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設計工学 - 電子機械工学分野

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設計工学 - 電子機械工学分野
別 刷
設計工学
公益社団法人 日 本 設 計 工 学 会 誌
2014年 第 49 巻 第 11 号
( P. 578 ~ P. 586 )
振動診断
井上 剛志,安藝 雅彦
Vibration Diagnostics
公益社団法人
Tsuyoshi INOUE and Masahiko AKI
日本設計工学会
非破壊検査技術の最新動向
578
解説
振動診断*
Vibration Diagnostics
井上 剛志* 1
(Tsuyoshi INOUE)
安藝 雅彦* 2
(Masahiko AKI)
Key Words : vibration diagnostics, time domain, frequency domain, signal processing, wevelet
1.
はじめに
機械の診断とは,その機械の状態を示す各種の信
号を測定し,それを信号処理してその機械に潜在す
る異常や故障の検出を行い,その異常や故障の種類
や位置を特定するものである 1).長期間の信号のト
レンドからその状態や深刻度を定めることもできる
し,現時点以降の異常の時間発展を予測することも
できる.これらの診断において最もよく用いられる
基本的な状態量が振動である.本解説ではこの振動
を用いた機械の診断技術を解説する.なお,振動を
用いた診断技術は主に回転機械の分野において長い
歴史と発展があり,その内容については文献 1),2)
に詳しく説明されている.本解説ではこれらの文献
の内容を各所で引用しつつ,さらに最近の振動を用
いた診断の技術動向も説明する.
2.
振動診断技術
2.1 簡易診断と精密診断 1),2)
振動を用いた診断技術は,一般に簡易診断技術と
精密診断技術に分けて構成される.
簡易診断ではまず早期の異常や故障の検出が求め
られる.簡易な振動診断技術の一手法として,回転
機械の振動を監視し,その長期間のトレンドを用い
て機械の寿命を予測する方法がある.この概念図 2)
を図1に示す.このように長期間のトレンドを見る
ことにより,異常の検出やその将来的な時間発展の
予測ができ,コストも意識して機械設備の保全計画
*
*1
*2
原稿受付 2014 年 7 月 15 日
正会員,名古屋大学大学院工学研究科機械理工学専攻
(〒 464―8603 名古屋市千種区不老町)
非会員,名古屋大学大学院工学研究科機械理工学専攻
(〒 464―8603 名古屋市千種区不老町)
設計工学
図 1 簡易診断による寿命予測
[文献 2)
より引用]
を立てることができる.
一方,精密診断では簡易診断で検出された異常に
ついてその詳細な情報(種類や状態,位置と深刻度)
を診断する.精密な振動診断技術のために,これま
で多様な信号処理手法が開発されてきている.これ
らは計測した振動の時刻歴データをそのまま用いる
時間領域の信号処理手法と,その時刻歴データにフ
ーリエ変換などを施した周波数領域の信号処理手法
とに分けられる.
2.2 振動診断で計測する状態量
2.2.1 発生振動数による分類 1)
例として回転機械を考えると,異常による振動は
発生振動数で低周波数(数 Hz ∼ 1kHz),中間周波数
(1kHz ∼ 10kHz)
,高周波数
(10kHz ∼)
に分類できる.
低周波数で現れる異常振動には,アンバランスやミ
スアライメントが原因で現れる回転同期周波数の振
動,ガタが原因で現れる回転速度の整数倍の振動数
の振動,そしてすべり軸受で支持された回転軸系で
発生し系の固有振動数で振れ回るオイルウィップが
ある 1).中間周波数で現れる異常振動の例としては
インペラーがボリュートケーシング部を通過する際
(28)
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の圧力脈動などが挙げられ,高周波で現れる異常振
動の原因の例としてはキャビテーションが挙げられ
る.したがって,振動により異常診断を行う際には
まずは広い周波数範囲について調べる必要がある 1).
2.2.2 測定する物理量と特徴 1)
振動を測る際の物理量は,変位,速度,加速度で
ある.表1にこれらの物理量の用途を示す 1).診断
対象の現象とそれが現れる周波数域の高低によって
測定する物理量を適切に選択する必要がある.
図2に古くから利用されているラズボーン氏によ
る大型回転機械の診断判定基準 1)を示す.この図の
3. 時間領域の振動信号の解析と診断
3.1 基礎的な兆候パラメータの定義と計算
時間領域の振動データを用いて診断する際に,異
常の兆候を示す指標となるものを考える.サンプリ
ングにより得られた振動の時刻歴データを用いて得
られる指標の基本的なものとしては,たとえばピー
ク値 xp,平均値 xa,標準偏差(Standard Deviation)
xsd,k 次のモーメントμk がある 1).
