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閉空間内における水中衝撃波の挙動に関する研究

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閉空間内における水中衝撃波の挙動に関する研究
6
奈良工業高等専門学校 研究紀要 第50号(2014)
閉空間内における水中衝撃波の挙動に関する研究
福岡 寛,関 悠介 *
Study on Behavior of Underwater Shock Wave in Enclosed Vessel
Hiroshi FUKUOKA, Yusuke SEKI
We are developing a food processing system by using the underwater shock wave. The effect of a underwater shock wave
on the pressure in the vessel is the important factor for the food processing system. The purpose of this study is to research the
behavior of the underwater shock wave in the enclosed vessel to investigate the influence of the contour and volume of the
vessel. Moreover, we reserch the effect of silicone tube set in the vessel on the pressure genereted by underwater shock wave.
In this research, we used the elliptical shape for the vessel and the explosive was used to generate the shock wave. Numerical
calculations were carried out by using LS-DYNA. To investigate the effect of the contour of the elliptical vessel, the ratio of
the length of the major axis to minor axis of the elliptical and elliptical volume were changed. And we make the numerical
calculation model that have a silicone tube to investigated the effect of the silicone tube on the underwater shock wave. As a
result, the underwater shock wave generated at the first focal point of the elliptical vessel was converged at the second focal
point. At the same time, the pressure was increased by the converged underwater shock wave at the focal point in the all
elliptical vessels. The peak of the pressure at the focal point was determined by the contour and the volume of the elliptical
vessel and thickness of the silicone tube.
1. 緒言
日本における米の消費量は 1962 年から 2010 年にかけて
半減しており,現在も減少し続けている (1).これは食の多
様化によりパンや麺などの小麦粉製品の需要が高まったこ
とが大きく影響していると考えられる.このような状況で,
米の需要を高めるために,米粉を利用する動きがある (2).
米粉とは米粒を粉末状にしたものである.米粉は小麦粉製
品を製造する際に,小麦粉の代替となることができる.し
たがって,小麦粉を米粉で代替することで米の消費量は増
加すると考えられる.また米粉を用いることにより食感の
よい製品が製造できると報告されており,今後,米粉の需
要は高まっていくと考えられる (3).しかし,従来の米粉
製造方法には2つの問題点がある.第1に,米粉の製造方
法は浸水工程,米粒の粉砕および乾燥工程など様々な工程
が必要であることが挙げられる (4).これにより,米粉を
作るために,大規模な装置および時間が必要となる.した
がって米粉を製造するために必要な費用は高くなると考
えられている.第2に,従来の米粉製造方法では米粒を粉
末状にする際に摩擦による熱が発生することが挙げられ
る (5).これにより,米粉の品質は低下すると考えられて
いる.
* 機械制御工学専攻2年
伊東らによって従来の米粉製造方法の問題点を改善し
た新しい米粉製造法が提案されている (4).この手法は,
水で満たされた楕円体容器内で発生させた衝撃波を米粒
に作用させ,粉砕する手法である.図1にこの手法で用い
る米粉製造装置を示す.米粉製造装置は給水タンク,排水
タンク,楕円体容器,電極およびシリコーンチューブによ
り構成されている.電極は水で満たされた楕円体容器内に
おいて衝撃波を発生させるために用いられており,米粒は
シリコーンチューブ内に充填されている.電極およびシリ
コーンチューブはそれぞれ楕円体容器の第1焦点および
第2焦点を通過するように取り付けられている.また,水
中で発生させた衝撃波を特に水中衝撃波と呼ぶ.この手法
は従来の米粉製造方法に比べ,製造工程数が少ない.さら
に,米粒は水中衝撃波によるスポーリング破壊によって一
瞬で粉砕されるので,摩擦による熱の影響なしに,粉砕す
ることが可能である.したがって,低予算で高品質な米粉
を製造することができると考えられている.
水中衝撃波の収束に関して,様々な研究がなされてい
る.高山らは楕円体容器内で発生させた水中衝撃波の収束
現象について報告している (6).これによると,楕円体容
器の焦点で発生させられた水中衝撃波は楕円体容器の他
方の焦点で収束する.そして,その水中衝撃波が収束する
ことによって,瞬間的な圧力上昇が焦点において発生する
ことが報告されている.
