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応急手当講習テキスト

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応急手当講習テキスト
応急手当講習テキスト
富士宮市消防本部
2016年
4月
一部改正
救急蘇生法とは
病気や怪我により、突然に心停止、もしくはこれに近い状態になったときに、胸骨圧迫や人
工呼吸を行うことを心肺蘇生といいます。傷病者を社会復帰に導く為に大切な心肺蘇生、AE
D(自動体外式除細動器)を用いた除細動、異物で窒息をきたした場合の気道異物除去の3つ
を合わせて一次救命処置(Basic
Life
Support:BLS)といいます。一
次救命処置はAEDや感染防護具などの器具以外には特殊な医療資材を必要とせず、特別な資
格がなくても誰でも行うことが出来ます。
心停止以外の一般的な傷病に対して、その悪化を回避することを目的として市民に行われる
最小限の手当を応急手当といいます。応急手当には出血に対する圧迫止血や、回復体位などが
含まれます。
みなさんが行う救急蘇生法は一次救命処置と応急手当です。(図1)
図1
主に市民が行う救急蘇生法の手順
~MEMO~
-1-
一次救命処置と応急手当の重要性
突然倒れた傷病者を救命し、社会復帰させるために必要となる一連の行動を「救命の連鎖」
(図2)といいます。
「救命の連鎖」を構成する4つの輪がすばやくつながると(バトンタッチ
されると)救命効果が高まります。
鎖の1つ目の輪「心停止の予防」、2つ目の輪「心停止の早期認知と通報」、3つ目輪は「一
次救命処置(心肺蘇生とAED)」、4つ目の輪は「救急救命士や医師による高度な救命医療を
意味する二次救命処置と心拍再開後の集中治療」です。
図2
救命の連鎖
「救命の連鎖における最初の3つの輪は、現場に居合わせた市民、つまりあなたによって実
施することが期待されます。また、わが国では119番通報してから救急車が到着するまでに
平均して(※)7分以上かかり、救急隊が到着してから処置を開始するまでには、それからさ
らに数分の時間を要します。(※)平成23 年中
1.「救命の連鎖」の1つめの輪
富士宮市消防本部
平均到着時間=7.4 分
~心停止の予防~
こどもの心停止の主な原因には、交通事故などによる怪我、溺水、窒息などがありますが、
いずれも予防が可能なので未然に防ぐことが何よりも大切です。
成人の突然死の原因には、生活習慣病と大いに関係する急性心筋梗塞や、脳卒中があります。
これらは癌とともに日本人の三大死因です。成人の突然死の予防では、生活習慣病のリスクを
低下させることも重要となりますが、
「救命の連鎖」における「心停止の予防」は、急性心筋梗
塞や脳卒中の初期症状に気付いていち早く救急車を要請することです。これにより、心停止に
なる前に医療機関で治療を開始することが可能になります。
2.「救命の連鎖」の2つめの輪
~心停止の早期認識と通報~
早期認識は、突然倒れた人や、反応のない人を発見したら、ただちに心停止を疑うことで始
まります。心停止の可能性を認識したら、大声で叫んで人を集め、119番通報を行って、A
EDや救急隊が少しでも早く到着するように努めます。
119番通報を行うと電話を通して心肺蘇生法の手順などの指導を受けることができます。
その際、電話の問いに応じて、傷病者の状況や状態をできるだけ正確に伝えることが重要です。
-2-
3.「救命の連鎖」の3つ目の輪
~一次救命処置~
「救命の連鎖」の3つ目の輪は一次救命処置(心肺蘇生とAED)、つまり止まってしまった
心臓と呼吸を胸骨圧迫と人工呼吸を実施することにより補助することです。心臓が停止してし
まうと15秒以内に意識が消失し、3~4分以上何もせずに、そのままの状態が続くと脳機能
の回復は困難となります。(図3-1)
心臓が止まっている間、心肺蘇生によって心臓や脳に血液を送り続けることは、AEDによ
る心拍再開の効果を高めるためにも、さらには心拍再開後、脳に後遺症を残さないためにも重
要です。心肺蘇生法は胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせることが原則です。
胸骨圧迫は、『強く』『速く』『絶え間なく』行うことが重要です。
図3-1
心臓と呼吸が止まってからの時間経過と救命の可能性
処置有りと処置無しの比較
例えば、市民が心肺蘇生を行った場合は、行わなかった場合に比べ生存率が高いこと、ある
いは市民がAEDを使用して除細動を行った方が、救急隊が除細動を行った場合よりも早く実
