...

促進耐候性試験法

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

促進耐候性試験法
促進耐候性試験法
Introduction to Accelerated Weathering
Test Methods
分析センター
第2部
総
説
・
解
説
分析センター
第2部
分析センター
第1部
飯田眞司
高柳弘道
矢部政実
Sinji
Iida
Hiromichi
Takayanagi
Masami
Yabe
の促進耐候性試験の特性、メリット、データを得る上での課
1. はじめに
題などを正しく理解し、これらをより効果的に活用して、目的
塗料はさまざまな材料や製品、部品の表面に、通常は数ミ
とするデータを短期間により正確に、より再現性良く得るこ
クロンから数百ミクロン程度の膜厚で塗られて、それらの保
とが肝要である。
護(長寿命化)のほか、それぞれの用途に応じてそれらの表
ここでは、現在広く利用されている塗膜評価のための促
面に色合いや風合い、つやや光輝感を持たせるようにするこ
進耐候性試験用の機器について解説する。紙面の都合上、
とでその機能を発揮している。
本号では従来から多く使用され現在も中心的な促進耐候性
塗膜は常に何らかの形で外界と接触した状態に晒されて
試験として使用されている
おり、光(主に紫外線)や水(降雨・結露など)、酸素、熱、
1. サンシャイン カーボンアーク灯式耐候性試験機
薬品などによる攻撃(化学的、物理的、光学的)を受ける状
2. デューサイクル耐候性試験機
態に置かれている。 塗膜の性能はこれらの外的な環境因
3. 紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機
子のさまざまな攻撃や刺激に対して、どれだけ耐えることが
4. キセノンアークランプ式耐候性試験機
できるかで決定されることになる。
について解説することにし、次号で比較的新しい促進耐候
このため、
「耐候性」を評価するための試験は自動車、土
性試験や最新の試験法などを紹介することにした。
木用機械類、橋梁や備蓄タンクなどの大型鋼構造物、ビル
これらの試験機器や試験法のより目的に合った効果的な
や体育館などの大型公共建築物など屋外で使用されるあら
利用が大いに進んでゆくことを切望するものである。
ゆる機械や構造物の総合的性能を評価する上で最も重要な
試験のひとつである。
2. サンシャイン カーボンアーク灯式耐候性
試験機(SWOM)
耐候性試験は「屋外ばくろ試験」が最も標準的な試験と
なるが、近年、耐候性が大幅に向上している各種塗料の性
能を見極めるためには最低でも数年以上を要するため、評
日本ではこの試験機を通常、
「サンシャインウェザー(オ)
価の目的や塗膜の用途、得ようとするデータに合わせて、さま
メーター」と呼ぶことが多い。この名称は必ずしも正式のも
ざまな促進耐候性試験が行なわれるようになっている。
のではなく、試験機メーカーの商品名がそのまま使われて
これら促進耐候性試験は屋外実用時の塗膜劣化との対
いるものである。ちなみに、この試験機の国内の有力メー
比の中で「促進性」、
「相関性」あるいは「再現性」を求め
カーであるスガ試験機では「サンシャインウェザーメーター
られているが、塗膜の劣化は先述のいくつかの外的劣化因
(Sunshine Weather Meter) と表示しているが、米国のア
子が塗膜の表面や内部のさまざまな部位や場所でそれぞれ
トラス社では「サンシャインカーボンアークウェザーオメー
に化学的反応や物理的変化を引き起こし、それらが同時にそ
ター(Sunshine Carbon Arc Weather-Ometer)」 の表示を
6)
7
1)∼5)
して相互に何らかの影響を及ぼしながら進んでゆくため
、
使用している。上記の表題は誤解を避けるため、あえてJIS
これらの外的劣化因子の影響を厳密にコントロールしない
B 7753(1993)の名称となっているものを使用した。しかし、
限り、効果的な「促進性」や適正な「相関性」、
「再現性」を
名称としては凡長であり、使用しにくいところがあるので、
得ることはかなり難しいと言うことになる。
本稿では略して「SWOM」で表すこととする。なお、国際的
現状の促進耐候性試験においては、
「促進性」について
には「オープンフレームカーボンアーク灯式耐候性試験機
はある程度の効果を得ているが、
「相関性」、
「再現性」と
(Open Flame Carbon Arc Weathering Instrument)」とい
いう点では、残念ながら十分に満足できるものは多く見られ
う名称が一般的である。
ない。
このSWOMの原型は1930年代末に米国で開発されてい
塗料の設計、開発や塗膜の性能評価にあたってはこれら
るが、カーボンアークの制御技術が確立されてようやく実用
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
22
促進耐候性試験法
に供されるようになったのは1950年代の後半になってからで
て、比較的早い時期にプラスチック関係分野での規格化が
ある。その後、それまで使用されていた紫外線カーボンアー
進んだこともあり、工業用塗料や汎用塗料をはじめとするあ
ク灯式の耐候性試験機の改良型として広く使用されるよう
らゆる分野での塗料工業の飛躍的発展を背景に膨大な量
になる。オープンな大気中で直接カーボンアークを発光さ
のデータの蓄積がなされてきている。このような事情からか
せ、連続した強い紫外線を放射させることで促進性が向上
新しい耐候性試験機が数多く開発された現在でも、これま
したことや波長分布が広く、長波長域にも放射光帯を有し
での蓄積データとの対比の関係上、この試験でのデータの取
ていて太陽光放射により近づいたことで再現性、相関性が
得は半ば避けられないところがあり、根強く使用され続けて
改良されたこと、4対のロングカーボンロッドの燃焼で長時
いる。
間連続試験が可能となり、装置の大型化と相俟って、試験
しかし、国際的には後述のキセノンアークランプ式耐候
効率が飛躍的に向上した。管理・運転面においては、カーボ
性試験機への移行が進んでおり、国内においてもJISのISO
ンの燃焼に伴なうススや銅カスの除去やフィルターの清掃
整合化への流れの中で塗料関係規格から外れるようになっ
管理をしっかり行なうことなどが必要であり、この点で比較
てきている。
的手間のかかる試験法でもある。(写真1,2参照)
図1は一般的なSWOMの概念図 である。また、図2に
6)
8)
SWOMの試験槽の配置図 を示した。
TM型
コントロール
システム
ガラスフィルター
試料
記録計
カーボン
写真1 サンシャイン カーボンアーク灯式耐候性試験機
試料スプレー
図1 サンシャイン カーボンアーク灯式耐候性試験機の概念図
写真2 内部の様子とカーボンの取り付け状態
SWOMの耐候性試験における促進倍率は試験対象とな
る塗膜の種類や組成などにもよるが、屋外ばくろに比べて
数倍∼10数倍ほどと考えてよい。
有効な促進耐候性試験法がほかにあまり多くなかったこ
とや試験機メーカーの市場戦略などの事情も手伝って、わ
が国では、1960年代以降自動車やPCMなどの工業用塗料
分野での耐候性評価に盛んに使用され、今日に到っている。
