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基本事項習得講義 ~民事訴訟法 弁論主義~ テキスト②

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基本事項習得講義 ~民事訴訟法 弁論主義~ テキスト②
司法試験
基本事項習得講義
~民事訴訟法 弁論主義~
テキスト②
0 001213 123807
LM12380
短答コンプリートマスター民事訴訟法
基本事項習得講座
体系整理テキスト
サンプルテキスト
民事訴訟法
民事訴訟法
サンプルテキスト
目次(サンプルテキスト抜粋)
第3章
訴えの提起
~処分権主義,訴えの利益,当事者適格,請求の複数
第4章
訴訟の進行-弁論主義
第8章
既判力
1
短答コンプリートマスター民事訴訟法
第3章
サンプルテキスト
訴えの提起
~処分権主義,訴えの利益,当事者適格,請求の複数
1
訴えの種類
①給付の訴え
→原告の被告に対する実体法上の給付請求権につき給付判決を要
求する訴え。
②確認の訴え
→原告が請求する特定の権利又は法律関係の存在又は不存在の確
認を求める訴え。
③形成の訴え
→一定の法律要件(形成要件)に基づく特定の権利又は法律関係
の変動の宣言を求める訴え。
*形成要件が法定されている。
例:離婚の訴え,株主総会決議取消の訴え,会社の設立無
効の訴え
★★弱点補強★★
形式的形成訴訟
→形成訴訟のうち形成要件が法定されていないものは,裁判所は,法適
用ではなく,健全な良識に基づく合理的裁量により訴えの当否を判断す
ることになる。このような訴訟類型を形式的形成訴訟という。
例 : 共 有 物 分 割 の 訴 え ( 民 25 8), 父 を 定 め る 訴 え ( 民 77 3)
境界確定訴訟(判例)
2
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
★★弱点補強★★
境界確定訴訟
→ 境 界 確 定 訴 訟 は ,実 体 法 上 の 土 地 所 有 権 の 確 認 を 求 め る も の で は な く ,
国家の行政作用により定められた境界線が不明確な場合に,境界線とい
う公法上の事実の確定を目的とする訴えである。
→境界確定訴訟の特殊性
①処分権主義の排除
→請求の趣旨に特定の境界を記載する必要はなく,単に隣接地間の
境界の確定を求める旨の記載をすれば足りる。
→和解や請求の認諾は不可。
→控訴審における不利益変更禁止の原則の適用はない。
②弁論主義の排除
→裁判所は,境界に関する当事者の主張に拘束されない。
→裁判上の自白もない。
③証明責任の排除
→当事者の主張立証から境界が真偽不明のときでも裁判所は請求棄
却判決はできず,特定の境界を定めなければならない。
→境界の確定を求める土地の隣接土地の所有者全員が訴訟当事者となら
な い と 訴 え が 不 適 法 却 下 さ れ る ( 固 有 必 要 的 共 同 訴 訟 )。
→ある土地の共有者の1人が訴え提起に同調しない場合は,その者を被
告として訴え提起をすればよい。
*境界確定訴訟は,判決による合一確定のために全員を当事者と
して関わらせることが重要であり,共有者全員が共同歩調をとるこ
とは重要ではないから。
3
短答コンプリートマスター民事訴訟法
2
サンプルテキスト
請求の特定
(1 )
請求の特定の意義
→裁判所が判決をするには当事者の申立事項に拘束されることか
ら ( 24 6), 当 事 者 は , 訴 え に お い て 審 判 対 象 と し て の 訴 訟 上 の
請求(訴訟物)を特定しておかなければならない。
(2 )
訴訟物の理論
→旧訴訟物理論:実体法上の権利・法律関係を基準に訴訟物が何
であるかを決定する立場。
→旧訴訟物理論は訴訟法の政策的観点から修正されることがある。
例:賃貸借契約終了に基づく目的物の返還請求訴訟の訴訟物に
ついては,個々の契約の終了原因(賃料不払解除,無断転
貸解除,期間満了等)ごとに考えず,1個の賃貸借契約の
終了の効果としての目的物返還請求権を観念する。
例:同一事故による不法行為に基づく損害賠償請求権について
は財産上の損害と精神上の損害を1つの不法行為に基づく
損害の填補と位置づけ訴訟物も 1 個であると考える。
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
3
サンプルテキスト
処分権主義
(1 )
処分権主義の意義
→訴訟の開始,審判対象の特定や範囲の限定,判決によらずに訴
訟を終了させる処分権能を当事者に委ねる建前。
*実体法上私的自治に委ねられている私法上の権利の処分に
ついては,訴訟上も当事者の意思を尊重する方が妥当(私
的 自 治 の 訴 訟 法 的 反 映 )。
(2 )
申立事項と判決事項
→裁判所は,当事者が申し立てていない事項について判決するこ
と は で き な い ( 246 )。
*処分権主義における①原告の意思の尊重と,②被告への不
意打ち防止機能
(3 )
一部認容判決の許容性
→申立事項と判決事項を比べて,判決事項が申立事項の量的範囲
内にある場合や,質的範囲内にあるときは,原告の意思に反せ
ず,被告への不意打ちとならないことら許容される。
例:数量的な給付請求に対してそのうち一部の請求を命じる判決
例:無条件の給付を求める訴えに対して,被告の同時履行の抗弁
権や留置権の抗弁が認容できるときの引換え給付判決
例:建物明渡請求訴訟において原告が明示した申出額を超える立
退料の支払いと引換えに明渡しを命じる判決
*原告が300万円の立退料を申し出ていたのに対し,裁判
所が500万円の立退料の支払いと引換えに被告に対し建物の