施できるため、生存退院率や社会復帰率が高いことがわかっています。(図3 -2)
あなたは「救命の連鎖」を支える重要な役割を担っているのです。
図3-2
AEDを救急隊が行った場合と市民が行った場合の1ヵ月後社会復帰率
-3-
突然の心停止は、心臓が細かく震える「心室細動」によって生じることが多く、この場合、
心臓の動きを元に戻すには「除細動」が必要となります。
心停止から電気ショック実施までにかかる時間が傷病者の生死を決定する最も重要な因子と
なります。図4は、早期除細動の重要性を示したもので、除細動が1分遅れるごとに社会復帰
率が著しく低下してしまうことを示しています。
図3-2のデーター同様、市民によるAEDの使
用が重要なことを物語っております。
また図5は、突然心停止の状態に陥った傷病者
の心室細動(心臓が細かく震えた状態)の心電図
波形とAEDを使用した電気ショックにより正常
な波形に戻った心電図波形のイメージです。
図4
図5
除細動が1分遅れるごとに社会復帰率は7~10%低下する
心室細動と電気ショック後の正常な心電図波形
-4-
AEDは自動的に心電図を解析して電気ショックが必要かどうかを決定し、音声メッセージ
で指示するので、それに従えば操作は難しくありません。
また図6の様に様々なタイプのAEDがあります。蓋を開ければ電源が自動的に入 るものや、
あらかじめパットが本体に挿入されているタイプや、使用者自身で電源スイッチを押し、パッ
トも本体(プラグ)に挿入するタイプがありますが基本的な操作はどれも同じです。
図6
様々なタイプのAED
4.「救命の連鎖」4つめの輪
~二次救命処置と心拍再開後の集中治療
救急救命士や医師は一次救命処置(BLS)と並行して薬剤や気道確保器具などを利用した
二次救命処置を行い心拍が再開することを目指します。心拍が再開したら、専門家による集中
治療により社会復帰を目指します。
~MEMO~
-5-
一次救命処置(BLS)
一次救命処置(BLS)とは、心臓や呼吸が止まってしまった人を助けるために心肺蘇生を
行ったり、AEDを使ったりする緊急の処置のことをさします。また、食べ物などが喉に詰ま
って呼吸ができなくなった場合、そのまま放置すればやがては心臓も止まってしまいます。そ
うならないように、喉に詰まったもの(異物)を取り除くための方法(気道異物除去法)も一
次救命処置に含まれます。
ここでは、一次救命処置のうち、心肺蘇生の方法とAEDの使用方法について、順を追って
説明します。図7はこの大まかな流れを示しています。成人も小児・乳児も一次救命処置の手
順は同じです。
反応なし
大声で叫び応援を呼ぶ
119番通報・AED 依頼
呼吸をみる
普段どおりの
呼吸有
気道確保
応援・救急隊を待つ
回復体位を考慮する
呼吸なし
CPR
・直ちに胸骨圧迫を開始する
強く
速く
絶え間なく
成人の場合には、約5cm沈むまでしっかり圧迫する。(ただし、6cmを超えない)
小児は胸の厚さの約1/3
人工呼吸ができないか、ためらわれる場合は胸骨圧迫のみ行う
ECG 解析
必
AED 装着
電気ショックは必要か?
要
ショック1回
必要なし
実施
直ちに胸骨圧迫から
直ちに胸骨圧迫から
CPR を再開
CPR を再開
※ 強く、速く、絶え間ない胸骨圧迫を!
救急隊に引き継ぐまで、または傷病者に呼吸や目的のある仕草が認められるまで CPR を続ける。
図7
主に市民が行う一次救命処置(BLS)の手順
-6-
1.心肺蘇生の手順
1)反応を確認する
誰かが突然倒れるところを目撃したり、倒れているところを発見した場合は、その人(傷
病者)の反応を確認します。ただし、傷病者に近寄る前に周囲を見渡して安全であること
を確認する必要があります。車の往来がある、室内に煙がたちこめているなどの状況が あ
れば、それぞれに応じて安全を確保するようにしましょう。
安全が確認できたら、傷病者の肩をやさしくたたきながら大声で呼びかけます(図8)。
目を開けたり、何らかの応答や目的のある仕草があれば反応があるといえます。突然の心
停止が起こった直後には引きつるような動き(けいれん)が起こることもありますが、こ
の場合には反応はないと判断して対応しなければなりません。
もしもし
大丈夫ですか?
図8
反応を確認する
2)大声で叫び応援を呼ぶ
傷病者に反応がない場合は、「誰か来てください! 人が倒れています!」等と大声で叫
んで周囲の注意を喚起します(図9)。
図9
大声で叫んで人を集める
-7-
人が倒れて意識がない
ことを119番に連絡
してください。AED を
持って来てください!