この間、JIS Z 0239「サビ止め油加速風化試験法」
(1960)や
JIS D 0202「自動車部品の塗膜通則」
(1966)をはじめとし
図2 試験槽の配置図
23
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
促進耐候性試験法
2.1 分光分布
3
分光分布で400nm以下の波長のものを通常、
紫外線(Ultra Violet ; UV)と称している。紫
外線とそのスペクトル範囲について具体的な
定義は特にないが、CIE(国際照明委員会)で
7
は表1のような分類で紫外線を表している。
6
図3 の分光分布にあるように、紫外線のう
ち地表には到達しない280nm以下のUV-Cは
2.5
サンシャインカーボンアーク
2.0
太陽光
1.5
1
0.5
0
200
∼315nmのUV-Bが若干含まれているが、塗
300
400
500
膜の劣化に大きな影響を及ぼす315∼400nm
600
700
800
900
1000 1100 1200
波長(nm)
のUV-Aが太陽光の数倍の放射照度を示して
図3 サンシャイン カーボンアークの分光分布
いることが特徴である。
表1 CIE(国際照明委員会)
による紫外線の分類
波長範囲
UV−A(紫外線A)
315 ∼ 400 nm
地表に到達している紫外線で塗膜や生物組織など
の有機物の劣化に影響を及ぼしている。(低エネルギーレベル)
UV−B(紫外線B)
280 ∼ 315 nm
より高エネルギーレベルの紫外線であるが、295∼315nmで地表
への照射はごくわずかで全太陽光の0.数%以下である。
UV−C(紫外線C)
∼ 280 nm
高エネルギーレベルで塗膜劣化への促進性がかなり高いが、
成層圏オゾンによる吸収や散乱で地表への到達はない。
SWOMはこの強烈な紫外部光による高い
.08
劣化促進性を有していることや一部ではある
が短波長のUV-B紫外線の照射などがある。
類や構造によっては、実環境のばくろ条件で
の劣化モードと大きく異なる要因ともなってお
り、その相関性、再現性の保証に欠ける場合
Absorbance
このことが塗料組成や塗膜構造、樹脂の種
初期
.06
が出てくる。
.04
.02
.00
紫外線による樹脂骨格の破壊(アルキル鎖
の開裂、加水分解)が特に促進されることと
3800 3600 3400 3200 3000 2800 2600 2400 2200 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800
なり、他の要因に基づく劣化とのバランスを崩
Wavenumber
して実際の屋外での塗膜劣化と異なる塗膜
図4 アクリルメラミン樹脂クリアー塗膜のI
Rチャート
(初期)
状態を呈することとなる。図4∼6にアクリル
メラミン樹脂系クリアーの塗膜表面について、
試験初期、屋外ばくろ6年とSWOM1500時間
.08
屋外ばくろ6年後
後のIRチャートを示したが、それぞれに樹脂
酸化(アルキル鎖の減少、パーエステルの生
成)や加水分解(メラミンの減少など)の程度
が異なっていることが判る。 写真3は別のア
クリルメラミン樹脂系クリアーについて屋外ば
Absorbance
総
説
・
解
説
カットされ、一部わずかながら観測される280
分光放射照度 (W/m2・nm)
6)
SWOMの分光分布を図3 に示した。この
.06
.04
.02
くろ2年とSWOM2000時間後の塗膜の表面
状態を観察したSEM写真である。屋外ばくろ
.00
では塗膜表面に巣穴状の侵食が生じている
3800 3600 3400 3200 3000 2800 2600 2400 2200 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800
が、SWOMでは表層樹脂の比較的均一な肉
Wavenumber
やせに止まっており、明らかに異なった劣化形
態を示していることが判る。また、図7,8に光
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
図5 アクリルメラミン樹脂クリアー塗膜のI
Rチャート
(屋外ばくろ6年)
24
促進耐候性試験法
沢保持性と色差について屋外ばくろ試験との
.09
.08
性などではあまり良好な相関性は得られてい
.07
ない。
紫外線による樹脂骨格の破壊作用は芳香
族系の樹脂構造を有するものではその傾向が
Absorbance
相関性を評価した結果を示したが、光沢保持
.06
.05
.04
強く現われる。反対に脂肪族系の樹脂構造
.05
が主体のものでは促進性がそれほど強調され
.02
ないため、実際の屋外ばくろではほぼ同程度
.01
.00
の耐候性を有するこれらふたつの樹脂塗料を
SWOM 1,500hr後
3800 3600 3400 3200 3000 2800 2600 2400 2200 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800
Wavenumber
SWOMで試験すると、芳香族系のものの耐候
性(この場合、光沢保持性)がより悪く評価さ
図6 アクリルメラミン樹脂クリアー塗膜のI
Rチャート
(SWOM1,500hr)
れることが往々にしてある。(表2参照)
屋外ばくろ試験2年
SWOM2,000時間
表2 芳香族系ポリウレタンと脂肪族系ポリウレタンの耐候性比較
光沢保持率(60°
)
写真3 耐候性試験塗膜の表面の状態
(アクリルメラミン樹脂塗料、倍率;10,000倍)
100
光沢(60°
)変化 相関係数=0.05
千倉ばくろ2年
SWOM1,000hr
ポリエステル樹脂系
ポリウレタン樹脂塗料(白)
[芳香族系]
82%
74%
アクリル樹脂系
ポリウレタン樹脂塗料(白)
[脂肪族系]
80%
83%
80
これらを改善するためにフィルターを選んで短波長UV成
SWOM
60
9)
分をカットするなどの提案 もあるが、反対に「促進性」が押
さえられてしまうことやSWOMとしての他のデータとの整合
40
性の課題などがあり、本格的な改善や標準化を進めるとこ
ろまでは到っていない。
20
500hr
0
2.2 試験条件
0
20
40
60
80
100
SWOMの一般的な試験(運転)条件を表3にまとめた。
屋外ばくろ24ヶ月
ここには代表的なふたつの条件を示しているが、降雨条件
図7 屋外ばくろとSWOMの試験結果(60°
光沢)
の相関性
として純水(脱イオン水)の噴霧時間と間隔が大きく異なっ
ている。JIS K 5400はASTMやISOなどの規格を参考とし、
40.0
一般汎用塗料を標準的に想定した塗料規格と考えてよい
光沢(色差ΔΕ)変化 相関係数=0.35
が、JIS D 0205は自動車または自動車用部品向け塗料を標
32.0
準的に想定した塗料規格であり、日本の多雨な気象条件を
SWOM
加味して降雨や水分の影響度をより大きく考慮している。
24.0
機種やカーボン種にもよるが、一般に48∼78時間程度
の連続運転が可能である。最新のものでは、カーボンの自
16.0
6)
動交換で300時間まで運転可能な機種も登場している。
その他、回転ラックの直径を標準サイズの70%に縮めて