閉空間内における水中衝撃波の挙動に関する研究
7
定数である.本数値解析で Mie-Grüneisen 状態方程式が適
用された水に対する各定数を表 1 に示す (8).
Table1 Parameters of Mie-Grüneisen equation of state for water
ρ0 [kg/m3]
C [m/s]
S
Γ0
1000
1490
1.79
1.65
JWL 状態方程式を式 (3) に示す.
ω
ωE
ω
exp -R1 V +B 1exp -R2 V +
= A 1ω2
ωVE
ω1
VR
VR
exp -R1 V +B 1exp -R2 V +
= A 1V
VR2
VR1
3
3
Fig.1 Manufacturing equipment of rice powder
ただし
比嘉らの研究では,米粉製造に用いる楕円体容器内にお
ける水中衝撃波の挙動を実験により観測している (7).そ
の結果,水中衝撃波の速度を算出することに成功してい
る.しかしながら,楕円体容器の形状,体積および楕円体
容器内に設置されているシリコーンチューブが水中衝撃
波の挙動および収束に与える影響はいまだ調べられてい
ない.この影響を調べることは米粉製造法のさらなる改善
において非常に重要であると考えられるが,楕円体容器の
形状および体積を実験的に変更することは非常に困難で
ある.
本研究の目的は実験的に変更が困難な楕円体容器の形
状,体積および楕円体容器に設置されているシリコーンチ
ューブが,水中衝撃波の挙動および収束に与える影響につ
いて数値解析を用いて米粉製造装置作成における設計指
針を得ることである.
2. 数値解析法
2.1 状態方程式
本研究では流体構造練成シミュレーションソフト LSDYNA を用いて数値解析をおこなった.また計算方法に
オイラー法を用いた.本解析では爆薬の爆発を用いて水
中衝撃波を発生させた.爆薬には旭化成ケミカルズ(株)
製の SEP を適用した.水および SEP にはそれぞれ MieGrüneisen 状態方程式および Jones-Wilkins-Lee (JWL) 状態
Γ
方程式を適用した.Mie-Grüneisen
状態方程式を式 (1) に
ρ0 C2 μ 1+ 1- 0 μ
2
1
示す.
=
+Γ0 ρ0 e
1- -1 2
Γ
ρ0 C2 μ 1+ 1- 0 μ
2
=
+Γ0 ρ0 e
1- -1 2
1
ただし
=
2
式 (1) お よ び (2) 中 の e,ρ0,C,Г0 お よ び S は そ れ
=
2
ぞれ比内部エネルギ,密度,音速,Grüneisen 係数および
Us-μp 曲線の係数である.また,ρ0,C,Г0 および S は材料
V=
V=
4
4
式 (3) お よ び (4) 中 の ρ0 ,ρe お よ び A,B,R1,R2,
ω はそれぞれ爆薬の初期密度,爆ごうガスの密度および
JWL パラメータと呼ばれる定数である.本数値解析で
JWL 状態方程式が適用された SEP に対する各定数を表2
に示す (9).
Table2 Parameters of JWL equation of state for SEP
ρ0 [kg/m3]
A [GPa]
B [GPa]
R1
R2
ω
1310
365
2.31
4.3
1.0
0.28
2.2 楕円体の形状および体積の変更
図2に楕円体の形状および体積が水中衝撃波の挙動お
よび収束に与える影響を調べるためにシリコーンチュー
ブを除いた楕円体容器の数値解析モデルを示す.解析モデ
ルの境界条件として楕円体容器の壁面および中心軸にそ
れぞれ壁条件および軸対称条件を適用した.図2中の L は
式 (5) によって算出される楕円体容器の第1焦点と原点間
の距離である.式 (5) 中の Dl および Ds はそれぞれ楕円体
容器の長径および短径の長さである.楕円体容器の形状は
Dl および Ds によって決定される.楕円体容器の形状が水
中衝撃波の挙動および収束に与える影響を調べるために,
長径と短径の比 Dl/Ds を体積 V1=1.61 x 106 ㎜3 一定の下で
1.05,1.14,1.25,1.37,1.47,1.59 および 1.82 に変更し,
7種類の楕円体容器で解析をおこなった.また,楕円体容
器の体積が水中衝撃波の収束に与える影響を調べるため
に,V /V1 を 1.00,2.00,3.00 に変更して解析をおこなった.