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
明 渡 し を 命 じ た( 判 例 )。こ れ は 正 当 事 由 の 判 断 の 非 訟 的 性 格 と ,
原告の合理的意思としてそのような意思が認められることに着
目していると考えられる。また,給付を命じた金額が申立ての
金額より多い分には被告への不意打ちにもならない。
(4 )
一部請求と判決確定後の残部請求
→数量的に可分な債権の一部請求につき,原告が一部であること
を明示していた場合は,その一部が訴訟物となり,既判力もそ
の部分にのみ生じる。
→明示的一部請求が,債権が全く存在しないものとして請求棄却
され,その判決が確定した後に残部請求をすることは,既判力
による遮断はされないが,実質的には前訴で認められなかった
請求についての不当な蒸し返しであるとして信義則に反し許さ
れない。
6
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
★★弱点補強★★
後遺症による損害賠償請求
→交通事故等で損害賠償請求をしたが,前訴の基準時後に後遺症による
損害が発生した場合に,その損害賠償請求を認めるための理論構成に争
いがある。
ア
明示的一部請求と同視する説
→このような場合,前訴を明示的一部請求と同視して,残部請求
は既判力に抵触せず認められるとする見解。
→明示的一部請求と同視する根拠
①前訴は当時発生不明の後遺障害を除くとするのが,当事者
の合理的意思
②前訴での主張立証が不可能
③裁判所も後遺症による損害を除く趣旨で前訴判決をしたと
考えられる
イ
既判力の正当化根拠から考える説
→既判力による遮断効が認められることの正当化根拠は前訴で当
事者に十分な手続保障がなされていたところにある。前訴の基
準時後に後遺症による損害発生があった場合は,原告は,その
損害につき十分な手続保障がなされていたとはいえないので,
後遺症による損害賠償請求は既判力により遮断されない。
★★弱点補強★★
一部請求と相殺
→一部請求において相殺の抗弁が認められる場合,請求の基礎となる債
権全額から自動債権の額を控除し,その残額が一部請求の額を超えない
場合はその残額の認容判決をし,その残額が一部請求の額を超える場合
は 原 告 が 請 求 し て い る 一 部 請 求 の 額 の 認 容 判 決 を す る ( 外 側 説 )。
*なお,一部請求と過失相殺も外側説による処理をするのが判例。
7
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
★★弱点補強★★
債務不存在確認訴訟
→通常は債権者が債務者に対して特定の債権の給付を請求するが,債務
者が債権者に対して特定の債権の不存在の確認を求めて債務不存在確認
訴訟を提起することがある。
→債務不存在確認訴訟は,当該債権の給付訴訟の裏返しなので,訴訟物
は当該給付訴訟のものと同一である。そのため,債務不存在確認訴訟が
提起されているのに,債権者が当該債権を求めて別訴提起することは二
重起訴の禁止に触れる。なお,債権者が反訴提起をして当該債権の給付
請求をすることは可能である。反訴の場合には矛盾判決のおそれ等の二
重起訴の弊害がないからである。
→債務不存在確認訴訟が提起された場合の当該債権の立証責任は,被告
である債権者が負う。なお,債務者である原告は訴訟物を特定する責任
があるので,債権の発生原因事実を訴状に記載することになるが,記載
した事項につき立証責任を負っているわけではない。
→債務者が原告として,債権者に対して100万円の貸金債権の全部が
存在しないことの確認を求めているのに対し,裁判所が,その内60万
円の債権が残っていると判断した場合,当該債権は60万円を超えては
存在しないとの判決を一部認容判決として言い渡すことができる。
→債務者が原告となり債務の上限を示してその一部の不存在確認を求め
た 場 合 の 訴 訟 物 は ,そ の 債 権 の 債 務 者 が 不 存 在 を 求 め る 部 分 の み で あ る 。
例:債務者である原告が,100万円の債権の内40万円の債権が存
在することを自認し60万円(自認した40万円を超える部分)
の不存在の確認を求める場合,その60万円の部分が訴訟物とな
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
る。
→債務の一部の不存在の確認を求める訴訟の訴訟物は,債務の上限から
債務者が自認する額を控除した部分となるので,債務者が債務の上限を
明示しないで債務の一部不存在確認を求めた場合は訴訟物の範囲が特定
できず不適法な訴えとなる。
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
4
サンプルテキスト
訴えの利益
(1 )
訴えの利益の意義
→個々の請求内容について,本案判決による紛争解決の必要性と
実効性を検討するための要件を訴えの利益という。
→ 訴 え の 利 益 は ,不 必 要 な 訴 え を 裁 判 所 の 審 理 の 対 象 か ら 排 除 し ,
被告には応訴の負担から解放する機能を有する。
→訴えの利益は,訴訟要件の1つなので,これを欠く訴えは不適
法 却 下 さ れ る (14 0 参 照 )。
例:不起訴の合意があるのに提起された訴えは訴えの利益が
なく不適法
(2 )
給付の訴えの利益
→現在給付の訴えは,履行期が到来している給付請求権の給付を
求めるものであることから,特段問題なく訴えの利益が肯定さ
れる。
→将来給付の訴えは,口頭弁論終結時に弁済期が到来してないこ
とから,予め請求をする必要があるときに限り訴えの利益が肯