8.0
照射強度を約2倍にした強エネルギー型などの試験機もあ
500hr
0.0
0.0
6
8.0
16.0
24.0
32.0
る が、前項でも指摘しているように単純に紫外線の強度を
40.0
高めることが促進性と相関性、再現性のバランスの面で望ま
屋外ばくろ24ヶ月
しい試験法なのか議論の残るところである。
図8 屋外ばくろとSWOMの試験結果(色差)
の相関性
25
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
促進耐候性試験法
表3 SWOMの標準的な試験(運転)条件
注)
項 目
JIS D 0205 規程条件
JIS K 5400 規程条件
放電電圧
50±2V
50±2V
放電電流
60±2A
60±2A
A(屋外ばくろ用) A(屋外ばくろ用) ガラス製
種 類
(255nm;1%>、302nm;71∼86%、360nm以上;91%<) (250nm;1%>、302nm;68%<、375∼700nm以上;90%<)
フィルター
2,000時間以内
2,000時間以内
63±3℃
63±3℃ or 83±3℃
圧 力
0.08∼0.13MPa
0.08∼0.13MPa
水 量
2100±100ml/分
2100±100ml/分
噴射時間
18分/120分照射
12分/60分照射
水 質
pH6.0∼8.0、導電率200μs/cm以下
pH5.8∼8.6、導電率200∼250μs/cm以下
水 温
16±5℃
16±5℃
50±5%
50±5%
使用時間
総
説
・
解
説
ブラックパネル温度
水の噴射条件
相対湿度
試料回転
直 径
960±10mm
960±10mm
ラック
回 転 数
1rpm
1rpm
255W/m2(300∼400nm)
255±10W/m2(300∼700nm)
連続照射
連続照射
試料面放射照度
注) JIS K 5400では電圧、電流、フィルターの使用時間、水の噴射条件を規程している。
その他はJIS B 7753に準拠している。
2.3 水質管理
JISなどの公的規格ではあまり厳密に規定されていない
が、SWOMのような降雨条件を想定した促進耐候性試験で
は試験に供する噴霧用の水の水質管理が極めて重要であ
る。
表2.にあるように、JIS規格においても導電率などを規定
して水中のイオン濃度に制限を加えているが、実際の耐候性
試験において試験初期から塗膜表面に著しい水痕が沈着
するようなことが発生し、塗膜の耐候性評価に著しい影響
を及ぼすことがある。これはカルシウム、
マグネシウムなどの
アルカリ土類系の塩やシリカ系の溶解物が塗膜表面に付着
し、不溶解物に変化して析出することが主な原因であり、こ
写真4 純水製造装置の外観
れらを防止するためには金属イオン類やシリカ(SiO2)につい
てより厳しい水質基準を設け、噴霧水中のシリカの含有量を
徹底的に抑えることが必要である。
2.4 排気処理清浄装置
当社では超純水レベルの導電率の管理、ppbオーダーで
先にも述べているが、SWOMにおいてはカーボンアークの
のシリカ含有量管理の基準を設けてこれらの水質維持に万
燃焼ガスは試験装置中に滞留することを防止するため強制
全を期した管理を行っている。
(写真4参照)
的に排気されるが、この排気中にはススや銅カスなどのアッ
当社での純水製造工程の概略を図9に示した。
シュ類が含まれている。
なお、これらの水質管理は後述のキセノンアークランプ式
それらをそのまま大気中に放出することは周囲の環境負
耐候性試験機でも同じ要領に基づいて実施している。
荷増大に繋がることから、清浄化処理が必要となる。当社
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
26
促進耐候性試験法
水道水
塩素除去処理
逆浸透膜ろ過
活性炭処理
フィルターろ過
陽イオン交換樹脂処理
純水タンク
殺菌処理
陰イオン交換樹脂処理
各促進耐候性試験機
総
説
・
解
説
図9 純水製造工程の概略
8)
では、すべてのSWOMの排気を大型ろ過集塵機に通して、
2.5 関連規格
ススやアッシュ、その他の微細粉塵を除去し、清浄化処理を
SWOM関係の規格には表4のようなものがあるが、長い
した上で屋外大気中に還元させている。
実績と広い用途を反映しているためか、他の促進耐候性試
図10にこのろ過集塵機の基本構造図を示した。また、写
験に比べるとかなりよく整備されている。
真5はろ過集塵機の本体である。
JIS B 7753-1993サンシャイン
カーボンアーク灯式耐光性及
ブローチューブ
清浄ガス出口
チューブシートカラー
トッププレナム
チューブシート
バグクランプ
ヘッダパイプ
ワイヤリングトラフ
(パイロットバルブ)
び耐候性試験機はこの試験法
に関して主に機器のハード面
を詳細に規定した規格である
が、ここで「耐光性試験機」は
水の噴霧がない、紫外線照射
ダイヤフラムバルブ
のみの試験法を指している。こ
アクセスドア
の種の試験機を「フェードメー
ハウジング
ター(Fade Meter)」と呼ぶこと
があるが、この名称は試験機
メーカーの商品名がそのまま使
エアーフィルタ
われているものである。一方、
含塵ガス入口
「耐候性試験機」は水の噴霧
筒
を伴う試験法を指している。こ
タイマ
ホッパ
ロータリバルブ
の試験機を「ウェザー(オ)メー
マノメータ
ター」と呼ぶが、先述のように
これも試験機メーカーの商品
名がそのまま使われているもの
図10 ろ過集塵装置の構造図
3. デューサイクル耐候性試験機
写真5 ろ過集塵装置の外観
8,10)
である。
関係からPCM用塗料などの工業用塗料分野で使われるこ
とが比較的多い。通常のSWOMに比べて、約10倍の促進
この試験機は前項のSWOMと同じものを使用し、ガラス
性があると言われているが、対象となる塗料の種類や樹脂
フィルターを通さずにエネルギーレベルの高い短波長成分
種によっては、必ずしも屋外ばくろ試験に対して相関性、再
を多量に含む紫外線の照射と消灯による暗黒高湿度結露の
現性が優れているとは言えない面が多く
(図11,12参照)あ
サイクル設定によって、より劣化促進性を高めた耐候性試験
り、試験条件の設定にあたっては十分な検討が必要であ
に使われる。この照射∼暗黒のサイクル条件はJIS D 0205
る。このような背景から、最近の試験実績はあまり多くなく
10)
自動車部品の耐候性試験方法 では60分/60分のサイク
なっている。
ルや消灯暗黒時試験槽の温度50±2℃、相対湿度98%以
参考までに、JIS D 0205自動車部品の耐候性試験方法
上などが規定されている。
に記載されている試験条件が一般的であり、それらを表5
10)
この試験法ではエネルギーの高い短波長紫外線と結露
にまとめた。但し、この試験条件は特に定まったものではな
水の影響による劣化促進性が高められているが、米国の
く、その試験目的や評価する塗膜の種類によって個別に設
National Coil Coaters Associationの標準規格となっている
定することも可能である。
27
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
促進耐候性試験法
表4 SWOMの関連規格
規格No.