ここで,V および V1 はそれぞれ変更後の楕円体容器の体
積および基準楕円体容器の体積である.また,基準楕円体
容器の Dl および Ds はそれぞれ 83.85 ㎜および 80.0 ㎜であ
る.全ての解析において,爆薬の大きさおよび要素密度
NE はそれぞれ 5 ㎜ x 5 ㎜および 2.15 element/ ㎜2 とした.
L
=
D-D
2
2
l
s
5
L
8
=
D-D
2
2
l
s
5
奈良工業高等専門学校 研究紀要 第50号(2014)
Fig.2 Numerical calculation model
Fig.3
calculationmodel
model
Fig.3 Numerical
Numerical calculation
2.3 シリコーンチューブの厚みを考慮した場合
シリコーンチューブの厚みが水中衝撃波の挙動および
収束に与える影響を調べるために,楕円体容器の第2焦点
に米が充填されたシリコーンチューブを設置した数値解
析モデルを図3に示す.解析モデルは2次元モデルとし
た.境界条件として中心面および楕円体容器の壁面に面対
称条件および壁条件を適用した.本研究の解析モデルで
は,米粒を1粒ずつ再現することは困難であるため,米
粒が隙間なくシリコーンチューブに充填されているもの
とした.また,シリコーンチューブの厚みを 2,3,4 および
5 ㎜に変更し,チューブ内に発生する最高圧力の変化を調
べた.本研究で使用した米およびシリコーンチューブの材
料定数を表3に示す (10),(11).表3中の E,ν および ρ はそ
れぞれ縦弾性係数,ポアソン比および密度である.
2焦点付近で収束した水中衝撃波が再び広がり,楕円体容
器内を伝播する様子が確認できる. 図4より Dl/Ds=1.05
Table3 Parameters for silicone tube and rice
E [MPa]
ν
ρ [kg/m3]
Silicone tube
4.960
0.4500
1230
Rice
123.8
0.3900
1558
3.結果および考察
の楕円体容器内において,第1焦点から発生した水中衝撃
波は楕円体容器の第2焦点付近で収束することがわかっ
た.次に,楕円体容器の形状が水中衝撃波の挙動に与える
影響を調べるために,図5(a)~(f) に Dl/Ds=1.59 の楕円体
容器内における水中衝撃波の挙動を,圧力分布を用いて示
す.図4と同様に,矢印および赤点はそれぞれ水中衝撃波
が伝播する方向および楕円体容器の第2焦点を示してい
る.図5(a) では球状の水中衝撃波が楕円体容器内におい
て発生していることが確認できる.図5(b) では水中衝撃
波が左右の壁面に到達し,反射していることが確認できる.
図5(c) では壁面で反射した水中衝撃波が中心軸上で交
わっていることが確認できる.また,図5(b) において壁
面で反射した水中衝撃波が反対の壁面に向けて伝播してい
る様子が確認できる.図5(d) では水中衝撃波が楕円体容
器上端の壁面に到達し,左右の壁面で反射した水中衝撃波
が楕円体容器の第2焦点付近に近づいている様子が確認で
きる.また,矢印のように,水中衝撃波の一部が焦点に向
けて伝播していないことが確認できる.そして図5(e) で
水中衝撃波は楕円体容器の第2焦点付近で収束しているこ
とがわかる.また矢印から,一部の水中衝撃波は焦点に収
束していないことが確認できる.その後,
図5(f) のように,
衝撃波の挙動を示す.図4は水中衝撃波の挙動を圧力分布
によって示している.また図4中の矢印および赤点はそれ
ぞれ水中衝撃波が伝播する方向および楕円体容器の第2
焦点を示している.時間 t は爆薬が爆発する瞬間を t =0 と
している.図4(a) は爆薬の爆発によって球状の水中衝撃
波が発生していることを示している.図4(b) においては,
収束した水中衝撃波は再び広がり,楕円体容器内を伝播し
ていることが確認できる.
