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騎士公娼の見る夢 - タテ書き小説ネット

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騎士公娼の見る夢 - タテ書き小説ネット
騎士公娼の見る夢
ときぴお
!18禁要素を含みます。本作品は18歳未満の方が閲覧してはいけません!
タテ書き小説ネット[R18指定] Byナイトランタン
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁ノクターンノベルズ﹂﹁ムーンライトノ
ベルズ﹂﹁ミッドナイトノベルズ﹂で掲載中の小説を﹁タテ書き小
説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は当社に無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範囲を超え
る形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致します。小
説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
騎士公娼の見る夢
︻Nコード︼
N9759BR
︻作者名︼
ときぴお
︻あらすじ︼
103もの国々を侵略し覇道を成したゼオムント国の王は、敗戦
国の王族・貴族・騎士・戦士・魔導士らの中から特に美しい者だけ
を選び、1000人もの公娼を制度として作り、愛する国民へと提
供した。
国民たちは戦勝の喜びと支配者としての欲望を満たすため、公娼達
に思いつく限りの被虐を与え、辱めていった。
そんな日々が3年も経った頃、ゼオムント国は一つの壁にぶつかっ
1
てしまう。
全力で思いつく限りに公娼を玩具にしてきた結果、彼らは肥大しき
った加虐心を持て余してしまったのだ。
今のまま公娼達を犯しても新鮮味は薄れ、彼らは更なる被虐を求め
ていた。
そんな時、ひとつの進言が王を動かす。
﹁王よ、西でございます﹂
人間が支配する国家群の西側には、魔物の領域が広がっている。
2
王宮には優秀な魔導士が相応しい︵前書き︶
初めて投稿させていただきます。
誤字脱字違和感諸々感じたことを指摘していただけると嬉しいです。
エロは好きです。
直接的なエロが好きです。
スクール水着よりマイクロビキニが好きです。
触手よりオークの方が好きです。
よろしくお願いいたします。
3
王宮には優秀な魔導士が相応しい
ゼオムントという覇道を謳い、成し遂げた国があった。
人間が支配する103の国々を侵略し、戦火に飲みつくした。
覇道を行った王は強欲で残忍で、そして何より好色な人物として人
々に恐れられる一方で、歪みきった自国民への愛があった。
打ち倒した国の王族・貴族・騎士・戦士・魔導士などの戦争に関わ
った者達を捕えると、男共は有無を言わさず奴隷とし、従わぬ場合
は首を打った。
そして、女。
老いさらばえていたり、肉体的風貌的魅力に欠く者は男と同様の末
路を強いたが、見目麗しい人間が皆無だったわけではない。
若く、美しく、獣欲をそそり、その身と心を汚すことで戦争に勝っ
たという支配の欲望を充実させることが叶う存在を、ゼオムントの
王は公娼として愛する民へ分け与えたのだ。
103の国からおよそ1000の公娼が生まれた。
ゼオムントの国民は王から与えられた玩具を嬉々として弄んだ。
公娼相手に金を払う馬鹿はいない、彼らは意識的に残虐な存在へ進
化していった。
公衆便所の横に全裸で枷につながれ春夏秋冬を過ごした魔導国家の
王妃がいた。
立ち上がれぬよう5人単位で手足を結ばれ転がされたまま家畜とし
て扱われ、生ゴミや排泄物を主食として繁殖の為だけに生きること
を許された巫女騎士団がいた。
乳房や顔や陰部に卑猥な刺青を彫られ、全裸のまま見世物の剣闘を
強いられ、敗れれば傷だらけの体のまま興奮した観衆の中に放り込
まれた女戦士がいた。
公娼制度が始まり一年が経った頃、王宮に仕える魔道士が王より国
4
家第一等級の勲章を授与された。
曰く、
﹃貴君の開発した新魔法により公娼達は末永く我が国に奉仕
することが可能となり、我並びに我が愛する国民の大いなる喜びと
なることであろう﹄と。
〟特殊な刻印を刻むことにより、外見年齢は衰えさせず天寿を迎え
る時まで現在の姿で有り続ける呪い〟それが魔導士の開発した新魔
法だった。
直ちにすべての公娼へこの魔法の刻印が施された、その時に副次的
にではあるが、およそ1000人居たはずの公娼の数が800を切
っていることが判明した。
国民による公娼の手荒な利用で既に200もの死者が出ていたのだ。
王宮の官吏達は国民の荒すぎる扱いで公娼の数が更に減ることを苦
慮したが、王はそれを笑って許した。
﹃良いぞ、良い。楽しむことに全力を尽くすのは当然のことよ﹄そ
れが王の言葉であった。
魔導の延長線上から発展した情報共有技術を用い、記録した映像を
投射し、保存し、拡散することが可能になってからは、公娼の扱い
が大きく変わった。
商人たちが金を出し合い一つの組合を作って数人の公娼を確保し、
腕の立つ調教師などを用意して趣向を凝らした映像作品を作り、そ
れを売り捌くようになった。
肛虐の貴公子たる調教師某が、神聖国の姫に路道で被虐の限りを尽
くす︱︱等々、今までは首都でのみ楽しんできた娯楽をついには支
配領である公娼達のかつての祖国へまで届けるようになったのであ
る。
支配領の人間の中には泣き叫んで彼女達を憐れんだ者もいるだろう。
けれど、多くの人間は違った。
新しく支配者となったゼオムントの王は民を愛していて、民もまた
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それを受け入れてしまっていたのである。
映像が発売され、諸国にその痴態が余すことなく届けられた公娼の
もとへ、祖国を始め、かつての同盟国、あるいは敵対国の人間がや
ってきては乱暴に抱き捨てて行った。
諸国から公娼を求めて人間が大きく行き来するようになったのであ
る。
経済が潤わないはずがなく、ゼオムントは大きく発展し、発展して
いく分だけ公娼は汚されていった。
そして月日は流れ、公娼制度が始まって3年が経った頃、ゼオムン
ト国は一つの問題を抱えていた。
3年間、公娼を全力で辱めてきた結果、彼らは壁にぶつかってしま
ったのである。
試すだけの趣向は全て試し、得られるだけの映像資料も揃ってしま
った。
彼らは︱︱飽きてしまったのだ。
公娼を自らの手で犯し、笑うことに。
王の顔にも民の顔にも悩みに似た憂いが宿った時、以前勲章を授与
された魔導士が一つの進言をなした。
﹃王よ、西でございます﹄
ゼオムント国王によって統治された人間国家群と陸地で接した西側
の未開拓地域には、広大な魔物の生息域が存在している︱︱。
6
官吏はだいたい無表情の方が良い
大門の前に集合させられた時、彼女達は皆全裸であった。
500人を優に超える裸の女達が集められている。
首から一つ下げた木札に名前と出自と番号が書かれ、その文字の形
が彼女達同士での唯一の恰好の違いであった。
首都を遠く離れ、裸の尻を馬車の木床に打ち付けながら運ばれたの
は、連合国となったゼオムントの西端の町である。
﹁今度は⋮⋮どんなことをされるって言うのよ⋮⋮﹂
長い赤髪を左右に分けて結んだ小柄な少女が、そのまた小ぶりな胸
に手を当てながら震える声を発した。
﹁耐えましょう、セナ。いつか、きっと︱︱﹂
赤髪の少女の前に背を向けて立つ金髪のショートカットの女が振り
返りもせずに言った。
﹁きっと私達は、国を︱︱祖国を取り戻して見せます﹂
輝く金色の毛束の下、流れるような背中のラインと尻の隆起、長い
脚をもった美しい女であった。
﹁うん⋮⋮そうだね、耐えよう⋮⋮シャロン﹂
セナは目線を上げ自分よりも頭一つ大きな先輩騎士を見つめた。
﹁それにしても、一体どういう事なんだ、こんな僻地に連れてこら
れるなんて⋮⋮﹂
セナとシャロンのすぐ隣、長い黒髪を垂らした巨乳の女が漏らすよ
うにつぶやいた。
﹁騎士長、わかりません。今までは首都から連れ出されることはあ
ってもこんなに大人数での移動は無かった﹂
シャロンが黒髪の女︱︱シャロンとセナが所属していたリーベルラ
ント騎士国家の精鋭騎士ステアへ答えを返した。
﹁今まで外へ連れ出されるとしたら、あの屈辱にまみれた﹃撮影﹄
7
と言うやつだけだったからな⋮⋮﹂
ステアの顔が憎々しげにゆがむ。
セナにも記憶がある。
調教師に自らの故郷にほぼ裸のまま連れて行かれ、見世物として扱
われ現地の人間と性交させられたのだ。
始めに自己紹介をさせられ、かつて自分がこの国の騎士であったこ
とを説明させた上で這いつくばって懇願し、男に性交をしてもらう
という、一時期大衆の間で流行したコンセプトだ。
その時身に染みたのは、絶望的な運命だった。
セナはまだ若く、20を越えてはいない。
シャロンはセナの二つ年上で、ステアはそのさらに二つ上だ。
王宮魔導士の呪いの刻印を受け、これから先外見は老けることもな
い。
つまり死ぬまで公娼として、ゼオムントに弄ばれなくてはいけない
ということだった。
けれど、その運命に抗って見せる。
ある時、商人組合の合併で同じ宿舎︱︱牢獄で管理されるようにな
った同郷の騎士達と再会し励まし合って誓ったのだ。
必ず現状を打破し、祖国を復興させてみせると。
﹁注目﹂
特に意気込む様子もなく、小さく声を発したのはここまで彼女達を
運んできた王宮の官吏だ。
﹁これからお前達公娼には、6人一組の班になってもらい、この門
を出て魔物の領域に入ってもらう﹂
﹁えっ⋮⋮﹂
セナの口から驚愕の息が飛び出し、周囲もそれと合わせるように一
斉にざわついた。
﹁静かに。目標は魔物領の西端にあるサイクス山に祀られている宝
具の回収だ。この宝具を手にした者には魔物の統帥権が与えられる
と伝承されている。それを貴様らで取ってくるのだ﹂
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ざわめきは収まらない、セナはシャロンとステアと視線を交わし、
同様の疑問を抱いていることを共有した。
公娼として辱められ続けた自分達に向けられる内容としては、明ら
かにおかしな目標だということ。
﹁そして、見事宝具を持ち帰った班には︱︱公娼の身分撤廃を約束
しよう﹂
ざわめきが一層大きくなった。
公娼の身分撤廃。
それはつまり︱︱
﹁人間に⋮⋮騎士に戻れるってことか⋮⋮﹂
呆然とステアが呟いた。
﹁ここに王の認可状もある。確認したければ後で見せてやろう﹂
官吏が一枚の紙を持ち上げ、皆の視線が一斉にそれに集まる。
﹁なお、各班に一人調教師︱︱今回の場合は﹃主人﹄が同行する。
貴様らは主人の命令に従い行動すること。主人には王宮魔導士の作
った隠密魔術石を持たせている為魔物に発見されない。貴様らが例
え魔物に犯されようが食われようが主人は無事だということだ﹂
官吏の背後に数十人の男達が待機しているのが見えた。
﹁あの男達が主人役なのでしょうか⋮⋮﹂
シャロンが忌々しげな眼で男達を見やる。
どの目も好色に輝いていて、道中また辱められることは必定のよう
だ。
﹁同時にこれは公娼としての映像提供も兼ねる。王宮魔導士謹製の
監視魔術が主人には掛けられているので、貴様らの魔物に犯される
姿は全て保存され、国家企画として全国に配布されることになる﹂
そういうことだろうと思いはしたけれども、セナは突きつけられた
好色な悪意に身震いした。
﹁良いか? 魔物達は種族単位で暮らしていると聞く。人間の女を
食らうことを喜ぶ種族もいれば犯すこと楽しむ種族も、飼う種族も
いると聞いている。せいぜい悲惨な目にあって私達国民を楽しませ
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てほしいものよ﹂
一口で魔物と言っても多様な種類が存在していることはセナも知っ
てはいるが、人間の女をどうやって扱うか、というところまで突き
詰めて把握しているわけではない。
一体どれほどの強さで、どのような残虐さを持っているのか、想像
してまた軽く震えた。
﹁それでは班割りは我々の方で既に取り決めてある。番号で管理し
てあるので貴様らの首から下げた木札の番号を呼んだ主人の所へ整
列しろ﹂
そう言って官吏は身をひるがえし、主人役の男達の中へ消えていっ
た。
セナ、シャロン、ステアは同じ牢獄から連れて来られていたため、
番号も同じでどうやら離れ離れにはならないようだった。
﹁呼ばれたな⋮⋮﹂
ステアが胸を張って︱︱双乳を大きく揺らして歩き出した。
﹁行こう、セナ﹂
シャロンが視線を厳しく前に据え、進んで行く。
セナはシャロンの背中を追って付いていく。
すると︱︱
﹁おぉい、ここだー﹂
のんびりとした中年男性の声が響く。
﹁さて、挨拶がてら全員に一回ずつしゃぶって貰おうかなぁ﹂
セナにはその声に聞き覚えがあった。
﹁え⋮⋮なんで⋮⋮?﹂
貧相な体格のボロを纏った男がステアを地べたに跪かせて、自らの
汚れた分身を口にあてがっていた。
﹁お父⋮⋮さん﹂
ステアの長く美しい黒髪を乱暴に掴み、押し付けるように口腔に肉
棒を突き入れながら、男がセナの顔を見上げて、
笑った。
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﹁よぉセナ、よろしくなぁ﹂
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父の外道︵前書き︶
お気に入り登録していただいた方、評価していただいた方、ありが
とうございます。
12
父の外道
﹁どうして⋮⋮﹂
絶句するセナの視線の先では、彼女を常に導き、支えてきてくれた
憧れの先輩騎士であるステアが口腔を激しく犯されている。
自分の父親に。
じゅぼじゅぼと下品な音を立てながら突きこまれる肉棒に、黒髪の
騎士は顔を顰めて耐えていた。
﹁どうしてって言われてもなぁ⋮⋮今回の主人役は魔法で守られて
いるとは言え、危険は危険ってことで金の払いが良いんだよ。そん
で募集された後に公娼名簿を見たら生き別れになっちまった娘の名
前があるじゃねぇか、親心だよ親心。おめぇを指名したのはよ﹂
そう言って彼は娘の裸身をつぶさに見やる。
﹁なんだぁおめぇ全然肉がついてねぇじゃねぇかよ⋮⋮三年間も公
娼やってたんだからたいそうエロい体に育ってんじゃねぇかと楽し
みにしてたのによぉ﹂
白けた表情をした彼は突き上げる腰を止め、ステアの口唇から肉棒
を引き抜く。
﹁おら、おめぇはもう良い、後ろに並んどけ﹂
口の端から涎を零しながら咽ているステアの尻を引っ叩き、自分の
前から追い払う。
﹁次はアンタだ⋮⋮金髪のねぇちゃん。跪いて俺のをしゃぶりな﹂
指名されたシャロンは一瞬睨むように目を細めたが、すぐに屈みこ
んで彼の肉棒を手に取って咥えこんだ。
﹁そうだ⋮⋮そうそう、良いぞ丁寧に舌を這わすんだよぉ﹂
股座に収まった金髪を弄びながら、再び娘を見やる。
﹁さっきの奴とこのねぇちゃんおめぇの同僚なんだろ? 騎士様な
んだよなぁ?﹂
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グイグイとシャロンの頭をかき回すように揺らし、自らの肉棒へと
刺激を伝えていく。
﹁やめて⋮⋮お父さん、リーベルラントの誇りを忘れたの?﹂
﹁そんなもん、三年前にとっくに捨てちまってるよ、俺はなぁ﹂
ステアの父︱︱ユーゴはリーベルラント騎士国で国府所属の文官で
あった。
三年と少し前にゼオムントの軍勢が国府近くまで攻め寄せてきた際、
決死の抵抗を続ける騎士団を見限り、いち早く投降した大臣一派に
所属していた。
﹁投降してからなぁ⋮⋮困ったんたぜぇ生活していくのによぉ。そ
れにおめぇのかーさんは娘が公娼に取られたって言って泣きわめい
て抗議しに行くとまで言いやがるしよぉ、まったく⋮⋮止めるのに
どんだけ苦労したことか、勢い余ってぶん殴ったらあっさりおっ死
んじまったしよぉ﹂
再びユーゴの腰が動きを得て、シャロンの喉奥を蹂躙していく。
セナはその光景を目の当たりにして、今まで懸命に蓋をして隠し続
けてきた怒りの感情が爆発しかけた。
その時︱︱
﹁セナ﹂
澄んだ声が彼女の振り上げかけた拳と共に、怒りを包み込んだ。
﹁騎士長⋮⋮﹂
憎き父の後ろに直立して立っていたステアがこちらを悲しげに見つ
めながらも、首を振っている。
今はまだ耐える時なのだと、彼女は伝えているのだ。
﹁うぇほ⋮⋮えほ⋮⋮えほっ﹂
シャロンの口からユーゴの肉棒が引き抜かれ、彼は挑発的に笑んだ。
﹁さぁ、来いよ﹂
バシンッ︱︱と自らの毛むくじゃらの内腿を張る。
﹁わかってるわよ⋮⋮﹂
セナは父親の足の間にしゃがみ込み、先輩騎士の涎でてかてかと光
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る肉棒を掴みあげた。
﹁まて、セナ﹂
父親は娘に肉棒を握らせたまま、その顔を濁った瞳で見つめた。
﹁俺はなぁ⋮⋮ちゃんとした親父だったろぉ⋮⋮? お前に食卓で
のマナーやナイフとフォークの持ち方も教えてあげたよなぁ⋮⋮。
なぁ、ご飯の前は何ていうんだったか? お父さんが教えてあげた
通りに言ってから、し始めなきゃいけないよなぁ﹂
裸で跪く娘と、ボロを纏い肉棒を突き出した父が正常な親子であっ
た時の姿をなぞる様に、父は娘の頭を優しく撫でた。
﹁⋮⋮いただき、ます﹂
汚辱に震えながらセナがその言葉を口にした瞬間、ユーゴは勢いよ
く肉棒を娘の口に突き刺し、そのまま腰を持ち上げた。
急に立ち上がった父の肉棒に持ち上げられる形で、セナの体は伸び
あがった。
﹁んんっ!﹂
﹁ひひ、いひひひひひひひひ﹂
ユーゴは腰を大きく一度引いて渾身の力で前へと突き出した。
体勢を悪くしていたセナの体はその衝撃を堪えることができず、仰
向けに倒れていく。
ユーゴの体もそれに続いた。
親子は口と陰茎で繋がったまま、立木が横たわる様に地面へ衝突し
た。
セナは後頭部を硬い地面打ち付け強い痛みを覚え、続いて喉の奥の
奥︱︱かつて味わったことのない深さまで父親の肉棒が突き刺さっ
ていくのを感じた。
﹁ぉぐこ⋮⋮﹂
﹁噛むなよ、噛むなよおおぉ、おとぉぉさんのチンポ噛んじゃだめ
だよぉぉセナぁぁ﹂
ユーゴは歯を剥き出しにして笑い、そのまま腕立て伏せの要領で両
手足を踏ん張り、腰を娘の顔面に打ち付け始めた。
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一撃一撃が喉の最深部までを抉り、引き抜かれる際は舌も歯も何も
かもが持ち去られそうになるほど強引に抜けていく。
そしてまた、突き刺さる。
父親の陰部を黒く覆った悪臭を放つ縮れ毛がセナの口に、鼻に入り
込んで強烈な不快感を催す。
﹁やめろ、それ以上やるとセナが死んでしまう!﹂
ステアが走り込んできてユーゴの肩を掴み、制止する。
一瞬動きを止めたユーゴだったが︱︱
﹁うるせぇあ! 親子のスキンシップだ、黙ってみてろ﹂
中腰になっていたステアの胸は重力に引かれて垂れ下がっていて、
ユーゴの顔のすぐ上にあり、彼は首をひねってソレに噛みついた。
﹁あぐぁっ﹂
右乳房の側面から乳輪にかけて歯形がつき、出血する。
ステアは胸を押さえ、なお言い募ろうとした時、
﹁良いかっ? この班の主人は俺だ、俺がお前達の生殺与奪を握っ
ている。俺に逆らうことは許されない。万が一なにか事を起こしや
がった場合は公娼の規定通りにてめぇらの祖国︱︱まぁ俺にとって
もそうなんだがなぁ︱︱祖国を再び火の海に沈めちまうことになる
ぜぇ﹂
そう、それこそが公娼を公娼として縛り付けている契約。
ユーゴを含めゼオムント国民全員が把握している公娼を従える絶対
の律である、
﹁わかったらよぉ⋮⋮左っかわの乳も噛んでやるからよぉ、俺の口
に添えなぁ﹂
ユーゴは口を動かしながらも、腰の動きはまったく止めていない。
打ち付ける度にセナの体がのたうっている。
﹁くっ⋮⋮わかった⋮⋮﹂
ステアは跪き、ユーゴの口へ無事な方の乳房を差し出した。
﹁あぁそれとなぁ、後ろにいる金髪のねぇちゃんよぉ、アンタはう
ちの娘を可愛がってくれや﹂
16
﹁えっ⋮⋮?﹂
やや離れたところに立ち、事の成り行きを唇噛みしめながら見守っ
ていたシャロンは短く声を上げた。
﹁だからよぉ、セナのマンコをべちょべちょにかき回してぇ、イカ
せろっていってんだよぉ﹂
﹁そ、そんな⋮⋮﹂
躊躇するシャロンにユーゴは笑いかける。
﹁あぁ? お前も逆らうってのかぁ? さっさとしねぇと、コイツ
の乳首噛み千切るぞっと!﹂
言葉の終わりとともに、ユーゴは勢いよく顎を閉じてステアの乳首
に噛みついた。
﹁いづっ⋮⋮﹂
ステアが苦悶の表情を浮かべた瞬間、シャロンは動いた。
﹁ごめん︱︱セナ﹂
父親に組み敷かれている娘の股の間に体を潜りこませ、右手の指を
その秘所に挿し入れた。
ビクッ︱︱とセナの体が大きく跳ねる。
﹁ハハハハハッハ、良いぞっ、勢いよくかき回してやれよっ、こう
いう、風にっ! なっ!﹂
ユーゴは一段と激しく腰を娘の喉へと打ち付ける。
時々思い出したようにステアの乳首をかじり、歯形を残していく。
シャロンは一心不乱にセナの陰核を擦りあげ、この地獄のような状
況がすぐにでも終わることを願った。
そしてセナは︱︱
﹁おっ⋮⋮おおぉっ! 出すぞ、零すんじゃねぇぞぉ﹂
口の中に放たれた父親の精液を受け止められながら、戦友である先
輩騎士の手で絶頂を迎えさせられていた。
ユーゴがセナの口から肉棒を引き抜いていく。
白い粘性の液が二点を結ぶ一本の線となっていた。
17
﹁おっ、残りの奴らが来たようだな﹂
涙や色んなものでぼやけた視線を傾け、セナが見た先に、自分達と
同じように全裸で首から木札を下げた女が三人立ちすくんでいた。
18
お前は一体どこの誰なんだ 上︵前書き︶
一話に纏めたかったのですが、長くなったので上下構成にします。
評価・お気に入り登録してくださった方、読んでくださった方、あ
りがとうございます。
19
お前は一体どこの誰なんだ 上
セナがシャロンとステアに抱えられて呼吸を整えている間に、ユー
ゴは新しくやってきた三人の口を順々に味わっていった。
セナの喉奥に出し切れなかった分を、水色の髪の目つきのやや尖っ
た女に吸い取らせ、その次に小柄⋮⋮というよりも幼児体型に近い
金髪の少女の口を使って肉棒を復活させ、最後に黒髪を束ねた怯え
顔の少女の口の中で精を解き放った。
ユーゴは崩れた笑顔を浮かべ、セナ達を傍へ呼び寄せる。
地べたにどっかりと座りこんだ自分の前に裸の女達6人を並ばせた。
﹁さて、これで6人揃ったわけだが⋮⋮﹂
そこで言葉を区切り、6人の顔を見渡しながらユーゴは続く言葉を
放った。
﹁自己紹介してもらおうか。お前達が一体どこの誰で、かつて何を
してきた存在で︱︱公娼としてどんな活動をしてきたかをなぁ﹂
全裸に、木札。
その木札には番号と名前、そして簡単な出自が記載されている。
見ればわかることだ。
それをユーゴは彼女達自身の口で、声で説明させようと言うのだ。
﹁それじゃこっちの奴から順番に⋮⋮だな﹂
ユーゴは自分の右手側にいた水色の髪をした女を指差した。
女は一瞬唇を噛み、小さく呼気を吐いてから、
﹁私は︱︱﹂
﹁おっと待ちなぁ⋮⋮﹂
ユーゴは下卑た笑みでそれを遮り、自らの股座を手で示した。
﹁自己紹介は、ココで。だ﹂
ユーゴの肉棒は先ほどまでに二度の射精を経たとは思えないほど屹
20
立し、股間を飾っている。
﹁コイツに跨って、俺と繋がりながら︱︱お前達が何者かを語るん
だよぉ﹂
セナを含めここに並ばされた6人には祖国があり、祖国では一角の
存在であったが故に、公娼として扱われるようになったという栄光
と挫折の過去がある。
それを、彼はセックスしながら語らせようとしている。
水色髪の女は垂らした前髪で顔を隠しながら、一歩を踏み出す。
そしてユーゴの腰の上に乗り、ゆっくりと自らの性器を汚らしい主
人のソレへと近づけていった。
﹁おぉ⋮⋮そうだ。たっぷり味あわせろぉ﹂
肉棒が女陰に埋もれていく。
女はユーゴの肩に両手を置き、苦しげに呼気を吐きだしながら、己
を語っていく。
﹁わたし⋮⋮は、ロクサス領ミネア修道院所属の魔導士⋮⋮ユキリ
ス。先の戦争では、領主様の召集に応じ、ゼオムント国との戦いに
従軍し⋮⋮敗北して捕虜になりました﹂
ユキリスの声が紡がれる間、ユーゴがじっとしている理由は無く、
彼は打ちつけこそしないまでも、腰を上下左右にうねらせ続けてい
た。
﹁んっ⋮⋮。その後は、公娼として⋮⋮ゼオムント国に仕えており
ます﹂
ユーゴの腰の動きがピタリと止まった。
﹁そうかそうか、アンタが魔導士様だってことは分かった。でも俺
がなぁ、もっともっと聞きたいのはなぁ⋮⋮魔導士じゃなくなった
アンタはどうやってマンコを使って生きてきたのかって! そうい
うことなんだよなぁっ!﹂
勢いをつけて腰を跳ねさせユキリスを突き上げていく父親の姿を、
セナは絶望に似た表情で見守っている。
﹁ひっ⋮⋮ん⋮⋮。首都のぉ、大型商業施設で⋮⋮ヤれるマスコッ
21
トとしてぇ⋮⋮首から胸上までのタイとお尻にぃ⋮⋮んっ! 尻尾
が伸びたアナルバイブを挿して、365日、休みなく働いてぇ⋮⋮
いました﹂
ユキリスの上下する背中が細かく震えているのを、セナは見ていた。
﹁ほぉう、ヤれるマスコットと言えば近年は首都だけじゃなく支配
領にも出店してきてる︱︱貴族様が立ち上げた商業グループの看板
だったよなぁ⋮⋮なかなか面白いとこで働いてたんじゃねぇか﹂
対面座位で繋がっていたユキリスから肉棒を引き抜き、ユーゴは彼
女を立たせてその尻を撫でる。
﹁お前は良いなぁ⋮⋮まぁとりあえず一人目だから暫定一位な﹂
尻の流線形をなぞりながら、陰唇に指を這わせていく。
﹁一位⋮⋮とは?﹂
抵抗できず、されるがままにユキリスが問う。
﹁言い忘れたが、これからお前らを順位づけする。一位から六位ま
でだな。順位によって旅の装備が変わってくるぜぇ、もちろん上位
の方が良い物で⋮⋮下の奴はどうなんだろうなぁ⋮⋮ハハハッ﹂
ユーゴの右手がユキリスの陰部へと潜りこんだ。
﹁審査の基準はお前らの語る境遇と︱︱マンコのしまりの良さで決
めてやるぜぇ﹂
そのまま激しく右手を動かし、ユキリスが腰砕けになるまで中を蹂
躙し続けた。
立って居られなくなったユキリスを自分の背後に転がし、ユーゴは
次を呼ぶ。
位置的に金髪の幼女体型の少女が呼ばれることとなった。
﹁さっきも思ったが、随分と小せぇ奴だな⋮⋮よし、お前はこうす
るか﹂
﹁あっ︱︱﹂
少女の腰に両腕をまわしたユーゴは、軽々と彼女を持ち上げ、立っ
たまま己の分身に突き刺した。
22
﹁あぐっ⋮⋮痛っ﹂
少女は盛大に顔を顰める。
﹁さぁ語れ。お前は一体誰なんだ?﹂
ユーゴは抱き上げ、挿入したまま激しく腰を動かした。
﹁わ、妾は⋮⋮栄光あるリネミア神聖国の第一王女⋮⋮ハイネア。
ゼオムントとの停戦交渉の場でだまし討ちにあい、捕えら⋮⋮あん
っ! て⋮⋮牢獄の中で国が滅んだことを聞いた⋮⋮﹂
﹁それでぇ? それでぇ!﹂
ユーゴは喜色満面にハイネアを突き上げている。
﹁⋮⋮終戦後は首都の、んっく、公立中等教育校の1年2組に配属
され、3年間校則で自由性交生徒に指定されて⋮⋮同級生はもちろ
ん、上級生にも下級生にも教員にも保護者にも犯されていた、のだ
⋮⋮﹂
小柄で軽いハイネアの体をユーゴは玩具のように振り回して、自ら
の肉棒をぶつけている。
﹁自由性交生徒ってあれか⋮⋮学生と公娼を兼ねた奴が指定される
モノだよなぁ⋮⋮たしか各校一人でその学校の持ち物になるって言
う⋮⋮良いねぇ⋮⋮俺が学生の頃にもそんなヤツが欲しかったもん
だぜぇ!﹂
けどよ、とユーゴは笑った。
﹁おめぇは全然だめだわ。ただヤられてるだけでひとっつも締めや
しねぇ⋮⋮んなマグロみてぇなヤツのマンコ突っ込んでても気持ち
よくならねぇんだよ!﹂
ユーゴは股間で繋がったままだったハイネアから肉棒を抜き出すと、
そのまま投げ捨てた。
﹁ククッ⋮⋮当然であろう⋮⋮高貴な神聖国の第一王女である妾が
貴様などに奉仕などするわけがあるまい。学校の奴らにもそうであ
ったよ。妾は決して屈さぬ⋮⋮っ! この身をいくら汚されようと
も貴様らゼオムントと、ゼオムントに従うだけの愚か者相手に心は
っ! 王女としての誇りは絶対に明け渡さぬっ!﹂
23
地面に腰を打ち付け、裸のままではあるが威厳のある表情でユーゴ
を睨みつける彼女に、黒髪を束ねた少女が駆け寄る。
﹁ハイネア様、ご無事ですか?﹂
﹁あぁ⋮⋮リセ、大事ない﹂
黒髪の少女に支えられ、ハイネアが立ち上がる。
﹁なんだぁ⋮⋮お前⋮⋮? まだ呼んでねぇぞ﹂
﹁私は、ハイネア様付の侍女リセで⋮⋮す﹂
明らかに少女は怯えていた。
気高くもユーゴを睨みつけるハイネアの隣で必死に恐怖と戦ってい
るリセに向け、彼は猛進した。
﹁自己紹介はぁぁ! 俺とヤりながらしろって言ってんだろうがあ
っ!﹂
ユーゴはリセを突き飛ばすと、横向きに転がった彼女の片足を持ち
上げて、空いた隙間に己の体を潜りこませて、彼女の膣内に突き入
れた。
﹁ひんっ⋮⋮﹂
﹁おらぁ! 改めて自己紹介だ。お前は一体誰なんだっ!﹂
グチュグチュとリセの体を痛めつけながら、ユーゴは詰問する。
﹁やめろっ! リセに手荒なことをするな﹂
その背後からハイネアが声を上げるが、
﹁うるせぇ、王女様は黙ってな⋮⋮お前はアレだ、暫定では二位だ
がたぶん最下位だな⋮⋮。良いからユキリスの隣に並んでろや!﹂
くっ⋮⋮と唇を噛んだハイネアが身を引き、
﹁すまぬ⋮⋮リセ﹂
ハイネアはへたり込んでいるユキリスの傍へ移動した。
﹁良いんです⋮⋮ハイネア様、ありがとうございます。︱︱私はリ
セ。ハイネア様付の侍女で⋮⋮ひぁん! ゼオムント国にハイネア
様が囚われた際に何としても救出しようと牢獄に侵入して⋮⋮その
まま捕まってしまいました﹂
24
﹁たかが侍女の分際で随分と大それたことしたもんだなぁ﹂
ユーゴは先ほどまでの荒れた雰囲気を一気に掃って、リセに笑いか
ける。
﹁これでも⋮⋮元武芸者で、護衛も兼ねていましたから⋮⋮んっ。
公娼にされてからは⋮⋮、ハイネア様が配属された学校のある地区
で、調教師管理の下⋮⋮公民館の備品として扱われていました﹂
﹁ほぉ⋮⋮備品ってのは、どういう風に使われてたんだぁ?﹂
ユーゴはリセのふくよかな乳房をつまみあげながら、問う。
﹁んんっ! ⋮⋮祭りの時や地区の行事の際に、いやらしい恰好を
して芸事をしたり体を提供して⋮⋮余興になったり⋮⋮地区の生産
物の広報活動として他の地区で裸の体に広告文を書いて宣伝しなが
ら歩いて回ったり⋮⋮ぁん!﹂
﹁あぁー⋮⋮あれだ、ご当地公娼って奴か。その地区を盛り上げる
ために体を使って何でもやるって言う、汚れ役だな﹂
歯をむいて笑うユーゴに組み敷かれたまま、リセは屈辱に震え、目
を閉じた。
﹁良いぜぇ⋮⋮お前のその小動物みたいな感じ大分気に入った⋮⋮。
マンコの中もなかなかの具合だしよぉ⋮⋮よっしゃ、暫定一位交代
だ。お前が一位で魔導士ちゃんが二位、んで王女様が三位だな﹂
さてっ︱︱と彼は呟きながら、リセの体から肉棒を引き抜いた。
そのままゆらりと立ち上がってセナを、シャロンを、ステアを見つ
めた。
﹁次はお前達だな、騎士様方よぉ⋮⋮!﹂
25
お前は一体どこの誰なんだ 中︵前書き︶
上下構成でも収まらなかったので 上中下構成で。
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26
お前は一体どこの誰なんだ 中
常に最前線に立ち、他の騎士達に号令を発しながら敵陣へと突撃す
る。
それがセナの知る騎士長ステアの姿であった。
この場でもその姿勢は変わらず、今彼女は地にうつ伏せて尻を高く
持ち上げ、犬の様な体勢でユーゴの肉棒に貫かれていた。
﹁なんだぁ⋮⋮勢い込んで自分から来たわりには大したことないマ
ンコじゃねぇか﹂
背中に流れて広がっているステアの黒髪を引っ張りながら、ユーゴ
は激しく腰を打ち付けている。
﹁んくっ! それは⋮⋮済まなかったな﹂
嫣然と、しかし挑発的にステアは笑う。
﹁あいにく昔から訓練ばかりで色ごとに疎くてな⋮⋮、公娼になっ
てからもゼオムントの痴れ者どもは自分勝手にわたしの体に突っ込
むばかりで、技術など磨きようもなかったのだ﹂
髪を掴まれ、まるで犬の様な屈辱的な姿勢をとらされても、セナの
信奉する騎士長は強さを捨てようとはしなかった。
﹁へぇぇそうかい⋮⋮そいつぁ悪かったな、とゼオムントの男を代
表して謝っておくぜぇ。
それはそうとおめえは、ウチの娘の上司だったよなぁ⋮⋮こいつぁ
親としてきっちり挨拶させてもらわねぇとな!﹂
ユーゴはステアの陰唇から肉棒を引き抜くと、腰を少しだけ浮かせ
た。
﹁っ⋮⋮何を?﹂
騎士の勘か、咄嗟に振り返ったステアへ一つ笑いかけ、
﹁おらぁっ!﹂
ユーゴの肉棒は一切の停滞無く、ステアの肛門を貫いた。
27
﹁んひぃぃ! あっ︱︱あぁ⋮⋮﹂
﹁どうしたぁ? もしや勇猛果敢な騎士長様はこっちの穴は初めて
だったかなぁ? いけませんなぁ騎士長たるもの他の騎士により先
んじて、新規開拓せねばならんのではないのかなぁぁ﹂
父の肉棒が憧れの騎士長の不浄の穴に潜りこみ、捲り上げる姿をセ
ナは両の拳を強く握り、痛みを耐え忍んだ。
﹁それじゃあよぉ、語ってもらおうか。お前は誰で、何をしてきて、
どんな公娼だったんだぁ?﹂
尻穴を犯すことで、ユーゴの体はステアに覆いかぶさる姿勢に変化
している。
彼女の黒髪に鼻を擦りつけながら、彼は屈辱的な問いを行った。
﹁リーベルラント騎士国家⋮⋮千人騎士長、ステア⋮⋮。ゼオムン
ト戦役では遠征し、んぁぁっ! ゼオムント軍の補給路の妨害と後
方攪乱の任につき、あっ⋮⋮ひ、国府が腐れ大臣どもの保身によっ
て陥落される日まで、戦い続けた﹂
セナとシャロンもステアの隊に所属し、戦の終わりを告げられるそ
の一瞬まで戦い抜いたのだ。
敗れる原因となったのは、国家のために勇戦した騎士長を今自分の
目の前で辱める︱︱腐った文官であった。
﹁そいつぁ⋮⋮そいつぁ悪かったなぁ騎士長様よぉ⋮⋮。でもまぁ
俺は後悔してないぜ? なんたって国家を売ったことで、俺は今ア
ンタのケツの穴をめちゃくちゃに出来てるんだからなぁ﹂
ユーゴは休みなく腰を動かし、ステアの菊穴を耕していく。
﹁さぁその後だ。気高い騎士様は国がなくなった後は何をしてたの
かなぁ⋮⋮?﹂
﹁とある商人組合に管理され、映像作品への出演を繰り返してい⋮
⋮ひぐぁ! い、一番注目され需要が高かった作品は、さまざまな
都市を巡り、そこに有った棒状のもの全てを一度体に突き入れてみ
る。という企画のものだったと聞いている⋮⋮﹂
騎士長の顔を歪めて告白する姿をセナは直視することができなかっ
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た。
﹁棒状って言うと、具体的にはどんなんだよぉ?﹂
﹁現地の人間の男根はもちろん、赤子の腕、剣の柄、ご神木の枝、
酒瓶、大根の漬物、橋の飾り石、と、とにかく目につくもの全てを
⋮⋮、調教師の指示したものすべてに跨って挿入するんあぁ⋮⋮そ
ういう作品だった﹂
ステアは完全に俯き、尻を掘られる動きに合わせ、体が前後に動く
ばかりであった。
﹁そうだなぁ⋮⋮実はな? 俺もそれ見てたんだよなぁ⋮⋮ついで
に言うと知ってるんだぜ? お前は尻の穴にチンコぶち込まれるの
は初めてかも知れねぇが、あの作品の中で何度か別のものなら突っ
込まれてたよなぁ? 果物とか野菜とか⋮⋮民芸品とかなぁ?﹂
うつ伏せているステアは何も返事をしなかった。
けれどセナも知っている。
調教師は月に一度活動報告といった形で彼女達にも他の公娼の出演
作品を見せては、その反応をまた映像魔法に記録し、配布販売して
いたのだ。
一度大きく腰を引き、パァン︱︱と大きな音を立てて打ち付けてか
らユーゴはステアの肛門から肉棒を引き抜いた。
﹁おら、もう良いぞ。さて⋮⋮んー⋮⋮ケツの穴はなかなか良かっ
たが。俺確か審査基準はマンコの締りの良さだって言ったっけなぁ
? ってなわけでお前は暫定三位な。下から二番目だ。やっぱり人
間のチンコ以外に色々ぶち込んじまうと締りは悪くなるんだろうか
ねぇ﹂
ステアは無言で立ち上がり、一度ユーゴを睨みつけた後、セナとシ
ャロンの方を見た。
その瞳はまだ、死んではいなかった。
﹁騎士長は諦めていません。私達もここで挫けるわけには参りませ
29
んよ、セナ﹂
ユーゴに聞こえない程度の声量で、シャロンがセナに話しかけてき
た。
セナは無言で頷きを返した。
﹁じゃあ次はアンタだな金髪のねぇちゃん。こっちだこっち﹂
ユーゴは立ったままの姿勢でシャロンを呼び、自らの肉棒を指差し
た。
﹁アンタらの騎士長様のクソがこびりついてるかも知れないからよ
ぉ、一回そのデカい乳で挟みこんで拭ってくれや﹂
シャロンは唇を噛みしめながら片膝をつき、ユーゴの突き立った肉
棒に自らの乳房を差し向けていく。
両手で側面から乳肉を支え、汚れた肉棒を内側へと沈めていった。
﹁おほぉ⋮⋮良いじゃねぇか⋮⋮アンタは口も素晴らしかったが乳
もすげぇ⋮⋮、この分じゃマンコの方も期待が持てるじゃねえか﹂
そう言ってほくそ笑んだユーゴはセナを見やる。
﹁おぉぉいセナぁぁ、これからお父さんこのねえちゃんとヤるから
よぉ⋮⋮、ちょっと手伝ってくれや﹂
シャロンの乳房を犯しながら、ユーゴがセナを手招きする。
﹁⋮⋮手伝うって、何をよ⋮⋮﹂
﹁まぁまぁ、よしっと。これで綺麗になっただろう。汚ぇクソが付
いたまんまじゃやっぱりマンコに突っ込むのには遠慮しちまうから
なぁという、俺の優しさをちょっとは感じてほしいものだぜ﹂
そう言ってユーゴはシャロンの胸から肉棒を引き抜き、その腕をつ
かんで立ち上がらせた。
﹁おら、お前ら向かい合って立てや﹂
促されるまま、セナとシャロンは向かい合う。
﹁んじゃ行くぜ⋮⋮そらぁ!﹂
ユーゴはシャロンの腰を捕まえると、背中から思い切りぶつかった。
シャロンは腰を固定されたまま、上半身だけセナに倒れ掛かる。
﹁うわっ⋮⋮﹂
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セナは慌ててそれを受け止め、裸のまま乳房を押し付け合う形とな
った。
﹁そのまま、そのままだぜぇ⋮⋮!﹂
ユーゴは突き出される形となったシャロンの陰部に己の肉棒をあて
がい、そのまま突き刺した。
﹁んあぅ﹂
シャロンの口から呼気が漏れる。
﹁あぁ⋮⋮良いぜぇ⋮⋮実に良い。自分の娘の顔を目の前にしなが
ら、別の女をヤるってのはよぉ﹂
ユーゴがシャロンを突き上げると、シャロンの体が揺れ、セナとく
っ付きあっている乳房がこねられて、セナの体にまで振動が伝わる。
実の父親が、自分の敬愛する先輩騎士の体を犯す振動が、そのまま
伝わってくるのだ。
そして、父が浮かべる最高の笑顔。
セナは唇を噛みしめ、俯くしかなかった。
﹁ハハッ! さてじゃあ語ってもらおうか、ねぇちゃんよぉ。アン
タについての全てをなぁ﹂
父娘の真ん中に挟まれ、犯されているシャロンは感情を押し殺した
声でそれに答えた。
﹁リーベルラントの騎士、シャロン。ステア千人騎士長の参謀とし
て従軍し、ゼオムント軍と戦い。国家が卑怯者の手によって陥落し
た際、そのまま捕虜になる﹂
シャロンは懸命に抗っている。
喘ぎ声をもらすまいと必死に、満身に力を込めていることを体で接
しているセナは感じた。
﹁ほほう。まぁそいつぁさっき聞いたこととあんまり変わってねぇ
なぁ。じゃあ本題に移って貰おうかなぁ?﹂
ニヤニヤと下卑た笑いをユーゴは浮かべている。
﹁⋮⋮公娼として、商人組合の映像作品に出され、とくに有名にな
ったのは全年齢制覇ツアーと題したものだったと、調教師から聞か
31
された﹂
﹁おっ! そいつは俺も見てたぜぇ⋮⋮あれだよなぁ? 10歳か
ら90歳までの男とヤらないと、撮影しに行った国から帰れないっ
てやつだよなぁ? 原則ヤり終わるまで年齢聞けないで、終わった
後に聞いて10から90歳までパネルを埋めていくってやつ。あれ
大変そうだったもんなぁ⋮⋮﹂
シャロンの体が震えているのをセナは感じた。
その企画の撮影の際、シャロンは3ヶ月ほど連続で撮影に遠征し、
いなくなっていた。
帰ってきた時には、毎度毎度ボロボロだった。
﹁自分からセックスしてください! ってお願いして、ヤり終わっ
た後に年齢聞いてそれがもう済んだ年齢のやつだったら無駄になっ
てまた別の人間にお願いして⋮⋮ってあの調教師の作品は気合が伝
わってくる良い作品だったと思うぜぇ﹂
シャロンの膣を犯し続けながら、ユーゴは笑っている。
﹁それは⋮⋮それは良かったですね﹂
小さく震えながらも、シャロンは決して喘ぎ声をもらさなかった。
﹁んだよつまんねぇなぁ。でもまぁマンコの具合は最高だな! 他
の四人、とくにさっきの奴と王女様とは比べものになんねぇわ。暫
定一位で良いぞ﹂
そう言ってユーゴはシャロンから肉棒を引き抜き、その尻の端でこ
びりついた愛液をぬぐった。
シャロンがステア達の下へ移動する時、そっとセナと視線を交わし
た。
﹁わかってます。シャロン、ステア﹂
セナは誰にも聞こえないよう口を閉じて、
﹁この男を殺すのは、大門を出てからですね﹂
セナの目の前に、肉棒を赤く滾らせた父親が立って居る。
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﹁さぁ愛しの我が娘セナちゃん。おとぉぉぉさんとセックスしよぉ
ぉかぁぁぁ?﹂
33
お前は一体どこの誰なんだ 下︵前書き︶
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34
お前は一体どこの誰なんだ 下
首から下げた木札が揺れる。
そこには番号・名前︱︱出自が表記されている。
セナのそれには、ユーゴの名前が書かれていた。
父と娘。
決して仲の良い親子関係だったわけではない。
たゆまぬ努力を認められ、騎士として国家に叙勲を受けて以降は、
積極的に父と言葉を交わそうとは思わなかった。
彼女は国家運営の末席を与えられ、その中で知った。
彼女の父親は国府に巣食う癌であった。
騎士として国家に奉仕する自分とは異なり、国家の財を食い物にし、
民の不平等の上に生きる小汚い権力者。
それが父親の姿であった。
会えば会う度に換言する娘を父の方から避けていたという面もある。
そんな父と娘が今、この一瞬。
繋がろうとしている︱︱
﹁さぁぁ入れるぞぉセナぁ﹂
地べたに転がされ、両脚を大きく開いてのM字開脚を強いられる。
ユーゴは開いた脚の間に収まり、自らの肉棒に左手を添え、右手で
娘の陰唇を弄んでいた。
﹁さっさと⋮⋮すれば良いじゃない⋮⋮。出発までにどんだけ時間
かけてるのよ﹂
セナは瞳に強く力を持たせ、ユーゴを睨みつける。
﹁まぁそう言うなや。準備はいつだって大切だろぅ? こうやって
全員で入念に自己紹介して、体の関係をはっきりさせてからじゃね
ぇと。この先魔物どもがうようよしてる西域に突っ込むんだ。仲間
内の信頼関係は大事だぜぇ﹂
35
そう言いながら、父の肉棒は、娘の陰部の入り口を撫でた。
﹁どうだぁ? あんだけ毛嫌いしてた父親とセックスしてしまうっ
ていう感覚はよぉ? 俺はなぁ、別にお前のことが嫌いってわけじ
ゃねぇ。昔もそれはそれは可愛かったし、今だってどうだ? この
胸、このマンコ、他の五人と比べて一番って程でもないが、ヤるに
ヤれないわけじゃねぇ﹂
父の手が娘の小ぶりな乳房をつまむ。
﹁顔はまぁお前のかあさんの若い頃によぉく似て、目鼻筋が透き通
った良い面構えだ。俺は好きだよぉ? そういう女、大好きだ。見
かけるとすぐ、ヤりたくなっちまうほどになぁ︱︱例え娘であって
もよぉ﹂
ユーゴの肉棒がゆっくりゆっくり、セナの身体に侵入してくる。
﹁んっ⋮⋮﹂
﹁まだ先っぽだけだぜぇ、セナちゃぁん。おとうさんなぁ? さっ
きまで五人とヤって一回も膣内で出してないんだよぉ。それはさぁ
? 可愛い可愛いセナちゃんの為に、膣内出しする分の精液を残し
てたってことなんだぜぇ⋮⋮素晴らしいだろう? 父の愛ってやつ
さぁ﹂
永遠にも思える数秒が過ぎ、セナとユーゴは根元からつながった。
﹁おぉ⋮⋮これが我が娘のマンコ⋮⋮。やはり他の女達とはこみ上
げてくるものが違うな⋮⋮﹂
ヌプヌプと緩やかに打ち付け、感触を味わうユーゴ。
垂れてきた前髪の下、セナの頬に涙が伝うのを見ると、ユーゴはほ
くそ笑んで娘の顔に己の舌を突き出した。
涙をひと舐めし、薄桃色に輝く唇もしゃぶる様に舌で犯した。
口と口に涎の橋が作られ、それが伸びていく︱︱
﹁馬鹿に⋮⋮これ以上馬鹿にしないでよ﹂
セナは燃え盛る思いを瞳に込め、ユーゴを見据えた。
﹁終わらせてあげる。一瞬のうちにね﹂
セナは渾身の力で腹筋を引き締め、繋がっている父親の肉棒を膣圧
36
でホールドした。
﹁おぉぉ?﹂
両手を背中の後ろにつき、M字に開いた脚の先で地面を強烈に踏み
しめ、腰を激しく動かした。
﹁うぉぉぉぉぉぉぉっ!﹂
セナの激しい責めに、ユーゴは身悶える。
﹁ほら、イクならさっさとイキなさい。そしてさっさと出発して、
さっさと魔物の宝具とやらを手に入れて︱︱それからアンタを殺し
てあげる。絶対に、絶対に殺してあげる!﹂
ユーゴがこみ上げる射精感に抗う為、一度肉棒を引き抜こうとする
のを、セナは騎士として鍛え続けてきた肉体を用いて、渾身の力を
膣に送ることでそれを防いだ。
﹁て、てめぇ⋮⋮。こ、これは自己紹介であって早抜きの場じゃね
ぇんだぞ?﹂
﹁自己紹介? 良いわ、してあげる︱︱あたしはセナ、リーベルラ
ントの騎士。ステア千人騎士長麾下。戦争ではゼオムント国と戦っ
て、無能下劣な父親達文官の愚策によって敗北して捕虜になった﹂
セナは叫びつつも、腰の動きを全く緩めない。
ユーゴの顔に明らかな焦りが生まれていた。
﹁公娼としての活動だったかしら? 故郷にほとんど裸の衣装で連
れて行かれて、自分と昔かかわりのあった人間︱︱近所に住んでい
た人間だったり、幼等教育校時代の同級生を探したり、騎士として
討伐してた山賊だったり。そう言うやつら相手に土下座してセック
スして下さいって頼みこまされ、相手の反応を面白がりつつ最後に
は絶対膣内に射精されて、ありがとうございましたって言ってまた
土下座する。そういう作品が人気だったそうよ﹂
もはやユーゴには余裕の欠片もなく。
だらしなく舌を出しながらされるがままになっている。
﹁そう⋮⋮か、それで⋮⋮大事なことが抜けてるぜ⋮⋮。お前は俺
の⋮⋮なんだ?﹂
37
ユーゴが一瞬笑ったように見えた。
セナはその顔を強烈に睨みつけながら︱︱
﹁娘よっ!﹂
ドピュゥル︱︱
ユーゴの、父親の精が娘の膣内に放たれた。
セナはすぐに父親の肉棒を引き抜いて自分の体内から汚液を掻き出
そうと動くが︱︱
﹁いっっやああああああ凄く良い画が撮れましたよぉぉ。ユーゴさ
ぁん﹂
そこに
割って入った男がいた。
小太りの、頭に布製の頭巾を被った男だった。
﹁えっ⋮⋮?﹂
セナはその男に見覚えが無い。
急に現れた男は、セナの疑念に満ちた瞳の色に気づき、あらっ︱︱
と自らの額を叩いた。
﹁これは申し遅れました。ワタクシは王宮所属の魔術士、ゴダンと
申します。この度は皆様の西域遠征における監視魔術を担当いたし
ておりまして。商業化、販売の方でも責任を負う立場にも僭越なが
ら就かせて頂いております﹂
ゴダンはにこやかに笑う。
﹁つきましてはですね。皆様に映像円盤販売時の小箱の表紙、あと
はポスター作成にご協力頂けないかなと﹂
揉み手をしながら、繋がったままの父娘とその後ろに裸で控えてい
る五人の女達を見まわした。
﹁よぉぉゴダン様、どうもお世話になります。俺達が表紙に? 良
いですねぇ。そのお話、請合いましょう﹂
射精のすぐ後は呆けていたユーゴだったが、ゴダンの挨拶の間に回
復し、笑みながらその申し出を受けた。
38
﹁はぁい、それはそれは、ありがとうございますユーゴさん。ささ、
ではあまり時間も無いことですし、パパッと撮っちゃいましょう﹂
未だ呆然としているセナからユーゴは肉棒を引き抜く。
その際、一筋の白い液が膣内から零れ落ちるのを見て、セナはハッ
としてそれを掻き出そうとする。
﹁あぁぁ、待って待って御嬢さん。それは大事なアクセントになり
ますので、ぜひ撮影が終わるまではそのままで。皆さん、あれ以上
に零れないように彼女を抑えていて貰ってよろしいですか?﹂
ゴダンが慌てて止める声に従って、ゴダンの背後に控えていた王宮
所属の紋章付きの兵士が動き出した。
二人がセナの身体に取り付いて、一人は腰を持ち上げ、もう一人は
赤く腫れた陰唇に無骨な鉄製鎧の籠手のまま指を突き入れた。
﹁おら、大人しくしてろよ?﹂
指を入れている方の男がニヤニヤと笑い。くすぐるようにして膣内
をかき回した。
﹁ではでは、ほら皆さん? 並んで並んで?﹂
ゴダンの指示の下、まだまだ控えていた兵士達が動き出してステア
達を捕まえる。
﹁な、なんですか? まだ何か続くのでしょうか?﹂
﹁離しなさいこの下郎。妾を何と心得る﹂
﹁あぁハイネア様に乱暴なことだけはお止め下さい。私にならば何
をされてもかまいません!﹂
﹁く⋮⋮撮影⋮⋮そう言うことか﹂
﹁私に抵抗の意思はありません⋮⋮今は﹂
ユキリス、ハイネア、リセ、ステア、シャロンは兵士達に連れられ
セナの隣に並ばされる。
﹁んん∼、そうですねぇ⋮⋮では皆さん、ぶち込んで下さい﹂
﹁えっ?﹂
とユキリスが声を上げた瞬間、彼女の膣に背後から兵士の肉棒が突
き刺さった。
39
﹁うぐぅ!﹂﹁あっ⋮⋮﹂﹁くっ⋮⋮﹂﹁⋮⋮﹂
他の四人にも同様に彼女達を捕まえていた兵士の肉棒が突き刺さる。
彼らは公娼達の膝下に手を入れ、そこを起点に体を持ち上げた。
﹁お前は俺だな、どけよ﹂
セナの腰を持ち上げていた兵士が、指を突っ込んで遊んでいた兵士
をどかし、セナの肛門に己の肉棒を突き入れた。
﹁あっ⋮⋮ひぐっ﹂
セナは思わず体の奥底から声を漏らした。
﹁あの汚ねぇオッサンの精液が入ってるところに突っ込みたくない
しな。こっちの穴で我慢してやる﹂
そしてそのまま六人の兵士が六人の公娼を持ち上げ、立ったまま背
後から挿入し、両脚を掲げ持っている為に公娼達の陰部は丸出し、
しかも一人は精液を垂れ流している。という構図が生まれた。
﹁んん∼、実にすばらしい。では、撮影魔術を用います。みなさー
ん? ワタクシが合図したらニッコリ笑って⋮⋮そうですねぇ、両
手でピースサインなんてどうでしょう? 一回で終わらなければ何
度でも行いますからねー、良いですか︱? 行きますよー? はい、
ポーズっ﹂
ゴダンのふざけた掛け声とともに、彼の放った撮影魔術が実行され、
辺りは白い光に包まれた。
﹁おぉ∼これは良く撮れました! さっそく首都に帰って印刷しな
ければっ! ではではユーゴさん、みなさん。旅のご無事を祈って
おりますよ。さ、兵士の皆さんは駆け足駆け足! 帰りますよー﹂
そう言ってゴダンは笑いながら身を翻し、彼についてきた兵士達も、
﹁えぇ∼抜くのは無しですか魔導士さまぁ⋮⋮﹂
ぼやきながら、公娼達の体を投げ捨ててその後に続いた。
嵐のような凌辱が過ぎ去り、公娼達が地面に座り直すと。
﹁あぁ⋮⋮セナ。てめぇふざけたことしてくれやがってよぉ⋮⋮﹂
ユーゴがニヤニヤ笑いで立っている。
﹁でもまぁ⋮⋮マンコの締りは最高に良かったからな⋮⋮しょうが
40
ねぇ、温情だ。お前は四位。これで順位が確定だな﹂
一位・シャロン。
二位・リセ。
三位・ユキリス。
四位・セナ。
五位・ステア。
六位・ハイネア。
ユーゴの独断で決められた順位は、確定した。
﹁そこの籠の中に順位ごとの装備が入ってる。ちゃんと自分のを着
るんだぜぇ?﹂
ユーゴが指し示す先に、籐編みの籠が六つ、無造作に転がっていた。
﹁くっ⋮⋮﹂
公娼達は這うようにして籠に近寄り、それぞれがあてがわれた衣装
を手に取った。
一位・シャロンは騎士の正装ともいえる軽鎧で上半身をつつみ、下
半身はフレアスカートと膝までのレッグアーマーという、安定した
装備となった。
二位・リセはさながら町娘と言えそうな格好で、肩から膝上までを
隠す白のワンピースを身に通した。脚にはひも状のサンダルを履い
ている。
三位・ユキリスは首に輪を付け、そこから一枚青の長布を垂らす。
長布は彼女の足首まで届くほどではあるが、肌を隠す面積は少ない。
だが長布と同じ青色のきわどい下着で胸と股間を隠すことを許され
ていた。
四位・セナはハーフプレート、胴を覆うだけの鎧を素肌に身に着け、
41
へその前で終わってしまった金属鎧の先から一本の細紐を伸ばし、
それを股にくぐらせて背面に通して結ぶという。恥辱的な格好とな
った。
五位・ステアは両の乳首にピアスを通し、そこから伸びた紐が前張
り︱︱膣内へとフックを挿し入れ固定した小さな小さな金属板と結
ばれ、体が揺れ、乳房が揺れるたびに膣内にまで刺激が届く代物だ
った。
六位・ハイネアは一見すると全裸に見える。よくよく見ると首に細
い桃色のチョーカーが巻かれていた。ハイネアの顔は心なし赤い。
その理由としては、首に巻かれたチョーカーに付与された特殊な魔
術が作用しているからだ。心に淫蕩の火を灯し、体を上気させ、性
的な刺激を何倍にも増加させるという、王宮魔術士謹製の拷問具で
あった。
六人全員が装備について何かを発言しようとした時、ユーゴの手が
鳴った。
﹁では、これより出発とする。目標は西域の最奥、魔物の宝具を手
に入れることだ!﹂
42
大門の下で︵前書き︶
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大門の下で
﹁お願いしますっ!﹂
そう大声を上げて、リセが地面に両手をついた。
﹁お願いします。私とハイネア様の装備の交換をお認め下さいっ。
お願いしますっ!﹂
従者として、自らの主が全裸の上に怪しげな性魔術が施された首輪
をはめられているにも拘らず、自分は街に出ても違和感の無い至っ
て普通の恰好をしていることに耐えられなかったのだ。
﹁おいおい、そんな話が認められるわけないだろう? さっき全員
のマンコを試して、その結果ハイネアちゃんはマッパな上にムラム
ラしちゃってどうしようもなくなる首輪をつけて、お前さんは爽や
かにワンピースを着ることになったんだ。ここでハイそうですかっ
て交換を認めちまったら、他の連中に示しがつかねぇよ﹂
ユーゴはもっともらしいことを言いながら、土下座の姿勢でいるリ
セの肩を掴む。
﹁これから先、この旅は一体どのくらい日数が掛かるかわかったも
んじゃないぜぇ⋮⋮夏もありゃ冬もある。そんな中マッパで居続け
るのはキツイだろうなぁ⋮⋮特に大切に育てられた王女様にゃぁ酷
ってもんだなぁ﹂
リセのワンピースの肩口から手を突っ込み、胸を鷲掴みにして持ち
上げ、立たせる。
苦痛に顔を歪めながらも、リセは両脚で地面に立ち、
﹁お願いしますっ! お願いしますっ!﹂
自らの胸を揉みしだく腕をつかんで、哀願する。
﹁そうだなぁ⋮⋮じゃあよ。特別に特別だぜ?﹂
そう言ってユーゴは薄く笑い。
﹁リセちゃんが俺の子供を孕んでくれれば、交換を認めてやるよ。
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無論、孕むための協力は惜しまないぜぇ。これから毎日毎朝毎晩犯
してやるからよぉ。せいぜい妊娠するよう祈りながら喘ぐことだな
ぁ﹂
ユーゴは空いた方の手でワンピースのスカートを摘み︱︱
﹁良い、リセ。何も気にすることは無いぞ﹂
ハイネアの澄んだ声がそれを押しとどめた。
﹁妾のことは気にするな。このような愚物に与えられたものに袖を
通すなど、考えるだけにもおぞましい。裸で結構。性魔術のチョー
カー? そのようなもの神聖なるリネミア王家である妾に与えられ
た加護の前には飾りも同じよ﹂
両手を胸の下に組み、眉を跳ねさせ笑っているハイネア。
しかしつぶさに観察すると分かる。その露わになっている陰部に光
る、透明な滴の輝きが。
﹁ハイネア様⋮⋮﹂
リセが顔を伏せ、涙をこらえる。
﹁⋮⋮チッ面倒くせぇ奴らだ。せいぜい強がってやがれ⋮⋮。おら、
お前ら武器だよ武器、向こうにお前達が昔使ってた武器を持ってこ
させてある。そいつを手にした瞬間︱︱お前達は魔物と戦い、宝具
を得る道しか残らなくなるからなぁ。心して手に取れよぉ﹂
ユーゴが顎でしゃくった先には、数人の兵士がたむろしていて、い
くつかの袋に分けて武器の管理をしていた。
セナ達が近づいていくと、彼らは好色な瞳でその体を舐め回し、武
器を渡す際に不自然に体に触れ、陰部をほぼ丸出しにしているセナ
やステアやハイネアなどは、指で周辺を弄ばれ、軽く突き入れられ
てしまった。
﹁くっ⋮⋮﹂
屈辱に顔を歪めながら、セナは愛剣を受け取る。
身の丈と同じだけの長さ、腰回りと同じだけの幅。
装飾など一切の余分を排した無骨な大剣がセナの戦場での相方だっ
た。
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その大剣を大きく振りあげ、二度三度と目の前の空間を刻む動きを
とる。
激しく空気を裂く音を立てる大剣の動きに、セナの身体に悪戯をし
ていた男達は、怯えた様子で引き下がった。
見渡すと、他の五人も武器を手に入れたようだ。
シャロンは細見の双剣を腰のホルダーに収納しているところだった。
ステアの獲物は騎士槍で、それを肩に背負って男共を威嚇している。
ユキリスは黒鉄で作られた錫杖を手にし、魔導士としての自分を取
り戻したかのようにソレを見つめている。
ハイネアの右手には絹のグローブが装着されている。他の肌は余す
ところなく見えているのに、右腕の先だけグローブに覆われている
姿は、淫卑な雰囲気を醸していた。
リセは何やら鉄製のものを受け取ったかと思うと、ワンピースを捲
り内側に収納してしまった。
﹁おぉーおっかねぇ。でもまぁそれで魔物共をブチ殺して俺を守っ
てくれよぉ? 性処理道具共よぉう﹂
ユーゴはケタケタと笑っている。
セナは大剣を振るい、その首を叩き落とすことを堪えるのに、全神
経を費やした。
﹁今はまだ、機会ではございません﹂
そっとシャロンが話しかける。
﹁魔物が私たちに襲い掛かってきた時、場が混乱した時こそ好機で
す。下手な行動をとれば王宮の監視魔術にバレてしまい。リーベル
ラントの民はもちろん、他に囚われている騎士達の身に何が起こる
かわかりません﹂
シャロンは双剣を挿した腰に手をやり、セナの目を見つめる。
﹁貴女が望むのなら、あの男の首を打つのは貴女に任せます。セナ﹂
セナは頷き、
﹁うん⋮⋮絶対に、アタシがやる﹂
六人の公娼と一人の主人は歩き出した。
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目の前にそびえるのは西域へと繋がる大門。
門の前に詰めていた門番がセナ達を見て顔を輝かせた。
﹁おっ、どれも見たことある顔だなぁ。今度の撮影も楽しみにして
るぜぇ。俺はお前達公娼の記録円盤を集めるのが趣味なんだよ。簡
単に死んじまって次回作が無くなるの何て嫌だからな? 絶対に生
きて帰ってこいよ!﹂
笑顔で告げられる門番の声に、公娼達は反応を示さない。
けれど︱︱
﹁おおぅ、ほらファンの方がお前らの旅を応援して下さるってよぉ
? ここはいっちょ応えてやって良いんじゃねぇかなぁ。おい兄ち
ゃん、アンタこの中の誰のファンなんだい?﹂
門番は六人の顔を順次見やり、指を刺した。
﹁俺はやっぱりユキリスちゃんだな。シャロンちゃんの記録円盤作
品も大好物だが、やっぱりユキリスちゃんの商業施設で裸で働くシ
リーズの密着取材作品ではもう、猿のように抜きまくったなぁ﹂
門番が腕を組んで頷いていると。
﹁じゃあ、十五分だけだが、ファンサービスだ﹂
そう言ってユーゴはユキリスの尻を押し、門番の方へ体を向けさせ
た。
﹁えぇぇ? マジで? 良いのかい?﹂
﹁あぁ好きにしてくれよ。中に出してもらって構わねぇし、どんだ
け痕残したって大丈夫さ﹂
ユキリスははじめ抵抗しようとし、すぐにそれを諦めた。
しぶしぶといった様子で門番の下へ向かった。
門番は嬉々としてその腕をつかみ、第三位の衣装を脱がしていく。
十五分︱︱という時間を意識してか、門番は迷いなく肉棒を取り出
し、ユキリスの膣へと強引に繋げた。
﹁ひっ⋮⋮ん﹂
一切の遠慮のない突き上げに、ユキリスの体が揺れる。
﹁おぉぉお、最高っ! 最っ高だよぉぉユキリスぅぅぅ。この感触。
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この匂い。もうたまんねぇぇぇ﹂
門番はまさに一心不乱といった態で青髪の魔導士の体を貪っていく。
﹁さて、じゃあ俺も⋮⋮﹂
そう言ってユーゴは不意打ち気味にセナの腰を捕まえた。
﹁なっ︱︱何?﹂
﹁ケチケチすんなよ。どうせこれから毎日ヤるに決まってんだろう。
一日に二回ぶち込む日だってそりゃでてくるさぁ﹂
ユーゴは猛りきった肉棒を持ち上げ、セナのハーフプレートの下、
申し訳程度に配置された紐を押しのけ膣内に侵入した。
﹁ぐっ⋮⋮このっ!﹂
セナは振り返り気味にユーゴを睨みつけるが、父親はヘラヘラと笑
っている。
﹁さて、おら他の騎士様よぉ、お前らも協力してくれぇ。何てった
って十五分で終わらせなくちゃいけねぇからよぉ。ほら乳だせ、舌
だせぇや﹂
ユーゴはステアの乳房を揉みしだき、シャロンの唇を啜った。
腰を打ち付けながら乳を乱暴にこねり、唇を犯す。
ユーゴが主人として身分の愉悦に浸っていた時。
﹁あの⋮⋮旦那様﹂
男が声をかけてきた。
ユーゴの恰好はボロだが、男のそれはまた一段とボロボロだった。
ツギハギだらけの汚れた布に、フケの浮いたクシャクシャの髪。そ
して一面に油の浮いたドロドロの顔で笑っていた。
﹁んだよ。浮浪者に用はねぇぞ﹂
浮浪者の男はニンマリと笑いながら、汚れた髪に手を突っ込んで掻
きながら言った。
﹁いやね、そちらの御嬢さん方が余ってらっしゃって⋮⋮もし自分
が協力できるようなら、させて頂くのも国民の義務じゃないかなぁ
と⋮⋮アハハ﹂
そう言って男はハイネアとリセのことを見つめた。
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ユーゴは腰を動かしながらしばし考え、口を開く。
﹁国民の義務ってよぉ⋮⋮どう見ても税金も払ってなさそうなお前
さんが言うかい⋮⋮。でもま、そうだな。良いぞヤれヤれ。けど全
裸の方な? 服着てる方に突っ込むのは無し。
お前みたいな臭ぇのの匂いが服に移ったら困るからなぁ﹂
へへぇと男は頷き、ハイネアとリセの方へ移動する。
﹁それじゃ、御嬢さんたち。お願いしようかな﹂
男はボロ布の内側から、汚れきった肉棒を取り出した。
﹁なっ⋮⋮くさいっ! 妾にそれを近づけるな﹂
ハイネアが一歩身を引き、肉棒から遠ざかる︱︱が、
﹁んなことぁねぇよなぁハイネアちゃん。お前今つけてるそのチョ
ーカーの作用で性的な刺激︱︱もちろん匂いにも体は正直に反応し
ちまうはずだもんなぁ?﹂
事実、ハイネアの顔は一段と赤らみ、遠目にも興奮が見て取れた。
﹁さ、ねぇほら御嬢さん。こっちの服着てる子はダメだって言うか
らさ。君しか居ないんだよぉ。ね、入れるよ? 入れるからね﹂
浮浪者の男が一歩踏み出し、ハイネアの足を捕まえようとした時、
不意にリセが屈みこんだ。
﹁ん⋮⋮くちゅ﹂
垢の浮きあがった猛烈な匂いのする肉棒を咥えこんだのだ。
﹁お、おぉぉぉぉう?﹂
激しく口唇を動かし、男の肉棒を刺激していく。
﹁リセちゃんよぉぉぉ? 俺言わなかったかぁ? 服に匂いが付く
からお前は無しだってさぁぁ?﹂
ユーゴがステアとシャロンの陰核をつまみあげ、セナの膣を蹂躙し
ながら詰問した。
﹁⋮⋮汚れを。ハイネア様のお体にもしものことがあってはなりま
せんので。ハイネア様の体に触れてしまう部分だけでも私が汚れを
掃うのです﹂
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そう言ったリセは、浮浪者の陰毛の束を口に入れ、擦る様にして汚
れを落としていく。
﹁チッ、だがもう後五分しかねぇぞ? 良いのかなぁ? 男衆ぅ﹂
ユーゴのその言葉に、門番はユキリスの体を押し倒し、犬の様に尻
を突き上げさせてラストスパートに入った。
浮浪者の男はリセの顔面を突き飛ばし、ハイネアの小さな体を持ち
上げて自らの肉棒に突き刺した。
不思議なほど、ハイネアの抵抗は弱弱しく見えた。
ユーゴの方でもスパートがかかり、娘の体をがっちりとホールドす
る。
﹁出すぞ、出すぞぉセナちゃああああん。おらああああ孕めやああ
ああ﹂
﹁くっ⋮⋮くそぉぉぉぉおぉ﹂
ドピュドピュと、本日二発目の汚液が父と娘の間で移動した。
門をくぐった時にはもう、夕暮れだった。
見渡す一面に平野が広がっている。
何度も発生する魔物による大門への攻撃によって、このあたりは見
晴らしの良い平野に環境が変化してしまっているのだ。
先ほどまでの凌辱でセナとハイネアの陰部からは白濁が零れ、ユキ
リスの下着には染みが現在進行形で広がっていく。
﹁さぁて、じゃあ一先ず平野を抜け、森を目指す。その森を越えた
ら魔物達の住む領域に完全に突入ってわけだ。今夜は森の入り口ま
で進んで、そこで野営をするぞぉ﹂
ユーゴがそう言って地平に向けて指を刺した先。
﹁グルルッ﹂
獣の咆哮が聞こえた。
見れば、何十頭もの犬型の魔物が、こちらへ猛烈な勢いで迫ってき
ていた。
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自由を得るため︵前書き︶
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自由を得るため
迫りくる魔犬の群。
迎え撃つようにステアが全員の前に立った。
﹁現状⋮⋮わたしは君達全員の能力を把握しているわけではない。
故に戦略の立てようもないわけだが、丁度いい機会でもある。皆の
戦闘能力を見させてもらおう﹂
乳首にピアス、そして前張りという屈辱的な格好を取らされている
彼女だが、一線級の指揮官であるその瞳は戦場を鋭く観察していた。
﹁わたしとセナで群に突っ込む。ユキリス、ハイネア、リセは自由
に動いてもらって構わない、君達にあったスタイルでの戦闘を見せ
てほしい。シャロンは戦場全体のカバー、遊軍として控えていてく
れ。まぁ、この犬コロ程度に、君の双剣の力が必要になるとも思え
ないがね﹂
準備運動替わりに槍を振るうステアの横に、大剣を構えたセナが並
んだ。
﹁お、おい。俺はどうするんだよ!﹂
権力・制度・人質などで縛ることができている公娼相手には滑稽な
ほど強気である男は、純粋な害意を持って迫ってきている魔物相手
に小便を漏らさんばかりに怯えていた。
﹁知るか﹂
ステアは吐き捨てるように言い、上体を落とし、足に力を込める。
﹁それでは、突貫する﹂
猛然と魔犬の群へと跳んだ。
ステアの騎士槍が大きく顎を開けていた一頭の喉を貫いた。
距離にして三十歩分を一気に詰めたその攻撃に、魔犬達は野生の本
能か、一瞬動きを止めて警戒姿勢をとった。
﹁所詮、畜生であるか﹂
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戦場で身構え、硬直すること。
それ即ち隙。
﹁せりゃあああああああああ﹂
ステアは魔犬が突き刺さったままの槍を振るい、囲むようにして並
んでいた数頭を一気に薙ぎ払った。
骨肉の砕ける音が辺りに響いた時、魔犬達はこの槍を持ったほぼ裸
の人間が、単なる獲物ではなく危険な存在であることを認識した。
一斉に飛び掛かり、ステアの喉笛を食い千切ろうとする。
﹁第二撃︱︱続きます!﹂
セナの凛とした声をかき消すように、大剣が唸りを上げて、舞った。
辺り一面にドス黒い血の華が咲く。
ステアに飛び掛かった魔犬達は、すべからくセナの一刀の下に斬り
潰されていた。
﹁グルルルル﹂
魔犬の群の深くで、毛を逆立てた一頭が吠えていた。
その吠えに応えるようにして魔犬達は二人から距離を取り、後ろに
控えているユーゴ達の方を向く。
﹁騎士長。あれが大将首でしょうか?﹂
﹁だろうな、どうだ? 君がやるか?﹂
騎士長ステアは胸を張り、嫣然とした笑みをセナに送る。
﹁お許しいただけるのなら︱︱この心の苛立ちの僅かにでも沈める
生贄とします﹂
セナは大剣に付着した血を払い、新たに構え直す。
﹁ならばわたしが、道を作ろう﹂
ステアとセナは大将首を目指し、二度目の突撃を行った。
﹁ひ、ひぃぃ! 来るな⋮⋮こっちに来るなぁぁ!﹂
シャロンはステアとセナの突撃を見守りながら、魔犬達の咆哮と接
近に腰を抜かし、隣で地面にへたり込む凌辱者の声を聴いた。
﹁な、何をしてるぅ! 早く迎撃しないかぁ!﹂
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彼は腰に提げた小袋から、王宮魔術士謹製の隠密魔術石を取りだし、
両手でガッシリと掴んでいる。
ユーゴの声は真に迫った悲鳴で、それを聞いているだけでシャロン
の心に笑いの花が咲いた。
このような意気地の無いゲスに犯されたことは、何物にも代えがた
い屈辱ではあるが、そのゲスの醜態を見て幾分心が和らいだ。
﹁他の三人はどうでしょうかね⋮⋮﹂
ユーゴには聞こえないよう、口の中で呟いて辺りを見渡す。
錫杖を構えたユキリスの背中が見える。
彼女の装備は前を隠す長布ときわどい下着であるので、必然後ろか
ら見ると肌をほとんど隠せていない卑猥なものに見えた。
彼女は何事か呪文を唱え、錫杖を振るう。
瞬間、彼女に迫っていた魔犬達の足が止まった。
獲物を求めて開いていた顎が、さらに大きく開かれる。
そこから大量の血が零れ始めた。
苦しみ、もがき、のたうち、魔犬達が果てていく。
黒鉄の錫杖を持った女が謳うようにして言った。
﹁騎士の方々、憶えていて。わたしはロクサス領ミネア修道院所属、
劇毒と狂奔の魔導士︱︱ユキリス﹂
そう言った彼女の周囲には犬共の体から跳ね上がる様にして、黒い
粒が集まっていった。
シャロンは見やる。
全裸の王女を背に守り、魔犬の群と対峙する少女の姿を。
﹁ハイネア様、ここは私にお任せください﹂
リセは無手のまま構えを取り、敵と向き合っている。
もしや介入すべきか、と思い一歩を踏み出すシャロンに向けて、ハ
イネアが口を開いた。
﹁そこなる騎士、手助けは無用であるぞ﹂
﹁でも、武器も無しにその数では﹂
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﹁心配せずとも良い。妾の護衛はこのような魔犬の十や二十⋮⋮百
まではこともなく倒すさ﹂
﹁そう⋮⋮﹂
そこまで言うなら、とシャロンは身を退いた。
そして見る。
魔犬が一斉にリセに押しかかる光景を。
そして、
バラバラに千切れ跳ぶ姿を。
全ては一瞬の出来事のように思えた。
リセがワンピースの裾から取り出した五本の柄の無い小刀。
それが縦横自在に舞って犬共の体を引き裂いたように見えたのだ。
小刀︱︱そう呼ぶにはあまりにも未完成なそれを飛ばし、魔犬の体
裂いて地面に落ちた瞬間にリセは蹴り上げまた別の魔犬に飛ばす。
よく目を凝らして見ると、小刀の根元に糸のようなものが見え、そ
れらは全てリセの元に集まり、手繰られていた。
﹁不思議な戦い方をするものだな⋮⋮﹂
シャロンが頷いていると、不意にハイネアが声を上げた。
﹁リセ、お主手にかすり傷があるぞ﹂
リセの右手、そこに一本の赤い線が引かれていた。
﹁あわっ⋮⋮申し訳ございませんハイネア様。千切れ跳んだ犬の牙
が少しかすめてしまい⋮⋮﹂
リセが困り顔で笑う。
それに一歩近づいて、ハイネアはグローブに包まれた右手をかざす。
﹁良い、妾を守って作った傷だ。すぐに治療してやる﹂
ハイネアの右手から光が走る。
光はリセの傷口を覆い、その血を洗い流した。
﹁ふふん。これぞ妾︱︱リネミア王家の神聖なる奇蹟である﹂
﹁へ、へへ⋮⋮良いじゃねぇか⋮⋮良いぞお前達! 一番多く犬共
をぶっ殺した奴には俺からありがたぁい褒美をやるぜぇ! なんと
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膣にたっぷり中出ししてやるからよぉ! 気張りやがれぇ﹂
ユキリスとリセによってこちらに迫ってきていた群が全滅し、残り
もステアとセナによって駆逐されていくと、途端に元気になったユ
ーゴが泡を飛ばしながら叫んだ。
先ほどまでその手に大事そうに掴んでいた隠密魔術石は心の余裕の
現れか、腰の袋に仕舞われている。
シャロンが顔を顰めてそれを見ていると、
ユーゴの顔が急に引き攣った。
﹁お、おいこっち来てるぞ⋮⋮一頭こっち来てる﹂
ユーゴが指差す方向に、一頭戦場からはぐれた魔犬が猛烈な勢いで
迫ってきていた。
シャロンは双剣の柄に手をやり、しかし抜かなかった。
﹁何をしてやがるっ! 殺せ! やれ!﹂
ユーゴの震える声が、シャロンの背中を押した。
そのまま柄から手を放したのだ。
﹁なぁぁぁにをしてぇぇぇぇ﹂
途端、ユーゴに襲い掛かる魔犬。
﹁ひぃぃぃぃ。助けろぉぉ助けろぉぉぉ﹂
地面に尻もちをついた上から伸し掛かられて、肩に噛みつかれてい
るユーゴが叫ぶ。
恐慌状態の彼は必死に腰に提げた袋から魔術石を取りだし、作動さ
せようとするが上手くいかない。
シャロンはそれを、冷淡に見下ろしている。
﹁おぃぃぃ、何をしてるぅぅ。俺は主人だぞ! 俺が死んじまった
らなぁ。この旅はおしまいなんだぞぉぉ﹂
シャロンは動かない。
﹁俺が死んだらなぁ! このグループ全部が全滅扱いを受けて、お
前ら公娼は契約不履行ってことで故郷を焼かれ、仲間を殺されるん
だぞぉぉ﹂
聞いた。
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必要なことを聞いた。
シャロンは片方の剣を高速で引き抜き、魔犬の頭を切り落とした。
﹁申し訳ない。遅れてしまいました﹂
一片の心も籠っていない謝罪。
この後おそらくこのゲスは怒りに任せて私の体を汚すだろう。
でも、それでも必要だったのだ。
この男を殺すとどうなるか︱︱その情報が。
それからすぐに、セナの大剣によって大将首が討たれ、一行はその
まま平野を移動し森の中へ入った。
ユーゴがシャロンへの雑言を吐きながら、平野でまた敵に襲われる
恐怖に耐えられず、森の中で野宿することを選択したのだ。
﹁おらぁ! てめぇこらふざけやがってぇ! 徹底的に、徹底的に
お前を犯してやる。覚悟しやがれぇ﹂
今、野営地の中央に設置されたテントの中でユーゴによるシャロン
への凌辱が続いている。
彼は昼間のことを強烈に根に持ち、この瞬間が訪れて、守る者と守
られる者の関係が崩れるのを待っていたのだ。
テントの中からシャロンの声は漏れてこない。
セナは目的のためには手段を選ばず、鋼の精神で実行する同僚のこ
とを思う。
﹁シャロンなら⋮⋮大丈夫さ。いくらあの男が愚かでも、この先必
要な戦力をどうにかしたりするわけがない﹂
ステアが焚火に向かって枯れ枝を放る。
﹁ハイネア様。どうか、どうか夜の間だけでもこれをお召しになっ
てください﹂
リセは自らの着ていたワンピースを脱ぎ、折りたたんでハイネアへ
と差し出す。
﹁それはならん⋮⋮もし万が一あの男に見つかった時、お前が酷い
目に遭うかもしれん。妾なら大丈夫じゃ。幸い今はまだ冷え込む時
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期でも無いしのう﹂
全裸のまま、ハイネアは焚火に当たっている。
﹁⋮⋮それでも、私はこれを着ません。ハイネア様が服をお召しに
ならないのなら、私もそれにつき従います﹂
その背中をリセが両手で包むようにして、温めていた。
﹁⋮⋮何か、あるんでしょう? 話が﹂
セナとステアのことを観察していたユキリスが不意に声を放った。
ステアは焚火を弄る手を止め、順々に四人に顔を見渡す。
﹁君達に確認しておきたい﹂
セナは騎士長の瞳に頷きを返す。
﹁君達はこの旅で、何か成すべきことがあるか?﹂
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自由を得るため︵後書き︶
ご指摘を受け一部手直しいたしました。
既に読んで下さった方の中に不自然に思われた方もいらしたと思い
ます。
申し訳ございませんでした。
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野営︵前書き︶
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60
野営
ステアの言は重々しい響きを放っている。
﹁成すべき⋮⋮か﹂
ハイネアは小さく呟き、チラリとテントの方を見やる。
テントの中では男女の蠢く影が見て取れ、現在進行形でシャロンが
凌辱に遭っていることが察せられる。
﹁不用意なことは言わない方が良いと思うわ、騎士殿﹂
ユキリスは眉を顰め、ステアを制止する。
﹁主人の周囲には監視魔術が働いている。それに捉えられるのもだ
し、主人本人に聞かれる可能性だってあるわ。わたし達は与えられ
たこの唯一の好機をモノにして、魔物の宝具を手に入れ、公娼の身
分から脱する。それで良いのではなくて?﹂
彼女は恐れていた、何らかの企みに巻き込まれ、千載一遇の機会を
逃すことを。
セナはその姿を見て、怯えというよりは打算性の強さを感じた。
﹁騎士殿方三人の武芸で前線を支え、魔導士であるわたしが後方支
援、ハイネア王女を回復役にして主人と王女の護衛をリセ殿にやっ
ていただけば、わたし達の組は安定した戦力になる。充分に西域の
奥を目指せるモノだと思うわ﹂
一つの問題点は残る︱︱。
﹁凌辱に耐え⋮⋮か?﹂
ステアは憎悪の瞳でテントを睨み、すぐにユキリスへと向け直した。
﹁⋮⋮仕方ないじゃない。それにこれまで三年間様々な状況で味わ
ってきたことですもの。それに比べれば、たった一人の人間相手に
こちらは六人、充分に耐えることができるはずだわ﹂
ユキリスはステアの視線から逃れるように、燃え盛る焚火を見据え
た。
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体を支えるようにして組まれた腕が細かく震えているのを、セナは
見ていた。
﹁⋮⋮ユキリス君。君はこの三年間で味わった屈辱を︱︱恥辱を覚
えているかい?﹂
君︱︱これは騎士長ステアが部下や親しい人間に話しかける際に、
使う二人称である。
騎士長は一転して優しげな声で、魔導士に問いかけた。
すると、
﹁覚えていないわけがないじゃないっ!忘れられるわけがないじゃ
ないっ! アイツらは⋮⋮アイツらゼオムントがわたしに何をした
かっ。一切合財すべて覚えているわよ! わたしは魔導士。記憶を
刻むことにおいては貴女達騎士とは比べものにならないほど正確に
刻まれていく。今この瞬間にだってそらんじてあげるわ! 昔の自
分がどうやって喘いで、下種共が何ていって笑ったかっ!﹂
魔導士は声を荒げ、立ち上がって錫杖を振り回す。
﹁許せるものか、認めるものか。わたしだって⋮⋮わたしだってこ
の本能のままに行動できるのなら、祖国の仲間が人質にとられてさ
えいなければ! テントに居るあの男を殺して、取って返して大門
の奴らも殺してっ! ゼオムントにいる汚れた連中全部毒の沼に沈
めてやりたいわよっ!﹂
声がユーゴにまで届いてしまうのではないかと危惧した瞬間。
﹁あ、あああああああああっんんっ! やめぇっ。んはあああああ
ああああん﹂
テントの中でシャロンが一際大きな声で喘いだ。
﹁ワザとらしいな⋮⋮シャロンは。しかし助かった、良い判断だ。
流石我が隊の参謀だ﹂
ステアは落ち着き払った様子でユキリスを見つめ、
﹁一先ず座ったらどうかね? ユキリス君﹂
ユキリスはばつの悪そうな顔で頷き、腰を落とした。
﹁⋮⋮話の要点を伺いたいものだな、騎士よ。妾達の回答もそれに
62
よるであろう﹂
裸の体をリセに抱かれるようにして座っているハイネアがステアに
問いかけた。
﹁これは失礼、王女よ。わたしとシャロン、そしてセナの三人には
共通の目的がある。それは︱︱﹂
﹁ゼオムント国を崩壊させる﹂
セナは騎士長の言葉が終わる前に割り込み、言った。
﹁国を奪い、家族を狂わせたゼオムントをアタシは許さない﹂
四人の視線がセナに集中する。
﹁とまぁ、そういうわけだ。その方法として、一つの案を、この旅
を聞かされた後に考えもした﹂
今度はステアに視線が集中する。
﹁魔物の宝具が与えるという。統帥権だ﹂
その言葉にユキリスとハイネアは顔を強張らせ、リセはそっと王女
を抱く手に力を込めた。
﹁⋮⋮魔物を支配して、ゼオムントを襲わせるというの?﹂
ユキリスの疑問に、ステアは首肯した。
﹁それでは無関係の人間も、妾達の祖国の民もが犠牲となるぞ﹂
ハイネアの訝しむ声にも、ステアは頷いた。
﹁統帥権⋮⋮とはそのままの意味で指揮権限のことだろう。それは
軍を動かすことであり、またまとめることでもあるはず。そして軍
とは最高指揮官が居て、そのすぐ下に兵が居るわけではない。分隊、
支隊、中隊。いろんな言葉があるが、それら小分けされた軍を率い
る頭が必要となる。わたしの率いた千人騎士団では百人長という名
の小隊長を選んで、各個に細かな指揮を委任していた﹂
シャロンは参謀としてステア直属の小隊長であり、セナは前線に出
て突撃する役目を負った小隊長であった。
﹁魔物の軍にもそれを適応する。シャロンとセナに軍団を分け、多
方に展開させる。ゼオムント首都攻め、リーベルラント解放、そし
て魔物達の統制。少なくともわたし達騎士三人であれば三つの役が
63
こなせ、ゼオムントの崩壊と祖国の奪還が果たせるというわけだ﹂
ステアは瞠目している三人を見やる。
﹁魔導士ユキリス。王女ハイネアとその侍女リセ。君たちは腕が立
つ。魔物の統帥権を得た後、軍を任せることができる存在だとわた
しは見た。どうだ? わたし達リーベルラントの戦に乗ってみない
か?﹂
僅かな沈黙の後、ユキリスが手を挙げた。
﹁⋮⋮話は分かった。けど、それならば西域の奥に行くまではこの
ままでは無くて? このままあの小汚い男の性欲処理に使われ続け
ながら旅するの?﹂
その瞳に野望の輝きが灯り、凌辱者への復讐の光を見つけた喜びを
放っていた。
魔導士の疑問に、騎士長は頷きを返した
﹁そこだが⋮⋮とりあえずしばらくは耐えてほしい。何らかの対策
を講じるつもりだ、魔物に襲われた際のどさくさや、食事に毒を混
ぜるなど色々考えてはいるんだが、監視魔術の肝がわからなければ
行動に出辛い。下手に動いて王宮魔導士に露見し、我らの祖国と人
質に手を出せれても困る﹂
ステアのその言葉に、ハイネアが目をつむる。
﹁やむなし、か﹂
﹁ハイネア様⋮⋮﹂
リセはまた一段とその手に力を籠め、王女を抱きすくめた。
﹁⋮⋮監視魔術について詳しくわかればいいのね?﹂
魔導士は得意げに言った。
﹁⋮⋮何か考えがおありで? 魔導士殿﹂
セナが勢い込んで尋ねると、ユキリスは半分笑みを浮かべながら頷
いた。
﹁ゼオムントの魔術は多くの場合刻印魔術よ。さっきアイツが持っ
てた隠密魔術石だって魔石に刻まれた印が光ることで発現するやつ
64
なの。監視魔術もおそらくそうね⋮⋮アイツの持ち物か、あるいは
アイツ自身かに刻印が施されているはず。それをどうにか出来れば、
王宮からの監視は届かなくなるわね﹂
ユキリスがそう言ったすぐ後に、テントが一部開いた。
中から半裸のシャロンが蹴飛ばされ、飛び出してくる。
その顔と乳房と陰部は、赤い腫れと白い汚れで彩られていた。
﹁ケッ、散々生意気しやがったわりにゃぁ、派手に喘ぎやがったじ
ゃねぇか、このクソ騎士がぁ。オラ、次の奴来いよ。今夜はもう寝
る。チンポ突っ込んだまま寝てやるからぁよぉ。残りの奴らは焚火
の前でオナニー三回して寝ろ。これは命令だぜぇ? 三回してから
寝るんだ? わかったな﹂
服をすべて脱ぎ去ったユーゴが倒れたままのシャロンの陰部を足で
蹴りつけながら、こちらを見渡した。
﹁おっし⋮⋮じゃあお前だな、ユキリス。お前のマンコに入れたま
ま今夜は眠るとするぜぇ﹂
ユーゴは股に下げた肉棒を擦りあげながらこちらに近づいてきて、
ユキリスの腕を摘みあげ、テントへと連行していく。
連れて行かれながら、ユキリスはこちらを見る。
その瞳が笑っていた。
﹁今夜中にも、刻印の位置がわかるかもしれんな﹂
ハイネアが全裸のままテントに収まっていくユーゴの背中を見て、
笑いを噛みしめるようにそう言った。
この夜、セナ達が関知しえないところで二つの出来事が起こった。
殺害。
そして、
結束。
65
殺害・結束︵前書き︶
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66
殺害・結束
Side A 殺害
振り上げられた拳が、猛烈な勢いでソレに叩きつけられる。
何度も、何度も。
﹁まだ、まだです! まだまだまだまだぁ!﹂
紅の長髪を逆立てた半裸の女の拳は、鈍く輝く鋼鉄製の籠手と、そ
れを染め上げるドス黒い血で飾られていた。
女の体を良く見れば、生々しく痛みを訴える凌辱の跡があった。
﹁フフフッ⋮⋮﹂
その様子を含み笑いで見守る長身の女がいる。
短い銀髪に、長身にまったく合っていない上下共にやたらと丈の短
い服を着せられた女だ。
紅の女が拳を振るうのを嬉々として眺めている。
﹁破片が三十一個⋮⋮三十二個⋮⋮三十三、三十四⋮⋮﹂
二人のすぐそばにしゃがみ込んで、バラバラになっていくソレを空
虚な表情で眺めている長い黒髪をポニーテールに結った女がいる。
ソレの歯や、耳、内臓などが自分の傍に飛んでくると、乱雑にかき
寄せて小さな山を作っている。
ソレは人間だった。
彼女達を支配し、侮蔑し、凌辱した人間だった。
﹁お前達っ! 正気か⋮⋮、主人を殺してしまってどうするという
のだ!﹂
一人、彼女達に向かって叫ぶ女がいた。
彼女はリーベルラント騎士国家、ステア千人騎士団所属、百人長フ
レア。
騎士長ステアの実妹で、同じく鋼の志を宿す騎士であった。
67
姉とは異なり短く切りそろえた黒髪を揺らして、フレアは詰問する。
﹁監視魔術が働いているのだぞ? お前達が主人を殺したことはす
ぐに王宮に察知される。そんなことをしてはわたしの国もお前達の
国も、そこに囚われた人質達もどうなってしまうか想像できないわ
けではないだろうっ?﹂
フレアは自身が激しく発汗していることに気付いた。
それは今彼女が口に出して言った事への恐れと、目の前にいる三人
から向けられる強烈なプレッシャーに由来していた。
﹁正気も何も、起こってしまったことだもの。しょうがないじゃな
い﹂
銀色髪の女がフレアを見下すようにして笑う。
﹁規律を順守することしか知らないお馬鹿で救い様のない肉奴隷の
騎士殿には理解できないことかもしれないけれど、ね﹂
フレアはその視線を真っ向から受け止め、睨み返す。
﹁アミュス⋮⋮貴様﹂
この旅が始まる直前に、主人役として自分達にあてがわれた男、ハ
ゲ頭のでっぷり腹をしたベネルから屈辱の自己紹介をさせられた時、
目の前の銀髪はこう名乗っていた。
﹃ロクサス領ミネア修道院の魔導士、アミュス﹄と。
魔導士はハゲのベネルに着せられた幼児服かとも思わせるほどに丈
の短い服から、その下乳と尻肉がはみ出しているのを憎々しげに見
やり、
﹁殺すべきでしょ。どう考えたって﹂
そう吐き捨てた。
﹁クッ⋮⋮! ヘミネ、君もだ。誇りを知るリネミア貴族である君
がどうして自国の民を危険に晒す!﹂
拳を振るい続けている紅髪の女の動きが一瞬止まったが、またすぐ
に動き出した。
グチャ︱︱ドスッ︱︱と拳が突き刺さり、破片が飛び散る。
68
飛び散った破片は、
﹁四十二⋮⋮四十三﹂
ポニーテールの女によって山に積まれていく。
﹁ヘミネはね、私が唆したのよ﹂
アミュスは笑う。
﹁騎士殿の言うとおり、ヘミネはとっても誇り高いわ。だからね、
この三年間も必死に耐えてきたそうよ。けれど、限界は近かったよ
うね。ちょっとした事⋮⋮本当にちょっと、あのハゲデブがヘミネ
の乳首を噛み千切ろうとした事が、彼女に限界を迎えさせてしまっ
たの。私はその最後の一押しを手伝ったというわけ﹂
魔導士のあざ笑うかのような声に、ヘミネは大声で吠え、また拳を
肉塊へと打ち込んだ。
﹁どうしてなんですかぁ⋮⋮? どうして貴女は怒っているのです
かぁ?﹂
不意に、フレアの喉に鋭く冷たい刃が突き付けられた。
今まで死者の肉山遊びをしていた女が、ポニーテールを靡かせ、目
の前に立って湾曲した長刀を構えていた。
﹁マリス⋮⋮っ!﹂
アミュスとヘミネ、そしてフレア自身も含めて名の知れた国から徴
発された公娼であったが、このマリスは違った。
戦争傭兵。
彼女がゼオムントと戦った理由がそれであり、敗れた後従っている
理由でもあるそうだ。
彼女は国を持たず、家族も居ないらしい。
それなのに、公娼。
人質無き公娼なのである。
﹁この人嫌な人でしたよぉ? マリスのお尻の穴に汚いのたくさん
入れられちゃいましたし、前の穴なんてマリスの刀を使ってホジホ
ジされちゃいましたぁ。マリスとっても痛かったのに許してくれな
いし、死んで当然だと思うんですよぉ?﹂
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その瞳は、完全に開ききっている。
彼女が内面に含んだ闇の深さを察し、フレアは視線を逸らした。
﹁そういう貴女はどうなのよ、騎士殿﹂
アミュスの声が響く。
﹁今貴女の後ろで怯えている二人は戦力にならないとして、騎士殿
︱︱貴女そこそこ腕が立つようじゃない? どう私達と一緒に来る
?﹂
フレアの背中側に、へたり込んでいる女が二人。
公娼ではあるが、戦闘系の素養を持たず、ただただ裸でここまで付
いて来ていた者達だ。
﹁一緒に⋮⋮とは?﹂
﹁決まっているわ、ゼオムントを滅ぼすのよ。魔物の統帥権を得て
ね﹂
その言葉に、フレアは脳を貫かれた思いだった。
﹁馬鹿なっ! そんな事をして国は? 民はどうなる? 魔物と人
間の戦争などが起これば、世界は混乱してしまうぞっ!﹂
フレアはマリスの長刀を掴み、自分の喉元から外した。
﹁貴様らの勝手に、どれだけ多くの人間が巻き込まれると思ってい
る!﹂
フレアのその言を受けて、ヘミネが振り返り、マリスがジッと見つ
めてきた。
そしてアミュスが口を開く。
﹁なら貴女は一生そのままでいるのね﹂
三人はもはや肉塊となった元主人を蹴りつけて、去って行く。
フレアはその背中を燃える瞳で見つめていた。
﹁あ、あの⋮⋮騎士様? わたし達これから⋮⋮どうすれば?﹂
背中から聞こえる震えた声に、フレアは意図して快活な声で答えた。
﹁心配ない。わたしの姉もこの森にいるはずだ。まずは姉と合流す
ることを目指そう。そこにいる主人に言って、王宮への正確な報告
70
も可能なはずだ﹂
その声に、自分を叱咤する色を含めた。
Side B 結束
浅黒い肌の少年が、むっちりと肉付きの良い白い尻に向かって腰を
打ち付ける。
﹁あ、あんんっ! ひぃ、ああああん﹂
少年の肉棒が膣内を擦りあげる度に、やや大柄な女から嬌声が漏れ
た。
少年と後背位で繋がったまま、女は秘めた声を出す。
﹁こちら⋮⋮んにっ! 在らせられるのは、スピアカント王国第八
王子ぃぃん⋮⋮シャスラハール様で、ござ⋮⋮んあぁいます﹂
女は涎をまき散らし、陰部から派手に汁を零しながら、語りかける。
女の前には、五人の公娼が真剣な面持ちで座っていた。
﹁王子⋮⋮は、ゼオムントの侵略の際、難を逃れぇ⋮⋮んんんぅ、
庶民に混ざり、雌伏の時を過ごされぇぇ⋮⋮あっ⋮⋮あぁぁん。こ
の機会を⋮⋮ゼオムントへ復讐する機会をほぉぉ、狙っておられま
したぁぁ﹂
少年は目を閉じている。
髪は黒で爽やかに夜風に靡き、全身に薄らと筋肉を纏った少年らし
い精悍な体つきをしていた。
﹁うおおおおおおおおおおおおおおおっ!﹂
少年はとにかく吠えている。
目の前で喘いでいる女の声が、余所にまで漏れないように。
﹁今回の西域侵攻を知りぃ⋮⋮あっ、あっん。王子は好機として、
スピアカントの聖騎士として従軍し敗れた後公娼にされてしまった
わたくしに接触し、ん、んはあああん。国の復興のため、再び剣を
取る道を選ばれました﹂
71
﹁うおおおおおおおおおおおおおおお﹂
聖騎士の前に並んだ女達は真剣な面持ちである。
﹁そ、そこでぇぇぇん、あん。皆様にお願いがございます。どうか
わたくし達と共に、魔物の宝具を収め、ゼオムントの支配を打倒す
る⋮⋮あっおほぉぉ、打倒する計画にぃぃ、協力をぉぉぉ、ご助力
⋮⋮いやぁぁはあああん﹂
王子と聖騎士は、王宮の監視魔術に疑われないように全力でセック
スしていた。
﹁うおおおおおおおおおおおおおおお﹂
﹁あはあああああああいやあああああ﹂
言葉が途切れ途切れになるのも、致し方ない。
﹁もちろん、我らも公娼の身分を脱するのみでなく、国を奪い返す
ことを悲願としておりますので、お話に乗せて頂きたくは思うので
すが⋮⋮果たして可能なのでしょうか?﹂
話を聞いていた中で、もっとも年季を重ねているであろう二十代半
ばの騎士が手を挙げた。
﹁あ、あはああああああん。もちろんですぅ⋮⋮わたくし聖騎士ヴ
ェナの武芸とぉぉぉ、王子のこの三年間の知の研鑽があればあああ
あん、西域制覇は不可能ではなくぅぅ。皆様のご助力があれば、更
に可能性は高まるかとぉぉ。それにぃ﹂
王子の腰の動きと、ヴェナの喉の反りが一段と強まる。
﹁王子はぁぁぁ、他のグループにも回ってぇぇ、賛同者を増やされ
るお考えでございますぅぅ。あ、あああああん。イクゥううううう
ううぅううううううううん﹂
﹁んっ!﹂
王子は射精の瞬間に肉棒を引き抜き、地面に向けて精を零した。
見守っていた公娼達は、それを驚愕の視線で追った。
﹁馬鹿な⋮⋮これまでの調教師や凌辱者は徹底的に膣内に出すか、
そうで無くても尻の穴や口や顔⋮⋮髪や乳房にかけていたというの
に⋮⋮地面になどと⋮⋮!﹂
72
﹁待って、もしかしたら地面に零した精を啜れと言う命令が来るか
もしれないわ。私のところの調教師がそうだったもの⋮⋮!﹂
彼女達が見守る中、シャスラハールは自らの衣服の中から手拭いを
取りだし、自らが放出した精を拭った。
﹁拭ったわ⋮⋮おかしい、普通調教師なんかは舐め啜らせるか、そ
の上で寝ころばせるかして辱めて来るはずなのに⋮⋮!﹂
﹁まだわからないわ⋮⋮! 地面に零した精を拭った布を口に突っ
込まれて一日過ごせと言われるかも知れない。私のところの調教師
がそうだったもの⋮⋮!﹂
シャスラハールは精を拭った布を困ったように見つめ、ひどく小声
で、
﹁ごめんなさい⋮⋮ヴェナ、洗濯物増やしちゃった⋮⋮﹂
﹁良いんですよ、王子。後でわたくしが洗っておきますから、あち
らの汚れ物籠に入れて置いてください﹂
はぁいと言って王子が汚れ物籠の方へと歩いていく。
ヴェナはそれに温かい瞳を送って、振り返る。
﹁どうですか? 皆様﹂
五人の公娼が一斉に頷いた。
73
身なりの良い観察者︵前書き︶
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身なりの良い観察者
﹃爽やかな良い朝だなぁぁお前らぁぁ、よっしゃ、お前らの今日の
調子を見てやろう。全員こちらに尻を向けて四つん這いになれぇ﹄
下品な声を上げ、ボロを纏った男が六人の公娼を並ばせている様子
を見ている者が居る。
﹃昨夜はユキリスに突っ込んだまま寝てよぉぉ、朝勃ちも朝一小便
も何もかも全ぇん部膣の中でやってきてよぉ、今の俺は気分が良い
ぜぇ。ほらほら、朝日に向かってマンコを晒せぇ、こんにちは太陽
さんとご主人様だぁぁ﹄
貴族的な衣装を身に纏った男だ。
豪奢な部屋で仕立ての良い調度品に囲まれ、遠隔透視魔術を投射用
の白い布に映し、ボロ男と六人の公娼の朝の風景を見ている。
﹁あ、こちらにいらっしゃいましたか。オビリス様﹂
王宮に勤める宮廷魔導士ゴダンが男に声をかける。
﹁いやはや、お探し申し上げました。何分この王宮は広いですから
な、魔導長官たる御身のお姿をお探しするのも一苦労でございます﹂
ゴダンは禿あがった頭に浮いた汗の粒を拭いながら、問う。
﹁それで、如何でございますかな? 御身がお考えになって、陛下
にご提案され、昨日実行に相成った今度の﹃西域派遣﹄の娯楽は﹂
ゴダンの言葉に、ようやく男が振り返った。
﹁素晴らしい⋮⋮素晴らしいよゴダン。これは僕の生み出す芸術の
中でも最高の傑作となるだろう﹂
オビリス︱︱ゼオムント国魔導長官である。
公娼達への不老魔術、映像魔術、監視魔術の完成で功を上げ、弱冠
三十にして国の魔導士を束ねる地位に納まった男。
そして、稀代の調教師でもある。
﹁ほら、ほら見てくれゴダン。この男、この下種が僕の愛しの公娼
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達に何をしているか見えるかい? 朝日の下、尻を六つ並ばせて右
から左、左から右へと順々にハメて移動している。朝の調子の確認
と言っていたかな? 何て馬鹿げた方法だ。これじゃ公娼達は全然
達しようもない。ただ一瞬肉棒を突きこまれては抜かれて隣のマン
コへと移って行く。ハハハッ最高に哀れだ。何の価値も無いマンコ
じゃないか﹂
映像ではユーゴが一度肉棒を深く突き刺すと抜き、次の公娼に突き
刺すという滑稽な姿が映っていた。
﹁おやおや⋮⋮本当にまぁひどい扱いですな、ユーゴさんは娘さん
のマンコだって容赦なく貫いて、平気で汚していく男ですからねぇ。
お、ユーゴさんの顔に余裕がなくなってきましたねぇ﹂
ゴダンはほうほうとえびす顔を撫でている。
﹁どうだいゴダン、一つ僕と賭けをやらないか?﹂
﹁賭け⋮⋮ですかな?﹂
オビリスの若々しい顔には、
﹁この男がどのマンコに膣内出しするかを賭けようじゃないか!﹂
無邪気な笑みが広がっていた。
﹁ふぅむむ、賭けでございますか。ちなみに賭けの対象は?﹂
ゴダンがそう問うと、
﹁そうだねぇ、対象が決まっていた方が身も入るというものだね。
よし分った、君が勝てば、来月の君の勤務予定に一日休みを加えよ
う。上司権限だ﹂
オビリスは親指を立てて答えた。
﹁ほうほう、それは有りがたいですなぁ。それで? 御身が勝たれ
た場合は如何に?﹂
﹁そうだなぁ⋮⋮﹂
とオビリスは腕を組んで考え込む。
﹁特に希望も無いな。君が賭けで負けたらこのまま飲み物でも厨房
から貰ってきてくれたまえ﹂
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その言葉にゴダンはニッコリと頷き。
﹁ではでは、ワタクシは騎士セナを推しましょうか。やはりあの父
親の変態性を見るに、実の娘の膣内で精を零すことに悦を得るもの
ではないでしょうかねぇ﹂
﹁ほほう、騎士セナ⋮⋮あぁこの髪を両結びにしたハーフプレート
の娘か﹂
映像の中、髪を父親に両手で掴まれ、膣内を抉られている女騎士の
姿が捉えられていた。
﹁良い線だ⋮⋮確かに映像作品としては父親が娘に射精する姿は中
々美しいものがあるが⋮⋮今回は違うな。これだろうな、従者リセ。
この娘の中に汚い精は放たれるであろうよ﹂
オビリスが見詰める先、顔をどんどん赤く染めていくユーゴは余裕
を失った動きで挿入を繰り返している。
セナに、シャロンに、ユキリスに、ハイネアに、リセに、ステアに。
﹃おぉぉぉ出る! 出すぞぉぉぉぉ、俺様占いの結果ぁぁぁ膣内出
しされる奴の今日の運勢は、だ・い・き・ち! だあああああああ
あ﹄
ユーゴは叫び声をあげ、掴んだ腰を全力で引き寄せる。
捕まえた腰の持ち主は、
﹃ひぃぃぃぃぃあああああん﹄
リセであった。
ユーゴの体が小刻みに震え、リセの双眸からは涙がこぼれていく。
﹁どうだい? 僕の勝ちだよ。ゴダン﹂
オビリスは勝ち誇った笑みを浮かべている。
﹁いやはや⋮⋮折角余暇で家族と過ごす時間が増えると思いました
のに⋮⋮。では、飲み物を取ってくる前に一つ聞かせて頂いてもよ
ろしいでしょうか?﹂
﹁あぁ、構わないよ。むしろ聞いて欲しいね、僕は﹂
オビリスがゴダンと向き合っている後ろ、映像の中ではユーゴが精
を放出し終え肉棒を引き抜いて、付着していた精液と愛液の混合液
77
を手近にあったハイネアの尻でふき取る姿が映し出されていた。
﹁どうして、従者リセに出すとお判りになられたのでしょうか? この凡愚にもお教え頂きたいものですなぁ﹂
ふふふ、とオビリスは笑う。
﹁簡単さ、僕は今の今までこの組の活動を映像で見ていたからね。
それを見て選ぶべくして選んだのが、この従者の娘さ﹂
良いかい? とオビリスは言った。
﹁昨日の出発から今まで、この男は三回膣内で射精している。内訳
は実の娘セナに一回。シャロンに虐待を加えながら一回。ユキリス
と寝ながら一回だ。二度ほど口内射精もしているようだが、飲ます
ことと孕ませることは別だからな、これはカウントしないでおこう。
そうすると人間六つも選択肢がある中で重複して何度も同じのを選
ぶとは思えなくてね﹂
頷きを返しながら、ゴダンは疑問する。
﹁しかしそれでは三択、選択肢の中に騎士ステアと王女ハイネアも
加わるのではないですかな?﹂
映像の中では、ユーゴがステアの口に肉棒を突き入れ、残った精を
吸い出させていた。
﹁それはそうさ。しかしな、ここで一つ提示されたヒントがあった
のだよ、ゴダン。彼女達の衣服にね﹂
そう言われ、ゴダンは映像に視線を送る。
六人ともあられもない姿になっているが︱︱
﹁なるほど⋮⋮順位ですか﹂
呆れた様にゴダンは息を吐く、そしてその様をオビリスは楽しげに
見やった。
﹁そうさ、膣のお気に入りで決めた順位だ。必然二位のリセと五位
六位のステアとハイネアでは確率は違ってくる。それが僕の推理と
言うものさ﹂
なんとまぁ⋮⋮とかぶりを振ったゴダンが一歩後ろに下がる。
﹁恐れ入りました、魔導長官。それではワタクシは厨房に行き何か
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飲み物を頂いて参りましょう﹂
そう言って彼は退室しようとして、扉に手をかけ、
﹁それはそうと⋮⋮オビリス様。ご存知かとは思いますが、調教師
ベネルが公娼により殺害されました。不測の事態が起こりました事、
如何お考えでいらっしゃいますか?﹂
小さな声で問いかけた。
それに対し、オビリスは態度を一切変えることなく、
﹁無論対策は万全さゴダン。僕の作品に、リテイクは無いのだよ﹂
笑って答えた。
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刻まれた皺︵前書き︶
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刻まれた皺
勇敢なる騎士フレアの白い頬に一滴の汗が流れる。
既に死んでしまった主人役に無理矢理着せられた黒のビキニアーマ
ーから露出した肌にも汗がどんどんと浮いてくる。
太陽から放射される熱気が逃げず、辺りにこもり続ける森林に居る
ということも一つだが、何より彼女は今囲まれていた。
明らかな害意を持つ魔物の群に。
﹁良いか? 絶対にわたしの傍を離れるな。わたしの戦斧の届く範
囲に居ろ﹂
彼女は大戦斧を構え、背中に守るべき公娼二人を従えている。
囲んでいるのはカマキリ型の魔物︱︱ベリス。
上半身はカマキリの特徴通りにギョロついた顔と目、鋭利な鎌を両
手に付け、背中には虫羽根が備わっているが、下半身は人間の男の
ものであった。
剥き出しの肉茎をパンパンに充血させ、およそ五十体ばかりのベリ
スが三人の公娼を囲んでいた。
﹁敵は五十でこちらは戦えるのはわたしのみ⋮⋮どうやって切り抜
けるか﹂
フレアは層の薄く、突破できそうな箇所を探るが、ベリスの知性無
き瞳に似合わない頑強な包囲陣形の前に起死回生の糸口が見えてこ
ない。
そして、ベリスが動き出す。
手始めにと言った形で二体のベリスがのそのそと人間の足で歩いて
くる。
﹁くっ、警告などはしない。近づくならば切り伏せるのみ﹂
フレアは大戦斧を片手で振るい、迫ってくるベリス二体に打ち付け
た。
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メシャア︱︱と割合軽い音を立てて斧は一体の体を割り、もう一体
に深く埋まりこんだ。
両断された上半身が宙を舞い、深く打ち付けられた一体が叫び声を
あげた瞬間。
他のベリス達が一斉に羽ばたいた。
﹁きゃあああああああ﹂
フレアの後ろで、同行の公娼サディラが悲鳴を上げた。
上空から、低空から襲い来るカマキリ男。
フレアは懸命に大戦斧を振るったが、鋭く迫ってくる鎌を受け止め
るだけで精一杯で、ビキニアーマーの上を切り裂かれ、体に細い傷
跡をいくつも刻まれてしまった。
そして、
﹁いやあああああ助けてぇぇぇ﹂
サディラと、もう一人の公娼レナイがベリスに捕らえられていた。
サディラは無力な王族、レナイは修道女であり戦闘能力は持たない。
闘うすべを持たぬ二人は、騎士であるフレアが守らねばならなかっ
た。
﹁おのれっ! その二人を離せ!﹂
アーマーが避け露わになった乳房を揺らしながら、フレアが吠える。
ベリス達はそれに反応を示さず、手元に得た戦利品に加工を施して
いく。
﹁え⋮⋮嫌⋮⋮そんな、止めて⋮⋮痛い痛いいたいぃぃぃぃ﹂
ベリス達はサディラとレナイを宙づりにし、伸びた体の両膝に鎌を
合わせ、断ち切ったのだ。
﹁いやああああああああああ﹂
叫び声を上げ続けるサディラと、懸命に声を押し殺すレナイ。
その両膝が、無残にも体から切り離され、地面へと落ちた。
﹁うぉおおおおおおおおおっ!﹂
その光景を理解した瞬間、フレアは猛進していた。
大戦斧が振り下ろされ、翻り、逆方に振り上げられる。
82
サディラ達との間に体を割って入れたベリスを数体切り裂き、突き
進んでいく。
しかし、ベリスには羽根があった。
フレアには持ちようもない、羽根があった。
一斉に空中へと飛び上がったベリス達は最後の仕上げを施していく。
集団の中で体格の優れたベリスが二体公娼に取り付き、その肉茎を
陰唇に埋めた。
﹁おごぉぉぉぉおぉ⋮⋮﹂
﹁ひっ⋮⋮ん﹂
サディラとレナイは両脚を失っている為、ろくな抵抗も出来ずに大
柄のベリスに貫かれている。
別のベリスの手によって、彼女達の両手がカマキリの胴に強制的に
回される。
回された手を竹ひごの様なもので貫き、肉と肉とを結んで固定され
た。
それはまるで、
公娼の体で作られた肉の鎧のようであった。
﹁貴様らぁ⋮⋮貴様らあああああああ﹂
フレアは上空を見上げ、大戦斧を振るう。
﹁降りて来い! 今すぐ殺してやる﹂
フレアのその言葉に、サディラとレナイを装備した二体のベリスは
笑うように羽音を立て、他のベリスにフレアを指し示す。
﹃アレは好きにしてよい﹄
そう言っているようであった。
二体の大型ベリスは飛び立ち離れていく。
そして、残ったベリス達が一斉にフレアの方をギョロついた目で見
やる。
好色に、残忍に光った瞳に捉えられて、フレアは斧を構え直した。
﹁わたしもああして鎧にしようと言うのか⋮⋮? 良いだろう、か
かって来い。この首討てた者には残った体何ぞ好きに使わせてやる
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わ!﹂
そうして、ベリス約四十体と騎士フレアの戦いが始まった。
戦いが終結し、大戦斧が地面に落ちた時、フレアの四肢はぎりぎり
の所で繋がっていた。
体には無数の傷を負い、全身血まみれの姿で倒れ込むフレアの体を、
七体のベリスが見下ろしている。
四十体居たベリスはもう、七体にまで減っていた。
辺り一面にカマキリと人間の男の肉片が飛び散っている。
フレアは視界の端でそれを見つめながら、自分の血まみれの裸を見
下ろすベリスの足が近づいてくるのを理解した。
蹴られた。
半端な力ではない。
魔物の力で頭を、胸を、腹を、尻を蹴られた。
その度に転がるフレアの体がうつ伏せに倒れた時、一体のベリスの
鎌が彼女の肛門へと迫った。
閉ざされた肛門にゆっくりと侵入してくる凶悪な鎌。
そして、肛門の皺をなぞる様にして、鎌が引かれた。
﹁ひぃぐぅぅぅぅ﹂
かつてない痛みにフレアの上半身が跳ねたところを、別のベリスの
足によって踏みつけられる。
喜色の浮かんだ羽音を立て、ベリス達は次々フレアの肛門に鎌をつ
き立て、擦る様に引く。
彼女の尻の穴からは、ドクドクと血があふれ出していた。
無残に引き裂かれた肛門に鎌を立て、人間の足指で穿り返し、その
度に上げられるフレアの絶叫に合わせて羽音を立てていたベリス達
だったが、その拷問が三十分も経った頃、ようやく飽きが来たのか
彼らは次の段階へと進もうとしていた。
フレアは己の両膝に血で汚れた鎌が突き付けられていることを知っ
84
た。
しかし痛みで意識の朦朧とした彼女には、抵抗の手段がない。
虫の鎌が彼女の足を切断しようとした瞬間、
﹁ハッ⋮⋮!﹂
黒い影が、鎌を立てていたベリスを突き飛ばした。
ベリスの胸には一本の短刀がめり込んでいた。
急に現れた影に、他のベリス達が臨戦態勢を整えようとしたわずか
一秒足らずに、
﹁もう⋮⋮いけませんわ王子。危険な先陣はわたくしが勤めますと
言うのに、わんぱくでいらっしゃるから﹂
六つカマキリの首が宙に跳ねた。
全裸の女が長剣を携え立って居る。
いつ振るい、いつ屠ったかわからないほどの速さでベリスを駆逐し
た女に向けて、先ほどの影が口を開いた。
﹁ごめんなさい⋮⋮ヴェナ。でもこの人が危なそうだったから、つ
い﹂
黒い肌の少年であった。
﹁何だあぁ⋮⋮ありゃ﹂
森の中、全員に排泄行為を強要し、誰が一番澄んだ尿を出せるかを
審査していたユーゴの視界に空飛ぶカマキリとそれにくっ付いた裸
の女が見えた。
誰よりも尿が濃い黄色をしていたセナは、飛んでいくソレを見て、
すぐに愛剣の柄を掴みとった。
85
遠く遠く監視してる人へ︵前書き︶
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遠く遠く監視してる人へ
動き出したのはセナだけではなかった。
シャロンが双剣を、ステアが騎士槍を、ユキリスが錫杖を、リセが
ハイネアの手を取り立ち上がった。
﹁おいおい、お前らまさかアレを追う気かぁ? やめとけやめとけ
︱︱﹂
誰一人としてユーゴの言葉に耳を貸さなかった。
今の今まで屈辱的な遊戯を強いられてきた反動も有る。
そしてそれ以上に窮地に立たされた人間を見過ごせない美しい心も
有った。
だが何よりまして彼女達の心を支配したのは、
﹁好機⋮⋮!﹂
シャロンの声とともに駆け出した六人を包むのは、現状打破への希
望。
魔物との争いにより生まれた一瞬の隙をついてのユーゴの殺害だ。
﹁確認しておくぞ、魔導士殿﹂
ステアの声に猛りが籠る。
﹁あの男に施された監視魔術の刻印は、左胸に刻まれているのだな
?﹂
その問いに、青髪の魔導士は頷きを返す。
﹁間違いないわ、一晩中抱かれながら探したんだもの。刻印魔術の
基本として損傷や劣化を抑えるために保護が掛かっているわ。だか
ら肉眼でパッとアイツの体を見ただけじゃどこに刻印があるかはわ
からない。犯されながら魔術を行使してアイツの体を隅々まで調べ
た結果、左胸に強い反応があったの、恐らく⋮⋮いえ、間違いなく
そこよ﹂
ユキリスの断言を受けて、ステアは周囲を見渡す。
87
﹁狙うなら一撃⋮⋮それもヤツの視界とヤツに施された監視魔術の
範囲外からの一撃で刻印ごと左胸を突き破る。王宮で監視している
魔導士どもにわたし達の仕業だと気づかせないためにはそれしかな
い﹂
﹁具体的にはどうなのだ? その範囲とやらは﹂
王女ハイネアが全裸の幼い体を懸命に動かし、騎士達に並走しなが
ら問いかける。
﹁そんなには広くないはずよ、刻印から大人の足で十歩か二十歩か
⋮⋮現在の魔導技術ではそれが限界のはずよ﹂
ユキリスの言葉に、今度はセナが頷き、振り返る。
﹁リセ、貴女の投剣術はその範囲の外から狙えるものなの?﹂
赤髪の騎士の声に、従者は首を振った。
﹁すみません⋮⋮私の投剣は手近なところで戦う事を目的としたも
のなので、距離がでると精度と威力は保証できません﹂
リセの言葉に、シャロンが声を重ねる。
﹁それ以前に、できれば手持ちの武器を使うべきではないと思いま
す。監視魔術がどういったものかわからないけれど、少なくとも私
達の調教に使われた映像魔術では停止や遅滞再生の機能がありまし
た。それぞれの得物を使って仕留めた場合に露見する危険は十分に
あります﹂
快足で飛ばす六人の遥か後方で、
﹁ま、待てぇぇぇお前ら! あまり俺から離れるなよぉぉぉ、何か
あったらどうするんだああああ﹂
息を切らしながら懸命にユーゴが走ってきていた。
ステアはその滑稽な姿を視界の端に収め、薄く笑った。
﹁目的は定まったが手段が不透明か⋮⋮、しかしこれから先我らは
魔物と交戦する。連れ去られていた女性⋮⋮間違いなく公娼だろう
が、彼女達の救出も急務だ。そこで役割を分けるとする。部族単位
で動く魔物が単独行動をとるとは考えにくい、恐らく群との乱戦に
なるだろう。こちらとしても戦場が乱れていた方が暗殺もし易くな
88
るので望むところだ﹂
そこまで言って、ステアは周囲を見渡す。
﹁わたしとユキリス、ハイネア王女とリセで群と交戦する。わたし
が正面に立つのでユキリスと王女は支援を、リセは二人の護衛を頼
む﹂
その言葉に、三人の公娼が頷いた。
﹁シャロン、君は別行動をとって攫われた公娼の救出を目指してく
れ。乱戦はこちらが引き受けるので、最短経路で彼女達を捕えてい
る二体を討ってくれ﹂
﹁承知しましたわ、騎士長﹂
騎士長と参謀が頷き合い、二人してセナを見る。
﹁そしてセナ。君に任せることになる﹂
ステアが真剣な瞳で見つめている。
﹁やり方は貴女に任せます。大切なのは、遠距離から︱︱一撃で。
大丈夫ですか?﹂
シャロンの常に冷静な瞳にも熱が籠っている。
﹁任せて﹂
それを受け、セナは拳を握った。
﹁あたしが、父を殺すわ﹂
﹁森がざわめいていますねぇ⋮⋮﹂
聖騎士ヴェナはここ数年常に露出させられ続けている乳房を揺らす。
﹁そ、そうだ⋮⋮ねんはあぁ﹂
ヴェナの大きな乳房に肉棒を挟まれこねられているシャスラハール
の表情に余裕はない。
﹁王子⋮⋮こちらも⋮⋮﹂
﹁いやん、こっちもです王子ぃ﹂
シャスラハールの左右の手はそれぞれ別の女性の陰部に潜りこんで
いる。
89
﹁ほらほら﹂
﹁ほらほら﹂
﹁あらあら﹂
ヴェナを含めた三人に刺激され、シャスラハールの体の動きも激し
くなる。
﹁ああああああああああんいやああああああああああイクぅぅぅぅ
ぅううううう﹂
﹁こっちも! こっちもイっちゃいますぅぅぅぅ王子ぃぃぃぃぃい﹂
両手に収まった女達が狂ったような嬌声を上げる。
それに隠れるようにして、
﹁ヴェナ、さっきの女性は大丈夫なのかい?﹂
シャスラハールの小さく澄んだ声。
﹁彼女の傷は深く、非常に繊細な部位を痛めつけられておりました。
ここは森の中ですので雑菌による感染症の危険も強いです。できる
だけ早期に治療術士を見つけねば、危ないかと思われますわ﹂
巨乳で肉棒を擦りながら、真剣な声を返す聖騎士。
そのかなり後方に、騎士フレアがうつ伏せで倒れていた。
シャスラハールの組の残り三人の公娼が彼女を介抱しているが、抉
られた肛門の傷は深く大きく無数にあり、出血は一向に収まろうと
はしない。
彼女の丸く美しい尻を水で清め、傷口を洗ってもすぐに赤い血で染
め直されてしまう。
シャスラハールはその光景に唇を噛んだ。
﹁王子ぃぃぃぃ王子さまあああああああああん﹂
﹁あはああああああああああ、もうダメ、ダメえぇぇぇ王子ぃぃぃ﹂
嬌声が上がった時、シャスラハールの瞼が大きく開かれた。
両脚を震えさせながら、フレアが立ち上がったのだ。
﹁わたしは⋮⋮わたしは騎士! リーベルラントの誇りある騎士!