定 さ れ る ( 13 5)。
→あらかじめ請求必要があるかどうかは,①義務者の態度,②給
付義務の性質等を考慮して判断される。
→継続的不法行為に基づく将来の損害賠償請求権については,損
害の発生の有無や額が不明確であることから,特別な要件(請
求適格)を充足したときに限り肯定される。
*請求適格
①請求の基礎となる事実関係・法律関係が既に存在し,そ
の継続が予想される
②将来において請求を否定する債務者に有利な影響を生
ずる将来の事情の変動が明確に予測しうる事由であるこ
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
と
③②の事由を債務者に請求異議の訴えを提起させて主張
立証させることが当事者の公平の観点から不当とはいえ
ないこと
(3 )
確認の利益
→確認の訴えの対象は無限定に広がりがちなので,確認の利益に
より不必要な訴えを排除する必要性が特に大きい。
→確認の利益は以下の基準から判断される。
ア
対象選択の適否
→原則として,①現在の,②権利法律関係の確認を求めるもの
でなければならない。
→過去の法律関係の確認や,事実関係の確認であっても,現在
の 紛 争 の 抜 本 的 解 決 に 役 立 つ も の で あ れ ば ,例 外 的 に 確 認 の
利益が認められる。
例:遺産確認の訴えは,過去の法律関係の確認ではあるが,
遺産分割の対象となる遺産の範囲につき既判力をもって
確定すれば,それを前提とする遺産分割の安定化により
現在の法律関係に関する紛争の抜本的解決につながるの
で確認の利益が認められる。
例 : 証 書 真 否 確 認 の 訴 え ( 134 ) は , 権 利 法 律 関 係 の 確 認 で
はないが,法律関係を証する書面の成立の真否が確認さ
れれば,現在の法律関係に関する紛争の抜本的解決につ
ながるので確認の利益が認められる。
イ
方法選択の適否
→確認判決を得ても給付の強制執行ができないので,給付訴訟
が提起できるときは確認の利益を欠く。
11
短答コンプリートマスター民事訴訟法
ウ
サンプルテキスト
即時確定の利益
→確認の訴えの提起により原告の権利又は法律関係の現在の危
険・不安を除去できるものでなければ,確認の利益を欠く。
例:ある権利関係につき当事者間で争いがない状態で確認
訴訟を提起しても即時確定の利益がなく不適法である。
(4 )
形成の訴えの利益
→形成の訴えは,法律が定める形成要件が認められる限り原則と
して訴えの利益が肯定される。
→例外として,役員を選任した株主総会決議取消訴訟の係属中に
その役員の任期が満了した場合等,訴訟提起後の一定の事情の
変化により訴えの利益が消滅することもある。
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
5
サンプルテキスト
当事者適格
(1 )
当事者適格の意義
→訴訟物たる特定の権利又は法律関係につき,当事者として訴訟
を追行し,本案判決を求めうる資格を当事者適格という。
→訴訟要件の1つで,これを欠く訴えは不適法となる。
*訴訟物に着目している点で当事者能力と異なる。当事者能力は
訴訟物を離れて,訴訟の当事者となりうる一般的資格があるか
どうかの問題である。
*誰を当該訴訟の当事者とするのが紛争の解決に役立つのかとい
視点で見ている点で訴えの利益と異なる。
(2 )
ア
当事者適格を有する者
原則
→訴訟物たる権利義務の帰属主体となる者は,原則として当事
者適格を有する。
イ
例外
①法定訴訟担当
→本来の利益帰属主体に代わり第三者が当事者適格を有する
ことが法律上認められるもの。
例:債権者代位訴訟
②任意的訴訟担当
→本来の利益帰属主体の授権により第三者に訴訟追行権が授
与されるもの。
例 : 明 文 の あ る も の → 選 定 当 事 者 ( 30 ), 手 形 の 取 立 委
任 ( 手 形 18)
明文のないもの→民法上の組合の業務執行組合員
(判例)
13
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
* 明 文 の な い 任 意 的 訴 訟 担 当 に つ い て は ,弁 護 士 代 理 の 原 則( 54Ⅰ 本 )
や 訴 訟 信 託 の 禁 止( 信 託 法 11 )の 趣 旨 に 反 し な い 限 り 許 容 さ れ る( 判
例 )。
注:上記趣旨:訴訟に無関係な者が利益を得るために訴訟に関わる
ことで訴訟に混乱を生じさせることを防止
*民法上の組合の業務執行組合員は,組合規約により組合財産に関す
る管理をする権限等が与えられている場合は,それに関する訴訟を
その者に担当させても,弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止の趣旨
に反しないので許容される。
14
短答コンプリートマスター民事訴訟法
6
サンプルテキスト
請求の複数
(1 )
訴 え の 客 観 的 併 合 ( 136) の 態 様
①単純併合
→複数の請求のそれぞれにつき無条件に判決を求める併合形態
例:物の引渡請求とその執行不能に備えた代償請求
→裁判所は全ての請求につき判決をしなければならない。
→弁論の分離,一部判決は許される。
②予備的併合
→法律上両立し得ない複数の請求に順位を付し,先順位の請求
の認容を解除条件として後順位請求を求める併合形態
例:売買代金支払請求とともに,売買が無効であることを
理由とする引渡し済みの目的物の返還請求をする場合
→裁判所は主位的請求を認容するときは予備的請求を審判する
必 要 は な く な る が ,主 位 的 請 求 を 棄 却 す る と き は 予 備 的 請 求
を審判しなければならない。