図10
119番通報と AED を手配する
3)119番通報をしてAEDを手配する
そばに誰かがいる場合は、その人に119番通報をするよう依頼します(図10)。また近
くにAEDがあれば、それを持ってくるよう頼みます。
「あなた、119番通報をお願いします」「あなた、AEDを持ってきてください」など、
具体的に依頼するのがよいでしょう。119番通報とAEDの手配を依頼したら、すぐに次の
ステップに進みます。
大声で叫んでも誰も来ない場合、心肺蘇生を始める前に119番通報とAEDの手配をあな
た自身が行わなければなりません。
119番通報するときは落ち着いて、できるだけ正確な場所、呼びかけても反応がないこと
を伝えましょう。もしわかれば、傷病者のおよその年齢や突然倒れた、けいれんをしてい
る、体が動かない、顔色がわるいなど倒れたときの状況も伝えましょう。反応がなければ、
心停止の可能性があります。
119 番通報をすると電話を通して、あなたが行うべきことを指導してくれます。心肺蘇
生の訓練を十分に受けていない場合でも、落ち着いて指示に従ってください。
4)呼吸をみる
心臓が止まると呼吸も止まりますが、突然の心停止直後には「死戦期呼吸」と呼ばれる
しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸がみられることも少なくありません。したがっ
て反応のない傷病者では呼吸の観察が重要となります。
傷病者の呼吸を観察するためには、胸と腹部の動き(呼吸をするたびに上がったり下が
ったりする)をみます。(図11)胸と腹部が動いていなければ、呼吸が止まっていると
判断します。胸と腹部の動きが普段どおりでない場合は死戦期呼吸と判断します。
-8-
「反応がなく、気道確保しても呼吸がない。」場合又は「死戦期呼吸の状態」も心停止
と判断し、直ちに心肺蘇生法を開始する。また、「呼吸が正常か判断できない場合」も、
直ちに心肺蘇生法を開始する。
呼吸の確認には10秒以上かけないようにします。約10秒かけても判断に迷う場合は、呼
吸がないものと判断します。
反応はないが普段どおりの呼吸がある場合には、気道確保(11ページ参照)を行い、
応援や救急隊の到着を待ちます。この間、傷病者の呼吸状態を注意深く観察し、呼吸が認
められなくなった場合又は、「呼吸が正常か判断できない場合」も、直ちに心肺蘇生法を
開始する。
反応はないが普段どおりの呼吸をしている傷病者で、嘔吐や吐血などがみられる場合、
あるいは救助者が 1 人であり、やむをえず傷病者のそばを離れる場合には、傷病者を横向
きに寝た姿勢(回復体位)(図 12)にします。
図11
普段どおりの呼吸をしているか確認する
図12
回復体位
-9-
5)胸骨圧迫を行う
呼吸の観察で心停止と判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始します。胸の左右の真ん中
に「胸骨」と呼ばれる縦長の平らな骨があります。圧迫するのはこの骨の下半分です。こ
の場所を探すには、胸の真ん中(左右の真ん中で、かつ、上下の真ん中)を目安にします。
(図13)
この位置に一方の手のひらの基部(手掌基部)を当て、その手の上にもう一方の手を重
ねて置きます。重ねた手の指を組むとよいでしょう。垂直に体重が加わるよう両肘をまっ
すぐに伸ばし、肩が圧迫部位(自分の手のひら)の真上になるような姿勢をとります。
傷病者の胸が少なくとも成人の場合には、約5cm沈むまでしっかり圧迫する。
( ただし、
6cmを超えない)ように強く速く圧迫を繰り返します(図 14
図15)。
ただし、小児では両手または片手で、胸の厚さの約1/3沈み込む程度に圧迫します。子ど
もは小さくて弱いからといって、こわごわと弱い(浅い)胸骨圧迫をしたのでは十分な効
果が得られません。強く、速く圧迫し続けるように心がけましょう。
胸骨圧迫のテンポは、毎分100~120回の速さで行う。胸骨圧迫は可能な限り中断
せずに、絶え間なく行います。圧迫は手のひら全体で行うのではなく、手のひらの基部(手
掌基部)だけに力が加わるようにしてください。指や手のひら全体に力が加わって肋骨が
圧迫されるのは好ましくありません。圧迫と圧迫の間(圧迫を緩めている間)は、胸が元
の高さに戻るように十分に圧迫を解除することが大切です。ただし、圧迫を解除するため
に自分の手が傷病者の胸から離れると、圧迫位置がずれることがあるので注意します。
胸骨
図13
胸骨圧迫をする場所
-10-
胸骨
図14
手掌基部をあて、成人の場合には、約5cm沈むまでしっかり圧迫する。
(ただし、
