたので助かりました。入院患者の回転がはやく、二三日油断して
いると病棟の患者がほとんど入れ替ってしまいます。医師のプレゼンテーションがうまいため、
慣れてきたら八割ぐらいは話していることが理解可能になりました。英語の理解できない患者さ
んもいますが、少なくともスペイン語と中国語についてはスタッフの中に理解できる人がいて、
ロンドンの懐の深さを感じました。
外来
誰の外来を見せてもらえるとかの指示は一切ないので、自分で外来を見せてもらえるよう頼む
必要があり、最初は誰に頼めばいいか戸惑います。私は、一週間ほど回診について回って、先生
の顔と名前をおぼえてから頼みにいきました。こちらの顔もおぼえてもらってからだとすんなり
いきます。忙しい中でも説明してもらえますし、患者さんとの会話もけっこうわかるので回診に
ついていくより勉強になる面もあります。ただ、質問される機会も多くなるので、覚悟もある程
度必要でしょう。
外来の日程は、
月曜
Low clearance clinic
火曜
Nephrology clinic
水曜
Transplant clinic / CAPD・HD clinic
木曜
Transplant clinic
となっていました。
biopsy・line insertion の見学
biopsy はさすがに見るだけでしたが、line insertion では、手術着を着るのを手伝ったり、リグ
ノケインやヘパリンを出したり、心電図や血圧や Saturation をはかったりと色々やりました。
3
手術
腎臓移植が生体・死体とも多いですが、腎摘出、TUR-T、膵腎同時移植などもありました。不
潔な身であんなに近くによっていいものか少し不安になるほど近くで見せてもらいました。ちな
みに、手術室は「Theatre」です。
講義
学生用の講義、研修医用のランチカンファレンス、St. Thomas’ hospital と合同の grand round
などの講義があります。パワーポイントを使っていることもあるのでわかりやすく、だいたい参
加することにしていました。一度、病理の学会があったので、それも見学しました。
学生用の講義には、急性腹症の問診と身体所見と検査について、消化管出血について、肝炎の
分類について、などの講義の他に×線読影の練習、身体所見の取り方、エコーの練習もありまし
た。かなり昏睡状態の深い患者さんにも協力してもらっていました。特に病歴聴取とプレゼンの
練習が盛んなようです。プレゼンは突然メモを取り上げられても平然と発表できるぐらい練習し
ていて感心します。
三回生に混じっていたので、言っていることとやっていることはそれほど難しくはありません
でした。ただ、みんな寝ることもなく、内職することもなく、私語することもなく、非常に熱心
にメモを取っているのには感心しました。一回の講義で詰め込まれる知識の量はかなり多いです。
ランチカンファレンスと Grand Round は食事が出ます。しかも Grand Round の食事はかなり豪
華でありがたくいただきました。ロンドンは特に食費が高くなることもあり、積極的に利用させ
てもらいました。みんな食べる量が多く、医者はやっぱり体力なのだなと感心しました。
講義の内容はと言えば、水疱性類天疱瘡と Stevens-Johnson syndrome、泌尿器科の緊急疾患、等
医学のことももちろんありましたが、宿直の新しいシステムの提言だったり、医療事故について
の意見交換だったりとバリエーションに富んでいました。
Gordon Museum
ここで病理の学会がありました。一見の価値があると思います。要は標本室なのですが、まず
その量が半端ではありません。臓器別にきちんと分類されて、しかも一つ一つにその標本の解説
と病歴が書かれていました。これだけの数を集めて分類して解説を書く労力と歴史に感動しまし
た。標本だけでなく、解剖の模型や皮膚病の絵画も大量に飾ってあり、これも面白いと思います。
・ロンドンでの生活について
さすがにロンドンは都会で、物価が非常に高いという印象を受けます。私がいた時は_1 が 200
円以上していたので余計高く感じました。食費はサンドイッチにコーヒーでも_5 ぐらいします。
物価が高いのを諦めれば、何でも手に入るので生活には苦労しません。私がよく行っていたのは
Marks & Spenser というスーパーのチェーン店で、ここの中華料理の冷凍食品がおいしいという
情報を事前に入手していたので、こればかり食べていました。
観光する所もたくさんあります。ロンドンは交通網が発達しているし、定期券が安く手に入る
ので便利です。大英博物館やナショナルギャラリーなどの有名なところでも、ただで入場でき、
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時間つぶしにはもってこいです。特に、大英博物館とナショナルギャラリーは毎日無料でガイド
ツアーを行っており、私はこれに参加して英語の聞き取りの練習をしました。少しは効果があっ
たように思います。
イギリスは鉄道網やバス網が充実しているので、週末にロンドンの外を観光することもできま
す。私は、ストーンヘンジ、バース、オックスフォードへ行ってきました。電車を使って自力で
行くのも簡単ですが、観光バスを使ってもそんなに高くなく、お得感があります。
帰国日の前日に、有名なオックスフォード・ケンブリッジのボート対抗戦があったので見てき
ました。ボートに興味の無い方もぜひ機会があれば見てほしいと思います。
安全性について言えば、外国でしかも首都で観光地だということを意識して、その上で普通に