図4および図5より楕円体容器の形状によって,水中衝
撃波の挙動に違いがあることがわかった.次に,楕円体容
器の形状が水中衝撃波の挙動および収束に与える影響を
定量的に調べるために,Dl/Ds=1.05 および 1.59 のそれぞれ
の楕円体容器の第2焦点における圧力変動を図6に示す.
図6中の黒線および赤線はそれぞれ Dl/Ds=1.05 および 1.59
の場合の結果である.Dl/Ds=1.05 の場合において,2つの
圧力上昇が確認できる.1つ目の圧力上昇は t =24.6μs で
球状の水中衝撃波が左右の壁面で反射していることが確
認できる.図4(c) では,水中衝撃波が楕円体容器の上端
発生している.これは水中衝撃波が第2焦点を通過した際
に発生した圧力上昇である.2つ目の圧力上昇は t =98.6μs
に到達していることが確認できる.同時に,壁面で反射し
た水中衝撃波が焦点に向けて伝播していることが確認で
きる.図4(d) は,壁面で反射した水中衝撃波が楕円体容
で発生している.これは水中衝撃波が第2焦点付近で収
束したために発生した圧力上昇である.同様に Dl/Ds=1.59
3.1 楕円体の形状が水中衝撃波の挙動および収束に与
える影響
図4(a)~(f) に Dl/Ds=1.05 の楕円体容器内における水中
器の第2焦点付近で収束する直前を示している.そして図
4(e) では,水中衝撃波が楕円体容器の第2焦点付近に収
束していることが確認できる.その後図4(f) のように第
の場合において2つの圧力上昇が存在する.1つ目の圧
力上昇は t =92.6μs で発生している.これは,Dl/Ds=1.05 の
1つ目の圧力上昇と同様に水中衝撃波が第2焦点を通過
することによって発生する圧力上昇である.2つ目の圧
0
(d) t=109μs
(e) t=122μs
(f) t=129μs
閉空間内における水中衝撃波の挙動に関する研究
3.0
Pressure [GPa]
t=25.8μs
(b)
t=52.8μs
t=64.4μs
(c)
0.133
0.100
0.0667
(d)
t=94.6μs
(e)
t=99.4μs
(f)
Pressure [GPa]
(a)
Dl /Ds=1.05
Dl /Ds=1.59
2.5
0.200
0.167
9
2.0
1.5
1.0
0.0333
0.5
0
0.0
t=111μs
0
20
40
60
80
100
120
Time [μs]
Fig.4 Pressure contours for Dl /Ds = 1.05
Fig.6 Pressure variations at each focal point
for Dl /Ds = 1.05 and 1.59
Pressure [GPa]
0.200
(a) t=16.9μs
(b) t=34.4μs
(c) t=66.8μs
0.167
0.133
0.100
Pressure [GPa]
4
3
2
1
0
1.0
0.0667
1.2
1.4
0.0333
0
1.6
1.8
Fig.7 Relation between pressure and Dl /Ds at focal point
4
(e) t=122μs
(f) t=129μs
Fig.5 Pressure contours for Dl /Ds = 1.59
Pressure [GPa]
Pressure [GPa]
力上昇は t =118μs で発生している.これは Dl/Ds=1.05 の2
3.0
つ目の圧力上昇と同様に,水中衝撃波が第2焦点付近で
Dl /Ds=1.05
2.5
収束したために発生した圧力上昇である.D
l/Ds=1.59 の1
Dl /Ds=1.59
2.0
つ目の圧力上昇は Dl/Ds=1.05 の場合より低かった.これは
1.5
Dl/Ds=1.05 の場合に比べ,Dl/Ds=1.59 の場合に,第2焦点
1.0
に到達する水中衝撃波が減衰したためであると考えられ
0.5
る.水中衝撃波は伝播する距離が長くなるほど減衰する.