縦軸は機械の許容変位両振幅だが,グラフが右下が
りになっていることからわかるように,診断の判定
は速度に基づいたものとなっている.現在の
ISO10816 においても中間周波数までの許容基準は
速度基準で与えられている.図3に ISO10816-13)で
示されている振動による判定基準を示す.この横軸
の速度基準で判断できる周波数範囲は,ISO10816
シリーズで機械の機種やサイズ別に定められている
が,たとえば古くからある範囲の例としては 101000Hz がある.また,4 つのゾーンはそれぞれ
A :新設・補修後の振動レベル
B :許容範囲.問題なしに運転の継続可
C :長期連続運転には適していない.対策実施ま
での限定期間の運転ならば可
D :損傷をもたらす可能性が高く,運転不可
を示しており,サイズ別(小型,中型,大型+剛基
礎,大型+柔基礎)にその具体的な判定振動値を速
度基準で分けて,健全性の判断基準を示している.
表1
振動の測定量[文献 1)より引用]
図 2 大型回転機械の振動基準(T.C.Rathbone によ
る指標)
[文献 1)
より引用]
図 3 ISO10816 シリーズで規定されている振動速度
許容基準
設計工学
(29)
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xa
xsd
μk
1
N
表 2 振動診断のための指標(無次元値)
[ 文献 1)よ
り引用]
N
xi
i
1 N
2
(xi xa)
N 1 i
(1)
1 N
k
(xi xa)
N 1 i
そして,これらを用いた多くの無次元値が診断の指
.例として,波
標として用いられている(表2参照)
形率 Ff,波高率 FC,歪み度(Skewness)β1 と尖り度
(Kurtosis)
β2 を示す 1).
xsd
xp
μ3
μ4
Ff
FC
β1
3 β2
xa
xsd
xsd
xsd4 (2)
3.1 尖り度を用いた振動診断 4)
尖り度を,ベアリングの診断に用いた例を示す 4).
正常なベアリングや外輪に傷のあるベアリングを合
わせて無作為に 300 個選び,そのベアリングの振動
データの時刻歴から式(2)により求めた尖り度を図
5に示す 4).横軸は振動の実効値である.尖り度は
その大きさが 3 に近いときに正常であり,大きな値
の場合は異常である.この図からわかるように振動
の大きさ(実効値)と尖り度とは相関はなく,振動は
大きいが尖り度がほぼ 3 で正常であるものもあれ
ば,振動は小さいが尖り度は 3 よりもずっと大きく
異常であることを示すものもある.このことから振
動の大きさでその故障の程度を知ることは難しいこ
とがわかる.
3.2 振動信号中の正常成分と異常成分の分離 5)
前節で述べたように時刻歴データを用いた有次元
や無次元の特徴パラメータを用いて振動診断が行わ
れる.しかし,測定された信号中には正常状態の振
動成分と異常に起因する振動成分の双方が含まれる
ので,そのことに起因して異常に関するパラメータ
値の感度の低下やばらつきが生じることがある.
正常状態の振動の振幅確率密度は正規分布に従う
ことが多い.図4(a)に正常なベアリングが発する
振動を計測した際の振幅確率密度を示す.正規分布
も重ねて示すが適合度 0.85 とほぼ適合している.図
4(b)に外輪に傷のあるベアリングの振動波形の振
幅確率密度を示す.この場合は正規分布との適合度
は 0.005 以下となり適合していない.このように振
幅確率密度を利用して正常成分と異常成分を分離す
る方法が提案されている 5).この分離にも式(2)の
尖り度を用いる.分離手順を次に示す.
step1 :測定された振動データからその絶対値が最
大となるデータ点を探して除去し,異常デ
設計工学
ータの時刻歴に移動
step2 :絶対値が最大のデータを除去した元データ
から尖り度を求める
step3 :尖り度が 3 以上であれば step1 へ戻る
step4 :尖り度が 3 以下であれば,残された元デー
タは正常成分のみを表したものであり,除
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去・移動されたデータは異常成分を表した
ものである
この分離方法の妥当性を,次式で作成したシミュ
レーションデータを用いて示す 5).ここで,N(1,0)
は平均が 0 で分散が 1 の正規性雑音であり,αは衝
撃の大きさ,c は減衰時定数,tp は衝撃の時間間隔,
両者の比較より衝撃の大きさが変化しても取りだし
た正常成分の振幅や形状はほとんど変化しないこと
がわかる.一方,図8は,図6から異常成分のみを
取りだしたものである.正常時の図6(a)ではほぼ
0 で一定値を取るが,異常振動の図6(b)の場合で
は間欠的な衝撃成分を取り出せている.
round(t,tp)
は t の tp に対する剰余である.