守ると誓った者を見捨てるわけにはいかない⋮⋮!﹂
フレアは鬼の形相で、肛門から溢れる血を気にするそぶりも見せず、
90
愛用の大戦斧を手に取った。
シャスラハールはその光景に騎士の輝きを感じ、体に震えが走った。
同時に、
ヴェナの乳肉の谷間に射精した。
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ヒトの体とケモノの体︵前書き︶
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92
ヒトの体とケモノの体
燦々と照らす日光の下、薫風を斬るように五人の公娼は駆ける。
先頭には騎士槍を携えたステアが立ち、騎士、魔導士、従者と王女
の順で続く。
彼女達の進む先には戦場がある。
囚われの同胞を救い、魔を討ち、そして彼女達の悲願の第一歩と成
しえる計画のための戦場がある。
日の光が強くなっていく。
森が終わるのだ。
光を遮る木々の壁が薄くなっていく。
騎士長ステアは足を緩めない。
仲間達も同様に進む。
進んだ先、視界が開けた。
森が終わった。
そこは、小高い丘だった。
そして︱︱
﹁な⋮⋮くっ多すぎる﹂
カマキリの上半身と人間の下半身を持つ魔物︱︱ベリスが一斉にギ
ョロリとした瞳で見つめてきた。
その数、凡そ五百。
千の瞳に見つめられ、ステアの額に汗が流れた。
﹁騎士長⋮⋮! 如何しますか?﹂
追いついたシャロンが問う。
ステアはすぐに答えを返すことができなかった。
ベリスの群は確実にこちらを視認している。
今更引き返したとして戦闘は避けられず、何より退きながらの戦闘
の不利はかつて指揮官であった彼女のよく知るところだ。
93
何より今ここに居ない一人の事を思う。
千人騎士長ステアの部下、百人長セナ。
信頼して作戦行動を任せたこちらが、逆に彼女の信頼を裏切ってし
まうことを騎士の誇りが許さなかった。
﹁あれを見てっ!﹂
魔導士ユキリスが声を上げ、一点を指差す。
その先、大勢のベリス達に囲まれた中央に、生きた公娼を肉棒で突
き刺し固定し、鎧とした大型のベリスが居た。
﹁畜生の分際で⋮⋮人を纏うか、下種﹂
吐き捨てるハイネアの声に震えが走る。
鎧を纏ったベリスは八体、つまり公娼の数も八。
﹁先ほど飛んで行った二人とは別に⋮⋮すでに一組捕らえられてい
たのですね⋮⋮﹂
リセがハイネアの背を支えながら言う。
八体の内、一際大きな一体が羽根を振るわせる。
残りの七体はかしずく様に膝を折り、頭を垂らす。
それは王に対する臣下の忠節の儀式とよく似ていた。
ステアは目を凝らす。
ベリスの王に装着された公娼の顔に見覚えがあったのだ。
﹁騎士長⋮⋮! あれは⋮⋮あちらの御方は!﹂
﹁カーライル王国のヘスティア王女⋮⋮か﹂
驚愕に包まれたシャロンの声に答えるように、ステアは呆然とその
人物の名を呼んだ。
カーライル王国はリーベルラント騎士国家の同盟国にして、ゼオム
ントとの戦争における抵抗諸国を纏めた同盟元首であった。
そのカーライルを治める王族でありながら、自ら剣を取り魔法を駆
使して闘った王女。
それがヘスティアであった。
ステアの騎士団も同盟に参加し、彼女との知己も得ていた。
戦争終了後、捕えられて公娼にされていたのはステアも知るところ
94
ではあったが、今ここでの再会は予測できるわけがない。
かつては精悍だったその双眸はやつれている。
輝く金髪は無残に絡まり、両脚は膝から切り落とされていた。
遠目にもわかるほど尻の割れ目から出血をしている。
一体どれだけの時間カマキリに装着され、膣を犯され続けていたの
だろうか。
ベリスの王の鎌が何気ない動作で持ち上げられ、
王女の首に押し当てられた。
﹁な、何を! やめろ!﹂
ステアの声は、激しく、大きく響いたはずだった。
それでも、
転がり落ちる王女の運命を変えることはできなかった。
斬り飛ばした首から迸る血液を全身に受け、ベリスの王は尚更強烈
に羽音を立てた。
そして王の周りにいた肉鎧付きのベリスの内、四体が倣うように動
いた。
﹁痛い! 痛いいたあああああいいいたあああ﹂
﹁やめてぇぇぇいやあああああ助けてぇぇぇぇ﹂
一人の公娼は肩をそがれ、一人は尻をそがれ、一人は乳房をそがれ、
一人は脇腹の肉をそがれ、そして最後には全員首を落とされた。
五体が、五人の公娼の首を刎ねた。
﹃五﹄それは、この場に足を踏み入れた公娼の数とも一致していた。
﹁やつら⋮⋮! 妾達を捕まえて新しく交換する気か!﹂
ハイネアが唇を噛む。
﹁うおおおおおおおおおおおお!﹂
ステアは騎士槍を構え直した。
突進する。
手近に居た一体の首を刎ねた。
続けざまに乱舞する槍が次々にベリスの体を裂いていく。
ステアの技量は凄まじいものであった。
95
血飛沫を上げ倒れていく同族達を見て、ベリスの王は鎌を動かし指
示を飛ばす。
首付きの肉鎧を纏った三体が王の側から飛び立った。
宙を舞い、飛行しながらステアの前に立ちはだかる三体。
その腰に巻きつけられ、肉棒で繋がれている公娼達は、間違いなく
生きていた。
﹁助けて⋮⋮助けてぇぇ! 痛いの⋮⋮コイツらの⋮⋮トゲトゲし
てて、すごく痛いの﹂
公娼の陰部から、赤い滴が止めどなく零れていた。
﹁貴様ら! この外道があああ!﹂
ステアは激怒し吠えるが、槍を振るわない。
否、振るえない。
ベリスの体の殆どは公娼の鎧で守られ、露出している部分は手と同
意である鎌と足、そして頭だけだ。
頭を狙えば倒せるだろうが、狙いが明確になっていては敵に防がれ
やすく、こちらの動作も予測されやすい。
攻防ともに進退窮まったステアは唇を噛みしめる。
ベリスが羽音を立てながら、突っ込んでくる。
そこに、
﹁騎士長、大丈夫ですか?﹂
シャロンが体を割って入れ、剣で鎌を弾き飛ばした。
﹁負傷は無いが⋮⋮この状況、どうする⋮⋮。どうすれば彼女達を
傷つけずにカマキリ野郎を殺せる⋮⋮﹂
ステアは続く鎌の斬撃を槍で撃ち落としながら、シャロンに問う。
﹁少なくとも私達の剣や槍では難しいかと⋮⋮そうです、ユキリス
!﹂
シャロンは魔導士へと振り返る。
﹁貴女の魔法で、コイツらを仕留められませんか?﹂
騎士の問いに、劇毒と狂奔の魔導士ユキリスは苦渋の表情を作る。
﹁近すぎるのよ⋮⋮普通の毒で殺そうとした時、カマキリと彼女達
96
の距離があまりに近すぎる。巻き添えにしない自信が無いわ⋮⋮﹂
ユキリスは錫杖を抱きながら、弱弱しく答えた。
﹁カマキリにだけ効く毒なんてものは無いのか? 魔導士﹂
ハイネアの尖った声に、
﹁そんな都合の良いものなんてないわよ。カマキリにだけ効いて、
人間にだけ効かないだなんて︱︱﹂
そこまで言って、ハッとした表情で固まるユキリス。
﹁どうしました? 昆虫向けとか魔物向けとか、そういう毒があり
ましたか?﹂
リセの願うような声に、魔導士は首を振った。
しかし、
﹁違うけど⋮⋮有ったわ、方法が。騎士の方々、お願い少しだけ耐
えてて、ちょっと特殊な魔術なの! 時間がかかるわ!﹂
﹁わはー、やってるねー見える見える。かなりの数だよー、アミュ
姉﹂
人狼族の魔物の頭の上に立ち、左手をひさしのようにして額にあて
ている流線形のドレスを纏った剣士が浮いた声で言った。
﹁その﹃アミュ姉﹄というの、止めてくれないかしら? 何度も言
わせないで﹂
縫製の新しい黒衣に身を包んだ魔導士が、人狼の肩の上で表情を曇
らす。
﹁⋮⋮マリス、数の報告はできるだけ正確に、出来うるなら戦場の
状況もわかる範囲で報告を﹂
両手に軍鉄甲を填め、赤い軍装束を身に纏った拳闘士が背後に人狼
を従えて問う。
﹁あーごめんごめんヘミネちゃん。戦ってるのはカマキリ型の魔物
⋮⋮何て言ったっけ? 昔習った気がするんだけど⋮⋮まぁいいや、
それと人間五人、みんな公娼だね。主人役の姿は見えないよ﹂
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その言葉に、魔導士と拳闘士︱︱アミュスとヘミネは頷いた。
﹁駒が増えるわね﹂
﹁同士が増えますね﹂
二人の言葉のニュアンスは僅かに異なった。
﹁良いわ、この﹃支配と枯渇の魔導士アミュス﹄の兵隊として、こ
の人狼共の様に手足として働いてもらいましょう。どちらにもね﹂
アミュスは自らを肩に乗せて運んでいる人狼の頭を思い切り蹴とば
した。
﹁わはー、さっすがアミュ姉だー。凄いね凄いねー、支配魔術! こぉんな大勢のワンちゃん引き連れちゃって、魔導士って最高だね
ー﹂
三人の後ろには、静かに歩む人狼が、三百体ほど続いていた。
ステアとシャロンの眼前で、今の今まで切り結んでいたベリスが膝
から崩れ落ちた。
羽根をブルブルと震わせながら、苦しげに地面を鎌で掻き毟ってい
る。
虚を突かれた騎士達であったが、気を取り直して隙だらけの三体を
襲い、あっさりと首を刎ねた。
繋がれたままの公娼をリセが引きはがし、ハイネアが回復魔術を込
めて右手をかざす。
﹁⋮⋮一体何が?﹂
シャロンの声に、ユキリスは至極真剣な表情で答えた。
﹁対カマキリ限定や対昆虫限定の毒って言うのは持ってないけど、
対男限定の毒ならいくらでも持っているわ。だから、チンコがドロ
ドロになって腐る毒⋮⋮と言うか性病かな? それをかけてやった
わ、それならまぁ彼女達にはあまり影響ないかと思って﹂
ベリスはカマキリの上半身と、人間の男の下半身を持った魔物。
その言葉を受けてハイネアは顔を顰め、倒れ伏した公娼達の陰部に
98
手を当て、そこを消毒する様に回復魔法を強めた。
99
父と娘︵前書き︶
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父と娘
背の高い木の根元に、大剣を携えた半裸の女。
使命を得た騎士である。
騎士セナは思考する。
﹁︵さて⋮⋮任せられたけど、実際どうすればいいんだろう︶﹂
遠距離から、自らの得物を使わずに左胸を穿つ。
難しい注文だ。
何せ時間も用意も無いのである。
セナ達がかなりの速度で移動したため、置いて行かれたユーゴだっ
たが、もたもたとした足取りで追って来ている。
木陰に潜んだセナから見て遥か後方に、豆粒大よりわずかに大きい
︱︱小指の先ほどの大きさのユーゴが見える。
悠長に構えることはできない。
手元にあるのは愛用の大剣のみ、しかしこれは使えない。
ならば、と辺りを見渡す。
都合よく刃物が転がっているわけも無く、葉と木々に視界は覆われ
る。
﹁︵どうする⋮⋮どうすれば︶﹂
セナの額に汗が浮かぶ。
ユーゴの姿が段々と迫ってきているのが見える。
ふと、転んだ。
愚かな父親が木の根に足を取られ、派手に転ぶ様子を見た。
無様に転がり、地面に生えた鋭い草に全身を打ち付ける。
体中を擦りむいた痛みでのたうち回り、近くの木に体をぶつける。
その衝撃で木から落下してきた枯れ枝がユーゴの頭に直撃した。
ユーゴは体を震えさせ、痛むであろう頭を両手で抱え悶絶している。
セナは上を見上げる。
101
今セナが身を隠している巨木は、人間を二十人縦に並べてもお釣が
来るほどに、天に向かってそびえていた。
﹁︵これだ⋮⋮!︶﹂
閃き、笑みを浮かべた騎士は、
己の股間を申し訳程度に隠していた紐を取り外し、装着していたハ
ーフプレートを脱いで、大剣でバラバラに砕いた。
﹁いつつつつ⋮⋮コブになってやがる⋮⋮あーチクショウ、アイツ
らが走って行きやがるからこういう目に遭うんだ。合流したら徹底
的に犯してやるぜぇ、六人縦に並べてよぉ、木の棒五本用意してぇ、
先頭以外の奴の口に咥えさせてよぉ、咥えたまま目の前のマンコに
ぶっ挿す感じにしたらよぉ、六人が連結するよなぁ、そこで俺が一
番後ろの奴のマンコにぶち込んで激しく突きまくれば、全員纏めて
ガンガン犯れて、晴れて主人の面目躍如ってやつだ﹂
ブツブツと独り言を言いながら痛む頭を擦っているユーゴの視界に、
あるものが飛び込んできた。
﹁な⋮⋮セナぁ?﹂
彼の実の娘が生まれたままの姿で巨木の根元に横たわっていた。
辺りには彼女が着ていたハーフプレートの破片が飛び散り、いくつ
かの血痕も跳ねていた。
セナの額や腹、足からも血が流れている。
よくよく見れば周囲の草も荒れ、ここで何らかの争いがあった形跡
で溢れていた。
そして、娘は静かに目を閉じている。
肉奴隷として過ごした絶望の三年間から解放され、穏やかな死をよ
うやく迎えられたかのような表情だった。
彼女の大剣は、巨木の幹に刃を横にして打ち付けられていた。
﹁いったい⋮⋮何が⋮⋮セナ⋮⋮俺の、娘⋮⋮﹂
ユーゴは震える足で、一歩二歩と踏み出す。
102
その顔には涙が浮かび、こみ上がる叫びを喉奥に封じている形相だ
った。
﹁嘘だろ⋮⋮馬鹿な⋮⋮こんなことって⋮⋮﹂
その足取りは、幽鬼。
無意識に手を水平に伸ばし、娘を求める。
﹁まだ⋮⋮ろくに⋮⋮再会してから⋮⋮ろくに⋮⋮﹂
ふらりふらり︱︱
ぽたりぽたり︱︱
振るえる足と、滴を零す瞳。
そして、彼の喉が一段と大きく動く︱︱
﹁まだまだ全然ヤってねぇぇぇぇのにぃぃぃぃぃ! うわああああ
あ俺がどんなに! どんなに! コイツとセックスしてぇぇ、生ハ
メしてぇぇぇと思ってこの三年間過ごしてきたかああああ。せっか
くぅぅぅせっかく娘とヤってもおかしく無い立場になれたのにぃぃ
ぃまだ一回しか中出ししてねぇぇのにぃぃぃ﹂
ユーゴは泣きながら仰向けに横たわる娘の体に飛びついた。
その両手は迷うことなく、形良く盛り上がった胸を掴みあげた。
﹁ああああああ柔らけぇぇぇ。俺が! 俺がどんなにこの胸を揉み
たかったか⋮⋮。ようやく自由に揉めるってのによぉぉお。好きな
だけヤれるってのによぉぉぉ! こいつの仲間の前で中出ししてぇ
ぇ、絶望する表情とかもっと見たかったのによぉぉ﹂
娘の両脚を開き、腰を割り入れる。
怒張した肉棒を取りだして、一気に膣に押し当てる。
﹁俺が三年間でどんだけコイツの映像作品を買ったかぁ⋮⋮。初回
盤も限定盤も全部全部買って、陰毛や墨つかったマンコ拓なんかの
特典も全部集めてたのによぉぉぉ。酷過ぎるぅぅぅ裏切りだぁぁぁ、
あんまりだぁぁぁ﹂
バシバシとユーゴの腰がセナに打ち付けられる。
セナの全身が激しく揺れる。
頭も髪も揺れる。
103
二つ分けにされた髪の先に、植物のツルが結ばれていることにユー
ゴは気づかない。
ツルは背の高い草に隠れて伸びて張り、木に刺さった大剣の柄に伸
びている。
﹁︵やっぱり食い付いてくるわよね、コイツ︶﹂
セナは泣き喚きながら自分を犯す父親を、目を閉じたまま冷笑し、
思考する。
﹁︵第一関門は突破。コイツが死体のフリしたあたしの体に取り付
いて揺すってくれなきゃ始まらないもの︶﹂
胸を揉み、腰を打ち付けるユーゴ。
揺れるセナの体と、髪に括られたツル。
張ったツルが伸びる先、大剣が細かに動いている。
そしてその切っ先は紐に触れている。
彼女の股間を申し訳程度に隠していた紐だ。
﹁︵ツルじゃ簡単に切れすぎるもんね、油断させた後に結果が起き
ないと失敗しちゃうもの︶﹂
彼女の頭部が揺れる度、大剣が細かに動き、紐に食い込んでいく。
そしてその紐の先、ツルが更に結ばれ長く長く伸び、木の天辺へ。
そこに尖った木杭が結ばれていた。
セナは自らの体を傷つけたり、周囲の草木を荒らす事なども含めて、
これらの工作をユーゴが悶絶している間に素早く成し遂げた。
﹁︵砕いたハーフプレートの欠片も重しにしてくっ付けといたから、
落下中に尖った部位が下を向くのは間違いない。後は位置と、タイ
ミングを間違えなければいける︶﹂
落下予測位置は、彼女の真上。
一歩間違えば自分をも殺してしまう位置に彼女は罠を仕掛けた。
なぜなら︱︱
﹁︵どうせコイツは、あたしの中で出すんだし、その瞬間思い切り
前のめりになるはずよ。だってそうしないと、奥の奥に出せないし
ね︶﹂
104
今セナは正常位で犯されている。
射精時に前のめりになるならば、必然その体は覆いかぶさってくる。
それが、木杭を落とす好機となる。
﹁ああああぁぁぁクソぉぉぉぉ死姦のくせにあったけぇぇぇ⋮⋮こ
れが、これが家族の温もりってやつかなぁぁ⋮⋮死んじまってもや
っぱり俺達家族だからなぁ⋮⋮お父さんの事温めてくれてるんだよ
なぁぁセナぁぁ﹂
ユーゴの動きが一段と早くなる。
その顔が紅潮していく。
﹁出す! 出すぞぉぉぉぉセナぁぁぁお父さんからの! 弔いのぉ
ぉぉ一発だぁぁぁぁ﹂
ピュル︱︱と膣壁で射精の一滴目を感じた瞬間。
セナは首を大きく揺らした。
ユーゴの射精時の大げさな動きと相まって、それは死体が衝撃で跳
ねただけにしか見えぬ動きだった。
ヒュッ︱︱落下音が聞こえる。
セナはまだ目を開かない。
監視魔術が作動している現在、王宮にこの作戦を気づかれるわけに
はいかない。
あくまで、死んだふり。
落下する木杭がもし僅かでもズレたならばセナの体を穿つと知って
いても、目を閉じ結果を待つ。
﹁うぉぉぉぉぉぉ届け! 天国に居る娘に! お父さんのぉぉぉ!
ザァァァメェェェン!﹂
ユーゴの体が、更にセナに覆いかぶさる。
膣内で感じる精液も、溢れんばかりに注がれてくる。
永遠にも思えた瞬間が、今終わる︱︱
ガスッ︱︱肉を抉る音が辺りに響く。
そして、
﹁ぐぼぉえ⋮⋮﹂
105
セナの顔に大量の血が吐き出された。
ゆっくりと、彼女は目を開いた。
﹁へっ⋮⋮ハハッざまあ見ろ⋮⋮﹂
虚ろな瞳を全開にし、口から血の泡を吐いた父親の姿が視界一杯に
広がった。
その左胸には、鋭利な木杭が深々と刺さっていた。
間一髪、木杭の先端はユーゴの肉を貫いていたが、骨に挟まりセナ
にまでは届かなかった。
﹁ありがとう⋮⋮お父さん。最後に命がけであたしの事守ってくれ
て、本当にありがとう⋮⋮ねっ!﹂
そう言って彼女は身を起こし、動かなくなった父親の体を蹴り飛ば
した。
蹴り飛ばされた衝撃で、宙を舞うユーゴの体の下、屹立した肉棒か
ら精液の残滓がセナに向けて飛ぶ。
顔に一滴の精液が掛かった。
﹁汚いっ!﹂
セナは巨木から大剣を引き抜く。
装備は全部工作に使ってしまったため、今の彼女は全裸である。
全裸で大剣を構えた騎士は、すぐ近くに転がる死体を無視し、この
先で戦う仲間達の下へ急ごうとする。
その時、茂みで何かが蠢いた。
咄嗟に大剣を向け、威嚇する。
その切っ先には、
﹁えっ⋮⋮と、やぁ?﹂
黒い肌の少年が呆然とした様子で立っていた。
この場所に、人間の男。
それはつまり調教師︱︱主人だと言うこと。
もちろん彼にも監視魔術は施されている。
106
王宮の監視を掻い潜って主人を殺害するという彼女の計画は、
﹁失敗⋮⋮なの?﹂
冷や汗と同時に、父親から注がれた精液が一滴、膣内から零れてき
た。
107
王と騎士の関係︵前書き︶
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108
王と騎士の関係
﹁皆さま、確保です﹂
黒い肌の少年の後ろから現れた大柄な女の口から放たれた命令に、
即座に三つの影が反応した。
虚を突かれたセナは三つの影︱︱公娼達に抑え込まれる。
﹁な、くっ! 離してっ!﹂
全裸のまま組み伏せられたセナは懸命に身を揺するが、抑え込む公
娼達も一流の武人であるようで、拘束を解くことができない。
﹁大人しくしてください⋮⋮悪いようには致しません﹂
不意に、囁かれる言葉。
セナの背を捕まえ、地面に押し付けている一人が神妙な顔で言った。
﹁良いですか? これから王子が貴女を犯します。できるだけ大き
な声で喘いでください。それが貴女の為なのですから﹂
三人の公娼に背中を、腰を、足をそれぞれ捕まえられ、尻を持ち上
げた形に拘束される。
黒髪黒肌の少年︱︱よくよく見ると線の細い美形の少年が、先ほど
号令を発した大柄な女と二三言葉を交わし、ユーゴの亡骸を見る。
二人は頷き合って、セナに歩み寄ってきた。
意外に力の籠った腕で、騎士の突き出された尻を掴む黒肌の少年。
﹁なっ⋮⋮やめっ!﹂
ズニュ︱︱と音を立て、深く肉棒が突き入れられた。
﹁あっ⋮⋮かはっ﹂
後背位の形から奥の奥まで挿入され、セナの体から衝撃として呼気
が飛び出す。
﹁喘いで下さい、大きく、獣のように﹂
セナの耳を噛むようにして顔を近づけてきた大柄な女が囁く。
﹁安心してください。わたくし共は貴女の味方です。状況を察する
109
に貴女はご自分の主人役を殺められた⋮⋮そう言うことでしょう?﹂
騎士の顔に驚愕が浮かぶ。
﹁わたくしはスピアカント国の聖騎士ヴェナ。そしてこちらにおわ
すのはスピアカント国の王子シャスラハール殿下。わたくし共はゼ
オムント国に対して反旗を翻すもの。今貴女を組み伏せている彼女
達も、周囲を見張っている彼女達もすべて目的を同じくする同志。
わかって頂けたなら、さぁほら︱︱喘いで下さらない?﹂
その時、シャスラハールの腰が大きく動き、肉棒が深く深くセナの
子宮を打った。
﹁あっ、くっはああああああああんんん﹂
声は、自然に漏れてきた。
﹁なるほどなるほど、魔術刻印を抉ることによって監視の目を離れ
る⋮⋮と﹂
ヴェナが顎に手を当て、得心したように頷く。
﹁そ、そうよ⋮⋮この男の、はああんんっ! の左胸に刻印があっ
て、それを⋮⋮一撃で抉るために⋮⋮罠を、んっ! 仕掛けたの﹂
﹁いやあああああああああ、王子! 王子凄い! おうじぃぃ﹂
﹁もっとぉぉ、もっと奥までぇぇぇ乱暴にしていいからぁ、王子ぃ
ぃ﹂
セナの体を押さえている公娼達が、シャスラハールの手を借りて喘
ぎ声を放つ。
全ては王宮の耳を騙すために。
﹁説明も無く急にこのようなことを始め⋮⋮申し訳ありません。王
宮の監視魔術を誤魔化すため、僕達は内密な話をする時はこういう
形を取らざるをえないのです。⋮⋮それで、貴女はこれからどうな
さるおつもりですか?﹂
シャスラハールはセナの体に覆いかぶさったまま、申し訳なさそう
な顔で謝った後、小声で問うた。
110
﹁んんっ⋮⋮この先で戦っている仲間と合流して⋮⋮あっ、あああ
あんん。魔物の宝具を手に入れ、ゼオムントを⋮⋮そこに巣食うゲ
ス共を滅ぼす⋮⋮!﹂
セナの切羽詰まった叫びに、シャスラハールは頷いた。
﹁僕達の目的も貴女と一致します。是非、貴女のお仲間ともお会い
したい。しかし、刻印の除去とは驚きました⋮⋮。もしもその方法
が確かならば、こういった事をせずにとも、王宮の目と耳を欺ける。
そうだ! 僕の体に施された魔術刻印がどこにあるか、教えて頂け
ませんか?﹂
シャスラハールはセナを犯すペースを崩さず、ひたすら演技を続け
ながら問いかける。
﹁あ、アンタ⋮⋮! これが演技だって言うんなら⋮⋮ちょっとは
︱︱﹂
﹁﹃アンタ﹄ではありません。シャスラハール殿下、或いは王子と
お呼びなさい。騎士よ﹂
セナの耳元に座し、シャスラハールの首筋に舌を這わせていたヴェ
ナが、視線を鋭くして言い放った。
﹁あ、あぁ良いんです騎士さん。僕のことは何とでもお好きにお呼
び下さい。ヴェナ、彼女は僕達の仲間になってくれる人だよ? 脅
しつけたりしないでくれよ﹂
シャスラハールは自分の体を嘗め回すヴェナに苦言する。
﹁しかし王子、貴方はこれから先ゼオムントを滅ぼし、スピアカン
トの再興を成される御方。一介の騎士程度に軽んじられては、付き
従うものの士気にも影響いたしますわ。どうかご自身の事を正しく
認識なさいませ﹂
聖騎士は少年の胸に頭を潜りこませ、その乳首を舐めしゃぶる。
﹁くっ⋮⋮ヴェナ、そこはいけない⋮⋮。僕が王子になるのは、西
域を攻略し魔物の軍勢を従えたその時だ。その時が来るまで僕は⋮
⋮ゼオムントに与えられた偽りの身分、調教師としてのただの小僧
でしかない⋮⋮よ﹂
111
シャスラハールの肉棒が、セナの膣肉を抉る。
﹁︵ただ乱暴に犯す⋮⋮って言うわけじゃないみたいね︶﹂
王宮に疑われない程度のストローク、腰の動きでセナを犯しながら
も、その手つきにユーゴや他の凌辱者にあった汚らわしさや粗暴さ
は感じられない。
﹁ダメです。王子、王子は誰よりも偉く、高貴で在らなければなり
ません。一介の騎士は駒。協力助力には褒章を持って応えればよろ
しい。その言葉や無礼な態度にへりくだる必要など、どこにもない
のです﹂
ヴェナはシャスラハールの乳首を激しく舐め扱きながら、空いた手
で彼の腰を押さえる。
それはセナの中からシャスラハールの分身が抜ける事を防ぐ為の手
だった。
﹁あっ⋮⋮ダメ! ヴェナ。それ以上舐めないでくれ!﹂
シャスラハールの腰が慌ただしく動く。
﹁んんっ! 激しっ! あっ、あっあああん! やめ、止めなさい
よ!﹂
セナの息遣いも、荒々しく響く。
﹁存じておりますよ、王子。王子は乳首を舐められると昂られます
わ。このヴェナが誰よりもその事を存じております。さぁ、思うま
ま、思い切り射精なさってください。この、騎士に﹂
忠誠を。
膣に射精させる事で、シャスラハールとセナの間に上下関係を強制
的に作りだし忠誠を強いる。
ヴェナは強気で不遜な騎士に対して、生殖動物的根本からの服従を
迫ってきたのだ。
﹁あ、ああっ! 出る! 出ちゃう⋮⋮ヴェナ離して! このまま
膣内に出ちゃうよぉぉ!﹂
未だ十代のシャスラハールの若い体は射精感の高まりからは、逃れ
られない。
112
一回一回、セナの膣に肉棒が擦れる度に、痺れるような感覚が股間
と脳を襲う。
﹁勘違いなさらないことね、騎士よ。貴女はシャスラハール様の同
志としてこの西域攻略を手助けする。その後のゼオムント攻略にも
従軍する。けれど対等な仲間ではない。ただの同志、或いは部下と
して付き従うのですよ。その事を、よぉく心に刻んで下さいね﹂
ヴェナの手がシャスラハールの腰を強く押す。
﹁あっ! 出るぅぅぅぅ。出ちゃうぅぅぅぅ﹂
シャスラハールは喉をのけ反らせ、体をガクガクと揺らす。
その体が、斜めに傾いだ。
﹁え⋮⋮?﹂
セナはこの三年間身に染みて味わってきた中出しの感覚を感じなか
った。
咄嗟に振り返ると。
飛び散る白い飛沫が顔に掛かった。
シャスラハールの体は後ろに引き倒され、膣内で放たれるはずだっ
た精は、虚空を舞っていたのだ。
﹁貴女⋮⋮! 助けられた恩を仇で返しますの?﹂
ヴェナが厳しい表情で睨みつける。
その先には︱︱
﹁フレア⋮⋮?﹂
セナの元同僚、リーベルラント騎士国家の百人長フレアが、シャス
ラハールの背中を抱き寄せていた、
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介入者︵前書き︶
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介入者
王宮内の豪奢な貴賓室で、事の顛末を見守る男が居た。
ゼオムント国魔導長官オビリス。
魔法により映し出された映像には、シャスラハールとセナの性交、
そしてその後の混乱が見て取れた。
﹁突然見つかる騎士セナの死体⋮⋮それを発見し死姦していた調教
師ユーゴの死亡。調教師シャスラハールの登場で騎士セナの死体は
偽りとわかる⋮⋮すぐに性交、そして本来シャスラハールの組では
無い公娼の介入。ふむ﹂
不可解な点の多さに、オビリスは首をかしげる。
﹁ゴダン、君はこれをどう見る?﹂
傍に控えていた王宮魔導士に問いかける。
﹁十中八九、企んでおりましょうな。騎士セナも調教師シャスラハ
ールも。どの類の企みかは存じませぬが、シャスラハールの方に関
しては警戒に値するかと﹂
ゴダンは柔和な印象の顔を崩さぬまま答えた。
﹁ほう、その意図するところは?﹂
﹁この小僧には楽しみという感情が観察できませぬ。ユーゴや他の
調教師であれば公娼相手に凌辱する際、邪な愉悦を行うものであり
ましょう。しかしこの小僧、いまいち誠実すぎると申しますか、和
姦、或いは目的を異とする性交にしか見えませぬ。現に相手をして
いる公娼達の喘ぎ声もどこかそう⋮⋮嘘くささが拭えませんな﹂
オビリスは頷く。
﹁結構。僕の見解もほぼ同じだ。公娼が立場の逆転を狙う為に何ら
かの行動を起こすことは織り込み済みだが⋮⋮まさか調教師の中に
造反者が出るとはね﹂
魔導長官にして今回の西域派遣の最高責任者である彼の視線が細ま
115
る。
結論を急ぐべきでは無いが、異変を異変として認識するよう彼の脳
は強く求めたのだ。
映像を巻き戻し、今一度精密に観察しようとした時、不意に背後か
ら声がかけられる。
﹁面白そうな話をしているではないか、俺にも聞かせておくれ﹂
貴賓室の扉を開け体を潜りこませてきたのは、赤と白、そして金糸
で装飾された衣装を身に纏った少年。
﹁⋮⋮これは、リトリロイ殿下。ご機嫌麗しゅうございます﹂
﹁うむ﹂
細身の体に鋭い印象の眼差し、輝く金色の髪をした少年の名はリト
リロイ。ゼオムント国第三王子である。
翌年に成人の儀を控えた彼は、王宮内で仕事こそ持たないものの、
いずれ政務にあたる為の見学として様々な場所に首を伸ばしていた。
彼がやって来れば賓客として相手をしなければならず、業務に支障
が出るため、王宮内では陰で厄介者扱いされている。
彼の後ろに付き従う影がある。
胸の谷間と腰に大胆なスリットの入った白い一枚布のドレスを身に
纏い、肩に銀の装甲をはめ、長い金髪を銀色の羽根つき兜に納めた
美しい少女だった。
﹁ほら、セリス入りなよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮ハッ﹂
王子の言葉に短く頷いて応え、入室してくる。
オビリスはその者の事を知っていた。
まず間違いなくゴダンも同じだろう。
騎士公娼セリス。
敗戦国から徴収された公娼でありながら、このゼオムント最強の勇
を誇る乙女。
その美貌も群を抜き、護衛に愛玩にと、貴族連中や大手の調教師等
がこぞって彼女の管理権を求めたが、このリトリロイ王子の強権に
116
よって独占され、今日の今日まで民や臣に指を触れさせぬ唯一の公
娼︱︱それが彼女だ。
セリスを従えたリトリロイが室内を見渡す。
﹁ふむ⋮⋮良い部屋だな。魔導の最先端技術に溢れ、警備も厳重だ。
流石は魔導長官殿の私室であるな﹂
王子と視線が合い、臣下の礼を取るゴダンの姿がある。
﹁⋮⋮殿下、この部屋の前に衛兵が詰めていたはずですが、彼らは
?﹂
オビリスは趣味を兼ねたこの西域遠征の監視を邪魔されるのを嫌い、
ゴダンや一部の人間を除く誰の入室も許可していなかった。
誰であろうと、絶対に。
衛兵達にはそう言い含めていたはずだ。
﹁あぁ、アイツらか。不遜にも俺の行動を阻もうとするのでな、セ
リスに無力化させた。安心せよ、命は取っておらん。不敬とは言え
愛する我が国民であることには変わらんからな﹂
クックと笑うリトリロイの姿を眺めながら、オビリスは心の内で驚
嘆する
三十人。
それが、この部屋への他者の侵入を拒むために用意した、オビリス
の私兵︱︱精鋭だ。
それもまったくこちらに気づかせず、音も立てず無力化したという。
白と銀の鎧を纏った公娼の武勇は、この場に、いやこの王宮に居る
誰よりも強大で、絶大なのだ。
﹁して、魔導長官よ。卿はその異変にどう対処するのだ?﹂
王子はさも楽しげに映像魔術を見やる。
﹁対処⋮⋮そうですね。公娼が調教師を殺害するなど前代未聞、あ
ってはならぬ蛮行。これが真実であるならば、殺害した公娼、関与
した公娼の人質や祖国に制裁を加えねばなりますまい。それに調教
師シャスラハールの動向も気になるところです﹂
一度息をつき、声を落ち着かせる。
117
﹁調査員の派遣、ですかね。王宮の魔導士であれば刻印魔術の痕跡
から状況を調べ上げることも可能です。誰か人を遣って︱︱西域の
魔物の事もありますので部隊ですかね、調査部隊を派遣し、報告さ
せます。並びにシャスラハールの組を追跡させ、不穏な動きがあれ
ば処分できるように、っというところですかね⋮⋮はぁ﹂
オビリスの認識では、公娼は一人頭でかなりの戦力になる、
数人や数十人の部隊でもし彼女達と争うような事になれば、逆に全
滅しかねない。
少なくとも兵員は五百、願わくは千欲しいところであった。
しかし、彼は魔導士の長であって兵士達の指揮官ではない。
自由に動かせる兵などそれこそ百を割る程度だ。
どこかで将官と接触し、兵を借りなければいけないか⋮⋮と内心辟
易する。
彼は魔導士。
頭脳の力で名声を成してここまで上り詰めた。
故に、戦場で鉄の塊を振るう野蛮な兵とその指揮官達を心底馬鹿に
している。
﹁そうか! 良しわかった。ならばその役目、俺が果たそうじゃな
いか!﹂
オビリスの視線が、リトリロイの顔に固定される。
﹁殿下⋮⋮何と?﹂
﹁兵も物資も俺が用意しよう。もちろん現場の指揮も俺が執る! 安心しろ、万が一など起こらぬ。俺にはセリスがついているからな
! 魔導士に関しては専門外故、そちらから人員を裂いてくれ、長
官﹂
王子は快活に笑いながら言った。
オビリスはその言葉を受け、思案する。
十秒ほど頭の中で考えた後、一度頷き、これまでに無く丁寧な口調
で語りだした
﹁王子を西域へ送るなどと⋮⋮臣として大変に不敬ではございます
118
が、何分私には兵員の当てがございません。もしお言葉に甘えさせ
て頂けるようでしたら、このオビリス。伏して御身にお願い申し上
げたい思いです﹂
そして言葉の通りに頭を下げた。
﹁あぁ、任せておけ。明日にでも出発できるよう、父王に掛け合っ
て来る﹂
踵を返すリトリロイの背中に、オビリスは声をかける。
﹁こちらからは魔導士ゴダンとその補助役数名を同行させます。こ
の者は魔導士としての才も人柄も大変優れた男。必ずや道中私の名
代として御身の為に献身し、この旅の派兵の成功に尽力することで
しょう﹂
おうおうと右手を適当に振ってリトリロイは応え、セリスを伴って
部屋を出て行った。
足音が遠ざかって行くのを、オビリスとゴダンは頭を下げた姿勢の
まま聞いていた。
やがて完全に二人の気配が無くなった辺りで顔を上げ、目配せする。
﹁やれやれ⋮⋮三日後に娘の学業参観が控えておりますのに⋮⋮殺
生でございますなぁ長官﹂
﹁すまないね。帰ってきたら特別休暇が取れるように取計らってお
くから、今回の件はよろしく頼む﹂
愚痴るゴダンに向けて薄い笑みを浮かべながらオビリスは謝る。
﹁仕方がありませんなぁ⋮⋮刻印魔術の痕跡調査に、シャスラハー
ルの監視。そしてリトリロイ殿下の御守までとは⋮⋮﹂
やれやれと肩を落とすゴダン。
﹁殿下の身の安全については、仰っていたようにあの公娼⋮⋮セリ
スに任せておけば良いさ。ただ彼の我が儘に振り回されることだけ
は覚悟の上、耐えてくれ。あぁそう、供の者だが︱︱﹂
そしてオビリスは虚空に手を叩いた。
部屋の隅、ふらりと立ち上がる人影。
痩せ形の初老の男が、近づいてきた。
119
﹁ゾートを付けよう﹂
ゾートと呼ばれた男が、ゴダンに黙礼する。
﹁ゾートさんですか⋮⋮。これはこれは⋮⋮長官、本気でございま
すなぁ﹂
ゴダンの頬に浮かぶのは、笑み。
オビリスの頬にも同じものが浮かぶ。
﹁そうさ、反逆した公娼にはこれまで以上の責め苦に遭って貰わな
いといけないからねぇ。このゼオムント国認定昨年度最優秀調教師
ゾートの力を持って、彼女達を極限まで辱め、貶めて来てくれたま
え﹂
魔導長官の瞳は、少年のように輝いていた。
﹁セリス⋮⋮いよいよだよ⋮⋮﹂
少年の右手が伸びる。
﹁うん⋮⋮頑張ろう、リト﹂
少女の左手がそれを受け入れる。
支配国の王子と敗戦国の公娼の手が、穏やかに結ばれた。
120
集合︵前書き︶
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集合
﹁騒がしくなってきましたね⋮⋮﹂
森を駆ける一団の先頭、ヴェナが口を開いた。
﹁戦場が近いと言うことだな。姉上達がそこで戦っているのだろう。
急がねば⋮⋮攫われた二人は必ず救出する!﹂
追走する騎士、フレアの顔に必死さがうかがえる。
﹁飛んで行った魔物に括りつけられた人間を見たけど⋮⋮フレアの
仲間だったんだね⋮⋮って言うかアンタ⋮⋮大丈夫なわけ?﹂
フレアのすぐ隣を走りながら、セナは同僚の剥き出しになっている
尻を見やる。
どうやら深手を負っていたらしく、走ることで傷口が開き、血がダ
ラダラを零れていた。
﹁問題ない! この程度の傷など、月のものにも劣る! っぐ﹂
どう見てもやせ我慢にしか見えなかったが、セナにとってこの同僚
は良く知る間柄であり、彼女の強情さについては諦めている部分も
あるので、黙って受け入れた。
﹁セナさん⋮⋮でしたわね。改めて確認いたしますわ。王子に施さ
れた刻印魔術について調べる方法を持つ魔導士が、貴女のお仲間に
いる⋮⋮そういうことで間違いありませんね?﹂
ヴェナが振り返りもせずに問うてきた。
﹁えぇ、アタシと同じ組のユキリスって魔導士が魔法を使って見つ
けられるわ。けど実際に触れたりして入念に探らないと見つからな
いらしいから、王子に近寄って貰わないとダメね﹂
現在セナとヴェナ、そしてフレアの三人が若干先行する形で走り、
シャスラハールと他の五人の公娼は少し遅れて一塊になって付いて
来ている。
ちなみに先行する三人はそれぞれ違った理由ではあるが、全裸であ
122
る。
セナはユーゴを殺害するために鎧を砕き、フレアは魔物の集団に着
ていたアーマーを破壊され、ヴェナは聖騎士の徳行により実力の劣
る他の公娼に装備を分け与えているからだ。
﹁結構。では王子にそのユキリスさんを抱いて頂きましょう。事情
の説明は貴女にお任せしますわ。なるべく戦場のゴタゴタの間に済
ませて頂きたいので、到着し次第貴女は王子を連れてその方の所へ
向かってください﹂
仲間の体を差し出すことの了承を自分が勝手にして良いものかと内
心の葛藤を抱きながらも、シャスラハールに施された監視魔術はこ
れから先厄介に違いないので早急に排除すべきであり、セナは自身
が責任を持ってユキリスに説明することを決意し無理矢理納得した。
わかったわ、とセナは応じ、隣のフレアを見る。
﹁フレア、アンタのその傷を治してくれる治療士も一緒に居るから、
とりあえず戦う前にその子の所に行きな。一番ちびっちゃい子で、
唯一全裸の子﹂
﹁この程度の怪我などたいしたことは無いと言っている⋮⋮! が、
救うべき命がある身だ、万が一傷が元で失敗となっては悔やみきれ
ん、応急処置程度はお願いしよう﹂
フレアが眉根を寄せて頷く。
その尻からは止めどなく血が溢れていた。
﹁森を抜けます! 全員、気を引き締めなさい!﹂
ヴェナの叫びと共に、セナは視界を遮る深い緑の領域を抜け出した。
﹁⋮⋮何? これ⋮⋮﹂
呆然と、呟きが零れるのをセナは感じた。
目の前に広がるのは戦場。
それは予測していた。
彼女の上司にしてフレアの実姉であるステアに率いられた自分の仲
123
間達が先行してカマキリ型の魔物︱︱ベリスと戦っているはずだっ
たからだ。
しかし、目の前の光景はそれを裏切った。
カマキリを食い千切る、人狼。
人狼の集団に襲い掛かられ、無様に肉片に変わっていくベリス達。
よくよく見れば、人狼の集団に人間も混ざっていた。
﹁キャハハハハ、そぉれぇ、刎ねるよぉ! 首が要らない子からこ
っちにおいでよー、マリスと遊ぼうよー!﹂
湾曲した長刀を握ったドレスの少女がベリスの首を斬り落とし、転
がったそれを蹴り飛ばしている。
﹁マリス、集中しなさい。破ッ!﹂
赤い軍装束を着た妙齢の女が、気合と共に拳を振りぬき、ベリスの
上半身を消し飛ばしている。
人狼達はその二人を守る様に、また援護する様に動き、ベリスを追
い詰め根絶やしにしていく。
﹁あれは⋮⋮マリス! それにヘミネ⋮⋮か﹂
セナにとって聞き覚えの無い名を、フレアが呟いた。
﹁あちらを見なさい!﹂
不意にヴェナが声を上げる。
その視線の先に、人狼の群に包囲された人間達が居た。
﹁騎士長! それにみんなも⋮⋮! ヴェナさん、あそこにユキリ
スも居るわ、包囲を突破して助けに行かないと﹂
セナは大剣を構え、目の前を通り過ぎようとしている人狼に向けた。
その時、
﹁お止めなさいな、その子は貴女の敵ではないわ⋮⋮今のところは
ね﹂
ステア達を包囲している人狼達の中から落ち着いた声音が聞こえた。
﹁あら、フレアじゃない。生きてたの? 貴女に付いて行った二人
がこの様だったから、てっきり高潔な騎士殿である貴女は討ち取ら
れたか自害したものかと思っていたわ﹂
124
銀色の髪をした黒衣の女が、人狼の肩の上から声をかけてきた。
彼女の隣に居る人狼の腕の中には、ひどく衰弱した全裸の女が三人、
抱きかかえられていた。
フレアと行動を共にしていたのはサディラとレナイと言う名の二人
という事だったが、もう一人囚われの公娼が居たということだろう
か。
﹁⋮⋮アミュス⋮⋮貴様﹂
フレアは黒衣の女を睨みつける。
﹁とりあえず、この狼ちゃん達を傷つけるのは止めてあげて。この
子達は魔物だけど今は私の忠実なる僕︱︱支配と枯渇の魔導士アミ
ュスの生きた人形よ。そして私は今貴女達と争う気は無いの﹂
フレアとアミュスの会話に、人狼に囲まれていた集団から声が上が
る。
﹁フレア? フレアなのか?﹂
﹁セナ⋮⋮無事のようですね﹂
﹁それより、後ろに知らない人達がいるわ⋮⋮主人役も居るみたい
だし﹂
ステア、シャロン、ユキリスの順に反応していた。
﹁もちろんこの人達と争う気も無いわ。私がしたいのは手駒の実力
確認。この人狼族の性能を見たかったのよ。もうかなりこちらが優
勢なのだけれど、良ければ貴女達も手伝ってくれない? このカマ
キリ退治をね﹂
アミュスはそう言って、指を鳴らす。
その音に反応し人狼族は猛り吠え、更なる突進を行う。
ベリスの集団は押されながらも、魔物の習性からか戦闘に意欲的に
なり、切り結んでいる。
﹁あの二人が無事ということなら⋮⋮是非もない。この場は一先ず
アミュスに手を貸す﹂
﹁そうね、それが良いと思うわ。これからやることの為にも争いで
場が乱れることは必要だもの﹂
125
フレアが決意したことを受け、セナも同意する。
﹁それでは、手筈通りに頼みますわ。貴女達の騎士としての力量、
聖騎士たるわたくしが判じて差し上げます﹂
そう言ってヴェナはシャスラハールの周りを囲んでいた五人の公娼
を伴い、戦場に突入していった。
﹁えっと⋮⋮僕はどうしたら⋮⋮?﹂
﹁アンタはこっち! 離れないで﹂
セナはシャスラハールの手首を握りしめ、一緒に駈け出した。
二人の前にフレアが立ち、大戦斧で道を切り開いていく。
猛進する人狼を躱し、立ちはだかるベリスを斬り潰しながら、戦場
のほぼ中央に居るステア達に合流した。
﹁セナ、これはどういうことだ? その男は何者だ? なぜフレア
が一緒に居る?﹂
矢継ぎ早に繰り出されるステアの質問。
﹁フレア、貴女酷い怪我⋮⋮。どうしたのですか?﹂
フレアの尻から零れる血を見てシャロンが瞠目する。
﹁それよりどうなったのよ? あの男のことは? ちゃんと始末で
きたの?﹂
ユキリスが切羽詰まった調子でセナを詰問する。
﹁それよりまずはこの状況をどうにかせんと、妾達は戦場の真った
だ中なのだぞ?﹂
ハイネアが周囲を見渡し、飛び交う血と肉を避けながら言った。
﹁判断は皆さまにお任せいたしますので、私はここでどう動けばい
いのでしょうか?﹂
リセがハイネアを背中で庇いながらオロオロとしている。
﹁︵あぁもう⋮⋮!︶﹂
五人から一斉に迫られ、セナは余裕を失う。
シャスラハールの事情やユーゴの顛末などを説明したくとも、大声
を出せば監視魔術によって王宮に聞かれるかもしれない。
そう考えると、取れる手段は一つだった。
126
﹁ハイっ! ほら、さっさと挿れなさいよ!﹂
セナはシャスラハールに向けて全裸の尻を突き出した。
﹁えっ⋮⋮はい、失礼します!﹂
シャスラハールの両手がセナの腰を掴み、勢いよく肉棒を突き出す
が︱︱
﹁あっ⋮⋮﹂
戦場と言うことも関係しているだろうが、シャスラハールの分身は
緊張で縮こまったままであり、とても挿入できる状態ではなかった。
﹁何やってんのよアンタ! 調教師でしょ? 常に勃たせときなさ
いよ!﹂
﹁いえ⋮⋮あの、すみません⋮⋮﹂
セナは自分の咄嗟にとった行動と、それが上手くいかず場が微妙な
雰囲気になったことに赤面し、シャスラハールを怒鳴り上げた。
﹁落ち着けセナ! ここはわたしに任せろ!﹂
フレアが言い、シャスラハールの黒絹の肌に触れた。
やや斜めから少年に密着し、唇で乳首を舐めしゃぶり、左手で肉棒
を、右手で陰嚢を揉みしだく。
﹁あ、あああああああっ! ダメ、乳首はダメ⋮⋮!﹂
シャスラハールは乳首が性感帯であると、以前にヴェナが言ってい
た通り、そこを刺激すると簡単に肉棒が持ち上がってきた。
﹁流石ね! フレア良い仕事よ! さぁさっさと挿れて、説明する
前にイッちゃったら意味ないでしょ﹂
喉をのけ反らせて喘ぐシャスラハールの背中をフレアが押し、少年
の分身は騎士の膣内に収まった。
﹁ああああああああああっ! すごいぃぃぃ、オマンコの中もぉぉ
ぉ乳首もぉぉぉあああ﹂
紅潮した頬の少年が吠えるように声を上げる。
﹁それでね、聞いて皆︱︱﹂
セナが五人の仲間達を見ると、
全員が何とも言えない微妙な表情をしていた。
127
シャスラハール組流の監視妨害テクニックについても一通り説明し、
セナはどうにか五人に現状を伝えることができた。
フレアは少し離れたところでうつ伏せの体勢で尻を突き出し、ハイ
ネアの治療術を受けている。
リセはその二人の護衛としてそこに張り付いている。
﹁こちらの王子様の刻印を除去と言いますけど、むしろ調教師と言
うことなら殺してしまってもいいのでは?﹂
自身が地面に横たわり腰の上にユキリスを乗せた姿のシャスラハー
ルを見つめながら、シャロンは言った。
﹁そうは言ってもゼオムント打倒の大望を抱く王族だろう? まぁ
目的が一致していないわけでもないし、あそこで桁違いの戦闘力を
発揮している聖騎士殿が庇護者と言うわけだ、下手に手を出して戦
闘になったとして勝ち目があるかどうか⋮⋮わたしにも自信が無い
な﹂
ステアが戦場の最も激しくぶつかり合っている地点を見やり、そこ
で血飛沫を巻き上げているヴェナの姿を見ながら呟いた。
﹁私見ですけど⋮⋮コイツはまぁ悪い奴じゃないですし、ゼオムン
トへの復讐心以外にも正義や道徳の心も持ち合わせているらしいの
で⋮⋮あぁ、フレアが命の危機だった時に飛び出して救出したそう
です。もしかしたら期待できるんじゃないかなぁと⋮⋮﹂
セナがいまいち自信無さそうに言う。
三人は今睦みあうシャスラハールとユキリスから数歩離れた位置に
立ち、事の成り行きを見守っている。
その時、不意にユキリスが笑い声をあげた。
彼女の細くしなやかな手がシャスラハールの右手を掴みとり、その
肘の辺りに口をつけ、舐めた。
舌が離れ、糸を引く箇所が薄く発光する。
﹁刻印を発見したようだな﹂
128
ステアの言葉に、シャロンとセナが頷いた。
129
これから︵前書き︶
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130
これから
ユキリスがゆっくりと腰を上げ、シャスラハールの体から離れてい
く。
抜け落ちた肉棒を天に向けたまま、黒肌の王子は己の右手を見やっ
た。
肘の辺りに魔術が作用し、薄く光っている。
ユキリスの視線が、その場所の意味を教えた。
﹃刻印魔術﹄
調教師と王宮の魔導士を結び、そこからさらに全国民へと繋がる魔
導の糸だ。
﹁良かった⋮⋮﹂
シャスラハールは呟く。
先ほど死体になって転がっていた調教師︱︱セナ達の主人役の様に
左胸に有ったならばどうしようかと考えていた。
しかし、右腕。
これならば︱︱
おもむろにシャスラハールは立ち上がった。
難しい表情をしてこちらを見守っているセナ達三人の騎士の方を見
る。
シャロンなどは努めて表情を消し、腰に提げた剣の柄を握っている。
﹁お、おい⋮⋮﹂
全裸の騎士セナが近づいてくるのを目で制し、戦場を見やる。
公娼と人狼の勢力は、カマキリ型の魔物︱︱ベリスを圧倒していた。
しかしまだ、決着には程遠い。
ベリスは宙を飛べる。
獣に追い立てられ、いよいよ追い込まれると空へ上がり、そこから
先は隙をついての急襲戦術に切り替えていた。
131
急降下してくるベリスの鎌に人狼の耳が、目が裂かれ血の華を咲か
せる。
怒り狂った人狼が吠え、飛び跳ねてベリスを引きずり落とし、地面
に叩きつけて食い千切る。
戦場は大盛況であった。
﹁皆さん、僕に付いて来ないでください﹂
シャスラハールは駆ける。
人狼の肩を掴み、勢い込めて地を蹴り、彼らの頭上に立つ。
視界が開けた。
そしてこちらを見るベリスの事もよく見える。
﹁な、おい! 危ないから! 降りて﹂
セナが人狼の体をかき分けるようにして付いて来るのを見て、薄く
笑う。
﹁大丈夫です! セナさん。見ていてください⋮⋮!﹂
シャスラハールに二、三体の人狼の頭を跳ねる様にして助走をつけ、
﹁はっ!﹂
左手に黒曜の短刀を握って空中のベリスへと斬りかかった。
シャスラハールの会得した短刀格闘術は、ゼオムントの支配から身
を隠す間、庶民に混じって習得した喧嘩術の延長のようなものだ。
突き刺し、斬りかかり、投げつける。
その単調の繰り返し。
故に、真っ直ぐと手は伸びた。
ベリスの鎌は事も無げにそれを迎え撃つ。
鎌が、空を奔る。
﹁⋮⋮せいっ!﹂
黒肌の王子は、薄く光る右腕を突き出した。
舞い上がる血飛沫。
跳ね飛ぶ右腕。
シャスラハールは左手で攻撃するように見せかけ、魔物の鎌によっ
て右手を断たせたのだ。
132
これにて、セナ達への王宮の監視は断たれた。
右腕を失い、空中でバランスを失い落下する少年めがけ、セナは駆
ける。
背後からシャロン達の息を飲む声が聞こえる。
﹁馬鹿⋮⋮何やってんのよ! 頼まれれば⋮⋮アタシが斬ってあげ
たわよ⋮⋮! その位の覚悟、有ったに決まってんでしょ⋮⋮﹂
少女の口元は歪み、言い訳がましい声が零れた。
﹁御仕舞ってところかしらね﹂
アミュスが指笛を吹き、人狼達に合図する。
全ての人狼が膝を折り、大地に身を落とした。
彼女の見る範囲全てに、血肉が転がっている。
人狼の、ベリスの肉片。
幸いと言っていいのか、人間の女の肉はどこにも見当たらなかった。
すぐ後ろで声が聞こえる。
﹁無能⋮⋮或いは失格、落第と言い換えましょうか。守るべき対象
に傷を負わせてしまうなど、騎士として失格も良いところです﹂
両手を豊満な胸の下に組み、憤怒の表情で若輩の騎士を睨むヴェナ
の姿が見て取れた。
﹁⋮⋮言い訳はしない。もっと適切な方法が有ったかも知れないの
は事実だと思う⋮⋮﹂
セナは打ちひしがれた様子で項垂れている。
﹁ヴェナ⋮⋮セナさんを責めないでくれ⋮⋮これは僕が咄嗟にやっ
たことで⋮⋮彼女は何も悪くないんだ﹂
シャスラハールは腕の切断面を水平にして掲げ、ハイネアの治療を
受けている。
﹁いいえ、王子。わたくしは確かにこの者に対して王子に同行する
よう指示しました。騎士たる者が護衛対象の身を守れないだなんて
⋮⋮﹂
133
ヴェナの叱責が続き、セナの懺悔も続く。
ステア達がその姿に痺れを切らし、セナの擁護に入ろうとした時、
﹁でー? これからどうすんの?﹂
甘い声が聞こえた。
シャスラハールの眼前に、二つのふくらみが突き付けられる。
胸元の開いたドレス姿で前屈みになって彼の顔を覗き込んでいるマ
リスの姿があった。
﹁あっ⋮⋮あの⋮⋮﹂
全裸姿のヴェナやセナとはまた違う、着衣での刺激にシャスラハー
ルの目は大いに泳ぐ。
﹁ん? あ、なーにー? 君マリスのおっぱい見てたのー? 殺し
ちゃうよー? いいー?﹂
ケタケタと笑いながら曲刀を手繰るマリスの手を、軍装束姿のヘミ
ネが止める。
﹁よせ、マリス。⋮⋮しかし私も確認しておきたい。今後どうする
か、貴女方は我々と目的を同じくするはずだ。同志として共に戦っ
ていく道もあるだろう。が、そこには一つ懸案がある﹂
厳めしい表情のヘミネは周囲に居並ぶ公娼の顔を見渡す。しかしそ
の際意図してシャスラハールには視線を送らなかった。
﹁それはどういう意味か⋮⋮申してみい﹂
シャスラハールに止血処置を施し、一段落ついた様子のハイネアが
彼女に問う。
﹁⋮⋮ご質問にお答えする前に、まずは御身のご無事をお祝いする
事をお許しください。王女殿下﹂
ヘミネは腰を折り、礼を尽くした挨拶を行った。
﹁あら、ヘミネ? そちらお知り合い?﹂
アミュスが近づきながら、同志に問う。
﹁リネミア神聖国⋮⋮私の祖国の王女殿下だ。敗戦後に公娼にされ
たとまでは聞いていたが⋮⋮まさかこの地にまで連れて来られてい
るとは、臣としての己の不甲斐なさ、恥ずかしく思う﹂
134
へぇ⋮⋮と頷き、アミュスはハイネアを見やる。
その視線を遮るかのように、リセが護衛対象の前に立った。
﹁⋮⋮何よ?﹂
﹁貴女から⋮⋮危険な雰囲気を感じます。それ以上ハイネア様に近
寄らないでください﹂
剣呑な空気が、辺りに満ちた。
その時、
﹁状況を整理しよう﹂
騎士長ステアの声が上がる。
﹁今この場には三つの組が存在しているはずだ。一つはわたし、シ
ャロン、セナ、ユキリス、ハイネアとリセの六人。初期で組まされ
た班のままの陣容だな﹂
シャロンがその言葉に頷き、後を継ぐ。
﹁そしてシャスラハール王子と聖騎士ヴェナ様の組。そこに同行す
るフレアとベリスに捕らえられていた方が二名⋮⋮いえ、この場で
助けた方も含めると三名ですね。その合計十一名﹂
元々フレアと行動していたのは二名だったが、ベリス達はそれ以前
にヘスティア王女の組を攫っていて、その生き残りが一人救出され
ている。
フレアが全快とは言い難いが、そこそこ復調した尻を撫でながらア
ミュス達を見る。
﹁最後に貴様らの組だ。魔導士アミュスとヘミネ、マリスの組。姉
上の組とは違い無計画に調教師を殺したため、まず間違いなく王宮
に追われる組だ⋮⋮﹂
あら⋮⋮とアミュスは笑った。
﹁そこは別に問題ではないわ。追手が来るなら来るで、この子達に
倒してもらいますもの﹂
ガスッ︱︱と肉を打つ鈍い音が響く。
アミュスが人狼の体を強烈に蹴ったのだ。
﹁わたしの支配魔術が効いている限り、この子達は忠実な僕。軍隊
135
でもない人間の追手など、魔物の集団に勝てるわけが無いわ﹂
ベリスとの戦争により、人狼の数は僅かに減ってはいるが、未だに
群としてかなりの戦力を維持しているはずだ。
﹁話を進めやすくする為、ステア組・シャスラハール組・アミュス
組と呼称しようか。この内わたし達ステア組は完全に自由となる。
目的が魔物の宝具であることは同じだが、ここから先の行動に制限
はない﹂
騎士長は槍に付着した魔物の血を拭い取りながら言った。
﹁しかしシャスラハール組、こちらの方は多少違いがあるな。まず
負傷者を三名抱えている事。これはハイネア王女の治療術でも回復
不能な⋮⋮足の切断だ。まずこの点について確認しておきたい、シ
ャスラハール組はこの三名をどう扱われる?﹂
ステアの問いにヴェナが答える。
﹁無論、共に旅をし、結末まで共有するつもりですわ。聖騎士とし
てわたくしの力の根源は正しき行いに宿るものです。この場で彼女
達を見捨ててはこれまでの生もこれからの戦う力をも失ってしまう。
それに我が王子であるならば夢にもその様な判断を為さいません。
彼女達が王子を主と認める限り、その身の安全を保障しましょう﹂
ヴェナの言葉に、シャスラハールは頷く。
﹁わかった。わたしも騎士としてその判断は必然だと考える。助力
も出来る限り行いたい。フレアに関しては元々わたしの妹であり部
下だからな、フレアがこちらに来ると言うのならば、全員と話し合
う必要はあるが同行する者も受け入れるつもりだ⋮⋮そして、君達
だ﹂
ステアはアミュスの方を振り向く。
﹁現状間違いなく最大の戦力を抱えるのはアミュス組だ。しかし君
達は主人役の殺害を王宮に感知されている。まず間違いなく追手が
来るだろう⋮⋮それに故郷に居る人質に対しても危険が伴う。手を
組むにはいささか危険な相手だ﹂
その言葉に、アミュスは平然と頷いた。
136
﹁そうよ、その通り。でも仕方がないじゃない? 起きてしまった
事ですもの。それに、故郷の人質だなんて言うけど、その連中は一
体わたし達に何をしてくれたの? 漫然とゼオムントの国民になっ
てしまっているんじゃなくて? ねぇ心当たりのある人も居るわよ
ね? 人質っていうけど⋮⋮そいつらが何をしてるかって事をね﹂
セナはその言葉を聞いて、ハッとする。
嫌な思い出が脳裏に響く。
彼女が出演した映像作品で最も人気の出た故郷訪問土下座中出しツ
アーもの。
これに出演する多くの人間。
それは︱︱
﹁アタシの⋮⋮人質﹂
同級生も、同僚も、顔見知りも皆嘘くさい演技で初めは拒否するも、
自分が土下座して乞うと仕方がない⋮⋮と言い訳して押し倒し、膣
内に精を吐き出していった。
挙句、その日の撮影終了後に設けられた現地での慰労会と言う名の
撮影係によるセナへの輪姦行事に嬉々として参加したりもしていた。
﹁人質はねぇ⋮三年たった今はもう、わたし達が考えているほど綺
麗なものじゃないのよ。ゼオムントの一部なのよ﹂
アミュスの言葉に、ヘミネは頷き、マリスはにこやかに笑っている。
﹁これが、現状だ。その上で判断してほしい。先ほど三組に分けた
がこれから先は個人での話だ。今の話を聞いて、自分が何をすべき
か考えてみてくれないか? 夜明けと共に動き出そう。それまでに
皆、決断してくれ﹂
ステアは重々しい声でそう告げ、地面に腰を下ろした。
﹁リト⋮⋮どうだった?﹂
ゼオムントの王宮で最も高い場所、見晴らしの良い塔の上にリトリ
ロイとセリスは立って居る。
137
先ほどリトリロイは父親であるゼオムント王に献策し、西域への派
兵の権利を得ていた。
﹁⋮⋮戦力として、騎士団を一つ二つ。数は六百騎ほどだね﹂
大国の王子の護衛する数として、相応しいかどうか。
﹁⋮⋮そんなの、全然不足、私一人にも敵わない﹂
﹁そうだね、でも父上は中々頑固でね。息子の晴れの門出だって言
うのに、渋り過ぎだよ、まったく﹂
夜風に近い夕凪が、二人の頬を撫でる。
﹁⋮⋮⋮⋮どうだった?﹂
もう一度、セリスはリトリロイに問うた。
﹁⋮⋮五万人。それが僕とセリスがこれから守っていく人の数だよ﹂
リトリロイは一枚の羊皮紙を取りだし、セリスに手渡した。
﹃西域開拓民募集﹄
その紙には、そう記述してあった。
﹁良かった⋮⋮﹂
セリスが笑う。
﹁それくらいだったら⋮⋮私、守ってあげられるから﹂
138
騎士公娼の見る夢︵前書き︶
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騎士公娼の見る夢
朝がくるまでどのくらいの時間があるだろうか。
セナは裸のまま尻を地面につける。
今更考える事などない、自分は尊敬する騎士長を信じ同じ道を行く。
そう誓えるほど、今彼女の心は固まってはいなかった。
魔導士アミュスは言った。
人質に意味など無い、と。
それは自分達公娼にとって、決して口に出してはいけない言葉だっ
たのではないか。
だってそれは︱︱自分達が辱められる絶対の意味を喪失するという
事だ。
自分は戦場を駆ける騎士となり、命の甘えはとうの昔に切り捨てた。
死のうと思えば死ねる。
そう誓ったはずなのだ。
そんな自分がどうして公娼となり、ほぼすべての人間に蔑まれなが
ら生を続けているかと言われれば、そこに祖国と人質が居るからで
はないのか。
けれど、
人質となった人間はセナを犯した。
祖国は滅び、母は死に、父は自分がこの手で殺した。
監視役は居なくなり、ここから先自分の生を縛り貶める人間は居な
くなったのではないか。
アミュス達と共に魔物を率いて戦う事に何の疑問も抱かない。
それは統帥権を得てゼオムントに戦争を仕掛けるという当初の目標
と何ら変わりが無いからだ。
けれど、恐らく今ここに集まっている人間達は二つに分かれるだろ
う。
140
王を支え、足を失った人間を守りながら西域の奥を目指す、騎士の
生き方。
支配魔術で抑え込んだ魔物を使役し戦争行為をしかける、復讐者の
生き方。
前者は高潔であり、王者の進む道、そして終わってしまった自らの
幸福を取り戻す戦い。
後者は刹那的であり、亡者の進む道、やがて果てる既に壊れた公娼
の報復の戦い。
何せ、アミュスの元には王が居ない。
従うべき王を得て、そこに忠節を尽くす事こそが騎士を騎士たらし
める。
シャスラハールという偶像を得てこそ、セナは騎士であり続けるこ
とができる。
今までは擬似的にステアを主と定め、それに従う事で何とか自らを
支えてきた。
けれど、真実喉から手が出るほどに欲しているのは、彼女ではない。
王が、欲しい。
自らの生に意味を持たせてくれる王の存在が欲しい。
これは恐らく自分だけではないだろう。
ステアも、シャロンも、フレアも。
自分と同じ生き方を定めた騎士ならば欲しているはずだ。
彼を、シャスラハールを、その振り下ろされる腕を、吠えたてる号
令を。
憎らしいと思う。
公娼の身分に落ちながらもハイネアと言う主人の傍に居られたリセ
の事を。
羨ましいと思う。
絶大な力を持ちながら公娼に落とされ、それでも尚自らの王のため
に剣を振るえるヴェナの事を。
夢なのかもしれない。
141
自分が失い、やっと取り戻した夢。
自分のこの生に意味を持つという事。
それを理由にこの道を選んでしまっていいのだろうか。
アミュス達と共に進むことで、虚ろな復讐者になってしまうよりは、
王を得て王の為に生き、そして死ねる自分を取り戻すことを望んで
いいのだろうか。
彼は今、何をしている?
シャスラハールが草地に寝ころび夜空を見上げ、星を眺めているの
が見える。
ハイネアの治療により塞がったはずだが、傷が痛むのかも知れない、
時折彼は苦しげに顔を歪めている。
常に傍らに居るはずのヴェナは、同じ組の他の公娼五人となにやら
話し込んでいる。
恐らく明日以降の方針を語っているのだろう。
セナはゆっくり、足音を立てずに移動する。
一歩、二歩とシャスラハールの下へ。
﹁セナさん? どうしました?﹂
彼がこちらを見る。
改めて思うと、自分は初めてこの少年に会った時から常に全裸で、
もう既に二回も体を重ねているという事実が、セナの頬を赤く染め
た。
﹁傷、痛い?﹂
﹁いいえ、ハイネアさんの治療のおかげで、痛み自体は無いんです
けど、どうしても変な感覚なんです。腕が無いって言うのが﹂
彼が右肩を持ち上げると、肘の上で切断されたかつて右腕だったも
のが動く。
﹁そっか⋮⋮そうだよね﹂
セナは彼の右隣りに腰を落とした。
ゆっくりと、隣を見る。
﹁えっと⋮⋮僕に何か?﹂
142
﹁用と言うほどの事はない⋮⋮けどね﹂
何を言おう、どうやって伝えよう。
自分の思いも明確に定まらないまま、ここまで来てしまった。
思えばすべて、そうだったのかもしれない。
騎士になって、敗戦を迎えて、公娼に落とされ、そして復讐を誓っ
た。
本当にそれは、自分自身が存在意義をかけて願った事なんだろうか。
今にして思う。
仮初の自由を得てこそ思う。
そして今日出会ったばかりの少年に対して思う。
﹁ねぇ⋮⋮アタシ、欲しい?﹂
自分は必要な存在だったのだろうかと。
この三年間で自分の生は極限まで汚された。
死んでしまいたかった。
許されるのならば死んでしまいたかった。
殺してしまいたかった。
自分を蔑む全てを殺してしまいたかった。
けど、生き続けた。
意味が無かったから、せめて、意味が欲しかったから。
せめてせめて、死ぬ事にだけでも意味が欲しかったから。
﹁⋮⋮旅の仲間にってことでしたら、もちろん欲しいです。だって
セナさん、強いですから﹂
シャスラハールは頷いた。
それはそうだろう。
これから先戦いが続く彼にとって、セナの磨いてきた武芸は役に立
つはずだから。
﹁⋮⋮仲間って⋮⋮何?﹂
えっ? とシャスラハールがこちらを振り向いた。
﹁仲間って⋮⋮わかんないよ。一緒に旅するのが仲間? 戦うのが
仲間? ご飯食べるのが仲間? 本当に、君はそういうアタシが欲
143
しいの?﹂
自分自身、混乱している。
彼は自分が必要だと言っている。
それで良いのではないかと、同時に、それでは足りないと心が叫ん
でいる。
求めて、もっと強く。
﹁⋮⋮僕の話を、少しだけしても良いですか?﹂
シャスラハールが語りだしたのは、彼の昔話。
国が亡び、民衆に紛れ生き抜いて、国一番の騎士であるヴェナと接
触するために調教師になった物語。
﹁僕は⋮⋮本当に色々な人を苦しめたんだと思います。知っていま
すか? 調教師になるために、どんなことが必要なのか﹂
調教師にも、免許があり、試験があり、大会があるのだと、彼は言
った。
﹁その中で、今のセナさんと同じような表情をした人に、何度も何
度も酷い事をしました。それが自分にとって必要な事なんだと、王
として国を取り戻すために必要な事なんだとしても、僕は許されざ
る傷を彼女達に与えてきました﹂
公娼は、ゼオムントに刃向った国の有力者や戦争に関わった者を落
とす身分だ。
つまり、シャスラハールは自分と同じ境遇で同じ目的を持つ人間を、
踏み台にしてきたのだと言う。
﹁己の存在に迷う人です。公娼と言う身分に苦しめられ、ゼオムン
トを恨む事でしか己を支える事が出来なかった彼女達に、僕はひっ
そりと自分の事を告げました。そうすると彼女達は笑って言うので
す。﹃じゃあ君に任せた﹄って。﹃君が偉くなるために私が協力し
てあげよう﹄って﹂
シャスラハールは遠い夜空を眺める。
﹁他の調教師相手に非協力的な人や、絶対に己の信念を曲げない人
でも、僕の為に⋮⋮そう言って誰もが目を逸らす様な行為を目の前
144
で取り、撮影し、保存され。今の瞬間でも多くの人間が見直すこと
ができる資料として残ってしまっています﹂
シャスラハールの瞳から、涙があふれて来る。
﹁彼女達の多くは死にました。つまらない⋮⋮本当につまらない理
由で死にました! 他の調教師の撮影中に精液で喉を詰まらされた
りだとか、裸のまま拘束され野原に放置された挙句、飢えた本物の
野獣に食い殺された何て話も聞きました﹂
セナはその涙をそっと拭う。
﹁僕は絶対にその思いに、彼女達の無念に応えるつもりです! 彼
女達が絶望の中最後に掴んだ一本の藁として⋮⋮! 彼女達の死に
何としてでも意味を持たせる存在になるために!﹂
その言葉を聞いた瞬間にセナは跪いていた。
片膝を立て、騎士の礼を取る。
﹁シャスラハール殿下。私は、リーベルラントの騎士。身分も姓も
失った身ではありますが、貴方に忠誠を尽くし、その行いを見守り、
支える存在となります。それを、お許しいただけないでしょうか?﹂
シャスラハールは赤く腫れた目で、騎士の姿を見返し、口を開いた。
﹁スピアカントの王として貴女に答えます。騎士よ、常に我が傍に
侍り、この身を支えてくれるのであれば、王として貴女の生に輝き
を与え、貴女に貴い死を与える事を誓うものとします﹂
王の返答を聞いた騎士は、涙を浮かべ、頷く。
﹁それと⋮⋮王と騎士だからと言って話し方を変えてもらったりし
ないで下さい。僕はこれまでの暮らしでちょっと庶民寄りに慣れて
しまっているので、そっちの方が楽だったりします﹂
その言葉に、セナはもう一つ頷いた。
﹁うん⋮⋮わかった。でね、これからアタシは君を守るよ、シャス
ラハール。騎士として、王を守る。君を支える。その為に、一つ契
ろう﹂
﹁契る⋮⋮とは?﹂
シャスラハールの顔に、疑問が浮かぶ。
145
﹁森での最初の一回目も、戦場での二回目も、何だか冗談みたいな
感じだったからさ、これから先信頼を深めていく王と騎士として、
正式に一回。セックスしましょ﹂
そう言ってセナは、シャスラハールの体を押し倒す。
﹁えっ⋮⋮えっ! ちょっとセナさん﹂
圧し掛かってくるセナに困惑するシャスラハール。
﹁何よぉ、嫌なの?﹂
﹁嫌って事はないですけど⋮⋮でも﹂
﹁そういえばアンタ幾つなの?﹂
﹁えっ⋮⋮えっと歳なら、十八ですけど⋮⋮﹂
﹁ふーん、アタシ十九だから、一つ上ね。シャスラハールって名前
長くて言い辛いから、シャスって呼んでいい? ねぇ?﹂
﹁それは⋮⋮別に構いませんけど、本当にするんですか? 皆見て
ませんか?﹂
セナは視線をシャスラハールから外し、辺りを見渡す。
寝ている者と、討論している者はいるが、こちらに注意を払ってい
る様子はない。
﹁大丈夫大丈夫。お姉さんに任せなさいって﹂
スルスルと肉棒を摘みだし、その上に跨った。
﹁それじゃ、これからよろしくね。アタシの王様﹂
﹁はぁ⋮⋮いや、よろしくお願いします﹂
王と騎士が、心と体で繋がった。
グチュグチュと性器が擦れる音がする。
セナとシャスラハールの溶け合う音だ。
セナにとって初めて味わう、心の伴った性交。
体を隅々まで開発されきっていた彼女にとって、心までそこに伴わ
れてしまうと、最早成すすべなく絶頂を迎えてしまう。
シャスラハールの一突きがセナに与える快感はこれまでのものと比
146
べようがない。
一突きで登り詰め、二突きで体が痺れ、三突きで脳が溶ける。
そんな満たされた様子のセナと文字通り繋がっているシャスラハー
ルにも、快感の余波は届く。
絶頂を迎える度に激しく収縮するセナの膣に搾り取られるようにし
て精が放たれ、彼女の中を満たしていく。
呼吸とキスをする以外に口の使い方を忘れてしまっているかの様に、
二人は無言の内で睦みあった。
始めはセナがシャスラハールに騎乗する形だった体位も、射精の回
数を重ねるごとに変わり、後ろから突き上げたり、セナを押し倒し
て唇同士を激しく重ねながら正常位で繋がったり、二人は本能の趣
くままに、セックスを堪能した。
空が白んでくるのを、セナは感じた。
自分は今、シャスラハールの胸に頭を預けている。
最後は結局一周しきって、騎乗位に戻って繋がったのだ。
今もまだシャスラハールの肉棒はセナの膣に入ったままである。
二人とも荒い息を吐きながら、汗を浮かべ、両手を結んでいる。
ザリッ︱︱と土を踏む音が近くで鳴った。
その音に、慌てて二人は顔を上げる。
﹁ようやく気付いたか⋮⋮﹂
ひどくあきれた表情を浮かべた騎士長ステアが、二人を見ていた。
﹁いや⋮⋮あの、騎士長これは⋮⋮﹂
ステアの後ろに、いくつもの人間の視線を感じる。
﹁セナ⋮⋮貴女達一体何時間してるんですか⋮⋮﹂
シャロンが乾いた声で言う。
﹁えっと⋮⋮これはつまり⋮⋮﹂
セナは動揺のあまり上手く喋ることができない。
﹁王子、いつまでそのような事を為さっているのです? 不必要な
場面で無駄に体力を消耗してはいけません﹂
厳しい声で言うヴェナに、
147
﹁は、はい! ごめんなさいヴェナ!﹂
シャスラハールは慌てて立ち上がろうとする。
必然、繋がったままのセナの膣を新たな快感が襲う。
﹁あっヤダッ! シャス! 急に動かないでよ﹂
キュゥ︱︱とセナの膣が収縮し、シャスラハールの肉棒を深く飲み
込む。
﹁あっ、あっ! で、出るゥゥ﹂
シャスラハールは切羽詰まった声と共に震え、精を解き放った。
ドビュルルル︱︱。
何度行われてきたかわからない、セナとシャスラハールの間での体
液の移動。
﹁ああああああああああああっ! ダメッ! 今中に出しちゃ⋮⋮
あああん、イクッぅぅぅぅうううううう﹂
セナは白んできた空を穿つように、嬌声を上げた。
148
騎士公娼の見る夢︵後書き︶
投稿頻度を少し早めていこうと思います。
149
オマ ンコ カヌゥ︵前書き︶
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オマ ンコ カヌゥ
方針が固まるのに、それほど時間は掛からなかった。
セナがシャスラハールへの同行を明言すると、ステアとシャロンは
頷き、ユキリス、ハイネアとリセもそれに続いた。
アミュス達も特段それに動じることも無く、公娼達は今、二手に分
かれようとしている。
別れ際にセナは常々疑問に思っていた事を、復讐の道を行く三人に
問いかけた。
﹁ねぇ⋮⋮その服、どうしたの?﹂
マリスのドレスにヘミネの軍服、アミュスの黒衣。
それら全て初期装備で調教師から与えられるには余りにも﹃普通﹄
の衣服だった。
恐らく何らかの方法でこの地で入手したものだと踏んで、その情報
を聞き出そうとしたのだ。
﹁私達は人間だ、いつまでも裸でいるわけにもいかない。気温や環
境、衛生の問題もある。故に私達はまず衣服を得る事を優先して行
動したんだ﹂
ヘミネの硬い声がまず答える。
﹁でー、最初は他の組なんかを襲ってみたんですけどぉ、そっちも
そっちで元々マリス達が着ていたのと似たり寄ったりのヤラシー感
じのものばっかりだったのでぇ、マリス達は一から作ることにした
のです﹂
マリスが朗らかに言った。
﹁一から作るって⋮⋮材料とかは持っていたの?﹂
それに対してマリスは笑いながら首を振った。
﹁そんなの有るわけないじゃないですか︱。もちろん現地調達です
よー。でも衣服への加工に関してマリスは全然やったことなくてー、
151
アミュ姉もヘミネちゃんも下手っぴでしたので別の人にやってもら
いましたよー﹂
﹁別の⋮⋮人?﹂
セナの疑問に、ヘミネが眉根を寄せて答える。
﹁正確には人ではない、魔物だ。そういう種類の魔物が居たんだ﹂
衣服を加工する魔物。
今のやり取りに反応して、リセが会話に加わってくる。
﹁あの、あの! スミマセン、今の話もっと詳しく教えて頂けない
でしょうか?﹂
彼女は身に着けている白のワンピースの裾を握って必死な様子だ。
調教師の監視が無くなった後、彼女はハイネアに自分の衣服を渡そ
うとしたが、主人に柔らかく拒絶されしばらく押し問答をしていた
のをセナは見ている。
﹁ハイネア様が、それは私のものだから構わなくて良い⋮⋮と仰っ
て⋮⋮。私はとにかく何でもいいので身を隠すものをと、王女であ
るあの御方がいつまでも肌を晒していらっしゃるのは、あまりに酷
で⋮⋮﹂
その瞳に涙が浮かんでいる。
ハァ︱︱と息を吐くのは軍服姿のヘミネ。
﹁まったく⋮⋮リネミアの王族の気位の高さはいつも変わらないも
のだ。君は侍女かな? これを、持って行くといい﹂
ヘミネは軍服の肩から背中を覆っていたケープを脱ぎ、リセに手渡
した。
﹁腰巻にでも使ってくれれば、裸で居るよりも幾分マシになるはず
だ﹂
﹁あ、ありがとうございます! ヘミネ様!﹂
そういえばこの二人とハイネアは同じ国出身だったな⋮⋮と、セナ
は昨日の会話から思い出す。
﹁⋮⋮でも腰巻だけって言うのも妙にエロくないですかねー。とマ
リスは考えたり︱﹂
152
ケラケラと笑っているドレス姿の剣士。
﹁そうね。それにアタシ達の分の衣服も必要だし。その衣服を加工
する魔物について教えて﹂
セナのその言葉に、
﹁名前なんだったっけ⋮⋮あのちっこい⋮⋮ネズミ型の⋮⋮﹂
マリスが空を見上げて記憶を探る。
その時、
﹁マルウス族ね。ここから先、北へしばらく行った所にある川を越
えた先に広がる草原地帯、そこで作物の栽培をしながら生息してい
る穏やかなネズミ型魔物よ。手先が器用で衣服の加工から、保存食
の製造まで何でもアリの種族だったわ。会いたければ行けば良いわ﹂
アミュスが話に入ってきた。
﹁ただし、気をつけなさい。マルウス族は協力的かもしれないけれ
ど、彼らに敵対している魔物が辺りを徘徊しているから、いつも彼
らは怯えて隠れているそうよ。私達が行った時は偶然それらには出
会わなかったけど、マルウスの連中の言葉通りなら、ひどく知恵が
回って残忍な奴らだそうよ﹂
その言葉に、セナは疑問を抱く。
疑問は、口をついて飛び出した。
﹁魔物と喋ったの⋮⋮?﹂
驚愕に目を開いているセナに向けて、アミュスは顔を顰め、
﹁これだから無知で筋肉馬鹿の騎士って嫌ね﹂
鼻で笑った。
﹁魔物には人語を理解する種族も居る、と言うかむしろそちらの方
が多いわ。発声器官を持つか持たないかで会話が成立するかは様々
だけれど、決して魔物は知性無き生き物じゃない。まぁこれは魔導
においては常識なのだけれど、騎士である貴女には不要な知識だっ
たかもね﹂
153
歩きながらユキリスが教えてくれる。
先ほどはアミュスの言葉にステアとフレアが反応し、ゆっくりとシ
ャロンが剣を取り出しかけたので、シャスラハールが慌てて出発の
号令を鳴らし、今はそのマルウス族が住まう地域とやらを目指して
いる。
﹁⋮⋮筋肉馬鹿って何ですか⋮⋮筋肉は必要な分だけつけているん
です。馬鹿は違います。私は作戦立案とかそういうものでしっかり
と騎士長のお役に立っていて⋮⋮﹂
シャロンがぶつぶつと呟きながらセナ達の前を歩いている。
﹁え、えとでも皆さんの衣服が手に入りそうなのは良かったですね
! これから季節が変わって寒くなりそうですし、やっぱり寝る時
に裸のまま地面にってのもお嫌でしょうし﹂
シャスラハールは金髪の騎士の様子に若干怯えながら、話題を振っ
た。
﹁そうだね。防御力の問題もあるし、やっぱり肌を完全に露出した
まま戦うのは少し怖いわよ。⋮⋮けど、シャス君的にはどうなのか
なぁ? お姉さんたちの裸が見れなくなって残念なんじゃないのぉ
?﹂
セナは意地悪気に微笑み、シャスラハールに答える。
﹁い、いえ!、それはえっと⋮⋮服を着て、着飾ったセナさんの事
も見たいかなって⋮⋮そういう気持ちも強いんです﹂
赤面しながら言うシャスラハールの態度に、恥ずかしさを覚えてセ
ナの頬も紅潮する。
﹁⋮⋮こっち見ないで﹂
﹁え⋮⋮?﹂
﹁アタシ達裸なんだからあんまりこっち見るなって言ってんのよ!