→弁論の分離,一部判決は許されない。
③選択的併合
→同一の目的に向けられた法律上両立しうる複数の請求のうち
いずれか1つが認容されることを解除条件として他の請求
を求める併合形態
例:同一物の返還請求につき所有権に基づく請求と占有権
に基づく請求をする場合
→弁論の分離,一部判決は許されない。
15
短答コンプリートマスター民事訴訟法
(2 )
ア
サンプルテキスト
訴えの客観的併合のうち後発的な併合形態
訴 え の 変 更 ( 143)
要件
①請求の基礎の同一性
→もっぱら被告の利益保護のための要件なので,被告の
同意がある場合や同意がなくてもそれがあると同視し
うる事情があるときはこの要件は不要となる。
→請求の基礎の同一性は,新旧の請求の権利関係の社会
的共通性や,訴訟資料の流用の可否等から判断する。
②事実審の口頭弁論終結前
③著しく訴訟手続を遅滞させない
④ 訴 え の 客 観 的 併 合 要 件 の 一 般 的 要 件 ( 136) を 具 備
⑤ 手 続 的 要 件 と し て 書 面 に よ る こ と が 必 要 ( 143Ⅱ )
イ
反 訴 ( 146 )
要件
①反訴請求が本訴請求又はこれに対する防御方法と関連す
る
例:売買代金の支払請求訴訟の係属中に,被告が目的物
の引渡請求を求めて反訴提起する場合
②本訴が訴訟係属しかつ事実審の口頭弁論終結前
③著しく訴訟手続を遅滞させない
④反訴請求が他の裁判所の専属管轄に属さない
⑤ 訴 え の 客 観 的 併 合 要 件 の 一 般 的 要 件 ( 136) を 具 備
⑥ 手 続 的 要 件 と し て 訴 え 提 起 に 準 じ る ( 146Ⅳ )
16
短答コンプリートマスター民事訴訟法
ウ
サンプルテキスト
中 間 確 認 の 訴 え ( 145)
要件
①訴訟係属中に本来の請求の当否の判断に必要な先決関係
にある法律関係につき当事者間で争いがあること
例:所有権に基づく返還請求の訴えにおいて,争いがあ
る所有権の確認を原告又は被告が求める。
② そ の 法 律 関 係 の 確 認 を 求 め る も の で あ る こ と( 確 認 判 決 )
③事実審係属中でかつ口頭弁論終結前
④確認対象が他の裁判所の専属管轄に属さない
⑤ 訴 え の 客 観 的 併 合 要 件 の 一 般 的 要 件 ( 136) を 具 備
⑥その他手続的要件
注 意 : 中 間 確 認 の 訴 え と 中 間 判 決 ( 245 ) は 全 く 別 の 制 度 な の
で混同しない。
17
短答コンプリートマスター民事訴訟法
7
サンプルテキスト
訴え提起・訴訟係属の効果
(1 )
訴訟係属
→訴え提起がなされ,訴状が被告に送達されると,二当事者対立
構造が生じ,この時点で裁判所に訴訟が係属したことになる。
(2 )
二 重 起 訴 の 禁 止 ( 142 )
→裁判所に係属する事件については更に訴えを提起できない。
*二重起訴禁止の趣旨
①矛盾判決の防止
②被告応訴の煩
③訴訟不経済
→二重起訴の判断は,①当事者の同一性と,②訴訟物の同一性か
ら判断する。
→二重起訴の禁止に触れないことは訴訟要件なので,これに触れ
る訴えは不適法。
→訴訟係属中に当該訴訟で訴求している債権を,別訴において相
殺の抗弁に供することは,相殺の抗弁の判断には既判力が生じ
る こ と か ら ( 114Ⅱ ), 二 重 起 訴 の 禁 止 の 趣 旨 が 妥 当 し , そ の よ
う な 相 殺 は 許 さ れ な い ( 相 殺 の 抗 弁 後 行 型 )。
→訴訟で相殺の抗弁に供した自動債権を,当該訴訟係属中に別訴
で訴求することも,上記と同じ理由で許されない(相殺の抗弁
先 行 型 )。
→別訴において明示的一部請求をしている債権の残部を自動債権
18
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
とする相殺の抗弁は,債権の分割行使による相殺の主張が訴訟
上の権利濫用に当たるなど特段の事情がない限り許容される
( 判 例 )。
*明示的一部請求の残部には既判力が及ばない点や相殺の抗
弁が相手方の提訴を契機として防御的に提出せざるを得ない点
が考慮されている。
(3 )
時効中断効
→ 訴 え の 提 起 し た 時 点 で 時 効 中 断 効 が 生 じ る ( 147)。
→時効中断効が及ぶ範囲は,訴訟物に限られるので,明示的一部
請求の場合には,残部には時効中断効は及ばない。
→債務不存在確認訴訟において,被告である債権者が債権の発生
原因事実を主張した場合は,その時点で時効中断効を認める。
→ 訴 訟 上 の 留 置 権 の 抗 弁 は , 被 担 保 債 権 に つ き 催 告 ( 民 15 3) と
同 様 の 時 効 中 断 効 を 認 め る ( 判 例 )。
19
短答コンプリートマスター民事訴訟法
第4章
1
サンプルテキスト
訴訟の進行―弁論主義
弁論主義の意義と根拠
(1)
意義
→裁判の基礎となる訴訟資料の提出を当事者の権能かつ責任とす
る建前を弁論主義という。
(2)
弁論主義の根拠
→民事訴訟の対象となる事項は実体法上,私的自治の原則に服す
る以上,訴訟法上も当事者の意思を尊重するのが望ましい。弁
論主義は,私的自治の訴訟法上の現れであり,民事訴訟の本質
に根ざしたものであると考えられる。
2
弁論主義の内容(3つの原則)
(1)
ア
弁論主義の第1原則と関連事項
第 1 原則の意義
→裁判所は,当事者が主張しない事実を認定して裁判(判決)
の基礎とすることはできない。
イ
主張責任
→当事者は自己に有利な事実を主張しておかないと,仮に証拠
上 そ の 事 実 が 認 め ら れ る と し て も ,そ の 事 実 は な い も の と し