0.0
0
20
40
60
80
100
120
そして,体積を一定とし,楕円体容器を細長くすると,楕
μ
s]
Time
[
円体容器の第1焦点と第2焦点間の距離は長くなる.よっ
て,Dl/Ds が大きくなることで,楕円体容器が細長くなり,
水中衝撃波が楕円体容器の第2焦点に到達するまでの距
離が長くなったため,Dl/Ds=1.59 の楕円体容器における1
4
つ目の圧力上昇は低くなったと考えられる.2つ目の圧力
/D =1.05 および 1.59 でそれぞれ 3.05GPa および
上昇は D
3l s
0.674GPa に到達し,Dl/Ds=1.59 の圧力上昇の方が低くなっ
2
た.これは楕円体容器が細長くなることにより,水中衝
撃波が焦点に集まりにくくなったためであると考えられ
1
る.水中衝撃波は球状に伝播する.よって,真球の中心で
0
発生した水中衝撃波は中心に収束すると考えられる.しか
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
し Dl/Ds を大きくすると,楕円体は細長くなり,真球から
Dl /Ds
遠ざかっていく.よって Dl/Ds を大きくすると楕円体内で
反射する水中衝撃波の形状は,球状から遠ざかっていく.
そして図5(c) および (d) のように,壁面で反射した水中
衝撃波の一部が焦点に向けて伝播せず,反対方向の壁面に
向けて伝播する.したがって,Dl/Ds を大きくすると,壁
面間を往復する水中衝撃波が増えるため,図5(e) のよう
に,全ての水中衝撃波が同じ時間に第2焦点付近に収束し
Pressure [GPa]
(d) t=109μs
2.0
Dl /Ds
Dl /Ds=1.05
Dl /Ds=1.25
Dl /Ds=1.59
3
2
1
0
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
V / V1
Fig.8 Relation between V/V1 and Maximum pressure
なくなる.よって,第2焦点における圧力上昇は低くなっ
たと考えられる.
詳細に楕円体容器の形状が水中衝撃波により発生する
圧力に与える影響を調べるために,図7に Dl/Ds と各楕円
体容器の第2焦点において収束水中衝撃波によって発生
した圧力の関係を示す.図7より,Dl/Ds が大きくなると
収束水中衝撃波によって発生する圧力は低くなることが
確認できる.これは上述のように,Dl/Ds が大きくなり楕
円体容器が細長くなると,全ての水中衝撃波が同じ時間に
第2焦点付近に収束しなくなるためだと考えられる.
3.2 楕円体の体積が水中衝撃波の収束に与える影響
上述より,楕円体容器の形状が水中衝撃波の収束により
発生する圧力に影響を与えることがわかった.次に楕円体
容器の体積が水中衝撃波の収束により発生する圧力に与
える影響を調べるために,楕円体容器の形状を一定とし,
その体積を変更した.図8に水中衝撃波が収束することに
よって発生する圧力と V/V1 の関係を示す.V および V1 は
それぞれ,変更後の楕円体容器の体積および基準楕円体容
器の体積である.図8中の丸,四角形およびひし形の記号
はそれぞれ,Dl/Ds=1.05,1.25 および 1.59 の楕円体容器の
10
奈良工業高等専門学校 研究紀要 第50号(2014)
結果を表している.図8より,V/V1 を大きくすると水中
衝撃波の収束によって発生する圧力は低くなっているこ
とが確認できる.これは,楕円体容器の体積を増加させる
と,水中衝撃波が第2焦点付近に収束するまでに伝播する
距離が増え,水中衝撃波が減衰したためであると考えられ
る.