エロガキ!﹂
﹁は、はいぃぃ﹂
セナに脅され、前を向くシャスラハール。
﹁り、理不尽だ⋮⋮﹂
154
それでも彼は、こっそりと横目で視線を送ったりして、その都度セ
ナに見つかって睨みつけられていた。
﹁⋮⋮ステアさん、お宅の騎士さんの我が王子に対する態度どうに
か出来ませんの?﹂
﹁⋮⋮後で、言って聞かせておきます﹂
前方で、騎士長ステアが聖騎士ヴェナに小声を言われているのが目
に留まった。
二刻程歩いたところで、
﹁あっ、川だ。川がある﹂
一行の先頭を進んでいたフレアが、声を上げる。
視界の遥か先に、かなり大きめの川が横たわっていた。
走り出したい気持ちもあったが、こちらは足を切断された負傷者を
おぶっている者も居て、あまり速度は出せないでいた。
﹁見たところかなり大きな川だけど、船も無しにどうやって渡るん
だろう?﹂
セナの疑問に、シャロンが頷く。
﹁⋮⋮あの無礼な魔導士はこの川を越えてマルウス族の所まで行っ
たのでしょう? では不可能ではないという事、私の頭脳でこの川
を越えて見せます⋮⋮!﹂
何やら燃えている様子の先輩騎士に、セナが少しだけ恐怖している
と、
﹁⋮⋮たぶんアミュスは魔法で越えて行ったと思うわ。顔を合わせ
たことは無かったけど、あれが私と同門のミネア修道院の﹃支配と
枯渇の魔術士﹄アミュスなら、枯渇の魔法を使って一時的に川を干
上がらせて渡ったんじゃないかしら﹂
ユキリスがそう解説した。
﹁それは! 貴女にもできる事なのですか? ユキリス!﹂
どう言うわけか怒り気味のシャロンに、ユキリスは焦った様子で片
手を小さく振る。
﹁い、いや私は﹃劇毒と狂奔の∼﹄だから⋮⋮そういうのは無理で
155
す⋮⋮はい、スイマセン﹂
すっかり委縮したユキリスの返事を受け、シャロンは思索する様子
で、俯いた。
その時、
﹁ん? あれは船じゃないか?﹂
騎士長ステアの声が上がった。
やけに細長い船が一艘、川べりの切り株に結ばれていた。
﹁⋮⋮船、有ったね⋮⋮﹂
セナが申し訳なさそうに言うと、シャロンが無表情で見つめてきた。
見える船は、なんとも形容しがたい形状をしていた。
横幅がかなり狭く、馬の鞍程度の幅しかない。反対に縦幅はかなり
長く、中央には太い棒が七本等間隔で突き立っていた。
先輩騎士は船の特殊な構造をに目を光らせながら、
﹁しかし、船が有るというのも変ですね。ここは魔物の領域、人間
も住んでいないのに船だけあるだなんて⋮⋮﹂
﹃ソレ ハ マルウス ノ フネ ダカラナ﹄
シャロンの言葉に、水中から轟くような声が聞こえた。
ゆっくりと水面に顔を出してきたのは、魚人。
鱗で覆われヒレと水掻きを持った体に、飛び出した目玉が印象的な
魔物だった。
﹃オマエタチ ハ マルウス ノ キャク カ?﹄
突如現れた魔物に向け、全員が武器を構えているというのに、魚人
は落ち着いている。
﹁⋮⋮お前は一体なんだ?﹂
フレアがその存在を問う。
﹃ワタシ カ? ワタシ ミテノトオリ ミズノナカニスムモノ ココデ マルウス ノ タメ ニ ハシワタシ ヲ シテイル﹄
魚人は少々聞き取りにくい言葉でそう言った。
﹁橋渡しだと? 魔物なのにか?﹂
﹃マルウス ハ キヨウダカラ ヒツヨウナモノ ツクッテクレル
156
コレ ハ ソノ タイカ ダ﹄
フレアの問いかけに、魚人はよどみなく答えた。
﹃マルウス ノ キャクナラバ ココ ヲ ワタソウ ソウデナイ
ナラ カエレ﹄
魚人の言葉に、シャロンが応じる。
﹁私達はこれからマルウス族を訪問し、仕事の依頼をしに行くとこ
ろなのです。よろしければその船使わせていただけないでしょうか
?﹂
﹃キャク カ ワカッタ フネ ヲ ダソウ ダガ キヲツケロ ソレ ハ マルウス ヨウ ノ フネダ チイサナ チイサナ マ
ルウス ノ タメ ノ フネダ﹄
セナは船を見る。
マルウスという種族が膝丈くらいのものだと想像すると、その小さ
な彼らが船の中央に突き出した七本の棒に掴まり、縦に七人並んで
渡河している様子は、中々に愛嬌のあるものに思えた。
﹃オマエタチ ニンゲン ガ ソレニ ノッテモ スグニ シセイ
ヲ クズシテ フネ ハ テンプク シテシマウ﹄
その言葉には頷ける部分が多い。
細長い船に人間が集団で乗り込んで、上手く荷重の比率を操れると
は思えない。
﹃ソコデ ソノ ボウ ニ マタガレ フカク コテイシロ ボウ
ハ フネ ノ チュウオウ ニ タッテイル ソコ ヲ カラダ
ノ ジク ニ シテ アシ デ シセイ ヲ タモテ﹄
﹁固定するって⋮⋮まさか⋮⋮﹂
﹃オマエタチ アナ ツイテル ダロ? ソコ ニ ハメロ ソウ
スレバ フネ シズマナイ﹄
その言葉に、公娼達は一斉に視線を交わす。
よく見れば棒は膣中に挿入するにうってつけの大きさのようにも見
え、そこで体の軸を固定させれば確かに船も安定するだろう。
﹁え⋮⋮っと、とりあえず色々と思うところはありますが、僕は?﹂
157
シャスラハールが冷や汗を垂らしながら言った。
﹁尻の穴にでも突っ込みなさいよ﹂
セナが断じるようにして言った。
﹁良いか? 絶対に変な動きはするなよ? おかしな動きをすれば
この魔導士様が川に猛毒を流すからな﹂
ステアの言葉に、ユキリスが錫杖を構えて頷く。
﹃モンダイナイ ワタシ ハ タダ ノ ハシワタシ ダ ムコウ
ギシ ニ ワタス ダケ ダ﹄
魚人もそれに頷き、船に近づく。
船の上には、
﹁くっ⋮⋮本当にこれで安定するのでしょうか、王子、絶対に動か
ないでくださいね﹂
ヴェナとシャスラハール組の公娼五人が膣内に安全棒を挿入し、ヴ
ェナはシャスラハールを、他三人の公娼が足を失った三人を正対し
て抱きかかえて座っていた。
﹃ソレデハ シュッコウ スル﹄
﹁あっ﹂﹁はんっ﹂﹁きゃっ﹂﹁んっ﹂﹁ふぁ﹂﹁くっ﹂
船が岸を離れた衝撃で少し揺れ、体内に直接振動が届いたヴェナ達
の口から声が漏れた。
﹁こらー! 安全運転しなさいよねー!﹂
セナが叫ぶと。
﹃モチロン ダ ワタシ ニモ コノ シゴトヘノ ホコリ ガ アル﹄
魚人は真面目くさって頷き、ゆるゆると川を渡って行く。
﹁やっぱりかなり大きな川だな﹂
フレアが言うとおり、ヴェナ達を乗せた船は出航してかなりの時間
をかけて、対岸に到着していた。
そしてまたゆっくりとこちらに戻ってきている。
158
﹁とりあえず妙な動きは無かったな。覚悟を決めて、アレに乗るし
かないか﹂
ステアの決断に、全員が頷く。
対岸で、シャスラハールがこちらに手を振っているのが見える。
﹁⋮⋮振りかえさなくて良いのか? セナよ﹂
ハイネアの言葉に、セナは赤面しながら首を振る。
﹁いや、良いわよ別に。どうせすぐ向こうで会うんだし、それにア
イツはヴェナさんたちの川を渡る時の苦労わかって無いのかしら、
着いたら説教してあげなきゃ﹂
セナは憤然と頷いている。
その時、魚人が岸へとたどり着いた。
﹃サァ ノレ﹄
船を陸地に寄せ、促す魚人。
セナ達は渋々といった調子でそれに従い、
セナを先頭に、ハイネア、リセ、ユキリス、シャロン、、フレア、
ステアの順に乗船した。
木で出来た安全棒が膣に食い込んでくる。
太く確かな質感を持ったソレは、セナの膣壁をはち切れんばかりに
圧迫している。
﹁んっ⋮⋮く﹂
ズブズブと挿入されたそれに体の芯を預け、両脚を船外に投げ出す。
足先を水に付けないようにしながら、体勢を整える。
﹃ソレデハ シュッコウ スル﹄
﹁ひっ﹂﹁くっ﹂﹁ああっ﹂﹁んっ﹂﹁⋮⋮﹂﹁おあっ﹂﹁ふっ﹂
ガコン︱︱と岸を離れ、出航した船はゆっくりと川を進んで行く。
水面を進み、波を切り裂く微弱な振動が、直接膣内に届き、セナ達
は身悶えしそうになるが、船の安全を考えると下手な動きは取れず、
必死に歯を食縛って耐えている。
永遠にも思える船旅が、ようやく半分を迎えようとした時、不意に
船が止まった。
159
﹁え⋮⋮ちょっと﹂
セナが声を出す。
居ない。
魚人が居ない。
今まで自分の目の前で船を引っ張っていた鱗だらけの背中が急に喪
失した。
その時、
四方から強烈な波が船を襲った。
﹁きゃあああああああっ!﹂
恐怖ではない。
膣への振動でセナは叫び声をあげた。
ガクガクと揺れる船の衝撃は、直接セナの陰部をかき乱す。
セナだけではない。
同乗する他の六人もそれぞれ嬌声をあげている。
﹃ヒヒヒヒャァァ ヤッタゾ バカメ バカメ マルウス ト オ
ナジ バカドモ メ﹄
魚人が、水面から顔を出した。
一人ではない。
二十はいる。
それらが少し離れた所から船を取り囲んでバシャバシャと水面を叩
き、船を激しく揺らしている。
﹁あ、アンタ! 騙したわね!﹂
﹃ヒヒヒヒッ オレタチ ハ ギョジン ガタ マモノ ヒュドゥ
ス チカラ ニ ジシン ハ ナイガ スイチュウ ノ イドウ ト チエ ハ マモノ イチ ダ﹄
ガッコンガッコン︱︱
ヒュドゥスと名乗った魔物によって生じた高波が、セナ達七人を一
斉に犯す。
﹁ひぎぃぃぃぃぃあっあ! ダメッ! 裂ける! 裂けちゃう!﹂
突き上げる動きは人間の筋力とは異なり、自然の高波だ。
160
力の加減が無い。
圧迫される腹部の痛みにセナが悶えている時、騎士長ステアの声が
届く。
﹁くぅぅぅぅ! ユキリス! 毒だ、毒を水の中に撒け!﹂
その言葉に、魔導士が反応しようとした瞬間、
﹃ヤメトイタ ホウ ガ イイゼ ドク ヲ マイタ シュンカン
フネ ヲ テンプク サセル オマエタチ モ ドク デ シヌ
カ オボレテ シヌカ ダ﹄
ヒュドゥスはケタケタ笑いを浮かべながらそう言った。
﹁くっ⋮⋮!﹂
ユキリスは唇を噛み、錫杖を握る手を収めた。
﹃ヒャヒャハー! ユレロ! ユレロ! マンコ ヲ グチャグチ
ャ ニ カキマワシテ オマエタチ ノ タイリョク ガ ナクナ
ッタ トキ オカシテ クッテ ヤルゼ!﹄
相変わらず、ヒュドゥス達は少し離れて船を取り囲み、バシャバシ
ャと波を作っている。
本来間の抜けた光景であるはずだが、今のセナ達とって、これ以上
の無い恐怖がそこにはあった。
﹁くっ⋮⋮! セナさん達を助けないと!﹂
シャスラハールは歯噛みする。
﹁しかし王子、わたくし共には川の中央にたどり着く方法がござい
ません⋮⋮! ここから矢を放って攻撃したとしても、魚人の数は
二十を超えています。一匹でも生き残れば転覆させられてしまいま
すわ﹂
ヴェナが苦しげにそう言った時、シャスラハールは衣服の裾を引か
れる感触に気づいた。
﹁なっ⋮⋮?﹂
ネズミ型の小さな魔物が、怯えた表情で彼を見上げていた。
161
魚も鼠も︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
162
魚も鼠も
﹁なっ! 王子、離れて下さい﹂
ヴェナは長剣を構え、シャスラハールの袖を掴むネズミ型の魔物に
突き付ける。
﹃⋮⋮!﹄
ネズミ型の魔物︱︱マルウスは激しく首を振って自分に害意が無い
ことを示す。
﹁ヴェナ、待って。この子の話を聞いてみよう﹂
シャスラハールは聖騎士の腕を掴み、マルウスを見下ろす。
﹁どうしたんだい? 僕らはセナさん達を助けないといけないんだ。
悪いんだけどそれ以外の用事だったら後にしてもらえるかな?﹂
シャスラハールは努めて穏やかに言って、マルウスの返事を待つ。
ネズミの尖った口が、そろそろと開いた。
﹃⋮⋮⋮⋮きょうりょく できる まるうす と きみたち いっ
しょに たたかう ひゅどぅす は わるいやつら ぼくに つい
てきて﹄
マルウスはそう言って、川とは反対側を指差した。
﹁どこに⋮⋮行くんだい?﹂
﹃まるうす の さと むこうに ある はしって いく そこに
ひゅどぅす たおす いい そうび ある﹄
指を差した先に、見えるものは何もない。
ただ一面に草原が広がっている限りだ。
﹁王子、如何致しますか?﹂
ヴェナが問いかける。 ﹁確かに今の僕達に打つ手は無い、マルウス族の助力は必要だけど
⋮⋮しかし⋮⋮このままセナさん達を置いて行くわけには⋮⋮﹂
シャスラハールが眉根を寄せて考えていると、
163
﹁王子、ここはわたし達がつきます! もし船の皆さんに異変があ
ればできる限り救援に入ります! 王子は聖騎士殿とマルウスの里
へ向かってください﹂
シャスラハール組でヴェナ以外の五人の内、最も戦闘に優れ、年長
でもあるシュトラと言う騎士が言った。
﹁シュトラ⋮⋮。そうですね、王子。今のわたくし達には戦闘不能
な者も三人居ますし、ここはわたくしと王子だけでこの子に付いて
行きましょう。シュトラ、船の事、負傷者の事、頼みましたよ﹂
ハッ! と応じるシュトラの声を聞いて、シャスラハールも決心を
固める。
﹁わかりました。ではシュトラさん、ここはよろしく頼みます。セ
ナさん⋮⋮すぐ戻って来ますからね⋮⋮ヴェナ、行こう!﹂
シャスラハールはマルウスを抱きかかえ、ヴェナと共に駆け出した。
朝日が照り付ける草原に、二つの人間の影が疾走していく。
満月が水面に浮かびあがり、辺りは夜気に覆われている。
騎士シュトラが見つめる先、船はガタガタと揺れ続けていた。
﹁王子⋮⋮いったいどこまで⋮⋮! 急いで下さい﹂
一体どれほどの時間、船の中の七人は揺らされ、絶え間ない刺激に
襲われているのだろうか、シュトラは事態の急変に備えて監視を怠
らずに見守っている。
故に、彼女達の苦しみが容易に想像できる。
顔を赤らめ喘いでいる者。
痛みに耐え涙している者。
﹁どうか⋮⋮どうか皆さん! 耐えて下さい⋮⋮王子が、戻ってく
るまで!﹂
セナの思考は乱れに乱れていた。
164
もとよりキツキツだった膣内の安全棒が、揺らされることで縦横無
尽に動き、内臓を抉るかのように暴れている。
それも、半日以上犯され続けているのだ。
﹁あへぇ⋮⋮あえ⋮⋮うぇぇ⋮⋮﹂
弱弱しい喘ぎ声が、セナの口から零れる。
膣に襲い掛かる快楽と痛みに耐え、揺れる船が転覆するのを防ぐ為
に手足を突っ張り続けた結果、もう彼女に余剰な体力など残ってい
なかった。
﹃ケギャギャギャ ドウダ ドウダ クルシイカ キモチイイカ オラ オラ﹄
セナ達の体力が目に見えて無くなってくると、ヒュドゥス達は調子
に乗り、船に近づいて来ては強烈に船体を蹴った。
﹁あひゃあああああああん! やめてぇぇ⋮⋮揺らさないでぇ⋮⋮
!﹂
嬌声に似た悲鳴が上がり、体がのけ反る。
﹁だ、大丈夫か⋮⋮! みんな、耐えろ⋮⋮耐えるんだ⋮⋮﹂
騎士長ステアが切れ切れの声で言う。
全員を励ます言葉、しかしその後が続かない。
耐えた結果、どうやって事態が好転するのか、という事が知らされ
ないのだ。
誰にもわからなかった。
シャスラハール達は対岸に渡ってしまっていて、船が無い以上この
大きな川の中央に独力でやってくるのは不可能だろう。
そして自分達は二十体以上のヒュドゥスに囲まれている。
武器もろくに振るえない水中で彼ら魚人と戦闘するなど無謀も良い
ところだ。
チャポチャポ︱︱と音がする。
船の中に液体が溜まってきているのだ。
川の水が浸水して入り込んで来たのではない。
七人から半日以上かけて絞り出された愛液や小便が、船の中で溜ま
165
り、揺れに合わせて跳ねているのだ。
﹃キキキキ クセェ クセェ ナ ションベン ト マンジル デ
フネ シズンジマウゾ ナンテ アホ ナ シニカタ ダ﹄
ケタケタ笑い声をあげて、魚人達は波を立たせる。
﹁ひぐぅ⋮⋮あっ⋮⋮あっ﹂
プシャ︱︱と音を立て、ハイネアの陰部から小便と愛液の混合液が
放出される。
それはすぐ前に居たセナの背中に掛かり、そのまま船の中に留まっ
た。
﹁す⋮⋮すまぬ⋮⋮セナよ⋮⋮妾の⋮⋮小水が﹂
七人の中でも一番小柄で体力も無いハイネアの息も絶え絶えといっ
た様子に、セナは黙って頷くにとどめた。
﹃ケケケケ! ダメダナ タスケテ ヤロウ オレタチ ノ ダイ
ジナ ダイジナ フネダ マンジル ト ションベン ノ ニオイ
シミツイチマッタラ カナワナイ﹄
そう言うと魚人達は船に取り付き、船底に潜った。
﹁何⋮⋮を⋮⋮?﹂
﹃ナニ ミズヌキ ヲ シテヤル ノ サ コノ フネ ニハ オ
モシロイ シカケ ガ アッテナ﹄
ズボッ︱︱とセナは自分の膣に挿さっていた安全棒が抜けるの感じ
た。
﹃オマエタチ ノ マンコ ニ ササッテイタ ボウ ハ フネ ノ ソコ カラ ヌク コトガ デキルノサ﹄
棒が船から引き抜かれる勢いにつられて、溜まっていた愛液と小便
が船底に生じた穴から水中に引きずられて行く。
しかし、現実は甘くは無い。
﹁塞いで下さい! すぐに塞いで!﹂
シャロンの焦った声が耳を打った瞬間、セナは剥き出しの陰唇に冷
気を感じた。
浸水︱︱。
166
セナは勢いよく腰を落とし、陰唇で船底の穴を塞いだ。
セナの後ろに並んでいる六人も、皆同じように先ほどよりも深く腰
を落としている。
﹃マァ ソウナルヨナ セイゼイ シッカリ マンコ デ フサグ
ン ダ ゼ?﹄
その時、更なる感触を覚えた。
船底の穴を塞ぐ陰唇に、何やら硬くて冷たいものが押し付けられて
いるのだ。
﹃オラァ!﹄
﹁ひぐぅぅぅぅ!﹂
魚人達はあろうことか、船底に開いた穴を通して、ペニスを挿入し
てきたのだ。
浸水を防ぐ為に陰唇を動かすことはできない。
船体を掴み、荒々しく挿入してくる魚人のペニスを、必死に耐えな
ければいけなかった。
無論、掴まれた船体は激しく揺れる為、公娼達は今まで以上に手足
を張って、転覆を阻止しなければいけない。
﹃キキキキッ キモチイイイイッ マンコォォ マンコォ ダ ヒ
サビサ ノ マンコォ ダァァ﹄
七体の魚人が船底に張り付いて船ごと公娼達を犯す。
﹁あっ⋮⋮んんっ! くっ⋮⋮手足が、武器が使えればぁ⋮⋮﹂
﹁どうやって⋮⋮この状況をくつがえ⋮⋮ああああん!﹂
その動きに、新たに魚人が七体加わってきた。
﹃シカケ ハ コレダケ ジャ ナインダ ヨナァ﹄
既に張り付いていた七体の隙間に入る様にして、新たな七体は船底
に取り付く。
﹃ココ ニ チイサク チンポ ガ ハイル ダケ ノ アナ ガ
アッタリ スルンダ ナァ﹄
安全棒がささっていた近くに、小さな真円が開いた。
魚人達は栓を抜く様にして、公娼達の尻の穴の真下に、穴を開けた
167
のだ。
﹁浸水して来るぞ⋮⋮! 塞がないと!﹂
フレアの厳しい声に皆が動く。
上体を更に反らせて、尻で穴を塞ごうとしたのだ。
﹃オ ソッチカラ キテクレル カ ゴチソウ サマ﹄
容赦の無い挿入が、公娼達のアナルを貫いた。
﹁おほぉぉぉぉぉぉぉ﹂
﹁んぎぃぃぃぃぃぃぃ﹂
ステアから、ユキリスから、全員から叫びが漏れる。
二穴を犯されながら、懸命に船の姿勢制御を行う。
公娼達への残酷な責め苦は、まだ終わらない。
﹃オレタチ デオクレ タカ ショウガネェ ナァ﹄
船底に張り付いた十四体以外に、まだ十体ほどが船を取り囲んでい
た。
﹃テンプクゲーム ヤロウゼ? オレ アレ ダイスキ﹄
﹃オレモ オレモ﹄
取り囲んでいた魚人達は水中に仰向けになって浮き、激しく手淫し
始めた。
﹁な⋮⋮何を⋮⋮﹂
犯されながら息も絶え絶えのセナに、魚の顔で笑った。
﹃クラエ﹄
白濁の、人間のものよりも遥かにツブツブした精液が、セナの顔面
を襲い、そのまま滴り、船の中にたまっていく。
﹁きゃぁぁぁぁ! くさいっ! 魚臭いっ!﹂
﹃チャント コウタイ シロヨナ ナカ デ ダシタヤツ ハ ツ
ギ ハ フネ メガケテ テンプクゲーム スル テンプクゲーム
シタ ヤツガ ツギ ソウニュウ スル
サイゴ テンプク サセタ ヤツガ サンラン サセル﹄
ワカッタ ワカッタと応じる魚人の集団。
﹁て、転覆させる気なの⋮⋮? それに⋮⋮産卵⋮⋮ってまさか﹂
168
セナは引き攣った声を上げる。
﹃ヒュドゥス ノ ハンショク ハ スイチュウ デ メス ニ セイエキ ヲ ブッカケル ト コダネ ガ カッテニ ボタイ ヲ メザシテ ニンシン サセ ウマセル ノサ﹄
公娼達の顔が、一斉に青くなった。
﹃アンシン シロ サンラン シタラ チャント ミンナ デ ク
ッテ ヤルカラ ナ﹄
魚人達は興奮した様子で、船に張り付いた者は腰を打ち付け、囲ん
でいる者は手を早めた。
﹁おほぉぉぉぉぉぉ﹂
﹁んぎぃぃぃぃぃぃ﹂
船は、一層激しく揺れ始めた。
﹁急がないと⋮⋮夜が明ける⋮⋮!﹂
シャスラハールとヴェナは懸命に草原を走っていた。
﹁このマルウスとやら⋮⋮ここまで食わせ者だとは⋮⋮!﹂
ヴェナが厳しい視線をネズミ型魔物に送る。
マルウスは現在、ヴェナの腕に抱かれている。
そして眠りながら、彼女の乳首に吸い付いていた。
﹁二刻に一回の食事、三刻に一刻の睡眠⋮⋮それをしないと活動で
きないと言いだすとは⋮⋮おかげでかなり時間がかかってしまった
! セナさん達は大丈夫だろうか﹂
二人はマルウスと共に里を目指したのだが、道中寝るわ食うわで時
間を浪費し、それを阻害すると泣き出して動かなくなるため、目的
地の分からない二人に取っては心の中に湧き上がる激情を抑えるの
に苦労した。
今は川へと戻る道。
帰り道ならば覚えがあるので二人はマルウスを寝かせたまま抱えて
走っている。
169
里でヒュドゥス対策の装備を手に入れ、取り付けに技術が必要とい
う事でその場で装着したヴェナ。
シャスラハールはその姿を横目で見る。
﹁ヴェナ⋮⋮それは、本当に大丈夫なのかな?﹂
﹁理論上は⋮⋮わたくしも納得いたしましたが。正直、完全に信頼
が置けるものでは無いかもしれませんね。仕掛けを起動するために
この子が必要だから連れて行けと言うのも何だか妙に思えますし﹂
王子の疑問に聖騎士が答えた。
今現在、ヴェナの陰部には器具が装着されている。
膣に挿入し、肛門にフックを掛ける事で安定させたそれには、
角度の着いた鉄製の羽根が四枚備わっていた。
マルウス達はこの装備を﹃すくりゅー﹄と呼んでいた。
170
調教師の脚本︵前書き︶
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171
調教師の脚本
シャスラハールとヴェナが川辺に辿りついた時、既に空は白み始め
ていた。
﹁シュトラさん! 船の様子は?﹂
黒肌の王子の息せき切った声に、
﹁まだ⋮⋮浮かんではいます⋮⋮けれど、もうかなり前からセナさ
ん達の声が聞こえなくなっていて⋮⋮﹂
肩で切りそろえた青髪を振って、騎士シュトラは沈痛な面持ちで答
えた。
シャスラハールは川の中央に視線を向ける。
そこでは︱︱
﹁セナさん⋮⋮くそっ!﹂
激しく揺れ続ける船と、取り囲んだ魚人から放たれる精液を浴び続
けている騎士達の姿があった。
弱弱しく反応はしているようだけれども、その表情に力を感じられ
ない。
無理もない、最初に罠にはめられてからもうすぐ一日が経つ。
その間休む事無く犯され続けているのだ。
﹁ヴェナ! 頼んだよ﹂
シャスラハールは自分の無力を悔みながら、誰よりも頼りになる聖
騎士に懇願する。
﹁お任せください、王子。マルウスよ、急いでこの装備を作動させ
てください﹂
ヴェナはすぐ傍で欠伸をしていたネズミ型魔物に言った。
﹃ふあぁ わかった まず じゅんび する おしり こっち む
けて だめ とどかない かがんで じめんに ねる くらい か
がんで﹄
172
ヴェナが﹃すくりゅー﹄と呼ばれた装置ごと尻を向けると、マルウ
スは届かないと文句を言い、彼女に地面に手をつくよう求めた。
﹁⋮⋮これで、よろしくて?﹂
﹃おしり うえ むけて いまから ねんりょう いれる﹄
そう言うとマルウスは肩から提げた鞄に手を入れ、何やら黒い液体
の入った容器を取り出した。
﹁ねんりょう⋮⋮とは何ですか? 変なことをしたら承知いたしま
せんよ﹂
﹃けど ねんりょう ないと すくりゅー うごかない なかま たすける ため ひつよう がまん がまん﹄
ネズミ型の魔物は聖騎士の尻を捕まえると、容器を逆さにして肛門
へ突き立て、
ブチュルル︱︱と勢いよく液体を注入した。
﹁んほぉぉぉっ! おぉぉぉ中にぃ入ってくる⋮⋮ドロドロのネバ
ネバしたものが⋮⋮腸にこびり付きながらぁ⋮⋮﹂
ヴェナが尻を振って逃れようとするも、マルウスはその小さな体に
似合わない力でそれを抑える。
﹃がまん して ねんりょう いれないと たたかえない もうす
ぐ おわる﹄
マルウスは容器を強く握りしめ、底を叩いて最後の一滴までヴェナ
の肛門に注入すると、すぐに樹脂でできた栓をはめ、燃料が零れだ
さないようにする。
最後に﹃すくりゅー﹄から伸びた管を栓の上部に出来た突起にくっ
つけ、マルウスはヴェナの体から離れた。
﹃じゅんび できた あとは きどう する だけ﹄
マルウスの言葉に、シャスラハールの厳しい声が応じる。
﹁君、これがもし役に立たない代物で、ヴェナを辱めるためだけの
行為だったなら、僕は容赦せず君を殺す。良いね?﹂
王子は先日隻腕になったばかりで戦闘力は激しく落ちてはいるもの
の、その瞳には猛烈な凄みが宿っていた。
173
﹃⋮⋮だいじょうぶ まるうす の ぎじゅつ は ほんもの こ
れで なかま たすかる﹄
マルウスは一歩下がりながらそう言った。
﹁おぉぉ⋮⋮ぐぅ気持ち⋮⋮悪い⋮⋮けれど、急いで⋮⋮行かない
と⋮⋮もう船が沈んでしまう⋮⋮﹂
ヴェナが長剣を杖に立ち上がり、水に足を浸ける。
川の中央に漂う船は、今にも沈んでしまいそうだ。
﹃まって きどう させる この ひも ひっぱる﹄
マルウスが小さな手を伸ばし、﹃すくりゅー﹄から伸びた一本の紐
を引いた。
﹃すくりゅー﹄は爆音を発し、振動しながら四枚の羽根を激しく回
転させ始めた。
ドゥルルル︱︱。
﹁あっ⋮⋮んぉおおおおおおおっ! 中に⋮⋮膣中にぃぃ抉り込ん
でくるようにぃぃぃ、んくぅぅぅぅぅ﹂
風を切り、前進しようとする﹃すくりゅー﹄は、その推進力でヴェ
ナの膣を強烈に突き上げた。
﹁ヴェナ⋮⋮! 大丈夫か?﹂
シャスラハールは懐の短刀を引き抜き、マルウスに突き付けながら
聖騎士を見やる。
﹁お、王子ぃ⋮⋮大丈夫⋮⋮で、ございます。この程度、ただの木
偶が膣内で動くくらい、わたくしには何とも⋮⋮ございませんわ﹂
ヴェナは汗の浮かんだ顔でシャスラハールに微笑みかけ、川の中へ
さらに進んで行く。
その陰部に装着された﹃すくりゅー﹄は空気を噛んで回っている。
肛門に接続された管からは、黒い液体が流れ込んできていた。
﹃はもの こわい しまって だいじょうぶ これで みず もぐ
れる はやく いどうできる ふねの ひと たすけられる﹄
マルウスはシャスラハールの手元に光る刃に怯えたように身を震わ
せながら、川の中ほどを見た。
174
遠目でもわかる程に、船の中は白濁の液で一杯になっていた。
セナはこみ上げる生臭さに顔を顰めた︱︱
はずだった。
ついには表情の筋肉すら覚束なくなっているのを感じ、絶望の波が
一層心を抉った。
夜通し精を浴びせられ、膣と肛門を犯されている彼女達に残された
気力は僅かも無い。
既に船の姿勢制御をする必要は無くなっている。
粘着性の強い魚人の精液が船の中で溜まり、乾燥して固まり始めて
いるからだ。
肌には不快なぬめり。
膣内には容赦の無い衝撃。
それによって強制的に持ち上げられる公娼として受けた調教の成果。
疲労が限界を迎え、精神を守る力を失った瞬間、彼女の心を襲った
のは悦楽だった。
﹁ち⋮⋮ちんぽぉ⋮⋮あはぁ⋮⋮くるぅ⋮⋮またぁ⋮⋮﹂
助かる道も見つけられず、ただひたすら犯されることに、騎士の誇
りが崩れかけている。
もうここで全てを諦め、与えられる快楽に溺れたまま死んでしまっ
ても良いのではないかと弱った心が泣きだしている。
そんな彼女を最後に支えているのが、王の誓い。
シャスラハールと交わした誓約。
﹁おっほおおお! またぁ⋮⋮またきたぁ⋮⋮水の中からぁ⋮⋮冷
たい水とぉ熱い精液が合わさってぇ⋮⋮ぬるいのがぁ⋮⋮気持ち悪
いぃ⋮⋮いやだよぉ⋮⋮シャス⋮⋮﹂
今までセナを貫いていた魚人が離れ、別の一体が遠慮なく挿入して
くる。
膣から引き抜く際に開いた膣口から川の水が入り、膣中に放出され
175
た精液と混ざり合ってセナの体内で留まり、魚人の肉棒で押し上げ
られて子宮に追いやられる。
子宮で感じられるのは、川の水と異形の魔物の精で出来た生ぬるい
混合液。
不快感は言い様の無いほどであった。
もうセナを含め誰も船の端を掴んではいない。
ただされるがままに犯され、精液を浴びている。
彼女達に訪れる死は、目前だと思われた。
﹃ギッ? ナンダ アレ﹄
魚人の一体から、驚愕の悲鳴が上がる。
次いで、船に液体が跳ねた。
それは今まで注がれ続けてきた白濁のものでは無く、
赤い赤い、血飛沫であった。
ヴェナが魚人を殲滅するのに掛かった時間は、両手の指で数えられ
る程度だった。
彼女の聖騎士としての技の冴えは、例え水中であっても衰えなかっ
た。
無論移動手段を確保できた事が救出成功の要であるのは間違いない
のではあるが、シャスラハールの胸は落ち着かない。
今、ヴェナは船首を掴み、船ごとセナ達七人をこちらの岸まで運ん
できている。
その股間に装着された﹃すくりゅー﹄の羽根は休む事無く回り、ヴ
ェナに推進力と性刺激を与えている。
﹃すくりゅー﹄が通り過ぎた後には泡が浮いている。
それは羽根の回転で生じた気泡なのか、ヴェナの膣から零れだした
愛液なのか、遠目では判断できない。
シャスラハールは視線を下げる。
ネズミ型の魔物が船を見つめている。
176
先日別れた魔導士アミュス達はこの魔物の事を穏やかで協力的な種
族だと言っていた。
彼らは生活の為に作物を育て、アミュス達に服を用意し、自分達に
は川を移動できる装備を与えてくれた。
感謝すべき相手に間違いはないが、腑に落ちない何かが胸を締め付
けるのだ。
シャスラハールはマルウスの傍を離れ、シュトラに声をかける。
﹁シュトラさん⋮⋮ちょっと良いですか?﹂
はい、と応じたシュトラの手を引き、また少しマルウスから距離を
取る。
﹁確信も何もない事なんですけれど⋮⋮﹂
シャスラハールは胸につかえる言葉を、ようやく吐き出した。
﹁マルウスの事、調べてもらっても良いでしょうか?﹂
﹁⋮⋮えっ?﹂
﹁いや⋮⋮どうにもアミュスさん達が言っていた彼らの話と、今回
僕が感じた彼らへの印象が食い違っていて⋮⋮。これから僕らはマ
ルウスの里に行く事になると思います。そこで僕自身も色々と見て
回るつもりですが、シュトラさんには僕や他の人達とは別角度から
彼らに個別に接触してもらって、彼らの本質を調べて頂きたいんで
す﹂
シャスラハールの言葉に、シュトラは数秒考え込んだ。
﹁それは王子とヴェナ様の到着に時間が掛かった件と、先ほどヴェ
ナ様が装着されていた得体の知れないものに関しての、疑問ですか
?﹂
シャスラハールは頷く。
﹁確かに⋮⋮魔物に知性があるのならば、先ほどの魚人達のように
力が無ければ罠を駆使してくる可能性は否定できません。わかりま
した。このシュトラにお任せください。マルウスの本質、見定めて
参ります﹂
二人は頷き合う。
177
その時、
﹁王子⋮⋮ただいま、戻りましたわ⋮⋮んくっ!﹂
ヴェナが岸に辿り着き、船を陸地に乗り上げさせていた。
船の中にいる七人は衰弱しきった様子で動くことができないでいる。
陸地で待機していたシャスラハール組の公娼達が肩を担ぐようにし
て船と⋮⋮中に溜まっていた白濁から引きずり出し、地面に横たえ
ていく。
シャスラハールとシュトラも急いでその輪に加わる。
シュトラはハイネアを、シャスラハールはセナを助け出した。
﹁セナさん⋮⋮﹂
騎士の顔と体は白濁にまみれ、陰部は痛々しいほどに赤く腫れてい
る。
﹁⋮⋮大丈夫⋮⋮このぐらい⋮⋮平気よ、バカ王子⋮⋮。ただちょ
っと⋮⋮休ませなさい。昼ごろには⋮⋮起きてあげるわ﹂
彼女はシャスラハールの胸に顔を寄せながら言った。
その目の端に透明な光る粒が浮いている事を見て、シャスラハール
深く目を閉じた。
セナを地面に寝かせ、シュトラ達に介抱を頼むと、彼は岸辺で倒れ
込んでいる聖騎士の下へ向かった。
﹁ヴェナ⋮⋮ごめん、ありがとう。マルウス! すぐにヴェナの装
備を外してくれ!﹂
シャスラハールの声に、ネズミ型の魔物はつぶらな瞳で振り向いた。
﹃すくりゅー の ことなら むり それは そうちゃく した とくべつな まるうす しか はずせない﹄
ヴェナは陰部に﹃すくりゅー﹄を装着しているため、座ることがで
きない。
現在彼女は尻を持ち上げた形でうつ伏せになっている。
﹁んんっ! あっ⋮⋮抉れる⋮⋮はあああああああん﹂
﹃すくりゅー﹄は今もなお爆音を立てて作動し、彼女の膣内で暴れ
まわっている。
178
﹁どうすれば⋮⋮止まるんだ?﹂
﹃それも むり きどう の ひも は あっても とめる そう
ち ない ねんりょう きれるの まつ しか ない﹄
シャスラハールは俯きながら、短刀を構える。
切っ先はヴェナの陰部で暴れている﹃すくりゅー﹄。
﹃やめたほうが いい つよい しげき あたえる と ばくはつ
する おまんこ の なかで ばくはつする ちなみに ねんり
ょう なくなる のは あしたの あさ﹄
カランッ︱︱と軽い音を立てて短刀が地面に落ちる。
シャスラハールは震える指先で、ヴェナの体を持ち上げた。
﹁王子⋮⋮いかが致しました⋮⋮わたくしならば⋮⋮この程度、何
の問題も⋮⋮はぁん! ございませんわ⋮⋮よ﹂
彼の大切な部下であり、支えでもある聖騎士の体を、少しでも彼女
の負担が和らぐように抱きしめた。
王宮魔導士ゴダンは禿あがった頭を掻いた。
彼は今、人間と魔物の領域を分ける大門の前の広場にいる。
傍には魔導長官オビリスお墨付きの調教師ゾートが老いた顔を厳し
くして佇んでいる。
ゾートの後ろには数人の男女が集まっていて、彼らはゾートが連れ
てきた選りすぐりの調教師だと紹介を受けた。
さらに自分達を囲むようにして騎士団が二つ、総計六百人ほどの武
装した兵士が控えている。
西域に派兵される陣容は今集まっている人間に、リトリロイ王子と
騎士公娼セリスを加えた数だと彼は聞いていた。
しかし今、彼が汗をかくのに十分なほどの熱気が、辺りを覆ってい
る。
五万人だと、リトリロイは言った。
彼が出発前日までゴダンやオビリスには告げず、秘密裏に集めた非
179
戦闘民だ。
開拓団という名目で集められた彼らを連れて、西域に入るらしい。
広場に入りきれず、小道や町の外れにまで溢れた人間の見た目は、
一言で言ってみすぼらしい。
それも当然、リトリロイが集めたのは犯罪者や社会脱落者ばかりで、
その殆どが男だった。
女も居るには居るが、年老いた皺顔を歪めて息を吐いている者ばか
りだ。
話を聞くに、口減らしとして姥捨て山代わりに開拓団に送られたそ
うだ。
この無頼の輩を率いて王子は何をしようと言うのだ。
ゴダンが視線を上げる。
そこには仮設の壇上に立ち、熱弁をふるうリトリロイ王子の姿があ
った。
﹁注目してくれ! 良く集まってくれた。ここから先は危険な魔物
の領地、西域だ。君達にはそこで開拓団として働いてもらい、大き
な城と街を作ってもらう。そこは、今現在ゼオムントで不遇な扱い
を受ける君達が新しくやり直すための国になるだろう。僕はそこで
新たな王となり、ゼオムントとは異なる政治によって国を治める﹂
リトリロイの傍には、騎士公娼セリスがドレス姿で控えている。
﹁犯罪歴や借金のある者は、すべて打ち消そう。新たな人生を僕の
国で始めてもらおう。もちろん労働の対価として給金もはずむ。今
は男所帯で色が足りないかも知れないが、国が完成した暁にはゼオ
ムント国内で志願する女性を僕の国に移住してもらい、君達との間
に愛を育んでもらって子孫を残そう。そうやって国を発展させてい
くんだ﹂
リトリロイの言葉に、開拓団の中から吠え猛る声が応じた。
﹁国を! 国を! 国を!﹂
彼らはゼオムントに見捨てられた存在だった。
故に、新たな国で真っ白になって再出発できるという希望に燃えて
180
いた。
﹁秩序を守る為に、僕の騎士団が君達と同行することを許してほし
い。生まれ変わった君達を信じていないわけでは無いけれど、西域
には外敵として魔物も存在しているし、武力は必要なんだ﹂
王子は自らの横に立った将軍の事を紹介する。
今回ゴダン達と共に行動する二つの騎士団を束ねる男のようだ。
﹁最後に、一つだけ言っておくことがある。僕はゼオムントの政治
は踏襲しない。けれど、一つだけ父王の政策で認めているものもあ
るんだ﹂
それは︱︱と王子は言葉を切った。
﹁公娼制度だ﹂
王子の言葉に、開拓団は一瞬黙り、すぐに爆発する様な声を上げた。
﹁公娼! 公娼! 公娼!﹂
公娼、それはゼオムント国で不遇であった彼らにとって、自分達よ
りも唯一立場の弱い、何をしても許される存在だった。
リトリロイは言葉を続ける。
﹁今現在西域にはかなりの数の公娼が派遣されている。これは王宮
や調教師のお遊びとしての派遣だ。僕はそれを認めない。自分達が
飽きたからと言って、本当に必要としている所に公娼を送らず、無
為に死なせているだけではないだろうか! だから僕はここに宣言
する﹂
彼は一瞬後ろに控えている騎士公娼セリスの方を見てから、言葉を
紡いだ。
﹁新しく生まれる僕らの国の為に! 西域にいるすべての公娼を捕
らえ、本来彼女達が持つ性奴隷としての役割を果たさせるのだ。こ
れから建国という辛い仕事を担ってもらう君達の為に、僕は全力を
持って公娼を捕らえ、分け与える事を約束する!﹂
またも咆哮を上げる開拓団の熱気を尻目に、ゴダンはため息をつく。
厄介なことに巻き込まれたものだと。
﹁魔導士殿⋮⋮如何なされる?﹂
181
ゾートがしわがれた声で問うてくる。
ゴダンはそれに一つ頷いて、
﹁いやいや⋮⋮困りましたねぇ⋮⋮何やらリトリロイ王子は陛下と
内々のお約束をされているようですし、王宮からこの件は謀反では
ないと通達を頂きました。そうなると私共はしがない宮仕えの身、
下手に動かず命令書通りに働きましょう﹂
そうか、とゾートは応じ後ろを見る。
﹁聞いたか皆の衆。ワシらのやるべき事に変わりは無い。公娼を見
つけ出し、調教を施す。調教師としての職務を全うする事のみを考
えよ。お前達はこのゾートが選んだ凄腕の調教師だ。その全力で作
り上げた作品をもって、自らの名を歴史に刻め﹂
王宮から称号を授与されている当代最高の調教師であるゾートに率
いられた調教師集団。
彼らが作り出す作品ならば、きっとオビリスも、ゼオムント王も満
足されるだろう。
﹁何と言っても、今は公娼達が希望を抱き始めた頃合いですからね
ぇ﹂
公娼が三年間で飽きられた理由の一つが、繰り返される調教の結果
絶望と諦観から誇りと矜持を失い、従順になった彼女達の態度にあ
った。
公娼制度開始当初の反抗的な態度と、屈辱に震える表情を民衆は求
めていたのだ。
今の彼女達は、儚げながら希望を抱いている事だろう。
それを打ちこわし、踏みにじる。
その為に仕掛けられた、魔導長官オビリスの西域遠征。
一瞬の夢。
公娼が抱く分不相応の夢。
それを絶対的な力によって破壊し、刺激を取り戻す。
﹁まぁ私達で公娼を捕らえて、徹底的に調教し、撮影した後はリト
リロイ王子のところの開拓団に回せば良いでしょう。私達が求めて
182
いるのは娯楽、開拓団が求めているのは性処理ですからねぇ。一粒
で二度おいしいというやつです﹂
その言葉に、ゾートは疑問する。
﹁しかし魔導士殿、開拓団を守るために騎士団の人員を割かれては、
公娼の確保に支障がでますぞ。元々アレらは強い、それに希望を守
る力まで加わってしまっては、下手すればこちらがやられかねない﹂
ゾートの疑問に、ゴダンは肩を落として笑った。
﹁ですよねぇ⋮⋮そう考えるのが普通です。しかし、恐ろしい事に
西域遠征の計画者である長官には奥の手があったようです。本来は
演出上最終幕で登場させたかったのに⋮⋮と悔しがっておられまし
たが、えぇとどこに仕舞ったかな﹂
ゴダンは懐をごそごそと漁り、一本の短い杖を取り出した。
﹁それは⋮⋮なんですかな?﹂
ゾートが老いた目を細めて杖を見やる。
﹁これは出発の前に魔導長官から呼び出されて預かったものです。
これを使って命じれば、西域に棲む魔物共は意のままに動いてくれ
るそうです。私達は魔物に公娼を襲わせて、捕まえたところを引き
渡させます。そうすれば少ない兵でもほぼ無傷で公娼を確保する事
が出来るでしょう﹂
ゾートは、その言葉を受けて笑った。
﹁ハハハハハッ! それはそれは⋮⋮。魔導長官の調教師としての
能力、恐れ入るばかりだ。ここまでの演出力、感服いたす﹂
そう、今ゴダンの手に握られている杖こそが、
﹁これが﹃魔物の宝具﹄統帥権の証、公娼の夢と希望でございます﹂
183
﹃お姉さん﹄︵前書き︶
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﹃お姉さん﹄
シャスラハールにとって、我慢を要する時間が続く。
魚人︱︱ヒュドゥスによる長時間の凌辱で体力を失ったセナ達の回
復を待ち、ネズミ型︱︱マルウスの卑猥な装置が燃料切れをおこし
ヴェナが苦痛から解放されるのを、ただ座して待つことしか彼には
出来なかったからだ。
夕刻を迎え、体力のあるステア、シャロン、セナ、フレアの騎士四
人とリセは意識を取り戻したが、魔導士ユキリスと王女ハイネアは
依然昏倒したまま、目を覚まさなかった。
目覚めた五人も、完全に回復したわけでは無く、憔悴した様子で座
っている。
ヴェナは声を押し殺し、岸辺の岩陰で横になっている。
彼女の陰部に取り付けられた﹃すくりゅー﹄は今も爆音を立てて作
動しており、聖騎士の秘部を苦しめているはずだ。
﹁王子は皆の傍にいて下さい。わたくしの事は大丈夫でございます﹂
そうヴェナは言って、シャスラハールの視界から逃れる様に、岩陰
に隠れている。
聖騎士としての誇りが、王の負担になる事を拒んだのだ。
今、シャスラハールは岸辺全体が見渡せる小さな丘に座っていた。
そこに、歩み寄ってくる影。
﹁王子⋮⋮辛そうなお顔をしていらっしゃいますね﹂
シャスラハール組の公娼として、ヴェナ不在時に残りの者達を纏め
てくれた、青髪の騎士シュトラが近づいてきた。
﹁そうですね⋮⋮ちょっと自分が許せなくって⋮⋮セナさん達が長
い間酷い目に遭ってい
たり、ヴェナが今も苦しい思いをしていたり⋮⋮もしかしたら未然
に防げたんじゃないかって、僕は今回ほとんど何もできていない。
185
ただ眺めているだけの、それこそ調教師であった頃の自分と大差が
ないのが、嫌なんです﹂
シャスラハールは左拳を握り、吐露する。
﹁僕は祖国を取り戻すために戦うと決めました。皆さんにはそれを
手助けしてもらう、そういう仲間になるんだって誓ったのに、今こ
うして僕はのうのうと無力を晒し、セナさんやヴェナ達を苦しめて
いる。それがどうしても、許せません﹂
少年は拳を振りおろし、地面を叩いた。
鈍い音を立てて拳が鳴った。
少年の頬に透明な滴が一筋、流れる。
﹁⋮⋮王子、これからわたしは差し出がましいことを申し上げます。
どうぞお許しください﹂
シュトラはシャスラハールのすぐ隣に腰を下ろした。
﹁王子はまだ、お若くいらっしゃいます。理想の自分と現在の自分
の差異に悩む事が有ったとしても、何の不思議もございません。今
日の出来事で己が無力だったと申されましたけれども、わたしはそ
うは思いません。王子はセナさん達を助けるために走りました。ヴ
ェナ様の為にお怒りになられました。貴方の気持ちに応えるために、
皆が懸命に頑張った結果、今こうして全員の命を保つことが出来て
います﹂
シュトラの柔らかな手が、シャスラハールの頬を撫でた。
﹁本当に無力だったのはこのわたし。わたしはただ見守るだけでセ
ナさん達を救出することも、ヴェナ様の苦痛を和らげることもでき
ませんでした。騎士として叙勲を受け、貴方様を支えると誓ったこ
の身でありながら、何一つお力になること適いませんでした﹂
柔らかな手は、少年の黒髪に触れ、そのままふくよかな胸へと抱き
寄せた。
﹁不甲斐ないこの身が今唯一救えるのは、貴方様の御心のみです。
王子、貴方は今視界に収めるセナさん達の姿に苦しみ、漏れ聞こえ
るヴェナ様の声に苦しんでいらっしゃいます。ただひと時ではござ
186
いますが、わたしがその苦しみから、お救い致します﹂
シュトラは身を覆っていた薄手のマントを脱ぎ捨てた。
彼女がその下に何も身に着けていない事は、シャスラハールは知っ
ていた。
それは、彼が彼女に授けた衣装だったからだ。
﹁シュトラ⋮⋮さん、僕はもう主人役でも調教師でも無いんです⋮
⋮貴女を慰みものにするようなことは⋮⋮したくない﹂
﹁良いのです⋮⋮王子。慰みものなど、そうは思いません。わたし
はただ年長者として、苦しんでいる少年を励ましてあげようと、分
不相応な事を考えているだけなのですから﹂
シャスラハール組の中では年長者で、二十代の中頃であるシュトラ
にとって、まだ成人していない彼は男と言うよりも弟のように感じ
られた。
﹁わたしは貴方の事を応援したいのです。シャスラハール王子、わ
たしを公娼と言う絶望から解き放ってくれる存在を。泣いている顔
を撫でて、沈んでいる心を解きほぐしてあげたいのです。どうか、
この一瞬だけでも周囲の事を忘れ貴方の心の為、わたしに甘えて下
さい﹂
シャスラハールは涙の浮いた顔を持ち上げる。
﹁シュトラさん⋮⋮聞いてください﹂
﹁はい、何ですか? 王子﹂
震える唇で言葉を紡ぐ。
彼のその姿に優しく微笑みながら、頭を撫でて返事するシュトラ。
﹁僕には⋮⋮姉が⋮⋮姉さんがいました。スピアカントの王族とし
て何不自由なく暮らし、少々我が儘に振舞っていた僕をよく叱って
くれる人でした。ゼオムントとの戦争で国土がどんどんと侵略され、
僕の兄さん達が次々と出征しては死んでいく中、懸命に僕を守り、
励まし、支え⋮⋮最後にはその身を犠牲にして逃がしてくれた人で
した﹂
スピアカント国は強国であった。
187
故に覇道を行くゼオムントと相争う道を王家は決め、戦った。
しかしゼオムントの力は凄まじく、一度としてスピアカントが勝利
を掴む事は出来なかった。
民衆は王家に責任を求めた。
王は苦心の末、一族の男子を将として戦いに向かわせた。
敗れた。
王は悔恨の末、一族の長老を使者として講和に向かわせた。
拒まれた。
王は諦観の末、一族の女子を貢物として降伏に向かわせた。
受諾された。
シャスラハールはまだ幼かったが故に、戦いに行く事なく国の終わ
りを迎え、貢物として移送される姉の最後の知恵で城下に隠された
のである。
﹁姉さんは最後に⋮⋮僕の事を抱きしめてくれました。今シュトラ
さんがしてくれるように、優しく包み込むようにして、笑って、安
心させるように⋮⋮﹂
シュトラはシャスラハールの黒髪を撫でる。
﹁⋮⋮お姉様は、今⋮⋮﹂
シャスラハールの両目が強く開かれる。
﹁姉さんは⋮⋮! 公娼に⋮⋮されました。僕が調教師になった理
由は、ヴェナと出会い戦力を得る事ももちろんでしたが、姉さんと
再会するため⋮⋮という事も大きかったのです。しかし⋮⋮﹂
少年の瞳から、涙の粒が溢れる。
﹁去年⋮⋮首都で調教師の大会が開かれたのをご存知ですか⋮⋮?
全国から選りすぐりの調教師を集め、首都に作られた特別会場で
その日の為に研究された映像魔術の生配信を使って行われた⋮⋮国
を挙げての大規模な大会です﹂
シュトラは大会と言う言葉に記憶を探り、頷いた。
﹁わたしは当時、大きな農園で農夫達の慰安と家畜の性処理を公娼
としてやらされていたのですが⋮⋮農夫達もこぞってその大会を見
188
ていた記憶が有ります。大会で見たという斬新な調教をわたしの体
で試すと言って、農具を使って体中をいたぶられました﹂
シャスラハールはシュトラの肌を撫でる。
そこに刻まれた痛みと汚れを払うようにして。
﹁そうです⋮⋮斬新さもその大会にとっては大きな評価点となって
いたので、調教師達は様々なお手製の器具を使って公娼を嬲りまし
た。そしてその大会⋮⋮審査基準を明確にするという理由で、公娼
は一人でした。全国から集まった調教師の数は三十人だったにも関
わらず⋮⋮です﹂
まさか⋮⋮とシュトラが呟く。
﹁そうです⋮⋮僕の、僕の姉さんが⋮⋮たった一人で⋮⋮! 刃の
付いた器具で血塗れになっても、脳に支障をきたす程の薬剤を打た
れても、王宮の治療魔術士に回復されて、また何度も何度も何日に
も渡って、これまで民衆が見たことも無かった方法で凌辱されてい
ったんです!﹂
騎士は、王子の体をギュッと抱きしめた。
﹁聞き及ぶところによると、映像魔術も会場も莫大な費用を使い用
意したので、それに見合うだけの身分をもった公娼が良い、とゼオ
ムント王が言ったそうで⋮⋮その結果大国スピアカントの第一王女
だった姉さんが指名されたそうです⋮⋮﹂
王子の涙と叫びは止まらない。
﹁優勝したのは⋮⋮ゾートと言う老いた調教師でした。彼は斬新も
斬新、そして凶悪な装置をいくつも持ち出し、姉さんの体を痛めつ
けていきました。そして⋮⋮そして最後に⋮⋮姉さんを絶頂させな
がら殺す事で、これまでの調教師達と格の違いを示し、大会の覇者
に選ばれました﹂
王子の震えが、騎士の体と心を揺らす。
﹁僕は⋮⋮僕は映像魔術でその様子を見せつけられながら、必死に
祈りました。姉さんの無事を、姉さんの魂の救済を、ゾートに訪れ
るべき破滅を⋮⋮! けれど、現実は残酷です。ゾートはその後勲
189
章を授与され調教師としての栄華を進み、姉さんの亡骸はゾートの
部下の手によって修復され、王宮魔術士の不滅魔術によって魂の無
い肉人形としてその大会会場に飾られていて、一般観覧者の誰しも
が﹃利用﹄できるんだそうです﹂
﹁利用⋮⋮ですか⋮⋮﹂
公娼は死ぬ。残虐な民衆に殺される。
それはシュトラの知っている事実だったが、そこから更に先がある
事を、今シャスラハールは口にしている。
﹁僕の⋮⋮同期の調教師が笑い話として語っていましたよ、会場に
行って長蛇の列に並んで姉さんの死体にハメてみたけど全然温かく
ねぇからキモチ悪ぃって⋮⋮、そしてその事を会場受付に苦情とし
て出したら、ゾートの部下が﹃修復﹄に来たそうです。何でも、腹
部を裂いて中に発熱用の器具を埋め込み、一日一回口から火種を流
し込めば常にひと肌温度の人形にしあがった⋮⋮、それにハメてみ
ると中々どうして具合が良い、その日以降これまで以上に来場者が
増えて会場運営は潤いまくりだな。っと﹂
殺せるものならば、同期の男を殺してしまいたかった。
しかし、彼には出来ない。
彼にはやるべき事があったから、その為の機会を迎えるまでは、模
範的な調教師を演じるしかなかった。
僕はっ! とシャスラハールは叫んだ。
﹁姉さんが今にも殺されようとしている場面で助ける事も出来ず!
死んでからも魂を犯されている姉さんを救えもせず⋮⋮! そん
な僕がこうやってシュトラさんに甘える事なんて⋮⋮! 僕は⋮⋮
僕はっ!﹂
泣き叫ぶ彼の体を、騎士は強く抱いた。
﹁王子⋮⋮いえ、シャス。良いのよ。泣いて、たくさん泣きなさい。
辛い事が有った数だけ泣いていいの。貴方には今、守ってくれる人
も、支えてくれる人もちゃんといます。頼って、助け合って認め合
って、時には慰め合っても良いの。貴方は今、とっても頑張ってい
190
るのだから﹂
シュトラの柔らかな声にシャスラハールの顔が上がる。
その震える唇に、
﹁泣きたくなったらいつでも言いなさいね、わたしがお姉さんの代
わりに、なってあげます﹂
優しい唇が重なった。
翌朝、ヴェナを苦しめていた装置が動きを止め、一行は出発の準備
を整える。
ステア達騎士連中も動きは軽快に見え、状態が深刻だったハイネア
だけは大事をとってリセが背負っている。
マルウスの先導で彼らの里を目指す、その第一歩を踏み出そうとし
た時、
﹁シャス、気を付けて行きましょうね。道中もだけど、このネズミ
達に対しても﹂
シュトラがシャスラハールにこっそりと近づき、耳打ちしてきた。
﹁あ、う⋮⋮うん。シュ、シュトラさん⋮⋮昨日は⋮⋮えっと、あ
の⋮⋮﹂
﹁うふ。そんなに畏まらないで、もう良いじゃない。わたしはいつ
でも良いわよ、お相手してあげる。だって昨日の一晩で、シャスの
事がとっても愛おしくなってしまったもの﹂
シャスラハールは一晩中、シュトラに甘え続けた。
涙を流し、頬を摺り寄せ、唇を繋ぎ、セックスをした。
彼女はその間常に優しくシャスラハールの頭を撫で、声で元気づけ
てくれた。
それはまるで、姉のような温かさだった。
﹁⋮⋮ちょっと⋮⋮シャス。どう言うこと? いつのまにシュトラ
さんと打ち解けた雰囲気になってんの?﹂
そんなシャスラハールの傍に、セナがやってくる。
191
その目は細められ、詰問と言った様子だ。
﹁いや⋮⋮えっと⋮⋮あの。違うんですよ、セナさん⋮⋮﹂
﹁そういえばアンタ昨晩見なかったけどどこに行ってたのよ? ア
タシ達が夜通しユキリスとハイネアの介抱してたって言うのに﹂
セナの視線を受け動揺するシャスラハール。
その態度にまた一歩踏み込んでくるセナに向けて、
﹁はい、そこまで。喧嘩はダメよ、シャス。ほらほら﹃お友達﹄と
は仲良くしないとね﹂
シュトラが左手をかざし、セナを止める。
右手はしっかりとシャスラハールを捕まえ、その体に引き寄せた。
﹁そうじゃないと、今夜はお預けしちゃうよ?﹂
マルウスが振り返ってその様子を見ている事に、三人は気が付かな
い。
192
幼さ 強がり︵前書き︶
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193
幼さ 強がり
黄金色の稲穂が地面を覆い隠し、転々と建っている木造の風車がの
どかな景色をより一層牧歌的に味付けしていた。
マルウスの里は、戦争や混乱とはかけ離れた平穏な世界だった。
彼らは山の斜面を利用し穴倉を作り、そこに家族単位で生活をして
いるという。
セナ達はその内の一つを借り、当座の生活空間を得た。
﹁降ろすぞ⋮⋮痛くないか?﹂
フレアは背負っていた足を失った公娼︱︱修道女レナイを穴倉に敷
かれた絨毯の上に座らせる。
﹁大丈夫です⋮⋮ありがとう﹂
一行がこの里にたどり着くまでに要した時間はほぼ一日。
マルウスの食事や睡眠で浪費した分もあるが、何より足を切り落と
された痛々しい姿のレナイ達を背負って移動するという事が、全員
の足を遅めた。
﹁ごめんなさい⋮⋮私がこんな事になっていなければ⋮⋮﹂
レナイの顔が曇る。
カマキリ型の魔物︱︱ベリスから救出されたのは彼女を含め三人だ。
これまではフレアや他の騎士達で三人を背負って旅してきたのだが、
これから先魔物の領域に深く踏み込んで行く際に、彼女達の無事を
考えればどうにか手を打つ必要があった。
﹁気に病むな。怪我の事は致し方ない、マルウス達に頼んで義足や
それに代わるものを用意してもらおうと、姉上やヴェナ様が仰って
いた。悲観はするな﹂
フレアはレナイの肩を叩き、立ち上がる。
﹁セナ、しばらくはここに逗留するのだろう?﹂
フレアの言葉の先、赤い髪を両結びにした騎士が振り返る。
194
﹁そうね。レナイさん達の足の事もあるし、アタシ達の装備の事も
ある。何より色々有りすぎてちょっと休憩も必要だしね。シャスは
なんだか様子がおかしいけど、ヴェナさんや騎士長はここでしばら
く態勢を整えるつもりみたいね﹂
セナやフレア、他数人これまで全裸で移動してきた人間には、マル
ウス達から簡易の衣服︱︱とも呼べない布があてがわれ、それを体
に巻いている。
全裸の頃よりは幾らかは気分的に落ち着きも出ている。
﹁セナ、フレア。これからの方針について話し合いをします。こち
らに集まってください﹂
少し離れた場所でマルウスの用意した地図を囲んでいたシャロンか
ら声を掛けられ、二人は移動する。
地図を囲んでいるのは、
シャロン、ステア、ヴェナの三人だった。
﹁あれ、シャスは? どっか行ったの?﹂
セナの言葉に、
﹁セナ⋮⋮あの御方はまだ若いとは言え王族だ。騎士としての礼節
を持った言葉づかいを心がける様に﹂
ヴェナに横目で睨まれながらステアが困った声で言った。
﹁了解でーす﹂
セナは軽く応じて地図を囲む輪に加わっていく。
﹁それじゃあ⋮⋮頼みますね。シュトラさん﹂
穴倉から少し離れた所で密会する男女。
王子シャスラハールとその騎士シュトラだ。
﹁えぇ任せて。しっかり探ってくるわ⋮⋮このネズミの里を﹂
身長に差の無い両者が隣に立って向かい合うと、顔がすぐ近くに来
る。
﹁うふふっ﹂
195
チュッ︱︱と軽い口づけがシャスラハールの唇を襲う。
﹁あっ⋮⋮﹂
予備動作もなく唇を奪われ、赤面する王子に向けて騎士は微笑み、
辺りを見渡す。
﹁良いところです。この里の景色は素晴らしい。けれど、どうして
も納得がいかないの。穴倉に住み着いたネズミさん達が時折見せる、
あの濁った瞳﹂
一行の中でマルウスに対して強い警戒感を共有しているのは、この
二人だけだった。
聖騎士ヴェナは自身に与えられた辱めすらどこ吹く風で、彼らの力
を利用すれば良いだけとの考えを持ち、セナ達はその技術で救われ
た身であるので、彼らを疑おうとはしていない。
二人だけで調べるしかない。
それを昨日確認した。
シャスラハールは接触してくるマルウスから情報を集める。
逆にシュトラは自分から接触して行きマルウス達の様子を探る。
そして二人の集めた情報を元に、彼らが信頼できる存在か否かを判
断しようというのだ。
﹁ヴェナ様達がどう判断するかにもよるけれど、この里に滞在する
のは長くて五日と言うところでしょう。今後の装備や戦略、物資の
補給等も含めてマルウスの技術は欲しい。けどその彼らに疑うべき
点が残っていたら旅の足枷になりかねない。今ここで、しっかりと
見定めておくべきだわ﹂
シュトラはシャスラハールに手を振り、踵を返す。
しらみつぶしに当たって行こう。
ネズミの潜む穴倉を覗き込み、彼らの生態を知る事が、王子の力と
なり、騎士の務めとなるのだ。
﹁遅いぞー、どこ行ってたの? シャス﹂
196
シャスラハールが自分達の宿代わりの穴倉に戻ると、何やら作業中
のセナが声をかけてきた。
﹁いえ、ちょっと外に⋮⋮何をされてるのですか? セナさん﹂
﹁何って、料理よ料理。これまで食事は保存食のマズいのばっかり
だったでしょ? たまにはちゃんと味付けした物も食べたいよねー
ってフレアと話をしてて、マルウスに相談したら材料を分けてもら
えたの﹂
そう言ってセナは大きな鍋をかき回す。
道具も一通り借りられたようだ。
﹁セナこれはどうやって切るんだ? 何型だ?﹂
セナの隣で芋を手に取り刃物を構えたフレアが首をかしげている。
﹁知らないわよ。そんなの煮ちゃえば一緒でしょー? 適当にバラ
バラにして鍋の中に投げ込めば良いのよ﹂
なるほど、と頷き芋を真っ二つに割るフレア。
セナは赤く煙を放つ鍋をかき回しながら額に浮いた汗をぬぐってい
る。
﹁セナさん⋮⋮それ、その鍋大丈夫なんですか? 凄く赤いんです
けど⋮⋮?﹂
シャスラハールが汗を浮かべ、鍋の様子を見ながら言うと、
﹁さぁ? マルウスが用意した調味料を片っ端から放り込んだだけ
だからね。味がおかしかったら水入れたりすれば大丈夫でしょ﹂
あっけらかんと赤髪の騎士は言う。
﹁それじゃ芋入れるぞ。芋は大事だからな、特に戦争期には必須だ。
どんな状態でも味あわねばな﹂
フレアが得意げに胸を張り、切ったというより砕いたと表現するの
が相応しい芋の残骸を鍋に放り込む。
シャスラハールの額から、また一滴汗が流れ落ちた。
その時、
﹁あ、あの料理でしたら私がやりますので。どうかお二人はあちら
で戦略会議の方に参加されてください﹂
197
リセが慌ただしくやって来た。
彼女が指差す先では、ヴェナとステアが今後必要な装備や物資につ
いて話し合っていた。
﹁私はハイネア様の侍女として一通りの料理経験がございますので、
きっとお役にたてると思います﹂
リセの言葉に、
﹁そう? 美味しく作ってよね﹂
﹁それじゃあ頼む、リセ殿。期待している﹂
セナとフレアが調理の手を止め、リセに場所を譲って立ち上がった。
去りゆく二人の背中を見つめながら、リセが呟く。
﹁ハイネア様の具合がよろしくないので、せめて精の付くものを食
べて頂くためにも、味付けは大事ですから⋮⋮﹂
小声で誰に向けたものでも無い言い訳をするリセに、
﹁仕方ありませんよ⋮⋮だってこれは⋮⋮人の食べれるものかどう
か⋮⋮﹂
グツグツと煮立つ赤いナニカを見下ろしながら、シャスラハールは
苦笑した。
﹁お二人は騎士様ですから、調理場に立った経験はあまり無いはず
です。こういう事は適材適所で私にやらせて頂いた方が、有り難い
かもしれません﹂
リセはホッと頷きながら言い、シャスラハールの方を見、固まった。
﹁あっ⋮⋮でも、ああああの申し訳ございませんシャスラハール殿
下、私なんかが差し出がましい真似をして⋮⋮そ、それにお口に合
うかどうかも分らない拙い料理を振舞う事になるかも知れず⋮⋮あ
わわ﹂
今更ながらに、シャスラハールの事を認識し、慌てるリセ。
彼女はこれまでの道中一度もシャスラハールと言葉を交わすことな
く、常にハイネアを通してお互いの存在を認識していた程度だった。
そこにはリセにとって、ハイネア以外の王族に対する緊張と畏敬の
念があったからだ。
198
﹁い、いえいえ。全然、全然大丈夫ですリセ殿。僕の事はお気にな
さらず、舌の方も長年庶民の間に混じっておりましたので、なまじ
高級なものよりも大雑把な味付けの物の方が親しみやすくて⋮⋮あ
の、好きですから﹂
シャスラハールも相手の動揺につられて慌て、手を振って言葉を返
す。
﹁そ、そうですか、ではあまり大した事はございませんが、料理の
方を︱︱﹂
﹁何を言うか、リセの料理の腕は妾の国で至高のもの。強国スピア
カントの王子の舌であったとしても間違いなく満足させるものであ
ろうぞ﹂
謙遜するリセに向けて、近くで横になっていたハイネアが目を開け
て言った。
﹁王子シャスラハールよ。騎士連中が話し合っている間にちと、妾
と話をせぬか? お主が調教師を辞め、妾も公娼で無くなったとす
ると。一つ王族同士での語り合いと言うものを、久方ぶりにやって
みたくなってな﹂
ハイネアが身を起こす。
その凹凸の少ない体にはマルウスにあてがわれた飾り気の無い布が
巻かれ、肩には別れる間際にヘミネより譲られたケープがかけられ
ている。
その言うなればみすぼらしい姿から放たれるのは、まったく印象を
異にする王者の気品。
﹁リセよ。四半刻ばかり王子と語らって来るゆえ、他の者が探しに
きても言うでないぞ。あと妾はちと疲れておる。消化の良くて、で
きればあまり辛くないものを頼む﹂
﹁は、はい! 行ってらっしゃいませ。ハイネア様。料理の方はお
任せください﹂
立ち上がりシャスラハールの袖を引いて外へ歩き出したハイネアを
見送り、鍋に向き直ると、別の人影が近づいてきた。
199
地面に敷かれた絨毯を擦る様にして這ってきたのは、
﹁あの⋮⋮私、このような体になって皆様にご迷惑ばかりかけてし
まっていますので⋮⋮できる事でご恩返しをさせて頂きたいのです
が、料理のお手伝いをさせて頂けないでしょうか﹂
両足の先を失った修道女、レナイだった。
彼女の顔は暗く、肉体的欠損はもちろん、ここまでの旅路で周囲の
手を借り続けた事を自分自身で責めている様子だった。
リセはその悲痛な姿と思いに、涙がこみ上げてくるのを感じた。
﹁︵いけない⋮⋮今憐みやそれに類する感情を見せてしまっては、
その分だけレナイ様を苦しめてしまいます︶﹂
リセは必死に涙を押しとどめ、努力して笑みを作って、
﹁はい。ではこのお芋の下処理をお願いしても良いでしょうか?﹂
まな板と包丁、それに芋が乗った籠をゆっくりとレナイの前になら
べ、
﹁一緒に美味しいものを作って、皆さんに喜んでいただきましょう﹂
笑いあった。
﹁あの⋮⋮ハイネアさん? 何か御用なんでしょうか⋮⋮?﹂
シャスラハールはハイネアに連れられるままに歩き、今は人もネズ
ミの影も無い木陰に入った。
﹁⋮⋮﹂
ハイネアは無言である。
無言でシャスラハールに背を向け、気品に満ちた後姿を晒している。
﹁えっと⋮⋮何も用事が無ければ僕はヴェナ達と今後の予定を⋮⋮﹂
シャスラハールが今出てきた穴倉の方を見やり、視線をハイネアの
背中から逸らした瞬間。
﹁仕方⋮⋮無いであろう﹂
スッと屈みこんだハイネアがシャスラハールの腰を捕まえた。
﹁え⋮⋮?﹂
200
不意を突かれ、硬直するシャスラハール。
腰を捕まえた小さな手が、ゆっくりと下がって行くのを感じる。
彼の腰から下を覆う簡素な衣服の合わせに手が入れられる。
まだ縮まったままの肉棒が取り出され、外気に触れた。
﹁な⋮⋮﹂
ひんやりとした外気に撫でられたかと思うと、次の瞬間には湿った
暗闇に収められた。
﹁ふぐ⋮⋮大人しく、してくれ﹂
腰を引きかけたシャスラハールの体を抱きしめながら、ハイネアが
その幼くあどけない口に、彼の肉棒を咥えこんだのである。
﹁王女、ハイネア王女。一体何を⋮⋮!﹂
﹁あふぁれるらといっへおろう﹂
肉棒を甘く噛みながら、言葉にならない声で言うハイネア。
﹁王族の語らいでは無かったのですか!﹂
﹁そうら、こへがおうろくのかたらひ。わらわにふさわひいだんひ
をムコとせねば﹂
ふにゃふにゃと口を動かす刺激がシャスラハールの性感帯を刺激し、
呻きに似た声が漏れる。
キュポ︱︱と音を立てて彼の肉棒が引き抜かれる。
そこはもう、立派にそそり立っていた。
﹁リネミア神聖国王女としての妾の望みじゃ。抱け。そして娶れ。
この世をゼオムントの支配から救う男よ。その決意、王族としての
使命、何より素晴らしいものである。この妾の夫になるに、ようや
く足る人物が現れたわ﹂
一瞬でケープと布をはぎ取ったハイネアが襲い掛かり、シャスラハ
ールは地面に倒れる。
﹁ハハハッ良いぞ、今までは下郎に組み敷かれるばかりであったが、
こうして自分が逆の立場になって繋がってみるのも良いものだ﹂
ハイネアは他の公娼と比べても幼く、体格も貧弱で、力で言えばシ
ャスラハールの方が圧倒的に上である。
201
彼女は公娼としてのこの三年間を中等教育施設で自由性交生徒と言
う名の性奴隷として過ごしてきた。
その年齢を察するに、まだ一八であるシャスラハールより二つ三つ
年下なのである。
しかし、彼は振り払えなかった。
﹁良いぞ⋮⋮良いぞっ! 気分が⋮⋮良いぞぉ⋮⋮うぅ﹂
少女の瞳から零れる涙が、少年の顔に垂れて来ていたからである。
その姿は、ようやく見つけた希望にすがる、弱弱しい年頃の娘にし
か見えなかった。
﹁妾を⋮⋮助け、導き。栄光を⋮⋮繁栄を⋮⋮何より、平和を⋮⋮
助けて、助けて⋮⋮。もういや、もう⋮⋮もうあんなみじめな思い
は⋮⋮心を汚されるのは⋮⋮もう⋮⋮いや。一緒に、居て⋮⋮わら
⋮⋮私を、見て。守って﹂
泣きじゃくる少女が少年の胸に倒れ込んでくる。
彼はその体を受け止め、落ち着かせるように背中をゆっくりと撫で
た。
202
後方支援組︵前書き︶
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203
後方支援組
ハイネアの嗚咽を耳に、シャスラハールは考える。
今自分の胸で泣き崩れる少女は回復術の技能こそあれ、セナ達のよ
うな騎士でも無く、またユキリスの様な魔導士でも無い。
戦闘においてはまったくの非力。
従者であるリセに守られる形で生き延びてきた。
力を向けられると屈するしかない弱き者。
ゼオムントの威光に屈し、公娼として辱められる際も、騎士や魔導
士であれば己の力を信じ、いずれの反撃を狙う事も出来たはずだが、
この少女は違う。
ただ一人の粗野な男にも勝てない、か弱い少女。
しかしその身に宿したのは、祖先より続く栄光の血。
彼女は決して自分を守ってくれるものでは無いその血にすがり、今
日までを生き抜いてきたのだ。
虚勢。
彼女が張り続けた虚勢が、王族として自分を支えてきた仮面が剥が
れる。
騎士や魔導士は彼女と同格ではない。
ましてや侍女は彼女の付属物だ。
彼女の血がそれらに向けて涙を流す事を拒ませた。
弱音を吐く事を許さなかった。
しかし、少年は違う。
黒肌の、少しだけ少女より年上の少年は、彼女と比類できるだけの
血を宿している。
少女の中で貯め込まれ、体中を駆けまわっていた感情が、ようやく
出口を見出した。
﹁助けを乞いたかった。やめて、許して、優しくして。そう言って
204
泣いてすがりたかった。けど私は私だったから、生まれた瞬間から
リネミア王家の娘だったから。誰かに易々と膝を屈してはいけなか
ったから⋮⋮! 心を殺そうとして、どんなに辛くても必死に耐え
ようとして、どんどん自分の事がわからなくなっていった﹂
ハイネアの泣き声は叫びへと変わる。
﹁リセは優しくしてくれた。けど彼女じゃダメだった。彼女は生ま
れた時から私の侍女で、彼女の命は私の物だったから。私が彼女を
守って、彼女が私を守る。そういう関係だったから。私が泣いたら
リセは例え無理でも何とかしようと闘うはずだったから⋮⋮どれだ
けゼオムントが強大な相手だとしても、怯えながら泣きながら、リ
セは私の為に闘って死ぬだろうから⋮⋮! だから、だから私はリ
セの前では泣けなかった。私が泣いたら、彼女が死んでしまうから﹂
彼女のしゃくりあげる喉が、大きく揺れる。
﹁やっと⋮⋮やっと見つけたの。私が泣いても良い相手を。意地も
虚勢も張らずに泣きついていい相手を。シャスラハール、貴方がゼ
オムントの支配を崩壊させる為に戦っている王族だと聞いた時、私
は許される瞬間が来たんだと思ったの。この身は既に幾度となく汚
れてしまったけれども、この血を捧げ、次代に繋ぐ為の相応しい相
手をようやく見つけられたと思ったの。そして何より私のすべてを
預けて、守ってくれる男性と、ようやく巡り会えたと⋮⋮思ったの﹂
その告白は、王者の傲慢だった。
血に縛られ、自分以外の王家が滅んだ今でさえ、その血の存続のた
めに他者を利用する浅ましい王の生き方。
しかし同時に、無力な女性としての心の底からの願いでもあった。
﹁ハイネアさん⋮⋮いや、ハイネア王女。貴女の思い、確かに聞か
せて頂きました﹂
シャスラハールは自分の上に跨っているハイネアの腰を掴まえる。
﹁婚姻や⋮⋮子孫の事は一先ず置いて、貴女の事を守る。その事で
したら、僕が約束します。僕に従ってくれる騎士達の力も借りる事
になりますが、貴女を汚れから守り、あらゆる困難から護る事を約
205
束します﹂
上半身を持ち上げ、未だに涙が頬を伝う少女の口にキスをする。
﹁⋮⋮うん、うん⋮⋮ありがと﹂
悲しみで汚れ果てた少女の顔に、笑みが浮かんだ。
それは年相応に無邪気なもので、与えられた少年としては、ときめ
かざるを得ないものであった。
具体的に、
﹁あっ⋮⋮もう﹂
ハイネアの剥き出しの尻に、人肌に更に熱を加えた塊がぶつかった。
﹁いや⋮⋮その、あの、ごめんなさい﹂
シャスラハールは予期せず勃ち上がってしまった陰茎をどうにか収
めようとするも、全裸の少女が自分に跨っているという目の前の光
景からして、それは叶うはずも無い努力だった。
﹁いい⋮⋮元よりそういうつもりだったもの⋮⋮このままわた⋮⋮
妾と睦いで、邪気を払ってくれよう﹂
そう言ってハイネアは尻を一度持ち上げ、
﹁これからよろしく頼むぞ、妾の旦那様よ﹂
ゆっくりと結合した。
リセとレナイの作った料理は皆に好評だった。
姿を見せないシュトラを除いた全員で輪になって食事をし、和気あ
いあいとした空気が流れる。
はずだった。
﹁あ、あのハイネア様⋮⋮よろしければこちらに⋮⋮﹂
﹁ていうかアンタなんなのよ? いつの間に王女様と仲良くなって
るわけ? 一昨日だって急にシュトラさんと親密そうにしてさぁ、
ちょっと目を離すとすぐこれなんだから﹂
困り顔のリセとぶっちょう面のセナが見つめる先で、
﹁ほら、どうした口を開けぬか、せっかく高貴なる妾がこうしても
206
てなしてやっておるのだぞ? 飛び上がって喜ぶべきではないか。
いや、飛び上がられるとマズイな。この姿勢が気に入ったのでな、
妾は﹂
料理を木の匙で掬い、シャスラハールの口へと運ぶハイネアが座っ
ているのは、彼の膝の上。
二人は料理完成とほぼ時を同じくして穴倉に戻り、それからずっと
くっ付いたままであった。
﹁いやぁ⋮⋮⋮⋮ハイネア王女? 自分で食べられますので⋮⋮あ
の﹂
セナの視線が厳しくなっていく事へ怯えながら、シャスラハールは
膝を動かす。
この姿勢は色々な意味で厳しかった。
セナの視線もさることながら、食事の取り難さも、そして先ほどま
で繋がっていたハイネアの尻の柔らかさも何もかもが、彼を困らせ
ていた。
﹁くすっ⋮⋮妾だったら構わぬのに。先ほどまでの様に繋がったま
ま⋮⋮食事をするのも、お主とだったら悪く無いものだと思えるな﹂
膝を動かして彼女を降ろそうとするシャスラハールと、尻を動かし
て彼の股間の上へ移動しようとするハイネア。
セナは憤り、リセは困惑する。
その甘く可笑しな空気を破ったのは、突然響き渡った甲高い人間以
外の声だった。
﹃うまそう な におい してる ぼくら にも すこし わけて﹄
ネズミ型の魔物︱︱マウルスが穴倉に入ってきたのだ。
トコトコと小動物よろしく近づいてくる彼らを、皆比較的歓迎しな
がら招き入れた。
しかし、黒肌の王子だけは違う。
﹁お、おいお主、何だと言うのだ⋮⋮?﹂
彼は膝の上の王女を守る様に抱きしめ、半身になってネズミから隠
した。
207
﹁セナさん、リセさん。二人ともマルウス達の事、注意して観察し
てください﹂
傍にいた二人にも、注意を促す。
﹁はぁ? アンタまたそれぇ? どう見たって平和的な人の良さそ
うな魔物じゃん。マルウスって。警戒しすぎよ。そんなどこ行って
も肩ひじ張ってたら体壊すわよ﹂
﹁え⋮⋮えと、どういう事でしょう? シャスラハール王子。マル
ウスさん達は私達の命の恩人で、こうやって衣食住の支援もして頂
いておりますし⋮⋮﹂
騎士と侍女は、その言葉に簡単には頷かなかった。
﹁⋮⋮事情や感情は抜きに。僕達は今魔物の領域に居るんです⋮⋮。
どんな些細な事でも警戒して損は無いはず。不審な点が無ければそ
れで良し、という事です﹂
王子の表情がやたら真剣であった事から、二人は黙って頷いた。
﹃そういえば はなし あった ごはん おいしくて わすれそう
だった﹄
マルウス達の内、一体が料理の入った椀を置き、油で汚れた口を開
く。
﹃これ を わたそうと おもって きたんだ これ﹄
彼が取り出したのは、獣の皮で作られた大きな袋だった。
マルウス達の様な人間の膝丈の生物ならすっぽりと包まれそうな、
頑丈な袋。
﹁これは何です?﹂
マルウスから袋を受け取ったシャロンが、首をかしげる。
﹁ただの袋に見えるな、中には何も入っていない﹂
袋の底をパスパスと叩きながら、フレアが言う。
﹃この ふくろ は にまい ひとくみ いっこに ものを いれ
ると もういっこ の くち から でてくる どんなに とおく
ても とどく まるうす とくせい まほう の じざいぶくろ﹄
その言葉通り、マルウス達はもう一つ袋を取りだした。
208
﹁⋮⋮本当なら、かなり高度な魔法だわ﹂
椀を置きながら、魔導士ユキリスが唸った。
﹁凄いな⋮⋮試してみても良いか?﹂
興奮顔のフレアが、シャロンの持っている袋に食事を平らげた椀を
放り込む。
ポンッ︱︱と軽い音を立てたかと思うと、椀は少し離れた所でもう
一枚を持っていたマルウスの手に飛び出してきた。
﹁本当に⋮⋮移動しましたね⋮⋮﹂
シャロンは驚きのままに声をだし、フレアとユキリスも呆然と頷い
た。
﹃かたほう を わたす たびに もっていく と いい のこっ
た ほう から ときどき しょくりょう とか ひつようなもの
おくって あげる﹄
マルウスのその言葉に、シャロン達は声を上げて喜んだ。
﹁そこまでして貰えるとは⋮⋮有り難い限りです。しかし、我々に
は支払える代償が無いのですが⋮⋮?﹂
﹃それは だいじょうぶ まるうす の しゅうせい みたいな もの でも ひとつ だけ たのみ ある なんにん か ここに
のこって ほしい にんげん に ひつような もの や たべ
もの まるうす よく わからない﹄
確かにそうですね、とシャロンは頷き、一行の中で最高決定者のよ
うな位置にいるヴェナとステアの事を見やる。
二人はその視線を受け止めながら、思案する。
やがて、ステアが口を開いた。
﹁⋮⋮負傷者している三名を今後の旅でどうするか、という懸案も
有ったな。この場合三人に療養をかねてこのマルウスの里で資材調
達役になってもらうのも良いかもしれない﹂
騎士長の言葉に、シャロンやユキリスが頷き、ヴェナも異論はなさ
そうだった。
﹁レナイさん達はどうですか?﹂
209
シャロンが問うた先は、足を失った公娼で、今日の料理を作った人
物。
修道女レナイだ。
﹁はい。このまま旅にお供して、自分が荷物になってしまう事は本
意ではありませんので。陰ながらという形ですが皆さまの支援をさ
せて頂けるのでしたら、そのお役目受けさせて頂きたいです﹂
レナイの言葉に、他二人の負傷者も頷いた。
満場一致で、マルウスの提案が呑まれ様としている。
そこに、手があがった。
﹁僕は⋮⋮反対です﹂
黒肌の王子がおもむろに口を開き、強い視線で辺りを見渡した。
﹁王子⋮⋮理由を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?﹂
ヴェナがその紅唇を開き、彼女の主に問う。
﹁ここは魔物の領域で、少なくとも人間にとって安全な場所じゃな
い。マルウスが匿ってくれると言っても、いざという時に動く事が
出来ない彼女達だけをここに置いていく事は、僕には出来ない﹂
シャスラハールのその言葉に、全員が考え込む。
﹁それでは彼女達以外にも数人、ここに残るというのはどうでしょ
うか?﹂
ヴェナがようやくと言った形で口を開いた。
マルウスのヒゲがピクリッ︱︱と跳ねた。
﹁いざという時に彼女達三人を抱えて走る者が三人、そして先頭に
立って道を開く者が一人、最後尾で敵を引き付ける者が一人。五人
ですわね。この部隊の半数を失うと考えれば大きいですが、彼女達
の安全を考えるのならば、必要な数でしょう﹂
本来であればシャスラハールの護衛役である彼女にとって、戦闘員
の数はできるだけ確保しておきたいところであったが、王子の言う
負傷者の安全性という意味合いと、騎士として無力な者を見捨てる
事は出来ないという使命感が、この決断へと導いた。
﹁五人⋮⋮か、そうなると誰を選ぶか⋮⋮だな﹂
210
ステアが顎に手を当て、考え込む。
﹁シャスラハール殿下の組で、ヴェナ様を除いた方々では如何でし
ょう? 丁度五人になりますし、それ以外の分け方では元の仲間関
係上よろしくないかと﹂
シャロンの落ち着いた声が告げる元の仲間関係とは、元ユーゴ組で
考えるとステア達六人。フレアを含めたリーベルラント騎士国家組
に分けると四人。ハイネアとリセが一揃いで、シャスラハールとヴ
ェナも一揃いだ。
シュトラ達シャスラハール組の公娼は出自をすべて別にして集まっ
ているので、五人で一揃いとなる。
﹁なるほど、それが自然な分け方かもしれませんね﹂
ヴェナが金髪の騎士の言葉に頷き、シャスラハールの方を見やる。
﹁王子、それでよろしいでしょうか?﹂
聖騎士のその言葉に、
黒肌の王子は首を振った。
﹁しばらく、考える時間を下さい。出発までには答えを出します﹂
全ては、シュトラがマルウスの事を調べ上げてから、
そう彼は心に決めた。
マルウスのヒゲは今も細かく動き続けている。
﹁ごめん下さい⋮⋮⋮⋮誰も居ないのかな⋮⋮今は食事時では無い
のかな?﹂
シュトラは歩き続けていた。
点在する穴倉を訪ねては中にいるマルウスと会話をし、当たり障り
のない話題から彼らの本質を探ろうとした。
いくつかの穴倉で話を聞いた結果では、彼らに不審な点は見つから
ず、肩透かしを食らったような気分だった。
そろそろ自分達の穴倉に戻ろうかと思い、最後の一軒と決めた穴倉
の入り口から声をかけたが、家人が出てくる様子は無い。
211
﹁まぁ良いや、戻ろう。お腹空いたし﹂
シュトラが穴倉の入り口から歩き去る。
その姿が完全に消えた瞬間。
ヒュッ︱︱と穴から飛び出す、ネズミの顔。
﹃いった もう いった あぶない あぶない﹄
﹃ほんと あぶない みつかったら けいかく まるつぶれ﹄
中に戻って行くマルウスの小さな影。
彼はその小さな手に器具を掴む。
イボが山ほど取り付けられた、棒状の器具。
それは否が応にも、男根を想像させるものだった。
彼はそれを、ためらいも無く突き入れる。
スブッ︱︱
木製の台に括りつけられた剥き出しの尻に器具は飲み込まれた。
﹁んっー! んんっ!﹂
猿轡をされた女が、目玉をひん剥き、くぐもった叫び声をあげる。
しかしそれは、彼女にとって希望の光となったシュトラの耳には届
かない。
﹃このまえ つかまえた おんな これで さいご そろそろ あ
きたし あたらしいの ほしい﹄
﹃いまの おんな いい しり してた おれ あいつ ぜったい
に おかす﹄
暗い暗い穴の底でこそ、露わになる。
ネズミの本性。
212
壊れた青︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
213
壊れた青
﹁なるほど、私にこの地での残留案がでているのですか﹂
日光がぼんやりと登ってきた早朝に、シャスラハールとシュトラは
穴倉を抜け出した。
﹁はい、シュトラさんとヴェナ以外の僕の組の皆さん計五人にこの
地に残留してもらい、負傷者の安全の確保と、マルウスからの支援
物資の調達と管理を担ってもらおうという話になっています﹂
昨日の会議の内容を口頭で伝える。
﹁五人と言うヴェナ様のご意見も理解できますし、シャロンさんの
人員分けも出自を考えれば当然の事だとは思いますが、私個人とし
てはシャスに同行したいところですね﹂
軽く肩をすくめてシュトラは言う。
彼女の青髪が揺れる。
﹁しかし、﹃まだ﹄ですね﹂
﹁はい。﹃まだ﹄です。マルウスという種族について、僕はまだ万
全の信頼を感じていません。負傷者の身柄も、僕達への支援も⋮⋮
そしてシュトラさんを置いていく事にも、彼らに不穏な気配がある
うちは、決めたくありません﹂
黒肌の王子は拳を握る。
もし彼の危惧する通り、マルウスが危険な存在であった場合、支援
を受ける自分達の事もさることながら、ここに残されるシュトラや
負傷者達の安全こそが一番の懸案となる。
﹁ふふっ⋮⋮シャスは可愛い事を言ってくれますね。そんなに私の
事が心配ですか? これでもそこそこ名の知れた騎士だったのです
よ、私は。例えマルウスがだまし討ちをしてきたとしても、あの程
度の小物であれば即座に返り討ちにしてみせますわ﹂
シュトラはシャスラハールの体にしな垂れかかる。
214
﹁シュ、シュトラさん⋮⋮?﹂
﹁シャス。折角快適な寝床を得たというのに、昨日は貴方と夜を共
にする事が叶わなくて、私少しだけ寂しかったりしたのですよ? おまけにセナさんに妙に絡まれるは、ハイネア王女から権利関係云
々を問われるは、ちょっと憂鬱だったりしたのです﹂
西域に来て以来初の屋根と寝具のある夜だったので、全員が喜んだ
ものだが、ここぞとばかりにシャスラハールと同衾を狙ったシュト
ラ、セナ、ハイネアの望みを打ち砕いたのは、聖騎士ヴェナであっ
た。
昨夜のシャスラハールは警護と称したヴェナに同じ寝具へと連れ込
まれ、朝まで抱かれて眠ったのだ。
シュトラ達は何とか彼を取り返そうとするが、ヴェナの豊満な胸に
抱かれ、何より彼女の強さと優しさに包まれたシャスラハールが一
瞬の内に眠りに落ちてしまったので、彼女達の言葉も弱弱しく尻す
ぼみになったのだ。
﹁いやぁ⋮⋮あの、そのあれは⋮⋮ヴェナは護衛役で⋮⋮これまで
の野宿でもああやって寝るのが普通だったので⋮⋮﹂
その様子はシュトラも知っている。
まだ彼の腕に魔術刻印が有り、王宮の監視を受けている間、不審が
らせぬように彼はヴェナの膣に肉棒を突き入れたまま夜を明かすの
を常としていた。
﹁でももうその必要も無いのでは⋮⋮? なんなら今晩からは警備
は私がして差し上げます。もちろん、眠る前に四半刻ほど運動をす
ると程よい疲労で心地よく眠れますので、それには付き合っていた
だきますけれどもね﹂
そう言って、シュトラはシャスラハールの首を抱く。
﹁今晩、楽しみにしていてくださいね﹂
チュッ︱︱と軽い口づけがシャスラハールを襲う。
﹁⋮⋮⋮⋮はい﹂
少年王子は顔を赤らめ、下を向いて頷いた。
215
シュトラの拘束が解かれる。
あっ⋮⋮と少年の口から声が漏れるのを、騎士は満足げに聞いた。
自分との密着が解かれることを彼は残念に思って︱︱
﹁あーっ! ちょっと、朝から二人で何やってんのよー! フラフ
ラ出て行くんじゃないわよ!﹂
穴倉から髪を両結びにした騎士が飛び出してきてこちらを睨んでい
るのが見え、彼のぎこちない笑みに肩を落としてから、シュトラは
歩み去る。
﹁︵後三日ですか⋮⋮その間に結論を出さないと︶﹂
昨晩一先ず決定した事が、この地に滞在する期間であった。
四日後の朝に出立。
つまりシュトラは後三日の間に、マルウスの尻尾を掴まねばいけな
かった。
﹁おっおおおお。皆さんお綺麗です!﹂
シャスラハールが上ずった声を出す。
マルウスの里に到着して三日目、翌朝に出立を控えるこの日の夕に
念願の物が手に入った。
﹁そ、そう? ふふん。昔に比べるとちょっと遊び気味の衣装かも
知れないけど、まぁこれまでよりは圧倒的にマシね﹂
セナ達の衣装が完成したのである。
騎士には騎士の軽装鎧とその下に着るシャツとスカート。
魔導士には魔導士のロープと鍔広帽。
そして王族ハイネアには動きやすいドレス、従者リセには膝丈スカ
ートの侍女服。
マルウスが整えた人間の衣装。
彼女達の中には公娼になって三年目にしてようやく服を着る事が出
来た者も居る。
感動はひとしおだった。
216
互いの衣服を整え合い、互いを褒め合う。
衣服を着るという事は、公娼にされた彼女達にとって大きな意味合
いを持つ。
人間性の復活。
セナの瞳に薄らと涙が浮かぶのも、致し方ない事であった。
一しきり全員の輪に加わって喜びの声を上げるシャスラハールの背
を叩く者が居た。
﹁あっ⋮⋮シュトラさん。シュトラさんのそのお姿も、すごく綺麗
です!﹂
黒肌の王子は混じりけのない賞賛の声を上げる。
青髪の騎士はそれに笑って頷き、すぐに表情を引き締める。
﹁ありがと。⋮⋮それはそれとしてね、今夜が最後なのです。ネズ
ミの尻尾を掴まえるのは。私考えたのですけど、もしかしたらマル
ウスって夜行性の生き物なんじゃないかしらって。彼らを観察して
いると、昼間にも動いてはいるけど、たくさんお昼寝してるじゃな
い? だったらその分夜に動き回っていて⋮⋮だから私のこれまで
の調査で何も出てこないんじゃないかしら﹂
シュトラの調査はありていに言って、無駄足だった。
穏やかに暮らすマルウスの農作業や穴倉での団らんを眺めるばかり
で、彼らの黒い部分を捉える事は出来なかったのだ。
そもそも彼らの日中の生活は食うか寝るかを基本としている。
その間に農作業を行っている様子はあるが、彼らの動きは緩慢で瞳
は常に眠そうであった。
﹁なるほど⋮⋮夜行性ですか。それだと確かに僕らには気づけませ
んね﹂
シャスラハールもシュトラも夜はこの穴倉にこもっている。
これからの旅の計画を立てたり、支援体制の確立をしたりと、夜は
夜で忙しかったのだ。
﹁だからね⋮⋮私、今夜は外に出て探ってみようと思うの﹂
騎士服姿のシュトラは決然と言った。
217
﹁もし今夜までに何も無ければ、明日私は君達を送り出すわ。その
後は後方支援として物資を送ったり情報を送ったりして、シャス、
貴方の野望を支援します。そして、この地に残る皆の無事を守る。
これは騎士として、貴方の騎士として私が誓います﹂
その強い瞳に、シャスラハール頷いた。
﹁⋮⋮はい。シュトラさん、僕は貴女を信じます。貴女の調べた結
果に従い、ここで別れる事も受け入れます。僕の目と耳として、貴
女に決断を全てお任せします﹂
ありがと、とまたシュトラは呟くように言った。
﹁それじゃあ明日の朝、皆が出発する前までには戻るから。良い?
今日は夜更かしせずにちゃんと寝るのですよ? セナさんやハイ
ネア王女と一緒寝ちゃだめですからね﹂
騎士は手を上げ、輪の中から抜け出していく。
王子はその背中を、そっと見送った。
夜の静寂が辺りを包む。
騎士服を着たシュトラが陰に潜むようにしてマルウスの里を移動し、
その目にこの里の全てを収めようとしている。
穴倉を覗き、畑に分け入り、マルウスの影を追った。
その中でわかった事が有る。
﹁︵間違いなく⋮⋮マルウスは夜行性ですね︶﹂
彼らの動作が昼間のものとは段違いで素早い事、瞳がギラギラと輝
いている事。
身を隠して移動するシュトラにとっては非常にやり辛い限りであっ
たが、仮説の証明がなされた。
作物の関係上、日光のある昼間に畑の管理を行わなければならず、
力なく働いていた彼らが、夜になると生態が変わったかのように働
き出す。
具体的には、工作をしている。
218
生活必需品の製作であったり、農具の修復であったり、一部では武
器の製造もおこなっていた。
陽の沈んだ頃から動き出した彼らの工作は、深夜を迎えたあたりで
ピッタリと止んだ。
皆手を休め、連れだって一つの穴倉を目指していく。
里の外れに有る、一際大きな穴倉。
入り口には松明が燃やされ、シュトラには解読できない彼らの文字
で書かれた看板が掲げられている。
続々と穴倉の中へ入って行くマルウス達。
﹁︵中で何かやっていると言うの⋮⋮? 見張りは⋮⋮居ないわね︶
﹂
マルウス達の影が粗方その中に入りきった後、シュトラはゆっくり
と忍び寄り、松明に照らされた穴倉の入り口に立つ。
﹁︵奥まで相当広そうですね⋮⋮︶﹂
シャスラハール達に用意された穴倉は、入り口から直通でだだっ広
い居住空間につながり、そこが食堂も寝室も兼ねるような作りであ
ったが、ここは違う。
入り口と同じ幅の通路が真っ直ぐに続き、その左右に等間隔で幾つ
も扉が設置され、中の空間を分けているようだった。
シュトラは喉を鳴らし、一歩を踏み入れる。
穴倉の奥の闇に踏み込んで行く度に、松明の明かりが段々と届かな
くなってくる。
暗闇に恐怖するほど、騎士の心は弱くは無い。
しかし、間違いなくこの暗闇は騎士にとって鬼門となるだろう。
相手はネズミなのだ。
自分の数倍暗闇で視野が効くだろう。
別に調査が発覚する事を恐れているのではない。
いざとなれば開き直って探検だとでも言ってしまえばいい。
本当に警戒すべきなのは、彼らがシャスラハールの言うように危険
な存在であった時だ。
219
騎士服ついでに愛剣も提げては来ているが、この暗闇で上手く立ち
回れるとは思えない。
シュトラは慎重に、音を立てずに一歩ずつ前進して行く。
一つの扉に行き当たった。
これまで自分の呼吸音しか認識していなかったシュトラの耳に、別
の物が届く。
プシャァッ︱︱
水滴が、飛び出す音。
﹁︵水⋮⋮? いや、これは⋮⋮まさか⋮⋮!︶﹂
シュトラには聞き覚えがあった。
騎士としての彼女にではない。
公娼としての彼女にだ。
かすかな明かりを頼りに扉をゆっくりと開ける。
そこに見えたものに、シュトラは自分の感覚が間違いではなかった
のだと確信した。
ブチュッゥ︱︱
何かが飛び出す音が聞こえる。
公娼として、シュトラが何度も調教師や農夫によって強いられてき
た行為。
異臭が、シュトラの鼻を貫く。
たった数滴で効果を現す場合もあれば、より残虐性を増すためにバ
ケツ一杯流し込む場合もある行為。
﹁あ⋮⋮あああ﹂
排泄の強要。
今、シュトラの目の前で行われているのは、それであった。
石畳の上で四つん這いになり、涎を垂らしながら呻く女の尻から、
一体のマルウスが器具を抜き出していた。
透明な円筒状の注入器具には緑に濁った薬液が少量残り、薬液の大
半は女の長い糞便と共に石畳にまき散らされていた。
マルウスと目が合う。
220
しばし、両者の視線が交差する。
﹃ちがう かんちがい よくない まって まって﹄
沈黙を破ってマルウスは首を振り、今しがた女の肛門から飛び出し
てきた糞便を掬う。
﹃これ ゆめ よるだから にんげん ねぼけて ゆめ みた だ
け わすれて かえって﹄
誤魔化すように笑ったネズミは、糞便を持つ手を女の肛門に寄せ。
﹃えい﹄
﹁おごぉぉぉ﹂
一体どれだけ貯め込んでいたのかわからない糞便を、強制的に直腸
に送り返された女は、くぐもった叫びをあげる。
﹃ほら なにも ないでしょ?﹄
シュトラは愛剣を引き抜き、一足の下跳び、マルウスの首を刎ね飛
ばした。
﹁大丈夫ですか? 怪我はありませんか?﹂
シュトラは無残に飛び散ったマルウスの肉塊には目もくれず、倒れ
た女に飛びつく。
恐らく彼女も自分と同じ公娼なのだろうが、どうしてこんなところ
で⋮⋮。という思いが沸き立つ。
﹁あ⋮⋮あう⋮⋮あああ﹂
女を抱き起して、顔を見る。
シュトラは絶句した。
表情がわからない。
目は黒皮のベルトで隠され、鼻と口には特殊な器具が装着され、呼
吸以外の用途で使う事が出来なくなっている。
真ん丸に、広げられているのだ。
﹁くっ⋮⋮やはり⋮⋮シャスが正しかったという事ですか! マル
ウス、あの外道﹂
221
シュトラがこの部屋を見渡すと、石造りの簡素な部屋を彩る、拷問・
調教器具の数々が目に留まった。
膣口をこじ開けるもの、擦り上げるもの、貫くもの、挟むもの、締
めるもの、熱するもの、腫らすもの、塗るもの、注ぐもの。
乳房に関するものも、口腔にかんするもの、肛門に関するものも。
彼女が公娼として受けてきた調教の中で何度も見てきた器具が、そ
こには並べられていた。
﹃こまる こまる まるうす こまる あしたまで ばれたく な
かった﹄
﹃かえして その おもちゃ まるうす の もの きょうも あ
そぶ ために おしり なか あらってた だけ なのに﹄
数瞬、シュトラが器具に意識を奪われていた間に、十数体のマルウ
スが部屋の入り口に集まっていた。
その内の一体が松明を手に持っていたため、シュトラからは相手の
姿がよく見て取れた。
醜悪な笑み、偽善の笑い。
シュトラは激昂する。
﹁どきなさいケダモノが! このような汚れた里、これより一瞬も
居られるものですか! 今すぐ出立します、この者も、シャス達も
負傷者も全て連れて!﹂
再び剣を握り、立ち上がって威嚇する騎士。
﹃おちついて おちついて まるうす けんか よわい よわむし﹄
マルウス達は動揺し、ざわめく。
剣を振り回し、数体を切ればあの小動物達は恐れをなして逃げ散る
だろう。
そうした後、表情の見えない女を連れてここから脱出し、シャスラ
ハール達の所へ戻って急いで出発しよう。
シュトラが方針を固めた時、マルウスの方でも動きが有った。
﹃よていがい だけど しょうがない ひとばんで こいつ おと
222
す がんばろう みんな がんばって こいつ れいぷ ちょうき
ょう にくどれい﹄
一体がピシッとシュトラを指差すのと同時に、二体のマルウスが口
に吹き矢を構えた。
﹃しびれ びりびり まんこ ぬれぬれ﹄
恐らく吹き矢に込められた毒矢の内容を言っているのであろうが、
シュトラは意に介さない。
﹁ふんっ、やれるものならやってみなさい﹂
騎士のその強気な態度に、指揮役の一体が応じる。
﹃うてー﹄
二本の毒矢がシュトラに迫る。
しかし、矢は二本とも彼女の振るう剣に弾かれた。
﹁所詮、小動物の肺活量などその程度でしょう。吹き矢では無く弩
を用意するべきでしたね﹂
シュトラが一歩近づく。
マルウス達は動揺に慄く。
その中で、指揮役の一体だけは違った。
﹃たいまつ けして うてー﹄
シュトラの視界を支える松明の炎を消えて、それと同時に二本の矢
が放たれる。
視覚失った中でも冷静に、シュトラは地面を蹴り大きく横に跳んで
矢を避けた。
﹁遅すぎです。見えなくても予測ができる以上、何の脅威でも無い﹂
壁に矢が跳ね返る音がする。
マルウス達は足の震えが抑えられない。
﹃いけ やれ、 ちかづけちゃ だめ あいつ みえてない まだ
だいじょうぶ﹄
指揮役の焦り声に応じて、怯えながら三体が寄ってくる。
手に持っているのは、彼ら用に改造された小ぶりの槍だ。
無論、光を失っているシュトラにはそれは見えない。
223
しかし、
﹁気配の殺し方も知らず、バタバタと寄って来るだけの相手に騎士
である私が敗れるとでも?﹂
暗闇に、赤が跳ねる。
マルウス達の首が刎ね飛び、その血が部屋を塗らした。
血と肉の塊となった同胞の姿を見て、ネズミ達は一斉にすくみ上っ
た。
﹁どきなさい、無用な手出しをするのなら全員をここで始末します。
邪魔をしないならば︱︱﹂
剣を一つ振り、血を払って歩みだしたシュトラの口が、固まる。
﹁なっ!﹂
彼女の手を捻り上げ、首を抑え込む強靭な力。
振り返って、絶望に似た表情でシュトラは言う。
﹁どうして⋮⋮﹂
相変わらず表情は読めない。
目にはベルト、鼻と口には拘束具。
﹃まるうす の ちょうきょう ぎじゅつ は まもの で いち
ばん もう そいつ にんげん やめてる の﹄
助けたはずの公娼に拘束されたシュトラの首と胸に、二本の毒矢が
刺さった。
﹁馬鹿な⋮⋮こんな⋮⋮シャス⋮⋮⋮⋮シャス⋮⋮﹂
強い意志とは裏腹に、騎士の体は毒に溺れて沈む。
﹃どうする? どうしよ? こいつ どうする?﹄
﹃あわてないで このへや おもちゃ いっぱい ぜんぶ つかっ
て こいつ かいはつ する﹄
﹃みてみて おくすり たくさん もってきた これで こいつ あたま ばか ばかに なる﹄
木製の机に、装備をはぎ取られ四肢を拘束されたシュトラが張り付
224
けられている。
毒矢の影響で口が回らず、涎ばかりがあふれ出る。
﹁あ⋮⋮うぁ⋮⋮ああう⋮⋮﹂
同胞を数人殺した騎士を囲むマルウスの顔に、怒りは無い。
純粋な喜びと楽しみだけが、そこには浮かんでいた。
﹃ぼく きいた こいつ あしたの あさ おうじさま に ぼく
たち の こと ほうこく するって はなし してた こっそり
きいた﹄
一体が手を上げる。
﹃それじゃあ かんぜんに こわしちゃ だめだね あした だけ
でも しゃべれる ぐあい に しないと﹄
﹃そうだね これから さき ずっと しぬまで ここ で ぼく
らの おもちゃ なんだし きょう は がまん して あじみ だけ﹄
マルウス達は脚立に乗り、シュトラの頭に器具を乗せる。
透明な、頭部をすっぽりと覆う箱であった。
﹃ちゅうにゅう ちゅうにゅう﹄
管を通して箱の中に注ぎ込まれる青色の薬液。
﹁もがっ⋮⋮ごがががが﹂
たちまち口元を液体で塞がれたシュトラが声にならない声を上げる。
﹃あんしん して それ あんぜん な えきたい からだ すご
く びんかん に なる えきたい いちおう こきゅう できる
よ?﹄
液体の注入とは別の管を鼻に繋いで空気を送り、シュトラは生かさ
れる。
﹃それじゃあ はじまり はじまり﹄
騒ぎを聞きつけて先ほどよりも何倍もの数のマルウスがこの部屋に
集まってきている。
手にはそれぞれ器具を。
この部屋に有った器具を手に取り、薬を用意している者までいる。
225
﹃みんな あさまで がんばろー﹄
﹃おー﹄﹃おー﹄﹃おー﹄﹃おー﹄﹃おー﹄
翌朝、シャスラハール達は出立の時を迎える。
里の広場に集合し、荷物の点検をしている。
シャスラハールに同行するのはヴェナ、ステア、シャロン、セナ、
ユキリス、ハイネア、リセ、フレアだ。
負傷した三人と、シャスラハール組の五人がこの場で見送りをして
残ることになっているが、その中心を任せるべきシュトラがまだ姿
を現さない。
﹁おっそいわねーシュトラさん。確かアタシが起きた時にはもう居
なかったと思うけど、どこ行ってるのかしら?﹂
セナが装備の点検をしながら、呟いている。
シャスラハールは知っている。
シュトラは最後の一日、マルウス達を探るために夜を徹して調査に
向かったという事を。
彼女の調査結果次第では、このまま負傷者達も連れて旅に出る事に
なると。
陽は燦々と照っている。
そこにゆっくりと歩いてくる人影。
青髪の騎士、シュトラだ。
﹁シュトラさん!﹂
シャスラハールの声に彼女が顔を上げた。
瞳に力が無いのは徹夜の影響だろうか。
﹁王子に⋮⋮申し上げます⋮⋮﹂
シュトラの足元には、二体のマルウスが寄り添っている。
そのヒゲが、ピクリッと跳ねた。
﹁ここはお任せ下さい⋮⋮どうぞ、旅のご無事を⋮⋮お祈りしてお
ります﹂
226
腰を折り、頭を下げるシュトラ。
下げられた側であるシャスラハールは気づけない。
彼女の着ている騎士服のスカートの下は、下着を着けておらず、代
わりに激しく蠢くマルウス特製の駆動器具が挿入されているという
事に。
シャスラハール達が旅立っていく。
遠くなっていく九つの背中を見送りながら、シュトラの両目からは
大粒の涙が零れだす。
その尻を、無造作に掴むネズミの手。
否、掴んだのは尻では無い。
今もシュトラの膣を犯し続ける器具を掴み、より一層深く突き入れ
た。
﹃どれい どれい まるうす の おもちゃ まんこ しぬまで どれい﹄
227
建国の王子︵前書き︶
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228
建国の王子
魔物の領域︱︱西域。
人類不踏の地であったこの場所に、現在数万もの人間が侵入してい
る。
大半は新天地を目指す開拓民だ。
そしてそれを守る騎士兵士。
魔導長官の﹃西域遠征﹄を管理する魔導士達。
﹃西域遠征﹄の主役である悲劇の公娼達。
その公娼を長年に渡り開発してきた調教師達。
そして、この地で最も少ない肩書と呼べるもの。
﹃王子﹄
シャスラハールとリトリロイ。
復讐の王子、シャスラハールは現在仲間のうち数人と別れ、西域の
最奥、魔物の統帥権を与える﹃宝具﹄を手に入れる為新たな旅へと
出発した。
マルウスの里に残された公娼の運命も、旅の目的である﹃宝具﹄の
真実も知らぬまま。
建国の王子、リトリロイは五万もの開拓民を率い、大門を発ち、深
い森の中を数日歩きつめて平野部に到着し、拠点づくりを行ってい
る。
彼の計画する建国において最初の関門である、ゼオムントとの緩衝
地づくりをこれから行おうとしていた。
ここからは少し、リトリロイのお話。
前進するシャスラハールも、里に残された悲運の公娼も関与しない
第二の王子とその建国の話。
彼が直面する、建国の敵との戦いの話。
敵は︱︱公娼。
229
人狼の肩に乗りゼオムントへの復讐を誓う三人の公娼。
味方は︱︱調教師。
国一番の老練な調教師と彼の部下達の陰惨な技法。
戦いとはつまり、勝ち負けではない。
堕ちるか、堕ちないか。
公娼とは、そういうもの。
ただ一人、違うとするならば。
今夜もリトリロイと肌を合わせる騎士公娼セリス。
彼女の存在だけが、他の公娼とは意味合いが違っていた。
この二人の間に、調教や飼育と言った概念は存在しない。
リトリロイはセリスを愛し。
セリスもまたリトリロイを愛したからだ。
故に、朝の目覚めの瞬間に、彼が手を伸ばせば彼女の柔肌に触れる
事は当然の話であった。
しかしこの日、金髪の王子の手先は空を切った。
彼はその瞬間、眠気の残滓が一気に消え去るのを感じた。
﹁侍従!﹂
彼の寝床である豪奢な天幕、その外に控えさせている老いた侍従を
呼びつける。
﹁はっ、ここに﹂
﹁セリスはどうした? なぜここに居ない?﹂
王子は裸の上半身を起こしながら、眇めた目で侍従を見やる。
長年彼に仕えてきた老侍従は、その瞳に怯えはしない。
﹁申し上げます。半刻程前に開拓団野営地に魔物の襲撃との報告が
有り、恐れ多くもお休み中の殿下にお取次ぎを願いましたところ、
既にお目覚めであられたセリス様が応対され、殿下の睡眠を妨げる
必要はないとの事で、セリス様ご本人が剣を取り、魔物の討伐に向
かわれました﹂
230
言い終え、王子の顔をしっかりと見据える侍従。
﹁⋮⋮セリスが、そう言ったのか⋮⋮﹂
はい、と応じる侍従の声に、リトリロイは薄く笑う。
﹁まったく⋮⋮少しは考えてほしいものだ。自分の立場と言うもの
を⋮⋮。将来の王妃たる者が、誰よりも率先して魔物退治などに向
かっては、将兵が泣こうというものだ﹂
顔を押さえて笑うリトリロイ。
﹁すまんな、朝から怒鳴るような真似をしてしまって﹂
いえ、と侍従は首を振る。
﹁もう昼でございます、殿下。流石に下の者に示しがつきませぬの
で、すみやかに御仕度なさって下さいますよう、お願い申し上げま
す﹂
真面目くさった侍従の顔に、リトリロイはまた一つ、笑って頷いた。
半刻程時は遡る。
西域開拓団の野営地にて朝から働く男達の姿が有った。
もうボロは着ていない。
リトリロイが民衆に用意した簡素だが清潔な服を纏い、気分も一新
したところで勤労に努めようとしている。
男達は数人の班に分れ、土木作業の準備をしている。
その中に、一組の親子がいた。
四十になりかけの父親と、十代を迎えたばかりの息子だ。
﹁なぁテビィ。これからお父は力一杯目一杯働く。働いて働いて、
金にも家にも飯にも困らない人間らしい暮らしをするんだ。テビィ、
お前ももう十一になったんだ、お父と一緒に頑張ろうな﹂
父親が両手に提げた金物のバケツを振りながら、息子に笑いかける。
﹁おう、任せてくれよお父! オラも一人前の男になったんだって
事を、お父に証明してやるよ﹂
親子は和気あいあいと作業をする。
231
二人に割り当てられた作業は水汲みだ。
父親が二つのバケツを持ち、息子が柄杓を持ってそれに付いて行く。
照りつける太陽の下働く他の開拓民へ飲み水を届けるためだ。
単純に見える分だけ、容易ではない仕事だ。
現在開拓団は緩衝地として砦を作っている。
作業規模もなかなか広く、一回りするだけでも骨だ。
その中を水で満たされたバケツを持って歩き回る。
もちろん水が無くなれば近くの水源へ汲みに戻り、また歩き始める。
水を届け、ろくな礼もされないまま汲みに戻り、また届ける。
テビィは父親に疲れが見えた時、素早くバケツを一つ奪い負担を減
らそうとする。
しかし、金物のバケツとそこに満たされた水の重さは十一歳でしか
ない子供には酷なもの。
息子の顔が赤く苦しげになった瞬間に、父親は礼を言って息子から
バケツを奪い返す。
二人は傍目には支え合う立派な親子に見えた。
親子が西端の作業場に水を届けた時に、異変が起きる。
﹁ま、魔物だああああああああああ﹂
開拓民の一人が、木槌を取り落しながら、叫んだ。
疲れでしゃがみ込んでいたテビィは顔を上げ、目を見張った。
﹁お、おお狼だ⋮⋮狼が歩いてくるよお父!﹂
テビィは歩いてくる、と表現した。
何せ、その狼達は二足歩行だったからだ。
人間の倍以上の大きさを持つ狼達が二足歩行で前進してくる姿は、
威圧に満ちていた。
﹁逃げるぞテビィ! お父から離れるな!﹂
父親は手に提げていたバケツの水を捨てると、息子の頭にしっかり
と被せた。
﹁あぁクソッ! 俺の頭にははまらねぇか⋮⋮﹂
もう一つのバケツを被ろうとするが、バケツの口に頭部がつっかえ、
232
上手くいかない。
潰走する人間達を、ようやくと言った形で走り出して追いかけてく
る人狼の群。
テビィは見た。
人狼の肩に乗る三人の女の姿を。
魔導士の着るローブを纏った女。
緋色の軍服に身を包み、両手に禍々しい腕甲を付けた女。
長い曲刀を腰に差したドレス姿の女。
人狼を従えるようにして、こちらに迫ってくる。
﹁やった! 騎士が来たぞ! 助かるぞっテビィ﹂
父親は懸命に足を動かしながら、幕営からぞろぞろと飛び出してき
て隊列を組んで並んだ騎士達を見る。
彼らは手に、弩を構えている。
﹁⋮⋮待て、違うだろ。まだ俺達が逃げ切っていない︱︱﹂
騎士達が人狼に向けて弩を構える。
これは間違ってはいない。
しかし、両者の間に逃げ遅れた開拓民がまだ残っている。
それでも、弓は放たれた。
恐怖。
迫りくる魔物への恐怖。
騎士とは言え人間である。
そして彼らの意識の根底にもう一つの意識もあった。
開拓民は、ゼオムントから放逐されたならず者。
取るに足らない命だと。
矢は宙を舞う。
人狼に届いたものは、彼らの頑丈な体毛と皮膚に弾かれ、無意味に
地に落ちた。
そして、人狼に届かなかった矢は、
﹁お父⋮⋮?﹂
開拓民の体に突き刺さって行く。
233
テビィの父親は頭部に矢を受け、一瞬の内に絶命した。
少年はその光景を目撃してすぐ、バケツ越しに矢が直撃した事によ
り気絶し倒れた。
混戦と言う言葉では贔屓になる。
人間側への贔屓だ。
人狼は騎士を蹂躙し、辺りは血肉の池と化していた。
刃にこびり付いた血液を払いながら、ドレス姿の女は笑う。
﹁アミュ姉∼、今日はどこまでやるの? マリスまだまだやれそう
だけど、刃向う奴がもうほとんど居なくなっちゃったよ﹂
彼女は血だまりを舞うようにして跳ね回りながら、人間の首を落と
していく。
﹁威力偵察ってとこかしらね。ほどほど暴れたら退くわ。何だか知
らないけれど、突然こっちにゾロゾロとやって来たんですもの、理
由と戦力がわかればそれまでよ﹂
人狼の肩に座ったまま戦場を俯瞰する様に眺めていた魔導士の女が
応えた。
﹁アミュス、口を割りました。こいつらはゼオムントに棄てられた
西域開拓民とそれに同行する兵士ですね。数は圧倒的に民間人が多
く、軍人はその警護程度にしか付いて来ていないそうです﹂
両腕に鉄甲を填めた軍服姿の女が、掴んでいた血塗れの騎士の首を
離し、振り返りながら言った。
﹁ふぅん⋮⋮開拓ねぇ⋮⋮公娼を囮にして魔物を引き付けている間
に都市でも作ろうというのかしらね、ゼオムントは。まぁいいわ。
ヘミネ、マリスも。今日のところはこの程度にしておきましょう。
三年間で性根の腐ったゼオムントの騎士様なんか、私の支配魔術を
受けた人狼の敵ではないわ﹂
﹃支配と枯渇の魔導士﹄アミュスが言い、二人の同志は頷く。
鉄甲を填めた軍服女がヘミネ。
234
リネミア神聖国の貴族であり、ハイネア王女に衣服の一部を与えた
者。
黒いドレスを纏った女がマリス。
祖国と人質を持たない、理由無き公娼。
三人は公娼としてこの西域に連れて来られたが、現地に到着した晩
に主人役を殺害し、以降自由に活動している。
目的は、ゼオムントへの報復。
アミュスの魔法により人狼族を支配下に置き、戦力の確保も完了し
ている。
後はいつ戦うかという事だけだったが、目の前に向こうから標的が
現れた形となった。
彼女達の報復に、無関係な者など存在しない。
ゼオムントに所属するすべてが彼女達を辱めたのだ。
誰も彼もが笑い、蔑み、犯し、記録した。
唯一の例外を挙げるとするならば、同じ立場にあった公娼のみ。
騎士であろうが民間人であろうが、彼女達にとってその血の一滴が、
心に負った傷を癒す聖水となる。
﹁撤退するわよ﹂
アミュスが指示を出し、人狼達が体ごと今来た道へ向き直る。
その時、
﹁待って!﹂
マリスが大声を上げた。
いつもの茶化したような声では無く、真剣味を帯びた声。
﹁⋮⋮来ますね﹂
ヘミネは鉄甲を噛みあわせ、今一度戦闘の用意をする。
アミュスは自分を乗せた人狼の頭を叩き、方向転換を命じる。
振り返った先に、騎馬。
銀と白で彩られたドレスと甲冑を身に着け、馬上から静かにこちら
を見据える女がいた。
直感する。
235
相当な実力者であると。
馬上の女が、口を開く。
﹁この地にいる女性⋮⋮そして優秀な武芸を有する。察するに、貴
女方は公娼で間違いないでしょう﹂
女の言葉に、黒いローブのアミュスが応える。
﹁違うわ。かつてはそうであったかも知れないけれど、もう違う。
私達はその様な存在ではない。今の私達は⋮⋮そう、ゼオムントに
牙剥く復讐者よ﹂
人狼族が一斉に口を開き、吠える。
牙を示した。
﹁⋮⋮公娼制度に期限は御座いません。今も昔も、貴女方は常に公
娼なのです。民衆の性欲の捌け口となり娯楽となり、その魂の一片
たりとも自由には出来ぬ存在。調教師を失ったのならすぐに新しい
調教師を用意させます。無駄な抵抗はなさらず、この場で衣服を脱
いで這いつくばりなさい。今この開拓団にはたくさんの男性がいら
っしゃいます。きっと皆さん、貴女達の事を待っている事でしょう﹂
銀の騎士は抜剣した。
その手に武器が握られた瞬間、アミュスは愕然とした。
魔導士として幾つもの戦場を越えてきた自分の体が震える。
この騎士には、勝てない。
﹁⋮⋮偉そうな口をきいてくれるじゃない。そういう貴女は誰なの
よ!﹂
アミュスの問いに、
﹁かつてはリーベルラント国騎士団長、そしてこれからはリトリロ
イ殿下の新国家で王妃となります。セリス︱︱公娼でございます﹂
騎士は馬の手綱を叩きながら答えた。
236
映像と記憶︵前書き︶
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237
映像と記憶
照り付ける太陽により死者の肉が焼け、悪臭の立ち込める平野を駆
ける騎馬。
騎士公娼セリスが直剣を水平に構えて突っ込んでくる。
﹁応戦します⋮⋮!﹂
対して人狼の群から飛び出す一つの影。
軍服を纏ったヘミネが地を滑る様に走り、鉄甲に覆われた拳を振る
った。
剣と拳がぶつかる。
二度、三度。
四度、五度。
直剣の薙ぎに弾かれ、ヘミネは大きく後ろに跳び退る。
﹁下馬すら許さぬとは⋮⋮まったく、大した敵ですね﹂
セリスは未だに馬上の人であり、ヘミネを見下ろしていた。
﹁ヘミネちゃん! マリスも手伝うよ﹂
黒いドレス、そして漆黒のポニーテールがヘミネの横を駆け抜け、
銀の騎士へと迫った。
振り下ろされる、血吸いの曲刀。
それに応じる、輝く直剣。
二合、三合。
四合、五合。
金属の軋む音を立て、マリスもまた弾かれた。
﹁うはっ⋮⋮! 凄いね、この人﹂
冷たい視線のまま、騎士セリスは手綱を握っている。
ヘミネもマリスも一流の武芸者である。
彼女達を相手取って、行動が制限される騎馬のまま打ち払う事など、
至難の技に他ならない。
238
﹁マリス、同時に掛かりますよ﹂
﹁ういさ﹂
赤の軍服と黒のドレスが奔る。
四撃、六撃。
八撃、十撃。
二人の連撃は、騎士公娼の鎧にすら届かない。
全てを直剣でいなされ、弾かれる。
﹁なるほど、良い腕をしていらっしゃいます。己の腕前に自信のあ
る公娼ほど、調教のし甲斐がある、とゾートも言っておりましたね﹂
今度はこちらから、そう言ってセリスが直剣を構えた瞬間、
﹁行きなさい、そして逝きなさい。ヘミネ! マリス! 退くわよ、
そんな化物相手にする必要はないわ﹂
アミュスの号令の下、三体の人狼が騎士へと飛び掛かる。
﹁⋮⋮了解﹂
﹁はーい﹂
ヘミネとマリスが踵を返す。
﹁逃がしませんよ﹂
セリスは最も手近にいた一体を切り伏せ、返す勢いでもう一体を裂
いた。
そして最後の一体。
セリスの直剣がその胸を貫く。
同時に、狼の咆哮。
たかが獣の叫び声など、セリスには効果は無い。
しかし、間近で肉食獣の吠え声を聞いた彼女の馬に、その生存本能
を呼び起こさせる事は容易かった。
﹁くっ⋮⋮落ち着きなさい。リーベルラント時代の愛馬ならばこの
程度問題無いというのに⋮⋮。ゼオムントの馬は根性が無い。さて
おき、逃がしましたか⋮⋮﹂
動揺し暴れる馬を押さえつけ、アミュス達が居た方角を向く。
遠く走り去る狼の群。
239
四足歩行に切り替えた人狼の素早さは馬のそれに匹敵する勢いだ。
その背に乗って逃げる三人の公娼。
﹁建国の敵が現れましたか。わたしと、わたしの夫の為に、貴女方
には死にも等しい屈辱を。公娼としての職責を、わたしが果たさせ
てあげましょう﹂
セリスは馬首を変え、夫の待つ天幕へと帰って行った。
﹁⋮⋮今日もまた、逃げられたそうじゃないか﹂
リトリロイは天幕の中、横たわっている。
金色の髪を柔らかな肉の上に乗せている。
﹁えぇ、だってあの人達わたしが出ていくとすぐ逃げるんだもの﹂
セリスは天幕の中、ベッドに行儀よく座っている。
柔らかな膝の上に金色の髪を乗せている。
そのしなやかな指が時折彼の頭を撫で、髪を梳いている。
﹁これでもう、五日連続か⋮⋮。初日程の被害は出てないにしろ、
彼女達の奇襲のおかげで作業はかなり滞っているようだね﹂
アミュス達はセリスに撃退された翌日から、短時間の奇襲を連日繰
り返し、彼らの開拓作業を妨害していた。
﹁わたしが迎え撃てれば良いのだけれど⋮⋮。警戒されているよう
なのよね。わたしの姿が見えたらすぐに逃げて行っちゃうわ﹂
全体の指揮役をやっている黒衣の魔導士は中々に頭のキレる人物ら
しく、敷地の端で作業する開拓労働者とその護衛の兵士を殺し、資
材に火を放つと中央の陣には目もくれず去って行く。
﹁うん⋮⋮こちらから攻勢に出ようにも敵は魔物の群で森に身を潜
めているから容易ではないしね。しかも戦うとセリス以外に勝ち目
は無いと来た。正直、手詰まりだよ﹂
今まではセリスの顔を見上げるような仰向けの姿勢だったリトリロ
イが、体を反転させ、彼女の膝に顔を埋める。
﹁そうね⋮⋮早めに何とかしないといけないわよね。ただでさえ労
240
働で疲れているのに襲われる危険があるから精神も休まらなくて、
開拓民の中にも不満が出ているわ、不満を解消させる公娼も今は居
ないし、爆発寸前よ。早く捕まえなくちゃ﹂
撫でやすくなった髪を更に梳きあげながら、セリスは首をかしげる。
二人して悩んでいた。
悩みがあると、二人の時間も楽しくない。
そんな時、外に控えている侍従の声がした。
﹁殿下、セリス様。王宮魔導士ゴダン様がお目通りを願っておいで
ですが、如何致しましょう﹂
﹁ゴダンが? セリス、良いかい?﹂
しわがれた声に応じながら、リトリロイはセリスに聞いた。
今はもう夜更けの時間であり、淑女であるセリスをこの時間に他の
男と会わせるのは気が引けたのだ。
﹁えぇ、ではわたしは装備の確認でもしてきます。また後でね。リ
ト﹂
軽い口づけを交わし、セリスは天幕内の仕切られた一室、彼女用に
用意された着替え部屋に移動した。
﹁通してくれ﹂
リトリロイのその声が響いてすぐ、天幕の入り口が開き、禿げ頭の
中年男性が中に入って来た。
王宮魔導士ゴダン。
魔導長官オビリスの腹心にして今回の西域遠征でも重要な職務を抱
えた人物だ。
﹁夜分に恐れ入ります、殿下﹂
腰を折り、礼を示すゴダン。
リトリロイはそれに手を振って応じた。
﹁あぁ、良い良い。お主の話は良く聞く様にと魔導長官にも言われ
ておる。何ぞ大切な話があったからこそ、夜中になったのであろう﹂
ははっ、とゴダンは頷く。
﹁公娼と、魔物による人的被害。中々に深刻なご様子、このゴダン
241
が愚考いたしました策にて殿下の一助となりますればと⋮⋮﹂
﹁ほう⋮⋮﹂
その夜、披露された策にリトリロイは苦笑いを浮かべ、別室で漏れ
聞いていたセリスが顔を顰めた。
早朝の出来事だ。
水汲みに向かった開拓民が目撃した。
そして、息絶えた。
鋭い爪が彼の喉を引き裂いたのだ。
魔物の襲撃。
襲い来る人狼の群。
開拓団が雑魚寝する大きな幕屋に、火が放たれる。
﹁ほらほらー寝坊すけさん達ー、焼死んじゃうよー﹂
マリスが楽しげに笑い、火がついた油の詰まった小瓶を投げつける。
幕屋からわらわらと飛び出してきた開拓民は、人狼やヘミネによっ
て叩き潰されていく。
やがて集まってきた騎士達が指揮役であるアミュスを狙って遠巻き
に矢を放つも、人狼の身を挺した守りに阻まれ、無為に終わる。
矢を凌いだ後は一方的な殺戮だ。
これまではそうだった。
血の匂いと悲鳴しか無い空間。
それを作り出すのがアミュスでありヘミネでありマリスであった。
はずだった。
﹃あ⋮⋮はい。申し⋮⋮訳、ありません。全部、最後の一滴まで、
アミュスは、床を⋮⋮舐めて、カピカピになった精液まで全部⋮⋮
飲みます⋮⋮から。お許し⋮⋮ください﹄
突如、聞こえてきたのは憐みを誘う声。
否、聞こえてきただけではない。
映し出されている。
242
空を割る様にして、特大の映像魔術が展開された。
そこに映し出されたのは、アミュスがかつて屈辱の内に撮影された、
非道の作品。
﹁な⋮⋮﹂
アミュスに動揺が走る。
支配魔術で彼女の意識と繋がっている人狼達にもその動揺は伝播し、
動きが止まった。
﹃んはぁ⋮⋮まだ⋮⋮ですか、もうお腹一杯で⋮⋮喉まで、精液⋮
⋮上ってきて⋮⋮うぷっ﹄
アミュスは恥辱の炎が己の心を焼くのを感じた。
これは﹃精液と小便だけを啜って公娼は何日正気を保てるか﹄とい
った趣旨で撮影された、アミュスの心を壊すための実験映像だった。
何日にも渡り肉棒を吸い、そこから零れた物だけを食って生きる。
精液を直接注ぎ込まれる事も、一度別の公娼の膣内に出されてから
それを吸い出させられる事も、故意に床に零して舐めさせる事も、
完全に乾燥させて固形物にして食べさせる事も。
アミュスは耐えた。
実験を執り行った調教師が日毎に連れてきた﹃善意﹄の無償労働者
に﹃懇願﹄して精を啜り、生き続けた。
終盤は栄養分だと割り切ろうと心を砕いた。
その結果、彼女はひと月を息抜き、中々実験の成果が見えない事に
怒った調教師により全身精液まみれのまま市街地に放り出され、し
ばらくの間裏路地で野良ネコを飼うようにして彼女を囲った住民に
犯され、やがてゼオムントの公的機関に保護され、今度は別の調教
師の下へ送られた。
﹃ぐぽ⋮⋮うぇぇぇ⋮⋮おぼぇぇぇぇ﹄
映像の中、アミュスが精液を口から溢れさせ滝のようにして吐き出
している。
全員が、この場にいる全員が。
殺戮者が、被害者が、重傷者が、負傷者が逃走者が抵抗者が。
243
それを目撃した。
今目の前で殺戮の指揮を執っている女の、痴態を。
これ以上無いほどに滑稽な姿を。
﹁ふふふっ。如何ですかな。この王宮魔導士ゴダンの映像魔術は。
この五日の間に貴女達三人の顔を確認し、資料を漁り、貴女方の撮
影作品を引っ張り出して来ましてねぇ。折角なので、開拓団の皆さ
ん全員に、今自分達を襲っている怖い人達がどんな事をしてきたか
を、見て置いて頂こうかと﹂
戦場から少し離れた場所でゴダンは馬に乗っている。
馬に乗ったまま右手を掲げ、そこに光る結晶を握っている。
その結晶から伸びた一直線の光が、映像魔術をかたどっていた。
ゴダンはニヤリと笑うと、馬首を巡らせ、陣の中央へと向かった。
﹁⋮⋮⋮⋮追え、殺せぇぇぇぇ!﹂
常の冷静な面影を喪失し、アミュスは叫ぶ。
その号令の下、人狼達は駆けだした。
ゴダンは逃げ、人狼が追う。
途中で轢き潰されるようにして騎士が死んでいく。
両者の距離は、段々と縮まって行った。
その間も映像の中のアミュスは肉棒を咥え、弱弱しく卑屈に微笑み
ながら、精液を啜る。
現実のアミュスはそれを否定するかのように、激しく吠え、人狼を
駆けさせた。
﹁おぉ怖い怖い。そんなに吠えますとまた口から精液が滝の様に流
れ出て来ますぞ。アミュス嬢。さてさて、お次はこちらですかな﹂
ゴダンは手にした結晶を仕舞い、新たな結晶を袂から取り出した。
﹁リネミア神聖国の大貴族にして軍人としても名高いお方、ヘミネ
嬢。貴女はどのように下品に喘いでいらっしゃったのか、このゴダ
ン。興味が尽きませぬのぅ﹂
244
ゴダンが結晶を天にかざす。
その光に導かれ、映像魔術が起動して行く。
その光景を見て、アミュスは思った。
怒りで忘我の淵まで達していたが、魔導士としての己が最後の一線
を越えさせなかった。
僅かに残った冷静な思考が、彼女を止める。
これ以上追うべきではないと。
自分の建てた作戦は奇襲と即時離脱であったはずだと。
そして仲間の事を思う。
マリスは異常だ。
異常さの中に気楽さがある。
故に御しにくいようで御しやすい。
ヘミネは正常だ。
正常さの中に激情がある。
故に御しやすいようで御しにくい。
この旅の始まりでアミュス達の主人役を殺したのもヘミネだ。
彼女は固い思想の内側に、燃え盛る激情を飼っているのだ。
このままではまずい、とアミュスの中の魔導士としての知能が働く。
ヘミネを止めねば。
今ここでヘミネに映像を見せてはいけない。
これ以上深入りしてはいけない。
もう既に自分達の軍勢はゴダンを追って敵中深くにまで来てしまっ
ている。
来る。
来てしまう。
アイツが。
セリスが︱︱。
245
修羅と渇き︵前書き︶
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246
修羅と渇き
﹃わかりません⋮⋮すいません。もう一度⋮⋮お願いいたします﹄
空を割って映し出される汚辱。
﹃あぁ? 何をお願いされたのか、俺馬鹿だからわからねぇわ﹄
赤い髪の女性が、尻を突き出した四つん這いの姿勢でいる。
顔は、確認できない。
それを囲んでいる五人の下品な笑みを浮かべた中年の男達。
一人が黄ばんだ犬歯を滑らせながら言い、女の尻たぶを蹴った。
﹃⋮⋮ぐっ。お願い⋮⋮します。どうか、一番の方、もう一度⋮⋮
私の、膣に⋮⋮ち、チンポ⋮⋮を、挿れて⋮⋮下さい﹄
女の顔が持ち上がる。
涙に歪み、唇を裂けるほどに噛みしめている。
あれは⋮⋮私だ。
ヘミネはここが戦場だという事も忘れ、空を見上げた。
そこに、かつての自分が居た。
﹃膣、じゃねぇだろぉぉ? オマンコだろぉぉ? ほら、言ってみ
ろよ! もう一度! 誰に、何を、どこに、どうして欲しいんだよ
!﹄
今自分は目的を共にするアミュスとマリス、そして支配下の人狼と
共に西域の開拓にやってきたゼオムントの人間を襲っていたはずだ。
暴力によってもたらされる血と歓声以外に、何も耳にしないはずだ。
﹃⋮⋮う、うぅぅぅぅぅっ! うううううううううううっ!﹄
映像の中の私が暴れだす。
四肢をでたらめに動かし、噛みつかんばかりに顎を開く。
既に当時の私は格闘術に優れ、握力や筋力も並大抵の男では及ばな
い。
囲んでいた男達が焦り、調教師を呼ぶ。
247
眼鏡をかけた気弱そうな男が私の体に取り付き、首回りに仕掛けら
れた装置を作動させる。
途端、私の動きが弱まった。
瞳は激しさを失う。
﹃ケッ、ビビらせやがって⋮⋮おら、言えって言ってんだよクソマ
ンコが﹄
再び蹴りつけられる尻たぶ。
吐き出しそうだ。
泣き出しそうだ。
かつての自分が⋮⋮これから言う言葉を知っている。
当然だ。
今映し出されているのは私の記憶。
そして、公娼としての記録。
つまり、過去。
﹃お願い⋮⋮します。一番の方、私の⋮⋮ヘミネの⋮⋮オマンコに
⋮⋮チンポを⋮⋮挿れてください⋮⋮お願いします﹄
頬を滑る涙が唇の血を拭う。
かつての自分は、襲い来る恥辱に敗れていた。
﹃ハッ! 言えるじゃねぇか。オラ、挿れてやる。挿れてやるとも﹄
そう言って男は肉棒をぱっくりと開いた膣へと挿入した。
これは、遊興だった。
﹃目隠しチンポ当て﹄
担当の眼鏡をかけた調教師は娯楽性の高い作品を作ることで有名だ
った。
思い出したくもない遊興が甦ってくる。
目隠しをされ、裸のまま拘束された自分。
最初に前戯も無しに挿入され、数十回荒々しく穿られた後、肉棒が
抜ける。
そこから四半刻、単純に放置される。
この四半刻がこの遊興の肝なのだそうだ。
248
挿入された肉棒を忘れない様に必死に想像し、記憶に刻み続ける時
間。
その時間を与えることで屈辱感をより強く熟成させる事ができるの
だと調教師は言った。
四半刻経つと、五人の男が登場し私の目隠しを外す。
順に一番から五番と呼ばれる男達だ。
その中の一人が、私に先ほど挿入した男。
私はそれを当てなければならない。
回答権は僅かに一回。
五分の一だ。
しかしヒントが無いわけでは無い。
私は回答に与えられた猶予時間︱︱半刻まで、自由に求める事が出
来る。
男達に、挿入を。
一番から順に男達に挿入を願い、自分の膣で覚えた記憶によって答
えを探す。
わからなければ、わかるまで何度でも挿入を願う。
屈辱に身を震わせながら、何度も何度も乞う。
﹃挿れてください﹄と。
必死に答えを探す。
何故なら、このゲームに敗れると決定するのだ。
五人による連続膣内射精。
それも調教師によって用意された妊娠補助薬を注射された上で、だ。
それだけは避けなければいけない。
このような愚かで下賤な行為で生まれてくる命など有ってはならな
い。
故に、必死で探し、求める。
自分は正解していた。
三番の男が最初に自分に挿入した男だった。
男達は悔しそうに雑言を吐き、私の尻たぶを蹴飛ばす。
249
しかし、それで終わりではない。
敗れると薬有りの連続膣内射精。
では勝つとどうなるか⋮⋮。
私は私を見上げる。
映像の中で、五人の男に輪姦される自分を見つめる。
薬は打たれなかった。
膣内に出されなかった。
ただ、それだけ。
五人は満足するまで私の体を蹂躙し、敗者の権利として﹃外出し﹄
をして笑いながら画面から消えていく。
記憶が、過去が、私に突き付けられた。
消せはしないだろうが、忘れはしないだろうが、見ないふりは出来
た物を、見せつけられた。
﹁あは⋮⋮あははははははははは﹂
私は鉄甲に囲われた両手で顔を撫で、髪を掴む。
﹁あははははははは。ミジメ⋮⋮なんてミジメだ⋮⋮私⋮⋮私は、
貴族で、戦士で⋮⋮そんじょそこら男なんて力でねじ伏せる事が出
来て⋮⋮でも、でも。馬鹿みたいに自分から尻を振ってねだらなき
ゃいけなかったんだ⋮⋮﹂
頭を掻きむしる。
見たくない。
見たくない。
あのような映像など。
このような自分など。
見たくない。
﹁殺す﹂
両肘を脇腹に添える。
十本の指を鉄甲ごと軋らせる。
両目は火花を放つ。
両足は地面を抉る。
250
呼吸は炎となって肺腑を焼く。
心臓は唸りを上げて回転する。
意識は一本の線に収束する。
殺す。
﹁ヘミネ! 落ち着きなさい! 私達は深入りしすぎたわ、急いで
反転して撤退しましょう!﹂
どうにか理性を取り戻したアミュスが叫ぶが、その声は修羅と化し
たヘミネには届かない。
赤い軍服の修羅は、目の前に立ちはだかる障害の全てを抉り取る様
にして突進して行く。
狙いは映像魔術の起点である結晶を握る男。
人狼も、兵士も、騎士も、労働者も。
彼女の視界に入ったすべてが血肉となり血風と成り果てた。
﹁ヘミネ!﹂
﹁ヘミネちゃん!﹂
アミュスの声も、マリスの声も、彼女を救う事は出来ない。
ただひたすら猛然と、殺意だけが彼女を支配できた。
﹁速⋮⋮い、なんだアレは⋮⋮馬や狼なんぞより速いではないか⋮
⋮ひぃぃ!﹂
禿頭に汗をかき、手にした結晶を握りしめて懸命に馬を走らせるゴ
ダン。
既に彼とヘミネの間の距離は、馬五頭分程度にまで狭まっていた。
割り込んでくる兵士の頭を掴み、握りつぶす。
突き入れられる槍を蹴折り、穂先を投げ返す。
死の驀進。
ゴダンが卑劣な思考で持ち出した策が生み出したのは、紛れもない
化物であった。
ヘミネが跳躍する。
251
その拳が空を裂き、ゴダンを貫こうとした時、
﹁魔導士殿、お下がりを﹂
直剣が、割って入った。
﹁セリス殿⋮⋮助かりました﹂
銀と白で着飾った騎士が、両者の間に佇んでいた。
拳と剣がぶつかり合う。
ゴダンは修羅と騎士から距離を取る。
馬を駆けさせようやく一息ついたところで振りかえる。
信じられない光景が、そこには有った。
騎士公娼セリスが落馬している。
ヘミネの拳を受けきれずに上体を崩し、馬から飛び降りたのだ。
セリスは跳ね起きて姿勢を回復する。
両者、大地に立って正対する。
ここに来て、ゴダンは背筋が凍るのを感じた。
彼の策も、開拓団に同行する騎士兵士の数が少ない事も、全てはセ
リスの武芸の冴えに全幅の信頼と期待を抱いていたからに他ならな
い。
もしも、もしもそのセリスがやられるとすれば⋮⋮。
﹁いいや⋮⋮まだ、まだですよ⋮⋮公娼如きに、敗れるわけにはい
きませんとも⋮⋮﹂
ゴダンは映像結晶を握り潰し、空いた手を懐に突き入れた。
ヘミネが押している⋮⋮!