6cmを超えない)ように強く圧迫を繰り返します
図15
(図14
図15)。
胸骨圧迫の方法
6)人工呼吸を行う
胸骨圧迫を30回続けたら、その後気道確保をして、人工呼吸を2回行います。
(1)気道確保
片手で傷病者の額を押さえながら、もう一方の手の指先を傷病者のあごの先端、骨のあ
る硬い部分に当てて持ち上げます。このとき、あごの下の軟らかい部分を指で圧迫しない
よう注意してください。傷病者の顔がのけぞるような姿勢になり(頭部後屈) 、あご先が
持ち上がります(あご先挙上)。このような動作によって傷病者の喉の奥を広げ、空気の
通り道を確保する方法を頭部後屈あご先挙上法と呼びます。(図16)
図16
-11-
頭部後屈あご先挙上法による気道確保
(2)人工呼吸
頭部後屈あご先挙上法で傷病者の気道を確保したまま、口を大きく開いて傷病者の口を
覆って密着させ、息を吹き込みます。このさい、吹き込んだ息が傷病者の鼻から漏れ出さ
ないように、額を押さえているほうの手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみます。息
は傷病者の胸が上がるのが見てわかる程度の量を約1秒間かけて吹き込みます。吹き込んだ
ら、いったん口を離し、傷病者の息が自然に出るのを待ち、もう一度、口で口を覆って息
を吹き込みます(図17)。このような人工呼吸の方法を「口対口人工呼吸」と呼びます。
息を吹き込むにつれて傷病者の胸が(呼吸をしているように)持ち上がるのを確認しま
す。息を吹き込んだときに(2回とも)胸が上がるのが目標ですが、うまく胸が上がらない
場合でも、吹き込みは2回までにします。2回の吹き込みを行う間は胸骨圧迫が中断されま
すが、その中断は10秒以上にならないようにします。
口対口人工呼吸による感染の危険性はきわめて低いので、感染防護具なしに人工呼吸を
行ってもかまいませんが、手元に感染防護具がある場合は使用します。感染防護具にはシ
ートタイプのものとマスクタイプのものがあります。シートタイプのものは傷病者と自分
の口の間に空気が通る部分を当てて通常の口対口人工呼吸を行います。マスクタイプのも
のは傷病者の口と鼻を覆って顔面に密着させ、一方弁の付いた吹き込み口から息を吹き込
みます。
図17
口対口人工呼吸
-12-
7)胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ(心肺蘇生)を続ける
その後は胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ(この組み合わせを心肺蘇生といいま
す)を絶え間なく続けます。
8)人工呼吸ができないか、ためらわれる場合の心肺蘇生
人工呼吸ができないか、手元に感染防護具がなく、口と口が直接接触することがためら
われる場合は、人工呼吸を省略して胸骨圧迫を続けてください。
ただし、窒息、溺れた場合、目撃がない心停止、心肺蘇生が長引いている場合、子ども
の心停止などでは、人工呼吸と胸骨圧迫を組み合わせた心肺蘇生を行うことが望まれます。
9)胸骨圧迫を交代する
成人の場合には、約5cm沈むまでしっかり圧迫する(ただし、6cmを超えない)
(図 14
図15)力強い圧迫を繰り返すには体力を要します。疲れてくると気がつかな
いうちに圧迫が弱くなったり、テンポが遅くなったりするので、常に意識して強く、速く
圧迫します。ほかに手伝ってくれる人がいる場合は、1〜2 分を目安に役割を交代します。
とくに胸骨圧迫のみの心肺蘇生ではより短い時間で疲れてくるので、頻繁な交代が必要に
なりますが、その場合でも交代による中断時間をできるだけ短くすることが大切です。
10)心肺蘇生を続ける
傷病者が普段どおりの呼吸をしはじめる、あるいは目的のある仕草が認められるまで、
あきらめずに心肺蘇生を続けます。心肺蘇生中に救急隊員などの熟練した救助者が到着し
ても、心肺蘇生を中断することなく、その指示に従ってください。
普段どおりの呼吸や目的のある仕草があれば、心肺蘇生はいったん終了しますが、反応
が戻るまでは気道確保や回復体位が必要となるかもしれません。繰り返し反応の有無や呼
吸の様子をみながら救急隊の到着を待ちます。普段どおりの呼吸がみられなくなった場合
は、ただちに心肺蘇生を再開します。
「反応がなく、気道確保しても呼吸がない。」場合又は「死戦期呼吸の状態」も心停止
と判断し、直ちに心肺蘇生法を開始する。また、「呼吸が正常か判断できない場合」も、
直ちに心肺蘇生法を開始する。
2.AED使用の手順
AEDは,音声メッセージとランプで実施するべきことを指示してくれますので,それに