図9に,式(3)をそのまま用いて作成した異常振
動データの尖り度と,その異常振動データから正常
成分と異常成分とを分離した後で正常成分と異常成
分の実効値の比を求めたものを,パラメータαに対
してプロットした結果を示す.図中にはそれぞれの
x(t)
=N
(1,0)×
{1.0 +αexp(− cround(t,tp)
)
}
(3)
図6に式(3)でサンプリング周波数 51.2kHz,デー
タ点数 8192 点,c=1600,tp=0.0125sec として作成し
たシミュレーションデータを示す.
図7は,図6から上記の異常振動成分の分離手順
により正常成分のみを取りだしたものである.この
指標のばらつきも破線で示されている.尖り度は異
常に対する感度は優れているが衝撃の大きさαが大
きくなるとばらつきが大きくなる.一方,正常成分
と異常成分の実効値の比は衝撃の大きさαが大きく
なってもばらつきは小さく,診断への信頼性が高い
と言える.
なお,文献 5)では,分離された信号を周波数領域
での振動診断に利用する手法も示されている.
図 6 シミュレーションデータ 5)
図 4 ベアリングの振動の振幅確率密度[文献 4)よ
り引用]
図 5 300 個のベアリングに対する尖り度と振動の
実効値の関係[文献 4)より引用]
設計工学
図 7 シミュレーションデータの正常成分[文献 5)
より引用]
(31)
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に加振周波数Ωの振れまわり外力を作用させ,その
周波数を掃引したときの実験結果の共振曲線と理論
解析で予想する共振曲線を図 11 に示す.振れまわ
り外力の加振周波数Ωをクラックに起因して発生す
る共振の共振周波数 2ω− p に近づけると回転軸系
の振動が増大し,予想された解析結果とほぼ定量的
に一致してクラックに起因する共振ピークを示す.
この加振による共振の発生の有無およびその振幅等
の特性値の評価を行うアクティブ診断により,クラ
ックの早期検出が可能になる.
図 8 シミュレーションデータの異常成分[文献 5)
より引用]
図 10
回転軸系と磁気軸受装置
図 9 元データの尖り度と取りだした異常振動成分
の実効値の比較
[文献 5)より引用]
4.
周波数領域の振動信号を用いた解析と診断
4.1 回転機械のクラックのアクティブ振動診断 6)
回転機械に発生したクラック(亀裂)の検出も重要
である.従来のやり方はクラックに起因して発生す
る 2 倍周波数振動を利用した検出が主だが,その発
生回転数が対象の機械の定格回転数から離れている
場合にはそのクラックによる変化が小さく適用しに
くい.そのような場合でもクラックの早期検出を可
能にする振動診断法として,回転軸系に磁気軸受な
どを用いて周期外力を加え,その振動応答を用いて
クラックの診断を行うアクティブ診断法がある 6).
クラックを有する回転軸系(回転速度ω)に加振周
波数Ωの振れまわり外力を作用させると,クラック
の影響を介して(2ω−Ω)の振れまわり成分が現れ
る.したがって,この(2ω−Ω)が回転軸系の固有
振動数 p に近づく加振周波数Ω= 2ω− p で加振す
るとクラックがあるときのみ発生する共振現象が現
れる.
図 10 に示すように磁気軸受を設置して回転軸系
設計工学
図 11 加振によるクラックに起因する共振を用い
た診断
[文献 6)
より引用]
(32)
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4.2 ウェーブレットを用いた振動診断 7)
回転機械では,異常が起きると回転軸や軸受の振
動現象として現れる場合が非常に多い.これまでに
各種の回転機械の精密診断技術が開発され,ほとん
どの異常原因の判別や発生位置の特定などが可能と
なってきている.しかし一方でまだ初期の異常が軽
付けトルクを強めていくときのデータである.それ
ぞれの図において,一番上の図は加速度の時刻歴デ
ータそのものを示し,二番目以降の図はこの時刻歴
データを HWT にかけて得られる各レベルの出力の
時刻歴データである.
微な状態ではその検出は難しい.そのための一つの
有力な情報を与える可能性のある解析法に,振動現
象を時間と周波数の双方の領域から捉えるウェーブ
レット変換がある 7).
フーリエ変換の基底関数は時間領域において無限
の広がりを持つため,振動の時刻歴データに局所的
に含まれる信号がある場合はフーリエ変換を施すと
その情報は薄められ,あるいは失われる欠点がある.