て 取 り 扱 わ れ 不 利 益 を 受 け る 。こ の よ う な 不 利 益 を 回 避 す る
た め に ,当 事 者 は ,自 己 に 有 利 な 事 実 を 主 張 す る 責 任 を 負 う 。
→どの事実につきどちらの当事者が主張責任を負うのか(主張
責任の分配)は,証明責任の分配法則に従う。*証明すべき
事 項 は ,そ れ を 証 明 す る 前 提 と し て 先 に 主 張 し て お か な け れ
20
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
ばならないから。
ウ
訴訟資料と証拠資料の峻別
→裁判所は,証拠資料に現れた事実でも,当事者がそれを主張
し な い 限 り ,そ の 事 実 を 判 決 の 基 礎 と す る こ と が で き な い と
い う 弁 論 主 義 の 第 1 原 則 は ,訴 訟 資 料 と 証 拠 資 料 が 峻 別 さ れ
ていることを意味する。
→主張のない事実を判決の基礎とすると当事者に対する不意
打ちとなることから,訴訟資料と証拠資料の峻別は,当事者
に対する不意打ち裁判の防止の機能を果たす。
エ
主張共通の原則
→弁論主義は,裁判所と当事者との間の役割分担を規律する原
理 で あ る こ と か ら ,あ る 事 実 の 主 張 が い ず れ の 当 事 者 か ら な
されたのかという点までは考慮されない。したがって,裁判
所は,当事者の一方が自己に不利益な事実を主張した場合,
相 手 方 が そ の 事 実 を 援 用 し な い と し て も ,そ の 事 実 を 判 決 の
基礎にすることができる。
★★
弱点補強
★★
先行自白
→当事者の一方が自己に不利益な事実を主張し,相手方がその事実を援
用した場合は先行自白が成立し,後述する弁論主義の第2原則の問題と
なる。
→主張共通の原則が問題となる事実関係と先行自白が問題となる事実関
係との違いに注意する。以下の具体例を参照。
→例:原告が,貸金返還請求訴訟において被告が一部弁済した事実を主
張した場合,一部弁済の事実は被告に有利な事実として被告が主張立証
す る べ き 事 実 で は あ る が ,裁 判 所 は ,被 告 が そ の 事 実 を 主 張 し な く て も ,
21
短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
そ の 事 実 を 判 決 の 基 礎 と す る こ と が で き る ( 主 張 共 通 の 原 則 )。 も っ と
も,仮にその事実に争いがあれば,裁判所は証拠調べによる事実認定が
必要となり,証拠調べの結果その事実が認められないときは,裁判所は
その事実を判決の基礎とすることはできない。また,被告が,この事実
を援用した場合は,この事実につき原告に先行自白(裁判上の自白)が
成立し,裁判所はこの事実を判決の基礎としなければならなくなる(裁
判 上 の 自 白 の 裁 判 所 拘 束 力 )。 こ の よ う に あ る 事 実 に つ き 主 張 共 通 の 原
則が作用する場面であれば無条件に裁判所がその事実を認定しなけれ
ばならないわけではないことを意識しておくとよい。
(2)
弁論主義の第2原則と関連事項
ア
第2原則の意義
→裁判所は,当事者間に争いのない事実はそのまま判決の基礎
にしなければならない。
イ
裁判上の自白の意義
→裁判上の自白とは,相手方の主張する自己に不利益な事実を
認 め て 争 わ な い 旨 の 陳 述 を い い ,口 頭 弁 論( 準 備 的 口 頭 弁 論 )
又は弁論準備手続の期日においてなされたものをいう。
→自己に不利益な事実とは,相手方が証明責任を負う事実をい
う ( 判 例 )。
*基準として明確
ウ
裁判上の自白の効力
①
証明不要効
→ 自 白 が 成 立 し た 事 実 は 証 明 を 要 さ な い ( 17 9 )。
②
審判排除効(裁判所拘束力)
→裁判所は,自白が成立した事実はそのまま判決の基礎とし
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なければならず,これに反する事実を認定してはいけない
( 第 2 原 則 )。
③
撤回禁止効(当事者拘束力)
→自己責任と禁反言から,当事者は,原則として,自白内容
に矛盾する主張ができなくなる。
→撤回の要件:①相手方の同意があるとき,②自白が反真実
か つ 錯 誤 に よ る と き ,③ 自 白 が 刑 事 上 罰 す べ き 他 人 の 行 為
によるとき
*①のときは相手方に不利益が及ばないので禁反言の責任を
負わせる必要がない。
*②と③のときは自己責任を負わせることが酷である。
★★弱点補強★★
証明不要効と審判排除効の違い
→証明不要効は,自白が成立した事実につき単に証明を要さないとする
だけで,裁判所や当事者を拘束する効力までは含まない。証明不要効と
審判排除効は自白が成立した事実につき証明が不要となる点で似てい
るようだが,拘束力があるか否かという点で異なるので,区別して理解
しておく。
→なお,この2つの効力を区別する実益としては,権利自白の効果につ
き,証明不要効は肯定し,審判排除効及び当事者拘束力を否定する見解
に立つときに意味が出てくる。
(3)
弁論主義の第3原則
→裁判所は,争いのある事実について証拠調べをするには当事者
が 申 し 出 た 証 拠 に よ ら な け れ ば な ら な い ( 職 権 証 調 べ の 禁 止 )。
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3