それはアミュスにとって予想外の事に他ならなかった。
怒りと殺意によって修羅と化したヘミネの力が、以前は絶望的な力
の差を感じさせられたセリスと拮抗しているのだ。
そうなれば、もしや。
252
こちらの人狼は敵方の騎士や兵士と比べて個々の戦力とすれば数倍
になる。
加えてマリス、そして自分も居る。
ヘミネがセリスを抑えていてくれるなら、勝機は十分にある。
﹁マリス! 出来る限り暴れて! 今ここで壊滅的な打撃を与える。
そうすれば、私達の復讐の第一幕は、こちらの勝利で終わるのよ!﹂
﹁あいさー、アミュ姉!﹂
マリスが迫りくる騎士の首を曲刀で断ち切り、血飛沫を浴びながら
頷く。
アミュスは人狼達の意識野の中で作戦を伝達し、四散させる。
襲え、襲え。
喰え、喰え。
自分の傍に護衛として侍らせていた数体も、移動させる。
護りが手薄になっても良い。
セリスが動けない今こそが、絶対の好機なのだ。
散れ、散れ。
征け、征け。
人狼に指示を飛ばす。
﹁甘い、甘いですなぁ⋮⋮御嬢さん。セリス様は確かに絶対の武力
ではございますが、策士たるもの、取って置きの秘策を準備してい
るものですぞ﹂
離れた所から、禿頭の王宮魔導士が笑っている。
彼の手に握られた一本の短杖。
そこから魔力が放たれる。
魔導士であるアミュスには見えた。
それが、一体どのような効果を発揮する魔導なのかが。
そして、狂おしく叫んだ。
﹁馬鹿なっ! そんな馬鹿なっ! そんな⋮⋮そんな物がそこに有
って良いはずが⋮⋮っ!﹂
アミュスの支配魔術にはカラクリがある。
253
集団の中で最も尊敬される者を屈服させることで、その者の信者ま
でもを意のままに操る。
そういう魔術だ。
親を抑える事によって子を従える。
例えその子がどれだけの数になろうとも。
人狼の群に近づき、ヘミネとマリスによる陽動で護衛の人狼を排除
した後、一対一の状況を作りだし群の長を﹃枯渇﹄の魔術で下した。
そうする事によって人狼族はアミュスの軍門についたのだ。
今、それが覆される。
ゴダンの取り出した一本の杖で。
魔物の統帥権を与えるという﹃宝具﹄によって。
周囲に展開し、人間を襲っていた人狼達が一斉にアミュスの方を振
り返る。
群の牙が、一斉に剥かれた。
﹁魔物の宝具は⋮⋮! 西域の奥にあるはず⋮⋮どうして⋮⋮﹂
呆然とするアミュスの下に、マリスが駆け込んでくる。
﹁危ない! アミュ姉﹂
曲刀が振るわれ、一体の人狼を裂く。
続いて弧を描く刃は更なる狼の首を刎ねる。
しかし、二体だけではない。
もうすでに、彼女達に群がる人狼は、二十を超えていた。
マリスがいくら懸命に刃を振るっても、獣の圧力の前には微々たる
抵抗に過ぎなかった。
人狼達によって、二人の公娼が追い詰められていく。
﹁殺しはしません。肌を傷つけるのも良くない。さて、狼の皆さん、
そうですねぇ⋮⋮今まで散々足蹴にされて屈辱を味あわれた事でし
ょう。それぞれ一発ずつ、腹を思いっきりぶん殴っておあげなさい﹂
ゴダンは優しい声音でそう言って、﹃宝具﹄を振った。
ドゴッ︱︱肉を打つ重たい音が響く。
ゴボッ! ドスッ! グボッ! バゴッ!
254
繰り返される殴打。
腹を抱え、曲刀を取り落すマリス。
口から血の混じった胃液を吐き出すアミュス。
苦悶の表情を浮かべ、地に伏す公娼を眺め、ゴダンは微笑む。
これで後はセリスが修羅に勝てばいいだけ。
そう思った矢先、事態は急転する。
ヘミネとセリスの戦闘は互角と言ってよかった。
打ち込まれる拳を直剣でいなし、振り下ろされる剣を鉄甲で弾くと
いう応酬。
激情の炎が込められた拳は、ゼオムント一の剣技と拮抗したのだ。
セリスの表情には緊張が浮かんだ。
いつ以来だろうか、自分とここまで打ち合える戦士と出会ったのは。
この者の武芸の才を純粋に評価する。
騎士としての本能であった。
しかし、そう思った矢先に波が生まれた。
ヘミネの拳に込められた力に、波が。
波と言う表現が正しくなければ、動揺が生まれたのだ。
見渡せば人狼がかつての主人であった魔導士と剣士を襲い、取り囲
んでいる。
何やらゴダンが妙な魔導を使って人狼を操ったようだが、その様な
事はセリスには関係ない。
目の前の勝負に死力を尽くすのみだ。
けれど、赤髪の戦士にはそうでは無かったようだ。
狂人のごとく、修羅のごとく迫ってきたその覇気が薄れ、彼女の瞳
に浮かんだ色は、
仲間への心配。
彼女は今、目の前の騎士だけを見ている事が出来なくなった。
故に、結果は生じた。
255
直剣に背を向け、拳は狼の下へと向かったのだ。
ヘミネの拳が狼の体を吹き飛ばす。
蹴りが、肘打ちが、手刀が、仲間達を取り囲んでいた人狼を排除し
て行く。
﹁ヘミネ⋮⋮ちゃん。ありがと⋮⋮ね﹂
ケホケホと咳をしながら、マリスが弱弱しく笑う。
﹁⋮⋮マリス、逃げなさい。ここは私が引き受けます。ここまで無
謀に敵に突っ込んだのは、我が不明。責は己の命で償います﹂
ヘミネは続々と襲い掛かってくる人狼をなぎ倒しながら、ポニーテ
ールの剣士へと言う。
﹁そう⋮⋮ね。それについては⋮⋮私も⋮⋮同罪。最初に我を失っ
たのは、私だもの⋮⋮。マリス、行って⋮⋮シャスラハール王子と
合流するの⋮⋮大丈夫。私もヘミネも死なないわ、貴女を待ってる。
だから、ね⋮⋮きっと⋮⋮助けに来て頂戴ね⋮⋮﹂
アミュスは口の端から血を滴らせながら、立ち上がった。
﹁希望は捨てないわ⋮⋮貴女と言う希望がある限り、私達は屈さな
い。だからマリス、どうか⋮⋮この場は私達に任せて、逃げ切って﹂
アミュスは胸元から短刀を引き抜き、投擲する。
その切っ先は、肉に埋もれた。
セリスが騎乗してきて、ヘミネによって主人と引き離された、狼の
咆哮だけで動揺する臆病者の馬の腹に。
馬は大げさな動作でバタバタと首を動かし、やがて三人の方向を向
く。
アミュスはそれを睨みつける。
馬は怯え、いななく。
﹃支配﹄の魔術が作動した。
途端、猛然とこちらへ走ってくる馬。
﹁アミュ姉⋮⋮ヘミネちゃん⋮⋮﹂
256
マリスは呆然とした表情で二人を見つめる。
﹁早く⋮⋮いつまでも保たない!﹂
人狼の襲撃は間断なく続き、ヘミネはその応戦に追われている。
﹁私も手伝うわ⋮⋮。マリス、じゃあね︱︱﹂
アミュスが薄く笑って手を振った。
マリスは泣き笑いのような表情を浮かべ、すぐに二人に背を向け走
った。
駆け寄ってくる馬の背に飛び乗り、一目散にこれまで進んで来た道
を駆け戻る。
﹁むぅ、追ってください! 逃がしてはなりません!﹂
ゴダンがそう言って、人狼のうち数体を差し向けようとした時、
﹁行かせないわ⋮⋮﹂
アミュスが﹃枯渇﹄の魔術を発動した。
人狼の瞳が乾き、喉が干上がり、血液が固まる。
彼女の体から僅かな距離までしか届かないが、この魔術に囚われた
相手は死にも等しい苦痛を味わう事になる。
倒れた人狼に向けて舌打ちをし、ゴダンは更に別の数体に追跡を命
じようとする。
その肩を老いた手が掴んだ。
﹁魔導士殿⋮⋮良いのじゃ⋮⋮捨て置け。むしろその方が都合が良
い﹂
﹁ゾートさん⋮⋮﹂
ゴダンの肩に手を置き、稀代の調教師ゾートは顎を撫でる。
﹁このような話を知っておるかな? とある国では食用の家畜をあ
えて残酷に痛ぶって絶望させた上で肉にする。そうすると味が引き
締まって旨くなるそうだ。公娼もまた同じ⋮⋮いや、逆かのう。公
娼に抱かせるのは絶望ではない、希望じゃ。希望を抱かせた上で調
教する。そうするとまた素晴らしく泣いて、喘いで、そして必死に
抵抗するのじゃ。その姿こそが、民衆を楽しませる﹂
老人の言葉に、ゴダンはため息をつく。
257
﹁では、あのマリス嬢は見逃せと?﹂
﹁そうじゃ、三人共に捕らえてしまっては希望も何もなく、何の面
白味も無い性奴隷が三つ仕上がるだけ。しかしあの娘が逃げおおせ
る事であの二人は希望を抱き、調教に脂が乗ると言うもの。それに
どうせ、この魔物の領域であの娘一人で何かできるわけでもあるま
い。希望はそう、細ければ細いほど、儚ければ儚いほど、良い味付
けになる﹂
老人がニタリと笑う姿に、魔導士は天を見上げて苦笑した。
二人が話し込んでいるうちに、事態は終息に向かった。
取り囲んでいた人狼は全て地に伏せ倒れている。
アミュスとヘミネはフラフラの状態で何とか立っている。
枯渇の魔術と修羅の拳。
この二つは奇跡的にも人狼達を駆逐したのだ。
しかし、それまでだった。
﹁抵抗は無駄ですよ﹂
直剣を構えもせずに鞘にしまったままのセリスが二人の前に立つ。
魔力も、体力も失った二人にとって、あまりにも厳しい現実が人の
形をして立ちはだかったのだ。
﹁騎士団、捕らえなさい﹂
セリスは二人の緊張の糸が途切れるのを確認して、遠巻きに見守っ
ていた騎士団を手招きした。
襲撃から一刻が経ってようやく、血なまぐさい戦いは終結した。
﹁おらぁ! テビィ! てめぇしっかり働けってんだよ、クソガキ
がぁ﹂
﹁ごめんなさいごめんなさいごめんなさい﹂
バケツを被った少年がむさ苦しい中年男性に蹴られている。
どうやら土木作業の手伝いをしていた少年が細かなミスをして怒ら
れているようだ。
258
﹁親が死んじまって身よりがねぇってんで仕方なく面倒みてやって
たが今日までだな! てめぇの様なクソの役にも立たねぇ無駄飯食
らいはいらねぇんだよ!﹂
﹁ごめんなさいごめんなさいごめんなさい﹂
バケツの少年が頭を抱える様にしてしゃがみ込むが、その金属製の
バケツを撫でるばかりで抱え込めていない。
俺はあまり気分の良い光景でも無かったので口をはさむことにした。
﹁おい止めないか、その子はまだ子供だろう。大人と同じ事が出来
るわけが無い。大目に見てやってくれ﹂
俺の言葉に、中年は眉根を寄せたまま振り返る。
﹁あぁ? うるせ⋮⋮いや、いやいやいや。これはこれはリトリロ
イ殿下。お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。はい
ぃ、少し躾のつもりで叱っていたのですが、つい熱が籠りすぎてし
まったようで⋮⋮。さ、テビィ仕事に戻ろう﹂
男はバケツの少年の手を強引に引っ張り上げ、愛想笑いを浮かべて
俺の前から歩き去った。
﹁ったく⋮⋮開拓民の素行の荒さが一番の問題点だよな⋮⋮聖職者
も一緒に連れて来るべきだったか﹂
俺がぼやいていると、すぐ近くから花の香りが届いた。
知っている香りだ。
愛している香りだ。
﹁リト、それは仕方の無いことよ。彼らの中でまともな教育を受け
られたのはほんの一握り。今後貴方が国を作って、教育制度を整え
て、ゆっくりと常識と穏やかな心を広げていけばいいわ﹂
銀と白のドレスを纏ったセリスがやってきた。
﹁そうだね。今は荒くれ者でも、きっと変われる。彼らは変わる為
にこの建国についてきたんだ。それを信じよう﹂
俺はセリスと並ぶようにして立つ。
今は昼飯時を過ぎ、もうすぐ夕方になろうかと言う時間帯だ。
開拓民は資材を肩に担ぎ、工具を腰に提げ行きかっている。
259
早朝からしばらく続いた戦闘の傷跡を払い、元の通りに修復するた
めに、彼らは汗を流している。
老いも若きも、男達は懸命に働いている。
そんな彼らの視線が時折、一瞬だけ移動する。
陣の中央に。
男達の喉が動き、瞳がぎらつく。
その場所に、白い服の集団が立っている。
調教師ゾートが用意し、この度の遠征で彼に同行する調教師達に統
一させた、白のローブ。
彼らはローブの裾をはためかせながら、手にした書類に何かを書き、
口頭で指示を飛ばす。
﹁次、肛門から魔導グリセリンを三アンプル注入、便を全て取り除
いて。それが終わったら膣口の洗浄と剃毛、あぁ洗浄が終わったら
﹃洗浄済﹄の前貼りを貼っておくのを忘れない様に﹂
今白服達は二人の人間を取り囲んでいる。
木製の板に四本の脚をつけ、車輪を履かせる。
その上に全裸に剥いた女をうつ伏せに拘束し、カエルのような姿勢
をとらせる。
両腕を万歳させるように伸ばし、手首を鉄枷で板に打ち付け、表情
が見える様に右を向かせたまま首も打ち付ける。
下半身は尻が浮き上がる様に、膝を腰の位置にまで曲げ込みそこで
打ち付ける。
カエルの標本。
下ごしらえ、とゾートは言った。
あえて凌辱の時間を後にして、それに至るまでに色々な準備をする
事で、凌辱者側の興奮を煽り、公娼の神経までも犯す。
板に打ち付ける事もそう。
薬剤を注入する事もそう。
全裸のまま衆目に晒す事もそう。
全ては稀代の調教師ゾートの演出なのだ。
260
そして、演出における最も重要な配役。
公娼。
今この場で板に拘束されているのは、先ほどまでセリスと死闘を演
じていたという、二人。
ゼオムント一の技量を誇るセリスと拮抗しながら敗れた戦士。
今まさに武人としの存在を消され、公娼に戻される。
﹁よぉーし、それじゃ焼印つけるぞー、やりたい奴はいるかー?﹂
年長の白服が言い、数人の若い白服が手を挙げる。
﹁じゃあお前とお前、この焼きゴテでジュワっとやっちまえ。あぁ
こっちの赤髪のヘミネが﹃1﹄で銀髪のアミュスが﹃2﹄な。それ
ぞれ右の尻たぶと左の乳房の側面の二か所だ。よし、やれ﹂
公娼として管理しやすいように、色と名前と数字で管理する。
数字はそのまま肌に刻まれる。
火傷として。
一瞬肉の焦げる嫌な音がして、張り付けられた二人が苦悶の叫びを
あげる。
リトリロイとセリスは、それを無関心に眺めた。
﹁よーしじゃあ続きは夜の祝勝会まで取っておくぞー、その間誰に
も触らせるなよー。あぁ、いや、触るのは別に大丈夫だ。とりあえ
ず犯させなかったらそれで良い。良いか! とりあえず汚すな! それだけだ﹂
年長の白服がそう言って、周りが笑う。
そこに、ゴダン配下の魔導士が三人連れだって近づいていく。
﹁あぁ、撮影係の人? 祝勝会前の下ごしらえから撮影したかった
って? いやぁすまんね。もうほとんど終わっちゃったんだけど、
どうぞどうぞ、今からでも好きなだけ撮ってください﹂
一人の魔導士が映像魔術を展開し、残り二人が補助の機材を運ぶ。
記録を取るのだ。
何と言っても、リトリロイの国づくりにおける、最初の記念行事。
祝勝会。
261
開催は今夜。
皆で飯を食い、皆で酒を飲む。
そして、
皆で公娼を犯す。
262
緩急つけて︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
263
緩急つけて
演壇に立つリトリロイが酒杯を掲げる。
セリスが、ゴダンが、ゾートが、老侍従が、兵士が、調教師が、開
拓民が応じる。
急ごしらえで設置された宴席。
木製の低い机と丸太を横に置いただけの簡素な椅子。
とても王家の者が開く宴席には相応しくないものだった。
しかしそれ故に、民は王を近くに感じた。
彼らに共感し、彼らの労を理解してくれる王を。
配られたのは酒と穀物、そして僅かな肉だった。
それらも充分とは言い難い、王者の宴として到底認められない食事
だった。
けれど、民に不満は無い。
食事は腹が膨れればいい。
喉が潤えばいい。
それよりも、それよりも。
彼らの瞳は獣のそれだ。
男ばかりの開拓団、そして数日にわたる戦闘行為での疲弊、彼らの
鬱憤は積もりに積もっていた。
女を︱︱
公娼を︱︱
演壇に立つリトリロイの後ろに、艶めかしい尻が二つ。
拘束されていた。
木製の板に鉄枷を打ち付ける事で四肢と首を固定され、カエルの様
な姿勢を取らされている二人の女。
彼女達の陰部には﹃洗浄済﹄と書かれたの前貼りとも言えない薄い
紙が貼られ、夜風に靡いてチラチラ舞っている。
264
尻たぶに﹃1﹄の焼き印が押されているのがヘミネ、同じ個所に﹃
2﹄の印があるのがアミュス。
かつて公娼であった者達で、これから公娼に戻る者達だ。
ゾート率いる調教師集団により﹃下ごしらえ﹄を受け、凌辱の時が
来るのをただひたすら待っている。
彼女達は開拓団に少なからず被害を与え、命と物資を奪った責任者。
これは正義の行使である。
死者への弔いである。
男達の心は獣の残虐さと人としての倫理を融合させ。
化物となった。
ひたすらに己の欲望を昇華させたいと願いながら、同時に人として
彼女達に罰を与えるのだと使命を帯びる。
薄汚れた化物が完成した。
宴もたけなわとなってくる。
食事の合間にアミュスとヘミネの過去の出演作品をゴダンが魔導で
再生し、男達の理性のタガが外れかけている。
肉は尽き、酒は尽き、皿と杯が空く。
﹁それでは、メインイベントの前に、王宮魔導士ゴダン様より皆様
にご挨拶がございます﹂
司会を務めるセリス付の侍女が言い、男達は膝を揺すり、目を血走
らせながらゴダンを見やった。
﹁おぉ⋮⋮どうかどうか、皆さま堪えて頂きたい。挨拶は手短に、
要点だけを簡単に語らせていただきますので。うぉほん、此度、我
々は多くの仲間を失いました⋮⋮また、傷を負われた方も多い、開
拓そして建国という、途方もない偉業の始まり、その第一歩で命を
落とされた方の無念、このゴダン察するに余りあります。すべては
ここに繋がれている愚かな愚かな公娼の行った野蛮極まりない暴挙
によるものです。勇敢に戦い戦死した兵も、職責を全うするために
犠牲となった開拓団の皆さまも、その命を虫けらのように扱い、魔
物を使役し襲わせるという非道な行い。善良な一市民である私には
265
余りに悲しい、余りに虚しい行いであると、言わざるを得ません﹂
ゴダンの声を聞いてか、物言わぬまま、固定された公娼の視線が彼
を睨みつけた。
彼女達の口には今詰め物がされており、声を発する事が出来ない。
﹁えぇはい⋮⋮もうすぐ終わりますので、この者達の非道、本来な
らばゼオムントの法に基づき極刑に値するところですが、残念なが
らこの者達にその理屈は通用しません。なぜなら公娼。この者達は
公娼であります、既にその生に意味は無く、ただ単にゼオムント王、
そしてリトリロイ殿下の愛により民草に解放された玩具でしかない
からなのです。故に皆さま、どうぞどうぞ、存分に心行くまで、こ
の公娼でお遊びください﹂
ゴダンが慇懃に礼をした瞬間、男達の熱気が爆発した。
椅子を蹴飛ばし、机を押し倒して演壇の裏へと駆けていく。
男達のその勢いに、拘束された二人の公娼に隠しきれぬ怯えが宿る。
演壇の傍で控えていたゾートが大声を上げる。
﹁良いか! 何をしても良い! それは許可する。尻を耕そうが、
喉の奥に出そうが、そこは好きにしろ、ただし、絶対に殺してはな
らん! 殺してしまわない限り何度でもこいつらの肉体は我が調教
師団の力で修復できる。重ねて言う、殺すな、こいつらはこれから
先ずっと、開拓と建国の為にその体で償ってもらわねばならん!﹂
男達にゾートの叫びが届いたかどうか、声を発した本人ですらわか
らなかった。
三日三晩と言う言葉で語る事ではない。
数日間の戦闘で失われた開拓団と兵士の命は、合わせて三百程、そ
して数少ない男性器を持たない開拓団員、姥捨て代わりに派遣され
た老婆達の数が五百程。
合計して八百。
五万人の開拓団から八百人を引いた数。
266
それがヘミネとアミュスが相手にしなければいけなかった数だ。
押し寄せる男の群に、貫かれ、二人の秘部は閉じる事を知らない。
口も、肛門も何もかもを犯され、汚され、辱められた。
時折ひきつけを起こしたり、意識を失ったりする度に調教師が割っ
て入り、二人を蘇生する。
蘇生されたそばから挿入され、また果ての無い凌辱を浴びせられる。
夜も朝も、昼も夕も。
男達の列は途切れず、ヘミネとアミュスは肉人形として扱われた。
三日が経って、全体の一割も終わってはいない。
むしろその半分ですら、更にその半分ですら、終わってはいない。
この状況を、憂う者がいた。
稀代の調教師と呼ばれる男、ゾートだ。
﹁これでは調教にならん⋮⋮いくらなんでも数が不均衡すぎる⋮⋮﹂
ゾートは陰唇と肛門、そして口で肉棒を咥えこんでいる二人の公娼
を見下ろしながら、舌打ちをする。
ただひたすら犯させるなど、彼の調教師としての美学に反する行い
だ。
﹁公娼として体の慣らしをさせるのはせいぜい三日で充分じゃ⋮⋮
それ以上やると精神を手放し、何の反応もせぬ呆けた木偶になって
しまうわい⋮⋮ここは一つ、涙を呑んで我慢を強いるしかないかの
ぅ⋮⋮いや、ふむ﹂
ゾートはその日の内に行動した。
リトリロイとゴダンに掛け合い、一時的にヘミネとアミュスの利用
を停止させたのだ。
元々公娼に関する調教の最高責任者であるゾートの言だ、王子も魔
導士も頷かないわけにはいかなかった。
不満は、その夕方にはもう爆発した。
男達は即席で作られたヘミネとアミュスの檻に群がり、罵声を浴び
せる。
﹃何をしている! 怠けるな!﹄﹃使命を果たせ! この薄汚れた
267
公娼が!﹄﹃罪人の癖に罰を拒めると思っているのか!﹄
等々、彼らは全裸で拘束されたままの二人を糾弾した。
一方で三日ぶりに陰唇を閉じる事を許された二人としても、困惑を
覚えた。
彼女達にとってみれば、調教師の親玉が急に自分達を檻に移動させ
たとしか認識していない。これもまた、次なる凌辱の一歩なのだと。
しかしそれは違った。
彼女達にとっては知り様の無いことだが、開拓団が寝起きする幕屋
周辺に、立札が設置されていたのだ。
曰く、﹃公娼二名が体調の悪化と殿下への哀願の言を繰り返すので、
特例として休息を与えるものとする﹄
責任を全て彼女達に負わせたのだ。
﹁これで、これで良い。意味の無い⋮⋮見当の外れたものであれ、
糾弾の言葉は人の心を焼く。それに開拓団の方も良い具合に公娼へ
の憎しみを持続させる事が出来る。与え過ぎず、奪い過ぎず。公娼
と開拓団の関係は、ワシが取り持ってやらねばならんのぅ⋮⋮﹂
今まさに、滑稽な光景がゾートの視界に広がっている。
先ほどまで思うままに二人を犯していた開拓団は、急に彼女達が自
分達の手を離れた事に怒り、罵声を繰り返す。
公娼達はその姿に何とか虚勢を張ろうとするも、三日に渡る凌辱の
傷は心に深い傷を残している様子で、かつて武人として持っていた
鋼の魂も揺らいでいる。
やがて、男達は農具や槍といった長い棒状のものを持ち出してきた。
﹁おら! 股を開けって言ってんだよ!﹂
檻の中央に身を寄せ合う二人に向けて、隙間から農具や槍を逆手に
持って突き入れる。
乳首を突き、胸をこね、太ももを叩き、股をこじ開ける。
これまで好き勝手に弄ってきた体を、欲望のあまり、滑稽にも木の
棒で肉棒の代用をしようというのだ。
しかし、
268
その姿を見てゾートは笑う。
﹁そうだ、それで良い⋮⋮凌辱とはそうで無ければいけない⋮⋮!
単純な生殖行動のみで繰り返される事などに観衆を楽しませる事
は出来ぬ。滑稽で、卑猥で、残酷で、羞恥を与えなければ凌辱では
ない!﹂
男達の突き付けた棒に対して、アミュスとヘミネは体をかばい合う
ようにして避け続ける。
しかし、全方位から突き入れられる棒に、隙が生まれないはずも無
かった。
アミュスが鋭く突かれた一突きを避けようとして腰を浮かした瞬間、
狙い澄ました一本が、彼女の陰唇を押し開け、膣内へと至った。
﹁おごぉぉぉ!﹂
冷たい木の感触に、アミュスはくぐもった悲鳴を漏らす。
﹁アミュス! 今抜きます﹂
ヘミネが陰唇を床に押し付け、棒に狙われない様にしながらアミュ
スの陰部に挿さっている棒を抜こうとすると、
﹁隙ありぃ⋮⋮このぐれぇの細い棒だったら、こっちの穴が妥当だ
よなぁ﹂
ヘミネは陰部を隠すために強く押しつけた結果、腰の位置が肛門を
突き出すようになっていた。
そこに突き刺さる、細い木材。
﹁んほっぉ﹂
尻に突き入れられた衝撃でヘミネは腰を浮かせる。
﹁おっ、こっちも隙ありだな﹂
別のもう一本が陰唇を割る。
﹁あうっ﹂
﹁ヘミネ! きゃあっぁ﹂
ヘミネの惨状にアミュスが陰部に棒を入れたまま動こうとすると、
押し開く様にしてもう一本、既に手狭になっている穴に棒が挿って
来た。
269
﹁あがあああああああ﹂
﹁んほぉぉおおおおお﹂
二人の肉体はゾート達による﹃下ごしらえ﹄の成果により、普通の
人間よりも何倍も快感を得やすくなっている。
陰部を突かれ、肛門を抉られ、二人は横向きに床に倒れ込んだ。
そうなってしまえば、後はもう男達の棒が残虐に暴れる。
抜き、挿し、抜き、挿し。
抉り、擦り、抉り、擦り。
公娼達の安全を確保するために用意された檻が、彼女達を辱める最
高の遊具となる。
ゾートが待っていたのはこの瞬間だ。
この映像こそが凌辱。
ゾートの求める世界。
﹁棟梁。お待たせいたしましたわ﹂
煌々と瞳を輝かせるゾートに声がかけられる。
振り返ると、のっぺりとした魚顔の中年女が立っていた。
﹁あぁ⋮⋮オルソー⋮⋮確かにワシがお前を呼んだ。だがしかし少
し待っとれい。今良いところなんじゃ﹂
ゾートは興がそがれた思いで、ため息をつきながら、正面を向く。
男達はゲラゲラと笑いながらヘミネとアミュスを棒で嬲っている。
﹁あらあら。とても面白そうですわねぇ。わたくしも一本貸しても
らって参加してきましょう﹂
中年女は檻に近づき、男達から棒を一本受け取り、アミュスの陰部
を執拗に狙い始めた。
﹁まったく⋮⋮あの変態女め⋮⋮いやしかし、だからこそ⋮⋮ワシ
が目を掛けるに足る調教師なのかもしれんな⋮⋮﹂
ゾートは自分の愛弟子の狂った笑顔を見ながら、また一つ溜息を吐
いた。
270
マダム・オルソー︵前書き︶
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271
マダム・オルソー
﹁マダム・オルソー、こちらの器具の設置は図面通りに完了いたし
ました﹂
白いローブを纏った調教師の一人が、手にした書類を揺らしながら
報告する。
﹁えぇ、ありがとうございます。素敵ですわ。これでもっとこの娘
達を輝かせる事ができます。それがわたくしの使命!﹂
魚顔の中年女が、突きでた腹肉を揺らしながら笑顔で頷いた。
オルソー。
ゾートが組織した調教師団の中でも抜きんでた才能を有する調教師。
当然ながら男社会になっている調教師という職の中、例外中の例外
である女性調教師。
公娼を辱める事に芸術性と恍惚を覚える真正の加虐倒錯者だ。
そして、既婚者でもある。
二年前の嵐吹き荒れる夏の頃に、彼女は年下の青年に娶られた。
線の細いひ弱な印象を受ける青年で、彼女と並ぶと母子と間違われ
るほど童顔な男だった。
青年は彼女が作る映像作品の熱狂的な信者で、何を間違ったか製作
者に恋をし、愛情を抱いた。
オルソーとしても四十を過ぎ結婚を諦めていた頃に沸き起こった珍
事に狂喜し、青年の求愛を受け、二人は結ばれた。
上司であるゾートは魚顔をした中年女の花嫁衣装におぞましい気持
ちを抱えながらも、二人の為に祝辞を述べた事を今でも夢に見ると
いう。
ともあれ、マダム・オルソー。
調教師としての手腕に何の疑いも無い。
ゾートの推薦を受け、彼女が預かる事になったのは二人の公娼。
272
騎士公娼セリスと武芸で渡り合った赤髪の修羅ヘミネ。
魔物である人狼を支配し開拓団に多大な損害を与えた銀髪の魔女ア
ミュス。
全裸に剥かれ、鎖で拘束され、焼印で管理される二人の公娼の肉体
はマダム・オルソーに預けられた。
マダムが最初に行った事は彼女達の時間管理についてだ。
ただ無制限に彼女達を開拓団に解放していては調教に差し支えると
いう事で、朝と昼と夜、それぞれ食後に一刻ずつ自由に公娼の利用
を許可するという制度を作った。
枷により拘束した二人の公娼に労働前、昼休憩、労働後の男達が群
がるという構図だ。
食欲を満たした男達が楊枝を咥えたまま談笑しながらアミュスの口
腔を犯し、ヘミネの尻を耕す。
開拓団の団欒ともいえる時間を作ったのだ。
そして、それ以外の陽が昇っている時間帯は全て調教と撮影に費や
す。
マダム自身が率先して器具を操り、同僚の調教師や映像撮影を行う
魔導士達と共に汗を流しながら、アミュスの膣をこじ開け、ヘミネ
の乳を搾った。
その中でも特に映像撮影班の熱意は群を抜いている。
彼らは建国という偉業を余す事無く後世に残す使命を帯びていたた
め、アミュスの鼻の穴に向けて放たれた精液の滴りを間近で撮り、
ヘミネの肛門に放出された小便の溢れかえる様をつぶさに記録した。
そして、マダムが作った時間管理にはもう一つ大切な一コマが存在
した。
一日の終わり、夕食後の公娼利用時間が終わってから始まる、公娼
達による日記づくりの時間だ。
﹁はーい、それではアミュスちゃん、ヘミネちゃん。今日の出来事
273
で特に記憶に残った事を日記に書いちゃおうねー。もちろん! 絵
日記だよー。日付を書いてぇ、文章を書いてぇ、そしてそして、絵
を描くのぉ﹂
まるで愛する子供に話しかけるかのような、マダムの甘ったるい言
葉づかいに、アミュスとヘミネの神経はささくれ立つ。
二人は先ほどまで開拓民にボロボロに犯された後、体を洗う事も拭
う事も許されないまま、全裸で椅子に座り、机に向かっている。
椅子に押し潰される形で膣口が開き、中から精液が零れだしてくる。
髪にこびり付いた精液が渇き、異様な輝きを放っている。
既に公娼利用時間は終わっているにも関わらず、多くの開拓民が二
人のその姿を見てニヤニヤと笑っている。
机に上には、ゼオムント国内で流通している子供向けの日記帳が置
かれている。
一番上に日付欄があり、すぐ下に紙面の半分程を四角に区切った絵
を描く欄、そしてその下に文章を綴る欄がある。ごく普通の日記帳
だ。
そして手にしているのは、クレヨン。
くっ付けられた二人の机の中間に置かれたケースに入れられた全二
十四色のクレヨン。
特別に黒色だけは、二つ用意されていた。
二人は黒のクレヨンを屈辱に震える手で握り、日付を書く。
そして、絵を飛ばして文章へ。
﹁んんー? どうしたのかなぁ? 今日は色々あったよねぇ? あ
ぁそうか、書く事がいっぱいあって決められ無いんだねぇ。わかる、
わかるよー。わたくしも昔そういう経験がありましたものー﹂
押し黙ったままクレヨンを動かせないアミュスとヘミネに向けて、
マダムが微笑む。
﹁おい、銀髪! お前はアレだ、俺に膣内出しキメられながら、涙
流してアヘってる所を映像班にしっかり記録してもらった事を書け
よ!﹂
274
﹁じゃあ赤髪は俺に尻の中で精液とションベンのミックスジュース
作ってもらった事だな。最後に俺が手で掬ってお前に飲ませた所ま
でしっかりと書けよぉ﹂
野次馬から声が上がり、それに続けて哄笑が巻き起こった。
アミュスとヘミネの背中が、悔しさで震える。
﹁んー、あんまり夜更かしするのも良くないしぃ、そうですねぇ。
二人が決められ無いんだったら今の人達の言った事を日記に書いち
ゃってー﹂
マダムがフムフムと頷きながら、二人を促した。
やがて、指先に隠しきれぬ怒りを込めながら、二人のクレヨンが動
き出した。
一文字一文字、血を吐くような思いで、綴られていく。
﹁ほうほう、アミュスちゃんはその人に抜かずの三連射精を受けた
んだねぇ。途中まで我慢していたけれど最後には声と涙が出ちゃっ
て目玉が裏返る程感じちゃったんだぁ? まったくぅ、エッチだな
ぁ⋮⋮それでそれで? ヘミネちゃん。お尻の中でまず射精されて
ぇ、次に⋮⋮へーオシッコ! オシッコされちゃったの? そして
その混ざったジュースを飲んだの? どんな味だった? どんな味
だったかも書いておいてね。たぶん今この開拓団にいる人達の中で
そんなの飲んだ事有るのはヘミネちゃんだけだからさ、皆に教えて
あげようよ!﹂
アミュスの口が歯軋りを鳴らし、ヘミネの両目から熱の籠った涙が
あふれる。
それでも何とか文章を書き終えた二人に向けて、マダムが微笑む。
﹁じゃあ次は絵だね。さ、他の色のクレヨンもどんどん使って! 素敵な日記帳にしましょうね﹂
マダムの手が二人から黒のクレヨンを奪い取り、他の色が入ったケ
ースを差し出す。
アミュスとヘミネは俯いたまま、そのケースに触れる事が出来ない。
憤りと、屈辱と、怨嗟と、殺意と、絶望。
275
二人の心をありとあらゆる黒いモノが支配していく。
﹁んー? どうしちゃったのかなぁ? 絵に書くのがそんなに難し
いかしら? あぁ、そうね、だって二人とも自分がされてる姿を見
てないものね! ごめんなさぁい、そういう所気が付かなくって!
じゃあこうしましょう。今からお互いの体で、日記に描く事を再
現するの!﹂
そう言って手を叩いて喜んだマダムは、野次馬の中から二人の男を
指名する。
頭を掻き、困惑しながら寄ってくる二人に向けて、マダムは笑う。
﹁それじゃそっちの角刈り頭の君、今からヘミネちゃんに抜かずの
三連射精をしてあげて。そしてそれが終わったらそっちの丸坊主の
君が、アミュスちゃんのお尻に中でミックスジュースを作って飲ま
せるの。もちろんアミュスちゃんとヘミネちゃんはその様子を参考
にして自分にあった事を絵に描くのよ! どう? これなら描ける
でしょ﹂
さっと顔を青ざめさせる二人の公娼とは反対に、角刈りと丸坊主は
下品に笑い、自分に舞い降りた幸運に感謝した。
彼らは食後に公娼を利用しようとして並んでいたが、運悪くいよい
よ自分達の番がくる直前で時間終了を迎え、燻っていたのだ。
角刈りの男が、お先! と丸坊主に笑いかけ、ヘミネの座っていた
椅子を蹴り飛ばし、立ち上がった尻を両手でがっしりと掴み、荒々
しく挿入した。
﹁はぅぅあ! きゅ、急に⋮⋮やめっ⋮⋮やめろぉ!﹂
机に手をつかされ、尻を突き出す姿勢を強要されて、ヘミネはガン
ガンと犯されていく。
角刈りは終始ハイペースで腰を叩きつけ、肉棒で穴を抉る。
﹁おっ⋮⋮おぉぉおイクぜぇぇぇ﹂
﹁いや、いやああああああああ﹂
すぐに、一発目が発射された。
射精後少しの間震えていた男の体だったが、すぐにまた動き始める。
276
二発目の準備だ。
﹁ほらほら、アミュスちゃん? ちゃんと描かないと、ヘミネちゃ
んのがんばりが無駄になっちゃうでしょ? あ、ほらもうすぐ二発
目でちゃうよ! 急いで急いで、時間が無いよ。三発目出すまでに
終わらなかったら、また別の人を呼んでヘミネちゃんに三回射精し
てもらわなきゃいけなくなっちゃうねぇ?﹂
アミュスは呆然と隣の様子を眺めていたが、マダムのその言葉で跳
ねる様にしてクレヨンを掴み、描き始める。
肌色、黒、白、赤。
﹁あぁほらダメよ、アミュスちゃん。これは貴女の日記なんだから、
描くのは貴女が犯された事を描くの。今ここでヘミネちゃんにやっ
てもらっているのはただの再現。貴女がなかなか絵が描けなかった
からしょうがなくやってもらっている﹃意味の無い行為﹄なんだか
らね? だから、赤は要らない。赤はヘミネちゃんの髪の色でしょ
? アミュスちゃんの髪は綺麗な銀色じゃない。はい、こっち﹂
そう言ってマダムはアミュスに銀色のクレヨンを渡す。
アミュスが震える指でそれを受け取った瞬間、
﹁おら! 二発目だっ! 子宮の奥の奥まで注ぎ込んでやるぜ!﹂
﹁くぅ⋮⋮ううううううぅぅぅ﹂
ヘミネが涙を流す。
マダム曰く、﹃意味の無い行為﹄によって。
アミュスは必死に手を動かし、今のヘミネの惨状を絵に描いた。
絵の中で犯されている女の頭の上には、銀の色を塗った。
アミュスが書き上げた瞬間、
﹁ふぅ、三発目だぁ⋮⋮満足だ、これで明日もきつい労働に耐えら
れるってもんだぜぇ﹂
﹁う⋮⋮うあぁ⋮⋮ああああ﹂
角刈りが三発目を放ち、ヘミネの体を解放した。
277
﹁さ、じゃあ次はヘミネちゃんの日記の番だね。丸坊主くん、よろ
しく!﹂
マダムに指名され、丸坊主はアミュスへと一歩近づいた。
﹁おら、尻だせよ。わかってっか? 精液とションベンを中で混ぜ
なきゃいけねぇんだからよぉ、万が一にも零れない様に地面に這い
つくばって尻を上に向けろ﹂
丸坊主のにやけ顔から発せられる言葉に、アミュスは一度強烈に睨
みつけてから席を立ち、椅子をどけて地面に両手をつく。
尻を、天へと向けた。
﹁そうそう⋮⋮そんじゃ、いくぜ!﹂
﹁ぐっ! ううううぅ﹂
勢いをつけて肛門へと肉棒を突き立てる丸坊主、アミュスの口から
苦鳴が漏れる。
﹁さ、それじゃあヘミネちゃん。座って座って、絵を描いちゃいま
しょう。素敵な何度でも読み返したくなる日記を作ってね﹂
ヘミネは角刈りによって蹴飛ばされた椅子をヨロヨロと拾い、机に
向かう。
椅子に座った瞬間、膣内に溜まっていた精液があふれ出す。
椅子を伝い、太ももを伝い、膝を伝い、くるぶしを伝って地面に零
れる。
角刈りの貯め込んだ精液は半端な量では無く、その射精三回分の精
液で椅子の下に小さな池が出来上がった。
﹁あらら、ヘミネちゃんまるでお漏らししちゃったみたいねぇ。大
変、後で掃除しなくちゃ。ヘミネちゃん手伝ってね? やっぱり汚
した人が責任を持って綺麗にしないと、人間そういう所って大切よ
ね?﹂
マダムが笑いながらそう言う横で、切羽詰まった声。
﹁お、おおおおぅ、くぅぅぅ良いケツ穴だぁぁぁ、出すぜぇぇぇ﹂
﹁ぬほっああううめくれ⋮⋮めくれるぅ⋮⋮﹂
丸坊主が上ずった声を上げ、アミュスが肛門への激しいピストンに
278
脂汗を流す。
丸坊主の体が痙攣する。
今まさに、アミュスの体内に精液が注がれていく。
﹁ほぉら、ヘミネちゃん? 急いで描かないともう時間が無いわよ
? 次オシッコして出来上がったジュースをアミュスちゃんが飲ん
だら終わっちゃう。もしそれまでに描き終わらなかったら⋮⋮やっ
ぱり別の人にもう一回ジュースを作ってもらうしかないわよねぇ﹂
マダムの言葉に、ヘミネは泣きながらクレヨンを取った。
肌色、黒、白、赤。
四つん這いになった女の体を描き、その背後に立って尻を犯す男の
体を描く。
﹁あぁダメよ! ヘミネちゃん。確かにその姿勢は大切だけれど、
わたくし思うの、今回の記録で大切なのは﹃精液とオシッコのジュ
ースを飲んだ﹄っていう部分じゃないかしら? だからジュースを
作ってる過程は置いて、飲んでる姿を絵に描いて? ほら、仕方が
ないから枠をはみ出しちゃっても良いから隣にジュースを飲む姿を
描きましょう﹂
ヘミネは愕然とした思いでマダムを見やるが、マダムは魚顔に笑顔
を張り付けて見返してきた。
その隣で、
﹁く⋮⋮うぅぅぅぅ。早く! 早く小便出しなさいよ! 終わらな
いでしょ!﹂
アミュスが声を上げた。
彼女の肛門を犯していた男は、ニヤニヤ笑いを浮かべ、腰を休める
様子は無い。
﹁いやさぁ⋮⋮実は俺さっき便所でションベンしてきちまってさぁ、
あんまり溜まってないんだよなぁ⋮⋮今頑張って尿意を刺激してる
所なんだよ、もうちょっと我慢してくれや﹂
そう言ってテンポよく腰を動かし、アミュスの肛門を抉り続ける坊
主頭。
279
﹁な⋮⋮なら、べ⋮⋮別の⋮⋮いえ⋮⋮良いわ⋮⋮﹂
ヘミネはアミュスがとっさに言わんとした事を理解した。
しかし、言いかけた言葉は、最も発してはいけない言葉だったかも
しれない。
﹁別ぅ? アミュスちゃん別の人にオシッコしてもらいたいの? 射精してくれたその人以外の人にお腹の中にオシッコしてもらって、
精液とオシッコ別々の人のを混ぜたジュースにして欲しいの? 凄
ぉい! 面白そう。そういう事ならそこの君、今オシッコでる?﹂
案の定マダムがその単語に反応して、アミュスの言いかけた言葉を
補完する。
指名され、満面の笑みで頷いたのはモジャモジャ頭の太った男。
彼がのしのしと歩み寄ってきて、アミュスの頭を撫でた。
﹁やめっ⋮⋮違う! 私はそんな事⋮⋮!﹂
アミュスが懸命に首を振る後ろで、丸坊主が肉棒を引き抜いた。
﹁チッ仕方ねぇ⋮⋮譲ってやるよ、ただ俺はお前のションベンとか
触りたくねぇから、飲ませるのはお前がやれよ﹂
丸坊主はモジャモジャ頭に言い捨てて離れていく。
﹁でへっ⋮⋮でゅふ⋮⋮ではでは⋮⋮小生のオシッコしゃーっと⋮
⋮こちらの便器ちゃんにお見舞いしてあげちゃうでし∼﹂
モジャモジャ頭は顔に浮かんだ脂を掌に取り、その脂を肉棒に擦り
付ける。
潤滑材代わりに使ったのだ。
それは、とてつもなく悍ましい行為に思えた。
﹁やめっ! さっきの⋮⋮! さっきの丸坊主で良い! さっきの
奴の尿意が来るまで耐えるから! だから! あぁああああああ﹂
アミュスの言葉は、肛門を押し広げる脂まみれの肉棒の感触への絶
望により、途切れた。
﹁でへっ、でへっそれでは、たっぷり溜まった小生のオシッコ、召
し上がれ∼﹂
ジョボボ、と排泄の音が聞こえる。
280
本来あってはならない場所で。
﹁あ、ああああ⋮⋮うあああああああああ﹂
気丈に振舞っていたアミュスの瞳から、涙がこぼれる。
長い長い放尿を終え、モジャモジャ頭の体が軽く揺れる。
﹁ふぅ∼、すっきりでし﹂
モジャモジャ頭は肉棒を引き抜くと、アミュスの尻たぶで拭い、残
尿を払う。
﹁う⋮⋮あう⋮⋮ああう﹂
﹁アミュス⋮⋮! アミュスしっかりして下さい⋮⋮﹂
ヘミネは握りしめていた赤のクレヨンが折れるほどに拳を握りなが
ら、声を絞り出す。
﹁マリスが⋮⋮他の公娼達が、きっと助けに来てくれます⋮⋮心を、
完全に折られてはなりません⋮⋮﹂
ヘミネのその声に、アミュスが涙でぬれた顔を上げ、小さく頷いた。
﹁あらあら、素敵ね。貴女達がいると他の公娼ちゃん達も来てくれ
るのね? 楽しみだわ﹂
励ましの言葉を聞いて、マダムが笑う。
﹁じゃ君、そろそろジュース飲ませてあげて﹂
﹁了解でし∼﹂
モジャモジャ頭はアミュスの肛門のすぐ傍に両手を皿のようにして
構え、
﹁出して∼ジュースだして∼んちゅ∼﹂
分厚い唇をタコの様に突出し、アミュスの肛門に吸い付いた。
﹁ひっ! な、やめっ!﹂
﹁ちゅ∼ちゅ∼ちゅちゅ∼﹂
吸引と言うよりは、お遊びでの吸出し。
それでも、体は反応する。
元より直腸に逆流する形で入って来た精液と小便を溜めておく機能
など無い。
アミュスの肛門から、溢れ出してくる。
281
黄色と白と、茶色の混合液。
﹁うわぁい出た∼出た出た∼﹂
皿にした手に収まりきらず零れていく恥辱のジュース。
モジャモジャ頭はそれを素早くアミュスの顔の前に運んで行き、
﹁はい、飲んで∼﹂
差し出す。
アミュスは一度ヘミネを見、ヘミネもアミュスを見返す。
強い視線が、交わった。
アミュスは精液と小便、そして自身の糞で作られたジュースに吸い
付き、音を立てて一気に飲み干す。
ヘミネはクレヨンを走らせ、壮絶な覚悟を盟友と共有しながら屈辱
の日記を完成させる。
﹁うぅん。素晴らしい! 素晴らしいわ二人とも! とっても素敵
な日記が出来そうね! もちろん日記だからこれから毎日つけてい
くわよ! 二人が壊れちゃうか死んじゃうまでずっとずぅっとね。
日記は集会所の本棚で管理しておくから閲覧自由よ、皆も是非見に
来てね!﹂
マダムのその言葉に、野次馬達は歓声を上げた。
ヘミネは自身の股間に手をやり、しつこく残っていた精液を掻き出
す。
アミュスはモジャモジャ頭がこっそりと近づけて来る肉棒に唾を吐
きかけ立ち上がった。
日記作業が終わると、アミュスとヘミネには休息が与えられる。
これはマダム⋮⋮そしてゾートの方針による公娼の熟成時間だ。
夜の短い間だけでも解放し、朝が来てからの調教を想像させて心に
恐れと絶望を刻ませる時間が必要との事だった。
また、公娼に希望が残されている場合もこの時間で考え込む事にな
る為、希望を持続させる効果がある。
282
マダムは野次馬を解散させ、数名の調教師と共にアミュスとヘミネ
の両手足を鎖で結び、移動を制限する。
﹁それじゃあ、後は坊やに任せるわね、この娘達をしっかりと水洗
いして、檻に戻しておくの。できるわね?﹂
マダムは後ろを振り返って笑う。
マダム自身夜に睡眠をとる必要があるし、同僚の調教師も同じだ。
故に、夜中に公娼の世話をする人間が必要となった。
そこで白羽の矢が立った人物がいる。
聞けば父親を亡くし、幼いながらも健気に働こうとしたが開拓作業
では足手まといになり放り出され、今は何とか夕方に便所掃除をし
て少なすぎる駄賃をもらって生きているという哀れな少年だった。
マダムは慈愛の心で少年に職を与えたのだ。
便所掃除を終え、そのまま公娼達の体の洗浄や夜中の世話をし、朝
になった床に付く。
まだ十一でしかない子供には酷な仕事かもしれないが、本人にやる
気も有ったので、マダムは彼を受け入れた。
﹁ではテビィ。よろしくお願いしますわね﹂
マダムの言葉に、バケツを被り左手に便所ブラシを握った少年が頷
いた。
283
人の下に人を作る人︵前書き︶
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284
人の下に人を作る人
欠けた月が浮かぶ夜に、大人が二人、子供が一人佇んでいる。
大人は諸肌を晒し、右手と左足、左手と右足を短い鎖で結ばれ、立
ち上がれない様に行動を制限されている。
子供は金属製のバケツを頭にかぶり、左手に便所掃除で使用するブ
ラシを握っている。
つい先ほどまではこの三人以外にも数人がこの場に居たが、彼らは
規則正しい生活を送る為、自らの寝床へ帰って行った。
残された三人。
アミュスとヘミネ、そしてテビィ。
この者達には因縁がある。
少年の父親の死という因縁が。
アミュスとヘミネが直接手を下したわけでは無い。
テビィの父親が死んだのは間違いなく護衛の騎士団が放った弩によ
る結果だった。
それでも、少年は思う。
優しい父親が死んだ事。
父親が被せてくれたバケツにより一命を取り留めたが、弩の衝撃で
頭蓋骨ごと陥没し、バケツが抜けなくなった事。
立ち直ろうと仕事を始めると役立たずと罵られ蹴られた事。
ついには誰もやりたがらなかったからと言う理由で彼に宛がわれた
﹃便所掃除﹄という役割。
少年の運命を変えたのは目の前の二人だ。
責任がある。
この二人には、テビィに対する責任がある。
少年の未成熟な心は思うがまま、凶暴に肥大した。
﹁⋮⋮歩け﹂
285
少年は昏い目をして、地面に座り込んでいる二人に命じた。
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮歩けません、鎖が邪魔で立ち上がれない﹂
銀髪の魔女はそれに応じず、赤髪の修羅は鎖を振って応じた。
﹁立てないなら四つ足になって犬みたいに歩けよ!﹂
少年の声は夜の闇を裂く。
バケツを被り、手に便所ブラシを握ったテビィの滑稽な姿に、アミ
ュスは笑った。
﹁ねぇ君、勃起してる⋮⋮もうそういう気分になれちゃう歳なんだ
ね﹂
情感の籠った声で囁き、アミュスは少年の股間を見やる。
薄汚れたズボンがパンパンに膨らんでいた。
﹁⋮⋮うるさい、良いから歩けよ⋮⋮オラの仕事だ⋮⋮オラはお前
達の体を洗って、明日の朝まで檻の前で見張りをする。それで、駄
賃をもらうんだ﹂
少年の言葉に、肩をすくめてアミュスが両手足を地面につける。
ヘミネもそれに倣い、二人の公娼が尻を突き出す形で少年の前に並
んだ。
﹁そう⋮⋮じゃ、どこへ行けば良いの? いい加減精液の匂いが染
みつきそうだし、乾いて不愉快だから早く洗い落としたいわ﹂
﹁向こうにタライを用意してある⋮⋮﹂
少年はゴクリと喉を鳴らす。
目の前に並んでいるのは、彼が初めて見る、女性器だ。
周囲に精液の残滓が残り、肌は幾分か赤く腫れている。
少し上に目をやると窄まった肛門が見て取れる。
彼女達が一歩動くごとに肛門の皺が収縮し、形を変える。
意識しての行為ではない、彼の右手が伸びる。
並んでいた尻の右側、ヘミネの陰唇に触れた。
﹁ひゃっ! な、何をするか少年!﹂
赤髪の女が驚きの声を漏らすのを、彼は聞き流す。
286
ぷっくりとした大陰唇を摘み、揉み、こじ開け、露わになった入り
口を撫でる。
彼の指によってクニュクニュと変形するその部位に、たまらない興
奮を覚える。
ズボンの前は、はち切れんばかりに膨らんでいる。
﹁⋮⋮ねぇキミ。お姉さん達とシたいの? 大人達がやってるよう
な事、シてみたいの?﹂
不意に、アミュスが声をかけた。
甘く蕩ける様な、少年の脳や魂までをも﹃支配﹄してしまうかのよ
うな声で。
銀髪の下、切れ長の瞳で流し目を送ってくる。
蠱惑的な唇が蠢き、重力で垂れ下がった大きな乳房が揺れ、こちら
に突き出されている尻が振られる。
誘惑。
少年はその言葉の意味を未だ知らないが。
誘惑されている。
このまま彼女の誘いに乗れば、少年の心は彼のものでは無くなる。
都合の良い、駒となる。
﹃支配と枯渇の魔導士﹄アミュスの手駒となる。
拘束された二人にとって、もしかしたら起死回生につながるかも知
れない、貴重な一手となる。
少年の喉が鳴る。
ゴクリッ︱︱ゴクリッ︱︱。
彼の右手はヘミネの陰唇をまさぐり、穴を見出す。
小さな人差し指が、膣口に添えられる。
彼の知らない空間へ。
大人の領域へ。
﹁良いのよ⋮⋮どうせ今日もさんざん色んな奴らに犯されちゃった
んだし、最後に君一人くらい、シてあげても全然構わないの。ただ、
終わった後キチンと洗ってくれて、そして寝る前にお姉さん達の﹃
287
お願い﹄を一つ聞いてくれるって約束してくれるのなら、ね﹂
アミュスは蠱惑的に微笑み、腰をくねらせる。
少年の瞳に、炎が宿った。
ヘミネの陰部を漁っていた右手を戻し、自らのズボンのベルトを引
き抜き、下着ごと脱いだ。
皮の被った色素の沈着が見られない、幼い肉棒が露わになる。
﹁お、オラのお父は⋮⋮お前達のせいで死んだ⋮⋮死んじまったん
だ﹂
少年の瞳から、涙があふれる。
﹁お前達は好き勝手に暴れて、殺して、捕まって。そんでもって大
人達だけでギャーギャー遊んで、オラは⋮⋮オラはお父を殺されて、
お仕事も放りだされて⋮⋮便所掃除して食ってる﹂
左手に握った便所ブラシがブルブルと震える。
﹁要らないんだ⋮⋮オラなんて、役に立たないタダのガキなんて⋮
⋮。便所掃除の駄賃なんてたかが知れてる⋮⋮毎日芋しか食ってね
ぇ⋮⋮水しか飲んでねぇ⋮⋮どうして、どうしてオラばっかりこん
なに不幸なんだよぉ⋮⋮オラはここで一番不幸なのかよぅ⋮⋮教え
てくれよぉ﹂
少年は肉棒を夜風に晒したまま、さめざめと泣いている。
ヘミネはアミュスを横目で見つめ、その判断に委ねた。
少年を手駒とする為に、この応答は非常に大きな意味を持つ。
アミュスは数瞬考え、答えを見つける。
相手は子供、親を失ったばかりで世間の厳しさに打ちひしがれてい
る状況。
それならば、優しく包み込んでやるフリでもしてあげれば、簡単に
堕ちるだろう。
そう判断した。
﹁可哀そうに⋮⋮辛かったのね。でももう大丈夫、お姉さん達が話
を聞いてあげるし、慰めてあげる。気持ち良い事もたくさんしてあ
げる。だからね︱︱﹂
288
意図して自分達の罪については触れなかった。
年端のいかない少年相手に論理を尽くす必要性を感じなかった事も
一つだが、それだけは拭い様の無い事実だという事も否定できない
からだ。
だがしかし、少年の思考をアミュスは完全に読み違えた。
テビィが欲しかったのは自分に﹃優しくしてくれる存在﹄では無か
ったのだ。
彼が欲したのは、
﹁﹃オラより不幸な人間﹄は居ないのかよぉぉぉぉぉぉぉ﹂
絶叫し、左手に握っていた便所ブラシを突き刺す。
的は、アミュスの膣口。
野外に簡易で設置され、下水の設備など有るはずも無い便所を擦り、
磨き、汚水を吸って汚物を付着させた、清掃道具。
﹁おごぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!﹂
ゴワゴワになったブラシの先端が膣に突き刺さり、アミュスはくぐ
もった悲鳴を上げる。
テビィは取っ手を握り、狂ったようにブラシで穿り回す。
﹁な、何をしている!﹂
ヘミネが振り返って、叫んだ瞬間。
﹁うるさいうるさいうるさい! オラより不幸な人間を作るんだ!
お前達を今よりもっと汚くして、人間の中で最低の存在にしてや
るんだ!﹂
テビィが腰を動かし、狙いを定めていたヘミネに膣に肉棒を捻じり
込んだ。
﹁ひうっ!﹂
﹁ああああああああ。凄いぃぃ、ぬるっとしてぇぇ⋮⋮あああああ
あ出るぅぅぅぅぅ﹂
テビィは挿入から一秒に満たない間に果てた。
若すぎる肉棒は刺激に対してあまりに敏感だった。
貯め込まれた精液が放出され、ヘミネの子宮を目指していく。
289
﹁く、ぅぅぅうぅぅ、抜きなさい! 今すぐ抜きなさい!﹂
ヘミネは不意打ちによる失意をすぐに回復させ、少年に強い口調で
言った。
﹁だまれだまれ! お前達みたいな汚い奴らなんかが! オラに向
かって口答えするなぁ!﹂
テビィは左手を休む事無く動かし、便所ブラシでアミュスを犯す。
同時に地面に脱ぎ捨てたズボンのポケットから便所掃除で使用した
雑巾を取り出した。
ヘミネの膣から肉棒を引き抜き、ポッカリと開いたその空間に筒状
に丸めた雑巾を差し込む。
﹁おほぉぉぉぉぉぉぉぉ﹂
二人の公娼は両手足を拘束されている為、抵抗が出来ない。
﹁やめっ! 抜けっ! 抜きなさい!﹂
銀髪の魔導士アミュスの膣に挿さっているのは、便所ブラシ。
小便器の内側を擦り、黄色くこびり付いた小便カスを吸収すると共
に、
大便器からはみ出した誰のものかもわからないクソを拭い、染みつ
けている。
﹁汚い! 汚いぃぃぃ﹂
赤髪の修羅ヘミネの膣に挿さっているのは、雑巾。
便器の周りに跳ねて水溜りになっていた尿を吸いこみ、
吐き捨てられた痰や唾も巻き込んで変色した、汚物の塊のようなも
の。
テビィは左手で便所ブラシを回転させ、右手で雑巾を奥まで押し込
んでいく。
﹁あはははははは! すごい! すごいや! オラよりよっぽど汚
い! 臭い! 気持ち悪い!﹂
アミュスとヘミネは全力で嫌悪感を示すが、その陰部からは絶えず
愛液が滴る。
ゾートやオルソーにより薬物処置を受けている為、通常の人間より
290
も何倍も性的に反応してしまうのだ。
狂笑するテビィによって、二人は犯されていく。
やがて、
アミュスの膣から零れてくる愛液に、乾いた糞のカスが混ざり、
ヘミネの膣から零れてくる愛液に、黄ばんだ汚れが混ざる。
ブラシの角度を変え、タワシ部分に付着した汚れを膣壁で落とす。
雑巾を全て膣内に押し込み、手を差し込んで中で揉みくちゃする。
そう、これは。
掃除だ。
ただの掃除ではない。
﹃便所掃除に使用した掃除道具﹄の掃除。
第一段階で公娼の膣を使って零れた愛液により水洗いする。
第二段階に︱︱
﹁ほら、舐めて。細かい汚れが取れてないから、口で綺麗にして﹂
テビィはアミュスの膣から引き抜いた便所ブラシを、ヘミネの口に
押し込む。
﹁それでこっちは、べちゃべちゃになってるから水分取らないと、
ここを使おう﹂
今度はヘミネの膣から取り出した雑巾をアミュスの髪に絡め、水分
を移していく。
二人の正面に立ち、片手でヘミネの口に便所ブラシを当て、もう一
方の手でアミュスの髪を使い雑巾を乾かす。
公娼達は自分達の扱いに、存在に絶望する。
肉欲によって犯されるのでは無い。
汚物処理の道具を体︱︱性器を使って清めさせられる。
力によって屈服させられるのでは無い。
少年の狭すぎる価値観によって強いられる屈辱。
掃除道具の掃除という役目。
魔導と知略に優れ、万軍を相手にした魔導士であった自分。
誇りある貴族であり、勇敢な戦士であった自分。
291
そんな自分達が今、年端のいかないバケツを被った滑稽な少年の手
によって、尊厳の全てを汚されている。
決定的な瞬間は、この時訪れた。
二人の体が、今まで必死に両手足を踏ん張り四つ足で立っていた体
が落ちる。
尻もちをつき、両足をM字に開き、両手をその前に付く。
舌を出し、目を蕩けさせる。
犬の様に。
少年が二人の前に立ったまま、肉棒を持ち上げる。
少しして、黄色く濁った小便が迸る。
二人はそれを顔で受け、口に入れ、喉に落とす。
放尿が終わり、肉棒が下を向くと、アミュスがおもむろに頭を動か
す。
少年の肉棒を咥えこんだ。
じゅるじゅると残尿を吸いこんで行く。
口をだらしなく開いたままアミュスが頭を引くと、今度はヘミネが
肉棒に口を寄せる。
舌で包皮を剥き、亀頭やカリの裏までを舐めしゃぶりカスをついば
む。
テビィはヘミネの頭が遠ざかって行く瞬間、二人の頭を容赦の無い
力で叩いた。
そして手で示す。
後ろを向けと。
公娼達はノロノロと動き、テビィに尻を差し向ける。
テビィは再び勃起を取り戻した肉棒で、二人の穴を犯していく。
膣も肛門も。
アミュスもヘミネも。
抵抗は無い。
反応が有る。
嬌声が上がり、愛液が溢れ、潮が飛ぶ。
292
肉棒の一突きで腰をくねらせ、乳房を跳ねさせ、阿呆な声で叫ぶ。
二人は堕ちた。
捕らえられてから五日目に、彼女達は早々に自発的な抵抗を諦めて
しまった。
アミュス、
そしてヘミネは、
公娼に戻り、生きる事になった。
それからの事について、特別に記す事は無い。
アミュスとヘミネは開拓団付きの公娼となり、毎日決まった時間に
穴を提供し、娯楽作品の撮影にも抵抗なく応じた。
調教は薬物実験、魔物との交配等多岐にわたって展開され、調教師
の技術の向上につながった。
夜はマダム・オルソーにより義務付けられた日記作成を行い、自由
閲覧となった彼女達の日記帳は開拓民の話題のタネとなった。
夜中は便所掃除人のテビィ少年の手により有意義に使われている。
少年の愛用する掃除道具の掃除を彼女達が行っているとの事だが、
その話を聞いても他の開拓民達は首を傾げ、﹃それに何の意味が?﹄
と尋ねると、少年ははにかんで笑い、﹃秘密﹄と答えるそうだ。
公娼の利用により開拓団の士気は安定、作業も滞りなく進行し、ゼ
オムントとの緩衝地となる砦の完成は当初の予定通りとなりそうだ。
完成を間近に控えた夜にリトリロイはセリスと祝杯を挙げ、笑い合
い、喜び合い、愛し合った。
二人が甘い言葉を囁き合いながら体を重ねる天幕から少し離れた場
所で、
今日もまた二人の公娼は、
﹃掃除道具の掃除﹄を行っている。
293
人の下に人を作る人︵後書き︶
リトリロイ編一旦終了です。
また誰か捕まえたら視点はここに戻って来ます。
294
湯を通して︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
295
湯を通して
﹁し、失礼いたします⋮⋮シャスラハール殿下⋮⋮﹂
そう言って、白く滑らかな肌が少年の眼前を過ぎていく。
膝の裏が、尻が、弓反りになった背中が、短い黒髪の隙間から覗く
うなじが。
﹁は、はい⋮⋮あの、どうぞ⋮⋮﹂
黒肌の少年、シャスラハールは喉を鳴らす。
シャスラハールは数年間、公娼を辱める事を職務とする調教師とし
て活動してきた経験を持つ。
女性の裸については、見慣れていると言っても過言ではない。
調教師としての活動時には、ゼオムント国への復讐という強い意志
が有ったため、常に感情を殺し冷静にそれを観察してきた。
しかし、今彼の周りに居て、彼を支えてくれている八人の女性につ
いては一概にそうとは言えない。
彼女達はシャスラハールの仲間である。
志を同じくする者達である。
誓いの儀式を持った関係の者もいる。
彼女達の前では、調教師時代の感情を殺した姿は消え、シャスラハ
ールは多感な普通の少年に戻ってしまっている。
故に、ふとして目に入る裸に困惑する。
顔が赤らんで行くのを抑えられない。
今彼は湯に浸かっている。
山の斜面から湧き出た天然の温泉だ。
石で縁取りされた窪みに溜まり、人が三人程同時に浸かれる程度の
広さが有った。
西域の最奥を目指して進んでいる道中、偶然発見した。
セナをはじめとする公娼達はマルウスの里で装備の新調を行い、そ
296
の際、全裸での活動で汚れの染みついた体を洗う事は出来たが、癒
す事までは及ばなかった。
彼女達がこの温泉に喜んだ事は言うまでもないだろう。
我先にと、温泉に向かい、体を浸して疲れと汚れを取り除きたいと
願ったところで、一行の実質的リーダーであるヴェナが口を開いた。
﹃騎士ともあろう者が、仕える主君に汚れた湯を使わせる気ですか
?﹄と。
その一言で意気揚々と服を脱ぎ捨てていたセナとフレアが固まり、
同僚二人の衣服を回収していたシャロンが頷き、直属の上司である
ステアがため息を零した。
魔導士であるユキリスもその意を汲み、自らは王族であるシャスラ
ハールやハイネアの後で良いと順番を譲った。
ハイネアは幼い体でここまでの行軍に懸命に付いて来た事で疲労の
限界を迎え、温泉は目覚めてから入る事にすると言って眠りについ
た。
そして、ハイネアの侍女であるリセにヴェナから声がかかる。
﹃リセ殿に王子の湯浴みの世話をお願いします。何分残りの者は騎
士や魔導士で、そう言った所不慣れでございます。ハイネア王女の
侍女である貴女ならば、湯浴みの世話の経験もおありでしょう。そ
の間のハイネア王女の身辺の警護につきましては、わたくし共で行
っておきますので、お願いできますか?﹄
リセはその﹃お願い﹄を受けた。
その理由として、自分が一行の中で異質な存在である、という引け
目が有った。
セナにしろヴェナにしろユキリスにしろハイネアにしろ、彼女達は
シャスラハールを盛り立てる事によりゼオムントを打倒し、祖国の
奪回を目指している。
しかし、リセは違う。
リセはただハイネアの為に、彼女を守る為に辱めを受け、死地に赴
いている。
297
一人だけ、忠誠と目的の向きが異なっているのだ。
しかし誰も、その事には触れようとはしない。
リセにシャスラハールへの忠誠を誓わせようとはしないのだ。
故に、皆より幾分シャスラハールを遠く感じていた。
ヴェナの﹃お願い﹄はリセにとって良い機会に思えた。
自分はハイネア王女の臣下である。
その意識と責務はそのままに、どのようにして今回の旅の主役、シ
ャスラハールと接して行くべきか、それを掴む好機だとリセは判断
した。
だから今、彼女はシャスラハールに肌を晒し、同じ湯に浸かってい
る。
一番湯は彼に譲り、彼が存分に湯に沈みきった後、声をかけてもら
い、一思いに新調した丈の短い従者服を脱ぎ捨てて、湯へ向かった。
湯に浸かる段になって恥ずかしさがこみ上げ、背を向けたまま静々
と湯へ体を沈めた事は、失礼にあたらなかっただろうか、と今更な
がらに身悶えする。
﹁いい⋮⋮お湯⋮⋮ですね﹂
無言はまずいと判断し、リセは背後のシャスラハールに声をかける。
﹁え、ええ。と、とってもいいお湯で⋮⋮僕が一番で本当に良かっ
たのかなって⋮⋮はは﹂
シャスラハールもリセに負けず劣らず緊張した様子で、慌ただしく
言葉を紡いだ。
二人はそのまま、実に百秒ほど、固まって時を過ごした。
リセは深呼吸をし、空気を力強く肺に入れた。
自分の役目を思い出す。
湯浴みの世話。
彼の体を清め、ほぐす為に自分は今ここに居る。
それなのに無言で混浴しているだけでは、まったくもって役に立っ
ていない。
これでは自らのみならず、主人であるハイネア様の不名誉にも成り
298
かねない。
ガバッ︱︱
リセは勢いをつけて、湯船の中で体を回転させる。
上気し、赤らんだ顔のシャスラハールと視線を合わせる。
リセの顔も負けず劣らずの赤みがさしていた事は、言うまでもない。
﹁御身体を、洗わせて頂きます﹂
リセの真剣な声に、シャスラハールが押されるようにコクコクと頷
く。
﹁そちらに腰掛けて頂けますか?﹂
温泉の縁、連なった石にシャスラハールが腰掛ける。
湯の中にいるリセの視線の高さに、彼の股間が来る。
硬く大きくなっている彼の陰茎が、そこには有った。
﹁あ、いや⋮⋮こ、これは!﹂
シャスラハールが慌てて両手で股間を覆う。
リセは顔を真っ赤にして、下を向く。
﹁⋮⋮だ、大丈夫です。も、問題ありません﹂
かつて日課としていたハイネアの湯浴みの世話では、もちろん見る
事の無かった光景だ。
今度は勝手が違う。
それでもやるべき事は一緒なのだ、とリセは心を決め、湯の中に膝
立ちになる。
形の良い乳房が露わになり、山の空気が撫でる。
シャスラハールの視線も一度そこに留まり、急旋回して余所を向い
た。
リセは傍に置いていた手拭いを掴み、一度湯に浸けてから搾る。
そして彼の左手を取り、手拭いを添える。
ゆっくりと揉み込むようにして、彼の黒絹の肌を洗う。
手指に力を込め、彼の体をほぐしていく。
左手が終われば、通常なら右手に移動するが、シャスラハールのそ
こは王宮の監視魔術を断ち切るために犠牲としている為、肘と肩の
299
中間で途切れている。
リセは塞がった傷口を柔らかく撫でる様にして、右手であった部分
を洗う。
この傷はハイネアや他の仲間達、もちろん自分も含める事になるが、
皆の為に出来た傷なのだと思うと、不思議と柔らかな気持ちになっ
た。
リセは顔を上げ、シャスラハールの目を見る。
肌を撫でられる気持ち良さで少々緩んでいた彼の瞳が、慌てた様に
左右に動く様を見て、ゆっくりと微笑んだ。
﹁⋮⋮気持ち良いですか? 殿下﹂
リセは手拭いを肩に置き、滑るようにして上半身を磨いていく。
﹁⋮⋮はい﹂
恥ずかしそうに、シャスラハールが笑った。
年相応だと、彼の笑顔を見て感じた。
直接聞いたわけでは無いが、シャスラハールの年齢については以前、
セナとのやり取りで聞き及んでいる。
十八歳。
それはリセが生きてきた年数と同じ。
少年と少女は、同年齢だった。
身分は違い、境遇もまったく違う人間ではあるけれども、生きてき
た時間は他の誰よりも近い。
ほんの僅かな共通点なのかも知れないが、リセには今、とても不思
議な縁に思えた。
あどけなさと精悍さを併せ持った彼の笑顔。
リセも笑い、彼の脇腹や鳩尾を手拭いで擦る。
そしてふと、目につく。
先ほどよりも俄然、力強く空に向けてそそり立っている彼の陰茎。
中腰になって彼の体に寄り添っている自分の腹部に時々当たっては
押し返してくる、少年の男の部分。
﹁えっと⋮⋮殿下、ご希望でしたら⋮⋮その⋮⋮﹂
300
リセは頬を染め、シャスラハールを見やる。
彼はその言葉の意味を汲み、顔を真っ赤にして、そっと頷いた。
手拭いを縁に置き、リセは両手を自由にする。
まずは左手を動かし、陰茎の根元、陰嚢ごと柔らかく包み込む。
そして陰茎に右手を添え、一本一本指をゆっくりと絡めていく。
左手を揺らし、指で揉みしだく。
右手を動かし、上下に擦る。
丹念に、丁寧に。
赤子を抱く母親の様な優しさを込めて。
リセにも公娼としての経験と記憶が有り、その中で手淫についても
数限りないほどに強要されてきた。
その時は必死に手を動かし、早く地獄が過ぎ去るのを願い続けてい
た。
しかしこれは、かつての様な肉欲に強制された動きではない。
奉仕。
従者が主人に行う、献身の姿。
リセがシャスラハールと結ぶ、親愛の形。
柔らかな指が陰嚢を揉み、しなやかな掌が陰茎を擦る。
リセはいつしかシャスラハールを見上げていた。
シャスラハールもまた、リセを見下ろす。
二人の口元が綻んだ。
笑う。
楽しそうに。
幸せそうに。
リセはこの時初めて、少年を理解した。
無言のまま、理解した。
これまでずっとハイネアの影に隠れ、彼女の意志にのみ従ってきた。
ハイネアがシャスラハールを信頼したから、自分も信頼する。
そんな形でここまでついて来た。
けれど、ここから先は違う。
301
リセはようやく少年を見つけた。
自分の主の悲願を託し、また自分の事を仲間として受け入れてくれ
る、もう一人の主として。
シャスラハールの腰が浅く浮いた。
表情にも心なしか余裕がなくなってくる。
﹁で、出そう⋮⋮です﹂
﹁はい⋮⋮。殿下﹂
リセは両手の動きを止めないまま、顔を下げる。
温泉はこの後、他の皆が使うはずだ。
いくらシャスラハールの精だといっても、湯に混ぜるのは憚られる。
口に咥えた。
直立する肉棒の先端を咥え、飛び出してくる精液を全て口腔で受け
止めるつもりだ。
﹁リ、リセさん⋮⋮?﹂
﹁いいへすから⋮⋮ろうぞ、れんか﹂
言葉にならない声をだし、舌で鈴口をチョイと突く。
﹁あ、うあっ! 出る!﹂
ピュルルッ︱︱
迸る精液を、リセは舌で受け、歯で感じ、喉に落とし込む。
右手と左手は休めない。
際限なく飛び出してくる彼の精を、根こそぎ啜るかのように、彼女
は深く肉棒を咥える。
射精の勢いが弱くなると、陰嚢を揉み、陰茎を擦り、鈴口を突き、
肉傘の裏を歯で削った。
﹁ああっ!﹂
ピュルッ︱︱
再び溢れ出る、彼の精。
リセはそれを、一滴も零す事無く飲みきった。
しばらく、両者の荒い呼吸が辺りを支配する。
頬は上気し、肩は呼吸に合わせて上下する。
302
チラリ、と探るようにお互いの視線が噛み合い、すぐに逸らして忍
び笑いする。
リセは笑い、シャスラハールも笑った。
友達の様に、笑った。
同じ時間を別々に生きてきた人間である二人が今、理解しあった。
けれど、リセは思う。
それでも彼は王族で、自分はしがない庶民である事に代わりは無い。
彼は彼の宿命を果たし、自分は自分の役割を果たす。
だから、例え心の奥で通じ合えたとしても、言葉の上、表面の関係
は何も変えるべきではない。
よって、
﹁殿下、次はお背中をお流しします。後ろを向いて頂けますか?﹂
言葉遣いも態度も変えない。
けれどその奥に少しだけ、優しさと愛を込める事にする。
リセは笑い、シャスラハールも笑った。
背中を洗い、足を洗い、髪を洗い。
シャスラハールは全身をリセによって磨かれた。
今は二人、言葉も無く並んで湯船に浸かっている。
最初に感じた気恥しさは消え失せ、緩やかな空気が二人を包んでい
る。
﹁そろそろ出ないと⋮⋮湯あたりしそうですね﹂
シャスラハールが少し残念そうに、呟いた。
﹁そうですね⋮⋮皆さんも早くお湯に入りたいでしょうし⋮⋮﹂
リセもまた、歯切れの悪い声で応じた。
ハイネアがシャスラハールにやけに懐いているのを、リセは不思議
に思った事が有る。
しかし今、実感する。
この少年の隣に居ると、心が落ち着くのだ。
303
その時間が刻一刻と、終わりに向かっている。
分不相応であるが、彼の時間をまた、自分が手に入れたい。
この幸せな気分を、またいつか︱︱
カサッ︱︱
人ならざるモノの気配と共に、草木が揺れる音。
リセは即座に思考を切り替え、湯船から飛び上がった。
縁にかけていた手拭いを掴み、空中で腰に巻き、着地と同時に脱ぎ
捨てていた従者服から二本の短刀を取り出す。
乳房に湯の残滓がこびり付き、乳首の頂きに上り、水滴となって落
下する。
恥じらいを僅かに感じながらも、リセは意識を集中する。
目の前に現れた、猩々型の魔物。
大型のサルの様な姿をしているが、とにかく頭が大きい。
三頭身の猩々。
瞳は爛々と輝き、口の端は急角度に持ち上がっている。
リセは一刀を振りぬき、猩々へと投擲する。
短刀は眉間に深く刺さり、致命的な傷を与えた。
人間の常識では、そうだった。
猩々は笑っている。
笑ったまま、リセとシャスラハールを見つめている。
304
大自然の力︵前書き︶
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305
大自然の力
清浄な空気が滞留する低山の中腹。
そこに湧き出た天然の温泉を舞台に、二人の人間と一匹の獣が邂逅
する。
人間は裸の男女で、獣は猿に良く似た三頭身の猩々。
﹃キォォォォォォォイヤァァァ﹄
猩々が両手を上げ、祈る仕草を取る。
両足で飛び跳ね、体と頭を激しく揺らす。
リセは油断なく短刀を構え、警戒する。
シャスラハールも温泉から出て、自身の愛刀を抜き出す。
﹃シャオオオオオ、ハラオォォォォォ﹄
猩々は狂ったように踊り、転げまわる。
バタバタとのたうち、キィキィと鳴き喚く。
しかしそれだけ、牙を剥いて人間に襲いかかっては来なかった。
﹁殿下、如何致しましょう⋮⋮?﹂
リセが膠着する事態に困惑し、シャスラハールに問いかける。
﹁襲い掛かって来ないのなら、このまま警戒しつつ後退してヴェナ
達と合流しましょうか⋮⋮﹂
シャスラハールも拍子抜けした感が抜けきらないまま、一歩後退す
る。
その時、
﹃ヒュアアアアアアアマナァ﹄
猩々の掲げた両手の間から、目も眩む閃光が迸った。
光は一直線にシャスラハールへと向かう。
﹁殿下!﹂
リセが体を割って入れようとするも、所詮は人間の動き、光の速さ
には敵わなかった。
306
﹁あぐっ﹂
光に撃たれたシャスラハール。
痛みは無い。
熱も無い。
ただひたすらに輝く閃光。
やがて、彼が視界を取り戻した時、猩々の姿はどこにも見当たらな
かった。
﹁リセさん、アイツは⋮⋮?﹂
﹁わかりません⋮⋮私も、光の影響で目が見えなくて⋮⋮申し訳ご
ざいません、取り逃がしてしまいました﹂
リセは項垂れ、短刀を仕舞う。
裸の乳と、申し訳程度に手拭いで覆われた白い尻が、シャスラハー
ルの目に飛び込む。
ドクンッ︱︱
一瞬の出来事だった。
シャスラハールの陰茎が、勃起した。
急角度。
真上、天を突く勢い。
リセの肌を認識した瞬間に、かつてない強度をもって肉棒がそそり
立った。
﹁あ、いや⋮⋮あの⋮⋮﹂
誤魔化すように手で陰茎を隠そうとするも、彼のソレは手では覆い
隠せなかった。
明らかに通常の勃起時よりも肥大している。
太く、逞しく、長く、雄々しく。
尋常ではない大きさに、成長していた。
﹁で、殿下⋮⋮一体、何が⋮⋮﹂
最初は勃起した陰茎に目を逸らしていたリセも、異変に気づいて声
を上げる。
シャスラハールは呆然としたまま、呟く。
307
﹁わからない⋮⋮、ただ、もの凄く⋮⋮今、精力に溢れてるのを感
じる⋮⋮射精したくて、射精したくて⋮⋮どうしようもない気分⋮
⋮に﹂
シャスラハールの肉棒は、子供の腕程までに成長していた。
﹁王子! 奇声が聞こえましたが、何かございましたか?﹂
宿営地作りをしていたヴェナ達が、異変を聞きつけ駆けつけてきた。
﹁それは﹃マシラス﹄⋮⋮、﹃山﹄の魔物マシラスで、間違いない
と思うわ﹂
シャスラハールとリセの話を聞いて、魔物について深い知識を持つ
ユキリスが魔導士としての考えを述べた。
﹁﹃山﹄の? ﹃猿﹄のじゃなくて?﹂
セナが首を傾げながら問う。
﹁そう、﹃山﹄の魔物。大体の魔物は基礎となる獣が力と知能を付
けた結果生じる、規格外の生物って言うのが通常なんだけど。この
マシラスは違うの、コイツは⋮⋮﹃山﹄が知能を持った時に生まれ
る魔物。一つの山に一体だけしか存在できないから、他の魔物のよ
うに群れる事も無い、けれど、厄介さで言うならば他と比べようも
ないわ﹂
ユキリスは眉間に皺を寄せ、苦しげに言葉を紡ぐ。
﹁まず間違いなく、武力ではコイツには勝てないのよ。それこそ山
を砕くぐらいの力が無いとね﹂
その言葉に、大戦斧の使い手フレアが首を振った。
﹁何を無茶な⋮⋮﹂
﹁そう、無茶。実力でマシラスを破る事は出来ない。だから魔導士
の間ではマシラスと山で遭遇した時は視線も合わせず、即逃げ出す
事になっているわ﹂
ユキリスはフレアに頷き、言葉をつなげる。
﹁マシラスは実体が有るようで無いの。山の作った幻想とも言える
308
し、肉体を持った猩々とも言える。倒すには山ごと形無きものにし
なきゃいけない。そして、コイツらの目的なんだけれど﹂
﹁目的⋮⋮ですか﹂
折り目正しく正座しているシャロンが口を開く。
その視線が時折、少し離れた所に座っているシャスラハールを見る。
﹁山の静寂を乱すものを追い出し、山を汚すもの罰する。その為に
存在している、山の代弁者と言った所かしらね。今回は恐らく、温
泉を勝手に利用して﹃汚した﹄事について怒ったんだと思うわ﹂
ユキリスはシュンとした表情で俯いているリセの方に一度視線を送
る。
リセが悪いわけでは無い。
どのみち遅かれ早かれ誰かがあそこを利用したのは間違いない事で、
リセについてはヴェナから受けた指示に従ったまでである。
﹁⋮⋮魔導士殿、そろそろお教え頂きたいのですが。今現在王子に
起こっているあの現象は⋮⋮一体何なのでしょうか?﹂
ヴェナが端正な顔の端をピクピクさせながら、ユキリスに問う。
魔導士は、答えた。
﹁山は⋮⋮精気を与える霊地の象徴でもあるの。ほら、平な地面が
有って、そこから山が隆起してるじゃない? それと⋮⋮同じ⋮⋮﹂
ユキリスは、シャスラハールの姿を見やる。
ズボンを履かず、丸太に腰掛けた少年を。
否、ズボンが履けないのだ。
余りにも肥大した、陰茎によって。
今は手拭いで下腹部を覆い隠しているが、見事な隆起が存在を誇示
している。
﹁マシラスにはさしたる攻撃手段が無いのも事実。獣としての特性
は余り無いからね⋮⋮。出来ても山の斜面を崩落させたり、毒草を
生やしたり、道に迷わせたり程度の小狡い技よ。その中の一つ、わ
たし達には効果が無いけれど、シャスラハール殿下、いえ、男にだ
け効果がでる呪いがあるの。﹃山の精気を人の体に直接注ぎ込む﹄。
309
そうする事によって肉体の限界を迎えさせ、破裂させてしまうのよ﹂
セナが青ざめた顔で、問う
﹁精気の破裂って⋮⋮?﹂
﹁精気は⋮⋮そうね、人間に言いかえると、生命力とか⋮⋮精力⋮
⋮になるんじゃないかしらね。だから今、王子はこの山そのものか
ら精力を注がれて、いずれ陰嚢から脳から、破裂させられてしまう
のよ⋮⋮﹂
ユキリスのその言葉に、動揺が広がる。
﹁何か手立ては無いのか? 例えばこの山を離れるとか?﹂
ステアの疑問に、ユキリスは首を振る。
﹁それは無理よ、いえ、無駄と言うべきね。王宮の刻印魔術と同じ、
もう王子の肉体にはこの山の呪いが刻まれてしまっているもの。解
決方法が有るとすると、二つね﹂
ユキリスは指を二本立てる。
皆、喉を鳴らし、その声を待つ。
﹁一つはマシラスを探しだし、許してもらって呪いを解除させる。
知能と発声器官のある魔物だから、意思が通じるのは間違いないの
だけれど、コイツを納得させる方法はわたしにはちょっと思いつか
ないわ﹂
そう言って、魔導士は指を一つ閉じた。
﹁それで、もう一つは何?﹂
額に浮かんだ汗を拭いながら、セナはすがる思いでユキリスに尋ね
る。
﹁山の精気が尽きるまで、王子の肉体から精を放出させ続ける。こ
こに居る全員がかつて不本意ながらやっていた公娼の技で、王子を
射精させ続けるの、山からの供給よりも放出が早ければ、それだけ
王子は楽になるわ﹂
全員の視線がシャスラハールへと集まる。
彼は上気した顔でぼんやりと丸太に座り、時折無意識に股間へと延
びる左手を懸命に抑えている所だった。
310
射精への渇望。
先ほど皆に事情を話ている時から、堪え切れぬ欲望と戦っていた。
﹁⋮⋮山の精気が尽きるとは、具体的にどれくらいの量や時間を要
するのですか?﹂
シャロンが挙手し、魔導士に問う。
﹁わからない⋮⋮。案外早く済むかも知れないし、もしかしたらこ
の山の木々や草、野生動物が死に絶えるまで続くのかも知れない﹂
ユキリスは息を吐く。
周囲に重たい空気が流れだす。
その時、シャスラハールの守護者である聖騎士ヴェナが立ち上がっ
た。
﹁ここで益体の無い会議をしていても、その間にも王子の体には山
の精気とやらが入り込んでくるのでしょう? ならば、動くべきで
す。わたくしが考えるに、先ほど魔導士殿が述べられた後者の策で
は確実にお救い出来るとは言い難く、前者の策であれば、こちらの
努力如何で結果が伴うものと思われます﹂
ヴェナは強い意志の籠った瞳で、辺りを見渡す。
﹁班を二つに分けます。一つ目の班はマシラスとやらを探し、王子
に掛けられた呪いの除去を。もう一班はその間、全力で王子の体か
ら精気を抜き出してください﹂
折衷案という事になるだろうか。
マシラスを見つけ出して呪いを解く。
途中でシャスラハールに限界が来ない様に、残していく人間で彼を
射精させる。
ヴェナの方針に、皆が頷いた。
﹁マシラス追跡班の方ですが、わたくしと魔導士殿、そして弁の立
つ騎士シャロンと鼻の利く騎士フレアで参りましょう﹂
ヴェナの言葉に、ユキリス、シャロン、フレアが頷いた。
﹁この場の事は騎士長ステアにお任せしますわ。どうか、王子の事
をよろしくお願いいたします﹂
311
聖騎士の言葉に、ステアが頷きを返す。
それからすぐに、一秒も無駄には出来ないとヴェナ達四人は装備を
整え、駆け出して行った。
苦しげに息を吐くシャスラハールを中心に、四人の公娼が固まった。
ステア、セナ、ハイネア、そしてリセ。
先ほどまで眠っていたハイネアも事態の深刻さを知り、今は疲れを
忘れた表情をしている。
シャスラハールの股間は激しく天を向き、覆い隠す手拭いを突き上
げていた。
﹁良いか? これからこの四人でシャスラハール殿下を連続して射
精させなければいけない。ヴェナ様達がマシラスを見つけ出して呪
いを解くまでの間、休まずに精気を放出させるんだ。人間一人の小
さな体でこの広い山の精気をいつまでも受け容れきれるわけが無い。
一瞬たりとも油断は出来ない。こちらもこちらで大変な役割になる。
皆、全力を尽くそう﹂
ステアが意気込み、セナとハイネアが頷く。
そして、リセが手を挙げた。
﹁あの⋮⋮宜しければ、一番手は私に務めさせてください。王子の
すぐそばに居ながらお守りできなかったのは私の失態です。どうか、
償う機会を﹂
黒髪の侍女は涙をたたえ、懇願した。
見守る三人が、それぞれの動作でその願いを了承した。
﹁良いわ、いつでも交代するから、無理しないでね﹂
﹁何も一人で遣りきるものでもなかろう。いつでも妾を呼ぶがよい﹂
﹁この辺りに野生の獣や魔物が出ないとも限らない、手の空いた者
は周囲の警戒だ。リセ、交代の時は呼んでくれ﹂
セナ、ハイネア、ステアの順に言って、この場を離れていく。
彼女達は最早制度としての公娼ではないのだ。
性交する姿を、わざわざ人に見せる必要は無い。
それゆえの、配慮。
312
リセはシャスラハールの膝元に体を置き、お辞儀をする。
﹁それでは⋮⋮殿下、お相手を⋮⋮務めさせていただきます﹂
それまではどこか放心した様子だったシャスラハールの視線が、リ
セに定まる。
覚悟を抱いた表情に、少し開いた胸元に、露出した太ももに。
これまで懸命に堪えてきた彼の理性の堤防が、決壊した。
王子は獣の様に、少女へと飛び掛かる。
﹁何度でも、何発でも、私が抜いて差し上げます⋮⋮! 王子!﹂
少女は悲壮な覚悟で、それを迎え撃った。
313
紳士淑女︵前書き︶
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314
紳士淑女
リセは背中が硬い地面に衝突するのを感じた。
痛みがある。
しかし肉体の痛みよりも、心の痛みの方がずっと強い。
シャスラハールと絆とも言える心の繋がりを結んだ直後、彼を襲撃
から守る事が出来なかった。
申し訳無さも、不甲斐無さも。
今ここで、理性を失い暴走し、自分に馬乗りになっている少年を鎮
める事で償いとしよう。
少女は強い瞳で少年を見つめる。
邪魔になる衣服を破ろうとする腕を掴まえ、噛み裂こうとする口に
こちらから唇で迎え撃つ。
﹁殿下、服を破いてはなりません。すぐに脱ぎますので、今しばら
く辛抱して下さいませ﹂
リセはシャスラハールの左手を自分の右手で抑え込み、唇同士を合
わせたまま、諭すように言った。
言葉の通り、空いた左手で従者服を脱ぎ捨てていく。
シャスラハールはリセの唇を吸い、舌で口腔を蹂躙しながら、瞳孔
の開いた目でリセの脱衣を見つめる。
興奮が、増大していく。
シャスラハールの左手が強い力でリセの拘束を解こうともがく。
それに対抗するように、リセも渾身の力でねじ伏せる。
男女の差はあれど、この二人には元からの戦闘力の違いがある。
シャスラハールがこの数年血のにじむ思いで鍛えた肉体をもってし
ても、護衛として生まれ、存在し続けたリセの力には及ばなかった。
王子は血走った眼でリセを見つめ、舌を突き入れ、腕に力を込める。
侍女は柔らかな笑みを浮かべ、舌を受け入れ、腕を掴まえる。
315
その間にも、リセの左手はボタンを外し、紐を解き、一枚一枚剥く
様にして丁寧にその身をあらわにしていく。
白い肌が、程よく張った双乳が、淡く陰毛の生えた股間が、露出す
る。
リセが己の手により一糸まとわぬ姿になった時、彼女は左手に込め
ていた力を抜いた。
黒肌の隻腕が閃く様にして動き、リセの右乳房を握る。
同時に涎の糸を引きながら唇同士の交合を外し、左乳房を舐めしゃ
ぶる。
万力の様な力で揉み、獣の食事の様に吸う。
﹁殿下⋮⋮殿下っ! お好きなだけ、私の体をお使いください。そ
うしてまた、普段の殿下に、戻って⋮⋮﹂
リセは涙を流しながら、シャスラハールの頭を両手でかき抱く。
そこにあるのは、悲痛な思いだった。
温泉の中でリセはシャスラハールとの間に絆を感じた。
同年齢であり、お互いに悲惨な境遇を背負っているという事も、そ
こにはあった。
彼を支え、ハイネアとは別のもう一人の主人として尽くす事を、リ
セはその時に胸に誓った。
しかしその日の内、一刻も経っていない内に、彼女の肉体は彼に捧
げられた。
心の伴わない、獣の性行。
いずれシャスラハールとそのような行為に及ぶであろうことはリセ
も理解していたし、また心の一部で望んでいたかもしれない。
けれど、このように︱︱無理矢理にその瞬間を迎えたくはなかった。
未だ恋をしたわけではない。
ただ彼に、惹かれた。
運命ではなく自分の意志で、新たな主を作った。
三年間公娼として植えつけられてきた地獄の記憶を忘れられるよう
な、甘やかな気持ちだった。
316
彼女はこの場に身を横たえる。
彼女が守れなかった主人への償いとして。
もう抱く事は無いだろうと諦めていた、甘い気持ちを嘘にしない為
に。
その時、リセの腕の中で黒髪が揺れる。
シャスラハールが、顔を持ち上げた。
人間では抱え切れないほどの精気を注がれ、理性を放棄し性欲に支
配された獣と化して、左手は乳房に、彼の両膝はリセの股を割り開
いて股間の怒張を陰部に擦り付けながらも、彼はリセの目を見つめ
た。
視線が交錯する。
リセは呆然と彼を見返した。
胸を掴む左手も、陰部に押し付けられた肉棒も、最後の一歩を踏み
出さない。
シャスラハールは獣の欲望に支配された心に、最後の一欠けら、優
しさを残していた。
リセの心からの同意がなければ、自分は一線を越えないと。
彼はもう調教師ではない。
心の繋がらない性行為を行う必要がない。
故に、どれだけ苦しかろうと、どれだけ心が呑まれようと、リセが
義務や責務として彼を迎えるのであれば、必死に抗う。
それが、少年が本来持って生まれた、正しい心だった。
シャスラハールとリセは瞳で通じ合った。
今彼の体は小刻みに震えている。
心と体が激しく争っているのだ。
この健気な少女への、思いに。
今彼女の心は大きく震えている。
甘い気持ちが、止めどなく溢れてきたのだ。
この優しい少年の、思いから。
リセは顎を引いて頷いた。
317
﹁良いよ⋮⋮来て﹂
リセはこの時、生まれて初めて両親以外に向けて、甘えた声を出し
た。
それから一刻が経つ。
リセの体は湯気が立つほどに上気していた。
隅々までを精液で浸し、膣から直腸から、絶え間なく白濁が溢れだ
してくる。
髪も、胸も、両の掌も、粘性に富んだ液体が全てを包んでいる。
﹁はひっ⋮⋮ひぃあ⋮⋮はひっ⋮⋮はひっ、うぉえ﹂
荒い呼吸を吐き出す喉にも、大量の精液がこびり付き、空気の流れ
を阻害している。
一方でシャスラハール。
股間の剛直は一向に弱まる事を知らず、むしろリセの肉体に触れる
度に強度と大きさを増し、精液も底なしに充填される。
唇を噛みしめ、苦しげに眉根を寄せながら、シャスラハールの瞳は
リセを捉える。
目の前でドロドロに犯されている少女に、頭を地面に打ち付けて謝
りたい。
彼の心は絶叫する。
しかし体が言う事を聞かない。
リセの白い肌が艶めかしく動く様、その膣から自分の子種が溢れ返
ってきている様が、堪らなく彼の獣性を刺激し、陰茎を暴れさせる。
今もまた、左手でリセの尻を鷲掴みにして、剛直へと近づけていく。
まだ出し足りない。
精液は、いくらでも補充される。
﹃満足する﹄などという事は無いかもしれない。
それでも自分はこの少女を果てなく汚し、苦しめるのかと、自責の
炎が湧き上がる。
318
尻を鷲掴みにされ、リセが反応しこちらを向く。
顔にこびり付いた精液を滴らせながら、彼女の頬がゆっくりと動き、
微笑んだ。
﹃私は大丈夫﹄そう言っているように感じられた。
シャスラハールは嗚咽した。
涙を流し、泣き叫んだ。
それでも体は止まらない。
肉棒はリセの膣を求め、激しく膨れ上がる。
左手は尻を掴み、華奢な体を強引に引き寄せる。
その時、まさにリセとシャスラハールが結合しようとした瞬間、
﹁なぁに泣いてんのよ、アンタ。馬っ鹿みたい。童貞の卒業風景っ
てわけじゃないんだから、もうちょっと雰囲気のある表情しなさい
よね﹂
不意に現れたセナが両者の間に割り込んできた。
シャスラハールの手をリセの尻から引きはがし、あきれた様な表情
をしている。
﹁おぉよしよし、リセよ、よく頑張ったな。こんなになるまで一人
で山の精気とやらと闘っておったのだろう? 流石、妾の誇りよ。
しばし休むが良い。後の事は妾とセナで片づけてくれよう﹂
精液まみれのリセの頭を、ハイネアが抱きしめた。
マルウスにあつらえさせた自分用のドレスが汚れるのも気にせず、
大切な従者を抱きしめた。
﹁そんなわけだから、さっき向こうでハイネア王女と話し合ってき
た結果。次はアタシ達二人でアンタの相手をしてあげる。光栄に思
いなさいよね﹂
セナが勝気に笑って、シャスラハールの胸を突く。
﹁まぁ妾はあまり体力に自信がないからのう、一人でお主の相手を
してもすぐにバテてしまいそうなのでな、恥ずかしくは有るが、こ
こはセナと協力してお主の精気とやらをカラカラにしてやろう﹂
ハイネアはリセを優しく地面に横たえてから、朗らかに言った。
319
シャスラハールは涙を流したまま、頭を大きく下げて一礼をした。
そして、そのまま目の前にいたセナに向けて、抱きつくようにして
飛び掛かっていった。
320
ランコウする愛︵前書き︶
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321
ランコウする愛
﹁アンタねぇ⋮⋮いつまで⋮⋮くっ、出してるのよ⋮⋮﹂
セナは自分の子宮口が押し広げられ、直接子宮に精液が満ちていく
のを感じながら、体を震わせた。
すでに八回。
シャスラハールがセナに向けて精を放った回数だ。
その半数を膣内で受け止めている。
マシラスの力によって山の精気を止めど無く注がれ続けているシャ
スラハールからは、一発ごとに驚異的な量の精液が放出される。
襞の一枚一枚に至るまで、彼の子種に浸食され、それでも受け入れ
きれない分は、大地に零れていった。
﹁ごめんなさい⋮⋮ごめんなさい﹂
シャスラハールの肉棒の猛りは、一向に収まる気配を見せない。
今なおセナの子宮口をこじ開け続けている彼の肉棒は、射精直後と
は思えないほどに硬く、逞しかった。
今二人は騎乗位で繋がっている。
シャスラハールが大地に寝そべり、セナがその上に跨る。
先ほどまでセナと共同戦線を張っていたハイネアは、三度の膣内と
二度の肛内、計五回の射精を受け力尽き、今はシャスラハールの隣
に倒れ伏している。
理性のほとんどを奪われ、欲望を強制されるシャスラハールは、限
界を迎え倒れているハイネアの膣口を空いた手で弄り続けている。
哀れな幼い王女は刺激が届く度に小さく跳ね、甘い声を強制されて
いる。
﹁いい加減に⋮⋮そろそろ弾切れしてもらわないと⋮⋮アタシも限
界かもしれないわ⋮⋮﹂
そう言いながら、セナは献身的に腰を動かす。
322
上下に、左右に。
跳ね、回す。
派手に水音を立てながら、結合する。
全ては騎士として、自分が仕える王の為に。
剣や槍だけではない。
自分の持てる技全てで王を助けるのだ。
今回はそれが、
彼女の膣であったという、ただそれだけなのだ。
剣を握る気合いを、槍を振るう気迫を、己の膣に込める。
凶悪に肥大した王の肉棒を締め付け、こね、吸い取る。
その事に精神を集中し、命を懸ける。
セナは両足を踏ん張り、両手を使って体の上下運動を助ける。
グチュ︱︱ニチュ︱︱
肉が擦れ、液体がぶつかり、空気が割れる。
﹁んっ⋮⋮くはぅ⋮⋮ね、ねぇ⋮⋮どう? 出る? そろそろ⋮⋮
次、でるんじゃないの?﹂
﹁あ、あああくあ⋮⋮セナさん⋮⋮セナさん⋮⋮、出ます⋮⋮出ま
す!﹂
ビュクルッ︱︱
﹁ああぁっ! 膣中にぃ! それも子宮の奥の方まで、直接ぅぅぅ
ぅ﹂
もはや彼女の膣内に、余分な空間などは無い。
シャスラハールの肉棒。
シャスラハールの精液。
そこに存在し、圧迫しているのはその二つだけだった。
子宮を直接撃ち抜くかのような怒涛の射精に、セナの体は大きく跳
ね上がる。
常人であれば恐らく、白目を剥き昏倒してしまうほどに、容赦のな
い衝撃。
セナは歯を食いしばって耐える。
323
ハイネアが倒れ、リセも動けない現状で、自分が気絶するわけには
いかない。
騎士として。
王を守る守護者として。
ここでこの肉棒を放すわけには︱︱
﹁セナ、無理をするな。君が新米だった頃に教えただろう。長期戦
の時は上手く休息を利用した側が勝つ。無理をして自滅するような
者は、騎士の風上にも置けぬ猪よ﹂
長い黒髪をたなびかせ、彼女の尊敬する上官が現れた。
﹁騎士⋮⋮長⋮⋮﹂
リーベルラント騎士国家の千人騎士長ステアが頷いた。
﹁休んでいろ、わたしが代わろう﹂
﹁騎士長⋮⋮アタシ、まだやれます⋮⋮手伝い、ます⋮⋮﹂
セナは消耗した体を懸命に動かし、ハイネアの陰部を弄り続けるシ
ャスラハールの左腕を捕まえる。
﹁弄るなら、こっちにしときなさい⋮⋮この、バカ﹂
左手を自分の胸の谷間で挟み込み、そのまま添い寝するように彼の
隣に倒れこんだ。
﹁わかった。重ねて言うが無理はするな、ヴェナ様やシャロン達が
解決に向かったとは言え、この状況が一体いつまで続くか見当もつ
かない。順番で休みながら王子の精を抜き出していくのだ﹂
騎士長ステアは部下に向けて頷き、腰を落とす。
衣服を着たまま、下着を履いたままの姿で、彼女はシャスラハール
の腹の上に乗った。
﹁さて、王子。シャスラハール王子。今更自己紹介の必要もないだ
ろう。とうに見知った関係であるわたしと貴方ではあるが、このよ
うにして契りを結ぼうとした事は無かったな。それは貴方が誠実な
男性であり、賢明な王者であったからだ﹂
324
シャスラハールは血走った目でステアを見上げる。
腹の上から押さえつけられ、両足はもがく事しか出来ず、彼の唯一
自由になる手はセナの谷間に拘束され、目の前にいる美女に触れる
ことすらできない。
﹁今はそうして魔物の術とやらに狂っておられるようだが、先ほど
までの事情をわたしなりに聞き耳を立てていたが、リセ殿やこのセ
ナに対しての言動を鑑みるに、多少の理性は残っているご様子。な
らばこの場でわたしと誓って頂こうか﹂
ステアは自らのスカートを指でつまみ、持ち上げる。
紐とレースで作られた真紅の布が、彼女の秘部を隠している。
シャスラハールの腰が跳ね、天に向かってそびえ立つ肉棒が、ステ
アの尻に擦れる。
﹁ふふふ。簡単なことだ、王子。王子はわたしが欲しいか? 王と
して、自分の為に働き全てを捧げる騎士としてのわたしの忠誠が欲
しいか? 欲しければ頷いてくれ。誓いの言葉などは必要無い。わ
たしが欲しければ、頷くのだ﹂
ステアは嫣然と笑っている。
スカートを引き上げ、下着を誇示しながら、笑っている。
シャスラハールの喉が動く。
大きく息を飲み込み、そのまま頷いた。
﹁そうか、王子はわたしが欲しいか。騎士としてのわたしが。素直
に頷いてくれた王に、臣下として報いねばならんなぁ﹂
スカートをつまむ手とは反対側、空いた手を股間にやり、
紐を引いた。
スッと一瞬の動きで、騎士長ステアの秘部が露わになる。
﹁わたしもな、ずっと欲していたのだ。騎士として仕える王を。今
の今まで成り行きで行動を共にしてきたが、この辺りで貴方とわた
しの関係を確たるものにしておきたい。セナが契り、マルウスの里
に残ったシュトラが契り、ハイネアとリセまでもが契った。わたし
はな、誇りある騎士なのだ。王に身を捧げると同時に、王に愛され
325
求められねばならない。この状況で口にするのも馬鹿らしいが、王
よ、どうか、わたしに狂ってくれ﹂
そう言ってステアは腰を上げる。
シャスラハールの肉棒の真上に、彼女の膣口をもってくる。
﹁王よ、わたしを愛してくれ。誰よりも強く、誰よりも激しく。他
の女など見ずに、一心不乱にわたしを独占してくれ。貴方の愛が深
ければ深いほど、わたしの忠義もより確固たるものになる。さぁ、
王よ覚悟は宜しいか? 貴方が、わたしのモノになる時だ﹂
スブブッ︱︱
真下に落とされたステアの肉体は、そのままシャスラハールと繋が
る。
肉棒が勢いよく挿入され、膣肉を割り開いて最奥までを突く。
﹁あああああああっ! うぐっ! 出るっ!﹂
この日何度目になるか見当もつかない精の放出が、四人目の膣に放
たれる。
子宮口をこじ開け、その内部になみなみと注がれる、王の子種。
騎士はそれを受け止め、微笑んだ。
﹁んっ⋮⋮はんっ、さぁ、いくらでもお出しなさい。全てを受け止
め、貴方を包もう。騎士は王の守護者だ。いつでも、ここに貴方の
愛を注ぐが良い﹂
ステアは腰を前後に動かし、射精直後の肉棒を刺激する。
山の精気補給は素早く、シャスラハールの肉棒はまた完全な状態に
戻った。
﹁ふふふ。さぁさぁ、わたしをお使いなさい、王よ。さて、その左
手、そこな小娘の乳程度で満足しておられるのですか? わたしの
胸の方が、遥かに豊満で、柔らかく触り心地も良いのに﹂
﹁あっ⋮⋮ああぁ、うん﹂
シャスラハールは恍惚とした表情を浮かべ、ずっと揉みしだいてい
たセナの胸を放し、ステアのソレへと伸ばす。
クニュ︱︱ギュッ︱︱
326
触れれば形を変え、沈み込むような弾力を与える騎士長の胸に、少
年の手は溺れていった。
﹁唇が、空いている。わたしのも、貴方のもだ。王は、騎士に口づ
けを下さらないのか?﹂
ステアが責めるような声音でそう言うと、シャスラハールは慌てて
上体を起こし、噛み付くようにして口を合わせた。
唾液を交換し、舌を舐め合う。
手は胸を揉みしだき、腰は休むことなく動き続ける。
王は、騎士の虜となった。
﹁な、なんだこの状況は⋮⋮﹂
意識を取り戻したハイネアが、目の前の出来事に驚愕の声を上げる。
シャスラハールの表情からは完全に理性が消えうせ、ステアを夢中
で突き上げている。
ステアはステアで嫣然と笑みながら、彼の頭を撫で、耳を舐める。
﹁うん⋮⋮。まぁ、そろそろこうなるかもっていう気はしてたんだ
けどさ⋮⋮﹂
セナは仏頂面で地面に両足を投げ出し、絡み合う二人を眺めながら、
ハイネアと言葉を交わす。
﹁騎士長って昔から⋮⋮ちょっと変なところがあってね、普段は冷
静だし頼りになるんだけど、一度忠誠の対象が絡むと人が豹変しち
ゃうのよね。アタシ達の祖国の王様は尊敬できる人だったし、アタ
シも敬愛してたんだけど、騎士長はなんて言うか⋮⋮妄愛? 王と
騎士の関係を結構飛躍させて考えてる感じでさ﹂
ハァ、とセナはため息を吐く。
﹁何度も寝所に忍び込もうとしたり、千人長から格下げされてもい
いから宮殿の見張りになりたいって異動願を出したり、王様の顔を
見る度に騒ぎ出してアタシもシャロンもフレアも大変だったんだ﹂
﹁それはまた⋮⋮難儀な騎士殿だのぅ﹂
ハイネアはセナの隣に腰を落とし、彼女の話に耳を傾ける。
無論、地べたに裸で座り込んだ両者の膣口から白濁した精液、それ
327
も同一人物から放たれたものが流れ出してきては、草や地面に垂れ
ていった。
﹁リーベルラントが滅んで、王様の死を知ってから、騎士長はすっ
かり変わっちゃってさ⋮⋮普段の冷静な面はそのままだけど、自分
を必要としてくれる王様が欲しくて欲しくて、堪らなかったんだと
思うんだ。アタシもさ、騎士として王が欲しいっていう気持ち凄く
理解できるし、そもそもアタシに騎士とは何かを叩き込んでくれた
のは騎士長だしね。だから今騎士長の喜んでいる姿に、感動してい
る部分もあるんだけど⋮⋮﹂
﹁ふむ、﹃だけど﹄か﹂
セナは立ち上がってノビをする。
﹁でもやっぱり悔しいじゃん? シャスラハールはアタシの王様で
もあるんだし! あのまま騎士長の虜にされちゃたまんないわよ!