名称または内容
JIS関係
総
説
・
解
説
JIS A 1415-1999
高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法
JIS K 5101-1991
顔料試験方法
JIS K 5400-1990
塗料一般試験方法
JIS B 7753-1993
サンシャインカーボンアーク灯式耐光性及び耐候性試験機
JIS D 0205-1987
自動車部品の耐候性試験方法
JIS H 8685-1-1999
アルミニウム及びアルミニウム合金の着色陽極酸化皮膜の光堅ろう度促進試験方法
JIS K 6266-1996
加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの耐候性試験方法
JIS K 7102-1981
着色プラスチック材料のカーボンアーク燈光に対する色堅ろう度試験方法
JIS K 7350-1995
プラスチック−実験室光源による暴露試験方法
JIS K 6021-2000
建築用塗膜防水剤
JIS K 5981-2003
合成樹脂粉体塗装製品の塗膜
JIS Z 2381-2001
大気暴露試験方法通則
JIS E 4037-2001
鉄道車輌−構成部品−耐候性試験方法
JIS Z 9107-1998
安全標識板
ISO関係
ISO 4892-4 1994
Plastics-Methods of exposure to laboratory light sourcesPart4:Open-flame carbon-arc lamp
ISO 2135-1984
Anodizing of aluminium and its alloys-Accelerated test of light fastness of
coloured anodic oxide coatings using artificial light
ISO 3917-1992
Road Vehicles-Safety glazing materials
ASTM関係
G 152-2000
Standard Practice for Operating Open Flame Carbon Arc Light Apparatus
for Exposure of Nonmetallic Materials
D 750-95
Test Method for Rubber Deterioration in Carbon-Arc-Weathering Apparatus
D 822-2001
Standard Practice for Filtered Open-flame Carbon-Arc Exposurees of Paint and Related Coatings
D 3361-2001
Standard Practice for Unfiltered Open-flame Carbon-Arc Exposurees of Paint and Related Coatings
D 1499-92
Operating Light-and-Water-Exposure Apparatus(Carbon-Arc-Type)for Exposure of Plastics
Federal Standard関係
Test method STD
Paint, Varnish, Lacquer and Related Materials, Method of Inspection
No.141C-93
Method 6151
Fed.Res.FMVSS
Seat Belt Assemblies-Passenger Cars, Multipurpose Passenger Vehicles, Trucks and Buses
No.209
MIL関係
810F-2000
Environmental Test Methods-Method 505.2 Solar Radiation
P-21600A-1998
Paint System, Fluorescent, Removable, for Aircraft Appication
AATCCL関係
Test Method 111-1996
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
Weather Resistance of Textiles-Sunshine Carbon Arc Apparatus
28
促進耐候性試験法
4.紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機
11)
,12)
この試験機はすでに過去のものとなっているが、まだ繊
100
維、紙などの耐候性評価に使われているところもあるので、
光沢(60°
)変化 相関係数=0.28
参考までに簡単に解説しておく。試験機の規格としてはJIS
80
B 7751紫外線カーボンアーク燈式耐光試験機とJIS B 7752
紫外線カーボンアーク燈式耐候性試験機が制定されてお
SWOM
60
り、前者が1灯式のパイレックスガラスグローブの中で紫外
線を連続照射するもので後者が2灯式でさらに水の噴霧
40
(18分/120分or12分/60分)を伴うものである。
促進耐候性試験機としては最も初期のものであるが、ド
20
イツで染色した繊維の耐候性の評価にこのカーボンアーク
1,000hr
0
0
20
40
60
80
灯が使用されたのが始まりである。本格的な試験機として
100
1910年代末に米国で開発されているが、1950年代頃から繊
屋外ばくろ24ヶ月
維、包装材料などを中心に促進試験法として広まってゆき、
図11 屋外ばくろとSWOMの試験結果(60°
光沢)
の相関性
表5 デューサイクル耐候性試験(運転)条件
JIS D 0205 規程条件
項 目
40.0
光沢(色差ΔΕ)変化 相関係数=0.46
SWOM
32.0
24.0
16.0
運転条件
照射/暗黒:60分/60分
放電電圧
50±2V
放電電流
60±2A
ガラス製フィルター
使用しない
ブラックパネル温度
63±3℃ or 83±3℃
なし
水の噴射
8.0
1,000hr
照射時
50±5%
暗黒時
50±2℃、98%以上
相対湿度
0.0
0.0
8.0
16.0
24.0
32.0
40.0
暗黒時試料冷却
屋外ばくろ24ヶ月
試料回転
ラック
図12 屋外ばくろとSWOMの試験結果(色差)
の相関性
試料裏面に約7℃冷水噴霧
直 径
960±10mm
回転数
1rpm
試料面放射照度
285±10W/m2(300∼700nm)
表6 紫外線カーボンアーク灯式耐候性試験機の関連規格
規格No.