3.3 シリコーンチューブが水中衝撃波により発生する
圧力に与える影響
3.1および3.2節より,楕円体容器の形状および体積
が水中衝撃波の収束に影響を与えることが分かった.次
に,楕円体容器内に設置されたシリコーンチューブが水中
衝撃波の挙動および収束に与える影響を調べるために楕
円体容器に米を充填したシリコーンチューブを設置した
場合における水中衝撃波の挙動を調べた.図9に楕円体容
器にシリコーンチューブを設置した場合の水中衝撃波の
挙動を示す.図9(a) より,爆発によって水中衝撃波が発
生していることが確認できる.図9(b) では,シリコーン
チューブに到達した水中衝撃波が,シリコーンチューブ内
を伝播する透過波および反射波に分かれていることが確
認できる.図9(c) では楕円体容器下端で水中衝撃波が反
射している様子が確認できる.またシリコーンチューブを
透過した衝撃波が米部内を伝播している様子が確認でき
る.図9(d) では楕円体容器下端で反射した水中衝撃波が
楕円体容器の焦点に向けて伝播している様子が確認でき
る.また,シリコーンチューブ内を透過した衝撃波が,シ
リコーンチューブを通過し,楕円体容器上端壁面へ向けて
伝播している様子が確認できる.図9(e) では楕円体容器
上端および楕円体容器下端の壁面で反射した水中衝撃波
(a) t=9.19μs
(d) t=57.8μs
(e) t=82.4μs
本研究の目的は LS-DYNA を用いて,米粉製造法の改善
のために,楕円体容器の形状,体積および設置されたシリ
コーンチューブが水中衝撃波の挙動および収束に与える
影響を数値解析により調べることであった.本研究では,
楕円体容器の形状が,水中衝撃波の挙動に与える影響を
調べるために,楕円体容器の長径と短径の比 Dl/Ds を体積
一定の下で 1.05,1.14,1.25,1.37,1.47,1.59 および 1.82
に変更し解析をおこなった.また,楕円体容器の体積が水
中衝撃波の収束に与える影響を調べるために,Dl/Ds =1.05,
1.25 および 1.59 の楕円体容器の体積を2倍,3倍に変更し,
解析をおこなった.そして,楕円体容器に設置されたシリ
コーンチューブが水中衝撃波により発生する圧力に与える
影響を調べるために,シリコーンチューブの厚さを 2,3,4
および 5 ㎜に変更し,解析をおこなった.本研究により得
ると,水中衝撃波が収束することにより第2焦点において
発生する圧力は低くなることがわかった.これは楕円体容
器の形状を細長くすることで,全ての水中衝撃波が同じ時
間に第2焦点に収束しないためである.
Dl/Ds=1.05,1.25,1.59 の楕円体容器において,楕円体
(3)
(f) t=112μs
容器の体積を大きくすると,水中衝撃波が収束することに
よって発生する圧力は低くなることがわかった.これは,
楕円体容器の体積を大きくすることで,水中衝撃波が第
2焦点に収束するまでに伝播する距離が長くなるためであ
る.
Dl/Ds=1.05 の楕円体容器において,2~5 ㎜の間でシリ
(4)
Fig.9 Pressure coutours for model added silicone tube
0.25
0.20
Pressure [GPa]
4.結論
られた結論を以下に示す.
Dl/Ds=1.05,1.14,1.25,1.37,1.47,1.59および1.82 の
(1)
楕円体容器において,第1焦点から発生した水中衝撃波は
楕円体容器の第2焦点付近に収束することがわかった.
Dl/Ds=1.05~1.82 の範囲で楕円体容器の形状を細長くす
(2)
(c) t=39.4μs
(b) t=26.6μs
がチューブ内に集まっている様子が確認できる.そして図
9(f) のようにチューブ内において衝撃波が収束している
ことが確認できる.
図9より水中衝撃波は物質の境界面において物質を通
過する透過波および反射波に分かれることがわかった.次
にシリコーンチューブの厚みが,衝撃波が収束することに
よって発生する圧力に与える影響を調べるために,図 10
に衝撃波が収束することによって発生する圧力とシリコ
ーンチューブの厚みの関係を示す.図 10 より,シリコー
ンチューブの厚みが大きくなると,シリコーンチューブ内
における最高圧力は低くなることが確認できる.これは,
シリコーンチューブの厚みが大きくなることで,収束衝撃
波が減衰するためであると考えられる.
0.15
コーンチューブの厚さを大きくすると,チューブ内に発生
する圧力は小さくなることがわかった.
0.10
0.05
0.00
0
1
2
3
4
5
参考文献
Thickness of rubber [mm]
Fig.10 Relation between Thickness of rubber and Maximum
pressure in the tube
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米粉・米粉麺への取り組み,日本食品科学工学会誌,
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