一番最初に契ったのはアタシなのに!﹂
そう言って、絡み合った二人に向けて突撃していく紅髪の騎士。
﹁そうだのう。妾も未来の夫の関心を他の女にばかり奪われていて
は面白くないの。休憩は充分じゃ、行くか。なぁリセ﹂
﹁はい、ハイネア様﹂
ハイネアの後ろ、今まで倒れていたリセが立ち上がり、微笑む。
﹁ハイネア様﹂
﹁なんじゃ?﹂
﹁私、シャスラハール殿下の事を好きになってしまいました﹂
﹁そうか﹂
主従の間で言葉が交わされる。
﹁まぁ別に、リセならば構わぬ。二人であの男を娶ろうではないか﹂
﹁はい、参りましょう﹂
二人揃って歩き出し、絡み合う三人の輪に入っていった。
ゴゴゴゴゴゴッ︱︱
328
﹁な、何?﹂
セナは今まで啄んでいたシャスラハールの陰嚢から顔を離し、周囲
を見渡す。
﹁地面が、揺れているな﹂
ステアはシャスラハールを背中から抱きしめた体勢のまま、セナに
倣って周囲の警戒をする。
﹁な、なにかあったのか⋮⋮? 妾には何も感じられなかったぞ﹂
ハイネアが口の端から涎を零しながら言うと、
﹁ハイネア様はシャスラハール殿下に突き上げられている途中だっ
たので気づかなかったのかも知れませんが、今大地が激しく揺れて
おりました﹂
リセがシャスラハールの乳首から口を離し、答えた。
﹁⋮⋮何か異変があったのでしょうか⋮⋮? ヴェナ達の方で﹂
四人がかりで随分と抜かれた結果、山の精気供給よりも早く精を放
つ事ができ、シャスラハールの瞳に理性が戻っている。
左手と腰は、まったく止まってはいないけれども。
﹁木々の様子を見るに、山全体が揺れたみたいね。ヴェナ様はとも
かく、シャロン、フレア、ユキリス⋮⋮大丈夫よね?﹂
セナは一度呟き、またシャスラハールの陰嚢を啄む作業に戻った。
329
ヒトと言う名の動物︵前書き︶
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330
ヒトと言う名の動物
時は少し巻き戻る。
ステア達にシャスラハールの事を任せ、抜本的解決に向け、マシラ
スの捜索に向かったヴェナ、シャロン、ユキリス、フレアはひとま
ず問題の発生地である温泉を目指した。
木々をかき分け、地面を駆けて進む。
ステア達の挺身で時間が稼げるとしても、永遠ではない。
自分達が結果を残す事で、事態は終息するのだ。
ヴェナを先頭にして駆ける事数分で、四人は温泉の湧き出ている場
所に到達する。
﹁な⋮⋮まさか、こんなに簡単に⋮⋮﹂
シャロンが驚愕に目を見開いて、呟く。
﹁⋮⋮好都合です。探し回る時間を省略でき、このまま速やかに交
渉に入れるのですから﹂
ヴェナは頷きながら、前を向く。
そこには、温泉に浸かって顔を惚けさせている一匹の猩々がいた。
四人は茂みに身を潜め、猩々を眺める。
﹁魔道士殿、あれがマシラスで間違いありませんね?﹂
﹁えぇ。間違いないわ、凄く大きな魔力を感じる。マルウスだとか
ヒュドゥスだとか、そういった群体の小物とは全然違う、桁外れの
魔物って事ね⋮⋮﹂
ヴェナが確認し、ユキリスが頷く。
﹁それじゃ、さくっと謝って王子殿に掛けられた呪いを解いてもら
おう。善は急げってやつだね﹂
フレアが揚々と言い、一歩を踏み出そうとする。
﹁待って下さいフレア。相手は魔物、それも大物です。下手に機嫌
を損ねるとシャスラハール様を含め私共の身も危ない。ここは慎重
331
に対策を練り、交渉にかかるべきです﹂
シャロンが同僚の腕をつかみ、制止する。
﹁同意するわ。こういった交渉事で急いてもろくな結果にはならな
い。相手の出方をある程度予想し、こちらの方針を決めてから行く
べきね﹂
魔道士であるユキリスがシャロンと同調し、フレアを引き止める。
黒髪の騎士は素直に頷き、一歩下がった。
聖騎士ヴェナその様子を見て、相好を崩す。
﹁流石ですわね。ステア千人騎士団の参謀殿とミネア修道院の秀才
魔女殿。フレアさんの果断速攻の考えもわたくし嫌いではございま
せんが、今回はお二人の言を採用いたしましょう﹂
ヴェナが総括をし、四人は固まって顔を寄せる。
﹁それでは、まず相手の出方ですが︱︱﹂
﹃フヒュヒュヒュ 聞コエテオルゾ 人間ノ娘 ワシノ 目ト 耳
ハ コノ山ノ スベテ ジャカラナ﹄
シャロンが会議の口火を切った瞬間、湯船に浸かったマシラスが笑
い、そこからしわがれた声が紡がれた。
﹃覗キナド ツマランコトハヤメ ドウジャ 一緒ニ 風呂ニ ハ
イロウデハナイカ﹄
猩々の口でケタケタと笑いながら、﹃山﹄が語りかけてくる。
シャロンはヴェナを見、その顎が頷くのを確認してから、茂みから
身を出した。
フレアとユキリスも続き、最後にヴェナも現れる。
﹁折角のお誘いですが、私共にはまず先に済ませるべき役目があり
ますゆえ、辞退させていただきます﹂
シャロンは率先して交渉役を務め、他三人は静観する様子だ。
﹃ソウカソウカ ソレハ残念ジャ コノ体ハ 虱ガ ツイテ カナ
ワンカラノゥ 洗ッテ モライタカッタンジャガナ﹄
マシラスは湯船から身を乗り出し、四人を見やる。
﹃シテ 役目トハ ナンジャ? ワシニ ナニカ頼ミデモ アルノ
332
カノゥ﹄
訳知り顔で笑いながら、マシラスは問う。
それもそのはず、先ほどの言葉が本当ならば、マシラスにはこれま
でのこちらの会話すべてが筒抜けになっていたはずだ。
もちろん、シャスラハールの傍で対策を考えた時のことも含め、何
もかもだ。
﹁我らの主に掛けられたこの山の呪いを、解いていただきたい﹂
シャロンはあえて愚直に、要求を告げた。
ここまでの情報量の差が圧倒的である以上、これから先相手の対応
を見て突破口を開くしかない。
﹃アノ 不躾ナ 小僧ニ カケタ 呪イカ? アヤツハ 無礼ニモ
ワシガ 温メテオイタ 風呂ニ 先ニハイリヨッタ カラナ ソ
レモ オナゴ 同伴デ トテモ 許セルハナシデハナイ 天罰ジャ﹄
マシラスは不敵な笑みを崩さないまま、言った。
﹁それについては、こちらの無知による不幸な事故でございます。
もちろん主に代わって我ら一同、謝罪させていただきます﹂
そう言ってシャロンは頭を下げる。
ヴェナがそれに続き、他の二人も倣った。
﹃フム 謝罪ハ 確カニウケトッタ ソレデハ 補償ノ ハナシヲ
シヨウカノゥ﹄
﹁補償⋮⋮ですか?﹂
﹃サヨウ 神聖ナ山ノ湯ヲケガシタノダ 罪ハ償ッテモラワネバ ナラン﹄
マシラスは舐めるようにして、四人の肢体を眺める。
﹃主ニカワッテト 申シテオッタナ ナラバ オマエタチノ 体デ
償ッテモラウトシヨウ サァ 脱ゲ 裸ニナレ コノ山ニ住マウ
獣達ト オナジヨウニ 産マレオチタママノスガタニ ナレ﹄
シャロンは白く綺麗な指を使い、自ら騎士服の袷を外していく。
333
フレアとヴェナも同種の服装なので、同じ要領で服を脱いでいく。
ユキリスだけは魔道士用のローブな為、脱ぎ方が異なっているが、
同じく裸になっていく。
マシラスが好色な目でこちらを眺めている。
逆らう事は、現実的に得策ではない。
ユキリスの話によればマシラスを消滅させる事は事実上不可能な為、
速やかにシャスラハールの呪いを解くためには、指示に従うしかな
いのだ。
シャツを脱ぎ捨て、スカートを取り払う。
その時、辺りがざわついているのを感じた。
﹁⋮⋮野生動物が、集まってきましたね⋮⋮﹂
ヴェナが胸当てを外しながら言う。
彼女の言葉の通り、鹿や猪、マシラスとは似つかない別種の猿、キ
ツツキやフクロウ等の野鳥に、蛇や蛙までもがこの場に集まってき
ていた。
﹃コノ山ノ獣ハ ワシト 感覚ヲ共有シテオルカラノゥ 手足ノゴ
トク操ルコトガデキルデナ コノ場ニ 呼寄セタノヨ﹄
﹁⋮⋮何のために、ですか?﹂
﹃サァテノ ホレ サッサト 脱ガンカ 年寄ヲ アマリマタセル
デナイ﹄
マシラスの声に急かされ、シャロンは下着の紐に手を掛ける。
紐を静かに引っ張り、地面に薄い桃色の布きれを落とす。
陰部が露わになり、山を巡る風が、柔らかく撫で上げてきた。
他の三人も同様に、一糸纏わぬ姿となり、秘部を含め全てを晒して
いる。
﹁脱ぎました⋮⋮それで、私共に何をなさろうというのですか? このまま全員で貴方様と混浴し、下半身のお世話をすれば宜しいの
でしょうか?﹂
シャロンは瞳を眇め、マシラスを見やる。
猩々は、クヒヒと笑った。
334
﹃イヤイヤ コノ体ハジッタイガアルヨウデ ナイ ユエニ ソノ
ヨウナ楽シミカタハ デキンノデナ ツイテマイレ 場所ヲカエル﹄
マシラスは飄々と歩きだし、山を登っていく。
﹃服ヤ 武器ハ ココニオイテイケ ソノママ裸デ ワシニ ツイ
テ クルノジャ﹄
シャロンはヴェナ達と視線を交わし、頷きあってその背中を追った。
四人の後ろを、野生動物達がついてくる。
鹿や猪は四足で、猿は木々を飛び移り、鳥達は旋回しながら、蛇は
地面を這い、蛙は跳ねる。
人間と動物が、裸で行進している。
衣服を纏わず、己の足で移動する四人と、獣達との間に、何か一つ
でも差があるのだろうか。
マシラスは一定の速度で山を進んで行くが、整備の行き届いた平地
ではない以上、小川を飛び越え、岩場をよじ登りながらの移動とな
る。
シャロンが小川を越えるために大股で渡ろうとした時、丁度通過す
る位置に、川魚が異様なほど密集して、上を見上げているのを見つ
けた。
上を通り過ぎていく彼女の陰部を眺めているように、感じた。
岩場を手足の力でよじ登っていく時には、岩壁と密着した尻の下に、
蛇の頭が陣取り、また強い視線を感じた。
見られている。
マシラスはこちらを振り返らずに真っ直ぐ山を登っているが、野生
動物の目を使って、こちらの痴態を眺めているのだ。
そして、
﹁ひっ! な、なに?﹂
ユキリスが悲鳴を上げ、尻に手をやる。
裸の白い尻に、黒々と光るクワガタムシとカブトムシが飛びついて
来たのだ。
﹁取ってやる、ジッとしてて﹂
335
フレアがそう言い、ユキリスの尻に手を伸ばした時、マシラスが振
り返った。
﹃ナラン ナランゾ ソノ虫モ山ノ一部 ワシソノモノジャ ムゲ
ニ アツカッテハ ナラン オマエタチハ 今コノ山デモットモ程
度ノ低イ命ジャ ホカノ生命ヲ 奪ウヨウナコトハ 断ジテ ナラ
ン﹄
ニタリと、笑っている。
﹃モシ 許可ナク 生命ヲ奪ッタリ 活動ヲ邪魔シタ 場合ハ オ
マエタチノ 主ノ命ヲ ワシガ奪ッテヤロウゾ﹄
マシラスがそう言った瞬間、クワガタムシとカブトムシは、ユキリ
スの尻の割れ目に潜り込んでいく。
﹁ひゃあっ! どうして! 入ってくる⋮⋮!﹂
﹃言ッタデ アロウ? 手足ノゴトク ジャト ナァニ 前戯ヨ前
戯﹄
カブトが肛門に、クワガタが膣口に、張り付く。
﹃フヒュヒュヒュ ドォレ 具合ヲ確メテヤロウ﹄
カブトの角が肛門に侵入し、クワガタの角が膣口を押し広げる。
ユキリスは昆虫から与えられる未知の感触に慄き、とっさに手で払
おうと動かしかけるが、マシラスの先ほどの脅し文句により、行動
を縛られる。
肛門を掘り進むカブト、膣口を弄り陰核を探るクワガタ。
冷や汗を流しながら、ユキリスは前を向いた。
﹁これが⋮⋮貴方の要求なのかしら?﹂
﹃ナンノ タダノ前戯ジャヨ 本番ハ マダ先ジャ ソノママ ツ
イテマイレ ホカノ者モ 抵抗セズ 山ヲウケイレルヨウニ ナ﹄
マシラスはそう言って、歩き出す。
四人がそれに続こうとした時、
﹁なっ、おい何する! やめろ!﹂
フレアが声を上げた。
その体に取り付いているのは、二匹の猿だ。
336
一匹が正面から胸の上にしがみ付き、乳首に吸い付いている。
そしてもう一匹、フレアと歩調を合わせて並走しながら、陰部と尻
穴に手を伸ばし、弄んでいる。
﹁やめろ! 吸うな、引っ掻くな。離れろ⋮⋮離れてくれ﹂
マシラスの脅しがある以上、フレアは猿を振り払うことができない。
乳を吸われ、陰部を弄られたまま進むしかない。
﹁くっ⋮⋮皆さん、耐えてください﹂
眉根を寄せ厳しい表情で、ヴェナが言う。
その彼女の足にも蛇が五匹絡みつき、頭部を彼女の陰部に突き入れ
蠢いている。
膣に三匹、肛門に二匹。
穴の奥を貪欲に目指し、のたうっている。
﹁まだ⋮⋮ですか?﹂
﹃マダマダヨノゥ﹄
マシラスの背中に問いかけるシャロンの周囲を野鳥が飛び回り、乳
首や陰部にクチバシで強烈な一撃を見舞い、啄んで飛び退っていく。
フクロウ等の大型の鳥が迫ってくると本能的に振り払いたくなるが、
それを懸命に抑え込んで白い肌に痛々しい痣を刻んでいく。
半刻ほど、歩き続ける。
ユキリスは虫に。
フレアは猿に。
ヴェナは蛇に。
シャロンは鳥に。
それぞれ犯されながら、密生する木々を振り払い、時には素肌に触
れる枝木に足を取られながら進んだ。
ユキリスの肛門から侵入していったカブトは一向に出てこず、ただ
腹の中を這いまわる不快感が彼女を苦しめ、クワガタは陰核を二本
角でキリキリと締め上げ続けている。
フレアの上半身に纏わりついている猿は足だけで彼女の体に抱き着
き、空いた両手を使って彼女の口をこじ開け、獣臭い口を寄せて舌
337
で口内を舐めまわしている。
下半身を弄っている猿は、肛門に指を三本、膣には丸めた掌すべて
を突き入れ、グチョグチョとかき回している。
ヴェナの胎内に侵入した蛇達は、肉の壁に牙を突き立て、舌を這わ
せる。
野生種、それも毒持ちの蛇であり、聖騎士の膣は痺れを強く感じて
いた。
シャロンは全身に無数の痣を作り、顔を顰めている。
乳首は突かれ、齧られ、赤く腫れ上がって肥大し、股間は内出血で
青黒くなっていた。
やがて、マシラスは止まる。
そこは山の頂上へ後少しという、見晴しの良い場所だった。
﹃ソレデハ ココカラ先ハ 一人 ワシニ ツイテキテモラオウカ
ノコリノ者ハココデマッテオレ ソウジャナ ソコノ オマエ 金髪ノ娘 ツイテコイ﹄
マシラスが指差したのは、シャロンの頭。
﹃ワシハ オマエノ マンコガ キニイッタ 特別ニ ワシ自ラ 犯シテヤルワイ﹄
鳥達を呼寄せ、ピーピーと囀る声を聴きながら、マシラスは笑った。
﹁⋮⋮わかりました﹂
シャロンは唇を噛みしめて頷き、猩々に歩み寄る。
ユキリス、フレア、ヴェナがそれぞれ苦しめられながらも、視線で
応援してくる。
﹃チト 時間ガカカルノデナ ノコリノ者ガ暇ニナランヨウ 後ハ
獣達ニ マカセルデナ 遊ビヤスイヨウニ 必要ナ魔力ヲ授ケテ
オコウ﹄
マシラスのその言葉と共に、山から神秘の光が放たれ、幾つかの動
物に注がれた。
光が注がれた動物を中心に、辺りが騒がしくなる。
ユキリスの足元に、黒い波が生まれた。
338
﹁え⋮⋮? 何、蟻⋮⋮? イヤ⋮⋮来ないで⋮⋮﹂
フレアに向けて大型の獣が駆け出してくる。
﹁鹿に、猪だとぉ? 無理だ、やめろ! 離せ、猿共! 離せぇぇ
ぇ﹂
ヴェナは驚愕の視線を送る。
﹁蛙が⋮⋮馬鹿な⋮⋮一瞬でそんなに大きく⋮⋮牛くらい⋮⋮ある
じゃないか⋮⋮﹂
シャロンは更に強く唇を噛み、口の端から血を流しながら、猩々の
背中を追って山の頂上を目指す。
背後から聞こえる悲痛な叫び声に、耳を塞ぐ事はできなかった。
339
御山︵前書き︶
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340
御山
この地に根を下ろし、雄大な自然の一部となっていくつもの年月を
経た。
場所柄、人では無く魔と触れ合ってきた。
その結果。
己自身、魔となった。
﹃山﹄の魔物。
マシラスと呼ばれる。
同種のモノが存在しているらしいが、己と言う山は己しかない。
故に、己は山で、魔物だ。
自然の一部でありながら、意志を宿す存在。
己に宿った自我に戸惑いを覚えた事もある。
しかし、己の体を依代に生きる動物達との語らいや、ある風変わり
な悪魔と出会った事により、己はこの変化を受け入れた。
悪魔は言った。
﹃愉しめ﹄と。
浮かび上がった自我の一つに、雌を嗜虐する喜びがあった。
それを満たそう。
悪魔の語る人間の雌という存在に、なぜか強く心惹かれた事を記憶
している。
それを犯し、貪ってみたいと感じた。
あるいは、あやつ自身、人間の雌の姿をした悪魔であった事が、己
の劣情の起源なのかもしれない。
僥倖にして、己の手中に人間の雌が四人。
いかにして楽しむかと、趣向を凝らして考えた。
猩々にやつした体では観察することはできても楽しむ事はできない。
この姿は﹃山﹄の幻影でしかないのだ。
341
故に、親愛なる山の仲間達の手を借りようと思う。
彼らの力と体を借り、そこに宿した己の感覚を通して悦を得よう。
だが、それだけでも駄目だ。
それでは己自身が性交を果たしていない。
不完全な愉しみは、おおよそ精神に負荷をかける。
よって己自身、ここに選んだ金髪の娘相手に、挿入し、射精しなけ
ればいけない。
改めて言おう。
己はマシラス。
﹃山﹄である。
﹁だめぇ⋮⋮閉じて⋮⋮お願い、それ以上⋮⋮膣内に、入ってこな
いで⋮⋮﹂
ユキリスは冷たい汗を流しながら念じるようにして言う。
今彼女の膣口はクワガタの角により大きく開かれ、その穴を通して
軍隊蟻が次々に体内に侵入してきていた。
蟻たちは六本の足で忙しなく膣壁を踏み荒らし、襞に齧りつき、子
宮へと突き進んでいく。
本来限られた命を大切に育てる場所を、途方もない数の虫により、
犯されている。
肛門を押し開いて進むカブトの勢いも止まらず、ポッカリと開いた
空洞に、蟻達がぞろぞろと続いていく。
﹁無理だ! 入るわけがない! 離せ、どけぇ!﹂
フレアは地面に四つん這いになって、もがいている。
両手を一匹の猿に拘束され、背中に馬乗りになった鹿が肛門にペニ
スを突き立て、尻を合わせる様に立つ猪のペニスがもう一匹の猿に
誘導され膣に嵌められる。
﹁むぐ! やめっ、うぐぐぐぐぐ﹂
両手を拘束していた猿のペニスが口に侵入し、口と尻穴と膣、三つ
342
の穴をそれぞれ別の動物達によって犯される。
﹁やめなさい⋮⋮近寄るな⋮⋮うぐぉ、おおおおおおお﹂
聖騎士ヴェナは蛙に組み伏せられている。
マシラスの力により牛ほどに肥大した、蛙。
でっぷりとした腹を彼女に乗せ、正常位の姿勢でペニスを挿入する。
尻の穴と口には蛇が蠢き、奥へと這いずる。
穴に入りそびれた蛇は、ぷっくりと膨らんだ彼女の乳首に牙を立て、
痺れと快楽を注ぎ込む。
マシラスの操る生物達により、仲間達が無残に犯されていくのを、
シャロンは見やる。
抵抗できず、涙を流して恥辱に耐える三人の姿、
シャロンは視線を振り切り、マシラスを睨む。
﹁早く、済ませてください。彼女達の事も、シャスラハール王子の
事も。私の体が望みならばすぐこの場で汚してください!﹂
騎士の言葉に、猩々はにやけた笑みを返す。
﹃ナァニ マテマテ モウスグジャ モウチット歩ケバ ワシ自ラ
オマエヲ 犯シテヤレル﹄
そう言ってマシラスは更に山を登っていく。
シャロンは背後で聞こえる絶望の叫びに祈る様な表情を浮かべ、猩
々の背中を追った。
四半刻、シャロンは歩き続けた。
頂上に近づき、空気が薄くなっていくのを感じ、糸くず一本纏わぬ
全裸の体を冷気が襲った。
白い乳房に鳥肌が浮き、膣に直接冷風を感じる。
山そのものであるマシラスの悪戯により、落石や小規模な地滑りが
頻繁に発生し、その度にシャロンが懸命に回避して乳が揺れ、尻が
跳ね、膣口が歪むのを楽しげに猩々の目が見詰めている。
この茶番も、後わずかだ。
343
もうすぐに頂上。
おそらくそこでマシラスのお相手をしてやれば、事態は解決する。
麓で苦しんでいるシャスラハールも、中腹で凌辱の限りを尽くされ
ているヴェナ達も。
﹃サテ ツイタゾ 娘 ココジャ﹄
猩々が振り返り、シャロンを見る。
﹁ここって⋮⋮何も無いですが﹂
頂上。
見事な三角錐であったこの山の、中心点ともいえる尖った先に、到
着していた。
﹃フヒュヒュヒュ ソウカノゥ マダワカランカ サァ娘ヨ ココ
ニ跨レ 跨ッテ腰ヲフルノジャ﹄
猩々が指し示す先。
山の頂上。
この山で、一番高い場所。
その、尖った地面を指差していた。
﹁え⋮⋮まさか⋮⋮﹂
﹃ナニヲシテオル? オマエガ ワシヲ拒ムナラ フモトノ小僧ニ
精気ヲ倍ニ送リ 中腹デ楽シンデオル獣達ニ 更ナル力ヲ送ルゾ
?﹄
マシラスは楽しげに笑う。
笑いながら、シャロンの尻を幻影の手で叩く。
前へ進めと。
そこに腰を落とせと。
シャロンは相手が本気である事を悟り、瞑目して心を決める。
﹁わかりました。やらせて頂きます﹂
山の先端に腰を落とし、膣口に少しだけ食い込ませる。
冷たく硬い感触が、シャロンの体で一番柔らかい場所に届く。
﹃モット 腰ヲ落トセ 全然入ッテ ナイゾ﹄
山の幻影が不満げに言う。
344
シャロンは意識して、腰を山に押し付けていく。
先端と言っても、棒状であるわけがない。
三角に広がっていく地面に対して、膣への挿入など、容易にできる
わけが無い。
それでも懸命に、仲間の為を思い、腰を落とす。
膣が限界まで広がり、山の先端を先ほどより少しだけ奥へと導いた。
﹃ヨシヨシ ソコジャナ ソレデハ 開始 ジャ﹄
﹁え⋮⋮?﹂
猩々が両手を頭上に持ち上げ、大きく叩いた。
ズゴゴゴゴ︱︱
地面が揺れる。
山が、震える。
﹁きゃあああああああああああああああああ﹂
シャロンは膣を地面に押し付けたまま、悲鳴を上げる。
﹃オット 立チ上ガッテハ ナランゾ ソノママ ソノママ 受ケ
入レルノジャ 山ヲ ワシヲ﹄
強烈な地震。
そしてそれに合わせ、変化が生まれた。
山の先端が、細く尖りはじめたのだ。
広がる裾を削り、槍の様な形状へと変化していく。
それも、シャロンの膣の中でだ。
﹁おごぉぉぉぉぉぉぉぉ。太いぃぃぃ硬いぃぃぃぃ、揺れ、揺れが
直接体に、頭にぃぃぃぃ﹂
大地の剛直で膣を挿し穿ち、地震により衝撃を加える。
これがマシラスによる性行為だった。
シャロンは横に、縦に、マシラスの思うがままに動く大地によって
犯され、突き上げられていく。
振動に犯され、脳が揺れて言葉を紡ぐ事が出来なくなり、ただ涙を
激しく流し続ける。
マシラスは緩急をつけて大地を動かす。
345
傍から見れば全裸の女が山の頂上に股間を押し付け地震に合わせて
ヨガっている姿。
知力と剣術の冴えを評価された騎士が取っていい姿であろうはずも
ない。
やがて、性行為には終わりが訪れる。
それは山とのソレであっても、同じ事だった。
山の先端が、大きく膨らむ。
﹃オォォウ 出スゾォォ 娘! 受ケ取レェェェェ﹄
猩々が恍惚の表情を浮かべながら、叫び声をあげる。
そして、大地が一度激しく振動してから、シャロンの膣に埋まった
先端の膨らみが割れる。
中から出てきたのは、大小様々な、ミミズの大群だった。
子種の代わりにそれらを放出し、マシラスの本体である山は振動を
治めた。
後に残ったのは、ぐったりと地面に倒れ伏すシャロンと、それを満
足げに眺める猩々。
シャロンの膣からはウニョウニョとミミズが這いだし、太ももを伝
って大地へと戻っていく。
涙を流し放心する騎士に向け、山の幻影は笑って告げる。
﹃満足ジャ 小僧ニカケタ呪イハ 解除シテヤル 中腹ノ獣達ハ マァオマエタチデ 勝手ニ追イ払ウガイイ タダシ 殺シテハナラ
ンゾ 早ク伝エニ行ッテヤラント イツマデモ アノ三人ノ娘ハ 犯サレ続ケルデアロウガナ﹄
猩々がそう言って笑いながら姿を消した後も、しばらくシャロンは
立ち上がれなかった。
体が、奥底から震え続けていた。
どうにか立ち上がり、震えの残る体を懸命に動かし下山するシャロ
ン。
346
ヴェナ達を開放し、シャルラハール達と合流し、この忌まわしい山
から今すぐ立ち去りたかった。
しかし、彼女は呆然と立ち止まる。
彼女が今いる場所は頂上付近の開けた崖の上。
そこから見える。
﹁あれは、土煙⋮⋮騎影⋮⋮っ! 武装した兵士が、こちらに向か
って来ているというのですか?﹂
さほど遠くない場所を完全武装し馬に乗った人間の集団︱︱軍隊が
進軍してきていた。
ゼオムント国の騎士団の正装をした、小隊規模の部隊。
先頭に立つのは、細面の中年の男だった。
﹁早く、知らせないと! 今私達は武装を解除している。急いで武
器のある場所まで戻らないと!﹂
シャスラハールの方は護衛としてステアやセナ、リセがついている
ので、あまり心配は無い。
けれどもヴェナ達の方、未だ獣達に凌辱され続けているとすればこ
の敵襲に気づけるわけもなく、全裸のまま接敵されれば如何に勇壮
な聖騎士や魔道士であろうとも、捕縛されかねない。
シャロンは必死に山を駆け下りた。
断崖を飛び越え、岩場をにしがみ付いて降りて行く。
乳房が揺れ、股間が露わになる。
野生動物が頻繁に現れてシャロンのその姿を眺めている。
その知性を感じられない瞳の向こうに、先ほどまで彼女を凌辱して
いたこの﹃山﹄そのものがいるとしても、今はそれを気にしていら
れるだけの余裕が彼女にはなかった。
ただひたすらに、駆け下りていく。
347
凌辱者達の朝︵前書き︶
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348
凌辱者達の朝
シャロンが大自然と結合する二日前の事。
早朝、リトリロイ王子の開拓団の野営地にて、事は始まる。
薄闇が晴れ、青い空がのぞき始めたころ、野営地の一角にある幕舎
に人間が五人入っていく。
二人は着衣することを許されず、裸のまま腕を縛られ首につけられ
た輪に通した紐を引かれて連れられている。
アミュスとヘミネ。
かつてこの開拓団を恐怖と暴力で追い込み、そして堕とされた二人
の公娼。
その二人の首輪を引いているのは白いローブを纏った調教師の男が
二人。
そしてそれを先導するのが、エプロン姿をした魚顔の婦人、マダム・
オルソーだ。
﹁さぁさ、ゴダン様に﹃今朝は大事な会議をするから景気付の為に
公娼を用意しておいてください﹄と言われましたからねぇ。早いと
こ準備しちゃいましょうか。皆さん朝早くに起しちゃってごめんな
さいねぇ﹂
オルソーは幕舎の中に入ると、中央に置いてあった机を手のひらで
叩く。
男達は欠伸を噛み殺しながら、オルソーに愛想笑いを浮かべ、首を
振る。
そしてアミュスとヘミネの首輪を引いて、机へと押しやる。
男達は尻を乱暴に掴み、押し上げるようにして机の上に二人を乗せ
る。
二人の全身が机に乗ると、やおら押し倒して仰向けに寝かせる。
アミュスとヘミネは今、調教師に向けて股間を晒し、机の上に寝て
349
いる状態だ。
﹁おはよー、アミュスちゃん、ヘミネちゃん。二人とも昨日はよく
眠れた? またテビィ君に夜更かしさせられちゃったりしてないか
な? あの子は仕事熱心なのも良いけど、やっぱり少しは睡眠の時
間も用意しておかないとねぇ﹂
オルソーは二人の陰唇を見つめながら、言葉を紡いだ。
﹁で、どうなの? 眠れたの? 眠れて無いの? 答えて? ね?﹂
そう言うと、彼女は身に着けたエプロンのポケットから凹凸のある
鉄製の棒を取り出し、二人の陰部に問答無用で突き入れた。
﹁うぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、ね、ねて、ない⋮⋮夜中ずっとあの子
に遊ばれてました﹂
﹁あ、ああああああああぅ、さっき、彼の掃除道具で、体を洗われ
たとこですぅぅぅ﹂
アミュスとヘミネはその衝撃に震え、素直な声を発する。
その姿を見て、調教師の男達はようやく眠気が飛んだように、ニヤ
リと笑う。
﹁出た出た⋮⋮オルソー様の﹃マダム棒﹄これすっげぇんだよなぁ﹂
﹁あぁ⋮⋮主婦の知恵ってやつで開発された凶悪な器具。大抵の公
娼ならこいつの一刺しですぐ素直になりやがる。まぁこいつら最初
は耐えてたけど、一回堕ちてからはもうこのザマだな﹂
二人が会話のやり取りをしている間にも、マダムはブチュブチュと
アミュスとヘミネの膣をマダム棒で穿り回す。
﹁まぁ⋮⋮それはいけないわねぇ。テビィ君には後でメッてしてお
くから、今夜はしっかり寝ましょうね﹂
﹁は、はひぃぃぃぃ﹂
﹁ねます! ねますっ!﹂
オルソーは公娼二人の必死な声を聴いて、満足気に頷き、マダム棒
を抜き出した。
﹁あらやだ、汚れちゃったわ﹂
そう言って、それぞれの胸の谷間にマダム棒を突き入れ、擦りなが
350
ら粘液を落としていく。
﹁さて、それじゃあ会議の準備を始めましょうかね。とりあえず貴
方達、この二人の掃除をお願いね﹂
オルソーの言葉に調教師の二人が返事をし、しゃがみ込んでアミュ
スとヘミネの陰唇に視線を合わせる。
そのままローブから綺麗な布と棒状のスポンジを取出し、彼女達の
股間を磨き上げていく。
﹁テビィ君は仕事熱心で大変よろしいのだけど、まだまだ手つきが
洗練されていないと言うか、便所掃除と同じ感覚で公娼の掃除もや
っているのよねぇ。まぁこの二つに大差が無いという意見も理解で
きるけども、やっぱり仕事である以上、丁寧に隅々までやってもら
いたいものだわぁ﹂
マダムが腰に手を当てて嘆息する中、二人の調教師は慣れた仕事で
アミュスとヘミネの膣にスポンジを入れ、膣内まで擦りあげ、溢れ
てきた汁を布巾で吸収する。
膣の清掃が終わると次は肛門へ。
肛門は先に皺に布巾を押し当て、揉みこむようにして入口を綺麗に
してから、先ほど膣に入れたスポンジを挿入し、二、三回出し入れ
して汚れの確認をする。
﹁マダム、こちら直腸にクソが溜まってますね、出しますか?﹂
アミュスの方を掃除していた男がマダムに確認を取る。
﹁んー、いえもう時間も無いから、会議の間はこのままで。会議終
了後に一般開放される前には出しといて。一般開放は時間をきっち
り区切ってるから脱糞して時間を無駄にしてたら利用者の皆さん怒
るわよ﹂
へーいと男は頷き、作業に戻る。
もう一人、ヘミネの方を清掃している男は、
﹁ちょっと陰毛が濃くなってきたな。そろそろカットしてやるか﹂
そう言ってローブに手を突っ込み、ハサミとカミソリを取り出した。
﹁動くんじゃねぇぞぉ⋮⋮﹂
351
まずは全体的な毛の量を減らすためにハサミを使ってカットしてい
く。
そして仕上げの為に、自分の唾をヘミネの陰毛に吐き掛け、その粘
りを利用してカミソリで毛を切り揃えていく。
最後に股間全体を布巾で磨き上げて、アミュスとヘミネの清掃は終
わった。
﹁よし。じゃあ下がっていいわ。二人ともご苦労様。朝食を摂った
ら一般開放の準備をお願いね﹂
オルソーの言葉に、調教師の男達はやれやれといった態で頷き、幕
舎を後にした。
そして残されたのは女三人。
﹁さて、男共が居なくなったし、ここからは女の秘義、お化粧のお
時間かしらね﹂
オルソーはエプロンから化粧水や紅、刷毛や香水を取り出した。
﹁わたしってもう何年もこういう仕事してるからわかるんだけどね
ぇ。やっぱり不老魔術を使ってるって言っても、そこの穴に何度も
何度も他人のオチンチンを突っ込まれてると、どうしても色素が沈
着しちゃうのよねぇ﹂
香り付きの薬液をかき回しながら、オルソーは笑う。
﹁マンコの白さは人気の高さ! 黒くなってくるといくら素材や撮
影内容が良くても公娼としての人気が落ちてきちゃうのよねぇ。貴
女達とは末永くお付き合いしていきたいじゃない? だからほら、
わたしが肌のケアと美マンになるお化粧、してあげるわね﹂
﹁おや、マダム。おはようございます﹂
そう言って幕舎の中に入ってきたゴダンが見たものは、ヘミネの膣
口に紅を塗るマダム・オルソーの姿だった。
﹁あーら、ゴダンさま。おはようございます。今日も良い天気です
わねぇ﹂
352
えぇまったくっと応じながら、ゴダンはオルソーを迂回し、空いて
いたアミュスの尻を強烈に引っ叩いた。
﹁ひぐっ!﹂
﹁おはようございます、アミュス嬢﹂
ゴダンは禿げ上がった頭の下、笑顔を浮かべて言った。
﹁⋮⋮﹂
アミュスは返事をせず、視線をそらす。
バシンッ︱︱
もう一発、強烈に尻が張られる。
﹁⋮⋮おはよう、ございま⋮⋮す﹂
震える声で紡がれるその言葉に、ゴダンは笑顔で頷いた。
﹁えぇ、おはようございます。今日も一日、お勤め頑張ってくださ
い﹂
ゴダンはそう言って、机の反対側へ移動し、席に着く。
オルソーは相変わらず、ヘミネの膣口に化粧を施していた。
その時ふと、オルソーが声を上げる。
﹁あぁそうそう。このような事をゴダン様に申し上げるべきか迷い
ましたが、陳情が出てございますの﹂
﹁ほう。陳情ですか、小さな不満は大きな災厄にも繋がりかねませ
ん。よければ教えていただけませんか?﹂
ゴダンは身を乗り出して、聞く姿勢に入る。
﹁ウチで雇っている便所掃除の少年から何ですけれどぉ、開拓団の
皆さん小便器にオシッコする際に腰を引いてやっているから尿が飛
び散っていて不衛生なんだそうです。できれば一歩前に踏み出して
からしっかい便器を狙ってオシッコして欲しい、と、貼り紙でも作
ろうかと考えているようですね﹂
オルソー昨晩にテビィから言われた事を思い出し、ゴダンに報告し
た。
﹁ふむ⋮⋮まぁ男性の小便事情は人それぞれですからな⋮⋮口を挟
みたくないのも事実ですが、不衛生で疫病が広がらないとも限りま
353
せん。注意喚起の文章を作成しましょう﹂
ゴダンはやや呆れた様にして笑い、頷いた。
﹁あぁそれとですね。これは主婦としてのわたしの要望なんですけ
れども、皆さんもうちょっとゴミの分別に気を使うべきです。指定
された場所に指定された物を捨てるっていう事をしっかり守らない
と、いつかはこの陣地がゴミだらけになってしまいますわよ?﹂
オルソーがカン高い声で言うと、ゴダンは内心で呆れながらも深い
笑みで頷いた。
﹁⋮⋮そうですか。それは大変ですね。ではそちらも警告文を出し
ましょう﹂
しかし、とゴダンは考える。
警告文と言ってもこのような些末な内容の文章を、どこに載せるべ
きか。
陣地はそこそこに広い。
一か所に掲示した程度ではほとんど浸透しないだろう。
だが逆に何か所も設置した場合、このような小言で喚き立てる様な
上層部など、下からの支持を白けさせる結果にも繋がりそうだ。
そこで、ゴダンはハッとする。
目の前にあるではないか、小言をジョークの様にでき、それでいて
注目度の高い存在が。
﹁マダム、そちらの二人はもう仕上がっておりますかな?﹂
﹁え? はいまぁ、こちらの﹃洗浄済﹄の前張りを貼れば完成です
が﹂
﹁では貼ってしまってください。それと、私が行うこれからの作業
を、調教師としてお認め頂きたい﹂
そう言って、ゴダンは立ち上がり、アミュスとヘミネのもとへ移動
する。
オルソーは前張りを二枚、それぞれの陰部に張り付けて、ゴダンに
場所を譲る。
彼は手始めに、仰向けになっている二人の公娼を、机に乳を押し付
354
ける様なうつぶせの状態へと転がす。
﹁えー、オホン。それではちょっとくすぐったいかも知れませんが、
我慢してくださいね。字が歪んでしまいますので﹂
ゴダンは筆を取った。
黒い墨に充分に浸し、持ち上げる。
そしてそのまま、アミュスの背中の上に筆を躍らせた。
﹃小便をする時は一歩前に踏み出そう﹄
続けて、ヘミネの背中に、
﹃ゴミは規則通りに処分しよう﹄
長年宮仕えをしているゴダンならではの、達筆な文字が、公娼の背
中を彩った。
オルソーはそれを見て、目を輝かせる。
﹁まぁ素敵だわ! これでこの子達のマンコを利用する人々に、こ
の警告が届くのですね?﹂
﹁その通りです。彼女達の存在は開拓団において非常に大きな関心
事ですから、利用の都度この文章が見えれば、自ずと効果が期待で
きるでしょう﹂
そう言ってゴダンは満足気に頷く。
アミュスとヘミネの背中の文字が、細かく震えている。
彼女達は確かにテビィによって心折られた。
でもまだ、死んでしまったわけではないのだ。
恥辱は、肌を通して心にまで届く。
﹁そうだわ! 文字情報だけでは浸透も不十分かもしれないわ! こうしたらどうかしら? ゴダン様。この子達に、挿入される時と
射精されてる時に、背中の文字を言わせるの。そうすれば耳を通し
てもこの言葉が届くから、効果は二倍じゃないかしら?﹂
オルソーは手を叩いて発言する。
ゴダンとしても、その考えを聞いて納得し、頷きを返した。
こうして、アミュスとヘミネの役割に、﹃掲示板﹄と﹃音声アナウ
ンス﹄が増えたのだった。
355
マダム・オルソーが主婦特有の長話をし、ゴダンが辟易した気持ち
でそれに応えるという時間がしばらく続いた後、幕舎に新たな人間
が入ってきた。
﹁失礼する﹂
﹁どうも、ゴダン様、ご婦人、おはようございます﹂
一人は筋骨隆々の毛深い熊の様な大男。
もう一人は爽やかな笑みを浮かべた細身の中年男だった。
共に甲冑を纏い、騎士団所属を表すエンブレムを胸に下げていた。
﹁おぉこれはグヴォン将軍、ターキナート将軍。よくぞ来てくださ
いました。ささ、マダム、ここから先は軍属の会議になりますゆえ、
席を外していただいても宜しいでしょうか?﹂
ゴダンは本心から救われた思いで、オルソーを促し、退席させる。
オルソーは笑いながらそれに頷き、両将軍に挨拶をしてから幕舎を
出ていく。
グヴォンはそれを無視し、ターキナートは笑顔で返した。
﹁王宮魔道士殿よ、我らに授けたい任務とは何だ?﹂
グヴォンが口を開き、ゴダンに問う。
しかしゴダンは笑ったまま、手で指し示す。
机に載せられた、二人の公娼を。
﹁まぁまぁ、急ぐ話でもございませんので、どうぞ、そちらは今朝
洗浄済みの本日未使用品です。将軍方を慰労するために用意してお
きましたゆえ、私の顔を立てると思って、使って下され﹂
ゴダンのその言葉で、二人の将軍は目の前の公娼の肌を掴んだ。
﹁ふむ﹂
﹁では、遠慮なく﹂
グヴォンはヘミネを、ターキナートはアミュスを。
剛毛の生えた腕でヘミネの腰を捕まえ、﹃洗浄済﹄の前張りごと、
グヴォンはその膣に己の肉棒を押し込んだ。
356
﹁あひぃぃぃぃぃ変な、変な感触が一緒にぃぃぃぃ﹂
ターキナートはアミュスの陰部に貼られた前張りを丁寧に剥がすと、
丁寧に丸め、捨てる場所を探したようだが、辺りには見つからず、
そのまま隠すようにアミュスの肛門の中に押し込んでから、何食わ
ぬ顔で膣へと己の分身を挿入した。
﹁今、何を? お尻に何をぉぉぉぉ?﹂
バコバコと、将軍が公娼を犯す。
その時、ゴダンが口を開く。
﹁アミュス嬢、ヘミネ嬢。先ほど決めましたよねぇ? 君達はチン
コを挿入されたら、何て言うんでしたっけ?﹂
ゴダンの冷たい目が二人を見据える。
そして、二人は顔を落としたまま、言った。
﹁ご、﹃ゴミは規則通りに処分しよう﹄﹂
﹁﹃小便をする時は一歩前に踏み出そう﹄⋮⋮﹂
公娼達が上げた叫びを、将軍達は不思議な表情で聞いた。
その言葉は、彼女達の背中にも書いてある。
﹁なるほど、公娼を使っての周知作戦ですか。ははは。ゴダン様は
面白い事を考えなさる﹂
ターキナートはそう言って笑う。
グヴォンは反応を示さぬまま、徹底的にヘミネの膣を突き続ける。
﹁ではでは、本日両将軍をお呼びした用件でございますが︱︱﹂
﹁まぁ待って下さいよゴダン様。自分はセックスをする時は真心を
込めて、を理想としておりますので、行為中に野暮な話は遠慮致し
ます﹂
ゴダンの言葉を遮り、ターキナートが笑って言った。
﹁そうですか。時間も充分ありますし、どうぞ満足するまでお使い
ください﹂
ゴダンもそれに頷きを返した。
﹁さて、ではほら⋮⋮アミュス⋮⋮さんでしたっけ? より良いセ
ックスの為、笑ってください。笑いながらするセックスの何と気持
357
ちの良い事か。笑顔は日常のあらゆる行いを潤してくれますよ。さ
ぁ、笑って笑って﹂
全て、彼女の膣を無遠慮に犯しながらの発言である。
アミュスは返事をせず、ただ黙って犯され続ける。
﹁ねぇ、笑ってくださいよ。ほら、ほらぁ﹂
ターキナートはアミュスの頭を両手で後ろからつかみ、無理矢理背
を反らせて上を向かせる。
﹁笑えって、言ってるんですよ。自分は﹂
ギリギリと腕に力を籠め、腰の動きも止めないまま、彼は脅す。
アミュスは一度抵抗するように口を引き結んだ後、瞳の輝きを消し
て弱弱しく、笑った。
﹁そう、素敵な笑顔ですね。ではご褒美に膣内にたっぷり出して差
し上げましょう﹂
そう言って、ターキナートは腰の動きを速く激しくしていく。
一方で、グヴォンとヘミネの性行。
野獣の様な風貌の男が、紅髪の麗人を組み敷いている構図だ。
﹁戯言はいらん。魔道士殿、俺に一体何を命じるか、簡単に言って
くれ﹂
ヘミネの髪を掴み、それを引く事で彼女の体を肉棒に叩きつけなが
ら、グヴォンは言った。
﹁⋮⋮では、簡潔に申しまして。両将軍には私が指定する場所へ行
って公娼を捕えてきて頂きたいのです。騎兵三十騎をお付けしまし
ょう。彼らを率いて公娼の身柄を拘束し、この陣地まで連れ帰って
きてほしいのです﹂
その言葉を聞いて、アミュスを犯していたターキナートが顔を向け
る。
﹁三十騎ですか? これら公娼の中にはセリス様の様に並はずれた
手練れも居ると聞きます。それだけではこちらがやられかねないの
では?﹂
将軍として、軍の強さと公娼の潜在的な力を考えられる彼と、
358
﹁ふん、この様な人畜以下の便所女風情に兵など必要ない! 俺一
人で何人だろうと捕まえてきてやるわ!﹂
あくまで己のプライドを誇示するグヴォン。
彼は忌々しげにヘミネの尻を引っ叩く。
ゴダンはもしグヴォンとヘミネが戦ったらどうなるか、と脳内で想
像して、一瞬で止めた。
結果は火を見るより明らかだろう。
ただ体格が良いだけのグヴォンなど、あの時セリスと拮抗したヘミ
ネの右拳一つで肉塊になってしまうだろうと、戦場での彼女の恐ろ
しさを思い出し、薄く笑った。
﹁まぁまぁ。グヴォン将軍の仰ることも理解できますが、ターキナ
ート将軍の仰るように、公娼には規格外の存在も居るという事です。
そこで、これを持って行って頂きたい﹂
そう言ってゴダンは二つの錫杖を指し出す。
﹁これは?﹂
ターキナートが腰の動きを止めぬまま、首をかしげる。
﹁魔導の力をもって、魔物に一度だけ命令を強いる事ができる道具
であります。万一公娼との戦闘で不利を感じた時は、これをお使い
下され﹂
無論、これはゴダンの持つ﹃魔物の宝具﹄に由来する力を別の杖に
少々付着させただけの模造品に過ぎないが、一回限りの使用ならば
問題無いはずだ。
﹁ふん、そんな物必要ないが、公娼を捕まえた後に魔物とヤらせて
その光景を見ながら酒を呑むのも良いかもしれんな。一応受け取っ
ておいてやろう﹂
﹁有り難い。非力非才の身、この様な保険を授けていただけると、
安心して任務に就けます﹂
正反対の反応ながら、二人はそれを受け取った。
﹁それではグヴォン将軍にはマルウス族という魔物が住む集落に向
かって頂きたい。そこに数人の公娼がいる事を、私の魔導で発見し
359
ました﹂
正確にはゴダンの魔導ではなく、宝具を使い鳥型の魔物を駆使して
発見したのだが、そこまでは説明する気はなかった。
彼は同時に魔物によってシャスラハール達の動向も監視し、その現
在位置と進路も掴んでいた。
﹁ターキナート将軍はここから北北西に二日ほど馬で駆けた先に目
印となる山があるのですが、恐らくそのあたりで数人の公娼を従え
た反逆者とぶつかるはずなので、そちらの殲滅をお願いしたい﹂
二人の将軍が頷きを返す。
そして、いよいよ限界も訪れる。
﹁ふん、出すぞ、便器よ﹂
﹁出ますよー。最後まで笑顔で受け取ってくださいね﹂
将軍達は腰を激しく後ろに引き、強烈な一撃をヘミネとアミュスの
膣に見舞い、中で精液を放出した。
精が膣の中を襲い、子宮へ向かってくるのを感じながら、二人は口
を開く。
﹁﹃ゴミは規則通りに処分しよう﹄﹂
﹁﹃小便をする時は一歩前に踏み出そう﹄﹂
360
凌辱者達の朝︵後書き︶
モチベーションUPの為、明日別の話を投稿しようかと思います。
読んでいただけると嬉しいです。
361
騎士と騎兵︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
362
騎士と騎兵
マシラスの怒りを解き、シャロンが大急ぎで山の中腹に戻った時、
目にしたのは陰惨な凌辱だった。
体表と体内、そのどちらをも知性無き虫に犯されているユキリス。
大型の獣に代わる代わる形の異なるペニスを挿入され、必死に抵抗
するフレア。
凶悪なまでに肥大した蛙によって、膣内に小指ほどの大きさのオタ
マジャクシを注がれているヴェナ。
﹁マシラスの呪いは解けました! みなさん! もう大丈夫です﹂
シャロンは声を大にして叫ぶ。
犯され続けていた三人の公娼の瞳に、光が灯る。
ユキリスは己の膣に手を入れ、クワガタや蟻をはじき出す。
フレアは鹿や猪を振り払い、猿を蹴飛ばして立ち上がった。
ヴェナは鋭い蹴りで蛙を吹き飛ばすと、乳首と肛門を責め立ててい
た蛇をむしり取る。
凌辱による痕跡は生々しく残るが、三人は三人とも、生きていた。
心も、死んでいなかった。
﹁よくやってくれました騎士シャロン。先ほど山が大きく揺れてい
ましたが、大丈夫でしたか?﹂
聖騎士ヴェナが膣内のオタマジャクシを掻き出しながら問う。
﹁それは⋮⋮はい、問題ありません。それより!﹂
シャロンは説明する。
自分が先ほど見たものを。
完全武装の兵士たちが、ここへ向かっていることを。
﹁何だって? マズいぞ? 今あたし達武器が無いって。早く拾い
に行かなきゃ﹂
口内にこびり付いたどの獣の物かもわからない精液を唾と一緒に吐
363
き出しながら、フレアが言う。
﹁私達が服を脱いだ場所って、温泉の傍だったから、ここからだと
結構距離があるわ。モタモタしてる時間はなさそうね﹂
肛門に力を籠め、中を這いずるカブトをひねり出しながら、ユキリ
スが苦しげに言った。
﹁はい。早急に装備を回収し、シャスラハール王子と合流すべきだ
と思います。幸いにして数は三十騎程度でしたので、武器さえあれ
ば、私達ならば対処は可能かと﹂
シャロンは己の武勇を確認する。
特筆する所のないただの武装兵士ならば、己一人でも三十騎程度な
らば相手にできるだろう。
これはステア千人騎士団で同格だったフレアも同じ。
魔導士であるユキリスは条件が異なる為、判断はつかない。
しかし何よりも、聖騎士ヴェナ。
彼女の武勇は群を抜く。
己の上官であるステアよりも更に、その力は傑出している。
彼女の手に武器があれば、人間の兵士が群れているだけの集団など、
一捻りで血肉と化すだろう。
それゆえに、シャロンは焦っている。
﹃武器が無い﹄のだ。
この状況で敵に出会えば、最高戦力であるヴェナでさえ、ごろつき
程度の敵兵に捕えられるかもしれないのだ。
足を向ける。
下へ。
マシラスの温泉へ。
四人がいざ駆け出そうとした瞬間。
﹁おやぁ? これはこれは、捕まえる前から全裸で居てくださると
は、公娼として意識の高い方たちだ。据え膳とも言うべきかな。さ
ぁ皆さん。地面に尻を付け、脚を開いて自分の陰部をこちらに見せ
てください。笑顔で、ね﹂
364
細面の中年男が、ニヤついた声で言った。
指揮官と思われるその男の背後に、完全武装の兵士達。
山道を馬で強引に登って来たらしく、シャロンが遠目に目撃した時
と同じように馬に乗れているのは半数ほどだった。
残り半数は馬から降り、歩兵となっている。
﹁⋮⋮走って!﹂
ヴェナの叱咤と共に、シャロンは後ろを見ずに、一目散で駆けだし
た。
﹁追ってください! 捕まえた者には一番最初に使用する権利を与
えます!﹂
男の掛け声で、兵士達は歓喜の叫びを上げ、走り出した。
﹁ひぇ∼良い尻だなぁ⋮⋮俺ぁ決めた。あの金髪の子にする﹂
﹁俺はあっちだな。黒髪の短い奴。見ろよ腰がキュッとしまって、
ありゃぁ間違いなくマンコの具合が良いぜぇ﹂
﹁じゃあ俺は他三人に比べて筋肉のあんまりついてない感じの水色
髪の女が良いな。見ろよ、秀才そうな面ぁしてやがる。ああいうの
をグチャグチャに犯すのが趣味なんだ﹂
﹁まあまて。お前らの言うこともわかるが。やっぱりあのデカい乳
じゃないか? 走るたびにバルンバルン揺れてやがる。もう正直馬
の背中にチンコが擦れて出ちまいそうだよ﹂
シャロン達があえて悪路を選びながら、懸命に逃げていると、背後
から敵兵の下卑た声が届く。
彼らは幅の狭く、岩などの障害物もある騎兵にとって致命的に速度
の出ない道でも、馬から降りない。
それは、見やすいからだ。
逃走しながら、胸を揺らし、髪をたなびかせ、尻を跳ねさせる四人
の姿を堪能するためだ。
﹁もう諦めて下さいよー。貴女達の身柄はこのターキナートが心し
365
てお預かりします。命の保証ならば間違いなく。あ、でも身体の方
はこちらの自由にさせていただきますので。陣に帰るまでにたくさ
んセックスしましょうねー。兵士達にも可能ならば優しくするよう、
伝達しておきますので﹂
先頭を走る指揮官、ターキナートはそう言った。
狩猟する側の余裕。
全裸の女を、きっちりと服を着て武器まで提げた男が追う。
彼らは騎兵である。
しかしシャロンの様な騎士ではない。
騎士にあるべき高潔な魂を有していない。
金髪の下、シャロンは歯噛みする。
この様な存在に追われて、通常であれば一瞬で蹴散らせる力を持ち
ながら、ただ逃げるしかない。
恥を振りまきつつ逃げるしかないのだ。
﹁⋮⋮三人とも、聞いてください﹂
聖騎士ヴェナが口を開く。
﹁このままではいずれ追いつかれます。ここでわたくしが囮となっ
て足止めしますので、皆さんは武器を拾いに行ってください。その
後シャロンさんは王子の下へ事態の報告に、フレアさんとユキリス
さんは取って返してこちらに戻ってきてください。貴女達が戻るま
で、わたくしは死なぬよう、力尽きぬよう、闘って見せます﹂
そう言って、彼女は立ち止った。
﹁ヴェナ様!﹂
フレアが振り返って叫ぶ。
﹁行きなさい! ここで四人そろって捕縛などあってはならぬ事で
す。わたくしならばこの状態でもある程度闘えます! 急いで!﹂
ヴェナは追っ手に総身を晒し、立ちはだかる。
﹁行きましょう! フレア! 私達が武器を手にしてここに戻って
来るの! そしてヴェナ様を助けるのよ!﹂
ユキリスがフレアの手を取り、引きずるように駆ける。
366
﹁御無事で⋮⋮﹂
シャロンは噛みしめるように言って、後ろを振り向かず、大地を駆
けた。
﹁へぇ∼オッパイお化けが残ったか。残念だ⋮⋮黒髪の腰の良い姉
ちゃんはお預けかよぉ﹂
﹁まぁでもこいつでも充分遊べるって﹂
﹁そうだな。おら、仲間が逃げてる間の時間稼ぎするんだろ? さ
っさとしゃぶってくれや。一発抜いた奴から追いかけるからよ﹂
騎兵が三騎、ヴェナに近寄ってくる。
好色に顔を歪め、白刃を抜いて、ヴェナの素肌にヒタヒタとこすり
付ける。
勝者の、捕食者の笑みがそこにはあった。
ヴェナはそれに、微笑みを返す。
﹁あ? もう笑ってんのか? こりゃターキナート将軍が調教する
までも無いな﹂
﹁膣内出しの度に笑ってありがとうございますって言うようになる、
将軍のあの調教はすげぇよな﹂
﹁ひひ、でもまぁ捕まえた者が最初に使っていいって仰ってたし、
そんじゃ遠慮なく﹂
男達が馬から降りようとする。
その時、ヴェナが強烈な力で馬の首を掴んだ。
﹁わたくし、スピアカント王国本営守護を賜っておりました、リネ
ミア神聖国神事宰相様より聖騎士の号を頂く者、ヴェナでございま
す。戦場での通り名としては﹃血旋風﹄と言うものを、ゼオムント
の方々から頂いておりました。はっ!﹂
馬の巨躯が飛んだ。
ヴェナが馬の首を起点に、回転させるように投げたのだ。
その背に乗って居た者と隣に並んでいた二人の騎兵は、絶叫を上げ
367
る暇すらない。
馬を巻き込んで倒れ込みながら、彼らが最後に感じたものは、自ら
の体が上げる破壊音だった。
地面から見て、馬・人・馬・人・人・馬の順に叩き潰される。
彼らが戦場で軽食として慣れ親しんだサンドウィッチの様に、無残
な肉の塊と化す。
ヴェナは地面に落ちた直剣を手に取ると、不敵に笑った。
﹁さぁどうぞ、皆さん。こちらへ。正直に言ってわたくしと皆さん
の間には越えられぬ壁がいくつもあるかと思います。ですので、わ
たくしは裸の上、雑兵の粗悪な剣を使うという事で、どうかご勘弁
頂きたい。まぁそれでも、差は決して埋らないのですけれども﹂
ターキナートは全身に冷や汗が湧き出るのを感じた。
将軍として、幾多の戦場を駆け、猛者と出会ってきた。
その中でも、この女は傑出している。
あの騎士公娼セリスと同格かもしれない。
普通に戦って勝てるわけが無い。
﹁て、てめぇよくも仲間を!﹂
﹁許さねぇ! アイツラの弔いだ! 死体の前で死ぬほど膣内出し
してやるぜ!﹂
騎兵が二人、突っ込んでいく。
馬を使っての突進だ。
ただ立っているだけの人間が、正面から受け切れるはずがない。
﹁ふふふ﹂
ヴェナは跳躍する。
馬よりも、兵よりも高く。
そして、切り落とす。
全身の重みを借りた、強烈な斬首。
ギロチンの様に振り下ろされた剣は、二つの生首と二つの首無し死
体を生んだ。
ヴェナは微笑み、ターキナートは青ざめた。
368
﹁弓だ! 弓を使え! 相手は素肌だ! 矢が当たれば簡単に仕留
められる﹂
指揮官として、無能な男ではない。
とっさの判断で飛ばされた指示に、兵達は素早く矢をつがえ、発射
した。
﹁チッ﹂
ヴェナは舌打ちしつつ、飛び退る。
﹁射て! すぐに第二射! 射てぇぇぇ﹂
矢が雨の様にヴェナを襲う。
少なくとも二十本は、彼女の立っていた付近には届いていた。
しかし、
﹁な⋮⋮そんな⋮⋮馬鹿な﹂
﹁ふふふ﹂
ヴェナの全身は、血で濡れていた。
肌の白さと、血の赤さで、彼女の裸身は彩られていた。
しかし、その肌に傷は無い。
彼女は盾にした。
首の無い、かつて兵士であった肉塊を。
未だに血の噴出が止まないソレには矢がいくつも刺さり、ハリネズ
ミのようになっていた。
そして、投げる。
弓を構えた兵に向けて、肉塊を投げつける。
﹁うわぁ、うわあああああああ﹂
兵士は迫りくる血と肉に絶叫し、ぶつかった衝撃で落馬する。
ヴェナは近くに転がっている物を手当たり次第投擲する。
生首を、人体を、鞍を、馬を、鎧を、剣を。
気づけば、ターキナートの周りに、馬に乗った部下は一人もいなく
なった。
地にのた打ち回っている者が数名、それ以外は皆、ヴェナの手によ
り冥土に送られてしまったのだ。
369
﹁しょ、将軍! これはいったい?﹂
その時、馬術に劣り馬を降りて行軍してきていた残り半数の部下が、
追いついてきた。
しかし、ターキナートにはその部下の存在がとても頼りない。
この様な雑兵が十人と少し増えた程度で、ヴェナに勝てるとは思え
なかった。
その時、息を切らし呆然とする兵士達の向こう側に、あるものを見
た。
猩々。
知性を宿した瞳で、この状況を見守っている。
その雰囲気は、ここまでで見かけた野生の獣とは違う。
魂のある、別の存在。
ターキナートは希望を見つけた。
懐を探る。
出発前に、魔導士ゴダンから授かった奇跡の杖を。
﹁そこなる魔物よ! 我らに力を貸せ! その女を屈服させよ!﹂
ターキナートが掲げた杖に、眩い光が灯り、猩々の下へと向かった。
猩々︱︱マシラスの瞳に、支配が刻まれた。
370
闇の声が聞こえる︵前書き︶
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371
闇の声が聞こえる
いくら聖騎士が頑強で、俊敏であったところで、勝てないものは確
かに存在する。
ヴェナにとって個人での敗戦などと言う記憶は、遠いものであった。
彼女は武術の師との稽古であれ、最終的には勝利してきた。
ゼオムントとの戦争では、王宮の守りに徹し、前線に出向くことな
く敗れて公娼にされたため、地に伏した記憶は無い。
全てを刃で裂き、足で砕いて来た。
しかし、それがかなわぬ相手が存在した。
自然そのもの。
全てを踏み抜く足は泥の沼に沈み、切り裂く剣は鳥獣に奪われた。
体勢を崩し、両手を地面に突くと、それもまた泥に飲み込まれる。
肘と膝までを地中に飲み込んだ瞬間、大地は急激に冷え、固まった。
ヴェナは今、地中に四肢を拘束され、四つん這いに近い姿勢で地表
に拘束されている。
全ては、マシラス。
山の魔物を支配したターキナートの魔杖によるものだった。
﹁ひっ⋮⋮ひひひひひ。やった! やったぞ! おい、魔物! よ
くやった。捕えたぞ⋮⋮この悪魔の様な女を捕えた⋮⋮ひひひ﹂
ターキナートは頬を引きつらせて笑っている。
﹁だが、だがまだ安心できんな⋮⋮なんせあの馬鹿力だ⋮⋮地面を
割って手足を取り出すかもしれん⋮⋮おい、お前。ちょっと近づい
て探ってこい﹂
部下の一人、気弱そうな小男に命じ、ヴェナに近寄らせる。
小男はガクガクと震えながらヴェナに接近していく。
ヴェナは懸命に手足に力を込めるが、大地は固く、それを逃さない。
﹁しょ、将軍! 大丈夫のようです! こいつ、動けませんぜ?﹂
372
小男は顔面に卑屈な笑いを浮かべながら、報告する。
しかしそれでも、ターキナートは先ほどの恐怖を思い出し、疑りを
深くする。
﹁本当にか⋮⋮本当に大丈夫か? 念には念を⋮⋮だ。おい、剣を
刺せ、腕の肉を貫通させて地面と繋げ﹂
ターキナートは細い目を更に鋭くし、警戒を強める。
小男はブルブル震えながら、腰の剣を抜く。
﹁ひ、ひひ。わ、悪く思うなよ⋮⋮姉ちゃん﹂
﹁うぐっ⋮⋮﹂
突き刺す動きは、実にぎこちないものだった。
しかしそれでも、身動きできず、肌を守るものが無い聖騎士の肉を
穿つことはできた。
ヴェナの腕を貫き、大地にまで届く。
白い鋼を伝って、鮮血が降りて行く。
マシラスの補助があったからか、剣先は大地に飲み込まる。
﹁⋮⋮手足全部だ。おい、後三本あいつに放ってやれ﹂
ターキナートの指示を受け、後ろに控えていた兵達は抜剣し、それ
を小男の傍へと放る。
小男は一本を拾い、振り上げる。
﹁わ、悪いな姉ちゃん⋮上官命令でよぉ⋮⋮ホント、うへへ﹂
小男は気色の悪い笑みを浮かべながら、上から下へ、突き刺す。
﹁ぐぅぅぅぅ﹂
唇を噛み、悲鳴を堪えヴェナの両腕は、無残にも無骨な剣に貫かれ、
大地と繋がれる。
﹁じゃあ次はこっちか⋮⋮おぉ、良い眺めだぁ⋮⋮腕がちょっと下
がった分だけ、腰が浮いてマンコが良く見えるなぁ⋮⋮﹂
三本目の剣を拾いながら、小男はヴェナの尻側に回り込んで、相好
を崩した。
﹁なぁおい、ソイツのマンコはどうなってる? 今の衝撃で小便と
か漏らして無いか?﹂
373
兵達の中から声が上がる。
小男はよくよく覗き込むようにヴェナの膣口に顔を寄せ、観察する。
﹁若干マンコが開閉してるように見えるなぁ⋮⋮クパァクパァって
⋮⋮たぶん痛みに耐えてるんじゃないか? 近寄ったらわかるけど
も、結構全身に汗かいてて呼吸も荒いぜ、この姉ちゃん。お前らも
こっち来て見て見ろよ﹂
その言葉に、兵達は顔を見合す。
出来るならば恥辱の様を至近距離で眺めたいが、指揮官であるター
キナートが警戒して距離を取っている以上、自分達がおいそれと近
づくわけにはいかない。
しかし、この場で唯一馬に乗る彼らの指揮官は、それを許した。
﹁構わない。傍に言って自由にしろ。奴が拘束を解こうとした時に
即座に対応できるよう武器は携帯するように﹂
ターキナートの言葉に部下達は小躍りして囚われの聖騎士へと近づ
いていく。
﹁おぉ、良いマンコだなぁ⋮⋮楽しみだぜ﹂
﹁あぁ⋮⋮コイツに殺された仲間達の分も、思いっきり犯して辱め
てやんねーとな﹂
﹁どうせ持ち帰ったら調教師の連中が散々弄り回した後、泥臭ぇ開
拓民に使わせるんだろ。それなら俺達は今のうちにヤりまくっとか
ないとな﹂
兵達は口ぐちに言って、ヴェナの膣口の前に並んで座った。
﹁ひ、ひひ。じゃあ三本目⋮⋮行くぜぇ⋮⋮﹂
小男が剣を振りかぶり、刺す。
三本目の鋼は、ヴェナの左腿を貫いた。
﹁くっ⋮⋮あぁ﹂
ヴェナの口から声が漏れ、兵達は笑い声を上げる。
﹁おぉ、すげぇな。刺された瞬間にマンコがキュっと閉じたぞ﹂
﹁でも声が出た後はゆっくり開いたな⋮⋮﹂
﹁そんで今は開いて閉まってを繰り返してるな。はぁー。マンコっ
374
てこういう動きするんだな﹂
じっくりを視線を送り、肩をたたき合って笑う兵達。
﹁そ、そんじゃ。四本目⋮⋮﹂
小男が剣を掴もうとした時、
﹁待てよ。ちょっと試してみようぜ﹂
そう言って、兵の一人が剣を水平に構えた。
切っ先は、ヴェナの膣口。
開閉中の隙間に入り込むようにして、白刃が当たる。
ほんの僅かな剣先だけが膣に埋まり、横の刃で膣口の開閉を止める。
聖騎士の体が、堪えようのない恐怖と怒りで、一瞬揺れた。
﹁これで次右足に刺した時にマンコが閉じたら、外側が切れるんじ
ゃないか?﹂
その兵士の言葉に、周囲は再び湧いて、笑った。
﹁面白れぇな。しっかり見ておこうぜ﹂
﹁そんじゃ、やってくれ﹂
小男は頷き、剣を振りあげる。
刺す。
四回目の動作だ。
慣れた動きで突き刺し、ヴェナは虫の標本の様に、大地に打ち付け
られた。
そして、膣口に剣を当てていた男が顔を上げる。
﹁見ろよ⋮⋮。ほら、血ぃ付いてる﹂
切っ先に、僅かに付着した、鮮血。
﹁おぉ。やっぱりコイツのマンコ良い反応してるな﹂
﹁体に剣が刺さる度にマンコ締め上げるとか。変態かよ﹂
﹁でもこの分だと期待できそうだな。俺のチンコも血が出るほど締
め上げてほしいぜ﹂
兵達は下品に笑い合う。
そして、窺うようにして自分達の指揮官に視線を送る。
﹁将軍! この女を完全に拘束しました。次は、何をすればいいで
375
しょうか?﹂
期待に震える声で、彼らは問うた。
その期待に、指揮官は柔らかな笑みで応える。
﹁皆にはこの二日、強行軍を強いた。その間の皆の顔には笑顔が無
く、辛い移動だったと自分は思う。だから⋮⋮今こそ大いに笑って
ほしい。その為に、命令を下そう﹂
そう言って、ターキナートは蛇の様に鋭い目で、残忍な笑みを浮か
べた。
﹁ヤれ﹂
小男が、腰を打ち付ける。
ヴェナの秘肉に埋められた粗末な肉棒が、膣壁を擦りあげる。
その場所はすでに九回、汚精を注がれ、蹂躙されている。
とりあえず全員一回だと最初に決め、十五人の兵達はヴェナを取り
囲んでいる。
﹁どうせどんなに汚しても痛めつけても調教師に同行してる魔導士
様が傷は治してくれるんだろ?﹂
そう言って、彼らは残虐になった。
﹁ほらほら、おっぱいの揺れどうにかしねぇと、乳首裂けちゃうよ
ぉ?﹂
一人は剣を持ち、水平に伸ばす。
丁度ヴェナの豊満な乳房の先、乳首のあるすぐ傍に。
ヴェナは今四つん這いに近い体勢で後ろから犯されている為、腰の
動きと連動して、彼女の胸は振り子のように揺れる。
ゆえに、揺れた乳首がぶつかるのだ。
白刃に。
もうすでに半ばまで刃が通り、血が大地へと滴る。
﹁くぅ⋮⋮痛っ⋮⋮痛いっ﹂
乳首が徐々に切られていく中、彼女は苦鳴を漏らす。
376
しかしすぐに、その声は途絶える。
﹁おっと、お口がお留守のようだな。俺のをおしゃぶりさせてやろ
う﹂
兵の一人がいきりたった肉棒を強引に口内に突き入れ、激しく腰を
動かす。
前後から突かれ、その分激しく乳房は揺れ、乳首は千切れていく。
﹁くぅぅぅぅ。出るっ!﹂
小男が軽く痙攣し、ヴェナの膣に射精した。
彼は腰を引き、しゃがみ込んで自分の精液が無双の聖騎士の膣口か
ら溢れ出す様子を、満足気に眺めた。
﹁そういえば、姉ちゃん。俺達は姉ちゃんの名前を聞いて無いんだ
が、教えてくれるか?﹂
小男が溢れ出す精液を指で掬い、膣内へと押し込みながら、問う。
﹁⋮⋮﹂
ヴェナは、その問いに答えない。
﹁なー教えてくれよぉ。もうここまでしちゃった仲じゃないか。顔
とマンコを知っちゃったし、名前ぐらい別に良いだろぉ?﹂
ペチペチと尻たぶを叩きながら、小男は言う。
﹁⋮⋮﹂
ヴェナは、口を開かない。
﹁なぁ∼教えてくれよぉ﹂
小男はヴェナの肛門に顔を寄せ、皺に舌を這わせながら、更に問う。
そこに、
﹁あ、俺知ってるぜぇ。コイツ聖騎士ヴェナだろ? こいつの映像
円盤俺持ってるもん。確か町中の人間相手にして精液を風呂桶一杯
集めて焚いて入浴する企画モノだったな﹂
ヴェナの口を犯している兵士が笑いながら言うと、
﹁うっは。それ臭そう。そんなのやったの? お前?﹂
乳首に刃を当てている男が顔を歪めて反応した。
肛門を舐めて舌で穿り回していた小男が、チュポンと、口を引き、
377
笑みを浮かべる。
﹁ヴェナちゃんかぁ⋮⋮そうかぁ。俺はなぁ⋮⋮コノシロって言う
んだぁ。ほら、言ってみて? コノシロ君って﹂
小男︱︱コノシロは笑みを浮かべたまま、右手の平でヴェナの膣口
を撫で、左手の指で肛門を揉みながら、求める。
﹁今はさぁ⋮⋮こういう関係だけど、きっといつか俺と君は好き合
えると思うんだぁ⋮⋮。君がリトリロイ殿下の陣地で一般開放され
たら毎日通うし、いずれ⋮⋮そうだな、十年後くらいに君が飽きら
れて捨てられそうになったら俺が買うから。そして一緒に暮らそう
? 毎日種付してあげる。子供が出来て、男の子なら君が童貞を奪
って、女の子なら俺が処女を奪うの。きっと素敵な家庭になるよ﹂
コノシロはヴェナの肛門に、膣口にキスをしながら、言葉を紡いで
いく。
﹁でたよコノシロの野郎⋮⋮。こいつ普通に公娼相手に恋愛するか
らな⋮⋮一回やりすぎて付きまといまくったげく、他の男とヤって
るのを見た瞬間怒り狂って公娼を殺しちまいやがったからなぁ⋮⋮﹂
兵士達は苦笑いを浮かべる。
﹁ねぇ聞こえないの⋮⋮? ヴェナちゃん? ヴェナちゃぁん?﹂
ヴェナの膣口に頬を摺り寄せながら、コノシロは涙声を出す。
その時、口を犯していた男が肉棒を引き抜いた。
﹁きっと耳が詰まってんだろ。待ってな、俺が掃除してやるから﹂
男は素早くヴェナの側頭部に回り、己の肉棒を掴んで照準を合わせ
る。
そして迸る、白い汚液。
それらは一直線にヴェナの耳を目指し、飛んだ。
耳にかかる髪や、周りの肉に阻まれながらも、一部は確実に穴に入
っていく。
かつて味わった事の無い不快感がヴェナを襲い、身悶えするように
体をくねらせ、四肢を拘束する剣に肉を抉られ、再び血が零れ出す。
﹁あっ⋮⋮あーあ。俺しーらない﹂
378
乳首に剣を当てていた男が声を上げる。
その視線の先、今の身悶えで激しく動いた結果、乳房が剣に強く当
たり、乳首がポトリと、地面に落ちたのだった。
﹁あづっ!﹂
ヴェナは噛み締める様に声を殺し、呻いた。
﹁ねぇヴェナちゃん。お返事、お返事聞かせてよ。そうか、迷って
るんだね? じゃあ俺の良さを知って貰うためにもう一発膣内に射
精してあげるからね﹂
そう言って、コノシロは立ち上がって肉棒をヴェナの膣肉へと押し
付ける。
﹁さ、いくよ。二人の愛の為に︱︱﹂
コノシロの喉が割れる。
刃が突き立ったのだ。
そしてその刃を握るのは、黒肌の腕。
腕の繋がる先に、両目を引き絞り怒りを露わにした少年がいた。
﹁な、なんだ!﹂
今までヴェナを凌辱していた男達が立ち上がり、剣を構えようとす
る。
その時、
﹁シャス! 逸り過ぎ! 下がって⋮⋮はもういいからしゃがんで
!﹂
大剣の薙ぎが、三つの命を終わらせた。
首を、上半身を、左腕と胸を斬られた男達から、死の血飛沫が舞う。
﹁⋮⋮ヴェナを! 僕のヴェナをぉぉぉ!﹂
シャスラハールは止まらない、自分を援護したセナに振り返る事も
無く、呆然とする兵士の喉に刃を突き立て、蹴り倒して馬乗りにな
り、何度も何度も突き刺す。
﹁制圧! 制圧しろ! 浮足立つな!﹂
ターキナートから指示が飛び、兵達は構えた剣を一斉にシャスラハ
ールへと振り下ろす。
379
﹁我が王に剣を向けるなどと、万死に値する﹂
今度は、槍の旋風。
騎士長ステアが飛び込み、騎士槍において、五つの命を終わらせた。
﹁て、撤退!﹂
ターキナートは強張った顔で言い、馬首を巡らせる。
その彼の言葉に反応できる者など、居ない。
セナが、ステアが、シャスラハールが一人ずつ地獄へと送り、彼の
部下は残り二人となった。
二人ともが平伏し、命乞いを始めている。
シャスラハールは凍った目でそれを眺め、
﹁お願い﹂
絶対零度の声で傍に立つ二人の騎士に囁き、自分はターキナートの
方を向き、駆け出した。
その背後、平伏する背中から血飛沫が二つ跳ね上がった。
ターキナートは馬の尻を蹴る。
相手は徒歩。
勝てなくても逃げるだけならば、可能。
その希望のままに、彼は後ろを振り返る。
シャスラハールとの距離は、馬にして五頭分はある。
問題ない、陣に帰ってやり直せる。
彼がそう思い、正面を向いた瞬間。
影が舞い降りた。
﹁主の望みを叶える事こそ、従者の務め。参ります﹂
従者服を着た少女が、体ごと回転しながら振ってきた。
右手の刃がターキナートの額を、左手の刃が馬の額を割る。
兜に守られた彼は落馬で済んだが、馬の方は的確な斬撃で死に絶え
た。
受け身も取れず、地面に投げ出された彼の腹の上に、黒肌の少年が
飛び乗った。
短刀を振り上げ、構えている。
380
﹁ま、待て。待ってくれ。じ、自分は彼女に直接何もしていない。
部下が勝手にやったことだ。そ、それにだ。君はシャスラハール王
子だね? 反逆者として軍が君を追っている。どうだろうか? 自
分をここで見逃してくれれば陣に戻った後、君は死んでいたと上に
報告する事を約束しよう。これは君たちにとって悪い話じゃ︱︱﹂
﹁リセ、そっちの短剣を貸してくれ。僕のはさっきのでボロボロに
なってしまった。これじゃあ、コイツをキッチリ殺せない﹂
命乞いを聞き流し、シャスラハールは普段と異なる強い声で、従者
に手を向ける。
そして、短刀が両者の間で移動する。
﹁や、やめっ!﹂
ドスッ︱︱
無言で振り下ろされた短刀は、ターキナートの喉を貫き、鮮血を噴
出させた。
その血を浴びながら、シャスラハールは声を上げる。
﹁ハイネア様! ヴェナの治療をお願いします!﹂
近くの草むらから幼い肢体にドレスを着た少女が出てきて、串刺し
になっているヴェナの体に身を寄せる。
眩い光が聖騎士を包んでいる間。
シャスラハールは延々物言わぬ死体に刃を突き立て続けた。
ヴェナと別れたシャロン達は、全裸のまま山を駆け下り温泉地まで
到達した。
彼女達はそこで装備を拾い、武器を持ってヴェナに命じられた役割
を果たすつもりだった。
しかし、そこにあるべきはずの彼女達の装備が無い。
武器だけではなく、衣服も。
下着すらなくなっている。
﹁ど、どういうことだ? わたし達は確かにここで服を脱いだはず
381
だぞ?﹂
フレアが声を上げる。
﹁⋮⋮誰かここに来たっていうの? シャロンがさっき見たってい
う騎兵隊かしら?﹂
ユキリスが眉根を寄せ、シャロンを見る。
﹁いえ⋮⋮馬蹄が無い。ここに騎兵は来ていないと思います⋮⋮け
ど、だったら﹂
シャロンは地面を調べながら言い、辺りを見渡す。
その時、山の静寂が揺れた。
ゾロゾロと茂みから紫色の小さな人間のようなモノが出てきた。
幾重にも幾重にも、彼女達を取り囲むようにして、ソレらは弓やこ
ん棒といった武器を手にして立っている。
輪の奥の方に居る数匹が、シャロン達の装備を手に持っていた。
﹁これは、子鬼族⋮⋮!﹂
ユキリスが声を震わせる。
﹁子鬼? 何だそれは?﹂
フレアが問う。
﹁人間に近い成り形をしているけれど、実寸では半分以下。筋力も
かなり劣るし、頭も悪い。魔物の中でも下等な奴らよ﹂
でもね、魔導士は続ける。
﹁子鬼族で恐ろしいのは、その生殖機能と繁殖能力。分泌液にはす
べて強力な媚薬成分があり、どんな種族にも受胎させる事ができる
っていう、悪趣味な魔物よ﹂
受胎。
その言葉を聞いた瞬間、シャロンの背筋に悪寒が走った。
﹁子鬼族はすべて雄しか生まれないから、別の種族の雌を使って繁
殖するの。受精から出産までわずか半日という恐ろしい速度で産ま
せるって聞くわ、捕まったら最後だと思った方が良いかもね⋮⋮!﹂
ユキリスの声が、怯えを纏う。
一匹や二匹、十匹程度なら、素手のシャロンやフレアでどうにかな
382
ったかも知れないが、現在彼女達を囲んでいる子鬼の数はゆうに千
を超える。
その上相手が武装しているとなると、勝算は一層低くなる。
﹁どうすれば⋮⋮この状況を切り抜けられる⋮⋮﹂
シャロンは歯噛みした。
しかし、そうしている最中にも、一歩ずつ子鬼達は迫ってきている。
その時。
﹃お困りのようね﹄
声が聞こえた。
女の、どこか愉しげな声が。
﹃もし良かったら、助けてあげるけど? どうする?﹄
声は、足元から消えていた。
三人が立つ位置の丁度中間に、いつの間にか昏い闇の輪が広がって
いて、そこから声が聞こえているのだ。
﹁な、なんだ? これ﹂
フレアが驚きの声を上げる。
﹃もし助けて欲しいのなら、この輪に飛び込んで来て。まぁこのま
ま子鬼達の母胎になりたいって言うのなら、それでも構わないけど
ね﹄
闇が、そう言った。
﹁貴女は⋮⋮何者ですか?﹂
シャロンは問う。
﹃そういうのは、中で話してあげるわ﹄
闇が答える。
﹁シャロン、この闇から⋮⋮かなり強力な魔力を感じる。念の為だ
けど、一応言っておくわ﹂
ユキリスの声に頷いてから、シャロンは仲間達を見る。
﹁⋮⋮行きましょう。今は、この闇に賭けるしかない﹂
その言葉に、フレアとユキリスは頷きを返した。
三人が、全裸の体を揺らして、闇へと飛び込んでいく。
383
三人の姿が消え、子鬼族の間に動揺が走った時、
﹃フフフフ。来たわね⋮⋮これから面白くなりそう⋮⋮。そうだわ、
ちょっと数匹借りていくわね。返すかは、わからないけどね﹄
闇が広がり、十匹ほど子鬼を飲み込んだ。
そして一瞬の後、跡形もなく闇は消え去り、山の静寂中、呆然とす
る子鬼達だけが残った。
384
甦る︵前書き︶
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385
甦る
白い裸体が三つ、闇の世界に落ちていく。
果てのある闇。
四角に切り取られた有限の世界。
しかしそれだけしかない場所。
三人にとっては広くても、人間が万いれば入りきらないだろうとい
う、そんな空間。
シャロンは、フレアは、ユキリスは地面に降り立つ。
地面もまた、昏い闇。
硬い闇。
全てが暗色で作られた世界に、三人はいる。
﹁ここは⋮⋮﹂
シャロンは辺りを見渡す。
﹁この場所そのものが魔法⋮⋮そう思っていいわ﹂
警戒し、額に汗を浮かべるユキリスが言った。
﹁なっ⋮⋮魔法の中にいるだと? 大丈夫なのか?﹂
魔導士に向け、声を放つフレア。
しかし応えは、別角度からやってくる。
﹁大丈夫よ。ここはただの閉鎖世界。ワタシの魔法︱︱﹃陰宮﹄に
誰かを傷つける力は無いわ﹂
三人から見て、上。
四角に区切られた闇の世界に浮かぶ女がいた。
肩から生えた両の翼をはためかせ、空間に君臨する。
病的に白い肌に、胸と股間を隠すだけの扇情的な衣装を纏った女。
髪は緩く癖のついた黒で、瞳は金、その下に呪術的な隈取りを施し
ている。
女は笑った。
386
﹁ようこそ、人間族の性欲の捌け口達。ワタシの名はラグラジル。
昏き翼のラグラジル。かつてこの魔物の領域で覇を唱えた者。本来
ならば貴女達の様な薄汚れた子種壺を相手に口をきいてあげる身分
でも無いのだけど、此度は特別。心行くまで語り合いましょう﹂
尊大に、見下ろすように。
ラグラジルは言った。
その言葉に、フレアが反目する。
シャロンはそれを抑えながら、口を開く。
﹁ラグラジル。ひとまず窮地を救ってもらった事には感謝します。
騎士として万礼を尽くしたいところですが、今我々にはやらねばな
らぬ事があり、事は一刻を争うのです。この場所から出していただ
けませんか?﹂
その言葉に、ラグラジルは薄く笑んだ。
﹁やるべき事⋮⋮とは、彼女を救う事かしらね﹂
左手を水平に上げる。
するとそこに、鏡が生まれた。
豪奢な縁取りを施した、人間が二人縦に並んでも収まりそうなほど
巨大な、鏡。
鏡面は三人の方を向いているのに、そこに映るのは三人の裸体では
なかった。
﹁ヴェナ様!﹂
﹁そんな⋮⋮﹂
フレアとユキリスが声を上げる。
鏡面に映し出されたのは、四肢を剣で刺し穿たれ、地面に拘束され
たまま、下卑た笑いを浮かべる男達に凌辱される聖騎士ヴェナの姿
だった。
﹁もう間に合わないわ。彼女はここで全身をボロボロにされながら
犯されて、人間族の集落に連れ帰られて、一生を性欲処理の道具と
して過ごすの。運命とは、そういうもの﹂
ラグラジルは鏡を面白そうに眺めながら、言い放った。
387
﹁そんな事は⋮⋮貴女の決める事ではない! 急いでここから出し
てください! 私達はヴェナ様を救いに行きます!﹂
シャロンは烈火の如く怒り、ラグラジルに指を突き立てる。
しかし、見下ろす昏き翼は揺るがない。
﹁別にそれでも良いけれど。今の貴女達の恰好を見て見なさいよ?
この局面に今の貴女達が介入したとして、男達を喜ばせる穴が増
えるだけなんじゃないの?﹂
武器が無い、魔導における道具も無い。
衣服すら無い。
全身が露出し、まだ局部を隠しているラグラジルの方が文明的な姿
だった。
﹁⋮⋮私達には無理でも、セナ達に合流できれば、向こうは全員武
装しています! ヴェナ様を救うことは十分可能です!﹂
別行動をとっている仲間達と合流し、急いで駆け付ければ間に合う
はず。
言葉にしたくは無いが、兵士の一団がヴェナの肉体を夢中で犯して
いる今なら、追いつく事は不可能ではない。
﹁そうね、貴女達には他にも仲間がいたわよね。見ていたわ。最初
から、最後まで﹂
ラグラジルは喉を掻いた。
﹁この山に入ってからじゃないわ。貴女達が人間族の作ったあの大
きな門からこちらの領域にやって来てからずっと、ワタシは見てい
たのよ﹂
瞬間、ラグラジルの背後に無数の鏡が生まれた。
鏡が映すのは、これまでの軌跡。
シャロンやユキリスが、ステア達と共に四つん這いの姿勢で尻を並
べ、ユーゴ相手に犯されている姿。
フレアがアミュスやヘミネ、マリスと共に主人役の男の肉棒を四人
で舐め上げている姿。
シャスラハールとヴェナがシュトラ達に己の目的を告白している姿。
388
公娼を肉の鎧として使用したベリスとの戦い。
川の中央で恥辱の船に乗せられ死にかけたヒュドゥスとの戦い。
﹁ずっと見てきた。貴女達の姿を。貴女達は知らないかもしれない
けれど、ワタシだけじゃない、人間族の魔導士も魔物を使役して貴
女達の事を監視していた。けど今、貴女達は三組に分かれた。魔導
士の監視は要注意対象である黒肌の王子に定まっている。人間族の
兵士はこの哀れな騎士に夢中。今の貴女達はワタシ以外の誰にも見
られてはいない。だから好機﹂
ラグラジルは陰惨な鏡像を背にして、両手を広げる。
﹁ワタシの話を聞きなさい。そして、力を貸すのです。見返りにワ
タシは貴女達にこの世界の真実をいくつか話してあげる。どうかし
ら?﹂
提案。
人間と似た姿をしているが、いくつもの魔法を同時に展開するだけ
の魔力を持ち、圧倒的な威圧感を放つラグラジルの求めは強要に近
かった。
武器を失い、地形そのものが相手の魔法。
恐らく自分達の命運は、この昏い存在に握られているのだろう。
抵抗や拒絶をすれば何をされるか、酷い辱めを受けるかもしれない
し、呆気無く殺されるかもしれない。
しかし、それでもシャロン達には成すべき事があった。
﹁⋮⋮ヴェナ様を、救う。まずはそれを果たさない事には、私達に
語り合う時間などは無いのです﹂
騎士の強い視線が、空間の主を貫く。
ラグラジルはため息を吐いた。
﹁ふぅ⋮⋮仕方がないわね。強制的に言う事を聞かせるのも無理で
はないけれど、あまりに優美さに欠けてしまう。少しだけ、手伝っ
てあげるわ﹂
ラグラジルは右手を振るう。
また一枚、鏡が生まれた。
389
そこには、シャスラハールやセナ達の姿。
一度脱ぎ散らかした衣服を再び纏っている光景が映し出された。
﹁姉上達の方には敵兵は向かっていなかったようだな⋮⋮﹂
フレアが騎士服を身に着けていく姉の姿を見つめながら、一つ息を
吐いた。
﹁マシラスの呪いもちゃんと解けたようね﹂
シャスラハールの落ち着いた表情を見て、魔導士であるユキリスは
事態の解決を確認した。
鏡の中、衣服を合わせていくシャスラハールの耳元に、突如小さな
昏い闇の渦が生まれる。
先ほどシャロン達をここに連れてきた闇の輪をそのまま小さくした
ものだ。
そして、シャロンの口元にも同じ闇が生まれる。
咄嗟に一歩下がる彼女に向け、ラグラジルはせせら笑った。
﹁警戒しないで。ソレは無害よ。単にコチラとアチラの音を結ぶだ
けの通り道。さぁ、報告するんでしょ? さっさと済ませて﹂
口元で蠢く闇。
シャロンはユキリスへと視線を向ける。
魔導士は無言で頷き、ラグラジルの言葉が真実だと教える。
﹃殿下。シャスラハール殿下﹄
シャロンは澄んだ声を放つ。
鏡の中で、黒肌の王子が驚き、視線を左右に向ける。
﹃シャロンさん? ど、どこから?﹄
その疑問も無理はない。
しかし悠長に説明していられるほど、事態は穏やかでは無いし、ラ
グラジルの気まぐれがそう長く続くとも思えない。
故にシャロンは本題のみを告げる。
﹃シャスラハール殿下。お急ぎください。ヴェナ様が敵兵に囚われ
てしまいました。私とフレア、ユキリスは無事ですが装備を失い、
救援に向かう事が出来ません。場所は山の中腹辺りの開けた所です。
390
そのまま真っ直ぐ山を登ればたどり着けるはずです。お急ぎくださ
い、殿下。どうか私達に代わって、ヴェナ様をお救い下さい﹄
その声が届いた瞬間、シャスラハールは弾かれた様に動き出した。
胸元の短刀を引き抜き、瞳を引き絞って唇を噛み、足を動かす。
﹃ちょ、ちょっとシャス! どこ行くのよ?﹄
セナが慌ててその背中を追い、駆け出す。
ハイネアとリセがそれに続き、ステアが最後尾に立って進もうとし
た時、シャロンは再び声を送る。
﹃騎士長! 私です﹄
丁度先ほどシャスラハールが立っていた位置を通り過ぎようとした
ところで闇の渦を発見し、それを見つめながらステアは口を開く、
﹃シャロン⋮⋮?﹄
﹃はい。事態は一刻を争うので、殿下には手短にしかお話出来ませ
んでしたが、今現状で私達はそちらに合流する事がかないません。
武器も無く、自分が立っている場所すら不明な状況です。ゼオムン
トの兵がこちらに向かってきた以上、一刻も早くその場所を離脱す
るべきですが、それに間に合うかもわかりません﹄
﹃敵兵が、来ているだと?﹄
騎士長ステアが声を漏らす。
﹃はい、山の中腹でヴェナ様が交戦し敗れたようです。今は魔物の
気まぐれでそちらと話す事が出来ていますが、今後どうなるかは全
くわかりません。ですので、貴女の参謀として進言いたします。ヴ
ェナ様を救出後、速やかに移動してください。私達を待つ必要はあ
りません。こちらはこちらで、必ず追いつきます﹄
シャロンの冷静な声に、ステアは頭を掻く。
﹃まったく⋮⋮何が何だかさっぱりわからない⋮⋮。君の言葉だけ
が聞こえる事も、その内容もだ。だが、わたしの右腕、参謀として
仕えた君の進言を今更疑う事は無い。必ず、必ず追いついて来てく
れ。シャロン。どんな屈辱に、痛みに遭ったとしても、生きてわた
しの隣に戻って来てくれ。君とわたし、そして仲間達が居れば必ず
391
取り戻せるんだ。国も、騎士としての誇りも。命令するよ、シャロ
ン。死なないでくれ﹄
鏡に映る騎士長は、柔らかな表情でそう言った。
シャロンは応える。
﹃了解、しました﹄
そう言った瞬間、口元の闇が消え、鏡が割れる。
﹁もう良いかな?﹂
ラグラジルが酷くつまらなそうな表情で、浮かんでいる。
突如その眉間に、怒りの皺が刻まれていた。
﹁さっき⋮⋮貴女なんて言った? ワタシの事⋮⋮﹃魔物﹄って言
ったかしら⋮⋮?﹂
ラグラジルの翼が戦慄く。
﹁このラグラジルを、有象無象の糞虫どもと一緒くたに、﹃魔物﹄
と表現したかしら﹂
その瞳が、苛烈に煌めく。
﹁⋮⋮えぇ、そう言いましたよ。ラグラジル。何か気に障りました
か?﹂
シャロンは気迫に呑まれぬよう、あえて強気な態度を取った。
﹁障るも何も⋮⋮有ってはならない事だわ。かつてこの大地を支配
し、全てを管理したこの全能たるラグラジルを、よりにもよってそ
こらの低俗な虫けらと同様に﹃魔物﹄と呼ぶだなんて﹂
ラグラジルの翼から、瘴気が零れ出す。
﹁一度⋮⋮話をする前に思い知って貰おうかしら。このラグラジル
の恐ろしさを。貴女達という汚れた存在の醜さを﹂
闇の中、一層の昏い波動が、三人の裸身を包んでいく。
﹁⋮⋮待って⋮⋮何よこの魔力⋮⋮こんなので攻撃されたら⋮⋮命
どころか肉片すら残らないわ⋮⋮﹂
魔導士であるユキリスが、怯えと絶望の声を漏らす。
﹁心配ないわ⋮⋮。今のワタシには、直接相手を攻撃する魔法なん
てものが、使えないもの。それらは全部、﹃天使﹄であるラクシェ
392
とアン・ミサに奪われたから。ワタシに残されたのは、闇と幻影を
操作する﹃悪魔﹄として生まれ持った能力だけ﹂
ラグラジルは両腕を広げる。
闇がどんどんと昏く、濃くなる。
﹁ラクシェ? アン・ミサ? 天使だの悪魔だの、一体何を言って
いる?﹂
フレアが身に伸し掛かってくる闇を振り払いながら、問う。
﹁ワタシにとって虫けらである魔物。それよりも遥かに弱い人間に
飼われ、その汚れた情欲を発散させるだけの為に生きている貴様ら
公娼如きに、己の全てを語る必要など、有ろうはずも無いけれど、
勘違いされたままではワタシの沽券に関わる。故に、名乗りましょ
う﹂
ラグラジルの闇が、三人の全身を飲み込んだ。
﹁西域の魔天使ラグラジル。アン・ミサにより翼を汚され、ラクシ
ェにより力を奪われたかつての管理者。魔を総べる者。今はこのよ
うな力しか残されてはいなくとも、貴様らに対しては打ってつけの
魔法を、味わってみるがいい﹂
シャロンは虚空にいた。
相変わらずの総身を晒した全裸で、昏い空間に閉じ込められている。
フレアやユキリスの姿は無い。
不意に、空間に別の存在が浮かび上がった。
﹁え⋮⋮なんで⋮⋮お前は⋮⋮死んだはず!﹂
シャロンの口は、呆然と動いた。
今彼女の目の前に立つのは、友の父親。
汚れた凌辱者
﹁ユーゴ⋮⋮!﹂
かつてシャロンの体を汚し、貪った男が、いやらしい笑みを浮かべ
て立っている。
393
その背後に、数字が生まれた。
シャロンから見て左から、
7
8
4
3
7843という数字。
シャロンには理解できない。
そこに、どこからかラグラジルの声が届く。
﹃その数字に見覚えはない? まぁ無いでしょうね。貴女の脳は憶
えていない事でしょうし。でも、貴女の膣が憶えていてワタシに教
えてくれたの。貴女の子宮へと続く入り口を通った肉棒の総数をね﹄
愕然と震える。
ユーゴの背後に、次々男達が闇から生まれた。
顔を知っている。
かつて、自分を犯した男達だ。
﹃性交の数とは違うわよ。あくまで貴女の膣に挿入した事がある男
達を幻影として召喚したの。大丈夫、時間は止めておいたわ。貴女
には無限に感じられるかもしれないけれど、現実世界ではほんの数
分の出来事。戻ってきて精神が壊れてなかったら、またお話しまし
ょ。それじゃ心行くまで、思い出すと良いわ。自分がかつて、誰に
犯されてきたのかっていう事をね﹄
ラグラジルの言葉は途切れ、シャロンは怯えの声を漏らした。
どの顔にも、憶えがある。
どんな辱めを受けてきたのかも、記憶している。
そして、これから自分がどのような目に合うかも、予測できてしま
った。
﹁いやああああああああああああああああああ﹂
幻影の凌辱者達が、一斉にシャロンへと襲いかかった。
394
ラグラジルは三人を黒い繭で覆い、魔法によってそれぞれに絶望の
記憶を思い出させている。
この魔法は与えられた数字の数だけ肉棒を思い出す事で解除される
が、自分にとっては数分の出来事でも、中に閉じ込められた彼女達
にとっては永遠にも等しい苦痛となるだろう。
その間、若干暇が生じる。
暇つぶしに、ラグラジルは興の乗る映像を探し、魔力で探知をかけ
る。
一つ、彼女の無限のネットワークに引っかかった。
その映像を魔法の鏡で映しだす。
そこは、川べり。
大きな川のすぐ傍。
﹁ここは⋮⋮下等なマルウス族の集落の辺りだったかしら﹂
映像の視点は、川から少し離れたところで止まった。
一人の女が木陰に隠れている。
黒いドレスに同色の髪をポニーテールにして流した、曲剣の少女。
﹁あら。この子。生きていたのね﹂
ラグラジルは記憶を辿っていく。
これまでずっと公娼達の動きを追ってきた中で、何度か見た少女の
名前を。
今は人間族の集落で肉奴隷をしている二人の公娼の仲間で、美しき
友情の名の下に逃がされた少女。
マリス。
鏡はその背中を映していた。
395
釣り餌︵前書き︶
間が空いてしまって申し訳ないです。
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
396
釣り餌
﹁ふぅん⋮⋮しばらく姿が見えないと思っていたら、こんなところ
で油を売っていたのね﹂
ラグラジルは魔法で取り出した肘掛付きの椅子に座り、これまた虚
空から取り出した血色の酒をグラスに注ぎながら、映像へと視線を
送る。
黒髪のマリスが、川べりで何をしているか。
﹁少し、観察してあげる﹂
マリスは息を殺し、木陰に潜む。
瞳は大きく開かれ、一点を注視する。
マルウス。
今自分が身に纏うドレスを作った西域の職人魔族。
人間に対し友好的で、アミュスとヘミネと共に訪れた際も歓迎され
た記憶がある。
彼らが今、二十匹ほど川べりに立っている。
ただ立っているだけではない。
三、四人で一組になり、釣竿を握っている。
小さな体で懸命に竿を操り、川の中に投げ入れた餌を動かす。
餌。
釣竿から伸び、釣り糸の先、釣り針に取り付けられているのは。
公娼だった。
マリスは知っている。
シャスラハール王子とその仲間。
僅か数時間で道を違えた連中ではあるが、その中に居た青髪の騎士
他五名が、生きた餌として川に投げ入れられているのだ。
397
時折息継ぎの為に水中から顔を覗かせる彼女達の鼻に鉤状のフック
が取り付けられ、釣り糸と結ばれている。
﹃ぼくたち さんひきめ たいりょう たいりょう﹄
﹃なにおー まけないぞぅ﹄
﹃えさ が わるい こっち の えさ よわい くそおんな﹄
マルウス達は五組に分かれ、釣り対決をしているようだ。
公娼を餌に、釣る相手とは。
﹃ほらほらー ばかな ひゅどぅす が また つれた﹄
魚人型の魔物が、水中で青髪の騎士に切り殺され、抱きかかえられ
て川辺へと打ち上げられた。
﹃おい ほきゅう の じかんだ﹄
マルウスのうち一体が言って、彼女の鼻に取り付けられたフックを、
竿を利用して引く。
﹁あぐっ⋮⋮はい﹂
女は苦痛に顔を歪めながら、水面から姿を現す。
マリスは記憶を探り、その人物の名前を思い出す。
シュトラ。
シャスラハール王子の傍に仕えていた青髪の騎士。
青髪から滴る水滴。
鼻に取り付けられた残酷な鉤。
そして、陰部に嵌められている奇怪な器具。
鉄製の四枚羽根が絶え間なく回転し、虚空を掻き回している。
﹃すくりゅー べんり みずのなか でも ひゅどぅす より は
やく うごける でもほきゅう めんどう﹄
マルウスの一体がそう言ってシュトラの尻を叩く。
シュトラは抵抗を見せず、素直に腰をかがめ、地面に両手をついて
尻を突き出す。
マルウスの顔の正面に、シュトラの肛門。
﹃すくりゅー﹄から伸びた管に繋がれゴム製の栓で蓋をされたその
部位を、ネズミ達は乱暴に扱う。
398
一体が管を掴み、力任せに引き抜く。
一体が栓を掴み、シュトラの白い肌にこすり付け、汚れを落とす。
そして一体。
ドロドロの黒い液体を詰め込んだ注入器を構え、その先端を肛門の
内側に押し入れていく。
﹃ねんりょー ほきゅー﹄
器具から押し出された液体が、シュトラの体に飲み込まれていく。
本来有ってはならない、人体の出口からの異物混入。
青髪の下、シュトラの顔が歪む。
苦しさか、屈辱か。
やがて、チュポン︱︱という音と共に、注入器が抜かれ、すぐさま
素早い動作で肛門に再び栓がされる。
﹃それじゃ︱ もういっかい いってこい ひゅどぅす は ぼく
ら を いじめる わるいやつ ねだやしに するんだー﹄
マルウスはシュトラの股間に生えた﹃すくりゅー﹄の位置を微調整
して、しっかりと嵌っていることを確認し、再び尻を叩く。
﹁⋮⋮はい﹂
シュトラは苦しげな表情のまま、水面に近づき、そのまま身を投げ
る様にして飛び込んだ。
マリスは息を殺し、木陰に潜む。
その右手は、曲刀の柄を握った。
﹁へぇ⋮⋮あのクソネズミちゃん達こういうことしてたのね⋮⋮。
多少知恵が回る代わりに、西域で最も弱い部類の体しか持っていな
いから、ヒュドゥスなんてゴミクズ魚類に虐げられてたけど。公娼
を使って恨みを晴らそうというのね。ついでに自分達好みの遊びも
覚えたようだし。良いじゃない。少し興味がわいて来たわ⋮⋮おっ
と﹂
ラグラジルは言葉を区切り、愉しげに笑いながら後ろを振り返る。
399
音がしたのだ。
彼女が施した闇の繭から人が一人、ドサッ︱︱と落下する音が。
﹁おかえりなさい。どうだった? 気持ちよかったかしら?﹂
視線の先に、金髪の騎士。
シャロンが床に尻を付け、両膝を曲げる様にして座っている。
瞳は虚空を見つめ、涙を流し。
乳房は震え、陰唇は大きく開いている。
呼吸は荒く、ラグラジルへの応答は無い。
幻影による凌辱ゆえに、精液などの付着物こそ残っていないが、そ
の様は間違いなく、嵐の様な輪姦を受けた哀れな公娼そのものであ
った。
﹁それにしても意外だったわ。三人の中で貴女が一番数が多かった
のに、最初に出てくるなんて⋮⋮残り二人は何をやっているのかし
らね﹂
ラグラジルは放心したままのシャロンに近づき、壊れ物を包むかの
ように抱きかかえる。
慈愛を浮かべた表情でシャロンを見つめると。
そのままゆっくりと歩きだし、元居た椅子へと戻る。
まずは自分が腰を下ろし、椅子にしっかりと座りこむ。
その上でシャロンを横抱きにして支える。
﹁よしよし⋮⋮よく頑張ったわね。ほら、これから面白い見世物が
あるわよ。一緒に見ましょうね﹂
シャロンの髪を撫で、彼女にも見易いようにマリスの映る鏡の位置
を調整する。
﹁貴女のお仲間が、今どんな悲劇に見舞われているか。一緒に見て
いきましょう﹂
そう言うと、ラグラジルは虚空に手を伸ばし、何かを掴み取った。
闇を凝縮して作られた、醜悪なる疑似男根。
マルウスの使う器具にも似ているが、確かな物質であるそれとは異
なり、ラグラジルの握るこれは蠢いている。
400
﹁退屈しないように、貴女の事を可愛がってあげるわ⋮⋮﹂
ラグラジルは闇のペニスをシャロンの膣口に押し当て、ゆっくりと
優しく挿入した。
シャロンは一瞬背をのけ反らせ、反応を示す。
﹁あっ⋮⋮﹂
意識が、その瞳に宿る。
﹁ほらほら、お仲間が戦うわよ?﹂
ラグラジルはあくまで優しく丁寧に、シャロンの膣を犯し始めた。
マリスは曲刀を握り、躍り出す。
瞬殺するのも容易い、マルウスなど所詮下等な魔物だと、以前にア
ミュスから聞いていた。
曲刀は舞い、ネズミの体を引き千切る。
その予定だった。
しかし、切っ先は肉を裂く事無く、ギリギリのところで止まった。
﹁なんで⋮⋮?﹂
マリスは呆然と呟く。
今自分の曲刀を前にして両手を開いて立ちふさがっている相手に向
けて。
水滴を纏った裸。
鼻には屈辱の鉤。
股間には非道の羽根。
瞳には涙を浮かべたシュトラが、マリスの剣の前に立ちはだかって
いた。
武器も無く、防具も無く。
死んで当然のような有様で、彼女はマリスと正対していた。
﹁わかんない⋮⋮わかんない!﹂
マリスは曲刀を引き、後ろへ飛び退る。
その時、小さく言葉が響いた。
401
シュトラの口が、発した。
﹁⋮⋮お願い、殺して﹂
402
雌車︵前書き︶
またまた期間が空いてしまい申し訳ないです。
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
403
雌車
弱く儚い。
シャロンの意識は辛うじて己を保てる程度にしか残っていなかった。
凌辱の記憶を生生しい行為付きで再現される。
ラグラジルの施した闇の魔術により、これまで自分の膣を犯した人
間を幻として出現させ、今一度犯されるという気が狂いそうなほど
に残酷な行い。
永遠にも思える時間を乗り越え、耐え忍び、シャロンは意識を取り
戻す。
自由の利かない体をラグラジルに抱きかかえられ、膣には蠢く何か
を突き立てられている。
不快な衝撃が子宮を突き上げる度に、己の意識が覚醒していく。
真っ先に思い出すのは、敬愛する上官の言葉。
﹃死なないでおくれ﹄
どんな屈辱も、痛みも、取り戻せるとステアは言った。
ならば、今ここで心を砕け散らせて良いわけが無い。
瞳に輝きを、腕に力を。
ラグラジルの甘い凌辱を振り払おうとした瞬間。
鏡が視界に入る。
映像。
鏡像。
映っているのは自分ではない。
黒髪をポニーテールにした少女の苦渋に満ちた表情と、その視線の
先にある、青髪の騎士が浮かべた絶望の涙。
﹁シュトラ⋮⋮さん?﹂
かつて、短い間ながら行動を共にした仲間の騎士。
彼女が浮かべた深い絶望に、シャロンの心は再び震える。
404
﹁殺してって⋮⋮わかんない、わかんない!﹂
マリスは川辺を離脱し、背の高い木に登り、その葉群れに隠れる様
にしてマルウス達の様子を見ながら歯噛みした。
自分は純粋に助けようとした。
非道を行われている同胞を救おうとした。
マルウス族は知恵と手先の器用さで生き延びてきた小狡い生き物。
ならば自分の曲刀でいとも容易く八つ裂きにできたはず。
それなのに、裸に剥かれ、恥辱を強要されながらシュトラは彼らを
庇った。
命を犠牲に。
いや、命を捨てに。
﹁殺せば良かったのかな⋮⋮斬れば良かったのかな⋮⋮﹂
マリスにはわからない。
シュトラを殺し、マルウスを殺しつくす事など、あの場所ではほん
の一瞬で実現できた事だろう。
﹁アミュ姉ぇ⋮⋮ヘミネちゃん⋮⋮命令してよぉ⋮⋮マリスはどう
したら良いか、教えてよぅ⋮⋮﹂
自分を逃がすため、敵中に留まった仲間の事を思い出す。
今頃二人はどうしているだろうか、辱められているか、殺されてい
るか。
辱められた後に殺されているか。
出来れば、あの後すぐに二人が死んでいる事をマリスは望む。
マリスは傭兵であり、義も真も無く人を殺す事を家業とした人間だ
った。
故に、命の価値など非常に脆い。
あの優しかった二人が苦しめられ辱められるくらいなら、いっそ死
んでいてくれた方が幸せだろうと。
それが幼い日から人に命令されて命を奪い続けてきたマリスの優し
405
さだった。
強靭な意志を持てず、ただ目標を殺すための﹃刀﹄として育てられ
てきた自分には、﹃持ち手﹄が必要だった。
それが、アミュスとヘミネ。
ゼオムントととの戦争で傭兵として駆り出され、雇い主の降伏と共
に虜囚となり、流れのままに公娼の身分を与えられ、つい先日まで
肉体を捧げる事だけで生き続けて、﹃刀﹄としての自分を失いかけ
ていたところに、こちらを掴んでくれた二人の手。
反逆の機会を。
復讐の一刀を。
しかしマリス達は敗れ、二人は囚われた。
今のマリスはただ野晒しに戦場に放り棄てられた一本の﹃刀﹄に過
ぎない。
﹁どうすれば⋮⋮良いの?﹂
マリスはただ呆然と、見つめる。
﹃持ち手﹄を失った﹃刀﹄はただの鉄くずに過ぎない。
シュトラを見つけた時、マリスは考えたのだ。
﹁あの人なら、マリスを使ってくれると思ったのに⋮⋮﹂
しかし、違った。
﹃殺して﹄
そう言って泣かれた。
﹁わかんないよ⋮⋮﹂
マリスの視線の先、マルウス達が乗車した。
馬車でも牛車でもない。
雌車に。
﹁マルウス、マルウス! 貴様ら! 貴様らぁぁぁぁ!﹂
シャロンはラグラジルの膝の上で、全身を反らして叫んだ。
膣内には相変わらず蠢く衝撃を感じるが、それすら気にならないほ
406
どの怒りが彼女を突き動かした。
﹁あらぁん、起きたの? おはようシャロン。目覚めからいきなり
お元気ね、でもあんまり暴れないで、痛いじゃない﹂
ラグラジルはシャロンの頭を押さえながら、魔力を迸らせる。
﹁お仕置きよ﹂
闇のペニスを肥大化させる。
表面に泡立つイボを乗せ、銛のように先端を鋭く返しを広く変形さ
せる。
﹁あぐぅぁ﹂
急な衝撃に息を詰まらせ、シャロンは体を折る。
﹁そうそう。大人しくしていてね。そうすれば貴女は気持ち良くて、
ワタシは良い手慰みになるわ﹂
無遠慮に出入りする闇のペニス。
膣口は大きく開き、淫猥な音が辺りに響き渡る。
それでも、シャロンの瞳が向かう先は、ラグラジルでも己の股間で
もない。
鏡。
そこに映る、雌車。
箱型の荷台に二つの車輪をつけ、牽かせる車。
木で出来た荷台に三体マルウスが乗り、一人が馭者台に乗り込んで
細い棒を手にする。
荷台から伸びた縄が行きつく先に。
﹁シュトラ⋮⋮﹂
両の太腿、両の乳房、首。
黒く太い縄が青髪の騎士の白い肌に巻きつき、車を牽引させる。
四つん這いの姿勢で車に繋がれたシュトラ。
その視界を覆うように黒い目隠しが巻かれている。
﹁あらあら、どうしてマルウスは目隠しなんか着けさせているのか
しら。普通馬だって牛だって車を牽く時は視界が明いてるものよね﹂
ラグラジルが楽しげに笑う。
407
その言葉にシャロンは苛立ちを覚えながらも、同意する。
どうして目隠しなのか。
その答えは、あまりに残酷だった。
﹃それじゃー かえろー おうちに かえろー﹄
馭者役マルウスのカン高い声が聞こえ、荷台にいる三体が﹃おー﹄
と返した時、シュトラの体が震えた。
四つん這い故に突き出す形になっていた尻、その中央にある肛門に、
馭者マルウスの持つ細い棒が刺さった。
棒の先端から拳一つ分程度が肛門の内側に収まり、ゆっくりとシュ
トラは動き出した。
四つん這いのまま、右手で目の前の地面の安全を確かめ、左手を進
め、足を続ける。
暗闇のまま、雌車として動き出す。
﹃つぎ つぎ みぎ まがったほうが ちかい よ﹄
﹃はいはーい みぎみぎ みぎぃ﹄
少し進んで、分かれ道の様な場所に到達した際に、荷台から一体が
声をかけ、馭者が頷く。
馭者の手首が回った。
シュトラの肛門に突き立った棒が、腸壁をなぞる様にして右回りに
動かされる。
するとシュトラは進路を変え、右に向いて動き始める。
それはまさしく、馬や牛と同じ、言葉の通じない家畜と同様の扱い。
視界を奪い、声をかける事すら厭い、粗雑な棒で肛門を擦る事によ
って雌車を操る。
マルウス族と言う存在の残忍さを表す一幕だった。
﹁シュトラ⋮⋮それじゃあ⋮⋮他の者達も⋮⋮﹂
シャロンの声は絶望に揺れる。
シュトラの雌車を先頭に、残り四台シャスラハール組でありマルウ
スの里に残った公娼達が雌車として続いていく。
後三人、足を負傷した者達も里には残して来ていたので、恐らくは
408
彼女達も似たような目に遭っている事だろう。
騙された。
マルウス族に騙された。
シャスラハール王子が正しかった。
﹁私達が判断を間違ったばかりに⋮⋮シュトラ⋮⋮みんな⋮⋮﹂
シャロンは顔をラグラジルの剥き出しの太腿に押し付け、視界を塞
ぐ。
見ていられなかった。
自分達が無能だったばかりに、今同胞達は肛門で操作され車を牽い
ている。
もしかしなくとも里ではもっと酷い目に遭っているだろう。
それ故の、﹃殺して﹄
﹁まぁまぁ、落ち着きなよシャロン。よしよし﹂
よしよしと言いながら、膣に闇のペニスを出し入れするラグラジル。
凶悪な形状をとったソレは抉り込むようにシャロンの膣口を嬲って
いく。
﹁それでぇ⋮⋮ふぅむ、マリスは動かないか⋮⋮ボーっと見てるだ
けじゃ面白くないわねぇ⋮⋮。そういえば、後二人は随分遅いわね
ぇ。何をやっているのかしら﹂
シャロンと同じくラグラジルに捕えられた二人。
ミネア修道院の劇毒と狂奔の魔導士ユキリス。
リーベルラント騎士国家の百人長フレア。
二人はまだ闇の繭から出てこない。
ラグラジルは乱暴にシャロンを放り出すと、ゆったりとした足取り
で繭へと近づいていく。
繭に手を当て、目を閉じる。
シャロンには中の様子を覗いているように見えた。
﹁ふふっ⋮⋮なるほどね。そうよね、そうするわよね。普通は⋮⋮
あはっ、面白い事考え付いちゃったかも﹂
ラグラジルは薄く笑い、闇に手を掲げる。
409
虚空から二つ金属が落ちてきた。
シャロンには見覚えがあった。
それは、
﹁武器を⋮⋮あの二人の武器をどうするつもり﹂
ユキリスの錫杖とフレアの大戦斧。
ラグラジルはシャロンへと振り返り、妖艶に輝く口の前で指を一本
立て、
﹁クスッ﹂
笑った。
410
復讐の華︵前書き︶
期間が空いてしまい申し訳ないです。
評価・お気に入り登録有難う御座います。
411
復讐の華
薄い闇が広がる空間をただ眺める。
行動も思考も放棄し、呼吸すら最小限に抑える。
脳の働きを極限まで殺す。
魔導士として研鑽を積んだユキリスには、容易い行いだった。
騎士や戦士が四肢を上手に扱えるように、魔導士は脳髄を操る。
魔法を放つ時は通常の何十倍もの速度で脳を働かせ、奇跡を発生さ
せる。
その逆。
正気でいればまず間違いなく狂ってしまうような﹃今﹄
かつて自分を犯した男達による行為の巻き戻し再生。
一つ一つの顔に記憶の残滓がこびり付き、心の隅の隅まで犯し尽く
そうとしてくる。
故に、ユキリスは閉じた。
己の感覚を閉じ、ただそこにある肉の人形と化して横たわる。
男達が代わる代わる自分の体に侵入して来ている事も、理解はして
いるが感じてはいない。
男達が口々に何かを囁いていたり、罵倒していたり、笑いかけてく
るが、その全てを受け止めず、ただひたすら人形であることに努め
る。
そうする事でこの悪夢を乗り越える。
そう決意した。
始め6574と表示されていた数値は三桁まで減少した。
体感時間としてはもう当に数日は経過している。
それでも、後少し、後少しだけ人形で居れば、また自分は﹃劇毒と
狂奔の魔道士﹄として未来ある戦いに臨める。
故に閉じた。
412
己の心に壁を作り、その内側に閉じこもる。
所詮は幻覚で作られた存在である凌辱者達に、魔導士の壁は破れな
い。
破れるとするならば︱︱
︵楽しんでくれてる?︶
閉じた脳に直接語りかけてくる声。
ラグラジル。
西域の魔天使と名乗った高位の魔物。
︵シャロンちゃんだけ一足先に終わっちゃって暇してるわよ? 貴
女もさっさと全員に犯されて出てきたらどうかしら?︶
甘い甘い悪魔の声。
この幻覚を生み出し、固有の領域を発生させている存在。
いったいどれだけの魔力で、どれだけの脳髄で、この悪夢を管理し
ているのか。
魔導士として確信する。
勝てない。
ラグラジルに自分は勝つ事が出来ない。
これほどの力がもしも自分に備わっていれば、ゼオムント打倒など
悲願でも何でもなく、現実的な目標に成りえたかもしれない。
力が、
力が欲しくなった。
今、醜悪な男達に圧し掛かられ、膣に一本、肛門に一本。
胸の谷間に一本、左右の脇に一本ずつ。
口に一本、眼前に一本、髪束を巻きつけて擦りあげているものが五
本。
肉棒。
肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒肉棒。
こんなものに、こんなものに。
︵良いんじゃない。やっちゃって︶
嗤うのは、魔天使。
413
やっちゃう︱︱とは、何なのか。
停止している脳に、微弱な刺激が走る。
︵殺っちゃう︱︱のよ︶
ラグラジルの声が甘く響く。
︵どうせ幻覚よ。貴女の好きにすれば良いわ︶
ユキリスは、己の感覚を取り戻す。
肉棒の生々しい熱を。
雄汁の粘りつく臭気を。
身の内を焼き回る怒りを。
︵返してあげるわ︶
右の手のひらに、硬い感触が生まれた。
自分はこれを知っている。
錫杖。
西域に入る際に取り戻した、魔導士としての自分に欠かせぬ力。
握る。
力を込める。
脳髄を動かす。
そして、放つ。
﹁壺毒﹂
魔法。
ユキリスの二つ名である﹃劇毒と狂奔﹄のうち、劇毒に位置する魔
法。
指定した物体を猛毒の詰まった壺に変え、それに触れた者へ死の伝
染を行う魔法。
指定したのは、自分の肉体。
膣に挿入していた男が、肛門を犯していた男が、全身を舐め回して
いた男が、血の泡を吐いて悶絶し、崩れ落ちていく。
折り重なって倒れて行く男達の体の下から、白い裸身を傾げながら、
ユキリスは立ち上がる。
まだ居る。
414
沢山居る。
自分を犯した者が、自分を犯す者が。
﹁狂嵐﹂
﹃劇毒と狂奔﹄のうち、狂奔に位置する魔法。
錫杖を中心に生温い風を発生させ、狂気を伝染させる。
風に触れ、吸った者達は、理性を失う。
男達は隣に居た者を殴り倒し、蹴り付け、大笑する。
瞳は血走り裏返り、口の端からは黄色の涎を零しながら、野卑な暴
力を振るう。
男達の手に武器は無い。
故に、殴りつけられた者は命を失わずに地面に転がり、血を吐き散
らしながらのた打ち回る。
笑っている、誰も彼も笑っている。
ユキリスは杖を掲げる。
﹁壺毒﹂
筋肉質な男に殴りつけられ、細いメガネごと眼球を潰された男に魔
法をかける。
この男の顔が特に憶えている。
ヤれるマスコットとして商業施設で働かされていた時に、ユキリス
の事を管理していた調教師だ。
膣を使っての接客からハメながらの店内案内、施設の広報活動のた
めに映像魔術を使っての涙あり笑いあり奮闘凌辱ドキュメンタリー
の作成まで、ユキリスに恥辱の限りを強いた男。
﹁狂嵐﹂
風を強める。
狂いの嵐を男の周辺に集める。
必然、荒れ狂う暴力は男に集まっていく。
殴り、蹴り、潰し、殺す。
凌辱者が凌辱者を殺す。
﹁ヤれ、ヤれ、ヤれ、ヤれぇ!﹂
415
それはかつてユキリスが浴びせられた罵声。
しかし今、口を開き、声を出し、歯を剥くのは狂奔の魔導士。
その首筋にいつの間にか闇色をした華の刻印が浮かんでいる。
︵クスッ⋮⋮︶
艶やかな悪魔の笑みが聞こえる。
毒の壺と化した男に触れた凌辱者達は次々と体を腐らせ息絶えてい
く。
狂いの風が吹き、毒の壺が割れる。
哄笑する魔導士を残し、動く者が居なくなるまで、そう時間は掛か
らなかった。
フレアは己の全身が血に塗れている事に安堵した。
裸身全てを覆うかのようにこびり付いた血の赤。
手にした大戦斧からも滴っている。
初め、この空間に閉じ込められ7021という数を突き付けられた
際には素手で抵抗した。
だが数十人を殴り倒した後、力尽き取り押さえられ凌辱の渦に飲み
込まれた。
股をこじ開けられ、髪を掴み上げられ、肉棒を突き付けられた。
それでも、抵抗は続けた。
シャスラハールに救われ、公娼から騎士に戻った自分が、ただ易々
と犯されていてはいけない。
握らされた肉棒を潰し、口に押し込められた肉棒を噛みちぎった。
それでも終わらない。
七千と言う数。
抵抗の意志は潰えず、代わりに力が尽きた。
飲み込まれる。
凌辱に、屈辱に。
そんな時、悪魔の声が脳に届いた。
416
︵惨めで哀れな騎士様に、わたしからとっておきの贈り物をあげる
わ︶
ラグラジル。
この空間を形作り、絶望の記憶を揺り戻した悪魔。
︵怖い顔しないで、きっと良い気晴らしができるわ︶
言葉と共に、目に見えぬ力がフレアに届いた。
右手に生まれる鋼。
大戦斧。
幾多の戦場をフレアと共に駆け抜けた愛用の武具。
公娼として凌辱の日々を過ごしてきた間には、取り上げられていた
己の力。
それが今、手に。
︵振るいなさい。思う存分ね︶
フレアは力を振り絞って群がる男共を跳ね飛ばし、立ち上がった。
大戦斧の感触を確かめる様にして、一振り、二振り。
凌辱者達は狼狽えている。
突如現れた鋼にか、はたまた浮かび上がったフレアの笑みにか。
﹁あは、あはははははははは﹂
笑った。
フレアは大きく体を揺らして笑った。
笑いながら、一歩前に進み、右手を振るった。
近くにいた凌辱者の右肩を抉り、首を跳ね飛ばす。
血潮が舞う。
もう一歩。
大戦斧を縦に振り下ろす。
凌辱者の体が頭頂から股間まで真っ二つに割れ、肉塊と化す。
凌辱者達の怯えは、フレアの喜びだった。
逃げ散る男達を追い立て、殺していく。
数百人を肉塊に変え、次なる獲物を定めた時、フレアは呼吸を止め
た。
417
目の前でこちらに両手をかざし、命乞いをしている男。
強烈な記憶の炎がフレアを焼く。
公娼として過ごした三年間、自分を調教し大勢の前で恥辱を強いた
調教師。
目の前の男はうだつの上がらない、三流と言っても過言ではない調
教師だった。
資金も腕も無く、フレアという逸品を扱うには不相応な男だと、巷
で噂されていた。
大きな仕事を取ってこられる訳も無く、日銭を稼ぐために素っ裸の
フレアに首輪をつけ街中を徘徊し、工事現場などに売り込みに行き、
そこで自分の食糧を得る代わりにフレアの体を差し出させた男。
時には大きな街の中心にある駅舎の前でフレアに自慰行為や排泄を
強いて、物珍しさで立ち止った通行人からカンパを得る事で金を稼
いでいた。
他人にはヘコヘコと頭を下げ慈悲を得ようとするが、フレアに対し
ては居丈高に接し、暇つぶしの様に日常的に膣を犯してきた男。
フレアの公娼としての記憶の中に、この男は常に留まっていた。
大戦斧の刃を返し、反対側にある石突きを構える。
そして、打ち据える。
直ぐには死なないように、楽には殺さないように、永く苦しむよう
に。
石突きで頭を砕き、腕を砕き、胸骨を砕き、股間を砕き、足を砕く。
男の体は血を撒き散らしながら跳ねる。
何度も何度も何度も打ち据え、ようやく男が動かなくなった時、フ
レアは会心の笑みを浮かべる。
返り血で汚れた裸の乳房の下側に闇の華が刻まれた事には気が付か
ない。
次なる獲物を求め、また一歩を踏み出した。
凌辱に費やされた期間から見れば、瞬く間と言って良い時間で、凌
辱者達の仮初の命はその空間から全て消え去った。
418
﹁フレア! ユキリス!﹂
シャロンは転ばされたまま、吠える。
ラグラジルがわざわざ用意した新たな鏡に映し出されたのは、仲間
達による凄惨な復讐劇だった。
﹁どうしたのぉ? シャロンちゃん。これが貴女達のやりたかった
﹃復讐﹄。そうでしょ? わたしはそれを幻想の中で体験させてあ
げたの﹂
昏い翼をはためかせ、ラグラジルはこちらに視線を送ってくる。
シャロンはその視線から逃れる様にして、顔を反らす。
ラグラジルの言う事は間違いではない。
自分達を犯し、辱めた人間に対する復讐心は確かに胸の内に存在し
ている。
しかし、しかしだ。
﹁こんな⋮⋮こんな風にソレをやってはダメ⋮⋮フレア、ユキリス
⋮⋮﹂
笑いながら、苦しめながら、己が享楽の為に人を殺していく様は、
傍から見れば恐ろしい行為に他ならなかった。
﹁綺麗事を言わないで頂戴。どうせ貴女だって同じ状況に陥れば間
違いなく剣を振るっていたでしょう? そして笑うのよ。復讐の愉
悦に。彼女達は間違っていないわ。それともなに、殺し方に問題が
あるって、そう言いたいの?﹂
ラグラジルは存外真剣な表情でシャロンを見据える。
﹁調教師やそれに追随した男達が彼女達や貴女に何をしたか知らな
いわけじゃないでしょう? 殺されるのは当然。そしてそこから更
に惨く扱われるのも必然。例えわたしが最後の一歩を後押ししたか
らって、それが貴女達の心の内を裏切ったって事では無いでしょう
?﹂
手のひらを掲げ、そこに闇の華を咲かせながらラグラジルは言った。
419
﹁やはり⋮⋮お前が二人を⋮⋮!﹂
シャロンは首を持ち上げ、ラグラジルを睨みつける。
魔天使はその視線を不快そうに受け止めながら、首を傾げる。
﹁じゃあなに? 貴女は自分を犯した連中を許すと言うのかしら?﹂
その問いに、
﹁違う﹂
シャロンは首を振った。
﹁許しはしない。認めもしない。もう一度姿を見せて私を汚そうと
するのなら躊躇せず殺すし、そこに一片の迷いも悔やみも無いでし
ょう。けれど、今私達はシャスラハール殿下と共に新たな世を手に
入れる為に戦っています。失われた物を取り戻す戦いは有っても、
過去に縛られ己の快楽の為に目的を失う事は有ってはならない!﹂
声には力と熱が籠り、震える足で立ち上がる。
﹁希望がまだある限り、私達は私達のやり方で戦い、全てを取り戻
します。ラグラジル、貴女が見せた﹃復讐﹄の幻は必要無い!﹂
指を突き付け、シャロンはラグラジルに宣言する。
しかしそこで、悪魔は笑った。
﹁﹃希望﹄! 希望ね。あぁそう、貴女達が希望を抱く事について
は何も言わないわ。けどね、知ってるのかしら? 貴女達の希望が
どんなもので、今どうなっているのかについてね﹂
ラグラジルが指を振るい、また一つ巨大な鏡がシャロンの眼前に生
まれた。
﹁教えてあげるわ、シャロンちゃん。貴女達が狙っている﹃魔物の
統帥権を持つ宝具﹄その名はね。﹃アン・ミサの杖﹄って言うの。
現在西域の管理者を務めているアン・ミサが所持していた魔物を律
する魔法道具、人外の全てはその律に従い平伏する。この地におけ
る至上の宝よ﹂
そこでラグラジルは一旦言葉を切り、シャロンを見据え、
また穏やかに微笑んだ。
﹁数年前に人間族⋮⋮ゼオムント国に奪われたのだけれどね﹂
420
九割九分九厘︵前書き︶
評価・お気に入り登録有難う御座います。
421
九割九分九厘
﹁嘘⋮⋮そんな⋮⋮﹂
声を震わせ、シャロンは裸の胸を両腕で抱いた。
寒気が全身を覆い、希望と言う温かな心の火を消してしまいそうだ
ったから。
﹁アミュス⋮⋮ヘミネ⋮⋮﹂
ラグラジルが用意した新たな鏡に映し出されたのは、公娼達の反逆
とその末路だった。
シャロン達と別れた後のアミュスとヘミネ、そしてマリスの姿を追
跡した映像で、彼女達が人狼族を従え開拓団と呼ばれていたゼオム
ントから独立を狙う集団に襲いかかっていた物。
﹁⋮⋮⋮⋮騎士団長、貴女が⋮⋮どうして﹂
シャロンを襲った衝撃は二つ。
その内の一つが、彼女の祖国であるリーベルラント騎士国家、その
武の筆頭であり伝説の騎士であった存在、セリスが剣を振るいアミ
ュス達と敵対してきた事だ。
ユーゴ達文官の手によって国家がゼオムントに投降した際、前線に
出ていたステア隊所属のシャロンには宮殿で最終防衛線を構築して
いたセリスがどうなったかは知りようが無く、公娼として扱われた
三年間でもその名を耳にする事が無かったため、彼女は戦乱の中を
逃げ延びたか死んだものと考えていた。
それが、まさか凌辱者達の側に立ち、剣を取っているだなんて。
﹃ふざけるな! 団長⋮⋮アンタ何やってんだよ! 祖国を滅ぼし
た側について、公娼制度を認める様な事を言って! アタシ達は⋮
⋮アンタがそうやってドレスを着て着飾っている間にも裸で! 犬
の様な、奴隷の様な⋮⋮普通に生きてちゃいけない存在みたいにし
て扱われてたって言うのに!﹄
422
フレアの声が響く。
その姿はまだ闇の繭に包まれたままだが、声は鋭く尖り、何かを殴
りつける鈍い音が耳を打った。
﹁フレア落ち着いて⋮⋮! セリス様には何かお考えがあるのかも
知れない﹂
シャロンは自身の動揺を隠しながら、激昂する同僚を諫める。
﹃許さない⋮⋮許さない。ヘミネは正しい奴だったんだ⋮⋮。門を
出る前から戦えないレナイ達の事を心配していたし、主人役を殺し
てしまい別れる際もアタシに目で謝って二人の無事を頼んできたん
だ!﹄
繭の中、激しさを増していくフレアの声。
﹁フレア!﹂
﹁無、駄﹂
シャロンが悲鳴の様な声を放つと、それに応えたのはフレアでは無
く、微笑を浮かべたラグラジルだった。
﹁特別仕様よ。中から外へ声は聞こえるようにしたけど、その逆は
無し。だって興醒めしちゃうじゃない? シャロンちゃんにそんな
真剣で悩ましげな声で話しかけられちゃったら、誰しも冷静になっ
ちゃうもの。だから、好きなだけ喚いていいけど、フレアちゃんに
は届かないわ﹂
魔天使は愉悦を隠さず、シャロンを見据える。
﹁ラグラジル⋮⋮お前⋮⋮!﹂
シャロンはふらつく足に力を籠め、懸命に立ち上がり、瞳に力を灯
す。
﹁うふふふふ﹂
ラグラジルは笑み、シャロンは怒る。
﹃アミュスも⋮⋮! 嫌みな奴だった⋮⋮でも、それでもアイツに
だってゼオムントに対抗する正当な理由があったんだ! 同じだっ
た、公娼として扱われた事にアタシとアイツで差なんて無い! 間
違ってないんだ! アタシは! アタシ達は自分自身の命を! 尊
423
厳を救う為に、やらなくちゃいけないんだ! 殺さなくちゃ! い
けないんだ!﹄
フレアは今回の遠征に出る際、最初の組み分けでアミュス達と同じ
主人の下に集められていた。
僅かな間だったかも知れないが、その分だけシャロン達よりも彼女
達の事を理解しているのだろう。
それ故の、苦しみ、怒り。
﹁ラグラジル! フレアを開放しなさい!﹂
シャロンは拳を握りしめ、目の前に立つ魔天使へと突き出した。
虚空を穿つ騎士の拳。
しかしそれは、文字通り虚しく通り過ぎて行った。
幻の様に、ラグラジルの体は闇へと溶け、シャロンは体勢を大きく
崩す。
﹁うふふふ。だめよシャロンちゃん。少し大人しくしててね﹂
瞬間、息の詰まる衝撃がシャロンの脇腹を襲った。
すぐ傍で実体を取り戻したラグラジルが尖ったブーツの先で、強烈
な一撃をシャロンへと見舞ったからだ。
﹁うぐっ⋮⋮ぐっ⋮⋮くっ﹂
仰向けに倒れ込みながらも気丈に睨みつけてくるシャロンに、魔天
使は右手をかざした。
﹁お口以外は、動かさないでね﹂
魔力が迸り、三本の闇色の縄が完成する。
縄はシャロンの両腕を背中に乗せて緊縛し、両の足首に巻きついた。
﹁そっちの﹃お口﹄も自由にして良いわよ﹂
倒れ込んだシャロンの腰を中心にして二本の杭が等距離で床から出
現した。
足首に巻きついた縄が、まるで意思を持つかのようにして床を這い、
杭へと結ばれていく。
必然、シャロンの両足もそれに引き摺られ、股が大きく割れていく。
﹁なっ、やめろっ! ラグラジル!﹂
424
﹁うふふふ﹂
縄は杭へと吸い込まれるようにして巻きつき、足首を直接杭へと固
定した。
シャロンは現在、両の足首と陰部が一直線に並ぶようにして固定さ
れている。
無論、騎士としていくら肉体を鍛えた者でも、これほどの開脚を強
いられては筋肉や骨に多大な負担をかけてしまう。
シャロンの金髪の下、汗の玉が浮かんでくる。
﹁ど、どういうつもり⋮⋮﹂
汗を掻き、目元を厳しくしながらも、シャロンは尚気高く在ろうと
して魔天使を睨みつける。
﹁念の為確保しておいたけど、使い道が無かったらどうしようかと
思っていたわ。さ、出て来なさいお前達。お前達の大好きな雌穴が
そこにあるわよ﹂
指を一つ鳴らし、ラグラジルは笑う。
闇の天井が開き、昏い檻が落下してくる。
その中には、十体の子鬼族が怯えて固まっていた。
﹃アミュス⋮⋮ヘミネ⋮⋮それにそっちの鏡に映ってるのはシュト
ラか⋮⋮みんな⋮⋮みんな悔しいよな⋮⋮許せないよな⋮⋮どうし
てアタシ達ばっかりこんな⋮⋮こんなに酷い目に遭わなくちゃいけ
ないんだ。どうして団長は、ああやって幸せそうにゼオムントの奴
らと一緒に居るんだ⋮⋮﹄
フレアの震える声がシャロンの耳に届く。
その言葉を理解し、心情を理解する事が出来ても、今の彼女にはど
うする事も出来なかった。
声が届かないからではない。
それは︱︱
﹁やめっ⋮⋮来るなっ!﹂
425
シャロンは檻から解放された子鬼達がこちらへソロソロと近づいて
くるのを見ながら、恐怖する。
ここへ閉じ込められる前、ユキリスが言っていた。
﹃子鬼族は別の種族の雌を使って繁殖する﹄
それはつまり、シャロンの胎内を使用して子供を作る事が可能だと
いう事。
闇の緊縛を受け、大開脚の上に身動きのできないシャロンでは、抗
いようがない。
﹁ひとつ教えておいてあげる。子鬼族の繁殖成功率はね、だいたい
どんな生物が相手であったとしても、一回の射精で二分の一。半分
の確率で妊娠しちゃうそうよ﹂
ラグラジルは虚空に浮かんだ状態で、さも愉しげにシャロンを見下
ろしている。
﹁十体。ワタシがここに連れてきた子鬼は十。受精の確率は二分の
一。一匹に一回ずつの射精と考えてシャロンちゃんが鬼の子を孕ん
じゃう確率はどのくらいあるでしょーか?﹂
シャロンはその言葉に反応し、数式を一瞬で整えてしまった。
そして後悔し、恐怖が倍増した。
﹁うふふふ。九割九分。がんばってね﹂
子鬼族は怯えた様子ながらも、本能に従い生殖の対象としてシャロ
ンを標的に定め、近づいてきている。
シャロンは一度歯噛みして、全身に力を込めた。
上半身を起こし、杭に足首を固定したまま床と垂直に体を立たせる。
必然、中心にあるシャロンの陰唇は床と接し、子鬼族からは隠され
る。
﹁あらまぁ⋮⋮がんばるわね﹂
ラグラジルは少しばかり呆れた調子で言い、肩を竦める。
﹁ま、無駄な抵抗でしょうけど﹂
その言葉を証明するかの如く、シャロンの体に子鬼族がまとわりつ
いた。
426
﹁ひっ、くっ。フレア! ユキリス! 早く、早くそこから出てき
て!﹂
例え声が届かないとしても、今のシャロンに残された希望は、閉じ
込められている二人の仲間だけなのだ。
子鬼族の一体が乳房に吸い付きながら下から揉み上げていく。
別の一体がペニスを乳首に押し付け擦りだす。
首筋を舐めてくるものや口の周りを舐め回してくるもの。
陰唇を床に押し付け隠す為尻肉が少し持ち上がり、露出している肛
門に指を突き入れてくるもの。
床との隙間に指を入れ、陰核をつまんで刺激してくるもの。
十体の子鬼がシャロンの体に群がって好き放題遊び回る。
﹁あっ⋮⋮くぅぅぅうん! やめっ⋮⋮﹂
弄られながらも、必死で自我を保ち、仲間の救出を待つシャロン。
その時、鏡の中の映像で禿げ上がった王宮魔道士が一本の杖を掲げ
魔力を開放した。
この顛末が、シャロンを襲う第二の衝撃。
﹃魔物達が⋮⋮アミュスとマリスに襲いかかった⋮⋮そう⋮⋮そう
いう事なのね⋮⋮﹄
ユキリスの哀しい声が響く。
﹃ラグラジルの言うとおり、﹃魔物の統帥権﹄⋮⋮いえ、﹃アン・
ミサの杖﹄はゼオムントの手に有った⋮⋮初めから、私達は騙され
ていたのね⋮⋮希望を抱いて、足掻いて、そうやってアイツらを楽
しませて⋮⋮そしてまた公娼に戻されるのね﹄
絶望と達観。
ユキリスが抱いた感情は、紛れも無く敗者のソレだった。
﹁だめっ⋮⋮! ユキリス⋮⋮もしそうだとしても⋮⋮私達には戦
う力が残されている⋮⋮! シャスラハール王子という旗印も得た
⋮⋮諦めては⋮⋮ダメッ!﹂
シャロンは全身を子鬼に嬲られながらも、懸命に届かぬ叫びを放つ。
子鬼達は何とかシャロンを押し倒し、膣口を開放させようとするが、
427
騎士は懸命に両脚に力を籠め、体勢を維持して抗う。
﹁そうかしら? 魔物を律する﹃アン・ミサの杖﹄がある限り、貴
女達に現時点では勝ち目はないわ。どう足掻いても、結果はこうな
るだけ﹂
ラグラジルが映像を早送りし、場面を移し替える。
そこに映し出されたのは、アミュスとヘミネの凄惨な末路だった。
数万に上る開拓民から止めどない凌辱を受ける姿。
檻に閉じ込められ、長い竿状の物で性器を突きまわされる姿。
魚顔の女に屈辱の凌辱絵日記をつけさせられる姿。
バケツを被った子供に便所掃除に使った雑巾やブラシを突き入れら
れる姿。
軍の朝会議で景気付の備品として膣出しセックスをさせられる姿。
﹃ははっ⋮⋮ははは⋮⋮アミュス⋮⋮ヘミネ⋮⋮。きっと私達もこ
うなるのね⋮⋮足掻いて足掻いて奴らを楽しませた末に、こうやっ
て公娼に戻される。全て、全て奴らの描いた筋書通りに﹄
乾ききった魔導士の声。
﹁ユキリスっ!﹂
シャロンは尚も叫ぶが、闇の繭がその悲痛な思いを阻む。
その時、優しさを含んだ笑みを浮かべ、ラグラジルがシャロンの隣
に降り立った。
﹃でもね、聞いて頂戴。三人とも﹄
不思議な音の響きは辺りに共鳴する。
﹃ラグラジルかっ!﹄
﹃⋮⋮何?﹄
どうやら特殊な音声を発している様子で、繭の中のフレアとユキリ
スにも届いているようだ。
﹃このラグラジルが持つ真の力を持ってすれば、﹃アン・ミサの杖﹄
に対抗する事も可能。何せワタシはかつての西域の管理者。今でこ
そアン・ミサの妹天使ラクシェに力を奪われてはいるけれど、それ
さえ取り戻す事が出来れば、再びこの地を支配し、人間族の侵略な
428
ど押し返して見せよう﹄
ラグラジルは言葉を区切り、シャロンを見据える。
全身に与えられる快感に屈さぬ様耐えながら、シャロンはそれを見
返す。
﹃ワタシに従いなさい。そうすれば貴女達に力を授けましょう。運
命を跳ね除け、己を取り戻す闇の加護を﹄
その言葉に、シャロンの心はざわめいた。
運命を跳ね除ける力。
アミュスやヘミネの様に、公娼として生き続ける運命から逃れられ
なかった者達の姿を見せられた後に、その誘いは何と甘美な事か。
しかし、それでも︱︱
﹃ラグラジル⋮⋮お前の力があれば、アタシはセリス団長に勝てる
か?﹄
﹃貴女の力があれば、今度こそ私は救われるのかしら?﹄
繭の中から声が聞こえる。
フレアとユキリスの、希望を抱いた声が。
﹁だめぇっ! フレア! ユキリス!﹂
シャロンは体の奥底から絶叫を上げた。
それでも、届かない。
﹃えぇもちろん﹄
ラグラジルが頷いた瞬間。
闇の繭が割れた。
中から現れたのは、フレアとユキリス︱︱だった者達。
フレアの裸身に解けた繭の糸が巻きつき、衣装を構成する。
闇色のノースリーブのシャツにグローブ、そして同色のホットパン
ツ。
手にした大戦斧にも闇が宿り、変形していく。
斧の刃がうねり、曲がり、一つの形を成した。
﹃大鎌﹄
全てが漆黒で彩られた鎌を握る闇の騎士が完成した。
429
ユキリスの白い肌にも、糸は這う。
踊り子衣装の様に、深いスリットのあるドレス姿。
剥き出しの両腕には幾つもの昏いブレスレットを通し、額にはサー
クレットが輝く。
手にした錫杖は歪に蠢き、黒い蛇を模した物へと変貌した。
闇色のオーラを纏った狂いと毒の魔導士が完成した。
二人はラグラジルの姿を見つけると目礼し、次にシャロンを見て正
反対な動きを見せた。
フレアは目を反らし、ユキリスはジッと見据える。
﹁さぁそれではシャロンちゃん。貴女の返事を聞きましょうか? どうする? この二人と一緒にワタシの下へ来てくれるかしら?﹂
魔天使の勧誘に、金髪の騎士は顔を上げ、今なお体を舐め回す子鬼
族に怯む事無く、力強く断言した。
﹁騎士たる者、二君に仕えず⋮⋮!﹂
数瞬、両者の瞳が交差する。
そして、ラグラジルがため息を吐いて微笑んだ。
﹁そっ。じゃあしょうがないわね、フレアちゃん。シャロンちゃん
を蹴り倒して、子鬼達にちゃんとオマンコが見えるようにね﹂
今シャロンは両足を踏ん張り、体を床と垂直に立てる事で膣口を隠
している。
もし、もし倒されるような事があったならば︱︱
﹁ッ⋮⋮﹂
フレアは相変わらず視線を反らし、ラグラジルに応答しない。
﹁もう、しょうがないわね。じゃあユキリスちゃん、やっちゃって﹂
ラグラジルの言葉を受け、魔導士は真摯に頷いた。
﹁かしこまりました﹂
一歩二歩とシャロンへと近づいてくるユキリス。
シャロンは喉を震わせ、ユキリスの顔を見つめる。
そして︱︱
﹁⋮⋮ごめんなさいね﹂
430
ユキリスの足裏がシャロンの鼻先に置かれ、そのまま勢いよく押し
込まれた。
体勢は揺らぎ、シャロンの体はゆっくりと床に向かって仰向けに倒
れ込んでいく。
騎士は絶望の叫びを上げる事無く、仲間に非道を強いた魔天使を睨
みつける。
倒れ行くシャロンの体、今まで隠されていた膣口が見えた瞬間、子
鬼族の一体が素早く股の間に潜り込み、己の肉棒を︱︱
突き刺した。
431
過ぎゆく天使︵前書き︶
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432
過ぎゆく天使
子鬼族の身長は人間の幼児程度。
それが十体、シャロンの体に纏わりつき、うち一体が股の間に身を
潜らせて肉棒を挿し入れた。
フレアはそれを見、歯噛みする。
﹁シャロン! 今すぐこちらに付け! そうすればまだ間に合う。
化物の子を孕む事になるぞ!﹂
怖れ、青褪めるのは自分の顔。
かつての同胞が、馬の轡を並べて戦った戦友が、女として最悪の事
象を強制されている姿に戦慄する。
﹁⋮⋮フレア、貴女こそどうしてそちらについてしまったの。騎士
長である貴女の姉上にどう顔向けするというの? 私はね、例え化
物の子を孕む事になったとしても、自分自身が騎士の誇りを捨てて
化物になるような事なんて、御免こうむるわ﹂
自由にならない体を懸命に動かし、最後まで抵抗を貫くシャロンの
瞳は、フレアを断罪する。
﹁それは⋮⋮わかるだろっ! アタシ達の希望は潰えたんだ⋮⋮!