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弁論主義の対象事実
→弁論主義の適用は主要事実に限り,間接事実や補助事実には適用さ
れない。
*当事者の攻撃防御の対象は主要事実に集中するので,弁論主義の
不 意 打 ち 防 止 機 能 を 果 た す た め に は ,主 要 事 実 に つ い て 弁 論 主 義 を
適用すれば足りる。
*間接事実や補助事実は証拠と同様の機能を有するので,これを弁
論主義の対象として裁判所を拘束すると,事実認定につき裁判所
の自由心証に基づく合理的判断を阻害するので妥当ではないから。
*主要事実:権利の発生・変更・消滅という法律効果の判断に直接
必要な事実
*間接事実:主要事実の存否を推認するのに役立つ事実
例:被告が高価な買い物をした事実から,貸金返還訴
訟における金銭の授受という主要事実を推認する。
*補助事実:証拠の証明力(証拠の信用性)に影響を与える事実
例:目 撃 証 人 の 視 力 が 良 い と い う 事 実 や 誠 実 な 人 物( 嘘
をつかない人物)であるという事実
主要事実
金銭の授受
推認
*証拠と同様の機能
証明
直接証拠
間接事実
消費貸借契約書
被告が高価な買い物
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4
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事実の主張の要否が問題となった判例
(1)
過失相殺
→過失相殺は,債務者が,それをする旨の主張をしなくても裁判
所が職権ですることができるが,債権者の過失を基礎づける事
実(評価根拠事実)については債務者が主張立証責任を負う。
*過失相殺の制度趣旨:損害の公平な分担
(2)
代理の要件
→法律行為が当事者間で直接なされた場合と,代理人を介してな
された場合とで法律効果に違いがないという理由で,当事者が
代理の事実を主張していなくても裁判所が代理の事実を認定し
て契約締結の事実を認めても弁論主義違反とならないとした判
例がある。
→ も っ と も ,こ の 判 例 は ,代 理 人 と さ れ た 者 の 証 人 尋 問 が 行 わ れ ,
当事者も,代理による法律行為を裁判所に認定されることが予
想できた事案なので,当事者に対する実質的な不意打ちがなか
ったといえる場合であったことに注意を要する。
→本来は,法律行為が代理によりなされた場合は,代理の要件事
実が認められなければ当事者間に法律効果は発生しないので,
代理の要件事実は,その主張により利益を受ける者が権利根拠
規定として主張立証するべき事実であるといえる。
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(3)
サンプルテキスト
所有権の移転経過の事実
→所有権に基づく返還請求訴訟や所有権移転登記請求訴訟等が認
められるためには,原告が目的物につき現在の所有権を有して
いることが必要である。
→原告の現在の所有につき被告の権利自白が成立する場合は,原
告は所有権の移転経過につき主張立証する必要はなくなる(権
利 自 白 の 証 明 不 要 効 )。
→しかし,被告がそれを争った場合は,原告は,被告の権利自白
が成立する時点以降の所有権の移転経過を基礎づける事実を,
権利根拠規定として主張立証しなければならない。
例:XがYに土地所有権に基づく返還請求訴訟を提起し,Xは,
土地の所有権につき,A→売買→B→相続→Xと主張した。
これに対し,Yは,A→売買→C→相続→Yと主張した。
以上の事実関係において,裁判所が,当事者が主張しないB
からCへの死因贈与の事実(抗弁2)を認定して請求棄却する
ことは,当事者の主張しない事実基礎に判決したことになり弁
論主義の第 1 原則違反となる。
参考
攻撃防御の構造
請求原因事実
①Aもと所有
←権利自白
②AB売買
③XがBを相続
(1)B 死 亡
(2)X は B の 子
④Y現占有(登記請求をするならYの現登記)
抗 弁 1 (所 有 権 喪 失 )
抗弁2(所有権喪失)
①AC売買
①BC死因贈与
26
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サンプルテキスト
★★弱点補強★★
事実の主張に対する認否の種類
→否認:その事実は存在しないとの主張(事実を争う旨の主張)
→不知:その事実の存在を知らないとの主張
不 知 の 主 張 は そ の 事 実 を 争 っ た も の と 推 定 す る ( 1 5 9Ⅱ )。
→沈黙:その事実につき明確な態度を示さないこと
弁論の全趣旨からその事実を争ったものと認められない限り,
自白したものとみなされる(擬制自白
1 5 9Ⅰ )。
擬制自白は事実審の口頭弁論終結時に成立するので,沈黙した
事実も,口頭弁論終結前なら積極的に争うことができる。
→ 認 め る ( 自 白 ): そ の 事 実 の 存 在 を 認 め る と の 主 張
主要事実を自白すると裁判上の自白の効力が生じる。
★★弱点補強★★
否認と抗弁
→相手方の主張を排斥する主張である点では共通するが,相手方の主張
と両立する事実を積極的に主張するものを抗弁といい,両立しない事実
を主張するものを否認という。抗弁を主張する者は抗弁事実につき主張
立証責任が発生する点でも否認と異なる。
例 :貸 金 返 還 請 求 訴 訟 で ,被 告 が ,
「その金は原告が被告に贈与したも
の だ 。」 と 主 張 し た 場 合 , 原 告 が 請 求 原 因 事 実 と し て 主 張 す る 「 返
還 の 約 束 」の 事 実 と 両 立 し な い の で ,被 告 の こ の 主 張 は 否 認 で あ る 。