従ってください。安全に使用するためには以下の手順で行います。AEDを使用する場合も、
AEDによる心電図解析や電気ショックなど、やむをえない場合を除いて、心肺蘇生をでき
るだけ絶え間なく続けることが大切です。
1)AEDを持ってくる
-13-
傷病者に反応がないことがわかったら、誰かにAEDを持ってくるように依頼するか、ほ
かに誰もいない場合には、AEDが近くにあることがわかっていれば救助者自身が自分で
AEDを取りに行きます。緊急事態に備えて、自分の職場や通勤途上のどこにAEDがあるか
を普段から把握しておきましょう。
AEDは人の目につきやすい場所に置かれています。図18に示すように、AEDのマーク
が目立つように貼られた専用のボックスの中に置かれていることもあります。
AEDを取り出すためにボックスを開けると、警告ブザーが鳴ります。ブザーは鳴りっぱ
なしにしたままでよいので、AEDをボックスから取り出したら、すぐに傷病者のもとに持
参してください。
図18
AEDは目のつきやすい所に設置してあります
2)AEDの準備
心肺蘇生を行っている途中でAEDが届いたら、すぐにAEDを使う準備に移ります。AED
を傷病者の頭の近くに置くと操作しやすくなります。(図19)
図19
AEDを傷病者の頭の近くに置く
-14-
3)電源を入れる
AEDの電源を入れます(図20)。機種によって、電源ボタンを押すタイプと、ふたを開
けると自動的に電源が入るタイプ(電源ボタンはありません)があります。電源を入れた
ら、以降は音声メッセージとランプに従って操作します。
図20
到着したら、まず電源を入れる
4)電極パッドを貼り付ける
傷病者の胸から衣服を取り除き、胸をはだけます(図21)。ボタンやホックが外せな
い場合や、衣服を取り除けない場合には衣服を切る必要があります。
AEDのケースに入っている電極パッドを袋から取り出します。電極パッドや袋に描かれ
ているイラストに従って(図22)、2枚の電極パッドを肌に直接貼り付けます。イラスト
に描かれている貼り付け位置は、胸の右上(鎖骨の下で胸骨の右)と、胸の左下側(脇の
下5〜8cm下、乳頭の斜め下)です。
電極パッドは傷病者の肌にしっかり密着させます。電極パッドと肌の間に空気が入って
いると電気がうまく伝わりません(図23)。
機種によっては、電極パッドから延びているケーブルの差込み(プラグ)をAED本体の差
込み口に挿入する必要があります。AEDの音声メッセージに従って操作してください。
成人用と小児用の2種類の電極パッドが入っている場合があります。イラストをみれば区
別できます。小学生以上の傷病者には、成人用の電極パッドを使用し、小児用は使用しな
いでください。
小学校に入るまでの小児(未就学児)に対しては、小児用の電極パッドが入っていれば
こちらを使用します。また、小児用モードの機能がある機種は、小児用に切り替えて使用
してください。これらがなければ、成人用の電極パッドを使用してください。
-15-
図22
図21
貼り付け位置が図示されている
胸をはだけて電極パットを貼り付ける
図23
電極パットは密着させる
-16-
5)心電図の解析
電極パッドが肌にしっかり貼られると、「体から離れてください」との音声メッセージ
とともに、AEDは心電図の解析を自動的に始めます。周囲の人にも傷病者から離れるよう
伝え、誰も傷病者に触れていないことを確認してください(図24)。誰かが傷病者の体に
触れていると、心電図の解析がうまく行われない可能性があります。
AEDの音声メッセージに従って操作してください。
図24
誰も傷病者に触れていないことを確認する
6)電気ショックと心肺蘇生の再開
(1)電気ショックの指示が出たら
AEDは心電図を自動的に解析し、電気ショックが必要である場合には、「ショックが必
要です」などの音声メッセージとともに自動的に充電を開始します。周囲の人に傷病者の
体に触れないよう声をかけ、誰も触れていないことをもう一度確認します。充電が完了す
ると、連続音やショックボタンの点灯とともに電気ショックを行うように音声メッセージ
が流れます。これに従ってショックボタンを押し電気ショックを行います(図 25)。この
ときAEDから傷病者に強い電気が流れ、傷病者の体が一瞬ビクッと突っ張ります。
電気ショックのあとは、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生を再開します。「ただちに胸骨
圧迫を開始してください」などの音声メッセージが流れますので、これに従ってください。
図25
-17-
ショックボタンを押す
(2)ショック不要の指示が出たら