魔物の統帥権は既にゼオムントの手に有って、アタシ達は玩具と
して遊ばれていたに過ぎないんだっ! アミュスやヘミネみたいに
反乱を起こして捕まって、前以上に酷い目に遭って⋮⋮そういう運
命を強いられるんだ⋮⋮! でも、ラグラジルに従えばもしかした
ら︱︱﹂
声が震え、瞳が揺らめく。
﹁もしかしたら⋮⋮? そう、三年間しばらく会わなかった内に貴
女は随分と弱くなってしまったのね﹂
聞いた話では、シャロンはセナやステアと共に同じ調教師組合に管
理されていて互いを励まし合って生きていたのだという。
433
うだつの上がらない三流調教師の日銭稼ぎと性欲処理に務めていた
自分とは異なっている。
今まさに醜悪な子鬼に膣を貫かれ、受精確率二分の一という恐ろし
い子種を注がれそうだというのに、シャロンの瞳は力を失わない。
﹁やめっ⋮⋮やめろ⋮⋮﹂
フレアは手を泳がし、ラグラジルに救いを求める。
しかし、
﹁ただ妊娠させても子鬼が一匹増えるだけじゃあ面白くもないし、
何より時間の無駄ね。どうかしら、ワタシの魔法とユキリスちゃん
の魔法を組み合わせて、もっと﹃スゴイ﹄怪物が生まれてくるよう
にしない?﹂
ラグラジルは満面の笑みで隣に立っている魔導士に声をかけた。
ユキリスは無言で頷き、手にした錫杖を引っ提げ、シャロンのすぐ
隣へ移動した。
﹁ユキ⋮⋮リス﹂
自分と同じ、シャロンやシャスラハールを裏切った魔導士が何をす
るか、フレアには理解できなかった。
ユキリスは瞑目し、錫杖を振り上げ、そして勢いをつけてシャロン
の腹へと突き下ろした。
﹁がふっ!﹂
喉を跳ねさせ、シャロンが呻く。
﹁﹃劇毒﹄の血を宿し、﹃狂奔﹄の性を得て﹂
錫杖を通し、ユキリスはシャロンの子宮へ魔力を伝達させながら言
葉を紡ぎ、ラグラジルもそれに続く。
﹁﹃暗黒﹄の体を持つ、魔物と人間の落し児﹂
魔天使のかざした手の平より放たれた昏い波動もまた、シャロンの
体へと溶けていく。
﹁﹁DEMON﹂﹂
二人が声を揃え、シャロンの胎内を作り変える。
﹁今⋮⋮何を⋮⋮?﹂
434
フレアは虚ろに問う。
すると、さも愉しげに笑いながら、ラグラジルは言った。
﹁シャロンちゃんはこれで、とっても便利なお手軽強力悪魔製造母
胎になったって事。例え人間相手だろうが子鬼相手だろうが犬が相
手だろうが、とりあえずどんなのとヤッても妊娠しちゃえば生まれ
る子供はぜーんぶ﹂
フフッと魔天使は凄絶に微笑む。
﹁悪魔﹂
﹁天使⋮⋮?﹂
シュトラは鉛色の空を切り裂いて飛ぶ何かを見て、そう呟いた。
ソレは白い羽根を背中に流し、金色に輝いて見えた。
一瞬、驚くような速さで通り過ぎて行った天使の影を追い、シュト
ラの頭は動く。
そこに一匹のマルウスが立っていた。
﹃ほら ぼけぼけ するな むこうで みんな まってる﹄
マルウスの手には先ほどまでシュトラの視界を覆っていた目隠しと、
雌車の操縦に使われた棒が握られている。
このマルウスはマルウスの里に戻るまで雌車を操ってきた馭者役の
ネズミだった。
今日は朝からヒュドゥス漁に釣り餌として駆り出され、雌車として
送迎までやらされ、心身は既に限界に近い。
それでも、勤めが終わらない事をシュトラは理解している。
シャスラハール達を見送ってから既にひと月ほど経っただろうか。
その間、シュトラ達この里に残った八人は絶える事の無い凌辱に晒
されていたのだ。
﹃あんまり なまけてると きょうの おはな なしだ ぞ﹄
そう言われてシュトラは青髪を下げて項垂れる。
逆らえない。
435
武器が有ろうが無かろうが、実力で言えばシュトラはこの里にいる
どのマルウスよりも強い。
ましてや戦える者が自分の他に後四人囚われている。
隙をついての脱走を何度も考えた。
しかし、それを実行する事は終ぞ叶わなかった。
﹃おはな﹄
それはマルウスが住まうこの里にだけ咲く、多年草。
桃色の花弁をつける、美しい花だ。
そしてその花を砕き、蜜を集め、摩り下ろした液体こそが、シュト
ラをこの環境に捕らえる元凶となっている。
強烈な中毒性。
そして壮絶な催淫性。
特に経口摂取では無く下半身の粘膜からその成分を送り込まれると、
気が狂うほどの快楽と虚脱感を与えられる。
シュトラはシャスラハール達が旅立つ前夜にマルウス族の集団に捕
らえられ、特別に濃い液体を膣と肛門から注入された。
そして夜通し、器具やネズミの粗末な性器での輪姦を受けた。
騎士は立派に耐え、戦い、そして陥落した。
一度の注入では堕ちなかったシュトラに対し、マルウス達は何度も
何度も液体を注ぎ込み、過程を楽しむかのようにして開発して行っ
た。
そして早朝、シャスラハール達が旅立つ一刻前に、シュトラは陥落
し、ネズミ達の肉奴隷へと堕ちてしまった。
そこから先は、思い出したくもない。
シュトラは中毒に負け、仲間達の食事に﹃おはな﹄の液体を混ぜ、
全員を感染させた。
シュトラを含め動ける五人はマルウスの興が乗るまま玩具になり、
残り三人は⋮⋮。
﹃きれいに なめろ つぎ べつの やつの こうもんに さすん
だ から﹄
436
マルウスは操縦棒をシュトラの顔先に突き出す。
先ほどまでシュトラの肛門に突き刺さっていた、雌車の馭者が持つ
道具。
その日の気分で誰に車を牽かせるか決める為、この操縦棒は雌車の
付属物では無く馭者の仕事道具となるのだ。
体で、肛門で覚えている。
棒を肛門に突き入れられると前進。
抜き出されると停止。
深く突き入れられると加速。
入り口付近まで戻されると減速。
時計回りに肛内をなぞられると右折。
反時計回りだと左折。
幾度となく、シュトラはマルウス達の車として、旅行をはじめ、収
穫の手伝いから貿易、ヒュドゥス達が住まう川へ不要物の廃棄など
に利用された。
目隠しをして、乳房と首に縄を巻き付けて車を牽いた。
マルウス達は七日に一度休日を定めているようで、その日には五人
の雌車に五匹の馭者が乗り、金品や食料を賭けたレースが開催され
る。
シュトラは過去四回のレースで三度の優勝経験を持つ、いわば鉄板
の雌車としてマルウス達に認知されている。
シュトラは舐める。
自分の肛門を貫いていた何の装飾も無い木の棒を、舐める。
苦みを放つ何かを口に含んだとしても、眉根を寄せてそれを飲み込
む。
そうしている間に、馭者役のマルウスの手によりシュトラの首と乳
房から紐が解かれ、代わりに首輪が取り付けられた。
別のマルウスがやって来て首輪にリードを通す。
マルウス族は小柄なネズミの魔物。
シュトラ達と性交する為にいちいち台に登って身長を合わせたり、
437
寝台を用意したりする事は無い。
四つん這い。
それがシュトラ達に強いられた、基本姿勢だった。
故に、リードを通して首輪を引かれると、シュトラは四足の恰好で
それに付いて行く。
無論、全裸なのは言うまでもない。
他の四人も、雌車は全て車から離され雌犬へと変わる。
今日はこれから、広場で酒盛りをやるらしい。
その余興として残酷な仕打ちを受けるであろう事は、想像に難くな
い。
でも、本当の意味で残酷な目に遭っているのは、シュトラ達﹃動け
る五人﹄ではない。
﹃動けない三人﹄
フレアと共にアミュス達から別れた修道女レナイと王族サディラ、
そしてカマキリ型の魔物ベリスの手から救い出された別の組の公娼、
名はサイリと言い、そこそこの騎士であったそうだが、レナイ達同
様ベリスに足を切り落とされている為、戦う事は出来ないでいた。
シュトラはリードに引かれたまま里の中心部にやって来た事を知り、
顔を上げる。
そこには、磔にされた三人が並んでいた。
﹃おさけ おさけ みっつ どのあじにするか いまから まよっ
ちゃう﹄
一つ目、豊かな乳房を金属製の搾乳機で覆われた、騎士サイリ。
二つ目、膣に極大の管を突き刺されている、王族サディラ。
三つ目、両足を大きく踏ん張り、開いた股の下に大きな樽が置かれ
ている、修道女レナイ。
そして磔られた三人の傍に、台に乗って立つマルウスが三匹。
彼らは、﹃花やり係﹄と呼ばれる。
その仕事は、三つの口に﹃おはな﹄をねじ込み続けるという、単純
作業の繰り返しだった。
438
激しい中毒性と催淫性を持つ﹃おはな﹄だったが、人間の体を通し
て一度毒気を抜くと、とても華やかな香りと甘い味を出すのだそう
だ。
三人はマルウスに捕らえられてから﹃おはな﹄だけを食べて、生き
続けていた。
マルウス達は三人の体をつぶさに観測・研究しそれぞれに合った方
法で毒抜きして加工し酒等へと変えている。
サイリは母乳から﹃おはな﹄の成分を抜き出し、甘くトロみのある
味の﹃花乳酒﹄を造り出す。
サディラは愛液から﹃おはな﹄の成分を抜き出し、香りの強い芯の
ある味の﹃花蜜酒﹄を造り出す。
レナイは排泄物から﹃おはな﹄の成分を抜き出し、成熟した老齢の
マルウスに好まれる﹃花泄酒﹄を造り出す。
今この瞬間も、三人の口にはマルウスが抓んだ﹃おはな﹄が捻じ込
まれて、消化させられていく。
そして、三人は三人とも笑いながらそれを飲み込むのだ。
﹃おはな﹄の成分は液体として凝縮されなければ弱い。
けれども、四六時中、ひと月の間それだけしか食べて来なかったと
したら、微量ながらも蓄積され続けた毒は三人の人格を殺し、ただ
の生きた濾過装置としての存在に貶めてしまっている。
レナイ達は、狂ってしまっていた。
﹃おはな﹄の毒か、この境遇かに、完全に自我を放り捨ててしまっ
ていた。
シュトラは思う。
自分達は釣り餌だ雌車だと色々やらされてはいるが、自我だけは何
とか保っている。
それは力や能力からして、希望を捨て去ってはいないからだろう。
しかしレナイ達には肉体的欠損が有り、この境遇に対してあまりに
無力だった。
故に、彼女達の心は死んでしまった。
439
そして、彼女達を殺したのも、他の仲間を巻き込んでしまったのも、
全ては自分の責任だと。
今日、懐かしい顔に出会った。
マリス。
アミュス達と共にシャスラハール組と分かれた公娼だ。
何故一人だったのかは知らない。
けれど、彼女が持っている曲刀に途方も無く心奪われた。
それで、罰してくれ。
私をどうか、殺してくれ。
私の罪を、許さないでくれ。
﹃ほら おまつり はじまるぞ﹄
そう言ってマルウス達はシュトラの首輪を外し、手に手に杯と調教
器具を握って、シュトラへ群がってきた。
﹁⋮⋮もし天使がいるのなら、助けて欲しい。一番最初にレナイを
サディラをサイリを⋮⋮他の四人を⋮⋮そして最後に、私を助けて
⋮⋮。天使が、いるんだったら⋮⋮﹂
大鎌が振るわれ、ドス黒い鮮血が飛び散り、シュトラが映っていた
鏡へとこびり付いた。
フレアは目元に垂れる黒髪の下、涙を流して自責する。
﹃腑抜けが﹄
結局自分は姉達と共に希望を抱く事も出来ず、ユキリスの様に魔に
従う事さえできなかった。
子鬼を十体。
裂いたのだ。
シャロンの唇を舐めていた者を。
戦友の乳房を嬲っていた者を。
仲間の子宮を犯していた者を。
全て両断し肉片へと変えてしまった。
440
﹁フレアちゃん⋮⋮どういう事?﹂
ラグラジルが眉根を寄せて詰問してくる。
﹁⋮⋮っ﹂
フレアには答える事が出来ない。
﹁ラグラジル様、お下がりください﹂
錫杖をこちらに向け、ユキリスが正対してくる。
﹁フレア⋮⋮﹂
シャロンが身を捩りながら、か細い声をかけて来る。
﹁⋮⋮っ!﹂
やはり言葉が出てこない。
シャロンの様に地頭が良いわけでも無く、ユキリスの様に学問に注
力してきたわけでは無い。
自分は、ただ愚かな一介の戦人に他ならない。
命令には従う。
しかし感情も殺せはしない。
それ故に、怒りに任せて希望を失ってしまったし、憐みに負けて新
しい主人を裏切った。
﹁ハハッ⋮⋮﹂
自嘲の笑みが零れる。
どうしようもない、脆弱な自分。
﹁つまらない子﹂
ラグラジルが手の平を翳し、魔力の塊を放つ。
フレアは咄嗟に大鎌を構え、ソレを弾き飛ばす。
﹁チッ⋮⋮やはり今のワタシには攻撃魔法は無理ね。ユキリスちゃ
ん、やっちゃって﹂
舌打ちし、魔天使は翼を広げて後ろへ飛び立った。
それは、まさしくフレアと距離を取る為の行為であり、それを行う
理由としては︱︱
﹁フレア! ラグラジルには今の貴女と正面から戦って勝つ力が無
いようです! どうにかユキリスを無力化してあの者を討てば、そ
441
の力を得たまま騎士長達の下へ戻れるかもしれません!﹂
シャロンが転がった体勢のまま声を放つ。
その瞳は、つねに戦場を見渡し、戦術を整えてきた頼れる軍師のソ
レだった。
﹁⋮⋮うるさい子ね、閉じ込めてあげるわ!﹂
ラグラジルは魔力を操り、シャロンの柔肌を縛る闇の縄をきつく締
め、覆いかぶせる様に新たに生み出した昏い繭を放った。
﹁シャロン!﹂
フレアはシャロンを庇う様にして飛び込み、大鎌を振るう。
すると、裂けた。
闇の繭も縄も。
紐を解く様にあっさりと、断ち切れたのだ。
﹁⋮⋮いけるっ!﹂
得物を握り直し、フレアは顔を上げた。
そこに浮かぶのは決意の表情。
自分の脆さは先ほど痛いほど知った。
この先、希望を抱き続けるシャロン達と同じ道を歩めるかと考える
と、自信は持てない。
きっとまたどこかで迷ってしまうだろう。
そんな自分は彼女達と同行するべきではない。
せめてシャロンだけでもラグラジルの手から解放し、シャスラハー
ル王子達の下へと戻してやらねばならない。
その思いだけで、大鎌を構えた。
向かい合う、錫杖を構えたユキリス。
﹁⋮⋮やはり、アミュスが言っていたように騎士は頭の足りない生
き物なのかもしれないわね﹂
ゆっくりと、侮蔑する様に言葉を紡ぐ魔導士。
﹁頑固だし、勝手だし、未来が見えていないし。あのねぇフレア、
今ここで貴女と私が一対一で戦えばどうなるか、それははっきり言
ってわからないわ。でもね、貴女には足手まといになるシャロンが
442
いて、私にはこの空間の主であるラグラジル様がついている﹂
錫杖を突出し、その周辺に魔力の靄を発生させる。
﹁言っておくけど、私の魔法の範囲は広いわよ。今新たに授かった
力があればこの空間全てに届かせる事が出来る。ねぇ、それでも貴
女はシャロンを守りながら私に勝てるというのかしら?﹂
ユキリスは劇毒と狂奔の魔導士。
単純な力勝負で戦える相手ではない。
ましてや、満足に動く事の出来ないシャロンを庇いながらとなると
︱︱
﹁フレアちゃん、今ならまだ許してあげるわ﹂
ラグラジルが虚空に浮かびながら、冷めた目で言う。
指を一つ鳴らし、床面を隆起させ、グロテスクに波打つ闇のペニス
を発生させた。
﹁それに跨って腰を振りなさい。そうね、最低三日。膣の奥から反
省出来たら許してあげる。シャロンちゃんはその間に新しく子鬼を
掴まえて来るからそれと小作りしてもらうわ﹂
フレアはその言葉を聞いて、視線を下げる。
ビクビクと脈打つ闇の男根は反り返り、凶器としか思えない。
それでも、これまで数々に悲惨な凌辱を受け続けた自分からすると、
可能な事のように思えた。
しかし︱︱
﹁ふっ!﹂
息を吐き、大鎌を振るう。
闇の男根は刎ね跳び、消え去った。
﹁⋮⋮そう。ユキリスちゃん、動けなくしてあげて。フレアちゃん
にもシャロンちゃんと同じように、悪魔の苗床になってもらうとす
るわ﹂
魔天使はこの上なく苛立った様子で、そう吐き捨てた。
443
妹天使︵前書き︶
明けましておめでとう御座います。
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444
妹天使
防戦一方。
ユキリスとフレアの一騎打ちはそう評すべきものであった。
広範囲に攻撃を放ち、フレアもろともシャロンを攻撃するユキリス
の魔法を、単純な体術だけで防御する。
大鎌を振るい、気迫で捌く。
フレアに攻撃を仕掛ける機会は与えられない。
﹁⋮⋮いい加減、諦めたら﹂
ユキリスは錫杖を構えたまま、口を開く。
﹁もしかしたらまだ、ラグラジル様はお許し下さるかもしれないわ
よ。シャロンも一緒に謝って投降すれば、三人一緒に戦えるわ﹂
声を向けられた先、フレアは口元に浮かんだ汗を拭いながら、首を
振る。
﹁これ以上、惑ってしまうと自分が自分でなくなってしまう。初志
貫徹とはいかないでも、定めたばかりの決意って言うものを捨てる
気にはならない﹂
そう言ってフレアは腰だめに構える。
﹁それに、魔力の使い方と言うのも何となく解って来たしな⋮⋮!﹂
騎士として己の肉体と武具だけで生き抜いてきたフレアには、ラグ
ラジルから与えられた闇の魔力を上手く使いこなす方法が解らなか
った。
しかし、今まさに魔導士として器用にソレを使いこなすユキリスを
戦いの最中に観察し、学び取る。
相手の筋や技を見極め、自らに転用する。
それもまた、一流の武芸者に求められる技術であったからだ。
﹁ハッ!﹂
全身に気合を送り、魔力の気配を探る。
445
体の中心に、外に出る事が出来ずに淀み続けるソレを発見し、力を
込める。
背筋に、上腕に、下腿に。
やがて、黒い魔力はフレアの気合に押し出される形で、表出される。
背筋に込められた力は翼となり。
上腕と下腿は鈍色の鋼が纏い、シャツとホットパンツへと接続され
る。
魔力を己が武装に変え、再び息を吐く。
﹁ふっ⋮⋮どうだ、これなら!﹂
鎌を上段に振り上げ、翼をはためかせる。
フレアはまるで矢の様にユキリスに迫り、斬りかかる。
魔導士は魔術を展開し、それを懸命に防いだ。
一方的だった戦況は大きく変じた。。
﹁くっ⋮⋮速い﹂
急発進、急降下、急旋回。
フレアの戦術にこれらの要素が増えるだけで、場には一種の均衡が
生まれた。
これまでと異なり、ユキリスにも防御の必要が出てきたからだ。
狩猟から戦闘へ。
一進一退。
両者隙を見せればフレアはラグラジルへ斬りかかろうとし、ユキリ
スはシャロンへ魔法を放とうとする。
それを牽制しあいながらの戦いは、膠着してきた。
﹁ねぇ⋮⋮いつまでも遊んでいないで、さっさとしてくれないかし
ら﹂
ユキリスの後方で退屈を絵に描いた表情を浮かべたラグラジルが声
を放つ。
﹁もう良いわ、ワタシも手伝ってあげる。ユキリスちゃん、早々に
あの二人を苗床に変えてやるわよ﹂
ラグラジルが両手をかざし、ユキリスへと何らかの魔力を送り込も
446
うとした時、
世界が振動した。
このごく小さなラグラジルの箱庭全体が、激しく震えたのだ。
﹁⋮⋮っ!﹂
シャロンはフレアと視線を交わし、最大級の警戒をとる。
未だに足取りは覚束なく、戦友の負担となっている状況だが、この
ままむざむざと死ぬ気はまったく無かった。
しかし、
﹁⋮⋮何よコレ⋮⋮ワタシはまだ何もしていないのだけど⋮⋮﹂
ラグラジルが天井を見上げ、呻くように口を開いたのだ。
﹁空間が⋮⋮﹃殴りつけ﹄られてる⋮⋮? このワタシの空間を見
つけて、更にはそれに干渉してくるだなんて⋮⋮まさか⋮⋮﹂
口元は震え、目には険が浮かんだ。
ドォン! ドォン!
世界が激しく振動し、暗闇に白いひび割れが生まれた。
闇一色だった世界に、神秘の光が灯ったのだ。
真円状にこじ開けられた空間の入り口。
そこに浮かんでいたのは、輝く光の翼を六枚生やし、空色の髪をし
た小さな童女だった。
人間に当てはめれば十代の初め頃、まだ初等教育を受けている年代
であろう少女がそこにいた。
しかし誰の目にも明白であることが一つ。
この者は人間ではない。
魔か、或いは魔を凌ぐ者だと。
まず人とは根本的な気配が異なった。
力を持つ者のオーラと言うべきか、途轍もない波動を纏っている。
六枚の翼と金色の気配、それは正しく天使に抱く印象と合致してい
た。
447
そして手にした武器が一つ。
この空間を殴りつけ、砕いたもの。
少女の全身よりも三倍以上も長い、巨大な戦槌。
少女が口を開く。
﹁ラグラジル⋮⋮こんな所に居た。また悪さしてる。お姉さまの顔
に泥を塗るような事をしたら今度こそ許さないって、ウチ言ったよ
ね? どうしてなのよ! もう﹂
少女は手にした戦槌をラグラジルに突き付け、頬を膨らませて怒鳴
る。
その姿だけは、年相応に映った。
突き付けられた側、ラグラジルは額に汗を浮かべ、目線を切る。
﹁ラクシェ、アンタがどうして⋮⋮くそっ﹂
シャロンはその名に聞き覚えが有った。
少し前、ラグラジルを意図せず挑発した際に、彼女が己を誇る様に
して名乗った時、付随していた名前だ。
﹃西域の魔天使ラグラジル。アン・ミサにより翼を汚され、ラクシ
ェにより力を奪われたかつての管理者﹄
そう、ラグラジルは言っていたはずだ。
魔天使は悪しざまに舌打ちし、フレアとシャロンを一つ見て、獲物
を獲り損ねた猟師の様な表情を浮かべる。
﹁鹿狩りに来たら熊と遭遇したってところかしらね⋮⋮。ユキリス
ちゃん! 場所を変えるわ、付いてきなさい﹂
そう言ってラグラジルはユキリスへと魔力を放ち、自分へと引き寄
せる。
﹁あっ﹂
ユキリスはラグラジルに抱き止められる形で重なり、その二人を覆
うようにして闇の繭が生まれた。
﹁あーっ! 逃がさないもん!﹂
ラクシェは六枚の翼を煌めかせて急降下し、その勢いのまま戦槌を
振り下ろす。
448
ラグラジルの繭は、バラバラに崩れ落ちたかのように見えた。
事実、無数の破片が宙に舞い、地に落ちている。
しかしそれでも、ようやく薄皮一枚だけ、二人を覆っていた。
﹁危なかったわ⋮⋮念には念を、繭を三十枚重ねにしていたおかげ
で、一枚⋮⋮いえ、半枚だけ残ったみたいね。ホント、アンタの馬
鹿力には参るわよ、ラクシェ﹂
その言葉を聞いて、ラクシェは頬を真っ赤に染め、手足をバタつか
せる。
﹁あーもう! どうして大人しく捕まらないの! ウチの事いつも
馬鹿にしてっ!﹂
その泣き顔にも似た表情に嘲笑を向け、ラグラジルとユキリスを包
んだ繭が小さくなっていく。
﹁困ったわ⋮⋮手駒はもう少し欲しいのだけれど⋮⋮どこに行こう
かしら﹂
悩ましげな魔天使の言葉を残し、繭は消え去った。
﹁ぐきききききっ! もうもう! ムカツクぅぅぅ!﹂
ラクシェの涙声が、辺りに轟いた。
そうして僅かな沈黙が流れた後、六翼の天使が振り返った。
全裸で立ち尽くすシャロンに含み笑いを送った後、﹃ラグラジル同
様に﹄黒い翼を生やしたフレアを見つけ、顔を綻ばせた。
﹁あ、手掛かりはっけーん! 異端審問のお時間ですよー!﹂
ラクシェはそう言って、戦槌を振りかぶってフレアへと突っ込んで
きた。
﹁なっ! 違うっ! わたしはアイツの仲間では無い!﹂
大鎌を構え、戦槌を弾こうとしながら、フレアは言った。
しかし、その言葉は、笑顔の少女天使には届かなかった。
﹁異端者の言葉なんて、信じるわけないもーん﹂
戦槌が振り下ろされる。
いなすように振るわれた大鎌は、フレアの両腕に掴まれた状態でた
だの一撃すら防げないまま砕け散った。
449
そして、勢いを殺す事すら出来ていなかった。
﹁あぐっ!﹂
左の肩口から衝撃に襲われたフレアは吹き飛ぶ。既に強い衝撃を与
えられていたラグラジル空間の残骸へとぶつかり、今度こそ世界は
崩壊した。
マシラスの山裾。
その渓流のすぐ傍に、シャロンとフレア、そしてラクシェは戻って
来た。
﹁フレア!﹂
シャロンは駆け出し、戦友の体を抱き起す。
口から血を吐き、左腕を力無く垂らし、呼吸する度に激しく胸が動
いている。
それほどの、衝撃だ。
﹁感謝してよねー。殺さない様に頑張ったんだから。まぁ異端者だ
し最終的には殺しちゃうけど、ラグラジルの行方とか目的とかそう
いうの聞き出すまでは生きててもらわなきゃ困るもん﹂
戦槌を軽々と持ち上げながら、ラクシェは笑っている。
﹁これからー、一緒に﹃天兵の隠れ里﹄に行ってぇ、そこで異端審
問官の人達に洗いざらい知ってる事全部喋ってもらうの。あそこの
おっちゃん達張り切るだろうなー、久しぶりに女の異端者だもん。
またウチ褒められてお菓子貰えるかも! わくわく﹂
幼い天使は、ゆっくりと二人へ近づいてくる。
白く、光輝で、あどけないその笑みが、シャロンにとって酷く恐ろ
しいものに映った。
フレアの右腕が、いつの間にかシャロンの腰へとかかり、力が込め
られていた。
血反吐を吐きながら、リーベルラントの斧騎士が小さく言う。
﹁シャロン⋮⋮君は⋮⋮わたしが絶対に逃がす⋮⋮っ!﹂
450
黒い翼が限界まで広がり、シャロンを抱いたフレアは大空へと急上
昇して行く。
ここがマシラスの山であるならば、シャスラハール王子達との距離
はそこまで離れていないはず。
彼らの下へ、姉の下へ。
必ず、
絶対に、
シャロンを無事合流させてみせる。
﹁あはっ。追いかけっこ? ウチ結構自信あるよー! やるやる﹂
六翼の天使が今、飛び立った。
451
向日葵︵前書き︶
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452
向日葵
曙光の降り注ぐ草原を風が駆け抜ける。
風に乗り、翼をはためかせて飛んでいくフレアとその腕に抱かれた
シャロン。
そしてそれを遊ぶようにして追い回すのは、六翼の天使ラクシェ。
逃げるフレアをラクシェが追う。
そうでは無い。
逃げようとするフレアでラクシェが遊んでいるだけなのだ。
追走劇でもなんでもない。
これは姿を変えた兎追いに他ならない。
現にラクシェは笑いながら速度を上げ、一息で追いついてフレアへ
と戦槌を振るう。
フレアは懸命に身を躱して死の衝撃を回避する。
﹁あはははー、うまいうまーい! 凄いねー見た感じ本物の悪魔っ
てわけでも無さそうだし、大方ラグラジルに強化された人間なんだ
ろうけど、翼の使い方は本物の天使みたい!﹂
ラクシェは笑いながら減速し、またフレアの後ろを取る。
﹁そっちの抱えられてるおねーさん、お尻丸出しだしー、何かいろ
いろ見えちゃってるしー、裸でお空飛ぶのってどんな気分なのかな
ー﹂
シャロンは今、フレアの脇に抱えられる様にして運ばれている。
装備は全てラグラジルに奪われている以上、全裸のままだ。
後ろから付いて来るラクシェから見れば、尻が丸出し以上に、フレ
アが急旋回した時などに足が大きく開いて中身が見える事もあった
だろう。
それを幼い天使は笑っているのだ。
﹁⋮⋮フレア、シャスラハール王子達はまだ﹃アン・ミサの杖﹄に
453
ついての真実を知らない。そうなると進路は西域の奥、本来私達が
向かう予定だった場所へと進んでいるはずです﹂
シャロンは背後からのからかいの声を無視し、語りかける。
﹁上空から可能な限り捜索して、騎士長達の助力を仰いで、この天
使を退けましょう﹂
その声に、強さは無い。
シャロンは恐れていた。
ラグラジルを恐怖させ、力を得たフレアを一蹴したラクシェの力を。
もし上手い事ステアやセナ、リセやヴェナの力を借りられたとして
も、ラクシェに勝てるとは思えなかった。
無駄な抵抗に終わり、一行の旅に終止符を打ってしまうのではない
かと、心の底から危惧していた。
ここで大人しくラクシェに投降し、彼女の言う所の異端審問を受け、
口をつぐんだまま凌辱の末に殺された方が、戦友たちの未来の為な
のではないかと、考えてしまった。
折角ラグラジルの魔の手から逃れられたのにも拘わらず、悲劇の運
命は止めようがないのか。
﹁⋮⋮わかった。揺れるぞっ!﹂
ラクシェの遊び半分の攻撃を必死に回避しながら、フレアは何かを
決意した表情で頷いた。
錐揉みに回転しながら飛び続ける二人は、必死に体を抱き寄せあっ
ている。
フレアは戦友の体の温もりを強く感じながら、一瞬微笑んだ。
﹁フレア⋮⋮?﹂
シャロンに気づかれ、慌てて表情を引き締める。
前を向いた先、遠目に草原から隆起し、ゴツゴツとした岩で形作ら
れた切り立った崖が見えた。
そしてその崖の下、空洞が見える。
空洞の入り口で半ば身を隠すようにして立っているツインテールの
少女の姿が目に飛び込んできた。
454
見違えるはずはない。
あれは、彼女達の戦友。
故郷を同じくし、志をも同じくする者。
セナ。
セナがいるという事は、近くにステアやシャスラハールも居るのだ
ろう。
時間的に朝日が見える今、姿を隠しやすい洞窟に居るという事は、
洞窟内で野営をし、そろそろ全員が起きだす頃なのだろう。
セナは騎士として不寝番を務め、入り口の近くで待機しているのだ
ろう。
近くに頼りになる仲間の姿が確認できた。
ならば、是非もない。
﹁⋮⋮シャロン。君は痛みに強い方か?﹂
急な問いかけに、シャロンは怪訝な表情を浮かべる。
﹁どうしたの⋮⋮フレア?﹂
﹁いや、たぶん痛いだろうし、怪我をするかもしれないが、まぁ向
こうにはハイネア王女もいらっしゃるだろうし、死なない限り大丈
夫だろうさ﹂
フレアはそう言って、僅かばかり高度を下げる。
そして背後をチラと振り返り、ラクシェが付いて来ているのを確認
してから︱︱
﹁フン! このお子様天使が! 偉そうな口を叩く割にはわたし一
人掴まえる事も出来んではないか! やはり貴様の様なガキには荷
が重いのだろう! 現にラグラジルにもあっさりと逃げられていた
からな! ﹃天兵の隠れ里﹄とやらに行って援軍でも呼んで来た方
が良いのではないか?﹂
啖呵を切った。
シャロンとラクシェは似たような呆然顔を浮かべ、次いで天使の表
情は変わった。
﹁何言ってんの⋮⋮? アンタがまだ生きてて、空飛べてるのは⋮
455
⋮ウチが手ぇ抜いてあげてるからじゃん⋮⋮﹂
こめかみを震えさせ、ラクシェは表情を硬くする。
﹁ほぉそうかそうか。強がりはガキの特権だからな、許してやろう﹂
フレアはなおも挑発を続ける。
その小馬鹿にした表情に、ラクシェは激昂する。
﹁オマエ⋮⋮ぶっ殺す! 異端審問も完全完璧なフルコースを用意
してぇ! 里中に、いや世界中に恥を晒させてから! ウチの手で
ぐちゃぐちゃに挽き潰してやる!﹂
戦槌を振りかざし、かつてない速度で迫ってくる。
その様を見て、フレアは薄く笑った。
﹁シャロン⋮⋮君なら、ラグラジルの所で得た情報を使って姉上達
を導けるはずだ。この苦境からどうにかして、出来るだけ多くの人
を救ってほしい﹂
フレアの浮かべた表情に、シャロンは確かな感情を悟った。
﹁待って⋮⋮フレア、フレア?﹂
縋り付く様にして抱き着いてきたシャロンの体、その腰に回してい
た腕の力を解いていく。
﹁それじゃ⋮⋮武運を、軍師殿﹂
フレアは腕を外し、体を揺すってシャロンの拘束を解き、虚空へと
彼女の体を投げ出した。
下は柔らかそうな草が生えそろった草原で、見たところ土も硬くは
なさそうだ。
近くにはセナがいて、大きな音が立てば駆けつけて来るだろうし、
セナの近くには治療の出来るハイネアもいる。
仲間と合流してラクシェと戦う︱︱それは一見希望を感じさせる事
かも知れないが、その結末は、先ほど彼女の攻撃を受けたフレアに
とっては火を見るより明らかだった。
故に、シャロンだけでも助ける。
ラクシェの注意を自分にひきつけ、シャロンを放り捨てる事で彼女
を巻き添えにしない。
456
フレアの覚悟はそういうものだった。
﹁フレアああああああああ﹂
落下しながら叫ぶシャロンへと笑いかけ、フレアは自由になった右
腕に魔力を集中させる。
もうすぐそこまで、ラクシェの戦槌が迫っていたからだ。
風ごと殴りつける轟音が、辺りに響いた。
﹁⋮⋮ごほっ! ぐほっ!﹂
尋常ではない痛みが全身を襲っている。
右腕を犠牲にし、衝撃を殺すようにして戦槌を受けたが、やはりそ
れは並大抵の一撃では無かった。
体の内部から幾つもの悲鳴を聞き、骨の破損だけで十を超えるだろ
う。
だがそれでもフレアは倒れず、なおも空を飛び続けた。
最早血の滴る皮袋と化した両腕をダラリと提げたまま、懸命に逃げ
る。
その姿が更に気に障ったのか、ラクシェは落下していったシャロン
を気にする素振りすら見せず、フレアを追って来ている。
﹁少しでも⋮⋮シャロンの所から離れておかないと⋮⋮わたしに出
来るのは⋮⋮それだけだから⋮⋮!﹂
草原を越え、今は一面に向日葵が咲き誇る花の丘の上空を飛んでい
る。
少しでも、少しでも遠くへと進むフレアの背中を見据え、ラクシェ
は高い声で叫んだ。
﹁もう! もうもうもうもう! ウザい! ウザ過ぎっ! 落ちろ
! 落ちろぉぉぉぉぉぉ﹂
ラクシェは戦槌を振りかぶり、勢いをつけて投擲した。
超高速で迫り来るソレを、フレアは間一髪回避し、一つ息を吐く。
その瞬間が命取りだった。
457
﹁ぉが⋮⋮ぐ﹂
背を打ったのは、死にも等しい衝撃。
背中を覆っている翼がクッションにならなければ、間違いなく死ん
でいただろう。
バラバラに砕け散る翼の残骸と共に、フレアは向日葵畑に落下し、
かろうじて動く首を回し、ラクシェを見上げる。
その手には戦槌。
そして自分が倒れ伏している向日葵畑にも、まったく同じ物が二つ、
突き刺さっていた。
﹁一個だけって誰が言ったかなー? ウチら天使をアンタら下等な
人間と同じレベルで考えてもらったら困るの。さて、んじゃ異端審
問からの処刑コースで、覚悟しときなさいよねぇ⋮⋮﹂
そう言ってラクシェは緩やかに地表に降り立ち、フレアの頭を踏み
つける。
﹁これからさー、死んじゃうくらいの辱めに遭って、そっから死な
せてくださいって言いたくなるような拷問をされて、そして最期は
虫けらみたいにウチに殺されるの。どう、怖い? ウチはとっても、
楽しいけどね! これから毎日! ウチがアンタで遊んであげる!
楽しみで楽しみでしょうがないわ!﹂
ラクシェは足を振り上げ、フレアの頭を蹴る。
額から一条の血を流しながら、フレアは口を緩めた。
﹁そう⋮⋮か。それは結構な⋮⋮事だ⋮⋮﹂
挑発は、成功した。
ラクシェの見た目相応に幼い頭脳の中にはもう、シャロンの事など
残ってはいないだろう。
今あるのは全て、フレアをどうやって苦しめるか、それだけになっ
てくれているのなら、目的を達成したというものだ。
その時、上空から新たな影が五つ、舞い降りてきた。
皮の甲冑を纏い、背中に二枚の白い翼を生やした男達が五人、地表
に降り立ったのだ。
458
﹁ラクシェ様、アン・ミサ様より至急里へと戻る様にとのご伝言で
す。この者の移送は我らに任せ、どうぞお急ぎを﹂
男達の中、一番老け顔の天兵が一歩前に出てラクシェへと告げる。
﹁えー⋮⋮もう、これから楽しいところなのに⋮⋮でもまぁお姉さ
まがお呼び出し、急いで帰ろうかな﹂
そう言ってラクシェは今までの怒り顔をやめ、華やいだ幼い笑顔を
フレアへと向ける。
﹁じゃあね、先に里に帰って一杯一杯準備しとくから、アンタの事
てってー的に痛めつけられるように、人もたくさん集めとくし、器
具もたくさん用意しとく。楽しみにしててよね﹂
そう言ってラクシェはフレアの傍から離れ、天兵と二三言葉を交わ
して飛び立って行った。
それを直立不動で見送ってから、天兵達がようやく緊張から解かれ
たように脱力する。
﹁ふぅ⋮⋮やっぱり二大天使様の前だと緊張するな。任務でも無け
ればこんなに近寄る事なんて出来ないしな﹂
﹁あぁ、力天使ラクシェ様と智天使アン・ミサ様。お二人は我が里
のアイドルであるにとどまらず、この西域の支配者でもあらせられ
る。おいそれと近づくような事は出来んさ﹂
苦笑交じりの会話を終え、彼らはフレアの事を振り返る。
﹁さて⋮⋮と﹂
粘りの入った声が一つ。
﹁隊長ぉ⋮⋮良いッスか?﹂
軽薄な声が一つ。
そして重々しい声で、先ほどラクシェに話しかけた老け顔の男が頷
いた。
﹁うむ。天の思し召しだ﹂
そう言って彼は、自らの腰に差した水筒を取り、中身を喉へと流し
込んだ。
﹁隊長⋮⋮それは?﹂
459
そう言って部下の一人が声をかける。
﹁霊水⋮⋮お前達もどうだ、精が付くぞ﹂
彼は部下に水筒を手渡しながら、にやけた表情を浮かべ、フレアへ
と近づいて行った。
﹁おう、お前そっち持て﹂
﹁はいッス。ほーら脚開いてなー﹂
﹁俺こうやって女の服脱がすの大好きだわ﹂
﹁俺らは紛いなりにも天の使いだからな、強姦魔の様な悪逆非道に
衣服を引き裂いたりはせんさ﹂
一人がフレアの背後に回り、抱きすくめる様にして胸のシャツを脱
がしていく。
一人がホットパンツの留め金を外し、足を持ち上げて抜き取ってい
く。
そうすると、闇色の布に包まれたフレアの乳房と陰部が姿を現した。
﹁へっへ⋮⋮んじゃさっそく﹂
背後に回った男が胸を揉みしだく様にしてブラトップを外し、大き
な胸を露出させる。
途端、おぉ⋮⋮と言う簡単が五人から沸き起こる。
フレアは薄目を開けてそれを見るが、目立った抵抗も反応もしない。
﹁ピンク色の良い乳首じゃねぇか⋮⋮ははっ。これから異端審問官
のジジィ共がこれを毎日好き勝手に弄るとなると、羨ましくて涙が
でるねぇ﹂
不作法な手が伸びてきて、フレアの乳首を摘みあげる。
そのままコリコリと指を使って刺激し、上下左右に引っ張り乳房の
弾力を確かめる。
﹁んっ⋮⋮﹂
フレアは眉根を寄せ、不快感を示すが、その様すら男達の興奮を煽
るだけだった。
460
﹁はっ、感じてんのかよ⋮⋮低俗な人間の雌がよぉ⋮⋮さて、んじ
ゃこっちだな。ご丁寧に脱がしやすいように紐じゃねぇか。どんだ
けヤりたがりなんだよ﹂
ラグラジルの魔力によって作られた衣服。
それはフレアの趣味ではなかったが、ホットパンツの下、彼女の秘
部を守る最後の一枚は左右を紐で結んで留める、扇情的なものだっ
た。
スルリと紐が引かれ、フレアの陰部が晒される。
男達は食い入る様にそこに視線を注ぎ、その顔に興奮の色を強くし
ていく。
﹁⋮⋮さて、それじゃあ俺からだな﹂
成り行きを見守っていた老け顔の男が腰を上げ、フレアの股の間に
体を潜らせる。
己の肉棒を取りだし、フレアの秘部へと宛がった。
﹁人の子よ。その罪を我らの聖槍にて貫き、聖液にて清めん⋮⋮な
んてな﹂
ゆっくりと、侵入し、繋がった。
あれから、夕暮れに染まるまでの間、代わる代わる一人三回ずつフ
レアの秘部へと彼らの言うところの聖槍を突き入れ、聖液を注ぎ込
んだ。
肉棒は人のソレと変わらずどす黒い色をし、放出された体液の匂い
も一緒だった。
フレアは終始無言のままその責め苦を耐え抜き、今はようやく﹃天
兵の隠れ里﹄へと移送される段階に来た。
誰かに抱えられて飛ぶのかと思いきや、そうでは無い。
両の足首に鎖を巻かれ、それを二人の天兵が分けて持つ。
鎖を持つ天兵は互いに距離を取って飛び立った。
フレアは引き摺られるようにして地面にぶつかりながら、宙に浮く。
461
頭を下に。
股間を大きく空へと開いた状態で、運ばれている。
男達が愉しげに会議した結果、この様な移送方法になったのだ。
元より力の入らない腕はダラリと地面に向けて伸び、髪もそれに続
く。
大きく開いた陰唇に上空の少し肌寒い風を感じながら、フレアは決
心した。
少しでも長く、時間を稼ぐ。
ラクシェについても、天兵についても。
そうする事でシャロンに考える時間を作ることができる。
それならば、どれほどの恥辱にも、痛みにも耐えてみせると。
その時、遅れて飛び立ってきた最も年の若い天兵が追い付いてきた。
﹁おい、遅せぇぞ! 何してた!﹂
年長の男が咎めると、彼はヘラヘラ笑いながら頷いた。
﹁あ、サーセンッス。でもこれ、ほら﹂
そう言って彼は手折った向日葵を見せる。
﹁はぁ? 向日葵がどうしたよ﹂
その声にまた一つ頷いてから、
﹁いやぁこうしたら栄えるんじゃないかって⋮⋮よいしょっと﹂
そう言って、向日葵の茎をフレアの陰部に突き入れた。
ズニュ︱︱何かが侵入してきた感覚に反応してフレアが反転した視
界の中で己の股間を見つめる。
そこには夕日に向かって咲く、向日葵が一輪生えていた。
﹁はっは! 良いじゃねぇか! こいつは芸術的だ!﹂
﹁でしょー。ほらこん中俺たちの聖液で一杯だし、花瓶っぽくて良
いかなーって﹂
そう言って若い男は得意げに笑い、フレアの尻たぶを軽く叩いた。
事実、フレアは膣内に注がれた彼らの雄汁を掻き出す暇も無く運ば
れているので、股間を上に向けている以上精液の大半は中に残った
ままだった。
462
﹁やはり天の使いたるもの芸術性も愛さなくてはならないからな。
うむ。これは良い!﹂
そう言って年長の男は向日葵の茎を摘み、フレアの膣内でかき回し
た。
膣内で留まっていた精液がその動きで一滴膣口から溢れ、恥丘を渡
って腹を通り、胸の谷間を通過して、フレアの唇へと垂れてきた。
フレアはその汚液が放つ異臭に眉を顰めながら、改めて決意した。
耐える、と。
463
御手紙︵前書き︶
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464
御手紙
﹃そう⋮⋮君は他の調教師連中とは何か違うって感じていたけれど、
そういう理由が有ったのですね⋮⋮﹄
優しい声が響く。
裸の麗人が、少年を抱きしめながら頭を撫で、微笑んでいる。
﹃君の国を、愛する人の尊厳を取り戻すために、これから先辛い道
を歩む決意をして、こうやって私に出会った﹄
ふくよかな胸に顔を埋めている少年は泣いている。
﹃シャスラハール。どうか君の未来に幸運を。ほんの少しだけ⋮⋮
今できる事だけでも君の力になるわ﹄
そう言って麗人は今より少しだけ若いシャスラハールの体を引きは
がした。
﹃ルル⋮⋮?﹄
シャスラハールは温もりを失った事への寂しさから、更に濡れた瞳
で麗人を見つめる。
﹃⋮⋮ハレンの事を惜しいと思ってくれる君の正しい心を私は信じ
ます。シャスラハール、この力を君に託すけれど、誰にも言っては
いけないよ。ゼオムントの人間にはもちろん。他の公娼にも言って
は駄目﹄
麗人はシャスラハールの股の間に顔を埋め、その陰茎の手に取る。
﹃ゼオムントには多様な魔導士が居ます。これから私が君に施す魔
法は誰にも知られてはいけない。だから、この国の魔導士達に露見
しない様に、限定条件を付けて隠しておくことにします﹄
鈴口に口づけをし、舌先で湿らせながら麗人は言う。
﹃調教師に身をやつし⋮⋮仲間を募って行くのでしたね。でももし、
君の理想や計画に従わない、或いは既にゼオムントに強力な洗脳を
されているような公娼に君が出会った時、私の施した魔法がきっと
465
役に立つでしょう﹄
右手が陰茎を擦り、左手が陰嚢を揉む。
﹃君の⋮⋮最後の一滴。陰嚢に流れる精が全て出尽くす時。その射
精を受け止めた女性の心を縛る事が出来るよう、私の︽誓約魔法︾
をかけておきます。人は満腹時に美食を求めず。絶望時に悲壮譚を
求めません。それと同様に、君が性行為に快楽を失い苦しみだけ覚
えたその瞬間、この魔法は表出します。そうすれば、他の魔導士に
気づかれる事も無く、無暗やたらに行使する事も出来ません﹄
ついに麗人の口がシャスラハールの陰茎を咥えこみ、緩やかに上下
する。
射精に導くストロークでは無く、ゆっくりと何かを沁み込ませてい
くような動き。
ぷはっ︱︱と息を吐き、麗人の口は離れ、その視線は再びシャスラ
ハールへと向かった。
﹃刻印魔術ではありますが、先ほどの限定条件を満たさない限り印
も魔力も漏れないように施しておきました。シャスラハール。良い
ですか? この魔法は人の運命を縛ります。くれぐれも安易に行使
しない様に。君にとっての奥の手として、ここぞという場面を選ん
で決断してください。君にならそれが出来ると、私は信じています﹄
そう言って麗人はシャスラハールの頭を撫で、強く抱きしめた。
黒肌の少年は嗚咽を漏らし、その胸で咽び泣く。
ゆっくりと震える声が放たれる。
﹃ルル⋮⋮僕は⋮⋮、ルルの事もハレンの事も忘れない。僕が傷つ
けた女性として、僕を信じてくれた女性として⋮⋮ハレンの死も、
ルルの言葉も忘れない。だから待っていて⋮⋮。ルル⋮⋮死なない
で。絶対に⋮⋮僕がゼオムントを⋮⋮公娼制度を終わらせるから、
その日まで、絶対に死なないで⋮⋮ハレンの分まで、生きて待って
いて﹄
少年は泣き、麗人は頷く。
西域遠征が始動する、一年前の話だった。
466
夢を見ていた。
シャスラハールはぼやけた思考の中で、そう判断する。
夢の中、自分の脳が作り出した幻想に過ぎないけれど、懐かしい声
が聞けた事が嬉しかった。
ルル。
ミネア修道院院長、︽幸運と誓約の魔導士︾ルル。
西域に来る以前シャスラハールが調教師として担当した事のある公
娼。
金色の髪を頭の後ろで縛り、シャスラハールの前ではいつも柔らか
な笑みを浮かべていた美しい人。
同時期にシャスラハールに任されていたハレンと言う名の弓騎士と
共に、彼を支えてくれていた人。
ハレン︱︱。
ルルより少しだけ前にシャスラハールの管轄になり、初めて心を開
いてくれた女性。
強気で、勝ち気で、他の調教師の手に余るじゃじゃ馬として、当時
頭角を現していたシャスラハールに腕試しとして与えられた女性。
いくつもの現場で調教を拒み、生傷を与えられながらも激しく反抗
して矜持を守り続けていたハレンを、シャスラハールは陥落して見
せた。
周囲はその腕前に感嘆し、栄達の第一歩として称賛した。
その実は、黒肌の王子が堕ちた弓騎士と結んだ主従契約にあった。
シャスラハールはハレンに己の出自と願いを告げ、ハレンはそれを
信じた。
以後ハレンは従順に公娼としての役目をこなし、シャスラハールも
調教師として多様な仕事を用意した。
そして、夜になり調教管理の一環として二人で一つの寝台に収まる
時、毎度少年は涙を流して弓騎士に謝った。
467
弓騎士はそれを許し、胸に抱いて眠った。
ルルが加わって、三人で眠る様になってからもそれは続いた。
初めの頃理由を聞かされていないルルは仲睦まじくしている二人の
関係を異常に思いながらも興味深そうに窺っていた。
シャスラハールとハレンがそろそろルルにも真実を話し、仲間に引
き入れようとした時、事件は起こった。
ハレンが死んだ。
殺された。
以前からハレンに付きまとっていた男が、仕事を新規開拓し色々な
現場で股を開いていた彼女に見当違いの嫉妬をし、とある娼館で開
催された有名公娼を集めた生挿入会の現場で一般参加者に組み敷か
れているハレンの胸を太いナイフで刺し殺したのだ。
シャスラハールは慟哭し、己が罪を罵った。
ハレンを目立たせたのは自分、ハレンに生挿入会の仕事を斡旋した
のも自分、つまりハレンを殺したのは自分。
寝台の上で延々と泣き続けるシャスラハールを抱きしめ、ルルはそ
の理由を問い、彼の過去と願いを知った。
そうしてルルは魔法を施し、シャスラハールは彼女と誓った。
それからひと月もしないうちにシャスラハールはルルを失った。
ルルもまたハレン同様に従順な公娼として積極的に活動していたた
め、人気が集まり、大手の商人組合から目を付けられてスカウトさ
れたのだ。
別れの朝、シャスラハールはルルに抱きしめられながら誓った。
誓約の魔女に誓った。
必ず助ける。
絶対に。
何故夢を見たか。
それはこの状況が昔と似ていただからだろうと、シャスラハールは
468
思う。
暗い洞窟の中、毛布を地面に敷くだけという簡素な寝具に収まり眠
っていた。
朝起きてみると、自分の左腕はリセの形の良い胸に挟まれている。
失っている右腕の根元、肩にハイネアのあどけない寝顔が有った。
二人の女性に抱かれながら眠っていた。
ルルとハレンがそうしてくれた様に。
リセとハイネアが温もりをくれていた。
シャスラハールはハイネアの頭頂部にキスをして、体を起こそうと
するが、未だ眠っている二人の体から腕を抜く事が出来ず、少し弱
気な表情になる。
その時、鋭い声がかかる。
﹁殿下、お目覚めですか?﹂
視線をやると、少し離れた所にヴェナが座っていて、聖騎士の目は
こちらを向いていた。
マシラスの山で痛ましい凌辱を受けた彼女だったが、ハイネアの治
療を受け、平然としている。
しかし聖騎士叙勲の証でもある聖剣や彼女の装備はすべて失われて
いる為、今は山道で死んだ兵士からはぎ取った簡素な皮鎧で上半身
を覆い、下半身は布を巻いているだけだ。
﹁おはよう、ヴェナ﹂
﹁おはようございます﹂
二人は朝の挨拶をし、そこでシャスラハールが疑問を抱く。
﹁セナさんとステアさんは?﹂
洞窟の入り口で不寝番をすると言っていたセナと、ヴェナと共に今
後の軍議をしていたステアの姿が見当たらない。
﹁先ほど、近くで何かが衝突するような音がしたとセナさんが言わ
れ、ステア騎士長と共に周辺の哨戒に向かわれました。ですので、
不測の事態が起こるやもしれません。殿下もお早く出立の準備をさ
れた方がよろしいかと﹂
469
ヴェナは鋭い目を洞窟の入り口に向けながら、焦りの無い口調でそ
う言った。
﹁え、ああうん。わかった﹂
シャスラハールはまずリセの胸から左腕を引き抜き、ハイネアの頭
を抱える様にしてそっと地面に降ろして、上半身を起こした。
極力刺激を与えない様に行動したはずが、目覚めかけだったのだろ
う、二人の目が開いた。
﹁はっ⋮⋮! お、お早う御座いますシャスラハール殿下! も、
申し訳ございません侍女の身分で主人に起こされるなどと﹂
﹁ふゃ⋮⋮おはよーうーシャス∼⋮⋮﹂
慌てた声のリセと甘えた声のハイネア。
シャスラハールは二人に笑いかけ、事情を説明しようとする。その
時︱︱
﹁ハイネア様っ! 起きて下さい! 治療を!﹂
鬼気迫る様子でステアが洞窟に飛び込んできた。
﹁しっかり! しっかりして! シャロンっ﹂
その後ろに、裸の女性を背負ったセナが続く。
セナが背負っているのは、気を失っている様子の短い金髪をした女
性。
見覚えがあるどころでは無い。
自分達がマシラスの山を離れ、西域の奥を目指しながらも必死に探
していた人だ。
﹁シャロンさんっ!﹂
シャスラハールは立ち上がって叫んだ。
マシラスの山道でヴェナの危機を教えてくれた大事な仲間。
彼女が傷だらけで背負われていた。
﹁命に別状は無い⋮⋮うん。それは断言できる﹂
ハイネアが治癒術でシャロンの傷を塞ぎ、回復効果を送る。
470
全裸で体中の至る所に擦り傷を作り、シャスラハールは確認してい
ないが陰部には凌辱の痕が有ったそうだ。
騎士長ステアが表情を曇らせる。
﹁セナ、確認するが⋮⋮音がしたのだな?﹂
その言葉に頷きを返しながら、セナは口を開く。
﹁はい。まるで戦場で使われる大型の投石器が近くに着弾したかの
ような、鈍くて重い音でした﹂
その音を聞いて、セナはステアと連れ立って確認しに行き、シャロ
ンを発見したのだ。
﹁シャロンは空から降ってきた⋮⋮と言う事か⋮⋮?﹂
ステアは信頼する腹心の額を撫でながら疑問する。
先ほどまでシャスラハールが寝ていた寝床にシャロンを横たえ、ハ
イネアが治療魔術を施し、リセが体の汚れを拭い取っている。
ステアとセナはそれを心配そうに見つめ、ヴェナは一人洞窟の入り
口に立って見張りをしている。
そのヴェナが口を開いた。
﹁どうしてシャロンさんがそこに倒れていたかも大切ですが、一緒
に居たはずのユキリスさんとフレアさんの事も心配ですね﹂
マシラスの山で最後にシャロン達の姿を見ているのはヴェナだ。
その時シャロンはユキリス、フレアと行動していたはずなのに、二
人の姿は見えない。
﹁シャスラハール殿下⋮⋮殿下は山道でシャロンの声を聞かれ、ヴ
ェナ様をお救いに向かったとの事でしたが、その時にフレアとユキ
リスの声は聞かれましたか?﹂
ステアが確認する口調でシャスラハールに問う。
﹁いや⋮⋮あの時はほんの二三言しか会話していないですが⋮⋮全
てシャロンさんの声だったと思います﹂
少し離れた所に座っているシャスラハールは答えた。
ステアはそれに頷き、小さく声を漏らす。
﹁殿下の後に、わたしにもシャロンの声が聞こえたのですが、その
471
時にも二人の声は聞こえなかった⋮⋮もしかすると早い段階から三
人はバラバラになっていたのか⋮⋮?﹂
ステアにとって、フレアは同僚である以前に妹でもある。
その身を心配する事に何の不思議もない。
それにユキリス。
この魔物だらけの西域で不可思議が連続する中、彼女の持つ魔導の
知識が一行にどれだけ利をもたらした事か。
二人を失うわけにはいかない。
ステアが視線を厳しくさせている時、リセが口を開いた。
﹁あっ、マルウスの自在袋が膨らんでます﹂
指を差す先は、一行を後方支援してくれているマルウス族から与え
られた空間を歪める自在袋。
二つで一つのその袋は、一方に物を入れるともう一方に収納される
という非常に便利な代物だった。
これまでに何度か食料や消耗品を送ってもらい、シュトラ達と手紙
のやり取りもしている。
マルウスの里でシュトラ達は仲良く協力し合って生活していると、
明るい文面が送られてきていた。
シュトラや他の四人はマルウスの荷運びを手伝い、足を怪我してい
るレナイ達三人は生産活動を手伝っているのだと書いてあった。
こちらは心配無いので、どうかそちらの旅に神の加護が有りますよ
うに。と毎度手紙は締め括られていた。
時折、妙に手紙が湿って文字が震えている事も有ったが、その明る
い文面を読むだけでシャスラハール達は旅への活力を取り戻してい
た。
セナが手を伸ばし、自在袋を掴む。
その中には蜜を塗り込まれた大玉のリンゴが幾つかと、瓶詰めされ
た液体が入っていた。
﹁食料だね。こっちの瓶は⋮⋮お酒かな? あ、後手紙も入ってる。
シュトラさんからだ﹂
472
セナは袋から瓶を取りだし、そこに張り付けられていた手紙を発見
する。
﹁甘いリンゴに酒か⋮⋮シャロンが目を覚ましたら食べさせてやろ
う。治療術で怪我が治っても、体力まではそうもいかないからな﹂
ステアがシャロンの額に掛かる髪を払いながら穏やかな口調で言っ
た。
﹁そうですね。今日のところはシャロンさんが目を覚まされるまで
ここで待機。事情を詳しく聞いてから方針を選びましょう。ヴェナ、
それで良い?﹂
シャスラハールがヴェナに向けて言う。
﹁えぇ。それで問題無いかと﹂
ヴェナが頷き、一行の本日の動きが確定した。
全ては、シャロンが目覚めてから。
シャクシャク︱︱と耳触りの良い音が洞窟内に響く。
セナが蜜リンゴを咀嚼する音だ。
シャロンを囲んで、全員が車座になって座っている。
治療が一段落し、後は目覚めを待つばかり、となったところで一行
は食事にとりかかった。
とは言え、マルウスから送られた蜜リンゴをリセが切り分け、それ
を全員で分けているだけだが。
﹁甘っ! でも自然な甘さ⋮⋮良いわねコレ⋮⋮美味しい﹂
セナは感動したように呟き、二つ目を手に取る。
シャスラハールもステアもヴェナもハイネアも各々手掴みで蜜リン
ゴを口に運んでいる。
給仕役のリセだけは手をつけず、後で余りを頂くと言って遠慮して
いる。
﹁どれ、シュトラの手紙とやらを読んでみるかの﹂
ハイネアが瓶の傍に置いてあった手紙を手に取り、目を通していく。
473
﹁ほうほう、このリンゴはヒュドゥス達の住む川を渡った先に住ん
でいるゴリラ型の魔物と貿易して手に入れた物らしい﹂
﹁ヒュドゥスか⋮⋮あの時は酷い目に遭った。ヴェナ様と殿下には
感謝のしようもない﹂
ステアが嘆息気味に笑い、シャスラハールとヴェナに頭を下げる。
﹁いえいえ。皆さんが無事で何よりでした。ヴェナもご苦労様﹂
﹁殿下のそのお言葉だけで私は十分でございます﹂
主従がそのやり取りをし、手紙の内容は続く。
﹁ゴリラ型の住む森まで荷車を引いてシュトラ達はマルウス族と一
緒に向かったようだのう。そこでマルウス族がゴリラ達と交渉して、
シュトラ達が少しゴリラの森で労働をする事でリンゴを得られたよ
うだな﹂
その声にセナが反応する。
﹁労働って⋮⋮まぁあのネズミっ子連中にゴリラの仕事の手伝いは
出来ないわよね﹂
リセが頷き、
﹁こーんなに小さかったですもんね。可愛かったです﹂
手でマルウスの身長を再現しながら笑った。
手紙は続く。
﹁リンゴを持ち帰った後はレナイ達生産組が蜜を塗る作業をして、
マルウスの里特製激甘蜜リンゴの完成っとな。あぁあとその酒は作
り始めからレナイ達がやっているらしい。味も香りも逸品でマルウ
スの里で大人気のみならず、他の友好的な魔物の集落から買い付け
にやってくるらしいのぅ。その際大口で酒が売れた時はシュトラ達
が荷車を使って運んでやっているそうな﹂
へーとセナは感心して言う。
﹁魔物と人間の共存ってあるんだね﹂
﹁素晴らしきことです﹂
ヴェナもそれに倣って頷いた。
そして手紙は末尾へ。
474
﹁﹃こちらは心配無いので、どうかそちらの旅に神の加護が有りま
すように﹄。ふふ⋮⋮いつも通りだな。こうも毎度毎度神に加護を
祈られては、得体の知れない自信というか、前途を明るく感じてし
まう気がするのう﹂
ハイネアはそう言って笑った。
﹁あ、リンゴ無くなりましたね? もう一つ切ります﹂
リセが皿の上の状況を見、新たな蜜リンゴを取りだし器用に皮を剥
いていく。
手際良く切り分け、皿に置いて出す。
そうすると、銘々手を伸ばしてリンゴを掴み取り、口へと運んでい
く。
その時、ぼんやりとシャロンの目が開いた。
セナは丁度口にリンゴを放り込んだところで、目を大きく見開いて
同僚に飛びつかんばかりに声をかける。
﹁シャロン! 目が覚めた? 体は大丈夫? 痛い所無い? あ、
コレ! マルウスから送られてきた蜜リンゴ! 甘くて凄く美味し
いよ! 食べてっ!﹂
金髪の騎士は濁った瞳で戦友の顔を眺め、その口の中にリンゴの欠
片が収まっている事と、右手に新たに掴んだリンゴの一片がある事
を見て、急激に目を見開いた。
思い起こすのは、ラグラジルに見せられたマルウスの里での出来事。
蜜リンゴ⋮⋮。
その﹃蜜﹄って。
﹁シャロン、酒もあるぞ。マルウスの里で作られて他の魔物にも人
気な逸品だそうな。あまり酒類の摂取は得策じゃないが、今日は特
別だ。後で開けよう﹂
ほんのりと慈愛の表情を浮かべたステアの言葉に、再び意識が刺激
される。
酒⋮⋮マルウスの里で作られた酒。
レナイ達が枷に縛られ、中毒の花を食べさせられて文字通り体から
475
絞り出した、残虐な酒。
セナの右手が迫ってくる。
蜜にテラテラと光るリンゴが、シャロンへと迫ってくる。
﹃殺して⋮⋮﹄
シュトラは、そう言っていた。
シャロンはバネ仕掛けの様に体を起こし、セナからリンゴの一片を
奪い取ると握りつぶした。
﹁え⋮⋮?﹂
意味が解らないといった表情でセナが呻くのを無視し、彼女の口に
指を突っ込む。
﹁食べちゃ⋮⋮ダメっ! それを食べてはダメっ! 全員、そのリ
ンゴを捨てて下さい! その酒を、叩き割って下さい! そうじゃ
ないと⋮⋮そうじゃないと!﹂
涙を流しながら、シャロンはセナの口内に残っていたリンゴを掻き
出す。
﹁シャロンさん⋮⋮?﹂
シャスラハールが驚きの表情で見つめている。
騎士は滂沱の如く涙を流しながら、嗚咽交じりに言った。
﹁シュトラ達が⋮⋮あまりに救われませんっ!﹂
落ち着きを取り戻したシャロンが語り始める。
マシラスの山での出来事。
ラグラジルという存在。
﹃アン・ミサの杖﹄の所在。
アミュスとヘミネの末路。
マルウスの里の現状。
ユキリスとフレアの変質。
ラクシェという絶対的強者の出現。
ユキリスが道を違えた事。
476
フレアが犠牲になった事。
その全てを語りきった時、一行の顔に浮かび上がったのは深刻な苦
渋。
辺りにはリンゴの破片が飛び散り、酒瓶は割られ、中身は地面に吸
い取られた。
そうして重々しい空気が洞窟内を包んだ時。
語り終えたシャロンに問う声が一つ。
シャスラハールだ。
﹁シャロンさんは⋮⋮どう判断されますか? 現状、僕らが次に打
つ手は⋮⋮何かありますか?﹂
ポツポツと染み入るような声で問うシャスラハール。
シャロンはそれに数瞬沈黙した後、答えた。
﹁当初の目的である魔物の宝具︱︱︽アン・ミサの杖︾は既に敵中
に有り、それを使われてアミュスとヘミネは敗れました。私達の旅
は目的を失い、ラグラジルやラクシェと言った人外の強者まで介入
してきた以上。最早⋮⋮最早っ﹂
涙ながらの声。
その時全員が唇を噛み、絶望を感じた。
しかし一つだけ、声は続く。
﹁確認します。ラグラジル⋮⋮そしてラクシェは女性なのですね?﹂
シャスラハールの声は小さく、しかし力強くも有った。
﹁はい。そして恐らくラクシェが﹃お姉さま﹄と言っていたのでア
ン・ミサも女性であるかと﹂
シャロンは答え、首を傾げる。
黒肌の王子の思考が読めなかったのだ。
そして決定的な一言が生まれる。
﹁それならば、﹃可能﹄です。まだ希望はある﹂
シャスラハールは顔を上げた。
全員を見つめ、口を開く。
﹁人外の強さを誇るというラグラジル、ラクシェ、アン・ミサの心
477
を縛ります。皆さん、力を貸してください!﹂
その言葉の意味をこの瞬間理解できたものは居なかった。
けれどその強さ、甘やかさに心を打たれ、全員が頷いた。
シャスラハールは心中でルルに語りかける。
︵ルル⋮⋮今ここで僕は君のくれた奥の手を使うよ。絶対に諦めな
い。最後の一瞬まで戦い抜く。君の言いつけを破る事になるけれど、
どうかそれは許して欲しい︶
シャスラハールは︽幸運と誓約の魔導士︾にまつわる話を語り始め
た。
478
王子の役得︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
479
王子の役得
陽光を遮る洞窟の中、シャスラハールはかつてセナやシュトラに語
った調教師時代の過去を話す。
シャスラハールの奥の手は、ある種女性にとっては禁忌にも触れる
様な技になる為、仲間である彼女達に向け誠意をもって全てを詳ら
かにするつもりだった。
始まりから、終わりまで。
シャスラハールがゼオムントに抱く思いを全て明らかにする。
スピアカントがゼオムントに降伏した後、聖騎士ヴェナと再会する
ために調教師になった事。
幾多の公娼と出会い、その悲劇を目前にしながら彼女達の助力で目
的へと一歩ずつ前進した事。
姉を国家的な凌辱祭において無残に殺された事。
そしてその亡骸は今なお不滅魔術により保存され、死後も果ての無
い凌辱に曝され続けている事。
そして、その中の一つの出会い。
︽幸運と誓約の魔導士︾ルル。
彼女によって施された誓約魔法。
それがこの苦境を覆す切り札になるのではないか。
シャスラハールの声に耳を傾け、セナ達は真剣な表情で彼を見つめ
る。
シャスラハールは泣いていた。
姉の死に触れた時も、彼を信じてくれた公娼の死に触れた時も。
頬を濡らして語った。
セナは彼の一つしかない手を取り、そっと握りしめる。
指を一本一本絡め、甲を擦る。
優しさと想いを擦り込んで送り、彼の心が落ち着く様に務めた。
480
﹁⋮⋮お話、有難うございました﹂
ステアが重い口調で言い、語り終えたシャスラハールを労う。
﹁あの大きな祭りで犠牲になられたのは⋮⋮殿下の姉君様だったの
ですか⋮⋮お痛ましい話です﹂
一年と少し前に大々的に開催し全国に放映されたその祭りをリセも
見ていたのだろう。
押し殺した声で呟いた。
﹁殿下の姉君︱︱アリスレイン様はお美しく気高い姫君でした。そ
れ故にゼオムントの鬼畜共に目を付けられ、あの様な⋮⋮くっ!﹂
聖騎士ヴェナは己の無力を嘆き罵る。
主家の姫が凄惨な目に遭っている時に、彼女自身映像を笑いながら
楽しむ男達に凌辱されていたのだ。
﹁妾は当時首都の公立中等学校に居たが⋮⋮その祭りの初日と最終
日は全校生徒を集め、集会場で大きなスクリーンに映して見せられ
たな⋮⋮﹂
自由性交生徒として中等学校で公娼活動をやらされていたハイネア
は、十代半ばにも達していない同級生達がアリスレインの苦しみ狂
う様を見て手を叩いて喜んでいた恐ろしい光景を思い出す。
﹁あたし自身も、あの祭りの後浮かれまくってるゼオムントの奴ら
に色々やらされたわ⋮⋮。次回の祭りまでに自分も独創性のある調
教法を編み出すんだってね⋮⋮﹂
セナの言葉は苦く、当時の記憶を残らず削ぎ落としたい願望が心身
を這いずり回っている。
﹁⋮⋮殿下、心中お察し致します。姉君の魂の平穏を取り戻す為、
我らも微力を尽くさせて頂きます。そして︱︱﹂
シャロンの瞳は苛烈に輝いている。
国と家族を想うシャスラハールの覚悟を聞き、一度手放しかけた決
意が引き締まった。
そして示された反撃の手段。
﹁誓約魔法⋮⋮それを用いれば女性を内側から屈服させる事が出来
481
る。間違いありませんね?﹂
その声に、シャスラハールは頷いた。
﹁ルルはそう言っていました。彼女はユキリスさんやアミュスさん
と同じミネア修道院の所属で、院長を務めていた魔導士だったらし
い。彼女の魔法なら、きっと大丈夫です﹂
言い切る。
希望を逃がさない為に。
﹁ならばそれでラグラジル、ラクシェ、アン・ミサの心を縛り、こ
ちらの配下にする事でゼオムントに対抗する戦力を揃えようとお考
えなのですね﹂
疑問では無く断定。
シャロンがシャスラハールの話を聞いて、真っ先に思い浮かんだ方
法も同じだったからだ。
果たして、彼はもう一度頷いた。
﹁ラグラジルは予測不能な魔術を操り、ラクシェはそのラグラジル
を怯えさせるほど強大な力を持ち、アン・ミサは西域における現在
の管理者。シャロンさんの先ほどのお話通りなら、この三人の力が
揃えばゼオムントにも十分対抗できると思うんです﹂
シャスラハールは心の奥で、自分を嫌う。
女性の心を縛る魔法。
ルルはゼオムントに洗脳された公娼を救う為と言ってその力を預け
た。
シャスラハールは力を授かってから今日まで一度も行使せず、言葉
と信念だけで仲間を集め、前進してきた。
それは、この魔法がもたらす効果にどうしようもない躊躇いを覚え
ていたからだ。
優しさと正しさ︱︱アリスレインに教え込まれたそれらに縛られ、
シャスラハールはルルの魔法を使えなかった。
しかし、今度ばかりはそうも言っていられない。
何しろラグラジルの手にはユキリスが、ラクシェの手にはフレアが
482
いるのだから。
仲間の心を蝕んだラグラジルも、恐らく今非道な事をしているだろ
うラクシェも、許す事は出来ない。
この二人にならば、自分は覚悟を決めて誓約魔法を行使できる。
﹁そ奴らの手に落ちたユキリスとフレアの事も有る、なるべく早く
行動し二人を助け出さねばならんしのう﹂
ハイネアが口をへの字に曲げて言う。
﹁しかし、相手は翼を持った天使で所在も知れぬ⋮⋮どうやって見
つけ出すかだ⋮⋮﹂
弱り切った顔でステアが呻き、頭を掻く。
﹁ラクシェ⋮⋮の方は、アレでしょ? ﹃天兵の隠れ里﹄ってとこ
に居るんでしょ? まぁそこがどこか解んないから意味ないんだけ
ど⋮⋮﹂
セナがもどかしげに言い、リセが続く。
﹁知っている人に聞けばいいのでしょうけれど⋮⋮マルウス族の本
性も明らかになった以上、もう私達に西域で頼りになる存在は居ま
せんよね⋮⋮﹂
弱弱しい声に、割り込んでくる芯の強い声。
﹁聞き出せば良いのですわ﹂
ヴェナが瞑目し、そう言った。
皆がえっ︱︱と言う表情で彼女を見た時、シャロンが再び口を開い
た。
﹁そうです。聞き出せば良いのです﹂
誰に、と言う声が飛び出すと、シャロンはゆっくりと答えた。
﹁ラグラジル﹂
生傷の浮かんだ肌を晒したまま、シャロンは続ける。
﹁元よりラクシェに何の対策も無いまま挑んでも勝機はありません。
彼女の力は正直⋮⋮桁外れです。心苦しいですがフレアには少し待
ってもらい、順番としてラグラジルを先に捕らえ、ラクシェの弱点
を知った上で彼女に挑む。そうするべきです。ラグラジルには面妖
483
な魔術を使う能力はありますが、直接の戦闘力はさほど高く無いよ
うです。恐らく万全な状態のヴェナ様ならば一騎打ちで打倒できる
かと﹂
その言葉にステアは疑問する。
﹁しかしそのラグラジル自体、どこにいるか定かじゃないのでは?﹂
騎士長の言葉に、軍師は頷く。
﹁はい。定かではありませんが、予測は出来ます。まず間違いなく
ラグラジルが現れるであろう場所について、私に心当たりが有りま
す﹂
言葉に込められた自信に、皆の表情が引き締まる。
﹁その場所は?﹂
ヴェナが問い、シャロンが答える。
﹁マルウスの里。ラグラジルは去り際に新たな手駒を探していまし
た。そしてその直前に彼女が見ていた光景はマルウスの里でシュト
ラ達が凌辱されている姿。ラグラジルがユキリスやフレアにしたよ
うに心の隙間をついて自らの配下にしようとするなら、現在のシュ
トラ達はうってつけの存在です﹂
方針は決まった。
ラグラジルを探しマルウスの里へと引き返す。
無論、凌辱されているシュトラ達を救出するのも大事な目標だ。
そうと決まればのんびりしている暇は無い。
マルウスの里に行ったは良いが、既にラグラジルが訪れた後でシュ
トラ達はその手駒になっていた︱︱なんて事になっては目も当てら
れない。
﹁そういえば、シャロンは服や武器はどうする?﹂
セナが身の回りの品をかき集めながら問うと、シャロンは自らの体
を見下ろし、自嘲気味に笑った。
﹁仕方ないです。装備は全部ラグラジルが持って行っちゃったよう
484
ですから⋮⋮当分はこのままで﹂
肌を全て晒した状態で、やはり少しだけ意識しているのかシャスラ
ハールの視界からは隠れ気味にシャロンはそう言った。
セナはそれを見て、意を決す。
﹁シャス、こっち見ないでよ﹂
自分の身に着けていた騎士服のスカートの留め具を外しながら言っ
た。
﹁え、えぇぇはい!﹂
黒肌の王子は慌てて頷き、視線を遠くに向ける。
スカートを脱ぎ、へそまでの上着と下はパンツと膝上のソックスだ
けの状態になり、同僚に手渡す。
﹁セナ⋮⋮﹂
﹁裸ってさ⋮⋮やっぱ辛いじゃん。なんか嫌なこと沢山思い出すし
さ⋮⋮シャロンは仲間で、友達だし。友達の為ならパンツぐらい別
に全然平気って言うか⋮⋮とにかく当たり前だよ!﹂
その言葉に、金髪の騎士は今日初めて笑顔を見せ、
﹁ありがとう﹂
スカートを穿いた。
今にして思えばマルウスの嫌がらせかとも思えるが、スカートの丈
は短く、風通しの面で言えばさほど効力は無いが、女として一番大
事な部分が視覚的に隠れる事で、心が安らいだのは事実だった。
﹁あの⋮⋮シャロンさん良ければこれも﹂
﹁妾のコレも使ってよいぞ﹂
リセとハイネアが寄って来て、それぞれ手にした物を渡す。
リセからは白地にフリルの入ったエプロン。これはマルウスの里で
得た従者服にセットでつけられていた物。
ハイネアからは赤いケープ。かつてヘミネからハイネアに渡された
リネミア貴族の軍属衣装。
﹁そういう事なら⋮⋮ほら、シャロン。これを付けておけ﹂
騎士長ステアも寄ってきて手袋を渡す。
485
槍使いである彼女が戦闘時に柄との摩擦を弱めるために使っている
物だ。
﹁私もシャロンさん同様に装備を無くしているので、大した物はご
ざいませんが、マシラスの山で拾ってきたこの駄剣を一本、お渡し
しておきましょう﹂
ヴェナはターキナートの騎兵隊に襲われ、シャスラハールに助けら
れた後、敵兵士の死体から汚れていない布と皮鎧を一つずつ選別し、
落ちていた粗雑な剣を腰巻用に一本と予備でもう一本拾って来てい
た。
﹁皆さん⋮⋮ありがとうございます﹂
シャロンは深く腰を折り、礼を言った。
シャロンがエプロンを素肌に纏い、ケープで肩を覆い、手袋を着け、
剣をスカートのホルダーに差して準備を完了させる。
側面から見れば乳房の大半が見えていたり、ケープと手袋の間の白
い腕は完全に露出していたり、スカートより先は全くの裸足である
等、隙間だらけの格好ではあるが、不思議とシャロンの心は温かい
ものを感じていた。
﹁山から連れてきた馬は五頭しかいないから⋮⋮シャロン、体調が
万全じゃないならあたしと相乗りする?﹂
ターキナートの騎兵隊から奪ってきた戦利品に、馬も有った。
シャロンから速やかに山を離れるべきだと忠告されたステアが、全
滅した騎兵隊の後ろで草を食んでいた馬を見つけ、ハイネアをリセ
と相乗りさせて五騎となってここまで乗って来たのだ。
洞窟から少し離れた木に結び、旅の相棒としていた。
セナの言葉に対してシャロンは首を振る。
﹁ううん、私も騎士だから。騎乗する誇りがある。いくらセナにだ
ってそれは頼めません。それよりシャスラハール殿下を⋮⋮﹂
シャスラハールは監視魔術の刻印から逃れる為に片腕を落としてい
る。
その為手綱を握る事に不自由を抱いているのではないかと考え、シ
486
ャロンは言った。
﹁え、僕ですか⋮⋮?﹂
当の本人は未だ視線を逸らし続けている為、反応が遅い。
代わりに聖騎士が頷いた。
﹁そうですわね。では殿下は私と相乗り致しましょう﹂
そうやって一行は大慌てで出立の仕度を整え、これまで来た道を引
き返す。
目指すはマルウスの里。
﹁セナ、シャロン。君達が先頭につけ、相乗りの二頭を中央に、殿
はわたしが務める﹂
ステアの指示でセナとシャロンの操る馬が速度を上げて前へ進み、
ステアの馬が足を緩め後方についた。
シャスラハールはヴェナの体と手綱の間に身を置き、前方を見据え
る。
これから先、どんな厳しい戦いが待っているか。
それを乗り越える強さを、自分の中に再確認していく。
草原が終わり、なだらかな平坦な道が始まった。
﹁セナ、シャロン! 速度を上げろ! 何としてもラグラジルがシ
ュトラ達をさらう前にマルウスの里へたどり着くぞ!﹂
騎士長ステアの言葉に、先頭を行く両騎士が姿勢を変える。
馬の速度を上げる為に、風の抵抗を弱める為に。
馬の首に抱き着く様に前のめりになって、尻を高く突き出す姿勢を
取った。
シャスラハールの眼前に広がったのは、二つの肉感露わな女尻。
一つは風にたなびくスカートがチラチラと視線を誘惑しながら、剥
き身で陰唇までをくっきりと晒したシャロンの美尻。
もう一つは白い布こそあれ、マルウス族の悪意により限りなく薄く
作られたソレは今まで鞍に密着させていた分汗でしっとりと濡れ透
け、丸見えとはまた違ったいやらしさを感じさせるセナの艶尻。
﹁あっ⋮⋮あっ⋮⋮﹂
487
シャスラハールは喘ぐ様に声を漏らし、まずヴェナを確認する。
聖騎士はしっかりと前を見据え、小娘の尻など知った事かと言う表
情で手綱を握っている。
並んでいる主従の馬はどうかと見れば、ハイネアは目を瞑って馬に
しがみ付き、リセはそれを労わる様にオロオロとしている。
後方に居るステアにはまずソレが見えていないだろう。
馬は跳ねる様にして駆ける。
そうすると騎手の体は跳ね、無論尻も跳ねる。
セナとシャロンの尻が目の前でくっきりと秘部を晒したままプルプ
ルと上下する様子を、シャスラハールは目を逸らしては戻し、戻し
ては逸らしを繰り返して、誰にも何も言えず、ただ顔を真っ赤に染
めながら、馬上の旅を続けた。
488
調教師の都合︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
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調教師の都合
シャスラハールが揺れる尻に心を悩ませている頃。
リトリロイは開拓団本営に設えてある仮の玉座から立ち上がった。
﹁リト、どこへ?﹂
近くの机で書類整理をしていたセリスが声をかける。
﹁巡察。一緒に来る?﹂
﹁そうね、ずっと書類と睨めっこしていたから眼が凝ったわ。気晴
らしに付き合う﹂
そうやって、二人は連れ立って本営を出た。
﹁侍従。俺に対する用件は後でまとめて聞くから、来訪者の名前だ
け訊いておいてくれ﹂
﹁はっ畏まりました﹂
本営の入り口で待機していた老侍従にそう声をかけて、歩き出す。
日は高く昇り、燦々と陽光を放っている。
季節はもう秋を越えて冬になろうかという頃合い。
肌寒い風が吹き、近いうち防寒着が必要になりそうな予感がするよ
うな気候。
﹁⋮⋮城塞。もうすぐ完成ね﹂
セリスが高くそびえ立つ石の壁を見やりながら言った。
﹁あぁ⋮⋮西域への橋頭保。或いは俺達開拓団の最初の家。これが
出来てからが始まりだ。こいつを作り上げて父の国への壁にして、
俺達の街や畑を作る﹂
リトリロイが行っている建国。
それはゼオムントからの独立を意味する。
﹁フフッ。嬉しそうね、リト﹂
セリスは笑い、リトリロイの手を握る。
﹁あぁ⋮⋮これで、君を守れる﹂
490
感慨深げに頷きながら、リトリロイは握り返した。
そもそも、何故リトリロイは覇道国家の王子でありながら独立と言
う茨の道を選んだのか。
それは、父王の存在に有った。
広く深く民を愛するゼオムントの現王は、公娼制度や街道の整備、
弱者救済を職務とした国家機関の設立等、万民に愛される政策に邁
進していた。
取り分け公娼制度は人気を博し、民は王を讃え、王もそれに大層気
を良くした。
しかし、三年。
公娼制度が浸透し、月日が経過していくうちに、民衆から不満の声
が漏れ始めたのだ。
﹃足りない﹄﹃面白くない﹄﹃刺激が無い﹄
絶望に浸りきった公娼と惰性で行う性遊戯では、もう民は満足しな
くなっていた。
兆候はいくらでも有った。
王は大いに焦り、民の機嫌を取る為に様々な施策を行った。
魔導長官オビリスに映像魔術の強化を命じ、魔法により再生と記録
が可能な円盤を開発、大衆化させた。
バンデニロウム
巨額の予算を投入し、公娼を辱め、それを全領土に生中継する事が
出来る専用施設と新魔法を開発し、ゼオムントと並ぶ強国であった
スピアカントの王女を餌食に、凄腕の調教師達に腕を競わせ、国民
を熱狂させた。
しかしそれでも、一時的に夢中になって王を誉めそやす民衆は、半
年も経てば冷静になり、また次の娯楽を求めた。
急かされるようにして王は、シャスラハールの姉であるアリスレイ
ンを屠ったバンデニロウムで次なる宴を用意しようとした。
前回よりも残酷に、より刺激的な調教の舞台を。
テーマを掲げ、前回優勝者であるゾートらを王宮に招集して趣向を
話し合った。
491
そしてその際に求められたのが、公娼の強さだった。
ゾートが挙手し、提案したところによると、
アリスレインは美しく悲劇的でよく鳴き痛みに耐える顔もそそるも
のが有り家柄も含めて考えるととても良いこけら落としになった。
現に死体は魔法で保存し、肉襞も温かいままに会場に設置している
と毎日の様に客が訪れ犯していく。
しかし、
アリスレインは弱かった。
拳で殴れば倒れ、剣で切れば気絶し、万力で膣を抉じ開ければ死な
んばかりだったと。
それではこの選りすぐりの調教師達の鍛え抜かれた手腕に耐えられ
ない。
前回は全力を出し切れなかった者が多いと聞く。
まぁその中で上手く加減をして優勝者の座を頂いたのが自分である
が、とゾートは笑い顰蹙を買っていた。
そこで、次回の開催に当たっては最も強く逞しく、尚美しい者が好
ましい。
ゾートはそう提案し、王を唸らせた。
王は前回優勝者であるゾートの言を聞き入れ、即座に公娼の選別を
行った。
指示を出して三日後、大臣の一人がリストアップされた名簿を持っ
て報告に来た。
四つ、名前が書いてあった。
ゼオムントとの戦役で諸国を纏め挙げ自ら前線に立ち指揮を執った、
カーライル王国のヘスティア王女。
アリスレインと同じスピアカント王国の出身でミネア修道院より聖
騎士の号を贈られ聖剣を得た、聖騎士ヴェナ。
ミネア修道院を庇護しゼオムントとの戦役で最後まで抵抗を続けた
ロクサス郡領国の大領主、魔剣大公マリューゾワ。
そして、憚る様に声を震わせ大臣は辺りを確認し、もう一人の名を
492
告げた。
リーベルラント騎士国家、百戦無敗の騎士団長、セリス。
王は名簿を手に取り、いくつか大臣とやり取りをした。
そうして、一刻の後。
候補は決まった。
次回の大祭を彩る主役は、セリス。
不可侵の公娼として長らく民衆に秘匿され、しかしその無敗の伝説
のみが広く語り継がれていたリーベルラントの軍神。
セリスを嬲り、犯し、辱め、殺す事で王は民の機嫌を取ろうと決め
た。
その知らせは、王宮に暮らしていたリトリロイにはすぐに届いた。
彼は激怒し、父王へと烈火のごとく詰め寄った。
すぐに取り消すようにと。
別の候補選ぶようにと。
しかし王は息子の言葉を認めなかった。
民があっての王家である。
そう言って王は息子の懇願を無視し、孤児院で育つ恵まれない子供
達に毎月贈るプレゼント選びを始めた。
リトリロイは絶望し、絶叫した。
父の下に居てはセリスを守れない。
自分が王にならなくては。
しかしもう時間が無い。
アリスレインを殺した昨年の大祭から半年が経ち、セリスを殺す大
祭まではもう残すところ半年しか無い。
その間にどうやって王位につく。
無為にひと月が流れ、更に無為に時が流れる。
リトリロイが苦悶しているところに、吉報が入った。
魔導長官オビリスによる西域遠征の企画。
公娼を集め西域を辱めながら冒険させるという、発表当時から識者
の間から絶賛を受けた新規事業だった。
493
壮大な計画である以上、国民を熱狂させるのには十分な代物だ。
リトリロイはこれ幸いとオビリスを支持し、予算の投入を終え既に
調教師の選抜から当日セリスに着せる衣装の選定までも行っていた
大祭運営委員会の活動を停止させた。
そうして、前回の大祭から一年と少しが経過して、西域遠征は開始
された。
父王も民衆も公娼達の絶望の旅に夢中になった。
しかしそれでも、リトリロイは知っていた。
いずれ矛先は戻ってくる。
民衆の熱しやすく冷めやすいところも、王の民衆から愛される為な
らば犠牲をいとわないところも。
市中に腹心を送り、民の声を集めた結果、西域遠征に賛成の意見は
凡そ八割にも上ったが、残り二割、民の声の二割が望んだのはバン
デニロウムでの解りやすいスプラッタだった。
彼は決意し、行動した。
ゼオムントの王子を辞め、セリスの夫となる未来を選んだ。
生活困窮者を主とした開拓団を組織し、父王に西域遠征の余興と言
う形で自分の出征を認めさせた。
父王と王宮はこの国作りについてもただの演出と思っている事だろ
う。
砦を作り、街を作り、国を作る。
そうして形を作り上げ、開拓団を新たな民へ、魔物を兵士に変えて
真に独立する。
︽アン・ミサの杖︾、現在オビリスの代理人であるゴダンが管理す
るその宝具も完成間近に奪わなければならない。
問題は無い、武力ならばゴダンは到底セリスに敵わず、開拓団で彼
に味方する者も居ないだろう。
借金を打消し、自由を与え、公娼までも用意してくれる新たな王。
リトリロイの開拓団での人気は絶大である。
ただ一つ、所属が不明確な集団が有るとすれば︱︱
494
﹁⋮⋮毎日毎日、さすがに見慣れたとは言え⋮⋮かつて自分と切り
結んだ相手がこのような扱いを受ける場面を見せつけられると、気
分が悪くなるわ。貴方の妻となる未来を選んだ以上、こんな感傷は
捨て去らなきゃいけないのだけれどね﹂
セリスが寂しげな声で呟く。
視線の先に、調教師の幕舎があり。
それを取り囲むようにして百人規模の男達がたむろしていた。
﹁さぁメシにしよう! 今日もまだまだ忙しいぞ、ガッツリ食って
体力つけとかなくちゃな﹂
調教師ラタークは満面の笑みで言った。
細身の長身で、シルエットだけなら雅な印象を抱かれ易い壮年だが、
いかんせん目は落ち窪み、肌の色が悪い。
不健康を体現したような男だった。
ラタークの号令に従い、二十人居る彼のスタッフは幕舎の中、絨毯
の上で車座になった状態で銘々食事にとりかかった。
ラタークはゾートの組織した調教師団の中で、オルソーに次ぐ三番
目の実績を持つ名のある人物。
彼は直属の部下である五人の調教師と、開拓団の中から重労働がで
きない病気持ちや年寄りを集めて調教師見習いとして十五人を雇い
入れ、総勢二十名のチームを結成した。
ラタークには役割があり、役割を果たすためには人手が必要だった。
﹁さぁほら、アミュスもヘミネもしっかり食って、そんなんじゃ今
日を乗り越えられないぞ﹂
銀色の髪を垂らして俯いている魔導士と、震える手でパンを掴んだ
紅髪の貴族。
この二人の調教管理を担当している。
現在、ゾートの組織した精鋭調教師団は手を持て余していた。
彼らの実力にそぐわない公娼の数。
495
たった二人の公娼に対して三十人近く本職の調教師がついている。
役割分担が生まれたのは必然だった。
ゼオムントに定期的に送る映像作品の撮影やアミュスとヘミネの心
と体の開発はマダム・オルソー。
開拓民への一般開放を仕切り、二人の体調面と性病や伝染病の防止
等を管理するのがラターク。
そして後進への技術指導として調教師を集めて二人の肉体で磨き抜
かれた調教技術を披露するのがゾート。
オルソーに十人、ラタークに五人、ゾートに十五人の本職調教師が
つき、サポートと勉強に勤しんでいる。
序列そのまま、ゾートを筆頭にオルソーが続き、ラタークが三番目。
ラタークには野望が有った。
いずれはオルソーを抜き、ゾートを追いやってゼオムント一の調教
師になるという夢が。
実績はもう十分以上に積んだ。
後は直接の仕事の成果で比べられる。
オルソーよりも評価を受け、この調教師団の中での順位を覆さなく
てはいけない。
その為にも仕事をしくじるわけにはいかない。
ラタークは歯噛みする。
最近開拓団の中で飛び交う噂の中で、アミュスとヘミネが心を殺し
てしまったという話がある。
一般公開の時にどんだけ激しく犯してやってもウンともスンとも反
応しないのだと。
あれじゃあ面白くないなと。
ラタークには確信が有った。
これはオルソーの妨害に違いない。
元よりある時期を境にアミュスとヘミネの反抗が弱まったのは事実
だが、それ以上に最近はこの二人に生きる気力と言うものが感じら
れない。
496
こんな投げやりな肉便器を使っていては開拓団に不満が生じるのも
致し方ないだろう。
マダム・オルソーの日記付け、そして子飼いのバケツを被った少年
を使ってのイレギュラーな凌辱。
オルソーは二人の心を殺し、ラタークに不利を強いているのだと。
映像作品内ではそれこそ従順になったこの二人に脚本通りの演技を
とらせれば良いし、心が死んでいようがいまいが大差は無い。
しかし直接性行為をする為に鼻息荒く並んでまでこの二人を犯しに
来ている男達にとってみれば、精気の無い二人の姿はマイナスでし
かないのだ。
一般公開での不満は全て責任者であるラタークに向けられ、先日は
いよいよゾートから直接小言までも言われてしまった。
ラタークはアミュスとヘミネに近づいた。
﹁ほら、どうした。メシだぞメシ。今日のには精液なんてかけてな
いし混ぜてもいない。正真正銘皆が、﹃まともな﹄人間が食ってる
のと同じ奴だ﹂
何の悪意も無く、ラタークはそう言って二人に笑いかけた。
今アミュスとヘミネは車座になっているスタッフに取り囲まれるよ
うにして配膳された器を持って座っている。
全裸なのは常日頃から変わらないが、粘り気のある液体が主に下半
身にこびり付き異臭を放っている。
これは朝食後の一般開放を終え、ラターク達のチームはしっかりと
二人の体を洗浄してオルソーの撮影チームに渡したのだが、オルソ
ーは洗浄を怠り精液がこびり付いたままの状態でこの二人を戻して
きたのだ。
腸が煮えくり返る思いでラタークはオルソーに付き返そうとしたが、
昼飯時も差し迫り、食事の時間が終わればまた慌ただしく一般公開
昼の部が始まってしまうので、ドロドロとこみ上げる怒りを飲み込
み、自分達の分の食事を用意した。
スープの器とパンの皿。
497
簡単な食事だが、手早く摂れる為にラタークが指示したものだ。
アミュスが匙を使いゆっくりとスープを救い、口に含む。
ヘミネが小さくパンを千切り、モグモグと咀嚼する。
ラタークは頷いた。
これで良い。
普通の人間の扱いをしてやればいいのだ。
オルソーの様に人間的生活の全てを否定し犯していくのではなく、
自分はある程度こいつらに譲歩し、人間として最低限度のその一つ
下な扱いを心がけてやればいいのだ。
以前は現地採用した調教師見習い達が二人の食事に射精してそれを
食べさせたり、自分達は机に着きアミュスとヘミネには床に食事を
ぶちまけて啜らせたりしていたが、それも注意して辞めさせた。
娯楽として、調教師としてその行為には何の問題も無いとラターク
は思うが、今は状況が別だ。
アミュスとヘミネに人間らしさを少しだけでも取り戻させなくては
いけない。
だが調教師と公娼の関係からして甘やかすわけにもいけない。
その折衷案がコレ、調教師と公娼が車座になって食事をする光景と
いうわけだ。
スタッフにも言い含めてあるので、時折彼らは親しげにアミュスと
ヘミネに声をかける。
﹃スープの味はどうだ?﹄
﹃俺の分のパン半分やろうか?﹄
全裸のままの公娼二人に対し、凌辱者の証である調教師のローブを
纏った男達が親しげに接するのだ。
調教師達の話題も一つの面白味。
言うなれば彼らは仕事の休憩時間。
当然口を突いて出て来るのは、仕事の話題ばかりだ。
﹃いやーアミュスのマンコ周りがさぁ、最近ちょっと黒ずみが強く
なってきてなぁ。まぁこんだけ数こなしてたら仕方ないんだけどよ
498
ぉ﹄と言った公娼の体をネタにした話であったり。
﹃この前発見したんだがよ、指を⋮⋮こう、こうな? 曲げるんじ
ゃなくて捻じりながら突っ込むと、膣の中に残ってる精子を掻き出
しやすいんだよ﹄と言った技術的な話であったり。
﹃ラターク様は良いよなぁ⋮⋮直接汚い思いせずに見守ってるだけ
だからよぉ。俺なんてこの前ヘミネが一般公開中にケツ穴ユルユル
になってクソ漏らしちまった時にその処理やらされたんだぜぇ﹄と
言った上司への不満なども飛び出していた。
ラタークは思う。
人間らしさとは語らいだと。
古くは一家団欒から、友人との親交、同僚との協調、人間は誰かと
言葉の上で結ばれ合う事により、人間らしさを持つのだと。
今は多少不自然でもいい、こうやって人間の集団の中に二人を混ぜ
ておけば、彼女達の心も甦り︱︱また良い声で泣き叫んでくれるだ
ろう。
﹁さぁ、皆食ったな? では一般公開昼の部に向けて、頑張って行
こう!﹂
ラタークは手を叩いて合図し、休憩時間の終わりを告げる。
そうすると始まるのが、調教師︱︱そして公娼としての仕事の時間
だ。
﹁立て﹂
本職の調教師に言われて、ノロノロとアミュスとヘミネが立ち上が
る。
﹁股開け﹂
その言葉に、二人は大きく足を広げて立つ。
﹁肛門、性器回り洗浄︱︱はじめ﹂
号令に従い、アミュスに二人、ヘミネに二人、合計四人の調教師見
習いが二人の股間と尻に近づき、手にした布巾とスポンジを使って
こびり付いた精液を落としていく。
﹁本日の標語暗唱︱︱はじめ﹂
499
二人の前にそれぞれ一人ずつ調教師が立ち、先日公娼の役目に追加
された﹃音声アナウンス﹄﹃掲示板﹄の本日の内容を言い、それに
倣って二人も苦しげな声で唱和する。
﹁標語記入︱︱はじめ﹂
背中に回った調教師が、筆を手に取り艶めかしい肌に本日の標語を
墨で書いていく。
﹁排泄物除去、薬剤注入︱︱はじめ﹂
洗浄が終わったのを確認し、指示役が言い、調教師見習いが二人の
肛門に即効性の薬液を注入し、同様の薬品を沁み込ませた当て布で
尿道口を撫でだ。
﹁排泄物除去、器具設置︱︱はじめ﹂
調教師見習いの男がアミュスとヘミネの尿道口から肛門までを隙間
なく覆う魚の口のような形をしたバケツをはめ込む。
﹁排泄︱︱はじめ﹂
指示が飛ぶ。しかしアミュスとヘミネはその指示には従わない。
眉をぎゅっと結び、汗をかきながらも必死に耐えようとする。
﹁排泄︱︱はじめ!﹂
指示役が怒りを込めた声で言い、周囲に緊張が走る。
ラタークはそれを見て、薄く笑った。
そうだ、それで良い。
そうやって人間の尊厳を守ろうとする姿勢を見せる事が大切なのだ。
﹁えぇい! 排泄補助︱︱はじめ!﹂
指示が飛び、調教師見習いが二人の腹を強く押しこんだ。
ギュッギュと容赦の無い力で下腹を刺激され、二人は苦悶の表情を
浮かべた後、陥落した。
﹃ヒドイ﹄音がして、アミュスとヘミネの体から不要な排泄物が押
し出される。
﹁排泄物撤去︱︱はじめ﹂
魚口のバケツを持って見習いが幕舎を出て、また二人の股間と尻の
谷間に一人ずつ張り付いて小便と糞便のカスを拭い取って行く。
500
﹁香り付け︱︱はじめ﹂
汚れを全て取り除いた後、香水の入った霧吹きを手に、調教師見習
いが二人の股間に近づいて吹きかけた。
﹁仕上げ確認︱︱はじめ﹂
本職調教師が出てきて、二人の陰唇の形を整え、陰毛を整列させ、
尻の谷間からヘソまでを指でなぞって不純物が残っていないかを確
認した。
﹁装飾︱︱はじめ﹂
調教師が近づきヘミネには金の、アミュスには銀のチェーンを恥骨
の上︱︱腰に巻き、耳にイヤリングを、首にチョーカーを取り付け、
唇に紅を塗った。
﹁班長! 作業終了いたしました! 確認をお願いいたします﹂
指示役の言葉に頷きながらラタークはようやくのっそりと移動する。
前の時間の凌辱の痕跡を取り除かれ、体の中に溜まった不要物も取
り出され、裸のままいやらしく装飾品で飾られたアミュスとヘミネ
の前に立つ。
そして、会心の笑み。
﹁うん! 二人ともとても綺麗だ! さぁこの時間もお仕事頑張ろ
う!﹂
そう言って二人の肩を叩き、幕舎の外に連れ出した。
乳房を、股間を丸出しにした二人が出てきたのを見て、外で一般公
開を待ち構えていた男達の列から割れんばかりの歓声が、巻き起こ
った。
男達の野卑な歓声に迎えられ、調教師幕舎の前に設置されている一
般公開用の演台に乗せられているアミュスとヘミネに視線を送りな
がら、セリスは歩く。
同情はする。
戦士として女として。
501
あの二人に心からの憐みを感じる。
しかし自分は選んだのだ。
リトリロイの妻になると。
彼は今こちらを見ている。
公娼に憐みの視線を向けるセリスの事を、恐らくは複雑な感情を抱
いて見ているはずだ。
王や王の家族、その臣民までもが積極的に公娼を弄んできた中でも、
リトリロイは公娼を決して利用しなかった。
セリスと運命的な出会いをした日から、彼には彼女の事しか見えて
いない。
彼女が公娼に対して辛い心情を抱いている事を察した以上、彼自身
その手で他の公娼に関わろうとはしなかった。
二人は一段と大きな幕舎の前に立った。
﹁調教師本部⋮⋮ゾート殿に用事なの? リト﹂
セリスの問いに、リトリロイは頷いた。
﹁大した用件じゃないとは言われていたからずっと後回しにしてい
たけれど、俺の意見を聞きたいんだってさ。今度撮る予定の開拓団
ドキュメンタリー円盤について﹂
リトリロイはそう答えて、幕舎に入って行った。
﹁⋮⋮ゾートよ、来﹂
来たぞ、と言おうとしたところ、烈火の勢いでまくし立てる婦人の
声にかき消された。
﹁ですからぁ! 棟梁は何もわかってないわ! 今度の作品のテー
マは二人の公娼対五万人の凌辱者という不釣り合いな構図が良いの
です! その為にもインタビューは恥辱的な格好をさせて、そうで
すわ! インタビュー中にもどんどんと連続膣内出しさせるのよ!