参考:貸金返還請求権の請求原因事実
①金銭の授受
②返還の約束
③弁済期の合意
④弁済期の到来
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第8章
1
サンプルテキスト
既判力
終局判決
→終局判決には,請求の当否を判断する本案判決と,請求の当否を判
断せず訴訟要件を欠く訴えを却下する訴訟判決とがある。
→本案判決については基準時における訴訟物の存否について既判力が
生じ,訴訟判決には基準時における訴訟要件の存否について既判力
が生じる。
★★弱点補強★★
訴訟要件
調査の開始
資料の収集
公益性が強度
具体例
当事者の実在
本案と希薄
職権探知
職権調査
専属管轄
当事者能力
公益性あり
任意管轄
本案と密接
訴えの利益
弁論主義
公益性が希薄
当事者適格
不起訴の合意
抗弁事項
訴えの取下合意
仲裁合意
*訴訟要件のうち,その調査の開始を裁判所主導でするものを職権調
査事項といい,当事者の抗弁をまってはじめて裁判所が調査を開始
すれば足りるものを抗弁事項という。
*訴訟要件のうち,その判断資料の収集を裁判所が主導でするものを
職権探知事項といい,当事者の主導とするものを弁論主義事項とい
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
う。
*訴えの取下げ合意が成立したにもかかわらず,原告が訴えを取り下
げない場合は,原告は訴えによる権利保護の利益を喪失(訴訟要件
を 喪 失 ) し た も の と し て 訴 え は 不 適 法 却 下 さ れ る ( 判 例 )。
★★弱点補強★★
中 間 判 決 ( 245)
→当事者間で争点となった訴訟法上の事項や実体法上の事項につき,裁
判所が,終局判決に先立ち判決することを中間判決という。
*試験対策としては中間判決事項(下記①②③)をおさえておく。
→中間判決をした裁判所はその判断を前提に終局判決をしなければなら
ない。
→中間判決には既判力や執行力はなく,独立の控訴もできない。
→中間判決事項
①独立した攻撃防御方法
例:貸金返還請求訴訟において相殺の抗弁を主張したときに,
その主張は独立した攻撃防御方法として中間判決事項とな
る。
②中間の争い
例:ここでの中間の争いとは,例えば訴訟要件の存否を意味す
る。
③請求の原因(原因判決)
例:損害賠償請求訴訟等で請求の原因と損害の数額に争いがあ
る場合に,請求の原因があることを中間判決し,その後に
数額について審理する場合に利用する。
29
短答コンプリートマスター民事訴訟法
2
サンプルテキスト
既判力
(1)
意義
→確定判決で判断を示された事項についての後訴における通用力
を既判力という。
→既判力の正当化根拠は,①敗訴者には不利益を負うにふさわし
い手続保障がなされていたといえること,②勝訴者への不当な
紛争の蒸し返しを防止する必要があることに求められる。
(2)
既判力が作用する3つの場面
①後訴の訴訟物が前訴の訴訟物同一の場合
②前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の先決問題となる場合
例:前訴で所有権確認訴訟を提起して判決が確定した場合,後
訴 で 所 有 権 に 基 づ く 返 還 請 求 を す る と ,前 訴 の 訴 訟 物 が 後 訴
の 訴 訟 物 の 先 決 問 題 と な る の で ,前 訴 の 既 判 力 が 後 訴 に 及 ぶ 。
*前訴と後訴の訴訟物が逆の場合は既判力が生じないので注意。
③後訴の請求と前訴の請求が矛盾関係に立つ場合
例:前訴の訴訟物がXの特定の不動産に対する所有権で,後訴
の訴訟物がYの特定の不動産に対する所有権である場合,訴訟
物は異なるが,一物一権主義から同一物に2つの異なる所有権
が成立することはないので,両請求は矛盾関係となる。
*なお,後訴に前訴確定判決の既判力が及んでも,後訴の提起自体が
不 適 法 と な る の で は な く ( 既 判 力 は 訴 訟 要 件 と は 無 関 係 ), 前 訴 基
準時における前訴訴訟物の判断を前提に後訴の当否を判断するこ
とになる。
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
(3)
サンプルテキスト
既判力の時間的限界
→既判力は,前訴において当事者が攻撃防御を尽くせた時点である
口頭弁論終結時を基準に発生する。
→ 基 準 時 前 の 事 由 は 後 訴 で 主 張 が 許 さ れ な く な る( 既 判 力 の 遮 断 効 )。
→取消権や解除権については,前訴でその行使をしておかないと,
後 訴 で そ の 行 使 を 主 張 す る こ と が で き な い ( 判 例 )。
*取消権や解除権の行使が前訴の基準時後であったとしても,前
訴の訴訟物たる権利関係は,取消権の瑕疵が内在していたもの
であるといえるし,基準自前にそれを行使することもできたと
いえるからである。
→白地手形の白地補充権も,基準自前に行使することができたはず
なので,基準時後に白地補充をしても,前訴確定判決により遮断
される。
→相殺権や建物買取請求権については,それを行使すると実質敗訴
となるので,前訴においてそれを行使することを当事者に期待す
るのは酷であるので,後訴においてその行使は遮断されない。
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(4)
サンプルテキスト
既 判 力 の 客 観 的 範 囲 ( 114)
→ 既 判 力 は , 判 決 主 文 の 判 断 に の み 生 じ る の が 原 則 で あ る が ( 114