名称または内容
JIS関係
JIS K 5400-1990
塗料一般試験方法
JIS B 7751-1974
紫外線カーボンアーク燈式耐光試験機
JIS B 7752-1980
紫外線カーボンアーク燈式耐候性試験機
JIS K 7102-1981
着色プラスチック材料のカーボンアーク燈光に対する色堅ろう度試験方法
JIS L 0842-1999
カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法
JIS L 0824-1999
染色堅ろう度試験用カーボンアーク灯形耐光試験機
JIS H 8685-1-1999
アルミニウム及びアルミニウム合金の着色陽極酸化皮膜の光堅ろう度促進試験方法
JIS D 0205-1987
自動車部品の耐候性試験方法
ASTM関係
G 23-98
Operating Light Exposure Apparatus(Carbon-Arc-Type)
With and Without Water for Exposure of Nonmetallic Materials
AATCCL関係
Test Method 16
Colorfastness to Light
29
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
促進耐候性試験法
工業用塗料分野や汎用塗料分野でも広く使われるような
り、規格化も進んだ。
(表6参照)
しかし、図13に示したように主に386nmを、さらには358
と415nmをピークとする紫外線域に極端に偏った分光放射
のため、太陽光放射とは全く異なる分光分布となっており、
促進耐候性試験としては屋外ばくろ試験との相関性、再現
性の点で不十分なところがある。
このため、1960年代以降は先に紹介したSWOMの登場に
よって促進耐候性試験法としての主役を奪われ、20世紀末
にはJIS K 5600など塗料関係の規格の改訂によって試験法
としての使命を終えている。
従来からの試験データの対比の上でこの試験でのデータ
を必要とすることもあり、繊維、紙関係などでは1灯式で紫
外線を連続照射するタイプ(いわゆるフェードメーターと呼ば
れるタイプ)のものは現在でも使われている。
図14は一般的なカーボンアーク式耐光試験機(1灯式)
13)
の概念図 である。また、図15にカーボンアーク式耐候性試
12)
験機(2灯式、水噴霧型)の試験槽の配置図 を示した。
6
放射照度 (W/m2・nm)
総
説
・
解
説
図15 試験槽の配置図
5. キセノンアークランプ式耐候性試験機(XWOM)
4
サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機の場合
と同じくこの試験機を通常、
「キセノンウェザー(オ)メー
2
放電電圧;135V
放電電流;16A
測定距離;254mm
ター」と呼ぶことが多い。これらについても試験機メーカー
の商品名がそのまま使われている。ここではJ IS B 7754
(1991)その他の公的規格
0
200
300
400
500
600
700
10),14),15)
の名称となっているも
のを使用した。本稿では略して「XWOM」で表すこととす
800
る。ISOやASTMなどの国際規格においては「Xenon Arc
波長(nm)
Weathering Instrument」という名称が多く使われている。
XWOMは希ガスであるキセノンガス中でアーク放電さ
図13 紫外線カーボンアークの分光分布
せ、励起されたガスが基底状態に戻る時に発光する光が地
表上での太陽光に近似していることを利用したものである。
制御盤
熱平衡装置
空気調節弁
試料回転粋
試験槽
アークランプ
傾斜型試料
ホルダー
ブラック
パネル温度計
他の多くの促進耐候性試験では紫外線の強度が異常に高
ランプ冷却用
送風機
い光源を使用して、試験片の劣化を特に促進させることに
設計の主眼が置かれていることに比べると、自然の劣化条
TM型コントロール
システム
件の再現性を相当意識した試験法となっている。
紫外線カーボン
アーク用
太陽電池式照度計
(オプション)
他の試験法では、カーボンの組成や品質、メタルハライド
ガスの組成や品質、蛍光管のガス組成や蛍光体の組成、さ
らにはメーカー間の差などで光の分光分布や強度にバラツ
ペーパ
ライザー
送風機
キを生じる危険性や可能性があり、現在でもこれらの管理
試料枠回転用
駆動モーター
には相当神経を使うことが多いが、XWOMの光源はピュア
送風機用
モーター
なキセノンガスを使用していることから、光の分光分布や
強度はほとんどその純度と使用するフィルターで決定されて
しまうため、試験用の光源としてはかなり安定したものであ
図14 紫外線カーボンアーク式耐候性促進試験機の概念図
る。この点では促進耐候性試験法として「再現性」を確保し
やすい試験法と考えられる。
イギリスの科学者ラムゼイはキセノンを発見(1898年)し、
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
30
促進耐候性試験法
16)
アーク放電で発する光が白色であることを見出した。この発
委員会)の1985年の報告 では、300∼400nmで74.6W/㎡と
見で彼は1904年のノーベル化学賞を受賞する。そして、キセ
なっている。
ノンランプが開発されるが白色昼光に近いため、現在では
標準条件でのXWOMの耐候性試験における促進倍率は
映写機や様々な照明の光源として広く使われるようになって
試験対象となる塗膜の種類や組成などにもよるが、屋外ば
いる。このランプを使った耐候性試験機は1950年代中ごろ
くろに比べて数倍ほどと考えてよい。
ようやく開発されるが、太陽光に近似した光源ではあって
強エネルギー型では300∼400nmで180W/㎡と規定され、
も劣化促進性が今ひとつ高くないことから、日本では耐候
試験板の距離やランプ照度の調整でコントロールするよう
性試験機としての認識度は比較的低かった。1970年代ころ
になっており、自動車関係の耐候性試験で多く使われてい
からランプの高照度化が進められたことやヨーロッパを中心
る。
にISOへの規格化が進んだことなどから各種材料の耐候性
図16は一般的なXWOMの概念図 である。また、図17に
評価に使われるようになった。
キセノンアークランプ(空冷式・水冷式)の構造図 を示し
その後、強エネルギー型の試験法が考案され、さらに高
た。
照度のランプが開発されたことなどから耐候性試験法とし
また、最近では少数試験板用の小型の試験機も市販され
ての「促進性」が向上した。また、欧米を中心にした海外
るようになっている。この試験機の場合、試験板は固定され
では促進耐候性試験での主流となっていたことなどから、
た状態で試験される。
17)
15)
1990年にはJIS K 5400塗料一般試験法に採用され、今日
のJIS K 5600塗料一般試験法の耐候性試験法に到ってい
試料ホルダー
る。屋外ばくろ試験との近似性、再現性が比較的優れてい
ることから、日本においても塗料のほか、プラスチック、ゴム
試料
回転枠
その他の各種材料の促進耐候性試験の主流になりつつあ