それに対し,ウェーブレット変換の基底関数は時間
領域において有限な広がりしか持たないため,時刻
歴データに局所的に含まれる情報を薄めることなく
時間周波数領域で解析し表示することが可能とな
る.
時間領域における信号 x(t)のマザー・ウェーブレ
ットψ(t)によるウェーブレット変換は次式で定義さ
れている 7).
Wψ(
x(
t)a , b)
1
ψ
t
b
a
a
(
x t)
dt
(4)
ここで,a はスケールパラメータ,b はトランスレ
ートパラメータである.
マザー・ウェーブレットψ
(t)として時間周波数空
間で最も局在性が良い関数である次式のガボールの
マザー・ウェーブレットがよく用いられている 7).
ψ
(t)
1
exp
2 πσ
t
σ
2
iω0 t
(5)
ここで,σは減衰を決めるパラメータ,ω 0 は中心
角振動数,i は虚数単位である 7).この他にも,ハ
ーモニックウェーブレット変換(HWT)8)が振動診断
に用いられている.このマザー・ウェーブレット
ψ
(t)
は,次式である.
ψ
(t)
exp
(i 4πt) exp
(i 2πt)
i 2πt
(6)
この HWT を,ボルト締め付けの緩み検出に適用
した例を示す 8).ボルトの締め付けトルクをパラメ
ータとして機械構造物の加速度の時刻歴データを調
べた結果を図 12 に示す.図 12(a)
(d)
は徐々に締め
設計工学
図 12 加速度時刻歴データの HWT による解析[文
献 8)
より引用]
(33)
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図 12(a)
(b)では一番上の加速度データそのまま
でも高周波成分が乗っていることから緩みが検出で
きるが,図 12(c)
(d)では一番上の加速度データで
のセンサの監視対象への設置が可能となり,従来の
振動を用いた状態監視技術の適用範囲が飛躍的に広
は見分けがつかない.しかし,この加速度データを
5.2 機械の状態監視と診断の ISO 規格 11)∼ 13)
近年の,機械状態監視・診断・保全技術の飛躍的
な発展とその実用化の動きから,1994 年より ISO の
HWT にかけることにより得られるそれぞれの二番
目の図を見ると,図 12(c)では締め付けトルクの不
足に起因した緩みによる異常信号が検出できるのに
対し,図 12(d)ではすでに十分な締め付けトルクで
締め付けられており HWT により得られる各レベル
の信号でも異常信号は検出されないという違いが確
認できる.
これらのウェーブレットを用いた振動診断に関し
ては,回転機械では,接触による振動やクリアラン
スによる振動 7),オイルウィップ 7),軸受給油不足 9),
往復機械では,管路内の流力弾性振動による疲労亀
裂の検出 8)などでその効果が示されている.
5.
がることが期待される.
テクニカルコミッティ TC108(機械の振動,衝撃と
状態監視)の下にサブコミッティ SC5(機械の状態監
視と診断)が発足し,機械状態監視と診断に関する
多くの ISO 規格が制定されてきた 11)∼ 13).
振動の状態監視に関する規格例には 2002 年制定
の ISO 13373-1 がある.これは大型蒸気タービン・
圧縮機・発電機・モータ・ファン・ポンプなどの機
械の振動状態監視システムを構築・運用する場合の
機械振動の測定やデータ収集機能の一般指針を規定
したものである.例として図 14 に振動状態監視の
流れを示す.
その他の話題
5.1 振動発電を利用したバッテリーレスモニタリ
ング 10)
回転機械では,ISO で規格化されたバランシング
を行っても許容値以下の振動は運転中絶えず生じ
る.この振動をエネルギー源と考え,それを電気エ
ネルギーに変換して状態監視と診断のためのセンサ
5.3 機械の状態監視診断の技術者認証制度(振
動)11)∼ 13)
技術者のグローバル化に対応するために,国際的
にほぼ同一基準でその技術レベルの品質管理と技術
者の能力を客観的に判断し得る資格として技術者の
認証制度を規定した ISO 規格化が進められてきた.
「振動」分野は最も早く規格化が成され,日本では機
用電源として活用する試みが行われている 10).そ
の装置の例を図 13 に示す.この装置は片持ち梁タ
イプの共振系に設定されており,回転機械の定格回
転速度でちょうど共振するように設計される.そし
て,外部に接続された電気系のチューニングにより
その振動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変
換する.