Ⅰ ), 例 外 的 に , 相 殺 の 抗 弁 に 対 す る 判 断 に つ い て は 理 由 中 の 判
断 に も 既 判 力 が 生 じ る ( 114Ⅱ )。
* 判 決 主 文 の 判 断 と い っ て も ,主 文 の 表 示 は「 被 告 は ,原 告 に 対 し て ,
1 0 0 万 円 を 支 払 え 。」,「 原 告 の 請 求 を 棄 却 す る 。」 と い っ た よ う に
簡素な表示であるので,実際には判決理由を検討しないと既判力が
及ぶ範囲が確定できない。原則として訴訟物に対する判断に既判力
が及ぶというイメージをもっておくとよい。
* 明 文( 11 4 Ⅱ )が な い の に 訴 訟 物 以 外 の 判 断 に に つ い て も 既 判 力 の 客
観的範囲が及ぶことが肯定された判例
・限 定 承 認 の 主 張 が な さ れ た と き の 判 決 主 文 の 責 任 限 定 部 分(「 相
続 財 産 の 範 囲 で 支 払 え 」) に つ き , 限 定 承 認 の 存 在 及 び 効 力 も 訴
訟物に準じるものであり,既判力に準じる効力が生じるとして,
限定承認の留保付き判決の確定後に,無留保判決を求めるため
に限定承認と相容れない事実を主張することは許されないとし
た。
・給付判決の主文に強制執行をしない旨の合意があることが示さ
れた場合,不執行の合意の点についても訴訟物に準じるもので
あり,既判力に準じる効力が生じることを認めた。
・同時履行の抗弁権が主張された場合における引換給付判決の引
換え給付部分については既判力が生じることを認めていない。
*引換給付の内容となる請求権は訴訟物とは別個独立の訴訟物
となりうるものであることが考慮されているものと考えられる。
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
*信義側と争点効による後訴での遮断
→ 前 訴 確 定 判 決 の 理 由 中 の 判 断 で あ っ て も ,後 訴 で の 主 張 が 前 訴 の 主
要な争点とされており実質的に前訴の不当な紛争の蒸し返しとい
えるようなときは,信義側上,そのような主張が許されないことが
ある。
→上記のような考えを争点効という言葉を使って説明する学説もあ
る。学説によっては,実質的に前訴不当な蒸し返しといえるかの判
断につき詳細な要件を定立しているものもある。
例:①前訴・後訴での主要な争点が共通
②それにつき前訴で主張立証が尽くされた
③裁判所が実質的にその争点につき判断した
④前訴・後訴の係争利益(訴訟物)がほぼ同等
⑤後訴で当事者が援用した
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
(5)
サンプルテキスト
既 判 力 の 人 的 限 界 ( 主 観 的 範 囲 )( 1 1 5)
ア
既 判 力 は 原 則 と し て 訴 訟 の 当 事 者 間 に 及 ぶ ( 11 5 Ⅰ ① )
イ
法定訴訟担当の場合の利益帰属主体に及ぶ(同②)
→既判力の拡張の根拠:代替的手続保障
例:債権者代位訴訟の判決効は債務者にも及ぶ。
例:選定当事者により脱退した当事者にも判決効は及ぶ。
ウ
口頭弁論終結後の承継人にも及ぶ(同③)
→既判力の拡張の根拠:代替的手続保障
→本条の承継人に対しては,別訴を提起しないでも,承継執行
文 の 付 与( 民 事 執 行 27Ⅱ )を 受 け て 強 制 執 行 が で き る の で 便
利である。
→ 民 法 94 条 2 項 の 第 三 者 等 の 固 有 の 利 益 が あ る 者 は ,独 自 の 手
続 保 障 が 必 要 な の で ,こ こ で い う「 承 継 人 」に は 該 当 し な い 。
この者に対して強制執行するときは別訴を提起して債務名
義を得る必要がある。
*このような第三者には,口頭弁論終結後の承継人として
既判力が及ばないので,後訴が提起されても,前訴確定判決
の 既 判 力 に 影 響 さ れ な い ( 既 判 力 の 拡 張 の 否 定 )。
* こ の よ う の 第 三 者 は ,前 訴 判 決 の 執 行 力 が 及 ば な い の で ,
前訴確定判決に承継執行文の付与を受けても当該第三者に
対して強制執行できない(執行力の拡張の否定)
エ
請求の目的物の所持人(同④)
→既判力の拡張の根拠:物の所持につき固有の利益を有さず手
続保障が不要
例:受寄者,管理人
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短答コンプリートマスター民事訴訟法
サンプルテキスト
★★弱点補強★★
反射効
→反射効は以下のような事例で問題となる。
→事例:債権者Xが,主債務者Y1,連帯保証人Y2に対してそれぞれ
債務の履行を求めた訴訟で,Y2が事実関係を争わず先に請求認容判決
がなされ同判決確定後,Y1に対する請求については主債務が存在しな
いとして請求棄却された。
このような事実関係のもと,Y2は,Y1の勝訴判決をもちだして確
定済みのY2に対する判決を争えるか,すなわち反射効が肯定されるの
かということが明文がなく問題となる。
*反射効:第三者(Y2)の法的地位が判決当時の当事者(Y1)の法
的地位に依存する関係にある場合,第三者は既判力を直接受けるわけで
はないが,第三者にも反射的に利益・不利益が及ぶとする考え。
→判例は,反射効という考え方を認めていない。
→上記事例でいうと,Y2は後訴を提起しても,Y1の勝訴判決を援用
して反射効による利益を受けられない。
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