7.5kWキセノンランプ
試料
る。(写真6参照)
タッチパネル
記録計
エネルギー受光器
表面スプレー
ブラックパネル温度計
図16 キセノンアークランプ式耐候性試験機の概念図
写真6 キセノンアークランプ式耐候性試験機
カーボンアーク灯式のようなススや燃えカス、銅カスの発
生がなく、運転時の管理が容易であるが、後述の分光分布
で明らかなように塗膜の劣化にはあまり寄与しない赤外線
領域でのエネルギー照度が大きい。従って、試験槽の温度
管理にはそのほとんどを熱として強制的に除去する必要が
あり、耐候性試験法としてはかなり効率が悪く、エネルギー
労費型の試験法であることが難点である。
XWOMでは照度でコントロールしているが、標準型では
300∼400nmで60W/㎡と規定されている。この照度は地表
図17 キセノンアークランプの構造図
での自然昼光最高値(マイアミ、春分正午の垂直入射)の
66.2W/㎡(300∼400nm)にほぼ相当する。また、太陽光の
分光組成(標準自然昼光最高値)に関するCIE(国際照明
31
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
促進耐候性試験法
4.0
場合を除いて、基本的にこの照度分布を
前提に試験条件を設定することとなる。
3.5
(表7)
キセノンアーク
総
説
・
解
説
分光放射照度 (W/m2・nm)
3.0
いずれにしてもXWOMではほぼ太陽光
に近似した分光特性から、実環境のばく
2.5
ろ条件に近い劣化モードで塗膜の劣化を
進める可能性が高く、相関性、再現性に優
2.0
れた試験結果を得ることが期待できる。但
し、照度に大きな差がないことから、高い
1.5
促進性はあまり期待できない。この点で強
1.0
エネルギー型は促進性が向上しているが、
0.5
実際の促進率はせいぜい2倍強程度に留
太陽光
0.0
200
300
400
500
600
700
まっている。実際の塗膜の劣化は単に紫
外線照度にだけ支配されているのではな
800
く、温度や水の効果が光と複合・連動して
波長(nm)
作用していることによるものであることが
判る。
図18 キセノンアークランプの分光分布
5.1 分光分布
その分光特性の面から考えるとXWOMはバランスの良い
XWOMの分光分布を図18に示した。太陽光のそれに
試験法であると言える。この点で特に樹脂や顔料などの組
近似した分光分布を有していることが判るが、UV-Bでは
成や特性などに制限されることが少なく、ポリウレタン、アク
290nm以下はほとんどカットされ、290∼313nmの範囲が若
リル、メラミン、アルキド、油性系など幅広い種類の塗料に
干含まれている。315∼400nmのUV-Aについてもほぼ太陽
適用することが可能である。屋外ばくろ試験との相関性を
光のそれと近いレベルにある放射照度を示していることが
評価した時の例を図19,20に示した。但し、促進性の点で不
特徴である。
足する場合があり、高耐候性塗料の評価ではかなりの試験
時間を要するような場合もある。また、赤外線域の放射強度
下の表はISO11341、JIS5600-7-7に規定されている分光放
15)
射照度分布 である。屋外でのばくろを想定した一般的な促
が相対的に大きいため、試験片の温度管理によっては色相
進耐候性試験では、個別の照度分布をユーザーが指定する
劣化に影響が出ることがあるので注意を要する。
表7 デーライ
トフィルターを通したキセノンアークランプに要求される分光放射照度分布
波長,λ
最小値 a,b
CIE No.85:1989, 表4 c,d
nm
%
%
λ≦290
最大値 a,b
%
0.15
290<λ≦320
2.6
5.4
7.9
320<λ≦360
28.2
38.2
38.6
360<λ≦400
55.8
56.4
67.5
注 a)この表の最小値及び最大値は、異なる製造ロット及び各種経時変化したデーライトフィルタを通した、製造者の推奨する
水冷及び空冷のキセノンアークランプでの測定数113の分光放射照度を元にしている。最小値と最大値は、全ての測定値の
平均値から少なくとも3σ以内である。
b)最小値及び最大値の欄は、測定値の最少と最大を記載しているので、必ずしも100%にならない。個々の分光放射照度の値
は、この表の波長域で計算すると百分率の合計は100%になる。個々のデーライトフィルタを通したキセノンランプは、各々
の波長域における百分率は指定の最小値と最大値の間にはいること。許容範囲と異なる分光放射照度のキセノンアーク装
置での試験結果は、異なることが予想される。用いたキセノンアークランプ及びフィルタの分光放射照度のデータについ
てはキセノンアーク装置の製造者に相談すること。
c)CIE No.85:1989の表4の水平面全天放射照度の値を附属書Bに示す。これらの値は、デーライトフィルタを通したキセノン
アークランプの目標値である。
d)CIE No.85:1989の表4の(附属書B参照)に代表される太陽光について、290nmから800nmまでの総放射照度との百分率で
示すと、紫外放射照度(290nm−400nm)は11%で、可視放射照度(400nm−800nm)は89%である。キセノンアーク装置
内で実際に試験片を暴露する紫外放射及び可視放射の百分率は、暴露する試験片の数量及びそれらの反射特性で異なるか
もしれない。
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
32
促進耐候性試験法
100
表8 ランプ出力と照射距離およびフィルターの組み合わせによる放射照度の例17)
光沢(60°
)変化 相関係数=0.55
(放射照度単位;W/m2 )
80
フィルター
XWOM
インナー アウター
60
硼珪酸ガラス
石英
#275
40
硼珪酸ガラス
石英
#295
20
2,000hr
0
硼珪酸ガラス
石英
0
20
40
60
80
#320
100
屋外ばくろ24ヶ月
石英
赤外カット
フィルター
石英
石英
図19 屋外ばくろとXWOMの試験結果(60°
光沢)
の相関性
40.0
光沢(色差ΔΕ)変化 相関係数=0.98
太陽光[都内南面45°5月]
CIE全天空
XWOM
32.0
250
∼
300nm
0.6
∼
1.6
0.3
∼
0.7
0
0.1
∼
0.4
19
∼
51
300
∼
400nm
60
∼
180
59
∼
165
48
∼
162
44
∼
126
78
∼
220
400
∼
700nm
374
∼
1090
381
∼
1083
360
∼
1214
317
∼
915
391
∼
1133
700
∼
3000nm
565
∼
1629
588
∼
1670
590
∼
1721
93
∼
269
599
∼
1738
50(280∼400nm) 423
488
74.6(280∼400nm) 486
530注
注;700∼2450nm
24.0
【参 考】
キセノンランプの出力 7500W
ランプ中心からの距離 290mm
アウターフィルターはスガ試験機の硼珪酸ガラスの設定番手「275」は275nm
以下をカット、
「295」は295nm以下をカット、