AEDの音声メッセージが「ショックは不要です」の場合は、ただちに胸骨圧迫から心肺
蘇生を再開します。
7)心肺蘇生とAEDの手順の繰り返し
AEDは2分おきに自動的に心電図解析を始めます。そのつど、「体から離れてください」
などの音声メッセージが流れます。傷病者から手を離すとともに、周囲の人にも離れるよ
う声をかけ、離れていることを確認してください。
以後も同様に心肺蘇生とAEDの手順を繰り返します。
8)救急隊に引き継ぐまでの対応
救急隊員などの熟練した救助者に傷病者を引き継ぐまで、心肺蘇生とAEDの手順をあき
らめずに繰り返してください。
傷病者が普段どおりの呼吸をはじめる、あるいは目的のある仕草が認められて心肺蘇生
をいったん終了できても、再び心臓が停止して AEDが必要になることもあります。AED
の電極パッドは傷病者の胸から剥がさず、電源も入れたままにしておいてください。
9)とくに注意をはらうべき状況
電極パッドを肌に貼り付けるときには,とくに注意をはらうべきいくつかの状況があり
ます。
(1)傷病者の胸が濡れている場合
電気が体表の水を伝わって流れてしまうために、AEDの効果が不十分になります。乾い
た布やタオルで胸を拭いてから電極パッドを貼り付けてください(図26)
図26
乾いた布やタオルで汗等の水分を拭き取る
(2)貼り薬がある場合
ニトログリセリン、ニコチン、鎮痛剤、ホルモン剤、降圧剤などの貼り薬や湿布薬が電
極パッドを貼り付ける位置に貼られている場合には、まずこれを剥がします。残っている
薬剤を拭き取ってから,電極パッドを貼り付けます。貼り薬の上から電極パッドを貼り付
けると電気ショックの効果が弱まったり、貼り付け部位にやけどを起こすことがあります。
-18-
(3)医療器具が胸に植込まれている場合
皮膚の下に心臓ペースメーカや除細動器が植込まれている場合は、胸に硬いこぶのよう
な出っ張りが見えます(図27)。貼り付け部位にこの出っ張りがある場合、電極パッドは
出っ張りを避けて貼り付けてください。
離す
ペースメーカ
ー
図27
医療器具(ペースメーカー等)が埋め込まれている場合は離す
3.気道異物
1)気道異物による窒息
気道異物による窒息とは、たとえば食事中に食べ物が気道に詰まるなどで息ができなく
なった状態です。いったん起こると死に至ることも少なくありません。窒息による死亡を
減らすために、まず大切なことは窒息を予防することです。飲み込む力が弱った高齢者な
どでは食べ物を細かくきざむなど工夫しましょう。食事中にむせたら、口の中の食べ物は
吐き出してください。万が一窒息してしまった場合は、以下の対応をしてください。
もし窒息への対応が途中でわからなくなったら、119番通報をすると電話を通してあなた
が行うべきことを指導してくれますので、落ち着いて指示に従ってください。
2)窒息の発見
適切な対処の第一歩は、まず窒息に気がつくことです。苦しそう、顔色が悪い、声が出
せない、息ができないなどがあれば窒息しているかもしれません。このような場合には “喉
が詰まったの?”と尋ねます。声が出せず、うなずくようであればただちに気道異物への対
処を行わなければなりません。
気道閉塞のために呼吸ができないことを周りに伝える方法として、親指と人差し指で喉
をつかむ仕草(図28)があり、これを「窒息のサイン」と呼んでいます。
なお、強い咳ができる場合にはまだ窒息には至っておらず、自然に異物が排出されるこ
ともありますが、大声で助けを求め、注意深く見守ります。しかし、状態が悪化して咳が
弱くなったり、咳ができなくなった場合には、窒息としての迅速な対応が必要です。
-19-
図28
窒息のサイン
3)119番通報と異物除去
(1)反応がある場合
窒息と判断すれば、ただちに119番通報を誰かに依頼した後に、腹部突き上げ法や背部叩
打法を試みます。
腹部突き上げ法と背部叩打法は、その場の状況に応じてやりやすい方法を実施してかま
いませんが、1つの方法を数度繰り返しても効果がなければ、もう1つの方法に切り替えて
ください。異物が取れるか反応がなくなるまで、2つの方法を数度ずつ繰り返して続けます。
なお、明らかに妊娠していると思われる女性や高度な肥満者には腹部突き上げ法は行い
ません。背部叩打法のみを行います。
●腹部突き上げ法
救助者は傷病者の後ろにまわり、ウエスト付近に手を回します。一方の手で臍 (へそ)
の位置を確認し、もう一方の手で握りこぶしを作って親指側を傷病者の臍の上方でみぞお
ちより十分下方に当てます。臍を確認した手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に向