常識的に行動していたら、おおむね安全だと思います。地下鉄、バスでも危険を感じたことはあ
りませんでした。ちょうどそのころスペインで列車テロがあり、次はロンドンが危ないと言われ
ていましたが、とりあえず無事でした。
インターネット
何だかんだ言っても海外研修はかなりストレスがたまります。家族や友人とのメールのやり取
りができることは本当に助かります。
いたる所にネットカフェがありますが、日本語が書けるところはかなり限られてきます。単に
日本語の表示ができるところはけっこう多いです。私はロンドンの中心のピカデリー広場にある
ジャパンセンターのネットカフェを利用していました。200 分_10 で、さすがに普通より割高で
した。Guy's College の ID カードを手に入れてからは、大学のパソコン室が日本語の環境も整っ
ており、印刷もできたので重宝しました。
宿泊施設
私は最初の1週間分だけ日本で予約しました。County というビジネスホテルで、H.I.S で申し
込んで、一泊_30 でした。
次の3週間は B&B で一泊_40 でした。地球の歩き方で見つけました。Arosfa Hotel というとこ
ろで、宿の人が親切で非常に快適だったため、費用はかかりましたが長く滞在しました。
最後の1週間はイースター休みとかぶっていたので学生寮を利用できました。一泊_25 でした。
いずれも朝食付きで毎日掃除もしてもらえるので、一応快適でした。
ロンドンはけっこう広いので宿の場所には気を使います。私が宿泊していたのは Euston 駅の
そばで、地下鉄を使って Guy's 病院のある London Bridge 駅には 20 分ぐらいかかりました。結構
便数もあり、乗り換え無しでいけたので乗り切れました。それでも病院へ行くのには少し不便で
したが、大英博物館にも近く、遊びに行くのには便利でした。
もっと安い宿も一応探してみました。ジャパンセンターの掲示板にフラットメイト募集のビラ
が貼ってありますし、情報紙もあるので探すのには苦労しません。家賃も一週間で_100 ぐらい
からと B&B よりは断然安くなると思います。その点については少し後悔しています。同じ宿に
なった日本人によると、同じ宿でも二年ぐらい前と比べると一泊_10 ほど高くなっているようで
す。長期の場合はやはりフラットシェアなどを利用するのがいいと思います。また、手続きがう
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まくいっていたら、Guy's college の事務から研修のしおりが送られてきて、それにアパートが紹
介されています。ただ、土地勘がないと、安全性や便利さの点でややこしくなるような気もしま
す。
・英語について
4 ヶ月ほど英会話教室に通いましたし、リスニングの CD を買って勉強もしましたが、準備不
足の感は否めませんでした。
ネイティブ同士の英語の会話は最後まで聞き取れませんでした。が、回診の時のプレゼンテー
ションや患者さんへの説明、レクチャーなどは時間とともにわかるようになりました。質問した
ときは丁寧にわかりやすく説明してくれました。
わからなければ"sorry"と聞き返さなければなりませんが、あまり何度も聞き返しすぎると嫌が
られるようです。ただ、完全に満足できるほどに英語力をつけてから行く必要もないような気も
します。英語に関して私が準備不足でコミュニケーションに苦労したことは事実ですが、十分勉
強していった人でも、実はけっこう最初は苦労しているようです。どちらにしても一月もいれば
けっこう慣れるので、最初に苦労してもあせらなくていいと思います。
というわけで、一般的な話して聞く力は確かに必要ですが、それよりは医学の知識と医学英語
の知識がより重要だと思います。早い時期に行って雰囲気をつかむのもいいかもしれませんが、
あまりに知らなさ過ぎるのもどうかと思います。
・感想
何度も繰り返して聞かれることが確実な質問として、なぜ海外に出てしかも腎臓内科を見学す
るのか、というものがあります。ただ機会と興味があったから、というだけでは少し情けない気
がしました。もう一度動機を確かめておくべきだったかもしれません。目的意識がしっかりして
いたら、もう少し積極な態度で臨むことができたかもしれないという気もします。
この研修における目標は、たしかに設定していたはずですが、どのくらい達成できたかという
とはなはだ心許無い気分になります。途中からは、初めての海外留学で何から何までうまくいか
なくてもよいのだ、と軌道修正したほどです。結局帰国してから考えて、得たと言えるものは、
海外とはいえどうにかやっていけるものだという自信と、もう一度行けば、またはもう少し長け
ればもっとうまくやれるという予感ぐらいのものです。
夏目漱石は、ロンドンで神経衰弱に悩まされながらも勉強を続け、結局無理矢理帰国させられ
るまで日本に帰ろうとはしなかったそうです。私は当然漱石ほどの身分ではありませんが、その
気持ちが少しわかるような気がします。心に期するところがあってはるばるイギリスまで来たは
ずなのに、なすところ少なくして帰るはめになるのは非常に残念でした。
ただ、今回の経験を踏まえて、留学というものはどういうもので、次回留学する時には、その
準備から含めて、何をしたらいいのか、などがつかめただけでもいいと思います。正直言って、
最初はかなり不安で心細く思いましたが、終わったときの感想は、来てよかったというものであ
るのは間違いありません。こういう機会があたえられたことに感謝します。
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