「320」は320nm以下をカット
石英ガラス:ほぼ純度100%の石英
硼珪酸ガラス:主な組成として、Si80%、B12%、Al2%、その他6%で構成さ
れている。
16.0
8.0
2,000hr
0.0
0.0
8.0
16.0
24.0
32.0
40.0
一般的にはランプ出力とフィルターで調整してそれぞれのユーザースペック
に合わせて、60W/㎡と180W/㎡の照度で運転している。具体的には照度計にラ
屋外ばくろ24ヶ月
ンプ出力を連動させ、ランプ出力を自動調整して照度管理している。
図20 屋外ばくろとXWOMの試験結果(色差)
の相関性
5.2 キセノンランプとフィルター
表9 XWOM(水冷式)
の標準的な試験(運転)条件
XWOMではキセノンランプの出力(W)とフィルター、試
項 目
試験(運転)条件注1)
験片距離の組み合わせでさまざまな照度を得ることができ
放電電圧
50±2V
る。これが公的規格で試験条件を細かく定めにくい背景の
放電電流
60±2A
ひとつになっているようでもある。参考までにその組み合わ
フィルター
17)
せ事例を表8.に示した。
インナー
石英ガラス
アウター
硼珪酸ガラス(#295,#275)注2)
ブラックパネル温度
5.3 試験条件
XWOMの一般的な試験(運転)条件を表9にまとめた。
水の噴射
条件
XWOMの場合、ランプの種類や定格、フィルターの種類
や組み合わせで様々な試験条件が設定できることになる
が、ここでは塗膜の耐候性評価で使われる代表的な試験条
件を示した。
14)
,15)
JIS
0.08∼0.13MPa
水量
660±60ml/分
噴射時間
18)
試料回転
ラック
霧用の水の水質などを細かく規定しているが、試験を行なう
12分/60分照射
水質
pH6.0∼8.0、導電率5μs/cm以下
水温
16±5℃
相対湿度
やISO などでは水冷式ランプの冷却水の水質や噴
63±3℃
圧力
50±5%
直径
回転数
上で最も重要なランプの定格、種類や照度、分光分布、フィ
960±6mm
1rpm
2
60±3W/m (300∼400nm)
ルターの種類、ブラックパネルの種類などについては、細か
試料面放射照度
な規定が示されていない。これはXWOMが比較的新しい
180±3W/m2(300∼400nm)
連続照射
試験法であり、試験機メーカーのスペックが必ずしも統一さ
注1)JIS D 0205やJIS K 5600では上記と異なった数値となっている項目もある。
水冷用水の水質についてはJIS B 7754に準拠している。
注2)
スガ試験機の設定番手、#295は295nm以下をカット、#275は275nm以下をカット
れたものではないこと、ユーザー側でも各社ごと業界ごとに
試験条件が統一されていないことなどが反映されており、今
後の課題となっている。
33
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
促進耐候性試験法
5.4 温度管理
キセノンランプは太陽光放射分光分布に近似している
が、赤外線域での大量の放射があり試験板や試験槽の温
度コントロールに注意する必要がある。キセノンランプを直
接水で冷却する水冷式ではインナーとアウターの2重のフィ
ルター間に純水を通してランプの冷却とともに赤外線を吸収
する効果もあり、この方式が多く採用されている。その他赤
ブラック
パネル
外線フィルターを組み合わせる方式などがあり、規格によっ
センサー
てはこれらの設定を前提にしたものもある。
総
説
・
解
説
試験槽の冷却には大型の冷却装置による冷却のほかブロ
ポリ弗化
ビニリデン
アー、ダンパーによる均一な空気流の制御などを行なえるよ
正 面
う設計がされている。
ランプ出力で制御する強エネルギー条件では、熱の放射
断 面
図22 ブラックスタンダード温度計の基本構造図
がさらに高まるため、試験槽の温度管理はより厳しいものと
なる。温度管理のノウハウや方式は現在のところ、メーカー
間での統一が進んでおらず、このことによる強エネルギー条
BPTとBSTではBSTで表示される温度はBPTよりも幾分
件での試験槽内の温度管理にバラツキが生じやすい原因に
高い値を表示する傾向があり、どちらの測定方式で試験さ
もなっている。一昨年行なわれた日塗工での試験機メーカー
れたデータであるかを明確にしておく必要がある。
ごとの耐候性試験結果の比較では強エネルギー条件で試
その他、試験槽の湿度は放射光の当たっていない部分で
験機メーカーによって光沢保持性に大きな差が生じた結果
の相対湿度を規定しているが、放射強度180W/㎡(強エネル
の報告 もあり、注意が必要である。
ギー型)、BPT63℃の条件では槽内温度は約30℃程度であ
試 験 板の表面温 度は従来からブラックパネル温 度計
り、この温度での相対湿度で管理することになる。
19
(BPT)が一般に使用され、JISなどの規格にも規定されて
きた。このBPTは図21に示すような構造をしており、黒色塗
5.5 関連規格
装したステンレス製パネルに温度センサーが取り付けられて
XWOM関係の規格には表10のようなものがある。これま
いる。このセンサーによって表面温度が63℃になるようコント
では主にヨーロッパを中心に広まってきた背景があり、ISO
ロールされるシステムとなっている。
やDIN規格などで比較的よく整備されている。
日本国内でも近年JISのISO化が急速に進められているこ
となどから、この10年近くの間に改訂や新設などでXWOM
関係の規格制定が進んでいる。
しかしながら、先に触れたようにXWOMのハード面での
多様性から、試験機メーカーのスペックの不統一、ユーザー
ごと業界ごとのスペックの不統一などがあり、規格としては
センサー
試験法としてのごく基本的な部分に限定されている傾向が
強く、実用性に多少欠けるところがあるものが多い。
5.6 集中管理システム
一般に促進試験においては試験塗膜に付加する各劣化
因子の強度を極端に高めているため、試験条件や試験槽の
環境条件の変動がそのまま試験結果の変動に結びついて
ブラック
パネル
正 面
しまう。このため、SWOMやXWOMのような促進耐候性試
断 面
験では紫外線照射量、試験温湿度や水の噴霧状態などの
稼動状況について機種間や時間で些少のバラツキも許され
図21 ブラックパネル温度計の基本構造図
ないことになる。
促進耐候性試験を実施する場合、常に厳密な試験条件の
このBPTのほかにブラックスタンダード温度計(BST)が
維持と管理が求められ、それらを技術的に保証してゆく必
あり、ヨーロッパを中心に採用されてきた経緯がある。BST
要がある。
は黒色塗装したステンレス製パネルの裏にポリふっ化ビニリ
関西ペイントではこれら促進耐候性試験の維持管理にお
デンの樹脂板を貼りつけてあり、この樹脂板に温度センサー
いて、全社的に同じレベルで、リアルタイムな試験条件の維
が埋め込まれた構造になっている。(図22参照)
持と管理を行なうため、インターネット技術を活用した集中
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
34
促進耐候性試験法
表10 XWOMの関連規格
規格No.