それでドロォっと精液を零しながら自己紹介をさせる事で、視聴
者の目を逃さないの!﹂
魚顔の婦人は紅潮した顔で言い、目の前の椅子に座っているしかめ
っ面の男と向き合っている。
502
男は疲れたように溜息を吐き。
﹁あのなぁ⋮⋮オルソー。今回のはドキュメンタリーなんだぞ。娯
楽ばっかりってわけにゃぁいかんのじゃ。絶え間ない凌辱にあう公
娼ってのがメインじゃあねぇ。開拓団の暮らしとそれにどう公娼が
関わっているかがメインなんだよ。その為にもだ、アイツラが開拓
団の事をどう思ってるか、それをしっかり演出してやらにゃあいか
ん。インタビューは服を着せたまま、綺麗ごとをたくさん言わせて
その後で前向きに自分から開拓団の皆さんの為にワタシのマンコを
役立ててもらえて凄く嬉しいって、そういう風に冒頭は始めるべき
なんじゃ﹂
調教師団のトップとナンバー2が苛烈に論議を交わしていた。
リトリロイはその光景に一瞬気後れし、足を止める。
ゾートはこちらに目をやり、素早いながらも余裕のある動作で椅子
を立ち挨拶をして来ようとするが、
﹁いーえ! 棟梁の言ってる事は間違っていますわ! あのボンク
ラのラタークみたいな事を言わないでくださいな! アイツったら
二人にV字の水着を着せて開拓団と交流させるハートフルコメディ
ーにしたいだなんて⋮⋮馬っ鹿げてますわ! 膣内出し上等の、常
にオマンコががぱぁって開いている作品じゃないとワタクシは認め
ませんわ!﹂
オルソーが唾を飛ばしながら力説し、ゾートが立ち上がったのによ
うやく気付いてこちらを見、途端愛想笑いを浮かべた。
﹁あぁら∼リトリロイ王子じゃございませんか。申し訳ございませ
んねぇ。ちょっと議論で熱くなっちゃいまして﹂
﹁殿下、ご足労頂き有難うございます﹂
そんな師弟の言葉を受け、リトリロイは曖昧に頷き、今度こそ幕舎
の中に全身を入れた。
続く様にして入って来たセリスとゾートの視線が合う。
バンデニロウムでもし大祭が開催されていたら、この二人は凌辱者
と公娼としてその場で最も期待されていたであろう組み合わせ。
503
しかしその未来は無かった。
予定は確かに存在したが、未来はリトリロイが打ち消した。
そのはずだ。
﹁それで、ゾート。俺の意見が欲しいってのはそのインタビューに
ついてなのか?﹂
リトリロイはあからさまに肩をすくませ、問う。
﹁いいえ、そのような些細な次第は我ら技術者の手によって完成さ
せます故、御身に問いたかった事はただ一つでございます﹂
ゾートは古く刻まれた皺を歪ませ、口を開く。
﹁公娼が足りませぬ。演出上も開拓団への配給としても、致命的に
足りてはおりませぬ。可及的速やかにご用意頂かれねば、臣として
些か憚られますが、自分の後援者たるこの御方より授かった命令状
を行使させて頂きます﹂
そう言って、ゾートは脇の机に置いていた一枚の書類を手に取った。
リトリロイはそれを手渡され、確認する。
﹁魔導長官︱︱オビリスの令状か。ふむ⋮⋮⋮⋮なっ﹂
リトリロイは読み進めていく内に顔を青褪め、口を痙攣させる。
書類を持つ手が震え、瞳に怒りの炎が浮かび上がる。
﹁ゾート! 貴様ぁ!﹂
吠えるリトリロイに対して、ゾートは酷く冷静に言った。
﹁此度の西域遠征の責任者である魔導長官より発令され、国王陛下
より承認の判が押されてあります。次の開拓団ドキュメンタリー映
像には少なくとも五人の公娼を用意していただく。それが出来ない
場合には、この開拓団内にて平穏に過ごされております、そこな公
娼殿にも出演して頂く事になりますなぁ﹂
ゾートの視線は真っ直ぐに、セリスへと向かって伸びていた。
504
到達者︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
505
到達者
夕暮れ時に甲冑を身に纏った男達が慌ただしく走り回っている。
﹁急げ! 一刻も早く公娼を捕まえ陣に帰還するぞ!﹂
リトリロイは儀礼時にしか使用してこなかった武装を身に着け、馬
を牽いて辺りに声を轟かせる。
そのすぐ傍には戦装束のセリスが瞑目して控えている。
目元に険を作ったリトリロイとは異なり、セリスの表情はひどく落
ち着いている。
その理由に察しが付くことが、リトリロイを更に焦らせる。
︵セリスは他の公娼に対して引け目を感じている⋮⋮。今回の事で
無理強いされれば、自分に対して罪の意識を覚えながらも、抵抗は
しないかも知れない︶
リトリロイは恐怖する。
運命にセリスが囚われる事を。
セリスに破滅的欲求があるのを認識したのは、いつの事か。
例の大祭に主役として選ばれた時も、彼女は特に異を唱える事無く
受け入れようとしていた。
ゼオムントの王宮においてセリス以上に腕が立つ者はいない。
ならば群衆に囲まれて恥辱の大祭の贄に使われ無残に殺される道を
示された瞬間に、逃げ出せばよかったし、近くにいたリトリロイを
人質に抵抗すればよかった。
それでも彼女は何も言わず、黙って頷いていただけだった。
父王に拒絶され、リトリロイが共に逃げ出そうと迫った時も、彼女
は寂しげな表情で曖昧に頷いただけだった。
セリスはもしかしたら罰を望んでいるのかもしれない。
リトリロイとの恋に堕ち、国を裏切り同胞を貶めて生き続ける自分
の存在を許せないのかもしれない。
506
思えば、自分と夜を共にする際に彼女が激しく痴れ狂うのは、たっ
た一人分︱︱リトリロイの性欲分だけでも受け止め、他の公娼に漏
らさない様にしているのかもしれない。
権力者の性欲によって公娼が死に至るという話は、多聞に及ぶ。
彼女の心を推し量る事は出来ない。
それでも自分は、セリスを愛している。
あの日、最初に出会った日の記憶を今も鮮明に覚えている。
失うわけにはいかない。
どれだけセリスが罪の意識に苦しめられようと、彼女の手すらも汚
させようと、絶対に手放さない。
ゾートに魔導長官からの令状を突き付けられ、リトリロイはすぐさ
ま行動を起こした。
少なくとも後三人の公娼を手に入れる。
その為の狩りを行う。
﹁リトリロイ殿下! 騎士隊総勢二百騎集合いたしました!﹂
開拓団を護衛する騎士団の半数を割く。
最強戦力であるセリスをも投入する。
そして、最高責任者であるリトリロイ自身が戦場に立つ。
﹁全軍っ、進めぇぇぇぇぇ!﹂
リトリロイは吠え、馬を駆る。
セリスが、将校が、兵士が続いていく。
目的地は、マルウスの里と呼ばれる魔物の集落。
現地に先行しているグヴォン将軍の部隊と合流し、その場所で魔物
に捕らえられている公娼の身柄を確保する。
どんな困難が待っていたとしても、セリスを手放さない為に、自分
は成し遂げてみせる。
シャスラハール、そしてリトリロイがマルウスの里に向けて出立し
た頃、遠く離れた地で一つの出会いがあった。
507
﹁無事ご帰還、何よりで御座いますラクシェ様!﹂
翼を生やした衛士の敬礼に対して鷹揚に頷きながら、力天使ラクシ
ェは六枚の翼を畳む。
﹁お姉さまは中でお待ちなの?﹂
﹁はっ、アン・ミサ様は玉座にて人間族の客人とご歓談中で御座い
ますが、ラクシェ様におかれましては遠慮無く中に入って来るよう
にとのお達しです﹂
客人? とラクシェは首を傾げる。
﹁お客さんなんて居るんだ? こんな所に? だってここ⋮⋮﹃西
域の最奥﹄だよ?﹂
幼い声は素直な疑問を呈す。
人間族が支配する東域と大地を二分する西域、その奥の奥、秘めら
れた管理者の座所が有るこの﹃天兵の隠れ里﹄に人間の客が来るな
んて事が︱︱。
﹁あ、またアイツら? あのいけ好かない⋮⋮なんだっけ、まどー
ちょーかん? あのオヤジ! 後お付のハゲ! ウチらを騙してお
姉さまの大事な杖を持って行っちゃったアイツらなの? 中に居る
の? 殺していいの?﹂
一年ほど前にこの地にやって来て、西域の至宝たる﹃アン・ミサの
杖﹄を奪い去った人間族の魔導士達の顔を思い浮かべ、ラクシェは
戦槌を強く握る。
﹁い、いえ⋮⋮流石に連中でしたら我々もここを通しませんし、ア
ン・ミサ様もお許しになりませんよ。中に居らっしゃるのは女性達
です﹂
ラクシェはその言葉を聞き終える前に、慌ただしく駆けていく。
大理石の床を蹴り、並み居る衛士達の間を抜き去って、玉座の間へ
と辿り着く。
﹁お姉さまっ!﹂
巨大な扉を開き、コケるようにして広間に入って来たラクシェに、
視線が四つ刺さる。
508
まず少し高い位置からこちらを見降ろしている、身に覚えのある冷
徹な瞳。
﹁ラクシェ⋮⋮遅かったわね﹂
金色の髪を緩く流し、白幻の衣を身に纏った四枚翼の智天使、ラク
シェの義理の姉にして西域の管理者アン・ミサ。
気だるげな表情で玉座に収まり、妹の帰還を特に喜ぶべきものでも
ない様に迎えている。
﹁それで? 御姉様は捕まえられたの?﹂
冷めた瞳のまま、興の薄い声が問う。
﹁い、いえ⋮⋮あの、ラグラジル⋮⋮姉さまには逃げられちゃいま
した⋮⋮﹂
ラクシェは肩を落とし、顔を俯けながらボソボソ言い訳がましく続
ける。
﹁でもでも! 手掛かりはちゃんと手に入れたの! ラグラジルの
眷属と思われる黒い翼の女! あとで天兵達が連れて来るからそれ
の尋問をすれば︱︱あいてっ﹂
ラクシェの眉間に硬い物がぶつかり、少女天使は思わず声を上げる。
床を見れば金の装飾が施された扇が一つ、転がっていた。
扇を投げた当人であるアン・ミサはため息を吐く。
﹁ラグラジル、ではなくラグラジル御姉様とお呼びする様にと、何
度も言っているでしょう。わたくし達は今でこそ仲違いをしている
けれど、本来は手を取り合ってこの西域の発展に務める立場にある
のです﹂
アン・ミサの冷めた表情を受け、ラクシェはまなじりを落として瞳
に涙をためる。
﹁うぅ∼⋮⋮ごめんなさい、お姉さま﹂
﹁わかれば良いの。︱︱おかえりなさい、ラクシェ﹂
少しだけ柔らかくなった労いの言葉を受け、ラクシェは表情に活気
を取り戻し、頷いた。
そんな姉妹天使のコミュニケーションを興味深げに眺めている者の
509
視線が一つ。
こま
﹁なぁアン・ミサよ。そこの細いのは何だ? 貴様の妹なのか?﹂
黒髪を背に一房胸の前に二房垂らした、装飾華美な軍服姿の女が口
角を上げて問うた。
﹁はぁっ? アンタ今何て︱︱﹂
敬愛する姉を呼び捨てにされ、自らの身長も馬鹿にされたラクシェ
は息巻いて反駁するが、
﹁ラクシェ落ち着きなさい。えぇ貴女の言うとおり、この子はわた
くしの妹よ、マリューゾワ﹂
姉の冷たい声に封じられ、勢いを殺す。
マリューゾワと呼ばれた軍服の女はラクシェを見、薄く笑った。
﹁強いな、貴様は﹂
よくよく見ればマリューゾワの右手には突剣が握られており、それ
はこの姉の安全を第一に考えるべき玉座の間に置いては甚だ危険な
異物に見えた。
﹁お姉さま! アイツ! アイツ剣持ってる! 殺して良い?﹂
ラクシェが喚き、
﹁ほう、面白い。どれほどの実力か試しておくのも悪くは無いな﹂
マリューゾワが挑発的に笑む。
それに対して、アン・ミサが疲れた表情を浮かべる。
﹁ラクシェ、良いからジッとしてて⋮⋮マリューゾワもこの子をあ
まり刺激しないで。貴女には今やっている途中の事があるでしょう
?﹂
そう言葉を向けられ、マリューゾワは一度肩をすくませてから振り
返る。
ラクシェが広間にやって来てからじっと涙を流して見つめていた男
へ向けて。
﹁たす⋮⋮たす、けて⋮⋮たのむ、たのむぅぅぅ﹂
男は泣いている。
泣き叫んでいる。
510
﹁無理だ、無理だ無理だよっ、サバルカンっ!﹂
マリューゾワが心底楽しげに、愉悦の溢れる声で言った。
サバルカンと呼ばれた男は、絶望の表情を浮かべ、ラクシェを更に
見る。
命を救ってくれと、懇願しているようだった。
﹁⋮⋮いや、でも。ホント無理じゃんもう⋮⋮あの人もうグサグサ
じゃん﹂
ラクシェはポカンとした表情で言い、サバルカンを見る。
サバルカンは玉座から大分離れた壁に磔られていた。
全身から血を迸らせ、体中を数十本の突剣で刺し穿たれた状態で、
蛾の標本の様にしてドス黒く壁を飾っていた。
﹁クックッ⋮⋮さぁ、サバルカン。十本追加だ⋮⋮味わえ﹂
マリューゾワは右手を突剣ごと高く持ち上げる。
そうすると、彼女の足元に無造作に置かれていた突剣の山から鋭い
刃が十本、操られるようにして宙に浮かび上がってきた。
ラクシェやアン・ミサの様に魔術に深く精通して来た者達には一目
瞭然の事だが、マリューゾワの右手とその突剣には、膨大な魔力が
込められている。
﹁安心しろ、まだ死なない⋮⋮まだ殺さない。まだまだ苦しめ、血
を吐け、痛みに狂えっ!﹂
マリューゾワが右手を振りおろし、宙に浮いた十本の突剣が奔る。
それらは全て、サバルカンの体に突き立った。
﹁あぐぅぇえええええええええひぃぃぃぃぃい﹂
叫び、涙を流し、血をまき散らしながらサバルカンはもがいている。
それは不思議な光景だった。
一本でも致命傷に成り得る突剣の一撃を、既に五十本以上身に浴び
ながら、サバルカンは苦痛に喘ぎ惨めに生きていた。
﹁これは⋮⋮魔法?﹂
ラクシェは幼い顔を横に曲げ、疑問する。
マリューゾワが突剣を操って見せたのとはまた異なる、サバルカン
511
を生存させている不思議な力がある事にラクシェは感づいた。
その答えを発したのは、第四の人物。
広間の隅に置かれたソファーに腰を下ろし読書をしていた女。
亜麻色の髪をフードで隠し、体のラインが良くわかる修道服を纏っ
た女が、ラクシェに視線を送ってきた。
﹁はい、魔法です。私の﹂
柔らかな、それでいて芯の強さを感じる瞳をした修道女。
ラクシェがそちらに気をとられていると、マリューゾワがまたも愉
しげに言った。
﹁サバルカンっ! もう十本だ! ルル、﹃幸運﹄の魔法を切らす
でないぞ⋮⋮簡単に死んでしまってはつまらないからな﹂
マリューゾワの魔力で突剣が舞い上がり、
﹁わかったわ。サバルカン貴方に﹃幸運﹄の加護を。例えどんな痛
みや衝撃があろうとも、この︽幸運と誓約の魔導士︾ルルの魔法が
有る限り、貴方の身に致命傷は及ばない。最上の幸運が貴方に味方
しているのだからね﹂
魔導書を経由してルルと呼ばれた修道女が磔られた男へ魔力を送る。
﹁やめっ、やめぇぇぇぇぇぇ﹂
男の泣き叫ぶ声が、広間に響き渡った。
結局サバルカンは137本の突剣に貫かれ、もはや﹃幸運﹄では誤
魔化せなくなるほどの挽肉と化して絶命した。
その亡骸を衛士達が運び出していくのを横目に、四人の女が語り合
う。
﹁改めて自己紹介をしておこう。私はロクサス郡領国トワイラ領の
領主、マリューゾワ。ゼオムントとの戦役で最後まで華々しく戦っ
た﹃魔剣大公﹄とは私の事だ﹂
マリューゾワが胸に手を当て、誇らしげに己を語る。
﹁私はルル。ミネア修道院の院長。︽幸運と誓約の魔導士︾修道院
512
陥落まで各所に魔導士を派遣し、ゼオムントとの戦いに関わってい
たわ﹂
フードを被ったルルが穏やかな声で言った。
ラクシェは二人の挨拶を聞いて、アン・ミサの方を見やる。
﹁お姉さま?﹂
幼い彼女には、今の状況があまり理解できていなかった。
﹁マリューゾワとルル、そして今席を外していますがあと二人のお
仲間と、先ほどの挽肉人間の五人が、この度人間族の催した︱︱こ
ちらにとっては迷惑極まりない﹃西域遠征﹄の覇者。西域の最奥へ
の到達者です﹂
アン・ミサは気だるい表情で紅茶を頂きながら、ラクシェに説明し
た。
するとラクシェは手を叩いて頷いた。
﹁あ、なーんだ。じゃあアンタ達あれだ、公娼ってやつなんだねー﹂
朗らかな笑みで、二人を見る。
しかし﹃公娼﹄と言う単語を耳にした瞬間、マリューゾワは突剣を
構え、空中に無数の刃を浮かせる。
﹁訂正しろ、小娘﹂
烈火の怒りを灯し、マリューゾワはラクシェに迫るが、力天使は戦
槌を構え、魔剣大公を迎え撃つ姿勢を取る。
﹁来なよ、人間族のお便所さん。ウチのお姉さまの玉座に汚い汚い
トイレが入って来ないでよね﹂
魔剣が閃き、戦槌が振るわれる。
数百の突剣の群を一撃で弾き飛ばし、ラクシェは前に出ようとする。
その時、
﹁ラクシェ、下がりなさい﹂
﹁マリューゾワ、駄目ですよ﹂
アン・ミサとルルの声が割って入った。
ラクシェは不満気に口を尖らせ、渋々戦槌を収める。
マリューゾワは突剣を握ったまま微動だにせずそれを睨みつけてい
513
る。
﹁客人よ、こちらの無礼は詫びます。どうか剣を収めて頂きたい﹂
智天使の頼みにようやく剣を降ろし、舌打ちを一つしてから下がっ
た。
はぁ、と一つアン・ミサはため息を吐き、
﹁あのねラクシェ。貴女はもう少し周りと協調する意識を持つべき
だわ。少なくともこの二人はわたくしの客人なのですから、手当た
り次第に噛みついて姉の顔に泥を塗るような真似は止めて頂戴﹂
﹁うっ⋮⋮はぁい、ごめんなさい﹂
それに、と続く。
﹁此度の﹃西域遠征﹄初めはわたくしの杖が景品として提示されて
いたようですが、それがもうこの地からは当に失われ、人間族の手
に渡っているという話はもう、しましたね﹂
ルルが穏やかな声で頷いた。
﹁えぇ、アン・ミサ様からそのように伺って、私達はこれ以上調教
師に従う必要は無いと判断し、サバルカンを処刑しました﹂
マリューゾワやルルを率いたサバルカンが調教師として彼女達にど
の様な恥辱を与えてきたか。
137本の突剣による串刺しと、死への苦痛を連鎖させる幸運によ
る痛みで相殺されるというものでは無く、まだ心の内に蔓延る恨み
憎しみは消え去ってはいない。
﹁元々六人仲間が居たが、二人は死んだ⋮⋮主にサバルカンのせい
でな。あと二人は負傷し、今はアン・ミサの厚意で治療を受けさせ
てもらっている﹂
マリューゾワは視線を厳しくしたまま、吐き捨てる様にして言った。
﹁治療中の二人はじきに戻るでしょう。この里で治せない怪我や病
気は無い。それよりもマリューゾワ、そしてルル。貴女達はこれか
らどうするつもり?﹂
智天使の問いに、二人は一瞬の間を空ける。
﹁これから⋮⋮か﹂
514
﹁さて、どうしましょうね﹂
マリューゾワもルルも、困った表情で固まっている。
公娼としてこの﹃西域遠征﹄に参加し、自由を得るか反逆の力を得
るか、という目標を抱いて恥辱に耐えてきた昨日までとは異なり、
今の自分達には何の目的も目標も無い。
騙された、無駄だったという思いが爆発し調教師を殺したが、そう
したところで次に得る物など何も無い。
﹁提案なのですが、宜しければ二人ともこの地に住まわれませんか
? 衣食住のお世話は致しますし、マリューゾワにはある程度の領
地とルルには魔法の研究施設を用意します﹂
アン・ミサの問いかけに、二人は驚愕の視線を送る。
﹁無論、タダというわけにはいきません。近い内にわたくし共は人
間族と戦う未来がある様に思われます。その際にお二人の力を御貸
し頂きたいのです﹂
その言葉に、ラクシェが反応する。
﹁えーっ! 人間族と戦うとしても、ウチだけで充分だよぅ! こ
んな奴らの力なんてなくっても、ウチとこの戦槌さえあれば︱︱﹂
﹁ラクシェ、少し静かにしてて﹂
妹のムキになった声を制止して、アン・ミサは二人の人間に問いか
ける。
﹁﹃西域遠征﹄貴女達はこの企画の被害者であり、わたくし共は巻
き込まれたとは言えこの地のホストです。賞品から何まで全てを失
ってしまうのは心苦しい。自由を︱︱とは言えないまでも、貴女達
が望むようにして生きていけるこれからを、賞品に換えて提案させ
てもらうわ﹂
アン・ミサの声が響いた時、広間の扉が開かれる。
そこに現れたのは、二人の人間。
一人は薄緑の髪を肩口で切り、緩いシャツと正反対にピチッとした
丈の短いズボンを穿き、ゴツゴツしたブーツで足を包んだ女。
もう一人は、赤と白の布を着物のようにして纏い、袖と胸元そして
515
腰から足首にかけてスリットを入れて動作性を確保した姫衣装の女。
﹁⋮⋮ならアタシには兵器研究施設を頂戴﹂
薄緑髪の女が言って、
﹁自分は小さな道場を所望いたします﹂
姫装束の女が結い上げた黒髪を揺らして続けた。
﹁ロニア、シロエ︱︱もう大丈夫なのですか?﹂
ルルが心からの安堵を浮かべて二人に問う。
﹁あぁ、もう問題ない。⋮⋮ルルの﹃幸運﹄のおかげで致命的な怪
我は無かったし﹂
ロニアと呼ばれた緑髪の女がはにかんで答える。
﹁ご心配お掛けしました﹂
シロエが黒髪を垂らしてお辞儀する。
その様子をジッと眺め、ラクシェは鼻を動かす。
微かに香るのは、ロニアから火薬の匂いと、シロエから血の残り香。
この二人も公娼という事なら、ある程度の実力者なのだろう。
﹁まぁウチには敵わないんだけどねぇ﹂
﹁何か言ったか? 小娘﹂
ボソっと呟いたラクシェの声に、マリューゾワが詰問調で問うが、
返事は返ってこなかった。
諦めたように首を振り、魔剣大公は智天使の方を見やる。
﹁アン・ミサよ。先ほどの話、本気なのか?﹂
﹁えぇもちろん。ロニアとシロエの要求に関しても認めます。代わ
りと言うわけでは無いけれど、マリューゾワ達には役目を負って貰
おうと思います﹂
そう言って、アン・ミサは四人の元公娼へと視線を送る。
﹁﹃攻勢﹄の武はわたくしの妹ラクシェが担当します。皆さんには
﹃守勢﹄の武、万が一この地が戦乱に見舞われた際に、わたくし共
に助力して頂けるよう、お願いします﹂
アン・ミサは思う。
この地に戦乱の気運が訪れている事を。
516
今まで不干渉だった人間族の東域と魔物の西域。
一年前にこの地の至宝を奪われた事は自分の落ち度であり、その結
果がこうして人間族の余興にこの地を差し出してしまう始末。
更には人間族の軍隊がやって来て開拓事業を行っているとの報告も
ある。
近い将来西域の管理者として自分達と彼らとの戦いが起こる事は避
けられないだろう。
その日の為にも、この地に根付いた戦力は必要だ。
マリューゾワの才気は人間族の中でも抜きんでていて、残り三人も
それぞれ優秀な存在だ。
彼女達を手元に囲っておくに越したことはない。
そしてそれにも増して、懸案事項が一つ。
ラグラジルの助力が欲しい。
アン・ミサの義理の姉にして、先代の西域管理者。
魔導長官オビリスがこの地にやって来た時に、狡猾な奸計により道
を違えてしまった魔天使。
誤解と軋轢が生まれ、ラグラジルは自分の事を恨んでいるだろうし、
アン・ミサ贔屓のラクシェとの間にも強烈な溝が生まれている。
この地の管理を主上から授かった時、自分達三人の力を結集して平
穏を作る様にと命じられていた。
魔天使、智天使、力天使。
一人欠けてしまっても、機能しない。
ラグラジルの力の大元は自分が預かっている以上、こちらに帰参し
てもらい誤解さえ解ければまた自分達は手を取り合って人間族と戦
う事が出来る。
今はその未来の到達を心待ちにしている。
アン・ミサが心の整理をしている間に、マリューゾワ達は決断を終
えたらしい。
それからは興の向くままに語り合い、彼女達の新たな生活について
の話をする。
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研究施設の概要であったり、領地の範囲であったりと、皆の要望を
まとめて予定図を作っていく。
アン・ミサとマリューゾワ達が語っている様子をつまらなそうに眺
めていたラクシェの耳に、広間の扉を叩く音が届いた。
﹁なーにー?﹂
﹁ラクシェ様、東の空より連絡が届いております。天兵小隊が間も
なく帰還するとの事です﹂
衛士の声に、ラクシェは立ち上がった。
それまでの仏頂面を止め、輝かんばかりの笑顔を浮かべている。
﹁どうしたの? ラクシェ﹂
アン・ミサが視線を上げて問う。
それに対し、
﹁ううん。お姉さま、ウチ頑張るから! ラグラジルお姉さまの居
場所を突き止めるために、一生懸命異端者を絞り上げて来るね!﹂
ワクワクという擬音を残し、ラクシェは広間から大急ぎで駆けだし
た。
ラクシェは城の入り口に立ち、東の空を見上げる。
そこには翼を生やした影が五つと、二本の縄で宙づりにされ、股間
に大輪の向日葵を生やした女の姿が見て取れた。
﹁はーやーくーっ! 早くウチに遊ばせて︱っ!﹂
ラクシェはキラキラとした笑顔を浮かべ、それに手を振る。
その姿を衛士達は微笑ましい様子で眺め、東の空よりやって来るお
楽しみに胸を踊らせた。
﹁馬はここに繋いでおきましょう﹂
シャロンが言い、マルウスの里から程近い林の影に五頭の馬を繋ぎ
とめた。
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休む事無く駆け続けた事で、人馬諸共に疲労困憊していた。
﹁もうすぐ夜が明ける⋮⋮少し休憩して、日の出と共に行動に移ろ
うか﹂
ステアが言い、確認をとる様にヴェナを見る。
聖騎士が頷いたのを合図に、銘々地面に腰を下ろし、疲れを癒して
いく。
﹁アタシさー、ちょっと気になってる事あるんだけど﹂
不意にセナが口を開く。
﹁何がですか?﹂
ウトウトしているハイネアを膝枕しながらリセが首を傾げる。
﹁いやね、シャスが言ってた誓約魔法に関する部分で、あの時は逆
転の目が有るっ! て事で興奮してて流しちゃった部分に、なーに
か引っ掛かりがあったような気がするのよねぇ﹂
セナの言葉に、木に背中を付けて座っていたシャスラハールがビク
ッと肩を震わせる。
彼自身その﹃問題﹄については認識していたが、今の今まで現実的
な方策を示せないでいた。
ルルから授かった誓約魔法の発動条件。
それは︱︱
﹁精の最後の一滴。これが放出される時にのみ女性の心を縛る誓約
が発動する。シャスラハール殿下、間違いないでしょうか?﹂
シャロンがシャスラハールの目を見つめながら問う。
﹁⋮⋮はい。ルルは僕にそう教えてくれました⋮⋮﹂
気まずそうに視線を逸らして、黒肌の王子は答えた。
ヴェナとステアは先の説明でその問題点を認識していたので特に反
応は無く、セナとリセの二人はハッとした表情で顔を見合わせた。
﹁殿下、非常に不躾ではございますが、殿下は通常時⋮⋮何の魔法
も薬の補助も無い時に、一日で何度射精をする事が可能ですか?﹂
シャロンはぶれない瞳でシャスラハールを捉える。
若干言い辛そうにしながら、シャスラハールは、
519
﹁十三回⋮⋮出した時が有ります⋮⋮たぶんそれが、限界かと⋮⋮﹂
頬を赤く染め、モジモジしながら言った。
その答えを聞いて、シャロンが歩き出す。
木に背中を付け座り込んでいるシャスラハールのすぐ傍にまで近づ
き、腰をかがめて表情を覗き込む。
﹁殿下、殿下は私の事をどう思われますか?﹂
﹁えっ⋮⋮え?﹂
シャロンは今リセから借りたエプロンで胸元を覆っているが、屈み
こんだ仕草故に、大きく谷間が覗き、桜色のつぼみすら見えそうな
状況だ。
﹁殿下はここにいる私以外の皆さんと睦ばれたと聞いています。こ
れから我らの命運を決する戦に出ると言うのに、私一人だけ殿下の
御力になれず、また一人だけ責任を放棄するのも好ましくありませ
ん。ゆえに殿下、私の事がお嫌いでなければどうか身を任せて下さ
い﹂
そう言ってシャロンは顔を寄せ、シャスラハールの唇を奪った。
﹁⋮⋮はい﹂
シャスラハールが目線を下に向け、囁く様にして頷いた。
﹁十三回という事ですから、一発はラグラジルに残しておくとして
残り一二回。一人二発ですね。一番槍は、私が務めます﹂
シャロンは言い切り、シャスラハールの投げ出された足の間に腰を
下ろしていく。
右手で王子の黒肌を撫で、左手で衣服を剥いていく。
そうして露わになった肉棒に向け、ゆっくりと舌を伸ばしていった。
520
金貨︵前書き︶
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521
金貨
意識がピリッ︱︱と弾ける。
﹁あぅ⋮⋮﹂
うめき声を一つ上げて、シャスラハールの体は痙攣した。
シャロンがシャスラハールの肉棒を口に含み、ものの数分としない
内に精液を搾り取られた。
シャロンが公娼として不本意ながらも口淫の技を身につけていたか
ら︱︱だけではない。
今シャスラハールの体は柔らかな肉に埋もれている。
﹁事は一刻を争います。皆さま、どうぞ殿下にご助力を﹂
ヴェナの言葉を合図に、皆がシャロンに続いたからだ。
シャスラハールは後頭部を第一の家臣であるヴェナの股座に乗せ、
横たわっている。
そしてヴェナの女陰と挟み込むかのようにして、
﹁くふっ、シャスよ好きに舐めてよいぞ﹂
服を脱ぎ去ったハイネアがシャスラハールの顔の上に自身の陰唇を
乗せる。
しっとりとした肉の花びらをゆっくりと前後に動かされると、否応
なく舌が伸び、可憐な蕾を突いて味わってしまう。
﹁では⋮⋮私はこちらから⋮⋮殿下、失礼いたします﹂
シャスラハールの右隣りに寝そべり、伸びた右腕を抱く様にしてリ
セが言う。
舌で王子の弱点である乳首を舐めしゃぶり、二の腕に張りのある乳
房を押し付けて、王子の指先は彼女の肉壺へと導かれる。
﹁ならばわたしはこっちだな﹂
反対側にはステアが収まり、リセがする様に乳首を舐め、胸を押し
付け、指を導く。
522
それとは別に彼女の空いた手が王子の黒肌を羽毛の様に優しく撫で、
鋭敏な快感を与えていく。
﹁ちょっと! アタシここ? もうココしか空いて無いし⋮⋮﹂
がーっと怒鳴りながら、セナは肉竿を咥えているシャロンに寄り添
うようにして顔を寄せ、シャスラハールの陰嚢をハムハムと啄んで
いく。
セナとシャロン。
同僚騎士、命を預け合った間柄の二人の連携は見事なもので、シャ
スラハールは下半身に与えられる至上の快楽に堪え切れなかった。
飛んでいく意識の中で、シャスラハールは思う。
調教師として活動してきた中でも、これだけの美姫に囲まれ、集中
的に奉仕された者は居なかっただろう。
大抵民衆から望まれていた映像作品というものは恥辱を与えて満足
する形であるが故に、公娼の数は男根の数より少ないか良くて同数、
周囲ではやし立てるエキストラ役の男達も含めてしまえば絶対的に
凌辱者側が多数だった。
またこういった温もりや信頼︱︱愛情が感じられる場面は皆無だっ
た。
公娼が公娼にされる所以は、彼女達がゼオムントに抗い戦った結果
である。どれだけ恥辱に塗れようとも、彼女達が真実心を差し出す
場面は映像には残されてはいないのだ。
温もりに、解きほぐされる。
幸福感。
迸った精液は全て、シャロンの口内で爆ぜた。
金髪の騎士は顔色を変える事無くそれを受け止め、ゆっくりと嚥下
していく。
啜り、舐め、吸う。
射精の直後で一瞬萎えかかった王子の肉棒も、その優しい刺激に逞
しさを維持する。
﹁では、殿下。参ります﹂
523
シャロンは口の端に白い残滓を残したままほんのりと微笑み、腰を
上げる。
背面騎乗位。
ハイネアが尻を跳ねさせ一瞬だけ開けた視界に映った、シャロンの
美しく滑らかな背中に金色の髪束が流れる光景に、シャスラハール
呆けた表情を見せる。
思わず背中を撫でようと手を動かすが︱︱
﹁あっん、殿下﹂
﹁んっ、自由に動かしてもらって構いません﹂
両手の指はそれぞれ別の女陰に収まっており、蠢く肉襞に囚われて、
美しい背中へは届かなかった。
﹁殿下、私が動きますね﹂
直立したシャスラハールの肉棒に陰唇を合わせ、ゆっくりと飲み込
んでいくシャロン。
﹁⋮⋮ぷぁい﹂
ハイネアの花弁に押し潰されているシャスラハールには、上手く返
事が出来ない。
シャロンの体が上下する度に、快楽の波が押し上げられていく。
股座にシャスラハールの頭を乗せているヴェナが首筋や耳の裏を撫
でてくるのも、ハイネアの秘部が視界一杯にいやらしく広がってい
くのも、リセとステアによる三点責めも、そしてセナが上下するシ
ャロンの動きに合わせて肉棒の付け根を舌で刺激し、しなやかな指
で陰嚢を揉みしだいてくるのも。
耐える必要は無い。
状況を考えれば速やかに射精し一二回というノルマをクリアしなけ
ればならないはずだが、シャスラハールは出来るだけ長くこの天国
の時とも言える状況を味わいたくなった。
心は僅かに抵抗した。
しかしそれでも、心の本流にある義務感と、何より肉体が快楽の渦
に悲鳴を上げて、二度目の精をシャロンの膣へと解き放った。
524
﹁うおー⋮⋮出てる⋮⋮すっごい出てる﹂
セナが手にした陰嚢と口を当てた肉棒の付け根が脈動するのを感じ、
感嘆するように声を出した。
ドロドロとドバドバと︱︱。
シャスラハールは制限魔法を解放する為に、自らの陰嚢に収まって
いる精を放出していく。
﹁んっ⋮⋮はいっ。殿下、如何でしたか?﹂
シャロンがしゅるりと立ち上がり、シャスラハールへと振り返る。
ハイネアが空気を読み取り、王子の顔の上から体をどけ、今新たな
主従が視線を交錯させる。
﹁⋮⋮凄く、気持ち良かったです﹂
混じりけのない本音を、脱力しながら言った。
﹁ふふっ。お褒めの言葉、有り難く。でもそれは皆さんの助力も有
ったからですので、誇りには致しません﹂
はにかみ笑顔で金髪の騎士が答えた。
その時、ガサッ︱︱と葉の鳴る音がする。
ヴェナとリセ、そしてハイネアとセナが四方を確認し、ステアは地
面に耳を付ける。
その時、シャロンは視線を高く上げた。
林立する木々を見上げ、少しだけ口角を上げた。
﹁やっぱり︱︱﹂
何かを言いかけたところで、ステアの声が轟く。
﹁馬蹄だ! ⋮⋮十⋮⋮二十⋮⋮三十騎! マシラスの山で襲って
きた奴らと同程度の騎馬が近くに居るぞ!﹂
地面に耳を付け、その振動で周囲を警戒する。
何かが居る︱︱くらいのものだったらある程度訓練された兵士なら
ば可能だろうが、数の特定までも行える辺りが、リーベルラント騎
士国家の精鋭騎士。
﹁迎え撃ちましょうか﹂
﹁あぁもう時間無いって言うのに!﹂
525
ヴェナが立ち上がりかけ、セナが愚痴を言い始めたところで、
﹁いいえ、皆さんはこのまま殿下にご協力を、騎兵隊の相手は私一
人で充分です﹂
シャロンが内腿に精液を零した状態で彼方を見据えて言った。
﹁シャロン! お前っ﹂
ステアが顔を上げ、吠える様にして問う。
﹁愛用の装備も無く、ただの駄剣一つで騎兵三十騎の足止めが出来
ると思っているのか?﹂
体調と装備が整った状態ならば、シャロンの技量であれば実現可能
なラインの話だが、今の彼女はラグラジルに凌辱され、地面に叩き
つけられ、ろくに休みも取らず遠乗りし、尚且つ得意の双剣を失っ
ている状態なのだ。
﹁無謀は許さんぞ﹂
上官である騎士長ステアには部下を無茶な危険に晒すという気持ち
は毛頭無い。
﹁無謀ではありません。私にはしっかりと、策があります﹂
シャロンは真剣な表情をステアへ向けた後、シャスラハールに視線
を送る。
﹁殿下、宜しければ金貨を一枚頂けないでしょうか?﹂
﹁へっ?﹂
シャスラハールは呆けた表情で固まり、皆視線を交わす。
﹁金貨って⋮⋮どうするのだ? そんな一枚程度で買収されるよう
な喰いつめ者は兵隊などやっておらんと思うぞ?﹂
ハイネアが首を傾げる。
﹁そうですね。ですが金貨が一枚あれば、私は三十騎程度の騎兵な
らば足止めできると断言します﹂
シャロンは言い切った。
その表情を見て、まだ困惑したままシャスラハールは荷物の中から
不要とは思いながらも一応持って来ておいた財布を取り出して金貨
をつまむ。
526
﹁あの⋮⋮はい﹂
そのままシャロンへと歩み寄って、手の平に金貨を置く。
﹁有難う御座います﹂
シャロンは礼を言いつつそっとシャスラハールとの距離を詰め、不
意打ち気味にキスをした。
﹁えぇっ? シャ、シャロンさんっ﹂
﹁ふふっ。金貨の御代です﹂
シャスラハールから距離をとって、全員を見渡す。
﹁殿下の奥の手を解放するには後射精が十回。皆さまもどうかお急
ぎください。敵兵が動き出した以上、状況は変化しています。一刻
の猶予も無いという事です﹂
そう言ってシャロンは地面に畳んで置いていたセナから貰ったスカ
ートを腰にあてがい、
﹁ご武運を。殿下、必ずやラグラジルめを攻略してください。そう
すれば我らの悲願は希望の活路を見い出せます﹂
駄剣を一つ鞘ごと握って駆け出して行った。
﹁リトリロイ殿下の本隊が来るだとぉ⋮⋮くそっ! くそぉっ!﹂
馬に乗せた巨体を揺らして、グヴォンは呻く。
ゴダンより依頼された公娼狩りの任務の途上、これまで開拓団の警
護という退屈極まりない任務に従事していた反動から、部下と共に
弱そうな魔物を見つけてウサを晴らす、一種の狩猟を楽しんでいた
ところに、リトリロイが騎士団を率いて自分の応援に向かっている
との報告が届いた。
﹁急げっ! てめぇら! このまま何の手柄も無いまま殿下に合流
されちまったら俺の評価はガタ落ちだ! 場所は分かってんだ、さ
っくり行ってさっくり魔物ブッ殺して公娼共をとっ捕まえて、本隊
が来る前に俺達でヤれるだけヤっちまうぞ!﹂
グヴォンは焦りながら、動揺しながらも、兵の士気を上げる事だけ
527
は忘れない。
そうだ、そうしてしまえば良い︱︱
マルウスとかいう魔物を殺して公娼を捕らえる。
後は本隊が合流するまで好き勝手雌穴を穿りまくれば良いんだ。
グヴォンは汗をかきながらも、口元をニヤつかせる。
部下を叱咤し、馬を蹴り付けながら走っていくと。
目的のマルウス族の集落まで僅かという林の近くで、人間を一人見
つけた。
女だ。
美しい女。
金髪とちぐはぐな露出度の高い服を纏った女。
間違いない。
こいつは︱︱
﹁公娼じゃねぇか! おい、見つけたぞ! まずは一人だ。捕まえ
ろ﹂
この西域に居る人間。それも美しい女ならば間違いなく公娼。
それは間違ってはいない。
しかしグヴォンは愚かだった。
彼はかつて朝の作戦会議で御勤め品扱いだったヘミネを犯していた
時にも、自信過剰で公娼を人畜以下と言い切ったが、それは彼女達
が不当に扱われた結果に過ぎない。
ヘミネであれ、その他の公娼であれ、図体だけの頭の冴えないグヴ
ォンのような男程度が敵うはずはないのだ。
それが特に︱︱リーベルラント騎士国家、精鋭騎士団の参謀を相手
にするのならば、足りない部分は一つや二つでは無い。
本来ならば︱︱という注釈はつくが。
馬から降りた兵士が五人、シャロンへと向かって行く。
その時、シャロンの口元が綻んだ。
﹁今回の戦いはラグラジルという強敵を相手にするもの。何もかも
が万端では無い私がいては足手まといになる。だから、これで良い
528
のです﹂
そう言ってシャロンは手に提げていた駄剣を放り捨てる。
それは、抵抗を諦めているかの様に兵士達には見て取れた。
﹁おいおい、何だこの女。ヤらしてくれるってのか?﹂
﹁俺達の前に出てきたのは体を差し出す為かよぉ。やっぱ公娼って
のは馬鹿でどうしようもない肉便器なんだな﹂
兵士達は下卑た笑いを浮かべて、ゆっくりとシャロンへ近づいてく
る。
﹁先へ進まねぇといけねぇが⋮⋮まぁ良い、一人でも公娼を捕まえ
ておけば殿下への言い訳も立つ。この状況で我慢しろって言うのも
野暮だな。良いか一発こいつでヤった奴から目的地へ向かうぞ﹂
そう言ってグヴォン自身、下品で好色な笑顔を見せて馬から飛び降
りた。
足止め。
もしそれだけが目的だったならば、これで彼女の役目は果たされる。
しかし、
﹁ふふっ﹂
シャロンは笑い、金貨を取り出した。
それを見て男達も笑う。
﹁なんだぁ? ヤらしてくれる上に金までくれるってか! 良いね
ぇ! お前最高だわっ 全員分の金貨はあるのか? グヴォン将軍
と伝令の奴の分も含めると三十二枚必要になるぜぇ?﹂
ゲラゲラと笑いながら、男達の一人がシャロンの持つ金貨へと手を
伸ばす。
それをシャロンは身を引いてかわし、金貨を親指に乗せる。
﹁な、なんだぁ⋮⋮?﹂
男達が怪訝な声を漏らした瞬間、シャロンは笑みを深くして、
金貨を強く空へと打ち上げた。
﹁傭兵っ! 貴女の剣を買おう。これより私が、持ち手となる!﹂
529
打ち上げられた金貨は、シャロンの上空で別の者の手に渡った。
金貨を掴んだ手は即座に胸元に押し込まれ、安全な場所にソレを移
す。
そうして次の瞬間には白刃が舞い、シャロンへと迫っていた男達の
首が五つ、大地へと転がった。
血栓が飛び散る中、シャロンの前に着地した人影が、振り返って血
に染まった微笑みを向ける。
﹁了解。これよりマリスは貴女の剣となるよっ。差し当たっては、
ここに居る奴らを皆殺しにしちゃえば良いかなっ?﹂
無邪気そのもので問う傭兵公娼マリスに向けて、シャロンは頷いた。
マルウスの里の近くにいる公娼は囚われているシュトラ達やラグラ
ジルと共にいるユキリスだけでは無い。
ラグラジルの空間の中でその姿と生存を確認して以降、シャロンの
頭の中にはマリスと合流する事も必要な目的になっていた。
主を失い流浪する傭兵。
力を削がれ万全に戦えないシャロンと、意志を失い戦う事が出来な
いマリス。
シャスラハールから二発目の精液を注がれたすぐ後、物音に気付い
て上を見ると巨木の枝の中、視界の片隅にマリスが潜んでこちらを
見ていた。
出方を窺う様に、野生動物さながらにこちらを警戒している彼女に
声を掛けようとした時、ステアが騎兵の出現を叫んだ為、シャロン
の方から呼び掛ける機会を逸してしまった。
その後は時々視線を送ってくるシャロンに惹かれてマリスがここま
で付いて来て、刀と持ち手の契約が成った。
マリスの曲刀が唸る。
奔る。
530
抉る。
指揮官含めて三十二名の騎馬隊は、グヴォンを残して全滅した。
辺り一面に首が落ち、胸を裂かれ、四肢が飛んでいた。
﹁あっ⋮⋮あぁ⋮⋮ひ、卑怯だぞ貴様ら!﹂
当人からしてみれば、油断したところに奇襲を受け、慌てふためく
部下達がバッサバサと切り殺されて混乱中、と言ったところか。
﹁うるさいなーオッサン。ご主人が指揮官は最後にって言うから残
してあげただけなんだからね? ぜったいぜったい! マリスはオ
ッサンを殺すからね? はい、覚悟して? 三秒あげる。いーち、
にー﹂
﹁マリス、少し待ってください。彼には聞くべき事が有ります﹂
マリスに曲刀を突き付けられて震えているグヴォンに向けて、シャ
ロンが近づいて行く。
﹁貴方の部隊がここで何をしていたのか、どこへ向かっていたのか、
そちらの陣地に公娼はどれだけ捕らえられているのか、全て話して﹂
ラグラジル空間で開拓団の存在を知ったシャロンにとってみれば、
アミュスやヘミネの現在の様子は気になるところだった。
シャロンに睨まれ、マリスに刃先で突かれ、グヴォンは情けなく涙
を流しながら口を開いた。
マルウスの里へ向かっている途中だった事。
開拓団の大将自ら部隊を率いてこちらへ向かっている事。
狙いはシュトラ達である事。
そして開拓団内には三人の公娼がいて、その内二人だけで五万人の
性処理に充てられているという事。
﹁アミュ姉⋮⋮ヘミネちゃん⋮⋮﹂
マリスはかつての仲間達に対する最悪の予想が当たってしまった事
に衝撃を受け、突き付けた刃先をカタカタと震えさせる。
﹁騎士団長⋮⋮貴女は何を⋮⋮﹂
シャロンも生死不明だったかつての上官セリスが生きていて、こち
ら側と敵対しているという事情を改めて確認し、眉をひそめる。
531
二人にそれぞれ隙が出来た瞬間、グヴォンは巨体に似つかわしくな
い俊敏さで飛び退り、転がりながら胸元に手を突き入れた。
﹁何でも良いっ! 来やがれ魔物っ! 俺を守れぇぇぇぇ﹂
ゴダンから預かっていた﹃アン・ミサの杖﹄の模造品。
それを取りだし、大声で叫んだ。
﹁何をっ!﹂
﹁あーっ、逃げるなっ! 初仕事なんだから失敗出来ないのにぃ!﹂
シャロンが鋭い視線を向け、マリスが追い縋ろうとした時、その足
下、地面が隆起した。
﹁へっ⋮⋮へへっ。つ、強そうじゃないか。おう魔物ぉ⋮⋮そいつ
らぶっ倒せ。ただし殺すんじゃねェぞ。俺様に屈辱を味あわせてく
れた事、素っ裸にひん剥いてぇ、子宮の奥の奥から反省させてやる
んだからなぁ⋮⋮﹂
グヴォンが地面にへたり込んだまま、震える声で声をかける。
その対象は、巨漢のグヴォンよりも更に倍以上の体を持ち、鋭く尖
った鼻と爪を輝かせる、モグラ型の魔物だった。
﹁追加料金⋮⋮必要ですか?﹂
﹁⋮⋮それよりはちょっと手伝ってほしいかも⋮⋮です﹂
シャロンは駄剣を拾い直し、更にもう一本死体からはぎ取って慣れ
た双剣の構えを取りながら、マリスと共に巨大なモグラに向かい合
った。
532
主従の愛︵前書き︶
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533
主従の愛
﹁騎士長。アタシはシャロンの言葉を信じますよ﹂
セナは隣に立つステアへと声をかける。
﹁策が有るって言ってましたし、アタシ達の軍師はそういう嘘はつ
きませんよ﹂
遠くを見つめるステアは年下の部下の言葉に、フッと脱力して頷い
た。
﹁そうだな⋮⋮わたしだってシャロンの事を信じているさ⋮⋮。た
だ武運を祈っていたんだよ﹂
切り替えるように言って、ステアはシャスラハールへと振り返る。
﹁さぁ殿下。シャロンが作ってくれた時間です。速やかに参りまし
ょう﹂
その視線を受けて、黒肌の王子ははっきりと頷いた。
あと十回。
限定解除の為に射精する。
一発分の精液を残した状態でラグラジルを押し倒し、その子宮に誓
約魔法を注ぎ込む。
その時、シャスラハールの隣で聖騎士ヴェナが身震いした。
﹁魔力⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮うむ﹂
呼応するようにハイネアも頷き、焦りの表情を浮かべる。
今この場に正式な魔導士は存在しないが、それに準じるものとして
魔導の祝福を受けた﹃聖騎士﹄ヴェナと類似系統の﹃治癒術士﹄ハ
イネアがいる。
魔導士程に魔法知識や魔力探知が出来るわけでは無いが、一般の者
に比べてそちら方面の感覚が優れているのは間違いない。
その二人が同時に、巨大な魔力を感知した。
534
﹁これは⋮⋮些か見知った魔力の波長ですね﹂
﹁ユキリスのものだな⋮⋮あ奴め⋮⋮﹂
短い間だが共に旅をして支え合ってきたかつての仲間の魔力。
別れる前に感じたソレよりも遥かに存在感を増している。
﹁ユキリスの魔力⋮⋮? ラグラジルって奴に強化されてるんだっ
け﹂
セナは苦しげに顔を歪めて言った。
﹁シャロンの報告によると、今の彼女はラグラジルの支配下にある
らしいな。ラグラジルを押さえた上で取り戻す、それが理想なのだ
ろうけれど﹂
ステアも顎に手を当て、悩ましげに呻く。
﹁ユキリスさんの魔法を直接相手にするのは、私達にとってかなり
危険な行為かと⋮⋮﹂
リセが顔を落として言う。
︽劇毒と狂奔の魔導士︾ユキリス。
数多の毒を撒き、精神を狂わせる魔法を擁する魔導士。
直接斬りかかっていては、目に見えぬ毒と狂いにたちまちやられて
しまうだろう。
﹁ラグラジルと思われる気配はありませんか?﹂
ステアが問い、
﹁いえ、今のところ魔力は一つですね⋮⋮出来得るならば彼女との
戦闘は避けたかったが⋮⋮﹂
聖騎士ヴェナが答え、更に言葉を紡いだ。
﹁殿下、魔導士ユキリスの相手はわたくしが務めます。聖騎士の加
護を持つわたくしならばある程度の魔法に耐性がつきます。殿下は
ステアさん達と共にラグラジルの攻略をお願いします﹂
王子の守役としては、最難関であるラグラジル捕獲の方につきたか
ったが、ステアやセナ、リセではユキリスの魔力を追う事も出来ず、
まず戦闘が成り立たない。
適材適所を突き詰めると、ヴェナがユキリスに当たるしかない。
535
﹁わかった⋮⋮ヴェナ、無事に戻って来て﹂
シャスラハールは真剣な表情で頷き、重臣への信頼を示す。
主人である少年を愛おしげに見つめ、聖騎士は体を寄り添え抱きし
めた。
﹁ヴェナ?﹂
﹁先ほどのシャロンさんと同じです。わたくしも殿下の精液を二回、
この身に浴びてから向かいますわ﹂
聖騎士の手は主人の肉棒を優しく包み、そっと己へと導いた。
シャスラハールとヴェナが最初に出会ったのは、スピアカント王国
が未だ健在だった凡そ九年前。
シャスラハールは十代に入る前で、まだまだ甘えが抜けず、姉のア
リスレインに怒られる毎日を過ごしていた頃だ。
国一番の騎士が魔導の最高峰であるミネア修道院で祝福を受け、聖
騎士に叙される。
その報告に国内は一気に湧き上がった。
この時代、聖騎士と呼ばれる人間はミネア修道院に属する古老の騎
士、それも名誉称号として与えられる一種の飾り的な名前だった。
しかしそれを、弱冠十八歳にして剣技を収め、騎士としての最高峰
に上り詰めた女性がいる。
それも高名な騎士国家であるリーベルラントの人間では無く、この
スピアカント王国が輩出する、というある種の優越感が国を湧かせ
た。
王家も軍も民衆も、誰も彼もその話題で持ちきりとなり、ロクサス
領内にあるミネア修道院から帰還する新たな聖騎士の登場を待ち望
んだ。
凱旋の日、スピアカント王国の首都シャムネイルの外壁城門は開か
れ、王城へと続く大通りには華美な飾りが施されて、群衆は道の端
に寄って、王家の者は王城の上から今か今かと聖騎士の到着を待っ
536
た。
そして、その国を挙げての歓迎の渦に、一頭の騎馬が到着する。
純白の鎧に、美しい金の髪。
腰に提げた剣は聖騎士の証である聖剣。
城門をくぐり、ゆっくりと王城を目指していく騎馬を、群衆は言葉
を失い道の端から眺めていた。
清廉にして至上の武。
白聖の騎士が馬を操る姿に見とれていた。
シャスラハールはその姿を、美しさをいつの日も忘れた事は無い。
アリスレインに抱えられて王城の縁から見つめていた少年に、常日
頃家臣団を閉口させる騒がしさは無く、ただポカンと口を開けて呆
然としていた。
やがて聖騎士は王城に辿り着き、下馬する。
騎士団の一糸乱れぬ敬礼の中を抜け、王の待つ広間へ。
重臣団の畏敬にも似た礼に応え、王の前に立った。
シャスラハールは王家の人間としてその場所に居あわせる事が出来
たが、その際も聖騎士の事を見つめ続け、手を引いてここまで連れ
て来てくれたアリスレインに苦笑されていた。
王が口を開く。
﹁我が王国の誉れたる騎士よ、そなたの名を聞かせよ﹂
重く威厳のある声に、聖騎士は凛とした声で答えた。
﹁騎士ヴェナルローゼ、ただいま帰還いたしました﹂
ヴェナの勇名はスピアカント国だけに止まらず、周辺諸国へと響き
渡った。
その結果諍いの絶えなかった周辺国との小競り合いは止み、スピア
カントはしばらくぶりの平穏を手に入れる。
王家は彼女を王城に留め置く事で他国への威とし、睨みとした。
その結果、王城に住まうシャスラハールと王城を守るヴェナは出会
537
う事になる。
ある日、木漏れ日の中アリスレインに庭へ連れ出されて勉強をさせ
られていた少年の前に、国一番の騎士が立ったのだ。
﹁アリスレイン様、シャスラハール様、お早う御座います﹂
金髪を揺らしてお辞儀をするヴェナの年相応に甘い笑顔に、シャス
ラハールは心臓を跳ねさせる。
﹁ヴェナルローゼ! あぁ良かったわ。貴女とお話がしたいとわた
くしはずっと思っていたのです。シャスも貴女の事が大変気になっ
ていたようですよ。ね、ほらシャス。きちんと御挨拶なさい﹂
シャスラハールは目の前に立ってこちらに笑いかけてくれる女性の
顔を、まともに見る事が出来なかった。
アリスレインとヴェナの年齢は同じ。
二人には打ち解けるものが有ったのかすぐに仲良くなった。
しかしシャスラハールはいつまでも︱︱
﹁シャス、ちゃんと挨拶なさいっていつも言っているでしょう﹂
ヴェナを前にすると緊張で固まり、心臓が鳴り響いて上手に言葉を
発する事が出来なかった。
大好きな姉と姉の親友。
二人が陰に日向に少年の事を見守り、あっと言う間に数年が過ぎた。
ゼオムントが他国を侵略し、併呑して回っている。
その矛先は少年の住まうスピアカントにまで伸びて来ていた。
スピアカントは初戦で惨敗し、王家の男児と大規模戦力を投入した
次戦では壊滅的な敗北を被った。
いずれの戦いにもヴェナは参加しなかった。
彼女自身は強硬に出征許可を求めたが、首都及び王城の守りの任か
ら移されることは無かった。
王家の者が求めたのか、大臣が決めたのか、民衆が懇願したのか、
ヴェナは最後の最後までシャムネイルの門を出る事無く戦争を終え
た。
王家は降伏し、アリスレインをはじめとする王族の女性を差し出す
538
ことを条件に許された。
ヴェナがようやく門をくぐれたのは、アリスレインを護衛しゼオム
ントへ護送し献上するという屈辱的な役目を果たす時だった。
アリスレインと共にシャスラハールを城下へ逃がしたのは、自分を
見る度に顔を赤くして逃げていく可愛い弟の様な少年に、彼の姉で
あり自分の親友であるアリスレインをゼオムントへ差し出す姿を見
せたくなかったからだ。
そうしてアリスレインがゼオムント王に献上され、護衛としてつい
ていたヴェナも同時に拘束される。
公娼制度の発表は、その日から一週間と経たない内に行われた。
アリスレインとヴェナは離れ離れにされ、恥辱の日々を過ごす。
聖騎士として保ってきた純潔も、名も知らぬ中年の薄汚い調教師に
奪われ、破瓜を経験したその日に五十名の男に膣内へ挿入され、い
ずれも膣内に精液を注がれた。
ヴェナは反抗的で手が掛かり、その分調教師に好まれる公娼だった。
二年の間に数千本の肉棒を咥えさせられ、出演した映像作品の数は
三百を超える。
いくら汚されても瞳に消えぬ炎を宿すヴェナを気に入り、調教師達
は作品内で何度も凌辱を繰り返した後、夜になると自分達で好き放
題その体を弄んだ。
その内、ヴェナの弱点をアリスレインと見抜いた調教師がいて、そ
の男は戯れにヴェナの尻穴を拡張している時に、アリスレインの映
像作品を見せつけてきた。
浮浪者に、精神錯乱者に、老人に、犬に、豚に、猿に、守るべき親
友が犯されている姿を見せつけられながら、ヴェナは絶叫し怨嗟の
轟きを上げながら肛門を限界まで拓かれ、その狂乱する姿をポッカ
リ開いた尻穴ごとしっかりと記録に撮られた。
そして悪夢の大祭が開催され、アリスレインは惨く殺される。
ヴェナは何度も生中継の映像に叫び、その度に笑う調教師と彼に銅
貨二,三枚の小銭を渡して彼女の膣に中出しする権利を買った男達
539
に凌辱され続けた。
ヴェナの心は半ば壊れかけていたが、面白がっていた調教師達は更
に追い打ちをかける。
アリスレインが殺され、死後もヤれる肉人形として飾られているバ
ンデニロウムへと全裸で縛ったヴェナを連れて行き、親友の亡骸を
犯す為に並んでいる男達の列に並ばせたのだ。
数十人規模の列が伸び、男達が一人また一人とアリスレインの亡骸
に挿入し精を放って行く様子をじっくりと見せた後、ようやくヴェ
ナ達の番が訪れる。
ヴェナは何度も何度もアリスレインの亡骸に謝り、面白がった調教
師達によって顔を親友の膣口に押し付けられた状態で、ヴェナ自身
の膣を犯された。
ヴェナの体が男達の激しい動きに揺らされる度に、アリスレインの
膣も揺れる。
ヴェナは謝った。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい︱︱
聖騎士に叙されたにも関わらず、何一つ守れずに、死後の親友の名
誉すら守れずに︱︱。
その日男達は一日限定の寄付としてヴェナをアリスレインの隣に繋
ぎ、バンデニロウムへと訪れた客達に解放した。
泣きながら親友の亡骸の隣で見知らぬ、それも親友の死を娯楽とし
て楽しんでいるような人間達に犯された事で、ヴェナの精神は崩壊
した。
廃人の様に輝きを失ったヴェナは、以後の撮影や公娼活動でまった
く反応を示さなくなり、その内に調教師達から飽きられ街中のゴミ
捨て場に捨てられた。
数人の浮浪者に肉人形兼暖房機代わりとして拾われ、薄汚れた肉棒
から放たれる精液と小便、そして腐ったパンを食って生きながらえ
ていた時、再会した。
簡素すぎる浮浪者の共同生活空間の前で、自分をいつも暖房代わり
540
に抱いて眠っている虱髭の太った浮浪者に札束を投げつけ、一人の
若者が入って来た。
別れた時十代の半ばだった少年はまだ小さかったが、数年ぶりに出
会った彼は大きく成長し、目に大粒の涙を湛えてこちらに手を差し
出していた。
﹁ヴェナ⋮⋮﹂
初めてだった。
いつも照れて逃げ出していた少年がそうやって自分の事を呼んでく
れたのは。
垢と精液で汚れたヴェナの顔を撫で、その体を抱き起して、
シャスラハールはヴェナの胸に顔を埋めて言った。
﹁ヴェナ、僕を守って。僕と一緒に、ゼオムントと戦って⋮⋮!﹂
あれから、表立っては調教師と公娼と言う関係になり、二人は何度
も肌を重ねた。
今こうしてマルウスの里近くの林で立ったまま苦も無く性行為をし
ているのも、お互いに慣れた関係であるからだ。
一度死んだはずのヴェナの心を甦らせ、聖騎士としての役目を再び
与えてくれた少年に、無上の忠誠を。
ヴェナは既に一発注ぎ込まれた膣に力を込める。
﹁あぅ! ヴェナ⋮⋮!﹂
この少年の為に全てを捧げる。
体も命も剣も魂も。
少年の肉棒が脈動し、精液が子宮へと注がれてくる。
これで、後八発。
シャスラハールの宿した奥の手の発動をこの手でアシストできるの
はここまでだが、自分は聖騎士としてやるべき事を果たす。
それがこの人に、この人の姉と国に報いる唯一の方法なのだから。
﹁殿下。それではわたくしは行って参ります。どうかご無事で、わ
541
たくしの良く知る殿下ならば、必ずや成し遂げられると信じており
ますわ﹂
最後にそっと少年の体を抱きしめて、聖騎士は林から離れていった。
﹁狂いの風か⋮⋮痺れの毒か⋮⋮どっちが良いかしらね﹂
ユキリスはマルウスの里を見下ろせる岩壁の上に立ち、錫杖を握っ
ている。
少し前に別行動をとったラグラジルの指示により、小賢しいマルウ
ス族を思考不能の状態に陥れ、公娼達のコントロールを失わせるの
が今の役目。
何の問題も無い。
ラグラジルに強化された魔法を用いれば、多少薄くはなるが里全体
に魔法を拡散させることは可能だ。
﹁痺れ毒にしましょう⋮⋮騒がしいのは好きじゃないわ﹂
そう言って錫杖を構えた瞬間、
﹁そこまでです﹂
凛とした女性の声が届いてきた。
ユキリスはゆっくりと振り返る。
見知った顔が少し離れた場所に立っている事に、軽く目を見開いて
から、口を開く。
﹁ヴェナさん⋮⋮。どうしてここに?﹂
錫杖を胸の前に置いて、語り掛ける。
﹁色々と有りましたの、わたくし共の方でもね﹂
ヴェナは駄剣を一本腰に提げ、簡素な男物のプレート鎧を身に付け
た状態で立っている。
﹁ユキリスさん。単刀直入に申し上げますわ。手を退いて下さらな
い? 察するに貴女がここでやろうとしている事は、シュトラさん
達の身柄をラグラジルに献上する為の行動なのでしょう。それはす
ぐに無駄になりますし、わたくし共の予定と噛みあわせがよろしく
542
ありませんの﹂
言葉遣いは落ち着いたものだが、そこに込められた傲慢さをユキリ
スは感じた。
﹁ヴェナさん、貴女が何をどこまで知っているかはわかりませんけ
れど。私はもうマシラスの山で貴女達と別れた時の私ではありませ
んよ? 魔力は数倍に増え、技の種類も増えました。単純な戦闘力
だけで言うならば主人であるラグラジル様よりも上なのです﹂
ユキリスは錫杖をヴェナに突き付け、静かに言った。
﹁そうだ⋮⋮。ヴェナさんもラグラジル様に強化して頂いたらどう
でしょう? 力は増え、その分絶望が減ります。希望を失った私達
にはもう、あの御方が授けて下さる力に縋るしか未来は無いのです﹂
その言葉に、ヴェナは首を振った。
右手を胸に当て、瞳を強くする。
﹁西域の魔天使か何だか知りませんが、そのような雑多な﹃何者か﹄
の加護など必要ありませんわ。わたくしには﹃聖騎士﹄の加護があ
り、未来のスピアカント国王の信があります。⋮⋮元より会話でど
うにかなるなどとは思っていません。さぁ、そこな邪の魔導士よ⋮
⋮聖騎士の名に於いて成敗してくれましょう﹂
ヴェナは駄剣を握り、ユキリスへと向ける。
魔導士はその仕草を見て、一瞬で行動に移った。
﹁︽鋭毒︾!﹂
錫杖を振りぬき、不可視の毒の弾丸を放出する。
鋭く肌を犯し、体内組織を腐らせる毒魔法。
ラグラジルの力により魔力を強化された今の自分が放ったソレなら
ば、一撃で相手を殺す事が可能だろう。
毒の弾丸は一直線にヴェナを目指し、襲い掛かる。
﹁なっ⋮⋮! そんなっ﹂
聖騎士はそれを、駄剣の一振りで打ち払った。
ユキリスは驚愕に顔を歪ませ、次々に︽鋭毒︾を放つ。
五発、十発、ニ十発。
543
いくら放っても、必殺の弾丸はヴェナの体に届かない。
﹁どうして⋮⋮私、強くなったのに⋮⋮絶望しなくて済むくらいに、
強く⋮⋮強く﹂
喘ぐ様にして言うユキリスに向けて、聖騎士は一歩前に進みながら
言った。
﹁確かに、魔力の総量や威力は増しているのでしょう。貴女が自信
をつけるのも理解できますわ。けれどね、ユキリスさん。︽聖騎士
︾とはそんなレベルじゃないのです﹂
手にした駄剣を軽蔑の目で眺めてから、ヴェナは笑う。
その表情を見て、ユキリスは恐怖に青褪め、錫杖に魔力を込める。
﹁うああああああああああああああっ!﹂
︽劇毒︾が︽狂奔︾が、そしてラグラジルより新たに授かった︽闇
︾の魔力が展開される。
それらが向かって来るのを眺めながら、ヴェナはさらに続ける。
﹁聖剣を失い、このような駄剣では聖騎士の本領を発揮する事もで
きませんが、それでもなお︱︱﹂
ヴェナは襲い来る三色の魔法に向け剣を閃かせ、その全てを一刀両
断し、霧散させた。
﹁わたくしは貴女よりも遥かに上なのです﹂
スピアカント王国の聖騎士ヴェナルローゼは、この大陸に轟く勇名
に於いて三指に入る存在である。
その刃が向かう先は常に、自らを亡者の淵から救い出し、聖騎士と
して信頼を寄せてくれるシャスラハール王子の敵へと向いている。
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今は、まだ︵前書き︶
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545
今は、まだ
シャロンが騎兵隊の足止めに、ヴェナがユキリスの牽制に向かった。
そうすると残りの五人でラグラジルを相手取らなければいけない。
﹁騎士長、どうします⋮⋮?﹂
セナは渋面を作って上官へと問いかける。
﹁シャロンの話だと、ラグラジルは面妖な術を扱う厄介な相手では
あるが、直接的な戦闘力は何者かに封印されているらしいな?﹂
ステアは腰に手を遣り、考え込む姿勢を取る。
﹁面妖な術と言えば、別の空間に連れ込まれたり閉じ込められたり
って言うのが厄介ですね。こちらに向かってくる攻撃だったら回避
すれば良いけど、ラグラジル自身がどこかへ隠れちゃったら手の出
し様が無いですもん﹂
戦友の話から判明したラグラジルの技は、
異空間への移動。
質量のある幻影の召喚。
糸状の闇を操っての拘束。
魔鏡による過去や遠隔地の投影。
魔力付与。
の五つだ。
﹁だがはっきり言って、それ以外の四つの能力に関しては直接戦闘
に置いてさして脅威にはならない⋮⋮か﹂
幻影や闇の糸がもしかすると厄介かもしれないが、来ると分かって
いれば対処できる代物だろう。
﹁やっぱり異空間に逃げ込まれる前に捕獲するのが一番ですよね﹂
﹁そうだな⋮⋮気絶させるのが一番だが、それは高望みかも知れな
い。わたしと君、そしてリセ君で追い込んで、最後は殿下に任せる
しかないだろう﹂
546
﹁でもその前にどうやってラグラジルを見つけるかっていう問題が
ありますね﹂
﹁そこはハイネア王女に魔力を探ってもらうしかない⋮⋮大丈夫だ、
ヴェナ様がユキリスを押さえてしまえばラグラジルは必ず行動を起
こす。その時王女に見つけてもらい、我らで奇襲を仕掛ける。そう
考えるともうあまり時間は残っていないな⋮⋮﹂
二人の騎士による作戦会議。
その後方では、年若の男女三人が絡みつく様にして肌を合わせてい
た。
﹁んんっ⋮⋮ふっ⋮⋮奥まで入ったようだな⋮⋮シャスよ、妾の旦
那様よ。激しく動いて良いぞ、時間はあまりかけられないようだか
らのぅ⋮⋮﹂
ハイネアはシャスラハールと性器同士で結合した状態で、苦笑しな
がら言った。
﹁本来ならもうちょっと趣のある⋮⋮そうよな、せめて天蓋付のベ
ッドくらい欲しいところなのだが、事が事よ⋮⋮好きに抱いてくれ
て構わぬ。いずれお返しをしておくれよ?﹂
幼い顔に精一杯の強がりを浮かべて、ハイネアは笑いかける。
公娼として、数限りない凌辱に遭い、数多の肉棒に犯されてきた自
分の運命を変えてくれるかもしれない男性。
彼の為、自分の為。
そして、自分に献身的に付き従い常に共にある少女の為。
ハイネアは腹下に力を入れ、膣口を懸命に締める。
自分と今繋がっている黒肌の王子の顔は見えない。
そこには短い黒髪をした少女が唇で重ねているから。
地面に横たわったシャスラハールに対して、ハイネアが騎乗位で乗
っかり、リセが全身で寄り添うようにして口づけをしている。
全ては、未来のために︱︱
547
ハイネアはリネミア神聖国の王家に生まれ、少々厳格に育てられた。
家族がいて、家臣がいて、お目付け役がいて、教育係がいて、給仕
係がいて。
挨拶の礼儀作法から、勉学、食事、対話術についてまでも厳しく教
え込まれ、閉塞感に包まれた暮らしを送ってきた。
周囲の全てが自分の行動を見咎め、冷たく注意してくる環境の中で、
たった一人だけ温もりに溢れた三つ年上の侍女がいた。
城勤めの兵士の家に生まれ、リセと名付けられた少女はハイネアが
誕生した時に三才だった。
国中が新たな王族の誕生を祝う間に両親の手を離れ、ハイネアの友
人件付き人として育てられるべく王宮へ預けられた。
表向きは王家への忠誠の証に娘を捧げるとして。
その実、単なる口減らしであった事は誰の目にも明らかであった。
ハイネアが物心ついた時から、常にリセは共にあった。
政争に明け暮れ娘を顧みてくれぬ母親の代わりにあやしてくれた。
教育係に厳しく叱責され、部屋の片隅で泣いていた時には慰めてく
れた。
夜に尿意で目が覚めた時、ベルを鳴らせばすぐにやって来て不満一
つ言わずに笑顔でトイレまで手を握って付いて来てくれた。
甘い焼き菓子を作ってくれた。
寂しい時は一緒に寝てくれた。
ハイネアはリセが大好きだった。
周囲のプレッシャーに押しつぶされそうになっても、この心優しい
侍女が共に居てくれる心強さを支えに生きてきた。
ゼオムントによる侵略で、リネミア神聖国は滅んだ。
ハイネアは捕らえられ、それを救おうとしてリセも捕まった。
そうして二人は公娼へと堕される。
自由性交生徒。
548
公娼の中でも若く教育期にある者にだけ指定される役割。
一つの学校に入学し、そこの生徒や教師、保護者に向けて公娼活動
を行う役目を持った公娼。
ゼオムントは国王の民衆に対する偏愛から教育制度も充実しており、
最新の技術を用いた校舎作りや清潔な学生服の生産、教育資料の製
作などが行われ、国の隅々までに学校事業を展開していた。
ハイネアは首都にあるあまり進学率の高くない学校に﹃贈﹄られた。
入学式の日、校長や生徒会長、新入生代表や父兄代表が壇上に登っ
て様々な挨拶をこなした後、最後にハイネアは登壇させられた。
自由性交生徒として。
これから三年間この学校で過ごしていく抱負を語らされた。
自分の高貴な出自を、自由性交生徒の役割を、自らの性体験を語り、
最後には
﹃皆さんと早く仲良くなりたいので、在校生の先輩方も新入生の皆
さんも、どうか私をたくさん使って下さい﹄
そう書かれた原稿を読まされ、裸に剥かれ参列者すべてに向けて立
礼をさせられた。
それからの毎日は地獄だった。
一年生の間はとにかくされるがままの玩具になった。
授業中も休み時間も関係なく犯され、一学期の間に学校内から童貞
の生徒は居なくなった。
男子生徒たちは獣の様にハイネアの未熟な躰を犯し、心を塗り潰し
ていった。
この学校には一般の女子生徒も通っていた為、彼女らにも利用され
た。
裸のまま学外に連れ出され、他校の生徒や彼女達の知り合い相手に
セックスさせられ、そこから生まれる僅かな金銭は全て少女達の飲
み食いに消費された。
549
自由性交生徒は下校できない。
家を持たないから。
兎さん小屋の隣に立てられた﹃マンコちゃん小屋﹄に裸で住まわさ
れ、毎朝﹃マンコちゃん係り﹄の生徒が迎えに来て、自由性交生徒
委員会が月ごとに制定する制服とはとても呼べない端切れを着せら
れて教室に連れて行かれる。
そして最終下校時刻まで散々全身を弄ばれて、また係りの生徒に小
屋まで連れて行かれて閉じ込められ、鍵を掛けられる。
食事は教室でとる給食と、夜に用務員が見回りに来た時にセックス
の代償として置いていく冷めたパンとスープだけだった。
週末、学校に誰も居なくなる時は教師によって連れ帰られる。
休みの間も一日中歳の差が倍以上ある大人達の黒く歪んだ欲望の捌
け口にされ、性器を休める事が出来ず、また翌週から始まる恥辱を
迎えるのだった。
二年生になると状況が変わる。
ハイネア自身が自由性交生徒委員に選ばれたのだ。
この学校をよりよくして行く為にはどうすれば良いか、ハイネアの
膣をどう使えば皆が幸せになれるかの会議に参加させられた。
新一年生の全男子を対象とした童貞喪失活動や、保護者会を開いて
学校内で活動する自分の公娼としての働きを映像魔術で記録したも
のを流し、そのまま実践活動として犯される。
そして三年生。
ハイネアは教師陣から生徒会長に推薦され、ハイネアを﹃汚物﹄と
吐き捨てる潔癖な女子候補との激しい選挙戦の末に当選した。
選挙戦はもちろん膣や口、肛門など体の全ての穴を駆使して戦わさ
れた。
ハイネアの支持層はほぼ全ての男子。彼らの票を得る為に体を捧げ、
対立する女子からの妨害活動と言う名の陰惨な責めを受けた。
﹃マンコちゃん小屋﹄の鍵を外され、夜間や早朝に一般人がハイネ
アの眠っている小屋に入れるようにされたり、給食に妊娠補助薬を
550
盛られたりした。
就任したハイネアは全校生徒の見本になるべき生徒会長という立場
と、同時に全校生徒の蔑みの対象である自由性交生徒という立場、
相反する二つの席を押し付けられて、これまで以上に働かされた。
その一例として、授業巡回という制度があった。
授業中に居眠りする生徒が後を絶たず、教師陣は頭を抱えていた。
そんな時、提案されたのが授業巡回。
授業中に刺激的な事が起きれば、眠気も吹き飛ぶだろうという名目
で始まった。
朝一番と昼食後の二回、最も居眠りが多発するそのタイミング。
ハイネアの生徒会長兼自由性交生徒としての活動が始まる。
授業中の一年一組の扉が開き、首元にリボン、左乳首に校章、足元
に白の靴下を身に着けただけのハイネアが入って来る。
そうして四つん這いになり、扉に近い席から順々にゆっくりと教室
中を回って行くのだ。
﹃かいちょー! 消しカス溜まってたんだ。捨てさせてもらうねー﹄
ある生徒は暇に飽かして作っていた消しカスの塊を、白くなめらか
なハイネアの尻肉を押し開いて肛門の中へと放り込む。
﹃うりゃ⋮⋮うりゃ⋮⋮おぉぉ、根元まで入った、会長やるじゃん﹄
横を通過していくハイネアの膣に鉛筆を挿入し、子宮口まで届くか
のように深くグニュグニュとかき回す。
ハイネアはそれらを必死に耐え、決められたペースを守りながら教
室中を四つん這いで移動し、一周し終えると次の教室へと移動する。
一年一組から三年三組まで︱︱
授業中に、自分のすぐ傍を四つん這いで肌を晒した美しい先輩が通
っていく。
効果は絶大だった。
ピークタイムの居眠りは減少し、試みは成功に終わったかと思われ
たが、当然居眠りをしていないだけで集中もしていないので試験の
結果は芳しい物では無く、教師陣は苦笑いした。
551
三年間、その全てを自由性交生徒として学校に辱められた。
しかしそれでも、彼女の心は死に絶えなかった。
一つの理由が有る。
夜に膣内に残留している乾いた精液をほじり出しながら﹃マンコち
ゃん小屋﹄から外を見ると、建物が目に入る。
学校のすぐ隣には、この地域を管理する公民館が存在していた。
その公民館をご当地公娼としての本拠地としていたリセは、そこで
飼われている。
ご当地公娼は特別なもので、住民全てが調教師の様な扱いになる為、
公共性の高い所に置かれるのだ。
リセは公民館の中で窓に押し付けられながら赤ら顔の地域住民に犯
されている。
そのリセが﹃マンコちゃん小屋﹄を見ている。
主従の視線が交錯し、どちらかともなく優しい笑みを浮かべあった。
どのような理由が有ったのか、主従はすぐ傍で絶望と恥辱に管理さ
れ、けれどもお互いの存在が目に入る事で、決して諦めなかった。
リセはハイネアを護る為に。
ハイネアは自分が諦めたらそこでリセも生きる事を諦めてしまうだ
ろうという確信から、最愛の侍女の為に。
主従は死にも等しい絶望の中、ただひたすらにお互いの存在の為に
戦い抜いた。
ハイネアの膣内に一度リセの膣内にも一度、そして先ほど主従の合
計四つの柔らかな手で一度。
シャスラハールの精は解き放たれた。
息を荒げているシャスラハールの股間に、ハイネアとリセの顔が寄
る。
﹁口でしてやろう⋮⋮シャス﹂
﹁失礼します、殿下﹂
552
主従の柔らかな舌と唇が、射精直後の敏感な亀頭を刺激する。
﹁あっ⋮⋮く。二人とも⋮⋮お願い﹂
シャスラハールは迷わない。
ルルが施してくれた︽誓約魔術︾の発動の為に、後五回の射精が必
要になる。
ラグラジルを堕とし、ユキリスを取り戻す。
その後ラグラジルの力を利用してラクシェとアン・ミサに挑む。
そしてラクシェ達がいる﹃天兵の隠れ里﹄という地に囚われている
だろうフレアを救いだす。
ゼオムントの調教師達に仕組まれただけだった今回の﹃西域遠征﹄
で、見せかけだけの希望で反乱を誘発され、自分達は追い込まれて
しまった。
けれど天使達の力を得て、形勢を逆転できるのなら、反乱は夢で終
わらない。
成し遂げられる。
自分と、公娼にされた全ての人間の願いを叶えられる。
今自分の肉棒を左右から吸ってくれている二人の少女。
温もりと柔らかさ、そして確かな信頼を感じる。
この二人もかつて陰惨な調教に遭い、心に深い傷を負っているはず
なのに、こうして自分の為にその身を捧げてくれている。
自分にはやらねばならない事が有る。
奉仕を続ける二人を縛る過去を払い、未来を創る義務がある。
﹁そろそろ⋮⋮出ますっ﹂
シャスラハールは二人の頭に柔らかく手を乗せ、撫でる。
﹁うむ⋮⋮良いぞ、たんと出せ。妾が受け止めてやろう﹂
﹁はい、いつでも大丈夫ですので﹂
ハイネアが、リセが笑顔で頷いたのを見て、シャスラハールは目を
瞑り、
発射した。
ハイネアとリセの顔の中間で爆ぜた精液は、両者の顔に掛かり白く
553
染めあげる。
﹁それでは、ひとつラグラジルとやらの気配でも探ってくるかのぅ﹂
﹁ハイネア様、お供いたします﹂
放出されずに尿道に残った精を二人がかりで吸い出した後、立ち上
がった主従は真剣な顔で言って、動き出した。
ハイネアとリセの背中を見送り、シャスラハールは地面に倒れ伏し
たまま思考する。
ラグラジルの気配を見つけ、追い込んだとして、最後は自分が決め
なくてはならない。
奇怪な魔法を駆使するラグラジル相手に、どうやって立ち回り︱︱
その膣に誓約の精液を流し込む事が出来るか。
やはり事は一瞬を争うだろう。
挿入し、その直後に射精するのが望ましい。
シャロン達三人を相手に攪乱したという西域の魔天使の力は予測で
きない。
一瞬の隙をつき、一撃で決める。
その為には、
﹁ギリギリまで昂らなければっ!﹂
つい口に出して叫んだシャスラハールの方へ、二つの視線が向いて
いる。
﹁アンタ何言ってんの⋮⋮?﹂
セナが冷めた視線でこちらを見、
﹁⋮⋮あまり時間が有りません、殿下。次はわたしで﹂
淡々とした表情のステアが歩み寄ってきて、シャスラハールの上に
跨ってきた。
王子は慌てて萎えかけていた肉棒に気合を送り、屹立させる。
ステアは躊躇なくその上に腰を沈め、性器同士で結合させる。
﹁はぁんっ⋮⋮! 殿下、どうかそのままお聞きください﹂
554
ステアは激しく腰を動かし、膣口を締め上げながら言う。
﹁ハイネア王女が⋮⋮んんっ! ラグラジルの気配を掴みましたら、
わたしが先制をしかけ、リセ君に追撃をかけてもらいます。あぁっ
⋮⋮、そして殿下はセナと共に隠れていていただき、ふっんんっ!
あひっ、ラグラジルの隙をついて下さい。我らが全力でラグラジ
ルを押さえ込みますので⋮⋮あふぁん! 殿下は、何としてもかの
者に誓約の楔を打ち込んで、ああああああっん!﹂
連続して刺激を与えられ続けて来たシャスラハールの肉棒は、まる
で初物の様な早さでステアの膣内に精を解き放った。
﹁はぁ⋮⋮はっ、りょ、了解です⋮⋮﹂
その分、体力は削られ、力の無い表情で地面に横たわったまま、黒
肌の王子は頷いた。
ステアはチュポン︱︱と肉棒を膣内から引き抜いて、優しく握りし
める。
﹁本当ならばもっと長く、愛情深くお世話して差し上げたいのです
が、此度は時間が御座いません、殿下。我が手淫にて疾く達されま
せ﹂
騎士長ステアの得物は槍である。
柄を握り、滑らせ、操って刃先で敵を貫く。
その技は、こういう場面にも活きて来るのだ。
﹁あああああっ! あぅ! で、出ますっ!﹂
﹁騎士長⋮⋮流石です﹂
シャスラハールが雄たけびを上げながら腰を跳ねさせ、セナが感嘆
のため息を漏らす。
噴出する精液を口で受け止めながら、ステアは勝ち誇った笑みを浮
かべる。
手で優しく肉棒を撫で擦って、立ち上がる。
﹁さて、セナ後は頼むぞ。殿下を護衛しつつ、ラグラジルとの邂逅
までにあと二回、射精の導きを。わたしは行く。ハイネア王女達の
近くですぐに動けるようにしておかないと。ラグラジルを発見した
555
時にはリセ君に呼びに来てもらうので、それまでに頼んだぞ﹂
そう言ってステアは槍を握り、歩き去って行った。
残されたのは、シャスラハールとセナ。
西域で出会い、王と騎士の誓いを最初に果たした二人。
セナは皮肉気に眉を垂らして一つ年下の少年に問う。
﹁どう? まだまだ奥の手の限定解除︱︱性欲の消失は来ない?﹂
これまで五人の仲間達による合計十回の連続射精。
十三回と言うシャスラハールの自己申告を信じた上でやってきた回
数だったが、正直充分だろうという思いも有ったし、成り行きとは
言え自分が最後になった事も実を言えば悔しかった。
それ故の皮肉。
﹁あー⋮⋮そうですね⋮⋮正直ちん︱︱ここ赤くなってきて少し痛
みが有ります﹂
そう言って苦笑いしながらシャスラハールは立ち上がる。
﹁んじゃもうやめとく? 肝心のラグラジル相手に出なかったら意
味ないしさ﹂
視線を逸らして、少し早口で言う。
心に何か引っかかりがあった。
目の前で彼が仲間達と次々に繋がり、快感を得ていく姿を見ていく
内にこみ上げてくる棘々しい感情。
自分が何に拗ねているかが理解できず、セナは斜に構えた態度をと
った。
そんな彼女に、少年は真剣な表情を浮かべて一歩近づく。
﹁でも、それでも︱︱﹂
シャスラハールの一つだけしかない手が、セナの肩を掴む。
﹁これだけ色んな方に奉仕されて、それでも尚こういう事を言うの
は⋮⋮ちょっと自分でも恥ずかしいんですけど﹂
少年が、か細い声で呟く。
556
﹁僕は⋮⋮セナさんが許してくれるのなら、貴女と一つになりたい
⋮⋮﹂
特徴的な赤い髪と頬が同色に染め上っていくのを感じながら、騎士
は喘ぐ様に言った。
﹁アンタ⋮⋮な、何言って︱︱﹂
肩に置かれた手の平から発せられる熱を強く感じながら、首を振る。
﹁い、いい今はやるべき事があって、その為に皆が必死になってア
ンタを射精させて︱︱﹂
﹁わかってますっ!﹂
思いの外、大きな声が辺りに響いた。
﹁わかってますよ。皆が僕の為にその身を捧げてくれた事も、その
期待に応えなくちゃいけないって事も。けど僕は⋮⋮僕は⋮⋮﹂
少年の顔が下を向き、声はさらに弱弱しくなる。
﹁セナさんと出会ったあの日、あの場所で貴女と誓った事を覚えて
います。それからずっと、一緒に旅をしてきて⋮⋮ずっと貴女の事
を見ていました﹂
セナが父親を殺し、シャスラハールと出会った日。
二人は王と騎士の誓いを交わし、体で契った。
﹁僕は⋮⋮僕はっ!﹂
少年の昂った声が続く言葉を発しそうになった時、セナは顔を寄せ、
その唇を奪った。
﹁んんっ!﹂
長く深くその口に吸い付きながら、セナは思う。
もしかしたらこの少年の心と自分が抱いている感情は同じなのかも
しれない。
そう思えると心が温かくなるし、棘が全て抜けていく。
けれど、今はその時ではない︱︱。
もし自分の言葉が、態度がこの少年にその言葉を紡がせようとして
しまったのなら反省しなくてはいけない。
今はやるべき事が有るのだ。
557
仲間達が命を削って戦っているこの状況を抜け出した時、改めて言
葉を交わそう。
セナは心の内側で、そう誓った。
﹁⋮⋮ぷはっ! はいはい、その話はあとあと。さっ! するんな
ら早くするわよっ! いざという時に間に合わなかったーなんてな
ったら目も当てられないわ﹂
ゆっくりと少年の体を仰向けに押し倒しながら、赤髪の騎士は微笑
んだ。
﹁おねーさんが優しく抜き抜きしてあげるわ﹂
朗らかに言って、少年の分身を優しく自らの内側に導いた。
558
今は、まだ︵後書き︶
お気に入り登録して頂いている方・更新を追って頂いている方
いつも読んで下さって有難う御座います。
予定では後30話程で終了します。
三月中の完結を目指したいので少し更新ペースを早めていきたいと
思います。
読み飛ばし等にご注意ください。︵一日に複数更新はありません、
24時間は必ず空きます︶
559
誓液︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
560
誓液
冷たい地面の上であっても、セナは温もりを感じた。
一度の射精を経て、今シャスラハールとセナは正常位で繋がってい
る。
唇同士が忙しなくぶつかり、手指はきつく絡み合っている。
﹁はぁっ⋮⋮はんぁっ! セナさん⋮⋮セナさんっ!﹂
自分の名前を呼びながら、何かの想いをぶつける様にして腰を振っ
てくる少年の姿が、途轍もなく温かい。
﹁うん⋮⋮うん。シャス。シャス⋮⋮﹂
何が﹃うん﹄なのか、わかってはいても具体的には言えない。
今はまだ、言ってはいけない。
﹁くっ! はぁぁ、出ます。セナさんの膣内に⋮⋮出ますっ!﹂
上ずった声でシャスラハールが吠え、数秒の後にセナの膣内に熱い
液体が注ぎ込まれた。
﹁あぁ⋮⋮んん。出たね⋮⋮十二回目。これで︱︱﹂
見れば、シャスラハールの下腹部に、刻印が浮き上がって来ていた。
﹁魔術の刻印⋮⋮これで限定は解除されたのね﹂
﹁はい。たぶんこれで大丈夫だと思います。ルル⋮⋮。君の授けて
くれた力、使わせてもらうよ﹂
シャスラハールは勢い込んでそう言ったかと思うと、ヘナヘナと体
勢を崩し、セナへと覆いかぶさった。
﹁ちょ、ちょっと!﹂
﹁すいません⋮⋮流石に少し疲れが⋮⋮ほんの少し休めば大丈夫で
すから⋮⋮﹂
キスをするわけでも、肌を撫でるわけでも無く、王子は荒く呼吸し
ながら騎士の体の上で休む。
﹁仕方ないわねー。ちょっとだけだからね﹂
561
そう言ってセナはシャスラハールの背中に両手を回し、優しく抱き
しめた。
トクントクン︱︱と、互いの心臓の音をやり取りし、ゆったりとし
た時間が流れる。
お互いの体温を感じ、匂いを嗅ぎ、時を共有する。
その時、タタタッ︱︱という足音がこちらに向かって来ているのを
セナは感じた。
﹁シャス⋮⋮おしまい。立って﹂
その言葉に、少年は頷いた。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮はい﹂
ゆっくりと二人の体が離れていくその時、
﹁ラグラジルを発見しましたっ!﹂
リセの慌てた声が響いてきた。
﹁ユキリスちゃんの相手をしているのは、マシラスの山で捕まって
た騎士よね⋮⋮﹂
黒髪を靡かせながら、ラグラジルは木々の生い茂った山裾で鏡像を
眺めていた。
ユキリスに指示を出し、マルウスの里を壊滅させた後に公娼を確保
する。
その手筈で動いていたのだが、思わぬところで邪魔が入った。
﹁チッ⋮⋮アイツ、相当強いわね﹂
ユキリスと対峙しているヴェナと呼ばれた女。
その力を推し量って舌打ちを零した。
現在ラグラジルの力はラクシェによって封じられている。
自分に出来る事は婉曲的な補助魔法ばかりなので、ユキリスの様な
下僕を作って戦わせるのが一番なのだが、どう贔屓目に見ても両者
の戦いではこちらの分が悪かった。
﹁さてと⋮⋮どうしましょうかね⋮⋮あの騎士を下僕に出来れば一
562
番なのだけれど︱︱﹂
その時、顎に手を当てて思考する彼女に向けて、何かが急速に迫っ
てきた。
﹁はぁっ?﹂
慌てて飛び退り、回避する。
今まで自分が立っていたところの近くの木に、短刃が突き刺さって
いた。
﹁むぅ、避けられたか⋮⋮慣れない武器はいかんな、確実性が無い﹂
女性の声。
そちらを向いて、ラグラジルは眉を曇らせる。
﹁見た顔ね⋮⋮あぁ、マシラスの山でさっきの奴が捕まってた時に
飛び込んできた槍使いか﹂
仕立ての良い騎士服を身に纏い、片手に槍を握っている姿に見覚え
が有った。
﹁ほぅ⋮⋮こちらを知っているのか。ならば話が早いかもしれない
な。ラグラジル、貴様を倒させてもらおう﹂
槍騎士が構えを取り、切っ先がこちらを向く。
その実力の程が垣間見える気迫に、ラグラジルは苛立った。
﹁貴女もそこそこやり手の様ね⋮⋮。まったく、運が無いわ﹂
﹁行くぞっ!﹂
槍騎士が勢いよく地面を蹴り、突っ込んでくる。
﹁くぅ!﹂
必死に身を捩って回避し、ラグラジルは手の平を翳す。
﹁邪魔なのよ! 人間族の肉便器の癖にっ! 自分の本来の役割を
思い出してさっさと汚い陰茎でもしゃぶりに行けばいいわ!﹂
魔力を放ち、操作する。
槍騎士の記憶を探り、その映像を投影する。
魔鏡が幾重にも展開し、槍騎士を包囲する。
そこに映し出されたのは、彼女の破瓜の瞬間であり、敗北の瞬間、
恥辱の瞬間、これまで公娼として過ごしてきたありとあらゆる場面
563
を再生させる。
﹁ステア⋮⋮ね。結構良いところの騎士様だったみたいだけど、映
像を見る限りでは惨めで汚い肉奴隷じゃない。そんな奴にワタシが
やられるわけないわ﹂
記憶を探った時に判明した名前を吐き捨てながら、ラグラジルは魔
鏡を更に展開させる。
﹁万華鏡って知ってるかしらね? 鏡像を多重に映し、人の脳と視
覚を混乱させるの。せいぜい思い出を巡ってオナニーでもしてれば
いいのよ﹂
鏡で隙間無くステアを覆いつくし、ラグラジルは安堵の溜息を吐く。
﹁計画は失敗ね。ユキリスちゃんを回収して︱︱﹂
自分の異空間へと繋がる門を広げようとした瞬間、
﹁はああああああぁっ!﹂
烈迫の気合と共に、槍が鏡を貫き、こちらへと迫って来ていた。
﹁効かんっ! 効かんよラグラジルっ! 所詮は幻影幻覚。前もっ
て心の準備をしておけば何の脅威にもならんっ!﹂
﹁チッ!﹂
門の作成を放棄し、身を投げ出して槍を回避する。
﹁何なのよっ! もうっ﹂
ラグラジルは二枚の翼を広げ、上空へ羽ばたいて逃げようとした。
その時、
シュッ︱︱という鋭い音と共に、二つの白刃が両翼を穿った。
﹁あぐっ!﹂
衝撃に姿勢を崩しながら見た先に、人間族の従者用衣装を纏った少
女が短刀を両手に握り、立っていた。
﹁ラグラジル。ハイネア様の為、シャスラハール様の為、そして私
自身の為に、貴女には倒されて頂きますっ!﹂
両手に刃を握り、迫ってくる少女。
そしてその後ろから槍を構えたステアも続いてくる。
﹁ふ、ふざけないでっ!﹂
564
ラグラジルは闇の糸を多重展開し、少女を絡め取ろうとする。
しかし身軽に一本一本踊る様に回避して、少女はすぐ傍にまで迫っ
てきた。
煌めく白刃をすんでのところで糸に弾かせ、回避する。
﹁体勢を立て直すしかっ!﹂
闇の門を足元に展開し、そこへ﹃落ちよう﹄とするが、
﹁ハッ!﹂
気合を込めた槍の一薙ぎが足元を襲い、跳んで避ける以外の方法が
無かった。
それから先は防戦一方。
少女の白刃が予測不能に襲い掛かり、何とか凌いだとしても槍の一
撃が油断なく自分の動きを制限してくる。
追い込まれている。
焦りが心を覆い、いつの間にか全身に汗をかいていた。
﹁せいっ!﹂
﹁ハッ!﹂
白刃と剛槍。
その両方を何とか回避し、距離をとる事が出来た。
今だ、今しかない︱︱
﹁さようならっ! 次に会った時は絶対に身も心も犯しつくして、
泣いて許しを請う様に調教してあげるわっ!﹂
闇の門を開き、最後の余裕を持ってそう告げた時、
﹁アンタがね﹂
ザンッ︱︱
横合いからの強烈な一閃を受け、闇の門ごと、肩から胸にかけてを
深く切り裂かれた。
木に背中を預け両足を投げ出した姿勢で、痛みと失血のショックで
呆然としている様子のラグラジルに向けて、シャスラハールは一歩
565
を踏み出す。
その隣ではセナが大剣に付着した血を払い、冷静に見つめている。
呆けた視線のラグラジルと目が合い、シャスラハールは意志の籠っ
た目で見つめ返した。
﹁ラグラジル⋮⋮これから僕は君を縛る。君の心を支配する。君が
奪っていったものを全て返してもらう。そして僕達がこれから先の
未来へ進むため、君には犠牲になってもらう﹂
シャスラハールは屈みこみ、ラグラジルのスカートを取り払い、そ
の下に穿いていた黒の下着をズラした。
ぴっちりと閉じた陰唇が晒される。
﹁あ⋮⋮あっ⋮⋮﹂
声にならない声でラグラジルが呻いた。
シャスラハールは辛そうな顔を浮かべ、口を開いた。
﹁一度だけしか言わない。これから先何が有っても二度と口にしな
い。覚えていたければ覚えていて︱︱ごめんなさい﹂
そう言って、シャスラハールはラグラジルの白い肌に手をかけ、そ
の秘部へと己の肉棒を突き入れた。
﹁あっ⋮⋮あぁ⋮⋮ああああ⋮⋮あ?﹂
ラグラジルの紡ぐ不明瞭な声。
圧し掛かって膣内を犯していくシャスラハール。
セナと遅れてやって来たハイネア、そしてステアとリセはジッとそ
の様子を見つめていた。
何かを成す為に誰かの生を縛る。
その行為の恐ろしさを、目に焼き付けている。
例えラグラジルが自分達に向けて容赦の無い悪意を向けてきた存在
であったとしても、人としての正しい心を捨てられなかった公娼達
にとってみれば、この作業は酷く気落ちするものだった。
﹁くっ⋮⋮うっ!﹂
やがて、シャスラハールが膣内で射精する。
その時、彼の下腹部に浮かび上がっていた刻印が淡く輝き、魔術の
566
行使を証明する。
今、ラグラジルとシャスラハールの間に制約がなされた。
西域の魔天使はこの瞬間から、スピアカントの王子シャスラハール
の下僕として生き続ける事を、強制されたのだった。
﹁⋮⋮ハイネアさん。ラグラジルの手当てを頼みます﹂
シャスラハールが身を引き、ラグラジルから離れていく。
コポォ︱︱と淫猥な音を立て、ポッカリと開いた魔天使の膣口から
精液が零れだしてきた。
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮どうですー? マリスはちゃんとお役に立てま
したよねー?﹂
肩で息をし、長い黒髪を汗で湿らせて肌に張り付けているのは傭兵
公娼マリス。
拭いきれない疲労を漂わせながら、口元だけで笑っている。
﹁えぇ⋮⋮私一人では無理な相手でしたし。ふぅ⋮⋮貴女の助力の
御蔭です﹂
そのすぐ隣で、シャロンが同様に息を荒げている。
二人はグヴォンが召喚したモグラ型の巨大な魔物と闘い、打ち破っ
た。
﹁あちゃー⋮⋮装備がボロボロです。マリスはこのドレスがお気に
入りだったのに⋮⋮﹂
東国風のドレスを身に纏っていたマリスは、モグラ型の鉤爪を何度
もかわしていく内に、少なからず衣装を削り取られ、胸と足が丸出
しになっている。
﹁せっかく皆から頂いたのに⋮⋮くっ﹂
シャロンもまた、リセから貰ったエプロンは引きちぎられ、ハイネ
アのケープも穴が開き、セナから譲られたスカートは縦に裂かれて
地面に落ちていた。
血が滲み、泥がこびり付いた肌を晒しながらも、二人はモグラ型を
567
打ち破った。
﹁それにしても⋮⋮逃げられてしまいましたか⋮⋮﹂
シャロンは歯噛みする。
モグラ型との戦闘中、こちら側が優勢になった瞬間にグヴォンは逃
げ出していった。
後続の本隊があるという事を言っていたので、恐らくそれと合流す
るのだろう。
﹁マリス達も早くお仲間と合流しましょうよー。これから敵さんの
本隊が来る事も伝えないといけないしー、マリスには良くわからな
いですが、皆さん何かをやっているのでしょー? お手伝いします
よー﹂
マリスが周囲に転がっているグヴォンの部下の死体から金品を奪い
ながら、言ってくる。
﹁えぇ⋮⋮もちろんです。殿下達と合流して、私達がここに戻って
来た目的を果たさなくては﹂
モグラ型との戦闘で刃こぼれが生じた駄剣を打ち捨て、死体から新
たに二本の剣を抜き取ってから、シャロンはマリスに合図して移動
を始める。
その遥か後方に、馬蹄と土煙が迫っている事を半ば予測しながら︱
︱。
﹁効かない⋮⋮これも⋮⋮これもっ! 効かないっ! 効かないの
? 何で!﹂
ユキリスは必死に魔力を紡ぎ、ヴェナへと撃ち続ける。
﹃劇毒﹄﹃狂奔﹄﹃闇﹄の魔法を組み合わせ、一発でも当たってし
まえば勝利が確定する隙間の無い弾幕を張りながら、不安に押し潰
される様に震えている。
﹁無駄です⋮⋮とは申しません。貴女は筋が良い。きっとこれから
先修練を積んで行けば、わたくしを倒す事も可能でしょう。ですが、
568
今日この場においてそれは不可能。諦めなさい﹂
駄剣を振るい、目に見えぬ魔力を打ち払いながらヴェナが前進して
くる。
元々、ユキリスの魔法もまたラグラジル同様に直接的なものでは無
い。
﹃劇毒﹄と﹃狂奔﹄は強力な魔法であるが、効果が限定されている
以上、その影響が届かない限りには何の意味も持たない。
聖騎士の祝福を受け魔術抵抗を持つヴェナの相手をするには、致命
的に不向きだった。
﹁ここで⋮⋮ここで希望をっ! ラグラジルを失うわけにはいかな
いっ!﹂
ユキリスは覚悟を決めた。
このままではヴェナに勝てない。
正常なまま、この戦いが続けば負ける。
それならば、異常を起こすしかない。
狂いを生じさせなければいけない。
錫杖に魔力を込める。
顔を俯け、詠唱を行う。
﹁キヒッ⋮⋮﹂
﹁ユキリスさん?﹂
不気味な笑いを漏らしたユキリスへと、ヴェナが訝しむ声を放つ。
その時、魔導士ユキリスの顔が上がった。
元々白かった顔色は真っ青になり、唇は紫に、目は一部の隙も無く
充血している。
浮かび上がった隈が化粧の様に目元を覆い、ただならぬ気配を醸し
出している。
﹁おねーちゃん⋮⋮だれー?﹂
幼い声が聞こえた。
ユキリスの声色をしてはいるが、これまで彼女が持っていた理知的
な響きを全て排除したかのような、無垢な声。
569
﹁ここはどこー?﹂
そう言って、ユキリスは錫杖に寄り掛かる。
﹁なんだかつかれちゃったなー﹂
﹁ひだりてがうごかないよー﹂
﹁おうちにかえっておにいちゃんとあそぶのー﹂
﹁そしたらさかながくさくってねー﹂
﹁わたしのぱんつとったのだれー?﹂
﹁やだーとらないでー﹂
﹁おまんこつかっていいからぱんつかえしてー﹂
﹁きのうはおじいちゃんとえっちしたー﹂
﹁きょうはわんちゃんとー﹂
﹁たくさんたくさん﹂
﹁えっちしないとごはんたべられないのー﹂
﹁でもえっちしたあとはごはんたべたくないのー﹂
﹁おえーって﹂
﹁おえええええええええええって﹂
﹁おぅえええええええええええええええええええええええええええ
えええええええええええええええええっ!﹂
意味不明な言葉を放ちながら、えずき始めるユキリス。
瞼から血を流し、全身を掻き毟りながら、魔導士は胃の中身を吐き
散らす。
それを見て、聖騎士は愕然とする。
﹁まさか貴女⋮⋮自分に﹃狂奔﹄を⋮⋮﹂
とても正気とは見えないユキリスの様子に、ヴェナは駆け寄ろうと
する。
﹁キヒヒヒヒヒッ! おええぇぇぇぇぇええええええええええええ
っ!﹂
ユキリスは胃の中身を吐きつくし、血をの混じった胃液を吐きなが
ら笑った。
﹁そーれ⋮⋮そぉぉぉぉぉれっ!﹂
570
錫杖を中心に、これまでに無い濃度の魔力が放出される。
種類は﹃狂奔﹄。
球状に魔力は広がって行き、その様子を見てヴェナは歯噛みする。
﹁勝ち目がないと見て、魔法によって己自身を暴走させましたか⋮
⋮っ! くっ、下がるしかないようですね⋮⋮﹂
あまりに圧倒的だった。
これまでユキリスが放ってきたどの魔法よりも強力で、聖騎士の加
護をもってしても耐えられそうにない威力。
﹁申し訳ありません、殿下⋮⋮。ユキリスさんを⋮⋮取り戻せませ
んでした﹂
魔法の範囲がどんどんと広がっていくのを見て、ヴェナは逃走する。
ヴェナが去った後も、範囲は拡大し、マルウスの里全体を覆う様に
展開していく。
その中心で、魔導士はいつまでもケタケタと笑い続けていた。
571
騎士団長︵前書き︶
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572
騎士団長
風が木々の間を抜けていくのを感じながら、シャスラハール達はハ
イネアの治療術を見守っていた。
ラグラジルに刻まれた深い傷はみるみる塞がり、健康的な肌を取り
戻す。
呆然としていた彼女の瞳に、意志が戻ってくる。
その目は、シャスラハールを見据えていた。
﹁⋮⋮﹂
無言で、ジッと見つめて来る。
﹁ラグラジル⋮⋮﹂
呻くように言ったシャスラハールへ向けて、ラグラジルの手の平が
翳される。
﹁貴様っ!﹂
ステアが吠え、体を割り込ませようとするも、その手の平からは何
も発生しなかった。
﹁はは⋮⋮ははは。ダメね⋮⋮お前を傷つける事が出来ない⋮⋮。
殺してしまえば、ワタシは自由になれると思ったのに⋮⋮﹂
魔力を集中させたはずの手の平に何の変化も起こらない事を嘆き、
ラグラジルは背にしていた木へとまた深く体を預けた。
﹁状況は理解しているようね?﹂
セナが警戒を解かず大剣を握ったまま問うと、魔天使は浅く頷いた。
﹁あぁ⋮⋮なんせこの体の事だからね⋮⋮誓約魔法か⋮⋮それも直
接内側に送り込まれてしまったのならば、いくらワタシでも取り除
く事は出来ない⋮⋮ワタシはもう、これから先そこのボウヤの奴隷
になるしかないのよ⋮⋮﹂
自嘲の笑みを浮かべて、魔天使は力なく佇んでいる。
﹁⋮⋮ラグラジル、命令する。今すぐにユキリスさんを僕らに返せ﹂
573
主人の真剣な声に、奴隷は首を振った。
﹁返すとか返さないとか⋮⋮そう言うのじゃ無いのよね。あの子が
力を欲したからワタシが与えて、その見返りに働いてもらう。ワタ
シがあの子を操っているわけじゃない。だから、取り戻したいのな
ら勝手にすれば良いわ。ワタシが負けた事を教えてあげれば、きっ
とそれで充分よ﹂
投げやりな言葉を放ち、視線を落とす。
﹁奴隷⋮⋮奴隷ね⋮⋮ホント、どうしましょう。とうとうあの御方
に会わせる顔が無くなっちゃったじゃない⋮⋮妹達も、ワタシがこ
こまで堕ちたと知ったら憐れんでくれるかしら⋮⋮無理ね。あの子
は冷たく﹃そう⋮⋮﹄って言って、ラクシェは喜ぶでしょう﹂
漏れる言葉に絶望が籠る。
シャスラハールは唇を震わせ、言葉を紡ごうとする。
その時︱︱。
﹁ダメだぞ、シャスよ﹂
ハイネアが厳しい表情で言った。
﹁同情するなとは言わん。けれどこの者の行いを鑑みて、シャロン
やユキリス、そして現在戻ってこないフレアに対して行った罪を忘
れるな。もし万が一フレアが死んでしまったならば、お主はこの者
を利用し尽くして、何も残らない程に搾り取って殺す。そのぐらい
の覚悟は持たなくてはいけない﹂
ラグラジルを見つめながら、小さな王女は強い声を放つ。
﹁そうでは無くては、逝った者も残された者も、救われはせん﹂
改めてラグラジルの命が自分の所有物になったという事実を確認し、
シャスラハールは目を瞑った。
その肩に柔らかな手が乗る。
振り返ると、リセが儚げな笑みをこぼして支えてくれていた。
もしかしたら自分は、少しだけヨロめいてしまったのかもしれない。
﹁大丈夫ですよ⋮⋮殿下。皆でどこまでも貴方とご一緒します﹂
その言葉に、シャスラハールは頷いた。
574
その時、木々が揺れる。
﹁何者だっ!﹂
ステアが音の方へ槍を向け、警戒態勢をとる。
﹁騎士長、私です。ただいま戻りました﹂
木々の間からシャロンが姿を現した。
﹁シャロン⋮⋮無事だったか⋮⋮っ! その恰好は?﹂
別れた時のチグハグな服装とは異なり、今の彼女は穴の開いたケー
プと手袋のみで、肝心の部位はほとんど丸見えだった。
ステアは咄嗟にシャロンの陰部を確認し、そこに凌辱の痕跡が無い
事に安堵する。
﹁少々手こずりまして⋮⋮でも、彼女が助けてくれたので窮地を乗
り越えられました﹂
そう言ってシャロンが振り返った先に、彼女同様ボロボロな恰好を
した黒髪の剣士が立っていた。
﹁いやはは。皆さまどうもお久しぶりです。マリスの事覚えてらっ
しゃいますか⋮⋮?﹂
照れたように笑いながら、言ってくる。
﹁⋮⋮忘れるわけないじゃない。無事で、良かったわ﹂
セナはしっかりとその顔を見つめながら、頷いた。
ベリスとの戦いの後、シャスラハール組とアミュス組は道を違えた。
その結果アミュスとヘミネが今どのような状況になっているか、先
日シャロンに聞いたばかりだったので、彼女達に同行していたマリ
スがこうして無事でいる事は、小さくない喜びだった。
﹁策って、マリスの事だったのね?﹂
﹁えぇ、どうです? 驚きましたか?﹂
﹁参謀が自軍を驚かせてどうする⋮⋮﹂
セナが言い、シャロンがおどけ、ステアが溜息を吐く。
﹁それで⋮⋮えーっと。こちらはどなたでしょう? マリスの記憶
にはちーっとも残ってないのですが﹂
マリスの無邪気な視線を追って、シャロンはその対象を見やる。
575
﹁ラグラジル⋮⋮﹂
﹁そっ⋮⋮貴女だったのね⋮⋮シャロンちゃん。あの時確実に堕と
しとけば、こんな目には遭わなかったかも知れないわね⋮⋮﹂
その言葉に、シャロンは厳しい視線を返す。
﹁ラグラジル。貴女は前に私に言いましたね? 復讐は正しい行い
だと。その言葉が真実ならば、今の私には貴女を斬る権利が有りま
す﹂
駄剣を突き付け、魔天使へと詰め寄る。
﹁いっそ⋮⋮殺してもらった方が楽かもしれないわね⋮⋮好きにす
れば﹂
魔天使は切っ先を見つめ、酷薄な笑みを浮かべた。
それを見てシャロンは苛立ったように眉を寄せ、駄剣を投げ捨てる。
﹁返して﹂
﹁え?﹂
﹁私の剣を返してください。マシラスの山で貴女が回収したのでし
ょう? ヴェナ様の聖剣も一緒のはずです﹂
そう言われ、ラグラジルはシャスラハールへと視線を移す。
奴隷である彼女の一挙手一投足は全て、主人である彼の許可が必要
なのだから。
シャスラハールが頷いたのを見て、ラグラジルは右手を虚空に曝す。
そこに闇の門が生まれ、シャロンの双剣とヴェナの聖剣の合計三本
が落ちてきた。
シャロンは愛用の武器を拾い、状態を確認する。
﹁それでワタシを斬るのかしら⋮⋮?﹂
問われ、
﹁⋮⋮いいえ。ラグラジル。貴女には償いをして頂きます。ユキリ
スとフレアを私達の下へ返してください。それが出来たなら、私は
貴女を許してあげます﹂
シャロンは言い切り、背を向けた。
﹁⋮⋮別に許されたいわけじゃないけれど⋮⋮もうワタシには拒否
576
権何てないのだから、やるだけやってみるわ⋮⋮﹂
諦観の態で魔天使は言った。
そこへ、
﹁皆さんっ! 急いでここから離れて下さいっ! ユキリスさんの
魔法が暴走しています﹂
血相を変えたヴェナが走り込んできた。
﹁どういう事?﹂
セナが訝しむ声を放ち、
﹁魔力が⋮⋮迫っておるっ!﹂
ハイネアが不穏な波動を感じ、声を荒げた。
切迫した事態を悟り、全員が慌ただしく動こうとした時に、シャロ
ンが口を開いた。
﹁ラグラジル﹂
﹁ワタシの主人は⋮⋮貴女じゃないんだけれどね⋮⋮﹂
嘆息し、一度主人の方を見て彼が何かに気付いたことを確認し、
指を鳴らした。
全員の足元に闇の門が開き、ラグラジルの持つ異空間へと落ちてい
った。
﹁何⋮⋮何が起きてるの⋮⋮?﹂
シュトラは雌車として牽引する荷車に連結された状態で、周囲を見
渡す。
出発前の洗車中だった為、目隠しはされておらず、肌に浮いた水滴
が冷たい事以外は自分の体に変化は無い。
けれど、自分以外。
血と、肉と、毛玉が辺り一面に広がっていた。
﹁食べてる⋮⋮﹂
マルウスが︱︱マルウスを。
長く鋭い歯で齧り、肉を削いで骨を砕いている。
577
自分を取り囲んでいた全てのマルウスが、そうやって共食いを始め
ていた。
﹁⋮⋮みんなっ!﹂
振り返り、他の雌車を見る、
そこでは全員が恐慌の表情を浮かべ、共食いを見ていた。
その時、シュトラの体に変化が起こる。
﹁頭が⋮⋮痛い⋮⋮﹂
思えば今日はまだ﹃お花﹄を補給していない。
シュトラ達をギリギリの飢餓状態にしてから禁断症状目前で大量に
﹃お花﹄の成分を膣に注ぎ込み、嬲る様に犯す事が最近のマルウス
族の流行だったからだ。
﹃お花﹄には強い催淫性と中毒性が有り、効果が切れ始めると頭痛
や幻覚が見え、指が無意識に股間を弄ってしまう。
けれどこの痛みは、いつも感じるそれよりも遥かに激しい。
脳を掻き毟る様な不快な衝撃が襲い、グッタリと身を横たえる。
﹁なに⋮⋮コレ⋮⋮殿下⋮⋮殿下ぁ⋮⋮﹂
シュトラは弱弱しく声を放ちながら、口から止めどなく流れる涎に、
苦しんでいた。
﹁ユキリスちゃんへの魔力付与を解除したわ⋮⋮これでたぶん、こ
の魔法の威力は弱まる﹂
異空間の中で、魔天使は呟く様に言った。
周囲に魔鏡を展開し、ユキリスとシュトラを映し出す。
﹁全体的には弱まってるけれど、それでもユキリスちゃんの近くは
だいぶ強烈な濃度を維持しているわね⋮⋮。マルウスみたいな低俗
な雑魚は余波で残らず狂っちゃったみたいだけど、公娼の方は無事
みたいね⋮⋮具合は悪そうだけど﹂
ラグラジルはそこまで言って、後は興味を失ったかのように黙り込
んだ。
578
﹁どうします⋮⋮?﹂
セナが問い、ステアが思考する。
﹁正攻法で行けばユキリスの魔力切れを待つべきだが⋮⋮シャロン、
敵の本隊がこちらに向かっているのだな?﹂
上官の言葉に、シャロンは頷いた。
﹁リトリロイという、ゼオムントの王族が一軍を率いてこちらに向
かっているようです﹂
グヴォンから仕入れた情報を伝え、事態の緊迫が深まる。
﹁仕方ありません。力が弱まったというのなら、もう一度わたくし
がユキリスさんへ接敵しましょう。この聖剣も帰って来た事ですし、
何とか耐えられるかもしれません﹂
ヴェナが腰に提げた聖剣を示して言った。
﹁ヴェナ⋮⋮しかし君がもしあの魔法にやられてしまったら、正直
僕達では君を止める事が出来ないよ⋮⋮﹂
聖騎士の実力を誰よりも良く知るシャスラハールからすれば、もし
この﹃狂奔﹄でヴェナまでもがユキリスと同じ様な状態になってし
まえば、残るもの達では太刀打ちできない事がわかってしまう。
﹁のうリセ⋮⋮お前の投剣ではどうかのう?﹂
﹁難しいと思います、ハイネア様。私の投剣術は近接戦闘の補助に
しかならない程度です。近寄れない事には⋮⋮﹂
ハイネアとリセが話し合い、そこにマリスが割り込んだ。
﹁あーじゃあじゃあっ。ラグラジルさんに闇の門を出してもらうん
ですよー。例えばユキリスさんのだいぶ上空とかに。そこからピュ
ーって落下しながら首を斬り落として、あの魔法を止めるんです﹂
へらっとした言葉に、セナが首を振る。
﹁殺さないわよ。どうにかしてユキリスも助けたいからこうやって
悩んでるんでしょうがっ!﹂
その言葉に、ラグラジルが続ける。
﹁それにワタシの異空間はある程度設置場所が限定されるから、こ
こから出られるのはさっき居た場所の近くだけ。改めて場所を変え
579
ようと思ったら外に出て陣地構築の魔術を使わないといけないわ。
空間転移も有るにはあるけれど⋮⋮あれは奥の手だから、この前ラ
クシェ相手に使ったばかりで回復しきってないのよね﹂
ありていに言って、手をこまねいていた。
その時、ユキリスを映している鏡に異変が生じる。
﹁光⋮⋮? いや、剣っ?﹂
ガキィン︱︱と激しい音がして、ユキリスの手から錫杖が飛んでい
く。
﹁あれ⋮⋮あれー?﹂
ぐるぐると渦巻く視界に、舌足らずな声。
﹃狂奔﹄に支配されたユキリスは、ままならぬ五感で危機を察した。
﹁なにー?﹂
タンッ︱︱と軽やかな着地音が自分のすぐ傍で鳴った。
﹁だれー?﹂
その人物は錫杖の傍に突き立っている︱︱先ほど投擲されてきた長
剣を抜き取り、ユキリスへと振り返った。
﹁⋮⋮公娼ね。だったら⋮⋮覚悟して﹂
長剣を握り、ユキリスへと一歩ずつ迫ってくる。
その瞳が苦悶を訴えながら、口が悲鳴の形を作りながら。
﹁我が陣に、連れ帰らせてもらうわ﹂
長剣の柄でユキリスの腹を思い切り殴りつけ、
﹁かはっ!﹂
気絶させた魔導士の体を肩に背負って、長剣を鞘へと仕舞い込む。
﹁リト。こっちは完了したわ⋮⋮。後はお願いね⋮⋮﹂
騎士公娼セリスはそう言って、歩き出した。
﹁占領せよっ!﹂
580
この地を覆っていた魔法が消え去ったのを確認して、リトリロイは
怒涛の勢いで進軍した。
﹁⋮⋮胸糞わるいな⋮⋮﹂
マルウスの里と呼ばれた魔物の集落は、完全に滅びていた。
ネズミ型の魔物達はお互いを食い千切り、犯し、揃いも揃って死に
絶えていた。
そしてその中に、頭を抱えて苦しんでいる人間の女を発見する。
﹁公娼⋮⋮だな﹂
下馬せぬまま、リトリトイは馬上から青髪の女が倒れているのを眺
めて言った。
﹁殿下、こちらにも!﹂
﹁こっちにもいますっ!﹂
﹁向こうには三人、木に磔られてました﹂
次々に報告が上がり、合計八人の公娼を確保した。
ゾートに脅された数としては、五人。
陣地に残っている二人の公娼と数を合わせて十人にもなれば、セリ
スの身も安泰だろう。
﹁よしっ! 公娼を集めよっ!﹂
そう言ってリトリロイが号令をかけた時、タンッ︱︱と軽い足音を
立ててセリスが上方から飛び降りてきた。
﹁⋮⋮これを﹂
近くにいた兵士に背負っていた公娼を渡し、リトリロイへと振り返
る。
﹁ご苦労だったね⋮⋮﹂
﹁ううん。仕方ない事よ﹂
二人は曖昧に頷き合って、帰投の準備をしようとする。
その時︱︱
﹁騎士団長っ!﹂
吠える声が響いた。
リトリロイもセリスも、他の兵士達もそちらを見る。
581
リトリロイを中心とした部隊から少し離れた所に、赤い髪を両結び
にした少女が立っていた。
その後ろには黒絹の肌をした少年がいて、更に周囲を取り囲むよう
にして七つの人影がこちらを向いていた。
﹁あっ⋮⋮⋮⋮﹂
セリスが呆然と声を漏らす。
﹁セナ⋮⋮﹂
かつてリーベルラントの軍神と呼ばれた彼女が率いた軍で共に戦っ
た仲間だった。
﹁騎士団長っ! どうしてっ? 何をやっているのですか貴女はっ
!﹂
シャロンが悲壮な声で問う。
﹁シャロン⋮⋮﹂
心が打ちのめされていく。
かつての仲間達が、今の自分を。
﹃何一つ汚れてない自分﹄を見ている。
﹁騎士団長⋮⋮。我らをお忘れですか? 貴女が率いた騎士団の⋮
⋮四つの部隊。その内の一つを預かったワタシと、その参謀、そし
て先鋒。まさかお忘れではあるまいっ!﹂
ステアの鬼気迫る悲鳴。
﹁ステア⋮⋮﹂
彼女達が公娼にされた事は知っていた。
王宮でリトリロイの恋人としてある程度の自由が保証された時に、
公娼の名簿を確認し、自分の軍から数人の公娼が選ばれていた事は
承知していた。
﹁エルナンド騎士長は降伏を良しとせずに、戦死しましたよっ!﹂
セナは叫ぶ。
かつてステアと同格であった三人の騎士長の内、最も勇敢であった
男の名前を。
﹁シャークホール騎士長は降伏した後に、ゼオムントに処刑されま
582
した⋮⋮﹂
常に冷静で、騎士団の総参謀を務めていた男の名前をシャロンは叫
んだ。
﹁リンダースは⋮⋮アイツは公娼にされたワタシ達を⋮⋮騎士団長
! 貴女の事も含めて探し、助けようとして逆賊と呼ばれ討たれた
のですっ!﹂
正義感の塊。
そう呼ばれていた熱い心をもった騎士長を思い出し、ステアは睨み
つけた。
﹁貴女は、一体何をやっているのですかっ!﹂
セナに叫ばれて、唇が震える。
公娼として汚された彼女達。
騎士として戦って死んでいった仲間達。
その全てに、自分は顔向けする事が出来ない。
今もこうやって、彼女達の仲間で有ったかも知れない公娼を捕らえ、
ゼオムントに献上したばかりなのだから。
﹁⋮⋮あぁ⋮⋮う﹂
言葉が、出てこない。
セリスは全身を震わせ、悪寒に耐えようとする。
その時、
﹁黙れ。下賤の者達よ﹂
馬上にて、リトリロイが声を発した。
﹁我が妻への愚弄、断じて許さん。今日この場にやって来た用向き
は充分果たしたと言えるが、わざわざ姿を見せてきたというのなら
ば是非もない。まとめて連れ帰って開拓団の伽をさせてやろうっ!﹂
その号令で、王子を守る様に展開していた兵士達は一斉に構えを取
り、セナ達へと向き合った。
583
騎士団長︵後書き︶
読んで下さって有難う御座います。
登場人物がそこそこ出尽くしたので、物語の整理がてらキャラクタ
ー紹介など付録でやってみようかと思うのですが⋮⋮需要はあるの
でしょうか?