かって圧迫するように突き上げます(図29-1)。
腹部突き上げ法を実施した場合は、腹部の内臓をいためる可能性があるため、異物除去
後は、救急隊に実施したを伝えるか、すみやかに医師の診察を受けさせることを忘れては
なりません。119番通報する前に異物が取れた場合でも、医師の診察は必要です。
-20-
●背部叩打法
立位または坐位の傷病者では図29-2のように、傷病者の後方から手のひらの基部(手
掌基部)で左右の肩甲骨の中間あたりを力強くたたきます。
図29-1
腹部突き上げ法
図29-2
背部叩打法
(2)反応がなくなった場合
傷病者がぐったりして反応がなくなった場合は、心停止に対する心肺蘇生の手順を開始
します。まだ通報していなければ119番通報を行い、AEDが近くにあることがわかってい
れば、AEDを自分で取りに行ってから心肺蘇生を開始します。
心肺蘇生を行っている途中で異物が見えた場合は、それを取り除きます。見えない場合
には、やみくもに口の中に指を入れて探らないでください。また異物を探すために胸骨圧
迫を長く中断しないでください。
-21-
乳児(1歳未満)の心肺蘇生法 (Pediatric
Basic
Life
Support:PBLS)
1.人工呼吸を開始するタイミング
子どもの場合は呼吸が悪くなって心停止になることが多いため、胸骨圧迫を30回完了す
るのを待たずに、できるだけ早く人工呼吸を2回行います。この点がBLS(30回の胸骨圧迫
が「完了するのを待って」から2回の人工呼吸を行う)とPBLSの違いの一つです。その後、
胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせを絶え間なく続けることは同様です。
2.1歳未満の子ども(乳児)に対する胸骨圧迫の仕方
乳児の場合は、両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とする胸の真ん中を、2本指で押します。
(図30
図30
図31)
乳児に対する胸骨圧迫の位置
図31
乳児に対する胸骨圧迫
3.1歳未満の子ども(乳児)への対応気道異物
苦しそうで顔色が悪く、泣き声も出ないときは気道異物による窒息を疑います。窒息と
判断すれば、ただちに119番通報を誰かに依頼し、以下の対応を開始します。
反応がある間は頭部を下げて背部叩打と胸部突き上げを実施します。乳児では成人と異
なり、腹部突き上げは行いません。
背部叩打は、片方の手で乳児のあごをしっかり持ち、その腕に胸と腹を乗せて頭が下が
るようにしてうつ伏せにし、もう一方の手のひらの基部で背部を力強く数 回連続してたた
きます(図32-1)。
胸部突き上げは、片方の腕に乳児の背中を乗せ、手のひら全体で後頭部をしっかり持ち
頭が下がるように仰向けにし、もう一方の手の指2本で胸の真ん中を力強く数回連続して圧
迫します。心肺蘇生の際の胸骨圧迫を腕に乳児を乗せて行う要領です(図32-2)。
数回ずつの背部叩打と胸部突き上げを交互に行い、異物が取れるか反応がなくなるまで
続けます。反応がなくなった場合は、ただちに119番通報し、次に子どもを床や畳など硬い
ところに下ろし、心停止に対して行う心肺蘇生の手順を開始します。
-22-
心肺蘇生を行っている途中で異物が見えた場合は、それを取り除きます。見えない場合
にはやみくもに口の中に指を入れて探らないでください。また異物を探すために胸骨圧迫
を長く中断しないでください。
図32-1
背部叩打法
図32-2
乳児に対する胸部突き上げ法
4.小児に対するAEDの用い方
1)AEDの小児用パッドがある場合の手順
小児用パッドは、乳児を含めた未就学児の傷病者のみに用いることができます。傷病者
が未就学児と推測され、現場に小児用パッドがある場合には、それを用います。貼付位置
は、パッドに描かれているイラストのとおりにしてください。その他の手順は成人に対す
るAEDの用い方と同様です。
小児用パッドは乳児を含めた未就学の傷病者のみに用いることができます(ただし、乳
児については2011年9月現在で薬事未承認の製品もあります)。
2)AEDに小児用モードがある場合の手順
AEDには、小児用モードと呼ばれる機能が付いた機種もあります。これを用いる状況は、
小児用パッドと同様に傷病者が乳児を含めた未就学児と推測されるときに使用します。な
お、この場合は成人用パッドを用いますが、小児用パッドよりも大きいので、パッドが触
れ合わないよう配慮します。
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小児用モードは乳児を含めた未就学の傷病者のみに用いることができます(ただし、乳