この振動発電による電源供給方式を用いれば,電
源を確保することが難しい遠距離での振動状態監
視,電源ケーブルの省略による装置の簡便化や多数
図 13 振動監視用センサ電源のための振動発電装
置
[文献 10)より引用]
設計工学
図 14 ISO 規格で定められた機械の振動監視・診断
の流れ
[文献 12)
,13)
より引用]
(34)
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械状態監視診断技術者認証制度(振動)が 2004 年か
ら開始されている.図 15(a)にこれまでの同認証制
度の経過を示すが,既に 2700 人以上の認証者を輩
出している.日本ではカテゴリーⅡの認証者数が圧
倒的に多い.このカテゴリーⅡを有していれば実務
上問題なく振動計測・評価をできるレベルである.
その上位であるカテゴリーⅢは下位カテゴリー者の
教育もできるレベル,最上位のカテゴリーⅣは博
士・技術士レベルと同等の実力を示すものと位置づ
けられている.さらにこの認証制度の国際的な意義
を高めるため,この認証制度についてはアメリカの
振動技術者認証機関である VI( 米国,Vibration
Institute)
やカナダとの相互認証も行われている.
図 15(b)は認証を受けた人が所属している産業分
野(2011 年時点)であるが,ユーザー,エンジニア
リング,メーカー等多岐にわたっており,各分野に
おけるそのニーズと関心の高さが示されている.
5.
おわりに
機械の状態監視と診断の分野は今後も益々発展
し,振動とトライボロジー,熱画像,AE(アコース
ティックエミッション)や超音波診断などとの相補
的利用やそれらの総合的な解析により,その診断精
度や適用範囲をさらに高め,広げていくと考える.
ISO でもまさしくこの考え方で技術者認証制度にお
いてスペシャリスト(複数の診断技術を併せ持ち,
その併用により機械の診断を行うことができる技術
者)
の規格化が検討されている.
また,ビッグデータの収集と取扱いが話題となり
始めた現在においては,多数のプラントや機械の
様々な状態量を多点で監視し,インターネット等を
用いたその集中的管理とその膨大なデータの処理に
よる大規模かつ効率的な監視と診断技術もさらに開
発されていくと考える.
このような診断技術の多様化の動きの中にあって
も,やはり振動は信号の取り扱いやすさと信号処理
との親和性,含む情報量の多さなど多くの利点を含
むことから,今後も状態監視と診断技術において主
要な情報源であり続けるであろう.
最後に,本稿執筆に当たり様々な情報の提供を頂
いた元東芝の榊田均氏に謝意を表す.
参考文献
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ューション
(1991)
.
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JIPM ソリューション
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成分の分離,電子情報通信学会技報,R2001-22
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系を周期加振した際の有限要素解析,機論 C 編,
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B,123,10
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布(分布は 2011 年時点)
[ 文献 12),13)より
引用]
設計工学
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クウェーブレットによる定常振動波形の異常性
(35)
検出,機論 C 編,71,707
(2005)
,2147-2154.
Vol.49, No.11(2014 年 11 月)
586
9) 山口,高木,山田,川田:ウェーブレット解析
を利用した軸受給油不足時の軸振動解析,機論
C 編,71,712
(2005)
,3417-3422.
10)山口・安達・清水・坂本:自己給電式振動状
態監視装置の開発に関する研究(第一報,振動
計測性能の評価)
,第 56 回自動制御連合講演会,
井上 剛志
(2013)
,講演番号 616.
11)榊田:機械の状態監視と診断に関する国際規格
の現状と動向,日本機械学会,評価・診断に関
,7-11.
するシンポジウム講演論文集,
(2006)
12)榊田:機械の状態監視と診断に関する ISO 国際
規格の現状と動向,機械力学・計測制御部門ニ
ュース No.40(2008)
,web 掲載.
13)井 上 : 機 械 の 状 態 監 視 と 診 断 に 関 す る I S O /
TC108/SC5 国際規格の現状と動向,ターボ機械,
39,5(2011)
,304-312.
設計工学
(36)
安藝 雅彦
平成 3 年 3 月 名古屋大学工学部電
子機械工学科卒業.平成 5 年 3 月
名古屋大学大学院博士前期課程(電
子機械工学専攻)修了.平成 12 年
工学博士取得.平成 5 年 4 月 オー
クマ(株)入社,平成 7 年 4 月より名
古屋大学助手,講師,助教授を経て,
現在,名古屋大学教授.研究分野は
機械力学.
平成 16 年 3 月 日本大学理工学部機
械工学科卒業.平成 21 年 3 月 日本
大学大学院博士後期課程(機械工学
専攻)修了.平成 21 年博士(工学)取
得.平成 21 年 4 月 東京大学生産技
術研究所,特任研究員を経て,特任
助教.平成 25 年 4 月より名古屋大学
助教.研究分野は機械力学.
Vol.49, No.11(2014 年 11 月)
Fly UP