名称または内容
JIS関係
JIS K 5600-1999
塗料一般試験方法
JIS B 7754-1991
キセノンアークランプ式耐光性及び耐候性試験機
JIS D 0205-1987
自動車部品の耐候性試験方法
JIS H 8685-1-1999
アルミニウム及びアルミニウム合金の着色陽極酸化皮膜の光堅ろう度促進試験方法
JIS K 6266-1996
加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの耐候性試験方法
JIS K 7102-1981
着色プラスチック材料のカーボンアーク燈光に対する色堅ろう度試験方法
JIS K 7350-1-1995
プラスチック−実験室光源による暴露試験方法
JASO関係
M 346-1993
自動車用内装部品のキセノンアークランプによる促進耐光性試験方法
M 351-1998
自動車部品−外装部品のキセノンアークランプによる促進耐候性試験方法
ISO関係
ISO 4892-1-1994
Plastics-Methods of exposure to laboratory light sourcesPart1:General guidance
ISO 4892-2-1994
Plastics-Methods of exposure to laboratory light sourcesPart2:Xenon arc sources
11341-1994
Paints and varnishes-Artficial weathering and exposure to
artificial radiation-Exposure to filtered xenon arc radiation
11431-1993
Building construction-Sealants-Determination of adhesion/cohesion
properties after exposure to artificial light through glass
105/B-1992
Textiles-Tests for colour fastness-Part B02(1994):Xenon arc fadind lamp test
4665-1998
Rubber,vulcanized and thermoplastic-Resistance to weathering
ISO 2135-1984
Anodizing of aluminium and its alloys-Accelerated test of light fastness of
coloured anodic oxide coatings using artificial light
ISO 3917-1992
Road Vehicles-Safety glazing materials
ASTM関係
G 26-1996
Standard Practice for Operating Light-Exposure Apparatus(Xenon Arc Type)
with and without Water for Exposure of Nonmetallic Materials
G 155-1998
Standard Practice for Operating Xenon Arc Apparatus for
Exposure of Nonmetallic Materials
ANSI関係
ANSI/SAE
American Nationail Standard for Safety Glazing Materials
Z26.1-1996
for Glazing Motor Vehicles and Motor Vehicle Equipment
Operating on Land Highways-Safety Standard
SAE関係
J1885-1992
Accelated Exposure of Automotive Interior Trim Component
Using a Controlled Irradiance Water Cooled Xenon Arc Apparatus
J1960-1989
Accelated Exposure of Automotive Exterior Materials
Using a Controlled Irradiance Water Cooled Xenon Arc Apparatus
AATCCL関係
Test Method 16-1990
Colourfastness to Light
Test Method 169-1990
Weather Resistance to Textiles:Xenon Lamp Exposure
DIN関係
54071-1985
Testing of colourfastness of textiles, determination of colourfastness
of dyeings and prints to weathering:Xenon Arc
75202-1998
Determination of colourfastness of interior materials
in motor vehicles:xenon arc lamp test
35
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
促進耐候性試験法
管理システムを開発し、全社で実施している促進耐候性試験
で一括して管理している。また、これら試験機器の運転状
20)
の稼動状態の管理を行なっている。
況は連続したデータとして記録、保存している。
このシステムによってSWOMの放射照度のバラツキ(機器
図23∼25に本システムの概略図とサーバー構成、データ
間、時間)を抑えることや、XWOMのランプ交換時期を的確
フローなどを示した。
に把握すること、異常稼動時の即時停止などを全社レベル
各地区拠点サーバー
各地区ユーザー
センターサーバー
総
説
・
解
説
図23 集中管理システムの概念図
試験機器
PLC
(データ収集)
拠点サーバー
試験機器内蔵センサー
センターサーバーへ
図24 集中管理システムのサーバー構成
センターサーバー
サーバー構成
Mailサーバー
異常・警告時のメール
送信と拠点サーバから
のメール受信
拠点サーバーから
Webサーバー
各担当者へ
(異常・警告時)
データベース
格納データの
閲覧化
DBサーバー
メール本文からの
データ抽出・保存
図25 集中管理システムのデーターフロー
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
36
促進耐候性試験法
6. おわりに
9)武田一宏、小林正雄、
沖永毅:塗料の研究、
No.123、20
(1994)
本報では従来から多く使用され現在も中心的な促進耐候
1
0)JIS D 0205 自動車部品の耐候性試験方法(1987)
性試験とその機器について解説したが、次号ではその高い
1
1)JIS B 7751 紫外線カーボンアーク燈式耐光試験機
促進性が注目されているメタルハライドランプ式耐候性試験
(1974)
機など最近広く普及し始めてきている促進耐候性試験とそ
1
2)JIS B 7752紫外線カーボンアーク燈式耐候性試験機
の機器を中心に解説する予定である。
(1980)
また、過酸化水素負荷型の試験法やリモート酸素プラズ
1
3)スガ試験機株式会社「紫外線カーボンアーク式耐光
マを利用した試験法など塗膜の劣化モードに着目し、それを
試験機」カタログ(2003)
効果的に再現して「高い促進性」、
「優れた再現性」、
「高
1
4)JIS K 5600 塗料一般試験方法(1999)
い相関性」を実現しようとする試みについても触れてゆきた
1
5)JIS B 7754 キセノンアークランプ式耐光性及び耐候性
い。
試験機(1991)
1
6)CIE Technical Report “Solar Spectral Irradiance”
7. 参考文献
Pub No.85(1989)
1
7)スガ試験機株式会社「キセノンウェザーメーター」カタ
1)竹島鋭機、川野敏範、高村久雄:色材、55[12]、715
ログ(2003)
(1982)
1
8)ISO 11341 Paints and varnishes-Artficial weathering
2)竹島鋭機、川野敏範、高村久雄:色材、55[12]、872
and exposure to artificial radiation-Exposure to filtered
(1982)
xenon arc radiation (2004)
3)竹島鋭機、
川野敏範、
高村久雄:色材、56 [1]、(
9 1983)
1
9)日本塗料工業会 技術委員会 耐候性部会:各種耐候試
4)土居依男:塗料の研究、No.121、8(1992)
験機の調査研究、4月(2002)
5)江崎泰雄:色材、78[10]、473(2005)
2
0)信藤健一、高柳弘道、鈴野純:塗料の研究、No.141、
6)スガ試験機株式会社「サンシャインウェザーメーター」
44、
(2003)
カタログ(2003)
2
1)吉田洋一、沖永毅:塗料の研究、No.135、56、
(2000)
7)ATLAS社「Weathering Testing Guidebook」(2001)
8)JIS B 7753 サンシャインカーボンアーク灯式耐光性及び
耐候性試験機(1993)
37
塗料の研究 No.145 Mar. 2006
総
説
・
解
説
Fly UP