児については2011年9月現在で薬事未承認の製品もあります)。
3)小児用パッドも小児用モードもない場合の手順
小児用パッドも小児用モードもない場合は、成人用パッドを使用してください。
5.止 血
怪我などで出血が多い場合は、迅速かつ適切に止血できないと命の危険があります。市
民が行う止血の方法としては、出血部位にガーゼや布などを当て、直接圧迫する方法(直
接圧迫止血法)が推奨されています。出血部位を確認し、ガーゼ、ハンカチやタオルなど
を重ねて出血部位に当てて、その上から圧迫して止血を試みてください(図33)。圧迫に
もかかわらず、ガーゼから血液が染み出てくる場合は、圧迫位置が出血部位から外れてい
る、または圧迫する力が弱いなどが考えられるので、出血部位を確実に押さえることが重
要です。
止血のさいに、救助者が傷病者の血液に触れると、感染症を起こす危険性があります。
このため、救助者は感染症から身を守るために、可能であればビニール手袋を着用するか、
ビニール袋を手袋の代わりに使用してください。
なお、細いひもや針金で出血している手足を縛る方法は、血管や神経をいためる危険性
があるので推奨できません。
図33
直接圧迫止血法(ゴム手袋やビニール等で感染防護する)
※このテキストは日本救急医療財団心肺蘇生法委員会監修の救急蘇生法の指針2016
4月一部改正(市民用・解説編)を元に作成しました。
-24-
心肺蘇生法の手順(シナリオ)
1
患者発見!
2
周囲の安全確認・・・・「周囲の安全よし!」
3
反応の確認
参考資料
・・・・「もしもし大丈夫ですか?○○さん分かりますか?」
※傷病者の肩を叩きながらだんだんと大きな声で呼び掛ける(3回)
4
協力者を集める・・・・「人が倒れています!どなたか助けてください!!」
5
119通報とAEDの手配・・・・「あなたは119番通報をして救急車を呼んでください!」
「あなたはAEDを持ってきてください!」
6
呼吸の確認 ・・・・「普段どおりの呼吸なし!」
7
胸骨圧迫の開始・・・「1・2・3・4・・・・・・・30」
8
気道の確保と人工呼吸(2回) ・・・省略可
~AED到着~
9
AEDが使えるか尋ねる ・・・「あなたAEDを使ったことがありますか?」
協力者~「できません」
10
胸骨圧迫の協力を頼む ・・・「それでは胸骨圧迫を私と交代してください」
11
AED準備・・・・・「電源ON!水分(汗)・貼り薬・ペースメーカー無し!パッド貼り付け!」
12
解析が始まる ・・・「患者から離れて!」
13
ショックのメッセージがでる ・・・「ショックが必要です!私安全!あなた安全!周囲の
人も安全!ショック!!!」
14
胸骨圧迫の指示 ・・・「反応が無いのでそのまま胸骨圧迫を続けてください!」
~救急隊到着~
15
救急隊への引継ぎ ・・・発見したときの状況や行った処置を救急隊に伝える。
(例)
「目の前で突然胸をおさえて倒れました。すぐに胸骨圧迫を行いAEDを1回実施しました。」
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~救急車はタクシーではありません。救命のための緊急車です。~
富士宮市消防本部管内には急病や大怪我をした人を病院へ搬送するために、6台の救急
車が配置されていますが、近年の救急出場の増加により、救急車が不足してし まうおそれ
があります。救急車はみんなのものです。必要なときは誰でも平等に利用する権利があります
が、軽い病気やけがで救急車を利用すると、重篤で緊急を要する患者の搬送に支障をきたして
しまうかもしれません。助け合いの精神で、正しい救急車の利用を心掛けましょう。
こんなときはすぐに119番通報を
・心肺蘇生が必要な人
・冷汗をかいている人
・息苦しさを訴えている人
・突然の胸の痛みや背中の痛みがある人
・突然の頭痛がある人
・名前や生年月日が言えない(ろれつが回らない)人
・(片側の)手や足に力が入らない人
・一時的に意識が無くなった人
・広範囲にわたって火傷をした人
・けいれんが続いている人
・大出血など(吐血・下血)があり、ショック症状がある人etc・・・
※上記以外の場合でも判断に迷うときは、救急車を要請してください。
・風邪をひいたときや怪我がなく深酔いしただけのとき
・緊急性のない軽いけがで、タクシーなどで病院に行けるとき
・予約済みの病院の通院・入院のための交通手段としての救急要請
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