むしろ邪魔なんじゃないかとも思ったりします。
設定負けとかありますしね?
けどどうでしょう?後押しする声を頂けたらノリノリでキャラクタ
ー紹介付録を作ります。︵要二日︶
584
︻付録︼キャラクター紹介編︻端書き︼︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
通常の更新ではありませんので、こちらは読み飛ばしてもらっても
大丈夫です。
585
︻付録︼キャラクター紹介編︻端書き︼
騎士公娼の見る夢 キャラクター紹介編
拙作を読んで頂き、有難う御座います。
キャラ増加&そろそろ出尽くすので付録としてキャラクター紹介を
載せさせて頂きます。
本編に輪をかけて文章が滅茶苦茶ですが端書き扱いなのでご勘弁く
ださい。
各キャラクターの戦闘面と公娼面︵男の場合は公娼制度への貢献度︶
をランク付けしました。
設定厨なのでこういうのが大好きです。
※戦闘ランク⋮⋮戦闘力ですね、魔導士の皆さんの査定が低いのは
防御力の低さですかね。
S=絶望感しかない
A=無双しちゃう人
B=猛者と言えるレベル
C=非凡な才能が有る
D=一般兵士よりは強い
E=一般兵士と同じまたはそれ以下
※公娼ランク⋮⋮注目度と映像作品の売り上げでのランクです。こ
のランクが美貌の優劣を決めるわけでは無いです。出自とか態度と
か諸々の要素を含んだランキングです。
S=ゼオムントの皆さんに愛されています
A=生中継で調教されるレベル
B=新作が出ると話題になる
C=映像作品が継続して発売される。二流調教師ではこのレベルま
586
でしか扱えません
D=ローカル公娼として狭い範囲で地道に働く
E=個人の専用肉便器
国と地域ごとに分類されています。
所属が不明確だったシュトラとマリスについてはロクサス郡領国と
カーライル王国に分配しました。
※この項目三度目の更新︵83話時点︶では、
スピアカントにマリアザート。
ロクサスにアルヴァレンシア。
西域にクスタンビア、ジュブダイル、ユラミルティを追加しました。
最後に不要な情報も付け足しておいたので、よければそちらもご覧
ください。
※この項目四度目の更新では、
リーベルラントにハレン。
スピアカントにティティエ。
カーライルにヒルメイア。
西域にハリアレ、ニュマ、ラプシーを追加しました。
幾つかのキャラクターについて、修正を行いました。
※この項目五度目の更新ではキャラクター容姿について追記します。
容姿のキーワードだけ、と思って書いていたのですが、あまりに味
気なかったために概要を付けます。
戦闘ランクと公娼ランクに書かれた内容と若干被りますが、ご容赦
ください。
六十話以降未読の方はネタバレ注意かも知れません。
587
リーベルラント騎士国家
セナ ステア千人騎士団 百人長
戦闘ランクB
騎士長ステアの部隊で先鋒を務める百人長。
武器は両刃の大剣で、苦も無く持ち上げ振るう事が出来ます。
頭が悪いわけでは無いですが、判断はシャロンに任せ、ステアの指
示に頼るところがあり、あまり戦場で自分の頭を使う必要を感じて
いない様子。
公娼ランクB
とある調教師組合に管理され、主に映像作品に出演する事で公娼活
動を行っていました。
強気な性格を利用され、精神凌辱系の作品が多い。
代表作﹃デビュー前のアタシを知っている人達全員に土下座でお願
いして膣内出ししてもらった﹄
キャラクター概要
リーベルラントの赤髪ツインテール騎士。
メインヒロイン? 祖国奪還のついでにシャスラハールとフラグを
立て続けながら凌辱されています。
シャスラハールの乳判断では﹃美巨乳﹄。
シャロン ステア千人騎士団 百人長
戦闘ランクC+
騎士長ステアの部隊で参謀を務める百人長。
細く鋭い双剣を武器にし、主に本陣の守備に当たる。
戦場を俯瞰的に捉える事に長け、長期的な視野で戦略を建てられる。
公娼ランクA
セナと同じく組合に管理され、その組合の中でトップの売り上げを
588
出す看板公娼。
知的でクールな態度から、情けない痴態を演じさせられる屈辱に歪
んだ顔が人気の要因か。
代表作﹃10歳から90歳までの精液を子宮に注いで貰えないと帰
れまセン﹄
キャラクター概要。
金髪ショートヘアーの参謀騎士。
暴走しがちな同僚達を押さえながら、局面を変える策を生み出して
行く。
シャスラハールの乳判断では﹃美乳﹄。
ステア リーベルラント騎士国家精鋭騎士団所属 ステア千
人騎士団 騎士長
戦闘ランクA
リーベルラントの四精鋭騎士団の内一つを預かる才媛。
長槍を自在に扱い、戦闘指揮にも非凡な才を発揮する名将。
王様に一方的な恋をしたりと、思い込みが激しいところがある。
公娼ランクB
セナ、シャロンと同様に記録円盤で活躍した公娼。
男勝りな口調で強がるところを徹底的に二穴拡張などで責められる
ことが多い。
代表作﹃この世にわたしのマンコに入らない物なんてないんだから
っ!﹄
キャラクター概要
真っ直ぐな黒の長髪を靡かせる騎士長。
たぶん最も悲惨な目に遭っているのでは無いでしょうか。
シャスラハールの乳判断では﹃丼乳﹄
589
フレア ステア千人騎士団 百人長
戦闘ランクB
騎士長ステアの実妹で、殿軍を務める百人長。
戦斧を使ってのワイルドな戦闘を行う。
セナと同等程度の信頼を上層部に寄せている為、こちらも戦場では
能天気。
公娼ランクD
セナ達とは異なり、三流の調教師に預けられたため、大した仕事が
無く、その日を生きる為の生活費稼ぎに体を売らされていた。
代表作﹃膣内出し一回でパン一切れ、アナルも有りならバター付き﹄
キャラクター概要
姉同様黒髪だがこちらはショートヘアーな斧騎士。
登場は同僚達から一歩遅れていたが、役割的にはそこそこ重要な場
面も有り。
シャスラハールの乳判断では﹃吊り上げ乳﹄
セリス リーベルラント騎士国家 精鋭騎士団団長
戦闘ランクS
リーベルラント百戦無敗の軍神。
長剣を愛用するが、武芸百般何でもこなす万能騎士。
集団戦でも個人戦でも負けたことが無い。
公娼ランクE↓S
リトリロイの恋人と言う役割から、一般的な公娼として体を国民に
提供する事は無かったが、どうやらその時間もそろそろ終わりを告
げようとしている様子。
役割﹃新生国家の王妃様﹄
キャラクター概要
長い金髪に銀色の羽根付兜を載せた作中第二の強者。
敵中の公娼。
590
シャスラハールは彼女の胸を見ていません。どちらかと言えば巨乳
属性です。
ユーゴ リーベルラント騎士国家 文官
戦闘ランクE
リーベルラント敗戦の元凶。
売国奴として国を売ったにも関わらず、正規のお役所仕事からは門
前払いされて調教師になったようです。
公娼ランクC+
そこそこ有能だったようですが、人事権を持つまでには至らず、ス
ポンサーである商人が連れてきた公娼を使って活動していた。ヘミ
ネの調教を一時担当していた。
得意ジャンル﹃父娘姦、近親相姦、母娘丼﹄
ハレン リーベルラント騎士国家 リンダース隊百人長
戦闘ランクC+
シャスラハールに調教師としての筆おろしをした女性。
ステアでは無く別の騎士長の部隊に所属していた為、セナ達とは知
り合いでは有るが深い意味での友人関係では無かった弓騎士。
公娼ランクB
公娼制度が始まり、比較的初期に命を落とした公娼。
シャスラハールの希望を助けるために、反発する心を必死に押さえ
つけながら幾多のチンポを受け入れた。
代表作︵報道︶﹃衝撃映像! 生挿入会に暴漢が乱入、挿入中の公
娼を殺害する一部始終﹄
キャラクター概要
茶色の髪を背中に流した弓騎士。
死者。
591
乳判断は有りませんが、シャスラハールの乳枕初体験はハレンから
です。
スピアカント王国
シャスラハール スピアカント王国 第七王子
戦闘ランクD
ゼオムントへの復讐を誓った少年。
元々ビビリな性格で戦闘には向いていなかったが、ヴェナと合流後
はみっちりと個人指導を受けある程度の腕前にまで成長している。
公娼ランクA
ヴェナやルル等高ランクの公娼の調教に関わり、円滑にその活動を
サポートした実績が有り、調教師組合から高い評価を受けていた。
得意ジャンル﹃スローセックス、乳首責め﹄
ヴェナルローゼ スピアカント王国 聖騎士
戦闘ランクA+
最年少の聖騎士、スピアカントの誇り。
聖人から受けた祝福により生身でもある程度の魔術抵抗を持ち、下
賜された聖剣を振るう事によって万軍と相対する事が出来る。
公娼ランクA
その強く凛々しい姿を見て、調教師達はこぞって彼女を利用した作
品を作り上げる。
しかしアリスレインの処刑後に半ば廃人になって反応が薄くなり、
人気が低迷した。
592
代表作﹃精子風呂∼しぼって抜いて温めて∼﹄
キャラクター概要
煌めく金色の髪を靡かせる旅の守護者。
シャスラハールとの性交回数は他の公娼達と段違いです。
シャスラハールの乳判断では﹃爆乳﹄
アリスレイン スピアカント王国 第一王女
戦闘ランクE
スピアカントの高貴な姫君。
国民に愛され、他国の羨望を集めた人物。スピアカント王城が無血
開城したのは、戦乱で彼女を失う事を恐れたゼオムント側の判断だ
ったのかもしれない。
公娼ランクS
存命中は様々な国家規模の公娼調教イベントに参加させられ、まさ
に全国的にアナルの皺の数まで把握されていたレベル。
代表作﹃バンデニロウムの大祭﹄
キャラクター概要
白銀の髪と豊満な体で全てを魅了した美しき姉姫。
シャスラハールとは異母姉弟です。死者。
乳判断は有りませんが、幼い日のシャスラハールは姉の豊かな胸に
飛びつくのが大好きでした。
マリアザート スピアカント王国 大騎士
戦闘ランクB+
一児の母で未亡人騎士。
前線に出ることの出来なかったヴェナの代わりに夫と共に戦ったス
ピアカントの人妻騎士。
残念ながら旦那さんは戦争でお亡くなりになりました。
593
公娼ランクB
公娼になる前に出産を経験していた者は珍しかったので、一部マニ
アックな方々に重宝されていました。
作品内で禁断の母子共演を果たしておいでです。
代表作﹃ママのお友達作り。∼うちの息子の友達になってくれる子
の肉便器になります∼﹄
キャラクター概要
白のショートヘアーに日焼けした肌のママ公娼。
出番が欲しい感じ。
乳判断は有りません。作中で唯一母乳が出る彼女の乳房はヴェナの
サイズに匹敵します。
ティティエ スピアカント王国 暗軍筆頭武官
戦闘ランクB+
王国要人の守護を影から担う暗軍の頭領。
正確無比の手捌きと相手の弱点を瞬時に把握する能力は、公娼にな
ってからも有効活用されていました。
公娼ランクA
所謂女スパイだった過去を利用され、警察に管理される公娼となり、
犯罪組織等にワザと捕まらせて凌辱を受けている様をノンフィクシ
ョン凌辱円盤として売られ警察の資金源にされていました。
代表作﹃実録警察大追跡、麻薬組織に潜入した公娼捜査官が暴く巨
悪の性癖﹄
キャラクター概要
シャスラハールやマリアザート同様、スピアカント特有の黒肌をし
た灰色髪の暗殺者。
マリューゾワ組の途中脱落者。
乳判断は有りません。暗殺業務に支障が無い様、胸は少し控えめで
す。
594
ミネア修道院
ルル ミネア修道院院長 幸運と誓約の魔導士
戦闘ランクD
シャスラハールに奥の手を預けた人物。
直接的な攻撃力には乏しいが、戦闘時に致命傷を避けたり、旅の指
針を判断する時に彼女の﹃幸運﹄が極めて有効に機能し、マリュー
ゾワ達は西域の最奥へたどり着いた。
公娼ランクA+
魔術師の筆頭とも言えるポジションに有ったため、彼女はその存在
だけでも十分なブランド価値を持ち、知性的な風貌も有って凌辱者
達から人気を博した。
代表作﹃高学歴女の頭がバカになるまで膣内出ししてみた﹄
キャラクター概要
目深にフードを被った神秘の魔導士。
亜麻色の髪の下微笑むルルに、シャスラハールは何度も励まされて
きました。
シャスラハールの乳判断では﹃白桃乳﹄
ユキリス ミネア修道院所属 劇毒と狂奔の魔導士
戦闘ランクC+
目に見えぬ恐怖の魔法を操る魔導士。
範囲攻撃としての力は優秀ですが、如何せん物理的にはまったく貧
595
弱この上ない為、肉の壁の騎士達と組んで戦う事で真価を発揮する。
公娼ランクB
首都を中心とした大型商業施設のヤれるマスコット。
映像中継やセールの日等は大々的に活動していた為に主婦等からも
知名度は高い。
代表作﹃通常販売価格30円のモヤシが何と27円になった上に私
のマンコが無料です﹄
キャラクター概要
長い水色髪の下、憂う異能の魔導士。
色々有ってちょっとナーバス気味です。
シャスラハールの乳判断では﹃陥没乳首﹄。普通サイズです。
アミュス ミネア修道院所属 支配と枯渇の魔導士
戦闘ランクC
高飛車な銀髪の魔導士
直接戦闘では枯渇魔法頼みになりバリエーションに欠けるが、支配
の魔法を使う事で対象の部下達までを操る事が出来る。
公娼ランクC
人気が無かったわけでは無いが厭世的な態度をとっていた為、度々
調教師側から捨てられる。その都度ホームレス達に拾われ、三年間
の内半分程度は野外で肉便器をやっていた。
代表作﹃ホームレス公娼∼炊き出し精液でお腹一杯∼﹄
キャラクター概要。
銀髪の皮肉屋魔導士。
西域遠征開始後から数えた実際の体験人数では恐らくアミュスがト
ップでは無かろうか。
シャスラハールの乳判断では﹃スライム乳﹄。柔らかそうな並サイ
ズと言う事だと思います。
596
リネミア神聖国
ハイネア リネミア神聖国 王女
戦闘ランクE
治療術マスターのロリ姫様
戦闘力は皆無であり、走る事も馬に乗る事も苦手だが、そこは信頼
を寄せる侍女がカバーしてくれます。彼女の治療術無くしてはシャ
スラハールの旅は続かない。
公娼ランクB
自由性交生徒として同年代の少年達の玩具にされた青春時代を送る。
生徒会長に無理矢理就任させられた上に卒業後の進路を﹃Sランク
公娼﹄にされた。
代表作﹃先輩・同級生・後輩、皆の青春の精液タンク∼スクールス
レイブプロジェクト∼﹄
キャラクター概要
高貴な金髪ロリ。
髪型は余裕がある限りリセが毎日変えています。
シャスラハールの乳判断では﹃薄乳﹄
リセ リネミア神聖国 王室付侍女
戦闘ランクB
投剣メイド。
ハイネアの護衛役を兼ねる為に身に着けた暗殺術一歩手前の技で、
俊敏に動き回り相手をかく乱し、投剣の補助も使って首を掻き切る。
公娼ランクD
ご当地公娼として地域の公民館の倉庫で飼われていました。町おこ
597
しイベントや地域住民の冠婚葬祭に駆り出され、その体を汚される。
代表作﹃観光名所スタンプラリーの最後の一つは私の子宮です、チ
ンポで捺印して下さい﹄
キャラクター概要
全てを投げ打つ従順な黒髪侍女。
彼女の料理はアレをも屈服させました。
シャスラハールの乳判断では﹃並乳﹄
ヘミネ リネミア神聖国 伯爵貴族
戦闘ランクB↓A+
鉄腕甲を用いた格闘術を扱う貴族様。
普段は冷静で大人しいが一度激昂すると手におえない。Sランクの
騎士公娼セリスに一時匹敵するほどの打ち合いを見せた。
公娼ランクA
上品な物腰と責め過ぎると激昂して暴れ出す姿が一部好事家の心に
クリーンヒットし、彼女を徹底的に苛め抜いた末に涙を流して暴れ
るのを押さえ込んで犯す構図が流行した。
代表作﹃目隠しチンポ当て、泣こうが喚こうが失敗したら即妊娠S
EX!﹄
キャラクター概要
紅の髪を靡かせる拳闘者。
アミュス同様、経験人数が飛躍的に上昇した。
シャスラハールの乳判断では﹃乳輪小さ目﹄。巨乳なのに。
シロエ リネミア神聖国 巫女騎士団頭領
戦闘ランクB
巫女騎士団とは薙刀や長弓を持って戦う女性部隊。
その長であったシロエは当代随一の腕前を持ち、リネミア神聖国の
598
為にゼオムントと戦って騎士団丸ごと捕らえられてしまいました。
公娼ランクA
巫女さんとしての教育もばっちりだった為にその淑やかな態度も相
まって調教師には大人気でした。巫女騎士団の多くは孕ませ企画で
消費されたのですが、彼女はまだセーフ。
代表作︵友情出演︶﹃巫女騎士団と臨月SEX。さぁ産め! 神の
子を!﹄
キャラクター概要
黒髪を結い上げた巫女騎士。
出産ネタに縁が有る。
シャスラハールの乳判断では﹃巨乳﹄
ロクサス郡領国
マリューゾワ ロクサス郡領国トワイラ領 領主
戦闘ランクA+
ゼオムントを苦しめた魔剣大公。最大で数千本の剣を操る事が出来
る。
突剣を握りそれを指揮棒の様に操る事で、持ち手のいない剣を操作
する事が出来る。戦場が有る程度死体で埋まってくると、それだけ
マリューゾワの武器が増える事になりますね。
公娼ランクA+
彼女もまた大人気公娼の一人で、折れぬ矜持と尊大な態度、調教師
にとっては美味しい物件で常に引っ張りだこでした。
代表作﹃魔剣大公VS魔チン大公⋮⋮俺は数千本の肉棒を操作でき
るぞ、イけっ!﹄
キャラクター概要
599
艶めく黒髪を揺らめかせ、魔剣大公は相手を威圧します。
冷静なようでいてキレやすい。
シャスラハールの乳判断では﹃艶乳﹄。大きくて形が良いのだと思
います。
シュトラ ロクサス郡領国テハイネ領 大騎士
戦闘ランクB
お姉さん肌の青髪の騎士。
戦闘描写はあまりないですが、故郷では名のある騎士。直剣と小盾
を使った堅実な戦いで戦果を挙げてきました。
公娼ランクD
首都近郊の農業地帯で豪農に飼われ、その家畜や小作人相手の性処
理を担当させられた。彼女のマンコを利用した豚と利用しない豚で
は味の深みが違ったとかいうオカルト。
代表作︵?︶﹃選び抜かれた餌と公娼を使いじっくり愛を込めて育
てた豚のヒレ肉﹄
キャラクター概要。
小盾を使う青髪の淑やかな騎士。
家畜ネタによく出てきます。
シャスラハールの乳判断では﹃お椀乳﹄
ロニア ロクサス郡領国アーリン領 技術将校
戦闘ランクC
兵器造りの達人。
ゼオムントとの戦役では各国に技術を提供し、戦線を彼女なりに支
えた。
個人としての戦闘技術もそれなりに有り、トリックプレーでの攻撃
を得意とする。
600
公娼ランクB
彼女のモノづくりの才能を知った一部の調教師により、ディルドー
の老舗に預けられ日夜新作の研究にマンコを使われた。
代表作︵物︶﹃限定生産一万本。全て担当の公娼がマンコとアナル
で性能確認をしております﹄
キャラクター概要。
薄緑色の髪をしたサポート要員。
肛門ネタが多いです。
シャスラハールの乳判断では﹃微乳﹄
アルヴァレンシア ロクサス郡領国リッテン領 領主
戦闘ランクB
魔剣大公マリューゾワの従妹、魔蝶公主。
従姉のマリューゾワと同様に単一魔法に優れた女の子。
こちらはファンシーに蝶々を使って雷撃を放ちますが、マリューゾ
ワ程大量には扱えません。
公娼ランクA
ロリ魔法使いという事でインスピレーションを爆発させた調教師の
手によって、社会の悪と戦う魔法少女物として毎週日曜の朝に放送
枠を作られ、物語前半は幼気な幼女に大人気、後半は公娼が大好き
な大きなお友達に絶賛されました。
代表作﹃劇場版ズボチュパ! 便所に咲く一輪の花ッ﹄
キャラクター概要
マリューゾワの五分の四サイズ。
憧れの従姉に近づけるよう、髪色から態度まで真似をしています。
胸のサイズも五分の四。
601
カーライル王国
ヘスティア カーライル王国 王女
戦闘ランクB 反ゼオムント同盟盟主。
物語序盤で呆気無く死亡しました。
正直勿体無いなと感じてしまうほどに、意外と重要な人だったよう
な気がします。
公娼ランクA+
ゼオムントからしてみれば、カーライルは敵の親分にあたる国です。
その為、憂さ晴らし気味に所謂超VIPかつカーライルの旗頭であ
ったヘスティアは、ガツガツやられまくっていました。
代表作﹃お前が無駄な抵抗をしたせいで小麦の値段が上がったんだ
から体で弁償しろ!﹄
キャラクター概要
金髪を閃かせ、戦場を駆け抜けた王女。
死者。
大きくて気品のある乳房です。
マリス カーライル王国 傭兵
戦闘ランクB
流浪の傭兵公娼。ゼオムントとの戦役ではカーライル王国に雇われ
て戦ってました。
曲刀を使ってバサバサ敵を斬ります。その都度笑っているのが不気
味なので敵の戦意が落ちます。
公娼ランクC
少女性も有り能天気なキャラクターなのですが、致命的に公娼制度
602
とはマッチせず、あまり映像作品は売れなかったようです。
代表作﹃こんばんはデリバリー公娼です。膣内出し? もちろんど
うぞ!﹄
キャラクター概要
黒髪ポニーテールの女傭兵。
喋り方が独特なので、会話に混ぜ込みやすいです。
シャスラハールの乳判断では﹃右乳首脇にホクロ﹄。普通サイズで
す。
ヒルメイア カーライル王国 大将軍
戦闘ランクA+
ヘスティア王女の守護役にして軍の筆頭。
返しの付いた剛剣を手に、幾多の戦場でヘスティア王女の身を守り
続けた若き大将軍。
戦場にたなびく赤い髪と揺れるオッパイは将兵を魅了したそうな。
公娼ランクD
盟主国カーライルは反ゼオムントの気風が強かった為、ガス抜きと
してヒルメイアは祖国での公娼活動を強制されていました。
ゼオムントの内政官達に強制され、民衆の命を守る為、各地で起こ
る抗議活動をその体で説得して回りました。
代表作︵市民投稿︶﹃ゼオムントの雌穴に成り下がった奴の話なん
て誰が聴くか! 抗議のチンポで粛清してやる!﹄
キャラクター概要。
緩くカーブした赤髪を持つ大将軍。
マリューゾワ組の途中脱落者。
巨乳ですが、それよりも肉厚な尻が特徴的です。
603
西域
アン・ミサ 西域の管理者 智天使
戦闘ランクB
西域を預けられし者。
彼女の役割は統治である為にそこまで戦闘に特化はしていません。
治療術や奇蹟の召喚等、他の事に力を使っています。
公娼ランク︱
公娼に割と同情的です。
マリューゾワ達の傷を癒し、その未来についても一緒に考えてくれ
たりする辺り、天使三姉妹の中で一番天使!
キャラクター概要
肩口まで金髪を緩く流した天使。
余裕を取り戻してからはただの優しいお姉ちゃんです。
シャスラハールの乳判断では﹃深すぎる谷間﹄。ぽよぽよの巨乳で
す。
ラグラジル 元西域の管理者 魔天使
戦闘ランクC↓A
翼を汚されし者。策略家。
三姉妹ではあるがそれぞれ出自を異にする為、彼女は魔物に良く似
た性質と技の特性を持ち、妨害系や精神攻撃を得意とする。
公娼ランク︱
もちろんラグラジルは公娼ではありません。
公娼を蔑み嘲笑う彼女ですが、そんな彼女が似た様な目に遭った時、
どんな顔と声で泣くのか、この世の﹃欲望﹄はそれを見る為に策動
604
します。
キャラクター概要
黒髪ロングのサディスティック天使。
独善なるままに行動する。
シャスラハールの乳判断では﹃蒼白乳﹄。乳輪の色素も薄いようで
す。
ラクシェ 西域至高の武 力天使
戦闘ランクS+
妹天使。
彼女に一対一で勝てる者は作中には存在しません。
戦槌を使った単純な殴りがメインですが、それだけでもほとんど死
にます。
公娼ランク︱
ラクシェは公娼に価値を見出しません。
姉以外の存在は眼中に無く、全て等しく雑草でしかありません。
時々雑草達で遊んだとしても、それは気まぐれに等しい行為です。
キャラクター概要
水色の髪をした少女天使。
破壊至上主義。餌付けは可。
シャスラハールの乳判断では﹃絶壁﹄
ハルビヤニ 主上 西域の概念体
戦闘ランクE↓S
天使三姉妹の創造主。
降臨祭の時期以外は世界に関与する事が出来ません。依代を使って
降臨中の時は中々迷惑な存在であるようです。
公娼ランク︱
605
ハルビヤニは肉体を捨て世界の欲望と同化しました。
故にゼオムント国民が公娼を愛する事、そしてその理由の一つに、
彼が世界の一部として影響している可能性はあります。
クスタンビア 親鬼の酋長 ハルビヤニの右腕
戦闘ランクS
二本の巨岩刀を軽々と扱う親鬼の女丈夫。
昔はクスタンビアがラクシェの代わりに各部族への脅し役でした。
公娼ランク︱
公娼ではありませんが、似た様な経歴をお持ちです。
ハルビヤニ存命中は玩具にされていた為、至る所でクスタンビアは
セックスしていました。相手はハルビヤニとは限りません。大切な
主の命令なら、例えどんなに汚い相手にも胸を張って股を開くのが
クスタンビアの愛です。
キャラクター概要
西域第二の武を持つ青髪の女丈夫。
腹筋は割れていますが全体的にゴツゴツと言うわけではありません。
胸はハルビヤニ様が好き放題揉んだのでかなり育ってます。
ジュブダイル 豚魔大王 ハルビヤニの左腕
戦闘ランクA
大盾を構えた大王様。
全ての攻撃を盾で防ぎ、反撃は素手のぶん殴りというワイルドな豚
さんです。
公娼ランク︱
豚魔は大量に居ます。
大昔にハルビヤニと喧嘩した際にちょっとした呪いを掛けられ、豚
さん達は種族的にヤバい感じのようです。詳しくは本編でしばらく
606
後に語ります。
ユラミルティ 智天使の懐刀 裁天使
戦闘ランクC
手にする武器は処刑道具です。
使用に関しては対象に罰を与える場合で無い限り効果が発揮できま
せん。
公娼ランク︱
割とドライな方です。
眼鏡掛けてますので、いずれぶっ掛けられるんじゃないかなと思い
ます。
キャラクター概要
黒髪ショートの眼鏡天使。
処女。
シャスラハールの乳判断では﹃美白乳﹄。並サイズです。
ハリアレ 大洞窟 ﹃媚風﹄の競技奴隷
戦闘ランクE
三種競技の﹃速﹄、メア・リー・レースの女王。
脚力とその特性である﹃媚風﹄での眩惑能力は有りますが、基本的
に戦闘面では役に立ちません。
公娼ランクA
競技奴隷は公娼の様に性行為の強制をされる物ではありませんが、
ハリアレは自身の栄達の為に豚魔達相手に股を開く事を厭いません。
スポンサー様やコーチ陣、取材陣達とも裏でズブズブでズボズボの
関係です。
キャラクター概要
白の髪を靡かせた美女奴隷。
607
足と頭の回転は速いが運が悪い。
胸のサイズはそこそこ巨乳。
ニュマ 大洞窟 ﹃障壁﹄の競技奴隷
戦闘ランクB
三種競技の﹃力﹄、パイルドライブマッチの無敗王者。
体術の面でヘミネには多少劣りますが、関節技や投げ技など、公娼
達からすれば多少特異に感じられる技能をもっています。
公娼ランクD
ニュマの﹃障壁﹄はどうやってか鍛えた処女膜に付けられた称号で
す。
リセに押し開かれた事で処女を失ったニュマは、これ幸いと後援者
達から輪姦されたようです。
キャラクター概要
縛った黒髪の拳闘奴隷。
鉄壁の処女。
そこまで大きくは無いが、感度が良い手の平サイズ。
ラプシー 大洞窟 ﹃洪水﹄の競技奴隷。
戦闘ランクE
三種競技の﹃美﹄、フィギュアオナニーの新星。
ハリアレ同様戦闘面では役に立ちません。
しかし、彼女の﹃洪水﹄は上手く利用すればちょっとした洗脳が可
能な気がします。
公娼ランクE
ハリアレの様に割り切る事も、ニュマの様に寡黙で有る事も無く、
ラプシーは己が望むままに生きています。
競技奴隷で有る内は、豚魔達にやすやすとは肌を許さないと心に決
608
めていましたが⋮⋮。
キャラクター概要
金髪のミドルヘアーをしたオナニークイーン。
経験人数は少ないですが、将来を見据えて慣れておく必要があると
は思っているようです。
乳房はまだまだ成長中の巨乳候補生。
ゼオムント王国
オビリス ゼオムント王国魔導長官 一流調教師
戦闘ランクA
魔導士としてもかなりの腕を持ちます。
ゼオムントの覇道を支えた功労者でもあり、その力の秘密は西域に
由来するものだと噂されています。
公娼ランクS+
公娼全ての敵であるオビリスは、不老魔術で体の成長を縛り、映像
魔術で心を縛ります。
これから第三の魔法を用意して物語に再登場してくると思います。
得意ジャンル﹃魔法を使っての全世界生中継調教﹄
リトリロイ ゼオムント王国 第三王子
戦闘ランクD
リトリロイも戦えます、少なくともシャスラハールと同程度には。
しかしセリスが傍らに居れば、彼自身が剣を握る必要はありません。
609
あくまでセリスが傍らに居れば、ですけれども。
公娼ランクC
特に制度を利用するわけでも無くセリスを毎晩愛でていただけの彼
ですが、開拓団を率いる存在になった事で、人心掌握のために公娼
制度を踏襲する事を決めました。
得意ジャンル﹃政治利用﹄
ゴダン ゼオムント王国王宮魔導士
戦闘ランクC
オビリスの腹心。
禿げ上がった頭をした有能な魔導士である彼は、大規模魔術を得意
とします。
映像を投影し、公娼を引き寄せる。 囮ですね。
公娼ランクB
調教師ではありません。
ですが妻に隠れて頻繁に利用していたようです。王宮魔導士にもな
るとAランクの公娼相手でも予約不要でヤれたりするので役得です
ね。
ゾート ゼオムント王国調教師組合 主席調教師
戦闘ランクE
バンデニロウムの覇者。
エグい調教術はお持ちですが、助手任せな部分もあるので肉体的に
は貧相なお爺ちゃんでしかありません。
公娼ランクS+
シャスラハールの怨敵。バンデニロウムでその実力を如何なく発揮
し、国民から喝采を浴びる。著書の印税だけで豪邸が建つレベルで
ある。
610
得意ジャンル﹃器具プレイ﹄
オルソー ゼオムント王国調教師組合 次席調教師
戦闘ランクE
魚顔の調教大好き婦人。既婚。
戦えませんし、夜の勝負では毎晩変な趣味の旦那さんに責められて
啼いてます。
描写はしません。
公娼ランクS
精神凌辱も肉体凌辱も大好きです。彼女は公娼を愛するあまりに酷
い事をしてしまいますが、それは作品の為、そして作品の中で輝く
公娼達の為なのです。
得意ジャンル﹃イカせ地獄、露出調教﹄
ラターク ゼオムント王国調教師組合 一等調教師
戦闘ランクD
あと一歩で伸び悩む調教師。
少し大柄ですので本気を出せば兵士は倒せますが、そんな事よりも
今はどうにかしてオルソーとゾートを追い抜く事に必死です。
公娼ランクA+
喜劇的要素を好む傾向にあります。ラターク作品ではまず公娼の下
ごしらえを徹底的に行い、衣装の選定、シナリオの吟味等、公娼達
に普段とは異なる負担を掛けます。
得意ジャンル﹃喜劇物、逆レイプ﹄
テビィ 開拓団 便所掃除係り
戦闘ランクE
611
バケツを被った少年。
力も無く、意志も弱いテビィですが、自分の運命を悲嘆するよりは
公娼を苛めてた方が愉しいやっとなって公娼相手には強気です。
公娼ランクB↓S
アミュスとヘミネの心を砕いたのは間違いなくこの少年のやったプ
レイです。
その後も継続的に彼女達の心と体を犯し、将来の才能を開花させそ
うな予感が有ります。
得意ジャンル﹃便所掃除プレイ﹄
ターキナート ゼオムント王国 上級騎士
戦闘ランクC
そこそこ強かったのですが、あっさりと死にました。
こちらに関しては生かしていてもあまり意味が無いと判断しました。
下の無能とは違ってお仕事をまじめにやっていた為に死んだのかと
思うと哀れですね。
公娼ランクD
フェミニストであった彼は公娼の笑顔が大好き。いつも膣内出しし
ながら公娼に笑う様に強制していました。将来の目標としてマイ公
娼を買って常に笑顔で働かせる事を夢見てましたが、﹃公﹄共物だ
から﹃公﹄娼なので、ルールを越える為にはまだまだ出世しければ
なりまんね、死んでますけど。
グヴォン ゼオムント王国 上級騎士
戦闘ランクD
無能の方です。
体は大きいけれど戦闘面は役に立ちません。任務中に寄り道とかし
ます。
612
強がるけど負けます。チンコちっさい設定にしようかと思います。
公娼ランクB
調教師ではありませんが、首都で流行っている公娼オタクの方です。
公娼の名前を暗記して常に新作をチェック、道端でヤっているのを
見れば並び、給料の7割は映像作品に使っています。推し公娼はセ
ナです。
追記・不要な情報。
ゾート、オルソー、ラタークが扱った事のある公娼と、グヴォンが
イベントに参加してチンポを突っ込んだことのある公娼を分類しま
す。
ゾートの調教履歴
セナ 開拓団陣地にて改造・調教・撮影。
ステア 映像作品撮影。
ヴェナルローゼ 門下生に指導する為の教材として使用。
アリスレイン バンデニロウムで使用。
ルル 映像作品撮影。
アミュス 開拓団陣地にて調教。
ハイネア 中等教育校向け正しい公娼利用講座で使用。
ヘミネ 開拓団陣地にて調教。
マリューゾワ 映像作品撮影。
ロニア ゾート推薦のディルドー発売式典で使用。
ヘスティア 映像作品撮影。
613
他多数。
オルソーの調教履歴
シャロン 映像作品撮影。
ヴェナルローゼ 嬲り甲斐が有りそうだったので私的に使用、無料
配布。
アリスレイン バンデニロウムに参加。
マリアザート 不妊に悩むオルソーの八つ当たりで母子共演作品撮
影。
アミュス 開拓団陣地にて調教。
ヘミネ 開拓団陣地にて調教・撮影。
シロエ 映像作品撮影。
マリューゾワ 嬲り甲斐が有りそうだったので私的に使用、無料配
布。
シュトラ 開拓団陣地にて調教・撮影。
ロニア オルソー推薦のディルドー発売式典で使用。
ヘスティア 映像作品撮影。
他多数。
ラタークの調教履歴
シャロン 自分の放送枠のエンディングで淫語ソングを歌わせる。
ステア 映像作品撮影。
アリスレイン バンデニロウムに参加。
ルル 自分の放送枠で膣内出し占いコーナーを担当させる。
614
ユキリス 開拓団陣地にて調教・撮影。
アミュス 開拓団陣地にて調教・撮影。
リセ 町内会のスペシャルアドバイザーとして企画に参加。
ヘミネ 開拓団陣地にて調教。
ロニア ラターク推薦のディルドー発売式典で使用。
アルヴァレンシア 自分の放送枠で日曜朝の魔法少女物を担当させ
る。
マリス 映像作品撮影。
他多数。
公娼オタクであるグヴォン氏が参加した事のあるイベント一覧
セナ 映像円盤予約購入者限定のセックス会に毎回参加、調教師に
顔を覚えられる。
フレア 街中でパンを恵んでやって路上セックス。
アリスレイン バンデニロウムを訪れて死姦。
マリアザート 母乳試飲会に参加。
ユキリス 特売日に並んでセックス。
アミュス 炊き出しに参加して熱々のミルクを注いであげる。
ハイネア 甥の入学式に参列しセックス。
リセ スタンプラリーに参加して膣内にハンコを押す。
ヘミネ 目隠しチンポ当てゲームに参加、無念の敗北。
シロエ 貯金を叩いて巫女騎士団への種付権利を購入、シロエの前
で部下を孕ませる。
マリューゾワ 魔チン大公に操られて挿入する。
シュトラ 牧場体験ツアーに参加、牛小屋セックス。
ロニア 工場見学会に参加、記念品のディルドーをアナルに突っ込
みながらの二本差し。
615
アルヴァレンシア エキストラの怪人役で出演し、全国放送でセッ
クス。
ヘスティア 公開懺悔イベントに参加、罵りながら膣内出しセック
ス。
616
理由︵前書き︶
評価・お気に入り登録ありがとうございます。
617
理由
怒号と共に、血生臭い戦いは始まった。
兵士達は王族の前で武を奮う事により己の存在価値を示すために。
公娼達は自らの未来を切り開くために。
﹁ラグラジルはここで陣地構築の魔術をっ! いつでも撤退できる
ようにしてください。その後は殿下とハイネア様の護衛を頼みます。
右翼を騎士長とリセ。左翼を私とマリス。中央をヴェナ様と︱︱セ
ナっ? 突出してはダメっ!﹂
シャロンが双剣を抜き放ちながら指示を飛ばし、猛然と単身で敵に
突っ込んでいく同僚に慌てた声を送る。
﹁間に合わんっ! 来るぞっ!﹂
ステアの戦意に満ちた声が上がり、敵兵の波とぶつかった。
リトリロイの率いた兵数は二百。
シャスラハールが率いた人魔合同軍は僅か八。
しかし、戦力的な意味合いでの濃さが違う。
常勝を誇ったリーベルラント騎士国家の精鋭騎士が三人。
音に聞こえたスピアカントの聖騎士。
百戦錬磨の投剣メイドと血に笑う傭兵。
そしてかつて西域を管理したという魔天使。
いくら兵士達が勲章目当てに血を滾らせたとしても、彼女達の身に
刻まれたゼオムントへの怒りには及ばない。
国を奪われ、家族を殺され、操を汚されたのだ。
ステアの槍が兵士の喉を食い破り、リセの短刀が目玉を抉る。
シャロンの双剣が切り裂き、マリスの曲刀が首を刎ね飛ばす。
圧巻とも言えるのはヴェナの進撃。
取り戻した聖剣を握るその武勇は、立ち向かう兵士達にとってみれ
ば恐れを具現化した存在に他ならない。
618
一方的に切り伏せられ、無理矢理投じた些細な反撃は弾かれる。
中央の戦況は瓦解し、先を行くセナを後押しする結果となった。
一方で、大回りや死んだふりでどうにかシャロン達をやり過ごした
兵士はシャスラハールの大将首を狙う。
それさえ討ち取ってしまえば、あの鬼神の様な公娼達と戦う必要は
無いのだ。
﹁怖かったらワタシの空間に入っていても良いのよ?﹂
シャスラハールの眼前でふよふよと空に浮いているラグラジルが言
う。
﹁僕には⋮⋮見届ける義務が有りますから﹂
黒肌の王子はそう答え、後にハイネアを庇いながら小刀を構えた。
それを見て、ラグラジルはつまらなそうに目を逸らした。
﹁非効率的で無駄な行いね﹂
そうして右腕を振るう。
﹁貴方は個人の戦闘であの人間族たちとどれだけ戦えるのかしら?
運よく二人か三人倒せたとしても、所詮はその程度。次の瞬間に
貴方は殺されて後ろのオチビちゃんは嬉し懐かしの公娼便器に逆戻
り。ふふっ。そんな怖い顔しないでよ。わかってるわよ⋮⋮﹃ご主
人様﹄﹂
闇の糸が展開され、兵士達へと絡みついていく。
﹁無様ねぇ⋮⋮力を失っているワタシにすら勝てないのなら、この
西域で生きる方法何て無いのに。無粋にこの地を踏み荒らした事、
いずれ後悔する事になると思うわ﹂
糸は兵士の首に巻き付き、強烈に締めつけていく。
﹁この奥にはね⋮⋮ワタシなんかよりももっと怖い連中が居るんだ
から⋮⋮﹂
ブチッ︱︱と肉が断ち切れる音が辺りに響く。
魔天使はあえて残酷に殺す事で、続く兵士達に向けて恐怖を演出す
る。
﹁さぁいらっしゃい⋮⋮。ワタシは今とっても機嫌が悪いの⋮⋮最
619
悪と言っていいわね⋮⋮貴方達の首をもいで遊んだって大した慰め
にはならないけれど、突っ込んで行ったお馬鹿さん達が戻るまでの
暇つぶしにはなるでしょうね﹂
一切近寄ることなく、手を振っただけで命を奪って見せた魔天使に、
兵士達は恐れ戦いた。
そしてその時、
敵中深くへ斬り込んで行ったセナの視界に、馬上から戦場を見つめ
るゼオムントの王子の姿が飛び込んできた。
﹁ハアアアァァァッ!﹂
大剣の一薙ぎは生半可な防御ごと兵士の体を引き裂く。
セナは全身に返り血を浴びながら戦場を突破し、目標を発見した。
﹁ゼオムントの王族っ! お前達が背負った罪の重さを教えてやる
っ!﹂
近衛兵のガードを斬り潰しながら進み、セナは吠える。
﹁ほざけ賎なる公娼よ! 貴様らは負けたのだ、ゼオムントに! 覇道に逆らい死すべき運命にあるところを、新たなる世の為にその
身を捧げさせてやった我らに抗うなどと、愚劣極まりないっ!﹂
リトリロイは馬上から威圧し、腰に帯びた剣へと手を伸ばす。
﹁誰が、いつ生かせと頼んだっ!﹂
セナは絶叫する。
﹁国が滅んだ時に、なぜアタシ達を殺さなかった! なぜ汚辱にま
みれて生き続けなければならなかったっ!﹂
本心として、公娼であった三年の間、常に死への願望があった事は
否定できない。
叶う事ならばそれが公娼に落される前の、国が滅んだ瞬間であった
ならばと願ったものだが、ゼオムントは公娼を縛る為に幾つもの要
因を押さえていた。
一つには人質。
620
かつての自分達が守るべき対象であった自国民や王族、彼らの多く
はゼオムントに靡き、その支配を受け入れているとはいえ、志を失
った者ばかりでは無い。
ゼオムントの支配体制は属領制だ。
かつての支配層を自分達の支配下として管理する事で、ある程度の
自治を認めている。
その地に生き、その地の伝統や教えを守る正当な守護者である彼ら
こそが、セナ達公娼にとっての無視し難い人質だった。
更に仲間。
セナにとってシャロンやステア、フレアがそうであるように、共に
公娼に落された仲間達がそれぞれ互いを縛る存在へと変えられる。
自分が死んでしまえばその分凌辱者達の手が彼女達を汚すだろう。
逆に言えば自分がこの辱めを耐える事で、彼女達の負担を僅かばか
りでも減らす事が出来る。
そう思い込ませるために、ゼオムントはわざわざ教えてあげたのだ。
どこで、誰が、どのようにして、公娼をやっているのだと。
セナは公娼であった三年間にフレアと直接会った事は無い。
けれど知っていた。
彼女がパン屋の前で股をひらき、通行人相手に膣内出しを懇願して
その日の食料を得ていた事に。
セナの膣を犯しながら調教師が時折そのレポートを読み上げるのを
聞かされたのだ。
そして最後に最も大きなものがある。
復讐心。
殺してやるという思い。
取り戻してやるという誓い。
肉体を汚される度に彼女達はその殺意を育て、現状を見据える度に
失った物を再び手にする事を誓った。
ゼオムントはそうやって公娼の心を縛り、彼女達を生き延びさせて
きたのだ。
621
﹁知らん。死にたければ死ねばよい。騎士の矜持とやらに則って自
ら首を落とせばよかったではないかっ! それが出来もしないのな
らば、騎士などやめて股を開いて精液を啜って生きていけばいいで
はないかっ!﹂
リトリロイは依然馬上からこちらを見据えている。
﹁貴様あああああああああああっ!﹂
セナは寄ってくる兵士達を切り伏せ、リトリロイの全身を視界にと
らえる。
そしてその少し横で、呆然とこちらを見ているセリスを見つけた。
セリスはここが戦場である事を忘れているかの様に、長剣を握らず
ただただ押し黙って体を震わせていた。
﹁貴女には幻滅しましたよ、騎士団長っ! その男に取り入ってこ
れまで何も汚されずに生きてきたんですか? ワタシ達の苦しみも
っ! 死んでいった同胞の無念もっ! 貴女は何も感じなかったの
ですか?﹂
セナは最後の障害となった近衛兵を切り捨て、リトリロイへと猛進
する。
﹁違うっ⋮⋮セナ⋮⋮私は⋮⋮私はこの人と⋮⋮﹂
セリスは顔を上げ、悲壮な表情でセナへと声をかける。
﹁知らないわけじゃないっ! セナ達の苦しみも、リンダース達の
無念もっ! でも私にはやるべき事が︱︱誓ったのっ! この人と
⋮⋮私が、この人のものになったら︱︱﹂
そう言って、リトリロイへと顔を向ける。
﹁いまさら何をっ!﹂
セナは止まらない。
敵であるかつての上官の言葉など、最後まで聞いてやる必要も無い。
振りかざした大剣が、リトリロイへと迫る。
金髪の王子はそれを睨み据え、微動だにしなかった。
そこへ、一本の長剣が割って入る。
セリスが滂沱の涙を流しながら、長剣を両手で握り、セナへと向か
622
い合った。
﹁ごめん⋮⋮ごめんなさい⋮⋮セナ⋮⋮⋮⋮貴女を、捕らえる。未
来の為にっ! リーベルラントの為にっ!﹂
かつて同じ国に捧げられた剣と剣が、打ち合った。
﹁貴女がリーベルラントを口にしないでっ!﹂
大剣を振るい、セナが吠える。
﹁⋮⋮いつだって⋮⋮心の中にあったわよ⋮⋮私の故郷だものっ!
守れなかった⋮⋮大切な物だもの⋮⋮!﹂
セリスは長剣でそれをいなす。
﹁確かに私は公娼であって公娼で無い、そんな中途半端な存在だわ
! セナ達に恨まれても仕方がない、とてもとても卑怯な人間よっ
!﹂
長剣が閃き、大剣が受ける。
﹁それだけじゃないだろっ! 騎士団長、貴女はさっきユキリスを
ゼオムントに捧げたっ! そしてそれ以前にはアミュスとヘミネを
公娼に落したんだっ! その罪、逃れられるものかっ!﹂
大剣の重い一撃を、セリスは回避する。
﹁⋮⋮ッ! それは⋮⋮セナ。貴女にとって彼女達は大切な仲間だ
ったの?﹂
セナには隙が生じていたが、セリスはそれを突かず、長剣を構えた
まま言葉を投げかける。
﹁仲間よっ! 共にゼオムント打倒を目指して、シャスを支えてこ
の西域を突破するって誓った大事な仲間っ! 道を少し違えたから
って見捨てられるような存在じゃないっ!﹂
血走った目でかつての上官を睨みつけながら、セナは言った。
﹁⋮⋮セナ、それはリーベルラントよりも大切なものなのかしら?﹂
その言葉に、セナは動揺した。
﹁えっ⋮⋮﹂
623
﹁さっきの魔導士の命、開拓団を襲った二人の命。それらは私たち
が守らなければいけなかったリーベルラントよりも大切なものなの
かしら?﹂
セリスは長剣を構え、涙を流している。
﹁私はね⋮⋮選んだのよ。どれだけの物を捨てたとしても、リーベ
ルラントを救うんだって。騎士国家の、騎士団長よ⋮⋮私は。王に、
民に求められ、戦火を退け安寧へと導く責任が有ったの⋮⋮。私の
父がそうやって国を守ったように、私も国の為に命を捧げるんだっ
て⋮⋮﹂
大剣を構えたまま、セナは硬直する。
﹁騎士団長⋮⋮﹂
﹁それが⋮⋮っ! 愚かな文官たちの裏切りで、私の居ないところ
で国が滅んで⋮⋮っ! 何とかしようと模索したわ⋮⋮。でも王家
を人質に取られたら降るしかないじゃない⋮⋮っ! そこで、公娼
として初めて参加させられた競りでリトリロイ殿下に見初められ、
彼と約束したのよ⋮⋮っ!﹂
心ごとぶつかってくるような慟哭。
国を守るという意志を娘へと継いだセリスの父と、国を売った文官
であり、娘を犯す事を欲したセナの父。
その対比が、セナの心に影を生じさせる。
﹁いつの日か彼が国を興すから、その日までずっと傍にいて、彼を
愛し、彼に愛されたならば、ゼオムントを滅ぼすだけの兵を貸して
くれると、その兵を率いてリーベルラントを取り戻しても良いと⋮
⋮!﹂
セリスの望む未来とセナが望んだ未来に、大きな違いは無かった。
﹁だから、その日の為に、私は夜伽も覚えたっ! 彼に愛される為
に全ての時間を使った⋮⋮! 私自身も、国を滅ぼした憎い敵を好
きにろうと必死だった。他の公娼が目に入らなかったわけじゃない
っ! 王宮でだってそういう催しは定期的に開かれていて、リトも
主賓扱いだったから私も出席させられて、目の前で色んな悲劇を見
624
て来たわ⋮⋮﹂
それでもね⋮⋮。
とセリスは続ける。
﹁私はリーベルラントの為に耐えようとした⋮⋮! 彼女達の苦し
みを笑い、ゼオムントに溶けこめる様にっ! リトに見放されない
様にっ! 卑怯で腐った自分を殺したいと思う日はいくらでも有っ
たわ⋮⋮﹂
﹁そんな⋮⋮違う⋮⋮騎士団長、それじゃ⋮⋮﹂
セナは大いに動揺し、大剣の切っ先が揺れる。
﹁そうよ。さっきの魔導士も開拓団の襲撃者も、全部全部、私が倒
した。リーベルラントの為に! 彼女達の命も、運命も私は切り捨
てる。私は私の使命の為に誇りを捨て、偽りの愛に生きて、偽りの
正義を振るう! 否定したければ否定してもらって構わない。私を
殺してもらって構わないっ! でもそれは、私の使命を断ち切るだ
けの強さを貴女が持っていたならばの話﹂
そう言って、セリスは涙を振り払い、瞳に殺意を灯す。
﹁来なさい、セナ。リーベルラント騎士国家、騎士団長セリスが相
手をして差し上げます﹂
長剣は揺らがず、大剣は揺れる。
勝敗が決するのは明らかな事だった。
セナは大剣を取り落とし、その腹の上にはセリスが跨り、首に長剣
が突き付けられていた。
﹁⋮⋮私がリーベルラントを必ず取り戻します。その為に、貴女に
は犠牲になってもらうわ⋮⋮﹂
最後に一滴涙がこぼれ、セナの頬へと落ちてきた。
﹁セナさんっ!﹂
この場でセリスに匹敵しうる唯一の存在であるヴェナが叫び、全員
の注意がそちらに向く。
625
セナがセリスに組み敷かれていた。
﹁くっ⋮⋮ヴェナ様はセリス団長の相手をっ! 残りは数が減って
います、私達で何とかしましょう!﹂
シャロンが作戦を立て、全員に伝える。
この戦場に出るにあたってもともとボロボロだったシャロンの装備
はほとんど剥げ、素っ裸に近い。
マリスもリセもステアも、同様にダメージを負いながらも敵を倒し、
リトリロイ側の残存兵力は百といったところ。
そしてその時、彼女にとっては見知った声が高らかに轟いた。
﹁やいやいやいやいっ! 抵抗は止めろ! 公娼共っ! こいつら
をぶっ殺されたくなかったらな?﹂
大男︱︱グヴォンが松明を持って、口角を上げて笑っていた。
そのすぐ傍には、折り重なるようにして放置された女の体。
シュトラやユキリスの姿が見て取れる。
彼女達の体には油が撒かれ、不自然な輝きを放っている。
﹁火をつけるぞ? そうすると一発で大炎上だぁ⋮⋮仲間の命が大
切だったらよぉ⋮⋮その場で股おっぴろげて降参のポーズをとりな
ぁ⋮⋮俺様がチンポぶち込んで武装解除してやるからよぉ⋮⋮﹂
シャロンとマリスに敗れ、リトリロイの本隊と合流して以降、彼に
は蔑みの視線が与えられていた。
その失点を取り返そうとして、固めて置かれていたシュトラ達に油
を撒き、人質としてシャロン達に降伏を迫る。
シャスラハールが、ヴェナが、ステアが、ハイネアが、リセが、そ
してシャロンがあまりの不快感に顔を顰める。
﹁うっはー、卑怯だなーあのオッサン。やっぱあの時殺しておくべ
きでしたねー。マリス反省ですー﹂
マリスが頭を掻き、
﹁ふふっ。人間族にも面白いのがいるのね⋮⋮とっても不潔で逞し
いわ﹂
ラグラジルが冷笑した。
626
そして敵中でも、
﹁⋮⋮チッ!﹂
セリスが憎悪の視線をグヴォンに向け、リトリロイも冷めた目で彼
を追った。
﹁⋮⋮そういう事らしい。貴様ら降伏しろ。命は保証してやる﹂
半ば投げやりにリトリロイが言った。
﹁これはもう⋮⋮潮時か﹂
ステアが歯噛みし、呻く。
それを受け、シャスラハールが叫んだ。
﹁ラグラジル、異空間は開けるか?﹂
その問いに、
﹁陣地構築は終わっているけれど⋮⋮向こうで捕らえられている人
達にまでは届かないわね。言ったでしょ、この異空間は限定される
って。そこまで大きな範囲じゃない。ついでに言うとそこの聖騎士
様は範囲外だから少し戻ってきてもらわないと無理ね﹂
ヴェナが範囲外である。
それはつまり、その先でセリスに捕らえられているセナにも届かな
いという事だ。
﹁セナさんっ!﹂
シャスラハールは絶叫に近い声を上げる。
その意を汲み、セナの救出へ一歩を踏み出そうとしたヴェナに、
﹁抵抗は止めろって言ってんだろっ! 火ぃつけるぞ!﹂
グヴォンが喚いた。
沈黙が、訪れる。
この場を支配しているのはシャスラハールでもリトリロイでも無く、
ましてやヴェナやセリスでも無い。
グヴォンなのだ。
﹁はっはっ! お前もお前もっ! どれも見た顔だなぁ⋮⋮首都に
ある俺のコレクションに揃っている奴らばかりだ⋮⋮これはヤり甲
斐があるなぁ⋮⋮﹂
627
その視線がヴェナを見、ステアを見る。
その時、声が上がった。
﹁シャス! 良いから逃げてっ! アタシの事は、アタシでなんと
かする!﹂
セリスに組み敷かれたままのセナが叫んだのだ。
﹁シュトラ達の事も、アタシに任せてっ! 絶対に連れて帰る。必
ず合流する。だから、先に行ってっ!﹂
張り上げた声は、力強い。
﹁セナ、さん⋮⋮﹂
﹁シャロンっ! 何してるのよ。貴女ならわかるでしょ! 今どう
する事が最適なのかっていう事が﹂
強い声に押され、シャロンは唇を噛んで頷いた。
﹁殿下、撤退を⋮⋮﹂
﹁シャロンさん⋮⋮そんな、セナさんが⋮⋮﹂
狼狽えるシャスラハールの服の裾をハイネアが握った。
﹁シャス⋮⋮。お主のやるべき事を見失ってはいかん⋮⋮ラグラジ
ルを手に入れた先、妾達が何を成すべきか⋮⋮。ここでゼオムント
に投降して、何になろう⋮⋮﹂
幼いながらに悲壮な声。
シャスラハールは顔を俯け、魔天使へと言った。
﹁ラグラジル。魔法を⋮⋮撤退だ﹂
その震える声を、魔天使はひどく心地よさそうに聞いて、笑った。
﹁あはははははっ。はいはい、撤退で御座いますねご主人様⋮⋮ふ
ふふ。この度は残念至極で⋮⋮うふふ、あはははははは﹂
腹を抱えて笑いながら、ラグラジルは指を鳴らす。
仲間達の足元に闇の門が開き、急いで下がってきたヴェナも間に合
った。
異空間へと落ちながら、シャスラハールは叫んだ。
﹁︽天兵の隠れ里︾で待ってますっ! 絶対に⋮⋮戻ってきてくだ
さいね!﹂
628
その言葉を受け、セナは倒れ込んだまま右手を突き上げた。
セリスはその動作を止めようともしなかった。
﹁さーて、んじゃお待ちかねの公娼ターイムだなぁ﹂
グヴォンはシャスラハール達が撤退した後、すぐに色めき立って周
囲をはやし立てる。
自分の功績を誇り、その結果により公娼を利用できるとなれば、他
の生き残りの兵士達からの評価が高騰するはず。
既に兵士達は死んでいった味方に対する興味よりも、捕虜になった
公娼達へと視線が動いている。
これが、ゼオムントの現実。
嗜虐性を突き詰めた国民性。
グヴォンは意気揚々とセリスの元にまでやって来て、転がっている
セナを見て顔を綻ばせる。
﹁俺はこいつに膣内出し⋮⋮とおぉぉぉ﹂
セリスが剣を振るい、グヴォンに突き付け睨みつける。
﹁ひ、ひぃぃ。セ、セリス様何を⋮⋮﹂
その言葉には答えず、ただ冷酷にグヴォンを睨み、セリスはリトリ
ロイへと振り返る。
視線を受けて、リトリロイは頷いた。
﹁撤収だ。公娼の利用は陣に帰ってからにしろ。この任務は一刻を
争うものだと事前に伝達したはずだが?﹂
王子の冷めた声により、鎧を外しかけていた兵士達は慌てて装備を
整える。
﹁公娼の移送にはそこにある荷車を使え、どうせここらの魔物は全
滅している。鹵獲したところで文句を言うやつなどいまい﹂
マルウス族の荷車を指して示し、公娼を運ばせる。
﹁セリス様⋮⋮こちらをお預かりします﹂
セリスは近寄ってきた歳に差のある二人の兵士に声を掛けられ、自
629
分が組み敷いていたセナと視線を合わせる。
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮﹂
両者無言のまま、ついに言葉を交わさず視線が外れ、
﹁どうぞ⋮⋮﹂
セナは兵士達に運ばれて行った。
運ばれた先、マルウス族の荷車は小柄な彼ら用に小さく作られてい
た物であり、人間が十人座る余裕は無かった。
﹁ふぅむ⋮⋮どうするべきか﹂
老年の兵士が顎に手を遣り、思索する。
﹁とりあえず余分な物は全部外しちゃいましょうか﹂
相方である若い兵士が言って、セナの衣服に手をかけた。
﹁くっ⋮⋮﹂
上半身を覆っていたジャケットを外され、インナーもはぎ取られる。
﹁おぉそうだな。それじゃあこちらも⋮⋮﹂
皺の刻まれた手が伸び、セナの下腹を覆っていたパンツを掴み、ゆ
っくりと降ろしていく。
幾人かの兵士は撤退準備をしながら、彼女の秘部が露わになって行
くのをジッと見つめていた。
﹁おぉよしよし⋮⋮こりゃあ帰ってからが楽しみだな﹂
老いた声で兵士が笑い、チョンチョンとセナの膣口を撫でさすって
から離れた。
﹁お前達、そっちのも服をはぎ取ってやれ﹂
その声で、別の兵士が気絶しているユキリスに纏わりつき、全裸に
剥いた。
﹁それで? 結局どうやって載せるんです? 十人じゃ座れないで
しょう?﹂
若い兵士の言葉に、老いた兵士はカッカと笑って答えた。
﹁なぁに座る必要などないのさ。さぁほら、載せよ。荷車に対して
水平に寝かせてな。丁度魚の行商がやっている様に平らに積めば良
630
いのさ。最初に四人、次に三人、最後に三人。呼吸は出来る様に工
夫せいよ﹂
指示に従い、兵士達は公娼を荷車に載せていく。
最初にシュトラと共にこの里に残った元シャスラハール組の四人が
進行方向へ頭を向けた仰向けの状態で載せられる。
彼女達は放心状態そのもので、正体を失っている。
そしてその上に、セナとシュトラ、そして気を失っているユキリス
が頭を反対に向けた状態で載せられる。
油で汚された彼女達の上に乗ると、ぬるぬると滑り、非常に不安定
だった。
﹁クッ⋮⋮何よこの扱い⋮⋮﹂
﹁ごめんなさい⋮⋮ごめんなさいセナさん⋮⋮私は⋮⋮誰も守れな
かった⋮⋮﹂
セナが不満を口走ると、すぐ傍でシュトラが涙声を発していた。
﹁シュトラさん? 大丈夫なの?﹂
てっきり自分以外は意識を失っているものだと思い込んでいたセナ
は驚きの声を上げる。
﹁⋮⋮えぇ、私は大丈夫です。他の皆さんは﹃お花﹄の効果が切れ
た事とさっきの変な︱︱マルウスを狂わせた魔法の影響で気を失っ
ているみたいですね⋮⋮﹂
二人がひっそりと声を交わしていると。
﹁よーしこれで最後だ﹂
そう言って兵士達の手で残りの三人、足を失っている動けない公娼
達が載せられた。
セナとシュトラ、そしてユキリスは生温く油の滑つく女の体に上下
で挟まれた事になる。
﹁おおう、落ちない様に縛っておくのを忘れるなよ﹂
老いた兵士の声に従い、若い兵士が公娼と荷車を纏めて紐で縛って
いく。
荷車の中は狭く、手足を動かせる余裕は殆どない。
631
ましてやセナ達は上下で女体に挟まれている状況で、ようやく上の
人間の股の間から呼吸ができるのが現状だ。
そして、リトリロイの部隊は戦死者を一か所に集め、火にくべて簡
易な埋葬を済ませると、速やかに陣地へと向かった。
ガタゴトと荷車は揺れる。
その度に、セナは上下の肉に埋もれ、油で滑りが良くなったことで
全身を撫でられるような不快感を味わうのだった。
﹁セナさん⋮⋮聞いても良いですか?﹂
隣で同じ状況にあるシュトラが声をかけてきた。
﹁シュトラさん、私もたくさん聞きたい事が有るわ﹂
セナはそう答え、一先ず相手に譲った。
﹁どうして⋮⋮マルウスの里へ戻ってきたのですか?﹂
﹁それは⋮⋮成り行きで遠くの出来事を見る事が出来たんだけど、
そうしたらマルウスの里でシュトラさん達が⋮⋮その、酷い目にあ
ってて⋮⋮それで﹂
言葉を濁すのは、シャロンから伝えられたシュトラ達の悲劇。
それがあまりにも酷な内容だったので、面と向かって口にする事は
憚られた。
雌車、釣り餌、そして醸造。
あの卑小なマルウス族によって強いられてきたものは、恥辱と呼ぶ
事ですら生ぬるい、そんな代物だった。
﹁⋮⋮そうですか。王子は⋮⋮シャスは最初からマルウス族を疑っ
ていました⋮⋮その為に、私を内偵にだし、里の現状を探らせたの
にも関わらず⋮⋮私が不甲斐無いばかりに⋮⋮皆を巻き込んで⋮⋮
こうしてセナさんまで⋮⋮﹂
シュトラの声は消え入りそうに小さい。
この人はずっと己を責め続けたのだ、とセナは痛感させられる。
﹁⋮⋮それだけじゃなくてね。アタシ達は旅の真実を知って、それ
を覆す秘策も見つけて、それがマルウスの里に向かっている事も分
ったから、戻ったの。大丈夫、シャス達はそれを手に入れた。これ
632
からそれを使ってシャス達は戦える。アタシ達もさっさとここを抜
け出してその手伝いに向かわなきゃね﹂
明るく力強い声で言って、シュトラを励ます。
その声に、シュトラは儚げな笑みを浮かべた。
﹁ねぇセナさん⋮⋮良かったら手を握ってくれない?﹂
﹁えっ?﹂
突然の提案に驚きの声を上げる。
﹁実はね⋮⋮さっきから頭が朦朧として、凄く気分が悪いの⋮⋮た
ぶんそろそろ、マルウスの﹃お花﹄が切れたことによる禁断症状が
襲ってくると思うのだけれど⋮⋮私は、そんな物には負けられない。
ここに居る全員を救って、必ずシャスの元へ戻る。その為には、今
狂ってしまうわけにはいけないの。だからね、セナさん。今だけ助
けて⋮⋮私を正気に、繋ぎ止めて﹂
良く見ればシュトラの額には汗が浮き、呼吸も不安定だ。
セナはシュトラの手を取り、力強く握りしめる。
﹁うん⋮⋮! 耐えよう。そして一緒に戻ろう! シャスの元へ﹂
そう言った瞬間、セナの陰唇を生温かい衝撃が襲った。
﹁ひんっ!﹂
驚き、高い声を上げてしまう。
この感触は、記憶にある。
舌。
人間の舌が女性器を舐めしゃぶり、快楽を与えて来る時の感触。
﹁な、なに⋮⋮﹂
自由にならない首で、何とか視線を動かし、自分の股間へと向ける。
そこで下敷きになっているかつての仲間が、愛おしそうにセナの陰
唇に舌を這わせていた。
﹁やめっ! やめてっ!﹂
混乱する頭で言い、必死に身を捩るが、元より自由になる空間など
無い、セナの陰部はそのまま生温かい舌に犯され続けた。
﹁あんっ⋮⋮ふぁ﹂
633
隣で、シュトラも甘い声を放つ。
彼女もまた、下からのクンニに責められていた。
﹁シュ、シュトラさん⋮⋮これ、どういう⋮⋮﹂
﹁恐らく⋮⋮﹃お花﹄が切れたことによる禁断症状⋮⋮んっ! 強
烈な催淫性があるから⋮⋮それで⋮⋮﹂
二人は息を切らせながら言葉を交わす。
そして、次の瞬間刺激が倍に膨らむ。
﹁あああぁぁんむっ!﹂
﹁ふひゃああああ﹂
上に乗っている体が反転し、セナの陰唇へと舌を伸ばしたのだ。
上下から二本の舌が、陰裂を犯してくる。
それだけでは無い。
﹁いや⋮⋮やめてっ⋮⋮ああああああっ!﹂
上下の公娼はおもむろに手を動かし、セナの陰唇を割り開き、アナ
ルへと突き入れ始めたのだ。
容赦の無いストロークで、
ズチュズチュ︱︱と、犯してくる。
隣を見ればシュトラも同様に、仲間達から犯されている。
﹁んひぃぃぃぃだめっ! 抓まないでっ! やめっあああああああ
あ﹂
陰核を抓まれ、膣とアナルの奥の奥にまで指を突き入れられて、セ
ナはよがる。
その内、上下の公娼が全身を動かし始めた。
自らも快楽を得ようとして、セナの体に陰唇を擦り付けて来る。
油で覆われた彼女達の体は良く滑り、セナへと快感を伝えて来る。
﹁ダメッ⋮⋮ダメェ⋮⋮﹂
顔の上を陰唇が滑り、後頭部に陰核が引っ掛かる。
その動きを数回繰り返した後、上下の公娼の体は震え、絶頂を迎え
た。
プシャ︱︱と女陰から愛液が噴き出す。
634
それらは全てセナの顔に掛かり、体を汚していく。
﹁あ⋮⋮あふ⋮⋮すごっ⋮⋮あああああああん﹂
隣でシュトラが甘い嬌声を発し始めた事に、セナは気づく。
﹁ダメっ! シュトラさん。自分を見失わないでっ!﹂
握り合った手に力を込め、シュトラを快楽地獄から救い出す。
逆隣を見れば、今の今まで意識を失っていたユキリスも目をさまし、
同じ様に上下の公娼に犯されて甘い声を放っていた。
﹁ユキリスっ! 耐えて⋮⋮正気を保ってっ!﹂
反対側の手でユキリスの手を掴み、意志を伝える。
﹁⋮⋮ッ!﹂
魔導士は無言だったが、その手を握る強さで返答した。
それからセナ達は、開拓団の陣地に到着するまでの間、延々と責め
続けられた。
油に濡れた全身を擦り付けられ、陰核を甘噛みされ、膣内を泡立つ
ほどにかき回され、肛門を舌でふやけるほどに舐められた。
荷車の中では数秒ごとに誰の物ともわからない愛液が噴き出し、嬌
声が迸る。
セナとシュトラとユキリスは、お互いに手を取り合ってその責め苦
に耐え抜き、一日以上をかけた強行軍の末、ようやく陣地に辿り着
いた時に、体中をドロドロに染め上げた状態で意識を手放した。
彼女達を荷台から降ろすように指示された老いた兵士と若い兵士の
二人組は、荷台の中の思わぬ惨状に爆笑し、傍を通りかかった兵士
達に声を掛けては覗かせて、話のタネを作って笑いを分け合った。
635
身体検査︵前書き︶
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636
身体検査
ニヤニヤと下品に笑う男達の手で、セナ達は荷車から降ろされる。
気絶から立ち返ったとは言え、全身を襲う疲労感は拭えない。
体中にこびり付いた愛液の奇妙な感触も、気分を低下させる。
﹁おら、こっちだ﹂
無骨な腕に両側から抱えられ、ゆっくりと歩いて行く。
剥き出しの乳房、陰部の全てに周囲の男達の視線が突き刺さり、セ
ナはぼうっとする頭で思い出した。
﹃公娼﹄
自分が脱却できたと思っていた地獄の身分に、今立ち返ろうとして
いる現実を。
﹁ひひひひ⋮⋮あはははは⋮⋮はは﹂
セナの後方では、奇妙に引き攣った笑いが止めどなく零れている。
﹁こりゃ⋮⋮ダメかもなぁ⋮⋮﹂
兵士の一人が言う。
彼の視線は、荷車の縁に股間を擦り付け、必死に性的快楽を得よう
としている公娼へと向かっていた。
シュトラと共に里に残った仲間達、マルウス族の﹃お花﹄の強力な
中毒効果により彼女達は完璧に正気を失っていた。
﹁みんな⋮⋮﹂
唯一、正気を保つことが出来たのはシュトラ。
セナが荷車の中でずっと手を握りしめて励ましていた事と、仲間達
を貶めてしまったという罪悪感が彼女を狂わせなかった。
﹁お願いします⋮⋮。彼女達に私の魔法を使わせてください⋮⋮お
願いします⋮⋮﹂
話によれば自らに﹃狂奔﹄をかけていたらしく、荷車の中では意識
が朦朧としていたユキリスだったが、今に至り己を取り戻し、狂い
637
の状態にある仲間達の様子を見て自らの魔法の影響ではないかと青
褪めさせる。
﹁ダメだ。捕虜の魔導士に武器を与える馬鹿がどこにいる﹂
無下に断られ、悲痛な視線をかつての仲間達へと送る。
﹁ユキリス、違うわ。ラグラジルが言っていた⋮⋮貴女の魔法はマ
ルウスを狂わせ殺したけれど、人間を狂わせてはいないと⋮⋮。だ
から、レナイ達のそれは⋮⋮貴女のせいじゃない﹂
セナは弁護する。
証拠はたった一つ魔天使の言葉だけだったけれども、もし本当にユ
キリスの魔法でレナイ達がああなってしまったのであれば、それは
救い様の無い悲劇になってしまう。
﹁⋮⋮それでも⋮⋮私の魔法の影響で皆さんが逃げる事も出来ずに
ゼオムントに捕まったのだとすれば⋮⋮、私の⋮⋮罪です﹂
魔導士の声は沈み、苦しみに歪んでいる。
一時ラグラジルの甘言に惑わされて道を違えた彼女は、魔天使とい
う歪んだ希望を再び失った事により正常な心を取り戻している。
それゆえの苦しみ。
﹁無駄話はそこまでにしろ。ほら到着だ。中へ入れ﹂
兵士がセナの尻を強く叩き、天幕へと押し入れる。
﹁ぐっ⋮⋮﹂
大きな天幕だった。
人間が百人以上楽に暮らせるほどの広さをして、中には揃いのロー
ブを羽織った連中が待ち構えていた。
幾つもの棚や機材が置かれ、そこに収められている物に見覚えが有
った。
それらは全て、公娼を調教管理する際に使用される、調教師の仕事
道具だった。
﹁やぁようこそ⋮⋮歓迎するよ公娼諸君﹂
調教師の中から長身の男が歩み出てきた。
﹁これから先君達の体は毎日開拓団に捧げられる。自分の名前はラ
638
ターク、君達の肉体面についての管理責任者だ。どうぞよろしく頼
む﹂
ラタークは恭しく腰を折り、礼をする。
セナとシュトラ、そしてユキリスは無言のままそれを見据える。
﹁さて、今日のところはまず身体検査だな。君達の肉体資料に関し
ては昨年度分までしか残っていない。今の時代、調教師も情報が命
でね。自らが管理する商品だ、体の隅々まで調べさせてもらうよ。
始めろ﹂
ラタークは手を振り、調教師達に指示を下す。
一人の調教師がセナに歩み寄り、腕を引っ張って手近な椅子へと連
れて行く。
椅子の傍には二人の男が立っていて、待ち構えていた。
﹁⋮⋮何するって言うのよ⋮⋮!﹂
セナは椅子に座らされ、両側から男達の手で股をこじ開けられなが
らも強気で睨みつける。
﹁測定だ。お前の商品価値を数値化して開拓団に公開する。ジッと
していろ﹂
セナを椅子まで連れてきた男が、おもむろに手近な机から定規を取
り出した。
手を伸ばし、定規をセナの陰部へとあてがう。
﹁なっ! やめろっ!﹂
体を揺すって抵抗するが、両側から押さえ込まれ股を閉じる事すら
できない。
﹁膣口、縦二寸半﹂
定規を持った男は始めに膣口に対して縦に合わせ、長さを計る。
それを傍で控えていた男が紙へと書き写していく。
﹁横一寸﹂
陰唇を押し広げながら、通常状態の閉じた膣口を計っていく。
﹁くぅぅぅぅ!﹂
セナは瞳に力を込め、男達を睨みつける。
639
しかし調教師は動じない。
彼らにとって公娼がそのような反応を示す事は、その公娼の活きの
良さを証明する事にしかならないからだ。
﹁次、奥行﹂
男は定規を持ち替え、槍の様にしてセナの膣口へと押し付ける。
﹁え⋮⋮待て! やめろっ!﹂
ズブリ︱︱。
﹁んひっ!﹂
温もりの無い無機質な物体が、セナの膣へと侵入してきた。
﹁四寸、もう少しいけるか⋮⋮五寸入るな。通常時でここまで入る
のは良いマンコだ﹂
男はズボリと入っている定規の目盛を覗き込むためにセナの股間に
顔を寄せながら言った。
﹁ぬ、抜けっ! 今すぐ抜けっ!﹂
セナは体を怒りで震わせながら怒鳴った。
その言葉に対して、調教師達はニヤリと口元をほころばせる。
﹁良いな。お前⋮⋮とても良い素材だ﹂
﹁あぁ、捕まえに行った連中の報告を聞けば、十人中七人は精神異
常だそうじゃないか、そんな奴らでは調教のし甲斐が無い﹂
﹁じっくりと仕込んでやろう⋮⋮この体に﹂
そのような事を言いつつ、定規が引き抜かれる。
﹁陰核の方はどうだ?﹂
﹁しっかりと隠れてる。剥き身の物よりも感度があがるし、これは
これで良いな﹂
つぶさにセナの陰部を眺めながら男達が頷き合う。
﹁お前らっ! 離せ⋮⋮殺すっ!﹂
いくら暴れたところで意味など無い。
調教師を喜ばせるだけだ。
だがしかし、そうだとわかっていてもセナは反抗する。
そうしなければ失われてしまうからだ。
640
騎士としての自分が。
﹁姿勢を変えろ。後ろを計る﹂
定規を握る男の声で、セナを拘束している二人が力を込め、足を更
に持ち上げて肛門を定規の男の目線の高さへと持ってくる。
﹁くぅ⋮⋮やめろっ!﹂
肛門をじっくりと観察され、セナは叫ぶ。
﹁誰がやめるものか⋮⋮。直径は⋮⋮一寸半といったところか⋮⋮﹂
男が定規を尻穴にあてがい、計測する。
﹁皺を数えるぞ。おい、お前も手伝え。俺が左回りで数えるからお
前は右な﹂
後ろで数値を書き記していた男に声をかけ、二人でセナの肛門に視
線を合わせ、指を差しながらカウントしていく。
﹁一、二、三、四、五⋮⋮⋮⋮二十四、二十五、二十六⋮⋮⋮⋮﹂
﹁三十二、三十三、三十四。三十四だな﹂
定規の男が言い、ペンを握ったままだった男は首を傾げる。
﹁俺は三十五だったが⋮⋮﹂
﹁そうか⋮⋮? なら数え直そう﹂
﹁そうだな、ちょっと見にくいか。広げよう﹂
そう言って男達は定規とペンを握っていないそれぞれの空いた手で
セナの肛門を押し広げ、また数をカウントしていく。
﹁⋮⋮っうううっ!﹂
セナは唇を食い千切らんほどに噛み縛り、屈辱に耐える。
﹁ほら、三十四じゃないか﹂
﹁本当だ⋮⋮三十四だったな。スマンスマン﹂
定規の男が胸を叩き、ペンの男は笑いながら謝った。
﹁よし、姿勢変えろ。次は胸だな﹂
その声に従い、セナは無理やり胸を突き出した体勢へと変えられる。
﹁痛っ! 変なところ触るなっ!﹂
﹁おいおい⋮⋮俺達はこれからお前の全身どこでも触りまくるぜ、
変なところも汚いところも。今の内から慣れておけ﹂
641
定規の男はセナのくっきりと盛り上がる乳房に手を当て、撫で擦る。
﹁ふむ⋮⋮質感は悪く無い。硬すぎず、けど確かな反発が有る。こ
れは人気の出る乳だな﹂
そう言って彼は定規をセナの乳輪に当て、計測する。
﹁乳輪左右共に二寸半。色素は薄く、沈着は無い﹂
その言葉を、後ろでペンを握る男が記載していく。
﹁乳首は⋮⋮通常時は半寸といったところか⋮⋮。ちょっと足りな
いな。おい、お前ら起たせてやれ﹂
そう言われて、セナの左右を押さえていた男達が片手を伸ばし、乳
首をコリコリといじり始めた。
﹁やめっ⋮⋮やめぇぇろぉぉぉ!﹂
ガタガタと椅子を揺らして抵抗するが、男達の拘束は解けなかった。
そして弄り回されていく内に、誤魔化しきれない性的快感が沸き起
こり、セナの乳首は一目にわかる程に膨れ上がった。
﹁膨張時は一寸半⋮⋮っと。結構でかくなるな、良いぞ。わかりや
すく乳首を起たせる事が出来るのもまた才能だ﹂
セナは屈辱的な言葉を吐かれ、眉間に皺を寄せて睨みつける。
﹁おぉ怖い⋮⋮さて、後はこまごましたところを計っていくか﹂
そう言って調教師達はセナの手指の長さや舌の長さ、髪の具合など
を計測する為に全身を弄り回し、ようやく終了した頃には一刻が経
っていた。
﹁よし、じゃあ君はこっちだ﹂
責任者であるらしいラタークという男に声を掛けられ、ようやく恥
辱の身体検査から解放されたセナは別の場所へ連れて行かれる。
天幕の隅の方に設置された、人目隠しの仕切りの内側だ。
そこに二人の人間と、二人の公娼が控えていた。
﹁シュトラさん、ユキリス⋮⋮﹂
セナと同様に身体検査を受けていた二人が、先にここへ通されてい
642
た。
沈痛な表情で、床を見つめている。
二人はそれぞれに、責任を感じているのだ。
﹁ふむふむ。シュトラちゃんはオッパイが良い感じね。乳輪も乳首
を満点で、計測した子が言うには特に質感が素晴らしいと。オッパ
イだけならSランク公娼になれるそうよ。良かったわね﹂
ニッコリと笑ってシュトラに声をかけているのは魚顔の中年女。
彼女は資料をめくって、
﹁ユキリスちゃんはそうね。マンコが良いわ。奥行きが六寸もある
のね! それでいて横幅は狭くて、キツくて長いマンコだんて理想
じゃない! これはたっぷり精液を注ぎ込み甲斐があるわねぇ﹂
次はユキリスへと笑顔を向けた。
そして更にもう一枚資料をめくり、今度はセナへと目を向ける。
﹁貴女がセナちゃんね。私はオルソー。ここのナンバー2よ。そっ
ちのラタークよりも偉いの。覚えておいてね﹂
ニッコリと笑う魚顔と、セナの横で顔を顰める長身の男。
ラタークの表情を気にするそぶりも見せずに、オルソーは資料を読
み、そして朗らかに言った。
﹁素敵ね! セナちゃん。計測結果はどれも高得点だし、そして何
より反抗的な態度が良いわ。貴女人気が出るわよー。私が保証して
あげる﹂
オルソーは備考欄に記されたセナの性格についての記述に喜び、手
を叩いて笑った。
﹁⋮⋮ふんっ!﹂
セナは不愉快極まる思いで、醜い中年女を鼻で笑う。
それを見たオルソーの瞳が、ギラリと光った。
﹁⋮⋮あら。あらあら⋮⋮ふふ。良いわね﹂
不気味に笑い、オルソーは資料をすぐ近くの机へと置いた。
そしてすぐ隣へと視線を移す。
﹁棟梁。以上ですわね。残りの連中は正直言って半分壊れてますの
643
でとてもとても映像作品に仕える様な代物じゃありませんわ。開拓
団への性処理用に全部回しましょ。文化を理解する脳を持たない連
中にはちょうど良い肉便器になりますわ﹂
オルソーに声を掛けられたのは、老いた男だった。
男はオルソーの声に煩そうに顔を顰め、ラタークへと視線を送る。
﹁おい、アイツラはまだか⋮⋮﹂
﹁ハッ。もうすぐ⋮⋮来ましたね﹂
ラタークは仕切りをトントンと叩く音に反応して、振り返る。
その場に、三人の人間が増えた。
一人はバケツを頭に被った小汚い少年。
そして、
﹁アミュス⋮⋮ヘミネ﹂
セナにとっては見覚えのある顔だった。
ベリスとの戦いの後、道を違えた者達。
シャロンから開拓団に捕まっていると聞かされていたので、そこま
で驚きは無かった。
﹁貴女⋮⋮っ。そう⋮⋮﹂
アミュスは驚きの声を上げ、そして何かを悟って口を閉ざした。
ヘミネは無言で俯いている。
﹁つ、連れてきましただ⋮⋮旦那様方⋮⋮﹂
そう言って怯えている少年の手先が、アミュスとヘミネの膣に収ま
っている事にセナは気づいた。
大人達へと卑屈な笑みを浮かべながら、その一方でこのような状況
でも二人の性器を弄り回している。
バケツを被っているという異質さも含め、セナは少年の事が酷く禍
々しいものに感じられた。
﹁ご苦労様、テビィ君。本来のお仕事に戻りなさいな。あぁお駄賃
として入り口のおじさんから御菓子をもらうと良いわよ。言伝はし
てあるから﹂
オルソーが猫なで声で言って、それを受けたテビィは二人の膣から
644
手を引き抜き、その手で頭を掻いた。
ねっとりと光る指で、バケツを撫でているのだ。
﹁並べ﹂
テビィが出ていったのを機に、老いた男がしわがれた声を放つ。
アミュスとヘミネがセナの隣に並び立ち、セナは並ばされた五人の
中央に位置した。
﹁ワシは⋮⋮この調教師団を束ねる者。ゾートじゃ﹂
その名を聞いた瞬間、セナの脳裏にシャスラハールの語った彼の過
去が浮かび上がってきた。
彼の姉を殺し、大陸一の名を得た調教師。
﹁ゾート⋮⋮っ!﹂
飛び掛からんばかりに一歩を踏み出したセナに全員が注目する。
﹁あぁん? ワシの名がどうかしたか? 流石に有名だろうとは思
うが、公娼にまでファンがおったとはなぁ⋮⋮愉快愉快﹂
ゾートは笑っている。
オルソーも。
ラタークは仏頂面だ。
セナは躊躇しなかった。
右腕を振りかぶり、渾身の一撃を叩きこむ。
﹁我が王の、怨敵っ!﹂
強烈な拳が、老いた男の顔に炸裂した。
ゾートは吹き飛び、オルソーは悲鳴を上げ、ラタークは愕然とした
表情を浮かべる。
シュトラが、ユキリスが、アミュスが、ヘミネが、驚きの視線を送
ってくる。
セナは振りぬいた拳を更に握りしめ、続けて襲いかかろうとする。
その時、オルソーが金切り声をあげた。
﹁衛兵っ! 衛兵っ! ここ、こいつを捕まえてっ!﹂
天幕の内部に控えていたゼオムント兵士が槍を構えてやって来て、
セナヘと突き付ける。
645
﹁抵抗はやめろよ⋮⋮ここで無駄に刺し殺しては面白くない⋮⋮。
調教師らしく、貴様を地獄でも顔を上げられなくなる程に辱めてか
ら殺してやろう﹂
ラタークが衛兵の間から厳しい声で言い、オルソーは震えながらセ
ナを指差す。
﹁ひぃぃ! 野蛮人っ! 怖い、怖いわぁぁぁああ助けてぇぇぇア
ナタあああああ﹂
錯乱しながら、ここにいない彼女の旦那へと助けを求めている。
セナは周囲を見渡し、舌打ちを一つ吐く。
﹁⋮⋮どうせ死ぬなら、この老いぼれぐらい道連れに出来ないかな﹂
その言葉に、笑い声が上がった。
口から血と歯をまき散らしながら立ち上がったゾートが、笑ってい
る。
心の底から楽しくて仕方がないと言った様子で爆笑している。
﹁フハッハハハアハハハハハ。殴ったか⋮⋮調教師を、公娼が⋮⋮
このゾートをっ! ゼオムント一の調教師と呼ばれ、全ての公娼に
怖れられるワシを殴りよったか⋮⋮。良いぞ⋮⋮小娘。お前はワシ
が担当してやる﹂
ゾートは兵士に支えられながら、セナを指差した。
﹁と、棟梁? こいつを生かすのですか?﹂
オルソーが怯えた声で言い、
﹁棟梁⋮⋮それでは他の公娼に対する支配が揺らぎます。見せしめ
の為にも我らの全力を持って死を作品として演出すべきです﹂
ラタークが顔を顰めて言った。
それらに対して、ゾートは首を振った。
﹁のう⋮⋮オルソー、ラターク。開拓団ドキュメンタリー作りに関
して、ワシらの意見はぶつかっておるな⋮⋮そこでじゃ、コンペテ
ィションをせぬかのう? ワシとオルソーとラタークで、自分が望
む方向で作品の短い試写映像を作り、この開拓団に所属する人間達
全てに投票させて決を採る﹂
646
ゾートはそう言って、震える手を伸ばす。
伸ばす先はセナの乳房。
セナは手で振り払おうとしたが、すぐ傍にまで伸びてきている槍に
無言の警告をされ、唇を噛んで受け入れた。
﹁ワシは⋮⋮こやつを使う。ワシ自身が演出し、こやつの体で作品
を作り上げ、大衆を納得させてやろう。ハンデじゃ。ワシはこやつ
一人で良いが、お前達はそこから二人ずつ選ぶが良い﹂
ゾートのしわがれた手がセナの乳房をむにむにと揉みしだく。
それを見て、オルソーが声を落ちつけて言った。
﹁ならば私は⋮⋮私の望むハード凌辱ストーリーの為に、体力のあ
るヘミネちゃんとシュトラちゃんを使わせてもらおうかしらね﹂
出遅れた形のラタークは顔を顰めながら、
﹁⋮⋮良いでしょう。自分の望むハートフルコメディー路線にはア
ミュスとユキリスを。普段知的ぶっている女に低俗で馬鹿な事やら
せるのも一興になりましょうな﹂
オルソーはシュトラとヘミネを引き寄せ、ラタークはユキリスとア
ミュスの肩を掴んだ。
﹁決まりじゃな⋮⋮。開催は一週間後、開拓団広場で行う。各自持
ち時間は四半刻とする。これから先一週間はこやつらの一般開放は
無し。その間に各陣営芸を仕込み、調教を済ませよ﹂
長の一声に、調教師達は色めき立った。
天幕内は喧騒に包まれる。
﹁おいおい聞いたか? ゾート様とオルソー様とラターク様のコン
ペだってよ?﹂
﹁すげぇ⋮⋮ゼオムントでトップ3の調教師達が腕を競い合うだな
んて⋮⋮しかもそれをこんな間近で見られるだなんてっ!﹂
﹁何でもお手伝いしますから、傍で見学させてください!﹂
それらの声にはラタークが応じ、オルソーは別件を思案する。
﹁でも、一般公開無しだと開拓団の作業効率が下がりますわね⋮⋮
あぁ! 今回捕らえてきた残り七人のポンコツを解放すればよいの
647
ですね。私達はこれから忙しくなりそうですし、適当な柵を作って
鎖でつないで置いておきましょう。調教は無しで、エサ遣りと掃除
はテビィ君にお任せして。ね、棟梁それでよろしくて?﹂
オルソーの声に、ゾートは頷く。
﹁うむ⋮⋮ここの連中総出でコンペに取り組む以上、人手は無いか
らな。とりあえず死んでしまわぬ様に開拓団の中から働けない奴を
監視係として配置しておけ、管理に関してはさっきのガキにやらせ
てみよう⋮⋮あれは、もしかしたら天性の才能がある者かもしれん
しのぅ﹂
とんとん拍子に話が進んで行く。
セナはそれを聞きながら、自らの右手にこびり付いた調教師の血を
眺める。
何故だかそれで、勇気が湧き上がってきた。
今までのただ嬲られるだけの公娼では無く、自分は自分の意思で、
王の為にその拳を振るえたという事実に、嬉しさを感じた。
﹁シャス⋮⋮待っていて、絶対に戻るから。こんなところ抜け出し
てみせる、アタシの剣はアンタを護る為に有るんだからっ!﹂
セナは自分の胸を揉みしだいている老人の顔を睨みつける。
ゾートはその視線に応え、
﹁のう小娘⋮⋮さっきは馳走になったな⋮⋮礼はワシの持てる技術
全てで返してやるでなぁ⋮⋮あぁそうそう、これから先また暴力を
振るうような事が有れば、その度に捕らえてきた他の七人を殺す。
それが嫌なら、大人しくワシの作品に奉仕する事じゃな﹂
公娼と調教師はいつまでも睨み合っていた。。
648
開拓団の風景︵前書き︶
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649
開拓団の風景
青空が視界いっぱいに広がっている。
セナは拍子抜けした思いで、手足をブラブラと動かす。
あれから、シュトラとヘミネはオルソーに、ユキリスとアミュスは
ラタークに連れられて行った。
そして周囲を取り囲む男達と自分を睨むゾートだけが残った時、老
人は笑って言ったのだ。
﹃長旅で疲れているだろう⋮⋮今日のところは休むといい。明日か
ら忙しくなるからな﹄
望んだわけでは無いが、ここに至って凌辱されるであろう想像は固
まっていた以上、あの瞬間にも自分はゾートを中心とした調教師連
中に滅茶苦茶に犯されるのではないかと思っていたのに、昨日はそ
のまま獄に入れられ食事も食べられるものを出された。
無論よく眠れたし、誰かがセナの裸を覗きにくるような事も無かっ
た。
何故その様な事になったのか、理由は知れない。
セナは朝を迎え、調教師の一人に獄から出されて、今は昨日身体測
定をした天幕の近くで体をほぐしている。
それはセナをここまで連れてきた男の指示であり、逆らえば他の公
娼に危害を及ぼすと言われた以上は、従うしかなかった。
胸を揺らし、足を交差させて筋をほぐす。
これから行われるであろうことは間違いなく体に負担をかける。
精神の方は良い。
どれだけ強がっても嫌なものは嫌ではあるが、シャスラハールとい
う主を得た以上、セナにとって生きる目的は明確であり、心を殺し
て公娼に堕ちるなどもっての外だった。
﹁お、やってるな﹂
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調教師が傍にやって来る。
セナをここまで連れてきた男だ。
﹁⋮⋮ふんっ﹂
鼻を鳴らし、無視する。
﹁相変わらずだな⋮⋮まぁ良い、ウチの棟梁からの指示だ。これを
着ろ﹂
そうやって、彼は何かをセナへと放った。
セナは受け取り、それを両手で広げる。
﹁⋮⋮趣味が悪いわね。流石ゼオムントだわ。吐き気がする﹂
両肩から股までVの字で紐が伸びただけの、ひどく扇情的な黄緑色
の水着だった。
﹁良いから黙って着ろ。これからお前はそれで動くんだ﹂
セナは調教師を一つ睨んでから、紐を跨ぐ。
今の今まで全裸であった以上、何かを身に纏うのは安心できる要素
であるはずだが、これは違う。
﹁くぅ⋮⋮!﹂
まず致命的に体とサイズが合っていない。
陰唇を割り開くかの様に食い込み、強く張った紐は胸と乳首を激し
く擦り、肩の肉を締め付ける。
﹁似合うな。流石は公娼だ﹂
男がそう言って、セナの傍に寄り、紐の位置を修正する。
﹁さ、触るな⋮⋮あぐっ!﹂
股間の紐を強く上に引っ張られ、喰い込んできた衝撃に苦鳴を漏ら
す。
﹁こんなものじゃないぞ⋮⋮﹂
そう言って男はセナの首に革製の首輪を巻いた。
締め付けるわけでも無く、ただ首の周りを通しただけのそれに、セ
ナは困惑する。
﹁⋮⋮やっぱり趣味が悪いわ﹂
﹁知るか。棟梁の指示だ﹂
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男は首輪にリードを通し、それを片手で握った。
﹁棟梁のモットーの一つに、公娼は心身共に健康であるべき。とい
うものがある。そこでだ、今日お前はこの開拓団陣地内でランニン
グを行う。無論、これは一般の人間に対するアピールである事も忘
れるな。さぁ、付いて来い﹂
そう言って男はリードを強く引き、走り出した。
セナは首を引っ張られ、つんのめるようにして足を動かした。
﹁⋮⋮どういう事よ⋮⋮本当にただ走ってるだけじゃない﹂
疑念が沸き起こる。
セナは扇情的な水着を着せられているとはいえ、それ以上は何もさ
れず首輪を引かれて走っているだけだ。
道行く人間からの視姦はあれど、直接的な接触は今の一度も無い。
首輪を引かれてはいるが、体力的に調教師の男よりもセナの方が勝
っているので、両者の距離は空かず首に負担がかかる事も無い。
﹁ふんっ。さっき言っただろうが。棟梁は信念で調教をなされる。
一度調教師の管理を離れた公娼の生活は堕落する。それを引き締め
る為のランニングだ。お前を犯す事なんて正直いつでもできる。明
日の朝には俺がお前の子宮に精液を注ぎ込んでいるかもしれないな﹂
そう言って男はいやらしい視線をセナの胸へと注ぐ。
﹁それに、今棟梁達は準備中でな。筋書きや機材を大急ぎで整えて
おられる。その間に下ごしらえをしておく。それだけだ﹂
男は視線を下げ、セナの股に食い込む水着の紐を嬉しそうに眺めて
言った。
﹁ゲスが⋮⋮声などかけなければよかった﹂
セナは悪態をつき、走る事に意識を向けようとした。
開拓団陣地。
それは仮設の砦を中央に置いたそこそこ広大な物であり、四半刻走
った程度では一周も出来ない。
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砦より西の西域側にこの地の代表者であるリトリロイの幕営があり、
その他将兵の詰め所が並び立ち、東のゼオムント側に開拓民の粗末
な住処が置かれている。
セナ達は調教師の天幕が有る南西から走り始め、時計回りに今南東
へと至ったところだ。
生活臭に溢れた光景が見て取れる。
一様にこちらを好色な視線で追ってくる男達は、食に困っている様
子ではないが、それでも身なりに品を欠き、ボロになる寸前の布を
纏っている。
﹁ほら、見ろよ。あの歯の抜けたじいさん。いずれお前はあのじい
さんにも膣内出しされるんだろうなぁ⋮⋮お、あそこのチンポをず
っと掻き続けてる太った奴にケツ穴掘られたりするんだぜぇ。そし
てジッとこっち見てズボンパンパンにさせてるあのガキのチンポも
しゃぶる様になるんだ﹂
男は楽しげにセナの未来予想図を描いていく。
開拓団と共に生きる公娼。
それがゾートの描く開拓団ドキュメンタリーのテーマなのだそうだ。
﹁気持ち悪いわ﹂
セナが吐き捨てると。
男の足が止まった。
﹁さて、これも大事な役目だ。なぁに奴らにヤらせたりはせんさ。
お前の体は俺達調教師ですら味わっていないのだ。ここでやるのは、
ただのご挨拶だ。これから先末永く開拓団の皆さんにご奉仕させて
いただく公娼として、この連中に覚えてもらえ﹂
リードを握る男が止まっている以上、セナは離れる事が出来ない。
文句を言おうとした瞬間︱︱
﹁おぉい! 集まれっ! 開拓団に新しい公娼がやって来たぞ!﹂
男が大声を張り上げ、それを受けてワラワラと開拓民達が押し寄せ
てきた。
セナを取り囲む、数百人規模の男達。
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この開拓団には一般の女性が殆どいない。
いたとしても老女ばかりで、性欲の処理は全て公娼が行う事になる
のだ。
﹁ひっ⋮⋮﹂
十重二十重と自分を取り囲むおぞましい視線に、セナの体は一歩下
がる。
しかし下がったところで、尻の方にも人の柵が出来ているのでそち
らに近づくだけだ。
﹁さぁ、ご挨拶だ﹂
そう言って男はリードから手を離し、セナから離れている。
身を隠す場所を失い、セナは卑猥なV字水着で申し訳程度に隠され
た肉体を男達の視線で犯される。
﹁うひぃ、ツインテかぁ⋮⋮良いなぁ。アレを握ってガンガンにバ
ックで突っ込みたいぜぇ⋮⋮﹂
﹁乳もかなりあるなぁ。見ろよ、紐からちょっとはみ出てる乳首。
色も良さそうだ﹂
﹁何よりあのマンコの食い込みだろ? キュウキュウに紐を挟んで
やがる。あぁ、たまらん⋮⋮﹂
幾人かの男達はセナの体をオカズに己を慰め始めた。
﹁ちょ、調教師様っ! 触るだけっ! 絶対に挿入しませんからっ
! どうか、どうか﹂
哀れな声が上がる。
それを受けて、調教師の男は首を振った。
﹁痛ましい事ですが⋮⋮この者の調教はまだ完了しておりません。
近い内に皆様にご提供できますので、どうかその時まで今しばらく
ご辛抱を。代わりにですが、東側陣地の中央に面白いものが設置さ
れますので、そちらをご利用ください﹂
男は慇懃に頭を下げて言った。
﹁さぁ。皆さんにご挨拶を﹂
再度そう命じられて、セナは唇を噛みながら声を漏らす。
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﹁アタシは⋮⋮⋮⋮セナ﹂
ようやく出てきた名前に、開拓民は喜ぶが、調教師は不満顔だ。
﹁それだけか? そんな挨拶が有るか? しっかり自分のかつての
身分や今の状況を踏まえて挨拶しないか!﹂
それは、愉悦を隠しきれていない威圧。
セナは意を決す。ここで逆らっても無意味だと、下手すれば周りを
取り囲む男達を嗾けられかねない。
ならば、心根を強く持って︱︱
﹁リーベルラント騎士国家⋮⋮百人長セナ。ゼオムント国の⋮⋮公
娼。皆さん、よろしくお願いします﹂
言い切る。
大切なのはこの場で抵抗を続ける事では無い。
生きてシャスラハールと合流する事なのだ。
﹁へええええ騎士様かあああああ。道理で良い体してる!﹂
﹁セナっていやぁ⋮⋮聞いたことあるな。町中に土下座して膣内出
ししてもらってた奴だろ?﹂
﹁マジかよ⋮⋮じゃあじゃあ、俺らにも土下座しろ。な。土下座で
﹃今度膣内出しお願いします﹄って言えよ﹂
その声に、賛同が沸き起こる。
﹁どーげーざっ!﹂
﹁どーげーざっ!﹂
﹁どーげーざっ!﹂
そして唱和される土下座の声。
セナ目元に怒りを溜めて調教師へと視線を送るが、彼は笑って見守
る姿勢を崩さない。
ゆっくりと、セナの上半身が沈んでいく。
地面に両手を付き、足を曲げ、頭を下す。
そして、
﹁皆様、今度⋮⋮膣内出し⋮⋮を、お願い⋮⋮します﹂
怒りと恥辱に震える声が、そう紡がれた。
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周囲からは歓声が沸き起こる。
騎士であるセナが、夜逃げ同然にゼオムントを離脱した開拓民に土
下座で膣内出しを懇願する。
惨めで、屈辱的なものだった。
調教師の男は口元に笑みを浮かべ、セナへと近づく。
﹁こちらの口でも、皆さんにご挨拶しておこうか﹂
男はセナの尻側に回り、そこを申し訳程度に隠していた紐をズラし
た。
﹁なっ! やめろっ!﹂
露わになるセナの陰唇、そして肛門。
﹁おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!﹂
開拓民達の自慰する速度が上がる。
﹁そこの少年⋮⋮そう、君だ。こっちにおいで﹂
先ほどズボンをパンパンに膨らませながらセナを見つめていた少年
を呼び寄せ、男は言った。
﹁君の指で、このお姉ちゃんのマンコを触ってごらん﹂
その言葉に、少年は指を恐る恐るセナの陰唇へと突き入れる。
﹁んひっ﹂
グニグニと小さく骨張った指が挿入された事で、セナは惨めな声を
上げる。
﹁さぁ、どうだい? お姉ちゃんのマンコはどうなってた?﹂
調教師の男が満面で問いかけた先、
少年は眉を寄せて答えた。
﹁なんか⋮⋮濡れてた。ネチョネチョ﹂
周囲にまたけたたましい笑い声が轟いた。
その後調教師は開拓民を解散させ、またランニングへと戻る。
快調に走る男と、重い足取りで付いて行くセナ。
何度かリードを引っ張られ、速度を無理矢理上げさせられた。
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﹁おいおい。いつまでしょ気かえってるんだ⋮⋮。ただマンコに子
供の指突っ込まれただけだろう? 今度からは大人の洗ってないチ
ンポぶち込まれるんだから、そんなんじゃもたないぞ﹂
セナは切れ味の鋭い視線を投げかける。
﹁結構な御身分ね⋮⋮今アタシは両手が自由で、何よりアンタに対
して殺したいほどムカついてるわ。あんまり調子にのった発言して
ると、くびり殺してやるわよ﹂
虚弱貧弱を絵に描いたような調教師の首など、セナにとって素手で
引き千切る事は容易い。
何より昨日、彼らの親玉であるゾートの顔面を血塗れにした前科も
あり、脅しのつもりで言った。
そこに、
﹁そうかいそうかい、恐ろしいな⋮⋮。まぁどうしてもと言うのな
らばやれば良い。お前が俺を殺してここを脱走したとして、アイツ
ラがどういう未来を辿るか予想ができないのならな﹂
男はニヤリと口元を歪ませ、先を指差した。
そこには簡素な木の柵が設置され、その内側には︱︱
﹁⋮⋮レナイ⋮⋮みんなっ!﹂
マルウスの里で捕らえられ、彼らの薬物により精神にダメージを負
っている七人の公娼が繋がれていた。
小規模な厨舎程度の作りに、凡そ等間隔で公娼が並べられ、レナイ
達足先を失っている三人は正常位の姿勢で転がされ、残り四人は立
ったまま尻を突き出す姿勢を取らされている。
﹁ほう、後背位と正常位を両方楽しめる作りか、やるなぁガキ﹂
男は笑って言い、中で公娼の膣口を覗き込んでいた少年に声をかけ
る。
﹁どうだい、困った事はあるか?﹂
バケツを頭に被った少年は、慌てて立ち上がって首を振る。
﹁い、いえ旦那。だ、大丈夫ですだ⋮⋮﹂
赤面し、プルプルと顔全体を揺らしながらも、少年の手は止まって
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いない。
その手が握っているのは、便所掃除に良く使われるブラシだった。
それを公娼の膣へと押し込んで掻き回しているのだ。
﹁お前っ! それを抜けっ!﹂
セナは大声を張り上げる。
﹁ひ、ひぃぃぃぃぃ﹂
哀れな悲鳴を上げ、それでも少年はブラシを抜かずに荒々しく膣内
で回転させている。
﹁